JP6410311B2 - ステンレス鋼の精錬方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ステンレス鋼の精錬方法に関し、具体的には、Nbを含有する原料を用いて、アルゴン酸素脱炭装置(Argon Oxygen Decarburization、以降、単に「AOD」という)でステンレス鋼を精錬するステンレス鋼の精錬方法に関するものである。
電気炉等でステンレス鋼の原料を溶解し、ステンレス鋼を製造する場合、原料として、ステンレス鋼の屑(スクラップ)を使用することができれば、原料コストを大幅に低減することが可能となる。そのため、ステンレス鋼の製造技術において、原料としてステンレス屑を多く使用できる技術は極めて重要である。
ステンレス鋼は、いわゆる高合金鋼の一種であり、多くの合金元素が多量に配合されているが、その中には、特定の用途にのみ使用される元素がある。たとえば、Nbは、その一つであり、耐粒界腐食性の向上や高温強度の向上などを目的とし、必要に応じで添加されている。
上記Nbは、レアメタルの一種であり、埋蔵量も少なく、産出国も限られているため、高価な元素である。そこで、たとえば、SUS347やNCF625等のNb含有ステンレス鋼には、原料としてNbを含有したスクラップを使用し、スクラップ中のNbを有効活用することが望ましい。
しかし、電気炉等でNbを含有したスクラップを溶解し、次工程のAODの脱炭工程で酸素吹精して脱炭した場合には、Nbは酸化され、酸化物となってスラグ相へと移行してしまう。また、引き続き行われるCr還元処理において、FeSi等の脱酸剤を添加しても、Nb酸化物がそのままスラグ中に留まり、Nbロスが生ずることがある。斯かる場合には、Nbロスを補うため、最終段階の取鍋精錬で、高価なNb源、たとえば、Fe−Nb合金や純Nbなどを添加する必要があり、原料コストの増大を引き起こす。そのため、Nb含有ステンレス鋼を製造する場合には、スクラップ中のNbをできる限り高い歩留りで溶鋼中に回収することが必要となる。
一方、一般的なステンレス鋼においては、Nbは、溶接性を悪化したり、析出物を形成し、脆化を招いたりするため、不要な元素である。このような場合には、逆に、溶鋼中のNb濃度が高くなるのを防止するため、スクラップ中のNbが、スラグ中に移行し、溶鋼中に残存しないようにする必要がある。しかし、スクラップを原料としてステンレス鋼を製造する場合には、スクラップ中のNbが不純物として残存することは不可避である。したがって、斯かる場合には、溶鋼中のNb濃度をできる限り低減することが必要となる。
ところで、ステンレス鋼中のNb濃度を制御する技術としては、特許文献1の技術がある。この技術は、低Nb含有ステンレス鋼を、電気炉にてスクラップを用いて溶製するとき、溶落時の溶鋼中のNb濃度と目標Nb濃度とからNb残存率を求め、該Nb残存率に基いて出鋼時の目標Si濃度を決定し、該目標Si濃度になるように溶鋼中のSi濃度を調節することで、ステンレス鋼の脱Nbを図る技術である。
特開平08−081708号公報
しかしながら、上記特許文献1に開示の技術は、電気炉で脱炭のための酸素吹精を行い、出鋼後、目標のSi濃度になるよう、FeSi合金を投入し、Cr還元処理している。しかし、電気炉における酸素吹精は脱炭効率が悪く、Crが過剰に酸化ロスするため、その還元のためにFeSi合金を多量に添加する必要がある。
また、低Nb濃度を達成するためには、出鋼後のSi濃度を低く抑える必要があるが、C濃度が高い状態でSi濃度を低くすると、酸素吹精によってCOガスが発生し、出鋼時にスラグが湧き上がり、操業に支障を来すという問題がある。
