この発明の実施形態の一例について、図面を参照しながら詳細に説明する。この発明に係る眼科撮影装置は、光干渉断層計の機能を有し、被検眼の光コヒーレンストモグラフィ(Optical Coherence Tomography:以下、OCT)を実行する。このOCTは、たとえば眼底や前眼部など、被検眼の任意の部位に対して実行される。
この明細書では、OCTによって取得される画像をOCT画像と総称することがある。また、この明細書において引用された文献の記載内容を、以下の実施形態の内容として援用することが可能である。
以下の実施形態では、フーリエドメインタイプのOCTを実行可能な眼科撮影装置について説明する。特に、実施形態に係る眼科撮影装置は、スウェプトソースタイプのOCTの手法を適用可能である。なお、スウェプトソースタイプ以外のタイプ、たとえばスペクトラルドメインタイプのOCTを実行可能な眼科撮影装置に対して、この発明に係る構成を適用することも可能である。また、以下の実施形態ではOCT装置と眼底カメラとを組み合わせた装置について説明するが、眼底カメラ以外のモダリティ、たとえばSLO(Scanning Laser Ophthalmoscope)、スリットランプ、眼科手術用顕微鏡、光凝固装置などに、実施形態に係る構成を有するOCT装置を組み合わせることも可能である。また、実施形態に係る構成を、単体のOCT装置に組み込むことも可能である。
[構成]
図1に示すように、眼科撮影装置1は、眼底カメラユニット2、OCTユニット100および演算制御ユニット200を含んで構成される。眼底カメラユニット2は、従来の眼底カメラとほぼ同様の光学系を有する。OCTユニット100には、OCTを実行するための光学系が設けられている。演算制御ユニット200は、各種の演算処理や制御処理等を実行するコンピュータを具備している。
〔眼底カメラユニット〕
図1に示す眼底カメラユニット2には、被検眼Eの眼底Efの表面形態を表す2次元画像(眼底像)を取得するための光学系が設けられている。眼底像には、観察画像や撮影画像などが含まれる。観察画像は、たとえば、近赤外光を用いて所定のフレームレートで形成されるモノクロの動画像である。撮影画像は、たとえば、可視光をフラッシュ発光して得られるカラー画像、または近赤外光若しくは可視光を照明光として用いたモノクロの静止画像であってもよい。眼底カメラユニット2は、これら以外の画像、たとえばフルオレセイン蛍光画像やインドシアニングリーン蛍光画像や自発蛍光画像などを取得可能に構成されていてもよい。
眼底カメラユニット2には、被検者の顔を支持するための顎受けや額当てが設けられている。更に、眼底カメラユニット2には、照明光学系10と撮影光学系30が設けられている。照明光学系10は眼底Efに照明光を照射する。撮影光学系30は、この照明光の眼底反射光を撮像装置(CCDイメージセンサ(単にCCDと呼ぶことがある)35、38)に導く。また、撮影光学系30は、OCTユニット100からの測定光を被検眼Eに導くとともに、被検眼Eを経由した測定光をOCTユニット100に導く。
照明光学系10の観察光源11は、たとえばハロゲンランプまたはLED(Light Emitting Diode)により構成される。観察光源11から出力された光(観察照明光)は、曲面状の反射面を有する反射ミラー12により反射され、集光レンズ13を経由し、可視カットフィルタ14を透過して近赤外光となる。更に、観察照明光は、撮影光源15の近傍にて一旦集束し、ミラー16により反射され、リレーレンズ17、18、絞り19およびリレーレンズ20を経由する。そして、観察照明光は、孔開きミラー21の周辺部(孔部の周囲の領域)にて反射され、ダイクロイックミラー46を透過し、対物レンズ22により屈折されて眼底Efを照明する。
観察照明光の眼底反射光は、対物レンズ22により屈折され、ダイクロイックミラー46を透過し、孔開きミラー21の中心領域に形成された孔部を通過し、ダイクロイックミラー55を透過し、合焦レンズ31を経由し、ミラー32により反射される。更に、この眼底反射光は、ハーフミラー33Aを透過し、ダイクロイックミラー33により反射され、集光レンズ34によりCCDイメージセンサ35の受光面に結像される。CCDイメージセンサ35は、たとえば所定のフレームレートで眼底反射光を検出する。表示装置3には、CCDイメージセンサ35により検出された眼底反射光に基づく画像(観察画像)が表示される。なお、撮影光学系30のピントが前眼部に合わせられている場合、被検眼Eの前眼部の観察画像が表示される。
撮影光源15は、たとえばキセノンランプまたはLEDにより構成される。撮影光源15から出力された光(撮影照明光)は、観察照明光と同様の経路を通って眼底Efに照射される。撮影照明光の眼底反射光は、観察照明光のそれと同様の経路を通ってダイクロイックミラー33まで導かれ、ダイクロイックミラー33を透過し、ミラー36により反射され、集光レンズ37によりCCDイメージセンサ38の受光面に結像される。表示装置3には、CCDイメージセンサ38により検出された眼底反射光に基づく画像(撮影画像)が表示される。なお、観察画像を表示する表示装置3と撮影画像を表示する表示装置3は、同一のものであってもよいし、異なるものであってもよい。また、被検眼Eを赤外光で照明して同様の撮影を行う場合には、赤外の撮影画像が表示される。また、撮影光源としてLEDを用いることも可能である。
LCD(Liquid Crystal Display)39は、固視標や視力測定用指標を表示する。固視標は被検眼Eを固視させるための指標であり、眼底撮影時やOCT計測時などに使用される。
LCD39から出力された光は、その一部がハーフミラー33Aにて反射され、ミラー32に反射され、合焦レンズ31およびダイクロイックミラー55を経由し、孔開きミラー21の孔部を通過し、ダイクロイックミラー46を透過し、対物レンズ22により屈折されて眼底Efに投影される。LCD39の画面上における固視標の表示位置を変更することにより、被検眼Eの固視位置を変更できる。
