発明の背景
本特許出願は、先に出願された日本国特許出願である特願2013―189695(出願日:2013年9月12日)に基づく優先権の主張を伴うものである。この先の特許出願における全開示内容は、引用することにより本願発明の開示の一部とされる。
技術分野
本発明は、体内の水分を保持しにくい環境および/または状態にある対象のための体水分保持剤に関する。
背景技術
運動時や炎天下での作業時だけでなく、高温多湿の環境下では、睡眠などの室内の日常活動であっても、脱水症や熱中症が起こりやすい。特に、体液(水と電解質を含む体内の総水分量)が減少し、かつ水分の摂取に重要な食事量も低下しがちな高齢者や、温度の影響を受けやすい小児(0〜15歳)では、脱水症状が起きていることに気づきにくく、徐々に脱水症となっている、いわゆる、かくれ脱水からの熱中症が深刻な問題となっている。
熱中症の対策のためには、運動、作業、日常活動などにより発生した熱を、体外に効率的に放出(放熱)し、体温を調節する必要がある。そして、この放熱には、外気への熱伝導による熱放散を目的とした皮膚の血液流量の増加、および汗の蒸発による熱放散を目的とした発汗量の増加を伴うこととなる。そこで、熱中症の対策(予防および緩和)のためには、体内に水分を補給し、体内の水分を効率的に保持する必要がある。
スポーツドリンクは、運動によって消費される糖質などの炭水化物と、発汗によって失われる水分およびナトリウムなどの電解質を補給するための清涼飲料水の一種であり、様々な種類のものが市販されている。しかしながら、スポーツドリンクは、口当たりや喉越しなどの嗜好性も求められることから、糖質などの炭水化物、ミネラル、ビタミン、アミノ酸などの口当たりや喉越しなどに与える影響の少ない成分からなるものが多い。また、風味面からナトリウム濃度を低めに設定しているものが多い。
経口補水液(Oral Rehydration Solution、ORS)は、ナトリウムを大量に喪失する下痢を起こすコレラにおける脱水症を治療するために開発された飲料である。ナトリウムを多く含む飲料であり、体液よりも浸透圧が低い、ハイポトニック(低張液)となるように調整されているものが多い。しかしながら、嘔吐や下痢を伴うような病的な脱水症の治療のために設計された経口補水液を、健常者の運動、作業、日常活動における水分補給に用いると、場合によって、高ナトリウム血症を誘発し、長期的には、高血圧を誘発することがある。また、経口補水液では、ナトリウム濃度が高いため、塩味が強くて飲みづらいといった問題がある。
特許文献1には、消化器官障害を生じさせる物質により曝露された患者における、消化器官障害の発症または再発を予防または治療する方法であって、前記患者に乳タンパク質を含有する経口剤を投与する工程を含んでなる方法が開示されている。しかしながら、消化器官障害では、多量のナトリウムが失われるため、特許文献1に記載された組成物のナトリウム濃度は、ORSと同様に高く設定されている。
一方、これらの水分補給のための飲料では、水分の吸収は速いが、体内に水分を長時間で保持することはできないことが指摘されている。実際に、本発明者らがスポーツドリンクの摂取後の状態について調べたところ、その摂取後に尿として***される量(尿***量)が多いことが分かった(実施例2参照)。
このように、水分補給のための飲料は様々に知られていたが、その摂取後に尿として***されにくく、体内の水分を長時間で保持できる、水分の利用が効率的な体水分保持剤は、これまで知られていなかった。
本発明者らは今般、固形分として、少なくとも、タンパク質、灰分および炭水化物と、場合によって、脂質と、水とを含んでなる混合物を摂取すると、その摂取した水分が長時間で尿として排出されず、すなわち、体内に水分を長時間で保持できることを予想外にも見出し、体水分保持剤を開発した。また、この体水分保持剤は、嗜好性の高い、さっぱりとした風味(すっきりとした味わい)のものであった。本発明は、これらの知見に基づくものである。
よって、本発明は、体内の水分を効率的に保持できる体水分保持剤を提供することをその目的とする。
本発明によれば、以下の発明が提供される。
(1)タンパク質、灰分および炭水化物を含んでなる固形分を有効成分として含んでなる、体内の水分を保持しにくい環境および/または状態にある対象のための体水分保持剤であって、
固形分当たり、タンパク質含量が4.0〜98.4重量%、灰分含量が0.26〜76.9重量%、炭水化物含量が0.90〜94.8重量%である、体水分保持剤。
(2)固形分として、タンパク質、灰分および炭水化物と、水とを有効成分として含んでなる、体内の水分を保持しにくい環境および/または状態にある対象のための体水分保持剤であって、
体水分保持剤中のタンパク質含量が0.5〜9.0重量%、灰分含量が0.05〜2.0重量%、炭水化物含量が0.1〜10.0重量%である、体水分保持剤。
(3)固形分として、さらに脂質を含んでなり、体水分保持剤中の脂質含量が3.9重量%以下である、上記(2)に記載の体水分保持剤。
(4)タンパク質含量が4.0〜9.0重量%である、上記(2)または(3)に記載の体水分保持剤。
(5)対象への摂取間隔が摂取後から少なくとも0.5時間である、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の体水分保持剤。
(6)体内の水分を保持しにくい環境および/または状態にある対象が、高齢者または小児である、上記(1)〜(5)のいずれかに記載の体水分保持剤。
(7)脱水症または熱中症の予防および/または治療のために用いる、上記(1)〜(6)のいずれかに記載の体水分保持剤。
(8)タンパク質を0.5〜9.0重量%、灰分を0.05〜2.0重量%、炭水化物を0.1〜10.0重量%、かつ、水を79.0〜99.35重量%となるように調整および加熱殺菌してなる、長時間の体水分保持作用が付与された、包装容器詰の飲食品。
(9)タンパク質を0.5〜9.0重量%、灰分を0.05〜2.0重量%、炭水化物を0.1〜10.0重量%、脂質を3.9重量%以下、かつ、水を75.1〜99.35重量%となるように調整および加熱殺菌してなる、長時間の体水分保持作用が付与された、包装容器詰の飲食品。
(10)乳タンパク質を3.0〜9.0重量%、灰分を0.05〜2.0重量%、乳糖を3.0〜10.0重量%、乳脂肪を0.05〜3.0重量%、かつ、水を76.0〜93.9重量%となるように調整および加熱殺菌してなる、長時間の体水分保持作用が付与された、包装容器詰の乳飲料。
(11)固形分として、タンパク質、灰分および炭水化物と、水とを、同時または別々に、体内の水分を保持しにくい環境および/または状態にある対象に摂取させることを含んでなる、体水分保持方法(ヒトに対する医療行為を除く)であって、
固形分および水の全重量に対するタンパク質量が0.5〜9.0重量%、灰分量が0.05〜2.0重量%、炭水化物量が0.1〜10.0重量%である、体水分保持方法。
(12)固形分として、タンパク質、灰分および炭水化物と、水とを、同時または別々に、体内の水分を保持しにくい環境および/または状態にある対象に摂取させることを含んでなる、体水分保持方法であって、
固形分および水の全重量に対するタンパク質量が0.5〜9.0重量%、灰分量が0.05〜2.0重量%、炭水化物量が0.1〜10.0重量%である、体水分保持方法。
(13)固形分として、さらに脂質を含んでなり、固形分および水の全重量に対する脂質量が3.9重量%以下である、上記(11)または(12)に記載の体水分保持方法。
(14)タンパク質含量が4.0〜9.0重量%である、上記(11)〜(13)のいずれかに記載の体水分保持方法。
(15)対象への摂取間隔が摂取後から少なくとも0.5時間である、上記(11)〜(14)のいずれかに記載の体水分保持方法。
(16)体内の水分を保持しにくい環境および/または状態にある対象が、高齢者または小児である、上記(11)〜(15)のいずれかに記載の体水分保持方法。
(17)固形分として、タンパク質、灰分および炭水化物と、水とを、同時または別々に、体内の水分を保持しにくい環境および/または状態にある対象に摂取させることを含んでなる、脱水症または熱中症の予防および/または治療方法であって、
固形分および水の全重量に対するタンパク質量が0.5〜9.0重量%、灰分量が0.05〜2.0重量%、炭水化物量が0.1〜10.0重量%である、方法。
(18)固形分として、さらに脂質を含んでなり、固形分および水の全重量に対する脂質量が3.9重量%以下である、上記(17)に記載の方法。
(19)タンパク質含量が4.0〜9.0重量%である、上記(17)または(18)に記載の方法。
(20)対象への摂取間隔が摂取後から少なくとも0.5時間である、上記(17)〜(19)のいずれかに記載の方法。
(21)体内の水分を保持しにくい環境および/または状態にある対象が、高齢者または小児である、上記(17)〜(20)のいずれかに記載の方法。
