以下に、本発明の一実施形態を説明する。図1(A)には、本発明の画像形成装置の一例としてのカラープリンタ100の構成が概略的に示されている。なお、本発明の画像形成装置は、カラープリンタに限らず、モノクロプリンタ、モノクロ複写機、カラー複写機、ファクシミリ装置、プロッタ装置等として、あるいはこれらの各機能を複合させたMFP等として実施できることは言うまでもない。以下では、図1(A)等に示されるXYZ3次元直交座標系を適宜用いて説明する。
カラープリンタ100は、図1(A)から分かるように、所謂「タンデム型のプリンタ」である。図1(A)において符号11で示される、中間転写体である転写ベルト11は、無端ベルトであって、Y軸方向を軸方向とする複数のローラ(ここでは3つのローラ)に掛け回されており、これら複数のローラのうちの一のローラである駆動ローラにより駆動されて、Y軸回りの一方向(ここでは−Y側から見て反時計回り)に回転するようになっている。以下で用いられる「時計回り」、「反時計回り」は、いずれも−Y側から見たY軸回りの回転方向を意味するものとする。
転写ベルト11の−Z側の部分はXY平面に平行になるように張られ、この部分に対して、4つの作像ユニットUY、UM、UC、UBがX軸方向に離間して配設されている。ここに、符号中の「Y、M、C、B」は、それぞれ「イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック」の各色を表し、作像ユニットUYはイエロー画像を作像するユニット、作像ユニットUMはマゼンタ画像を作像するユニット、作像ユニットUCはシアン画像を作像するユニット、作像ユニットUBはブラック画像を作像するユニットである。
4つの作像ユニットUY〜UBの−Z側には、「画像書き込み装置」である光走査装置13(露光装置)が配備され、更にその−Z側にカセット15が配置されている。
4つの作像ユニットUY〜UBは、実質的に同一の構成を有しているので、作像ユニットUYを代表的に、図1(B)を参照して簡単に説明する。
図1(B)に示される作像ユニットUYは、光導電性の感光体(像担持体)としての感光体ドラム20Y、感光体ドラム20Yの周囲に配置された、帯電器30Y、現像ユニット40Y、転写ローラ50Y、クリーニングユニット60Yを有している。なお、図1(B)における「破線で示される長方形」は、作像ユニットUYのユニットを一まとめに示すものであり、必ずしもケーシング等の実体を示すものではない。
帯電器30Yは、「接触式の帯電ローラ」である。帯電器30Yと現像ユニット40Yとの間は、走査光LYによる画像書き込み部として設定されている。
感光体ドラム20Yは、転写ベルト11の−Z側の部分の−Z側に配置され、転写ベルト11の表面に接触している。
転写ローラ50Yは、転写ベルト11の−Z側の部分に対して感光体ドラム20Yとは反対側に配置され、転写ベルト11の裏面に接触している。すなわち、転写ベルト11は、感光体ドラム20Yと転写ローラ50YとでZ軸方向に狭持されている。
3つの作像ユニットUM〜UBも、作像ユニットUYと同様の構成であり、これらの構成部については、必要に応じて、感光体ドラム20M〜20B、帯電器30M〜30B、現像ユニット40M〜40B、転写ローラ50M〜50B、クリーニングユニット60M〜60Bと表記する。
このようなカラープリンタ100によるカラー画像プリントのプロセスは比較的良く知られているが、以下に簡単に説明する。
カラー画像形成のプロセスが開始すると、感光体ドラム20Y〜20B、転写ベルト11が回転(周回)を開始する。各感光体ドラム20Y〜20Bの回転は時計回り、転写ベルト11の回転は反時計回りである。
4つの感光体ドラム20Y〜20Bの感光面(被走査面)は、対応する4つの帯電器30Y〜30Bにより均一に帯電される。光走査装置13は、4つの感光体ドラム20Y〜20Bの感光面に対して、対応する4つの走査光LY〜LBによる光走査で画像書き込みを行なう。
なお、このような画像書き込みを行なう光走査装置13は、従来から種々のものが良く知られており、光走査装置13としては、これら周知のものが適宜利用される。
感光体ドラム20Yに対しては、イエロー画像に応じて強度変調されたレーザビームを走査光LYとして光走査が行われ、イエロー画像が書き込まれ、イエロー画像に対応する静電潜像が形成される。
形成された静電潜像は所謂ネガ潜像であり、現像ユニット40Yによりイエロートナーを用いる反転現像により「イエロートナー画像」として可視化される。
可視化されたイエロートナー画像は、転写ローラ50Yにより、転写ベルト11の表面側に静電的に1次転写される。
感光体ドラム20Mに対しては、マゼンタ画像に応じて強度変調されたレーザビームを走査光LMとして光走査が行われ、マゼンタ画像が書き込まれ、マゼンタ画像に対応する静電潜像(ネガ潜像)が形成される。
形成された静電潜像は、現像ユニット40Mによりマゼンタトナーを用いる反転現像により「マゼンタトナー画像」として可視化される。
感光体ドラム20Cに対しては、シアン画像に応じて強度変調されたレーザビームを走査光LCとして光走査が行われ、シアン画像が書き込まれ、シアン画像に対応する静電潜像(ネガ潜像)が形成される。
形成された静電潜像は、現像ユニット40Cによりシアントナーを用いる反転現像により「シアントナー画像」として可視化される。
感光体ドラム20Bに対しては、ブラック画像に応じて強度変調されたレーザビームを走査光LBとして光走査が行われ、ブラック画像が書き込まれ、ブラック画像に対応する静電潜像(ネガ潜像)が形成される。
形成された静電潜像は、現像ユニット40Bによりブラックトナーを用いる反転現像により「ブラックトナー画像」として可視化される。
マゼンタトナー画像は、転写ローラ50Mにより転写ベルト11側へ静電的に1次転写されるが、このとき、転写ベルト11上に「先に転写されているイエロートナー画像」に重ね合わせられる。
同様に、シアントナー画像は、転写ローラ50Cにより、転写ベルト11上に「先に重ね合わせて転写されたイエロートナー画像、マゼンタトナー画像」に重ね合わせられて1次転写される。ブラックトナー画像は、転写ローラ50Bにより、転写ベルト11上のイエロー、マゼンタ、シアンの各色トナー画像に重ね合わせて1次転写される。
このようにして、転写ベルト11上で、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のトナー画像が重ね合わせられて「カラートナー画像」が形成される。
なお、4つの感光体ドラム20Y〜20Bは、トナー画像転写後に、対応する4つのクリーニングユニット60Y〜60Bによりクリーニングされ、残留トナーや紙粉等が除去される。
このようにして転写ベルト11に形成されたカラートナー画像は、2次転写ローラ17により転写ベルト11上からシート状記録媒体である記録紙S(転写材)上に静電的に「2次転写」され、定着装置19により記録紙S上に定着されてプリンタ外に排出される。
記録紙Sは、カセット15内に積載されて収容され、図示されない周知の給紙機構により給紙され、図示されないタイミングローラ(レジストローラとも呼ぶ)により尖端部を保持された状態で待機し、転写ベルト11上のカラートナー画像の移動にタイミングを合わせて2次転写部へ送り込まれる。
2次転写部は、転写ベルト11と、これに接して連れ回りする2次転写ローラ17との当接部であり、転写ベルト11上のカラートナー画像が2次転写部に到達するのにタイミングを合わせて、記録紙Sがタイミングローラにより2次転写部に送り込まれる。
かくして、カラートナー画像と記録紙Sが重ね合わせられ、カラートナー画像は記録紙S上に静電転写される。
2次転写によりカラートナー画像を転写された記録紙Sは、続いて、定着装置19を通過する際にカラートナー画像を定着され、その後、カラープリンタ100の上部のトレイTR上に排出される。
以上が、カラープリンタ100による「カラー画像プリントのプロセス」の概略説明である。
次に、図1(A)に示されるカラープリンタ100における定着装置19を、図1(C)を参照して説明する。
定着装置19は、図1(C)から分かるように所謂「ベルト定着方式」が採用され、定着部材としての定着ベルト61、加熱ローラ62、定着用ローラ64、加圧ローラ63、テンションローラ65、剥離爪66等を有している。
定着ベルト61は、例えばニッケル、ポリイミドなどの基材上に「例えばPFA、PTFEなどによる離型層」を有するもの、さらには、これら基材と離型層との間に「シリコンゴムなどの弾性層」を設けた構成である。
すなわち、定着ベルト61の表面は「離型層をなす例えばPFA、PTFEなどの樹脂」であり、その表面の情報が検出の対象である。
定着ベルト61は無端ベルトであり、加熱ローラ62と定着用ローラ64とに巻き掛けられ、テンションローラ65により「必要な張り」が与えられている。
加熱ローラ62は、例えばアルミ、鉄等の金属又は合金からなる中空ローラであって、例えばハロゲンヒータなどの熱源Hを内蔵している。この熱源Hからの熱が加熱ローラ62を介して定着ベルト61に伝わり、該定着ベルト61が加熱される。なお、図示は省略されているが、定着ベルト61の表面温度を検出するための温度センサ(サーモパイル等)が、定着ベルト61の表面に非接触で設けられている。なお、定着ベルト61と当接する接触型温度センサ(サーミスタ)を用いることも可能である。
定着用ローラ64は、例えばアルミ、鉄等の金属製又は合金製の芯金をシリコンゴムで囲繞し、弾性を付与したものである。定着用ローラ64は、定着ベルト61を反時計回りに周回駆動する。
加圧ローラ63は、例えばアルミ、鉄等の金属製又は合金製の芯金上にシリコンゴムなどの弾性層を設け、表層は例えばPFA、PTFE等の離型層により構成されている。
加圧ローラ63は、定着ベルト61における定着用ローラ64に巻き掛けられている部位に圧接する。この圧接は、定着用ローラ64を変形させ、ニップ部を形成する。このニップ部が定着部となる。
テンションローラ65は、例えばアルミ、鉄等の金属製又は合金製の芯金上にシリコンゴムを設けたものである。
剥離爪66は、その尖端部が、定着ベルト61の表面に当接するように、定着用ローラ64の軸方向(Y軸方向)に離間して、複数個配設されている。
定着が行なわれるときは、ヒータHにより加熱されつつ定着ベルト61が反時計回り、加圧ローラ63が時計回りにそれぞれ回転し、定着ベルト61の表面温度が定着可能な温度になると、カラートナー画像が転写された記録紙Sが、図1(A)の大きな矢印方向へ搬送されて定着部(ニップ部)に進入する。
そして、カラートナー画像は、定着部において定着ベルト61側から熱を受け、加圧ローラ63により定着ベルト61に対して押圧されて圧力を受け、記録紙Sに定着される。
補足すると、カラープリンタ100は、転写ベルト11をクリーニングするクリーニング装置(不図示)を有している。
このクリーニング装置は、図1(A)において作像ユニットUYの−X側において、転写ベルト11における−X側のローラに巻き掛けられた部位に対向して、転写ベルト11に当接するように配設されたクリーニングブラシとクリーニングブレードとを有し、転写ベルト11上の残留トナーや紙粉等の異物を、上記クリーニングブラシとクリーニングブレードとにより掻き取り、除去して、転写ベルト11をクリーニングするようになっている。
また、上記クリーニング装置は、転写ベルト11から除去した残留トナーを搬出し廃棄するための排出手段(図示されず)も有している。
図1に示されるカラープリンタ100では、転写方式は、上述の如く、転写ベルト11上に各感光体ドラム20Y〜20Bに形成されたカラートナー画像を順次重畳して1次転写し、転写されたカラートナー画像を2次転写ローラ17により記録紙S上に一括転写する方式であるが、これに限らない。
例えば、転写ベルト11上に記録紙Sを担持して搬送し、この記録紙Sを各感光体ドラムに対向接触させて各色のトナー画像を、直接記録紙S上に重畳して転写する方式とすることも可能である。この場合も、カラートナー画像の定着は、上記と同様でよい。
ここで、図1に示されるカラープリンタ100では、定着装置19は、定着ベルト61の表面情報を検出する表面情報検出装置500を更に備えている。
表面情報検出装置500は、反射型光学センサ200、処理装置300、温度センサ400などを含む。
反射型光学センサ200は、図1(C)に示されるように、定着ベルト61における加熱ローラ62に巻き掛けられている部位に対向して配置され、該部位の表面に記録紙Sの搬送方向(ここではZ軸方向)に直交する方向(ここではY軸方向)に並ぶ複数の光を例えば時系列で照射し、該表面からの反射光を受光し、受光光量に応じた信号である出力信号(検知信号)を処理装置300に送る。
定着ベルト61の幅方向は、光走査装置13による光走査(画像書き込み)の際の「主走査方向」、すなわち各感光体ドラムの長手方向(Y軸方向)に対応するので、以下では「主走査対応方向」とも呼ぶ。また、光走査装置13による光走査(画像書き込み)の際の「副走査方向」、すなわち各感光体ドラムの回転方向に対応する方向を「副走査対応方向」とも呼ぶ。
処理装置300は、反射型光学センサ200からの検知信号(出力信号)を受けて、定着ベルト61の表面状態を表面情報として検出する。ここでは、処理装置300は、カラープリンタ100の筐体内に配置されている。
温度センサ400は、カラープリンタ100の筐体内において、反射型光学センサ200の温度を計測し、その計測結果を処理装置300に出力する。温度センサ400は、反射型光学センサ200に接触して設けられる接触式温度センサ及び反射型光学センサ200に非接触で設けられる非接触式温度センサのいずれであっても良い。
接触式温度センサは、直接対象物に接触して測定する方式であり、構造が簡単で広く使われている。主なものとして、白銀測温抵抗体、サーミスタ、熱電対、トランジスタの温度特性を利用したIC化温度センサ、水晶のYカットを利用した水晶温度計等が挙げられる。