更に、眼底カメラユニット2には、従来の眼底カメラと同様にアライメント光学系50とフォーカス光学系60が設けられている。アライメント光学系50は、被検眼Eに対する装置光学系の位置合わせ(アライメント)を行うための指標(アライメント指標)を生成する。フォーカス光学系60は、被検眼Eに対してフォーカス(ピント)を合わせるための指標(スプリット指標)を生成する。
アライメント光学系50のLED51から出力された光(アライメント光)は、絞り52、53およびリレーレンズ54を経由してダイクロイックミラー55により反射され、孔開きミラー21の孔部を通過し、ダイクロイックミラー46を透過し、対物レンズ22により被検眼Eの角膜に投影される。
アライメント光の角膜反射光は、対物レンズ22、ダイクロイックミラー46および上記孔部を経由し、その一部がダイクロイックミラー55を透過し、合焦レンズ31を通過し、ミラー32により反射され、ハーフミラー33Aを透過し、ダイクロイックミラー33に反射され、集光レンズ34によりCCDイメージセンサ35の受光面に投影される。CCDイメージセンサ35による受光像(アライメント指標)は、観察画像とともに表示装置3に表示される。ユーザは、従来の眼底カメラと同様の操作を行ってアライメントを実施する。また、演算制御ユニット200がアライメント指標の位置を解析して光学系を移動させることによりアライメントを行ってもよい(オートアライメント機能)。
フォーカス調整を行う際には、照明光学系10の光路上に反射棒67の反射面が斜設される。フォーカス光学系60のLED61から出力された光(フォーカス光)は、リレーレンズ62を通過し、スプリット指標板63により2つの光束に分離され、二孔絞り64を通過し、ミラー65に反射され、集光レンズ66により反射棒67の反射面に一旦結像されて反射される。更に、フォーカス光は、リレーレンズ20を経由し、孔開きミラー21に反射され、ダイクロイックミラー46を透過し、対物レンズ22により屈折されて眼底Efに投影される。
フォーカス光の眼底反射光は、アライメント光の角膜反射光と同様の経路を通ってCCDイメージセンサ35により検出される。CCDイメージセンサ35による受光像(スプリット指標)は、観察画像とともに表示装置3に表示される。演算制御ユニット200は、従来と同様に、スプリット指標の位置を解析して合焦レンズ31およびフォーカス光学系60を移動させてピント合わせを行う(オートフォーカス機能)。また、スプリット指標を視認しつつ手動でピント合わせを行ってもよい。
ダイクロイックミラー46は、眼底撮影用の光路からOCT用の光路を分岐させている。ダイクロイックミラー46は、OCTに用いられる波長帯の光を反射し、眼底撮影用の光を透過させる。このOCT用の光路には、OCTユニット100側から順に、コリメータレンズユニット40と、フィルタ47と、光路長変更部41と、光スキャナ42と、合焦レンズ43と、ミラー44と、リレーレンズ45とが設けられている。
フィルタ47は、測定光の光路に配置され、OCTユニット100において生成された測定光のうち、後述の画像形成処理に供される波長帯の測定光のみを透過させる。フィルタ47は、たとえばバンドパスフィルタ等の光学フィルタを含んで構成される。この実施形態では、フィルタ47は、コリメータレンズユニット40と光スキャナ42との間の測定光の光路上の瞳位置に配置される。なお、フィルタ47は、後述の光源ユニット101に含まれる光源からの光の光路に配置されていてもよい。
光路長変更部41は、図1に示す矢印の方向に移動可能とされ、OCT用の光路の光路長を変更する。この光路長の変更は、被検眼Eの眼軸長に応じた光路長の補正や、干渉状態の調整などに利用される。光路長変更部41は、たとえばコーナーキューブと、これを移動する機構とを含んで構成される。
光スキャナ42は、被検眼Eの瞳孔と光学的に共役な位置に配置されている。光スキャナ42は、OCT用の光路を通過する光(測定光LS)の進行方向を変更する。それにより、被検眼Eを測定光LSでスキャンすることができる。光スキャナ42は、たとえば、測定光LSをx方向にスキャンするガルバノミラーと、y方向にスキャンするガルバノミラーと、これらを独立に駆動する機構とを含んで構成される。それにより、測定光LSをxy平面上の任意の方向にスキャンすることができる。
〔OCTユニット〕
OCTユニット100の構成の一例を図2に示す。OCTユニット100には、被検眼EのOCT画像を取得するための光学系が設けられている。この光学系は、従来のスウェプトソースタイプのOCT装置と同様の構成を有する。すなわち、この光学系は、波長掃引型(波長走査型)光源からの光を測定光と参照光とに分割し、被検眼Eからの測定光の戻り光と参照光路を経由した参照光とを干渉させて干渉光を生成し、この干渉光を検出する干渉光学系である。干渉光学系による干渉光の検出結果(検出信号)は、干渉光のスペクトルを示す信号であり、演算制御ユニット200に送られる。
光源ユニット101は、一般的なスウェプトソースタイプのOCT装置と同様に、出射光の波長を掃引(走査)可能な波長掃引型(波長走査型)光源を含んで構成される。波長掃引型光源は、共振器を含むレーザ光源を含んで構成される。光源ユニット101は、人眼では視認できない近赤外の波長帯において、出力波長を時間的に変化させる。
光源ユニット101から出力された光L0は、光ファイバ102により偏波コントローラ103に導かれてその偏光状態が調整される。偏波コントローラ103は、たとえばループ状にされた光ファイバ102に対して外部から応力を与えることで、光ファイバ102内を導かれる光L0の偏光状態を調整する。
偏波コントローラ103により偏光状態が調整された光L0は、光ファイバ104によりファイバカプラ105に導かれて測定光LSと参照光LRとに分割される。