本発明の体水分保持剤は、体内に水分を効率的に保持する効果を実現するとともに、嗜好性の高い、さっぱりとした風味を有する。したがって、本発明の体水分保持剤では、体内の水分を長期間で保持する作用を期待できるとともに、一息に大量摂取できる飲み心地が良好な製品形態として提供できる点で有利である。
図1は、水、スポーツ飲料または本発明の体水分保持剤の摂取後から4時間にわたるラットの尿***量の変化(累積量)を示したグラフである。
図2は、乳タンパク質濃縮物(MPC)が様々な濃度の水溶液の摂取後から4時間にわたるラットの尿***量の変化(累積量)を示したグラフである。
図3は、水、牛乳または本発明の体水分保持剤の摂取後から4時間にわたるラットの呼気ガス中に含まれる13CO2の割合の推移を示したグラフである。
図4は、水、牛乳または本発明の体水分保持剤の摂取後から4時間にわたるラットの尿***量の変化(累積値)を示したグラフである。
発明の具体的説明
本発明の体水分保持剤は、少なくとも、タンパク質、灰分および炭水化物を含んでなる固形分を有効成分として含んでなる、体内の水分を保持しにくい環境および/または状態にある対象への摂取あるいは投与のための体水分保持剤である。そして、本発明の体水分保持剤は、固形分として、さらに脂質を含んでいてもよい。
本発明の体水分保持剤は、後記所定量の水分を含むもののみならず、所定量の水分に満たない量の水分を含むものや、所定量の水分が実質的に除かれたものも包含する。本発明の体水分保持剤のうち所定量の水分に満たない水分量を含むものや、所定量の水分が実質的に除かれたものを摂取または投与する際には、必要とされる量の水分を当該体水分保持剤と同時または別々に摂取または投与する。
本発明の体水分保持剤は、後記所定量の水分を含んでなるものが、摂取または投与の便宜等の観点から好ましい。このような体水分保持剤は、所定量の水分を同時に摂取または投与するものとして、所定量の水分を含む混合物として調整されたものである。すなわち、本発明の好ましい態様によれば、固形分として、少なくとも、タンパク質、灰分および炭水化物、場合によって、脂質と、水とを有効成分として含んでなる、体内の水分を保持しにくい環境および/または状態にある対象への摂取あるいは投与のための体水分保持剤が提供される。
「有効成分」とは、体内の水分を保持しにくい環境および/または状態にある対象のための体水分保持効果を奏する上で必要とされる成分のことを意味する。
「体内の水分を保持しにくい環境および/または状態にある対象」とは、体液、すなわち、体内の水分および/または電解質が減少しやすい対象を意味し、例えば、筋力トレーニングなどの持続的な運動、炎天下などの屋外の作業、および睡眠などの屋内の日常活動、特に高温多湿の環境下の日常活動を行う対象が挙げられる。持続的な運動、屋外の作業または高温多湿の環境下の日常活動時には、脱水が起こりやすい。よって、本発明の体水分保持剤を摂取する対象には、脱水症や熱中症の予備軍(かくれ脱水の者など)および脱水症や熱中症を患う者が包含される。
本発明の体水分保持剤を摂取する対象には、体内の水分を保持することを必要とする対象であれば、特に制限されないが、ヒトの場合、具体的には、それぞれの対象の体重の1〜9重量%などに相当する水分を喪失することが予測される者である。ここで、発汗などの水分の喪失による体重の減少が1〜2重量%では、軽度の脱水症、3〜9重量%では、中等度の脱水症、10重量%以上では、高度の脱水症と分類される。また、この対象には、ヒト以外の動物(馬、牛などの家畜、犬、猫などの愛玩動物、動物園などで飼育されている鑑賞動物など)も包含される。
本発明の体水分保持剤は、所定量の水分と同時または別々に、体内の水分を保持することが必要な対象が摂取すると、長時間にわたり、体内の水分を保持することができる。ここで、「長時間」とは、体内の水分を保持しにくい環境および/または状態により適宜変動するが、所望の体水分保持効果を奏する時間を意味する。具体的には、「長時間」とは、通常の日常活動時において、好ましくは摂取後から2時間、より好ましくは摂取後から3時間、さらに好ましくは摂取後から4時間、さらに好ましくは摂取後から6時間、さらに好ましくは摂取後から7時間、特に好ましくは摂取後から8時間、本発明の体水分保持剤と、同時または別々に摂取する水分を、体内に保持できること意味する。
体水分保持効果(作用、機能)とは、本発明の体水分保持剤と同時または別々に摂取した水分の大半を、尿として排出せず、体内に長時間で保持できることを意味する。また、体水分保持作用とは、例えば、ラットの尿***量の比較試験により確認することができ、具体的には、試験液と純水の摂取後の時間において、試験液の水分と同量の純水を摂取した場合と比較して、試験液を摂取した場合、尿***量が少ないと有意であると判断することができる(実施例2参照)。ここで、純水を摂取した場合、摂取後から約2時間で、その摂取量の約80%が尿として排出される。そして、より具体的には、体水分保持作用とは、体水分保持率から確認することができ、体水分保持率(%)は、式1:[1−(尿***量/摂取量)]×100から算出することができる。
本発明の好ましい実施態様によれば、例えば、本発明の体水分保持剤では、摂取後から2時間において、体水分保持率は65%、好ましくは70%、より好ましくは80%、さらに好ましくは85%、さらに好ましくは90%、さらに好ましくは95%、さらに好ましくは96%、さらに好ましくは97%、さらに好ましくは98%、特に好ましくは99%、最も好ましくは100%である。
本発明の体水分保持剤は、体内の水分を長時間で保持する、すなわち、持続的な体水分保持効果を有するため、体内に十分な水分を摂取(投与)できれば、短時間のうちに何度も摂取する必要がない。したがって、本発明の体水分保持剤を体内の水分を保持することを必要とする対象に摂取させる(投与する)摂取(投与)間隔を、例えば、本発明の体水分保持剤の初回の摂取から次回の摂取までの間隔、または次回の摂取から次々回の摂取までの間隔を、少なくとも0.5時間とすることができる。前記摂取間隔は、好ましくは少なくとも1時間、より好ましくは少なくとも2時間、さらに好ましくは少なくとも3時間、さらに好ましくは少なくとも4時間、さらに好ましくは少なくとも5時間、さらに好ましくは少なくとも6時間、特に好ましくは少なくとも7時間、最も好ましくは少なくとも8時間とすることができる。また、本発明の体水分保持剤を体内の水分を保持することを必要とする対象に摂取させる(投与する)摂取回数は、特に制限されないが、体内に十分な水分を摂取(投与)できる、すなわち、補給できる限り、一回、すなわち、一息(一度)の摂取でよい。ここで、体内にとって十分な水分の摂取量は、体内の水分を保持しにくい環境および/または状態により適宜変動するが、ヒトの場合、50〜1000ml、好ましくは100〜1000ml、より好ましくは150〜1000ml、さらに好ましくは200〜1000ml、特に好ましくは250〜1000mlである。
本発明の体水分保持剤を、所定量の水分と同時または別々に、体内の水分を保持することを必要とする対象に摂取させる方法(あるいは投与する方法)は、経口摂取(あるいは経口投与)、経腸投与、胃ろうなどから、その対象および用途により、適宜選択することができるが、好ましくは経口摂取(あるいは経口投与)である。
本発明の体水分保持剤は、所定量の水分と同時または別々に摂取させることで、脱水症の予防および緩和、ひいては、熱中症の予防および緩和を実現することができる。すなわち、本発明の体水分保持剤は、脱水症または熱中症の予防剤および/または治療剤として用いることができる。
本発明に用いられる「固形分」は、少なくとも、タンパク質、灰分および炭水化物を含んでなり、場合によって、脂質を含んでなる。そして、本発明に用いられる「固形分」は、好ましくは、乳(牛乳など)に由来する固形分であり、具体的には、少なくとも、乳タンパク質、灰分および乳糖を含んでなり、場合によって、乳脂肪を含んでなる。ここで、本発明では、少なくとも、乳タンパク質、灰分および乳糖からなる乳に由来する固形分を「無脂乳固形分(SNF)」といい、少なくとも、乳タンパク質、灰分、乳糖および乳脂肪からなる乳に由来する固形分を「乳固形分」ということがある。なお、本発明の体水分保持剤では、固形分のうち、タンパク質、灰分および炭水化物の濃度(含量)が増えるほど、体水分保持効果(体水分保持作用)が高まることが確認されている(実施例3参照)。
本発明の体水分保持剤では、固形分は、固形分当たり、タンパク質含量が4.0〜98.4重量%、灰分含量が0.26〜76.9重量%、炭水化物含量が0.90〜94.8重量%であることが望ましい。
