JP6418073B2 - チタン酸カルシウムおよび金属Tiの製造方法 - Google Patents

チタン酸カルシウムおよび金属Tiの製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP6418073B2
JP6418073B2 JP2015120352A JP2015120352A JP6418073B2 JP 6418073 B2 JP6418073 B2 JP 6418073B2 JP 2015120352 A JP2015120352 A JP 2015120352A JP 2015120352 A JP2015120352 A JP 2015120352A JP 6418073 B2 JP6418073 B2 JP 6418073B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
calcium titanate
titanium
iron
catio
producing
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2015120352A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2017001925A (ja
Inventor
森 健一
健一 森
藤井 秀樹
秀樹 藤井
鈴木 亮輔
亮輔 鈴木
絵里加 高橋
絵里加 高橋
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Steel Corp
Original Assignee
Nippon Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Steel Corp filed Critical Nippon Steel Corp
Priority to JP2015120352A priority Critical patent/JP6418073B2/ja
Publication of JP2017001925A publication Critical patent/JP2017001925A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6418073B2 publication Critical patent/JP6418073B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Inorganic Compounds Of Heavy Metals (AREA)
  • Manufacture And Refinement Of Metals (AREA)
  • Electrolytic Production Of Metals (AREA)
  • Ceramic Capacitors (AREA)

