以下、発明の実施の形態を説明する。
図1は、レーザレーダ装置の実施の1形態を説明するための図であり、要部を説明的に示している。
この実施の形態のレーザレーダ装置は「共軸系」である。
図1において、符号10は「レーザ光源」、符号12は「コリメートレンズ」を示し、符号14は「調整用レンズ」、符号16は「照射用光路屈曲ミラー」を示す。
符号18は「偏向手段」、符号20は「変倍レンズ」を示す。
符号30は「受光素子」、符号32は「集光レンズ」、符号34は「受光用レンズ」、符号36は「受光用光路屈曲ミラー」、符号40は「制御演算部」を、それぞれ示す。
レーザ光源10が発光すると、放射されたレーザ光は、コリメートレンズ12により平行光束化され、調整用レンズ14に入射する。
調整用レンズ14は、正の屈折力を有し、コリメートレンズ12側から入射するレーザビームに「収束傾向」を与える。
収束傾向を与えられたレーザビームは、照射用光路屈曲ミラー16により光路を屈曲され、偏向手段18に入射する。
偏向手段18は、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)として構成された周知の偏向器で「ミラー部を2次元的に搖動」させて反射光の向きを2次元的に偏向させる。
即ち、ミラー部の2次元的な搖動は、図面に直交する方向を搖動軸とする搖動と、図面に平行な方向を搖動軸とする搖動であり、これらの搖動が重ね合わせられる。
偏向手段18により2次元的に偏向されたレーザ光は、図1の「図面に平行な面内」で搖動するとともに、「図面に直交する方向」においても搖動する。
このように、レーザ光源部10からのレーザ光は、偏向手段18により2次元的に偏向されつつ変倍レンズ20に入射し、偏向レーザビームSRLとして射出する。
変倍レンズ20は「正の屈折力」を持ち、後述するように、偏向レーザビームSRLの偏向角を、偏向手段18による偏向角に対して少なくとも1方向について縮小する。
偏向レーザビームSRLは、2次元的に偏向しつつ対象物に照射され、測距対象物を2次元的に走査する。「測距対象物」は、以下において単に「対象物」と言うこともある。
即ち、図1に示す実施の形態において「2次元型のレーザビーム投射装置」は、レーザ光源10、コリメートレンズ12、調整用レンズ14、照射用光路屈曲ミラー16、偏向手段18および変倍レンズ20を有する。
対象物により反射されたレーザビームは、戻りレーザ光束BKLとなり、変倍レンズ20に入射する。戻りレーザ光束BKLは、先に「検出レーザ光」と呼んだものである。
対象物と変倍レンズ20との距離は一般に、変倍レンズ20の有効径に対して大きい。
従って、対象物に反射されて変倍レンズ20に入射する戻りレーザ光束BKLは、実質的に平行光束状態で、偏向レーザビームSRLと「同方向で逆向き」である。
変倍レンズ20に入射した戻りレーザ光束BKLは、変倍レンズ20の正の屈折力により収束傾向を与えられ、偏向手段18に入射して反射される。
偏向手段18により反射された戻りレーザ光束BKLは、受光用光路屈曲ミラー36により光路を屈曲され、受光用レンズ34に入射する。
戻りレーザ光束BKLは、変倍レンズ20により収束傾向を与えられると、光路上の受光用レンズ34の手前で収束したのち発散しつつ受光用レンズ34に入射する。
受光用レンズ34を透過した戻りレーザ光束BKLは、集光レンズ32を介して受光素子30に向かって集光され、受光素子30により受光される。
即ち、変倍レンズ20、偏向手段18、受光用光路屈曲ミラー36、受光用レンズ34、集光レンズ32および受光素子30は「対象物により反射された戻りレーザ光束BKLを検出する検出手段」を構成する。
即ち、偏向レーザビームSRLを投射させる光学系のうちの、変倍レンズ20、偏向手段18の部分は、検出手段の一部として共用されている。
受光素子30は、戻りレーザ光束BKLを受光すると、受光信号(適宜の増幅率で増幅される)を制御演算部40に送る。
制御演算部40の要部は、CPUやマイクロコンピュータ等により構成され、図1に示すレーザレーダ装置の各部を制御し、対象物までの距離を演算する。
即ち、制御演算部40は、レーザ光源10をパルス発光させ、パルス発光の瞬間から上記受光信号を受けた瞬間までの時間:2Tを確定し、光速:Cを用いて、距離:CTを演算する。
偏向レーザビームSRLの偏向に従って、時間:2Tの取得と距離:CTの演算が繰り返され、対象物までの距離と「対象物の3次元形状」が得られる。
即ち、制御演算部40は「制御演算手段」を構成する。
上記の如く、レーザレーダ装置は、上記「2次元型のレーザビーム投射装置」と「検出手段」と「制御演算手段」とを有する。
変倍レンズ20から射出する偏向レーザビームSRLの光束形態は、「平行光束」とすることも「収束光束」とすることも、「発散光束」とすることもできる。
偏向レーザビームSRLの光束形態を「平行光束」とすると、測距対象物へ向かう途上で光束径を実質的に不変と見做すことができ、光強度も実質的に不変と見做しうる。
従って、測距対象物までの距離に拘らず、常に「同一強度の偏向レーザビーム」で測距対象物を2次元的に走査でき、安定した距離測定を行うことができる。
なお、ここで「平行光束」と言っても、これは「厳密な平行光束」であることを要しない。レーザビーム投射装置やレーザレーダ装置の実施状態において、実質的に平行光束と認められる程度の平行度を持って足りる。
実際、レーザビーム投射装置から投射される偏向レーザビームSRLが「完全な平行光束」であったとしても、偏向レーザビームSRLが進行する際に、大気や回折の影響により「平行光束からのずれ」は生じる。
しかし、このような「ずれ」は、上記偏向レーザビームの強度の同一性につき影響を与えることはなく、無視できるレベルである。
偏向レーザビームSRLを「収束光束」とすると、例えば、レーザレーダ装置から特定の位置にある測距対象物に偏向レーザビームSRLを小径のスポットとして集光でき、測距対象物の3次元的な表面形状を高精度に測定することが可能となる。
逆に、偏向レーザビームSRLを「発散光束」とすると、測距対象物に照射する偏向レーザビームSRLのビーム径を大径化でき、測定精度の安定化が可能となる。
上に説明した実施の形態で「平行光束状の偏向レーザビームSRLを実現する場合」を説明する。
上述の如く、調整用レンズ14は正の屈折力を持ち、コリメートレンズ12により平行光束化されたレーザビームは、調整用レンズ14により「収束傾向」を与えられる。
そして、レーザビームは、照射用光路屈曲ミラー16により光路を屈曲されて偏向手段18に入射し、偏向手段18により2次元的に偏向され、変倍レンズ20により「平行光束化した偏向レーザビームSRL」に変換されて射出する。
