JP6419556B2 - 保持シール材及び排ガス浄化装置 - Google Patents
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Description
保持シール材が変質、飛散したり、風触を受けた場合、保持シール材を構成する無機繊維の量の減少に伴って面圧が低下するだけでなく、保持シール材から飛散した無機繊維が排ガス処理体の目詰りを引き起こしたりするという問題があった。
これに対して、保持シール材を構成する無機繊維が保持シール材の厚さ方向に対して平行に配向していると、保持シール材が圧縮された際に無機繊維が変形し、復元力に由来する反発によって保持シール材の面圧が発揮されることとなる。
すなわち、上記中間層の表面において、凸部の数が3個/5cm以上である本願発明の保持シール材は、無機繊維が保持シール材の厚さ方向に対して充分に配向しているといえる。そのため、本発明の保持シール材は、高い面圧を発揮することができる。
すなわち、上記凝集体の大きさが大きくなると、上記中間層の表面に形成される凹凸の大きさが大きくなり、凸部の高さ(凸部の頂点から第1の線分までの最短距離)が長くなる。
上記中間層の表面において、凸部の最大高さが1mmを超えると、保持シール材を構成する無機繊維の密度にムラが生じ、耐風触性が低下してしまう。
なお、無機繊維のうち、繊維長が200μm以下の繊維の割合は、40%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましく、25%以下であることがさらに好ましい。無機繊維のうち、繊維長が200μm以下の繊維の割合を40%以下とすることにより、排ガスの風圧によって飛散しやすい短繊維の割合を減らすことができるため、耐風触性の良好な保持シール材となる。そのため、耐風触性と良好な面圧とを両立させることができる。
無機繊維のうち、繊維長が200μm以下の繊維の割合が40%を超えると、無機繊維が排ガスの風圧によって飛散しやすく、充分な面圧を発揮できないことがある。また、無機繊維の平均繊維長が1500μmを超えると、保持シール材を構成する無機繊維の繊維長が長すぎて、製造工程における無機繊維同士の凝集体が大きくなりすぎて、保持シール材を構成する無機繊維の密度にムラが発生することがある。
また、繊維長が3000μm以上の無機繊維の割合が大きくなると、同様に、製造工程において無機繊維同士が凝集しすぎて、保持シール材を構成する無機繊維の密度にムラが発生することがある。従って、繊維長が3000μm以上の無機繊維の割合を20%以下とすることが好ましい。
保持シール材が有機バインダを含有することで、無機繊維同士を接続し、保持シール材の成形性を高めることができる。
有機バインダの含有量が2重量%未満である場合には、保持シール材を排ガス処理体に巻きつけた際に、保持シール材が割れてしまうことがあり、10重量%を超える場合には、保持シール材の面圧を発揮する効果は変わりないが、排ガスの熱によって発生する分解ガスの量が多くなり、周囲の環境に悪影響を与える可能性がある。
有機バインダのガラス転移温度が5℃以下であると、有機バインダにより形成される有機バインダ皮膜の強度を高くしつつ、皮膜伸度が高くて柔軟な皮膜となり、可撓性に優れた保持シール材とすることができる。そのため、保持シール材を排ガス処理体に巻きつける際等に保持シール材の表面が割れにくくなる。また、有機バインダ皮膜が硬くなり過ぎないため、無機繊維が破断した際に、無機繊維同士を繋ぎ止める効果を発揮し、無機繊維の飛散を抑制することができる。そのため、保持シール材を取り扱う、触媒コンバータへの組付け作業者の作業環境に悪影響を及ぼすことが低減できる。
保持シール材が無機バインダを含有することで、無機繊維同士の摩擦を高めることができ、面圧を向上させることができる。