Description

本発明は、チタン酸カルシウム(CaTiO3)および金属Tiの製造方法に関し、具体的には、酸化チタンの原料となるイルメナイト(FeTiO3)から鉄分を取り除いてチタン酸カルシウム(CaTiO3)を製造する方法と、製造されたチタン酸カルシウムを原料として金属Tiを製造する方法に関する。
チタン酸バリウムに代表されるチタン系複合酸化物は、誘電性,焦電性,圧電性等の優れた電気特性を示すため、電子材料として広く用いられる。チタン系複合酸化物の中でもチタン酸カルシウム(CaTiO3)は、ペロブスカイト型の結晶構造を有し、誘電性を示すため、コンデンサ材料あるいはその添加物として多用される。チタン酸カルシウム(CaTiO3)には、電子機器の小型化および高性能化に伴って、さらなる微粒子化および高結晶化が要求されている。
近年、CaTiO3から金属チタンを製造する研究が行われている。CaTiO3から金属チタンを生成することによって、より効率よく金属チタンを製造することができ、金属チタンの低コスト化につながることが期待されている。
金属チタンは、クロール法により二酸化チタンTiO2を原料として製造される。良質のTiO2鉱石の枯渇によって、現在、クロール法は、豊富に産出するイルメナイト鉱(主成分イルメナイトFeTiO3)を原料とする。FeTiO3を酸侵出もしくは塩素化法によって鉄分を除去した人工ルチル(純度85〜93%TiO2)に精製した後、炭素および塩素ガスを用いて四塩化チタンTiCl4に転換し、このTiCl4を何度も蒸留して高純度TiCl4を製造する。この高純度TiCl4を液体マグネシウム上に滴下して完全に還元することによって約900〜1000℃の高温で金属チタンが製造される。
この金属チタンは、スポンジ状を呈し、副生成物の塩化マグネシウム(MgCl2)および還元剤Mgを多量に含有する。このため、1日ないし数日を要してMgとMgCl2を蒸発除去する。このような手順の後、鉄容器から取り出されたスポンジチタンは、容器近傍に鉄の汚染があるので、これを機械的に除去してから加圧成形されて連結され、消耗型電極に組み合わされてアルゴンガス雰囲気でアーク溶解を行って数〜数10トンのインゴットに製造される。さらに、酸素の汚染等が高真空中で電子ビーム溶解を加えることによって除去され、チタンインゴットが完成する。このインゴットは機械加工によって板や棒、管などに成形され純チタンとして市販されている。
このような金属チタンの製造では、イルメナイト鉱からの高純度化TiO2の製造(アップグレードと呼ばれる手法)およびその塩素化、引き続くTiCl4のMgによる還元と不純物の除去という一連の工程を経るが、この一連の工程には時間と工程、さらには設備を多く必要とする。このため、効率的な製造工程であるとはいえず、チタンの製造コストが上昇する主たる原因になっている。
非特許文献1には、鈴木、小野らにより、高純度のTiO2を入手できれば、CaO-CaCl2溶液の電気分解を利用してこれをTiにまで直接還元できる方法(OS法と呼ぶ)が開示されている。略述すると、OS法は、CaOを仲立ちとしてTiO2を電気の力でTiに還元する。
OS法は、TiO2に留まらず、多くの酸化物や酸化物の混合体の還元に適用され、金属や金属合金の製造方法としての応用が期待されている。TiO2の還元においては1mass%酸素を下回る高純度チタンの製造が工業的に必要とされ、還元に引き続く脱酸処理も同時に利用できる方法へと改良が続けられている。
しかし、現状では、酸化チタン(TiO2)をCaで還元することによりチタン鉱石から直接金属チタンを製造する方法では充分な反応効率が得られていない。
このような情勢の中で、非特許文献2には、TiO2ではなくCaTiO3のような、CaOを結晶格子内に含有する複合酸化物をOS法の出発原料とする研究が開示されている。
しかし、CaTiO3は、純粋物質として自然界より工業的規模で採出することは難しいため、人工合成される。その製法としては、一般的に固相反応法での合成が知られている。固相反応法は、酸化チタンと酸化カルシウムあるいは炭酸カルシウムを混合し開放大気中で焼成するという非常に簡単な方法であるが、1000℃以上の高温で焼成する必要がある。
また、固相反応法は原料として酸化チタンを使用する。上記の通り酸化チタンはイルメナイト鉱からその多くが製造されており、高純度のTiO2を製造するにも時間を要するため、TiO2を経てCaTiO3を合成することはあまり効率的とはいえない。
CaTiO3の合成には、固相反応法以外にも水熱合成法、ゾルゲル法などがある。ゾルゲル法は高価な試薬を使用する必要があるだけでなく、長時間の撹拌や温度、水素イオン濃度(pH)の管理が必要になる。また、水熱合成法では高圧高温での合成を行うため専用の製造機器を設ける必要があり、製造コストの上昇は否めない。
特許文献1,2には、チタン酸カルシウム(CaTiO3)の製造方法が開示されている。これらの製造方法は、四塩化チタンや硫酸チタン、あるいは酸化チタンゾル等を原料として用い、チタンを加水分解させたものをアルカリ性溶液中でCa塩と一緒に加熱・混合を行うものである。しかし、より効率よく生産を行うためにはイルメナイト鉱を原料にしたCaTiO3の製造法が必要となる。
