JP6396964B2 - 導電性ペースト並びに電子基板及びその製造方法 - Google Patents
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Description
本発明の導電性ペーストは、焼成温度以上の融点を有する高融点金属粒子と、400℃以下の融点を有する合金を含む溶融合金粒子と、活性金属を含む活性金属粒子と、有機ビヒクルとを含む。本発明の導電性ペーストを用いると、セラミックス基板に導電部が強固に接合できる理由は次のように推定できる。すなわち、ペースト中に含まれる溶融合金粒子が低温で溶融して活性金属粒子の表面を覆うことによって、高温でも活性金属やその化合物が周辺に存在するガス(焼成雰囲気ガスの窒素や有機ビヒクルが分解して発生する炭素など)と反応するのを防止していると推定できる。このような作用によって、活性金属は窒素雰囲気中でも高温までその活性を保持でき、溶融金属成分中に活性を保持した活性金属が含まれることで溶融金属はセラミック基板に濡れて活性金属とセラミックス基板との間で反応することが可能となり、メタライズ膜のめくれ上がりや収縮も抑制されると推定できる。なお、溶融金属は、文字通り液化流動しているのでパターンのめくれ上がりや丸く縮んでしまう現象、又は反対に基板に濡れすぎてパターンが広がってしまう現象などは、このような作用だけでは完全にコントロールできないと推定できる。そこで、本発明では、溶融金属や活性金属化合物とは別に高融点金属粒子を加えることで、前述のような収縮や広がり現象のコントロールを抑制している。すなわち、溶融金属成分が高融点金属粒子の表面にも濡れることで過剰な流動を防いでいると推定できる。溶融金属及び高融点金属の種類よっては焼成中に溶融金属と高融点金属との間で合金化が進んで溶融金属の融点が上昇することを利用して流動化を抑制することも可能である。
高融点金属粒子を形成する金属は、焼成温度を超える融点(例えば950℃を超え、2500℃以下)を有していれば、特に限定されない。具体的には、前記金属としては、例えば、Cu、Ag、Ni、W、Mo、Au、Pt、Pdなどが挙げられる。これらの金属は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。金属粒子は、異種の金属粒子の組み合わせであってもよく、融点が焼成温度以上であれば、二種以上を組み合わせた合金で形成されていてもよい。これらの金属のうち、Cu、Ag及びNiからなる群より選択された少なくとも1種の金属又はこの金属を含む合金が好ましい。
溶融合金粒子は、焼成温度で溶融し、かつ400℃以下の融点を有する合金を含み、ペーストの焼成温度以下で焼成時に溶融して流動化することにより、導電部とセラミックス基板との接合性を向上できる。400℃以下の融点を有する合金の融点は、400℃以下であればよく、例えば80〜400℃、好ましくは100〜300℃(例えば120〜280℃)、さらに好ましくは150〜250℃(特に200〜240℃)程度である。
活性金属粒子に含まれる活性金属としては、例えば、周期表第4A族金属であるTi、Zr、Hfが挙げられる。これらの活性金属は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの活性金属のうち、焼成工程での活性に優れ、セラミックス基板と導電部との接合力を向上できる点から、Ti及び/又はZrが好ましく、Tiが特に好ましい。
有機ビヒクルは、金属粒子を含む導電性ペーストの有機ビヒクルとして利用される慣用の有機ビヒクル、例えば、有機バインダー及び/又は有機溶剤であってもよい。有機ビヒクルは、有機バインダー及び有機溶剤のいずれか一方であってもよいが、通常、有機バインダーと有機溶剤との組み合わせ(有機バインダーの有機溶剤による溶解物)である。
導電性ペーストは、本発明の効果を損なわない範囲で、慣用の添加剤をさらに含んでいてもよい。慣用の添加剤としては、例えば、無機バインダー(ガラスフリットなど)、硬化剤(アクリル系樹脂の硬化剤など)、着色剤(染顔料など)、色相改良剤、染料定着剤、光沢付与剤、金属腐食防止剤、安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤など)、界面活性剤又は分散剤(アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤など)、分散安定化剤、粘度調整剤又はレオロジー調整剤、保湿剤、チクソトロピー性賦与剤、レベリング剤、消泡剤、殺菌剤、充填剤などが挙げられる。これらの他の成分は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。他の成分の割合は、成分の種類に応じて選択でき、通常、導電性ペースト全体に対して10質量%以下(例えば0.01〜10質量%)程度である。さらに、本発明の導電性ペーストは、ガラスフリットなどの無機バインダーを含んでいなくてもよい。