さらに、近年では、ステンレス鋼の精錬方法は、電気炉等で原料を溶解した後、AOD等で脱炭し、Cr還元処理するのが一般的であり、Cr還元処理後の溶鋼中のNb濃度が重要となる。しかし、上記特許文献1の技術は、電気炉溶解時のNb濃度を制御する技術であり、AODでのCr還元処理後のNb濃度制御にはそのまま適用できない。
本発明は、従来技術が抱える上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、Nbを含有するスクラップ等を原料に用いてステンレス鋼を精錬する際、AODでのCr還元処理後の溶鋼中のCr濃度を高い精度でかつ任意に調整することができるステンレス鋼の精錬方法を提案することにある。
発明者らは、上記課題を解決するため、AODにおけるCr還元処理終了時点、即ち、Cr還元処理後の溶鋼中のNb濃度、特に、Nb含有ステンレス鋼であるSUS347やNCF625、SUS309のCr還元処理後の溶鋼中のNb濃度に及ぼす各種要因の影響を調査した。
その結果、Cr還元処理後における溶鋼中のNbの歩留り、すなわち、電気炉等で溶解し、出稿したときの溶鋼中のNb濃度に対するCr還元処理後のNb濃度の比率(%)は、Cr還元処理終了時点のスラグ中のCr酸化物濃度と極めてよい相関があり、スラグ中のCr酸化物濃度を制御すれば、Nbの歩留りを予測でき、ひいては、Cr還元処理後のNb濃度を精度よく制御することができることを見出し、本発明を開発するに至った。
すなわち、本発明は、Nbを含有するステンレス鋼の原料を溶解した後、酸素吹精が可能な炉でステンレス溶鋼とスラグを共存させてCr還元処理し、ステンレス鋼を精錬する方法において、上記溶解後のステンレス溶鋼中のNb濃度と、予め求めておいたCr還元処理後のスラグ中のCr酸化物濃度とNb歩留りとの関係式に基いて、上記スラグ中のCr酸化物濃度を調整し、Cr還元処理後のステンレス溶鋼中のNb濃度を制御することを特徴とするステンレス鋼の精錬方法を提案する。
本発明の上記ステンレス鋼の精錬方法は、上記Cr還元処理時のスラグをCaO−SiO−Cr系とすることを特徴とする。
また、本発明の上記ステンレス鋼の精錬方法は、上記酸素吹精が可能な炉としてAODを用いることを特徴とする。
また、本発明の上記ステンレス鋼の精錬方法は、上記Cr還元処理後のスラグ中のCr酸化物濃度をx(mass%)、Nb歩留りをy(%)としたとき、上記Cr還元処理後のスラグ中のCr酸化物濃度xとNb歩留りyとの関係式として、下記(1)式;
y=ax+bx+c ・・・(1)
ここで、上記a,b,cは、定数である。
を用いることを特徴とする。
また、本発明の上記ステンレス鋼の精錬方法は、上記Cr還元処理後のスラグ中のCr酸化物濃度x(mass%)とNb歩留りy(%)との関係式として、下記(2)式;
y=2.30x−28.32x+97.48 ・・・(2)
を用いることを特徴とする。
本発明によれば、AODにおけるCr還元処理後の溶鋼中のNb濃度を高い精度でかつ任意に制御することが可能であるので、Nb含有ステンレス鋼を精錬するに当たっては、原料として用いるスクラップ中のNbのロスを抑えて、有効活用することが可能となり、また、Nbレスのステンレス鋼を精錬するに当たっては、スクラップからNbの混入を抑止し、溶鋼中のNb濃度を極微量まで低減することができる。したがって、本発明によれば、Nb含有量を気にすることなくスクラップをステンレス鋼の原料として使用できるので、原料コストを大幅に削減することができる。
