以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
[第1の実施形態]
本発明に係る車両の盗難防止装置は、第1の実施形態では、図1に示す車両の管理システム10に適用される。車両の管理システム10は車両側に搭載される車載監視システム11と、駐車場監視システム12と、車両の所有者側システム13と、これらのシステム間での情報を管理する管理センター14とを備える。ここで、車両28とは、乗用車、トラック、バス、自動二・三輪車、自動車等の乗物の各種の形態を含むものである。
駐車場監視システム12は、駐車場の出入り口に設置され、入出庫される車両28の入出庫時間とナンバープレートの情報を検出するようになっている。駐車場は、空港や港湾の大規模駐車場、立体駐車場、ディズニーランドやハウステンボス等の遊園地の駐車場、高速道路のサービスエリアの駐車場、大都市の地下駐車場、デパートやショッピングモール、道の駅等の商業施設の駐車場、ホテルや集合住宅、会社や個人住宅等の駐車場を対象とする。
中でも、マンションや住宅等の敷地に形成される駐車場は、一例として図2〜図10に示すように構成される。駐車場を新設する場合には、駐車場予定地17を整地した後、図2に示すように型枠18で囲み、図3に示すように梁配筋19を周辺や所望の間隔をおいて配筋し、配設する一方、(予定される駐車スペース列の一側に沿って)形鋼梁20を吊り降ろして、敷設する。形鋼梁20は、H形鋼、T形鋼、山形鋼、溝形鋼またはZ形鋼等で構成される。敷設された形鋼梁20、例えばH形鋼梁には、図3および図4に示すように、長手方向に所要のピッチで吊りボルト等の固定構造物21がねじ結合され、溶着等で堅固に固定される。
形鋼梁20および梁配筋19が敷設された後、図5に示すようにスラブ配筋22が組み込まれる。スラブ配筋22は、梁配筋19内の短辺方向の主筋と長辺方向の耐力筋とが縦横方向に升目状あるいは格子状に組み付けられ、配筋される。主筋および耐力筋の鉄筋は、上下二層に分けて配筋される。上層の耐力筋はスペーサ23で所要間隔毎に保持され、梁配筋19とスラブ配筋22は一体に組み付けられる。
形鋼梁20、梁配筋19およびスラブ配筋22を配設した後、図6および図7に示すようにコンクリート24が打設される。打設されたコンクリート表面を均すことにより、鉄筋コンクリート製の床スラブ25が基礎スラブとして構成される。所要の養生期間を経て型枠18等を取り除くことにより、鉄筋コンクリート製の床スラブ25が駐車場26として構成される。
駐車場26の床スラブ25には、形鋼梁20が埋設されている。埋設された形鋼梁20には、埋設状態で梁配筋19やスラブ配筋22が一体に組み付けられており、形鋼梁20には少なくとも露出面に防錆塗料が塗布され、錆止め処理が施される。また、形鋼梁20上に突出する吊りボルト(アイボルト)等の固定構造物21は駐車場26の床スラブ25に堅固に固定される。
鉄筋コンクリート製の床スラブ25が完成した後に、床構造の床スラブ25は、車両の出入り口を除いて周りをフェンス等で囲み、駐車場26が構成される。駐車場26の出入り口には、車両28の入出庫を感知(センシング)するセンサーやカメラ等からなる駐車場システム12が設置される。駐車場システム12は、赤外線センサー等のセンサーで車両の入出庫がセンシングされ、付設されたカメラで入出庫される車両の少なくともナンバープレートが撮影される。
また、駐車場26にはその床スラブ25上に入庫された車両28の駐車スペースに位置決めするために、駐車スペースが画成される。
そして、駐車場26に埋設された形鋼梁20に固定の固定構造物21を利用して、駐車場26の駐車スペースに駐車された車両28を、図8および図9に示すように、市販の安価な錠付きケーブル(ワイヤ、チェーン)29を用いて駐車位置で機械的に施錠可能に固定させ、車両盗難を防止することができる。車両28が図8に示す乗用車30である場合には、車体前方下部や後方下部の牽引部材(固定フック)を利用して、また、図9に示すモータサイクル31である場合には、車輪32間のスペースを利用して錠付きケーブル29を懸架させ、機械的に固定させることができる。