非接触式温度センサは、物体から放射される赤外線を計測し、その赤外線量から温度を測定する方式である。主なものとして、赤外線を受けたセンサ素子の温度変化を利用したサーモパイルやサーミスタなどの熱型と、光量子を受けたセンサ素子の変化を利用したフォトダイオードやフォトトランジスタなどの量子型がある。
ところで、定着ベルト61の表面は、当初(未使用時)は無傷であるが、定着動作が繰り返されるのに伴い(使用回数の増加に伴い)、剥離爪66等との接触による「傷」、記録紙Sの端部との摺動による「筋状の傷」、記録紙Sに付着したトナーが定着ベルトの表面に転移する「オフセット」が発生する。なお、先行する記録紙Sから定着ベルトにトナーが転移すると、転移したトナーによって後続の記録紙Sが汚れてしまう。
このような「傷やオフセットが生じた定着ベルト61の表面の状態」、すなわち「オフセットの有無や程度、傷の状態や位置」が表面状態であり、該表面状態に関する情報が「表面情報」である。
以下では、主として「筋状の傷」に対する定着ベルト61の表面情報の検出について説明する。
図2は、定着装置19による定着を説明するための図である。図2に示される記録紙Sには、カラートナー画像が転写されている。
ここでは、記録紙Sは「A4サイズ」であり、長手方向に平行な方向又は短手方向(幅方向)に平行な方向に搬送できるようになっている。図2における符号A4Tは、A4サイズの記録紙Sを長手方向に平行な方向に搬送するときの紙幅を示し、図2における符号A4Lは、A4サイズの記録紙Sを短手方向に平行な方向に搬送するときの紙幅を示している。
紙幅A4Lは、定着ベルト61の幅(Y軸方向の長さ)に略等しいため、A4サイズの記録紙Sを短手方向に平行な方向に搬送するときには、定着ベルト61の幅方向端部に生じる筋状の傷は、実際には殆ど問題とならない。
一方、紙幅A4Tは、定着ベルト61の幅よりも短く、筋状の傷は、紙幅A4Lの内側に発生するため、該傷により記録紙Sに転写されたトナー像の定着ムラが生じるおそれがある。
図2における符号W1、W2は、A4サイズの記録紙Sを長手方向に平行な方向に搬送するときの、定着ベルト61に対する記録紙Sの短手方向端部の主走査対応方向(Y軸方向)に関するずれ幅を示している。
すなわち、A4サイズの記録紙Sを長手方向に平行に搬送するときに、定着ベルト61に対する主走査対応方向の位置を記録紙S間で完全に一致させることはできず、記録紙Sの短手方向端部の通過位置は、記録紙S間で主走査対応方向に僅かながらずれる(変動する)。
また、定着ベルト61自体にも、所謂「ベルトの寄り」が発生すると、定着ベルト61の表面は、記録紙Sに対して主走査対応方向にずれる(変動する)。
ずれ幅W1、W2は、このようなずれ(変動)が考慮されたのである。
また、定着ベルト61における記録紙Sが接触する位置のずれ幅(変動幅)が狭いと、筋状の傷も狭い範囲に集中して発生するので、記録紙を搬送する際に、記録紙ごとに意図的に主走査対応方向の搬送位置をずらすこともある。
ずれ幅W1、W2は、このような場合にも考慮される。尤も、ずれ幅は大きくても「10mm」程度である。
そこで、ずれ幅W1、W2を考慮すると、A4サイズの記録紙Sを長手方向に平行な方向に搬送する場合「筋状の傷の有無」を表面情報として検出するのであれば、反射型光学センサ200の主走査対応方向に関する検知範囲は、ずれ幅W1、W2よりも大きく設定する必要がある。
図2に示されるように、反射型光学センサ200の主走査対応方向(Y軸方向)に関する検知範囲Aは、ずれ幅W1、W2のうちずれ幅W2を含むように設定され、ずれ幅W1のある側には設定されていない。これは、筋状の傷の発生は、ずれ幅W1の領域とずれ幅W2の領域とで略同様に起こるであろうと考えられ、一方のずれ幅内での検出で実用上は十分であると考えられるからである。
勿論、ずれ幅W1、W2それぞれに対して検知範囲を設定してもよく、さらには、検知範囲を「定着ベルト61の幅全体」に亘るように設定しても良い。
そこで、反射型光学センサ200は、定着ベルト61の、検知範囲Aに含まれる領域である被検知領域61Sに主走査対応方向(Y軸方向)に並ぶ複数の光を例えば時系列で照射する。
このように、反射型光学センサ200は、定着ベルト61の主走査対応方向に長い被検知領域61Sを検出できるため、反射型光学センサ200と記録紙Sの短手方向端部との「主走査対応方向の相対的な位置関係」は比較的ラフでよい。
処理装置300は、反射型光学センサ200からの検知信号(出力信号)を受けて、定着ベルト61の被検知領域61Sの表面状態を検出することができる。
そして、処理装置300は、記録紙Sの短手方向端部が検知範囲Aに含まれるとき、記録紙Sの短手方向端部により形成される筋状の傷の情報である「傷レベル」および/または「傷の位置(主走査対応方向の位置)」を定着ベルト61の表面情報として定量化する。この点については後述する。
ここで傷レベルとは、「傷の程度」、すなわち「傷の深さ(粗さ)や傷の幅(大きさ)」を言う。
ここで、「傷の深さ」について補足する。
定着ベルト61の表面に「傷(サーミスタや剥離爪66との接触による傷や、筋状の傷)」が生じると、前述の如く、傷の部分で、定着ベルト61とトナー画像が形成された記録紙Sとの接触圧が弱くなり、傷に応じて「定着不全」が生じ、定着された画像では「白抜け(画像濃度が低下する現象)」と呼ばれる「画像異常」が発生する。
本明細書中の「傷の深さ」は、このような「傷と、傷に起因する画像異常との相関関係」を定量的に捉え、画像異常の程度を表すパラメータとして表現したものである。
次に、反射型光学センサ200について説明する。図3(A)には、反射型光学センサ200のXY断面図(その1)が示されている。図3(B)には、反射型光学センサ200の照射系のXZ断面図が示されている。図4には、反射型光学センサ200のXY断面図(その2)が示されている。
図3(A)〜図4において、符号61Sは、定着ベルト61の被検知領域を示している。
反射型光学センサ200は、一例として、図3(A)〜図4に示されるように、Y軸方向(主走査対向方向)に並ぶ複数(例えば4つ)のLED211(発光ダイオード)をそれぞれが含む複数(例えばP個)のLED群と、レンズユニットLU、複数のPD212(フォトダイオード)、開口体などを有する。
複数(例えばP個)のLED群は、一例として、図3(A)に示されるように、基板210の+X側の面上に、Y軸方向に等間隔で配列(実装)されている。以下では、複数のLED群の−Y側から数えてp番目のLED群における−Y側から数えてq番目のLED211を、LED211−p―qと表記する。LED211の総数をNとすると、N=4Pである。N個のLED211は、符号211−1−1、211−1−2、211−1−3、211−1−4、211−2−1、・・・、211−2−4、・・・、211−p−q、・・・211−P−4と表される。一般に、Nの値は、数十〜数百とされるが適宜変更可能である。
レンズユニットLUは、図3(A)及び図3(B)に示されるように、複数(例えばP個)の照射用レンズ220を含むレンズアレイLA、及び受光用レンズ220Cを有している。
レンズアレイLAと受光用レンズ220Cとは、例えば樹脂成型により一体的に形成されている。
複数(例えばP個)の照射用レンズ220は、複数(例えばP個)のLED群に個別に対応し、対応する複数のLED群からの光の光路上に配置されている。より詳細には、各照射用レンズ220は、対応するLED群の複数(例えば4つ)のLED211に対向するように、基板210の+X側に、Y軸方向に等間隔で並んでいる。さらに、各照射用レンズ220の光軸は、対応するLED群のLED211−p−2とLED211−p−3との間に位置している。逆に言うと、各LED群のLED211−p−1及びLED211−p−2は、対応する照射用レンズ220の光軸の−Y側に位置し、各LED群のLED211−p−3及びLED211−p−4は、対応する照射用レンズ220の光軸の+Y側に位置している。ここでは、P個の照射用レンズ220を、互いに区別するために、−Y側のものから順に、符号220−1、220−2、・・・、220−p、・・・、220−(P−1)、220−Pで示している。
そこで、各LED群の各LED211から射出された光は、対応する照射用レンズ220で集光され、定着ベルト61の被検知領域61Sに照射される。この結果、被検知領域61Sに複数(N個)の光スポットS1〜SN(N=4P)がY軸方向に並ぶように形成される(図3(A)参照)。
このように、各LED群及び該LED群に対応する照射用レンズ220は、定着ベルト61に光を照射する照射系を構成する。すなわち、反射型光学センサ200は、複数(例えばP個)の照射系から定着ベルト61に光を照射する。
受光用レンズ220Cは、図4に示されるように、各照射系から定着ベルト61の被検知領域61Sに照射され該被検知領域61Sで反射された光の光路上に配置されている。ここでは、受光用レンズ220Cは、「単一のシリンドリカルレンズ」でありレンズアレイLAの+Z側かつ基板210の+X側に配置されている(図3(B)参照)。受光用レンズ220Cは、Z軸方向にのみ正のパワーを有する。
複数(例えばN個)のPD212は、基板210の+X側の面における複数(例えばN個)のLED211の+Z側にY軸方向に等間隔で並べて実装されている(図5参照)。詳述すると、N個のPD212は、N個のLED211に個別に対応し、各PD212は、少なくとも対応するLED211から定着ベルト61の被検知領域61Sに照射され該被検知領域61Sで反射され受光用レンズ220Cを介した光の光路上に配置されている。図4及び図5では、N個のPD212を、互いに区別するために、−Y側のものから順に、符号212−1、212−2、・・・、212−(N−1)、212−Nで示している。以下では、−Y側から数えてn番目のPD212を、PD212−nと表記する。ここでは、n=4(p−1)+qが成立する。
このように、複数(例えばN個)のPD212及び受光用レンズ220Cは、各照射系から定着ベルト61に照射され該定着ベルト61で反射された光を受光する受光系を構成する。すなわち、反射型光学センサ200は、各照射系から定着ベルト61に照射され該定着ベルト61で反射された光を、受光系によって受光する。
図3(A)において、符号230−0、230−1、・・230−p、・・・230−Nは、Y軸方向に隣り合う2つの照射系間でのフレア光を主に遮光するための、XZ平面に平行な板状の遮光板230を示している。
また、図3(B)で示される符号231−1、231−2は、LED211−nとPD212−nとの間でのフレア光を主に遮光するための、XY平面に平行な板状の遮光板231を示している。
図6(A)及び図6(B)には、一例として、p=7としたときの、8個の遮光板230(230−0〜230−7)と2個の遮光板231(231−1、231−2)とが一体化されて形成される開口体が示されている。
この開口体では、図6(B)から分かるように、Y軸方向に並ぶ8個の遮光板230(230−0〜230−7)がZ軸方向に対向する2つの遮光板231−1、231−2で狭持されている。すなわち、開口体には、7個の照射系に個別に対応する、Y軸方向に並ぶ7個の開口が形成されている。つまり、各開口は、対応する照射系の4つのLED211と照射用レンズ220との間に位置している。
このように構成される開口体によって、点灯する任意のLED211からの光が、対応する照射用レンズ220以外の照射用レンズ220又は受光用レンズ220Cを透過して定着ベルト61に照射されることや、点灯する任意のLEDに対応する照射用レンズ220のレンズ面や点灯する任意のLED211に対応する照射用レンズ220以外の照射用レンズ220のレンズ面からの直接の反射光(以後、これらの光をフレア光という)が、PD212に直接入射することが防止される。
図3(A)及び図3(B)における符号240は、X軸方向の両端が開口端である枠状部材を示している。枠状部材240の+X側の開口端にはレンズユニットLUが接合され、枠状部材240の−X側の開口端には基板210が接合されている。すなわち、レンズユニットLU、枠状部材240及び基板210は、全体として、1つのケースを成している。
ここでは、このケースと、上記開口体とが樹脂成形により一体化されている。
以上のように構成される反射型光学センサ200では、LED211−p−qを点灯させると、放射された「発散性の光束」は、該LED211―p−qに対応する照射用レンズ220−pにより集光され、定着ベルト61の表面の被検知領域61Sに光スポットが形成される。
被検知領域61Sの「光スポットが形成された部分」での反射光は、図4に示されるように、受光用レンズ220CによりZ軸方向にのみ集光されて、複数のPD212に入射する。
ここで、定着ベルト61の表面での光の反射は、鏡面反射ではなく、かつ定着ベルト61からの反射光は、受光用レンズ220CによりY軸方向には集光されないので、定着ベルト61からの反射光は、「PD212−n」を含む複数のPD212によって受光される。
次に、表面情報検出装置500の動作を、図7のフローチャートを参照して説明する。表面情報検出装置500では、反射型光学センサ200は、処理装置300によって制御される。
最初のステップQ1では、pに1がセットされる。
次のステップQ2では、qに4がセットされる。
次のステップQ3では、LED211−p−qが点灯される。このとき、LED211−p−q及び照射用レンズ220−pを含む照射系によって被検知領域61Sに光が照射される。
次のステップQ4では、LED211−p−qの点灯に同期して、被検知領域61Sからの反射光が受光用レンズ220CによりZ軸方向にのみ集光されPD212−nを含む複数のPD212、すなわちPD212−(n−m)〜PD212−(n+m)で受光される。なお、前述したように、n=4(p−1)+qである。
