以下に、添付の図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、本明細書に添付する図面においては、図示の理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
<第1の実施の形態>
以下、図1〜図6を参照して、本発明の第1の実施の形態について説明する。
まず、図1を参照して、本実施の形態における透視性電極31について説明する。図1は、観察者側から見た場合の透視性電極31を示す平面図である。
ここでは、透視性電極31が、投影型の静電容量結合方式のタッチパネル用に構成される例について説明する。なお、「容量結合」方式は、タッチパネルの技術分野において「静電容量」方式や「静電容量結合」方式等とも呼ばれており、本明細書では、これらの「静電容量」方式や「静電容量結合」方式等と同義の用語として取り扱う。典型的な静電容量結合方式のタッチパネルは、導電性のパターンを有しており、外部の導体(典型的には人間の指)がタッチパネルに接近することにより、外部の導体とタッチパネルの導電性のパターンとの間でコンデンサ(静電容量)が形成される。そして、このコンデンサの形成に伴った電気的な状態の変化に基づき、タッチパネル上において外部導体が接近している位置の位置座標が特定される。
図1に示すように、透視性電極31は、基材フィルム32と、基材フィルム32上に設けられた複数の導電パターン41と、を備えている。図1に示すように、各導電パターン41は長方形の輪郭線形状をなし、該長方形の長辺は図1の上下方向にそれぞれ帯状に延びている。また、複数の導電パターン41は、各導電パターン41が延びる方向に直交する方向において、一定の配列ピッチで並べられている。導電パターン41の配列ピッチは、タッチ位置の検出に関して求められる分解能に応じて定められるが、例えば数mmである。
図1に示すように、透視性電極31の基材フィルム32は、タッチ位置を検出され得る領域に対応する矩形状のアクティブエリアAa1と、アクティブエリアAa1の周辺に位置する矩形枠状の非アクティブエリアAa2と、を含んでいる。アクティブエリアAa1および非アクティブエリアAa2は、それぞれ、後述するタッチ位置検出機能付き表示装置10の表示装置のアクティブエリアおよび非アクティブエリアに対応して区画されたものである。
上述の導電パターン41は、アクティブエリアAa1内に配置されている。また非アクティブエリアAa2には、各導電パターン41に電気的に接続された複数の額縁配線43と、基材フィルム32の外縁近傍に配置され、各額縁配線43に電気的に接続された複数の端子部44と、が設けられている。
次に、図2Aを参照して、導電パターン41のパターン形状について説明する。図2Aは、図1において符号IIが付された一点鎖線で囲まれた部分における導電パターン41を示す平面図である。図2Aに示すように、導電パターン41は、遮光性および導電性を有する導線51であって、各導線51の間に開口部51aが形成されるように網目状に配置された導線51から構成されている。
導電パターン41全体の面積のうち開口部51aによって占められる面積の比率(以下、開口率と称する)が十分に高くなり、これによって、表示装置からの映像光が適切な透過率で透視性電極31のアクティブエリアAa1を透過することができる限りにおいて、導線51の寸法や形状が特に限られることはない。例えば図2Aに示す例において、導電パターン41は、矩形状に形成された導線51を所定の方向に沿って並べることによって構成されている。開口率は、表示装置から放出される映像光の特性などに応じて適宜設定される。
導線51の線幅は、求められる開口率、導電パターンの不可視性などに応じて設定されるが、例えば導線51の幅は1μm〜10μmの範囲内、より好ましくは2μm〜7μmの範囲内に設定されている。また、互いに平行に延びる各導線51の配列ピッチP1も、求められる開口率などに応じて設定される。これによって、観察者が視認する映像に対して導線51が及ぼす影響を、無視可能な程度まで低くすること、即ち十分な不可視性を得ることができる。
なお図2Aにおいては、導電パターン41が、開口部形状が矩形状に形成された導線51を所定の方向に沿って並べることによって構成されている例を示したが、これに限られることはない。例えば図2Bに示すように、導電パターン41は、開口部形状が菱形状に形成された導線51を所定の方向に沿って並べることによって構成されていてもよい。又、本実施形態に於いては、図2A及び図2Bに示す如く導電パターン41の開口部51aは導電パターン41の延びる方向と直交方向(同図の左右方向)の配列個数が2個となっているが、本発明に於ける該配列個数は2個にのみ限定されるわけでは無く、タッチパネルの位置検知の分解能、感度、導電パターン不可視性等に応じて適宜個数に設計される。
次に、図3および図4を参照して、透視性電極31の層構成について説明する。図3は、透視性電極31を図2AのIII線に沿って切断した場合を示す断面図であり、図4は、図3に示す基材フィルム32および導線51を拡大して示す断面図である。
図3に示すように、透視性電極31は、透明な基材フィルム32と、基材フィルム32の面上に設けられた導線51とから成る導電パターン41、を含んでいる。なお、本明細書において「透明」とは、光透過率が十分に高く、その向こう側が透けて見える性質を意味する。具体的には、例えば可視光透過率が50%以上、より好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上である。
基材フィルム32は、上述の導電パターン41や額縁配線43などのパターンや配線を支持するためのものである。この基材フィルム32は、図4の如く表示装置からの映像光を透過させることができる透明基材33と、透明基材33と導電パターン41の導線51との間に設けられたアクリル系樹脂層35aと、を含んでいる。また基材フィルム32は、透明基材33のうち導線51に向かい合う側とは反対の側に設けられたアクリル系樹脂層35bをさらに含んでいてもよい。また、透明基材33と各アクリル系樹脂層35a,35bとの間には、透明基材33とアクリル系樹脂層35aおよびアクリル系樹脂層35bとの間の密着性を向上させるためのプライマー層34aおよびプライマー層34bが介在されていてもよい。
