発明の詳細な説明
本発明の実施形態は、HER3活性化の検出に基づいて、癌の診断、予後予測および処置を容易にするためのシステムおよび方法を提供する。特定の実施形態は、癌を有する被験体由来の生物学的サンプルにおける活性化HER3タンパク質の量のレベルを測定することを含む。
定義および略語
特に指示がない限り、本明細書で使用される場合、用語「約」は、該用語により修飾される値を上回るかまたは下回る範囲が10%を超えない値を指す。例えば、用語「約5μg/kg」は、4.5μg/kg〜5.5μg/kgの範囲を意味する。別の例として、「約1時間」は、48分間〜72分間の範囲を意味する。
本明細書で使用される場合、用語「活性化HER3」は、下流シグナル伝達経路を開始させることができる分子形態のHER3を指す。例えば、活性化形態のHER3としては、HER2/HER3ヘテロ二量体、リン酸化HER3、およびPI3Kと複合体化したHER3が挙げられる。例えば、活性化HER3は、HER2−HER3ヘテロ二量体の形成、HER3のリン酸化、または活性化HER3タンパク質へのPI3Kの動員を測定することによって検出され得る。リン酸化HER3は、1289位のチロシン残基で、またはいくつかのさらなるチロシン残基の1つもしくはそれよりも多くでリン酸化され得る。加えて、活性化HER3は、活性化HER3タンパク質(すなわち、シグナル伝達経路の下流のタンパク質)と会合する他のタンパク質の動員および/またはリン酸化を検出することによって検出され得る。
本明細書で使用される場合、用語「抗体」は、特定の空間的および極性的構成の別の分子に特異的に結合し、したがって前記分子と相補的なものと定義される免疫グロブリンを意味する。抗体は、モノクローナル、ポリクローナルまたは組換え抗体であり得、当技術分野で周知の技術、例えば宿主の免疫および血清の回収により(ポリクローナル抗体)、または継代ハイブリッド細胞株を調製し、分泌タンパク質を回収することにより(モノクローナル抗体)、または天然抗体の特異的結合に必要なアミノ酸配列を少なくともコードするヌクレオチド配列またはその突然変異誘発変種(mutagenized version)をクローニングおよび発現させることにより調製され得る。抗体は、完全免疫グロブリンまたはその断片を含み得、これらの免疫グロブリンとしては、IgA;IgD;IgE;IgG1、IgG2a、IgG2b、およびIgG3;IgMなどの様々なクラスおよびアイソタイプが挙げられる。その断片としては、Fab、FvおよびF(ab’)2、Fab’などが挙げられ得る。抗体はまた、単鎖抗体もしくはその抗原結合断片、キメラ抗体、ヒト化抗体、または当業者に公知の任意の他の抗体誘導体であって、特定の結合部位に対して特異的な結合活性を保持する抗体誘導体であり得る。加えて、適切な場合は、特定の結合部位に対する結合親和性が維持される限りにおいて、免疫グロブリンまたはその断片の凝集体、ポリマーおよびコンジュゲートが使用され得る。放出可能な分子タグ(下記)を用いるようなアッセイを含め、イムノアッセイに使用される抗体および抗体誘導体を作製および選択する際の指針は、容易に入手可能な教科書およびマニュアル、例えば、Harlow and Lane,1988,Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,New York;Howard and Bethell,2001,Basic Methods in Antibody Production and Characterization,CRC Press;Wild,ed.,1994,The Immunoassay Handbook,Stockton Press,New Yorkに見られ得る。
「抗体組成物」は、上に定義した抗体であって、標識または他の化学部分への結合によってさらに改変された抗体を指す。
「抗体結合組成物」は、本明細書では、分子に結合する1つまたはそれを超える抗体または抗原結合断片を含む分子または分子複合体であって、その結合特異性がこのような抗体または抗体結合断片に由来する分子または分子複合体を指すために使用される。抗体結合組成物としては、限定されないが、(i)第1の抗体が標的分子に特異的に結合し、第2の抗体が該第1の抗体の定常領域に特異的に結合する抗体対;標的分子と、ビオチン部分を介して、分子タグまたは光増感剤などの部分により誘導体化されたストレプトアビジンタンパク質とに特異的に結合するビオチン化抗体;(ii)標的分子に対して特異的であり、デキストランなどのポリマーにコンジュゲートし、ポリマーが、共有結合により直接的に、またはストレプトアビジン−ビオチン結合を介して間接的に、分子タグまたは光増感剤などの部分により誘導体化されている抗体;(iii)標的分子に特異的であり、ビーズ、もしくはマイクロビーズ、または他の固相支持体にコンジュゲートし、ビーズ、もしくはマイクロビーズ、または他の固相支持体が、分子タグもしくは光増感剤、または後者を含有するポリマーなどの部分により直接的または間接的に誘導体化されている抗体が挙げられる。
「抗原決定基」または「エピトープ」は、本明細書では、単一の抗体分子が結合する分子(通常はタンパク質)の表面上の部位を指すために互換的に使用される。一般に、タンパク質は、数個または多くの異なる抗原決定基を有し、異なる特異性を有する抗体と反応する。1つの好ましい抗原決定基は、タンパク質のリン酸化部位である。
本明細書で使用される場合、用語「態様」および「実施形態」は、互換的に使用される。
「結合化合物」は、本明細書では、抗体結合組成物、抗体、ペプチド、細胞表面受容体に対するペプチドリガンドもしくはペプチド以外のリガンド、タンパク質、オリゴヌクレオチド、ペプチド核酸などのオリゴヌクレオチド類似体、レクチン、あるいは標的タンパク質もしくは標的分子、またはタンパク質複合体などの目的の分析物との安定的な複合体形成物に特異的に結合することができる他の任意の分子実体を指すものとする。一態様では、以下の式により表され得る結合化合物は、結合部分に結合している1つまたはそれを超える分子タグを含む。
「結合部分」は、分子タグを直接的または間接的に結合させ得る任意の分子であって、分析物に特異的に結合することができる分子を指す。結合部分としては、限定されないが、抗体、抗体結合組成物、ペプチド、タンパク質、核酸、ならびに最大約1000ダルトンの分子量を有する有機分子であって、水素、炭素、酸素、窒素、硫黄、およびリンからなる群より選択される原子を含有する有機分子が挙げられる。好ましくは、結合部分は、抗体または抗体結合組成物である。
本明細書で使用される場合、「癌」および「癌性」は、典型的には、制御不能の細胞増殖を特徴とする生物(哺乳動物を含む)の生理的状態を指すか、または前記生理的状態を表す。癌の例としては、限定されないが、癌腫、リンパ腫、芽腫、肉腫および白血病が挙げられる。このような癌のより具体的な例としては、扁平上皮癌腫、肺癌、例えば、小細胞肺癌または非小細胞肺癌、;消化器癌、膵臓癌、神経膠芽腫、子宮頚癌、卵巣癌、肝臓癌(liver cancer)、膀胱癌、肝癌(hepatoma)、乳癌、結腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌腫、唾液腺癌腫、腎臓癌、前立腺癌、外陰癌、甲状腺癌、肝癌腫、および様々な種類の頭頚部癌が挙げられる。
「化学療法剤」は、癌を処置するのに使用される化学物質、主に、細胞傷害剤または細胞増殖抑制剤を意味する。化学療法剤は、それらが抗癌効果を及ぼすように作用する特定のタンパク質標的(例えば、HER2、HER3)を有し得る。化学療法剤としては、本明細書に記載されるパクリタキセルなどの化合物が挙げられる。
本明細書で使用される語句「切断可能な結合」は、切断可能な結合で結合部分に連結されている分子タグの構造を分解せず、その検出特性に影響も与えない条件下で切断され得る化学結合基を指す。
「切断誘導部分」または「切断剤」は、本明細書では、(1)例えば、酸化により切断可能な結合を切断することができる活性種をもたらす基、および(2)例えば、還元によって切断可能な結合を直接切断し得る化合物を指すために互換的に使用される。好ましくは、活性種は、その切断誘導効果がその発生部位の近接距離内においてのみ存在するように、短命の活性を示す化学種である。直接切断可能な結合を切断することができる化学化合物の例は、還元剤、例えばジチオスレイトール(DTT)、ジチオエリスリトール(DTE)、2−メルカプトエタノールまたは水素化ホウ素ナトリウムである。
本明細書で使用される場合、「切断プローブ」は、切断可能な結合を切断することができる活性種をもたらす基である切断誘導部分と、抗体結合組成物、抗体組成物、抗体、ペプチド、細胞表面受容体に対するペプチドリガンドもしくは非ペプチドリガンド、タンパク質(例えば、ビオチンもしくはストレプトアビジン)、オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド類似体(例えば、ペプチド核酸)、レクチンまたは標的タンパク質もしくは標的分子に特異的に結合することができるか、もしくは目的の分析物との安定的な複合体形成(例えば、タンパク質複合体)を有することができる他の任意の分子実体とを含む試薬を指す。
「FFPE」または「ホルマリン固定パラフィン包埋」は、固定(特に、従来のホルマリン固定)パラフィン包埋サンプルである一群の細胞またはある量の組織を指す。このようなサンプルは、典型的には、限定されないが、顕微鏡スライドまたは同等の表面にマウントした固定組織の薄切片(例えば、厚さ3〜10μm)の形態で、受容体複合体のアッセイで使用される。このようなサンプルはまた、典型的には、アッセイ測定の一環としてまたはその準備として、従来の再水和手順を受け、場合により抗原回復手順を受ける。いくつかの実施形態では、切片は、正電荷のガラス面上に切断された固定組織の厚さ約5μmの切片である。
特定の代替実施形態では、本明細書で使用される場合、「〜を上回るかまたはそれと同等の」(すなわち、≧または>=)は、「〜を上回る」(>)を意味し得る。また、特定の代替実施形態では、本明細書で使用される場合、「〜を下回るかまたはそれと同等の」(すなわち、≦または<=)は、「〜を下回る」(<)を意味し得る。
本明細書で使用される場合、「ハザード比」は、相対リスクの推定値を作成するのに使用される統計的方法を指す。「ハザード比」は、ある群について予測されるハザードと、別の群について予測されるハザードとの比である。例えば、疾患の遠隔再発期間を延長させるためにHER3作用剤が有効であるか否かについて、HER3作用剤で処置された患者集団を、HER3作用剤で処置されていない患者集団と対比して評価することができる。次いで、ハザード比を、独立した尺度(例えば、活性化HER3と全HER3との比)と比較することができる。ハザード比が1未満となる活性化HER3と全HER3との比では、HER3作用剤による処置が有効である可能性が高い。ハザード比が1と区別できない活性化HER3と全HER3との比では、HER3作用剤による処置が有効である可能性が低い。
「HER1」、「Her1」、「Her−1」、「EGFR」、「ErbB1」などは、本明細書では、ネイティブなHER1、ならびに例えばCohenら、1980,J.Biol.Chem.255:4834−42およびGenBankアクセッション番号NM_005228(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/NM_005228を参照のこと)に記載されているようなその対立遺伝子変異体を指すために互換的に使用される。特に指示がない限り、用語「HER1」、「Her1」、「Her−1」、「EGFR」、「ErbB1」などは、本明細書で使用される場合、ヒトタンパク質を指す。HER1をコードする遺伝子は、本明細書では、「erbB1」と称される。本明細書で使用される場合、H1Tは、全HER1発現を指すものである。
「Her−2」、「ErbB2」、「c−Erb−B2」、「HER2」、「Her2」および「neu」は、本明細書では互換的に使用され、ネイティブなHer−2、ならびに例えばSembaら、1985,Proc.Nat.Acad.Sci.USA 82:6497−650およびYamamotoら、1986,Nature 319:230−234およびGenebankアクセッション番号X03363に記載されているようなその対立遺伝子変異体を指す。特に指示がない限り、用語「Her−2」、「ErbB2」、「c−Erb−B2」、「HER2」および「Her2」は、本明細書で使用される場合、ヒトタンパク質を指す。Her2をコードする遺伝子は、本明細書では、「erbB2」と称される。本明細書で使用されるH2Tは、全Her−2発現を指すものである。HER2/HER3ヘテロ二量体は、H23DまたはH2/3と称され得る。
本明細書で使用される場合、「HER2作用剤」または「HER2ターゲティング治療」は、HER2またはHER2発現細胞またはHER2陽性癌細胞の生物学的活性を阻害し得る化合物を指す。このような生物学的活性としては、限定されないが、二量体化、自己リン酸化、別の受容体のリン酸化または別の受容体によるリン酸化、シグナル伝達などが挙げられる。生物学的活性としては、限定されないが、細胞の生存および細胞の増殖を挙げることができ、HER2作用剤によるこのような活性の阻害は、直接的または間接的な細胞殺傷(例えば、抗体依存性細胞傷害(ADCC))、タンパク質複合体もしくは複合体形成の破壊、タンパク質輸送の調節、または酵素阻害をもたらし得る。生物学的活性はまた、本出願に記載される患者反応を含み得る。本明細書で使用されるように、HER2作用剤は、HER2と、HER2に結合することができるリガンドとの相互作用を妨害、遮断、低減または調節することができる分子を包含すると認識されよう。HER2作用剤としてはまた、HER2および他の生物学的標的を阻害する二重特異性剤(例えば、二重特異性抗体または二重キナーゼ阻害剤)が挙げられる。例示的なHER2ターゲティング剤としては、限定されないが、BIBW2992、HKI−272、4D5、ペルツズマブ、トラスツズマブ、トラスツズマブ エムタンシン、AEE−788およびラパチニブが挙げられる。
「Her−3」、「ErbB3」、「c−Erb−B3」、「HER3」および「Her3」は、本明細書では互換的に使用され、ネイティブなHER3、ならびに例えばKraus,M.H.,Issing,W.,Miki,T.,Popescu,N.C.,and Aaronson,S.A.(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86,9193−9197、Plowman,G.D.,Whitney,G.S.,Neubauer,M.G.,Green,J.M.,McDonald,V.L.,Todaro,G.J.,Shoyab,M.(1990)Proc.Natl.Acad.Sci USA 87,4905−4090およびGenBankアクセッション番号NM_001005915およびNM_001982に記載されているようなその対立遺伝子変異体を指す。特に指示がない限り、用語「HER3」、「Her3」、「Her−3」、「ErbB3」などは、本明細書で使用される場合、ヒトタンパク質を指す。HER3をコードする遺伝子は、本明細書では、「erbB3」と称される。本明細書で使用されるH3Tは、全HER3発現を指すものである。HER2/HER3ヘテロ二量体は、H23DまたはH2/3と称され得る。
本明細書で使用される場合、「HER3作用剤」または「HER3ターゲティング治療」は、HER3またはHER3発現細胞またはHER3陽性癌細胞の生物学的活性を阻害し得る化合物を指す。このような生物学的活性としては、限定されないが、二量体化、自己リン酸化、別の受容体のリン酸化または別の受容体によるリン酸化、シグナル伝達などが挙げられる。生物学的活性としては、限定されないが、細胞の生存および細胞の増殖を挙げることができ、HER3作用剤によるこのような活性の阻害は、直接的または間接的な細胞殺傷(例えば、抗体依存性細胞傷害(ADCC))、タンパク質複合体もしくは複合体形成の破壊、タンパク質輸送の調節、または酵素阻害をもたらし得る。生物学的活性はまた、本出願に記載される患者反応を含み得る。本明細書で使用されるように、HER3作用剤は、HER3と、HER3に結合することができるリガンドとの相互作用を妨害、遮断、低減または調節することができる分子を包含すると認識されよう。HER3作用剤としてはまた、HER3および他の生物学的標的を阻害する二重特異性剤(例えば、二重特異性抗体または二重キナーゼ阻害剤)が挙げられる。例示的なHER3作用剤としては、限定されないが、HER3、PI3K、Akt、mTOR、ERK1/2またはPYK2にターゲティングされる大分子(例えば、抗体)または小分子(例えば、小分子キナーゼ阻害剤)が挙げられる。例えば、HER3ターゲティング剤としては、限定されないが、(HER2に結合するが、HER2−HER3ヘテロ二量体形成を遮断する)U3−1289/AMG888、MM−121/SAR256212、MM−111、MEHD7945A、AZD−8931、LJM716、Av−203およびペルツズマブが挙げられる。
本明細書で使用される場合、「HER3/PI3K複合体」は、ホスファチジルイノシチド3−キナーゼのp85調節サブユニット(p85)が結合した活性化HER3を指す。HER3は、PI3K/Akt経路を直接活性化し得る主なHERファミリーメンバーである。一般に、HER3は、別のHERタンパク質(例えば、HER2)と二量体化すると活性化され、このタンパク質の細胞質ドメインにおけるチロシンがリン酸化される。これらのリン酸化チロシン残基がp85−PI3K結合の動員部位として作用して、PI3Kの触媒サブユニット(p110−PI3KCa)を活性化し、今度はこれが、PI3K/Akt経路を介した細胞内シグナル伝達につながる。本明細書で使用されるHER3/PI3K複合体は、「HER3−PI3キナーゼ」と称され得る。
本明細書で使用される場合、「HER3陽性」または「活性化HER3」癌、癌細胞、被験体または患者は、高レベルの活性化HER3を有する癌細胞、被験体または患者を指す。
語句「活性化HER3と全HER3との比」は、当業者に利用可能な任意の単一定量法にしたがって、被験体の組織(例えば、腫瘍)由来のサンプルにおける活性化HER3分子の量をHER3の総量で割ったものを表す尺度を指す。
「高」は、通常を上回る尺度、標準(例えば、所定尺度またはサブグループ尺度)を上回る尺度、または別のサブグループ尺度を比較的上回る尺度を指す。例えば、高全HER3は、正常細胞/健常細胞で、またはあるいは特定の癌細胞で通常観察されるHER3尺度を上回るHER3尺度を指す。例えば、高HER3は、特定のサンプル(健常または腫瘍)セットにおける通常の平均的なHER3尺度の中央値を上回るHER3尺度を意味する。高HER3はまた、所定の尺度(例えば、所定のカットオフ)と同等であるかまたはそれを上回る尺度を指し得る。高HER3はまた、高HER3サブグループが、別のサブグループよりも比較的高レベルのHER3を有するHER3尺度を指し得る。例えば、限定されないが、本明細書によれば、数学的に決定したポイント(例えば限定されないが、中央値)付近でサンプルを分割して、その尺度が高い(すなわち、中央値よりも高い)サブグループおよびその尺度が低い別のサブグループを作り出すことにより、2つの異なる患者サブグループを作り出すことができる。当業者に既知の任意の方法、例えば、限定されないが、VeraTag(登録商標)を使用して、または任意の標準的な免疫組織化学(IHC)法を使用して、HER3を測定することができる。
別の例として、高活性化HER3は、特定の生物学的サンプル(健常細胞/正常細胞または腫瘍サンプル)セットで観察される活性化HER3尺度を上回る活性化HER3尺度を指す。高活性化HER3はまた、所定の尺度(例えば、所定のカットオフ)を上回る尺度を指し得る。高活性化HER3はまた、高活性化HER3サブグループが、別のサブグループよりも比較的高レベルの活性化HER3を有する活性化HER3尺度を指し得る。活性化HER3は、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)、生物発光共鳴エネルギー移動(BRET)、近接ライゲーションアッセイ(PLA)、二量体特異的抗体またはVeraTag(登録商標)(Monogram Biosciences,CA)などの当技術分野で公知の方法、または当業者に周知の任意の他の方法によって測定され得る。
一部の場合では、「高」発現レベルは、非常に高い発現範囲と、「中程度に高い」発現範囲とを含み得、この場合、中程度に高いとは、通常を上回るが「非常に高い」を下回る発現レベルである。別の例として、高活性化HER3と全HER3との比は、活性化HER3の1つまたはそれを超えるサブグループと全HER3との比であって、低比サブグループを上回る尺度を有する比を指し得る。
本明細書で使用される場合、「中程度に高い」、「中間」または「中」は、「低」を上回るが「高」を下回る尺度を指す。例えば、「中」は、全HER3および活性化HER3と全HER3との比に関する中範囲の尺度に該当するサブグループの1つまたはそれよりも多くを表すのに使用され得る。
本明細書で使用される場合、「〜する可能性が高い」は、項目、対象、事柄または個人が現れる確率が高いことを指す。したがって、一例では、HER3作用剤(例えば、セツキシマブ)による処置に対して反応する可能性が高い被験体は、参照被験体または被験体群と比べて、HER3作用剤による処置に対して反応する確率が高い。
本明細書で使用される場合、「長い」は、通常を上回る時間尺度、標準(例えば、所定の尺度)を上回る時間尺度、または別のサブグループ尺度よりも比較的長いサブグループ尺度を指す。例えば、患者の寿命に関して、長い無増悪期間は、同じ種類の癌を有する被験体で観察される通常の無増悪期間または平均的な無増悪期間または無増悪期間の中央値よりも長い無増悪期間を指す。無増悪期間が長いか否かは、当業者に利用可能な任意の方法により決定することができる。長いとは、例えば、無増悪を含み得る。一実施形態では、「長い」は、疾患において重大事象が起こるのに必要な時間経過の中央値よりも長い時間を指す。
「低」は、通常を下回る尺度、標準(例えば、所定の尺度)を下回る尺度、または別のサブグループ尺度を比較的下回るサブグループ尺度を指す用語である。例えば、低全HER3は、正常細胞/健常細胞で、またはあるいは特定の癌細胞で通常観察されるHER3尺度を下回るHER3尺度を指す。例えば、低HER3は、特定のサンプル(健常または腫瘍)セットにおける通常の平均的なHER3尺度の中央値を下回るHER3尺度を意味する。低HER3はまた、所定の尺度(例えば、所定のカットオフ)を下回る尺度を意味し得る。低HER3はまた、低HER3サブグループが、別のサブグループよりも比較的低い尺度を意味し得る。例えば、限定されないが、本明細書によれば、数学的に決定したポイント(例えば限定されないが、中央値)付近でサンプルを分割して、その尺度が高い別のグループと比べてその尺度が低い(すなわち、中央値よりも低い)グループを作り出すことにより、2つの異なる患者サブグループを作り出すことができる。当業者に既知の任意の方法、例えば、限定されないが、VeraTag(登録商標)アッセイを使用して、または任意の標準的な免疫組織化学(IHC)法を使用して、HER3を測定することができる。
