JP6416666B2 - 表面保護フィルム、及び、表面保護フィルム付きプリズムシート - Google Patents
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Description
このような被着体の表面に表面保護フィルムを貼り付けた場合、大きな接触面積を得ることができず被着体と表面保護フィルムとの界面で剥離が生じやすいため、高い粘着力の表面保護フィルムが必要となる。
しかしながら、自己回復性プリズムシートは、表面保護フィルムを貼り付ける際の圧力によってプリズム層の凹凸形状が極めて微小な領域で変形し、その後、弾性回復するため、時間が経過すると表面保護フィルムの剥離が生じやすいという問題がある。
また、近年、コストダウンの目的により、樹脂製の鋳型を使用するソフトモールド法によるプリズムシートの生産が実施されており、ソフトモールド法により製造されたプリズムシート表面に離型剤がブリードアウトしやすく、時間が経過すると表面保護フィルムの剥離が生じやすいという問題がある。このような剥離は、樹脂製の鋳型に含まれる離型剤がプリズムシートに転写されることが原因であると推測される。
A:芳香族アルケニル化合物単位を80重量%以上の含有率で含有する芳香族アルケニル重合体
B:共役ジエン化合物単位を50重量%以上の含有率で含有し、共役ジエン化合物由来のビニル結合を50モル%以上の含有率で含有する共役ジエン重合体
C:芳香族アルケニル化合物単位と、共役ジエン化合物単位とを含有し、前記芳香族アルケニル化合物単位の含有率が50重量%以上95重量%未満である芳香族アルケニル−共役ジエン共重合体
以下、本発明を詳述する。
上記粘着剤層は、スチレン系エラストマーと、フェノール樹脂とを含有し、上記スチレン系エラストマーは、一般式A−B−Cで表される構造を有する共重合体又はその水素添加物である。
A:芳香族アルケニル化合物単位を80重量%以上の含有率で含有する芳香族アルケニル重合体
B:共役ジエン化合物単位を50重量%以上の含有率で含有し、共役ジエン化合物由来のビニル結合を50モル%以上の含有率で含有する共役ジエン重合体
C:芳香族アルケニル化合物単位と、共役ジエン化合物単位とを含有し、前記芳香族アルケニル化合物単位の含有率が50重量%以上95重量%未満である芳香族アルケニル−共役ジエン共重合体
上記粘着剤層に上記スチレン系エラストマー、及び、粘着付与剤のなかでも上記フェノール樹脂を配合することで、自己回復性プリズムシート等に対しても、粘着力(初期粘着力)が高く、時間が経過しても高い粘着力を維持できる表面保護フィルムが得られる。
上記芳香族アルケニル化合物単位は、芳香族アルケニル化合物に由来する繰り返し単位であり、該芳香族アルケニル化合物として、例えば、スチレン、tert−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1−ジフェニルエチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン、ビニルピリジン等が挙げられる。なかでも、工業的に入手しやすいことから、スチレンが好ましい。
なお、繰り返し単位の「含有率」とは、その繰り返し単位が由来するモノマーに換算した重量比、即ち、全モノマーの重量に対する、その繰り返し単位が由来するモノマーの重量の比(重量%)を意味する。
上記芳香族アルケニル化合物単位以外の繰り返し単位として、例えば、共役ジエン化合物(例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン)、(メタ)アクリル酸エステル化合物等に由来する繰り返し単位が挙げられる。なかでも、上記芳香族アルケニル化合物との共重合性が高いことから、1,3−ブタジエン、イソプレンが好ましい。
上記共役ジエン化合物単位は、共役ジエン化合物に由来する繰り返し単位であり、該共役ジエン化合物として、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−オクタジエン、1,3−ヘキサジエン、1,3−シクロヘキサジエン、4,5−ジエチル−1,3−オクタジエン、3−ブチル−1,3−オクタジエン、ミルセン、クロロプレン等が挙げられる。これらの共役ジエン化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、重合反応性が高く、工業的に入手しやすいことから、1,3−ブタジエン、イソプレンが好ましい。