また、イルメナイト鉱から直接CaTiO3を製造する際には、その過程で不純物の除去を行うことが大きな課題となる。イルメナイト鉱には、SiやAlといった微量な不純物も存在するが、イルメナイトの主な構成成分である多量のFeの影響は大きいため、Feをできるだけ取り除くことが重要である。
このように、チタン酸カルシウム(CaTiO3)を低コストで製造する方法はこれまで確立されていない。
特開昭59−45927号公報 特開2011−116645号公報
R. O. Suzuki and S. Inoue "Calciothermic Reduction of Titanium Oxide in Molten CaCl2" Metall. Mater. Trans. B, 34B [6] (2003) pp.277-286 小林圭一、岡佑一、鈴木亮輔 "CaCl2溶融塩中でのTiO2直接還元における電流密度の影響" 日本金属学会誌 Vol. 72 [12] (2008) pp. 916-920
本発明は、イルメナイト(FeTiO3)から酸化チタン(TiO2)を経ずにチタン酸カルシウム(CaTiO3)を製造することにより、製造に掛かる時間を短縮させ生産性の向上および低コスト化を図るとともに、その過程で鉄分を2000ppm以下に除去して高純度のチタン酸カルシウム(CaTiO3)を簡便かつ低コストで製造することを目的とし、これにより得られたチタン酸カルシウム(CaTiO3)をTi直接還元原料として用いることにより、クロール法に代わる高効率な新しい金属Tiの製造方法(精錬方法)を提供することをも目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、資源として豊富に存在するもののFeを多量含有するイルメナイト(FeTiO3)を溶解し、鉄分を分離・除去して、Ca源を加えて焼成することにより、Fe濃度が低いチタン酸カルシウム(CaTiO3)を製造できることを知見し、さらに検討を重ねて本発明を完成した。本発明は以下に列記の通りである。
(1)イルメナイト(FeTiO3)からチタンおよび鉄の水酸化物を生成する第1工程と、第1工程で生成した生成物から鉄を分離する第2工程と、第2工程で生成した生成物にカルシウム源を添加する第3工程と、第3工程で生成した生成物を所定の温度で焼成してチタン酸カルシウム(CaTiO3)を生成する第4工程とを有することを特徴とするチタン酸カルシウムの製造方法。
(2)第2工程は、第1工程で生成した水酸化物を塩酸で溶解し、マスキング剤を加えた後、硫化アンモニウムを加えて鉄を硫化鉄として沈殿させる工程である1項に記載されたチタン酸カルシウムの製造方法。
(3)マスキング剤は酒石酸ジアンモニウムである2項に記載されたチタン酸カルシウムの製造方法。
(4)第1工程は、イルメナイトを弗酸で溶解した後に塩基性の溶液で中和する工程である1項から3項までのいずれか1項に記載されたチタン酸カルシウムの製造方法。
(5)カルシウム源は塩化カルシウムである1項から4項までのいずれか1項に記載されたチタン酸カルシウムの製造方法。
(6)所定の温度は560℃以上である1項から5項までのいずれか1項に記載されたチタン酸カルシウムの製造方法。
(7)チタン酸カルシウム(CaTiO3)中の鉄濃度は2000ppm以下である1項から6項までのいずれか1項に記載されたチタン酸カルシウムの製造方法。
(8)1項から7項までのいずれか1項に記載された製造方法により製造されたチタン酸カルシウムをTi直接還元原料として用い、CaO−CaCl溶液の電気分解を利用して、金属Tiにまで還元することを特徴とする金属Tiの製造方法。
本発明によれば、イルメナイト(FeTiO3)から酸化チタン(TiO2)を経ずにチタン酸カルシウム(CaTiO3)を製造することにより、製造に掛かる時間を短縮させ生産性の向上および低コスト化を図ることができるとともに、その過程で鉄分を例えば2000ppm以下に除去して高純度のチタン酸カルシウム(CaTiO3)を簡便かつ低コストで製造することができる。このため、この製造方法により得られたチタン酸カルシウムを、Ti直接還元原料として用いることにより、クロール法に代わる高効率な新しい金属Tiの精錬方法を提供することができる。
図1は、製造したCaTiO3のX線回折の測定結果を示すグラフである。 図2は、TG-DTAの測定結果を示すグラフである。
本発明を、添付図面を参照しながら説明する。
1.本発明に係るチタン酸カルシウムの製造方法
本発明に係るチタン酸カルシウムの製造方法は、第1〜4工程を有するので、これらの工程を順次説明する
(1)第1工程
第1工程では、イルメナイト(FeTiO3)からチタンおよび鉄の水酸化物を生成する。具体的には、第1工程は、原料であるイルメナイトの粉末を弗酸(フッ化水素酸)で40〜80℃に加熱しながら溶解した後に、塩基性の溶液で中和する工程である。
イルメナイトを溶解させたフッ化水素酸溶液に、塩基性の溶液として、水酸化ナトリウム水溶液あるいは水酸化カリウムなどのフッ素と溶解度の大きな塩を形成する塩基性の溶液を加え、チタンと鉄を水酸化物として沈殿させる。
水酸化ナトリウムを添加する場合には、水酸化ナトリウムを化学当量加えることが好ましく、これよりも少ないと鉄やチタンの水酸化物の沈殿が十分に得られず、収率の低下を招く。
この溶液にはフッ素やナトリウムが含まれているため、遠心分離またはろ過を行うことによりチタンや鉄の水酸化物の沈殿物との分離を行うことが好ましい。また、沈殿物は蒸留水を用いて十分に洗浄を行い、フッ素やナトリウムなどの不純物をできるだけ取り除くことが好ましい。