別の例として、低活性化HER3は、特定の生物学的サンプル(健常細胞/正常細胞または腫瘍サンプル)セットで観察される通常の活性化HER3尺度を下回る活性化HER3尺度を意味する。低活性化HER3はまた、所定の尺度(例えば、所定のカットオフ)を下回る尺度を意味し得る。低活性化HER3はまた、低活性化HER3サブグループが、別のサブグループよりも比較的小さい尺度を意味し得る。HER3含有二量体(例えば、HER2/HERヘテロ二量体)は、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)、生物発光共鳴エネルギー移動(BRET)、近接ライゲーションアッセイ(PLA)、二量体特異的抗体またはVeraTag(登録商標)などの当技術分野で公知の方法、または当業者に周知の任意の他の方法によって測定され得る。別の例として、低活性化HER3と全HER3との比は、活性化HER3の1つまたはそれを超えるサブグループと全HER3との比であって、中比サブグループまたは高比サブグループを下回る尺度を有する比を指し得る。低活性化HER3と全HER3との比は、当業者に利用可能な任意の個々の定量方法により決定することができる。低いHER3発現値の範囲例は、本明細書に示されている。
本明細書で使用される場合、「分子タグ」は、分離される分子間における1つまたはそれを超える物理的、化学的または光学的差異(限定されないが、電気泳動移動度、分子量、形状、溶解性、pKa、疎水性、電荷、電荷/質量比、極性などを含む)に基づき、他の分子と区別することができる分子を指す。一態様では、複数の分子タグまたは分子タグのセットは、電気泳動移動度および光学的検出特性において異なり、電気泳動により分離することができる。別の態様では、複数の分子タグまたは分子タグのセットは、分子量、形状、溶解性、pKa、疎水性、電荷、極性において異なり得、正相HPLCもしくは逆相HPLC、イオン交換HPLC、キャピラリー電気クロマトグラフィー、質量分析、気相クロマトグラフィーまたは類似技術により分離することができる。本明細書に記載されるように、VeraTag(登録商標)レポーター分子は、分子タグの一種である。
本明細書で使用される場合、「最適カットオフ」は、2つの属性カテゴリー間の最良の区別を可能とする特定の属性を示す被験体についての所定の尺度の値を指す。例えば、最適カットオフ値を見出すことにより、2つのカテゴリー(例えば、高H3T発現および低H3T発現)間の最良の区別が可能になる。予測モデルを最適化するための(例えば限定されないが、モデルの特異性を最大化するための、モデルの感度を最大化するための、転帰の差異を最大化するための、またはハザード比もしくは反応の差異によるp値を最小化するための)最適カットオフよりも低い値または高い値を有する被験体を分離するために、最適カットオフを使用する。
「全生存期間」または「OS」は、処置の開始から死亡または打切までに測定される期間を指す。打切は、試験の終了によってもたらされ得るか、または処置の変更によってもたらされ得る。全生存期間は、例えば、特定の時点(処置の開始から死亡または打切までの期間)で生存している確率(例えば、キャプラン−マイヤープロットで表した場合の確率)を指し得る。
「光増感剤」は、光により活性化されると、酸素分子を一重項酸素に変換する光吸収分子を意味するものとする。
「RECIST」は、「固形腫瘍の治療効果判定のためのガイドライン(Response Evaluation Criteria in Solid Tumours)」を表す頭字語を意味するものとし、処置中に、癌患者が改善する場合(「反応」)、同じ状態にとどまる場合(「安定」)、または悪化する場合(「増悪」)を定義する公表規則のセットである。RECIST基準により定義される反応は、例えば、Journal of the National Cancer Institute,Vol.92,No.3,2000年2月2日において公表されており、RECIST基準は、他の類似の公表定義および規則のセットを含み得る。当業者であれば、「PR」、「CR」、「SD」、および「PD」などの本明細書で使用されるRECIST基準に準拠する定義を理解するであろう。
「相対ピーク面積」または「RPA」は互換的に使用され、特定のVeraTag(登録商標)レポーター分子の蛍光測定値と、既知の一定濃度の既知の内部蛍光標準の蛍光測定値との比を指すものとする。
本明細書で使用される場合、処置に対する「反応性」、処置に対して「反応する」、ならびにこの動詞の他の形態は、Her−2作用剤による処置に対する被験体の反応を指す。例として、被験体における腫瘍の増殖が約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%またはそれを超えて遅延する場合、被験体は、Her−2作用剤による処置に対して反応する。別の例では、被験体における腫瘍が、任意の適切な尺度(例えば、質量または容量)により決定したときに約5%、10%、20%、30%、40%、50%またはそれを超えて縮小する場合、被験体は、Her−2作用剤による処置に対して反応する。別の例では、被験体の予測寿命が、処置が行われない場合に予測される予測寿命より約5%、10%、20%、30%、40%、50%またはそれを超えて長い場合、被験体は、Her2作用剤による処置に対して反応する。別の例では、被験体の無病生存期間、全生存期間、または無増悪期間が長い場合、被験体は、Her−2作用剤による処置に対して反応する。上記の通り、RECIST基準を含め、いくつかの方法を使用して、患者が処置に対して反応するかを決定することができる。
用語「サンプル」、「組織サンプル」、「患者サンプル」、「患者の細胞サンプルもしくは組織サンプル」または「試料」はそれぞれ、被験体または患者の組織から得られる同様の細胞のコレクションを指す。組織サンプルの供給源は、新鮮な内臓サンプルもしくは組織サンプル、凍結および/もしくは保存した内臓サンプルもしくは組織サンプル、または生検もしくは吸引物などに由来する固体組織;血液または任意の血液構成成分;脳脊髄液、羊水、腹水、または間質液などの体液;または被験体の妊娠または発達の任意の時点に由来する細胞であり得る。組織サンプルは、保存剤、抗凝固剤、バッファー、固定剤、栄養物、抗生物質などのような、天然の組織と天然では混合しない化合物を含有し得る。細胞は、従来の方法(例えば、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE))により固定することができる。
本明細書で使用される場合、「短い」は、通常よりも短い時間尺度、標準(例えば、所定の尺度)よりも短い時間尺度、または別のサブグループ尺度よりも比較的短いサブグループ尺度を指す。例えば、患者の寿命に関して、短い無増悪期間は、同じ種類の癌を有する被験体で観察される通常の無増悪期間または平均的な無増悪期間または無増悪期間の中央値よりも短い無増悪期間を指す。無増悪期間が短いか否かは、当業者に利用可能な任意の方法により決定することができる。一実施形態では、「短い」は、疾患において重大事象が起こるのに必要な時間経過の中央値よりも短い時間を指す。
本明細書で使用される場合、「重大事象」は、当業者により臨床的に重要であると決定される、患者の疾患における事象を指すものとする。重大事象の例としては、例えば限定されないが、一次診断、死亡、再発、患者の疾患が転移性であるという決定、患者の疾患の再発、または患者の疾患の上記病期のいずれか1つから別の病期への進行が挙げられる。重大事象は、全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)、無病生存期間(DFS)または無増悪期間(TTP)を評価するのに使用される任意の臨床的に重要な事象であり得る。いくつかの重大事象は、当業者により決定される通り、RECISTもしくは他の効果決定基準を使用して決定され得る。
本明細書で使用される場合、用語「被験体」および「患者」は、互換的に使用される。本明細書で使用される場合、用語「1または複数の被験体」は、動物、好ましくは非霊長類(例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ロバ、ヤギ、ラクダ、ネコ、イヌ、モルモット、ラット、マウス、ヒツジ)および霊長類(例えば、サル、例えばカニクイザル、ゴリラ、チンパンジーおよびヒト)を含む哺乳動物を指す。
本明細書で使用される場合、「時間経過」は、初期事象と後続事象との間の期間の量を指すものとする。例えば、患者の癌に関して、時間経過は、患者の疾患に関するものであり得、例えば、RECIST基準または他の反応基準を使用して、疾患の進行における臨床的に重要な事象を判断することにより測定され得る。例えば、初期事象は診断であり得、後続事象は転移であり得る。
「無増悪期間」または「TTP」は、処置の開始から癌の増悪または打切までに測定される期間を指す。打切は、試験の終了によってもたらされ得るか、または処置の変更によってもたらされ得る。無増悪期間はまた、例えば、キャプラン−マイヤープロットによるような確率として表され得、この場合、無増悪期間は、特定の期間(処置の開始から増悪または打切までの期間)にわたって無増悪の可能性を表し得る。
「処置する」、「処置」、およびこの語の他の形態は、作用剤を投与して、癌の増殖を阻害し、癌の重量もしくは容積を縮小させ、被験体の予測生存期間および/または腫瘍の無増悪期間を延長させることなどを指す。
「〜する可能性が低い」は、参照に関して、事象、項目、対象、事柄または患者が現れる確率が低いことを指す。したがって、HER3作用剤による処置に対して反応する可能性が低い被験体は、参照被験体または被験体群と比べて、HER3作用剤による処置に対して反応する確率が低い。
「VeraTag(登録商標)」および「VeraTag(登録商標)アッセイ」は、本明細書では互換的に使用され、単一標識フォーマットおよび多重標識フォーマットの両方の単一イムノアッセイおよび多重化イムノアッセイ、このようなアッセイを実施および利用するための材料、方法および技術(限定されないが、これらのアッセイ(Monogram Biocsiences,CA)に関連する試薬、分析手順およびソフトウェアを含む)を指す。VeraTag(登録商標)アッセイとの関連での標識はVeraTag(登録商標)レポーター分子と称される検出可能な部分である。このようなアッセイは、本出願において、ならびに米国特許第7,648,828号および米国特許出願公開第2010/0143927号;米国特許出願公開第2010/0233732号;および米国特許出願公開第2010/0210034号(これらは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に開示されている。
本明細書で使用される場合、「VeraTag(登録商標)レポーター分子」または「vTag」は、「VeraTag(登録商標)アッセイ(Monogram Biosciences,CA)で使用される抗体に結合される検出可能な部分を指すために使用される。
HER3の分析を含む方法
本発明の態様および実施形態は、HER3活性化の検出に基づいて、癌の診断、予後予測および処置を容易にするためのシステムおよび方法を提供する。特定の実施形態では、前記方法は、癌を有する被験体が、HER3作用剤による処置に対して反応する可能性が高いかを決定すること、ならびに/または癌を有する被験体における疾患の時間経過および/もしくは該疾患の時間経過において重大事象が起こる確率を予測することを含む。特定の実施形態では、前記方法は、活性化HER3を単独で、または本明細書に記載されるHER3作用剤による処置の反応性に関連する他のバイオマーカーと組み合わせて検出すること、および被験体が、該HER3作用剤単独による処置、またはHER3作用剤を別の薬剤(例えば、HER2作用剤)と組み合わせた処置に対して反応するかを決定することを含む。特定の実施形態では、前記方法は、バイオマーカーとしてまたはバイオマーカーの組み合わせで活性化HER3を測定することおよび、癌を有する被験体における疾患の増悪に関連する時間経過、または該疾患の時間経過において重大事象が起こる確率を予測することを含む。いくつかの実施形態では、前記方法は、活性化HER3を測定すること、および被験体に適切な処置(例えば、HER3ターゲティング剤)を決定することを含む。
一態様では、本発明は、腫瘍における活性化HER3の量を測定するための方法であって、(a)腫瘍由来のサンプルを提供すること;(b)前記サンプルにおける全HER3の量、および前記サンプルにおけるHER2−HER3ヘテロ二量体、リン酸化HER3またはHER3/PI3K複合体の少なくとも1つの量を測定すること;ならびに(c)HER2−HER3ヘテロ二量体、リン酸化HER3またはHER3/PI3K複合体の少なくとも1つと、全HER3タンパク質との比を決定することを含む方法を提供する。
別の態様では、本発明は、腫瘍における活性化HER3の量を測定するための方法であって、(a)腫瘍サンプルにおける全HER3の量、および前記サンプルにおけるHER2−HER3ヘテロ二量体、リン酸化HER3またはHER3/PI3K複合体の少なくとも1つの量を測定すること;(b)HER2−HER3ヘテロ二量体、リン酸化HER3またはHER3/PI3K複合体の少なくとも1つと、全HER3タンパク質との比を決定すること;および(c)(i)前記サンプルにおける全HER3の量が、参照集団の全HER3の中央値量を上回る場合、および(ii)HER2−HER3ヘテロ二量体と全HER3との比、前記サンプルにおけるリン酸化HER3と全HER3との比、またはHER3/PI3K複合体の少なくとも1つが、前記参照集団におけるHER2−HER3ヘテロ二量体と全HER3との中央値比、リン酸化HER3と全HER3との中央値比、またはHER3/PI3K複合体と全HER3との中央値比の少なくとも1つを上回る場合、前記腫瘍が多量の活性化HER3を有することを示すことを含む方法を提供する。
別の態様では、本発明は、癌を有する被験体を処置する方法であって、(a)(i)前記被験体由来の腫瘍サンプルにおける全HER3タンパク質の量、およびHER2−HER3ヘテロ二量体、リン酸化HER3またはHER3/PI3K複合体の少なくとも1つの量を測定し、(ii)前記腫瘍サンプルが大量の全HER3タンパク質、およびHER2−HER3ヘテロ二量体、リン酸化HER3またはHER3/PI3K複合体の少なくとも1つを含むかを決定することによって、前記被験体の癌が多量の活性化HER3を有するかを決定すること;(b)HER3ターゲティング治療を前記被験体に行うことを含む方法を提供する。
別の態様では、本発明は、癌を有する被験体を処置する方法であって、(a)前記被験体由来の腫瘍サンプルにおける全HER3タンパク質の量、およびHER2−HER3ヘテロ二量体、リン酸化HER3またはHER3/PI3K複合体の少なくとも1つの量を測定すること;(b)HER2−HER3ヘテロ二量体、リン酸化HER3またはHER3/PI3K複合体の少なくとも1つの量と、全HER3の量との比を決定すること;(c)被験体が、高レベルの活性化HER3を有することを特徴とする癌を有するかを決定すること(ここで、高レベルの活性化HER3は、(i)前記サンプルにおける全HER3の量が、前記被験体と同じ種類の癌を有する被験体の参照集団の全HER3の中央値量を上回ること、および(ii)前記サンプルにおけるHER2−HER3ホモ二量体の量と全HER3の量との比、リン酸化HER1の量と全HER3の量との比、またはHER3−PI3K複合体の量と全HER3の量との比の少なくとも1つが、前記被験体と同じ種類の癌を有する被験体の参照集団におけるHER2−HER3ホモ二量体の量と全HER3の量との中央値比、リン酸化HER3の量と全HER3の量との中央値比、またはHER3−PI3K複合体の量と全HER3の量との中央値比の少なくとも1つを上回ることを含む);ならびに(d)前記被験体の癌が、高レベルの活性化HER3を有することを特徴とする場合、HER3ターゲティング治療を前記被験体に行うことを含む方法を提供する。
別の態様では、本発明は、癌を有する被験体のHER3作用剤に対する反応性を予測するための方法であって、(a)前記被験体由来の腫瘍サンプルにおける全HER3タンパク質の量、およびHER2−HER3ヘテロ二量体、リン酸化HER3またはHER3/PI3K複合体の少なくとも1つの量を測定すること;(b)(i)前記サンプルにおける全HER3の量が、参照集団の全HER3の中央値量を上回る場合、(ii)HER2−HER3ヘテロ二量体と全HER3との比、前記サンプルにおけるリン酸化HER3と全HER3との比、またはHER3/PI3K複合体の少なくとも1つが、前記参照集団におけるHER2−HER3ヘテロ二量体と全HER3との中央値比、リン酸化HER3と全HER3との中央値比、またはHER3/PI3K複合体と全HER3との中央値比の少なくとも1つを上回る場合、前記被験体が、前記HER3作用剤に対して反応する可能性がより高いことを示すことを含む方法を提供する。本発明の特定の態様では、HER3作用剤に対する反応性は、被験体がHER3作用剤で処置されている間、診断または処置の開始と重大事象の発生との間のより長い疾患時間経過を含む。本発明のいくつかの態様では、重大事象は、ある病期からより進行期への癌の進行、転移性疾患への進行、再発、手術または死亡の少なくとも1つを含む。
別の態様では、本発明は、癌を有する被験体のHER3作用剤に対する反応性を予測するための方法であって、(a)前記被験体由来の腫瘍サンプルにおける全HER3タンパク質の量、およびHER2−HER3ヘテロ二量体、リン酸化HER3またはHER3/PI3K複合体の少なくとも1つの量を測定すること;(b)HER2−HER3ヘテロ二量体、リン酸化HER3またはHER3/PI3K複合体の少なくとも1つの量と、全HER3の量との比を決定すること;(c)被験体が、高レベルの活性化HER3を有することを特徴とする癌を有するかを決定すること(ここで、高レベルの活性化HER3は、(i)前記サンプルにおける全HER3の量が、前記被験体と同じ種類の癌を有する被験体の参照集団の全HER3の中央値量を上回ること、および(ii)前記サンプルにおけるHER2−HER3ホモ二量体の量と全HER3の量との比、リン酸化HER1の量と全HER3の量との比、またはHER3−PI3K複合体の量と全HER3の量との比の少なくとも1つが、前記被験体と同じ種類の癌を有する被験体の参照集団におけるHER2−HER3ホモ二量体の量と全HER3の量との中央値比、リン酸化HER3の量と全HER3の量との中央値比、またはHER3−PI3K複合体の量と全HER3の量との中央値比の少なくとも1つを上回ることを含む);ならびに(d)前記被験体の癌が、高レベルの活性化HER3を有することを特徴とする場合、前記被験体は、HER3作用剤に対して反応する可能性がより高いことを示すことを含む方法を提供する。本発明のいくつかの態様では、前記方法は、被験体がHER2陽性癌を有する場合、HER2ターゲティング剤およびHER3ターゲティング剤の共治療に対して被験体が反応する可能性がより高いことを示すことをさらに含み得る。本発明の特定の態様では、HER3作用剤に対する反応性は、被験体がHER3作用剤で処置されている間、診断または処置の開始と重大事象の発生との間のより長い疾患時間経過を含む。本発明のいくつかの態様では、重大事象は、ある病期からより進行期への癌の進行、転移性疾患への進行、再発、手術または死亡の少なくとも1つを含む。
上記各実施形態に関する本発明のさらなる態様および実施形態を以下に記載する。
本発明のいくつかの実施形態では、前記方法は、(i)サンプルにおける全HER3の量が、参照集団の全HER3の中央値量を上回る場合、(ii)HER2−HER3ヘテロ二量体と全HER3との比、前記サンプルにおけるリン酸化HER3と全HER3との比、またはHER3/PI3K複合体の少なくとも1つが、参照集団におけるHER2−HER3ヘテロ二量体と全HER3との中央値比、リン酸化HER3と全HER3との中央値比、またはHER3/PI3K複合体と全HER3との中央値比の少なくとも1つを上回る場合、腫瘍/癌が多量の活性化HER3を有することを示すことをさらに含み得る。本発明の特定の実施形態では、生物学的サンプルまたは腫瘍サンプル中に存在するHER2−HER3ヘテロ二量体、リン酸化HER3およびHER3/PI3K複合体からなる群より選択される少なくとも2つのHER3実体の量を決定することによって、癌/腫瘍における活性化HER3の量を検出する。
本発明のいくつかの実施形態では、HER3リン酸化特異的抗体またはHER3パンホスホ(pan−phospo)抗体を使用することによって、生物学的サンプルまたは腫瘍サンプルにおけるリン酸化HER3の量を検出する。特定の実施形態では、HER3の1289位のチロシン残基でリン酸化されたHER3タンパク質に結合するリン酸化特異的抗体を使用することによって、腫瘍におけるHER3リン酸化の量を検出する。
本発明のいくつかの実施形態では、記載される方法に係る癌/腫瘍は、結腸直腸癌、胃癌、乳癌、黒色腫、卵巣癌、頭頸部癌、肺癌(例えば、非小細胞肺癌)、脳癌、子宮内膜癌、膵臓癌、前立腺癌または子宮頸癌の少なくとも1つを含み得る。一実施形態では、癌は、乳癌である。いくつかの実施形態では、腫瘍は、乳癌を含み得る。いくつかの実施形態では、癌は、転移性または再発性である。いくつかの実施形態では、癌は、早期癌である。あるいは、HER3作用剤に対して感受性であり得る任意の癌を分析またはモニタリングし得る。
いくつかの実施形態では、本発明は、HER3ターゲティング剤の使用に関する。HER3ターゲティング剤は、当業者に公知の任意のこのような薬剤であり得る。特定の実施形態ではHER3ターゲティング剤は、HER3特異的抗体(二重特異性抗体を含む)またはタンパク質キナーゼ阻害剤を含む。特定の実施形態では、HER3ターゲティング剤は、(HER2に結合するが、HER2−HER3ヘテロ二量体形成を遮断する)U3−1289/AMG888、MM−121/SAR256212、MM−111、MEHD7945A、AZD−8931、LJM716、Av−203またはペルツズマブの少なくとも1つである。また、本明細書に記載される方法を使用して、他のHER3ターゲティング剤を評価し得る。
本発明の各方法の特定の実施形態では、少なくとも1つの他のバイオマーカーについて、サンプルを分析し得る。例えば、いくつかの実施形態では、少なくとも1つの他のバイオマーカーも測定し得る。例えば、いくつかの実施形態では、他のバイオマーカーは、全HER2を含み得る。他の実施形態では、少なくとも1つの他のバイオマーカーは、PTEN、MET、STK11、BRAF、KRAS、NRAS、MAP3K1、AKT1、IGF1R、PI3KR1、CCND1、STAT5、FGFR−1およびFGFR−4からなる群より選択される。