透明基材33を構成する材料としては、透明性および可撓性を有する材料が用いられ、例えば合成樹脂(プラスチック)が用いられる。合成樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂、ポリプロピレン(PP)、シクロオレフィンポリマー(COP)等のポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、またはトリアセチルセルロース(TAC)などのセルロース系樹脂等の可撓性及び透明性を有する樹脂が用いられる。基材フィルムの厚みは20〜5000μm程度とする。
アクリル系樹脂層35a,35bは、ロール・トゥー・ロール方式で透視性電極31を製造する際のガイドローラとの摩擦により生じ得る擦り傷などに対する耐擦傷性を高めるという機能や、透視性電極31の透過率や反射率などの光学特性を調整するという機能を実現するために設けられる層である。アクリル系樹脂層35a,35bを構成する材料としては、アクリル樹脂が用いられる。該アクリル系樹脂としては、十分な耐擦傷性と透明性を有する物が好ましく、これら条件を満たす代表的なものとして、電離放射線照射による架橋反応乃至は重合反応で硬化する電離放射線型アクリル樹脂が挙げられる。斯かる電離放射線硬化型アクリル樹脂としては、分子中に(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基等の重合性官能基を有する(メタ)アクリレートプレポリマー又は(メタ)アクリレート単量体が用いられる。該(メタ)アクリレートプレポリマーとしては、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート等のプレポリマーが挙げられる。又、該(メタ)アクリレート単量体としてはエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)メタクリレート単量体等が挙げられる。(此処で、「(メタ)アクリロイル基」、「(メタ)アクリレート」等の表記は、各々「アクリロイル基又はメタクリロイル基」、「アクリレート又はメタクリレート」を意味する。)これらプレポリマー及び単量体は、耐擦傷性、可撓性、塗工適性等の要求性能に応じて、適宜、上記プレポリマーを1種類単独又は2種類以上混合して、上記単量体を1種類単独又は2種類以上混合して、或いは上記プレポリマー1種類以上と上記単量体1種類以上とを混合して用いられる。又、電離放射線として紫外線又は可視光線を使用する場合には、これらプレポリマー及び単量体100質量部に対して、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物等の光開始剤を0.1〜5質量部程度添加する。又、耐擦傷性を高める為に、該アクリル樹脂中に粒径0.1〜5μmの微粒子をフィラー(充填剤)として添加する。該微粒子は、シリカ(酸化珪素)、アルミナ(酸化アルミニウム)、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等からなる無機物粒子、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、珪素樹脂、弗素樹脂、メラミン樹脂等の有機物粒子からなるものが使用できる。又、該微粒子の添加量は、該アンダーコート層組成物中に0.1〜30質量%程度とすることが出来る。又、該アクリル系樹脂層35a、35bの厚みは、乾燥硬化状態で1〜5μm程度とすることが出来る。電離放射線としては、紫外線、可視光線、X線等の電磁波、電子線、アルファ線等の荷電粒子線が用い得る。尚、本実施形態に於いては、アクリレートプレポリマー、アクリレート単量体、及びベンゾトリアゾール系光開始剤からなる紫外線硬化型アクリル樹脂組成物の硬化物を用いた。
なお、アクリル系樹脂層35aは、複数の層から構成されていてもよい。例えば、図示はしないが、アクリル系樹脂層35aは、第1アクリル系樹脂層と、第1アクリル系樹脂層と透明基材33との間に設けられた第2アクリル系樹脂層と、を含んでいてもよい。この場合、好ましくは、第1アクリル系樹脂層の屈折率は、1.58〜1.75の範囲内になっており、第2アクリル系樹脂層の屈折率は、1.50〜1.60の範囲内になっており、かつ、第1アクリル系樹脂層の屈折率は、第2アクリル系樹脂層の屈折率よりも大きくなっている。これによって、アクリル系樹脂層35aに、上述のハードコート層としての機能だけでなく、透過率や反射率などの光学特性を調整する機能を持たせることができる。第1アクリル系樹脂層を構成する材料としては、ベースとなるアクリル樹脂の中に、酸化ニオブやジルコニウムなどの高屈折率材料からなる粒子やフィラーを分散させたものが用いられ得る。また、第2アクリル系樹脂層を構成する材料としては、アクリル樹脂などが用いられ得る。
同様に、アクリル系樹脂層35bも、複数の層から構成されていてもよい。例えば、図示はしないが、アクリル系樹脂層35bは、第1アクリル系樹脂層と、第1アクリル系樹脂層と透明基材33との間に設けられた第2アクリル系樹脂層と、を含んでいてもよい。この場合、好ましくは、第1アクリル系樹脂層の屈折率は、1.58〜1.75の範囲内になっており、第2アクリル系樹脂層の屈折率は、1.50〜1.60の範囲内になっており、かつ、第1アクリル系樹脂層の屈折率は、第2アクリル系樹脂層の屈折率よりも大きくなっている。これによって、アクリル系樹脂層35aの場合と同様に、アクリル系樹脂層35bに、上述のハードコート層としての機能だけでなく、透過率や反射率などの光学特性を調整する機能を持たせることができる。第1アクリル系樹脂層および第2アクリル系樹脂層を構成する材料としては、アクリル系樹脂層35aの場合と同様の材料が用いられ得る。
なお、本明細書において示されている屈折率は、特に断らない限り、波長500nmの光に対する屈折率を意味している。
なお、アクリル系樹脂層35a,35bのうち透明基材33の観察者側に位置するアクリル系樹脂層のことを「観察者側アクリル系樹脂層」と称し、反対側に位置するアクリル系樹脂層のことを「表示装置側アクリル系樹脂層」と称することもある。なお後述するように、導線51は、基材フィルム32の観察者側に位置することもあれば、基材フィルム32の表示装置側に位置することもある。従って、アクリル系樹脂層35aが「観察者側アクリル系樹脂層」になりアクリル系樹脂層35bが「表示装置側アクリル系樹脂層」になることもあれば、アクリル系樹脂層35bが「観察者側アクリル系樹脂層」になりアクリル系樹脂層35aが「表示装置側アクリル系樹脂層」になることもある。