即ち、調整用レンズ14によりレーザビームに与えられた収束傾向が、変倍レンズ20により相殺されて平行光束化されるのである。
以下の説明のため、図の如く、互いに直交するX、Y、Z方向を定める。
X方向は「図面に直交する方向」であり、Y方向は「図の上下方向」、Z方向は変倍レンズ20の光軸AXに平行な方向である。調整用レンズ14の光軸もZ方向に平行である。
調整用レンズ14によりレーザビームに与えられる収束傾向と、変倍レンズ20による平行光束への回復は、種々の組み合わせが可能である。
例えば、図1において、調整用レンズ14を光軸の周りに回転対称(以下「軸対称」と言う。)な正レンズとし、レーザビームにX方向とY方向の収束傾向を与える。
一方、変倍レンズ20も「軸対称な正レンズ」とし、その物体側の焦点位置が、図における点PFになるように配置を定める。
調整用レンズ14をZ方向へ変位させると「収束傾向を与えられたレーザビームが集光する集光位置」が光軸方向に移動する。
そこで、調整用レンズ14を光軸方向に位置調整して、上記集光位置が「点PFに合致する」ようにする。説明中の例では、コリメートレンズ12側から調整用レンズ14に入射するレーザビームは「平行光束」であるから、前記「集光位置」は、調整用レンズ14の像側焦点位置である。
従って、変倍レンズ20から「平行光束化された偏向レーザビーム」が射出する光学上の条件は、説明中の例では、調整用レンズ14の像側焦点位置と変倍レンズ20の物体側焦点位置(上記点「PF」)が一致することである。
このようにすれば、変倍レンズ20からは平行光束化された偏向レーザビームSRLが射出することになる。
平行光束化された偏向レーザビームを実現する方法は、上に説明した方法に限らない。
例えば、以下の如き方法も可能である。
調整用レンズ14を「X(もしくはY)方向にのみ正の屈折力を持つレンズ」とする。
その場合には、コリメートレンズ12側からの平行光束状のレーザビームは、調整用レンズ14によりX(もしくはY)方向に収束傾向を与えられる。
このとき、レーザビームはY(もしくはX)方向には収束傾向を与えられず、平行光束状態を保つ。
調整用レンズ14の光軸方向における位置調整により、X(もしくはY)方向の集光位置(像側焦点位置)が、点PFに合致するようにする。
一方、変倍レンズ20も「X(もしくはY)方向にのみ正の屈折力を持つレンズ」として物体側におけるX(もしくはY)方向の焦点位置を点PFに位置させる。
このようにすれば、調整用レンズ14により与えられたX(もしくはY)方向の収束傾向が、変倍レンズ20により回復されて、平行光束化された偏向レーザビームSRLが得られる。
即ち、何れにしても、調整用レンズ14を光軸方向に変位調整して変倍レンズ20への入射状態を調整し、偏向レーザビームSRLが平行光束状となるようにできる。
レーザレーダ装置の実施の別形態を、図2に即して説明する。繁雑を避けるため、混同の虞が無いと思われるものについては、図1におけると同一の符号を付している。
図1に示した実施の形態と異なる点は、調整用レンズ14Aと受光用レンズ34Aが共に「負レンズ」である点である。
コリメートレンズ12により平行光束化されたレーザビームは、調整用レンズ14Aにより「発散傾向」を与えられる。
そして、レーザビームは、照射用光路屈曲ミラー16により光路を屈曲されて偏向手段18に入射し、偏向手段18により2次元的に偏向され、変倍レンズ20により「平行光束化した偏向レーザビームSRL」に変換されて射出する。
即ち、調整用レンズ14Aによりレーザビームに与えられた発散傾向が、変倍レンズ20により相殺されて平行光束化されるのである。
図2において、調整用レンズ14Aは「軸対称な負レンズ」で、レーザビームにX方向とY方向の「発散傾向」を与える。
変倍レンズ20は「軸対称な正レンズ」であり、その物体側の焦点位置が、図2における点PF1になるように配置を定める。
調整用レンズ14AをZ方向へ変位させると「発散傾向を与えられたレーザビームの発散の起点」が光軸方向へ移動する。
そこで、調整用レンズ14Aの光軸方向への位置調整により、上記発散の起点が「点PF1に合致する」ようにする。
即ち、図2の例では、調整用レンズ14Aの物体側焦点位置と、変倍レンズ20の物体側焦点位置を、図2の点「PF1」において合致させる。
このようにすれば、変倍レンズ20からは平行光束化された偏向レーザビームSRLが射出することになる。
調整用レンズ14Aを「軸対称な負レンズ」としたことに応じて、受光用レンズ34Aも軸対称な負レンズとされる。
戻りレーザ光束BKLは、変倍レンズ20に入射すると、変倍レンズ20の作用により収束傾向を与えられ、偏向手段18に入射して反射される。
偏向手段18により反射された戻りレーザ光束BKLは、受光用光路屈曲ミラー36により光路を屈曲され、受光用レンズ34に入射する。
変倍レンズ20により収束傾向を与えられた戻りレーザ光束BKLは、収束状態のまま受光用レンズ34A(の像側焦点を集光点として)に入射する。
従って、受光用レンズ34Aに入射した戻りレーザ光束BKLは、受光用レンズ34Aの負の屈折力により平行光束化され、集光レンズ32により受光素子30に向かって集光され、受光素子30により受光される。
図1の実施の形態において用いられる調整用レンズ14と変倍レンズ20との「正の屈折力の組み合わせ」については、上に述べた。
即ち「調整用レンズ14を光軸方向に変位調整して変倍レンズ20への入射状態を調整して、偏向レーザビームSRLが平行光束状となるようにする」ことができればよい。
上には、調整用レンズ14として、X(もしくはY)方向にのみ正の屈折力を有するレンズ(正シリンダレンズ)とする場合を挙げた。
しかし、これに限らず、調整用レンズ14を、X方向とY方向に「互いに異なる正の屈折力」を持つ「正アナモルフィックレンズ」とすることができる。
この場合には、変倍レンズ20も、X方向とY方向に「互いに異なる正の屈折力」を持つ「正アナモルフィックレンズ」とする。
上記何れの場合にも、変倍レンズ20の形状に応じて、調整用レンズ14の形状を適切に設定し、調整用レンズ14を光軸方向へ変位調整して、変倍レンズ20から平行光束状の偏向レーザビームSRLを射出させることができる。
図2に示した調整用レンズ14Aと変倍レンズ20の関係も同様である。
即ち、調整用レンズ14Aは、上に挙げた軸対称な負レンズに限らず、X方向のみ、もしくはY方向にのみ負の屈折力を持つ「負シリンダレンズ」とすることもでき、また、X方向とY方向に「互いに異なる負の屈折力」を持つ「負アナモルフィックレンズ」とすることもできる。
これらの何れの場合も、変倍レンズ20の形状に応じて、調整用レンズ14Aの形態を「負シリンダレンズや負アナモルフィックレンズ」に設定し、調整用レンズ14Aを光軸方向へ変位調整して、調整用レンズ14Aの物体側焦点位置と、変倍レンズ20の物体側焦点位置を合致させることにより、変倍レンズ20から平行光束状の偏向レーザビームSRLを射出させることができる。