特定の実施形態では、前記方法は、被験体の癌由来の生物学的サンプルにおける全HER3および/または活性化HER3の量を検出することを含み、ここで、全HER3および活性化HER3の量が多い場合、患者はHER3作用剤に対して反応する可能性があり、および/または患者は長い時間経過を有する。
したがって、特定の実施形態では、本発明は、被験体由来の生物学的サンプルにおける活性化HER3の量の相対レベルを、前記被験体がHER3作用剤による処置に対して反応する可能性に関する予後予測と相関させるための方法であって、(a)前記被験体の癌由来の生物学的サンプルにおける活性化HER3の量を検出すること;および(b)前記活性化HER3の量を、前記被験体がHER3作用剤による処置に対して反応する可能性に関する予後予測と相関させることを含む方法を含む。
特定の実施形態では、活性化HER3の量が第1のカットオフと同等であるかまたはそれを上回る場合、被験体の予後予測は、HER3作用剤に対して反応する可能性が高いことである。あるいは、活性化HER3の量が第1のカットオフレベルよりも低い場合、被験体の予後予測は、HER3作用剤に対して反応する可能性が低いことである。いくつかの実施形態では、第1のカットオフは、同じ癌を有する被験体の参照集団における活性化Her3の中央値レベルを含む。特定の実施形態では、参照集団における活性化HER3の中央値レベルは、所定の尺度を含む。いくつかの実施形態では、活性化HER3は、全HER3の尺度+HER2/HER3ヘテロ二量体、リン酸化HER3またはHER3/PI3K複合体の少なくとも1つと全HER3との比である。
また、特定の実施形態では、所定の尺度は、複数の被験体サンプルを少なくとも2つのサブグループに分けることによって作り出され、第1のサブグループは、生物学的サンプルにおいて低レベルの全HER3分子を有するサンプルを含み、前記低レベルは、閾値レベル(カットオフ)と同等であるかまたはそれを下回る全HER3分子の量を有することを含み;第2のサブグループは、高レベルの全HER3分子を有するサンプルを含み、前記高レベルは、閾値レベル(カットオフ)を上回る活性化HER3分子の量を有することを含む。前記方法の他の実施形態では、所定の尺度は、HER2/HER3ヘテロ二量体、リン酸化HER3またはHER3/PI3K複合体の量を検出することによって決定される活性化HER3のレベルに基づいて、高レベル全HER3サブグループを少なくとも2つのサブグループに分けることによって作り出される。いくつかの実施形態では、カットオフは、参照集団における中央値である。
特定の実施形態では、前記方法は、被験体の癌由来の生物学的サンプルにおける全HER3および/または活性化HER3の量を検出することを含み、ここで、全HER3および/または活性化HER3の量が多い場合、患者はHER3作用剤に対して反応する可能性があり、および/または患者は長い時間経過を有する。いくつかの実施形態では、活性化HER3を測定する。
他の実施形態では、本発明は、高レベルの活性化HER3を有する癌を有する被験体における疾患時間経過を予測するための方法に関する。他の実施形態では、本発明は、HER3陽性癌を有する被験体における重大事象の確率を予測するための方法に関する。例えば、本発明のいくつかの実施形態は、癌を有する被験体であって、HER3作用剤で処置されている被験体が重大事象を有する可能性が高いかを予測するための方法であって、(a)前記被験体の癌由来の生物学的サンプルにおける全HER3および/または活性化HER3の量を検出する工程;ならびに(b)全HER3および/または活性化HER3の量を、前記被験体が重大事象を有する可能性と相関させる工程を含む方法を含む。いくつかの実施形態では、重大事象は、癌の診断と、ある病期からより進行期への癌の進行、転移性疾患への進行、再発、手術または死亡の少なくとも1つとの間の時間の減少である。また、特定の実施形態では、前記方法は、重大事象が発生し得る時間経過を予測することをさらに含み得る。特定の実施形態では、時間経過は、患者の疾患過程における重大事象間の時間を決定することによって測定され、前記測定は、患者が長い時間経過を有するかの予測因子である。一態様および実施形態では、重大事象は、一次診断から死亡への進行である。別の態様および実施形態では、重大事象は、一次診断から転移性疾患への進行である。また別の態様および実施形態では、重大事象は、一次診断から再発への進行である。別の態様および実施形態では、重大事象は、転移性疾患から死亡への進行である。別の態様および実施形態では、重大事象は、転移性疾患から再発への進行である。別の態様および実施形態では、重大事象は、再発から死亡への進行である。特定の実施形態では、時間経過は、全生存率、無増悪期間に関して、および/またはRECISTもしくは他の反応基準を使用して測定される。
別の実施形態では、本発明は、高レベルの活性化HER3を有する癌を有する被験体が、HER3作用剤による処置に対して反応する可能性があり、および/または長い疾患時間経過を有するかを決定するための方法を含む。
特定の実施形態では、HER3作用剤を含む併用療法を被験体に行い得る。併用療法は、限定されないが、当業者に公知の任意の化学療法剤の1つまたはそれよりも多くと組み合わせたHER3作用剤を含み得る。好ましくは、化学療法剤は、HER3作用剤と異なる作用機構を有する。例えば、化学療法剤は、抗代謝産物(例えば、5−フルオロウラシル(flourouricil)(5−FU)、メトトレキサート(MTX)、フルダラビンなど)、抗微小管剤(例えば、ビンクリスチン;ビンブラスチン;タキサン、例えばパクリタキセルおよびドセタキセル;など)、アルキル化剤(例えば、シクロホスファミド、メルファラン、ビスクロロエチルニトロソ尿素(bischloroethylnitrosurea)など)、白金剤(例えば、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、JM−216、CI−973など)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシン、ダウノルビシンなど)、抗生物質製剤(例えば、マイトマイシンC、アクチノマイシンDなど)、トポイソメラーゼ阻害剤(例えば、エトポシド、カンプトテシンなど)または当業者に公知の他の任意の他の化学療法剤であり得る。
本発明の医薬組成物、剤形およびキットを含む本発明の様々な実施形態に使用され得る化学療法剤の特定の例としては、限定されないが、シタラビン、メルファラン、トポテカン、フルダラビン、エトポシド、イダルビシン、ダウノルビシン、ミトキサントロン、シスプラチン、パクリタキセルおよびシクロホスファミドが挙げられる。
使用され得る他の化学療法剤としては、アバレリクス、アルデスロイキン、アレムツズマブ、アリトレチノイン、アロプリノール、アルトレタミン、アミフォスチン、アナストロゾール、三酸化ヒ素、アスパラギナーゼ、BCG live、ベバシズマブ(bevaceizumab)、ベキサロテン、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、ブスルファン、カルステロン、カンプトテシン、カペシタビン、カルボプラチン、カルムスチン、セレコキシブ、セツキシマブ、クロラムブシル、シナカルセト、シスプラチン、クラドリビン、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダルベポエチンアルファ、ダウノルビシン、デニロイキンジフチトクス、デクスラゾキサン、ドセタキセル、ドキソルビシン、ドロモスタノロン、エリオットB溶液、エピルビシン、エポエチンアルファ、エストラムスチン、エトポシド、エキセメスタン、フィルグラスチム、フロクスウリジン、フルダラビン、フルオロウラシル、フルベストラント、ゲムシタビン、ゲムツズマブオゾガミシン、ゲフィチニブ、ゴセレリン、ヒドロキシウレア、イブリツモマブチウキセタン、イダルビシン、イホスファミド、イマチニブ、インターフェロンアルファ−2a、インターフェロンアルファ−2b、イリノテカン、レトロゾール、ロイコボリン、レバミゾール、ロムスチン、メクロレタミン(meclorethamine)、メゲストロール、メルファラン、メルカプトプリン、メスナ、メトトレキサート、メトキサレン、メチルプレドニゾロン、マイトマイシンC、ミトタン、ミトキサントロン、ナンドロロン、ノフェツモマブ、オブリメルセン、オプレルベキン、オキサリプラチン、パクリタキセル、パミドロネート、ペガデマーゼ、ペガスパルガーゼ、ペグフィルグラスチム、ペメトレキセド、ペントスタチン、ピポブロマン、プリカマイシン、ポリフェプロザン、ポルフィマー、プロカルバジン、キナクリン、ラスブリカーゼ、リツキシマブ、サルグラモスチム、ストレプトゾシン、タルク、タモキシフェン、タルセバ、テモゾロミド、テニポシド、テストラクトン、チオグアニン、チオテパ、トポテカン、トレミフェン、トシツモマブ、トラスツズマブ、トレチノイン、ウラシルマスタード、バルルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビンおよびゾレドロネートが挙げられる。
別の態様では、本発明は、HER3活性化癌を有する被験体が、HER3作用剤に加えて少なくとも1つの化学療法剤による処置に対して反応する可能性が低いか、および/または患者が短い時間経過を有する可能性が高いかを決定するための方法に関する。特定の実施形態では、前記方法は、被験体の癌由来の生物学的サンプルにおけるHER3および/または活性化HER3の量を測定することを含み、HER3および/または活性化HER3のレベルが高いかまたは非常に高い場合、患者は、HER3作用剤に加えて少なくとも1つの化学療法剤による処置に対して反応する可能性が低い。
別の態様では、本発明は、HER3陽性癌を有する被験体が、HER3作用剤に加えて少なくとも1つの化学療法剤による処置に対して反応する可能性が高いかを決定するための方法に関する。特定の実施形態では、前記方法は、被験体の癌由来の生物学的サンプルにおける活性化HER3の量を測定することを含み、活性化HER3のレベルが高い場合、患者は、HER3作用剤に加えて少なくとも1つの化学療法剤による処置に対して反応する可能性が高い。特定の実施形態では、生物学的サンプルは、FFPE組織を含む。特定の実施形態では、癌は、転移性または再発性である。いくつかの実施形態では、HER3作用剤に対して感受性であり得る任意の癌をモニタリングし得る。HER3作用剤は、任意のHER3作用剤であり得る。特定の実施形態では、HER3作用剤は、本明細書に記載される薬剤の1つである。あるいは、当技術分野で公知の他のさらなる化学療法剤を評価し得る。特定の実施形態では、反応可能性または時間経過は、全生存率、無増悪期間に関して、および/またはRECIST基準を使用して測定される。
HER2ターゲティング剤は、当業者に公知の任意のこのような薬剤であり得る。特定の実施形態では、HER2ターゲティング剤は、BIBW2992、HKI−272、4D5、ペルツズマブ、トラスツズマブ、トラスツズマブ エムタンシン、AEE−788またはラパチニブの少なくとも1つであり得る。特定の実施形態では、反応可能性は、全生存率、無増悪期間に関して、および/またはRECIST基準もしくは他の反応基準を使用して測定される。
いくつかの実施形態では、本発明は、生物学的サンプルにおける全HER2タンパク質の量を測定すること、および被験体がHER2陽性癌またはHER2陰性癌を有するかを決定することをさらに含み得る。本発明のいくつかの実施形態では、HER2陰性癌およびHER2陽性癌は、(例えば、centralized testing laboratoryで)免疫組織化学またはインサイチューハイブリダイゼーション分析によって特性評価される。いくつかの実施形態では、本発明は、被験体がHER2陽性癌を有する場合、HER2ターゲティング治療およびHER3ターゲティング治療を含む共治療を行うことをさらに含み得る。本発明のいくつかの実施形態では、前記方法は、被験体がHER2陽性癌を有する場合、被験体が、HER2ターゲティング剤およびHER3ターゲティング剤の共治療に対して反応する可能性がより高いことを示すことをさらに含み得る。
特定の実施形態では、本発明は、全HER2タンパク質の量が、HER2陽性癌の参照集団における全HER2タンパク質発現の下位5パーセンタイルに対応する全HER2タンパク質のレベルを含む第1のカットオフを下回る(すなわち、HERmark(登録商標)HER2陰性)か、全HER2タンパク質の量が、HER2陰性癌の参照集団における全HER2タンパク質発現の上位95パーセンタイルに対応する全HER2タンパク質のレベルを含む第2のカットオフを上回る(すなわち、HERmark(登録商標)HER2陽性)か、または全HER2タンパク質の量が第1のカットオフを上回るが、第2のカットオフを下回る(すなわち、HERmark(登録商標)HER2陽性)かを決定することをさらに含み得る。特定の実施形態では、本発明は、腫瘍サンプルにおける全HER2タンパク質の量が第1のカットオフを上回る場合、HER2ターゲティング治療およびHER3ターゲティング治療を含む共治療を行うことをさらに含み得る。特定の実施形態では、本発明は、生物学的サンプルにおける全HER2タンパク質の量が第1のカットオフを上回る場合、被験体が、HER2ターゲティング剤およびHER3ターゲティング剤の共治療に対して反応する可能性がより高いことを示すことをさらに含み得る。
本明細書で議論されるように、特定の実施形態では、サンプルにおけるタンパク質−タンパク質相互作用の量を測定および/または定量することができるアッセイを使用して、活性化HER3の量を測定する。サンプルにおける全HER3発現および/または活性化HER3の量を直接測定するのに有用であることが当業者に公知の任意の方法を使用し得る。例えば、HER3発現の量を決定する任意の定量アッセイを使用して、HER3発現または活性化に代表的な細胞または癌によってどの程度のシグナルが生成されるかを決定し得る。このような方法としては、必ずしも限定されないが、VeraTag(登録商標)アッセイ、FRET、BRET、生体分子蛍光相補性および近接ライゲーションアッセイが挙げられる。いくつかの実施形態では、VeraTag(登録商標)アッセイで生成されるシグナルを、異なるアッセイから生成されるシグナルと比較して、2つのアッセイ間の対応を決定し得る。
特定の実施形態では、癌を有する被験体由来の生物学的サンプルと、結合化合物であって、切断可能な結合によってそれに結合した分子タグを有する結合化合物、および切断プローブであって、切断誘導部分を有する切断プローブとを接触させ、何の分子タグが放出されたかを検出することによって、前記量を検出する。図1は、本発明の実施形態に係る様々なVeraTag(登録商標)アッセイフォーマットの概略図を提供する。組織切片を固定し、次いで、切断誘導剤を有する第1の抗体、および検出可能な部分(例えば、VeraTag(登録商標)レポーター分子)に連結した第2の抗体に結合させる。例えば、図1Aに示されているように、第1の抗体をビオチンにコンジュゲートし、第2の抗体をVeraTag(登録商標)レポーター分子にコンジュゲートする。次いで、ストレプトアビジン官能化増感色素をビオチンコンジュゲート抗体に結合させ得る。切断誘導剤の光誘導を実施して、VeraTag(登録商標)レポーター分子の溶液中への切断を誘導する一重項酸素を放出させ得る。次いで、この溶液を回収し、キャピラリー電気泳動によって分析する。いくつかの実施形態では、図1Bに示されているように、アッセイをマイクロプレートフォーマットで実施し得る。例えば、サンプルをマイクロプレートのウェルに追加し、次いで、抗体を追加する:ある標的タンパク質に対して特異的な第1の抗体をビオチンにコンジュゲートし、第2の標的タンパク質に対して特異的な第2の抗体をVeraTag(登録商標)レポーター分子にコンジュゲートする。ストレプトアビジン官能化増感色素でコーティングしたビーズを使用して、ビオチンコンジュゲート抗体を捕捉し得る。切断誘導剤の光誘導を実施して、VeraTag(登録商標)レポーター分子の溶液中への切断を誘導する一重項酸素を放出させ得る。次いで、この溶液を各ウェルから回収し、キャピラリー電気泳動によって分析する。いくつかの実施形態では、図1Cに示されているように、光増感誘導切断に代えてDTTによって、VeraTag(登録商標)レポーター分子の切断を引き起こし得る。
検出アッセイの例は、本明細書および共有の米国特許出願公開第2009/0191559号(これは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)(全HER2とHER2ホモ二量体の検出が記載されている)に記載されている。同様の戦略を使用して、HER1、HER3、cMET、p−95などの他のバイオマーカーを測定し得る。例えば、米国特許第7,648,828号ならびに米国特許出願公開第2010/0143927号;米国特許出願公開第2010/0233732号;および米国特許出願公開第2010/0210034号を参照のこと。
特定の実施形態では、1つまたはそれを超える(one of more)VeraTag(登録商標)アッセイフォーマットを使用して、HERバイオマーカーレベルを測定し得る。例えば、全HER3レベルを測定する場合、HER3の細胞外ドメインに結合する一次抗体を使用し得る。次いで、二次抗体であって、それに結合したVeraTag(登録商標)レポーター分子を有する二次抗体を使用して、一次抗体に特異的に結合させ得る。このアッセイフォーマットの特定の実施形態では、図1Cに示されているように、還元剤(例えば、DTT)を用いて、VeraTag(登録商標)レポーター分子を切断し得る。
全HER2、全HER3およびリン酸化HER3の量を測定する場合、2つの一次抗体(両方の一次抗体が標的タンパク質に対して特異的である)を使用し得る。第1の一次抗体は、結合したメチレンブルー色素を有し、HER2またはHER3の細胞内ドメインに結合し得る。第2の一次抗体は、VeraTag(登録商標)レポーター分子にコンジュゲートされており、同様にHER2またはHER3の細胞内ドメインに結合し得る。光増感すると、メチレンブルー色素は、VeraTag(登録商標)レポーター分子がごく近接距離内にある場合にこの分子の切断を引き起こす一重項酸素を放出させる。2つの一次抗体は同一であり得るか、またはHER分子の2つの異なるエピトープに結合し得る。HER3リン酸化を測定する場合、VeraTag(登録商標)レポーター分子コンジュゲート抗体は、リン酸化エピトープ(例えば、アミノ酸位置1289)に結合し得る。
例えば、本発明のいくつかの実施形態では、被験体由来の腫瘍サンプルまたは生物学的サンプルにおける全HER3タンパク質の量の測定は、a)前記腫瘍サンプルまたは生物学的サンプルとHER3抗体組成物とを接触させる工程;b)前記HER3抗体組成物とタグ付結合組成物とを接触させる工程であって、前記タグ付結合組成物が、切断可能な結合を介してそれに結合した分子タグを含み、前記タグ付結合組成物が、前記HER3抗体組成物に特異的に結合する工程;c)前記タグ付結合組成物の前記切断可能なリンカーを切断し、それにより、前記分子タグを放出させる工程;およびd)前記放出された分子タグを定量して、前記腫瘍サンプルまたは生物学的サンプルにおけるHER3タンパク質の量を決定する工程を含み得る。
また、本発明のいくつかの実施形態では、被験体由来の腫瘍サンプルまたは生物学的サンプルにおける全HER3タンパク質の量の測定は、a)前記腫瘍サンプルまたは生物学的サンプルと、第1の結合部位でHER3タンパク質に特異的に結合する第1のHER3抗体組成物とを接触させる工程であって、前記第1のHER3結合組成物が、切断可能な結合を介してそれに結合した分子タグを含む工程;b)前記腫瘍サンプルと、第2の結合部位でHER3タンパク質に特異的に結合する切断プローブとを接触させる工程であって、前記切断プローブが、それに対して有効近接距離内にある場合に前記HER3抗体組成物の前記切断可能な結合を切断する工程;c)前記HER3抗体組成物の前記切断可能なリンカーを切断し、それにより、前記分子タグを放出させる工程;およびd)前記放出された分子タグを定量して、前記腫瘍サンプルまたは生物学的サンプルにおけるHER3タンパク質の量を決定する工程を含み得る。
HER2−HER3ヘテロ二量体およびHER3/PI3K複合体を測定する場合、アッセイフォーマットは、一般に、検出される各タンパク質に結合する2つの一次抗体、および一方または他方の一次抗体に特異的に結合する2つの二次抗体を使用する。HER2およびHER3に結合する一次抗体は、細胞外ドメインまたは細胞内ドメインのいずれかに特異的に結合し得る。本発明のいくつかの実施形態では、HER3/PI3K複合体を検出する場合、HER3に結合する一次抗体は、細胞内ドメインに特異的に結合する。例えば、HER2/HER3ヘテロ二量体の検出の場合、HER2一次抗体を、VeraTag(登録商標)レポーター分子にコンジュゲートした二次抗体と併せて使用し得、HER3抗体を、光増感剤(例えば、メチレンブルー)にコンジュゲートした二次抗体と併せて使用し得る。あるいは、代替的な構成として、VeraTag(登録商標)レポーター分子を、HER3抗体に結合する二次抗体にコンジュゲートし得、光増感剤を、HER2抗体に結合する二次抗体にコンジュゲートし得る。光増感すると、二次抗体が互いにごく近接距離内に位置する場合(例えば、HER2/HER3ヘテロ二量体が形成した場合)、VeraTag(登録商標)レポーター分子が切断され得る。続いて、例えば電気泳動によって、切断したレポーター分子を次に分離し得る。HER3およびPI3Kに結合する一次抗体を使用してHER3/PI3K複合体を検出するために、同じアッセイフォーマットを使用し得る。加えて、本明細書の他の箇所に記載されているように、HER2/HER3ヘテロ二量体およびHER3/PI3K複合体を検出するために、改変フォーマットを使用し得る。
