JP6403610B2 - 注出器 - Google Patents
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Description
このペーストの漏れ出しは、ペーストの注出量の定量性を損なう他、必要外の箇所で落滴して周囲を汚す原因にもなり改善が望まれていた。
特許文献1の注出器は、弾性シールリングのよれに起因するペーストの漏れ出しを課題とし、注出器のプランジャの先端近傍に環状凹溝を形成しており、該環状凹溝には、外周縁がシリンダ部材の内周壁と当接し、且つ後壁面に複数のほぼ半球形の突部が周方向に間隔を空けて形成された弾性シールリングが装着されている。
このように、弾性シールリングの後壁面の突部が、環状凹溝の後側壁面に圧接されると、弾性シールリングは、上記後壁面の中央付近で、突部により部分的に支持された状態になる。したがって、ペーストの内圧のさらなる高まりにより、ペーストが注出口から排出されようとしても、弾性シールリングの弾性復帰力でプランジャを後方へ押し返し、シリンダ内の内圧を減圧することができ、ペーストの漏れを防止できる。
しかしながら、特許文献1の注出器は、弾性シールリングの本体部分(突部のない個所)の断面が矩形であり、シリンダの内周面との接触面積が大きく、摩擦抵抗によってペーストの注出時におけるプランジャの押込みに力を必要としていた。また、摩擦抵抗を軽減させるため、弾性シールリングの本体部分の厚さ(シリンダの軸方向に対する長さ)を小さくして、摩擦抵抗を少なくすることも考えられるが、断面形状が矩形のためプランジャの進退移動の際に弾性シールリングの捩じれや撓みが生じる。すなわち、プランジャの前進移動中では、シリンダの内周面と接触している弾性シールリングの外周側部分が後方側に撓み、弾性シールリングの内周面や外周面が傾斜するとシリンダの内周面から離れてしまう。さらに、撓みが増すと弾性シールリングの密閉性が失われて空気の巻き込みが生じるおそれがある。また、ペーストの充填時では、プランジャが後退するので、弾性シールリングの外周側が前方側に撓み、弾性シールリングが傾斜すると、同様にプランジャからのペーストの漏れが生じるおそれがある。
特許文献2の注出器は、弾性シールリングがよれたような場合に、エア抜き溝より先端部側に弾性シールリングが位置する状態を想定すると、エア抜き溝による空気の流通が閉ざされ、エア抜き溝が効果を発揮せず、シリンダ内に空気が残る。シリンダ内に空気が残ることによって、押出し停止後にシリンダ先端部からペーストが漏れだすおそれがある。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、弾性シールリングの捩じれを解消するとともに、特許文献1及び特許文献2のペースト漏れ防止の技術をさらに改善して、より好適にペーストの充填室から空気抜きを促進するとともに注出口からペーストの漏れの防止、さらには弾性シールリングからの空気の巻き込みを防止する注出器を提供することを目的とする。
上記注出器の前記弾性シールリングには、該弾性シールリングの前記リング状主部前記前端面から延出する補強部を形成することができる。
上記注出器の前記弾性シールリングの前記リング状主部は、横断面形状が四角形であり、前記前端面及び前記後端面は平面であることが好ましい。
上記注出器の前記弾性シールリングには、前記シリンダの軸方向に一端側から他端側へ抜ける開閉溝若しくは開閉孔が形成され、前記充填室への流体の注入時に、前記開閉溝若しくは開閉孔が空気の流通を許容し、前記流体の注出時には、前記弾性シールリングの弾性変形によって、前記開閉溝若しくは開閉孔が閉塞し、前記流体の流通を阻止することができる。
上記注出器の前記環状凹溝の前記シリンダの軸方向における溝幅は、前記弾性シールリングのシリンダ軸方向における幅よりも大きく形成されていることが好ましい。
上記注出器の前記弾性シールリングの前記リング状主部の後端面には、前記環状凹溝の後端面側に突出する突部を形成することができる。
上記注出器の前記弾性シールリングのショア硬度が30〜95の範囲であることが好ましい。
上記注出器の前記流体が歯科用のペースト材であることが好ましい。
また、本願発明は、弾性シールリングが弾性体であって、弾性シールリングに形成した開閉溝が弾性によって閉塞させられることを見出して、ペーストの充填時に充填室内の空気を充填室外に排出し、ペーストの注出時にはペーストの漏れを防止若しくは抑制することができる。
