JP6431756B2 - バイオマスの成分分離方法 - Google Patents

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Description

本発明は、バイオマスの成分分離方法に関する。
近年、化石資源の枯渇、環境問題への配慮等から、グルカン(C6糖成分を構成単位とする多糖)等を含有する非可食バイオマスの有効活用が注目されている。
グルカンは、糖化することより、糖を得ることができ、糖からはバイオ変換又は化学変換にてエタノールや乳酸、ヒドロキシメチルフルフラール(HMF)等といった生物由来の化学物質へ変換できることが知られている。
グルカン等を草本系バイオマス等の植物原料から抽出する方法としては、蒸煮処理、酸処理、アルカリ処理、酵素処理等が一般的に知られており、これらの過程で機械的処理を併用する試みもされている。
草本系バイオマスを形成する主な組成であるグルカン、キシラン、リグニンは複雑で強固な高次構造を有し、それぞれが水素結合やエステル結合で複雑に結合されているため、これらを分離し、各成分を収率良く回収することは難しい。前記のようにグルカンは、特に各種用途に有用であり、高収率で回収することが求められている。
特許文献1には、セルロース含有原料から糖を効率よく製造し、生産性を向上することを目的として、セルロース含有原料を、塩基性化合物の存在下、該セルロース含有原料の乾燥重量に対する水分量が40質量%以下の条件下で粉砕処理し、セルロース含有粉砕物を得る工程、及び得られたセルロース含有粉砕物を酵素で糖化処理する工程を有する糖の製造方法が開示されている。
特許文献2には、エネルギー消費を低減し、短時間で収率よく処理し、低コストとすることを目的として、草本系バイオマス原料を乾式で平均粒径を1mm以下に粗粉砕する粗粉砕工程と、粗粉砕された草本系バイオマスに水を添加し草本系バイオマス濃度が10〜40重量%の高濃度混合物を調製し、該高濃度混合物中の草本系バイオマスの平均粒径を100μm以下に細粉砕する第一の細粉砕工程と、細粉砕された高濃度混合物に水を添加し草本系バイオマス濃度が1〜10重量%の低濃度混合物を調製し、該低濃度混合物中の草本系バイオマスをさらに細粉砕する第二の細粉砕工程を有する草本系バイオマスの酵素加水分解の前処理方法が開示されている。
特許文献3には、リグノセルロースを含有するバイオマスから効率的に糖類を製造することを目的として、リグノセルロース原料に対して10〜70質量%の亜硫酸ナトリウム及びpH調整剤として0.1〜20質量%のアルカリを添加し、前記亜硫酸ナトリウム及びpH調整剤を添加した原料懸濁液を加熱処理し、加熱処理後の原料懸濁液をリファイナーで磨砕処理し、得られた原料懸濁液を糖化処理するリグノセルロース原料系原料の糖化処理方法が開示されている。
特開2013−255430号公報 特開2010−220512号公報 特開2013−188204号公報
しかしながら、特許文献1では、特定の水分量の条件下で粉砕処理する工程を有するため、一定の塩基性化合物の作用を得るためには長時間の粉砕処理工程を必要とする。
特許文献2では、粉砕による前処理時に、アルカリ処理、あるいは、加熱処理を併せて行うことが開示されているが、アルカリ処理は一段階であり、また加熱処理における温度も低いため、アルカリ処理の作用効果が低い。
特許文献3では、アルカリ処理が一段階であるため、アルカリ処理の作用効果が低い。
本発明は、草本系バイオマス中に含まれるグルカンを高い比率で含有する組成物(以下、単に「グルカン含有組成物」ともいう)を、効率よく得ることができるバイオマスの成分分離方法を提供することを課題とする。
すなわち本発明は、下記工程1及び2を有する、バイオマスの成分分離方法に関する。
工程1:草本系バイオマスを、濃度0.01質量%以上、5質量%以下のアルカリ水溶液中で、100℃以上、150℃以下で加熱処理して、一次処理バイオマスを得た後、成分分離を行い、一次処理バイオマスの水溶性成分と一次処理バイオマスの水不溶性成分とに分離し、一次処理バイオマスの水不溶性成分を得る工程
工程2:工程1で得られた一次処理バイオマスの水不溶性成分を、濃度6質量%以上、60質量%以下のアルカリ水溶液中で、高速撹拌装置を用いて、周速1m/秒以上、50m/秒以下、かつ周速(m/秒)と処理時間(秒)の積が、5m以上、2,000m以下である条件で撹拌処理して、二次処理バイオマスを得た後、成分分離を行い、二次処理バイオマスの水溶性成分と二次処理バイオマスの水不溶性成分とに分離し、グルカン含有組成物である二次処理バイオマスの水不溶性成分を得る工程
本発明は、草本系バイオマス中に含まれるグルカン含有組成物を、効率よく分離することができるバイオマスの成分分離方法を提供することができる。
本発明のバイオマスの成分分離方法は、下記工程1及び2を有する。
工程1:草本系バイオマスを、濃度0.01質量%以上、5質量%以下のアルカリ水溶液中で、100℃以上、150℃以下で加熱処理して、一次処理バイオマスを得た後、成分分離を行い、一次処理バイオマスの水溶性成分と一次処理バイオマスの水不溶性成分とに分離し、一次処理バイオマスの水不溶性成分を得る工程
工程2:工程1で得られた一次処理バイオマスの水不溶性成分を、濃度6質量%以上、60質量%以下のアルカリ水溶液中で、高速撹拌装置を用いて、周速1m/秒以上、50m/秒以下、かつ周速(m/秒)と処理時間(秒)の積が、5m以上、2,000m以下である条件で撹拌処理して、二次処理バイオマスを得た後、成分分離を行い、二次処理バイオマスの水溶性成分と二次処理バイオマスの水不溶性成分とに分離し、グルカン含有組成物である二次処理バイオマスの水不溶性成分を得る工程