HER2−HER3ヘテロ二量体およびHER3/PI3K複合体を検出するための他のアッセイフォーマットでは、分子タグ(例えば、VeraTag(登録商標)レポーター分子)と、切断誘導部分(例えば、光増感剤)を有する切断プローブとを一次抗体に直接コンジュゲートし、二次抗体を使用しない。HER2およびHER3に結合する一次抗体は、細胞外ドメインまたは細胞内ドメインのいずれかに特異的に結合し得る。本発明のいくつかの実施形態では、HER3/PI3K複合体を検出する場合、HER3に結合する一次抗体は、細胞内ドメインに特異的に結合する。例えば、本発明のいくつかの実施形態では、被験体由来の腫瘍サンプルまたは生物学的サンプルにおけるHER2−HER3ヘテロ二量体またはHER3/PI3K複合体の量の測定は、a)前記腫瘍サンプルまたは生物学的サンプルと、切断可能な結合を介して抗体組成物に結合した分子タグを含む抗体組成物とを接触させる工程;b)前記腫瘍サンプルまたは生物学的サンプルと切断プローブとを接触させる工程であって、前記切断プローブが、それに対して有効近接距離内にある場合に前記抗体組成物の前記切断可能な結合を切断する工程;c)前記抗体組成物の前記切断可能なリンカーを切断し、それにより、前記分子タグを放出させる工程;およびd)前記放出された分子タグを定量して、前記腫瘍サンプルまたは生物学的サンプルにおけるHER2−HER3ヘテロ二量体またはHER3/PI3K複合体の量を決定する工程を含み得、HER2−HER3ヘテロ二量体の測定の場合には、前記抗体組成物がHER3に特異的に結合し、前記切断プローブがHER2に特異的に結合するか、または前記抗体組成物がHER2に特異的に結合し、前記切断プローブがHER3に特異的に結合し、HER3/PI3K複合体の測定の場合には、前記抗体組成物がHER3に特異的に結合し、前記切断プローブがPI3Kに特異的に結合するか、または前記抗体組成物がPI3Kに特異的に結合し、前記切断プローブがHER3に特異的に結合する。
また、本発明のいくつかの実施形態では、被験体由来の腫瘍サンプルまたは生物学的サンプルにおけるHER2−HER3ヘテロ二量体の量の測定は、a)前記腫瘍サンプルまたは生物学的サンプルとHER2抗体組成物とを接触させる工程;b)前記腫瘍サンプルまたは生物学的サンプルとHER3抗体組成物とを接触させる工程;c)前記腫瘍サンプルまたは生物学的サンプルと、前記HER2抗体組成物または前記HER3抗体組成物のいずれかに結合する第1の結合組成物とを接触させる工程であって、前記第1の結合組成物が、切断可能な結合を介してそれに結合した分子タグを含む工程;d)前記腫瘍サンプルまたは生物学的サンプルと切断プローブとを接触させる工程であって、前記切断プローブが、それに対して有効近接距離内にある場合に前記結合組成物の前記切断可能な結合を切断する工程;e)前記抗体組成物の前記切断可能なリンカーを切断し、それにより、前記分子タグを放出させる工程;およびf)前記放出された分子タグを定量して、前記腫瘍サンプルまたは生物学的サンプルにおけるHER2−HER3ヘテロ二量体の量を決定する工程を含み得、前記抗体結合組成物がHER3に特異的に結合する場合には、前記切断プローブがHER2に特異的に結合するか、または前記抗体結合組成物がHER2に特異的に結合する場合には、前記切断プローブがHER3に特異的に結合する。
加えて、本発明の他の実施形態では、被験体由来の腫瘍サンプルまたは生物学的サンプルにおけるHER3/PI3K複合体の量の測定は、a)前記腫瘍サンプルまたは生物学的サンプルと、HER3抗体組成物およびPI3K抗体結合組成物とを接触させる工程であって、一方の抗体組成物が、切断可能な結合を介してそれに結合した分子タグを含み、他方の抗体組成物が、それに対して有効近接距離内にある場合に前記結合組成物の前記切断可能な結合を切断する切断プローブを含む工程;b)前記切断可能なリンカーを切断して、前記分子タグを放出させる工程;およびc)前記放出された分子タグを定量して、前記腫瘍サンプルまたは生物学的サンプルにおけるHER3/PI3K複合体の量を決定する工程を含み得る。
また、本発明のいくつかの実施形態では、被験体由来の腫瘍サンプルまたは生物学的サンプルにおけるリン酸化HER3の量の測定は、a)前記腫瘍サンプルまたは生物学的サンプルと、第1の結合部位でHER3タンパク質に特異的に結合する第1のHER3抗体組成物とを接触させる工程であって、前記第1のHER3抗体組成物が、切断可能な結合を介してそれに結合した分子タグを含む工程;b)前記腫瘍サンプルまたは生物学的サンプルと、第2の結合部位でHER3タンパク質に特異的に結合する第2のHER3抗体組成物とを接触させる工程であって、前記第2のHER3抗体組成物が、それに対して有効近接距離内にある場合に前記HER3抗体組成物の前記切断可能な結合を切断する切断誘導部分を含み、前記第2の結合部位がHER3リン酸化部位を含む工程;c)前記第1のHER3抗体組成物の前記切断可能なリンカーを切断し、それにより、前記分子タグを放出させる工程;およびd)前記放出された分子タグを定量して、前記腫瘍サンプルまたは生物学的サンプルにおけるリン酸化HER3の量を決定する工程を含み得る。
いくつかの実施形態では、本発明のシステムおよび方法に使用するのに適切なサンプルは、細胞培養物、動物組織、患者生検などを含め、多種多様な供給源に由来し得る。好ましくは、サンプルは、ヒト患者サンプルである。サンプルがそこから採取される供給源に依存し得る、従来の技術を用いるバイオマーカーの分析に応じて、サンプルを調製する。生検および医学的試料については、以下の参考文献:Bancroft JD&Stevens A,eds.1977,Theory and Practice of Histological Techniques,Churchill Livingstone,Edinburgh;Pearse,1980,Histochemistry.Theory and applied.4thed.,Churchill Livingstone,Edinburghにおいて、指針が示されている。いくつかの実施形態では、サンプルは、FFPEサンプルを含む。
患者組織サンプルの例としては、限定されないが、結腸直腸癌、胃癌、乳癌、黒色腫、卵巣癌、頭頸部癌、肺癌(例えば、非小細胞肺癌)、脳癌、子宮内膜癌、膵臓癌、前立腺癌または子宮頸癌が挙げられる。組織サンプルは、手術による切除、吸引、または生検を含め、様々な手順により得ることができる。組織は、新鮮なものまたは凍結されたものであり得る。一実施形態では、固定され、パラフィンに包埋された組織サンプルに対して本発明のアッセイを実施し、次いで、脱パラフィン工程を実施する。従来の方法により、組織サンプルを固定(すなわち、保存)することができる。例えば、Lee G.Luna,HT(ASCP)Ed.,1960,Manual of Histological Staining Method of the Armed Forces Institute of Pathology 3rdedition,The Blakston Division McGraw−Hill Book Company,New York;Ulreka V.Mikel,Ed.,1994,The Armed Forces Institute of Pathology Advanced Laboratory Methods in Histology and Pathology,Armed Forces Institute of Pathology,American Registry of Pathology,Washington,D.Cを参照のこと。当業者であれば、組織を組織学的に染色するか、または他の形で分析する目的により、固定剤の選択が決定されることを認識するであろう。当業者であれば、固定化の長さが、組織サンプルのサイズ、ならびに使用される固定剤に依存することも認識するであろう。
一般に、まず、組織サンプルを固定し、次いで、濃度を上昇させた一連のアルコールにより脱水し、組織サンプルを切片化し得るように、パラフィンまたは他の切片化媒体を浸透させてこれにより包埋する。あるいは、組織を切片化し、得られた切片を固定することもできる。例示目的で、上記に示した参考文献により説明される従来の技術に従う従来の方法により、組織サンプルをパラフィンに包埋および加工することができる。使用され得るパラフィンの例としては、限定されないが、Paraplast、Broloid、およびTissuemayが挙げられる。組織サンプルを包埋したら、従来の技術により、ミクロトームによりサンプルを切片化することができる。切片は、厚さが約3ミクロン〜約12ミクロンの範囲であり、好ましくは、約5ミクロン〜約10ミクロンの範囲の厚さである。一態様では、切片が、約10mm2〜約1cm2の面積であり得る。切断したら、数種の標準的な方法により、切片をスライドに付着させることができる。スライド接着剤の例としては、限定されないが、シラン、ゼラチン、およびポリ−L−リシンが挙げられる。パラフィン包埋切片は、正電荷のスライド、および/またはポリ−L−リシンコーティングスライドに付着させることができる。
パラフィンを包埋材料として用いた場合は、一般に、バイオマーカーを検出する前に、組織切片を脱パラフィンおよび再水和する。従来の数種の標準的な方法により、組織切片を脱パラフィンすることができる。例えば、上記の参考文献により説明される従来の技術により、キシレンと、段階的に濃度を低下させる一連のアルコールとを用いることができる。あるいは、Hemo−De(登録商標)(CMS,Houston,Tex.)などの市販の非有機の脱パラフィン剤が使用され得る。
従来の細胞溶解法(例えば、0.14M NaCl、1.5mM MgCl2、10mMトリス−Cl(pH8.6)、0.5%Nonidet P−40、ならびに必要に応じてプロテアーゼ阻害剤ならびに/またはホスファターゼ阻害剤)により、哺乳動物組織培養細胞または新鮮組織もしくは凍結組織を調製することができる。新鮮な哺乳動物組織の場合、サンプル調製はまた、粉砕、ミンチ化、すりつぶし、または超音波処理などの組織脱凝集工程も包含する。
放出可能な分子タグを使用して活性化HER3集団を測定することにより、(1)放出された分子タグをアッセイ混合物から分離することにより、バックグラウンドが大幅に軽減され、感度が大幅に増大すること;ならびに(2)分離および検出を容易にするために特にデザインされた分子タグを用いることにより、同じアッセイにおいて同時に、受容体複合体の複数の成分を容易に測定し得るような、簡便な多重化能がもたらされることを含め、多くの利点がもたらされる。このようなタグを用いるアッセイは、様々な形態を取ることが可能であり、以下の参考文献:米国特許第7,105,308号;米国特許第6,627,400号;米国特許出願公開第2002/0013126号;米国特許出願公開第2003/0170915号;米国特許出願公開第2002/0146726号;米国特許出願公開第2009/0191559号、米国特許出願公開第2010/0143927号、米国特許出願公開第2010/0233732号および米国特許出願公開第2010/0210034号;ならびに国際公開第2004/011900号(これらはそれぞれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に開示されている。例えば、電気泳動移動度、分子量、形状、溶解性、pKa、疎水性、電荷、電荷/質量比、または極性を含め、分離される分子間における、1つまたはそれを超える、物理的、化学的、または光学的差異に基づき分子を区別し得る、多種多様な分離法を用いることができる。一態様では、複数の分子タグまたは分子タグのセットが、電気泳動移動度および光学的検出特性において異なり、電気泳動により分離される。別の態様では、複数の分子タグまたは分子タグのセットが、分子量、形状、溶解性、pKa、疎水性、電荷、極性において異なり得、正相もしくは逆相のHPLC、イオン交換HPLC、キャピラリー電気クロマトグラフィー、質量分析、または気相クロマトグラフィーにより分離される。
結合化合物から放出された後で、分離技術により異なるバンドまたはピークに分離され得る、分子タグのセットが供給される。このようなピークを同定および定量することにより、タンパク質、タンパク質複合体および翻訳後修飾タンパク質の存在および/または量の尺度またはプロファイルがもたらされる。いくつかの実施形態では、セットにおける分子タグは、化学的に多様であり得る。他の実施形態では、分子タグのセットは、化学的に類縁であり得る。例えば、分子タグはすべてペプチドであり得るか、同じ基本的ビルディングブロックまたは単量体の異なる組み合わせからなり得るか、または異なる置換基を有して異なる分離特性を付与する、同じ基本的足場を使用して合成され得る。複数の分子タグの数は、用いられる分離方式、検出用分子タグに使用される標識、結合部分の感度、および切断可能な結合が切断される効率を含め、複数の因子に応じて変化し得る。
組織サンプルに対して直接なされた測定は、サンプルにおける全細胞数、および/またはサンプルにおける特定の細胞亜型の数を表す細胞標的または組織標的についての測定を組み入れることにより、正規化することができる。実質的な割合の正常細胞を含み得る患者サンプル、特に、腫瘍サンプルにおいては、細胞および組織が不均質性であるため、さらなる測定が好ましい場合もあり、さらに必要な場合もある。
上記で言及した通り、異なる結合化合物それぞれが切断可能な結合を介して1つまたはそれを超える分子タグを有する、複数の異なる結合化合物を含有する混合物を供給することができる。結合化合物、切断可能な結合、および分子タグの性質は、多種多様であり得る。結合化合物は、抗体結合組成物、抗体組成物、抗体、ペプチド、細胞表面受容体に対するペプチドリガンドもしくはペプチド以外のリガンド、タンパク質、オリゴヌクレオチド、ペプチド核酸などのオリゴヌクレオチド類似体、レクチン、あるいは、標的タンパク質もしくは標的分子、または活性化HER3などの目的の分析物との安定的な複合体形成物に特異的に結合することができる他の任意の分子実体を含み得る。一態様では、結合化合物を、以下の式:
B−(L−E)k
[式中、Bは、結合部分であり;Lは、切断可能な結合であり;Eは、分子タグである]により表すことができる。ホモジニアスアッセイでは、切断可能な結合Lが、易酸化結合であり得、より好ましくは、それが一重項酸素により切断され得る結合である。あるいは、それは、還元による(例えば、DTTによる)切断に対して感受性の結合であり得る。部分「−(L−E)k」は、単一の結合化合物が、切断可能な結合を介して複数の分子タグを結合させ得ることを示す。一態様では、kが1を超えるかそれに等しい整数であるが、他の実施形態では、kが数百を超え得る(例えば、100〜500)か、またはkが数百を超えて最大数千もの数(例えば、500〜5000)である。通常、複数の異なる種類の結合化合物のそれぞれは、異なる分子タグEを有する。切断可能な結合(例えば、易酸化結合)および分子タグEは、通常の化学反応によりBに結合している。
いくつかの実施形態では、Bは、HER3における抗原決定基などの標的に特異的に結合する抗体結合組成物または抗体組成物である。HER3エピトープに対して特異的な抗体は、本明細書に記載される実施例で示される。抗体組成物は、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体である多種多様な市販の抗体から容易に形成することができる。特に、上皮成長因子受容体に対して特異的な抗体は、米国特許第5,677,171号;米国特許第5,772,997号;米国特許第5,968,511号;米国特許第5,480,968号;米国特許第5,811,098号(これらはそれぞれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に開示されている。米国特許第5,599,681号(これは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)は、タンパク質のリン酸化部位に対して特異的な抗体を開示している。例えば、Cell Signaling Technology(Beverly,MA)、Biosource International(Camarillo,CA)およびUpstate(Charlottesville,VA)などの販売元もまた、モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体を提供している。
切断可能な結合Lは、放出される分子タグEの構造を分解しないし、その検出特性に影響を与えることのない条件下で切断され得る、実質的に任意の化学結合基であり得る。特定の実施形態では、ホモジニアスアッセイフォーマットで用いる切断プローブは、切断プローブの直接的近接距離内にある切断可能な結合だけを切断するように、作用距離が短い切断プローブにより作製される切断剤により切断される切断可能な結合Lを有する。典型的には、拡散して、切断可能な結合に至り、切断に影響を及ぼす短命の活性種が、このような薬剤によりもたらされるように、反応混合物に物理的または化学的な変化をもたらすことにより、その薬剤を活性化しなければならない。ホモジニアスフォーマットでは、好ましくは、活性化前に、放出可能な分子タグを含む結合化合物の近接距離内に特定の部位をターゲティングする抗体などの結合部分に切断剤を結合させる。
非ホモジニアスフォーマットでは、特異的に結合した結合化合物が、結合しなかった結合化合物から分離されるため、切断可能な結合および切断剤のより広い選択を用いることが可能である。切断可能な結合としては、過酸化水素、一重項酸素などの局所的に作用する反応種との反応を受けやすい結合だけではなく、塩基に不安定な結合、光により切断可能な結合、還元により切断可能な結合、酸化により切断される結合、酸に不安定な結合、および特定のプロテアーゼにより切断可能なペプチド結合などの反応混合物全体に作用する薬剤に対して不安定な結合も挙げられ得る。多くのこのような結合が記載されている参考文献としては、Greene and Wuts,1991,Protective Groups in Organic Synthesis,Second Edition,John Wiley&Sons,New York;Hermanson,1996,Bioconjugate Techniques,Academic Press,New York;ならびに米国特許第5,565,324号が挙げられる。光切断可能な結合としては、米国特許第5,986,076号に開示されているものも挙げられる。
いくつかの実施形態では、市販の切断可能な試薬システムを本発明と共に用いることができる。いくつかの実施形態では、切断プローブは、切断可能な結合を直接切断してタグを放出させる化合物を含む。例えば、Pierce Chemical Company(Rockford,IL)などの販売元から入手可能な、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP))、スクシンイミジルオキシカルボニル−α−メチル−α−(2−ピリジルジチオ)トルエン(SMPT))などのヘテロ官能性薬剤を使用して、抗体結合組成物と分子タグとの間に、ジスルフィド結合を導入することができる。このような連結により導入されたジスルフィド結合は、ジチオトレイトール(DTT)、ジチオエリトリトール(DTE)、2−メルカプトエタノール、または水素化ホウ素ナトリウムなどの還元剤で処理することにより壊すことができる。ジスルフィド結合を切断する還元剤の典型的な濃度は、約1mM〜100mMの範囲にある。ホモ二官能性NHSエステルによる架橋試薬、過ヨウ素酸ナトリウム(例えば、生理的pHにおいて4時間にわたる15mM過ヨウ素酸塩)による切断を受けやすいcis−ジオール類を中央部に含有する酒石酸ジスクシンイミジル(DST)(Pierce社から入手可能)を使用して、抗体結合組成物と分子タグとの間に、易酸化結合を導入することができる。エステル化されたスペーサー構成要素を含有する結合は、ヒドロキシルアミン、例えば、37℃で3〜6時間にわたる、pH8.5の0.1Nヒドロキシルアミンなどの強力な求核剤により切断することができる。このようなスペーサーは、Pierce(Rockford,IL)から入手可能な、エチレングリコールビス(スクシンイミジルスクシネート)(EGS)などのホモ二官能性の架橋剤により導入することができる。塩基に不安定な結合は、スルホン基により導入することができる。切断可能な結合にスルホン基を導入するのに使用され得るホモ二官能性の架橋剤としては、ビス[2−(スクシンイミジルオキシカルボニルオキシ)エチル]スルホン(BSOCOES)、および4,4−ジフルオロ−3,3−ジニトロフェニルスルホン(DFDNPS)が挙げられる。切断のための例示的な塩基性条件としては、37℃で2時間にわたるインキュベーションを伴う、6M尿素、0.1%SDS、および2mM DTTを含有するトリス塩基を添加することによりpH11.6に調整した、0.1Mリン酸ナトリウムが挙げられる。
Lが易酸化性である場合、Lは、チオエーテルまたはそのセレニウム類似体;またはオキソ基に対する二重結合が切断されると分子タグEが放出される、炭素間の二重結合を含有するオレフィンであり得る。例示的な易酸化結合は、米国特許第6,627,400号および米国特許第5,622,929号;ならびに米国特許出願公開第2002/0013126号および米国特許出願公開第2003/0170915号(これらはそれぞれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に開示されている。
ガスクロマトグラフィーまたは質量分析により複数の分子タグを分離する場合、本発明における分子タグEは、以下の参考文献(例えば、Zhangら、2002,Bioconjugate Chem.13:1002−1012;Giese,1983,Anal.Chem.2:165−168;ならびに米国特許第4,650,750号;米国特許第5,360,819号;米国特許第5,516,931号;および米国特許第5,602,273号(これらはそれぞれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照のこと)に記載されている電気泳動タグを含み得る。
好ましくは、分子タグEは、活性種、とりわけ、一重項酸素に対して安定であり、検出基またはレポーター基を包含する、水溶性の有機化合物である。さもなければ、Eは、サイズおよび構造が多種多様に変化し得る。一態様では、Eの分子量が、約50〜約2500ダルトン、より好ましくは、約50〜約1500ダルトンの範囲にある。Eは、電気化学シグナル、蛍光シグナル、または発色シグナルを発生させる検出基を含み得る。質量による検出を用いる実施形態では、Eは、検出の目的で別個の部分を有し得ない。好ましくは、検出基は、蛍光シグナルを発生させる。
複数の分子タグは、それぞれが、同じ複数タグの他のメンバーに対して、固有の分離特性および/または固有の光学特性を有するように選択される。一態様では、クロマトグラフィーまたは電気泳動における分離特性が、当技術分野における従来の標準的な一連の分離条件(例えば、電圧、カラム圧、カラム種類、移動相、または電気泳動の分離媒体)下における保持時間である。別の態様では、光学特性が、所定の波長または波長バンドにおける発光スペクトル、蛍光寿命、または蛍光強度などの蛍光特性である。好ましくは、蛍光特性は、蛍光強度である。例えば、複数の分子タグのそれぞれは、同じ蛍光発光特性を示し得るが、固有の保持時間により互いとは異なる。他方、複数の分子タグの1つもしくは2つまたはそれより多くは、同一の移動時間または保持時間を有し得るが、分子の分離および蛍光の測定を組み合わせることにより、該複数の分子タグのすべてのメンバーが区別可能であるように、それらは、固有の蛍光特性、例えば、スペクトル分解可能な発光スペクトルを有す。