ここでは、説明を簡単にするため、受光するPD212の数を「奇数」、すなわちmを整数として2m+1とする。
この場合、LED211−p−qが点灯したときの反射光は、PD212−nと、その両側に並ぶm個のPD212とで受光される。
例えば、m=2であるとすれば、反射光を受光する複数のPD212は、PD212−n−2、PD212−n−1、PD212−n、PD212−n+1、PD212―n+2の5個のPD212である。
なお、mの値は2以外でも良い。画像との相関を予め実験的に求めておき、良好なmを選択すれば良い。但し、mが小さい場合(例えばm=0)には、PD出力値は1つしかなく、値が小さいため検知ばらつきが大きくなってしまう。また、mがPDの総和に相当するような大きさの場合には、検出したい筋状の傷のコントラストが低下してしまう。良好なmは、2〜6程度である。
次のステップQ5では、LED211−p−qが消灯される。
次のステップQ6では、各PD212の検知信号が処理装置300に送られる。具体的には、各PD212は、受光量を光電変換する。光電変換された信号は、増幅されて「検知信号」となる。各PDの検知信号は、検知の都度、処理装置300に送られる。
次のステップQ7では、q>1であるか否かが判断される。ステップQ7での判断が肯定されると、ステップQ8に移行する。一方、ステップQ7での判断が否定されると、ステップQ9に移行する。
ステップQ8では、qがデクリメントされる。ステップQ8が実行されると、フローは、ステップQ3に戻る。
ステップQ9では、p<Pであるか否かが判断される。ステップQ9での判断が肯定されると、ステップQ10に移行する。一方、ステップQ9での判断が否定されると、ステップQ11に移行する。
ステップQ10では、pがインクリメントされる。ステップQ10が実行されると、フローは、ステップQ2に戻る。
すなわち、N個のLED211は、光により、定着ベルト61の被検知領域61Sを左端S−1から右端S−Nへ走査するように(図3(A)参照)、各LED群(p=1〜P)においてLED211−p−4からLED211−p−1まで順に1個ずつ点灯と消灯が繰り返される。所謂「順次点灯」である。
順次点灯が繰り返されて、p=P、q=1となり、最終のLED211−P−1が「点灯・消灯」すると、これを1周期として順次点灯、すなわち1周期分の測定は終了する。
ステップQ11では、もう1周期分測定するか否かが判断される。例えば検知精度を高める必要がある場合に、ステップQ11での判断が肯定される。すなわち、順次点灯を複数周期に亘って行い、各周期での検知結果の平均値処理などを行うことで検知精度を高めることができる。ステップQ11での判断が肯定されると、フローは、ステップQ1に戻る。一方、ステップQ11での判断が否定されると、フローは、終了する。
そこで、カラープリンタ100では、画像品質の向上を図るために、処理装置300での検出結果に基づいて、例えば画像書き込み装置としての光走査装置13が制御される。
具体的には、ステップQ11での判断が否定された後、光走査装置13を、傷の位置、すなわち処理装置300での検出結果に基づいて制御する。具体的には、光走査装置13の光源の発光光量を、各感光体ドラム上での主走査方向の走査タイミング、すなわち主走査方向の位置に応じて調整する。
詳述すると、例えば、光源の発光光量を、定着ベルト61の傷がない位置に対応する走査タイミングでは通常の大きさとし、定着ベルト61の傷がある位置に対応する走査タイミングでは、通常よりも大きくする。この結果、各感光体ドラム上における定着ベルト61の傷がある位置に対応する位置での露光量(トナー付着量)が他の位置での露光量(トナー付着量)よりも大きくなり、結果として、定着装置19を介した記録紙Sには、トナー画像がムラなく定着される。すなわち、画像品質が向上される。
また、光走査装置13は、傷の位置及び深さに基づいて制御されても良い。具体的には、傷の深さが深いほど、光源の発光光量が大きくされる(トナー付着量が大きくされる)ことが好ましい。
また、光走査装置13は、傷の位置、深さ及び幅に基づいて制御されても良い。具体的には、傷の幅が大きいほど、光源の発光光量が大きくされる(トナー付着量が大きくされる)時間が長くされることが好ましい。
ここで、光スポットが被検知領域61Sの−Y側の端部寄りのS−1やS−2にある場合、すなわちLED211−1やLED211−2が点灯しているとき、照射用レンズ220が倒立拡大系であるため、受光するPD212は5個に満たない。また、光スポットが被検知領域61Sの+Y側の端部寄りのS−(N−1)やS−Nにある場合も同様である。
そこで、順次点灯するLED211をN個とするのではなく、被検知領域61S上の光スポットが−Y側の端部寄りの例えば2個のLED211及び+Y側の端部寄りの2個のLED211について順次点灯を行わず、残りの例えばN−4個について順次点灯を行うようにしても良い。
すなわち、点灯・消灯するLED211は、必ずしもN個全てを用いる必要はなく、そのうち任意のN’(≦N)個を用いても良い。
図8(A)及び図8(B)には、反射型光学センサ200を図7のフローチャートに従って動作させたときの実験結果が示されている。
図8(A)は、例えば反射型光学センサ200からの光を定着ベルト61へ入射させない状態や定着ベルト61からの反射光を反射型光学センサ200に入射させない状態、すなわち表面情報検出装置500から見て検出対象物である定着ベルト61が存在しないと見做せる状態で、LED211−p−q(p=4、q=1〜4)を点灯させたときのPD212−n(n=1〜28)のPD出力値を示している。
この場合、PD出力はゼロであることが理想的であるが、図8(A)から分かるように、PD14(PD212−14)及びPD15(PD212−15)を中心として山状のPD出力が得られていることが分かる。
図8(B)には、遮光部材600が退避位置に位置する状態で取得したPD出力から、図8(A)に示される遮光部材600が遮蔽位置に位置する状態で取得したPD出力を差し引いたときのPD出力、すなわち定着ベルト61からの反射光のみのPD出力が示されている。
図8(B)に示されるPD出力の山状のピークに着目してみると、LED211−p−4、LED211−p−3、LED211−p−2、LED211−p−1の順に順次点灯した場合に、PD出力がピークとなるPD番号は小さいほうから大きいほうへシフトしていくことが分かる。これは、LED211−p−4、LED211−p−3、LED211−p−2、LED211−p−1の順に順次点灯した場合には、定着ベルト61の被検知領域61Sが光により−Y側から+Y側へ走査されることからも明らかである。
発明者らが、この山状のPD出力の発生要因を調査したところ、図8(B)に示されるように、LED211−p−q(p=4、q=1〜4)を点灯すると、その発散性の光束の一部は、上記開口体におけるLED211−p−qに対応する開口の−X側(LED211−p−q側)の開口端、すなわちLED211−p−qに対応する開口を定める遮光板230−(p−1)、遮光板230‐p、遮光板231−1及び遮光板231−2それぞれの−X側の面で反射散乱され、複数のPD212で受光されてしまうことを突き止めた(図9参照)。すなわち、開口体は、各LED211からの光の主光線を含む部分を対応する開口を介して通過させ、該光の主光線を含む部分の周辺部分(フレア光)を遮光(反射)する。
そこで、本実施形態では、一例として、反射型光学センサ200から射出された光を必要に応じて遮光するための遮光部材600(図22(A)及び図22(B)参照)を設けている。
詳述すると、遮光部材600は、反射型光学センサ200と定着ベルト61との間の光路上の位置である遮蔽位置と、該遮蔽位置から退避する退避位置との間で不図示のアクチュエータ又は手動によって移動可能である(図22(A)及び図22(B)参照)。遮光部材600は、例えば処理装置300により必要に応じて遮蔽位置と退避位置との間で移動される。
ここで、遮光部材600が退避位置に位置する場合、すなわち反射型光学センサ200からの光が定着ベルト61に入射し、該定着ベルト61からの反射光が反射型光学センサ200に入射する場合には、検出対象物である定着ベルト61からの反射光に加え、上記開口体での反射光のPD出力が検出されていることになる。
そこで、遮光部材600を遮蔽位置に位置させた状態で各照射系から上記開口体に光を照射し、PD出力を検出するとともに、遮光部材600を退避位置にさせた状態で各照射系から上記開口体及び定着ベルト61に光を照射し、PD出力を検出し、これらの検出結果の差分を求めることで、定着ベルト61からの反射光のみのPD出力を得ることが可能となる。
以下に、表面情報検出装置500を用いた定着ベルト61の表面情報検出方法の一例を説明する。
ここでは、反射型光学センサ200と、基準反射体としてのガラス板とを対向可能とし(図20(A)〜図21(B)参照)、反射型光学センサ200とガラス板との間の光路を遮光部材(不図示)によって遮蔽可能としている。ガラス板は、両面で光を反射するので、片面のみで反射できるような加工や処理が施されることが好ましい。具体的には、ガラス板は、片面を粗し面(散乱面)にし、さらに黒色塗装などをして、片面のみで反射できるようにすることが望ましい。
図10(A)には、遮光部材を反射型光学センサ200とガラス板との間の光路上に位置させた状態でLED211−2−4からLED211−6−1までのLED211、すなわち28個のLED211のうち20個のLED211を順次点灯したときの、28個のPD出力が示されている。
図10(B)には、遮光部材を反射型光学センサ200とガラス板との間の光路上から外れた位置に位置させた状態でLED211−2−4からLED211−6−1までのLED211、すなわち28個のLED211のうち20個のLED211を順次点灯したときの28個のPD出力から、図10(A)に示される対応する28個のPD出力を差し引いて得られた、ガラス板からの反射光のみのPD出力が示されている。
なお、図10(A)、図10(B)の測定値(PD出力)が得られたときの温度センサ400での計測値(計測結果)、すなわち反射型光学センサ200の温度は、25℃であった。
また、図11(A)、図11(B)には、温度センサ400による計測結果が70℃のときに得られた、図10(A)、図10(B)に対応するPD出力が示されている。
図10(A)〜図11(B)から、温度が70℃のときは、25℃のときに比べて、LEDの発光光量が低下し、PD出力が低下していることが分かる。
図12には、図10(B)、図11(B)に示される、各LEDに対する複数のPD出力の和、すなわち各LEDから出射されガラス板で反射された光の複数のPDでの受光量(PD出力)の和(以下では、PD出力和とも称する)が示されている。
ここでは、28個全てのPD出力の総和を求めても良いし、最大値を含む任意数のPD出力の和を求めても良い。これは、反射型光学センサ200の光学系に依存するため、実験等により予め定めておけば良い。ここでは、最大値を含む周辺13個のPD出力の和を求めた。
すなわち、図12は、基準反射体としてのガラス板をリファレンスとした、25℃、70℃における各LEDの発光光量のばらつき(光量ばらつき)を表していることになる。
ここで、基準反射体としてのガラス板は、量産される複数の反射型光学センサ200に共通のリファレンスとして用いられる。
このため、複数の反射型光学センサ200間での図12のグラフの差異は、反射型光学センサ200の個体差を表すと言える。そこで、個体差を含んだ、光量ばらつきで補正することにより、共通のリファレンスを基準として、量産される複数の反射型光学センサ200の出力レベルを比較することが可能になる。すなわち、図12に示される各LEDの数値を、イニシャル(初期状態)での各LEDの光量ばらつきを補正するための光量ばらつき補正係数として使用することが可能となる。
なお、ガラス板の移動は、手動で行っても良いし、アクチュエータを用いて自動的に行っても良い。また、ガラス板に対して反射型光学センサ200を移動可能に構成しても良い。
また、ガラス板に代えて、これと同等の特性・機能を有する部材を基準反射体として用いても良い。
また、ガラス板に代えて、例えば未使用状態の定着ベルト61を基準反射体として用いても良い。但し、定着ベルト61を基準反射体とする場合、実機(カラープリンタ100)の構成部品である定着ベルト61をそのまま用いれば良く基準反射体を別途用意する必要がない反面、経時的な劣化や、環境における変形などの懸念がある。これに対し、ガラス板の場合には経時や環境での安定性や表面の均一性など、リファレンスとして用いる上で優位な点も多い。
ここで、「定着ベルト61が未使用状態にあるとき」は、例えばカラープリンタ100の製造前、製造時、製造後の印刷開始前等の「カラープリンタ100の使用開始前」である。
基準反射体を未使用の定着ベルト61とする場合は、カラープリンタ100の使用開始前に、遮光部材600を退避位置に位置させた状態で各照射系から上記開口体及び未使用の定着ベルト61に光を照射してPD出力(前者)を検出するとともに、遮光部材600を遮蔽位置に位置させた状態で各照射系から上記開口体に光を照射してPD出力(後者)を検出し、前者と後者の差分をとれば良い。この結果、基準反射体である未使用の定着ベルト61からの反射光のみのPD出力を得ることが可能となる。
図13(A)には、基準反射体としてガラス板を用いたときの複数の温度環境(例えば反射型光学センサ200の温度が25℃、40℃、50℃、60℃、70℃、80℃となる6つの温度環境)での各LEDの光量ばらつきを、基準反射体としてガラス板を用いたときの基準となる温度環境(例えば反射型光学センサ200の温度が25℃となる温度環境)での該LEDの光量ばらつき(図12参照)で除して得られた値、すなわち各LEDの光量ばらつきの複数の温度環境での温度係数(基準温度(25℃)からの温度変化に対する変化率)が示されている。図13(B)は、図13(A)のグラフを、横軸に温度をとって書き換えたグラフである。