上には、図1、図2に示す実施の形態において、変倍レンズ20から「平行光束状」の偏向レーザビームSRLを射出させる場合を説明した。
しかし、前述したように、変倍レンズ20から射出させる偏向レーザビームは、平行光束に限らず、収束光束とすることも、発散光束とすることもできる。
これらの場合を簡単に説明する。
図3は、図1におけるレーザビーム投射装置の部分を示している。
説明の簡単のため、コリメートレンズ12から変倍レンズ20に至る光軸光線(コリメートレンズ12の光軸に合致する光線)を直線的に展開した状態で示している。
説明の具体性のため、調整用レンズ14、変倍レンズ20は、共に軸対称な正レンズであるとする。
調整用レンズ14は、光軸方向(図のZ方向)に変位可能である。
図3(a)、(b)において、調整用レンズ14の位置が「破線で示す位置」にあるときを調整用レンズ14の「基準位置」と呼ぶことにする。
調整用レンズ14が、基準位置にあるとき、その像側焦点位置は、変倍レンズ20の物体側焦点位置PFに合致している。従ってこの場合、前述したように、変倍レンズ20から射出する偏向レーザビームSRLは「破線」で示すように平行光束状である。
調整用レンズ14が、図3(a)に実線で示すように、基準位置よりもコリメートレンズ12側にずれると、調整用レンズ14の像側焦点の位置PFCは、変倍レンズ20の物体側焦点位置PFよりも物体側にずれる。
コリメートレンズ12からのレーザビームは、調整用レンズ14の像側焦点の位置PFCで集光したのち発散性となって変倍レンズ20に入射する。
このとき、前記像側焦点の位置PFCは、変倍レンズ20の物体側焦点の位置PFより物体側で、偏向レーザビームSRLCは収束光束として変倍レンズ20から射出する。
調整用レンズ14が、図3(b)に実線で示すように、基準位置よりも変倍レンズ20側にずれると、調整用レンズ14の像側焦点の位置PFDは、変倍レンズ20の物体側焦点の位置PFよりも像側にずれる。
この場合、前記像側焦点の位置PFDが焦点の位置PFよりも像側になるので、変倍レンズ20から射出する偏向レーザビームSRLDは「発散光束」になる。
図4は、図2におけるレーザビーム投射装置の部分を示している。
説明の簡単のために、コリメートレンズ12から変倍レンズ20に至る光軸光線を直線的に展開した状態で示している。
説明の具体性のため、調整用レンズ14A、変倍レンズ20は、共に軸対称なレンズであるとする。調整用レンズ14Aは「軸対称な負レンズ」である。
調整用レンズ14Aは、光軸方向(図のZ方向)へ変位可能である。
図4(a)、(b)において、調整用レンズ14Aの位置が「破線で示す位置」にあるときを調整用レンズ14Aの「基準位置」と呼ぶことにする。
調整用レンズ14Aが、基準位置にあるとき、その物体側焦点の位置は、変倍レンズ20の物体側焦点の位置PFに合致している。従ってこの場合、前述したように、変倍レンズ20から射出する偏向レーザビームSRLは「破線」で示すように平行光束状である。
調整用レンズ14Aが、図4(a)に実線で示すように、基準位置よりもコリメートレンズ12側にずれると、調整用レンズ14Aの物体側焦点の位置PFCは、変倍レンズ20の物体側焦点PFよりも物体側にずれる。
従って、この場合、コリメートレンズ12からのレーザビームは調整用レンズ14Aの物体側焦点の位置PFCを起点とする発散性の光束となって変倍レンズ20に入射する。
このとき、発散の起点PFCが焦点の位置PFよりも物体側になるので、変倍レンズ20から射出する偏向レーザビームSRLCは「収束性」になる。
調整用レンズ14Aが、図4(b)に実線で示すように、基準位置よりも変倍レンズ20側にずれると、調整用レンズ14Aの物体側焦点の位置PFDは、変倍レンズ20の物体側焦点の位置PFよりも像側にずれる。
從って、コリメートレンズ12からのレーザビームは、調整用レンズ14Aの物体側焦点の位置PFDを起点とする発散性の光束として変倍レンズ20に入射する。
このとき、前記発散の起点PFDが焦点の位置PFよりも像側になるので、変倍レンズ20から射出する偏向レーザビームSRLDは「発散性」になる。
なお、戻りレーザ光束BKLは、上述の如く、変倍レンズ20に入射するときには平行光束状態であるので、「検出手段」としては、図3、図4の場合も図1、図2におけると同様のものを用いることができる。
変倍レンズから射出する偏向レーザビームの光束形態は、レーザレーダ装置が実施される場合に、どのような状況で使用されるかに応じて、平行光束とするか、収束光束とするか、発散光束とするかは設計条件として定めることができる。
このような場合には、調整用レンズ14、14Aと変倍レンズ20との「光学的関係」を、偏向レーザビームの光束形態に応じて設定することができる。
このように設定された光学的関係を実現するように、レーザビーム投射装置の光学配置を設定して固定すれば、平行光束もしくは所望の「収束光束もしくは発散光束」の偏向レーザビームを実現できる。
ここで、調整用レンズ14や14Aの「光軸方向における変位」について述べる。
上に説明した実施の各形態においては、制御演算手段である制御演算部40が、調整用レンズ14や14Aの光軸方向への変位を行うようになっている。
即ち、制御演算部40は、調整用レンズ14や14Aを光軸方向へ変位させる「平行移動機構」を有し、平行移動の「向きや移動量を制御」する機能を有している。
上に図1、図2に即して説明した実施の形態においては、調整用レンズ14の像側焦点の位置や調整用レンズ14Aの物体側焦点の位置を、変倍レンズ20の物体側焦点の位置に合致させるために、調整用レンズ14、14Aの変位を行っている。
上に、図3、図4に即して説明したように、調整用レンズ14、14Aを光軸上で変位させることにより、変倍レンズ20から射出する偏向レーザビームの光束形態を、平行光束(SRL)、収束光束(SRLC)、発散光束(SRLD)に変化させることができる。
のみならず、偏向レーザビームが収束光束である場合や、発散光束である場合には「収束や発散の程度」も変化させることができる。
即ち、調整用レンズの光軸方向への変位調整により、変倍レンズから射出するレーザ光束の光束形態を変更可能である。
そこで、制御演算部40に「変倍レンズから射出する偏向レーザビームの光束形態を所望の形態」にするように、調整用レンズの変位を調整する機能を持たせることができる。
この調整は、制御演算部40に設けたCPU等の制御手段によるプログラミング制御で前記平行移動機構を制御して行うようにしてもよいし、平行移動機構を手動で調整できるようにしてもよい。