参照光LRは、光ファイバ110によりコリメータ111に導かれて平行光束となる。平行光束となった参照光LRは、光路長補正部材112および分散補償部材113を経由し、コーナーキューブ114に導かれる。光路長補正部材112は、参照光LRの光路長(光学距離)と測定光LSの光路長とを合わせるための遅延手段として作用する。分散補償部材113は、参照光LRと測定光LSとの間の分散特性を合わせるための分散補償手段として作用する。
コーナーキューブ114は、コリメータ111により平行光束となった参照光LRの進行方向を逆方向に折り返す。コーナーキューブ114に入射する参照光LRの光路と、コーナーキューブ114から出射する参照光LRの光路とは平行である。また、コーナーキューブ114は、参照光LRの入射光路および出射光路に沿う方向に移動可能とされている。この移動により参照光LRの光路の長さが変更される。
なお、図1および図2に示す構成においては、測定光LSの光路(測定光路、測定アーム)の長さを変更するための光路長変更部41と、参照光LRの光路(参照光路、参照アーム)の長さを変更するためのコーナーキューブ114の双方が設けられているが、これらのうちのいずれか一方が設けられていてもよい。また、これら以外の光学部材を用いて、測定光路長と参照光路長との差を変更することも可能である。
コーナーキューブ114を経由した参照光LRは、分散補償部材113および光路長補正部材112を経由し、コリメータ116によって平行光束から集束光束に変換されて光ファイバ117に入射し、偏波コントローラ118に導かれて参照光LRの偏光状態が調整される。
偏波コントローラ118は、たとえば、偏波コントローラ103と同様の構成を有する。偏波コントローラ118により偏光状態が調整された参照光LRは、光ファイバ119によりアッテネータ120に導かれて、演算制御ユニット200の制御の下で光量が調整される。アッテネータ120により光量が調整された参照光LRは、光ファイバ121によりファイバカプラ122に導かれる。
一方、ファイバカプラ105により生成された測定光LSは、光ファイバ127により導かれ、コリメータレンズユニット40により平行光束とされる。平行光束にされた測定光LSは、フィルタ47、光路長変更部41、光スキャナ42、合焦レンズ43、ミラー44、およびリレーレンズ45を経由してダイクロイックミラー46に到達する。そして、測定光LSは、ダイクロイックミラー46により反射され、対物レンズ22により屈折されて被検眼Eに照射される。測定光LSは、被検眼Eの様々な深さ位置において散乱(反射を含む)される。このような後方散乱光を含む測定光LSの戻り光は、往路と同じ経路を逆向きに進行してファイバカプラ105に導かれ、光ファイバ128を経由してファイバカプラ122に到達する。
ファイバカプラ122は、光ファイバ128を介して入射された測定光LSと、光ファイバ121を介して入射された参照光LRとを合成して(干渉させて)干渉光を生成する。ファイバカプラ122は、所定の分岐比(たとえば1:1)で、測定光LSと参照光LRとの干渉光を分岐することにより、一対の干渉光LCを生成する。ファイバカプラ122から出射した一対の干渉光LCは、それぞれ光ファイバ123、124により検出器125に導かれる。
検出器125は、たとえば一対の干渉光LCをそれぞれ検出する一対のフォトディテクタを有し、これらによる検出結果の差分を出力するバランスドフォトダイオード(Balanced Photo Diode)である。検出器125は、その検出結果(検出信号)をDAQ(Data Acquisition System)130に送る。DAQ130には、光源ユニット101からクロックKCが供給される。クロックKCは、光源ユニット101において、波長掃引型光源により所定の波長範囲内で掃引(走査)される各波長の出力タイミングに同期して生成される。光源ユニット101は、たとえば、各出力波長の光L0を分岐することにより得られた2つの分岐光の一方を光学的に遅延させた後、これらの合成光を検出した結果に基づいてクロックKCを生成する。DAQ130は、クロックKCに基づき、検出器125の検出結果をサンプリングする。DAQ130は、サンプリングされた検出器125の検出結果を演算制御ユニット200に送る。演算制御ユニット200は、たとえば一連の波長走査毎に(Aライン毎に)、検出器125により得られた検出結果に基づくスペクトル分布にフーリエ変換等を施すことにより、各Aラインにおける反射強度プロファイルを形成する。更に、演算制御ユニット200は、各Aラインの反射強度プロファイルを画像化することにより画像データを形成する。
〔演算制御ユニット〕
演算制御ユニット200の構成について説明する。演算制御ユニット200は、検出器125から入力される検出信号を解析して被検眼EのOCT画像を形成する。そのための演算処理は、従来のスウェプトソースタイプのOCT装置と同様である。
また、演算制御ユニット200は、眼底カメラユニット2、表示装置3およびOCTユニット100の各部を制御する。たとえば演算制御ユニット200は、被検眼EのOCT画像を表示装置3に表示させる。
演算制御ユニット200は、たとえば、従来のコンピュータと同様に、マイクロプロセッサ、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、ハードディスクドライブ、通信インターフェイスなどを含んで構成される。ハードディスクドライブ等の記憶装置には、眼科撮影装置1を制御するためのコンピュータプログラムが記憶されている。演算制御ユニット200は、各種の回路基板、たとえばOCT画像を形成するための回路基板を備えていてもよい。また、演算制御ユニット200は、キーボードやマウス等の操作デバイス(入力デバイス)や、LCD等の表示デバイスを備えていてもよい。
〔制御系〕
眼科撮影装置1の制御系の構成について図3を参照しつつ説明する。なお、図3においては、眼科撮影装置1のいくつかの構成要素が省略されており、この実施形態を説明するために特に必要な構成要素が選択的に示されている。