AODでのCr還元処理後のスラグ中のCr酸化物濃度とNb歩留りとの関係を示すグラフである。 AODでのCr還元処理後の溶鋼中のSi濃度とNb歩留りとの関係を示すグラフである。 実施例におけるAODでのCr還元処理後のスラグ中のCr酸化物濃度とNb歩留りとの関係を示すグラフである。 実施例におけるAODでのCr還元処理後の溶鋼中のSi濃度とNb歩留りとの関係を示すグラフである。
発明者らは、60トン電気炉で、フェロニッケル、純ニッケル、フェロクロムの他、鉄屑やステンレス屑、Fe−Ni合金屑、Nb含有屑などのスクラップ等からなるNbを含有するステンレス原料を溶解し、出鋼した後、該溶鋼を、AODにおいて、酸素吹精してCを除去(脱炭)し、石灰石等を投入してスラグを生成させ、さらに、FeSi合金を投入してCr還元処理した後、上記スラグを除去(脱滓)し、脱酸し、さらにArガスで撹拌して脱硫処理を施した後、上記溶鋼を取鍋に出鋼し、最終の温度調整ならびに成分調整を行う取鍋精錬して、Nb含有ステンレス鋼であるSUS347やNCF625、SUS309を合計15チャージ溶製した後、連続鋳造してスラブとした。
その際、上記AODでのCr還元処理終了時点における溶鋼中のNb濃度を調査した。その結果、Cr還元処理後の溶鋼中のNb濃度に、大きなバラツキが認められた。この原因は、電気炉で溶解する原料、特に、ステンレス屑(スクラップ)中に含まれるNbの含有量がチャージごとに変化し、電気炉出鋼時のNb濃度が変動したためであると考えられた。
そこで、電気炉出鋼時の溶鋼中のNb濃度と、Cr還元処理後の溶鋼中のNb濃度との関係を表す指標として、下記(1)式;
Nb歩留り(%)=Cr還元処理後のNb濃度/電気炉出鋼時のNb濃度×100
・・・(3)
で定義される「Nb歩留り」という概念を導入し、上記Nb歩留りに及ぼす各種要因の影響をさらに調査した。
その結果、Cr還元処理後のスラグ中のCr酸化物濃度と、上記Nb歩留りとの間には、図1に示したように、極めてよい相関関係があり、Cr還元処理後のスラグ中のCr酸化物濃度が低いほど、Nb歩留りが高くなる傾向があることがわかった。ここで、上記Cr酸化物濃度とは、スラグ中の全CrをCrの濃度(mass%)に換算した値のことをいう。
なお、Cr還元処理後の溶鋼中のSi濃度と、Nb歩留りとの関係についても調べたが、図2に示したように、ばらつきが大きく、特許文献1のような相関関係は認められなかった。
上記のように、Cr還元処理後のスラグ中のCr酸化物濃度と、溶鋼中のNb歩留りとの間によい相関関係ある理由について、発明者らは以下のように考えている。
AODでCを除去するために酸素吹精を行うと、溶鋼中のCrも酸化されると同時にNbも酸化され、酸化物となってスラグ中に移行する。しかし、その後、Fe−Si合金等の脱酸剤を投入してCr還元処理を行うと、Cr酸化物が還元されると共に、Nb酸化物も還元される。すなわち、Cr酸化物の還元処理により、スラグ中のCr酸化物濃度が低下すると、スラグ中のNb酸化物は還元され、その結果、溶鋼中のNb濃度が高くなり、Nb歩留りが高くなる。
また、上記の結果から、Cr還元処理後の溶鋼中のNb濃度は、下記(4)式;
2(Cr)+3Nb=3(NbO)+4Cr ・・・(4)
ここで、(4)式中の括弧はスラグ中の成分、下線は溶鋼中の成分を表す。
で示される反応によって支配されていることが推察された。
次いで、発明者らは、上記図1に示された15チャージのデータを、Cr還元処理後のNb歩留りをy(%)、スラグ中のCr酸化物濃度をx(mass%)として、下記(1)式;
y=ax+bx+c ・・・(1)
の2次曲線で近似することを試みた。その結果、上記データは、下記(2)式;
y=2.30x−28.32x+97.48 ・・・(2)
の回帰式で表され、その決定係数(寄与率)Rは0.97であり、Cr還元処理後のスラグ中のCr酸化物濃度とNb歩留りとは極めて高い相関関係にあることがわかった。