錠付きケーブル29は、乗用車30のクランクやモータサイクル31の収納ボックスに持運び自在に収納させることができ、また、駐車場26が個人住宅の車庫等である場合には、形鋼梁20に固定の固定構造物21に備え付けておくことができる。錠付きケーブル29は、鍵穴に鍵(プレート)を差し入れて施錠したり、解錠することができるものであればよい。図10に示すように数字合せで施錠したり、解錠するものでもよい。
このように、駐車場26に埋設して固定される形鋼梁20の固定構造物21と駐車車両に固定の牽引部材との間で錠付きケーブル(ワイヤ、チェーン)29を掛け渡し可能に施錠し、ロックすることで、機械的な車両の盗難防止装置35が構成される。自動二輪車(モータサイクル)31等の場合には、その車輪32が駐車車両の牽引部材として用いられる。錠付きケーブル29は、持運び可能な市販品が用いられる。錠付きケーブル29は車両のトランクやモータサイクルの収納ボックスに取出し自在に収納することができる。錠付きケーブル29は駐車場26に埋設された固定構造物21に取り付け、備え付けておくこともできる。
車両の盗難防止装置35は、駐車場26で埋設された形鋼梁20に固定の固定構造物21を活用して駐車車両、特に自両の牽引部材を錠付きケーブル29で接続して固定することで、駐車車両を駐車場26に位置決め状態で固定し、車両の盗難防止を機械的、物理的に図ることができる。
[第2の実施形態]
車両の管理システム10は、第1の実施形態の車両の盗難防止装置35では、駐車車両の盗難を機械的あるいは物理的に防止する例を説明したが、第1の実施形態の車両の盗難防止装置35と併用し、あるいは第1の実施形態とは別に車両の盗難防止を遠隔地から監視可能な第2の実施形態に示される車両の盗難防止装置40が設けられる。
第2の実施形態では、車両の管理システム10Aとして、遠隔地から監視可能な車両の盗難防止装置40は、図11に示すように車両側に搭載される車載監視システム41と、駐車場や管理センター等の構造物(駐車場)側設置の中央監視システム42とを備える。車載監視システム41と中央監視システム42とは広域ネットワーク43等の通信手段によって互いに通信可能に接続される一方、両システム41,42にBluetooth(登録商標)等の近距離無線通信装置44,45が備えられており、近距離無線通信装置44,45は、例えば100m程度以内の通信可能エリアで無線により互いに通信可能に接続される。
近距離無線通信装置44,45は、Bluetoothに代えて、13.56MHzの周波数帯を用いたNFC(Near Field Communication)の通信システムでもよい。
また、車載監視システム41は、車両28に搭載される。車両28は、エンジンのみを動力源とする車両、モータのみを動力源とする車両、またはエンジンとモータとを動力源とするハイブリッド車両を対象とする。車両は、乗用車の他に、トラック、バス、自動二輪車(モータサイクル)、バギー車両等の乗物の各種の形態を対象とする。
車載監視システム41は、盗難防止装置50、車両用ナビゲーション装置51、警報装置52、キーシステム53、近距離無線通信装置44および通信端末54を有する。盗難防止装置50、車両用ナビゲーション装置51、警報装置52、キーシステム53、近距離無線通信装置44および通信端末54等は車内LAN55を介してデータ通信可能に構成されている。
盗難防止装置50は、いわゆるイモビライザーとして機能し、電子的なキーによる照合によって、不正なキーによる侵入やエンジン始動を防ぐもので、所有者以外の者が車両28に対して不正な操作を行なおうとすると、エンジン点火回路が自動的に遮断され、エンジン始動が阻止される。盗難防止装置50は、電子的キーのIDコードと車両本体内の予め登録されたIDコードが一致しないとエンジン等の動力源が始動しない装置である。