上には、調整用レンズ14、14A、変倍レンズ20の何れも「光軸の周りに回転対称な軸対称のレンズ」として説明した。
しかし、これらのレンズをシリンダレンズ等の「アナモルフィックレンズ」とすることもできる。
このような場合の1例として、調整用レンズと変倍レンズが共に「シリンダレンズ」である場合を、図5に即して説明する。
図5は、例えば、上の説明におけるXZ面内における「レーザ光束の光束径の変化」の様子を、レーザ光源10から変倍レンズ20Cに至る光路を仮想的に直線的に展開した状態として示している。
調整用レンズ14B、変倍レンズ20Cは共に「XZ面内において屈折力を持たないシリンダレンズ」である。
従って、レーザ光源10から放射され、コリメートレンズ12で平行光束化されたレーザビームの光束径は、図5に示すように「XZ面内」においては変化せず、平行光束状態を保って変倍レンズ20Cに入射する。
変倍レンズ20Cも「XZ面内では屈折力を持たない」から、変倍レンズ20Cから射出する偏向レーザビームSRLは、コリメートレンズ12により平行光束化された状態を保った平行状態である。
調整用レンズ14Bの、図5の図面に直交する方向(YZ面内)における断面形状は、図1の調整用レンズ14のような「正レンズの断面形状」であることも、図2に示す調整用レンズ14Aのような「負レンズの断面形状」であることもできる。
従って、YZ面内では、調整用レンズ14Bの変位により「変倍レンズ20Cに向かうレーザビーム」のYZ面内における発散の起点(前述の位置PFC、PFD)を変位させることができるが、その際「XZ面内」におけるレーザビームの光束径は変化しない。
従って、調整用レンズ14Bの変位を調整することにより、変倍レンズ20Cから射出する偏向レーザビームの「YZ面内の光束形態」のみを調整することができる。
以下に、この発明の「2次元型のレーザビーム投射装置」の特徴部分を、図1の実施の形態に即して説明する。
上記の如く、図1における「2次元走査型のレーザビーム投射装置」は、レーザ光源10、コリメートレンズ12、調整用レンズ14、照射用光路屈曲ミラー16、偏向手段18と変倍レンズ20とを有している。
照射用光路屈曲ミラー16は、光学系のレイアウト次第では省略することができる。
受光用光路屈曲ミラー36も、光学系のレイアウト次第では省略することができる。
変倍レンズ20は、軸対称な正レンズであることも、X、Y方向に屈折力の異なるアナモルフィックな正レンズであることもできる。
変倍レンズ20は「X方向及びY方向のうちの少なくとも一方における偏向角を縮小」する機能を持つ。
図1において、「変倍レンズ20の光軸AXを含み、Y方向に平行な平面(上の説明で「YZ平面」と呼んだもの)を「α平面」と呼ぶ。
図中の角:θαは、α平面内において偏向手段18が「変倍レンズ20に向かうレーザビーム」を偏向させる最大の偏向角(以下α平面内の「最大偏向角」と言う。)を表す。
レーザ光源10から放射されたレーザ光のうち、コリメートレンズ12の光軸と合致する光線を「中心光線」と呼ぶ。
「偏向角」は、偏向された中心光線と変倍レンズの光軸とがなす角である。
一方、α平面内において、最大偏向角:θαを持つレーザビームが変倍レンズ20に入射したとき、変倍レンズ20から射出する偏向レーザビームSRLの中心光線が、光軸AXに対してなす角:θDαを「Y方向の最大走査偏向角」と呼ぶ。
変倍レンズ20が「Y方向における偏向角を縮小する機能」を持つとは、α平面内において、最大走査偏向角:θDαが、最大偏向角:θαよりも小さい(θDα<θα)ことを意味する。
角:θDα、θαに正負を考えるときには「0≦|θDα|<|θα|である。
偏向手段18による「α平面内におけるYの正方向の偏向角」を一般に「θY(0≦θY≦θα)」とする。
また、偏向角:θYに対する走査偏向角(変倍レンズ20から射出する偏向レーザビームがα平面内で光軸AXに対してなす正の角)を「θy(0≦θy≦θDα)」とする。
このとき、α平面内において、即ちY方向において「偏向角の縮小」が行われる場合であれば、一般に「θY>θy」である。
このようにY方向において偏向角の縮小を行う場合、「Y方向における偏向角の縮小率(%)」を次式により定義する。
Y方向における偏向角の縮小率=「{1−(θy/θY)}×100」 。
なお、偏向手段18および変倍レンズ20によるレーザビームの偏向は、α平面内において、光軸AXに対して対称的である。
即ち、上に説明した偏向角:θYは、±θαの範囲で変化し、走査偏向角:θyは、±θDαの範囲で変化する。
図1は、前述の如く「α平面」内における偏向の様子を示しているが「α平面内における縮小コンセントリック係数」を以下のように定義する。
図1に示すように、変倍レンズ20の「入射側面」を入射面20A、射出側面を射出面20Bとする。
偏向手段18により、α平面内で光軸AXに対して最大偏向角:θαで偏向され、変倍レンズ20の入射面20Aで屈折したレーザビームの中心光線の、変倍レンズ20のレンズ内における部分を「α平面内におけるレンズ内中心光線」と呼び、符号PLで示す。
このレンズ内中心光線PLを、図の如く、α平面内において偏向手段18側へ延長した延長線ETLが、変倍レンズ20の光軸AXと「交点位置Qαで交わる」ものとする。
また、レンズ内中心光線PLは、変倍レンズ20の射出面20Bと交点位置qαで交わるものとする。
α平面内における「交点位置Qαとqαの間の距離」の光軸AX方向の成分を、図の如く「Aα」とする。
一方、変倍レンズ20の射出面20Bは、α平面内において、曲率半径:Rαを持つものとする。通常のレンズ面における曲率半径の定義に従い、曲率半径に正負を考える。
レーザビームは、変倍レンズ20を図の左方から右方へ透過するので、図の右方を「正方向」とする。射出面20Bの曲率中心は、図において、射出面の左方即ち「負の側」に位置する。従って、曲率半径:Rαは「負の大きさ」をもつ。
このとき、α平面内における縮小コンセントリック係数:Cαは、以下のように定義される。
Cα≡|Aα/Rα| 。
次に、図1において図面に直交する方向、即ち、X方向を考え、変倍レンズ20の光軸AXを含み、X方向に平行な平面を「β平面」と呼ぶ。
この「β平面」についても、上の説明と全く同様にして、偏向手段18による最大偏向角:θβ、X方向の最大走査偏向角:θDβを定義できる。
また、β平面内におけるXの正方向の偏向角:θX(0≦θX≦θβ)、偏向角:θXに対する走査偏向角(変倍レンズ20から射出する偏向レーザビームがβ平面内で光軸AXに対してなす正の角):θx(0≦θx≦θDβ)を定義できる。
この場合、β平面内において、即ちX方向において偏向角の縮小が行われる場合であれば、一般に「θX>θx」である。