次に、導線51の層構成について説明する。図4に示すように、導線51は、基材フィルム32側から順に配置された低反射層54および本体層53を有する導線形成層52Aを含んでいる。
本体層53は、導線51における導電性を主に実現するための層である。本発明に於けるこの本体層53は、その厚みが例えば0.2μm以下になるよう、より具体的には0.02μm〜0.2μmの範囲内になるよう構成されている。これによって、導線51全体の厚みが大きくなることを抑制することができ、このことにより、導線51の側面において外光や映像光が反射されてしまうことを抑制することができる。このため、透視性電極31が取り付けられる表示装置における視認性を十分に確保することができる。
一方、本体層53の厚みを小さくすることは、導線51の電気抵抗値が大きくなってしまうことを導き得る。ここで本実施の形態においては、本体層53を構成する材料として、その比抵抗が所望の値以下である金属材料を用いており、例えばその比抵抗が4.0×10−6(Ωm)以下である金属材料を用いている。これによって、導線51の電気抵抗値を十分に低くすることができる。例えば、本体層53のシート抵抗値を0.3Ω/□以下にすることができる。本体層53を構成するための、その比抵抗が4.0×10−6(Ωm)以下である金属材料としては、本発明に於いては、例えば、金、銀、銅、白金、アルミニウム、錫等の金属を90重量%以上含む材料(金属単体、金属合金等)を用いることが出来る。本実施形態に於いては、99重量%の銅を含む材料を用いることができる。
ところで、銅などの金属材料は、高い導電性を有する一方で、金属光沢を示す。このため、未処理の金属材料が導線51として用いられると、表示装置からの映像光の視認性が、導線の金属光沢によって妨げられることになる。特に銅は、銅に特有の赤味を帯びた色を示すため、銀などのその他の金属材料に比べて目立ち易く、このため表示装置からの映像光の視認性がより妨げられることになる。
このような銅特有の金属光沢を和らげるため、本体層53に比べて金属光沢が抑制された薄い低反射層54が、本体層53の面上に設けられている。以下、低反射層54について説明する。
低反射層54は、窒化銅からなる層である。窒化銅は、酸素原子をさらに含んでいてもよい。窒化銅としては、例えば、10〜15アトミック%の窒素と、10〜15アトミック%の酸素と、70〜80アトミック%の銅を含む銅化合物が用いられ得る。このような窒化銅を用いて構成される低反射層54においては、その金属光沢が、本体層53における金属光沢に比べて軽減されており、特に、銅に特有の赤味を帯びた色が軽減されており、特に銅に特有の赤味を帯びた色が低減されている。このため、導線51からの反射光によって映像の視認性が低下することを抑制することができる。
また、低反射層54は、本体層53に比べて小さな厚みを有しており、具体的には、低反射層54の厚みは、10nm〜60nmの範囲内になっているため、導線51全体の厚みが大きくなることを抑制することができ、このことにより、導線51の側面において外光や映像光が反射されてしまうことを抑制することができる。
また、低反射層54の厚みを10nm〜60nmの範囲内に設定することによっても、導線51における光の反射率を低くすることができる。この理由としては、限定はされないが例えば、低反射層54において生じる薄膜干渉を挙げることができる。薄膜干渉とは、低反射層54の一方の面で反射された光と、低反射層54の他方の面で反射された光とが干渉するという現象である。低反射層54の厚みを上述の10〜60nmの範囲内に設定することにより、反射光を弱めるように薄膜干渉が生じ、これによって、導線51における光の反射率が低減されることが考えられ得る。
上述のような薄い低反射層54を形成するための方法が特に限られることはなく、スパッタリング法、真空蒸着法、CVD法、イオンプレーティング法、電子ビーム法などの公知の薄膜形成法を用いることができる。例えばスパッタリング法が用いられる場合、所定の分圧に制御された窒素ガスまたは窒素ガスおよび酸素ガスの両方が存在する環境下で、銅からなるターゲットに放電電力を印加することによって、所望の組成を有する上述の窒化銅からなる層を得ることができる。
ところで、発明が解決しようとする課題の欄でも言及したように、アクリル系樹脂層35a上に低反射層54を形成すると、透明基材53と低反射層54とが直接密着する場合と比べて、透明基材53と低反射層54との密着性が低下する。その結果、保護フィルム剥離などの後工程において、導線51が基材フィルム52から剥がれてしまうことが考えられる。
本件発明者らは、このような課題を考慮して鋭意検討を重ねた結果、低反射層54とアクリル系樹脂層35aとの間に、低反射層54とアクリル系樹脂層35aの両方に直接密着して、CuOHを構成するCuを含む密着層55を介在させることで、透明基材33と低反射層54との密着性を向上させることができることを確認した。以下、密着層55について説明する。
密着層55は、CuOHを構成するCuを含む、窒化銅からなる層である。CuOHを構成するCuとは、OH基と化学結合している銅原子を意味する。密着層55において、未反応のCu(すなわち他の原子や分子と化学結合していないピュアな銅原子)の原子数に対するCuOHを構成するCuの原子数の比は、0.1以上であることが好ましい。本件発明者らが確認したところ、密着層55においてCuOHを構成するCuの割合がこの範囲であれば、導線51が基材フィルム52から剥がれてしまうことを効果的に抑制することができる。
ところで、試料の化学構造を分析するための装置として、TOF−SIMS(飛行時間型二次イオン分析計)が知られている。TOF−SIMSとは、試料表面に一次イオンビームを照射し、試料表面からスパッタされた二次イオンを飛行時間型質量分析計により分析することで、試料表面の質量スペクトルを得ることができるものである。ここで、試料表面からスパッタされた二次イオンは、試料表面の化学構造を保った分子イオンや化学結合が部分的に開裂したフラグメントである。
したがって、低反射層54とアクリル系樹脂層35aとの間に介在する層にCuOHを構成するCuが含まれているかどうかは、TOF−SIMSを用いた測定によりCuOHに対応する二次イオンが検出されるかどうかで、判定することができる。また、未反応のCuの原子数に対するCuOHを構成するCuの原子数の比は、CuOHに対応する二次イオンの検出強度をCuに対応する二次イオンの検出強度により規格化することで、求めることができる。