また、盗難防止装置50は、音センサー、振動センサー、傾きセンサー、記憶装置やマイコン等の制御装置を有している。音センサーは、車両28に発生する音を検出し、検出音の大きさを検出信号として制御装置に出力するものである。振動センサーは、車両28の振動を検出し、その振動振幅の大きさを検出信号として制御装置に出力するものである。また、傾きセンサーは、車両28の水平面に対する傾斜角を検出し、その検出角に応じた検出信号を制御装置に出力するものである。
音センサーや振動センサー、傾きセンサーの各種センサーからの検出信号は、車両盗難の虞に関連するもので、駐車車両に大きな音が発生したり、車両が激しく揺れたり、車両が大きく傾いたりした場合には、車両盗難の可能性が高い。なお、記憶装置は、マイコン実行用のプログラムおよび各種センサーの閾値のデータを記憶する記憶媒体である。
盗難防止装置50の制御装置は、CPU,ROM,RAM等を有するマイコンである。そして、盗難防止装置50は、車両28を不正に移動させようとする行為を検出すると、警報音を発生させ、盗難防止処理を実行する警報装置としても機能する。
警報装置52は、車両ホーン制御装置と車両ライト制御装置とを有する。車両ホーン制御装置は車両28の警告ホーンおよびホーンの吹鳴を制御する装置である。車両ライト制御装置は車両28の照明機器(例えば、ヘッドライト、ブレーキランプ)およびその点滅を制御する装置である。警報装置52は、盗難防止装置50から車両28の不正移動等を検出すると、この検出信号を入力し、音や光で警報を発するものである。
また、車両用ナビゲーション装置51は、GPS衛星からの信号を通信端末54で受信して、入力され、車両28の走行位置を地図上に表示するナビゲーション装置である。車両用ナビゲーション装置51は、ユーザインタフェース機器であり、ディスプレイ装置と音声入出力装置とを備える。通信端末54は、無線等の通信回線を利用して、広域ネットワーク43を経由するデータ通信を提供したり、車両LAN55にも接続されている。
その上、車両28に搭載される車載監視システム41は、車両所有者の携帯端末66と通信可能に構成される。携帯端末66は、スマートフォンやタブレット、携帯電話で構成され、自車両の車載監視システム41とデータ通信可能に形成される。
また、車載監視システム41は、駐車場側設置の中央監視システム42と近距離の無線通信を行なう近距離無線通信装置44が備えられる。近距離無線通信装置44は、車両28に搭載される移動局であり、ショッピングモール、企業や住宅駐車場等のように、比較的近距離、例えば100m程度以内(無線通信可能エリア内)の近距離の無線通信に適した装置である。近距離無線通信装置44には、車両側の振動を検出する振動検出装置56と、車両側の振動発生時間を検出する時間検出装置57との検出信号がそれぞれ入力される。住宅の車庫や駐車台数の少ない駐車場で使用する場合には、NFCやBluetooth(登録商標)等の無線通信装置が適している。
さらに、キーシステム53は、ドライバーの持つメカニカルキーや、指紋認証装置等の接触型のキーシステム、またはキーレスエントリシステムやスマートキーシステム等の非接触型のキーシステムが用いられる。車両側のキーシステム53は、構造物側設置の中央監視システム42の動作と連動可能に構成される。
一方、駐車場側の中央監視システム42は、図11に示すように、通信端末60の他に駐車場26の出入り口に設置の駐車場監視システム12と、駐車場26や管理センター等の構造物の振動を検出する振動検出装置61と、構造物の振動発生時間を検出する時間検出装置62と、車載監視システム41に対して固定局となる構造物側の近距離無線通信装置44と、両システム41,44の振動情報を比較して異常の有無を判定するマイコン等の中央処理装置63と、中央処理装置63による異常判定を受けて警報を発する構造物側の警報装置64とがLAN65により通信可能に接続される。