好ましくは、放出された分子タグは、電気泳動による分離、および検出基による蛍光発光によって検出する。このような実施形態では、分離条件下で、電気泳動図において異なるピークが形成されるように、実質的に同一の蛍光特性を示す分子タグが、異なる電気泳動移動度を有す。好ましくは、本発明による複数の分子タグは、従来のふるい分けマトリックス(sieving matrix)が存在する場合も、これが不在の場合も、従来のキャピラリー電気泳動装置により分離する。電気泳動による分離中において、またはその後において、蛍光シグナルおよび分離される化合物の移動時間(または移動距離)を記録することにより、または相対蛍光発光および分子タグの移動順序についてのチャート(例えば、電気泳動図として)を構築することにより、分子タグを検出または同定する。好ましくは、分子タグの存在、不在、および/または量は、米国特許出願公開第2003/0170734A1号(これは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)により開示されている、1つまたはそれを超える標準品を用いることにより測定する。
また、例えば、米国特許第7,255,999号(これは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に開示されているように、分子量、形状、溶解性、pKa、疎水性、電荷、極性などが含まれる、1つまたはそれを超える物理的特性に基づく、クロマトグラフィーによる分離を行うための複数の分子タグもデザインすることができる。クロマトグラフィーによる分離技術は、カラムの種類、固相、移動相などのパラメータに基づき選択され、続いて単回の操作において分離されて異なるピークまたはバンドを形成し得る複数の分子タグが選択される。検出される分子タグの数(すなわち、該複数のサイズ)、アッセイにおいて発生する各分子タグの推定量、多重化アッセイに使用されるセットの候補である分子タグを合成する有用性および容易さ、使用される検出モダリティー、ならびにHPLC装置、カラム、および溶媒の入手可能性、頑健性、費用、および操作の容易さを含め、数種の因子により、本発明で用いるのにどのHPLC法を選択するかが決定される。一般に、限定量のサンプルを分析するのに適し、最高の解像度による分離をもたらすカラムおよび技術が好ましい。このような選択を行うための指針は、例えば、Snyderら、1988,Practical HPLC Method Development,John Wiley&Sons,New York;Millner,1999,High Resolution Chromatography:A Practical Approach,Oxford University Press,New York;Chi−San Wu,1999,Column Handbook for Size Exclusion Chromatography,Academic Press,San Diego;およびOliver,1989,HPLC of Macromolecules:A Practical Approach,Oxford University Press,Oxford,Englandなどの文献に見られ得る。
一態様では、分子タグEが、(M、D)[表記中、Mとは、移動度修飾部分であり、Dとは検出部分である]である。「(M、D)」という表記を使用して、そのどちらの部分も切断可能な結合Lに隣接し得るように、M部分およびD部分の順序づけがなされ得ることを示す。すなわち、「B−L−(M、D)」は、結合化合物が、2つの形態:「B−L−M−D」または「B−L−D−M」のいずれかであることを示す。
検出部分Dは、蛍光標識もしくは蛍光色素、発色標識もしくは発色色素、または電気化学標識であり得る。好ましくは、Dは、蛍光色素である。本発明と共に使用される例示的な蛍光色素としては、以下の参考文献:Handbook of Molecular Probes and Research Reagents,8thed.(2002),Molecular Probes,Eugene,OR;米国特許第6,191,278号;米国特許第6,372,907号;米国特許第6,096,723号;米国特許第5,945,526号;米国特許第4,997,928号;および米国特許第4,318,846号;ならびにLeeら、1997,Nucleic Acids Research 25:2816−2822に開示されている、水溶性のローダミン色素類、フルオレセイン類、4,7−ジクロロフルオレセイン類、ベンゾキサンテン色素類、およびエネルギー移動色素類が挙げられる。好ましくは、Dは、フルオレセインまたはフルオレセイン誘導体である。
結合化合物のそれぞれを、異なる分子タグにより個別に誘導体化したら、これを他の結合化合物と共にプールして、複数の結合化合物を形成する。通常、組成物には、各異なる種類の結合化合物が同じ比率で存在するが、特定の実施形態またはアッセイの所望性または必要性に応じ、特定の結合化合物の1つまたはサブセットが、より大きいかまたはより小さな比率で存在するように、デザインの選択として、比率を変化させることができる。このようなデザインの選択に影響を及ぼし得る因子としては、限定されないが、特定の標的に対して産生させた抗体の親和性およびアビディティ、標的の相対存在率、分子タグの検出部分の蛍光特性などが挙げられる。
いくつかの実施形態では、切断誘導部分または切断剤とは、好ましくは酸化により、切断可能な結合を切断することができる活性種を生成させる化学基である。好ましくは、活性種とは、その切断誘導効果が、その発生部位の近接距離内だけにおいて存在するように、短命の活性を示す化学種である。活性種が作り出される近接距離を越えて顕著なバックグラウンドを作り出さないように、活性種を固有の形で短命とするか、またはその発生部位からの短距離を越えて、切断可能な結合と反応することが可能でないように、活性種を効果的に除去するスカベンジャーを用いる。例示的な活性種としては、一重項酸素、過酸化水素、NADHおよびヒドロキシルラジカル、フェノキシラジカル、スーパーオキサイドなどが挙げられる。酸化を引き起こす活性種に対する例示的なクエンチャーとしては、ポリエン類、カロテノイド類、ビタミンE、ビタミンC、チロシン、ヒスチジン、およびグルタチオンのアミノ酸−ピロールN−コンジュゲートが挙げられる。例えば、Beutnerら、2000,Meth.Enzymol.319:226−241を参照のこと。
切断誘導部分および切断可能な結合を用いるアッセイをデザインする際の1つの考慮点は、受容体複合体に結合したとき、切断誘導部分により生成される活性種が切断可能な結合を効果的に切断することが不可能になる程度に遠く、切断誘導部分および切断可能な結合が、互いから引き離されないようにすることである。一態様では、切断可能な結合が、好ましくは、結合した切断誘導部分の約1000nm以内、好ましくは約20〜200nm以内にある。より好ましくは、一重項酸素を発生させる、光増感剤の切断誘導部分の場合は、切断可能な結合が、受容体複合体において光増感剤の約20〜100nm以内にある。本明細書では、切断誘導部分により切断可能な結合が有効に切断され得る(すなわち、検出可能なシグナルを発生させるのに十分な分子タグを切断できる)範囲を、その「有効近接距離」と称する。当業者であれば、特定の光増感剤の有効近接距離が、特定のアッセイデザインの詳細に依存する場合があり、日常的な実験により決定または改変され得ることを認識するであろう。
増感剤とは、反応中間体、または、通常一重項酸素である種を発生させるように誘導され得る化合物である。好ましくは、本発明により使用される増感剤は、光増感剤である。本発明の範囲内に包含される他の増感剤は、熱、光、イオン化放射、または化学的活性化により励起されると、一重項酸素分子を放出する化合物である。このクラスの化合物のうちで最も周知のメンバーとしては、1,4−ビスカルボキシエチル−1,4−ナフタレンエンドペルオキシド、9,10−ジフェニルアントラセン−9,10−エンドペルオキシド、および5,6,11,12−テトラフェニルナフタレン−5,12−エンドペルオキシドなどのエンドペルオキシド類が挙げられる。これらの化合物を加熱するか、またはこれらの化合物が直接的に光を吸収すると、一重項酸素が放出される。さらなる増感剤については、Di Mascioら、1994,FEBS Lett.355:287;およびKanofsky,1983,J.Biol.Chem.258:5991−5993;Pierlotら、2000,Meth.Enzymol.319:3−20により開示されている。
光増感剤は、共有結合または非共有結合により、直接的または間接的にクラス特異的な試薬による結合剤に結合し得る。このような組成物を構築するための指針、特に、結合剤としての抗体についての指針は、例えば、光線力学療法、免疫診断学などの分野の文献において得られる。例示的な指針は、Ullmanら、1994,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91,5426−5430;Strongら、1994,Ann.New York Acad.Sci.745:297−320;Yarmushら、1993,Crit.Rev.Therapeutic Drug Carrier Syst.10:197−252;ならびに米国特許第5,340,716号;米国特許第5,516,636号、米国特許第5,709,994号および米国特許第6,251,581号に見られ得る。
光増感剤を光活性化して一重項酸素を発生させるには、多種多様な光源が利用できる。光源が、実用的な時間内で十分な一重項酸素を生成させるのに十分な強度を示す限りにおいて、多色光源および単色光源の両方を用いることができる。照射の距離は、光増感剤の性質、切断可能な結合の性質、照射光源の出力、およびサンプルからの照射光源の距離に依存する。一般に、照射時間は、約マイクロ秒間超〜最長約10分間であることが可能であり、通常、約1ミリ秒間〜約60秒間の範囲内である。照射の強度および距離は、光増感剤分子の少なくとも約0.1%、通常、光増感剤分子の少なくとも約30%、ならびに、好ましくは、光増感剤分子の実質的にすべてを励起するのに十分であるものとする。例示的な光源としては、レーザー、例えば、ヘリウム−ネオンレーザー、アルゴンレーザー、YAGレーザー、He/Cdレーザー、およびルビーレーザー;光ダイオード;水銀灯、ナトリウム灯、およびキセノン灯;ならびに、例えば、タングステン灯およびタングステン/ハロゲン灯および閃光灯などの白熱灯が挙げられる。本発明の方法に使用するのに適切な例示的な光活性化デバイスは、国際公開第03/051669号に開示されている。このような実施形態では、光活性化デバイスは、96ウェルプレートのすべてのウェルを同時に照射することができる、ハウジング内に搭載された発光ダイオード(LED)のアレイである。
本発明に使用され得る光増感剤の例は、上記の特性を有する増感剤、ならびに、米国特許第5,536,834号;米国特許第5,763,602号;米国特許第5,565,552号;米国特許第5,709,994号;米国特許第5,340,716号;米国特許第5,516,636号;米国特許第6,251,581号;および米国特許第6,001,673号;欧州特許出願公開第0484027号;Martinら、1990,Methods Enzymol.186:635−645;およびYarmushら、1993,Crit.Rev.Therapeutic Drug Carrier Syst.10:197−252に開示されている増感剤である。増感剤の場合と同様、特定の実施形態では、固相支持体の表面に共有結合または非共有結合により結合させるか、または固相支持体の本体に組み込むことにより、光増感剤を、固相支持体と会合させることができる。一般に、光増感剤は、必要量の一重項酸素を達成するのに必要な量で、支持体と会合させる。一般に、光増感剤の量は、日常的な方法により、経験的に決定される。
一実施形態では、例えば、米国特許第5,709,994号;および米国特許第6,346,384号;ならびに国際公開第01/84157号に開示されているように、光増感剤を、ラテックス粒子に組み込み、光増感剤ビーズを形成する。あるいは、J.Amer.Chem.Soc.,97:3741(1975)に記載されているように、エステル結合基を提供するために、ローズベンガルなどの光増感剤を、ラテックスにおけるクロロメチル基を介して、0.5ミクロンのラテックスビーズに共有結合させることにより光増感剤ビーズを調製することもできる。ラテックス粒子、光増感剤ビーズを用いる方法は、例えば、真空を適用することにより試薬の除去を可能とするウェルの1つの壁面、例えば、その底面を形成するフィルター膜を有する、従来の96ウェルまたは384ウェルのマイクロタイタープレートなどにおいて実施することができる。結合化合物の特異的な結合に必要とされるバッファーが、一重項酸素の生成または分離に必要とされるバッファーと異なる場合、これにより、バッファーの簡便な交換が可能になる。例えば、抗体結合化合物または抗体組成物の場合、高塩濃度バッファーが必要となる。放出されたタグを電気泳動により分離する場合は、バッファーを、電気泳動に適切な、塩濃度がより低いバッファーに交換することにより、より良好な性能が達成される。
例として、切断プローブは、複数の光増感剤分子により誘導体化された、ハプテン化一次抗体、ならびに二次抗ハプテン結合タンパク質を含み得る。好ましいハプテン化一次抗体は、ビオチン化抗体であり、好ましい二次抗ハプテン結合タンパク質は、抗ビオチン抗体またはストレプトアビジンのいずれかであり得る。このような一次試薬および二次試薬の他の組み合わせは、当技術分野で周知である。このような試薬の例示的な組み合わせは、Haugland,2002,Handbook of Fluorescent Probes and Research Reagents,Ninth Edition,Molecular Probes,Eugene,ORにより教示されている。このような試薬の例示的な組み合わせは、以下に記載される。放出可能なタグ(「mT1」および「mT2」)と、ビオチンにより誘導体化された一次抗体とを有するこれらの結合化合物は、膜の受容体二量体の異なるエピトープに特異的に結合する。ビオチン特異的な結合タンパク質(例えば、ストレプトアビジン)をビオチンに結合させて、複数の光増感剤を結合化合物の有効近接距離内に運ぶ。ビオチン特異的な結合タンパク質はまた、抗ビオチン抗体であり得、従来の結合化学反応(例えば、Hermanson(前出))により、該タンパク質における遊離アミン基を介して、光増感剤を結合させることもできる。このような使用のための例示的な光増感剤は、欧州特許出願公開第0510688号に開示されている通りに調製される、メチレンブルーのNHSエステルである。
方法および特定の条件ならびに材料についての以下の一般的な議論は、例示を目的とするものであり、限定を目的とするものではない。当業者であれば、本明細書に記載される方法を、特に、異なるサンプル、細胞型、および標的複合体を用いることにより、他の適用にどのように適合させ得るかについて理解するであろう。
本発明の方法を実施するには、試験サンプルと、結合化合物と、場合により切断プローブとを含む、アッセイ成分の組み合わせを作製する。一般に、アッセイ成分は、任意の順序で組み合わせることができる。しかしながら、特定の適用では、添加の順序が重要となり得る。例えば、競合的結合について定量的にモニタリングするか、または会合した複合体の安定性をモニタリングしたい場合がある。このような適用では、反応物を段階的に会合させることができる。
各試薬の量は、一般に、経験的に決定することができる。アッセイで使用されるサンプルの量は、存在することが予測される標的複合体の数と、アッセイのシグナルをモニタリングするのに使用される分離および検出の手段とにより決定される。一般に、結合化合物および切断プローブの量は、サンプルにおいて予測される標的分子の量と比べたモル過剰、一般に、少なくとも約1.5モルの過剰、より望ましくは約10倍以上のモル過剰で供給することができる。特定の適用において、使用される濃度は、結合剤の親和性、および単一の細胞において存在することが予測される標的分子の数に応じて高濃度または低濃度であり得る。細胞表面オリゴマー複合体の形成に対する化合物の効果を決定しようとする場合は、モニタリングされる効果に応じて、プローブを添加する前に、これと同時に、またはこの後において、該化合物を細胞に添加することができる。
アッセイ混合物は、通常、約10〜200mMの範囲の濃度のバッファーにより維持される、一般に、生理的pH(細胞が培養されるpHと同等のpH)にある水性媒体において、細胞表面分子へのプローブの結合をもたらす条件下で混合およびインキュベートすることができる。従来のバッファーのほか、必要に応じて、塩、増殖媒体、安定化剤などの他の従来の添加物も用いることができる。一般に、生理的な一定温度を用いる。インキュベーション温度は、一般に、約4℃〜70℃、通常約15℃〜45℃であり、より通常の場合には、約25℃〜37℃である。
アッセイ混合物を組み立て、インキュベートして、プローブを細胞表面分子に結合させた後、該混合物を処理して、切断剤を活性化させ、切断剤の有効近接距離内にある結合化合物からタグを切断させ、該細胞表面から対応するタグを溶液に放出させることができる。この処理の性質は、切断剤の作用機構に依存する。例えば、切断剤として光増感剤を用いる場合、切断の活性化は、使用される特定の増感剤に適切な光の波長で、混合物を照射することを含み得る。
次いで、切断後、サンプルを分析して、放出されたタグを区別することができる。複数の結合化合物を用いるアッセイを用いる場合は、一般に、放出されたタグの分離が、それらの検出に先行する。分離および検出のいずれの方法も、アッセイのためにタグをデザインする過程で決定される。好ましい分離方式では電気泳動が用いられ、そこでは、様々なタグが、それらの電気泳動移動度における公知の差異に基づき分離される。
上記で言及した通り、いくつかの実施形態では、アッセイ反応条件が、使用される分離法に干渉し得る場合、分子タグを切断および分離する前に、アッセイ反応バッファーを除去または交換することが必要であり得る。例えば、アッセイ条件としては、電気泳動移動度に基づき分子タグを分離する場合、分離の効能を劣化させる塩濃度(例えば、特異的な結合に必要とされる)が挙げられ得る。したがって、例えば、分子タグを切断する前に、このような高塩濃度のバッファーを除去し、ろ過、吸引、希釈、または他の手段により、電気泳動による分離に適切な別のバッファーで置換することができる。
特定の実施形態では、HER3作用剤を含む併用療法を被験体に行い得る。併用療法は、限定されないが、当業者に公知の任意の化学療法剤の1つまたはそれよりも多くと組み合わせたHER3作用剤を含み得る。好ましくは、化学療法剤は、HER3作用剤と異なる作用機構を有する。例えば、化学療法剤は、抗代謝産物(例えば、5−フルオロウラシル(flourouricil)(5−FU)、メトトレキサート(MTX)、フルダラビンなど)、抗微小管剤(例えば、ビンクリスチン;ビンブラスチン;タキサン、例えばパクリタキセルおよびドセタキセル;など)、アルキル化剤(例えば、シクロホスファミド、メルファラン、ビスクロロエチルニトロソ尿素(bischloroethylnitrosurea)など)、白金剤(例えば、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、JM−216、CI−973など)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシン、ダウノルビシンなど)、抗生物質製剤(例えば、マイトマイシンC、アクチノマイシンDなど)、トポイソメラーゼ阻害剤(例えば、エトポシド、カンプトテシンなど)または当業者に公知の他の任意の他の化学療法剤であり得る。
本発明の医薬組成物、剤形およびキットを含む本発明の様々な実施形態に使用され得る化学療法剤の特定の例としては、限定されないが、シタラビン、メルファラン、トポテカン、フルダラビン、エトポシド、イダルビシン、ダウノルビシン、ミトキサントロン、シスプラチン、パクリタキセルおよびシクロホスファミドが挙げられる。
使用され得る他の化学療法剤としては、アバレリクス、アルデスロイキン、アレムツズマブ、アリトレチノイン、アロプリノール、アルトレタミン、アミフォスチン、アナストロゾール、三酸化ヒ素、アスパラギナーゼ、BCG live、ベバシズマブ(bevaceizumab)、ベキサロテン、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、ブスルファン、カルステロン、カンプトテシン、カペシタビン、カルボプラチン、カルムスチン、セレコキシブ、セツキシマブ、クロラムブシル、シナカルセト、シスプラチン、クラドリビン、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダルベポエチンアルファ、ダウノルビシン、デニロイキンジフチトクス、デクスラゾキサン、ドセタキセル、ドキソルビシン、ドロモスタノロン、エリオットB溶液、エピルビシン、エポエチンアルファ、エストラムスチン、エトポシド、エキセメスタン、フィルグラスチム、フロクスウリジン、フルダラビン、フルオロウラシル、フルベストラント、ゲムシタビン、ゲムツズマブオゾガミシン、ゲフィチニブ、ゴセレリン、ヒドロキシウレア、イブリツモマブチウキセタン、イダルビシン、イホスファミド、イマチニブ、インターフェロンアルファ−2a、インターフェロンアルファ−2b、イリノテカン、レトロゾール、ロイコボリン、レバミゾール、ロムスチン、メクロレタミン(meclorethamine)、メゲストロール、メルファラン、メルカプトプリン、メスナ、メトトレキサート、メトキサレン、メチルプレドニゾロン、マイトマイシンC、ミトタン、ミトキサントロン、ナンドロロン、ノフェツモマブ、オブリメルセン、オプレルベキン、オキサリプラチン、パクリタキセル、パミドロネート、ペガデマーゼ、ペガスパルガーゼ、ペグフィルグラスチム、ペメトレキセド、ペントスタチン、ピポブロマン、プリカマイシン、ポリフェプロザン、ポルフィマー、プロカルバジン、キナクリン、ラスブリカーゼ、リツキシマブ、サルグラモスチム、ストレプトゾシン、タルク、タモキシフェン、タルセバ、テモゾロミド、テニポシド、テストラクトン、チオグアニン、チオテパ、トポテカン、トレミフェン、トシツモマブ、トラスツズマブ、トレチノイン、ウラシルマスタード、バルルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビンおよびゾレドロネートが挙げられる。
別の態様では、本発明は、HER3活性化癌を有する被験体が、HER3作用剤に加えて少なくとも1つの化学療法剤による処置に対して反応する可能性が低いか、および/または患者が短い時間経過を有する可能性が高いかを決定するための方法に関する。特定の実施形態では、前記方法は、被験体の癌由来の生物学的サンプルにおけるHER3および/または活性化HER3の量を測定することを含み、HER3および/または活性化HER3のレベルが高いかまたは非常に高い場合、患者は、HER3作用剤に加えて少なくとも1つの化学療法剤による処置に対して反応する可能性が低い。