図1は、ペースト注出器1の代表的態様の断面図、図2はペースト注出器1のシリンダ2の断面図、図3はペースト注出器1のプランジャ3の断面図である。
これらの図を参照にして、ペースト注出器1は、シリンダ2とプランジャ3とを備えている。シリンダ2は、断面が円形でかつ内部が中空であり、先端(前端)にはペーストの注出口5がノズル状に突出している。注出口5には外部からペーストを注入した後、目的部へペーストを注出するためのノズル本体4が装着されている。通常、ノズル本体4はチップ状の別部材として、シリンダ2の本体部に装着して使用する構造としている。
また、シリンダ2の後部には後端開口部6が設けられ、後端開口部6にはプランジャ3が挿嵌されている。
ペースト注出器1の材質は、特に制限されるものではなく、金属やガラス等であっても良いが、通常は、プラスチック、例えばポリプロピレン、ナイロン、テフロン(登録商標)等が採用される。先端のノズル本体4については、プラスチックや金属製であっても良い。
シリンダ2の内口径は5〜10mmであるのが一般的であり、シリンダ2の先端近くは、ペーストが定量的に注出できるように、テーパ面7を経て縮径されているのが好ましい。すなわち、シリンダ2の先端近くは、細い円柱筒状、或いはゆるやかなテーパを有する逆円錐形状をしているのが好ましい。なお、テーパ面7は、シリンダ2の軸方向に対して断面形状が直角に形成されていても良いが、充填されるペーストがなだらかに流動し易いようにテーパ状であるのが好ましい。
ペースト注出器1において、ノズル本体4の先端部にはノズル10が形成され、ノズル10の内口径は0.1〜2.0mm、より好適には0.3〜1.5mmの場合において本発明の効果が良好に発揮され易く好ましい。ノズル10の長さは1〜30mmが一般的であり、この長さにおいて、図1に示すようにノズル10の先端は途中で屈曲させてあってもよい。
本実施形態では、環状凹溝14のシリンダ軸方向に対する長さは、弾性シールリング15のシリンダ軸方向に対する長さよりも少し長く形成されている。
このような基本構造のペースト注出器1において、そのシリンダ2のテーパ面7とプランジャ3の先端部との間に形成される充填室9には、ペーストが充填される。
図5を参照にして、環状凹溝14は、前面14aと後面14cとが、底面14bの前後を隔てて、底面14bから直角方向に立ち上がるように形成されている。環状凹溝14の底面14bの直径は、一般的に2〜9mmである。また、環状凹溝14の幅(前面14aから後面14cまでの長さ)は、一般的に0.5〜10mmである。
本実施形態では、弾性シールリング15は、リング状(円筒形状)主部15aと該リング状主部15aから前端面から突出する同じくリング状の補強部15cとから構成されている。
リング状主部15aは、横断面(環状の周方向軸に直交する断面)が四角形又はその他の異形のものが使用できる。本実施形態では、断面が四角形状であり、シリンダ軸に対して後端面が平面で形成されている。弾性シールリング15の内径は内周面が環状凹溝14の底面の径にほぼ等しく、外径は外周面がシリンダ2の内周面に密着するような径に形成される。
弾性シールリング15の厚さ(プランジャ3の軸方向における長さをいう)は、環状凹溝14の前後方向の幅よりも小さく、弾性シールリング15は、環状凹溝14を前後方向に移動することができる。
この補強部15cについては、弾性シールリング15の外周面の接触面積を小さくする役割を果たす。すなわち、本実施形態のように断面が矩形の弾性シールリングは、外周面の全体がシリンダ2の内周面に接触するので、摩擦抵抗が大きくなる。特に粘性のある材料を取扱う場合は内圧が大きく弾性シールリングに大きな圧力が負荷する。摩擦抵抗を小さくするため、シリンダ軸方向の長さに対する弾性シールリングの厚さを小さくすると、プランジャ3の進退移動時に弾性シールリングが捩じれたり撓んだり(以下、単に捩じれとする)してペースト漏れや空気の巻き込みが発生するおそれがある。そこで、本実施形態の弾性シールリング15は、シリンダ軸方向の長さに対するリング状主部15aの厚さt1(図4のB参照)を短くして、リング状主部15aの捩じれを防止する補強部15cを形成した。したがって、補強部15cの直径(外径)d2(図4のB参照)は、シリンダ2の内周面に接しない大きさにする必要がある。また、補強部の直径d2が小さすぎると補強部として役割を果たせなくなるので、好ましくは、シリンダ2の内周面に接触しないよう、シリンダの内周面に近接させるとよい。