図1に戻って、導電パターン41に接続されている額縁配線43および端子部44は、導電パターン41からの信号を透視性電極31の外部に取り出すために設けられたものである。信号を適切に伝達することができる限りにおいて、額縁配線43および端子部44の具体的な構成が特に限られることはない。例えば額縁配線43および端子部44は、導線51と同一の層構成で導線51と同時に形成されるものであってもよい。
次に、以上のような構成からなる透視性電極31を製造する方法について、図5(a)〜図5(d)および図6(a)〜図6(c)を参照して説明する。
はじめに、図5(a)に示すように、基材フィルム32を準備する。基材フィルム32は、上述のように、透明基材33と、透明基材33の両側の面にそれぞれ設けられたアクリル系樹脂層35aおよびアクリル系樹脂層35bと、透明基材33とアクリル系樹脂層35aおよびアクリル系樹脂層35bとの間に設けられたプライマー層34aおよびプライマー層34bと、を含んでいる。
基材フィルム32を作製する方法の一例について説明すると、まず、両側の面にプライマー層34aおよびプライマー層34bが設けられた長尺状の透明基材33を準備する。次に、プライマー層34a上にアクリル系樹脂層35aを形成し、プライマー層34b上にアクリル系樹脂層35bを形成する。例えば、アクリル樹脂を含む塗工液を、コーターを用いてプライマー層34a,34b上にコーティングすることにより、アクリル系樹脂層35a,35bを形成することができる。この際、コーターとしては、好ましくは、アクリル系樹脂層35a,35bの平坦性を十分に確保することができるものが用いられ、例えばダイコーターが用いられる。なお、アクリル系樹脂層35a,35bを形成するための塗工液には、アクリル系樹脂層35a,35bの平坦性を高めるためのレベリング剤が含まれていてもよい。これによって、例えば、アクリル系樹脂層35a上に導線51の層を形成する際にピンホールなどの欠陥が生じてしまうことを抑制することができる。
基材フィルム32を準備した後、図5(b)に示すように、アクリル系樹脂層35a上に、アクリル系樹脂層35aに直接密着して、CuOHを構成するCuを含む密着層55を形成する。CuOHを構成するCuを含む密着層55は、たとえば、窒素ガスを含む雰囲気中で周波数30kHz〜2MHzの交流放電(以下、特定周波数の交流放電、或いは交流放電とも略稱する)を用いて銅のターゲットをスパッタリングすることで、形成することができる。周波数30kHz〜2MHzの交流放電と直流放電(以下、DC放電とも略稱する)とを併用して銅のターゲットをスパッタリングしてもよい。また、窒素ガスに加えて酸素ガスをさらに導入してもよい。
図19は、密着層55の形成に使用されるスパッタリング装置20の構成の一例を示している。図19に示す例では、スパッタリング装置20は、一対の銅のターゲット21a、21bと、各ターゲット21a、21bに電気的に接続された周波数30kHz〜2MHzの交流電源22と、各ターゲット21a、21bと対向する位置に基材フィルム32を支持するとともに所定の搬送方向へ搬送するメインローラ23と、を備えている。
このうち各ターゲット21a、21bは、基材フィルム32の幅方向に延びる細長形状を有しており、基材フィルム32の搬送方向に対して互いに間隔を空けて配置されている。
交流電源22は、一般に無線工学で言う長波帯から中波帯に亙る特定周波数帯域(周波数30kHz以上2MHz以下、本実施形態では50kHz)の周波数の交流電圧を、一対のターゲット21a、21bに互いに逆の位相で印加するように構成されている。交流電源22としては、たとえばヒュティンガー製の交流電源(50kHz、自動整合)が好適に使用され得る。
このスパッタリング装置20に、アルゴンガス、窒素ガスまたは窒素ガスおよび酸素ガスの両方を所定の流量で導入しながら、各ターゲット21a、21bに交流電源22から特定周波数の放電電圧を印加することによって、各ターゲット21a、21b上に交互にプラズマが生成される。そして、プラズマ中のアルゴンイオンがターゲット21a、21bをスパッタし、ターゲット21a、21bから放出された銅原子が基材フィルム32に入射する。ターゲット21a、21bから放出された銅原子は、基材フィルム32に到達するまでの間に、窒素ガスまたは酸素ガスと反応して窒化銅または酸化銅を構成し得る。
ここで、スパッタ粒子が絶縁物である場合、アースシールド24等のアノード電極に絶縁膜が堆積することにより、アノード消失が発生して放電が不安定になる。これを防止するために、交流電源22は、一対のターゲット21a、21bが交互にアノード電極となるように電圧を印加することで、アノード消失を防止している。
このような特定周波数の交流放電を用いたスパッタリングでは、DC放電を用いたスパッタリングと比較して、ターゲット21a、21bからスパッタされた銅原子のエネルギーが高い。このため、スパッタされた銅原子は、基材フィルム32のアクリル系樹脂層35aの表面に入射した時に、アクリル系樹脂層35aと混じりやすい。スパッタされた銅原子が、アクリル系樹脂層35aの表面に入射した時にアクリル系樹脂層35aに含まれるOH基と化学結合することで、アクリル系樹脂層35aに密着して、CuOHを構成するCuを含む密着層55が形成され得る。
また、図21に示すように、DC放電を用いたスパッタリングの場合、基材フィルム側がマイナスにチャージ(帯電)され、チャージされた電荷は基材フィルム上の金属層を通って流れ、アースされたガイドローラから電流となって放出される。ここで、アクリル系樹脂層35aに易滑性向上のためにフィラーが添加されていると、フィラーの頂上が接点となって電流が集中するため、高温が発生し、基材フィルムに凹欠陥が発生する。
一方、交流放電を用いたスパッタリングでは、一対のターゲット21a、21bと交流電源22との間で回路が閉じているため、基材フィルム32側がマイナスにチャージされることが抑制され、これにより、基材フィルム32に凹欠陥が発生することを抑制することができる。
次に、図5(c)に示すように、密着層55上に直接密着して、低反射層54を形成する。そして、図5(d)に示すように、低反射層54上に、本体層53を形成する。低反射層54および本体層53を形成するための方法としては、上述のように、スパッタリング法などの薄膜形成法を用いることができる。