無機バインダの含有量が0.1重量%未満である場合には、無機バインダの添加による面圧の向上がほとんどみられない。また、無機バインダの含有量が10重量%を超える場合、面圧の向上という効果はほとんど変わらないため、無機バインダの過剰な使用は、製造コストの観点から好ましくない。
無機繊維が、アルミナ繊維、シリカ繊維、アルミナシリカ繊維、ムライト繊維、生体溶解性繊維及びガラス繊維からなる群から選択された少なくとも1種から構成されていると、耐熱性、耐風触性等、本発明の保持シール材に要求される特性を充分に満足することができる。
本発明の排ガス浄化装置は、本発明の保持シール材を備えているため、排ガス処理体を安定的に保持することができる。
分級工程において繊維長が200μm未満の無機繊維を一部又は全部除去すると、無機繊維同士が緩く絡み合ったフロックを容易に形成することができる。そのため、無機繊維同士が充分に絡み合い、充分な面圧を発揮することのできる保持シール材を製造することができる。
繊維長が200μm以下の無機繊維の割合を40%以下とすることで、無機繊維同士が絡み合ったフロックがより形成されやすくなる。一方、繊維長が200μm以下の無機繊維の割合が40%を超えると、得られる保持シール材を構成する無機繊維が排ガスの風圧によって飛散しやすくなることがある。
分級された無機繊維の平均繊維長が200〜20000μmであると、無機繊維同士が緩く絡み合ったフロックを形成しやすくなるため、得られる保持シール材を構成する無機繊維同士の絡み合いに異方性が形成されにくく、強固な絡み合いとなりやすい。一方、分級された無機繊維の平均繊維長が20000μmを超えると、形成されるフロックの大きさが大きくなりすぎるため、保持シール材を構成する無機繊維の密度にムラが発生することがある。
以下、本発明の保持シール材について具体的に説明する。しかしながら、本発明は、以下の構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。
図1は、本発明の保持シール材の一例を模式的に示す斜視図である。
図1に示すように、保持シール材110は、所定の長手方向の長さ(以下、図1中、矢印Lで示す)、幅(図1中、矢印Wで示す)及び厚さ(図1中、矢印Tで示す)を有する平面視略矩形の平板形状のマットから構成されていてもよい。
なお、「平面視略矩形」とは、上記段差を含む概念である。また、平面視略矩形には、角部が90°以外の角度を有する形状も含まれる。
抄造法により得られたマットは複数の薄い層が積層されたような構造を有しているため、上記複数の薄い層を互いに剥離させることができる。本発明の保持シール材はマットを中間層が露出するように剥離した際の表面形状に特徴を有する。
本発明の保持シール材は、50×50mmの寸法に切断された試験片を用いて中間層の凹凸を評価する。試験片は、以下の手順によって剥離される。
試験片は抄造法により得られているため、試験片の切断面に、複数の薄い層が重なったような縞模様が確認できる。そこで、試験片のいずれか1つの角から、厚さ方向の中央付近に形成された複数の薄い層の隙間の1つに、薄板状の治具を差し込むことで、後述するクランプを差し込む隙間を形成する。上記治具を差し込む長さは、上記角から10mmまでとする。
上記角から10mmまでの領域のうち、試験片のいずれか一方の主面から上記中間層までの厚さ方向の領域をクランプで挟むようにして固定する。続いて、上記角から10mmまでの領域のうち、試験片の他方の主面から上記中間層までの厚さ方向の領域を別のクランプで挟むようにして固定する。上記2つのクランプをそれぞれ、引張試験機の両端に固定し、所定の力で引っ張ることで、試験片を剥離させて中間層を露出させる。このとき、一方のクランプは引張試験機に固定されており、もう一方のクランプを50mm/minの速度で動かす。
上記手順によって、試験片の中間層を露出させ、中間層表面の凹凸を評価することができる。また、上記手順中に試験片が破断しそうになった場合、クランプに代わって手動で試験片を固定し、試験片が破断しないように、試験片の両端を徐々に引っ張ることによって試験片を剥離させてもよい。