本発明のバイオマスの成分分離方法を用いることで、草本系バイオマス中に含まれるグルカンを高い比率で含有する組成物(グルカン含有組成物)を、効率よく得ることができる理由は定かではないが、次のように考えられる。
本発明は、第一の工程でアルカリ水溶液の濃度が低く、かつ、高温条件でバイオマスを処理し、その後、第二の工程でアルカリ水溶液の濃度が高く、かつ、特定の撹拌条件で処理して、グルカン含有組成物を得るものである。
第一の工程では、アルカリ水溶液の濃度が低く、かつ、高温条件なので、水素結合やエステル結合の切断によって、キシラン、リグニン等のグルカン以外の成分は水に溶けやすくなるが、グルカンはアルカリ水溶液の濃度が低い条件下では水に溶けにくいため、各成分の分離が進行する。しかも、アルカリ水溶液の濃度が低いため、グルカンの変質が抑制され、水溶性成分へのグルカン変性物の移行もなく、グルカンの比率の高い水不溶性成分が得られるものと考えられる。
次に、第二の工程において、アルカリ水溶液の濃度を高くして、特定の撹拌条件下で処理することで、水不溶性成分が繊維質を維持したままで解繊し、より効率的に水溶性成分を分離することができるものと考えられる。特に特定の撹拌条件で行うため、解繊のみが生じ、更にキシランが溶解し、繊維質の破壊によるグルカンの変質も抑えられるため、グルカンの比率が高いグルカン含有組成物である二次処理バイオマスの水不溶性成分を、効率よく得ることができる。
[工程1]
工程1は、草本系バイオマスを、濃度0.01質量%以上、5質量%以下のアルカリ水溶液中で、100℃以上、150℃以下で加熱処理して、一次処理バイオマスを得た後、成分分離を行い、一次処理バイオマスの水溶性成分と一次処理バイオマスの水不溶性成分とに分離し、一次処理バイオマスの水不溶性成分を得る工程である。
工程1で得られたアルカリ一次処理バイオマスの水溶性成分は、キシランを高い比率で含み、キシランを含有する組成物(以下、「キシラン含有組成物」ともいう)として得ることが好ましい。
工程1は、キシラン含有組成物のキシランの回収率を高め、工程2における処理を効果的に行なって、グルカン含有組成物のグルカン含有量を向上する観点から行なわれる。なお、工程1においても一部のキシラン及びリグニンが水中に遊離する。
<草本系バイオマス>
本発明の方法では、植物系バイオマスとして草本系バイオマスが用いられる。一般的に、植物系バイオマスは、セルロース、へミセルロース、及びリグニン等を含有する。植物系バイオマスとしては、木質系バイオマス、草本系バイオマスが挙げられるが、本発明では、工程1及び工程2におけるアルカリの処理の効果を得る観点から、草本系バイオマスを用いる。
草本系バイオマスとは、草地に生育する樹木以外の植物原料、或いは非木質の植物部位を意味する。具体的には、イネ科、アオイ科、マメ科の植物原料、ヤシ科の植物の非木質原料が挙げられる。イネ科の植物原料としては、例えばサトウキビバガス、ソルガムバガス等のバガス、スイッチグラス、エレファントグラス、コーンストーバー、コーンコブ、イナワラ、ムギワラ、オオムギ、ススキ、芝、ジョンソングラス、エリアンサス、ネピアグラスが挙げられる。アオイ科の植物原料としては、例えばケナフ、ワタが挙げられる。マメ科の植物原料としては、例えばアルファルファが挙げられる。ヤシ科の植物の非木質原料としては、例えばパームヤシ空果房が挙げられる。これらの中でも、生産性および取扱い性の観点から、好ましくはイネ科の植物原料であり、より好ましくはサトウキビバガス、コーンコブ、又はイナワラであり、更に好ましくはサトウキビバガス、又はイナワラであり、より更に好ましくはサトウキビバガスである。
草本系バイオマスは、粉砕処理せずに用いることもできるが、処理効率の観点から、好ましくは、工程1の前に粉砕処理をする。
粗粉砕に用いられる粉砕機に特に制限はなく、例えば、一軸破砕機などのカッターミル(カッティングミル)、ペレットミル、ハンマーミル、ピンミル、ローラーミル、ロールミル、ニーダーが挙げられる。これらの中でも、キシランの回収率を高める観点から、好ましくはカッターミル及びペレットミルである。
ペレットミルとしては、ディスクダイ式ペレットミル、ロータリーダイ式ペレットミル、スクリュー式ペレットミルが挙げられ、なかでもディスクダイ式ペレットミルが好ましく、ダイスとローラーを有するダイローラーがより好ましい。
粗粉砕後の草本系バイオマスの大きさは、取り扱いやすさの観点から、長繊維の平均の長さが、好ましくは100mm以下、より好ましくは50mm以下、更に好ましくは20mm以下であり、また、処理効率の観点から、好ましくは0.5mm以上である。
<アルカリ水溶液>
工程1で用いられるアルカリ水溶液の濃度は、工程1におけるキシランの回収率及び工程2におけるグルカン含有量の向上の観点から、5質量%以下、好ましくは4質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは2質量%、より更に好ましくは1.5質量%以下であり、また、同様の観点から、0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上、より更に好ましくは1質量%以上である。
なお、アルカリ水溶液の濃度の調整は、草本系バイオマスに所定の濃度のアルカリ水溶液を混合してもよく、また、草本系バイオマスに高濃度のアルカリ水溶液及び水を加え、所定の濃度に調整してもよい。