このようにして、透視性電極31を作製するための元材としての積層体60(ブランクとも呼ばれる)が得られる。積層体60は、基材フィルム32と、基材フィルム32上に設けられた導線形成層52Aと、を備えている。導線形成層52Aは、基材フィルム32側から順に配置された密着層55、低反射層54、および本体層53を含んでいる。
積層体60を準備した後、図6(a)に示すように、導線形成層52A上に感光性レジスト層71を所定のパターンで形成する。感光性レジスト層71は、特定波長域の光、例えば紫外線に対する感光性を有している。感光性レジスト層71のタイプが特に限られることはない。例えば光溶解型の感光性レジスト層が用いられてもよく、若しくは光硬化型の感光性レジスト層が用いられてもよい。ここでは、光溶解型の感光性レジスト層が用いられる例について説明する。
感光性レジスト層71は、導線51のパターンに対応したパターンで形成されている。感光性レジスト層71は、例えば、はじめに、積層体60の表面上にコーターを用いて感光性レジスト材料をコーティングし、次に、感光性レジスト材料を所定のパターンで露光して現像することによって、所定のパターン形状の感光性レジスト層71が形成される。
次に、図6(b)に示すように、感光性レジスト層71をマスクとして本体層53、低反射層54および密着層55をエッチングする。なお上述のように、本体層53、低反射層54および密着層55のいずれも、銅を含むよう構成されている。このため、銅を溶解させることができるエッチング液を用いて、本体層53、低反射層54および密着層55を同時にエッチングすることができる。エッチング液としては、例えば塩化第2鉄水溶液が用いられる。
次に、本体層55上に残っている感光性レジスト層71に対して、これを溶解除去する薬液によって洗浄して脱膜処理する。これによって、図6(c)に示すように、感光性レジスト層71を除去することができる。このようにして、本体層53、低反射層54および密着層55を有する導線形成層52Aをパターン形成し、これから構成された導線51を備える透視性電極31を得ることができる。
ここで本実施の形態によれば、上述のように、導線51は、90重量%以上の銅を含む本体層53と、本体層53の面上に設けられた窒化銅からなる低反射層54と、を含んでいる。このため、銅の金属光沢に起因して、赤味を帯びた光が観察者に到達してしまうことを、低反射層54によって抑制することができる。また、低反射層54とアクリル系樹脂層35aとの間に、CuOHを構成するCuを含む密着層55が介在しているため、低反射層54とアクリル系樹脂層35aとの間の密着性が向上している。これにより、保護フィルム剥離などの後工程において、導線51が基材フィルム32から剥がれてしまうことを抑制することができる。さらに、本体層53、低反射層54および密着層55のいずれもが銅を含むため、積層体60から透視性電極31を作製する際、銅を選択的に溶かすことができるエッチング液を用いることにより、積層体60の本体層53、低反射層54および密着層55を同時にエッチングして導線51を形成することができる。このため、透視性電極31を作製するために必要になる工数を小さくすることができる。
<第2の実施の形態>
次に、図7を参照して、本発明の第2の実施の形態について説明する。図7に示す第2の実施の形態において、上述の第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。また、第1の実施の形態において得られる作用効果が本実施の形態においても得られることが明らかである場合、その説明を省略することもある。
図7は、本実施の形態による透視性電極31を拡大して示す断面図であり、上述の第1の実施の形態における図4に対応する図である。図7に示すように、本実施の形態において、導線51は、基材フィルム32側から順に配置された密着層55、低反射層54、本体層53および低反射層54を有する導線形成層52Bを含んでいる。
本体層53、低反射層54および密着層55は、基材フィルム32との間の位置関係が異なる点を除いて、上述の第1の実施の形態における本体層53、低反射層54および密着層55と同一である。
本実施の形態によれば、導線51は、本体層53と基材フィルム32との間に設けられた低反射層54に加えて、本体層53の面のうち基材フィルム32に向かい合う面とは反対側の面上に設けられた低反射層54を含んでいる。このため、光の反射が生じることを本体層53の両側において抑制することができる。このことにより、映像の視認性を十分に確保することができる。
<第3の実施の形態>
次に、図8〜図12を参照して、本発明の第3の実施の形態について説明する。本実施の形態においては、上述の透視性電極31を備えるタッチパネルと表示装置とを組み合わせることによって得られるタッチ位置検出機能付き表示装置について説明する。本実施の形態において、上述の各実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。また、各実施の形態において得られる作用効果が本実施の形態においても得られることが明らかである場合、その説明を省略することもある。
図8は、タッチ位置検出機能付き表示装置10を示す展開図である。図8に示すように、タッチ位置検出機能付き表示装置10は、タッチパネル30と、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどの表示装置15とを組み合わせることによって構成されている。
図示された表示装置15は、フラットパネルディスプレイとして構成されている。表示装置15は、表示面16aを有した表示パネル16と、表示パネル16に接続された表示制御部(図示せず)と、を有している。表示パネル16は、映像を表示することができるアクティブエリアA1と、アクティブエリアA1を取り囲むようにしてアクティブエリアA1の外側に配置された非アクティブエリア(額縁領域とも呼ばれる)A2と、を含んでいる。表示制御部は、表示されるべき映像に関する情報を処理し、映像情報に基づいて表示パネル16を駆動する。表示パネル16は、表示制御部の制御信号に基づいて、所定の映像を表示面16aに表示する。すなわち、表示装置15は、文字や図等の情報を映像として出力する出力装置としての役割を担っている。