本発明に用いられる「タンパク質」は、その由来や形態は制限されないが、好ましくは、乳由来のタンパク質、すなわち、乳タンパク質である。なお、この「タンパク質」は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。そして、この「タンパク質」は、化学品(試薬など)のような高純度の成分を用いてもよいし、分離物や精製物のような混合成分を用いてもよい。ここで、タンパク質含量は、例えば、食品成分表などの公知の情報に基づいて算出してもよく、また、ケルダール法やローリー法などの慣用の方法によって測定して算出してもよい。実際に、ケルダール法の場合には、各種のタンパク質に含まれる窒素を測定し、その値に、窒素−タンパク質換算係数(通常 6.25)を乗じて算出することができる。
本発明に用いられる「乳タンパク質」は、乳由来のタンパク質であれば、特に制限されず、例えば、ホエイタンパク質、カゼインタンパク質、ホエイタンパク質分解物、カゼインタンパク質分解物、ペプチド、または非タンパク態窒素成分を特定の濃度(含量)で含んでいるものが挙げられる。この「乳タンパク質」は、別々に分離や精製された、ホエイタンパク質、カゼインタンパク質、ホエイタンパク質分解物、カゼインタンパク質分解物、ペプチド、または非タンパク態窒素成分を特定の濃度になるように混合して用いてもよいし、あるいは、別々に分離や精製されていない、ホエイタンパク質、カゼインタンパク質、ホエイタンパク質分解物、カゼインタンパク質分解物、ペプチド、または非タンパク態窒素成分を既に特定の濃度で含んでいる原料(素材)や飲食品などを用いてもよい。このとき、本発明に用いられる「乳タンパク質」では、ホエイタンパク質、カゼインタンパク質、ホエイタンパク質分解物、カゼインタンパク質分解物、ペプチド、非タンパク態窒素成分の分離工程や精製工程を必要とせず、それらの製造費が安価である点で、ホエイタンパク質、カゼインタンパク質、ホエイタンパク質分解物、カゼインタンパク質分解物、またはペプチドおよび非タンパク態窒素成分を既に特定の濃度で含んでいる原料や飲食品などを主要な成分とし、必要に応じて、別々に精製されたホエイタンパク質、カゼインタンパク質、ホエイタンパク質分解物、カゼインタンパク質分解物、またはペプチドおよび非タンパク態窒素成分を特定の濃度になるように混合して用いることが好ましい。
カゼインタンパク質と別々に分離や精製されたホエイタンパク質には、例えば、ホエイの原液(甘性ホエイ、酸ホエイなど)、その濃縮物、その乾燥物(ホエイ粉)、その凍結物など、およびこれらの還元溶液などを用いることができる。さらに、脱塩ホエイ、ホエイタンパク質濃縮物(WPC)、ホエイタンパク質精製物(WPI)、α―ラクトアルブミン(α−La)、β−ラクトグロブリン(β−Lg)、免疫グロブリン、ラクトフェリンなど、および、これらの還元溶液を用いることができる。なお、ホエイタンパク質分解物には、前記のカゼインタンパク質と別々に分離や精製されたホエイタンパク質の加水分解物など、および、この還元溶液などを用いることができる。そして、ホエイタンパク質と別々に分離や精製されたカゼインタンパク質には、例えば、カゼインの分離物(フレッシュチーズなどのナチュラルチーズ、ナトリウムカゼイネート、カルシウムカゼイネートなど)、その濃縮物、その乾燥物、その凍結物など、および、これらの還元溶液などを用いることができる。さらに、α−カゼイン、β−カゼイン、κ−カゼインなどの精製物、および、これらの還元溶液を用いることができる。なお、カゼインタンパク質分解物には、前記のホエイタンパク質と別々に分離や精製されたカゼインタンパク質の加水分解物など、および、この還元溶液などを用いることができる。また、ホエイタンパク質とカゼインタンパク質とを既に特定の濃度で含んでいる原料や飲食品には、例えば、生乳、殺菌乳(牛乳など)、脱脂乳、成分調整牛乳、加工乳、乳製品(濃縮乳、粉乳、練乳、発酵乳(ヨーグルトなど)、乳酸菌飲料、プロセスチーズ類、アイスクリーム類、クリーム類)、乳タンパク質濃縮物(MPC)、その濃縮物、その乾燥物、その凍結物、その加水分解物など、および、これらの還元溶液などを用いることができる。このとき、これらには、市販品を入手して用いてもよいし、自ら調製して用いてもよい。
本発明の体水分保持剤では、タンパク質含量は、所定量の水分を含む混合物として調整した場合、体水分保持剤当たり0.5〜9.0重量%が望ましい。このとき、本発明の体水分保持剤では、タンパク質含量が多いほど、体水分保持効果が高まる点で、タンパク質含量は、体水分保持剤当たり好ましくは3.0重量%以上、より好ましくは3.3重量%以上、さらに好ましくは3.6重量%以上、さらに好ましくは3.8重量%以上、特に好ましくは4.0重量%以上、最も好ましくは4.3重量%以上である。一方、本発明の体水分保持剤では、さっぱりとした風味とする点で、タンパク質含量は、体水分保持剤当たり好ましくは8.5重量%以下、より好ましくは7.5重量%以下、さらに好ましくは7.0重量%以下、特に好ましくは6.0重量%以下、最も好ましくは5.0重量%以下である。具体的には、本発明の体水分保持剤では、タンパク質含量は、所定量の水分を含む混合物として調整した場合、好ましくは体水分保持剤当たり3.3〜9.0重量%、より好ましくは3.6〜9.0重量%、さらに好ましくは3.8〜9.0重量%、さらに好ましくは4.0〜9.0重量%、さらに好ましくは4.0〜8.5重量%、さらに好ましくは4.0〜7.5重量%、さらに好ましくは4.0〜7.0重量%、さらに好ましくは4.0〜6.0重量%、特に好ましくは4.3〜6.0重量%、最も好ましくは4.3〜5.0重量%である。
本発明に用いられる「灰分」は、その由来や形態は制限されず、例えば、カルシウム、カリウム、マグネシウム、ナトリウム、銅、鉄、マンガン、亜鉛、セレンが挙げられる。そして、この「灰分」は、腸管からの水分の吸収性を高める点で、好ましくは、ナトリウムイオン、カルシウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオンなどの電解質を含むものである。ここで、灰分含量は、例えば、食品成分表などの公知の情報に基づいて算出してもよく、また、慣用の方法によって測定して算出してもよい。本発明に用いられる「灰分」は、化学品(試薬など)のような高純度の成分を用いてもよいし、灰分を含んでいる原料や飲食品を用いてもよく、例えば、乳に由来する灰分を含んでいる乳原料や乳製品を用いてもよい。あるいは、この「灰分」は、灰分として公知の食品添加物を所望の濃度となるように用いてもよい。なお、本発明の体水分保持剤では、灰分を強化することで、カルシウムによる骨強化などの機能性を付加することができる。
本発明の体水分保持剤では、灰分含量は、所定量の水分を含む混合物として調整した場合、体水分保持剤当たり0.05〜2.0重量%が望ましい。このとき、本発明の体水分保持剤では、灰分含量が体水分保持剤当たり2.0重量%以下であると、灰分に由来する塩味や雑味が弱くなる傾向が見られ、灰分含量が体水分保持剤当たり0.05重量%以上であると、腸管からの水分の吸収性が高くなる点で好ましい。そこで、本発明の体水分保持剤では、灰分に由来する塩味や雑味を感じることなく、さっぱりとした風味となり、かつ腸管からの水分の吸収性が高くなる点で、灰分含量は、所定量の水分を含む混合物として調整した場合、好ましくは体水分保持剤当たり0.1〜2.0重量%、より好ましくは0.2〜1.8重量%、さらに好ましくは0.25〜1.5重量%、特に好ましくは0.3〜1.3重量%、最も好ましくは0.35〜1.0重量%である。
本発明に用いられる「炭水化物」は、その由来や形態は制限されず、例えば、乳糖、砂糖、果糖、ブドウ糖、マルトース、オリゴ糖、デキストリン、澱粉、食物繊維が挙げられる。そして、この「炭水化物」は、長時間にわたる体水分保持効果を高める点で、好ましくは、乳糖である。なお、この「炭水化物」は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。ここで、炭水化物含量は、例えば、食品成分表などの公知の情報に基づいて算出してもよく、また、慣用の方法によって測定して算出してもよい。本発明に用いられる「炭水化物」は、化学品(試薬など)のような高純度の成分を用いてもよいし、炭水化物を含んでいる原料や飲食品を用いてもよく、例えば、乳に由来する炭水化物(主成分が乳糖である)を含んでいる乳原料や乳製品を用いてもよい。あるいは、この「炭水化物」は、炭水化物として公知の食品添加物を所望の濃度となるように用いてもよい。
本発明の体水分保持剤では、炭水化物含量は、所定量の水分を含む混合物として調整した場合、体水分保持剤当たり0.05〜10.0重量%が望ましい。このとき、本発明の体水分保持剤では、炭水化物含量が体水分保持剤当たり0.05重量%以上や10.0重量%以下であると、炭水化物に由来する甘味や濃厚感が良好となるとともに、腸管からの水分の吸収性が高くなる点で好ましい。そこで、本発明の体水分保持剤では、炭水化物に由来する雑味を感じることなく、さっぱりとした風味となり、かつ腸管からの水分の吸収性が高くなる点で、炭水化物含量は、所定量の水分を含む混合物として調整した場合、好ましくは体水分保持剤当たり1.5〜9.0重量%、より好ましくは2.0〜8.5重量%、さらに好ましくは2.5〜8.0重量%、さらに好ましくは3.0〜7.5重量%、さらに好ましくは3.5〜7.0重量%、特に好ましくは4.0〜6.5重量%、最も好ましくは4.5〜6.0重量%である。