撮影した画像を以下の手順で解析することにより、保持シール材の中間層における凹凸を評価する。なお、試験片の画像は、露出させた中間層が上側、保持シール材の主面を構成していた面が下側となるよう配置する。
図2(a)を用いて、以下に、中間層の表面に形成された凹凸の程度を測定する方法を示す。
中間層が露出するように剥離された試験片10は、中間層の表面30に凹凸が形成された起伏面を有している。まず、中間層の表面30について、最も凹となる凹部31と、2番目に凹となる凹部32とを接続する第1の線分33を引く。線分を試験片の全長まで延長した際に、線分33よりも下側に中間層の表面30が露出していなければ、その線分が第1の線分33である。
続いて、中間層の表面30において、最も凸となる凸部34の頂点から第1の線分33に対して垂線35を引く。垂線35の長さ(図2(b)における両矢印hが示す長さ)は第1の線分33と最も凸となる凸部34との最短距離を示している。垂線35の長さを、その試験片における凸部の最大高さであるとみなして、凸部の最大高さ、及び、凸部の5cm当たりの個数を測定する。
なお、中間層の表面に形成された全ての凸部の頂点から第1の線分に対して垂線を引き、垂線の長さが最も長い凸部が、最も凸となる凸部である。
なお、凸部の個数は頂点の数でカウントする。
有機バインダを含んだエマルジョン液(有機バインダ溶液)を無機繊維に付着させて溶媒を除去することで、無機繊維に有機バインダを含有させることができる。
有機バインダの含有量が2重量%未満の場合、保持シール材に充分な可撓性を付与することができないことがあり、保持シール材を排ガス処理体に巻きつける際に、クラックが発生することがある。一方、有機バインダの含有量が10重量%を超える場合、排ガスの熱によって発生する分解ガスの量が多くなり、周囲の環境に悪影響を与える可能性がある。
凝集体を構成する有機バインダは、既に説明した上記有機バインダと同一であってもよく、異なっていてもよい。凝集体を構成する無機バインダは、既に説明した上記無機バインダと同一であってもよく、異なっていてもよい。
なお、溶媒中に分散する有機バインダと無機バインダの表面電荷が異なる場合には、有機バインダと無機バインダが自己凝集することもある。
有機バインダと無機バインダの自己凝集が充分でない場合には、凝集剤等を添加することによって有機バインダと無機バインダとを積極的に凝集させてもよい。
無機繊維が、アルミナ繊維、シリカ繊維、アルミナシリカ繊維、及び、ムライト繊維の少なくとも1種である場合には、耐熱性に優れているので、排ガス処理体が充分な高温に晒された場合であっても、変質等が発生することはなく、保持シール材としての機能を充分に維持することができる。また、無機繊維が生体溶解性繊維である場合には、保持シール材を用いて排ガス浄化装置を作製する際に、飛散した無機繊維を吸入等しても、生体内で溶解するため、作業員の健康に害を及ぼすことがない。
これらの化合物からなる生体溶解性繊維は、人体に取り込まれても溶解しやすいので、これらの無機繊維を含んでなるマットは人体に対する安全性に優れている。
また、シリカの含有量が60重量%未満では、柔軟性を有するシリカの含有量が少ないため構造的にもろく、また、生理食塩水に溶けやすい、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、及び、ホウ素化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物の割合が相対的に高くなるので生体溶解性繊維が生理食塩水に溶けやすくなりすぎる傾向にある。
なお、シリカの含有量は、SiO及びSiO2の量をSiO2に換算して算出したものである。
抄造法により得られるマットを構成する無機繊維の平均繊維長は、200〜20000μmであることが好ましく、300〜10000μmであることがより好ましく、500〜1500μmであることがさらに好ましい。