工程1で用いられるアルカリの量は、工程1におけるキシランの回収率及び工程2におけるグルカン含有量の向上の観点及び経済性の観点から、草本系バイオマスの固形分100質量部に対し、好ましくは70質量部以下、より好ましくは60質量部以下、更に好ましくは55質量部以下、より更に好ましくは50質量部以下、より更に好ましくは40質量部以下、より更に好ましくは30質量部以下、より更に好ましくは20質量部以下であり、また、工程1におけるキシランの回収率及び工程2におけるグルカン含有量の向上の観点から、好ましくは8質量部以上、より好ましくは10質量部以上である。
工程1で用いられるアルカリは、好ましくはアルカリ金属水酸化物及びアルカリ土類金属水酸化物から選ばれる少なくとも一種である。常温、常圧で取扱える等の作業性の観点及び工程1におけるキシランの回収率及び工程2におけるグルカン含有量の向上の観点から、より好ましくは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、及び水酸化マグネシウム等から選ばれる少なくとも一種であり、更に好ましくは水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムから選ばれる少なくとも一種であり、より更に好ましくは水酸化ナトリウムである。
工程1で用いられる水の量は、工程1におけるキシランの回収率及び工程2におけるグルカン含有量の向上の観点、及び均一な撹拌混合等の作業性の観点から、草本系バイオマスの固形分100質量部に対し、好ましくは10質量部以上、より好ましくは100質量部以上、更に好ましくは300質量部以上、より更に好ましくは500質量部以上、より更に好ましくは600質量部以上、より更に好ましくは700質量部以上、より更に好ましくは800質量部以上、より更に好ましくは1,500質量部以上であり、また、上記観点及び設備過大や加熱コスト等の経済性の観点から、好ましくは10,000質量部以下、より好ましくは8,000質量部以下、更に好ましくは5,000質量部以下、より更に好ましくは4,000質量部以下、より更に好ましくは3,000質量部以下、より更に好ましくは2,000質量部以下である。
<加熱処理>
工程1の加熱処理は、撹拌せずにすることもできるが、均一に加熱処理する観点及び処理効率の観点から、撹拌混合工程を有することが好ましい。撹拌混合工程は、加熱処理前に行ってもよく、加熱処理中に行ってもよい。用いられる撹拌装置は、特に制限はなく、各種形態の撹拌翼、例えば、多段翼、アンカー型、馬蹄型、スクリュー型、2重リボン、タービン型、プロペラ型、マックスブレンド、ビスター装置等が使用できる。あるいは、例えば、スタティックミキサー、ラインミキサー等を単独あるいは併用してもよい。撹拌混合に使用する槽の形状は、特に限定されないが円筒状等が使用できる。
工程1の加熱処理の温度は、工程1におけるキシランの回収率及び工程2におけるグルカン含有量の向上の観点から、100℃以上、好ましくは105℃以上、より好ましくは110℃以上、更に好ましくは115℃以上であり、また、工程1におけるキシランの回収率及び工程2におけるグルカン含有量の向上の観点、及び経済性の観点から、150℃以下、好ましくは140℃以下、より好ましくは130℃以下、更に好ましくは125℃以下である。
工程1の加熱処理の時間は、上記の加熱処理の温度範囲内で保持した時間を表し、好ましくは100℃以上、150℃以下の温度範囲内で保持した時間、好ましくは105℃以上、140℃以下の温度範囲内で保持した時間、好ましくは110℃以上、130℃以下の温度範囲内で保持した時間、好ましくは115℃以上、125℃以下の温度範囲内で保持した時間である。
工程1の加熱処理の時間は、処理設備のスケールや昇降温速度の違いによって変化するので一概に言えないが、工程1におけるキシランの回収率及び工程2におけるグルカン含有量の向上の観点から、好ましくは0.1時間以上、より好ましくは0.5時間以上、更に好ましくは1時間以上であり、また、工程1におけるキシランの回収率及び工程2におけるグルカン含有量の向上の観点、及び経済性の観点から、好ましくは50時間以下、より好ましくは24時間以下、更に好ましくは12時間以下、より更に好ましくは5時間以下、より更に好ましくは3時間以下である。
アルカリ一次処理バイオマスとは、加熱処理により得られたものを意味し、水不溶性成分である固形分と水溶性成分である液分とを有する。
工程1の処理により脱離したリグニン及びキシランは、水に溶けやすいため水溶性成分に移行し、グルカンは、水不溶性成分に残存する。
得られたアルカリ一次処理バイオマスを、ろ過、遠心分離等により固形分を分離することにより成分分離を行い、水不溶性成分を得ることが好ましく、分離した固形分を水で洗浄して水不溶性成分を得ることがより好ましい。
前記成分分離により液分を分離して得られた水溶性成分は、キシラン含有組成物として得ることが好ましい。前記成分分離に加えて、分離した一次処理バイオマスの水不溶性成分を水で洗浄し、水中に溶解させて抽出し、取り出してもよい。更に、得られた水溶性成分から、透析膜等によりアルカリを除いてもよい。
[工程2]
工程2は、工程1で得られた一次処理バイオマスの水不溶性成分を、濃度6質量%以上、60質量%以下のアルカリ水溶液中で、高速撹拌装置を用いて、周速1m/秒以上、50m/秒以下、かつ周速(m/秒)と処理時間(秒)の積が、5m以上、2,000m以下である条件で撹拌処理して、二次処理バイオマスを得た後、成分分離を行い、二次処理バイオマスの水溶性成分と二次処理バイオマスの水不溶性成分とに分離し、グルカン含有組成物である二次処理バイオマスの水不溶性成分を得る工程である。