上記共役ジエン化合物単位以外の繰り返し単位として、例えば、芳香族アルケニル化合物等に由来する繰り返し単位が挙げられる。なかでも、共役ジエン化合物との共重合性が高いという理由から、スチレンが好ましい。
なお、ビニル結合の「含有率」とは、赤外吸収スペクトルを用いてモレロ法により算出した、1,2−ビニル結合及び3,4−ビニル結合の総含有率を意味する。
上記スチレン系エラストマーを上記Cで表される芳香族アルケニル−共役ジエン共重合体を含むものとすることで、表面保護フィルムの経時粘着力を向上させることができる。
上記芳香族アルケニル化合物単位としては、上述したAで表される芳香族アルケニル重合体に含まれるものと同様の芳香族アルケニル化合物単位が挙げられる。上記共役ジエン化合物単位としては、上述したBで表される共役ジエン重合体に含まれるものと同様の共役ジエン化合物単位が挙げられる。
また、上記芳香族アルケニル化合物単位の含有率は、上記Cで表される芳香族アルケニル−共役ジエン共重合体中でテーパー状に変化すること、即ち、連続的に漸増又は漸減することが好ましい。これにより、表面保護フィルムの経時粘着力を更に向上させることができる。
上記一般式A−B−Cで表される構造を有する共重合体又はその水素添加物の重量平均分子量は特に制限はないが、好ましい下限が3万、好ましい上限が50万である。上記重量平均分子量が3万未満であると、共重合体又はその水素添加物を脱溶媒し、乾燥させる工程において製造設備等に共重合体又はその水素添加物が付着してしまい共重合体又はその水素添加物の工業的な生産が困難となることがある。上記重量平均分子量が50万を超えると、共重合体又はその水素添加物の溶剤への溶解性又は熱溶融性が悪くなり、粘着体への加工が困難になることがある。上記重量平均分子量のより好ましい下限は8万、より好ましい上限は30万であり、更に好ましい下限は10万、更に好ましい上限は20万である。
なお、水素添加の比率(水素添加率)は、四塩化炭素を溶媒として用い、270MHzでのlH−NMRスペクトルから算出した水素添加率を意味する。
特に、上記工程(c)においては、上記A−B構造を有する共重合体に対して、まず、共役ジエン化合物を添加して重合を開始し、該共役ジエン化合物の重合が進行している途中で更に芳香族アルケニル化合物を添加すること(逐次重合)が好ましい。これにより、上記芳香族アルケニル化合物単位の含有率が上記Cで表される芳香族アルケニル−共役ジエン共重合体中でテーパー状に変化する、即ち、連続的に漸増又は漸減する共重合体又はその水素添加物を作製することができ、表面保護フィルムの経時粘着力を更に向上させることができる。
上記ポリオレフィン樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、及びポリプロピレン(ホモポリマー、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー)等が挙げられる。
これらは単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、ポリオレフィンは、置換基を有するポリオレフィンであってもよく、ポリオレフィン以外の樹脂が添加されていてもよい。さらに、表面保護フィルムの製造過程で生じた、ポリオレフィン基材層の端材や表面保護フィルムの端材が添加されていてもよい。
上記表面に凹凸形状を有する被着体は特に限定されず、例えば、プリズムシート、拡散フィルム等の液晶ディスプレイ用の光学部材等が挙げられる。なかでも、本発明の表面保護フィルムは、プリズムシートのプリズム層に貼り付けられて用いられることが好ましく、自己回復性プリズムシートのプリズム層、又は、樹脂製の鋳型を使用するソフトモールド法により製造されたプリズムシートのプリズム層に貼り付けられて用いられることがより好ましく、自己回復性プリズムシートのプリズム層に貼り付けられて用いられることが特に好ましい。本発明の表面保護フィルムは、自己回復性プリズムシート等に対しても、粘着力(初期粘着力)が高く、時間が経過しても高い粘着力を維持することができる。