上記のように、AODでCr還元処理してステンレス鋼を精錬するときに、Cr還元処理後のスラグ中のCr酸化物濃度とNb歩留りとの間に極めてよい相関関係あるということは、Cr還元処理終了時点におけるスラグ中のCr酸化物濃度を調整すれば、Cr還元処理後の溶鋼中のNb濃度を制御することができる、すなわち、電気炉出鋼時のNb濃度と、AODにおけるCr還元処理後の目標Nb濃度から、目標とするNb歩留りを設定し、該Nb歩留りを得るために必要なスラグ中のCr酸化物濃度を、予め求めておいた上記(2)式から求め、そのCr酸化物濃度となるようにCr還元処理時のスラグ成分を調整すれば、Cr還元処理後の溶鋼中のNb濃度を任意の値に制御することができることを示している。
ここで、上記(2)式は、前述したように、Nbを含有するSUS347、NCF625およびSUS309系のステンレス鋼のデータについての回帰式であることから、鋼種に依らず成り立つものと考えられる。
ただし、上記(2)式は、前述した(4)式のスラグ−メタル間の相平衡に基いたものであり、速度論的な因子を考慮していないことから、係数a、b、cは、精錬設備によって微妙に異なる可能性がある。そこで、上記式を用いて本発明を実施し、Nb濃度を制御しようとする場合には、各精錬設備の実績データから回帰式を求め、係数の補正を適宜行っておくことが好ましい。なお、上記回帰式を求めるに当たっては、少なくとも10チャージの実績データを用いることが好ましく、より高い精度を求める場合には、20チャージ以上の実績データを用いるのが好ましい。
次に、本発明のステンレス鋼の精錬方法について説明する。
本発明のステンレス鋼の精錬方法は、まず、電気炉等でNbを含有するステンレス原料を溶解し、Nbを含有する溶鋼とする。ここで、Nbを含有する溶鋼としたのは、Nbを含有しない場合には、Nb濃度を制御する必要がなく、本発明を用いる必要がないからである。上記ステンレス原料としては、フェロニッケル、純ニッケル、フェロクロム等の他に、鉄屑やステンレス屑、Fe−Ni合金屑、Nb含有屑等のNbを含有するスクラップを用いる。ここで、上記スクラップとしては、ステンレス鋼を製造する観点から、Fe−Cr−Ni系のNb含有合金屑、例えば、SUS347屑、NCF625屑や、Fe−35%Ni−25%Cr−1%Nb屑などを好ましく用いることができる。なお、本発明では、Nbの濃度制御が可能であるので、Nbを高濃度で含有する安価なものも用いることができることが特徴である。なお、上記説明では、ステンレス鋼原料の溶解に電気炉を用いているが、電気炉に限定されるものではなく、例えば、転炉や高周波誘導炉などを用いてもよい。
上記電気炉等で溶解し、出鋼した溶鋼は、その後、酸素ガスを吹精することが可能な炉で、酸素ガスを吹精して溶鋼中のCを除去(脱炭)し、石灰石等を添加してスラグを生成させた後、FeSi等の脱酸剤を添加してCr還元処理を施した後、上記スラグを除去(除滓)する。なお、上記脱酸剤としては、FeSiの他に、Alを用いてもよい。
上記酸素ガスを吹精することが可能な炉としては、傾動してスラグを除滓することができる炉であることが好ましく、具体的には、AODや転炉を挙げることができるが、以降の説明では、AODを用いた例について説明する。
AODにおける上記脱炭工程においては、溶鋼中のCがCOとなって除去され、それと同時に、溶鋼中のCrやNbも酸化され、酸化物となってスラグ相に移行するが、その後のCr還元処理工程では、スラグ中のCr酸化物が還元されると同時に、Nb酸化物も還元されて溶鋼中に回収される。その後、上記スラグを除去するが、この除滓によって、スラグ中に残存するNb酸化物は系外に排出される。