無機繊維の平均繊維長が200μm未満であると、無機繊維の繊維長が短すぎるため、もはや繊維としての特徴を実質上示さなくなり、マット状繊維集合体にしたときに繊維同士に好適な絡み合いが起こらず、充分な面圧を得ることが困難になる。さらに、排ガスの圧力によって無機繊維が飛散しやすく、耐風触性が低下することがある。
また、無機繊維の平均繊維長が20000μmを超えると、無機繊維の繊維長が長すぎるため、抄造工程で水に無機繊維を分散したスラリー溶液中の無機繊維同士の絡み合いが強くなりすぎるため、マット状繊維集合体としたときに無機繊維が不均一に集積しやすくなる。
なお、無機繊維のうち、繊維長が200μm以下の繊維の割合は、40%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましく、25%以下であることがさらに好ましい。
繊維長の測定は、ピンセットを使用して、マットから無機繊維が破断しないように抜き取り、光学顕微鏡を使用して繊維長を測定する。本明細書では、無機繊維300本を抜き取り、繊維長が200μm以下の繊維の割合及び平均繊維長を求める。
マットから無機繊維を採取する際には、必要に応じてマットを脱脂処理して水の中へ投入し、無機繊維同士の絡みをほぐしながら無機繊維が破断しないように採取しても良い。
保持シール材の厚さが2.0mm未満であると、保持シール材の面圧が排ガス処理体を保持するのに充分でなくなる。そのため、排ガス処理体が抜け落ちやすくなる。また、排ガス処理体に体積変化が生じた場合、保持シール材は排ガス処理体の体積変化を吸収しにくくなる。そのため、排ガス処理体にクラック等が発生しやすくなる。
また、保持シール材の嵩密度が0.30g/cm3を超えると、保持シール材が硬くなるため、排ガス処理体への巻き付け性が低下し、保持シール材が割れやすくなる。
面圧の測定には、マットを圧縮する板の部分に加熱ヒーターを備えた熱間面圧測定装置を使用し、室温状態で、サンプルの嵩密度(GBD)が0.3g/cm3となるまで圧縮すし、10分間保持した。なお、サンプルの嵩密度は、「嵩密度=サンプル重量/(サンプルの面積×サンプルの厚さ)」で求められる値である。
次に、サンプルを圧縮した状態で40℃/minの昇温速度で片面900℃、片面650℃まで昇温しながら、嵩密度が0.273g/cm3となるまで圧縮を開放する。そして、サンプルを温度片面900℃、片面650℃、嵩密度0.273g/cm3の状態で5分間保持する。
その後、1inch(25.4mm)/minの速度で嵩密度が0.3g/cm3となるまで圧縮する。嵩密度0.273g/cm3となるまでの圧縮の開放と、嵩密度0.3g/cm3となるまでの圧縮を1000回繰り返した後の嵩密度0.273g/cm3時の荷重を測定する。得られた荷重をサンプルの面積で除算することにより、面圧(kPa)を求める。
本発明の保持シール材の製造方法は、無機繊維を開繊する開繊工程と、上記開繊された無機繊維を分級する分級工程と、上記分級された無機繊維を溶媒、有機バインダ及び無機バインダと混合してスラリーを調製するスラリー調製工程と、上記スラリーを抄造して無機繊維集合体を得る抄造工程と、からなる保持シール材の製造方法であって、上記分級工程では、繊維長が200μm未満の無機繊維を一部又は全部除去することを特徴とする。
まず、開繊工程について説明する。
開繊工程では、無機繊維をフェザーミル等の粉砕機やパルパー等の撹拌機等により短繊維化(開繊ともいう)し、所望の繊維長に調整する。
溶融法により無機繊維を製造する方法としては、例えば、無機繊維を構成する材料(例えばケイ素とアルミニウム)を加熱して溶融し、溶融物を高速回転するホイール上に押し当てて繊維化する方法(スピニング法ともいう)や、溶融物に圧縮空気を押し当てることにより繊維化する方法(ブロー法ともいう)等が挙げられる。