工程2で得られた二次処理バイオマスの水溶性成分は、キシラン含有組成物として得ることが好ましい。
工程2は、グルカン含有組成物のグルカン含有量を高くし、キシラン含有量を低減する観点から行われる。
<アルカリ水溶液>
工程2で用いられるアルカリ水溶液の濃度は、グルカン含有量の向上及びキシラン含有量の低減の観点、並びに経済性の観点から、6質量%以上、好ましくは7質量%以上、より好ましくは8質量%以上、更に好ましくは10質量%以上であり、また、上記観点から、60質量%以下、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下、より更に好ましくは20質量%以下、より更に好ましくは15質量%以下である。
なお、アルカリ水溶液に用いられるアルカリは、工程1で例示したものと同様のものが好ましく用いられる。
工程2で用いられるアルカリ水溶液の量は、グルカン含有量の向上及びキシラン含有量の低減の観点、並びに均一撹拌等の作業性の観点から、アルカリ一次処理バイオマスの水不溶性成分100質量部に対し、好ましくは50質量部以上、より好ましくは100質量部以上、更に好ましくは300質量部以上、より更に好ましくは500質量部以上、より更に好ましくは800質量部以上である。また、グルカン含有量の向上及びキシラン含有量の低減の観点、並びに設備過大やコスト等の経済性の観点から、アルカリ一次処理バイオマスの水不溶性成分100質量部に対し、好ましくは10,000質量部以下、より好ましくは5,000質量部以下、更に好ましくは4,000質量部以下、より更に好ましくは3,000質量部以下である。
工程2で用いられるアルカリの量は、草本系バイオマスの固形分100質量部に対し、グルカン含有量の向上の観点から、好ましくは30質量部以上、より好ましくは100質量部以上、更に好ましくは200質量部以上であり、また、グルカン含有量の向上の観点及び経済性の観点から、好ましくは1,000質量部以下、より好ましくは500質量部以下、更に好ましくは300質量部以下である。
工程2で用いられる水の量は、グルカン含有量の向上の観点、及び均一な撹拌混合等の作業性の観点から、草本系バイオマスの固形分100質量部に対し、好ましくは10質量部以上、より好ましくは100質量部以上、更に好ましくは500質量部以上、更に好ましくは1,000質量部以上、更に好ましくは1,500質量部以上であり、また、上記観点及び設備過大や加熱コスト等の経済性の観点から、好ましくは10,000質量部以下、より好ましくは5,000質量部以下、更に好ましくは3,000質量部以下、更に好ましくは2,000質量部以下である。
<撹拌処理>
工程2で用いられる高速撹拌装置は、グルカン含有量の向上及びキシラン含有量の低減の観点、並びに均一撹拌等の作業性の観点から、高速撹拌により高いせん断応力を与える撹拌装置が好ましく、少なくとも回転軸、撹拌槽、該回転軸を回転させる動力部、動力部により該撹拌槽内にて回転運動する高速撹拌機構を備える。撹拌の形態には制限はなく、撹拌槽中の内容物を撹拌槽の上部、下部、横部等から直接撹拌する通常の撹拌方法の他、ラインミキサーを用いてもよい。
このような高速撹拌装置は、高速撹拌翼機構を有する撹拌装置、タービン・ステータ型高速撹拌機構を有する撹拌装置、旋回薄膜型高速撹拌機構を有する撹拌装置等が挙げられる。高速撹拌翼機構を有する撹拌装置は、高速運転可能な形状の撹拌翼を有するものであり、撹拌翼としては、ディスパ翼やディスクタービン翼等が挙げられ、なかでもディスパ翼が好ましい。高速撹拌翼機構を有する撹拌装置の具体例としては、プライミックス株式会社製 商品名「ロボミックス」、佐竹化学機械工業株式会社製 商品名「マルチラインミキサー」、相川鉄工株式会社製「AHXヘリックスパルパー」等が挙げられる。
タービン・ステータ型高速撹拌機構を有する撹拌装置は、タービンとステータとの組合せにより高いせん断応力を与えるものであり、プライミックス株式会社製 商品名「T.K.AUTO HOMO MIXER」、IKA社製「UTL2000 インライン−ハイシェアー」等が挙げられる。
旋回薄膜型高速撹拌機構を有する撹拌装置は、遠心力を利用した中空旋回薄膜撹拌により均一で高いせん断力を与えるものであり、増幸産業株式会社製 商品名「マスコロイダー」、新東工業株式会社製 商品名「ディスパライザー」、相川鉄工株式会社製「RFシングルディスクリファイナー」等が挙げられる。
工程2で用いられる高速撹拌装置は、グルカン含有量の向上及びキシラン含有量の低減の観点、並びに均一撹拌等の作業性の観点から、好ましくは高速撹拌翼機構を有する撹拌装置、タービン・ステータ型高速撹拌機構を有する撹拌装置、旋回薄膜型高速撹拌機構を有する撹拌装置から選ばれる少なくとも一種であり、より好ましくは高速撹拌翼機構を有する撹拌装置、及びタービン・ステータ型高速撹拌機構を有する撹拌装置から選ばれる少なくとも一種であり、更に好ましくはディスパ翼を有する高速撹拌翼機構を有する撹拌装置、及びタービン・ステータ型高速撹拌機構を有する撹拌装置から選ばれる少なくとも一種であり、グルカンを高収率で得る観点からは、ディスパ翼を有する高速撹拌翼機構を有する撹拌装置がより更に好ましく、キシランの残存量を低減させる観点からは、タービン・ステータ型高速撹拌機構を有する撹拌装置がより更に好ましい。
工程2で用いられる高速撹拌装置は、高速撹拌機構先端部の周速が、グルカン含有量の向上及びキシラン含有量の低減の観点、並びに均一撹拌等の作業性の観点から、1m/秒以上、好ましくは3m/秒以上、より好ましくは5m/秒以上、更に好ましくは7m/秒以上であり、また、同様の観点から、50m/秒以下、好ましくは20m/秒以下、より好ましくは15m/秒以下、更に好ましくは10m/秒以下である。