駐車場監視システム12は、図12に示すように、駐車場26の出入り口に設置されたセンサー67とカメラ68とを有し、駐車場26に入出庫される車両28の入出庫時間とナンバープレートを検出し、このナンバープレートと入出庫時間を駐車場側の中央監視システム42の中央処理装置63に出力するようになっている。
また、振動検出装置61は、駐車場26や管理センサーの構造物側に設置された振動センサーであり、構造物側の振動をセンシングすると、センシングした振動を中央処理装置63に出力している。この中央処理装置63には、構造物側の振動発生時間およびその継続時間を時間検出装置62から入力している。
さらに、構造物側の近距離無線通信装置45は、車両28に搭載された車載監視システム41の近距離無線通信装置44と同様、対をなして構成される。車載監視システム41の近距離無線通信装置44から送信される振動データやその発生時間を構造物側近距離無線通信装置45を経て、あるいは直接、中央監視システム42の中央処理装置63に入力させ、中央監視装置63で駐車場26に入出庫されて車両28の入出庫時間を駐車時間等を検出し、種々の管理をしている。
なお、車載監視システム41と中央監視システム42との近距離無線通信は、車両28が構造物側近距離無線通信装置45の通信エリア内に進入した時点で開始される。車両28が駐車場26に進入(入庫)して駐車され、駐車している間は、近距離無線通信がON状態にキープされる。車両28が固定局の近距離無線の通信エリア内に入った後の車両28の監視は、主に駐車場側の中央監視システム42により行なわれる。
また、車載監視システム41の時間検出装置57は、駐車場側の中央監視システム42の時間検出装置62と同期化が図られ、車両側での振動と構造物(駐車場)側での振動とは同期化された時間で検出可能となる。これら時間検出装置57,62の時間処理は、車両28が固定局の通信エリアに入ったとき、車両28の車載監視システム41と駐車場側の中央監視システム42との間で事前通信により実施され、両システム41,42の時間検出装置57,62が同期化されて時間データの差異が修正される。
次に、車両監視のフローチャートを、図13を参照して説明する。
移動局である(車両側の車載監視システム41の)近距離無線通信装置44が、固定局である(駐車場側中央監視システム42の)近距離無線通信装置45の通信可能エリア内に進入すると、車載監視システム41と中央監視システム42との間で近距離無線通信が開始される(ステップ1)。
両監視システム41,42間で無線通信が可能になると、車載監視システム41の時間検出装置57は、中央監視システム42の時間検出装置62との間で同期化され(ステップ2)、地震時等の車両側での振動と構造物側の振動は同期化される(同一)時間で検出可能にセットされる。
そして、車両28が駐車場26の出入り口から図12に示すように入庫されると、駐車場26に進入する車両28は、駐車場監視システム12により車両28のナンバープレートと入庫時間が検出され、入庫車両のナンバープレートと入庫時間が駐車場側の中央監視システム42に送られ、中央監視システム42の中央処理装置63で管理される(ステップ3)。
なお、駐車場26に入庫された車両28が所要の駐車スペースに進入して駐車する場合において、駐車場26が集合住宅や一般の住宅の駐車場に自車両を駐車させるときには、第1の実施形態に記載の機械的な車両の盗難防止装置35を実施することで機械的な盗難防止が可能になる。車両盗難を防止する上で有効である。第1の実施形態の車両の盗難防止装置35は、駐車場26に埋設された形鋼梁20の固定構造物21に、図8や図9に示すように錠付きケーブル29を用いて接続し、固定する機械的な盗難防止装置である。
また、駐車場26が、ショッピングモールやデパート等の駐車場である場合には、所要の駐車スペースに進入して駐車した後の駐車車両の入出庫時間や駐車時間等の管理は、駐車場側の中央監視システム42で主に行なわれる。