このようにX方向において偏向角の縮小を行う場合は、次式により「X方向における偏向角の縮小率(%)」を定義する。
「X方向における偏向角の縮小率(%)」=「{1−(θx/θX)}×100」 。
偏向手段18および変倍レンズ20によるレーザビームの偏向は、β平面内においても光軸AXに対して対称的である。
即ち、上に説明した偏向角:θXは、±θβの範囲で変化し、走査偏向角:θxは、±θDβの範囲で変化する。
変倍レンズ20が「X方向における偏向角を縮小する機能」を持つとは、β平面内において、最大走査偏向角:θDβが、最大偏向角:θβよりも小さい(θDβ<θβ)ことを意味する。
偏向手段18により、β平面内で光軸AXに対して最大偏向角:θβをなして偏向され、変倍レンズ20の入射面20Aで屈折したレーザビームのレンズ内中心光線を、偏向手段18側に直線的に延長させた延長線が、光軸AXと交わる位置と、レンズ内中心光線と変倍レンズ20の射出面20Bとの交点位置との間の距離の、光軸AX方向の距離成分をAβとする。
また、変倍レンズ20の射出面20Bの「β平面内における曲率半径:Rβ」と、上記距離成分:Aβと、により、縮小コンセントリック係数:Cβを
Cβ≡|Aβ/Rβ|
で定義する。
上に説明したところから明らかなように、変倍レンズ20が軸対称で、偏向手段18による2次元的な偏向の最大角がX方向Y方向で同じであれば、縮小コンセントリック係数:CαとCβとは互いに等しい(Cα=Cβ)。
この発明の2次元走査型のレーザ投射装置は、縮小コンセントリック係数:Cα、Cβのうち「偏向角の縮小を行う方向」について、以下の条件を満足する。
(1α) 0.5≦Cα≦1.8
(1β) 0.5≦Cβ≦1.8 。
縮小コンセントリック係数の意味を、Cαを例にとって説明する。
縮小コンセントリック係数:Cαの定義から、明らかなように、Cαは「Aαが大きいほど」大きく、「Rαの絶対値が小さいほど」大きい。
最大偏向角:θαを持つレーザビームが、α平面内において「変倍レンズ20の入射面20Aで屈折される角度」が大きいほど、レンズ内中心光線PLは光軸AXに平行に近くなり、距離成分:Aαは大きくなる。
また、変倍レンズ20の射出面(凸面)20Bのα平面内での曲率半径:Rαの絶対値が小さいほど、最大走査偏向角:θDαも光軸AXに平行に近くなる。
これから分かるように、縮小コンセントリック係数:Cαは、α平面内における変倍レンズ20による縮小率に関連し、縮小コンセントリック係数:Cαが大きいほど「Y方向における偏向角の縮小率(%)」は大きい。
全く同様に、縮小コンセントリック係数:Cβが大きいほど「X方向における偏向角の縮小率(%)」は大きい。
偏向レーザビームSRLによる対象物の2次元走査を「質的な面」から見ると、以下の2つの点が重要になる。
即ち、2次元走査される偏向レーザビームSRLの「ビーム径」と「角度ディストーション」である。
「ビーム径」は、偏向レーザビームSRLが測距対象物にスポット状に照射されたときの照射部(以下「照射スポット」とも言う。)のサイズである。
良好な測距を実現できるためには、偏向レーザビームのビーム径が、偏向角によらず安定しており、角度ディストーションも小さいことが重要である。
ビーム径の劣化は、偏向角に応じ、変倍レンズの軸外収差である「コマ収差」により発生する。
例えば、変倍レンズのコマ収差が、偏向角に応じて増大するような場合、偏向角に大きいところでは「ビーム径」が崩れ、偏向角の大きい部分で測定の精度が劣化する。
角度ディストーションが大きくなると、走査軌跡が歪みやすくなり、取得する「対象物の3次元形状」に歪が生じやすい。
なお、「角度ディストーション」は以下のように定義される。
α平面内での角度ディストーションについて説明すると、α平面内で、偏向手段18を0.5度傾けたときの、変倍レンズ20による走査偏向角を「θα0」とする。
偏向手段18をα平面内で、θY傾けた時の変倍レンズ20による走査偏向角をθyとする。
このとき「角度ディストーション」は、以下のように算出される。
[{θy/(θα0×2θY)}×100]−100(%)
角度ディストーションは、走査偏向角:θyにつき、±θαの範囲で算出され、走査偏向角:θyの関数である。角度ディストーションの値は「負」である。
β平面内でのX方向についての角度ディストーションについても、同様に定義される。
上記縮小コンセントリック係数:Cα、Cβの上限値は、角度ディストーションに関連し、下限値は偏向レーザビームのビーム径、即ち、軸外収差に関連する。
縮小コンセントリック係数:Cα、Cβが上記条件(1α)、(1β)の上限を超えると、角度ディストーションの最大値が「−20%」を超え易く、走査軌跡の歪曲が目立ち易くなる。
縮小コンセントリック係数:Cα、Cβが上記条件(1α)、(1β)の下限を超えると、軸外収差が大きくなり、軸外において「ビーム径の劣化」をもたらし易くなる。
上記条件(1α)、(1β)は一般的な条件であり、変倍レンズの「材質やレンズ形状」によっても、条件(1α)、(1β)の上下限値の適正範囲は、上記範囲内で変動する。
例えば、変倍レンズ20の材質、特に屈折率でみると、屈折率が高い材料(例えばSF6)による変倍レンズの場合は、縮小コンセントリック係数の下限値は、条件(1α)、(1β)の下限値よりも大きめ(例えば0.6程度)が良い。
逆に、屈折率の低い材料(例えばBK7)による変倍レンズの場合には、縮小コンセントリック係数の上限値は、条件(1α)、(1β)の上限値よりも小さめ(例えば1.5程度)が良い。
上に説明した縮小コンセントリック係数:Cα、Cβは、上に説明した調整用レンズ14、14A、変倍レンズ20、20Cに許容される種々のレンズ形態においても、上記と全く同様に定義され、これらのレンズ形態の場合においても、偏向角の縮小を行う方向について、上記条件(1α)、(1β)を満足する。
調整用レンズと変倍レンズの形態(軸対称形状、シリンダ形状、アナモルフィックレンズ等)の組み合わせについては、上に説明した。
即ち、「変倍レンズの形状を調整用レンズの形態に応じて調整し、調整用レンズを光軸方向へ変位調整して、変倍レンズから、所望の光束形態の偏向レーザビームを射出させる」ことができるような組み合わせが許容される。
上に説明したように、この発明の2次元走査型のレーザビーム投射装置は、縮小コンセントリック係数:Cα、Cβに条件(1α)、(1β)を課することにより、軸外収差、角度ディストーションを許容範囲内に収める点に特徴がある。
従って、偏向レーザビームの光束形態は、偏向角に従って変動するが、この変動に伴うビーム径の変動は許容領域内に収められる。
以下、2次元走査型のレーザビーム投射装置の具体的な実施例を9例挙げる。
以下の実施例は、何れも、調整用レンズ・変倍レンズとも正レンズとし、平行光束状の偏向レーザビームを得るようにした場合の具体例である。