本発明に用いられる「脂質」は、その由来や形態は制限されず、その原料として、例えば、生乳、全脂濃縮乳、全脂粉乳、(生)クリーム、バター、植物油脂、魚油、ラード、ヘッド、中鎖トリアシルグリセロール油が挙げられる。そして、この「脂質」は、脂質に由来する甘味や濃厚感が良好となる点で、その原料として、好ましくは、生乳、全脂濃縮乳、全脂粉乳、(生)クリーム、バターであり、すなわち、好ましくは、乳脂肪である。なお、この「脂質」は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。ここで、脂質含量は、例えば、食品成分表などの公知の情報に基づいて算出してもよく、また、慣用の方法によって測定して算出してもよい。本発明に用いられる「脂質」は、脂質を含んでいる原料や飲食品を用いてもよく、例えば、乳に由来する脂質を含んでいる乳原料や乳製品を用いてもよい。あるいは、この「脂質」は、公知の食品添加物を所望の濃度となるように用いてもよい。
本発明の体水分保持剤では、脂質含量は、所定量の水分を含む混合物として調整した場合、体水分保持剤当たり3.9重量%以下が望ましい。このとき、本発明の体水分保持剤では、脂質を含んでいなくても、その体水分保持効果を発揮するが、脂質を含んでいると、脂質に由来する濃厚感を付与できる点で好ましい。そこで、本発明の好ましい実施態様によれば、本発明の体水分保持剤では、脂質含量は、所定量の水分を含む混合物として調整した場合、好ましくは体水分保持剤当たり0.3〜3.9重量%、より好ましくは0.5〜3.5重量%、さらに好ましくは0.8〜3.0重量%、特に好ましくは1.0〜2.5重量%、最も好ましくは1.2〜2.0重量%である。
炭水化物(糖質)、タンパク質および脂質からなる三大栄養素の中で、脂質の胃排出速度は一番遅いといわれている(中野昭一ら、学生のための生理学、医学書院、1995年発行)。したがって、従来、脂質含量を減らすと、胃排出速度が速くなり、すなわち、体内の水分保持時間は短くなると考えられていた。本発明者らは今般、脂質含量の多い牛乳に比較して、脂質含量の少ない乳飲料において、胃排出速度が遅くなること、すなわち、体内の水分保持作用が高まることを予想外にも見出した(実施例4参照)。このように、本発明者らは、脂質含量による体水分保持作用への影響は少ないことを見出した。
本発明の一つの実施態様によれば、本発明の体水分保持剤は、脂質を含まなくても、その効果を発揮するため、脂質の摂取量を制限する必要のある対象、例えば、生活習慣病や脂質代謝障害を患う対象に対して効率的な体水分保持作用を奏することができる。このとき、本発明の体水分保持剤は、好ましくは、脂質を含まないものであるが、その原料として、乳原料や乳製品を用いる場合、脂質を完全に除去することが困難であるため、本発明の体水分保持剤は、所定量の水分を含む混合物として調整した場合、脂質を少なくとも体水分保持剤当たり0.05重量%程度で含んでなるものである。具体的には、原料として、乳原料や乳製品を用いる場合、本発明の体水分保持剤の脂質含量は、所定量の水分を含む混合物として調整した場合、好ましくは体水分保持剤当たり0.05〜3.7重量%、より好ましくは0.05〜3.5重量%、さらに好ましくは0.05〜3.0重量%、さらに好ましくは0.05〜2.5重量%、さらに好ましくは0.05〜2.0重量%、さらに好ましくは0.05〜1.7重量%、さらに好ましくは0.05〜1.5重量%、特に好ましくは0.05〜1.3重量%、最も好ましくは0.05〜1.0重量%である。
「水」とは、体内の水分となるものを意味し、本発明の体水分保持剤と同時または別々に摂取されるものを意味し、例えば、純水が挙げられる。本発明の体水分保持剤を所定量の水分を含む混合物として調整した場合、所定量の水分は、体水分保持剤当たり75.1〜99.35重量%が望ましい。
本発明の好ましい実施態様によれば、本発明の体水分保持剤は、所定量の水分を含む混合物として調整した場合、体水分保持剤当たり、乳タンパク質含量が0.5〜9.0重量%であり、灰分含量が0.05〜2.0重量%であり、乳糖含量が0.1〜10.0重量%であり、かつ、乳脂肪含量が0.05〜3.9重量%である。この体水分保持剤では、牛乳と同等または同等以上に、すっきりとした味わいを有する。
本発明のより好ましい実施態様によれば、本発明の体水分保持剤は、所定量の水分を含む混合物として調整した場合、体水分保持剤当たり、乳タンパク質含量が3.0〜9.0重量%であり、灰分含量が0.05〜2.0重量%であり、乳糖含量が3.0〜10.0重量%であり、かつ、乳脂肪含量が0.05〜3.0重量%である。この体水分保持剤では、牛乳と同等または同等以上に、すっきりとした味わいを有する。そして、この体水分保持剤では、牛乳に比較して、脂質が少ないにも関わらず、胃排出速度が遅く、体水分保持作用が高まっている。
本発明のさらに好ましい実施態様によれば、本発明の体水分保持剤は、所定量の水分を含む混合物として調整した場合、体水分保持剤当たり、乳タンパク質含量が4.0〜9.0重量%であり、灰分含量が0.05〜2.0重量%であり、乳糖含量が4.0〜10.0重量%であり、かつ、乳脂肪含量が0.05〜2.5重量%である。この体水分保持剤では、牛乳に比較して、タンパク質が多いにも関わらず、牛乳と同等または同等以上に、すっきりとした味わいを有する。そして、この体水分保持剤では、牛乳に比較して、脂質が少ないにも関わらず、胃排出速度が遅く、体水分保持作用が高まっている。
本発明の体水分保持剤は、その効果が奏される限り、所定量の水分を含む形態、あるいは所定量の水分に満たない量の水分を含む混合物としての形態(液状形態)であっても、所定量の水分が実質的に除かれた形態(乾燥形態)であってもよく、例えば、固体状(粉末状、顆粒状、カプセル状、ブロック状など)、液状、ゲル状、糊状、ペースト状などの形態をとることができる。本発明の体水分保持剤では、固体状の場合には、水分を別にすることができるため保存性や携帯性を高めることができるが、液状であっても、後記するように耐熱効果があるため加工適性が良好であり、その結果、保存性は高いといえる。
本発明の一つの実施態様によれば、本発明の体水分保持剤では、固形分として、タンパク質、灰分および炭水化物と、場合によって、脂質を含み、該固形分が一食あたり0.07g以上/kg体重となるように摂取されることが望ましく、好ましくは0.1〜4.4g/kg、より好ましくは0.2〜2.7g/kg、さらに好ましくは0.2〜1.8g/kg、特に好ましくは0.2〜0.9g/kgとなるように摂取される。ここで、対象の代表的な体重は、60kgと見積もっている。なお、本発明の体水分保持剤では、その一食摂取量は、水分を含む混合物として調製した場合、例えば、100〜1000mlとなるように水分含量を適宜調整することができる。
本発明の別の実施態様によれば、例えば、本発明の体水分保持剤は、一食あたりの単位包装形態からなり、該単位包装形態中に、固形分として、少なくとも、タンパク質、灰分および炭水化物と、場合によって、脂質を含み、一食摂取量として固形分の重量で4〜26gに調整したものが望ましく、好ましくは2〜16g、より好ましくは2〜13g、さらに好ましくは2〜11gに調整してなるものである。ここで、「一食あたりの単位包装形態」からなるとは、一食あたりの摂取量があらかじめ定められた形態のものであり、例えば、特定量を経口摂取し得る飲食品として、一般食品のみならず、飲料(ドリンク剤など)、健康補助食品、保健機能食品、サプリメントなどの形態を意味する。「一食あたりの単位包装形態」では、例えば、液状の飲料、ゲル状・糊状・ペースト状のゼリー、粉末状・顆粒状・カプセル状・ブロック状の固体状の食品などの場合には、金属缶、ガラスビン(ボトルなど)、プラスティック容器(ペットボトルなど)、パック、パウチ、フィルム容器、紙箱などの包装容器で特定量(用量)を規定できる形態、あるいは、一食あたりの摂取量(用法、用量)を包装容器やホームページなどに表示することで特定量を規定できる形態が挙げられる。なお、本発明の体水分保持剤では、その一食摂取量は、水分を含む混合物として調製した場合、例えば、100〜1000mlとなるように水分含量を適宜調整することができる。
本発明の別の実施態様によれば、例えば、本発明の体水分保持剤では、その形態がいわゆる健康ドリンクである場合には、4〜26gの前記固形分が懸濁あるいは溶解された飲料が一食あたり飲み切り容量(用量)で、100〜1000mlとなるように水分含量で調整して、例えば、金属缶、ガラスビン(ボトルなど)、プラスティック容器(ペットボトルなど)の包装容器に入れられている(充填されている)形態が挙げられる。あるいは、4〜26gの前記固形分が懸濁あるいは溶解された飲料が一食あたり摂取量(用法、用量)(例えば、100〜1000ml)を包装容器やホームページなどに表示して、数食分(数回分)を一括した容量で、大容量の包装容器などに入れられている形態が挙げられる。