そして、駐車車両に設定値以上の振動が駐車中に生じたか否かが駐車場側の中央監視システム42で判断される(ステップ4)。駐車車両に設定値以上の振動が発生した場合には、駐車車両に発生した車両側振動時の時間が検出される(ステップ5)。
また、駐車車両の振動に伴って、構造物側の振動発生の有無が判断される(ステップ6)。
構造物側の(中央監視システム42の)振動発生装置61で駐車場26や管理センターに振動が生じていることを検出すると、ステップ6で構造物側の振動発生有りと判断され、時間検出装置62により構造物側の振動時の時間が検出される(ステップ7)。
ステップ8では、構造物側振動と車両側振動との大きさの差の絶対値が所要の設定値以上であるか否かが判断され、差の絶対値が所要の設定値以上である場合には、ステップ9で振動発生時間が一致しているか否かが判断される。
ステップ8における車両側振動と構造物側振動との大きさの差の絶対値が所要の設定値以下である場合、駐車車両は異常無しと判断される(ステップ10)。また、ステップ8で車両側振動と構造物側振動との差の絶対値が所要の設定値以上であっても、振動発生時間が一致している場合には、駐車車両はステップ10で異常無しと判断される。
さらに、車両側振動と構造物側振動との差の絶対値が所要値以上であって、振動発生時間が一致しない場合には、駐車車両に異常有りと判断し、車両盗難の虞があるため、ステップ11で警報装置64にて警報を発生させる。このときには、構造物側の(中央監視システム42の)近距離無線通信装置45と車両側の近距離無線通信装置44の間で無線通信が行なわれており、駐車車両28の警報装置52を作動させ、車両側で警報装置を作動させ、音と色で警報を発するようにしてもよい。
さらに、ステップ4で駐車車両28に設定値以上の振動が発生しているときで、構造物側に振動が発生していないステップ6の場合には、異常有りと判断され、ステップ11で同様に警報装置64,52により警報を発したり、駐車車両28に異常が発生していることを通報する。その際、駐車車両28の所有者のスマートフォンやタブレット、携帯電話等の携帯端末66に、駐車場側中央監視システム42の通信端末60や近距離無線通信装置45、あるいは駐車車両28の車載監視システム41を利用して、通報することができる。
ステップ10で駐車車両28が異常無しと判断されたり、ステップ11で異常有りと判断されて、警報装置64または52で警報が発生し、盗難防止に必要な注意喚起等の所要の処理が行なわれる。駐車車両28が駐車場26から出庫されると、出庫車両のナンバープレートや出庫時間が駐車場監視システム12から中央監視システム42の中央処理装置63に出力されて(ステップ13)近距離無線通信が終了する。駐車場26に駐車している間駐車車両の駐車時間とナンバープレートとは中央処理装置63で管理することができる。したがって、構造物側の中央監視システム42を商業施設やホテルの駐車場26や管理センターに設置する場合には、駐車場26に入出庫される車両28の駐車時間とナンバープレート等とを管理することができる。駐車車両28のナンバープレート、駐車時間を分析することで、車両所有者の属性、特徴を把握でき、ビジネス活動に有効に利用することもできる有用な情報となる。
さらに、車両28が駐車場26から出庫されて、固定局である駐車場側の近距離無線通信装置45の通信可能範囲を超えて移動すると、駐車場側の中央監視システム42と車載監視システム41との間の近距離無線通信は終了する(ステップ13)。その後、構造物側中央監視システム42と車載監視システム41との間の通信は、両通信端末60,54により広域ネットワーク43を介して行なうことができる。
ところで、車両28には、キーシステム53が備えられている。車両28が正規のキーシステム53によって開錠されたときには、開錠に伴う振動が、車載監視システム41の振動検出装置56で検出される。振動検出装置56で検出される振動情報は、所要の遅延時間を伴って、正規の開錠であると判断される。正規の開錠であると判断されたときには、固定局の駐車場側の中央監視システム42あるいは近距離無線通信装置45への送信は行なわれず、中央監視システム42の監視機能は解除される。したがって、キーシステム53を使用した正規の開錠の場合には、駐車場側中央監視システム42での監視機能は働かない。