図13(A)及び図13(B)から分かるように、25℃での各LEDの光量ばらつきを補正しても、反射型光学センサ200の温度が高くなると、各LEDに対するPD出力和がばらついてくることがわかる。これは、各LEDの発光光量が温度に対してリニアに変化し、温度係数が、LED毎に、さらには温度変化毎に異なるからである。
そこで、上記複数の温度環境での測定を行い、反射型光学センサ200の温度が基準温度(例えば25℃)であるときの各LEDの光量ばらつきと、複数の温度環境での各LEDの温度係数を例えば処理装置300が有するメモリ300a(例えばフラッシュメモリ、DRAM、SRAM、ROM、ユニバーサルメモリ等)に保存しておくことが好ましい。なお、メモリ300aに代えて、例えばハードディスク等の他の記憶媒体を用いても良い。
そして、各LEDに対する定着ベルト61からの反射光のみによるPD出力和を取得し、その取得時の温度を温度センサ400で計測し、その計測値とメモリ300aに保存された基準温度(例えば25℃)での各LEDの光量ばらつき(光量ばらつき補正係数)と複数の温度環境での各LEDの温度係数とを用いて各温度環境での光量ばらつき補正係数を算出し、算出された光量ばらつき補正係数を用いて、取得された各LEDに対するPD出力和を補正すれば、定着ベルト61の表面状態を検出時の温度によらず、精度良く検出することが可能となる。
図14には、この補正方法を用いて、複数の温度環境(上記6つの温度環境)においてLEDから基準反射体に光を照射したときの該LEDに対するPD出力の和を補正した結果が示されている。図14から、いずれの温度環境での測定であっても、ほぼ同じ結果が得られており、温度変化に伴う各LEDの発光光量の変動を十分に補正できていることが分かる。
また、図15には、この補正方法を用いて、カラープリンタ100の使用開始後において、定着ベルト61の表面状態を検出した結果(各LEDに対する定着ベルト61からの反射光のみによるPD出力和)が示されている。図15から、LED211−3−3による光スポットが形成される定着ベルト61上の位置の傷の程度を精度良く検出できていることが分かる。
なお、以上の説明では、温度変化に伴うLEDの発光光量の変動を補正しているが、本来は、経時変化に伴うLEDの発光光量の変動、PDの受光感度の温度変化や経時変化、光学系の温度変化や経時変化も含めた、反射型光学センサ200全体の特性変化を考慮して補正を行うべきであるのは言うまでもない。
実際には、PDの受光感度の変化はLEDの発光光量の変化に比べると十分小さく、また光学系の温度変化に対する特性変化(光学特性の変化)の影響も十分に小さいことが分かっている。そのため、LEDの発光光量変化を反射型光学センサ200の変化の主要因として取り上げている。とはいえ、測定上としては、反射型光学センサ200として、LED、光学系及びPDの特性変化の影響を反映するPD出力値として捉えているので、実際には反射型光学センサ200全体としての光量変化を示していることになる。
次に、表面情報検出装置500を用いた定着ベルト61の表面情報検出方法の具体的な手順を、図16及び図17に示されるフローチャートを用いて説明する。
まず、カラープリンタ100の使用開始前の一連の処理について、図16を参照して説明する。ここでは、基準反射体として、未使用状態の定着ベルト61が用いられる。遮光部材600は、当初、退避位置に位置している。
最初のステップJ1では、nに1をセットする。
次のステップJ2では、反射型光学センサ200の温度を第n温度(1≦n≦N)に設定する。具体的には、例えば加熱ローラ62の熱源Hの温度を調整することで反射型光学センサ200の温度を例えば25℃〜80℃の任意の温度に設定することができる。ここでの温度設定は、温度センサ400での計測値をモニタリングしながら行う。ここでは、25℃を第1温度、40℃を第2温度、50℃を第3温度、60℃を第4温度、70℃を第5温度、80℃を第6温度とする。すなわち、N=6である。なお、反射型光学センサ200の温度設定は、加熱ローラ62以外の熱源により行っても良い。Nは、6に限らず、要は、2以上であれば良い。温度範囲は25℃〜80℃に限られない。第1〜第N温度も適宜変更可能である。
次のステップJ3では、遮光部材600を遮蔽位置に位置させる。
そして、図7に示されるフローチャートの手順で、複数のLED211を順次点灯させ(ステップJ4)、各LEDの点灯に対するPD毎のPD出力1を取得する(ステップJ5)。取得されたPD出力は、処理装置300のメモリ300aに保存される。
次のステップJ6では、遮光部材600を退避位置に位置させる。そして、図7に示されるフローチャートの手順で、複数のLED211を順次点灯させ(ステップJ7)、各LEDの点灯に対するPD毎のPD出力2を取得する(ステップJ8)。
次のステップJ9では、遮光部材600を遮蔽位置に位置させる。なお、ここでは、遮光部材600を必ずしも遮蔽位置に位置させる必要はないが、遮蔽位置に位置させることにより、反射型光学センサ200を熱や塵から保護することが期待できる。すなわち、定着ベルト61への光照射時以外は、遮光部材600は、遮蔽位置に位置させることが好ましい。
次のステップJ10では、PD出力の差分を取得する。具体的には、各LEDの点灯に対するPD毎のPD出力2−PD出力1(PD毎のPD出力差)を求める。すなわち、遮光部材600を遮蔽位置に位置させた状態でPD出力1を検出し、遮光部材600を退避位置に位置させた状態でPD出力2を検出し、両者の差分をとることで、基準反射体としての未使用の定着ベルト61からの反射光のみによるPD毎のPD出力を得ることが可能となる。
次のステップJ11では、第n温度での各LEDの光量ばらつきである第n光量ばらつき補正係数を算出する。第n光量ばらつき補正係数は、第n温度での各LEDに対するPD毎のPD出力差の和(PD出力和)である。
次のステップJ12では、第n温度係数を算出する。第n温度係数は、第n光量ばらつき補正係数を、第1温度での各LEDの光量ばらつきである第1光量ばらつき補正係数で除して得られる。
次のステップJ13では、nがNよりも小さいか否かを判断する。ステップJ13での判断が肯定されると、ステップJ14に移行する。一方、ステップJ13での判断が否定されると、ステップJ15に移行する。
ステップJ14では、nをインクリメントする。ステップJ14が実行されると、ステップJ2に戻る。
このようにして、各設定温度で一連の動作が行われ、該設定温度での光量ばらつき補正係数及び温度係数が算出される。
ステップJ15では、第1光量ばらつき補正係数、第1〜第N温度係数及び温度センサ400での計測値(第1〜第N温度)をテーブル化した状態で処理装置300のメモリ300aに保存する。なお、第1〜第N温度係数に代えて、第2〜第N光量ばらつき補正係数をメモリ300aに保存しても良い。
ここで、基準反射体として、未使用状態の定着ベルト61以外のもの(例えばガラス板)を用いる場合、基準反射体を反射型光学センサ200と定着ベルト61との間の所定位置と該所定位置から退避する退避位置との間を移動可能に構成しても良いし(図20(A)及び図20(B)参照)、表面情報検出装置500を、反射型光学センサ200が定着ベルト61に対向する位置と、反射型光学センサ200が基準反射体に対向する位置との間を移動可能に構成しても良い(図21(A)及び図21(B)参照)。
そして、基準反射体として、例えばガラス板を用いる場合には、ステップJ7の前に、ガラス板を反射型光学センサ200と定着ベルト61との間に位置させる工程(ステップ)又は反射型光学センサ200をガラス板に対向する位置に位置させる工程(ステップ)を行う必要がある。
次に、カラープリンタ100の使用開始後の任意のタイミングで行われる一連の処理ついて、図17を参照して説明する。ここでは、基準反射体として、例えばガラス板が用いられる。遮光部材600は、当初、退避位置に位置している。
なお、「カラープリンタ100の使用開始後」とは、定着装置19による定着動作を含む画像形成(印刷)が少なくとも1回行われたことを意味する。上記任意のタイミングは、例えば1000枚印刷毎のように所定の印刷枚数を経過する時点に設定することができる。なお、印刷中にジョブを止めると生産性が低下してしまうので、所定枚数の印刷が完了するジョブ後に行なうことが好ましい。
最初のステップU1では、遮光部材600を遮蔽位置に位置させる。
そして、図7に示されるフローチャートの手順で、複数のLED211を順次点灯させ(ステップU2)、各LEDの点灯に対するPD毎のPD出力3を取得する(ステップU3)。
次のステップU4は、遮光部材600を退避位置に位置させる。
そして、図7に示されるフローチャートの手順で、複数のLED211を順次点灯させ(ステップU5)、各LEDの点灯に対するPD毎のPD出力4を取得する(ステップU6)。
次のステップU7では、遮光部材600を遮蔽位置に位置させる。ここでは、遮光部材600を必ずしも遮蔽位置に位置させる必要はないが、遮蔽位置に位置させることにより、反射型光学センサ200を熱や塵から保護するが期待できる。そのため、定着ベルト61への光照射時以外は遮蔽位置に位置させておくことが好ましい。
次のステップU8では、取得したPD出力の差分を取得する。具体的には、各LEDの点灯に対するPD毎のPD出力4−PD出力3(PD毎のPD出力差)を求める。すなわち、遮光部材600を遮蔽位置に位置させた状態でPD出力を検出し、続いて遮光部材600を退避位置に位置させた状態でPD出力を検出し、両者の差分を求めることで、定着ベルト61からの反射光のみによるPD出力を得ることが可能となる。
次のステップU9では、温度センサ400での計測値を取得する。
次のステップU10では、取得された温度センサ400での計測値、メモリ300aに保存された、複数の温度(第1〜第N温度)、該複数の温度に対応する複数の温度係数及び第1光量ばらつき補正係数を含むテーブルに基づいて、第k光量ばらつき補正係数を算出する。具体的には、第k光量ばらつき補正係数は、第1〜第N温度環境のうち温度センサ400での計測値に最も近似する第k温度の温度係数である第k温度係数と、第1光量ばらつき補正係数とを乗じることで得られる。なお、図16のフローチャートのステップJ15において、第1〜第N温度係数に代えて、第2〜第N光量ばらつき補正係数をメモリ300aに保存している場合は、第1〜第N温度環境のうち温度センサ400での計測値に最も近似する第k温度の光量補正係数を第k光量ばらつき補正係数としても良い。
次のステップU11では、第k光量ばらつき補正係数を用いて、光量ばらつき(定着ベルト61からの反射光のみによるPD出力和のばらつき)を補正する。
次のステップU12では、光量ばらつきが補正された、各LEDに対する定着ベルト61からの反射光のみによるPD出力和を定着ベルト61の表面情報として定量化する。この定量化の方法については、後述する。
図18には、カラープリンタ100の使用開始後、反射型光学センサ200を長時間(LEDが劣化するほどの時間)使用した所定タイミングで、図17の一連の処理を行ったときの光量ばらつき補正後の各LEDに対するPD出力和が示されている。この場合、反射型光学センサ200がほぼ新品状態のときに図17の一連の処理を行ったときの光量ばらつき補正後の各LEDに対するPD出力和(図14)に比べて、光量ばらつきが大きくなっており(光量ばらつきが充分に補正されておらず)、定着ベルト61の表面情報の検出精度が低下してしまう。
そこで、カラープリンタ100の使用開始後の上記所定タイミングで例えば図19のフローチャートに示される一連の処理(ステップW1〜ステップW27)を行っても良い。図19のステップW1〜ステップW15は、図16のステップJ1〜ステップJ15に対応し、図19のステップW17〜ステップW27は、図16のステップU2〜U12に対応している。なお、図19のステップW17が開始されるときには、遮光部材は遮蔽位置に位置している(ステップW9参照)。
但し、図19のフローチャートには明示されていないが、ステップW7の前に、反射型光学センサ200とガラス板とを対向させる工程(ステップ)が行われ、ステップW8とステップW17との間に反射型光学センサ200とガラス板との対向を解除する工程(ステップ)が行われる。カラープリンタ100の使用開始後では、定着ベルト61に傷が発生しているおそれがあり、基準反射体として定着ベルト61以外のもの(例えばガラス板)を用いる必要があるからである。これらの工程では、ガラス板を移動させても良いし、反射型光学センサ200を移動させても良い。
図19に示される一連の処理を行うことで、各LEDの温度変化による発光光量の変動のみならず経時変化(経時劣化)による発光光量の変動をも考慮(反映)した光量ばらつき補正を行うことができる。
そして、カラープリンタ100の使用開始後、図19に示される一連の処理を定期的に行うことで、検出時の各LEDの劣化状態及び温度を考慮(反映)した光量ばらつき補正を行うことができ、検出タイミングによらず定着ベルト61の表面情報を精度良く検出することができる。
なお、図19のフローチャートでは、ステップW1〜W15の一連の処理と、ステップW17〜W27の一連の処理とが連続して行われているが、これに限られない。例えばステップW1〜W15の一連の処理を行った後、所定時間経過後にステップW17〜W27の一連の処理を行なっても良いし、ステップW1〜W15の一連の処理を行った後、ステップW17〜W27の一連の処理のみを定期的に行っても良い。