なお、図8に示すように、タッチパネル30の観察者側、すなわち表示装置15とは反対の側に、透光性を有する保護板12がさらに設けられていてもよい。保護板12は例えば、タッチパネル30の観察者側の面に接着層などによって接着されている。この保護板12は、指などの外部導体との接触によってタッチパネル30のパターンや表示装置15が損傷することを防ぐためのものであり、いわゆる前面板とも称されるものである。
図8に示すように、タッチパネル30は、表示装置15の表示面16aに、例えば接着層(図示せず)を介して接着されている。このタッチパネル30は、2枚の透視性電極31を組み合わせることによって構成されている。図8においては、観察者側に配置された透視性電極が符号31Aで表されており、透視性電極31Aよりも表示装置側に配置された透視性電極が符号31Bで表されている。以下の説明において、符号31Aが付された透視性電極を第1透視性電極31A、符号31Bが付された透視性電極を第2透視性電極31Bとも称する。
図9は、観察者側から見た場合のタッチパネル30を示す平面図である。図9においては、第1透視性電極31Aの構成要素が実線で表され、第2透視性電極31Bの構成要素が点線で表されている。
図9に示すように、第1透視性電極31Aおよび第2透視性電極31Bはそれぞれ、所定の方向に延びる複数の導電パターン41を備えている。ここで、第1透視性電極31Aおよび第2透視性電極31Bは、各々の導電パターン41が互いに交差する方向に延びるよう、配置されている。例えば、第1透視性電極31Aは、その導電パターン41が第1方向D1に沿って延びるよう、配置されている。一方、第2透視性電極31Bは、その導電パターン41が、第1方向D1に直交する第2方向D2に沿って延びるよう、配置されている。
図10は、図9において符号XVIが付された一点鎖線で囲まれた部分における導電パターン41を拡大して示す平面図である。図10に示すように、第1透視性電極31Aの導電パターン41および第2透視性電極31Bの導電パターン41はそれぞれ、網目状に配置された導線51から構成されている。
図11は、タッチパネル30を図10のXVII線に沿って切断した場合を示す断面図である。図11に示すように、タッチパネル30は、第1透視性電極31Aの導線51および第2透視性電極31Bの導線51のいずれもが基材フィルム32の表示装置側に位置するよう、第1透視性電極31Aおよび第2透視性電極31Bを組み合わせることによって構成されている。なお、第1透視性電極31Aと第2透視性電極31Bとの間には接着層38などが介在されていてもよい。
図12は、図11に示すタッチパネル30の一部を拡大して示す断面図である。図12に示すように、第1透視性電極31Aの導線51および第2透視性電極31Bの導線51はいずれも、上述の導線形成層52Aを含んでいる。ここで図12に示すように、導線形成層52Aは、本体層53と、本体層53の観察者側に設けられた低反射層54と、を含んでいる。このため、観察者側からタッチパネル30に入射した外光が導線51によって反射されて観察者側に戻ってしまうことを抑制することができる。これによって、導線51が観察者から視認されてしまうことを抑制することができ、このことにより、表示装置15からの映像の視認性が導線51によって妨げられることを抑制することができる。
また、上述のように、導線形成層52Aの低反射層54と基材フィルム32のアクリル系樹脂層との間には、低反射層54とアクリル系樹脂層との両方に密着して、密着層55が介在されている。これにより、低反射層54とアクリル系樹脂層との密着性が向上しており、外部からの衝撃などにより導線51が基材フィルム32から剥がれてしまうことを抑制することができる。
また、上述のように、導線形成層52Aの本体層53は、その厚みが0.2μm以下になるよう構成されている。本実施の形態においては0.1nmとされている。このため、基材フィルム32の法線方向から傾斜した方向に沿ってタッチパネル30に入射した光が導線形成層52Aの側面によって反射してしまうことを抑制することができる。このことにより、導線51の側面が観察者から視認されてしまうことや、導線51の側面によって表示装置からの映像光が妨げられてしまうことを抑制することができる。従って、映像の視認性を向上させることができる。
なお、上述した本実施の形態に対して様々な変更を加えることが可能である。以下、図面を参照しながら、変形例について説明する。以下の説明および以下の説明で用いる図面では、上述した本実施の形態と同様に構成され得る部分について、上述の実施の形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いることとし、重複する説明を省略する。また、上述した実施の形態において得られる作用効果が変形例においても得られることが明らかである場合、その説明を省略することもある。
図12においては、第1透視性電極31Aの導線51および第2透視性電極31Bの導線51のいずれもが導線形成層52Aを含む例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、第1透視性電極31Aの導線51は、上述の導線形成層52Bを含んでいてもよい。すなわち、第1透視性電極31Aの導線51は、導線形成層52Aまたは導線形成層52Bのいずれによって構成されていてもよい。同様に、第2透視性電極31Bの導線51も、導線形成層52Aまたは導線形成層52Bのいずれによって構成されていてもよい。
例えば図13には、第1透視性電極31Aの導線51および第2透視性電極31Bの導線51のいずれもが導線形成層52Bを含む例が示されている。図13に示すように、導線形成層52Bは、本体層53の表示装置側に設けられた低反射層54を含んでいる。このため、タッチパネル30に入射した表示装置15からの映像光が導線51によって反射されて表示装置15側に戻り、その後、表示装置15の構成要素によって再び反射されてノイズ光として観察者に到達してしまうことを抑制することができる。
また上述の本実施の形態および上述の各変形例において、第1透視性電極31Aの導線51および第2透視性電極31Bの導線51のいずれもが基材フィルム32の表示装置側に位置する例を示したが、これに限られることはない。例えば図14に示すように、第1透視性電極31Aの導線51は、基材フィルム32の観察者側に位置し、一方、第2透視性電極31Bの導線51は、基材フィルム32の表示装置側に位置していてもよい。