該補強部15cの環幅w2(図4のB参照)はリング状主部15aの環幅w1に対して10%以上が好ましく、さらには20%以上、30%以上が特に好ましい。
なお、リング本体15a及び補強部15cの環幅w1、w2とは、シリンダ2の半径方向におけるリング状主部15a及び補強部15cのそれぞれの外径と内径との差である。
本実施形態において、ペースト注出器1に充填するペーストは、特に制限されるものではないが、注出器1に充填するペーストとしては、歯牙修復材ペーストであるのが好ましい。これら歯牙修復材ペーストの具体例としては、コンポジットレジンと呼ばれる欠損した歯牙の充填修復材料、歯髄保護のための裏層材料、および小窩裂溝封鎖に適した充填修復材料などが挙げられる。これらは、化学重合により硬化するタイプであっても良いし、光重合により硬化するタイプであっても良いが、後者の方がより好ましい。
また、ペースト注出口からのペーストの切れを良くする本発明の効果を顕著に発揮される観点からは、低粘度のものが好ましく、粘度が10〜10,000ポイズ、より好適には50〜5,000ポイズであることが好ましい。
ペーストの充填作業は、弾性シールリング15を装着したペースト注出器1において、シリンダ2の充填室9にペーストを注入するときには、図6に全体を図示せず先端の充填ノズル25と本体の一部のみを示すペースト充填器26にセットする。そして、充填ノズル25を注出口5に差し込むときは、円錐部13がテーパ面7に接するように配置し、シリンダ内に空気が残らないようにする。
シリンダ2の内部にペーストが注入されると、円錐部13の外径よりも弾性シールリング15の外径が大きいので、充填室9の残留空気の内部圧力で弾性シールリング15が後方に押されたり、あるいは、環状凹溝14の前面に接触してプランジャ3とともに後退する。この際、弾性シールリング15のリング状主部15aは、先端が捩じれようとしても、補強部15cの存在で捩じれが軽減される。また、リング状主部15aの厚さが小さく形成されているので、摩擦抵抗が低減されてプランジャ3の後退移動が円滑になる。
充填器26には、プランジャ3の後退時に後端位置を規制するストッパー部材(図示せず)があり、充填室9のペーストの内部圧力によってプランジャ3が後方側へ押し戻される。プランジャ3の後端(係指部17)がストッパーに接触すると、プランジャ3の後退移動が規制され、この際、弾性シールリング15には、ペーストによる後方への押圧力が増大し、弾性シールリング15は、プランジャ3に対して後方側へ移動する。こうして、シリンダ2内にペーストが充填される。
上述したように、ペーストの注出時には、シリンダ2の内部圧力が大きくなり、この際、弾性シールリング15のリング状主部15aは、先端が捩じれようとしても、補強部15cの存在で捩じれが小さくなる。よって、接触面積が少なくなり、摩擦抵抗が低減されてプランジャ3の押し込みが容易になる。また、弾性シールリング15は密閉状態を維持し、密接部周囲からのペーストの漏れを防止でき、従来の役割を果たすことができる。このように、本実施形態では、弾性シールリング15のリング本体15aの厚さを小さくして、摩擦抵抗を小さくできる。
図7及び図8を参照にして、本実施形態における弾性シールリング15は、リング状(円筒形状)主部15aと、リング状主部15aから後方側に突出する突部15bと、リング状主部15aの前方に突出する補強部15cとから構成されている。上記第1の実施形態に対して、リング状主部15aと補強部15cの構造は同じであり、突部15bを有することが異なる。よって、突部15bについてのみ説明する。
突部15bは、本実施形態では、ほぼ半球形状であり、リング状主部15aの後端面から後方側へ突出する。また、突部15bは、周方向に間隔をあけて8個が形成されているが、これ以外の数であってもよい。また、突部15bは、高さの異なる2種の突部を1つ置きに配置してもよい。
弾性シールリング15の厚さ(シリンダ2の軸方向における長さ)は、環状凹溝14の前後方向の幅よりも小さく、弾性シールリング15は、環状凹溝14を前後方向に移動することができる。
この残留圧については、弾性シールリング15の突部15bが、環状凹溝14の後側壁面に圧接されて弾性変形した状態であるので、突部15bが形状を復帰させるためプランジャ3を後方へ押し返し、残留圧を相殺する。
加えて、本実施形態では、第1の実施形態と同様に、シリンダ2の内周面に接触しない補強部15cを形成しているので、その内周面に接触するリング本体部15aのシリンダ2の軸方向における厚さを小さくできる。よって、シリンダ2の内周面に対する接触面積を少なくさせるので、摩擦抵抗が低減されてプランジャ3の押し込みが容易になる。また、弾性シールリング15は密閉状態を維持し、密接部からのペーストの漏れを防止し、本来の役割を果たす。