但し、ステップW1〜W15の一連の処理を行った後、カラープリンタ100の使用(印刷)を極力行わないうちに、より好ましくはカラープリンタ100の使用前(印刷前)にステップW17〜W27の一連の処理を行うことが望ましい。ステップW15を行ってから各LEDが極力劣化しないうちにステップW17〜W27を行うことで、光量ばらつきを精度良く補正でき、定着ベルト61の表面情報を精度良く検出できるからである。なお、カラープリンタ100では、印刷を行う度に機内が高温となり、各LEDの劣化が進行する。
また、PD出力1、PD出力2、PD出力3及びPD出力4の取得に際し、図7のフローチャートに示されるように、複数のLED211の順次点灯を複数周期分行うことで、周期数で平均化しても良いし、異常値を除去するために中央値(メディアン)を用いたりすることにより、検出精度を向上させることができる。
また、定着ベルト61の1周長以上に亘って複数のLED211の順次点灯を少なくとも1周期分行うことが好ましく、この場合には、定着ベルト61の回転変動による検出誤差の影響を緩和することができる。特に、順次点灯を5周期分以上行い、最大値と最小値を除いた3周期分以上のデータを使用することで異常値除去も可能である。
ここで、遮光部材600について具体的に説明する。図22(A)には、遮光部材600が遮蔽位置に位置する状態が示され、図22(B)には、遮光部材600が退避位置に位置する状態が示されている。なお、図22(A)及び図22(B)では、定着ベルト61等の図示が省略されている。
ここでは、遮光部材600は、アクチュエータ700により遮蔽位置と退避位置との間でZ軸方向に移動可能なっている。遮光部材600は、高温耐熱性を有する不透明のエンジニアリングプラスチックを主成分とし、反射型光学センサ200側には、図示しない黒色の低反射部材が貼り付けられている。
アクチュエータ700は、処理装置300によって、反射型光学センサ200の動作タイミングと同期して、自動的に作動される。なお、遮光部材600は、手動で移動可能とされても良い。
遮光部材600に用いられているエンジニアリングプラスチックは、遮光部材600が遮蔽位置に位置するとき、定着ベルト61からの熱が反射型光学センサ200に直接伝わらないように遮蔽し、その伝熱を低減する機能を有している。
エンジニアリングプラスチックはエンプラとも呼ばれ、特に耐熱性の高いスーパーエンプラを用いても良い。黒色の低反射部材としては薄いフィルムなどが挙げられ、反射型光学センサ200からの光を吸収し、入射光のPD212への反射を防止する機能を有する。もちろん、エンジニアリングプラスチック自体が低反射機能を有していれば黒色の低反射部材は設けられていなくても良い。
図22(A)及び図22(B)に示される遮光部材600のY軸方向の長さは、一例として、定着ベルト61のY軸方向(主走査対応方向)の全幅とほぼ同じ、もしくは若干長く形成されており、定着ベルト61全体から反射型光学センサ200への伝熱を低減する。
これに対して、遮光部材の別の例として、Y軸方向の長さが、定着ベルト61のY軸方向の全幅より短く、反射型光学センサ200よりも長い遮光部材を用いても良い。この場合、反射型光学センサ200に対向する定着ベルト61の部分からの直接的な伝熱は低減できるが、該部分の周囲からの伝熱は低減できないため、図22(A)及び図22(B)に示される遮光部材600の場合よりも伝熱の低減効果は小さくなってしまう。しかし、それでも反射型光学センサ200の性能が十分に確保できる場合には、遮光部材の小型化を優先し、この直接的な伝熱の低減のみでも良い。この結果、遮光部材の設置スペースを小さくでき、ひいてはカラープリンタ100の小型化を図ることができる。
図23には、遮光部材の更なる別の例が示されている。図22(B)では、遮光部材600のZ軸方向の可動範囲に対応するスペースを確保する必要である。そこで、図23に示されるように、一例として、帯状の遮光部材650をY軸に平行な回転軸に巻き付ける構成としても良い。すなわち、遮光部材650は、回転軸を例えばアクチェータ又は手動で回転させることにより、巻き取り、引き出し可能である。この結果、省スペース化を図ることができる。なお、回転軸は、手動で回転されても良いし、自動で回転されても良い。図23では、定着ベルト61等の図示が省略されている。
なお、通常、定着ベルトの表面温度は100数十度〜200度程度に設定されるため、定着ベルトに対向して配置される反射型光学センサには直接的に熱の移動が生じてしまう。反射型光学センサは、例えばLED、PD、レンズ、電子回路、これらを収容するケースなどから構成されており、特に高温時においては、レンズやケースの熱変形や、LED、PD、電子回路等の熱特性による性能劣化が生じてしまうという問題がある。あるいは、センサ性能を確保するために、高温に耐えうる部品を選択せざるを得なくなり反射型光学センサ自体が非常に高価となってしまうという問題がある。
また、反射型光学センサの防塵効果を高める観点からも、遮光部材は、主走査対応方向の長さが長いほど好ましい。一方、小型化の観点から、遮光部材は、主走査対応方向の長さが短いこと、あるいは上述したように巻き取り、引き出し可能であることが好ましい。
ここで、図17のステップU12や図19のステップW27において、定着ベルト61の表面状態、すなわち「傷レベル」および/または「傷の位置」を定量化する方法はいくつかあるが、ここでは、一例を説明する。
上記の如く、各LED211−p−qの順次点灯が行なわれ、点灯毎の検知信号(PD出力)が処理装置300に送られると、処理装置300は、差分処理、光量ばらつき補正を行なった後、図24に示されるフローチャートの手順で定着ベルト61の表面状態を定量化する。
処理装置300は、全PD212(212−1〜212−N)の検知信号を受信する(検知信号数は、原則として、LEDが1個点灯・消灯する度に(2m+1)個である)と(ステップG1)、受信する度に(2m+1)個の検知信号の「和」を算出し、これを「検知結果:R−p−q」とする(ステップG2)。このようにして、主走査対応方向に離間するように定着ベルト61の表面に順次照射される複数の光それぞれの該表面からの反射光強度:R−p−qを得ることができる。
次に、検知結果:R−p−qに基づいて、定着ベルト61の表面情報を検出する。一般に、定着ベルト61の表面に傷がある場合には、傷がない場合に比べ、定着ベルト61からの反射光は「正反射成分が減少」し「拡散反射成分が増加」する。
上述した例で言えば、LED211−p−qを点灯させたときに、照射される光スポットの位置に傷があれば、この部分では正反射光成分が減少するので、PD212−nが受光する光量は減少し、その周辺のPD212−n−m〜PD212−n−1、PD212−n+1〜PD212−n+mでは、受光量が増大する。しかし、一般的に、傷がある部位に対応する検知結果:R−p−qは、傷が無い部位のものに比して減少する。
このような検知信号の特性に基づき、表面状態としての「傷の有無」と「傷レベル」と「傷の位置(主走査対応方向の位置)」を表面情報として定量化する。
このために、上記の如くして得られた検知結果:R−p−qを「微分」する(ステップG3)。微分操作には、種々の方法があるが、ここでは最も簡単な操作として「隣接する2つのPDの検知結果の差分を、PDの配列ピッチで割算する」ものとして説明する。すなわち、「隣接する2つのPDの検知結果の傾き」を演算する操作である。
図25(A)には、複数のLED211の1周期分の順次点灯から得られた検知結果:R−p−qの例が模式的に示されている。図25(A)では、データ点が13点描かれているが、図示を簡単化するためであり、データ点が13点であることには特に意味はない。
反射型光学センサ200では、定着ベルト61の表面上の主走査対応方向の各位置に対応して、反射光強度が得られるので、処理装置300において複数の反射光強度を主走査対応方向について比較することで定着ベルト61の表面上の傷の有無を判定することができる。すなわち、「反射光強度が低下している位置」には傷があることが分かる。
図25(A)においては、検知範囲Aの中央部近傍で、検知結果:R−p−q(縦軸の反射光強度)の値が減少しており、これにより「傷が存在する」ことが分かる。このようにして、表面情報として「傷の存在」が検出される。なお、傷が存在しない場合は、フローは終了する(ステップG4)。
次に、「傷の位置」の検出、すなわちステップG5「傷の位置を判定」について説明する。
図25(B)は、図25(A)に示される検知結果のデータに対して、前述の微分操作を行なった結果を示している。微分理論一般から明らかなように、極小位置では「微分値が0」であって、極小の前後では「微分値は負から正に向かって変化」している。
従って、図25(B)に示されるように、微分値が「負から正に大きく変化するゼロクロス位置」を求めることで「傷の位置」を検出(判定)できる。
なお、「微分値の絶対値」が、予め設定した所定の値より小さい場合は「反射光強度の低下が小さい」ことを示しており「傷は無い」と判定される。
以下、具体例(実施例)に即して説明する。ここでは、図3(A)及び図3(B)に示される反射型光学センサ200を以下のように構成している。
LED211、PD212の配列数:N=24
順次点灯させるLED211:n=3〜22
LED211、PD212の配列ピッチ:1mm
この反射型光学センサ200では、定着ベルト61の表面に1mmピッチで光スポットが照射される。40万枚の転写紙(A4サイズで長手方向に平行な方向に搬送)に対して定着を行なった後の定着ベルト61に対して、上述の反射型光学センサ200を用いて得られた検知結果:R−p−qと、主走査方向位置との関係が、図26(A)に示されている。
光スポットは、定着ベルト61の表面にP=1mmで照射されるので、図26(A)における横軸のnは、光スポット照射位置を「mm単位」で表したものと同等である。
図26(B)には、図26(A)の検知結果を主走査対応方向に関して微分した結果が示されている。
なお、微分値を平滑化するために「R−(n―1)、R−n、R−(n+1)の3点での傾き」を算出しても良い。
図26(B)における「ゼロクロス位置」を求めるとn=12.5となり、LED211−12とLED211−13とに対応する光スポット照射位置の中間である「12.5mmの位置」を傷の位置として検出(判定)できる。
次に、傷レベルの検出(判定)について説明する。傷レベルとしては、前述の「傷の深さ」と「傷の幅」があるが、先ずは「傷の深さ」の検出、すなわち傷の深さの判定について説明する。なお、傷の深さの判定は、必要に応じて行われ、行われない場合、フローは終了する(ステップG6)。
定性的に見て「傷の深さが深いほど、定着ベルト61の表面の粗さが大きく、反射光強度の低下が大きい」と考えられる。そこで、「傷の深さ」を検出するために「反射光強度の低下量」を求める。その模式図が図27に示されている。
検知結果:R−n(反射光強度)が、図27に示されるような場合には、単純に「検知結果:R−nの最小値」を求めても良いが、反射型光学センサ200の取り付態位の傾き(取り付け精度)や、定着ベルト61の傾き等に起因して、検知結果:R−nに「傾き成分が重畳」されることも考えられる。
「傷の位置」は前述のように検出できている。傷のない位置は「検知結果:R−nの変動が小さい位置」、すなわち「微分値が0付近に集まる位置」である。この点を考慮して、主走査対応方向に関する微分結果から、傷のない位置を算出する(ステップG7)。
図28(A)及び図28(B)を参照して、傷のある位置:n0での検知結果:R−n0と、少なくとも2つの傷のない位置:n1、n2での検知結果:R−n1、R−n2から「反射光強度の低下量」を求める一例を説明する。
検知結果:R−nに重畳される傾き成分を差し引くため「複数の傷のない位置での検知結果を結んだ近似直線」と、傷のある位置での検知結果との距離を求めればよい。
先に説明した図26(A)及び図26(B)の結果に、この方法を適用し、反射光強度の低下量を求める場合を説明する。
図26(B)から、傷の位置に対して「微分値が小さい±20の範囲で複数点集まっている位置」を求めたのが図28(A)である。図28(A)から、傷のない位置としてn=6とn=15を選択できる。
そこで、傷のある位置:n0=12.5と、傷のない位置:n1=6、n2=15を抽出し、それぞれにおける検知結果:R−nを用いて「傷の深さ(粗さ)」を算出する(ステップG8)。
図28(B)における破線は「Rn−n1とRn−n2を結んだ直線」であり、「破線の矢印は傷の深さ」に対応している。ここでは「傷の深さは63.1」である。
傷の位置における「反射光強度の低下の比率」は0.16(16%)である。前述の如く「傷の深さ」は「傷と、傷に起因する画像異常との相関関係」を定量的に捉え、画像異常の程度を表すパラメータとして表現したものであり、ここでの傷の深さ「63.1」は、「傷そのものの物理的な深さ」ではなく、これに対応する「画像異常(濃度低下)の程度」を特定するものである。
図28(B)から、破線で示される傾き成分に「傷の深さが重畳」している様子が見て取れる。
傷レベル(傷の深さ)が大きくなるにつれ、この「反射光強度の低下」が増加する。
もう1つの表面情報として「傷の幅(大きさ)」を検出、すなわち傷の幅の判定について説明する。なお、傷の幅の判定は、必要に応じて行われ(ステップG9)、行われない場合、フローは終了する。
傷の中央位置は前述の如く検出されている。そこで、傷のある位置での検知結果:R−nから「傷の深さ(粗さ)に相当する反射光強度の低下量」が所定量(例えば50%)低下する反射光強度を持つ位置を算出する。
図29は、図28(B)の縦軸を拡大して示す図である。図29から「傷の半値幅」を3mmとして検出(判定)することができる(ステップG10)。ステップG10が実行されると、フローは、終了する。
以上のようにして、傷が存在する場合、傷の深さや傷の幅、すなわち表面情報(表面状態のパラメータ)を検出しても良いし、必要なパラメータのみを判定することもできる。
以下に、発明者らが本実施形態に至った思考過程を説明する。