(制御部)
眼科撮影装置1の制御系は、制御部210を中心に構成される。制御部210は、たとえば、マイクロプロセッサ、RAM、ROM、ハードディスクドライブ、通信インターフェイス等を含んで構成される。制御部210には、主制御部211と記憶部212が設けられている。
(主制御部)
主制御部211は前述の各種制御を行う。特に、図3に示すように、主制御部211は、眼底カメラユニット2のOCT合焦駆動部31A、CCDイメージセンサ35および38、LCD39、光路長変更部41、光スキャナ42、OCT合焦駆動部43Aおよびフィルタ47、並びに、OCTユニット100の光源ユニット101、参照駆動部114A、検出器125およびDAQ130などを制御する。
OCT合焦駆動部31Aは、合焦レンズ31を光軸方向に移動させる。それにより、撮影光学系30の合焦位置が変更される。なお、主制御部211は、図示しない光学系駆動部を制御して、眼底カメラユニット2に設けられた光学系を3次元的に移動させることができる。この制御は、アライメントやトラッキングにおいて用いられる。トラッキングとは、被検眼Eの運動に合わせて装置光学系を移動させるものである。トラッキングを行う場合には、事前にアライメントとピント合わせが実行される。トラッキングは、被検眼Eを動画撮影して得られる画像に基づき被検眼Eの位置や向きに合わせて装置光学系をリアルタイムで移動させることにより、アライメントとピントが合った好適な位置関係を維持する機能である。
OCT合焦駆動部43Aは、測定光路の光軸に沿って合焦レンズ43を移動させる。それにより、測定光LSの合焦位置が変更される。測定光LSの合焦位置は、測定光LSのビームウェストの深さ位置(z位置)に相当する。
フィルタ47は、波長選択特性の変更が可能に構成される。この場合、主制御部211は、フィルタ47を制御することにより波長選択特性を変更し、フィルタ47を透過する測定光の波長帯を変更することができる。
参照駆動部114Aは、参照光路に設けられたコーナーキューブ114を移動させる。それにより、参照光路の長さが変更される。なお、前述したように、光路長変更部41と、コーナーキューブ114および参照駆動部114Aとのいずれか一方のみが設けられた構成であってもよい。
(記憶部)
記憶部212は、各種のデータを記憶する。記憶部212に記憶されるデータとしては、たとえば、OCT画像の画像データ、眼底像の画像データ、被検眼情報などがある。被検眼情報は、患者IDや氏名などの被検者に関する情報や、左眼/右眼の識別情報などの被検眼に関する情報を含む。また、記憶部212には、眼科撮影装置1を動作させるための各種プログラムやデータが記憶されている。
(画像形成部)
画像形成部220は、検出器125(DAQ130)からの検出信号に基づいて、眼底Efの断面像の画像データを形成する。すなわち、画像形成部220は、干渉光学系による干渉光LCの検出結果に基づいて被検眼Eの画像データを形成する。この処理には、従来のスウェプトソースタイプのOCTと同様に、ノイズ除去(ノイズ低減)、フィルタ処理、FFT(Fast Fourier Transform)などの処理が含まれている。このようにして取得される画像データは、複数のAライン(被検眼E内における各測定光LSの経路)における反射強度プロファイルを画像化することにより形成された一群の画像データを含むデータセットである。
画質を向上させるために、同じパターンでのスキャンを複数回繰り返して収集された複数のデータセットを重ね合わせる(加算平均する)ことができる。
画像形成部220は、たとえば、前述の回路基板を含んで構成される。なお、この明細書では、「画像データ」と、それに基づく「画像」とを同一視することがある。また、被検眼Eの部位とその画像とを同一視することもある。
(データ処理部)
データ処理部230は、画像形成部220により形成されたOCT画像に対して各種のデータ処理(画像処理)や解析処理を施す。たとえば、データ処理部230は、画像の輝度補正や分散補正等の補正処理を実行する。また、データ処理部230は、眼底カメラユニット2により得られた画像(眼底像、前眼部像等)に対して各種の画像処理や解析処理を施す。
データ処理部230は、断面像の間の画素を補間する補間処理などの公知の画像処理を実行することにより、被検眼Eのボリュームデータ(ボクセルデータ)を形成することができる。ボリュームデータに基づく画像を表示させる場合、データ処理部230は、このボリュームデータに対してレンダリング処理を施して、特定の視線方向から見たときの擬似的な3次元画像を形成する。
データ処理部230は、眼底像とOCT画像との位置合わせを行うことができる。眼底像とOCT画像とが並行して取得される場合には、双方の光学系が同軸であることから、(ほぼ)同時に取得された眼底像とOCT画像とを、撮影光学系30の光軸を基準として位置合わせすることができる。また、眼底像とOCT画像との取得タイミングに関わらず、OCT画像のうち眼底Efの相当する画像領域の少なくとも一部をxy平面に投影して得られる正面画像と、眼底像との位置合わせをすることにより、そのOCT画像とその眼底像とを位置合わせすることも可能である。この位置合わせ手法は、眼底像取得用の光学系とOCT用の光学系とが同軸でない場合においても適用可能である。また、双方の光学系が同軸でない場合であっても、双方の光学系の相対的な位置関係が既知であれば、この相対位置関係を参照して同軸の場合と同様の位置合わせを実行することが可能である。
以上のように機能するデータ処理部230は、たとえば、マイクロプロセッサ、RAM、ROM、ハードディスクドライブ、回路基板等を含んで構成される。ハードディスクドライブ等の記憶装置には、上記機能をマイクロプロセッサに実行させるコンピュータプログラムがあらかじめ格納されている。
(ユーザインターフェイス)