別の態様では、本発明は、HER3陽性癌を有する被験体が、HER3作用剤に加えて少なくとも1つの化学療法剤による処置に対して反応する可能性が高いかを決定するための方法に関する。特定の実施形態では、前記方法は、被験体の癌由来の生物学的サンプルにおける活性化HER3の量を測定することを含み、活性化HER3のレベルが高い場合、患者は、HER3作用剤に加えて少なくとも1つの化学療法剤に対して反応する可能性が高い。特定の実施形態では、生物学的サンプルは、FFPE組織サンプルを含む。特定の実施形態では、癌は、転移性または再発性である。いくつかの実施形態では、HER3作用剤に対して感受性であり得る任意の癌をモニタリングし得る。HER3作用剤は、任意のHER3作用剤であり得る。特定の実施形態では、HER3作用剤は、本明細書に記載される薬剤の1つである。あるいは、当技術分野で公知の他のさらなる化学療法剤を評価し得る。特定の実施形態では、反応可能性または時間経過は、全生存率、無増悪期間に関して、および/またはRECIST基準を使用して測定される。
活性化HER3の測定を利用する(Utlizing)システム
別の態様では、本発明は、データベースと通信する第1のコンピューティングデバイスと;第1のコンピューティングデバイスで実行する第1のアプリケーションであって、複数の被験体に関する複数の臨床検査結果を受信して、前記複数の臨床検査結果を前記データベースに格納するように構成されており、前記複数の臨床検査結果が、被験体由来の腫瘍サンプルにおいて測定された全HER3の量、およびHER2−HER3ヘテロ二量体、リン酸化HER3またはHER3/PI3K複合体の量の少なくとも1つを含む第1のアプリケーションと;前記データベースと通信する第2のコンピューティングデバイスと;第2のコンピューティングデバイスで実行する第2のアプリケーションであって、前記複数の被験体からの被験体に関する臨床検査結果について前記データベースをクエリし;前記被験体に関する前記臨床検査結果を前記データベースから受信し;前記被験体に関する前記受信した臨床検査結果に少なくとも部分的に基づく検査結果であって、前記被験体から得られた腫瘍サンプルにおける全HER3の量、およびHER2−HER3ヘテロ二量体、リン酸化HER3またはHER3/PI3K複合体の少なくとも1つと全HER3タンパク質との比を含む検査結果を決定し;前記被験体に関する検査結果報告であって、前記腫瘍サンプルにおける活性化HER3の量を含み、前記被験体に関する前記検査結果に少なくとも部分的に基づく検査結果報告を作成し;前記患者に関する前記検査結果報告を第3のコンピューティングデバイスに送信するように構成された第2のアプリケーションとを含むシステムを含む。
いくつかの実施形態では、本発明は、システム、例えば図10に示されているシステム1000を含む。システム1000は、様々な構成要素を含む。本明細書で使用される場合、用語「構成要素」は広く定義され、任意の適切な装置、または記載されている方法を実施するのに適切な装置の集合体を含む。構成要素は、任意の特定の方法で互いに対して一体的に接続または配置される必要はない。実施形態は、互いに対する構成要素の任意の適切な構成を含む。例えば、構成要素は、同じ空間にある必要はない。しかし、いくつかの実施形態では、構成要素は、インテグラルユニットで互いに接続される。いくつかの実施形態では、同じ構成要素は、複数の機能を実行し得る。
システム1000は、1つまたはそれを超えるコンピューティングデバイス1001を含み得る。コンピューティングデバイス1001の典型的な例は、汎用コンピュータ、プリンタ、プログラムマイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、周辺集積回路素子、および本技術の方法を構成する工程を実行することができる他のデバイスまたはデバイス構成を含む。
コンピューティングデバイス1001は、メモリ1004を含む。メモリ1004は、ランダムアクセスメモリ(RAM)および読み取り専用メモリ(ROM)、ならびにリムーバブルメディアデバイス、メモリカード、フラッシュカードなどを含み得る。コンピューティングデバイス1001は、記憶デバイス1014をさらに含み得る。記憶デバイス1014は、ハードディスクドライブまたはリムーバブル記憶デバイス、例えばフロッピー(登録商標)ディスクドライブ、光ディスクドライブなどであり得る。記憶デバイス1014はまた、コンピュータプログラムまたは他の命令をコンピューティングデバイス1001にロードするための他の類似手段であり得る。
コンピューティングデバイス1001はまた、プロセッサ1002を含む。プロセッサ1002は、入力データを処理するために、1つまたはそれを超える記憶素子(例えば、メモリ1004または記憶デバイス1014)に格納された命令セットを実行する。所望により、記憶素子はまた、データまたは他の情報を保持し得る。記憶素子は、処理装置内に存在する情報源または物理メモリ1004素子の形態であり得る。
コンピューティングデバイス1001は、典型的には、コンピューティングデバイス1001の一般的な管理および動作のための実行可能なプログラム命令を提供するオペレーティングシステムを含み、典型的には、サーバのプロセッサによって実行されると、コンピューティングデバイス1001がその目的の機能を実行することを可能にする命令を格納するコンピュータ可読記憶媒体(例えば、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ、読み出し専用メモリなど)を含む。オペレーティングシステムの適切な実行およびコンピューティングデバイス1001の一般的な機能性は公知であるか、または市販されており、特に本明細書の開示を考慮して、当業者によって容易に実行される。
上記のように、いくつかの実施形態は、コンピュータ実行可能なプログラム命令を実行するように、および/またはメモリ1004に格納された情報にアクセスするように構成されたプロセッサ1002を含む。命令は、任意の適切なコンピュータプログラミング言語(例えば、C、C++、C#、Visual Basic、Java(登録商標)、Python、Perl、JavaScript(登録商標)およびActionScript(Adobe Systems,Mountain View,Calif.))で書かれたコードから、コンパイラおよび/またはインタープリタによって生成されたプロセッサ固有の命令を含み得る。コンピューティングデバイス1001による実行のための命令セットは、特定のタスク(例えば、本技術の方法を構成する工程)を実行するようにプロセッサ1002に命令する様々なコマンドを含み得る。命令セットは、ソフトウェアプログラムの形態であり得る。さらに、ソフトウェアは、本技術のように、別個のプログラムの集合体、より大きなプログラムを有するプログラムモジュール、またはプログラムモジュールの一部の形態であり得る。ソフトウェアはまた、オブジェクト指向プログラミングの形態のモジュールプログラミングを含み得る。処理装置による入力データの処理は、ユーザコマンド、前処理の結果、または別の処理装置によるリクエストに対する応答であり得る。
いくつかの実施形態では、コンピューティングデバイス1001は、シングルプロセッサ1002を含み得る。他の実施形態では、コンピューティングデバイス1001は、2つまたはそれを超えるプロセッサを含む。このようなプロセッサ1002は、マイクロプロセッサ、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)およびステートマシンを含み得る。このようなプロセッサは、プログラマブル電子デバイス、例えばPLC、プログラマブルインタラプトコントローラ(PIC)、プログラマブル論理デバイス(PLD)、プログラマブル読み取り専用メモリ(PROM)、電気的プログラマブル読み取り専用メモリ(EPROMまたはEEPROM)または他の類似デバイスをさらに含み得る。プロセッサ1002は、コミュニケーションバス1006に接続される。コミュニケーションバス1006は、1つまたはそれを超える他の構成要素、例えばプロセッサ1002、入力デバイス(例えば、マウス、キーボード、コントローラ、タッチスクリーンまたはキーパッド)および出力デバイス(例えば、ディスプレイ1008、プリンタまたはスピーカ)に接続され得る。
コンピューティングデバイス1001はまた、ネットワークコンポーネント1010を含み得る。ネットワークコンポーネント1010は、コンピューティングデバイス1001がI/Oインターフェイスを介して1つまたはそれを超えるネットワーク1016および/または他のデータベース(例えば、データベース1018)に接続することを可能にする。単一ネットワーク1016として図10に示されているが、ネットワーク1016は、任意の数のネットワークを含み得る。ネットワークコンポーネント1010は、ネットワーク1016および/またはデータベースへの転送、ならびにこれらからのデータの受信を可能にする。ネットワークコンポーネント1010は、モデム、イーサネット(登録商標)カード、またはコンピューティングデバイス1001がデータベースおよび/またはネットワーク1016(例えば、LAN、MAN、WANおよびインターネット)に接続することを可能にする任意の類似デバイスを含み得る。ネットワークコンポーネント1010は、ネットワークインターフェイスを含み得る。いくつかの実施形態では、ネットワークインターフェイスは、有線通信回線または無線通信回線を介して通信するために構成される。例えば、ネットワークインターフェイス1010は、イーサネット(登録商標)、IEEE802.11(Wi−Fi)、802.16(Wi−Max)、Bluetooth(登録商標)、赤外線などを介したネットワーク通信を可能にし得る。別の例として、ネットワークインターフェイスは、CDMA、GSM(登録商標)、UMTSまたは他のセルラ通信ネットワークなどのネットワーク通信を可能にし得る。いくつかの実施形態では、ネットワークインターフェイス1010は、別のデバイスによる、例えばユニバーサルシリアルバス(USB)、1394ファイアワイヤ、シリアル接続もしくはパラレル接続または類似インターフェイスを介したポイントツーポイント接続を可能にし得る。適切なコンピューティングデバイス1001のいくつかの実施形態は、1つまたはそれを超えるネットワーク通信のための2つまたはそれを超えるネットワークインターフェイス1010を含み得る。いくつかの実施形態では、コンピューティングデバイスは、ネットワークインターフェイス1010に加えて、またはネットワークインターフェイス1010に代えてデータベース1018を含み得る。
上記のように、システム1000は、様々なデータストアおよび他のメモリおよび記憶媒体を含み得る。これらは、様々な場所に、例えばコンピューティングデバイス1001の1つもしくはそれよりも多くに対してローカルな(および/またはその中に存在する)記憶媒体に存在し得るか、またはネットワーク1016経由でコンピューティングデバイス1001のいずれかもしくはすべてから離れた場所にあり得る。実施形態の特定のセットでは、情報は、当業者に周知のストレージエリアネットワーク(SAN)内に存在し得る。同様に、コンピュータ、サーバまたは他のネットワークデバイスに起因する機能を実行するための任意の必要なファイルは、必要に応じて、ローカルおよび/またはリモートに格納され得る。
コンピューティングデバイス1001はまた、コンピュータ可読記憶媒体リーダを含み得る。コンピュータ可読記憶媒体リーダは、コンピュータ可読記憶媒体(リモート記憶デバイス、ローカル記憶デバイス、固定記憶デバイスおよび/またはリムーバブル記憶デバイスが代表的なものである)、ならびにコンピュータ可読情報を一時的および/またはより恒久的に含有、格納、送信および受信するための記憶媒体と接続され得るか、またはこれらを受信するように構成され得る。システム1000および様々なデバイスはまた、典型的には、多数のソフトウェアアプリケーション、モジュール、サービス、または少なくとも1つの作業メモリデバイス内に配置された他のエレメント(オペレーティングシステムおよびアプリケーションプログラム、例えばクライアントアプリケーションまたはウェブブラウザを含む)を含む。代替的な実施形態は、上記のものからの多数のバリエーションを有し得ると認識すべきである。例えば、カスタマイズハードウェアも使用され得、および/またはハードウェア、ソフトウェア(アプレットなどのポータブルソフトウェアを含む)もしくはその両方の中で特定のエレメントが実行され得る。さらに、ネットワーク入力/出力デバイスなどの他のコンピューティングデバイス1020、1040への接続が用いられ得る。
コードまたはコードの一部を含有するための記憶媒体およびコンピュータ可読媒体は、情報(例えば、コンピュータ可読命令、データ構造、プログラムモジュールまたは他のデータ)を格納および/または送信するための任意の方法または技術で実行される記憶媒体および通信媒体(例えば限定されないが、揮発性および不揮発性のリムーバブルおよび非リムーバブルな媒体)を含む当技術分野で公知のまたは当技術分野で使用される任意の適切な媒体(RAM、ROM、EEPROM、フラッシュメモリまたは他のメモリ技術、CD−ROM、デジタル多用途ディスク(DVD)または他の光ストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスクストレージまたは他の磁気記憶デバイス、または所望の情報を格納するのに使用され得る任意の他の媒体であって、システム1000デバイスによってアクセスされ得る任意の他の媒体を含む)を含み得る。本明細書で提供される開示および教示に基づいて、当業者であれば、様々な実施形態を実施するための他の手段および/または方法を認識するであろう。
コンピュータ可読媒体は、限定されないが、電子記憶デバイス、光記憶デバイス、磁気記憶デバイス、またはコンピュータ可読命令をプロセッサに提供することができる他の記憶デバイスを含み得る。他の例としては、限定されないが、フロッピー(登録商標)ディスク、CD−ROM、DVD、磁気ディスク、メモリチップ、ROM、RAM、SRAM、DRAM、コンテントアドレサブルメモリ(CAM)、DDR、フラッシュメモリ、例えばNANDフラッシュまたはNORフラッシュ、ASIC、構成プロセッサ、光学ストレージ、磁気テープまたは他の磁気ストレージ、またはコンピュータプロセッサが命令を読み取り得る任意の他の媒体が挙げられる。一実施形態では、コンピューティングデバイス1001は、単一タイプのコンピュータ可読媒体、例えばランダムアクセスメモリ(RAM)を含み得る。他の実施形態では、コンピューティングデバイス1001は、2つまたはそれを超えるタイプのコンピュータ可読媒体、例えばランダムアクセスメモリ(RAM)、ディスクドライブおよびキャッシュを含み得る。コンピューティングデバイス1001は、1つまたはそれを超える外部コンピュータ可読媒体、例えば外部ハードディスクドライブまたは外部DVDドライブと通信し得る。
コンピューティングデバイス1001は、入力デバイスおよび出力デバイスへの有線接続または無線接続を容易にするのに使用され得るI/Oコンポーネント1012をさらに含み得る。適切なコンピューティングデバイス1001のいくつかの実施形態では、多数の外部デバイスまたは内部デバイス、例えばマウス、CD−ROM、DVD、キーボード、ディスプレイ、オーディオスピーカ、1つもしくはそれを超えるマイクロホン、または任意の他の入力デバイスもしくは出力デバイスを含み得るか、またはこれらと通信し得る。例えば、コンピューティングデバイスは、様々なユーザインターフェイスデバイスおよびディスプレイ1008と通信し得る。ディスプレイ1008は、限定されないが、LCD、LED、CRTなどを含む任意の適切な技術を使用し得る。
システム1000は、任意の数のコンピューティングデバイス1001を含み得る。例えば、一実施形態では、システム1000は、1つのコンピューティングデバイス1001を含む。図10に示されている例では、システム1000は、複数のコンピューティングデバイス1001、1020、1024、1028、1030を含む。コンピューティングデバイスは、同じタイプまたは異なるタイプのものであり得る。例えば、いくつかの実施形態では、コンピューティングデバイス1001は、デスクトップコンピュータを含み得るが、コンピューティングデバイス1024は、プリンタを含み得る。さらに、いくつかの実施形態では、コンピューティングデバイスは、同じ場所または異なる場所にあり得る。例えば、図10に示されている実施形態では、1つのコンピューティングデバイス1001は、試験センターにオンサイトで配置され得るが、別のコンピューティングデバイス1028は、ヘルスケアプロバイダのオフィスにオフサイトで配置され得る。
システム1000は、データベース1018をさらに含む。1つまたはそれを超えるコンピューティングデバイス1001は、データベース1018と通信する。いくつかの実施形態では、データベースは、例えば、MySQLデータベースを含み得る。データベース1018は、1つまたはそれを超えるコンピューティングデバイス(例えば、コンピューティングデバイス1001、1020または1028)によって検索可能であり得るデータを含有し得る。いくつかの実施形態では、データベース1018はそれ自体が、コンピューティングデバイス1030の一部であり得る。データベース1018は、被験体の情報、被験体サンプルの情報、参照集団、癌処置の選択肢、ヘルスケアプロバイダの情報、臨床検査結果および臨床検査報告に関するデータを含み得る。例えば、被験体に関するデータは、被験体の名前、住所、電話番号、被験体の区別番号、被験体が関連するプロバイダ、医療履歴(例えば、疾患状態、例えば癌状態、HER2状態、過去の検査結果を含む)、投薬および/または処置、親戚、ヘルスケアプロバイダ計画、口座残高、アクセス情報、または1もしくはそれを超える被験体に関する他の情報を含み得る。被験体サンプルに関するデータは、被験体の名前、住所、電話番号、被験体の区別番号、採取日、サンプルの種類(例えば、採取の性質、調製方法)、疾患状態(例えば、HER2状態、または他のバイオマーカーの状態を含む癌の種類;他の条件)、central testing laboratoryの結果、サンプルの加工日/分析日、臨床検査結果、被験体が関連するプロバイダ、医療履歴(例えば、疾患状態、例えば癌状態、HER2状態、過去の検査結果を含む)、投薬および/または処置、親戚、ヘルスケアプロバイダ計画、口座残高、アクセス情報、または1もしくはそれを超える被験体に関する他の情報を含み得る。参照集団に関するデータは、参照集団被験体の情報、参照集団被験体サンプルの情報、および臨床試験参加についての情報、参照集団被験体由来の腫瘍サンプルにおいて測定された全HER3の中央値量、およびHER2−HER3ヘテロ二量体、リン酸化HER3またはHER3/PI3K複合体の中央値量の少なくとも1つ、参照集団被験体から得られた腫瘍サンプルにおけるHER2−HER3ヘテロ二量体、リン酸化HER3またはHER3/PI3K複合体の少なくとも1つと全HER3タンパク質との中央値比を含み得る。個々の各被験体および参照集団全体のデータが含まれ得る。いくつかの実施形態では、参照集団は、被験体と同じ種類の癌を有する被験体を含む。ヘルスケアプロバイダに関するデータは、名前、住所、電話番号、職員、ユーザ名、パスワード、他のセキュリティ情報、アクセスレベル、および1またはそれを超えるプロバイダに関連する他の情報を含み得る。臨床検査結果に関するデータは、複数の被験体由来の腫瘍サンプルにおいて測定された全HER3の量、およびHER2−HER3ヘテロ二量体、リン酸化HER3またはHER3/PI3K複合体の量の少なくとも1つを含み得、被験体から得られた腫瘍サンプルにおけるHER2−HER3ヘテロ二量体、リン酸化HER3またはHER3/PI3K複合体の少なくとも1つと全HER3タンパク質との比も含み得る。検査結果報告に関するデータは、腫瘍サンプルにおける活性化HER3の量を含み得、被験体に関する検査結果(複数の被験体由来の腫瘍サンプルにおいて測定された全HER3の量、およびHER2−HER3ヘテロ二量体、リン酸化HER3またはHER3/PI3K複合体の量の少なくとも1つ、複数の被験体から得られた腫瘍サンプルにおけるHER2−HER3ヘテロ二量体、リン酸化HER3またはHER3/PI3K複合体の少なくとも1つと全HER3タンパク質との比、ならびに参照集団の情報を含む)に少なくとも部分的に基づくものであり得る。
いくつかの実施形態では、システム1000は、1つまたはそれを超えるアプリケーションを実行し得る。1つまたはそれを超えるアプリケーションは、任意の数のコンピューティングデバイス(例えば、コンピューティングデバイス1001、1020、1024、1028または1030)で実行され得る。いくつかの実施形態では、システム1000は、複数の臨床検査結果を受信するように構成されたアプリケーションを実行し得る。いくつかの実施形態では、複数の臨床検査結果は、複数の被験体に関するものであり得る。他の実施形態では、複数の臨床検査結果は、単一の被験体に関するものであり得る。システム1000は、複数の臨床検査結果をデータベース1018に格納し得る。
システム1000は、1またはそれを超える被験体に関連する臨床検査結果についてデータベース1018をクエリするように構成されたアプリケーションを実行し得る。システム1000は、1またはそれを超える被験体に関する受信した臨床検査結果に少なくとも部分的に基づいて、検査結果を決定し得る。いくつかの実施形態では、検査結果は、被験体から得られた腫瘍サンプルにおいて測定された全HER3の量、およびHER2−HER3ヘテロ二量体、リン酸化HER3またはHER3/PI3K複合体の少なくとも1つの量を含み得る。いくつかの実施形態では、検査結果は、被験体から得られた腫瘍サンプルにおいて測定された全HER3の量、およびHER2−HER3ヘテロ二量体、リン酸化HER3またはHER3/PI3K複合体の少なくとも1つと全HER3タンパク質との比を含み得る。
いくつかの実施形態では、検査結果に基づいて、システム1000は、1またはそれを超える被験体に関する検査結果報告を作成し得る。検査結果報告は、例えば、腫瘍サンプルにおける活性化HER3の量を含み得る。いくつかの実施形態では、検査結果報告は、腫瘍サンプルにおける活性化HER3の量を含み得、1またはそれを超える被験体に関する検査結果に少なくとも部分的に基づくものであり得る。例えば、いくつかの実施形態では、検査結果報告は、1またはそれを超える被験体から得られた腫瘍サンプルにおいて測定された全HER3の量、およびHER2−HER3ヘテロ二量体、リン酸化HER3またはHER3/PI3K複合体の少なくとも1つの量、1またはそれを超える被験体から得られた腫瘍サンプルにおいて測定されたHER2−HER3ヘテロ二量体、リン酸化HER3またはHER3/PI3K複合体の少なくとも1つと全HER3タンパク質との比、ならびに/または被験体と同じ種類の癌を有する被験体の参照集団におけるHER3の中央値量、およびHER2−HER3ヘテロ二量体、リン酸化HER3またはHER3/PI3K複合体の少なくとも1つと全HER3タンパク質との中央値比を含み得る。いくつかの実施形態では、被験体から得られた腫瘍サンプルにおける全HER3の量、およびHER2−HER3ヘテロ二量体、リン酸化HER3またはHER3/PI3K複合体の少なくとも1つの比を、被験体の参照集団におけるHER3の中央値量、およびHER2−HER3ヘテロ二量体、リン酸化HER3またはHER3/PI3K複合体の少なくとも1つと全HER3タンパク質との中央値比と比較することによって、検査結果報告を作成する。いくつかの実施形態では、参照集団は、被験体と同じ種類の癌を有する被験体を含む。