したがって、上記Cr還元処理時に生成させるスラグの成分系は重要であり、本発明においては、CaO−SiO−Cr系とするのが望ましい。というのは、Nbを含有するステンレス鋼を製造する場合には、Cr還元処理時にスラグ中に存在するNb酸化物をできるだけ還元し、Nbを溶鋼中に回収する必要があるが、溶鋼中のNb濃度は、前述したように、下記(4)式;
2(Cr)+3Nb=3(NbO)+4Cr ・・・(4)
に支配されているからである。
また、Cr還元時のスラグをCaO−SiO−Cr系とする場合には、そのスラグの塩基度(CaO/SiO)は、0.9〜1.5の範囲とするのが好ましい。(CaO/SiO)が0.9未満では、スラグの粘度が高く流動性を確保できなくなり、一方、1.5を超えると、スラグを溶融状態に保持することができなくなるからである。より好ましくは、1.0〜1.3の範囲である。
また、上記CaO−SiO−Cr系スラグ中のCr濃度は、0.1〜6mass%の範囲とするのが好ましい。Cr濃度を0.1mass%未満とすると、高い歩留りでNbを回収できるという効果がある反面、FeSi合金を大量に添加する必要があるため、副原料コストの上昇を招くこと、および、平衡論的にも限界に近く、実施が困難だからである。一方、6mass%を超えると、有価金属であるCrのロスが多くなり、原料コストが上昇するとともに、スラグを安定して溶融状態に保持できなくなるからである。より好ましくは、0.3〜5.5mass%の範囲である。
ここで、本発明の特徴である、Cr還元処理時における溶鋼中のNb濃度制御方法について説明する。
先述したように、Cr還元処理後のスラグ中のCr酸化物濃度とNb歩留り(%)との間には極めて強い相関関係があり、スラグ中のCr酸化物濃度(mass%)をx、Nb歩留り(%)をyとしたとき、下記(1)式のような2次式;
y=ax+bx+c ・・・(1)
具体的には、下記(2)式;
y=2.30x−28.32x+97.48 ・・・(2)
で高い寄与率を持って表すことができる。
上記(2)式は、AODでCr還元処理を施してステンレス鋼を精錬するときのCr還元処理後のスラグ中のCr酸化物濃度とNb歩留りとの間に相関関係にあることを示しているが、本発明は、上記(2)式を活用し、Cr還元処理後のスラグ中のCr酸化物濃度を調整することで、Cr還元処理後のNb歩留り、ひいては、Cr還元処理後の溶鋼中のNb濃度を高い精度で制御する。
具体的には、電気炉から出鋼したときの溶鋼中のNb濃度と、AODでのCr還元処理後の目標とするNb濃度とから、目標Nb歩留りを求め、そのNb歩留りと上記(2)式から、上記Cr還元処理後のNb濃度を達成するために必要なスラグ中のCr酸化物濃度を求め、上記Cr酸化物濃度になるよう、スラグの成分組成を調整することで、Cr還元処理後のNb濃度を制御することができる。例えば、Cr歩留りを60%以上としたい場合には、スラグ中のCr酸化物濃度を1.5mass%以下に低減すればよく、逆に、Cr歩留りを30%以下としたい場合には、スラグ中のCr酸化物濃度を3.2mass%以上とすればよい。
ここで、上記スラグ中のCr酸化物濃度の調整は、まず、AODの脱炭工程における酸素吹精量および石灰の投入量から、スラグ中のCr酸化物濃度を推定する。ここで、酸素吹精量のうち、炭素の除去に使われた酸素以外の酸素が溶鋼中のCrと反応してCr酸化物を形成すると考え、Cr酸化物量を推定する。次いで、上記Cr酸化物量と目標とするCr酸化物濃度から、必要とされるスラグ総量を算出し、そのスラグ総量となるよう石灰石を投入することで行うことができる。該推定濃度が目標のCr酸化物濃度と異なる(高い)場合には、その差分に応じてFeSiの投入量を調整することにより行うことができる。なお、上記調整で、目標のCr酸化物濃度とならなかった場合は、さらに、目標濃度となるよう、FeSi合金を投入すればよい。上記Cr酸化物濃度の調整にFeSiを添加する理由は、Siは、Crよりも酸化し易いからであり、FeSiに代えて、Alを添加してもよい。一方、Cr酸化物の濃度を増加させたい場合には、酸素吹錬をさらに継続すればよい。