無機塩法により無機繊維を製造する方法としては、例えば、無機繊維を構成する材料(例えばアルミニウムとケイ素)を含む水溶液にポリビニルアルコール等の有機重合体を添加した混合液をブローイング法により紡糸することで無機繊維前駆体を得て、この無機繊維前駆体を焼成する方法等が挙げられる。
続いて、分級工程について説明する。
上記(a)開繊工程において開繊された無機繊維は、分級工程において分級される。
分級工程では、分級装置を用いて、上記開繊された無機繊維のうち繊維長が200μm以下の無機繊維を一部又は全部除去する。
分級された無機繊維における繊維長が200μm以下の無機繊維の割合は、40%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましく、25%以下であることがさらに好ましい。
分級された無機繊維における繊維長が200μm以下の無機繊維の割合が40%を超えた場合、得られる保持シール材を構成する無機繊維が排ガスの風圧によって飛散しやすくなることがある。
分級工程によって得られる無機繊維の平均繊維長は、200〜20000μmであることが好ましく、300〜10000μmであることがより好ましく、500〜1500μmであることがさらに好ましい。
続いて、スラリー調製工程について説明する。
スラリー調製工程では、分級した無機繊維を溶媒中に分散させて混合液(スラリーともいう)とする。上記スラリー中の無機繊維の含有量は特に限定されないが、例えば0.05〜2.0重量%であってよい。
スラリーは、上記(b)分級工程によって調整された無機繊維の平均繊維長が変化しない程度の撹拌速度で撹拌する。(c)スラリー調製工程において無機繊維の平均繊維長が上述した範囲であると、無機繊維同士が緩く絡み合ったフロックを形成しやすくなるため、得られる保持シール材を構成する無機繊維同士の絡み合いに異方性が形成されにくく、強固な絡み合いとなりやすい。すなわち、無機繊維の平均繊維長を調整することで、フロックの凝集形態(凝集に異方性があるか等)を制御することができる。
スラリー調製工程の最初に、まず無機繊維と無機バインダとを混合することによって、無機繊維の表面に無機バインダが確実に付着することとなるため、無機繊維同士の摩擦を高め、面圧を向上させることができる。
さらに、上記スラリーに対して、有機バインダと無機バインダを凝集剤により凝集させた凝集体を添加してもよい。
有機バインダの上記スラリー中の含有量は、無機繊維100重量部に対して2〜10重量部であることが好ましく、無機バインダの上記スラリー中の含有量は、無機繊維100重量部に対して0.3〜5重量部であることが好ましい。有機バインダ及び無機バインダの含有量が上記範囲内であると、無機繊維同士が緩く絡み合ったフロックを形成しやすくなる。
例えば、上記(c)スラリー調製工程で得られたスラリーに対して、アニオン性の有機バインダ(溶媒中における表面電荷がマイナスである有機バインダ)を添加し、続いて、カチオン性の無機バインダ(溶媒中における表面電荷がプラスである無機バインダ)を添加することで、有機バインダと無機バインダが無機繊維を取り込みながら凝集するため、無機繊維同士が絡み合ったフロックが形成される。その後、凝集剤を添加し撹拌することで、上記フロック同士がさらに凝集する。この時、凝集剤の添加量及び撹拌速度を調製することで、フロックの大きさを適切な大きさに調製することができる。
凝集剤としては、ポリ塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、ポリ硫酸第二鉄等の無機系凝集剤、ポリアクリルアミド等の高分子系凝集剤等が挙げられる。
続いて、底面にろ過用のメッシュが形成された成形器にスラリーを流し込んだ後に、スラリー中の溶媒を脱溶媒処理することで、無機繊維集合体を得る。
乾燥工程においては、加熱熱風乾燥、通気乾燥、熱板による圧縮乾燥等の方法を用いてマットを乾燥させることができる。
乾燥時の温度は、特に限定されないが、例えば110〜200℃で行うことができる。