図1に、本発明の表面保護フィルムが自己回復性プリズムシートに貼り付けられた状態の一例を示す模式図を示す。図1においては、透明フィルム6の表面にプリズム層7を有する自己回復性プリズムシート4のプリズム層7に、表面保護フィルム1が貼り付けられている。表面保護フィルム1は、基材層2と、粘着剤層3とを有している。
なお、自己回復性プリズムシートとは、液晶ディスプレイの製造時にプリズム層(プリズム面)の凹凸形状が極めて微小な領域で変形した場合であっても凹凸形状が弾性回復できるプリズムシートをいい、JIS R1639−5に従い、加重20gfになるまでプリズムシートを変形させた後で加重を取り除いた場合、加重を取り除いてから3秒後に変形が確認できないプリズムシートを意味する。
(a)Aで表される芳香族アルケニル重合体の合成
窒素置換された反応容器に、脱気及び脱水されたシクロヘキサン500重量部、芳香族アルケニル化合物としてスチレン7.5重量部及びテトラヒドロフラン5重量部を仕込み、重合開始温度の40℃にてn−ブチルリチウム0.10重量部を添加して、昇温重合を行った。
スチレンの重合転化率がほぼ100%に達した後、反応液を15℃に冷却し、次いで、共役ジエン化合物として1,3−ブタジエン85重量部を加え、更に昇温重合を行った。一部取り出したポリマーを赤外吸収スペクトルを用いてモレロ法により算出したところ、共役ジエン化合物由来のビニル結合の含有率は50モル%であった。
1,3−ブタジエンの重合転化率がほぼ100%に達した後、反応液を80℃にし、次いで、共役ジエン化合物として0.375重量部、芳香族アルケニル化合物として7.125重量部を加え、更に昇温重合を行った。重合転化率がほぼ100%に達した後、水素ガスを0.4MPa−Gauge圧力で供給しながら10分間放置した。一部取り出したポリマーをGPC分析したところ、重量平均分子量は約20万であった。
反応容器内に、ジエチルアルミニウムクロライド0.03重量部及びビス(シクロペンタジエニル)チタニウムフルフリルオキシクロライド0.06重量部を加え、撹拌した。水素ガス供給圧0.7MPa−Gauge、反応温度80℃で水素添加反応を開始し、水素の吸収が終了した時点で、反応溶液を常温、常圧に戻し、反応容器から抜き出すことにより、A−B−C構造を有する共重合体の水素添加物を得た。
(a)Aで表される芳香族アルケニル重合体の合成
窒素置換された反応容器に、脱気及び脱水されたシクロヘキサン500重量部、芳香族アルケニル化合物としてスチレン7.5重量部及びテトラヒドロフラン5重量部を仕込み、重合開始温度の40℃にてn−ブチルリチウム0.10重量部を添加して、昇温重合を行った。
スチレンの重合転化率がほぼ100%に達した後、反応液を15℃に冷却し、次いで、共役ジエン化合物として1,3−ブタジエン85重量部を加え、更に昇温重合を行った。一部取り出したポリマーを赤外吸収スペクトルを用いてモレロ法により算出したところ、共役ジエン化合物由来のビニル結合の含有率は50モル%であった。
1,3−ブタジエンの重合転化率がほぼ100%に達した後、反応液を80℃にし、次いで、芳香族アルケニル化合物としてスチレン7.5重量部を加え、更に昇温重合を行った。スチレンの重合転化率がほぼ100%に達した後、水素ガスを0.4MPa−Gauge圧力で供給しながら10分間放置した。一部取り出したポリマーをGPC分析したところ、重量平均分子量は約20万であった。
反応容器内に、ジエチルアルミニウムクロライド0.03重量部及びビス(シクロペンタジエニル)チタニウムフルフリルオキシクロライド0.06重量部を加え、撹拌した。水素ガス供給圧0.7MPa−Gauge、反応温度80℃で水素添加反応を開始し、水素の吸収が終了した時点で、反応溶液を常温、常圧に戻し、反応容器から抜き出すことにより、A−B−A構造を有する共重合体の水素添加物を得た。
合成例1で得られたスチレン系エラストマー(A−B−C構造)100重量部、粘着付与剤(商品名「YSポリスターTH130」、テルペンフェノール樹脂、ヤスハラケミカル社製、軟化点130℃)20重量部を配合し、ラボプラストミル二軸押出機を用いて攪拌混合し、粘着剤組成物を調製した。
基材層の原料としてポリオレフィン樹脂(商品名「J715M」、ポリプロピレン、プライムポリマー社製)を、粘着剤層の原料として上記で得られた粘着剤組成物を用い、Tダイ法により共押出成形し、基材層36μm、粘着剤層4μmの表面保護フィルムを得た。