次に、Cr還元処理が完了し、スラグを除去(除滓)した後の工程について説明する。
上記除滓後の工程は、通常公知の方法で行えばよく、本発明においては特に制限しないが、例えば、上記除滓後のAOD内に石灰石や蛍石等の造滓材を投入して新たなスラグを生成させ、Ar撹拌して脱硫を促進した後、取鍋に出鋼し、該取鍋にて最終の温度調整および成分調整を施した後、連続鋳造法等で鋼素材(スラブ)とする。なお、上記撹拌に用いるガスは、Ar以外の希ガスやNガスを用いてもよい。
なお、上記新たに生成させるスラグは、CaO−SiO−MgO系またはCaO−SiO−MgO−F系とするのが好ましい。その理由は、上記成分系に調整することにより、溶鋼中の酸素濃度が低下するので、脱硫を促進することができたり、酸素濃度の低下により、介在物の形態を制御することができたりするからである。
容量60トンの電気炉で、フェロニッケル、純ニッケル、フェロクロム、鉄屑、ステンレス屑、Fe−Ni合金屑、Nb含有屑などのステンレス原料を溶解し、Nb濃度が0.016〜2.17mass%の範囲で変化した溶鋼とし、出鋼し、次いで、AODで、上記溶鋼を酸素吹精して脱炭した後、石灰石を投入してCaO−SiO−Cr系スラグを生成させた後、FeSi合金を投入してCr還元処理し、スラグを除滓した後、新たに石灰石および/または蛍石を投入してCaO−SiO−MgO系スラグまたはCaO−SiO−MgO−F系スラグを生成させ、Ar撹拌して脱硫した後、取鍋に出鋼し、最終の温度調整ならびに成分調整を行う取鍋精錬することにより、各種成分組成のNb含有ステンレス鋼を20チャージ溶製した。
この際、AODのCr還元処理時に生成させるCaO−SiO−Cr系スラグ中のCr酸化物濃度を0.4〜5.3mass%の範囲で種々に変化させ、Cr還元処理終了時点の溶鋼中のNb濃度を調査した。なお、上記スラグ中および溶鋼中の成分は、蛍光X線分析装置で定量分析した。
表1に、電気炉出鋼時の溶鋼中のNb濃度、および、AODにおけるCr還元処理後のスラグおよび溶鋼の成分組成を示した。なお、表1に示したスラグ組成の合計が100mass%となっていないのは、スラグ中には、表1に示したCaO,SiO,Al,MgO,Cr,NbOの他に、FeOやNiO,Fなどが含まれているためである。
ここで、上記表1の結果を、Cr還元処理後のスラグ中のCr酸化物濃度とNb歩留りとの関係として示したのが図3である。図1と同様、Cr還元処理後のスラグ中のCr酸化物濃度とNb歩留りとの間には明確な相関関係が認められた。
また、図3中には、図1から得られた回帰式である下記(2)式;
y=2.30x−28.32x+97.48 ・・・(2)
を重ねて記載したが、測定データと回帰式とのずれはほとんどない、即ち、Cr還元処理後のスラグ中のCr酸化物濃度とNb歩留りとの関係は、上記(2)式で精度よく表されることが確認された。
これに対して、上記表1の結果を、Cr還元処理後のSi濃度とNb歩留りとの関係として示したのが図4であり、図2と同様、Cr還元処理後の溶鋼中のSi濃度とNb歩留りとの間に相関関係は認められない。
Figure 0006410311