本発明の電子基板(導電部付セラミックス基板)は、セラミックス基板に前記導電性ペーストを付着させる付着工程、前記セラミックス基板に付着した前記導電性ペーストを焼成して導電部を形成する焼成工程を経て得られる。
本発明の電子基板は、前記製造方法によって得られ、セラミックス基板と、焼成温度以上の融点を有する高融点金属と、400℃以下の融点を有する溶融合金と、活性金属とを含む導電部とを備えている。
(高融点金属粒子)
Cu粒子A:中心粒径0.1μmの銅粒子、融点1085℃
Cu粒子B:中心粒径0.5μmの銅粒子、融点1085℃
Cu粒子C:中心粒径3μmの銅粒子、融点1085℃
Cu粒子D:中心粒径7μmの銅粒子、融点1085℃
Cu粒子E:中心粒径15μmの銅粒子、融点1085℃
Ag粒子:中心粒径0.5μmの銀粒子、融点962℃
Ni粒子:中心粒径0.7μmのニッケル粒子、融点1455℃。
SnAgCu粒子:中心粒径5μmのSn−Ag−Cu合金粒子、融点220℃
SnBi粒子:中心粒径5μmのSn−Bi合金粒子、融点140℃
AuSn粒子:中心粒径5μmのAu−Sn合金粒子、融点280℃
AgCu粒子:中心粒径5μmのAg−Cu合金粒子、融点780℃。
水素化チタン(TiH2)粒子:中心粒径6μmの水素化チタン粒子
ホウ化チタン(TiB2)粒子:中心粒径3μmのホウ化チタン粒子
水素化ジルコニウム(ZrH2)粒子:中心粒径5μmの水素化ジルコニウム粒子。
有機バインダー:ポリブチルメタクリレート
有機溶剤:テルピネオール。
50.8mm×50.8mmのセラミックス基板の表面に、2mm×2mmサイズの正方形パターンを縦横並べて配置したサンプルを評価基板とした。パターン間は、電気めっきができるように細線で連結した。
(パターン形状)
焼成後の電子基板の外観(2mm×2mmサイズの正方形パターン)を目視及びルーペ(15倍)で観察し、形状が変形せずに保持されていたパターンについては、さらに画像測定し、以下の基準で評価した。
×(収縮):パターンのエッジ部分はめくれ上がっていないが、正方形が崩れてエッジ部が丸くなったり、サイズダウンしている
○(良好):2mm×2mmパターンの形状が変形せずに保持されているが、さらに画像測定すると、1.97mm×1.97mm〜2.03mm×2.03mmの範囲にはない
◎(特に良好):2mm×2mmパターンの形状が変形せずに保持されており、さらに画像測定において2mm×2mmパターンのサイズがほとんど変わることなく、1.97mm×1.97mm〜2.03mm×2.03mmの範囲にある。
パターン形状の良好な電子基板についてピール強度試験を行った。錫メッキ銅線(ピール線)を2mm×2mmの正方形パターンの上面に沿わせて(正方形の中心部を通り、辺に平行に沿わせて)はんだ付けした後、ピール線を2mmパターンの外側で90度折り曲げ、基板面に対して垂直上方に引っ張り上げて膜を引き剥がしてピール強度を測定した。破壊の際の最も高い強度をピール強度として記録した。また、試験後の破壊場所を観察し、破壊状態を以下の基準で評価した。
○(基板破壊):基板がえぐりとられるように破壊し、かつピール強度が2kg以上4kg未満
○(界面破壊):基板とメタライズ膜との界面で破壊し、かつピール強度が2kg以上
×(界面破壊):基板とメタライズ膜との界面で破壊し、かつピール強度が2kg未満
×(膜内破壊):メタライズ膜がボソボソで膜の内部で破壊し、かつピール強度が2kg未満。
パターン形状の評価結果及びピール強度試験の評価結果について、以下の基準で総合評価した。
○:パターン形状とピール強度の判定がいずれも「○」、あるいは一方が「◎」でもう一方が「○」
×:パターン形状とピール強度の判定のいずれかが「×」。
表1に示す組成で調製したペースト1をスクリーン印刷で前記評価パターンに印刷した後、窒素置換したトンネル炉で焼成した。セラミックス基板としては窒化アルミニウム基板を用いた。焼成は最高温度900℃にて行い、この温度を10分間保持し、昇温降温含めた炉への投入から回収までの時間は約60分間とした。炉から出てきた焼成後の基板のメタライズ膜を観察したところ良好な形状であった。焼成後のメタライズ膜の表面をバフ研磨した後、表面に電解ニッケル金メッキを施した。得られた電子基板のピール強度試験に供したところ、破壊モードが基板破壊となり、基板とメタライズ膜とは基板強度以上に高い強度で接合されており、十分な接合性を示した。
ペースト1の代わりに表1に示すペースト2及び3を用いて、ペースト中の溶融合金粒子を変更する以外は実施例1と同様にして電子基板を得た。得られた電子基板は、パターン形状、ピール試験ともに良好な結果であった。しかし、実施例1との相対的な評価では、実施例2はパターン形状が若干低下し、実施例3はピール強度が若干低下した。