ユーザインターフェイス240には、表示部241と操作部242とが含まれる。表示部241は、前述した演算制御ユニット200の表示デバイスや表示装置3を含んで構成される。操作部242は、前述した演算制御ユニット200の操作デバイスを含んで構成される。操作部242には、眼科撮影装置1の筐体や外部に設けられた各種のボタンやキーが含まれていてもよい。また、表示部241は、眼底カメラユニット2の筺体に設けられたタッチパネルなどの各種表示デバイスを含んでいてもよい。
なお、表示部241と操作部242は、それぞれ個別のデバイスとして構成される必要はない。たとえばタッチパネルのように、表示機能と操作機能とが一体化されたデバイスを用いることも可能である。その場合、操作部242は、このタッチパネルとコンピュータプログラムとを含んで構成される。操作部242に対する操作内容は、電気信号として制御部210に入力される。また、表示部241に表示されたグラフィカルユーザインターフェイス(GUI)と、操作部242とを用いて、操作や情報入力を行うようにしてもよい。
OCTユニット100、コリメータレンズユニット40、フィルタ47、光路長変更部41、光スキャナ42、合焦レンズ43、ミラー44、およびリレーレンズ45は、この実施形態に係る「干渉光学系」の一例である。フィルタ47は、この実施形態に係る「波長選択部材」の一例である。
(フィルタ)
フィルタ47は、光源ユニット101から出力された光L0を分岐することにより得られた測定光LSのうち画像形成処理に供される波長帯の測定光のみを被検眼Eに入射させるために用いられる。ここで、「画像形成処理に供される波長帯の測定光のみ」は、被検眼Eの安全性が担保される範囲(被検眼Eへの入射光量が既定値以下である範囲)において当該波長帯以外の波長に起因する入射光量の増加を許容する趣旨である。
図4に、光源ユニット101の波長掃引型光源から出力された光L0の光量を模式的に示す。図4は、横軸に時間を表し、縦軸に光量を表している。波長掃引型光源は、所定の波長λ0〜λNの波長範囲の波長帯WL0で出力波長が時間の経過とともに変化する光L0を出力する。上記のように光源ユニット101は波長掃引型光源から出力された光L0に基づき光学的にクロックKCを生成するため、波長帯WL0のうちクロックKCの周波数が安定する波長λ1〜λ2(λ0<λ1<λ2<λN)の波長範囲の波長帯WL1の測定光が画像形成部220による画像形成処理に供される。この実施形態では、波長帯WL1は、干渉光LCの検出結果に基づくスペクトル分布に対するサンプリング範囲に基づきあらかじめ設定される。眼科撮影装置1は、波長帯WL1の測定光を用いてOCT計測を行う。フィルタ47を透過しなかった波長帯の測定光(図4の面積R1、R2に対応した光量)は画像形成処理に供されない。
眼科撮影装置1は、画像形成部220による画像形成処理に供される波長帯WL1の測定光のみを既定値の光量以下で被検眼Eに入射する。既定値は、眼科撮影装置1を構成する光学部材や制御内容や被検眼の安全性などを考慮して事前に決められる。これにより、被検眼の安全性を確保しつつ、図4の面積R1、R2に対応した光量分だけ光量を増加させた光L0を光源ユニット101から出力することで、図4の面積R3に対応する光量分だけ測定光の光量を増加させることができる。従って、被検眼の安全性を確保しつつ、眼科撮影装置1により取得された画像の画質を向上させることが可能になる。
このようなフィルタ47は、次のような位置に配置されることが望ましい。
図5に、この実施形態におけるフィルタ47の配置位置の説明図を模式的に示す。図5では、一部の光学部材の図示が省略されている。また、図5において、図1または図2と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
この実施形態では、フィルタ47は、たとえば、測定光LSと参照光LRとの分割位置から、波長掃引型光源に含まれるレーザ光源の共振器の共振器長の整数倍または半整数倍だけ光学的に離れた位置と異なる測定光の光路上の位置に配置される。測定光LSと参照光LRとの分割位置は、たとえば、ファイバカプラ105から測定光LSが出射される出射端の位置である。
より具体的には、測定光LSと参照光LRとの分割位置からフィルタ47の前面(光源ユニット101側の面)までの光学的な距離をLとし、測定光LSと参照光LRとの分割位置からフィルタ47の後面(光スキャナ42側の面)までの光学的な距離をL´とし、波長掃引型光源に含まれるレーザ光源の共振器の共振器長をCLとし、1以上の整数をnとすると、フィルタ47は、式(1)、式(2)を満たす測定光の光路上の位置に配置される。
式(1)、式(2)を満たす測定光の光路上の位置にフィルタ47を配置することにより、コヒーレンスリバイバル現象を回避し、眼科撮影装置1により取得された画像の画質の劣化を抑えることができる。
また、フィルタ47は、図1に示すように、光スキャナ42より光源ユニット101側に配置される。こうすることにより、光スキャナ42によるスキャン範囲内の測定光について波長選択を行う必要がなくなり、フィルタ47のサイズを小さくすることが可能になる。
また、フィルタ47は、図1に示すように、干渉光学系により光が平行光として導かれる光路上の位置に配置される。また、当該位置は、対物レンズ22等の光学素子により決まる瞳位置とすることが可能である。こうすることにより、結像位置での光学的な収差を最小限に抑えることが可能になる。
また、フィルタ47は、測定光の光路上において、被検眼Eの瞳孔と光学的な共役な位置と異なる位置に配置される。こうすることにより、戻り光のノイズを低減することが可能になる。
また、フィルタ47を透過する測定光の波長帯は、変更可能に構成されていてもよい。たとえば、フィルタ47は、互いに波長選択特性が異なる複数のフィルタ素子を備え、複数のフィルタ素子を択一的に測定光の光路に挿入可能に構成される。主制御部211は、複数のフィルタ素子のいずれかを測定光の光路に挿入させることにより、フィルタ47を透過する測定光の波長帯を変更することができる。