いくつかの実施形態では、検査結果報告は、(i)サンプルにおける全HER3の量が、参照集団の全HER3の中央値量を上回る場合、および(ii)HER2−HER3ヘテロ二量体と全HER3との比、前記サンプルにおけるリン酸化HER3と全HER3との比、またはHER3/PI3K複合体の少なくとも1つが、参照集団におけるHER2−HER3ヘテロ二量体と全HER3との中央値比、リン酸化HER3と全HER3との中央値比、またはHER3/PI3K複合体と全HER3との中央値比の少なくとも1つを上回る場合、被験体由来の腫瘍サンプルが多量の活性化HER3を有するという情報を含む。いくつかの実施形態では、検査結果報告は、被験体由来の腫瘍サンプルが、高レベルの活性化HER3を有することを特徴とする場合、被験体が、HER3ターゲティング治療に対して反応する可能性がより高いという情報を含む(ここで、高レベルの活性化HER3は、(i)被験体由来の腫瘍サンプルにおける全HER3の量が、前記被験体と同じ種類の癌を有する被験体の参照集団の全HER3の中央値量を上回ること、および(ii)腫瘍サンプルにおけるHER2−HER3ホモ二量体の量と全HER3の量との比、リン酸化HER1の量と全HER3の量との比、またはHER3−PI3K複合体の量と全HER3の量との比の少なくとも1つが、前記被験体と同じ種類の癌を有する被験体の参照集団におけるHER2−HER3ホモ二量体の量と全HER3の量との中央値比、リン酸化HER3の量と全HER3の量との中央値比、またはHER3−PI3K複合体の量と全HER3の量との中央値比の少なくとも1つを上回ることを含む)。いくつかの実施形態では、検査結果報告は、HER3ターゲティング薬についての情報を含み得る。
いくつかの実施形態では、検査結果報告は、被験体由来のサンプルにおいて測定された全HER2タンパク質の量をさらに含み得る。次いで、検査結果報告は、被験体がHER2陽性癌またはHER2陰性癌を有するかについての情報を含み得る。いくつかの実施形態では、HER2陰性癌およびHER2陽性癌は、(例えば、centralized testing laboratoryで)免疫組織化学またはインサイチューハイブリダイゼーション分析によって特性評価されている。いくつかの実施形態では、検査結果報告は、被験体がHER2陽性癌を有する場合、HER2ターゲティング治療およびHER3ターゲティング治療を含む共治療が適切な治療であろうという情報をさらに含み得る。いくつかの実施形態では、検査結果報告は、被験体がHER2陽性癌を有する場合、被験体が、HER2ターゲティング剤およびHER3ターゲティング剤の共治療に対して反応する可能性がより高いことを示す情報をさらに含み得る。特定の実施形態では、検査結果報告は、被験体サンプルにおける全HER2タンパク質の量が、HER2陽性癌の参照集団における全HER2タンパク質発現の下位5パーセンタイルに対応する全HER2タンパク質のレベルを含む第1のカットオフを下回る(すなわち、HERmark(登録商標)HER2陰性)か、全HER2タンパク質の量が、HER2陰性癌の参照集団における全HER2タンパク質発現の上位95パーセンタイルに対応する全HER2タンパク質のレベルを含む第2のカットオフを上回る(すなわち、HERmark(登録商標)HER2陽性)か、または全HER2タンパク質の量が第1のカットオフを上回るが、第2のカットオフを下回る(すなわち、HERmark(登録商標)HER2陽性)かについての情報をさらに含み得る。特定の実施形態では、検査結果報告は、腫瘍サンプルにおける全HER2タンパク質の量が第1のカットオフを上回る場合、HER2ターゲティング治療およびHER3ターゲティング治療を含む共治療が被験体に関して適切な処置であろうという情報をさらに含み得る。特定の実施形態では、検査結果報告は、生物学的サンプルにおける全HER2タンパク質の量が第1のカットオフを上回る場合、被験体が、HER2ターゲティング剤およびHER3ターゲティング剤の共治療に対して反応する可能性がより高いことを示す情報をさらに含み得る。いくつかの実施形態では、検査結果報告は、HER3ターゲティング薬および/またはHER2ターゲティング薬についての情報を含み得る。
いくつかの実施形態では、システム1000は、検査結果報告を送信し得る。いくつかの実施形態では、システム1000は、結果報告をコンピューティングデバイス(例えば、コンピューティングデバイス1020)に送信し得る。いくつかの実施形態では、システム1000は、検査結果報告を1またはそれを超える受信者に送信し得る。いくつかの実施形態では、受信者は、被験体またはヘルスケアプロバイダであり得る。いくつかの実施形態では、システムは、電子メール(例えば、被験体のヘルスケアプロバイダに関連する電子メールアカウントに)、SMSまたはテキストメッセージを介して、検査結果報告を送信し得る。
いくつかの実施形態では、システム1000は、検査結果報告をデータベース1018に格納し得る。さらに、システム1000は、電子通知をコンピューティングデバイス1028に提供し得る。コンピューティングデバイス1028は、被験体に関連し得るヘルスケアプロバイダ1026に関連し得る。いくつかの実施形態では、電子通知は、電子メール、テキストメッセージまたはプッシュ通知を含み得る。電子通知は、検査報告が、例えば、データベース1018からのダウンロードにより利用可能であることを示し得る。
活性化HER3の測定を利用する(Utlizing)方法
本発明のさらなる態様は、複数の臨床検査結果であって、被験体由来の腫瘍サンプルにおいて測定された全HER3の量、およびHER2−HER3ヘテロ二量体、リン酸化HER3またはHER3/PI3K複合体の量の少なくとも1つを含む複数の臨床検査結果をデータベースに受信することと;前記複数の臨床検査結果を前記データベースに格納することと;前記複数の被験体からの被験体に関する臨床検査結果について前記データベースをクエリすることと;前記被験体に関する前記臨床検査結果を前記データベースから受信することと;前記被験体に関する前記受信した臨床検査結果に部分的に基づく検査結果であって、前記被験体から得られた腫瘍サンプルにおける全HER3の量、およびHER2−HER3ヘテロ二量体、リン酸化HER3またはHER3/PI3K複合体の少なくとも1つと全HER3タンパク質との比を含む検査結果を決定することと;前記被験体に関する検査結果報告であって、前記腫瘍サンプルにおける活性化HER3の量を含み、前記被験体に関する前記検査結果に少なくとも部分的に基づく検査結果報告を作成することと;前記被験体に関する前記検査結果報告をコンピューティングデバイスに送信することとを含む方法を含む。
図11は、一実施形態にしたがってHER3活性化を検出することによって、癌の診断、予後予測および処置を容易にするための方法を実施するための工程のフローチャートである。いくつかの実施形態では、図11の工程は、プロセッサ、例えば汎用コンピュータのプロセッサ、モバイルデバイスまたはサーバによって実行されるプログラムコードで実行され得る。いくつかの実施形態では、これらの工程は、一群のプロセッサによって実行され得る。いくつかの実施形態では、図11に示されている1つまたはそれを超える工程は省略され得るか、または異なる順序で実施され得る。同様に、いくつかの実施形態では、図11に示されていないさらなる工程も実施され得る。図10に示されているシステム1000に関して、上記構成要素を参照して、以下の工程を説明する。
プロセッサ1002が、複数の被験体に関する複数の臨床検査結果を受信すると、方法1100は、工程1102から開始する。いくつかの実施形態では、複数の臨床検査結果は、複数の被験体由来の腫瘍サンプルにおいて測定された全HER3の量、およびHER2−HER3ヘテロ二量体、リン酸化HER3またはHER3/PI3K複合体の量の少なくとも1つを含み得る。
プロセッサ1002が複数の臨床検査結果をデータベース1018に格納すると、方法1100は、工程1104から再開する。いくつかの実施形態では、プロセッサ1002は、LAN、WANまたはインターネットを介してデータベース1018と通信し得る。他の実施形態では、データベース1018は、プロセッサ1002を収容するコンピューティングデバイス1001の内部にあり得、プロセッサ1002は、バス1006または他のハードウェア構成を介してデータベース1018と通信し得る。プロセッサ1002は、複数の臨床検査結果に関連するデータをデータベース1018に送信し得る。
プロセッサ1002が、複数の被験体からの被験体に関する臨床検査結果についてデータベース1018をクエリすると、方法1100は、工程1106から再開する。プロセッサ1002は、1つまたはそれを超えるコマンドをデータベース1018(および/またはデータベース1018を収容するコンピューティングデバイス1030)に送信することによって、データベースをクエリし得る。データベース1018を収容するコンピューティングデバイス1030はまた、データベース1018から臨床検査結果データを検索するための1つまたはそれを超える工程を実施し得る。さらに、データベース1018を収容するコンピューティングデバイス1030は、クエリした臨床検査結果データをプロセッサ1002に送信し得る。
プロセッサ1002が、データベース1018から被験体に関する臨床検査結果を受信すると、方法1100は、工程1108から再開する。いくつかの実施形態では、プロセッサ1002は、LAN、WANまたはインターネット接続を介して臨床検査結果データを受信し得る。いくつかの実施形態では、プロセッサ1002は、臨床検査結果データをメモリ1004に格納し得る。
プロセッサ1002が、被験体に関する受信した臨床検査結果に少なくとも部分的に基づく検査結果を決定すると、方法1100は、工程1110から再開する。いくつかの実施形態では、検査結果は、被験体に関連する腫瘍サンプルにおける活性化HER3の量を含み得る。いくつかの実施形態では、プロセッサ1002は、被験体に関する受信した臨床検査結果に少なくとも部分的に基づく検査結果であって、全HER3の量、およびHER2/HER3ヘテロ二量体、リン酸化HER3またはHER3/PI3K複合体の量の少なくとも1つを含む検査結果を決定し得、被験体から得られた腫瘍サンプルにおけるHER2−HER3ヘテロ二量体、リン酸化HER3またはHER3/PI3K複合体の少なくとも1つと全HER3タンパク質との比も含み得る。いくつかの実施形態では、プロセッサ1002は、参照集団におけるHER2−HER3ヘテロ二量体、リン酸化HER3またはHER3/PI3K複合体の少なくとも1つと全HER3タンパク質との比によって測定される活性化HER3の量についての情報をさらに決定し得る。例えば、いくつかの実施形態では、プロセッサ1002は、被験体から得られた腫瘍サンプルにおいて測定された全HER3の量、およびHER2−HER3ヘテロ二量体、リン酸化HER3またはHER3/PI3K複合体の少なくとも1つと全HER3タンパク質との比を決定し得る。いくつかの実施形態では、プロセッサ1002はまた、被験体から得られた腫瘍サンプルにおいて測定されたHER2−HER3ヘテロ二量体、リン酸化HER3またはHER3/PI3K複合体の少なくとも1つと全HER3タンパク質との比を決定し得る。いくつかの実施形態では、プロセッサ1002は、全HER3の量、および被験体から得られた腫瘍サンプルにおけるHER2−HER3ヘテロ二量体、リン酸化HER3またはHER3/PI3K複合体の少なくとも1つと、被験体から得られた腫瘍サンプルにおいて測定された全HER3タンパク質との比を、被験体と同じ種類の癌を有する被験体の参照集団におけるHER3の中央値量、およびHER2−HER3ヘテロ二量体、リン酸化HER3またはHER3/PI3K複合体の少なくとも1つと全HER3タンパク質との中央値比と比較し得る。
プロセッサ1002が、被験体に関する検査結果報告であって、腫瘍サンプルにおける活性化HER3の量を含む検査結果報告を作成すると、方法1100は、工程1112から再開する。検査結果報告は、活性化HER3の量についてさらに決定された情報を含み得る。いくつかの実施形態では、検査結果報告は、腫瘍サンプルにおける活性化HER3の量を含み得、被験体に関する検査結果に少なくとも部分的に基づくものであり得る。例えば、いくつかの実施形態では、検査報告は、被験体から得られた腫瘍サンプルにおいて測定された全HER3の量、およびHER2−HER3ヘテロ二量体、リン酸化HER3またはHER3/PI3K複合体の少なくとも1つの量、被験体から得られた腫瘍サンプルにおいて測定されたHER2−HER3ヘテロ二量体、リン酸化HER3またはHER3/PI3K複合体の少なくとも1つと全HER3タンパク質との比、ならびに/または被験体と同じ種類の癌を有する被験体の参照集団におけるHER3の中央値量、およびHER2−HER3ヘテロ二量体、リン酸化HER3またはHER3/PI3K複合体の少なくとも1つと全HER3タンパク質との中央値比を含み得る。いくつかの実施形態では、検査結果報告は、(i)サンプルにおける全HER3の量が、参照集団の全HER3の中央値量を上回る場合、および(ii)HER2−HER3ヘテロ二量体と全HER3との比、前記サンプルにおけるリン酸化HER3と全HER3との比、またはHER3/PI3K複合体の少なくとも1つが、参照集団におけるHER2−HER3ヘテロ二量体と全HER3との中央値比、リン酸化HER3と全HER3との中央値比、またはHER3/PI3K複合体と全HER3との中央値比の少なくとも1つを上回る場合、被験体由来の腫瘍サンプルが多量の活性化HER3を有するという情報を含む。いくつかの実施形態では、検査結果報告は、被験体由来の腫瘍サンプルが、高レベルの活性化HER3を有することを特徴とする場合、被験体が、HER3ターゲティング治療に対して反応する可能性がより高いという情報を含む(ここで、高レベルの活性化HER3は、(i)被験体由来の腫瘍サンプルにおける全HER3の量が、前記被験体と同じ種類の癌を有する被験体の参照集団の全HER3の中央値量を上回ること、および(ii)腫瘍サンプルにおけるHER2−HER3ホモ二量体の量と全HER3の量との比、リン酸化HER1の量と全HER3の量との比、またはHER3−PI3K複合体の量と全HER3の量との比の少なくとも1つが、前記被験体と同じ種類の癌を有する被験体の参照集団におけるHER2−HER3ホモ二量体の量と全HER3の量との中央値比、リン酸化HER3の量と全HER3の量との中央値比、またはHER3−PI3K複合体の量と全HER3の量との中央値比の少なくとも1つを上回ることを含む)。いくつかの実施形態では、検査結果報告は、HER3ターゲティング薬についての情報を含み得る。
いくつかの実施形態では、検査結果報告は、被験体由来のサンプルにおいて測定された全HER2タンパク質の量をさらに含み得る。次いで、検査結果報告は、被験体がHER2陽性癌またはHER2陰性癌を有するかについての情報を含み得る。いくつかの実施形態では、HER2陰性癌およびHER2陽性癌は、(例えば、centralized testing laboratoryで)免疫組織化学またはインサイチューハイブリダイゼーション分析によって特性評価されている。いくつかの実施形態では、検査結果報告は、被験体がHER2陽性癌を有する場合、HER2ターゲティング治療およびHER3ターゲティング治療を含む共治療が適切な治療であろうという情報をさらに含み得る。いくつかの実施形態では、検査結果報告は、被験体がHER2陽性癌を有する場合、被験体が、HER2ターゲティング剤およびHER3ターゲティング剤の共治療に対して反応する可能性がより高いことを示す情報をさらに含み得る。特定の実施形態では、検査結果報告は、被験体サンプルにおける全HER2タンパク質の量が、HER2陽性癌の参照集団における全HER2タンパク質発現の下位5パーセンタイルに対応する全HER2タンパク質のレベルを含む第1のカットオフを下回る(すなわち、HERmark(登録商標)HER2陰性)か、全HER2タンパク質の量が、HER2陰性癌の参照集団における全HER2タンパク質発現の上位95パーセンタイルに対応する全HER2タンパク質のレベルを含む第2のカットオフを上回る(すなわち、HERmark(登録商標)HER2陽性)か、または全HER2タンパク質の量が第1のカットオフを上回るが、第2のカットオフを下回る(すなわち、HERmark(登録商標)HER2陽性)かについての情報をさらに含み得る。特定の実施形態では、検査結果報告は、腫瘍サンプルにおける全HER2タンパク質の量が第1のカットオフを上回る場合、HER2ターゲティング治療およびHER3ターゲティング治療を含む共治療が被験体に関して適切な処置であろうという情報をさらに含み得る。特定の実施形態では、検査結果報告は、生物学的サンプルにおける全HER2タンパク質の量が第1のカットオフを上回る場合、被験体が、HER2ターゲティング剤およびHER3ターゲティング剤の共治療に対して反応する可能性がより高いことを示す情報をさらに含み得る。いくつかの実施形態では、検査結果報告は、HER3ターゲティング薬および/またはHER2ターゲティング薬についての情報を含み得る。
プロセッサ1002が、被験体に関する検査結果報告をデータベース1018に格納すると、方法1100は、工程1114から再開する。プロセッサ1002は、検査結果報告に関連するデータをデータベース1018に送信し得る。いくつかの実施形態では、ヘルスケアプロバイダ(例えば、患者のヘルスケアプロバイダ)は、格納された検査結果報告にアクセスすることができる。例えば、いくつかの実施形態では、ヘルスケアプロバイダは、データベース1018を直接的または間接的にクエリすることができる。
プロセッサ1002が、電子通知をコンピューティングデバイス1028に提供すると、方法1100は、工程1116から再開する。電子通知は、検査報告が、例えば、データベース1018からのダウンロードにより利用可能であることを示し得る。いくつかの実施形態では、コンピューティングデバイス1028は、ヘルスケアプロバイダ1026または被験体に関連し得る。いくつかの実施形態では、電子通知は、電子メール、テキストメッセージまたはプッシュ通知を含み得る。
プロセッサ1002が、被験体に関する検査結果報告をコンピューティングデバイス1020に送信すると、方法1100は、工程1118から再開する。いくつかの実施形態では、プロセッサ1002は、検査結果報告を、被験体に関連するコンピューティングデバイス1020に送信し得る。いくつかの実施形態では、プロセッサ1002は、検査結果報告を、ヘルスケアプロバイダに関連するコンピューティングデバイス1026に送信し得る。いくつかの実施形態では、プロセッサ1002は、電子メール(例えば、被験体のヘルスケアプロバイダに関連する電子メールアカウントに)、SMSまたはテキストメッセージを介して、検査結果報告を送信し得る。
上記事項は本発明の特定の実施形態に関するものであり、本発明の範囲から逸脱せずに多数の変更を行い得ると理解すべきである。以下の実施例によって本発明をさらに説明するが、以下の実施例は、本発明の範囲に限定を課すものと決して解釈されるべきではない。反対に、当業者であれば、本明細書の説明を読んだ後、本発明の精神および/または添付の特許請求の範囲から逸脱せずに、様々な他の実施形態、改変およびそれら等価物に至り得ることを想到し得ると明確に理解すべきである。
本出願で言及されるすべての発行特許および刊行物は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
以下の非限定的な実施例を参照することによって、本発明をより良く理解し得る。
実施例1
組織サンプル
56個の***腫瘍サンプルを評価した:38個はAsterand,Inc.(Detroit,MI)から購入し、18個はAstraZenecaから入手した。IHCによって決定したところ、これらのサンプルをHER2陽性またはHER2陰性のいずれかと特性評価した。サンプルの大部分は、乳管癌腫である。HERmark(登録商標)アッセイを使用して、これらのサンプルにおける全HER2タンパク質を測定し、実施例7に記載されているカットオフを使用して、それらをHERmark(登録商標)HER2陽性(n=24)、HERmark(登録商標)HER2陰性(n=27)およびHERmark(登録商標)境界域(equivocal)(n=5)と特性評価した。
実施例2
固定、処理およびパラフィン包埋
切除の15〜30分以内に、すべての組織(0.3〜1.0gm)を固定または急速凍結した。供給業者の標準的な操作手順(これは、HER2試験用の***腫瘍組織の調製に関するASCO/CAPガイドラインおよび他のHER3固定方法と一致する)によって指示されるように、中性緩衝ホルマリン(10%NBF)中で、すべての組織を同様に固定した(すなわち、10%NBF、約24時間、4℃)。別の研究では、同様の方法で採取および処理した異種移植腫瘍で発現されるリン酸化HERの保存が示されている(Mukherjeeら、2011)。
ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)(F12(50:50)、10%FBS、1%PSQ(10%ウシ胎児血清、1%ペニシリン−ストレプトマイシン)および2mM L−グルタミン)中で、すべての細胞株を5%CO2、37℃で維持した。各細胞株について、少なくとも10個の150mm培養プレート上で、細胞をほぼコンフルエンスまで成長させた。培地を除去した後、冷1×PBSで細胞を1回洗浄し、15mLの10%NBF(中性緩衝ホルマリン)を各プレートに追加した。細胞を4℃で一晩(>16時間)固定した。固定液を除去した後、残留固定液で剥離することによって細胞を回収し、3200×gで15分間遠心分離した。細胞ペレットをゴム製Oリングに移し、ろ紙で包み、処理カセットに配置した。自動Tissue−Tekプロセッサを脱水およびパラフィン注入処理に使用した。簡潔に言えば、細胞ペレットを漸増濃度のアルコール、Clear−Rite清澄剤(キシレン代替物)およびパラフィンに曝露した。処理した後、パラフィン包埋ステーションを使用して、細胞ペレットをブロックに包埋した。細胞ペレットの処理に使用したすべての溶媒は、Richard−Allen Scientificから入手した。
実施例3