工程2の処理時間は、グルカン含有量の向上及びキシラン含有量の低減の観点から、好ましくは5秒以上、より好ましくは10秒以上、更に好ましくは30秒以上、更に好ましくは50秒以上であり、また、グルカン含有量の向上及びキシラン含有量の低減の観点、並びに経済性の観点から、好ましくは2,000秒以下、より好ましくは500秒以下、更に好ましくは100秒以下、より更に好ましくは80秒以下である。
高速撹拌装置を用いて撹拌する際の周速(m/秒)と処理時間(秒)との積は、グルカン含有量の向上及びキシラン含有量の低減の観点、並びに均一撹拌等の作業性の観点から、5m以上、好ましくは50m以上、より好ましくは70m以上、更に好ましくは150m以上、より更に好ましくは210m以上であり、また、処理時間の短縮及び高速撹拌装置の耐久性の観点から、2,000m以下、好ましくは1500m以下、より好ましくは1,000m以下、更に好ましくは800m以下、より更に好ましくは600m以下、より更に好ましくは400m以下である。
工程2の処理温度は、グルカン含有量の向上及びキシラン含有量の低減の観点、及び凍結防止等の作業性の観点から、好ましくは0℃以上、好ましくは10℃以上、更に好ましくは20℃以上であり、一方、グルカン含有量の向上及びキシラン含有量の低減の観点、及び経済性の観点から、工程2の処理温度は、好ましくは50℃以下、より好ましくは40℃以下、更に好ましくは30℃以下である。
工程2により得られるアルカリ二次処理バイオマスは、水不溶性成分である固形分と水溶性成分である液分とを有する。工程2により得られたアルカリ二次処理バイオマスを、ろ過、遠心分離等により固形分と液分に分離することにより成分分離を行い、グルカン含有組成物である二次処理バイオマスの水不溶性成分を得ることが好ましく、分離した水不溶性成分である固形分を水で洗浄してグルカン含有組成物を得ることがより好ましい。
前記成分分離により液分を分離して得られた水溶性成分は、キシラン含有組成物として得ることが好ましい。前記成分分離に加えて、分離した二次処理バイオマスの水不溶性成分を水で洗浄し、水中に溶解させて抽出し、取り出してもよい。更に、得られた水溶性成分から、透析膜等によりアルカリを除いてもよい。
さらに、工程2において、成分分離により二次処理バイオマスの水溶性成分と水不溶性成分とに分離する前に、アルカリ水溶液の作用によるキシランの脱離をより促進させ、グルカン含有量を高める観点から、撹拌処理により得られた二次処理バイオマスを、0℃以上50℃以下で30分以上保持する工程(以下、単に「保持工程」ともいう)を経ることが好ましい。なお、保持する際には、静置してもよく、必要に応じて撹拌してもよい。
保持温度は、保持時間を短縮する観点から、好ましくは0℃以上、より好ましくは10℃以上、更に好ましくは20℃以上、また、熱源コストを削減する観点から、好ましくは50℃以下、より好ましくは40℃以下、更に好ましくは30℃以下である。
また、保持時間は、アルカリ水溶液が二次処理バイオマスに十分に作用する観点から、好ましくは5分以上、より好ましくは10分以上、更に好ましくは20分以上であり、生産性や保管コスト等の観点から、好ましくは210分以下、より好ましくは180分以下、更に好ましくは150分以下である。
[グルカン含有組成物]
グルカン含有組成物は、上記工程1及び工程2を経た後に得られる。
グルカン含有組成物はグルカンを含む。その他、例えば、キシラン、リグニンが含まれる。
グルカン含有組成物のグルカン含有量は、該組成物全体に対し、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは81質量%以上、より更に好ましくは82質量%以上、より更に好ましくは83質量%以上、より更に好ましくは84質量%以上であり、また、生産性の観点から、好ましくは98質量%以下、より好ましくは96質量%以下である。
グルカン含有組成物のキシラン含有量は、該組成物全体に対し、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下、更に好ましくは5質量%以下、より更に好ましくは4質量%以下であり、また、生産性の観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上である。
グルカン含有組成物のリグニン含有量は、該組成物全体に対し、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下、更に好ましくは7質量%以下、より更に好ましくは6質量%以下、より更に好ましくは5質量%以下であり、また、生産性の観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上である。
得られたグルカン含有組成物は、例えば、酵素や酸により糖化処理をすることでグルコースを得ることができる。
また、上記グルコースは、酸又は熱処理することで5−ヒドロキシメチルフルフラール等の化学品原料として使用できる。
その他、得られたグルコースからエタノールを製造することができる。エタノールの製造方法としては、例えば、グルコースを発酵させることでアルコールが得られる。アルコール発酵における酵母の種類、使用量、発酵温度等の各種条件は、使用する酵母に応じて適宜設定することができる。
[キシラン含有組成物]
キシラン含有組成物は、前記工程1又は工程2より得られる。