図9を参照にして、本実施形態の弾性シールリング15は、上記第2の実施形態と同様にリング本体15a、突部15b、補強部15cとから構成されている。本実施形態では、弾性シールリング15の内周面に、シリンダ2の軸方向に直線状に延び、かつ内周面を貫通する開閉溝21が形成されている。開閉溝21の大きさは弾性シールリング15が環状凹溝14に装着されたとき、ペーストを充填していない状態では空気が流通する。弾性シールリング15にシリンダ2の軸方向へ所定以上の外力が負荷したときに、弾性シールリング15の圧縮変形によって、弾性シールリング15が半径方向に膨張するように作用するが、環状凹溝14の底面側に押されて、開閉溝21が閉塞されるように形成する。
このような、弾性シールリング15については、シリンダ2の軸方向に所定以上の外力が負荷したときに、弾性シールリング15の半径方向に広がろうとする圧縮変形によって、開閉孔23の隙間が変形の逃げ場となって閉塞される。開閉孔23については、突部15bの間に形成しているが、突部15bの中心先端からずらした突部内の部分に形成してもよい。
これらの開閉溝21,22及び開閉孔23は、各々1個形成したが、複数形成することも可能である。開閉溝21,22の形状については、断面が四角形の他、半円形、半楕円形などがある。開閉孔23の形状については、円形、楕円形、多角形やスリット状の孔も可能である。また、開閉溝21,22及び開閉孔23については、シリンダ2の軸方向へ直線状に形成したが、傾斜させたり、クランク形状の直線以外の形状についても可能である。
本発明で使用されるペースト充填剤は、上記第1の実施形態と同じである。
弾性シールリングの形状は異なるが、図6を参照して、ペーストの充填作業における弾性シールリング15の移動について説明する。
本実施形態では、プランジャ3を最前方位置に配置する必要はなく、通常、弾性シールリング15の位置は、環状凹溝14の前面に密接しているか、あるいは後面に密接しているかのいずれかが殆どである。図9を参照にして、内周面に開閉溝21を有する弾性シールリング15を例にあげると、弾性シールリング15が後面14cに密接しているときは問題ないが、弾性シールリング15が環状凹溝14の前面14aに密着しているときに、開閉溝21は、環状凹溝14の前面14aに閉塞されて、充填室9は密閉状態となっている場合があり、このような状態では残留空気は排出されないおそれがある。
なお、当初から開閉溝21を開状態にしたいのであれば、ペーストの注入前にプランジャ3を少し前進させれば、弾性シールリング15と環状凹溝14の前面14aとの密着は解除され、開閉溝21は開状態となり、ペーストが弾性シールリング15の位置まで充填される間に残留空気を抜くことができる。充填室9内の空気は、開閉溝21を通って円板16とシリンダ2の内周面の隙間からシリンダ2の後端側へ抜ける。
ペーストの充填時には、弾性シールリング15の前面にペーストが満たされるが、充填室9の内圧は小さく、開閉溝21の大きさを、空気を通すが粘性の大きなペーストを通さない大きさ若しくは形状に形成することによって、ペースト漏れは防止できる。
このような開閉溝21,22又は開閉孔23を有するペースト注出器1は、充填室9にペーストが所定量充填されたならば、充填器26の充填を停止し、充填作業が終了する。充填作業が終了した状態では、弾性シールリング15の開閉溝21は前方側がペーストに閉塞され、実質的に閉状態となっている。よって、充填室9への空気の流入は防止される。
充填作業が終了した後、シリンダ2にノズル本体4がセットされる。
このペーストの充填作業については、弾性シールリング15のリング本体15aは、先端が捩じれようとしても、補強部15cの存在で捩じれが軽減される。また、リング本体15aの厚さが小さく形成されているので、摩擦抵抗が低減されてプランジャ3の後退移動が円滑になる。
プランジャ3の押圧時では、ノズル10の面積と比べて、十分に面積の大きな充填室9からノズル10にペーストが流出される。したがって、充填器26によって充填されるときよりも、ペースト注出時のほうが内部圧力は増大する。よって、プランジャ3及び弾性シールリング15には充填時よりも大きな圧力が負荷する。プランジャ3を前方に押圧すると、弾性シールリング15は、ペーストの内部圧力により、後面側に押圧される。ペーストは、ノズル10から注出され、開閉溝21からも流出されようとするが、弾性シールリング15は、ペーストと環状凹溝14の後面(円板16)との間で圧縮力を受ける。弾性体である弾性シールリング15は突部15bが後面側に押されて、突部15bの高さが小さくなる一方、その分だけ広がる。