図14に示す例においても、第1透視性電極31Aの導線51および第2透視性電極31Bの導線51を構成する導線形成層の種類が特に限られることはない。すなわち、第1透視性電極31Aの導線51は、導線形成層52Aまたは導線形成層52Bのいずれによって構成されていてもよい。同様に、第2透視性電極31Bの導線51も、導線形成層52Aまたは導線形成層52Bのいずれによって構成されていてもよい。なお、図14に示す例において、第1透視性電極31Aの導線51を構成する導線形成層としては、好ましくは導線形成層52Bが採用される。この場合、導線51の本体層53の観察者側に低反射層54が存在するため、観察者側からタッチパネル30に入射した外光が、第1透視性電極31Aの導線51の本体層53によって反射されて観察者側に戻ってしまうことを抑制することができる。
また図15に示すように、第1透視性電極31Aの導線51は、基材フィルム32の表示装置側に位置し、一方、第2透視性電極31Bの導線51は、基材フィルム32の観察者側に位置していてもよい。
図15に示す例においても、第1透視性電極31Aの導線51および第2透視性電極31Bの導線51を構成する導線形成層の種類が特に限られることはない。すなわち、第1透視性電極31Aの導線51は、導線形成層52Aまたは導線形成層52Bのいずれによって構成されていてもよい。同様に、第2透視性電極31Bの導線51も、導線形成層52Aまたは導線形成層52Bのいずれによって構成されていてもよい。なお、図15に示す例において、第2透視性電極31Bの導線51を構成する導線形成層としては、好ましくは導線形成層52Bが採用される。この場合、導線51の本体層53の観察者側に低反射層54が存在するため、観察者側からタッチパネル30に入射した外光が、第2透視性電極31Bの導線51の本体層53によって反射されて観察者側に戻ってしまうことを抑制することができる。
次に、導線51が基材フィルム32の表示装置側に設けられている場合における、導線51の断面形状の好ましい一例について、図16を参照して説明する。なお、図16においては、導線51が導線形成層52Aから構成されている例について説明するが、これに限られることはなく、導線51が導線形成層52Bから構成されていてもよい。
図16に示すように、導線51の導線形成層52Aは、表示装置15に向かうにつれて先細になるテーパ形状を有している。この場合、基材フィルム32の法線方向から傾斜した方向に沿ってタッチパネル30に入射した外光Lは、導線形成層52Aのテーパ形状のため、導線51の側面に入射することなく表示装置15側へ抜けていくことができる。このため、外光が導線51によって反射されて観察者側に戻ってしまうことをさらに抑制することができる。
導線形成層52Aの具体的なテーパ形状は、想定される外光の傾斜の程度などに応じて適切に設定されるが、例えば、基材フィルム32の法線方向と導線51の側面とが成す角は10°〜30°の範囲内となっている。
なお、上述した本実施の形態に対するいくつかの変形例を説明してきたが、当然に、複数の変形例を適宜組み合わせて適用することも可能である。
<第4の実施の形態>
次に図17および図18を参照して、本発明の第4の実施の形態について説明する。本実施の形態においては、基材フィルム32の両側に導線51が設けられる例について説明する。本実施の形態において、上述の各実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。また、各実施の形態において得られる作用効果が本実施の形態においても得られることが明らかである場合、その説明を省略することもある。
図17に示すように、透視性電極31は、基材フィルム32と、基材フィルム32の観察者側の面(第1面)32a上に設けられた導線51と、基材フィルム32の表示装置側の面(第2面)32b上に設けられた導線51と、を備えている。第1面32a側の導線51からなる導電パターン41および第2面32b側の導線51からなる導電パターン41は、互いに交差するように設けられている。例えば、同図に於いては、第1面32a上の導電パターン41は紙面と直交方向に、又第2面32b上の導電パターン41は紙面と平行方向に延びている。このため本実施の形態によれば、1枚の透視性電極31によってタッチパネル30を構成することができる。
図18は、図17に示す透視性電極31の一部を拡大して示す断面図である。図18に示すように、基材フィルム32の第1面32a上に設けられた導線51は、上述の導線形成層52Bを含んでいる。また、基材フィルム32の第2面32b上に設けられた導線51は、上述の導線形成層52Aを含んでいる。このため、観察者側からタッチパネル30に入射した外光が導線51によって反射されて観察者側に戻ってしまうことを抑制することができる。これによって、導線51が観察者から視認されてしまうことを抑制することができ、このことにより、表示装置15からの映像の視認性が導線51によって妨げられることを抑制することができる。
図18においては、基材フィルム32の第1面32a上に設けられる導線51が導線形成層52Bを含み、基材フィルム32の第2面32b上に設けられる導線51が導線形成層52Aを含む例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、基材フィルム32の第1面32a上に設けられる導線51は、上述の導線形成層52Aを含んでいてもよい。すなわち、基材フィルム32の第1面32a上に設けられる導線51は、導線形成層52Aまたは導線形成層52Bのいずれによって構成されていてもよい。同様に、基材フィルム32の第2面32b上に設けられる導線51も、導線形成層52Aまたは導線形成層52Bのいずれによって構成されていてもよい。
好ましくは、基材フィルム32の第1面32a上に設けられる導線51を構成する導線形成層としては、導線形成層52Aが採用される。この場合、導線51の本体層53の観察者側に低反射層54が存在するため、観察者側からタッチパネル30に入射した外光が、第1透視性電極31Aの導線51の本体層53によって反射されて観察者側に戻ってしまうことを抑制することができる。
なお、上述した本実施の形態に対するいくつかの変形例を説明してきたが、当然に、複数の変形例を適宜組み合わせて適用することも可能である。
次に、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