また、たとえば、フィルタ47は、測定光の入射角度の調整が可能なように、図1に示す測定光の光軸に対する傾斜角度が調整可能に配置される。傾斜角度を調整することによりフィルタ47に入射する測定光の波長に対する透過・反射特性が変化する。それにより、フィルタ47の波長選択特性を変更することが可能になる。従って、波長掃引型光源の発振波長帯域のばらつきに応じてフィルタ47の傾斜角度を調整することにより、フィルタ47は、当該ばらつきに対応した波長帯の測定光を透過させることができる。この場合、フィルタ47は、傾斜調整機構により当該光軸に対する傾斜角度が調整可能に保持される。たとえば、傾斜調整機構は、モータ等の駆動部により傾斜角度を変更する。主制御部211は、この駆動部を制御することにより傾斜調整機構に保持されたフィルタ47の傾斜角度を変更させることができる。具体的には、駆動部は、主制御部211からの制御を受け、傾斜調整機構を駆動する。駆動部は、傾斜調整機構を駆動するための駆動力を発生させるアクチュエータを含む。主制御部211からの制御信号を受けたアクチュエータは、この制御信号に応じた駆動力を発生させる。この駆動力は、図示しない駆動力伝達機構を介して傾斜調整機構に伝達され、制御信号により指示された傾斜角度に傾斜配置されるようにフィルタ47を傾斜させる。これにより、ユーザが操作部242に対して所定の操作を行うことで、光軸に対するフィルタ47の傾斜角度の変更が可能になる。
以上のように、フィルタ47を透過する測定光の波長帯を変更可能に構成することにより、波長掃引型光源の出力波長の誤差があった場合でも、被検眼の安全性の確保と測定光の光量増加による画質の向上とを図ることが可能になる。
なお、傾斜調整機構が操作部242に連結され、操作部242に対するユーザの操作に連動して、傾斜調整機構により保持されたフィルタ47の傾斜角度が変更されるように構成することも可能である。
[動作例]
眼科撮影装置1の動作について説明する。
図6に、眼科撮影装置1の動作例のフロー図を示す。この動作例には、画像に基づく被検眼Eと装置光学系との位置合わせの処理と、画像に基づく走査領域の設定処理とが含まれる。位置合わせの処理には、OCT計測のためのアライメント(オートアライメント)、ピント合わせ(オートフォーカス)、トラッキング(オートトラッキング)が含まれる。
(S1)
まず、観察光源11からの照明光(可視カットフィルタ14により近赤外光となる)で眼底Efを連続照明することにより、眼底Efの近赤外動画像の取得を開始する。この近赤外動画像は、連続照明が終了するまでリアルタイムで得られる。この動画像を構成する各フレームの画像は、フレームメモリ(記憶部212)に一時記憶され、データ処理部230に逐次送られる。
なお、被検眼Eには、アライメント光学系50によるアライメント指標と、フォーカス光学系60によるスプリット指標とが投影されている。よって、近赤外動画像にはアライメント指標とスプリット指標とが描出されている。これら指標を用いてアライメントやピント合わせを行うことができる。また、被検眼Eには、LCD39による固視標も投影されている。被検者は、この固視標を凝視するように指示を受ける。
(S2)
データ処理部230は、光学系によって被検眼Eを動画撮影することにより得られるフレームを逐次に解析して、アライメント視標の位置を求め、光学系の移動量を算出する。制御部210は、データ処理部230により算出された光学系の移動量に基づいて図示しない光学系駆動部を制御することにより、オートアライメントを行う。
(S3)
データ処理部230は、光学系によって被検眼Eを動画撮影することにより得られるフレームを逐次に解析して、スプリット視標の位置を求め、合焦レンズ31の移動量を算出する。制御部210は、データ処理部230により算出された合焦レンズ31の移動量に基づいてOCT合焦駆動部31Aを制御することにより、オートフォーカスを行う。
(S4)
続いて、制御部210は、オートトラッキングを開始する。具体的には、データ処理部230は、光学系によって被検眼Eを動画撮影することにより逐次に得られるフレームをリアルタイムで解析して、被検眼Eの動き(位置の変化)を監視する。制御部210は、逐次に取得される被検眼Eの位置に合わせて光学系を移動させるように図示しない光学系駆動部を制御する。それにより、被検眼Eの動きに対して光学系をリアルタイムで追従させることができ、アライメントとピントが合った好適な位置関係を維持することが可能となる。
(S5)
制御部210は、近赤外動画像を表示部241にリアルタイムで表示させる。ユーザは、操作部242を用いることにより、この近赤外動画像上に走査領域を設定する。設定される走査領域は1次元領域でも2次元領域でもよい。
なお、測定光LSの走査態様や注目部位(視神経乳頭、黄斑部、病変部等)があらかじめ設定されている場合などには、これら設定内容に基づいて制御部210が走査領域を設定するように構成することも可能である。具体的には、データ処理部230による画像解析により注目部位を特定し、制御部210が、この注目部位を含むように(たとえば、この注目部位が中心に位置するように)所定パターンの領域を設定する。
また、過去に実施されたOCT計測と同じ走査領域を設定する場合(いわゆるフォローアップ)、制御部210は、この過去の走査領域をリアルタイム近赤外動画像上に再現して設定することができる。その具体例として、制御部210は、過去の検査で設定された走査領域を表す情報(走査態様等)と、この走査領域が設定された近赤外眼底像(静止画、たとえばフレームでよい)とを対応付けて記憶部212に記憶させている(実用上は、患者IDや左右眼情報とも対応付けられる)。制御部210は、過去の近赤外眼底像と現在の近赤外動画像のフレームとの位置合わせを行い、過去の近赤外眼底像における走査領域に対応する現在の近赤外動画像中の画像領域を特定する。これにより、過去の検査で適用された走査領域が現在の近赤外動画像に対して設定される。