本発明の保持シール材は、排ガス浄化装置を構成する排ガス処理体を保持するための保持シール材として使用することができる。
本発明の排ガス浄化装置は、金属ケーシングと、上記金属ケーシングに収容された排ガス処理体と、上記排ガス処理体の周囲に巻き付けられ、上記排ガス処理体及び上記金属ケーシングの間に配設された保持シール材とを備える排ガス浄化装置であって、上記保持シール材は、本発明の保持シール材である。
図3に示すように、排ガス浄化装置100は、金属ケーシング130と、金属ケーシング130に収容された排ガス処理体120と、排ガス処理体120及び金属ケーシング130の間に配設された保持シール材110とを備えている。
排ガス処理体120は、多数のセル125がセル壁126を隔てて長手方向に並設された柱状のものである。なお、金属ケーシング130の端部には、必要に応じて、内燃機関から排出された排ガスを導入する導入管と、排ガス浄化装置を通過した排ガスが外部に排出される排出管とが接続されることとなる。
なお、排ガス浄化装置を構成する保持シール材の構成については、本発明の保持シール材としてすでに説明しているので省略する。
図4は、排ガス浄化装置を構成する排ガス処理体の一例を模式的に示す斜視図である。
これらの多孔質焼成体は、脆性材料であるので、機械的な衝撃等により破壊されやすい。しかし、図3に示す排ガス浄化装置100では、排ガス処理体120の側面の周囲に保持シール材110が介在し、衝撃を吸収するので、機械的な衝撃や熱衝撃により排ガス処理体120にクラック等が発生するのを防止することができる。
図3に示すように、内燃機関から排出され、排ガス浄化装置100に流入した排ガス(図3中、排ガスをGで示し、排ガスの流れを矢印で示す)は、排ガス処理体(ハニカムフィルタ)120の排ガス流入側端面120aに開口した一のセル125に流入し、セル125を隔てるセル壁126を通過する。この際、排ガス中のPMがセル壁126で捕集され、排ガスが浄化されることとなる。浄化された排ガスは、排ガス処理側端面120bに開口した他のセル125から流出し、外部に排出される。
図5は、排ガス浄化装置を製造する方法の一例を模式的に示した図である。
圧入方式によって巻付体を金属ケーシングに収容する場合、金属ケーシングの内径(排ガス処理体を収容する部分の内径)は、上記巻付体の外径より若干小さくなっていることが好ましい。
すなわち、本発明の保持シール材を構成する無機繊維は、保持シール材の厚さ方向に対して充分に配向しており、無機繊維の密度にムラがないといえる。そのため、本発明の保持シール材は、耐風触性を高めつつ、充分な面圧を発揮することができる。
以下、本発明をより具体的に開示した実施例を示す。なお、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
(無機繊維準備工程)
まず、開繊工程において開繊する無機繊維を作製した。
Al含有量が70g/Lであり、Al:Cl=1:1.8(原子比)となるように調製した塩基性塩化アルミニウム水溶液に対して、焼成後の無機繊維における組成比が、Al2O3:SiO2=72:28(重量比)となるようにシリカゾルを配合し、さらに、有機重合体(ポリビニルアルコール)を適量添加して混合液を調製した。
得られた混合液を濃縮して紡糸用混合物とし、この紡糸用混合物をブローイング法により紡糸して無機繊維前駆体を作製した。続いてこの無機繊維前駆体を圧縮して、連続したシート状物を作製した。圧縮したシート状物を最高温度1250℃で焼成し、アルミナとシリカとを72重量部:28重量部で含み、平均繊維径が5.6μmである無機繊維を作製した。
次に、上記無機繊維168.3gを水75Lに投入し、60Hzで10分間、パルパーを用いて撹拌することで、無機繊維を撹拌し、短繊維化した。
その後、湿式サイクロンを用いて200μm以下の繊維長の無機繊維を一部除去することによって、分級された無機繊維の溶液を得た。