レーザ光源として用いられるレーザ光源は使用波長:870nmのものである。
各実施例においては、調整用レンズと変倍レンズに関するデータと、縮小コンセントリック係数を挙げる。
各実施例において、距離:Lは、変倍レンズの光軸に沿った「偏向手段と変倍レンズとの距離」を表し、距離:SLは「調整用レンズから変倍レンズの入射面までの、偏向角が0のときの距離」を表す。
なお、屈折率は使用波長に対するものであり、レンズは全て(SCHOTT製)である。
また、偏向手段による最大偏向角は、α平面、β平面内共に±30度である。
「実施例1」
実施例1に関する変倍レンズ、調整用レンズ、およびこれらのレイアウト、縮小コンセントリック係数を表1に示す。
実施例1において、変倍レンズは軸対称で、縮小コンセントリック係数:Cα、Cβは互いに等しい。
実施例1における偏向手段による偏向角と、変倍レンズによる走査偏向角を表2に示す。これらは前述のα平面及びβ平面におけるものであり、単位は「度」である。
変倍レンズが軸対称であるので、α平面、β平面におけるこれらの角は実質的に等しく、「偏向角の縮小率」はα平面内で「最大偏向角:±30度に対して51.2%」であり、β平面内でも実質的に等しい。
角度ディストーション(以下の表において「ANDT」と略記する。単位は「%」である。)を表3に示す。α平面内、β平面内ともに値は等しい。
「偏向角」と偏向レーザビームSRLのビーム径との関係を表4に示す。
α平面内、β平面内ともに値は等しい。
なお、実施例1〜9において「ビーム径」は変倍レンズの射出面から「3mの位置」におけるスポットダイヤグラムから求めた値である。
表2〜表4に示されたように、角度ディストーションの最大値も−11.1%と小さく、
走査軌跡の歪曲は小さく、取得された対象物の3次元画像の歪曲は目立ちにくい。
また、ビーム径の最大値も8.8mmと小さく、解像力は良好である。
「実施例2」
実施例2に関する変倍レンズ、調整用レンズ、およびこれらのレイアウト、縮小コンセントリック係数を表5に示す。
実施例2においても、変倍レンズは軸対称で、縮小コンセントリック係数:Cα、Cβは互いに等しい。
実施例2における偏向手段による偏向角と、変倍レンズによる走査偏向角を、表2に倣って表6に示す。
変倍レンズが軸対称であるので、α平面、β平面におけるこれらの角は実質的に等しく、「偏向角の縮小率」はα平面内で「最大偏向角:±30度に対して30.3%」であり、β平面内でも実質的に等しい。
角度ディストーションを表7に示す。α平面内、β平面内ともに値は等しい。
「偏向角」と偏向レーザビームSRLのビーム径との関係を表8に示す。α平面内、β平面内ともに値は等しい。
表6〜表8に示されたように、角度ディストーションの最大値も−6.6%と小さく、
走査軌跡の歪曲は小さく、取得された対象物の3次元画像の歪曲は目立ちにくい。
また、ビーム径の最大値も17.2mmと小さく、解像力は良好である。
「実施例3」
実施例3に関する変倍レンズ、調整用レンズ、およびこれらのレイアウト、縮小コンセントリック係数を表9に示す。
実施例3においても、変倍レンズは軸対称で、縮小コンセントリック係数:Cα、Cβは互いに等しい。
実施例3における偏向手段による偏向角と、変倍レンズによる走査偏向角を、表2に倣って表10に示す。
変倍レンズが軸対称であるので、α平面、β平面におけるこれらの角は実質的に等しく、「偏向角の縮小率」はα平面内で「最大偏向角:±30度に対して69.6%」であり、β平面内でも実質的に等しい。
角度ディストーションを表11に示す。α平面内、β平面内ともに値は等しい。
「偏向角」と偏向レーザビームSRLのビーム径との関係を表12に示す。α平面内、β平面内ともに値は等しい。
表10〜表12に示されたように、角度ディストーションの最大値は−20%以下で、走査軌跡の歪曲は小さく、取得された対象物の3次元画像の歪曲は目立ちにくい。
また、ビーム径の最大値も9.7mmと小さく、解像力は良好である。
「実施例4」
実施例4に関する変倍レンズ、調整用レンズ、およびこれらのレイアウト、縮小コンセントリック係数を表13に示す。
実施例4においては、変倍レンズの入射面は平面、射出面はX方向に軸を持つシリンダ面であり、従って、X方向には偏向角を縮小しない。
従って、縮小コンセントリック係数のうち、条件を満たすべきものは「Cα」である。
実施例4における偏向手段による偏向角と、変倍レンズによる走査偏向角を、表2に倣って表14に示す。
変倍レンズ20は、X方向には偏向角の縮小を行わず、Y方向における偏向角の縮小率は、最大偏向角:±30度に対して54.6%である。
α平面内の角度ディストーションを表15に示す。
α平面内における「偏向角」と偏向レーザビームSRLのビーム径との関係を表16に示す。
表14〜表16に示されたように、Y方向における角度ディストーションの最大値は−12.2%と小さい。従って、走査軌跡の歪曲は小さく、取得された対象物の3次元画像の歪曲は目立ちにくい。
また、ビーム径の最大値も7.6mmと小さく、解像力は良好である。
「実施例5」
実施例5に関する変倍レンズ、調整用レンズ、およびこれらのレイアウト、縮小コンセントリック係数を表17に示す。
実施例5においても、変倍レンズの入射面は平面、射出面はX方向に軸を持つシリンダ面であり、従って、X方向には偏向角を縮小しない。
従って、縮小コンセントリック係数のうち、条件を満たすべきものは「Cα」である。
調整用レンズ14の入射面もX方向に軸を持つシリンダ面である。
実施例5における偏向手段による偏向角と、変倍レンズによる走査偏向角を、表2に倣って表18に示す。
変倍レンズ20は、X方向には偏向角の縮小を行わず、Y方向における偏向角の縮小率は、最大偏向角:±30度に対して46.4%である。
α平面内の角度ディストーションを表19に示す。
α平面内における「偏向角」と偏向レーザビームSRLのビーム径との関係を表20に示す。
表18〜表20に示されたように、Y方向における角度ディストーションの最大値は−9.9%と小さい。従って、走査軌跡の歪曲は小さく、取得された対象物の3次元画像の歪曲は目立ちにくい。
また、ビーム径の最大値も7.9mmと小さく、解像力は良好である。
「実施例6」
実施例6に関する変倍レンズ、調整用レンズ、およびこれらのレイアウト、縮小コンセントリック係数を表21に示す。
実施例6においては、変倍レンズの入射面は平面、射出面はY方向に軸を持つシリンダ面であり、従って、Y方向には偏向角を縮小しない。
従って、縮小コンセントリック係数のうち、条件を満たすべきものは「Cβ」である。
調整用レンズ14の入射面もY方向に軸を持つシリンダ面である。