実施例1の結果、上記(2)式の有効性が確認できたので、上記式を活用し、Cr還元処理後の溶鋼中のNb濃度を制御する実験を行った。
実験は、実施例1と同様、容量60トンの電気炉で、フェロニッケル、純ニッケル、フェロクロム、鉄屑、ステンレス屑、Fe−Ni合金屑、Nb含有屑などのステンレス原料を溶解し、Nb濃度が0.5〜2mass%の範囲で変化した溶鋼とした後、AODで、上記溶鋼を酸素吹精して脱炭した後、石灰石を投入してCaO−SiO−Cr系スラグを生成させた後、FeSi合金を投入してCr還元処理し、スラグを除滓した後、新たに石灰石および/または蛍石を投入してCaO−SiO−MgO系スラグまたはCaO−SiO−MgO−F系スラグを生成させ、Ar撹拌して脱硫した後、取鍋に出鋼し、最終の温度調整ならびに成分調整を行う取鍋精錬することにより、Nb含有ステンレス鋼を30チャージ溶製し、連続鋳造してスラブとした。
この際、上記30チャージのうちの10チャージについては、Cr還元処理後の溶鋼中のNb濃度が0.3mass%になるよう、また、10チャージについては、Cr還元処理後の溶鋼中のNb濃度が1.0mass%になるよう、Cr還元処理時に生成させるスラグ中のCr酸化物濃度を調整してNb歩留りを制御し、得られたCr還元処理後の溶鋼中のNb濃度を測定した。また、残りの10チャージについては、比較例として、Cr還元処理時に生成させるスラグ中のCr酸化物濃度を調整することなくCr還元処理し、得られたCr還元処理後の溶鋼中のNb濃度を測定した。
上記の結果を表2に示した。この結果から、Cr還元処理時に生成させるスラグ中のCr酸化物濃度を調整することなくCr還元処理した場合には、Cr還元処理後の溶鋼中のNb濃度が大きく変動しているのに対して、本発明を適用した場合には、目標Nb濃度の高低に拘わらず、高い精度でCr還元処理後の溶鋼中のNb濃度を制御することができることがわかる。
Figure 0006410311

Claims (5)

  1. Nbを含有するステンレス鋼の原料を溶解した後、酸素吹精が可能な炉でステンレス溶鋼とスラグを共存させてCr還元処理し、ステンレス鋼を精錬する方法において、
    上記溶解後のステンレス溶鋼中のNb濃度と、予め求めておいたCr還元処理後のスラグ中のCr酸化物濃度とNb歩留りとの関係式に基いて、上記スラグ中のCr酸化物濃度を調整し、Cr還元処理後のステンレス溶鋼中のNb濃度を制御することを特徴とするステンレス鋼の精錬方法。
  2. 上記Cr還元処理時のスラグをCaO−SiO−Cr系とすることを特徴とする請求項1に記載のステンレス鋼の精錬方法。
  3. 上記酸素吹精が可能な炉としてAODを用いることを特徴とする請求項1または2に記載のステンレス鋼の精錬方法。
  4. 上記Cr還元処理後のスラグ中のCr酸化物濃度をx(mass%)、Nb歩留りをy(%)としたとき、上記Cr還元処理後のスラグ中のCr酸化物濃度xとNb歩留りyとの関係式として、下記(1)式を用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のステンレス鋼の精錬方法。

    y=ax+bx+c ・・・(1)
    ここで、上記a,b,cは、定数である。
  5. 上記Cr還元処理後のスラグ中のCr酸化物濃度x(mass%)とNb歩留りy(%)との関係式として、下記(2)式を用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のステンレス鋼の精錬方法。

    y=2.30x−28.32x+97.48 ・・・(2)
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