この分級された無機繊維の溶液を光学顕微鏡で観察し、無機繊維の平均繊維長及び繊維長が200μm以下の繊維の本数の割合を求めた。結果を表1に示す。
上記(b)分級工程により得た分級された上記無機繊維の溶液に対して、アクリル系樹脂を水に分散させたアクリルラテックス溶液(日本ゼオン社製、Nipol LX852)を12.3g投入し、60Hzで1分間撹拌することにより、スラリーを調製した。
335mm×335mmのタッピ式抄造機を用いて、上記スラリーを抄造することにより、目付量(単位面積当たりの重量)が1500g/m2の無機繊維集合体を得た。
プレス式乾燥機を用いて、得られた無機繊維集合体を厚さ7.0mmに圧縮した状態で、140℃で15分間熱処理することにより、無機繊維集合体を乾燥させ、実施例1に係る保持シール材を作製した。
(a)開繊工程において、パルパーを用いた撹拌時間を7分間とすることで、無機繊維の平均繊維長を変化させた。その後、(c)スラリー調製工程において、アクリルラテックスを添加する前に、まず、アルミナゾル(日産化学工業社製、アルミナゾル520)を6.8g投入して、60Hzで1分間撹拌し、その後静置した。さらに、アクリルラテックス添加後に、高分子凝集剤として、非イオン性ポリアクリルアミド(BASF社製、Percol47NS)の0.5重量%水溶液を336.6g投入し、60Hzで1分間撹拌したほかは、実施例1と同様の手順で実施例2に係る保持シール材を作製した。
(b)分級工程において、湿式サイクロンによる短繊維の除去を行わないほかは、実施例1と同様の手順で比較例1に係る保持シール材を作製した。
(a)開繊工程において、パルパーを用いた撹拌時間を15分間とし、さらに、(b)分級工程において、湿式サイクロンによる短繊維の除去を行わないほかは、実施例1と同様の手順で比較例1に係る保持シール材を作製した。
実施例1〜2及び比較例1〜2に係る保持シール材を50×50mmの寸法にトムソン刃を用いて切断して試験片をそれぞれ3個作製した。続いて、上述した方法で各試験片を剥離し、中間層を露出させた。その後、中間層を露出させた試験片を市販のデジタルカメラ(リコーイメージング社製、コンパクトデジタルカメラ PENTAX Optio W60)で撮影した。撮影した画像をコンピュータに画像を取り込み、5cm当たりの凸部の数及び凸部の最大高さを測定し、6個の試験片のデータから、5cm当たりの凸部の数及び凸部の最大高さの平均値を求めた。結果を表1に示す。
以下の風触性測定装置を用いて、耐風触性試験を行った。
風触性測定装置は、上下方向から耐風触性試験用サンプルを挟み込むことにより、サンプルを所定の圧縮密度で保持することのできる上板部材及び下板部材と、外部から供給される空気を連続的に所定の風圧でサンプルの側面に吹きつけるように調整可能なエアノズルとから構成されている。
本明細書において、圧縮密度とは、圧縮後のサンプルの嵩密度を圧縮前のサンプルの嵩密度を用いて算出した計算値を示すものとする。例えば、見かけの体積が半分となるようにサンプルを圧縮すると、圧縮密度は、圧縮前のサンプルの嵩密度の二倍となる。
各実施例及び各比較例に係る保持シール材を25mm角に切断して耐風触性試験サンプルとした。次に、サンプルの両表面が上板部材及び下板部材に接するようにして、上板部材と下板部材とでサンプルを挟み込んで保持した。この時、サンプルの圧縮密度が0.3g/cm3となるように調整した。さらに、サンプルの側面からエアノズルの先端までの距離が3.6mmとなるようにエアノズルの位置を調整した。この状態で、空気を風圧135kPaの条件で連続して3時間吹きつけることによりサンプルを風触させた。なお、この操作は、700℃の温度条件下で行った。風触されたサンプルの側面に形成された孔について、サンプルの表面から孔の底までの距離を測定し、風触量(mm)とした。
その結果、各実施例及び比較例における風触量を以下の基準で評価した。結果を表1に示す。
○:風触量が3mm未満