顕微鏡切片作製法
ミクロトーム(LEICA)を用いて厚さ5μmの切片をスライスし、シリアル番号が付された正荷電ガラススライド(VWR)上に置いた。スライドを30分間空気乾燥し、次いで、60℃の加熱オーブン中で1時間ベークした。すべてのサンプルスライドを今後のアッセイのために4℃で保存した。各サンプルについて、ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)で1つのスライドを染色し、病理学者が腫瘍内容物について調査した。非腫瘍要素を同定し、微小切断して70%以上の腫瘍濃縮を得た。
実施例4
抗体コンジュゲート試薬
HER2の細胞内ドメイン、HER3の細胞内ドメイン、およびHER3のリン酸化チロシン1289に対するモノクローナル抗体を使用した。HER2およびHER3に対する一次抗体ならびに他の試薬は、Labvision(HER2 cat.#:MS−325およびMS−599、HER3 cat.#:MS−310);Cell Signaling(HER2 cat.#:2165;リン酸化HER3pY1289 cat # 4791);Millipore(PI3K(Ab6)cat#05−212);およびSouthern Biotech(ヤギ抗マウスIgG cat.#:1030−01、ヤギF(ab’)2抗ウサギIgG cat.#:4052−01)から購入した。モノクローナル抗体B9A11は、Monogram Biosciences(CA)(ATCC#PTA−10574)によるHER3に対して生じる独自モノクローナル抗体である。
VeraTag(登録商標)レポーター分子(Pro11およびPro125)およびストレプトアビジンコンジュゲートメチレンブルー(「分子ハサミ」)を合成し、例えば、上記にならびに米国特許第7,105,308号および米国特許第7,255,999号(これらは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているプロトコールにしたがって精製した。製造業者のプロトコールにしたがって、リンカーとしてスルホ−NHS−LC−LC−ビオチン(Pierce)を使用して、VeraTag(登録商標)レポーター分子コンジュゲート抗体およびビオチンコンジュゲート抗体を作製し、HPLC(Agilent)によってコンジュゲーション生成物を精製した。特定の実験では、VeraTag(登録商標)レポーター分子またはビオチンを一次抗体にコンジュゲートした。アッセイフォーマットに応じて、VeraTag(登録商標)レポーター分子またはビオチンを、一次抗体に結合する二次抗体にコンジュゲートした。
下記実験において、HER2、HER3、HER2−HER3ヘテロ二量体、HER3pY1289およびHER3/PI3K複合体を測定するためのアッセイでは、VeraTag(登録商標)レポーター分子Pro11を使用した。HER2−HER3ヘテロ二量体を検出するためのアッセイフォーマットでは、非コンジュゲート一次抗HER3マウスモノクローナル抗体(B9A11)および非コンジュゲート一次抗HER2ウサギモノクローナル一次抗体を使用した。次いで、それぞれVeraTag(登録商標)レポーター分子Pro11にコンジュゲートした二次抗体ヤギ抗マウスIgG、およびビオチンにコンジュゲートした二次ヤギF(ab’)2抗ウサギIgGの結合を介して、これらの一次抗体が結合する標的を検出した。HER3/PI3K複合体を検出するためのアッセイフォーマットは、ビオチンを抗HER3抗体B9A11にコンジュゲートすること、およびVeraTag(登録商標)レポーター分子Pro11をp85−PI3K抗体(Ab6)にコンジュゲートすることを含んでいた。HER3/PI3K複合体アッセイフォーマットでは、二次抗体を使用しなかった。
実施例5
VeraTag(登録商標)アッセイ
様々なVeraTag(登録商標)アッセイフォーマットを図1に示す。このアッセイフォーマットは、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織サンプル(パネルA)または組織溶解物サンプル(パネルB)を使用するように改変し得る。加えて、光放出フォーマットを使用して(パネルAおよびB)、または還元フォーマットを使用して(例えば、DTTを使用して)(パネルC)、VeraTag(登録商標)レポーター分子を、それらが結合している抗体から切断し得る。光放出フォーマットでは、例えば、光による切断誘導剤の光誘導に応じて、拡散性反応性一重項酸素が、VeraTag(登録商標)レポーター分子とHER3抗体との間の共有結合リンカーを切断する(「hv」)。還元フォーマットでは、還元剤(例えば、DTTなど)を使用して、VeraTag(登録商標)レポーター分子とHER3抗体との間の共有結合リンカーを切断し得る。切断後、キャピラリー電気泳動(CE)分離を実施して、切断されたVeraTag(登録商標)レポーター分子(タグ)(これは、電気泳動図で可視化され得る)を分離し得る。得られた電気泳動図のx軸は、切断されたVeraTag(登録商標)レポーター分子がキャピラリーから溶出した時点(すなわち、電気泳動移動度に基づく)を示しており、蛍光強度はy軸上に示されている。複数のタンパク質標的の量または存在を検出するようにVeraTag(登録商標)アッセイをフォーマットする場合、電気泳動図上で各タグを同定および定量し得るように、異なる電気泳動移動度を有するVeraTag(登録商標)レポーター分子に標的特異的抗体をコンジュゲートし得る。
以下の方法では、生物学的サンプルにおけるバイオマーカーレベルを測定するのに使用され得る一般的なVeraTag(登録商標)光放出アッセイを説明する。
一般に、(Sperindeら、2010,Clin.Cancer Res.16(16):4226−4235;Shi,Yら、2009,Diagn.Mol.Pathol.18(1):11−21)に記載されているように、脱パラフィン処理および抗原回復を実施した。一連の溶媒を使用して、FFPEサンプルを脱パラフィン処理/再水和した。簡潔に言えば、スライドをキシレン(2×、5分間)、100%エタノール(2×、5分間)、70%エタノール(2×、5分間)および脱イオン水(2×、5分間)に逐次に浸漬した。電子レンジ(Spacemaker II,GE)を使用して、250mLの1×クエン酸緩衝液(pH6.0)(Lab Vision)を含有するディッシュ中で、再水和サンプルの熱誘導エピトープ回復を実施した:出力10で3分間、続いて出力3で10分間。室温で20分間冷却した後、脱イオン水でスライドを1回すすいだ。試薬をスライド上に保持するために、疎水性のペン(Zymed)を使用して、スライド上の切片周囲に疎水性のサークルを描いた。次いで、1%マウス血清と、1.5%BSAと、プロテアーゼ阻害剤およびホスファターゼ阻害剤(Roche)1×PBS溶液のカクテルとを含有するブロッキング緩衝液を用いて、サンプルを1時間ブロッキングした。
吸引によってブロッキング緩衝液を除去した後、ブロッキング緩衝液中で調製したVeraTag(登録商標)レポーター分子コンジュゲート抗体およびビオチンコンジュゲート抗体の混合物を追加し、4℃の加湿チャンバー中で、結合反応物を振盪しながら一晩インキュベートした。抗体混合物を吸引し、0.25%Triton X−100の1×PBS溶液を含有する緩衝液でサンプルを洗浄し、1×PBS中、濃度2.5μg/mLのストレプトアビジンコンジュゲートメチレンブルーを追加した。細胞株および***組織サンプルの両方を使用して、シグナルの特異性およびアッセイのダイナミックレンジに基づいて、抗体およびストレプトアビジン−光増感剤コンジュゲートの濃度をすべて最適化した。室温で1時間インキュベートした後、ストレプトアビジン−メチレンブルー試薬を吸引し、洗浄緩衝液でサンプルを1回洗浄し、続いて、脱イオン水を3回交換した。3pMフルオレセインおよび2つのCE内部マーカー(MFおよびML)の0.01×PBS溶液を含有するイルミネーションバッファー(Illumination buffer)をサンプル切片上に追加した。電子アイスキューブ/チラーブロック(Torrey Pine Scientific)を備える自社製LEDアレイイルミネータを使用して、光活性化切断によって、結合したVeraTag(登録商標)レポーター分子を約4℃で放出させた。放出されたVeraTag(登録商標)レポーター分子を含有するCEサンプルを、スライド上の組織切片上から採取し、6kVおよび50秒間、30℃のCE注入条件下で、ABI3100 CE機器(22cmキャピラリーアレイ)(Applied Biosystems)によって、CEサンプル中の放出されたVeraTag(登録商標)レポーター分子を分離および検出した。
還元(DTT)放出アッセイフォーマットは類似するが、以下の一般的な差異がある。吸引によってブロッキング緩衝液を除去した後、バイオマーカー特異的な抗体(例えば、HER3抗体)のブロッキング緩衝液を含有する溶液をスライドに追加し、加湿チャンバー中で穏やかに振盪しながら4℃で一晩放置した。抗体溶液を吸引し、0.25%TritonX−100を含有するPBSでサンプルを5分間洗浄し、次いで、PBSのみで5分間洗浄した。吸引後、VeraTag(登録商標)レポーター分子のブロッキング緩衝液で標識した二次抗体を追加した。加湿チャンバー中で、二次抗体を室温で1.5時間インキュベートした。次に、脱イオン水でスライドをすすぎ、続いて、0.25%Triton X−100を含有するPBSで5分間すすいだ。次いで、スライドをラックにロードし、脱イオン水で6回浸漬した。スライドを遠心分離した後、1.0mMジチオスレイトール(DTT)、3pMフルオレセインおよび2つのCE内部マーカー(MFおよびML)の0.01×PBS溶液を含有する100μLの捕捉緩衝液をサンプル切片上に追加した。VeraTag(登録商標)レポーター分子の放出を可能にするために、加湿チャンバー中で、スライドを2時間インキュベートした。各スライドの捕捉緩衝液をCE96ウェルプレートに移し、次いで、DTTを含有しない捕捉緩衝液で適切に(一般に10倍)希釈した。6kVおよび50秒間のCE注入条件下で、ABI3100 CE機器(22cmキャピラリーアレイ)(Applied Biosystems)によって、CEサンプル中の放出されたVeraTag(登録商標)レポーター分子を分離および検出した。
タンパク質特異的抗体を使用する以外は上記と同様に、VeraTag(登録商標)アッセイを使用して、本明細書に記載されるバイオマーカーを検出し得る。これらのアッセイは、以下の表1に特定されている。これらの各VeraTag(登録商標)アッセイでは、10%ヤギ血清(Sigma)と、1mg/ml hIgG(Sigma)と、1.5%BSAと、プロテアーゼ阻害剤およびホスファターゼ阻害剤(Roche)1×PBS溶液のカクテルとのブロッキング緩衝液を使用した。これらのアッセイに使用したVeraTag(登録商標)レポーター分子コンジュゲート抗体およびビオチンコンジュゲート抗体の濃度を表1に示す。
異なるフォーマットのVeraTag(登録商標)アッセイのリードアウトは、RPA×IB×BNF/TAである。このリードアウトは、以下のように定義される:RPA=キャピラリー電気泳動によって精製および定量した放出VeraTagの蛍光の(回復を補正する)内部標準に対する相対ピーク面積(例えば、フルオレセインのピーク面積);IB=蛍光タグの光活性化および放出中に使用したイリューミネイションバッファーの容量;BNF=各バッチでアッセイし、バッチごとのシグナル変動を正規化するのに使用した、対照細胞株から求めたバッチ正規化係数;TA=H&E染色によるアッセイ後の染色および認定病理学者による測定によって決定した、サンプルの腫瘍面積。腫瘍の量に対して蛍光アッセイシグナルを正規化するために、これを使用する。
実施例6
VeraTag(登録商標)アッセイのバッチ一貫性
評価した腫瘍サンプルの数により、腫瘍サンプルのバッチについて、VeraTag(登録商標)アッセイを実行した。また、各バッチについて、バッチ間の測定結果を正規化するために、対照細胞株を評価した。腫瘍サンプルのバイオマーカー測定結果の散布図を図2に示す。相対ピーク面積(RPA)で測定した各サンプルの蛍光強度は、y軸上に示されている。対照細胞株の測定結果は各グラフの左側にあり、腫瘍サンプルの測定結果は各グラフの右側にある。黒丸はシグナルを示し、白丸はバックグラウンドを表す。
図2のパネルAおよびBは、それぞれ全HER2およびHER3のレベルを測定するアッセイの結果を示す。図2のパネルC、DおよびEは、活性化HER3(具体的には、それぞれHER2−HER3ヘテロ二量体、チロシン1289でリン酸化されたHER3(Phospo−HER3)およびHER3/PI3K複合体)を測定するアッセイの結果を示す。
対照細胞株の測定結果は、バッチごとに一貫性があることが見出されたが、これは、VeraTag(登録商標)アッセイの測定結果に関するバッチごとの分析再現性を示している。
実施例7
HERmark(登録商標)HER2アッセイを使用した腫瘍の特性評価
Huangら、Am.J.Clin.Pathol.134:303−311(2010)に記載されている方法にしたがって、全HER2レベルに基づいて腫瘍サンプルを特性評価するHERmark(登録商標)アッセイのために、カットオフを予め確立した。central testing facilityにおいて、免疫組織化学(IHC)および/またはインサイチューハイブリダイゼーション(ISH)を使用して最新の臨床標準ガイドラインによってHER2陽性またはHER2陰性と以前に特性評価された1,090個の乳癌サンプル(すなわち、FISH陽性、IHC3+スコアまたはIHC2+およびFISH+)について、HERmark(登録商標)アッセイ(Monogram Biosciences,CA)を使用して、全HER2発現を決定した。このデータは、散布図として図3に示されている。HERmark(登録商標)HER2陽性のカットオフは、参照方法によってHER2陰性と分類されたサンプル(IHC0、IHC1+またはIHC2+/ISH−またはISH−)のHER2発現の95パーセンタイルを上回る(超える)発現と設定した。HERmark(登録商標)HER2陰性のカットオフは、参照方法によってHER2陽性と分類されたサンプル(IHC3+またはIHC2+/ISH+またはISH+)の5パーセンタイルを下回る(未満の)発現と設定した。HERmark(登録商標)HER2境界性状態は、HER2陽性サンプルの5パーセンタイルカットオフと、HER2陰性サンプルの95パーセンタイルカットオフとの間の(すなわち、2つのカットオフの間の)重複部分に該当する発現レベルと設定した。
実施例8
HERmark(登録商標)HER2陽性乳癌とHERmark(登録商標)HER2陰性乳癌との間では、バイオマーカーレベルが異なる
***腫瘍サンプルにおける異なるバイオマーカーの量を示すグラフを図4に示す。評価したバイオマーカーは、全HER2(H2T)、全HER3(H3T)、HER2−HER3ヘテロ二量体(H23D)、チロシン1289でリン酸化されたHER3(Phospho−HER3)およびHER3/PI3K複合体(HER3−PI3キナーゼ)であった。それぞれ図4のパネルA〜Eを参照のこと。実施例5に記載されているように、VeraTag(登録商標)アッセイを使用して、バイオマーカーレベルを測定した。散乱法を使用して、バイオマーカーレベルをプロットした。サンプル数はx軸上に示されており、VeraTag(登録商標)アッセイのリードアウト(RPA×IB×BNF/TA)はy軸上に示されている。マンホイットニー統計分析を実施して、HERmark(登録商標)HER2陰性癌とHERmark(登録商標)HER2陽性癌との間で平均バイオマーカーレベルが異なるかを決定した。高HER2***腫瘍および低HER2***腫瘍では、HER3の分布および中央値レベルは類似しているが、高HER2***腫瘍では、低HER2***腫瘍と比較して、HER2−HER3ヘテロ二量体およびリン酸化HER3として測定した活性化HER3の分布および中央値レベルが有意に大きく、これは、HER3シグナル伝達におけるHER2の主要な役割を裏付けている。
実施例9
バイオマーカーレベルの相関関係およびスピアマン相関係数分析
バイオマーカーレベルの統計的分析を行って、各バイオマーカーレベルが、腫瘍サンプルにおける任意の他のバイオマーカーレベルと相関するかを決定した。実施例5に記載されているように、VeraTag(登録商標)アッセイを使用して、バイオマーカーレベルを測定した。スピアマン順位相関試験分析を実施して、スピアマン順位相関係数(スピアマン)およびバイオマーカーの各ペアワイズ比較のp値を特定した。
図3で測定したマーカー(高対低全HER2)と活性化HER3との間の統計的関係レベルを示すグラフを図5に示す。パネルAは、HER2−HER3ヘテロ二量体と全HER2との間の相関関係を示す。パネルBは、HER2−HER3ヘテロ二量体と全HER3との間の相関関係を示す。パネルCは、HER2−HER3ヘテロ二量体とリン酸化HER3との間の相関関係を示す。HER2−HER3ヘテロ二量体と全HER2との間には有意な相関関係があるが、HER2−HER3ヘテロ二量体と全HER3との間では、相関関係が全HER2の場合よりも大きく(スピアマンr=0.8641対0.3572)、これは、HER3シグナル伝達におけるHER2の主要な役割を裏付けている。HER2−HER3ヘテロ二量体とリン酸化HER3との間の有意な全体的な相関関係は、2つの異なる方法によって測定した場合に、活性化HER3が所定のサンプルにおいて一貫していることを示している。
図3で測定したマーカー(高全HER2対低全HER2)とリン酸化HER3との間の統計的関係を示すグラフを図6に示す。パネルAは、リン酸化HER3と全HER2との間の相関関係を示す。パネルBは、リン酸化HER3と全HER3との間の相関関係を示す。いずれの場合においても、リン酸化HER3と全HER2との間の全体的な相関関係およびリン酸化HER3と全HER3との間の全体的な相関関係は有意であるが、リン酸化HER3によって測定したHER3の活性化は、全HER3よりも密接に全HER2と相関している(スピアマンr=0.7291;p<0.0001対0.2865;p<0.0307)。この統計分析の結果を要約した表を図7に示す(パネルA:すべてのサンプル;パネルB:HERmark(登録商標)HER2陰性サンプル;パネルC:HERmark(登録商標)HER2陽性サンプル)。有意なp値(p<0.05)を有するスピアマン順位相関係数には下線が付されている。
実施例10
マーカーレベルの相関関係を示すヒートマップ
各癌のサンプルのサブセットが高活性化HER3を有すると同定し得るかを決定するために、VeraTag(登録商標)アッセイを使用してバイオマーカーレベルを測定し、ヒートマップ上にプロットした。HER3ターゲティング治療は、HER3活性化によって有意に駆動される癌を処置するのに有効である可能性がより高いので、HER3活性化癌を有する被験体を同定することは、HER3ターゲティング治療に対してより良く反応する被験体を同定するのに役立ち得る。発現パターンを同定するために、VeraTag(登録商標)アッセイによって測定した異なるバイオマーカーのレベルをヒートマップ上にプロットした。
図8は、サンプルのヒートマップを示す。パネルAは、高HERmark(登録商標)HER2状態から低HERmark(登録商標)HER2状態に分類した、すべての乳癌腫瘍サンプルのバイオマーカーレベルを示すヒートマップである。パネルBは、HERmark(登録商標)HER2状態に基づいて腫瘍サンプルを分別した2つのヒートマップを示す。
各腫瘍サンプルのサンプル数は、各ヒートマップの下部に示されており、アッセイで分析したバイオマーカーは、各ヒートマップの左側に示されている。最高発現(≧90パーセンタイル)を示したサンプルは、濃灰色で示されている;中発現(50パーセンタイル)のサンプルは黒色で示されており、低発現(≦10パーセンタイル)のサンプルは淡灰色で示されている。中間の濃淡は、中間の発現レベルを反映する。最高レベルの活性化HER3を有するサンプルは、矢印でマークされている。高レベルのHER2−HER3ヘテロ二量体、HER3リン酸化およびHER3/PI3K複合体(すなわち、活性化HER3へのPI3Kの動員)の少なくとも1つと組み合わせた中全HER3測定結果から高全HER3測定結果の評価に基づいて、サンプルを最高レベルの活性化HER3を有すると分類した。
例えば、図8Aのサンプル6は、中レベルの全HER2を有するが、非常に高レベルのHER2−HER3ヘテロ二量体を有する。受容体の活性化には二量体化が必要であるので、非常に高レベルの二量体化は、HER3受容体の活性化の増加を示す可能性が高い。別の例は図8Aのサンプル19であり、中レベルの全HER2を有していたが、非常に高レベルのHER3リン酸化1289レベルを有していた。1289位におけるHER3のリン酸化はHER3シグナル伝達を活性化するので、高レベルのこのバイオマーカーは、サンプルにおけるHER3活性の増加を示すとも考えられた。HER3経路のヒートマッププロファイリングにより、HER2状態のみによる層別化によっては見出されないHER3活性化サンプルを同定することができた。全HER2によってランク付けしたヒートマップにより、サンプルのサブセットを同定し、クラスタ分析(実施例11)にしたがって分類した。リン酸化HER3およびHER3−PI3キナーゼ複合体は、全体的な全HER2レベルと有意に相関するが(図7)、HERmark(登録商標)HER2低乳癌サンプルのサブグループにおける高レベルのリン酸化HER3およびHER3−PI3キナーゼ複合体は、HER2の増幅以外に、さらなるHER3活性化機構も存在し得ることを示唆している。
実施例11
乳癌サンプルの階層的クラスタ分析
図9は、VeraTag(登録商標)アッセイによって測定したバイオマーカーレベルによる、腫瘍サンプルの階層的クラスタ分析を示す。パネルAは、HERmark(登録商標)HER2陰性乳癌サンプルの分析を示し、パネルBは、HERmark(登録商標)HER2陽性乳癌サンプルの分析を示す。サンプル番号は、グラフの下部に示されている。分析したバイオマーカーは、グラフの左側に沿って示されている:HER3/PI3K複合体(HER3−PI3K)、全HER3(H3T)、HER2−HER3ヘテロ二量体(H23D)、全HER2(H2T)、およびチロシン1289でリン酸化されたHER3(p−HER3)。最高レベルの活性化HER3を発現する腫瘍は、グラフの右側にクラスタリングされている。得られた系統樹により、活性化HER3を有する腫瘍のサブグループ(これらは、H2Tによってランク付けしたヒートマップによって同定されたものと同じである)が同定された。
本出願で言及されるすべての発行特許および刊行物は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
本発明の好ましい実施形態を例証および説明したが、本発明の精神および範囲から逸脱せずに、様々な変更を行い得ると認識されよう。