発明者らは、実験の中で、点灯するLEDに対応する照射用レンズ以外の照射用レンズを透過して定着ベルトに照射される光(フレア光と呼ぶ)を無くすためのLEDと照射用レンズとの間に位置する開口が設けられた開口体には厚さがあるため、開口体の前面(LED側の面)での反射光がPDに直接入射してしまう問題が発生した。
すなわち、反射型光学センサの検知対象物である定着ベルトが存在しないと見做せる場合には、定着ベルトから反射してくる光が無いため、理想的にはPD出力はゼロとなるはずであるが、開口体の前面での反射光によってPD出力はゼロとならない。そのため、定着ベルトが存在する場合には、検出すべき定着ベルトからの反射光に加え開口体の前面での反射光を含むPD出力が検出されてしまう問題が生じた。
逆に、定着ベルトが存在しないと見做せる場合のPD出力は、検知対象物である定着ベルトからの反射光を含まないため、LEDの発光光量に比例する出力であり、LEDの発光光量変化を把握するために使用できることに着眼した。
ところで、複数のLEDを用いる場合には、各LEDの発光光量(もしくは光スポット光量)を等しく調整することが求められる。一般的には、工場出荷時(初期)においてレンズ透過後の光スポットの光量が等しくなるように電流値や抵抗値が調整されるが、各LEDの経時的な発光光量の劣化率は不均一であるため、所定の時間が経過した後の各LEDの発光光量は等しくならない。また、各LEDの発光光量の温度依存性も不均一であるため、使用環境下の温度が変化すると各LEDの発光光量は等しくならない。
上述したように工場出荷時(初期)に各LEDの発光光量が完全に等しく調整されていれば(光量ばらつきがゼロであれば)、検知精度への影響はないが、これには非常にコストがかかる。
そこで、コストダウンのために、調整誤差が存在する場合や調整を実施しない場合にも適用できることが必要である。このため、例えば光スポットの光量に基づく光量ばらつき補正係数を用いた補正が必要である。
しかしながら、光スポットの光量を測定するためには、例えば光パワーメータ等の測定のための専用の測定装置が別途必要であるため、製造設備のコストアップを招いてしまう。
そこで、発明者らは、カラープリンタの使用開始前又は使用開始後の光量ばらつき補正係数の算出と、カラープリンタの使用開始後の任意のタイミング及び温度での光量補正を組み合わせた補正手法を提案し、経時変化や温度変化が生じても定量的に等しい検出ができる表面情報検出装置を実現した。
特に光量ばらつき補正に際し、センサ自身の受光部(例えばPD)での受光結果を利用することで、特別な測定装置を不要とした。
また、シート状の記録媒体と定着ベルトの表面との接触に起因する、該記録媒体の搬送方向の筋状の傷を正確に検出することが可能である。
さらに、表面情報検出装置での検出結果に基づいて、定着ベルトの交換時期であることを知らせるための信号を発したり、定着ベルトの表面状態調整手段により表面状態を良好にしたりすることで、光沢スジのない高品質な画像を形成できる画像形成装置を提供できる。
以上説明した本実施形態のカラープリンタ100では、記録紙Sに転写されたトナー像を定着させるための定着ベルト61と、該定着ベルト61の表面情報を検出する表面情報検出装置500とを備える画像形成装置であり、表面情報検出装置500は、複数のLEDを含む照射系及び受光系を有する反射型光学センサ200と、該反射型光学センサ200の温度を計測する温度センサ400と、照射系から少なくとも基準反射体に光を照射する第1の照射が複数の温度環境で行われたときの温度環境毎の受光系での第1の受光結果及び温度センサ400での第1の計測結果と、照射系から少なくとも定着ベルト61に光を照射する第2の照射が行われたときの受光系での第2の受光結果及び温度センサ400での第2の計測結果とに基づいて、定着ベルト61の表面情報を求める処理装置300と、を含む。
また、本実施形態の表面情報検出方法は、記録紙Sに転写されたトナー像を定着させるための定着ベルト61の表面情報を検出する表面情報検出方法であり、複数の温度環境において、複数のLEDを含む照射系及び受光系を有する反射型光学センサ200の照射系から少なくとも基準反射体に光を照射し、その反射光を前記受光系で受光するとともに反射型光学センサ200の温度を計測する第1の工程と、照射系から少なくとも定着ベルト61に光を照射し、その反射光を受光系で受光するとともに反射型光学センサ200の温度を計測する第2の工程と、第1の工程での受光結果及び計測結果と、第2の工程での受光結果及び計測結果とに基づいて、定着ベルト61の表面情報を求める工程と、を含む。
本実施形態のカラープリンタ100及び表面情報検出方法では、複数の温度環境での反射型光学センサ200の状態を反映する第1の受光結果及び第1の計測結果(第1の工程での受光結果及び計測結果)と、任意の温度環境での定着ベルト61の表面状態を反映する第2の受光結果及び第2の計測結果(第2の工程での受光結果及び計測結果)とに基づいて定着ベルト61の表面情報を求めることができる。
詳述すると、複数の温度環境での第1の受光結果及び第1の計測結果(第1の工程での受光結果及び計測結果)から温度環境毎の光量ばらつき補正係数を算出し、第2の計測結果(第2の工程での計測結果)に対応する光量ばらつき補正係数を用いて第2の受光結果(第2の工程での受光結果)を補正することができる。
結果として、本実施形態のカラープリンタ100及び表面情報検出方法によれば、定着ベルト61の表面情報を安定して精度良く検出できる。
一方、例えば、照射系からの光を光パワーメータ等を用いて測定する場合には、コストアップを招き、かつ受光系の特性を反映したデータを取得することができない。
また、例えば特開2006−251165号公報に開示されている画像形成装置では、フォトセンサを複数個使用しているため,フォトセンサの特性の個体バラツキや取り付けバラツキが発生しやすく、反射率の測定バラツキが大きくなってしまう。さらには、LEDの発光光量の経時変化や温度変化が考慮されていない。
また、基準反射体を、カラープリンタ100に実際に用いられる未使用状態の定着ベルト61とすることで、光量ばらつき補正係数を算出する際の反射光の状態と、定着ベルト61の表面情報を検出する際の反射光の状態を、反射時における定着ベルト61の表面状態の違いを除いて同一とすることができ、より高精度な検出が可能となる。また、基準反射体として、別な部材を追加する場合に比べて構成が簡素であり、光量ばらつき補正係数の算出、表面情報の検出に手間がかからない。
また、基準反射体に例えばガラス板を用いることで、経時や環境での安定性が高く、また表面の均一性も高いので、リファレンスとして優位な点も多く、より高精度な検出が可能となる。
また、反射型光学センサ200は、複数の発光部LED211からの光の主光線を含む部分を個別に通過させる複数の開口が設けられ、該光の前記主光線を含む部分の周辺部分を反射する開口体を有するため、該開口体により各LEDからのフレア光を遮光することができる。また、開口体を各LED211の発光光量のばらつきを補正するためのリファレンス(基準反射体)として用いることもできる。
また、表面情報検出装置500は、開口体と定着ベルト61との間の光路上又は定着ベルト61と受光系との間の光路上の遮蔽位置と、該遮光位置から退避する退避する退避位置と間を移動可能な遮光部材600を更に含む。
この場合、遮光部材600を遮蔽位置に位置させた状態でのPD出力検出と、遮光部材600を遮蔽位置から退避させた状態でのPD出力検出が可能となるので、この2種のPD出力から定着ベルト61に起因しないPD出力成分をキャンセルしたり、遮光部材600を遮蔽位置に位置させた状態でのカラープリンタ100の使用開始前後のPD出力検出から光量ばらつき補正係数を算出することが可能となる。また、遮光部材600は、定着ベルト61から反射型光学センサ200への伝熱を低減する機能や反射型光学センサ200への粉塵等の侵入を防止する機能も兼ね備えている。
なお、複数のPD212での検知結果として、最大値から最小値を引いたPV値(電気的ノイズ等の影響を差し引くという点で有効)、複数のPD212でのPD出力和(誤差が軽減)、最大値付近の複数のPD出力値の和から最小値を引く(電気的ノイズ等の影響を差し引くと共に誤差を軽減)などから、反射型光学センサ200の仕様に合わせて選択することで、高精度な光量ばらつき補正係数を算出することが可能となる。
また、カラープリンタ100は、記録紙S(シート状の記録媒体)に画像を形成する画像形成装置であり、記録紙Sに形成されたトナー画像を該記録紙Sに定着させるための定着ベルト61と、該定着ベルト61を対象物とする本実施形態の反射型光学センサ200と、を備えている。
この場合、定着ベルト61表面の傷を精度良く検出することができ、画像品質の劣化を未然に防ぐことが可能となる。
従来、LEDの温度変化や経時変化を補正した状態で傷の有無を検知することができなかったのに対し、本実施形態では光量ばらつき補正係数を用いることにより、定量的に傷の有無を検知することができる。
また、従来、傷の位置や傷の幅を検知することはできなかったのに対し、本実施形態では、検知結果より、定着ベルト61の、検知範囲Aに対応する被検知領域61Sの傷の位置や傷の幅を検知することが可能である。
また、定着ベルト61の表面状態として、傷レベル(傷の深さと傷の幅)と、傷の主走査方向の位置を同時に検知することが可能となった。従来、傷の深さは分かったとしても、記録紙Sのサイズに関連する傷の幅や傷の主走査方向の位置は検知することができなかった。
以下に、反射型光学センサ200を用いる表面情報検出方法の他の例(上記実施形態よりも簡便な例)を図30のフローチャートを参照して説明する。
ここでは、図31(A)に示される具体的な結果を基に、検知結果:R−p−qに基づいて、定着ベルト61の表面情報を検出する。
なお、図31(A)中のLED211−p−q(p=2〜6、q=1〜4)は、R−p−qを示すので(図31(B)参照)、図30では、R−p−qと読み替えている。
上記実施形態では、最初に「傷の有無」を判定していたが、ここでは、「傷の有無」を最後に判定する。
最初のステップV1では、図24のステップG1と同様にして、各PD検知信号を受信する。
次のステップV2では、図24のステップG2と同様にして、LED211−p−qに対する検知結果R−p−qを算出する。
次のステップV3では、「傷の位置」を判定する。
具体的には、一番大きな傷、すなわちR−p−qでのPD出力和が最も小さい値を取る位置を「傷の位置」とする。図31(B)から、傷の位置はR−4−3であることが分かる。
次のステップV4では、傷のない位置を算出する。傷のない位置は、傷の位置R−4−3に対して、図31(B)の左側と右側をそれぞれ探索し,PD出力和が2番目に大きい値を取る位置とする。図31(B)から、左側ではR−3−2、右側ではR−5−4である。
ここで、最も大きい値を取らない理由の1つを示す。傷は1つであると仮定し、傷の両端は傷がない位置であるとすると、その値は理想的には一定である(図25(A)参照)。しかしながら、実際には定着ベルト61のばらつき、反射型光学センサ200のばらつき、などの測定上のばらつきを含むため、なんらかの異常値を含む可能性がある。そのため、異常値除去の意味をこめて、2番目に大きい値を取ることにする。
次のステップV5では、「傷の深さ」を判定する。傷の深さは、R−3−2とR−5−4のPD出力和の平均値から、R−4−3のPD出力和を差し引いた値に相当する。
前述の如く「傷の深さ」は「傷と、傷に起因する画像異常との相関関係」を定量的に捉え、画像異常の程度を表すパラメータとして表現したものであり、「傷そのものの物理的な深さ」ではなく、これに対応する「画像異常(濃度低下)の程度」が特定されるものである。この「傷の深さ」を用いて、「傷の有無」を判定する(ステップV6)。
ここでは、予め傷の深さと、画像異常の相関関係を実験等により把握しておき、傷有りと判断すべき傷の深さを設定しておく。この設定値と、検知した傷の深さを比較することにより、検知した傷の深さが、設定値以上であれば傷有りと判定し、以下であれば傷無しと判定する。
なお、上記実施形態の反射型光学センサ200では、複数のLED211を「順次点灯」させていたが、複数のLED211を同時点灯しても良い。この場合には、同時点灯のタイミングに同期して、複数のPD212もそれぞれ反射光を受光する。
この場合、表面情報検出装置では、上記のようにPD212の検知信号の和を取ることなく「LED211−p−qに対応したPD212−nの検知内容を検知結果:R−p−qとして採用する。
すなわち、主走査対応方向に離間して照射される各光スポット、換言すると「定着ベルト61の表面上の主走査対応方向の各位置」に対応して反射光強度を得ることができる。
また、反射型光学センサの形態は、上記実施形態の反射型光学センサ200に限定されるものではない。
要は、定着ベルト61の表面に「主走査方向に離間する複数の光スポットを照射でき、その反射光が受光できる構成」であれば良い。
ところで、上記実施形態で説明した反射型光学センサ200は、定着ベルト61の表面に主走査方向に複数の光スポットを照射し,その反射光を受光する反射型光学センサを用いているので、小サイズ用紙端部近傍に対向する位置に配置することで、その端部を含む検知範囲Aを小さくできる。すなわち、反射型光学センサ200の小型化が可能となる。さらに、反射型光学センサ200は、定着ベルト61の表面上の主走査対応方向において、例えば小サイズ(例えばA4サイズ)用紙を長手方向に平行な方向に搬送する場合の搬送方向に直交する方向の片側に比較的ラフに配置できる。
反射型光学センサ200を記録紙Sの搬送方向に直交する方向の端部近傍に対向する箇所に設置することにより、検知範囲Aの主走査対応方向の長さを短くしても、用紙幅端部を検知範囲Aに含むようにすることができる。検知範囲Aを短くできることは「反射型光学センサ200を、特に主走査対応方向に小型化することが可能になるメリットがある。