本発明の体水分保持剤は、所定の成分を含むように製造される限り、その製造工程(製造手順)は制限されないが、例えば、牛乳、成分調整牛乳、加工乳、乳飲料などの製造工程に基づいて製造することができる。本発明の体水分保持剤は、例えば、公知の製造方法(製造手法)に従って、生乳(原乳)、殺菌乳、濃縮乳、粉乳、還元乳に対して、乳タンパク質や乳脂肪などの各種成分を配合(調整)することで製造することができるし、あるいは、成分調整牛乳や加工乳(低脂肪乳や無脂肪乳など)に対して、乳タンパク質や乳脂肪などの各種成分を配合(調整)することで製造することもできる。
本発明の一つの実施態様によれば、例えば、本発明の体水分保持剤では、体水分保持剤を含んでなる組成物を提供することができる。すなわち、本発明の体水分保持剤では、そのまま単独で使用することができるが、体水分保持機能が発揮される限りにおいて、飲食品や医薬品などの種々の経口摂取用(経口投与用)の組成物に対して、原料(素材)や添加剤などとして含ませることもでき、持続的な体水分保持効果を有する組成物(例えば、医薬組成物や飲食品組成物)を得ることができる。よって、本発明の一つの実施態様によれば、本発明の体水分保持剤を含んでなる組成物が提供される。
「飲食品」(飲食品組成物)とは、医薬品(医薬組成物)以外のものであって、溶液、懸濁液、乳濁液、粉末、固体成形物など、経口摂取可能な形態であればよく、特に限定されない。飲食品とは、具体的には、即席麺、レトルト食品、缶詰、電子レンジ食品、即席スープ・みそ汁類、フリーズドライ食品などの即席食品類;清涼飲料、果汁飲料、野菜飲料、豆乳飲料、コーヒー飲料、茶飲料、粉末飲料、濃縮飲料、アルコール飲料などの飲料類;パン、パスタ、麺、ケーキミックス、パン粉などの小麦粉製品;飴、キャラメル、チューイングガム、チョコレート、クッキー、ビスケット、ケーキ、パイ、スナック、クラッカー、和菓子、デザート菓子などの菓子類;ソース、トマト加工調味料、風味調味料、調理ミックス、たれ類、ドレッシング類、つゆ類、カレー・シチューの素類などの調味料;加工油脂、バター、マーガリン、マヨネーズなどの油脂類;乳飲料、発酵乳(ヨーグルトなど)、乳酸菌飲料、ナチュラルチーズ、プロセスチーズ類、アイスクリーム類、クリーム類などの乳製品;農産缶詰、ジャム・マーマレード類、シリアルなどの農産加工品;冷凍食品などが挙げられる。
また、飲食品には、健康食品、機能性食品、栄養補助食品、特定保健用食品、病者用の食品、乳幼児用の調整粉乳、妊産婦用もしくは授乳婦用の粉乳、または持続的な体水分保持のために用いられる物である旨の表示を付した飲食品のような分類のものも包含される。
「医薬品」(医薬組成物)とは、製剤化のために許容されうる添加剤を併用して、常法に従って、経口製剤または非経口製剤として調製したものである。医薬品が経口製剤の場合には、錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤、丸剤、徐放剤などの固形製剤、溶液、懸濁液、乳濁液などの液状製剤の形態をとることができる。また、医薬品が非経口製剤の場合には、注射剤や座剤の形態をとることができる。なお、患者への摂取(投与)の簡易性の点からは、医薬品では、経口製剤であることが好ましい。ここで、製剤化のために許容されうる添加剤には、例えば、賦形剤、安定剤、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、滑沢剤、甘味料、着色料、香料、緩衝剤、酸化防止剤、pH調整剤などが挙げられる。
本発明の体水分保持剤は、耐熱性(熱安定性)が高く、耐熱効果を奏する。ここで、耐熱効果を奏するとは、特定の温度で処理しても、タンパク質が熱変性により固化(凝集)しないことを意味し、具体的には、牛乳の一般的な加工処理で用いられる条件や方法にて加熱殺菌しても、タンパク質が熱変性しないことを意味する。すなわち、耐熱効果を奏するとは、本発明の体水分保持剤では、より具体的には、62〜65℃、30分間で加熱殺菌(LTLT処理:低温長時間加熱)するか、あるいは、これと同程度以上の殺菌効果を有する方法として、例えば、120〜150℃、1〜30秒で加熱殺菌(UHT処理:超高温加熱)するか、72℃以上、15秒以上で加熱殺菌(HTST処理:高温短時間加熱)するか、75℃以上、15分以上で加熱殺菌するなどしても、タンパク質が熱変性しにくいことを意味する。このとき、加熱殺菌の方法には、タンクなどを用いて処理液を攪拌しながら加熱保持するバッチ式、プレート式熱交換器やチューブ式熱交換器を用いた間接加熱方式、スチームインジェクション式加熱装置やスチームインフュージョン式加熱装置を用いた直接加熱方式、ジュール加熱装置などを用いた通電加熱方式などの公知の方法を用いることができる。
本発明の体水分保持剤は、耐熱効果を奏する。したがって、本発明の体水分保持剤を配合(添加、混合)した組成物では、本発明の体水分保持剤が耐熱効果を奏することから、好ましくは、液状の製品形態として提供することができると共に、ホットベンダーなどを用いた加温販売用の製品形態として提供することができる。
また、本発明の体水分保持剤を配合(添加、混合)した組成物の形態は、その効果が奏される限り、本発明の体水分保持剤の所定量の水分を含む混合物としての形態、あるいは所定量の水分に満たない量の水分を含む混合物としての形態(液状形態)であっても、所定量の水分が実質的に除かれた形態(乾燥形態)であってもよく、例えば、固体状(粉末状、顆粒状、カプセル状、ブロック状など)、液状、ゲル状、糊状、ペースト状などの形態をとることができる。本発明の体水分保持剤に含まれる水分が、所定量の水分に満たないものや、実質的に除かれたものを配合して組成物を提供する場合には、本発明の組成物を摂取または投与する際に、必要とされる量の水分を当該組成物と同時にまたは別々に摂取または投与することが望ましい。
本発明の好ましい実施態様によれば、タンパク質を0.5〜9.0重量%、灰分を0.05〜2.0重量%、炭水化物を0.1〜10.0重量%と、水分を79.0〜99.35重量%となるように調整(配合、添加、混合)および加熱殺菌してなる、長時間の体水分保持作用が付与された、飲食品およびその製造方法が提供される。また、本発明のより好ましい実施態様によれば、タンパク質を3.0〜9.0重量%、灰分を0.05〜2.0重量%、炭水化物を3.0〜10.0重量%と、水分を79.0〜93.95重量%となるように調整および加熱殺菌してなる、長時間の体水分保持作用が付与された、飲食品およびその製造方法が提供される。そして、本発明のさらに好ましい実施態様によれば、タンパク質を4.0〜9.0重量%、灰分を0.05〜2.0重量%、炭水化物を4.0〜10.0重量%と、水分を79.0〜91.95重量%となるように調整および加熱殺菌してなる、長時間の体水分保持作用が付与された、飲食品およびその製造方法が提供される。ここで、所定の成分に「調整(配合、添加、混合)および加熱殺菌」する操作(工程)とは、最終的に所定の成分に調整され、かつ殺菌される操作であればよく、特に限定されないが、必要な全部の成分を混合して所定の成分に調整してから一括して加熱殺菌する操作や、必要な個別の成分を別々に加熱殺菌してから混合して所定の成分に調整する操作などが挙げられる。したがって、本発明では、この調整(配合、添加、混合)と加熱殺菌の順番や回数は任意である。
このとき、前記飲食品(本発明の飲食品)は、好ましくは、包装容器詰の飲食品であり、より好ましくは加熱販売用の包装容器詰の飲食品である。すなわち、前記飲食品には、耐熱性があるため、これを加温販売しても、タンパク質が極端に変性することはない。したがって、前記飲食品では、暖かい飲食品として、冬場(特に寒冷の状況)の戸外などで提供することができ、消費者などに摂取(飲用)させることができる。そのため、新たなニーズに対応した体水分保持効果のある飲食品の実用化が期待できる。ここで、加温販売用の飲食品には、例えば、ホットベンダーに収納された、あるいは湯煎された、加温販売用の飲料や加温販売用の食品、ならびに、必要量を調理器具に入れて、ガスコンロ、電熱コンロ、マイクロウエーブなどで加熱された、加温販売用の飲料や加温販売用の食品が挙げられる。なお、加温販売では、一般的には30〜80℃前後または50〜80℃前後で保管される。
本発明の好ましい実施態様によれば、前記飲食品は、乳飲料である。前記飲食品には、耐熱性があるため、これを加熱殺菌などしても、タンパク質が極端に変性することがないためである。ここで、「乳飲料」とは、乳固形分(無脂乳固形分と乳脂肪分を合わせたもの)を3.0重量%以上で含む飲料を意味する。この乳飲料には、例えば、ビタミン、ミネラル、オリゴ糖、乳糖、果汁などを配合しうる。