(2)第2工程
第2工程では、第1工程で生成した生成物から鉄を分離する。具体的には、第2工程は、第1工程で生成したチタンおよび鉄の水酸化物の沈殿物を塩酸で溶解し、マスキング剤を添加した後、硫化アンモニウム溶液を加え、溶液が塩基性になると鉄分を硫化鉄として沈殿させる工程である。マスキング剤は酒石酸ジアンモニウムであることが好ましい。
添加する硫化アンモニウムの量を当量のFe1モルに対して硫黄成分が2モルとなる比率(1:2)からやや多い1:2.5以上の量とすることが好ましい。
または、アンモニア水で溶液を塩基性にしてから硫化アンモニウムまたは硫化水素を加えてもよい。
この際、チタンは酒石酸によってマスキングされており、硫化アンモニウムを添加することで溶液が塩基性になってもチタンは殆ど沈殿しない。しかし、酒石酸ジアンモニウムの添加量が少な過ぎると、チタンの加水分解が生じ易いことや、硫化アンモニウムを過剰に加えたことでチタンが多量に沈殿してしまうことがある。
このため、酒石酸ジアンモニウムの添加量はチタンを1とした時に、酒石酸ジアンモニウムがモル比で1.3以上であることがTiの収率を向上するために好ましい。酒石酸ジアンモニウムの量がモル比で2倍以上の場合にチタンの収率が最も高くなるため、酒石酸ジアンモニウムをモル比で2倍程度加えることがさらに好ましい。また、硫化アンモニウム溶液は、低Fe濃度のチタン酸カルシウムあるいは金属Tiを得るため、鉄に対してSが2.5倍(モル比)以上になるよう加えるとよい。
溶液と硫化鉄の分離には吸引ろ過を使用することが好ましい。
(3)第3工程
第3工程では、溶液から硫化鉄を取り除いた後の溶液にカルシウム源を添加する。カルシウム源は塩化カルシウムであることが好ましい。カルシウムの添加には塩化カルシウムや水酸化カルシウム等の水に可溶なカルシウム塩を水に溶解したものを使用することが好ましい。
カルシウムの添加により直ちにゲル状の白色沈殿が形成される。形成されたゲル状沈殿物を蒸留水で数回洗浄した後乾燥させることによって、アモルファス状の粉末が得られる。
(4)第4工程
第4工程では、第3工程で生成した、アモルファス状の粉末を所定の温度で焼成してペロブスカイトの結晶構造を有するチタン酸カルシウム(CaTiO3)を生成する。このようにしてチタン酸カルシウムが製造される。
所定の温度は560℃以上であることが好ましい。また、チタン酸カルシウム(CaTiO3)中の鉄濃度は2000ppm以下であることが好ましい。
第1〜4工程を有する本発明によれば、FeTiO3からTiO2やTiCl4を経ずにCaTiO3を製造することが可能であるため、短時間でCaTiO3の製造が可能であり、生産性の向上や低コスト化を図ることができる。
また、本発明によれば、第2工程でマスキング剤を使用することにより、鉄の濃度を例えば2000ppm以下に低減でき、かつ低温での合成が可能であり、結果として高純度のCaTiO3の合成が可能である。
また、本発明によれば、第1〜4工程の殆どが試薬を室温で混合する工程であるため、複雑な装置や温度制御、さらにはエネルギーが不要であり、非常に簡便かつ低コストでCaTiO3を製造することができる。
このように本発明によれば、安価でFeの汚染が少ないCaTiO3を工業的規模で供給可能になる。
2.本発明に係る金属Tiの製造方法
本発明に係る金属Tiの製造方法は、クロール法に代わる高効率な新しい金属Tiの精錬方法であって、上述した本発明に係る製造方法により製造されたチタン酸カルシウム(CaTiO3)をTi直接還元原料として用い、CaO-CaCl2溶液の電気分解を利用して、金属Tiにまで直接還元する方法(OS法)である。OS法は、
(A)CaCl2(融点1045K)にCaOが約20mol%まで溶解すること、
(B)CaCl2の電気分解に先立ち溶解しているCaOが、優先的に分解して金属CaとO2-(陽極に炭素を用いるとCOもしくはCO2ガスとなる)になり、カソードに析出する純カルシウムが直ちにCaCl2に溶解すること(約4mol%Caの溶解度がある)、
(C)CaCl2に溶解したCaがTiO2のような難還元性酸化物と反応して金属チタンとCaOに還元すること、および、
(D)この副生成したCaOは金属チタン粒子に付随するが、CaCl2に容易に溶出し、さらなるカルシウムによる還元と脱酸を促進すること
を利用する。すなわち、CaOを仲立ちとしてCaTiO3が電気の力でTiに還元される。
これは、CaTiO3の分解によって直接α-Tiが製造される点で被還元剤として優れている。すなわち、4価のチタン酸化物が0価の金属に一段で転換されるので効率よく金属チタンが製造され、かつ多量のCaOが排出されるので、これが再び電気分解されて還元剤Caに転換される。TiO2の分解よりもCaTiO3の分解のほうが高速で進行すると推察されているゆえんである。すなわち、Caを含むチタン酸カルシウム(CaTiO3)を還元原料として用いることにより反応効率の向上が見込める。
本発明によれば、このようにして、本発明により製造された安価でFeの汚染が少ないチタン酸カルシウム(CaTiO3)をTi直接還元原料として用い、CaO-CaCl2溶液の電気分解を利用して、金属Tiにまで直接還元することにより、金属Tiが製錬される。