△:風触量が3mm以上5mm未満
×:風触量が5mm以上
各実施例及び比較例の保持シール材について面圧試験を行った。
面圧測定装置による面圧試験の方法は、本発明の保持シール材の説明で説明したとおりである。結果を表1に示す。
各実施例及び各比較例で得られた保持シール材を一定重量サンプルとして採取し、サンプル中に含まれる有機バインダが溶解する有機溶媒(テトラヒドロフラン)を選び、ソックスレー抽出器にて上記有機バインダを溶解し、サンプルから分離した。この時、溶解した上記有機バインダに含まれる無機バインダもサンプルから分離され、有機溶媒中に上記有機バインダと上記無機バインダとが回収される。
この上記有機バインダと上記無機バインダからなる有機溶媒をるつぼに入れ、加熱により有機溶剤を蒸発除去した。
るつぼに残った残渣を、保持シール材に対する上記有機バインダと上記無機バインダの合計重量とみなし、保持シール材の重量に対する含有量(重量%)を算出した。
さらに、るつぼを600℃で1時間加熱処理し、有機バインダを焼失させた。るつぼ中には、無機バインダが残留しているので、これを有機バインダと無機バインダの合計に対する無機バインダの含有量(重量%)とみなし、その含有量を算出した。残りが有機バインダの含有量(重量%)となる。
各実施例及び各比較例に係る保持シール材について、有機バインダ及び無機バインダの含有量を測定した。結果を表1に示す。
以上のことから、本発明の保持シール材は、優れた耐風触性に加えて高い面圧を発揮することができることがわかった。
30 中間層の表面
31 最も凹となる凹部
32 2番目に凹となる凹部
33 第1の線分
34 最も凸となる凸部
35 垂線
100 排ガス浄化装置
110 保持シール材
120 排ガス処理体
130 金属ケーシング
Claims (9)
- 無機繊維を含み、抄造法により得られる層状のマットからなる保持シール材であって、
前記保持シール材の中間層が露出するように前記保持シール材を剥離させた際に、前記中間層の表面は凹部及び凸部を有する起伏面となっており、
前記保持シール材を50mm×50mmの寸法で切断した試験片を、中間層が露出するよう剥離させ、前記試験片を切断面からみた際に、前記中間層の表面における最も凹となる凹部と2番目に凹となる凹部とを接続する線分である第1の線分と前記中間層の表面における最も凸となる凸部の頂点との最短距離が1mm以下であって、さらに、凸部の数が3個/5cm以上であることを特徴とする保持シール材。 - 前記無機繊維のうち、繊維長が200μm以下の繊維の割合が40%以下であり、かつ、前記無機繊維の平均繊維長が500〜1500μmである請求項1に記載の保持シール材。
- 前記保持シール材は有機バインダを含有する請求項1又は2に記載の保持シール材。
- 前記有機バインダの含有量は、前記保持シール材の全量に対して固形分換算で2〜10重量%である請求項3に記載の保持シール材。
- 前記有機バインダのガラス転移温度(Tg)は、5℃以下である請求項3又は4に記載の保持シール材。
- 前記保持シール材は無機バインダを含有する請求項1〜5のいずれかに記載の保持シール材。
- 前記無機バインダの含有量は、前記保持シール材の全量に対して固形分換算で0.1〜10重量%である請求項6に記載の保持シール材。
- 前記無機繊維は、アルミナ、シリカ、アルミナ−シリカ、ムライト、生体溶解性繊維及びガラス繊維からなる群から選択された少なくとも1種から構成されている請求項1〜7のいずれかに記載の保持シール材。
- 排ガス処理体と、前記排ガス処理体を収容する金属ケーシングと、前記排ガス処理体と前記金属ケーシングとの間に配設され、前記排ガス処理体を保持する保持シール材とを備える排ガス浄化装置であって、
前記保持シール材は請求項1〜8のいずれかに記載の保持シール材であることを特徴とする排ガス浄化装置。
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