キシラン含有組成物はキシランを含む。その他、例えば、グルカン、リグニンが含まれる。
キシラン含有組成物の、原料バイオマス中のキシランに対するキシランの回収率は、該組成物全体に対し、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは20質量%以上、より更に好ましくは23質量%以上、より更に好ましくは25質量%以上、より更に好ましくは27質量%以上であり、また、生産性の観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。
キシラン含有組成物のキシラン含有量は、該組成物全体に対して、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは17質量%以上、より更に好ましくは18質量%以上であり、また、生産性の観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。
得られたキシランは、例えば、酵素や酸により糖化処理をすることでキシロースを得ることができる。キシロースは、例えば、キシリトール、キシルロース等の化合物への変換材料として有用に利用することができる。また、そのまま食品甘味料等として利用することができる。
キシランは、そのまま、あるいは酵素や酸、酸化剤等による低分子化処理を行い、キシロオリゴ糖とすることで食品甘味料等の添加物として利用することが出来る。
上述した実施形態に関し、本発明は更に以下のバイオマスの成分分離方法を開示する。
<1> 下記工程1及び2を有する、バイオマスの成分分離方法。
工程1:草本系バイオマスを、濃度0.01質量%以上、5質量%以下のアルカリ水溶液中で、100℃以上、150℃以下で加熱処理して、一次処理バイオマスを得た後、成分分離を行い、一次処理バイオマスの水溶性成分と一次処理バイオマスの水不溶性成分とに分離し、一次処理バイオマスの水不溶性成分を得る工程
工程2:工程1で得られた一次処理バイオマスの水不溶性成分を、濃度6質量%以上、60質量%以下のアルカリ水溶液中で、高速撹拌装置を用いて、周速1m/秒以上、50m/秒以下、かつ周速(m/秒)と処理時間(秒)の積が、5m以上、2,000m以下である条件で撹拌処理して、二次処理バイオマスを得た後、成分分離を行い、二次処理バイオマスの水溶性成分と二次処理バイオマスの水不溶性成分とに分離し、グルカン含有組成物である二次処理バイオマスの水不溶性成分を得る工程
<2> 工程1の処理時間が、0.1時間以上、50時間以下である、上記<1>に記載のバイオマスの成分分離方法。
<3> 工程2の処理温度が、0℃以上、50℃以下である、上記<1>又は<2>に記載のバイオマスの成分分離方法。
<4> 工程2で用いられる高速撹拌装置が、高速撹拌翼機構を有する撹拌装置、タービン・ステータ型高速撹拌機構を有する撹拌装置、旋回薄膜型高速撹拌機構を有する撹拌装置から選ばれる少なくとも一種である、上記<1>〜<3>のいずれかに記載のバイオマスの成分分離方法。
<5> 工程1で用いられるアルカリの量が、草本系バイオマスの固形分100質量部に対し、8質量部以上、70質量部以下である、上記<1>〜<4>のいずれかに記載のバイオマスの成分分離方法。
<6> 工程1で用いられる水の量が、草本系バイオマスの固形分100質量部に対し、10質量部以上、10,000質量部以下である、上記<1>〜<5>のいずれかに記載のバイオマスの成分分離方法。
<7> 工程1の加熱処理が、撹拌混合工程を有する、上記<1>〜<6>のいずれかに記載のバイオマスの成分分離方法。
<8> 工程2で用いられるアルカリの量が、草本系バイオマスの固形分100質量部に対し、30質量部以上、1,000質量部以下である、上記<1>〜<7>のいずれかに記載のバイオマスの成分分離方法。
<9> 工程2で用いられる水の量が、草本系バイオマスの固形分100質量部に対し、10質量部以上、10,000質量部以下である、上記<1>〜<8>のいずれかに記載のバイオマスの成分分離方法。
<10> 工程2の処理時間が、5秒以上、2,000秒以下である、上記<1>〜<9>のいずれかに記載のバイオマスの成分分離方法。
<11> 高速撹拌装置を用いて撹拌する際の周速(m/秒)と処理時間(秒)との積が、好ましくは50m以上、より好ましくは70m以上、更に好ましくは150m以上、より更に好ましくは210m以上であり、好ましくは1,500m以下、より好ましくは1,000m以下、更に好ましくは800m以下、より更に好ましくは600m以下、より更に好ましくは400m以下である、上記<1>〜<10>のいずれかに記載のバイオマスの成分分離方法。
<12> 工程2において、成分分離により二次処理バイオマスの水溶性成分と水不溶性成分とに分離する前に、撹拌処理により得られた二次処理バイオマスを、0℃以上50℃以下で30分以上保持する工程を経る、上記<1>〜<11>のいずれかに記載のバイオマスの成分分離方法。
<13> 工程1で得られたアルカリ一次処理バイオマスの水溶性成分を、キシランを含有する組成物として得る、上記<1>〜<12>のいずれかに記載のバイオマスの成分分離方法。
<14> 工程2で得られたアルカリ二次処理バイオマスの水溶性成分を、キシランを含有する組成物として得る、上記<1>〜<13>のいずれかに記載のバイオマスの成分分離方法。
以下の実施例において、「%」は特に説明のない場合、「質量%」を意味する。
(1)キシラン含有量及びグルカン含有量の測定