(S6)
制御部210は、光源ユニット101や光路長変更部41を制御するとともに、S5で設定された走査領域に基づいて光スキャナ42を制御することにより、眼底EfのOCT計測を行う。
画像形成部220は、上記のようにクロックKCに基づいて、検出器150により得られた検出信号をサンプリングすることにより得られた収集データに基づいて、当該Aラインの断層像(画像)を形成する。走査態様が3次元スキャンである場合、データ処理部230は、画像形成部220により形成された複数の断層像に基づいて眼底Efの3次元画像を形成する。以上で、この動作例は終了となる(エンド)。
測定光が用いられるS6では、光スキャナ42は、上記のように波長帯WL1の測定光のみを既定値の光量以下で被検眼Eをスキャンする。これにより、被検眼の安全性を確保しつつ、画像形成部220により形成された画像の画質を向上させることが可能になる。
なお、上記のS4、S5の順序を入れ替えてもよい。また、上記のS4、S5では、近赤外動画像を表示させ、この近赤外動画像上に走査領域を設定しているが、走査領域の設定態様はこれに限定されるものではない。たとえば、近赤外動画像における一のフレームの画像(基準画像と呼ぶ)を表示させるとともに、そのバックグラウンドでオートトラッキングを実行する。基準画像上に走査領域が設定されると、制御部210は、基準画像と、現にオートトラッキングに供されている画像との間の位置合わせを行うことにより、基準画像上に設定された走査領域に対応するリアルタイム近赤外動画像中の画像領域を特定する。この処理によっても上記S4、S5と同様にリアルタイム近赤外動画像中に走査領域を設定できる。さらに、この方法によれば、静止画像上に走査領域を設定することができるので、現にオートトラッキングされている動画像上に設定する場合よりも作業の容易化や確実化を図ることができる。
[作用・効果]
この実施形態に係る眼科撮影装置のいくつかの作用および効果について説明する。
実施形態の眼科撮影装置は、干渉光学系(たとえば、OCTユニット100、コリメータレンズユニット40、フィルタ47、光路長変更部41、光スキャナ42、合焦レンズ43、ミラー44、およびリレーレンズ45)と、画像形成部(たとえば、画像形成部220)とを含む。干渉光学系は、光源(たとえば、光源ユニット101の波長掃引型光源)からの光(たとえば、光L0)を測定光(たとえば、測定光LS)と参照光(たとえば、参照光LR)とに分割し、測定光を被検眼(たとえば、被検眼E)に入射させ、被検眼からの測定光の戻り光と参照光との干渉光(たとえば、干渉光LC)を検出する。画像形成部は、干渉光学系による干渉光の検出結果に基づいて被検眼の画像を形成する。干渉光学系は、波長選択部材(たとえば、フィルタ47)を含む。波長選択部材は、光源からの光の光路または測定光の光路に配置され、画像形成部による画像形成処理に供される波長帯(たとえば、波長帯WL1)の測定光のみを被検眼に入射させるために用いられる。眼科撮影装置は、この波長帯のみを含み光量が既定値以下の測定光を被検眼に入射させる。
ここで、「画像形成処理に供される波長帯の測定光のみ」は、被検眼の安全性と画質との間のトレードオフに関するものであり、安全性が担保される範囲において当該波長帯以外の波長に起因する入射光量の増加を許容する趣旨であって、実質的にこのような許容範囲を含む波長帯の測定光であること意味する。
このような構成によれば、画像形成部による画像形成処理に供される波長帯の測定光のみを既定値の光量以下で被検眼に入射することができるので、被検眼の安全性を確保しつつ、被検眼に入射する測定光の光量を、画像形成処理に供されない波長帯の測定光の光量分だけ増加させることが可能になる。これにより、被検眼の安全性を確保しつつ、眼科撮影装置により取得された画像の画質を向上させることが可能になる。
また、光源は、共振器を含むレーザ光源であり、波長選択部材は、測定光と参照光との分割位置から共振器の共振器長の整数倍または半整数倍だけ光学的に離れた位置と異なる測定光の光路上の位置に配置されていてもよい。
このような構成によれば、コヒーレンスリバイバル現象を回避し、眼科撮影装置により取得された画像の画質の劣化を抑えることが可能になる。
また、干渉光学系は、被検眼を測定光でスキャンするための光スキャナ(たとえば、光スキャナ42)を含み、波長選択部材は、光スキャナより光源側に配置されてもよい。
このような構成によれば、光スキャナによるスキャン範囲内の測定光について波長選択を行う必要がなくなり、波長選択部材のサイズを小さくすることが可能になる。これにより、眼科撮影装置の小型化や構成の簡素化が可能になる。
また、波長選択部材は、干渉光学系により光が平行光として導かれる光路上の位置に配置されてもよい。
このような構成によれば、上記の効果に加えて、結像位置での光学的な収差を抑えることが可能になる。
また、波長選択部材は、瞳位置に配置されてもよい。
このような構成によれば、結像位置での光学的な収差を最小限に抑えることが可能になる。
また、波長選択部材は、光軸に対する傾斜角度が調整可能に配置されてもよい。
このような構成によれば、光源の出力波長の誤差に応じて傾斜角度を調整することができ、被検眼に入射する測定光の波長帯を変更することが可能になる。従って、光源の出力波長に誤差があった場合でも、被検眼の安全性を確保しつつ、眼科撮影装置により取得された画像の画質を向上させることが可能になる。
また、波長帯を変更するために波長選択部材を制御する制御部(たとえば、制御部210または主制御部211)を含んでもよい。
このような構成によれば、波長帯を高精度に調整することが可能な眼科撮影装置を提供することが可能になる。
また、制御部は、光軸に対する波長選択部材の傾斜角度を変更することにより波長帯を変更するようにしてもよい。