「傷の幅」は、数100μm〜数mm程度であり、傷の位置の変動範囲は、数mm程度であることから、検知範囲Aは「主走査対応方向に5mm〜15mm程度」の大きさが好適である。
また、カラープリンタ100では、例えばA3サイズ、A4サイズ、A5サイズなどの「複数のサイズの転写紙」を使用することができる。
一般的には、通紙可能な最大の転写紙(記録紙S)は、A3サイズであり、これを長手方向に平行な方向に搬送する場合が多く、「小サイズの用紙幅」としては、A3サイズを除くサイズの転写紙による「筋状の傷」による表面情報の検出が対象となる。
なお、仮に、A2サイズ以上の記録紙Sを長手方向に通紙可能な場合には、該記録紙Sのサイズを除くサイズの記録紙Sによる筋状の傷による表面情報が検出の対象となる。
上記実施形態では、反射型光学センサ200は1つ設置されているが、例えば反射型光学センサ200をA4サイズの記録紙Sの搬送方向に直交する方向の両端部に対向する位置に1個ずつ、計2個配置することもできる。また、複数のサイズの転写紙に対応できるように、さらに多くの反射型光学センサ200を配置することもできる。
しかし、前述したように、筋状の傷の発生は、記録紙の幅方向両端部で略同様に起こり、傷レベルに大きな相違は見られないこことから、上述のように、片側のみでも十分である。
さらに、例えばカラープリンタ100等の画像形成装置に、反射型光学センサ200を種々の用紙サイズに対応できるように、定着ベルト61の主走査対応方向の略全域の表面状態を検出できるようにしても良い。
例えば、A1縦通紙が可能な画像形成装置である場合、A2サイズ、A3サイズ、A4サイズ、A5サイズ、B3サイズ、B4サイズ、B5サイズ、B6サイズの各用紙の幅方向両端部に接触する、定着ベルト61の部位の表面状態を反射型光学センサで検知可能となるように、該反射型光学センサを主走査対応方向に長く設計する。
すなわち、反射型光学センサの複数の照射用レンズの配列方向(ここでは主走査対応方向)に関して、反射型光学センサの長さを、種々の用紙サイズ(種々のサイズの記録媒体)に対応可能なように十分大きくすることで、用紙サイズによって定着ベルト61上の異なる場所に出現する傷の未検知を防ぐことができる。
なお、配置する反射型光学センサ200を1個とすると、複数個用いる場合に発生する「反射型光学センサ200の特性ばらつきや取り付ばらつき」の影響を受けることなく、定着ベルト61の表面情報を良好に検出することができる。
上記実施形態では、反射型光学センサ200により照射される「複数の光スポットの配列」が、記録紙Sの搬送方向に対して直交する「主走査対応方向」とされている(図32(A)参照)が、図3において符号S−Pで示される光スポットの配列は、これに限られず、要は、複数の光スポットの配列は、搬送方向に対して交差していれば良い。
図32(B)には、「光スポットSPの配列が、搬送方向に対して交差する場合」の一例であり、搬送方向(Y方向)に対して45度傾斜した状態が示されている。この場合、主走査対応方向の検知範囲A’は、検知範囲Aの「1/√2」となり、短くなるが、主走査対応方向の光スポットの配列ピッチも1/√2に小さくでき、検出結果の位置分解能を向上させることができる。
また、上記実施形態では、定着ベルト61における「筋状の傷」による表面情報を主たる検出対象としているが、検出対象は、これに限らず、前述のオフセットや「サーミスタや剥離爪との接触に起因する傷」としても良い。
例えば、オフセットの場合、定着ベルト61の表面に固着したトナーの状態が「フィルム状」である場合、検知結果である反射光強度:R−p−qの低下は「比較的小さく、かつ広い範囲に及ぶ」ので、このような特性から検出できる。
また、「筋状の傷の幅」は、前述の如く数100μm〜数mm程度であるのに対し、「サーミスタや剥離爪との接触に起因する傷」の幅は「数10μm〜数100μm」であり、その発生位置もほぼ決まっているので、検出位置と傷の幅とにより「筋状の傷」と区別できる。
また、上記実施形態では、定着部材として「定着ベルト」を用いる場合を説明したが、定着部材は、これに限らず、例えば定着ローラを用いることもできることは言うまでもない。
また、定着部材として定着ベルトを用いる場合、定着ベルトとして「特に表層にPFA等の表面硬度が高い材料を用いた定着ベルト」は傷つきやすく、表面情報の検出が重要であるが、反射型光学センサ200を用いて表面情報を検知することで、ベルト交換等の管理が容易になる。
また、定着部材表面の表面情報は、上記実施形態のように「シート状の記録媒体と定着部材表面との接触(摺動)により発生する、記録媒体の搬送方向に沿う筋状の傷に係る情報」とすることができるが、この場合、表面情報として、傷レベル(傷の深さや傷の幅)と、傷の主走査対応方向の位置を同時に検知可能である。
また、定着部材表面の表面情報が、筋状の傷の傷レベルと傷の位置とに係る情報である場合、傷の位置を、上述の如く、複数の検知結果:R−p−qに対し、複数の光スポットの配列方向における微分操作により特定することにより、検知結果の変曲点(valley値)を精度良く算出でき、傷の位置を精度良く算出できる。
また、上述の如く、傷の位置での検知結果と、複数の検知結果に対する微分操作の結果である微分値の絶対値がゼロ付近に集まる少なくとも2つの位置での検知結果から、傷レベルを判定するようにすると、傷のない位置での検知結果も用いることになるので「重畳する傾き成分を除去」して、精度良く傷レベルを算出できる。
また、複数の光スポットを、定着ベルト表面に「搬送方向に交差する方向に離間させて順次照射」することにより、同時に照射する場合に比べて、クロストーク(1つのPDから見たとき,複数のLEDからの反射光を同時に受光してしまう)がなくなり、主走査対応方向の各光スポット位置に対応して得られる検知結果の検知精度を向上させることができる。
また、反射型光学センサは、1方向に配列されたN(≧1)個のLEDと、これらN個のLEDそれぞれからの光を定着部材表面に光スポットとして集光させるM(N≧M≧1)個の集光レンズを含むレンズアレイと、各光スポットにおける定着部材表面での反射光を受光するK(≧1)個のフォトセンサとを有する構成とすることもできる。
この場合、1個の集光レンズに対して複数個のLEDが対応することになり、レンズアレイの構造が簡素化される。また、フォトセンサの数を減らすことにより、オペアンプ等の電子部品も削減できるため、コスト面での利点がある。さらには、フォトセンサとしては単一の受光面を持つものでも良い。また、集光レンズは、サイズを大きくすることにより、フォトセンサへ反射光を導く受光レンズとして機能させることもできる。
また、上記実施形態では、カラープリンタ100の使用開始前後において、遮光部材600を遮蔽位置に位置させた状態でLED211−2−4からLED211−6−1までのLED211、すなわち28個のLED211のうち20個のLED211を順次点灯したときの28個のPD出力を用いているが、遮光部材600を退避位置に位置させた状態でも光量ばらつき補正係数を算出することは可能である。
しかしながら、定着ベルト61の傷の程度が劣悪である場合には、その部分の影響を受けてしまうため、算出される光量ばらつき補正係数の精度が落ちてしまう。このため、定着ベルト61からの反射光を含まない状態、すなわち遮光部材600を遮蔽位置に位置させた状態での複数のPD212の検知結果を取得することが好ましい。
図33(A)及び図33(B)には、図1(C)において、反射型光学センサ200を定着ベルト61に対して移動可能にした一例が示されている。反射型光学センサ200は、アクチュエータにより移動可能である。このアクチュエータとしては、例えば移動ステージ、回転ステージ、ソレノイド機構、送りねじ機構、リニアモータ装置、シリンダ装置等如何なるものでも良い。
詳述すると、図33(A)に示されるように、反射型光学センサ200を定着ベルト61に対向する対向位置と、該対向位置から退避する退避位置との間を移動可能としても良い。この場合、退避位置に位置する反射型光学センサ200からの光の光路上に基準反射体(例えば板ガラス)が配置されても良い。
また、図33(B)に示されるように、反射型光学センサ200を、定着ベルト61側を向く位置と、基準反射体(例えば板ガラス)側を向く位置との間を回転可能に設けても良い。
結果として、反射型光学センサ200の位置を定着ベルト61に光が照射される位置と照射されない位置との間で変更できるため、遮光部材600をアクチュエータにより移動させる場合に比べて遮光部材600を設ける必要がなく、部品点数の削減を図ることができる。
また、上記実施形態では、反射型光学センサ200は、LEDとPDが1対1で対応する構成を有しているが、これに限らず、例えばレーザ光を光偏向器で偏向し、定着ベルト61の表面からの反射光を少なくとも1つのPDで受光するような構成を有していても良いし、1つのLEDと1つのPDを含む反射型光学センサを駆動手段により主走査対応方向に移動させる構成を有していても良い。
ところで、図34(A)に示される比較例1のように、定着ベルト61の移動方向であるZ軸方向(以下では副方向とも呼ぶ)の光スポットの幅が、定着ベルト61の移動方向に直交する方向であるY軸方向(以下では主方向とも呼ぶ)の光スポットの幅以下である場合、すなわち光スポットの縦横の長さが同じ場合や光スポットが横長である(主方向を長手方向とする)場合、光スポットが定着ベルト61の縦筋状の傷上に形成されるとき、主方向に関して光スポットの幅に対する傷の幅が狭いほど、光スポットにおける傷上の部分(傷部)の占める割合が少なくなり(図34(B)参照)、傷の状態を検出する精度が低下してしまう。これは、光スポットに傷部と傷なし部(傷部以外の部分)が混在する場合と、光スポットに傷なし部のみが存在する場合との検出値の差が小さくなってしまうからである。
光スポットにおける傷部の占める割合を多くするためには、図35(A)及び図35(B)に示される比較例2のように、光スポットを小さくすることが考えられる。光スポットを小さくするためには、発光部からの光を定着ベルトに導く照射光学系の倍率を低くするか、発光部(例えばLED)の面積を小さくする必要がある。
しかし、照射光学系の倍率を低くするために、発光部と照射用レンズとの距離を長くすると光利用効率の低減を招く(副作用1)。また、照射光学系の倍率を低くするために、発光部と定着ベルトとの距離を短くすると反射型光学センサの温度上昇による出力低下、劣化、破損などを招く(副作用2)。
また、発光部の面積を小さくすることも、出力低下につながり、SN比が上昇し、検出精度が低下する。
そこで、図36(A)に示される実施例1のように、光スポットの副方向の幅を主方向の幅よりも広くすれば良い。すなわち、照射領域としての光スポットの形状を縦長に(副方向を長手方向に)すれば良い。なお、ここでの「照射領域」は、反射型光学センサの1つの発光部からの光が照射される領域を意味する。実施例1では、反射型光学センサが複数の発光部を有する場合、定着ベルト61上に複数の照射領域が形成されることになる。実施例1では、光スポットの形状は、一例として副方向を長手方向とする楕円形とされている。
縦長の光スポットの形成は、発光部の副方向の幅を主方向の幅よりも広くすること(例えば発光部の形状を副方向を長手方向とする楕円形とすること)によって実現できるため、照射光学系の倍率を低くすることや発光部の面積を小さくすることなく(上記副作用1、2なしに)、光スポットにおける傷部の占める割合を向上させることができ、縦筋状の傷の状態の検出精度を向上させることができる。この結果、定着ベルト61上の傷の画像に与える影響を精度よく判定することが可能となる。
なお、照射領域を縦長にするための方法としては、発光部の副方向の幅を主方向の幅よりも広げる方法以外にも、例えば副方向と主方向の幅が同じ発光部からの副方向と主方向の幅が同じ断面形状の光を、副方向の集光パワーよりも主方向の集光パワーが大きいレンズで集光する方法もある。
ここで、定着ベルト61上の縦筋状の傷の状態を判定する方法の一つとしては、図37(A)及び図37(B)に示される実施例2のように、定着ベルト61における縦筋状の傷が発生する箇所(記録紙のY軸方向の端部と当接する箇所)に対向する位置と、定着ベルト61における縦筋状の傷が発生しない箇所(記録紙のY軸方向の端部と当接しない箇所)に対向する位置とに、いずれも実施例1の反射型光学センサである反射型光学センサ1、2をそれぞれ設置し、反射型光学センサ1、2の出力信号(検出値)を比較することにより、傷が画像品質に与える影響を判断する方法が考えられる。
また、図38(A)及び38(B)に示される実施例3のように、実施例1の反射型光学センサを主方向に移動させながら検出を行い、定着ベルト61における縦筋状の傷が発生する箇所に対向する位置に反射型光学センサが位置するときの出力信号(検出値)と、定着ベルト61における縦筋状の傷が発生しない箇所に対向する位置に反射型光学センサが位置するときの出力信号(検出値)とを比較することにより、傷が画像品質に与える影響を判断する方法が考えられる。ここで、反射型光学センサの検出値のうち、最小値を傷が発生する箇所の検出値として採用し、最大値を傷が発生しない箇所の検出値として採用すれば良い。
実施例2及び3によれば、傷部の位置が主方向にずれた場合においても、光スポットにおける傷部と傷なし部の検出結果を用いて、定着ベルト61の傷の画像に与える影響を精度良く判定することができる。
なお、実施例1では、光スポットの形状を縦長に(副方向を長手方向に)しているが、これに代えて、例えば図39(A)に示される実施例4のように、複数の光スポットを副方向に並べて光スポット群を形成し、全体として(マクロ的に見て)、縦長の照射領域を構成しても良い。これは、発光部が副方向に平行な方向に複数配列されて成る光源(発光部群)を用いて実現できる。