本発明のより好ましい実施態様によれば、乳タンパク質を0.5〜9.0重量%、灰分を0.05〜2.0重量%、乳糖を0.1〜10.0重量%、乳脂肪分を0.05〜3.9重量%、かつ、水分を75.1〜99.3重量%となるように調整および加熱殺菌してなる、長時間の体水分保持作用が付与された、乳飲料およびその製造方法が提供される。本発明のさらに好ましい実施態様によれば、乳タンパク質を3.0〜9.0重量%、灰分を0.05〜2.0重量%、乳糖を3.0〜10.0重量%、乳脂肪分を0.05〜3.0重量%、かつ、水分を76.0〜93.9重量%となるように調整および加熱殺菌してなる、長時間の体水分保持作用が付与された、乳飲料およびその製造方法が提供される。本発明の特に好ましい実施態様によれば、乳タンパク質を4.0〜9.0重量%、灰分を0.05〜2.0重量%、乳糖を4.0〜10.0重量%、乳脂肪分を0.05〜2.5重量%、かつ、水分を76.5〜91.9重量%となるように調整および加熱殺菌してなる、長時間の体水分保持作用が付与された、乳飲料およびその製造方法が提供される。
本発明の飲食品(乳飲料を含む)の製造方法では、所定の成分を(所定の濃度)含むように飲食品が製造される限り、その製造工程(製造手順)は制限されないが、例えば、牛乳、成分調整牛乳、加工乳、乳飲料などの製造工程に基づいて製造することができる。本発明の飲食品は、例えば、公知の製造方法(製造手法)に従って、生乳(原乳)、殺菌乳、濃縮乳、粉乳、還元乳に対して、乳タンパク質や乳脂肪などの各種成分を配合(調整)することで製造することができるし、成分調整牛乳や加工乳(低脂肪乳や無脂肪乳など)に対して、乳タンパク質や乳脂肪などの各種成分を配合(調整)することで製造することもできる。
具体的には、本発明の飲食品(乳飲料を含む)の製造方法は、タンパク質を0.5〜9.0重量%、灰分を0.05〜2.0重量%、炭水化物を3.0〜10.0重量%、かつ、水分を75.1〜99.35重量%となるように調整する工程、および加熱殺菌する工程を含んでなる、長時間の体水分保持作用が付与された、包装容器詰の飲食品の製造方法である。
本発明の別の実施態様によれば、固形分として、タンパク質、灰分および炭水化物と、場合によって、脂質と、水とを、同時または別々に、体内の水分を保持しにくい環境および/または状態にある対象に摂取させることを含んでなる、体水分保持方法が提供される。
本発明の好ましい実施態様によれば、固形分として、タンパク質、灰分および炭水化物と、場合によって、脂質と、水とを、同時または別々に、体内の水分を保持しにくい環境および/または状態にある対象に摂取させることを含んでなる、体水分保持方法(ヒトに対する医療行為を除く)が提供される。ここで、「ヒトに対する医療行為」とは、医師等の処方を必要として、ヒトに対して医薬品を摂取させる(投与する)行為などを意味する。本発明の体水分保持方法は、本発明の体水分保持剤について、本願明細書に記載された内容に従って実施することができる。
本発明の一つの実施態様によれば、固形分としてタンパク質、灰分および炭水化物と、場合によって、脂質と、水とを、同時または別々に、体内の水分を保持しにくい環境および/または状態にある対象、好ましくは高齢者または小児に摂取させることを含んでなる、脱水症または熱中症の予防および/または治療方法が提供される。本発明の好ましい実施態様によれば、脱水症または熱中症の予防および/または治療方法はヒトに対する医療行為を除く方法である。本発明の脱水症または熱中症の予防および/または治療方法は、本発明の体水分保持方法について、本願明細書に記載された内容に従って実施することができる。
本発明の別の実施態様によれば、体内の水分を保持しにくい環境および/または状態にある対象の体水分を保持するための、タンパク質、灰分および炭水化物を含んでなる固形分を含んでなる体水分保持剤の使用が提供される。また、本発明の好ましい実施態様によれば、体内の水分を保持しにくい環境および/または状態にある対象の体水分を保持するための、固形分としてタンパク質、灰分および炭水化物と、場合によって、脂質と、水とを含んでなる体水分保持剤の使用が提供される。本発明の体水分保持剤の使用は、本発明の体水分保持剤について、本願明細書に記載された内容に従って実施することができる。
本発明の一つの実施態様によれば、体内の水分を保持しにくい環境および/または状態にある対象の体水分を保持するための、固形分としてタンパク質、灰分および炭水化物、場合によって脂質と、水との組合せの使用が提供される。ここで「組合せ」とは、固形分と、水との間の任意の関係を示し、例えば、固形分と水とを同時または別々に使用することを意味する。固形分は、固形分に含まれる全ての成分を混合物として使用してもよいし、固形分に含まれる成分を1種ずつ逐次使用してもよいし、2種以上を混合した後に残りの成分を逐次使用してもよい。本発明の組合せの使用は、本発明の体水分保持剤について、本願明細書に記載された内容に従って実施することができる。
本発明の別の実施態様によれば、脱水症または熱中症の予防/およびまたは治療のための、タンパク質、灰分および炭水化物を含んでなる固形分を含んでなる体水分保持剤の使用が提供される。また、本発明の好ましい実施態様によれば、脱水症または熱中症の予防/およびまたは治療のための、固形分としてタンパク質、灰分および炭水化物と、場合によって、脂質と、水とを含んでなる体水分保持剤の使用が提供される。本発明の体水分保持剤の使用は、本発明の体水分保持剤について、本願明細書に記載された内容に従って実施することができる。
本発明の一つの実施態様によれば、脱水症または熱中症の予防/およびまたは治療のための、固形分としてタンパク質、灰分および炭水化物と、場合によって、脂質と、水との組合せの使用が提供される。本発明の組合せの使用は、本発明の体水分保持剤について、本願明細書に記載された内容に従って実施することができる。
本発明の別の実施態様によれば、体内の水分を保持しにくい環境および/または状態にある対象の体水分を保持するための飲食品または医薬品の製造のための、タンパク質、灰分および炭水化物を含んでなる固形分を含んでなる体水分保持剤の使用が提供される。また、本発明の好ましい実施態様によれば、体内の水分を保持しにくい環境および/または状態にある対象の体水分を保持するための飲食品または医薬品の製造のための、固形分としてタンパク質、灰分および炭水化物と、場合によって、脂質と、水とを含んでなる体水分保持剤の使用が提供される。本発明の体水分保持剤の使用は、本発明の体水分保持剤について、本願明細書に記載された内容に従って実施することができる。
本発明の一つの実施態様によれば、体内の水分を保持しにくい環境および/または状態にある対象の体水分を保持するための飲食品または医薬品の製造のための、固形分としてタンパク質、灰分および炭水化物と、場合によって、脂質と、水との組合せの使用が提供される。本発明の組み合わせの使用は、本発明の体水分保持剤について、本願明細書に記載された内容に従って実施することができる。
本発明の一つの実施態様によれば、脱水症または熱中症の予防/およびまたは治療のための飲食品または医薬品の製造のための、タンパク質、灰分および炭水化物を含んでなる固形分を含んでなる体水分保持剤の使用が提供される。また、本発明の好ましい実施態様によれば、脱水症または熱中症の予防/およびまたは治療のための飲食品または医薬品の製造のための、固形分としてタンパク質、灰分および炭水化物と、場合によって、脂質と、水とを含んでなる体水分保持剤の使用が提供される。本発明の体水分保持剤の使用は、本発明の体水分保持剤について、本願明細書に記載された内容に従って実施することができる。
また、本発明の一つの実施態様によれば、脱水症または熱中症の予防/およびまたは治療のための飲食品または医薬品の製造のための、固形分としてタンパク質、灰分および炭水化物と、場合によって、脂質と、水との組合せの使用が提供される。本発明の組合せの使用は、本発明の体水分保持剤について、本願明細書に記載された内容に従って実施することができる。
ところで、ここでは具体的な実験結果などは省略するが、本発明の一つの実施態様によれば、単に優れた体水分保持作用(体水分保持効果)を発揮するだけでなく、併せて優れた筋肉合成促進作用(筋肉合成促進効果)も発揮することができる。そのため、本発明では、従来の補液やスポーツ飲料のような医薬品や飲食品などでは得られなかった特有の効果を期待できることとなる。
本発明を以下の実施例によって詳細に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
実施例1:乳飲料(調製乳)の調製(製造)