このような構成によれば、光軸に対する傾斜角度を高精度に変更することができ、波長帯の高精度な調整が可能な眼科撮影装置を提供することが可能になる。
また、光源は、波長掃引型光源であり、波長帯は、干渉光の検出結果に基づくスペクトル分布に対するサンプリング範囲に基づきあらかじめ設定されてもよい。
このような構成によれば、被検眼の安全性を確保しつつ、画像の画質を向上させることができるスウェプトソースタイプのOCTを実行可能な眼科撮影装置を提供することが可能になる。
(変形例)
眼科撮影装置1が複数の動作モードを有し、動作モードに応じた波長帯の測定光を被検眼Eに入射することによりOCT計測を行う場合、フィルタ47を透過する波長帯WL1は、当該動作モードに応じて変更可能であってもよい。
本変形例に係る眼科撮影装置の構成および動作は、本実施形態に係る眼科撮影装置1の構成および動作とほぼ同様である。以下では、本変形例に係る眼科撮影装置について、本実施形態との相違点を中心に説明する。
図7に、本変形例に係る眼科撮影装置の制御系のブロック図の一例を示す。図7において、図3と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。本変形例に係る眼科撮影装置の制御系の構成が本実施形態に係る眼科撮影装置1の制御系の構成と異なる主な点は、主制御部211にモード切替部2111が設けられた点である。
本変形例に係る眼科撮影装置は、OCTユニット100(干渉光学系)および画像形成部220の少なくとも一方の動作内容が異なる複数の動作モードのいずれかでOCT計測を行い、切り替えられた動作モードで行われたOCT計測により被検眼Eの画像を取得することが可能である。モード切替部2111は、操作部242に対するユーザの操作を受け、複数の動作モードを切り替える。このような複数の動作モードには、撮影部位に応じた撮影モード、病変に応じた検査モード、スキャンパターンに応じた撮影モード、取得された画像に対する解析内容に応じた動作モード、OCT計測により得られた結果の出力態様に応じた動作モードなどがある。
本変形例に係る眼科撮影装置は、たとえば、撮影部位に応じた撮影モードとして、前眼部を撮影するための前眼部撮影モードと眼底を撮影するための眼底撮影モードのいずれかに切り替えることができるものとする。前眼部撮影モードでは、中心波長λaの第1波長帯の測定光によりOCT計測が行われ、眼底撮影モードでは、中心波長λb(λa>λb)の第2波長帯の測定光によりOCT計測が行われる。また、撮影モードに応じて発振波長帯域内のデータのサンプリング点数とサンプリング間隔とが変更され、断層像の表示領域が変更される。
主制御部211は、モード切替部2111により切り替えられた動作モードに応じて、フィルタ47を透過する測定光の波長帯を変更する。具体的には、モード切替部2111により前眼部撮影モードに切り替えられたとき、主制御部211は、第1波長帯の測定光を透過させるようにフィルタ47を制御する。また、モード切替部2111により眼底撮影モードに切り替えられたとき、主制御部211は、第2波長帯の測定光を透過させるようにフィルタ47を制御する。フィルタ47は、上記したように測定光の波長帯の変更が可能である。
また、光源ユニット101が第1波長帯および第2波長帯の光を出射可能な1以上の光源(波長掃引型光源)を備え、主制御部211は、フィルタ47を透過する測定光の波長帯の変更に応じて、光源ユニット101の光源の出力波長帯を変更するようにしてもよい。この場合、主制御部211は、1つの波長掃引型光源から出射する光の波長帯を変更するようにしてもよいし、互いに出力波長帯が異なる複数の波長掃引型光源を切り替えるようにしてもよい。
(作用・効果)
この実施形態の変形例に係る眼科撮影装置のいくつかの作用および効果について説明する。
眼科撮影装置において、制御部は、干渉光学系および画像形成部の少なくとも一方の動作内容が異なる複数のモードを切り替えるモード切替部(たとえば、モード切替部2111)を含み、モード切替部により切り替えられたモードに応じて、波長帯を変更するようにしてもよい。
このような構成によれば、互いに動作内容が異なる複数のモードで動作な場合であっても、モードに応じて波長選択部材により選択される測定光の波長帯を切り替えることができるので、複数のモードのそれぞれにおいて、被検眼の安全性を確保しつつ、眼科撮影装置により取得された画像の画質を向上させることが可能になる。
また、制御部は、波長帯の変更に応じて、光源の出力波長帯を変更するようにしてもよい。
このような構成によれば、波長選択部材により選択される測定光の波長帯の変更に応じて、光源の出力波長帯を変更することができるので、制御の簡素化と、波長帯を確実に変更できるため被検眼の安全性の確保とを図ることができる。
(その他の変形例)
実施形態におけるフィルタ47は、バンドパスフィルタ等からなる構成には限定されず、他の構成であってもよい。たとえば、ハイパスフィルタとローパスフィルタとの組み合わせや、2つのダイクロイックミラーの組み合わせなどによって構成されていてもよい。
また、波長掃引波長範囲(図4の波長帯WL0に相当)の一端と画像形成処理に供される波長範囲(図4の波長帯WL1に相当)の一端とが実質的に一致する場合には、実施形態に係るフィルタ47は、ハイパスフィルタ若しくはローパスフィルタ、または単一のダイクロイックミラーにより構成されていてもよい。フィルタ47は、波長選択部材として、画像形成処理に供される波長帯の測定光のみを被検眼に入射させる作用を達成するものであればその具体的構成を問わない。
以上に説明した構成は、この発明を好適に実施するための一例に過ぎない。よって、この発明の要旨の範囲内における任意の変形(省略、置換、付加等)を適宜に施すことが可能である。適用される構成は、たとえば目的に応じて選択される。また、適用される構成に応じ、当業者にとって自明の作用効果や、本明細書において説明された作用効果が得られる。