原料バイオマス又は各処理バイオマスの水不溶性成分試料300mg(乾燥質量)に72%硫酸3mlを加え、30℃の水浴中で1時間静置した。その後、イオン交換水84mlを用いて、ガラス製耐圧ビンに移し、120℃1時間、オートクレーブにて加熱処理した。得られた処理液にイオン交換水を加え100mlに調整した。液の一部を取り出し、炭酸カルシウムによってpH5〜6まで中和し、遠心分離により固液分離して上清を取得した。上清中のキシロース量及びグルコース量を、HPLCを用いて下記の条件で定量し、下記式[1]及び[2]よりキシラン含有量及びグルカン含有量を算出した。
なお、オートクレーブ処理によるキシロースの残存率は下記式[3]から求めた。すなわち、キシロース0.5g、72%硫酸3ml、イオン交換水84mlのキシロース標準溶液を作成し、半量について上記のオートクレーブ処理を行い、処理前後のキシロース濃度の変化から算出した。グルコースの残存率についても、式[3]と同様に算出した。なお、バイオマス試料濃度は0.003(g/ml(0.3g/100ml))である。
キシラン含有量(%)=[{上清中キシロース濃度(g/ml)/(キシロース残存率×0.88)}/バイオマス試料濃度]×100 [1]
グルカン含有量(%)=[{上清中グルコース濃度(g/ml)/(グルコース残存率×0.9)}/バイオマス試料濃度]×100 [2]
キシロース残存率=処理後標準液のキシロース濃度/処理前標準液のキシロース濃度 [3]
(2)リグニン含有量の測定
原料バイオマス、又は二次処理バイオマスの水不溶性成分試料300mg(乾燥質量)に72%硫酸3mlを加え、30℃の温浴中で1時間静置した。
その後、イオン交換水84mlを用いて、ガラス製耐圧ビンに移し、120℃1時間、オートクレーブにて加熱処理した。処理後、耐圧ビン内の黒色沈殿をあらかじめ質量を測定しておいたガラス濾過器(柴田科学株式会社製 1GP16)を用いて吸引濾過し、沈殿物を回収した。
得られた沈殿物は100℃の熱水約300ml、次いで25℃の冷水約300mlで洗浄後、80℃送風乾燥機中で一昼夜乾燥し、乾燥粉体を得た。得られた乾燥粉体の灰分量を上記手法により測定し、乾燥粉体質量から灰分量を差し引いた質量を酸不溶性リグニン量とした。ろ液は光路長1mmセルを用いて205nm吸光度を測定した。ブランクの吸光度(72%硫酸とイオン交換水の混合液(3/84 v/v)の205nm吸光度)を差し引いて、カバ由来のリグニンのモル吸光係数113l/g・cm(参照 日本木材学会編 木質科学実験マニュアル)を用いて、濾液中に溶存している試薬リグニン相当量を算出し、その量を酸可溶性リグニン量とした。酸不溶性リグニンと酸可溶性リグニン両者の合計量を用いて、下記式[4]よりリグニン含有量(%)を求めた。なお、バイオマス試料濃度は0.003(g/ml(0.3g/100ml))である。
リグニン含有量(%)=[{酸不溶性リグニンと酸可溶性リグニン両者の合計(g)}/バイオマス試料濃度]×100 [4]
(3)工程1におけるキシランの回収率の測定
工程1で得られたバイオマスの水溶性成分におけるキシラン成分の回収率(%)は、工程1のバイオマスの水不溶性成分における、キシラン成分の残存率(%)より算出した。
キシラン残存率(%)=(工程1で得られた水不溶性成分のキシラン含有量(g)/原料バイオマス中のキシラン含有量(g))×100 [5]
水溶性成分におけるキシラン成分の回収率(%)= 100(%)−(水不溶性成分におけるキシラン成分の残存率(%)) [6]
<HPLC測定条件>
カラム:Transgeomic ICSep ICE−ION−300(TCI社)
カラム温度:40℃
溶離液:0.0085Nの硫酸水溶液
流速:0.4ml/min
検出器:RI
(バイオマス原料の粗粉砕処理)
製造例1
サトウキビの搾りかす(サトウキビバガス)(グルカン含有量38.8%、キシラン含有量24.0%、リグニン含有量22.2%対乾燥原料換算、水分含有率50%対有姿)を、一軸式破砕機「UG03−480YG(F)L」(株式会社ホーライ製)にて、原料処理速度600kg/hrで粗粉砕し、排出部スクリーン径φ15mmを通過させて、粒径10mm以下程度の粗粉砕バガスを得、これを「原料C」とした。
製造例2
前記の粗粉砕原料Cを、目開き1.14mm篩で篩分けし、1.14mm篩を通過しなかったもの(粒径>1.14mm)を「原料B」とした。
製造例3
製造例2と同様に、前記の粗粉砕原料Cを、目開き1.14mm篩で篩分けし、また、同篩分け品をさらに目開き500μm篩で篩分けを行い、1.14mm篩を通過し、500μm篩を通過しなかったもの(粒径>500μm、<1.14mm)を「原料A」とした。
製造例4
製造例1に供したものと同じ前記サトウキビの搾りかす(サトウキビバガス)を、ディスクペレッター「F40型」(株式会社ダルトン製、ダイローラー)にて、ダイス仕様φ3 35−3(ダイス穴径3mm 総厚み35mm φ3mm部厚み3mm)を用い、主軸回転数80rpm 原料処理速度 297kg/hrにて処理し、裁断されたバガスを得、これを「原料D」とした。
実施例1
(工程1(アルカリ2段処理−1段階目))
粉砕、篩分けバガスである原料Aに対し、48%水酸化ナトリウム水溶液及び純水を加え、バイオマス(乾燥質量)濃度を10%、バイオマスを除くアルカリ水溶液の濃度を1.8%とした。撹拌翼 DT−50で10分間撹拌を行い、オートクレーブにて、室温(25℃)から120℃まで約40分で昇温を行った後、120℃で180分間保持した。その後、25℃で放冷を行い、70℃を下回った時点で一次処理バイオマスを得た。得られた1次処理バイオマスに対し、濾過・水洗浄を行い、固液分離を行い、水溶性成分と水不溶性成分(A1)を得、水溶性成分の組成分析を行った。結果を表1に示す。