また、プランジャ3の前進移動に際に、弾性シールリング15のリング本体15aは、先端が後方側へ捩じれようとしても、補強部15cの存在で捩じれが小さく、リング本体15aの厚さを小さくできる。よって、接触面積が少なくなり、摩擦抵抗が低減されてプランジャ3の押し込みが容易になる。
しかしながら、弾性シールリング15は、プランジャ3の前方への移動によって、プランジャ3とともに前方へ摺動されるが、シリンダ2の内面との密着力によって、もとの位置に留まろうとする摺動反力を有し、加えて、弾性シールリング15は、弾性変形をもとの形状に戻す復元力を有する。
したがって、プランジャ3の停止後は、弾性シールリング15はプランジャ3を後方側へ押し返す力が働き、実際に、プランジャ3が後方へ押し戻される。すなわち、弾性シールリング15は、摺動反力及び復元力によってプランジャ3を押し戻し、リング本体15a及び突部15bは弾性変形した反力によって、もとの形状に戻ろうとする。特に、本実施形態における弾性シールリング15は、突部15bの部分の弾性変形が大きいので、効果的にプランジャ3を後方へ押し戻す。
詳しくは、ペーストの注出後において、注出口5側を上方に向けてペースト注出器1を静置したが、ノズル10からのペーストの漏れ出しは認められなかった。
なお、シリンダ2内から空気を排除することによって、ペースト注出器1の本来の目的であるペースト注出器1の操作者が、シリンダ2の先端方向に所望程度に押すと、その充填室9に充填されるペーストの内圧が高まり、それに応じて、必要量のペーストを注出口11から押し出すための操作性の効果を、より高めることができる。
本発明の注出器における補強部に関し、以下のような試験を行った。
使用した注出器1は、図1〜3に示された構造であり、さらに、シリンダ2が透明で内部の様子が観察可能なシリンジ型のペースト注出器1を使用して、以下の試験を行った。
ペースト注出器に充填するペーストとしては、温度23℃の条件で、
測定装置;ボーリン社製CVO120型レオメーター
測定治具;φ20mm、角度0°のプレート
クリアランス;500μm
剪断速度;10秒−1で測定した粘度が730ポイズである光硬化型の歯牙修復材ペース
トを使用した。
プランジャ3は、環状凹溝14の幅が3mm(弾性シールリング15の無負荷状態における全体の厚み(突起を含む)に対して1.3倍の長さ)、深さが1.2mm(シリンダ2の内径の15%の長さ)のものを使用した。
上述したペースト注出器1に以下の弾性シールリングを試験に用いた。
弾性シールリング15のリング状主部15aは、直径d1(図4のB参照)が8.2mm、環幅w1が1.5mm、厚さt1が1.2mm、補強部15cは、直径d2が7.2mm、環幅w2が1.0mm、厚さt2が0.6mmである。突起15bは、プランジャ3の後壁側に形成し、直径1.5mmの半円状で形成し、突起15bの高さは、0.5mm(15aと15cを足した厚みに対して28%の長さ)のものを用い、突起15bの形成個数は8個であり、それぞれは、外周が真円で、先端は上方に弧を描いた形状である。また、突起15bのそれぞれの最高部は、弾性シールリング15の後面において、環幅の中央をとおる円周上に位置させた。また、図9にて説明した弾性シールリングのように、内周面側に開閉溝を形成したものを用いた。
弾性シールリング15の材質は、弾性体のフッ素系エラストマーを使用した。このうち、弾性シールリング15のショア硬度を変化させて、試験を行った。
詳しくは、実施例1についてショア硬度を(30)、実施例2について(40)、実施例3について(50)、実施例4について(60)、実施例5について(90)、実施例6について(95)と硬度を変えて試験を行った。
その結果を表1に示す。
プランジャの押出し感は、従来(補強部の部分をリング本体と同じ径にしたもの)よりも軽くなったものを○、やや軽くなったものを△、従来通りのものを×と判定した。
実施例1〜6の全ての弾性シールリングについて、プランジャからの充填時におけるペースト漏れは発見されず、プランジャの押出し感も軽くなった。ただし、実施例6については、押出し時におけるプランジャからの漏れが確認された。弾性シールリングのショア硬度の影響と考えられる。