(実施例1)
図6(a)に示すように、基材フィルム32と、基材フィルム32上に設けられた導線形成層52Aと、を含む積層体60のサンプルを準備した。導線形成層52Aは、基材フィルム32側から順に配置された密着層55、低反射層54および本体層53を含んでいる。密着層55は、低反射層54と基材フィルム32のアクリル系樹脂層35aの両方に密着している。基材フィルム32の透明基材33を構成する材料としては、厚さ50μmの2軸延伸PETフィルムを用いた。基材フィルム32のアクリル系樹脂層35a,35bを構成する材料としては、アクリロイル基を分子中に有する単量体、アクリロイル基を分子中に有するプレポリマー、及びベンゾトリアゾール系光反応開始剤から紫外線硬化型アクリル樹脂を紫外線照射によって架橋硬化せしめたものを用いた。本体層53を構成する材料としては、純度(銅含有量)99質量%の銅を用いた。低反射層54および密着層55を構成する材料としては、酸素原子を含む窒化銅からなる銅化合物を用いた。具体的なサンプルとしては、密着層54の成膜時に銅のターゲットに印加した放電電力は交流電力及び直流電力の両方とし、其のうち交流放電電力のみ異なる以下の3種類のものを用意した。
サンプル1:交流電力 8.4kW DC電力 4.2kW
サンプル2:交流電力 12.3kW DC電力 4.2kW
サンプル3:交流電力 10.1kW DC電力 4.2kW
また、比較のため、密着層55の代わりに、電力 4.2kWのDC放電を用いるが交流放電は用いずに窒化銅からなる層(以下、密着相当層と呼ぶ)を成膜した積層体を比較サンプルとして用意した。
次に、各サンプルに対して、JIS K5600−5−6に規定されたクロスカット法による密着性の評価試験を行い、試験結果に応じて0〜5点の評価点で分類した。ここで、全桝目の50%以上が剥がれている場合を5点とし、どの格子の目にも剥がれがない場合を0点とした。また、2点(全桝目の5〜15%)以下を合格とした。
各サンプルにおいて、密着層55または密着相当層の成膜条件、および、クロスカット法による試験結果を下表1にまとめて示す。
表1に示すように、交流放電を用いて密着層55を形成したサンプル1〜3では、いずれも、クロスカット法による試験結果が2点以下(剥離面積が全桝目の15%以下)であった。一方、密着層55の代わりに、DC放電を用いるが特定周波数の交流放電を用いずに窒化銅からなる密着相当層を成膜した比較サンプルでは、クロスカット法による試験結果が3点以上(剥離面積が全桝目の15%超過)であった。したがって、導線と基材フィルムとの密着性を向上させる上で、低反射層54とアクリル系樹脂層35aとの両方に密着して密着層55を設けることは、極めて有効であると言える。
(実施例2)
実施例1と同様に、図5(a)に示すように、基材フィルム32と、基材フィルム32上に設けられた導線形成層52Aと、を含む積層体60のサンプルを準備した。具体的なサンプルとして、互いに異なるロットのサンプル21、22を用意した。
また、比較のため、密着層55の代わりに、DC放電を用いるが特定周波数の交流放電を用いずに窒化銅からなる密着相当層を成膜した積層体を、比較サンプル1〜3として用意した。比較サンプル1〜3も、互いに異なるロットから得られたサンプルである。
次に、実施例1と同様に、各サンプルに対して、JIS K5600−5−6に規定されたクロスカット法による密着性の評価試験を行い、試験結果に応じて0〜5点の評価点で分類した。
また、各サンプルに対して、TOF−SIMSを用いた測定により、CuOHに対応する二次イオンおよびCuに対応する二次イオンの検出強度をそれぞれ時間の経過に応じて測定した。図20は、各サンプルにおいて、CuOHに対応する二次イオンの検出強度の時間変化を示している。図20では、縦軸が、CuOHに対応する二次イオンの検出強度を母材となる未反応の純Cu成分に対応する二次イオンの検出強度で規格化した値、すなわち、(CuOHに対応する二次イオンの検出強度)/(Cuに対応する二次イオンの検出強度)×100、を示している。また、横軸が、時間の経過を示している。TOF−SIMSを用いた測定では、試料表面が一次イオンビームによりスパッタされて削られるため、時間の経過に応じて測定領域が試料表面から深さ方向に移動していく。したがって、図20の横軸は、測定部位の深さ方向の位置(測定深さ)を示している。また、図20において、CuOHに対応する二次イオンの検出強度をCuに対応する二次イオンの検出強度で規格化した値のピーク値が得られる測定深さは、低反射層54とアクリル系樹脂層35aとの界面付近、すなわち密着層55または密着相当層の領域に相当すると考えられる。
各サンプルにおいて、密着層55または密着相当層の成膜時の放電条件、クロスカット法による試験結果、および、CuOHに対応する二次イオンの検出強度を未反応の純Cuに対応する二次イオンの検出強度で規格化した値のピーク値を、下表2にまとめて示す。
表2に示すように、交流放電を用いて密着層55を形成したサンプル21、22では、いずれも、クロスカット法による試験結果が2点以下であった。一方、密着層55の代わりに、DC放電を用いるが交流放電を用いずに窒化銅からなる密着相当層を成膜した比較サンプル1〜3では、いずれも、クロスカット法による試験結果が3点以上であった。したがって、導線と基材フィルムとの密着性を向上させる上で、低反射層54とアクリル系樹脂層35aとの両方に密着して密着層55を設けることは、極めて有効であると言える。
また、交流放電を用いて密着層55を形成したサンプル21、22では、いずれも、CuOHに対応する二次イオンの検出強度をCuに対応する二次イオンの検出強度で規格化した値のピーク値が、10以上であった。一方、密着層55の代わりに、DC放電を用いるが交流放電を用いずに窒化銅からなる密着相当層を成膜した比較サンプル1〜3では、いずれも、CuOHに対応する二次イオンの検出強度をCuに対応する二次イオンの検出強度で規格化した値のピーク値が、8以下であった。したがって、交流放電を用いて形成された密着層55は、未反応のCuの原子数に対するCuOHを構成するCuの原子数の比が0.1以上であると言える。
以上の結果を総合的に考えれば、導線と基材フィルムとの密着性を向上させる上で、密着層55において、未反応のCuの原子数に対するCuOHを構成するCuの原子数の比が0.1以上であることが、好ましいと言える。