一方、車両28側の車載監視システム41は、駐車場側設置の中央監視システム42が駐車場26に設置されていなくても、車両28は車載監視システム41に盗難防止装置50と警報装置52とを備えている。車両側の盗難防止装置50は、イモビライザ(電子式移動ロック装置)として機能するので、所有者以外の者が、車両28に対して不正な操作を行なおうとすると、電子的キーのIDコードと車両本体内に登録されたIDコードが一致せず、エンジンやモータを始動させることができないので、車両28の盗難防止を図ることができる。
さらに、図11に示すように、符号66は、車両所有者が保持するスマートフォンやタブレット、携帯電話等の携帯端末であり、この携帯端末66は、自車両28の車載監視システム41の通信端末54や駐車場側中央監視システム42の通信端末60との3者間の間で直接あるいは広域ネットワーク43を介して通信可能である。
携帯端末66は、移動局である車載監視システム41の近距離無線通信装置44の通信可能範囲を超えて無線通信可能な通信モジュール(通信手段)である。携帯端末66は、集合住宅の駐車場26や個人住宅の車庫等に備えられた中央監視システム42に適用する場合には、近距離無線通信装置で代用させてもよく、また、車載監視システム41の通信端末54は、住宅内の警報装置や親子電話機と通信可能に連動させて、自車両のユーザに異常発生を通知することもできる。
また、万一、個人住宅の車庫や集合住宅の駐車場26から、図8および図9に示す機械的な車両の盗難防止装置35の錠付きケーブル29が破断されて壊され、自車両が盗難に遭って駐車場26から持ち出されても、携帯端末66を用いて自車両の車載監視システム41の通信端末54との間で、通信が可能となり、車両ナビゲーション装置55からの情報を携帯端末61で取得して監視することにより、自車両の追跡を行なうことができる。携帯端末66を用いて、自車両の車載監視システム41と通信を行なうことができる。さらに、車載監視システム41の車両用ナビゲーション装置51を利用して、盗難された自車両の探索を行なうことができる。自車両を探索した後、警察等の力を借りて、自車両を取り戻すこともできる。
[第3の実施形態]
第2の実施形態は、車両の盗難防止装置40が、駐車場26に駐車した車両28を、車載監視システム41の近距離無線通信装置44と駐車場側の中央監視システム42の近距離無線通信装置45との近距離無線通信を主に利用して監視し、駐車車両28の盗難を防止するものであるのに対し、第3の実施形態は、車両の盗難防止装置40を構成する車載監視システム41の通信端末54と車両所有者の携帯端末66との通信から大規模駐車場に駐車した自車両28の駐車位置を見つけ出して容易に探し出すことができる車両の探索装置70に適用したものである。
一般に、大規模駐車場に駐車した自車両の駐車位置を駐車時間の経過に伴って、探し出すことが困難なことがある。特にディズニーランド等の遊園地や空港、港湾、高速道路のサービスエリアの大規模駐車場、さらには大規模ショッピングセンターやショッピングモールの駐車場のような大規模駐車場に車両28を所要時間駐車させておくと、駐車後に自車両28を容易に見つけ出すことができず、探し出しが困難な場合が多々生じる。
また、大規模ショッピングセンター等の商業施設や空港、港湾の大規模駐車場が立体駐車場であったり、ホテル等の複合施設や大都市の地下駐車場である場合も同様である。大規模な立体駐車場や地下駐車場である場合には、駐車場の施設内にIMES(Indoor MEssaging System)方式の通信機が設置される。IMES通信機を設置すると、立体駐車場や地下駐車場に駐車した車両28の車載監視システム41(の通信端末54)と、車両所有者のスマートフォンやタブレット等の携帯端末66とは、親和性が高くスムーズに通信可能になる。