次に、本発明を、実施例を参照しながらより具体的に説明する。
[本発明例1]
6mol/lのフッ化水素酸20mlにイルメナイト粉末(純度99%、フルウチ化学(株))を1g加え40℃で撹拌しながら2時間保持し溶解させた。次に、2mol/lの水酸化ナトリウム水溶液を100ml加え、鉄とチタンを水酸化物として沈殿させた。
続いて遠心分離を行い上澄みと沈殿物を分離した。沈殿物は蒸留水を用いて洗浄し、その後、遠心分離の操作を数回繰り返した後、3.5mol/lの塩酸を20ml加えて溶解し、黄色の溶液を得た。
そこから5ml分け取り、マスキング剤として(+)−酒石酸ジアンモニウム(和光特級、和光純薬工業(株))を0.6g(3.26×10−3mol)を加えた後に、硫化アンモニウム溶液(無色、化学用、和光純薬工業(株))を56ml(Sが約8.73×10−3mol)加えて硫化鉄を沈殿させた。
続いて0.1μmのフィルタを用いて吸引ろ過を行って硫化鉄を取り除き、透明なろ液を得た。ろ液には2gの塩化カルシウム(無水、純度99.9%、添川理化学(株))を水に溶解したものを加え、ゲル状の沈殿を生成した。次に、遠心分離によりゲル状の沈殿と上澄みを分離し、ゲル状の沈殿は蒸留水で洗浄し、遠心分離を数回繰り返した後、90℃のホットプレートで乾燥させ粉末を得た。
この粉末を一軸加圧成形により直径10mmのペレット状に成形し、大気下、650℃で2時間焼成を行い、サンプルを得た。
サンプルの評価には結晶相の同定にX線回折測定を、チタンや鉄の含有量の調査に誘導結合プラズマ−発光分光分析(以下ICP-AESと略す)を使用した。
得られた粉末をX線回折測定により分析した。分析結果を図1のグラフで示す。
図1のグラフに示すように、CaTiO3の回折線が得られ、製造した粉末はペロブスカイト構造を有するCaTiO3のほぼ単相であった。
同様の条件下で固相反応法により市販試薬の酸化カルシウムと酸化チタンを混合して焼成して得られたサンプルでは、CaTiO3の回折線は全く見られなかった。このように、本発明例1では、固相反応法で製造したサンプルよりもより低温で、CaTiO3を製造できた。
またICP-AESにより、ゲル状の沈殿物中の鉄およびチタンの含有量の調査を行った結果(イルメナイト1gから形成されたCaTiO3に含有する鉄とチタンの量)を表1に示す。
Figure 0006418073
表1に示すように、本発明例1では、チタンに対する鉄の含有量が大きく減少し、大部分の鉄を硫化鉄として取り除くことができており、チタンの質量に対して鉄の質量が0.12%程度にまで減少していることが確認された。なお、このチタンの質量は理論収率のおよそ84%であった。
また、焼成前の粉末についてもX線回折測定を行った結果、ピークが出現しなかったためアモルファスであることが確認された。
さらに、TG-DTA測定により800℃まで熱分析を行った結果を図2にグラフで示す。図2のグラフに示すように、焼成前後でサンプルの質量は48%程度減少し、560℃付近に発熱ピークが見られた。この発熱ピークはCaTiO3の結晶化によるものであると推測される。
[本発明例2]
酒石酸ジアンモニウムを0.4g(2.17×10−3mol)用いたこと以外は本発明例1と同様の操作によりCaTiO3を製造した。
ICP-AESにより、焼成剤中の鉄及びチタンの含有量の調査を行った結果を表1に示す。
チタンの質量を100とした場合に鉄を0.28%含有していることが分かった。また、チタンの質量は理論収率のおよそ61%であった。
[本発明例3]
酒石酸ジアンモニウムを0.8g(4.34×10−3mol)用いたこと以外は本発明例1と同様の操作によりCaTiO3を製造した。ICP-AESにより、鉄及びチタンの含有量の調査を行った。
この結果、表1に示す。チタンの質量を100とすると鉄が0.14%含有していることが分かった。また、チタンの質量は理論収率のおよそ84%程度であり、本発明例1と近い値となった。
[本発明例4]
塩化カルシウムの代わりに水酸化カルシウム0.15gを蒸留水100mlに溶解したものを用いたこと以外は、本発明例1と同様の操作を行った。作製したサンプルをX線回折測定により分析した結果、本発明例1と同様のCaTiO3の回折線が得られた。
[本発明例5]
硫化アンモニウムの量を28ml(Sが約4.37×10−3mol)に変更した点以外は本発明例1と同様の操作を行った。硫化鉄をろ過により取り除いた後のろ液は透明であった。このろ液をICP-AESにより分析した結果を表1に示す。
表1に示す結果から、イルメナイト1gにつきチタンが257mg、鉄が0.452mgほど含まれていることが確認された。
[本発明例6]
硫化アンモニウムの量を28ml(Sが約4.37×10−3mol)に変更した点以外は本発明例2と同様の操作を行った。このろ液をICP-AESにより分析した結果を表1に示す。
表1に示す結果から、イルメナイト1gにつきチタンが267mg、鉄が0.512mgほど含まれていることが確認された。
[本発明例7]
硫化アンモニウムの量を28ml(Sが約4.37×10−3mol)に変更した点以外は本発明例3と同様の操作を行った。このろ液をICP-AESにより分析した結果を表1に示す。
表1に示す結果から、イルメナイト1gにつきチタンが256mg、鉄が0.361mgほど含まれていることが確認された。