実施例6における偏向手段による偏向角と、変倍レンズによる走査偏向角を、表2に倣って表22に示す。
変倍レンズ20は、Y方向には偏向角の縮小を行わず、X方向における偏向角の縮小率は、最大偏向角:±25.7度に対して52.9%である。
β平面内における角度ディストーションを表23に示す。
β平面内における「偏向角」と偏向レーザビームSRLのビーム径との関係を表24に示す。
表22〜表24に示されたように、X方向における角度ディストーションの最大値は−9.9%と小さい。従って、走査軌跡の歪曲は小さく、取得された対象物の3次元画像の歪曲は目立ちにくい。
また、ビーム径の最大値も61.9mmと小さく、解像力は良好である。
「実施例7」
実施例7に関する変倍レンズ、調整用レンズ、およびこれらのレイアウト、縮小コンセントリック係数を表25に示す。
実施例7においても、変倍レンズの入射面は平面、射出面はY方向に軸を持つシリンダ面であり、従って、Y方向には偏向角を縮小しない。
従って、縮小コンセントリック係数のうち、条件を満たすべきものは「Cβ」である。
調整用レンズ14の入射面もX方向に軸を持つシリンダ面である。
実施例7における偏向手段による偏向角と、変倍レンズによる走査偏向角を、表2に倣って表26に示す。
変倍レンズは、Y方向には偏向角の縮小を行わず、X方向における偏向角の縮小率は、最大偏向角:±25.7度に対して37.9%である。
β平面内における角度ディストーションを表27に示す。
β平面内における「偏向角」と偏向レーザビームSRLのビーム径との関係を表28に示す。
表26〜表28に示されたように、X方向における角度ディストーションの最大値は−7.1%と小さい。従って、走査軌跡の歪曲は小さく、取得された対象物の3次元画像の歪曲は目立ちにくい。
また、ビーム径の最大値も35.9mmと小さく、解像力は良好である。
実施例6、実施例7では、表24、表28に示すように、偏向角の変化に対して「ビーム径の変動」が極めて小さく抑えられている。
「実施例8」
実施例8に関する変倍レンズ、調整用レンズ、およびこれらのレイアウト、縮小コンセントリック係数を表29に示す。
実施例8において、変倍レンズは軸対称で、縮小コンセントリック係数:Cα、Cβは互いに等しい。調整用レンズ14も軸対称である。
実施例8における偏向手段による偏向角と、変倍レンズによる走査偏向角を表30に示す。
変倍レンズが軸対称であるので、α平面、β平面におけるこれらの角は実質的に等しく、「偏向角の縮小率」はα平面内で「最大偏向角:±30度に対して51.2%」であり、β平面内でも実質的に等しい。
角度ディストーションを表31に示す。角度ディストーションは、α平面内・β平面内で同じ値である。
「偏向角」と偏向レーザビームSRLのビーム径との関係を表32に示す。
表31に示されたように、角度ディストーションの最大値は−9.6%と小さい。従って、走査軌跡の歪曲は小さく、取得された対象物の3次元画像の歪曲は目立ちにくい。
また、ビーム径の最大値も9.0mmと小さく、偏向角の変化に対して「ビーム径の変動」が小さく抑えられており、解像力は良好である。
「実施例9」
実施例9に関する変倍レンズ、調整用レンズ、およびこれらのレイアウト、縮小コンセントリック係数を表33に示す。
実施例9においても、変倍レンズは軸対称で、縮小コンセントリック係数:Cα、Cβは互いに等しい。調整用レンズ14も軸対称である。
実施例9における偏向手段による偏向角と、変倍レンズによる走査偏向角を表34に示す。
変倍レンズが軸対称であるので、α平面、β平面におけるこれらの角は実質的に等しく、「偏向角の縮小率」はα平面内で「最大偏向角:±30度に対して51.2%」であり、β平面内でも実質的に等しい。
角度ディストーションを表35に示す。角度ディストーションは、α平面内・β平面内で同じ値である。
「偏向角」と偏向レーザビームSRLのビーム径との関係を表36に示す。
表35に示されたように、角度ディストーションの最大値は−1.9%と極めて小さい。従って、走査軌跡の歪曲も極めて小さく、取得された対象物の3次元画像の歪曲は目立ちにくい。
また、ビーム径の最大値も5.1mmと小さく、偏向角の変化に対して「ビーム径の変動」が小さく抑えられており、解像力は良好である。
若干補足する。
実施例1〜9においては、調整用レンズと変倍レンズの位置関係は、調整用レンズにより収束するレーザビームの収束位置が、変倍レンズの物体側の焦点の位置(図1の点PF)に合致するように調整され、この状態で、変倍レンズから放射される偏向レーザビームSRLは「平行ビーム」となる。この場合の位置関係を「基準位置関係」と呼ぶ。
上の各実施例では、基準位置関係を満足するように「調整用レンズと変倍レンズの位置関係」を定めたのち、調整用レンズの光軸方向の位置を微調整している。
即ち、この微調整で、変倍レンズの射出面から3mの位置における「偏向レーザビームのビーム径」が、偏向角:0度と最大偏向角とで略等しくなるようにする。
この微調整により、変倍レンズとして軸対称なレンズを用いる実施例1ないし3、実施例8及び9において、α平面内とβ平面内とで「偏向角の縮小率」に微差が生じる。
この微差は以下の通りである。
実施例1
α平面内での縮小率:51.2%、β平面内での縮小率:49.6%
実施例2
α平面内での縮小率:30.3%、β平面内での縮小率:29.0%
実施例3
α平面内での縮小率:69.6%、β平面内での縮小率:67.5%
実施例8
α平面内での縮小率:51.2%、β平面内での縮小率:49.8%
実施例9
α平面内での縮小率:51.2%、β平面内での縮小率:49.8% 。
これらの実施例における「α平面内とβ平面内における縮小率の微差」は、上に示した縮小コンセントリック係数や角度ディストーションには実質的な影響を与えない。
付言すると、上に挙げた実施例9では、変倍レンズの入射面・射出面が共に球面となっている。入射面は凹球面、射出面は凸球面であり、曲率半径は共に負である。
このような場合、入射面の曲率半径をRA、射出面の曲率半径をRBとすると、これらの比:RA/RBは、ある程度大きいことが重要である。
例えば、実施例9のように変倍レンズを屈折率の大きい硝材で形成した場合だと、RA/RBは1.6以上であることが好ましい。
この場合に、RA/RBが1.6より小さいと、角度ディストーションが、偏向角の増大と共に大きくなり易い。
変倍レンズを、BK7のような屈折率の低い硝材で形成した場合だと、RA/RBは1.8以上であることが好ましい。
この場合にRA/RBが1.8より小さいと、角度ディストーションが、偏向角の増大と共に大きくなり易い。
実施例9では、RA/RB=1.87で、十分に大きい値となっており、角度ディストーションも良好である。