この場合、複数の光スポットにおける傷部の面積の合計が傷なし部の面積の合計よりも大きければ、上記副作用1、2なしに縦筋状の傷の状態の検出精度を向上させることができる。更に、照射領域の強度(光量)を向上させ、SN比を低減させることができる。
また、図39(B)に示される実施例5のように、照射領域を単一の縦長の光スポットとする場合に、光スポットの形状を角型にしても良い。ここでの「角型」は、楕円と長方形との間の形状を意味する。光スポットの形状が長方形に近い形状であることによって、該光スポットと副方向の幅が同じ楕円形の光スポットよりも光スポットにおける傷部を大きくすることが可能となり、傷状態の副方向におけるばらつきを平均化できるため、検出精度が向上する。なお、光スポットの形状を角型にするためには、発光部の形状を略長方形にする必要がある。
なお、図39(A)に示される副方向に並ぶ複数の光スポットそれぞれを、角型としても良い。ここでの「角型」は、円と正方形との間の形状を意味する。この場合にも、検出精度をより向上させることができる。なお、光スポットの形状を角型にするためには、発光部の形状を略正方形にする必要がある。
ここで、図40(A)に示される比較例3のように反射型光学センサによって定着ベルト61上に横長の光スポットを主方向に並べて複数形成する場合と、図40(B)に示される変形例6のように反射型光学センサによって定着ベルト61上に縦長の光スポットを主方向に並べて複数形成する場合とを、定着ベルト61の傷上に光スポットが形成される場合(ケース1)で比較すると、比較例3よりも実施例6の方が検出精度を高くすることができる。すなわち、ケース1では、光スポットの形状が横長よりも縦長の方が、光スポットにおける傷部の占める割合が大きくなり、検出精度が高くなる。
一方、比較例3と実施例6とを、定着ベルト61の傷を挟む位置に2つの光スポットが形成される場合(ケース2)で比較すると、比較例3の方が実施例6よりも検出精度を高くすることができる(図41(A)及び図41(B)参照)。すなわち、ケース2では、光スポットの形状が縦長よりも横長の方が、光スポットにおける傷部の占める割合が大きくなり、検出精度が高くなる。
そこで、実施例6において、ケース2での検出精度を高めるために、複数の光スポットの主方向の間隔を狭めることが考えられる(図42参照)。
しかし、この場合、主方向の総検出可能範囲が狭くなる。
そこで、図43(A)及び図43(B)に示される実施例7のように、実施例6の反射型光学センサを主方向に移動させ、主方向における複数位置での検出を行い、定着ベルト61の傷上に光スポットが形成されたときの検出結果と、定着ベルト61の傷がない箇所上に光スポットが形成されたときの検出結果を用いて傷の状態を判断すれば、主方向の総検出可能範囲を狭めることなく、傷の状態を精度良く判定することが可能となる。
具体的には、一例として図43(A)及び図43(B)に示されるように、実施例7の反射型光学センサにより、定着ベルト61上に複数(例えば20個)の縦長の光スポットS−1〜S−20を等間隔で形成した後、該反射型光学センサを光スポットのピッチL(隣り合う2つの光スポットの中心間の間隔)の半分であるL/2だけ主方向に移動させ、定着ベルト61上に20個の縦長の光スポットS−1〜S−20を等間隔で形成し、移動前後における反射型光学センサの検出値を用いて縦筋状の傷の状態を判断すれば、光スポットの配列方向である主方向の分解能を2倍にすることが可能となる。なお、実施例7の反射型光学センサは、Y軸方向に等間隔で配列された20個の発光部又は発光部群を含む。
また、反射型光学センサの主方向の移動距離が、(L/N)、(L/N)×2、(L/N)×3、・・・、(L/N)×(N−1)(ここでNは3以上の整数)であるときにそれぞれ、定着ベルト61上に光スポットS−1〜S−20を形成し、N−1個の位置それぞれに位置するときの反射型光学センサの検出値を用いて傷の状態を判断すれば、より高分解能な検出を行うことができる。
また、実施例7の反射型光学センサでは、主方向に移動させることができるため、図44に示されるように、発光部の数(光スポットの数)を減らすことができ、センサの低価格化を実現することもできる。
なお、実施例3及び7の反射型光学センサを移動させる手段としては、コイルに通電したときの磁界と永久磁石の磁界とを利用したソレノイドアクチュエータ、駆動源としてのモータとラック&ピニオン機構やボールねじ機構とを含む回転運動を直線運動に変換するアクチュエータなどが挙げられる。なお、実施例3及び4の反射型光学センサは、主方向に移動されるが、要は、副方向(定着ベルト61の移動方向)に交差する方向に移動されれば良い。
そして、反射型光学センサの移動距離を測定する位置センサを設けることによって、該位置センサでの測定結果を上記アクチュエータを制御する制御部にフィードバックすることにより、反射型光学センサを、正確に目標の位置に移動させることが可能となる。
なお、以上説明して実施例1〜7は、上記実施形態の変形例でもあり、実施例1〜7の反射型光学センサ、表面情報検出装置、カラープリンタは、それぞれ上記実施形態の反射型光学センサ200、表面情報検出装置500、カラープリンタ100と同様の構成を有する。
すなわち、実施例1〜7のカラープリンタは、画像が転写された記録紙S(記録媒体)が当接され、該画像を定着するための定着ベルト61(移動体)と、少なくとも1つの発光部から成る光源を少なくとも1つ有し、定着ベルト61に光を照射する照射系を少なくとも1つ含む反射型光学センサと、該反射型光学センサの出力信号に基づいて、定着ベルト61の表面情報を求める処理装置300と、を備え、前記光源からの光によって定着ベルト61上に形成される照射領域は、定着ベルト61の移動方向(副方向)の幅よりも移動方向に直交する方向(主方向)の幅のほうが狭い。
実施例1〜7によれば、定着ベルト61の表面情報を安定して精度良く求めることができる。
なお、実施例2、3、6、7では、複数の照射領域が主方向に並べて形成されているが、これに限らず、要は、副方向(定着ベルト61の移動方向)に交差する方向に並べて形成されれば良い。すなわち、複数の発光部又は複数の発光部群を副方向に交差する方向に平行な方向に並べて配置すれば良い。
ところで、上記実施形態及び各実施例において、画像形成装置に定着ベルト61の表面を研磨する表面研磨装置を設けても良い。この場合、表面研磨装置で定着ベルトの表面をフラットに研磨することで、定着ベルトの表面に発生した傷の影響を低減することができる。例えば、反射型光学センサでの検出結果に基づいて、研磨装置による研磨位置、研磨時間、研磨力の調整を行うことで、定着ベルトの表面をよりフラットに研磨することができ、定着ムラの発生を抑制でき、ひいては画像品質の向上を図ることができる。
以下に、表面研磨装置の具体例である表面研磨装置1000について説明する。
表面研磨装置1000は、一例として、カラープリンタ100(図1(A)参照)の筐体内に配置され、図45(A)及び図45(B)に示されるように、定着ベルト61の表面を研磨するための研磨ローラ800と、該研磨ローラ800を定着ベルト61に当接する位置と該当接位置から退避する退避位置との間で移動させ、かつ回転駆動させる、駆動源としてのモータを含む駆動部900と、反射型光学センサでの検出結果に基づいて駆動部900を制御する制御部950とを有している。
詳述すると、制御部950は、処理装置300からの表面情報の判定結果に応じて、駆動部900を介して研磨ローラ800を制御する。詳述すると、処理装置300は、反射型光学センサの出力信号に基づいて定着ベルト61の傷が画像に与える影響について判定し、その判定結果を制御部950に出力する。制御部950は、傷が画像品質をNGにするレベル(合格基準に満たないレベル)にあるという判定結果を受けたときに、表面研磨装置1000を用いて定着ベルト61の表面研磨を行う。
なお、制御部950が反射型光学センサの出力信号を受けて、上記判定を自ら行っても良い。この場合、制御部950は、縦筋状の傷が画像品質をNGにするレベルにあると判定した場合に、表面研磨装置1000を用いて定着ベルト61の表面の研磨動作を行う。
研磨ローラ800は、図45(A)及び図45(B)に示されるように、Y軸に平行な回転軸68に一端が固定されたアーム69の他端にY軸周りに回転可能に設けられている。回転軸68及び研磨ローラ800の軸は、駆動部900によって個別に回転駆動される。
研磨ローラ800のY軸方向(定着ベルト61の幅方向)の長さは、定着ベルト61の幅方向全域を研磨できるよう定着ベルト61の幅以上の長さに設定されている。
この場合、記録紙Sの幅方向両端部(Y軸方向両端部)との摺動に起因して定着ベルト61に形成された縦筋状の傷を含む部分を平坦化できるだけでなく、定着ベルト61の幅方向の略全域に亘って定着ベルト61の表面の平面度を向上でき(表面を均一化でき)、分離爪や接触式温度センサによる傷、あるいはオフセットに対しても有効に定着ベルト61の表面状態の改善できる。
また、上記実施形態及び各実施例におけるLED配列ピッチやPD配列ピッチ、レンズ曲率半径などのパラメータの数値は、上述した数値に限定されるものではない。
また、上記実施形態及び各実施例では、複数のLEDに個別に対応して複数のPDが設けられているが、複数のLEDに対応して1つのPDが設けられても良い。
また、上記実施形態及び各実施例では、複数のLEDに個別に対応して複数のPDが設けられているが、複数のLEDに対応する複数の受光領域を含む1つのPDが設けられてもよい。
また、上記実施形態及び各実施例では、受光用レンズは、定着ベルト61からの反射光をY軸方向に直交する方向にのみ収束させるが、これに限らず、要は、少なくともY軸方向に直交する方向に収束させることが好ましい。
また、上記実施形態及び各実施例では、複数の照射系の照射用レンズ及び受光用レンズは、一体化されているが、別体であっても良い。
また、上記実施形態及び各実施例では、複数の照射系それぞれの複数のLEDを含むLED群と照射用レンズとの間に位置する開口が設けられた開口体が設けられているが、必ずしも設けられていなくても良い。
なお、開口体が設けられない場合には、図16においてステップJ3〜J6、J10は不要であり、図17においてステップU1〜U4、U8は不要であり、図19においてステップW3〜W6、W10、W17〜W19、W23は不要である。
また、上記実施形態及び各実施例では、定着ベルト61のY軸方向の複数位置に光を順次照射しているが、少なくとも2つの位置に同時に照射しても良い。
また、上記実施形態及び各実施例では、表面情報検出装置の検出対象物として、定着ベルトを採用しているが、これに限られず、要は、物体が当接される移動体全般を表面情報検出装置の検出対象物とすることができる。例えば移動体として転写ベルト11を採用し、該転写ベルト11の表面情報を上記実施形態や各実施例と同様にして検出しても良い。この場合、検出された転写ベルト11の表面情報に基づいて、例えば帯電装置による帯電条件、光走査装置13による露光条件、現像装置による現像条件、転写装置による転写条件等を制御することで、記録紙S(転写材)に対するトナー像の転写むらを抑制できる。
すなわち、上記反射型光学センサ及び処理装置を含む表面情報検出装置は、物体(例えば記録媒体、鋼材、搬送物)に処理(例えば画像形成処理、圧延処理、搬送処理)を施す物体処理装置(例えば画像形成装置、圧延処理装置、ベルトコンベア装置)であって、該物体が当接される表面情報の検出対象の移動体(例えば定着ベルト61、転写ベルト11、圧延ローラ、圧延ベルト、搬送用ベルト)を含む物体処理装置に用いることができる。
また、上記実施形態及び各実施例では、定着装置19は、移動体としての定着ベルト61を有しているが、これに代えて、移動体としての定着ローラを有していても良い。この場合、定着ローラと加圧ローラとで形成されるニップに記録紙Sが搬送されることになる。すなわち、移動体は、無端ベルトのみならず、ローラであっても良い。また、移動体は、周回するベルトや回転するローラのみならず、往復移動する部材であっても良い。
また、上記実施形態及び各実施例では、反射型光学センサの検出結果に基づいて、露光装置としての光走査装置13を制御しているが、これに限らず、定着ベルト61における傷のある位置でのトナー付着量が傷のない位置でのトナー付着量よりも大きくなるように、例えば現像装置による現像バイアス、転写装置による転写電位、帯電装置による帯電電位等を制御しても良い。
また、上記実施形態及び各実施例では、画像形成装置が4つの感光体ドラムを有する場合について説明したが、これに限定されるものではない。具体的には、画像形成装置は、例えば5つ以上の感光体ドラムを有するカラープリンタであっても良いし、例えば1つの感光体ドラムを有するモノクロプリンタであっても良い。
また、上記実施形態及び各実施例では、反射型光学センサの発光部として、LEDが用いられているが、これに限らず、例えば有機EL素子、端面発光レーザ、面発光レーザ、その他のレーザ等が用いられても良い。
また、上記実施形態及び各実施例では、画像書き込み装置(露光装置)として、光走査装置13が採用されたが、これに限らず、一軸方向(例えばY軸方向)に並べて配置された複数の発光部を含み、画像情報に応じて変調された複数の光を感光体ドラムに照射して潜像を形成する光プリントヘッドを採用しても良い。この場合、反射型光学センサでの検出結果に基づいて、定着ベルトにおける傷のある位置でのトナー付着力が傷のない位置でのトナー付着量よりも大きくなるように少なくとも1つの発光部の発光光量を調整しても良い。
また、上記実施形態及び各実施例では、「基準反射体」として、ガラス板、開口体、未使用状態の定着ベルト61などが用いられているが、要は、使用状態の定着ベルト61の表面情報(傷に関する情報)を反映しない部材であることが好ましく、光が照射される領域の反射率が均一な部材であることがより好ましい。