Claims (8)

  1. イルメナイト(FeTiO3)からチタンおよび鉄の水酸化物を生成する第1工程と、第1工程で生成した生成物から鉄を分離する第2工程と、第2工程で生成した生成物にカルシウム源を添加する第3工程と、第3工程で生成した生成物を所定の温度で焼成してチタン酸カルシウム(CaTiO3)を生成する第4工程とを有することを特徴とするチタン酸カルシウムの製造方法。
  2. 前記第2工程は、前記水酸化物を塩酸で溶解し、マスキング剤を加えた後、硫化アンモニウムを加えて硫化鉄として沈殿させ工程である請求項1に記載されたチタン酸カルシウムの製造方法。
  3. 前記マスキング剤は酒石酸ジアンモニウムである請求項2に記載されたチタン酸カルシウムの製造方法。
  4. 前記第1工程は、前記イルメナイトを弗酸で溶解した後に塩基性の溶液で中和する工程である請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載されたチタン酸カルシウムの製造方法。
  5. 前記カルシウム源は塩化カルシウムである請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載されたチタン酸カルシウムの製造方法。
  6. 前記所定の温度は560℃以上である請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載されたチタン酸カルシウムの製造方法。
  7. 前記チタン酸カルシウム(CaTiO3)中の鉄濃度は2000ppm以下である請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載されたチタン酸カルシウムの製造方法。
  8. 請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載された製造方法により製造されたチタン酸カルシウムをTi直接還元原料として用い、CaO−CaCl溶液の電気分解を利用して、金属Tiにまで直接還元することを特徴とする金属Tiの製造方法。
JP2015120352A 2015-06-15 2015-06-15 チタン酸カルシウムおよび金属Tiの製造方法 Active JP6418073B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015120352A JP6418073B2 (ja) 2015-06-15 2015-06-15 チタン酸カルシウムおよび金属Tiの製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015120352A JP6418073B2 (ja) 2015-06-15 2015-06-15 チタン酸カルシウムおよび金属Tiの製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2017001925A JP2017001925A (ja) 2017-01-05
JP6418073B2 true JP6418073B2 (ja) 2018-11-07