(工程2(アルカリ2段処理−2段階目))
工程1で得られた水不溶性成分(A1)に対し、48%水酸化ナトリウム水溶液及び純水を加え、バイオマス(乾燥質量)濃度を5%、水不溶性成分を除くアルカリ水溶液の濃度を12%とした。HOMO MIXERを用いて、25℃で、300秒間撹拌処理を行い、25℃、保持時間120分にて保持工程を経た後、二次処理バイオマスを得た。次に濾過・水洗を行い、固液分離を行って、二次処理バイオマスの水溶性成分と水不溶性成分を得、水不溶性成分の組成分析を行った。結果を表2に示す。
実施例2〜7及び比較例1〜5
実施例1の処理条件を、表1及び2に示す値及び装置に変更したこと以外は、実施例1と同様に組成分析を行った。結果を表1及び2に示す。なお、表1及び2に示す各装置及び操作条件を下記に示す。
(撹拌装置)
・撹拌翼DT−50(アズワン株式会社、撹拌機:SM−103、撹拌翼:DT−50(ディスクタービン、翼径50mm)、回転数:250rpm、処理容器:500mlビーカー、処理量:バイオマススラリー量で250ml)
・HOMO MIXER(プライミックス株式会社製 商品名:T.K.AUTO HOMO MIXER、ステーター内径:30mm、タービン翼径:29.5mm、回転数:2,500rpm、タービン翼先端周速:3.86m/sec、処理容器:200mlトールビーカー、処理量:バイオマススラリーで100ml)
・ロボミックス ディスパ(プライミックス株式会社製 商品名:ロボミックス、撹拌形式:撹拌ホモディスパ2.5型、翼径:38.91mm、回転数:4,000rpm、先端周速:8.15m/sec、処理ポット:800ml、(内径:91.12mm)、処理量:バイオマススラリーで500ml)
(加熱装置)
・オートクレーブ(株式会社平山製作所製 HVA−85 容量85L)。なお、表1に示す処理時間は、内温が設定温度に到達した後に保持した時間である。
(ろ過装置及びろ過・水洗浄)
・ろ過装置(濾材受け:アズワン株式会社製 ビフネルロート AF4、濾過メッシュ:関西金網株式会社製 SUS316製平織金網 φ0.03×400mesh φ110丸切り)
・洗浄条件:濾液の導電率 100ms/m以下まで、純水にて洗浄した。
Figure 0006431756
Figure 0006431756
表2に示すように、実施例は、比較例に比べ、草本系バイオマスから、グルカンを高い比率で含有するグルカン含有組成物を、効率よく得ることができる。
本発明のバイオマスの成分分離方法は、生産性に優れ、グルカンを効率的に得ることができる。これらはバイオ変換又は化学変換を介して各種化学品原料として使用できる。

Claims (10)

  1. 下記工程1及び2を有する、バイオマスの成分分離方法。
    工程1:草本系バイオマスを、濃度0.01質量%以上、5質量%以下のアルカリ水溶液中で、100℃以上、150℃以下で加熱処理して、一次処理バイオマスを得た後、成分分離を行い、一次処理バイオマスの水溶性成分と一次処理バイオマスの水不溶性成分とに分離し、一次処理バイオマスの水不溶性成分を得る工程
    工程2:工程1で得られた一次処理バイオマスの水不溶性成分を、濃度6質量%以上、60質量%以下のアルカリ水溶液中で、高速撹拌装置を用いて、周速1m/秒以上、50m/秒以下、かつ周速(m/秒)と処理時間(秒)の積が、5m以上、2,000m以下である条件で撹拌処理して、二次処理バイオマスを得た後、成分分離を行い、二次処理バイオマスの水溶性成分と二次処理バイオマスの水不溶性成分とに分離し、グルカン含有組成物である二次処理バイオマスの水不溶性成分を得る工程
  2. 工程1の処理時間が、0.1時間以上、50時間以下である、請求項1に記載のバイオマスの成分分離方法。
  3. 工程2の処理温度が、0℃以上、50℃以下である、請求項1又は2に記載のバイオマスの成分分離方法。
  4. 工程2の処理時間が、5秒以上、2,000秒以下である、請求項1〜3のいずれかに記載のバイオマスの成分分離方法。
  5. 工程2で用いられる高速撹拌装置が、高速撹拌翼機構を有する撹拌装置、タービン・ステータ型高速撹拌機構を有する撹拌装置、旋回薄膜型高速撹拌機構を有する撹拌装置から選ばれる少なくとも一種である、請求項1〜4のいずれかに記載のバイオマスの成分分離方法。
  6. 工程1で用いられるアルカリの量が、草本系バイオマスの固形分100質量部に対し、8質量部以上、70質量部以下である、請求項1〜5のいずれかに記載のバイオマスの成分分離方法。
  7. 工程1で用いられる水の量が、草本系バイオマスの固形分100質量部に対し、10質量部以上、10,000質量部以下である、請求項1〜6のいずれかに記載のバイオマスの成分分離方法。
  8. 工程2で用いられるアルカリの量が、草本系バイオマスの固形分100質量部に対し、30質量部以上、1,000質量部以下である、請求項1〜7のいずれかに記載のバイオマスの成分分離方法。
  9. 工程2で用いられる水の量が、草本系バイオマスの固形分100質量部に対し、10質量部以上、10,000質量部以下である、請求項1〜8のいずれかに記載のバイオマスの成分分離方法。
  10. 工程2において、成分分離により二次処理バイオマスの水溶性成分と水不溶性成分とに分離する前に、撹拌処理により得られた二次処理バイオマスを、0℃以上50℃以下で30分以上保持する工程を経る、請求項1〜9のいずれかに記載のバイオマスの成分分離方法。
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