粘着付与剤(商品名「YSポリスターTH130」、テルペンフェノール樹脂、ヤスハラケミカル社製、軟化点130℃)20重量部を、30重量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、表面保護フィルムを得た。
粘着付与剤(商品名「YSポリスターTH130」、テルペンフェノール樹脂、ヤスハラケミカル社製、軟化点130℃)20重量部を、粘着付与剤(商品名「YSポリスターUH115」、テルペンフェノール樹脂、ヤスハラケミカル社製、軟化点115℃)30重量部、40重量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、表面保護フィルムを得た。
合成例1で得られたスチレン系エラストマー(A−B−C構造)を、合成例2で得られたスチレン系エラストマー(A−B−A構造)に変更したこと以外は実施例1〜4と同様にして、表面保護フィルムを得た。
粘着付与剤(商品名「YSポリスターTH130」、テルペンフェノール樹脂、ヤスハラケミカル社製、軟化点130℃)20重量部を、粘着付与剤(商品名「AP100」、石油樹脂、荒川化学工業社製、軟化点100℃)20重量部、40重量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、表面保護フィルムを得た。
実施例、比較例で得られた表面保護フィルムについて、以下の評価を行った。結果を表1に示した。
表面保護フィルムを25mm幅に裁断した。裁断した表面保護フィルムを、自己回復性プリズムシート(厚さ130μm、アクリル樹脂製、ピッチ50μmかつ高さ25μmのプリズム層を有する)のプリズム層(プリズム面)に、室温23℃、相対湿度50%で、2kgの圧着ゴムローラーを用いて300mm/minの速度で貼り付けた。その状態で30分間放置した後、JIS Z0237に準拠し、表面保護フィルムを300mm/minの速度で引き剥がして180度剥離強度を測定した。
○ 0.07N/25mmを超える
△ 0.04N/25mmを超え0.07N/25mm以下
× 0.04N/25mm以下
表面保護フィルムを25mm幅に裁断した。裁断した表面保護フィルムを、自己回復性プリズムシート(厚さ130μm、アクリル樹脂製、ピッチ50μmかつ高さ25μmのプリズム層を有する)のプリズム層(プリズム面)に、室温23℃、相対湿度50%で、2kgの圧着ゴムローラーを用いて300mm/minの速度で貼り付けた。その状態で23℃、2週間静置した後、JIS Z0237に準拠し、表面保護フィルムを300mm/minの速度で引き剥がして180度剥離強度を測定した。
○ 0.07N/25mmを超える
△ 0.04N/25mmを超え0.07N/25mm以下
× 0.04N/25mm以下
表1において「浮き」とは、自己回復性プリズムシートの表面から表面保護フィルムが浮き上がり、剥離したことを示す。
2 基材層
3 粘着剤層
4 自己回復性プリズムシート
6 透明フィルム
7 プリズム層
Claims (3)
- 基材層と、粘着剤層とを有する表面保護フィルムであって、
前記粘着剤層は、スチレン系エラストマーと、フェノール樹脂とを含有し、
前記スチレン系エラストマーは、一般式A−B−Cで表される構造を有する共重合体又はその水素添加物である
ことを特徴とする表面保護フィルム。
A:芳香族アルケニル化合物単位を80重量%以上の含有率で含有する芳香族アルケニル重合体
B:共役ジエン化合物単位を50重量%以上の含有率で含有し、共役ジエン化合物由来のビニル結合を50モル%以上の含有率で含有する共役ジエン重合体
C:芳香族アルケニル化合物単位と、共役ジエン化合物単位とを含有し、前記芳香族アルケニル化合物単位の含有率が50重量%以上95重量%未満である芳香族アルケニル−共役ジエン共重合体 - 自己回復性プリズムシートのプリズム層に貼り付けられて用いられることを特徴とする請求項1記載の表面保護フィルム。
- 自己回復性プリズムシートのプリズム層に、請求項1又は2記載の表面保護フィルムが貼り付けられていることを特徴とする表面保護フィルム付きプリズムシート。
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