Family

ID=57751570

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2015120352A Active JP6418073B2 (ja) 2015-06-15 2015-06-15 チタン酸カルシウムおよび金属Tiの製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6418073B2 (ja)

Family Cites Families (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS5510428A (en) * 1978-07-06 1980-01-24 Ishihara Sangyo Kaisha Ltd Finely divided titanium dioxide composition and production thereof
US4390365A (en) * 1980-12-15 1983-06-28 Occidental Research Corporation Process for making titanium metal from titanium ore
JP3415733B2 (ja) * 1997-01-10 2003-06-09 ニチアス株式会社 チタン酸カルシウム微粒子の製造方法
JP2003129268A (ja) * 2001-10-17 2003-05-08 Katsutoshi Ono 金属チタンの精錬方法及び精錬装置
CN100509637C (zh) * 2003-04-11 2009-07-08 昭和电工株式会社 钙钛矿含钛复合氧化物微粒、其生产方法和用途
JP5792727B2 (ja) * 2009-09-02 2015-10-14 シャ,リーリン 濃縮チタン塩酸抽出残渣、その使用およびチタン顔料の調製方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2017001925A (ja) 2017-01-05

Similar Documents

Publication Publication Date Title
RU2518839C2 (ru) Обработка титановых руд
EP3589763B1 (de) Verfahren zur herstellung von lithiumhydroxid aus lithiumhaltigem erz
CN104195355B (zh) 制备锆的方法
JP5935098B2 (ja) 亜鉛製造方法
WO2014112198A1 (ja) Itoターゲットスクラップからのインジウム-錫合金の回収方法、酸化インジウム-酸化錫粉末の製造、及びitoターゲットの製造方法
CN109368688A (zh) 一种高纯度氧化锌间接法的生产工艺
EP3589762B1 (de) Verfahren zur herstellung von lithiumhydroxid aus lithiumhaltigem erz mittels chlorierung und chloralkali-prozess
JP2017119901A (ja) イルメナイト鉱からの金属チタン製造用酸化チタンの回収方法
US10316391B2 (en) Method of producing titanium from titanium oxides through magnesium vapour reduction
GB2502031A (en) Method for cyclically preparing titanium sponge and simultaneously producing potassium cryolite using potassium fluorotitanate as an intermediate material
JP6656709B2 (ja) 亜鉛地金の製造方法
JP2014237588A (ja) 酸化ニッケル粉末
AU2017320813B2 (en) Method for producing scandium compound, and scandium compound
JP2010138490A (ja) 亜鉛の回収方法等
JP3766620B2 (ja) 含チタン精鉱からの酸化チタンと酸化鉄の分離回収方法
GB2513931A (en) Method for cyclically preparing titanium sponge and simultaneously producing sodium cryolite using sodium fluorotitanate as an intermediate material
JP6418073B2 (ja) チタン酸カルシウムおよび金属Tiの製造方法
JP5423592B2 (ja) 低塩素硫酸ニッケル/コバルト溶液の製造方法
WO2016194658A1 (ja) 塩化コバルト水溶液の浄液方法
JP7193136B2 (ja) 炭酸亜鉛の製造方法
JP7347083B2 (ja) 高純度酸化スカンジウムの製造方法
Wahyuningsih et al. Recovery TiO2 by leaching process of carbothermic reduced Kalimantan ilmenite
KR20170021759A (ko) 일메나이트 원광을 이용한 금속 티타늄의 제조방법
JP5623956B2 (ja) イリジウムの塩化物溶液からの金属イリジウムの製造方法
JP5102523B2 (ja) インジウムの回収方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20180205

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20180816

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20180911

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20180924

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 6418073

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350