上記実施例3で用いたショア硬度(50)の弾性シールリングの補強部の直径と環幅の小さいものを形成した。詳しくは、実施例7の弾性シールリングでは、補強部の直径を7.2mmから6.2mmとし環幅を1mmから0.5mmとし、実施例8の弾性シールリングでは、補強部の直径を5.8mm、環幅を0.3mmとした。
その結果、実施例7,8共に押出し感は良好であったが、実施例8の弾性シールリングでは、僅かに充填時のプランジャ側からのペースト漏れが確認された。補強部の環幅については、ある程度の環幅が必要とされることが確認できた。
上記実施例3で用いたショア硬度(50)の弾性シールリングに対して、実施例9では突部と開閉溝のないものを用い、実施例10では開閉溝のみを省略した。その結果、実施例9,10の弾性シールリングは、ともにプランジャ側からのペースト漏れが確認されず、押出し感も良好であった。
上記実施例3で用いたショア硬度(50)の弾性シールリングに対して、突部のみを省略した。その結果、実施例11の弾性シールリングは、プランジャ側からのペースト漏れが確認されず、押出し感も良好であった。
比較例1の弾性シールリングは、実施例3の弾性シールリングに対して補強部を省略し、比較例2の弾性シールリングは、実施例3の弾性シールリングに対して補強部を省略し、リング本体を補強部まで延ばし、厚みを1.8mmとした。比較例3の弾性シールリングは、実施例3の弾性シールリングに対して補強部と開閉溝を省略した。その結果、補強部が無く厚みの小さい比較例1、比較例3の弾性シールリングからはプランジャ側からのペースト漏れが確認された。また、比較例3の厚味の大きい弾性シールリングは、プランジャ側からのペースト漏れが確認されなかったが、押出し感が悪い結果となった。
例えば、上記第1の実施形態では、注出器1の弾性シールリング15のリング本体15aの前端面から前方側に延出する補強部15cを形成したが、補強部はリング本体の後端面に形成してもよく、前端面と後端面の両面に形成してもよい。
2 シリンダ
3 プランジャ
4 ノズル本体
5 注出口
9 充填室
10 ノズル
13 円錐部(押圧部)
14 環状凹溝
15 弾性シールリング
15a リング状主部
15b 突部
15c 補強部
16 円板
Claims (8)
- 前端に流体の注出口が形成され、後端に開口部が形成されているシリンダと、
該シリンダの前記開口部から挿嵌され、流体の充填室を前記シリンダとともに形成するプランジャと、
該プランジャに装着され、前記充填室側と前記開口部側への流体の流通を阻止する弾性シールリングとを備え、
前記プランジャには、該プランジャの前進時に流体を押圧する押圧部と、該押圧部の後側に隣接し、前記弾性シールリングを装着する環状凹溝とを備えた注出器において、
前記弾性シールリングには、該弾性シールリングのリング状主部の前端面及び/又は後端面から延出する補強部を形成し、
該補強部は、前記環状凹溝の内周面に接触し、前記シリンダの内周面とは非接触となるように形成したことを特徴する注出器。 - 前記弾性シールリングには、該弾性シールリングの前記リング状主部の前記前端面から延出する補強部を形成した請求項1に記載の注出器。
- 前記弾性シールリングの前記リング状主部は、横断面が四角形であり、前記前端面及び前記後端面は平面である請求項1又は2に記載の注出器。
- 前記弾性シールリングには、前記シリンダの軸方向に一端側から他端側へ抜ける開閉溝若しくは開閉孔が形成され、
前記充填室への流体の注入時に、前記開閉溝若しくは開閉孔が空気の流通を許容し、前記流体の注出時には、前記弾性シールリングの弾性変形によって、前記開閉溝若しくは開閉孔が閉塞し、前記流体の流通を阻止するようにした請求項1〜3のいずれかに記載の注出器。 - 前記環状凹溝の前記シリンダの軸方向における溝幅は、前記弾性シールリングの前記シリンダの軸方向における幅よりも大きく形成されている請求項1〜4のいずれかに記載の注出器。
- 前記弾性シールリングの前記リング状主部の前記後端面には、前記環状凹溝の後端面側に突出する突部を形成したことを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載の注出器。
- 前記弾性シールリングのショア硬度が30〜95の範囲である請求項1〜6のいずれかに記載の注出器。
- 前記流体が歯科用のペースト材である請求項1〜7のいずれかに記載の注出器。
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