IMES通信機は、立体駐車場や地下駐車場に駐車して電波の届きにくい自車両28と、駐車場外にある携帯端末66を用いて、情報の無線通信を容易に行なうことができる。立体駐車場や地下駐車場にIMES通信機を設置しておくことにより、立体駐車場や地下駐車場に駐車した自車両28の正確な位置を3次元測位で測定することができ、立体駐車場や地下駐車場の屋内外でシームレスな位置検出を行なうことができる。
したがって、立体駐車場や地下駐車場にIMES通信機を設置しておけば、立体駐車場や地下駐車場に駐車した自車両28も、屋外の大規模駐車場に駐車した自車両28と同じように、携帯端末66を用いて自車両28の通信端末54とスムーズに無線通信可能となる。車両所有者が所持する携帯端末66が、駐車車両28の近距離通信可能エリア内に駐車しているときは、携帯端末66は駐車車両28の近距離無線通信装置44との近距離無線通信が優先されるように設定してもよい。
IMES通信機は、スマートフォンやタブレット等の携帯端末66と高い親和性を有し、立体駐車場や地下駐車場に設置することにより、自車両28を大規模駐車場、または大規模な立体駐車場や地下駐車場に駐車しても、駐車後必要な時期に自車両28の駐車位置を、車両所有者が所持する携帯端末66を探索操作に利用することにより駐車位置を特定し、探し出すことができる。
車両の車載監視システム41と自車両28の携帯端末66とから車両の探索装置70が構成される。車両の探索装置70は、大規模駐車場が屋外の平面駐車場でなく、立体駐車場や地下駐車場に駐車された自車両28の3次元駐車位置を特定し、探し出す場合には、立体駐車場や地下駐車場にIMES通信機が付設されていることが必要である。
しかして、車両の探索装置70は、車両所有者が携帯端末66を探索操作することにより、大規模駐車場が平面駐車場や立体駐車場、地下駐車場であっても、大規模駐車場に駐車した自車両28の駐車位置を特定し、容易に探し出すことができる。
また、駐車車両28には、図11に示すように、車載監視システム41が携帯端末66と相互に通信可能に備えられる。車載監視システム41は通信端末54や近距離無線通信装置44が車両LAN55により盗難防止装置50および警報装置52に通信接続されている。
したがって、大規模駐車場に駐車した自車両28が駐車中に盗難防止装置50が作動する事象が生じると、自車両28の警報装置52を作動させ、音や光の警報を発する一方、盗難防止装置50の異常事象を通信端末54または近距離無線通信装置44により車両所有者の携帯端末66に通信され、通報される。車両所有者は、携帯端末66の通信内容から自車両28に異常事象が発生していることを知ることができ、必要な対応をとることが可能となる。
また、駐車した車両28は、盗難防止装置50で検出される異常事象の発生により、イモピライザーとして機能し、車両28の始動が防止される一方、異常事象の発生は車両LAN55を介して警報装置52を作動させ、警報装置52は周囲に音と光で警報を発生させ、周囲に注意を喚起させることができる。車両監視システム41の盗難防止装置50と警報装置52の働きにより、駐車車両28の盗難が効果的に防止される。
一方、大規模駐車場に駐車した自車両28を、駐車後所要時間経過してから探し出すために車両所有者の携帯端末66が用いられ、利用される。携帯端末66の検索操作により、携帯端末66は自車両28の車載監視システム41の通信端末54あるいは近距離無線通信装置44と無線通信され、車載監視システム41の警報装置52が作動される。警報装置52は光または音により一定時間自車両28の駐車位置を周囲に知らせることができ、結果として自車両28を多数の駐車車両の中から見つけて探し出すことが容易となる。
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行なうことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。