生乳(乳脂肪分 3.5重量%、無脂乳固形分 8.3重量%) 20重量%、脱脂粉乳(乳脂肪分 1重量%、無脂乳固形分 95.5重量%) 6.84重量%、無塩バター(乳脂肪分 82.6重量%、無脂乳固形分 1.2重量%) 0.56重量%、乳タンパク質濃縮物(MPC480、フォンテラ社、乳タンパク質 77.2重量%、乳脂肪分 1.2重量%、乳糖 9.2重量%、灰分 7.1重量%、水分 5.3重量%) 1.87重量%、水 70.73重量%を混合し、常法の牛乳の製造方法に従って、プレート式加熱殺菌装置を用いた間接加熱方式により、130℃、2秒間で加熱殺菌してから、10℃以下に冷却することで、乳飲料(調製乳)を得た。
この得られた乳飲料では全てにおいて、加熱によるタンパク質の固化により生じる沈殿物は見られなかった。
実施例2:乳飲料における体水分保持作用の評価(市販のスポーツ飲料との比較)
実験動物には、初期体重が210〜250gのSD系雄ラット(日本エスエルシー株式会社より入手した)を用いた。ラットでは、試験区(群)ごとで体重差が生じないように、7尾ずつで4つに分けた。全てのラットは、明期7時〜19時、暗期19時〜7時として、室温22±2℃の条件下にて、プラスティック製ケージ内で3匹ずつに収容して飼育された。
固形飼料(オリエンタル酵母工業株式会社製)を用いて、ラットを1週間で馴化し、20時間の絶食および4時間の絶水の後に、表1に示す各試験食(試験飲料)を、6mLで強制経口投与した。そして、この強制経口投与から4時間後まで30分ごとに、尿を採取し、その重量(尿***量)を測定した。ここで、試験区3では、実施例1で得られた乳飲料を用いた。
上記の試験は昼間に行われ、ラットは強制運動などに付されておらず、容器(デシケーター)で室温の環境下にあり、睡眠を含めた日常活動時のままの状態で用いられた。これらのラットでは、脱水症状を起こしておらず、胃の内容物がなく、胃内が空の状態である。
この得られた尿***量の数値を統計処理して、平均値±標準誤差を求めた。具体的には、Bartlettの検定を行い、等分散性を仮定できる場合には、Tukey−kramerの検定を行い、等分散性を仮定できない場合には、Steel−Dwassの検定を行った。これらの検定には、StatLight#04多群の比較(ユックムス株式会社)を使用した。この結果を図1に示す。
図1に示されるように、純水(試験区1)や市販のスポーツ飲料(試験区2)に比べて、乳飲料(試験区3)では、尿***量が有意に少なかった。このとき、各試験食の摂取から2時間後における体水分保持率は、試験区1では15.8%、試験区2では50%、試験区3では92.6%であった。すなわち、純水(試験区1)や市販のスポーツ飲料(試験区2)に比べて、乳飲料(試験区3)では、体内における水分の保持機能(体水分保持作用)が高いことが示された。
実施例3:タンパク質濃度の異なる乳飲料における体水分保持作用の評価
実験動物には、初期体重が190〜210gのSD系雌ラット(日本エスエルシー株式会社より入手した)を用いた。ラットでは、試験区(群)ごとで体重差が生じないように、6尾ずつで4つに分けた。全てのラットは、明期7時〜19時、暗期19時〜7時として、室温22±2℃の条件下にて、プラスティック製ケージ内で個体別に飼育された。
固形飼料(オリエンタル酵母工業株式会社製)を用いて、ラットを1週間で馴化し、20時間の絶食および4時間の絶水の後に、表2に示す各試験食(試験飲料)を、6mLで強制経口投与した。そして、この強制経口投与から4時間後まで15分ごとに、尿を採取し、その重量(尿***量)を測定した。ここで、試験区4〜7では、乳タンパク質濃縮物(MPC480、フォンテラ社、乳タンパク質77.2重量%、乳脂肪分1.2重量%、乳糖9.2重量%、灰分7.1重量%、水分5.3重量%)を注射用水(大塚製薬株式会社製)で希釈した溶液を用いた。
この得られた尿***量の数値を統計処理して、平均値±標準誤差を求めた。具体的には、Bartlettの検定を行い、等分散性を仮定できる場合には、Tukey−kramerの検定を行い、等分散性を仮定できない場合には、Steel−Dwassの検定を行った。これらの検定には、StatLight#04多群の比較(ユックムス株式会社)を使用した。この結果を図2に示す。
図2に示されるように、乳タンパク質濃縮物(MPC480)の濃度が高いほど、具体的には、乳タンパク質濃度、灰分濃度、乳糖濃度が高いほど、尿***量が少なかった。すなわち、乳タンパク質濃度、乳糖濃度、灰分濃度が高いほど、体内における水分の保持機能(体水分保持作用)が高いことが示された。
実施例4:乳飲料における胃排出速度と体水分保持作用の評価(牛乳との比較)
(1)乳飲料における胃排出速度の評価(牛乳との比較)
実験動物には、初期体重が170〜190gのSD系雌ラット(日本エスエルシー株式会社より入手した)を用いた。ラットでは、試験区(群)ごとで体重差が生じないように、6尾ずつで3つに分けた。全てのラットは、明期7時〜19時、暗期19時〜7時として、室温22±2℃の条件下にて、プラスティック製ケージ内で個体別に飼育された。
固形飼料(オリエンタル酵母工業株式会社製)を用いて、ラットを1週間で馴化し、16時間の絶食および4時間の絶食・絶水の後に、胃排出速度(水分の体内への取り込まれやすさ)を評価した。このとき、呼気試験マーカーとして、13C−酢酸(13Cラベルした酢酸、Cambridge Isotope Laboratories社)を用いた。具体的には、表3に示す各試験食(試験飲料)の27mlに、13C−酢酸の0.015mlを添加して混合したものを、6mLで強制経口投与し、胃排出速度を測定した。ここで、試験区10では、実施例1で得られた乳飲料を用いた。
ラットをチャンバーに移し、強制経口投与から70分後までは5分間隔で、呼気を経時的に採取し、その後には、強制経口投与から90分後、120分後、150分後、180分後、210分後、240分後に、呼気を経時的に採取した。これらの呼気の採取では、シリコンチューブを呼気採取装置の各チャンバーに挿入し、そのシリコンチューブから、ポンプ(Masterflex L/S、Cole−Palmer社製)を用いて、150ml/分の速度で吸引したものを、1.5分間/回で呼気採取バックに回収する方法を採用した。これらの得られた呼気採取バックについて、赤外分析装置(POC one、大塚電子社)を用いて、呼気中の13CO2を測定した。
この得られた呼気中の13CO2の数値を統計処理して、平均値±標準誤差を求めた。具体的には、Bartlettの検定を行い、等分散性を仮定できる場合には、Tukey−kramerの検定を行い、等分散性を仮定できない場合には、Steel−Dwassの検定を行った。これらの検定には、StatLight#04多群の比較(ユックムス株式会社)を使用した。この結果を図3に示す。
図3に示されるように、純水(試験区8)や牛乳(試験区9)に比べて、乳飲料(試験区10)では、各試験食の投与から50〜65分後における呼気中の13CO2−C値が有意に緩やかに減少し、各試験食の投与から70分後における呼気中の13CO2−C値が緩やかに減少する傾向が見られた。すなわち、純水(試験区8)や牛乳(試験区9)に比べて、乳飲料(試験区10)では、体内に摂取した成分の胃排出速度が遅く、それらが持続的に体内へ取り込まれることが示された。
(2)乳飲料における体水分保持作用の評価(牛乳との比較)
実験動物には、初期体重が170〜190gのSD系雌ラット(日本エスエルシー株式会社より入手した)を用いた。ラットでは、試験区(群)ごとで体重差が生じないように、6尾ずつで3つに分けた。全てのラットは、明期7時〜19時、暗期19時〜7時として、室温22±2℃の条件下にて、プラスティック製ケージ内で個体別に飼育された。
固形飼料(オリエンタル酵母工業株式会社製)を用いて、ラットを1週間で馴化し、20時間の絶食および4時間の絶水の後に、実施例4(1)と同様にして、表3に示す各試験食(試験飲料)を、6mLで強制経口投与した。そして、この経口投与から4時間後まで15分ごとに、尿を採取し、その重量(尿***量)を測定した。ここで、試験区10では、実施例1で得られた乳飲料を用いた。
この得られた尿***量の数値を統計処理して、平均値±標準誤差を求めた。具体的には、Bartlettの検定を行い、等分散性を仮定できる場合には、Tukey−kramerの検定を行い、等分散性を仮定できない場合には、Steel−Dwassの検定を行った。これらの検定には、StatLight#04多群の比較(ユックムス株式会社)を使用した。この結果を図4に示す。
図4に示されるように、牛乳(試験区9)に比べて、乳飲料(試験区10)では、各試験食の投与から15分後から120分後における尿***量が低いか低い傾向であった。このとき、各試験食の摂取から2時間後における体水分保持率は、試験区9では92.4%、試験区10では100%であった。すなわち、牛乳(試験区9)に比べて、乳飲料(試験区10)では、体内における水分の保持機能(体水分保持作用)が高いことが示された。
実施例5:乳飲料における風味の評価
(1)乳飲料における風味へのタンパク質濃度の影響の検証