なお、軸外収差の軽減と言う観点からすると、コンセントリック係数:Cα、Cβの値は「1に近い」ことが好ましい。
上に示した実施例1〜9の2次元走査型のレーザビーム投射装置では、基本的に平行光束状の偏向レーザビームを得るものである。
しかし前述のように、変倍レンズから射出する偏向レーザビームの光束形態は、収束光束状とすることも、発散光束状とすることもできる。
1例として、上の実施例1において、調整用レンズ以外のデータをそのままにし、調整用レンズの入斜面の曲率半径のみを48.9mmから19.6mmに変えると、調整用レンズの正の屈折力が増大する。
このため、コリメートレンズから調整用レンズに入射した平行光束状のレーザビームは変倍レンズの焦点距離を「f」とすると、変倍レンズの物体側の距離:2fの位置に集光する。
従って、この点を物点とする変倍レンズによる像は、変倍レンズの像側の距離:2fの位置に等倍像として結像する。従って、変倍レンズから射出する偏向レーザビームは収束光束状となる。
実施例1〜9の2次元走査型のレーザビーム投射装置は、図1に示した如き検出手段、制御演算手段と組み合わせてレーザレーダ装置を構成できる。
以上のように、この発明によれば、以下の如き、2次元走査型のレーザビーム投射装置とレーザレーダ装置を実現できる。
[1]
レーザ光源10と、該レーザ光源から放射されるレーザ光束を平行光束化するコリメートレンズ12と、該コリメートレンズにより平行光束化されたレーザビームに、互いに直交するX方向及びY方向の2方向のうちの少なくとも1方向に収束傾向もしくは発散傾向を与える調整用レンズ14(14A)と、該調整用レンズを透過したレーザビームを、前記X方向及びY方向に2次元的に偏向させる偏向手段18と、正の屈折力を有し、前記偏向手段により2次元的に偏向されたレーザビームを入射され、前記X方向及びY方向のうちの少なくとも一方における偏向角を縮小した偏向レーザビームを射出させる変倍レンズ(20、20A)と、を有し、前記変倍レンズの光軸AXを、前記X、Y方向に直交するZ方向とし、該光軸含み、前記Y方向に平行な平面をα平面、前記X方向に平行な平面をβ平面とするとき、前記偏向手段18により、前記α平面内で前記光軸に対して最大偏向角:θαをなして偏向され、前記変倍レンズの入射面で屈折したレーザビームのレンズ内中心光線PLを、前記偏向手段側に直線的に延長させた延長線が、前記光軸と交わる位置と、前記レンズ内中心光線と前記変倍レンズの射出面との交点位置との間の距離の、前記光軸方向の距離成分をAα、前記変倍レンズの射出面の前記α平面内における曲率半径:Rαによる縮小コンセントリック係数:Cα(≡|Aα/Rα|)および、前記偏向手段18により、前記β平面内で前記光軸に対して最大偏向角:θβをなして偏向され、前記変倍レンズの入射面で屈折したレーザビームのレンズ内中心光線を、前記偏向手段側に直線的に延長させた延長線が、前記光軸と交わる位置と、前記レンズ内中心光線と前記変倍レンズの射出面との交点位置との間の距離の、前記光軸方向の距離成分をAβ、前記変倍レンズの射出面の前記β平面内における曲率半径:Rβによる縮小コンセントリック係数:Cβ(≡|Aβ/Rβ|)のうち、偏向角の縮小を行う方向について、条件:
(1α) 0.5≦Cα≦1.8
(1β) 0.5≦Cβ≦1.8
を満足する、2次元走査型のレーザビーム投射装置。
[2]
[1]記載のレーザビーム投射装置において、変倍レンズ(20、20C)から射出する偏向レーザビームSRLが平行光束となるように、調整用レンズ(14、14A、14B)と変倍レンズ(20、20C)の光学的関係が設定されていることを特徴とする2次元走査型のレーザビーム投射装置。
[3]
[1]記載のレーザビーム投射装置において、変倍レンズ(20、20C)から射出する偏向レーザビームが収束性もしくは発散性の光束SRLC、SRLDとなるように、調整用レンズ(14、14A、14B)と変倍レンズ(20、20C)の光学的関係が設定されていることを特徴とする2次元走査型のレーザビーム投射装置。
[4]
[1]記載のレーザビーム投射装置において、調整用レンズ(14、14A、14B)の光軸方向への変位調整により、変倍レンズ(20、20C)から射出する偏向レーザビームの光束形態が変更可能である2次元走査型のレーザビーム投射装置。
[5]
[1]ないし[4]の何れか1に記載のレーザビーム投射装置において、調整用レンズ(14、14A)および変倍レンズ(20)がともに、光軸の周りに回転対称な軸対称のレンズである2次元走査型のレーザビーム投射装置。
[6]
[1]ないし[4]の何れか1に記載のレーザビーム投射装置において、調整用レンズ14Bおよび変倍レンズ20Cが共に、α平面内もしくはβ平面内において屈折力をもたないシリンダレンズである2次元走査型のレーザビーム投射装置。
[7]
[1]ないし[4]の何れか1に記載のレーザビーム投射装置において、調整用レンズおよび変倍レンズが共に、α平面内とβ平面内とで屈折力のことなるアナモルフィックなレンズである2次元走査型のレーザビーム投射装置。
[8]
レーザ光源から放射されるレーザ光束を、偏向レーザビームとして2次元的に走査して対象物に照射し、該対象物による反射光を戻りレーザ光束として受光素子により受光し、前記対象物までの距離を測定するレーザレーダ装置であって、レーザ光源10からのレーザ光束を、偏向レーザビームSRLとして2次元的に走査して対象物に照射する2次元型のレーザビーム投射装置と、前記対象物により反射された戻りレーザ光束BKLを検出する検出手段(30、32、34、34A)と、前記レーザビーム投射装置と検出手段を制御し、レーザ光が対象物までの距離を往復する時間を測定して、前記対象物までの距離を演算する制御演算手段40と、を有し、前記レーザビーム投射装置として[1]ないし[7]の何れか1に記載の2次元型のレーザビーム投射装置を用いるレーザレーダ装置。
[9]
[8]記載のレーザレーダ装置において、2次元型のレーザビーム投射装置における制御演算手段40が、調整用レンズ(14、14A、14B)を光軸方向へ位置調整可能であるレーザレーダ装置。
以上、発明の好ましい実施の形態について説明したが、この発明は上述した特定の実施形態に限定されるものではなく、上述の説明で特に限定していない限り、特許請求の範囲に記載された発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
この発明の実施の形態に記載された効果は、発明から生じる好適な効果を列挙したに過ぎず、発明による効果は「実施の形態に記載されたもの」に限定されるものではない。
なお、この発明の2次元走査型のレーザビーム投射装置は、偏向手段による偏向角を1/5ないし1/1.2程度に縮小する場合に有効であり、解像度の向上、走査エリアを目的の範囲に調整できる。