60℃に加温した水に、下記の試料1または試料2の原料をそれぞれ溶解して調合液を調製し、それら調合液を常法に従って均質化(15MPa)してから殺菌(95℃、5分間)した後に冷却(5℃程度)した。その後に、下記の試料1および試料2を所定の割合で混合して、タンパク質濃度が3.7重量%、5.7重量%、7.8重量%、8.5重量%、9.0重量%、9.9重量%、12.0重量%の合計で7種類の乳飲料を製造し、それぞれの風味を評価した。
試料1: 脱脂濃縮乳(無脂乳固形分 32.7重量%、乳脂肪分 0.3重量%、乳タンパク質 11.6重量%) 22重量%、クリーム(無脂乳固形分 4.7重量%、乳脂肪分 47.0重量%、乳タンパク質 1.7重量%) 0.89重量%、乳タンパク質濃縮物(MPC480、無脂乳固形分 93.5重量%.乳脂肪分 1.2重量%、乳タンパク質 77.2重量%) 1.4重量%、水 75.71重量%を原料として使用した。この得られた試料1のタンパク質濃度は3.7重量%であった。
試料2: 脱脂濃縮乳(無脂乳固形分 32.7重量%、乳脂肪分 0.3重量%、乳タンパク質 11.6重量%) 14.6重量%、クリーム(無脂乳固形分 4.7重量%、乳脂肪分 47.0重量%、乳タンパク質 1.7重量%) 0.62重量%、乳タンパク質濃縮物(MPC480、無脂乳固形分 93.5重量%、乳脂肪分 1.2重量%、乳タンパク質 77.2重量%) 13.37重量%、水 71.48%を原料として使用した。この得られた試料2のタンパク質濃度は12.0重量%であった。
(タンパク質濃度の異なる乳飲料における風味の評価)
これら得られたタンパク質濃度が3.7重量%、5.7重量%、7.8重量%、8.5重量%、9.0重量%、9.9重量%、12.0重量%の7種類の乳飲料について、専門パネルの5名により、風味を評価した(官能検査を実施した)。この官能検査では、一般の牛乳(明治牛乳、株式会社 明治)を対照とし、すっきり感を指標にして評価した。具体的には、牛乳と比べて、すっきりしている場合には「5点」、牛乳と比べて、やや すっきりしている場合には「4点」、牛乳と同程度で、すっきりしている場合には「3点」、牛乳と比べて、やや すっきりしていない場合には「2点」、牛乳と比べて、すっきりしていない場合には「1点」と評点し、それぞれの乳飲料について、専門パネルの5名分の評点の平均値を算出した。この結果を表4に示す。
表4に示されるように、タンパク質(乳タンパク質)濃度が9.0重量%の乳飲料の評点は3点、タンパク質濃度が7.8重量%の乳飲料およびタンパク質濃度が8.5重量%の乳飲料の評点は4点、タンパク質濃度が5.7重量%の乳飲料の評点は4.5点、タンパク質濃度が3.6重量%の乳飲料の評点は5点であった。すなわち、タンパク質濃度が9.0重量%以下の乳飲料であれば、牛乳と同等または同等以上に、すっきりした風味となることがわかった。
(2)乳飲料における風味への脂質濃度の影響の検証
60℃に加温した水に、下記の試料3または試料4の原料をそれぞれ溶解して調合液を調製し、それら調合液を常法に従って均質化(15MPa)してから殺菌(95℃、5分間)した後に冷却(5℃程度)した。その後に、下記の試料3および試料4を所定の割合で混合して、脂肪濃度が0.3重量%、1.2重量%、1.7重量%、2.2重量%、3.1重量%、3.5重量%、3.8重量%、4.0重量%の合計で8種類の乳飲料を製造し、それぞれの風味を評価した。
試料3: 脱脂濃縮乳(無脂乳固形分 32.7重量%、乳脂肪分 0.3重量%、乳タンパク質 11.6重量%) 21.1重量%、クリーム(無脂乳固形分 4.7重量%、乳脂肪分 47.0重量%、乳タンパク質 1.7重量%) 0.42重量%、乳タンパク質濃縮物(MPC480、無脂乳固形分 93.5重量%.乳脂肪分 1.2重量%、乳タンパク質 77.2重量%) 2.85重量%、水 75.5%を原料として使用した。この得られた試料3の脂質濃度は0.3重量%であった。
試料4: 脱脂濃縮乳(無脂乳固形分 32.7重量%、乳脂肪分 0.3重量%、乳タンパク質 11.6重量%) 19.8重量%、クリーム(無脂乳固形分 4.7重量%、乳脂肪分 47.0重量%、乳タンパク質 1.7重量%) 8.3重量%、乳タンパク質濃縮物(MPC480、無脂乳固形分 93.5重量%.乳脂肪分 1.2重量%、乳タンパク質 77.2重量%) 2.82重量%、水 69.08重量%を原料として使用した。この得られた試料4の脂質濃度は4.0重量%であった。
(脂質濃度の異なる乳飲料における風味の評価)
これら得られた脂質濃度が0.3重量%、1.2重量%、1.7重量%、2.2重量%、3.1重量%、3.5重量%、3.8重量%、4.0重量%の8種類の乳飲料について、専門パネルの5名により、風味を評価した(官能検査を実施した)。この官能検査では、一般の牛乳(明治牛乳、株式会社 明治)を対照とし、すっきり感を指標にして評価した。具体的には、牛乳と比べて、すっきりしている場合には「5点」、牛乳と比べて、やや すっきりしている場合には「4点」、牛乳と同程度で、すっきりしている場合には「3点」、牛乳と比べて、やや すっきりしていない場合には「2点」、牛乳と比べて、すっきりしていない場合には「1点」と評点し、それぞれの乳飲料について、専門パネルの5名分の評点の平均値を算出した。この結果を表5に示す。
表5に示されるように、脂質(乳脂肪)濃度が3.9重量%の乳飲料および脂質濃度が3.8重量%の乳飲料の評点は3点、脂質濃度が3.1重量%の乳飲料および脂質濃度が3.5重量%の乳飲料の評点は4点、脂質濃度が0.3重量%の乳飲料、脂質濃度が1.2重量%の乳飲料、脂質濃度が1.7重量%の乳飲料および脂質濃度が2.2重量%の乳飲料の評点は5点であった。すなわち、脂質濃度が3.9重量%以下の乳飲料であれば、牛乳と同等または同等以上に、すっきりした風味となることがわかった。
(3)乳飲料における風味への灰分濃度の影響の検証
60℃に加温した水に、下記の試料5または試料6の原料をそれぞれ溶解して調合液を調製し、それら調合液を常法に従って均質化(15MPa)してから殺菌(95℃、5分間)した後に冷却(5℃程度)した。その後に、下記の試料5および試料6を所定の割合で混合して、灰分濃度が0.75重量%、1.0重量%、2.0重量%、2.5重量%、3.0重量%、4.0重量%の合計で6種類の乳飲料を製造し、それぞれの風味を評価した。
試料5: 脱脂濃縮乳(無脂乳固形分 32.7重量%、乳脂肪分 0.3重量%、乳タンパク質 11.6重量%、灰分 0.54重量%) 21.1重量%、クリーム(無脂乳固形分 4.7重量%、乳脂肪分 47.0重量%、乳タンパク質 1.7重量%、灰分 0重量%) 0.42重量%、乳タンパク質濃縮物(MPC480、無脂乳固形分 93.5重量%、乳脂肪分 1.2重量%、乳タンパク質 77.2重量%、灰分 0.2重量%) 2.84重量%、水 75.2%を原料として使用した。この得られた試料5のタンパク質濃度は4.6重量%、脂質濃度は0.5重量%、灰分濃度は0.74重量%であった。
試料6: 脱脂濃縮乳(無脂乳固形分 32.7重量%、乳脂肪分 0.3重量%、乳タンパク質 11.6重量%、灰分 0.54重量%) 21.1重量%、クリーム(無脂乳固形分 4.7重量%、乳脂肪分 47.0重量%、乳タンパク質 1.7重量%、灰分 0重量%) 0.42重量%、乳タンパク質濃縮物(MPC480、無脂乳固形分 93.5重量%.乳脂肪分 1.2重量%、乳タンパク質 77.2重量%) 2.84重量%、Ca製剤(炭酸カルシウム) 15.7%(灰分 3.27重量%)、水 59.51%を原料として使用した。この得られた試料5のタンパク質濃度は4.6重量%、脂質濃度は0.5重量%、灰分濃度は4.01重量%であった。
(灰分濃度の異なる乳飲料における風味の評価)
これら得られた灰分濃度が0.75重量%、1.0重量%、2.0重量%、2.5重量%、3.0重量%、4.0重量%の6種類の乳飲料について、専門パネルの5名により、風味を評価した(官能検査を実施した)。この官能検査では、一般の牛乳(明治牛乳、株式会社 明治)を対照とし、すっきり感を指標にして評価した。具体的には、牛乳と比べて、すっきりしている場合には「5点」、牛乳と比べて、やや すっきりしている場合には「4点」、牛乳と同程度に、すっきりしている場合には「3点」、牛乳と比べて、やや すっきりしていない場合には「2点」、牛乳と比べて、すっきりしていない場合には「1点」と評点し、それぞれの乳飲料について、専門パネルの5名分の評点の平均値を算出した。この結果を表6に示す。
表6に示されるように、灰分濃度が4.0重量%の乳飲料の評点は2点、灰分濃度が3.0重量%の乳飲料の評点は3点、灰分濃度が2.5重量%の乳飲料および灰分濃度が2.5重量%の乳飲料の評点は4点、灰分濃度が2.0重量%の乳飲料、灰分濃度が1.0重量%の乳飲料および灰分濃度が0.75重量%の乳飲料の評点は5点であった。すなわち、灰分濃度が3.0重量%以下の乳飲料であれば、牛乳と同等または同等以上に、すっきりした風味となることがわかった。