ペースト1の代わりに表1に示すペースト4及び5を用いて、ペースト中の活性金属粒子を変更する以外は実施例1と同様にして電子基板を得た。得られた電子基板は、パターン形状、ピール試験ともに良好な結果であった。しかし、実施例1との相対的な評価では、いずれもピール強度が若干低下した。
ペースト1の代わりに表1に示すペースト6及び7を用いて、ペースト中の高融点金属粒子を変更する以外は実施例1と同様にして電子基板を得た。得られた電子基板は、パターン形状、ピール試験ともに実施例1と同一の良好な結果であった。
ペースト1の代わりに表1に示すペースト8及び9を用いて、ペースト中の高融点金属粒子と溶融合金粒子との割合を変更する以外は実施例1と同様にして電子基板を得た。得られた電子基板は、パターン形状、ピール試験ともに良好な結果であった。しかし、実施例1との相対的な評価では、実施例8はピール強度が若干低下し、実施例9はパターン形状が若干低下した。
ペースト1の代わりに表1に示すペースト10及び11を用いて、ペースト中の活性金属粒子の割合を変更する以外は実施例1と同様にして電子基板を得た。得られた電子基板は、パターン形状、ピール試験ともに良好な結果であった。しかし、実施例1との相対的な評価では、実施例10はパターン形状及びピール強度ともに若干低下し、実施例11はピール強度が若干低下した。
ペースト1の代わりに表1に示すペースト12〜14を用いて、ペースト中の溶融合金粒子を表1に示す2種類の溶融合金粒子に置き換える以外は実施例1と同様にして電子基板を得た。得られた電子基板は、パターン形状、ピール試験ともに良好な結果であった。詳しくは、実施例12では、パターン形状、ピール試験ともに実施例1と同一の結果であった。また、実施例13では、400℃以下の融点を有する溶融合金粒子に対して400℃を超える融点の溶融合金粒子を組み合わせることにより、流動性が適切な範囲に調整されたためか、実施例2に比べてパターン形状が向上した。さらに、実施例14では、パターン形状、ピール試験ともに実施例3と同一の結果であった。
ペースト1の代わりに表1に示すペースト15〜18を用いて、ペースト中の高融点金属粒子の粒子径を変更する以外は実施例1と同様にして電子基板を得た。得られた電子基板は、パターン形状、ピール試験ともに良好な結果であった。しかし、実施例1との相対的な評価では、実施例15はピール強度が若干低下し、実施例16〜17はパターン形状が若干に低下し、実施例18はパターン形状及びピール強度ともに若干低下した。
ペーストは変更せず、セラミックス基板の種類をアルミナ又は窒化珪素に変更する以外は実施例1と同様にして電子基板を得た。得られた電子基板は、パターン形状、ピール試験ともに実施例1と同一の良好な結果であった。
ペーストは変更せず、焼成温度を変更する以外は実施例1と同様にして電子基板を得た。得られた電子基板は、パターン形状、ピール試験ともに良好な結果であった。得られた電子基板は、焼成温度が850℃である実施例22では、パターン形状、ピール試験ともに実施例1と同一の結果であったが、焼成温度が800℃である実施例21では、ピール強度が実施例1よりも若干低下し、焼成温度が950℃である実施例23では、パターン形状が実施例1よりも若干低下した。
ペースト1の代わりに表2に示すペースト19〜21を用いて、溶融合金粒子として融点400℃以下の合金を用いずに融点780℃のAg−Cu合金粒子のみを用いて変量する以外は実施例1と同様にして電子基板を得た。比較例1ではパターン形状は良好であったが、ピール強度が低く、十分な接合が得られなかった。Ag−Cu合金粒子の割合を増加するにつれて、パターン形状が低下し、エッジめくれや収縮が生じた。これらの結果から、融点の高い溶融成分のみではパターン形状も良好で基板との接合性も優れた電子基板は得られなかった。
Claims (17)
- 焼成温度を超える融点を有する高融点金属粒子と、焼成温度で溶融し、かつ400℃以下の融点を有する合金を含む溶融合金粒子と、Ti、Zr及びHfからなる群より選択された少なくとも1種の活性金属を含む活性金属粒子と、有機ビヒクルとを含む導電性ペースト。
- 溶融合金粒子がSnを含む請求項1記載の導電性ペースト。
- 溶融合金粒子が、Sn−Ag−Cu合金粒子、Sn−Bi合金粒子及びAu−Sn合金粒子からなる群より選択された少なくとも1種を含む請求項2記載の導電性ペースト。
- 活性金属が、Ti及び/又はZrである請求項1〜3のいずれかに記載の導電性ペースト。
- 活性金属粒子が、水素化チタン粒子、ホウ化チタン粒子及び水素化ジルコニウム粒子からなる群より選択された少なくとも1種である請求項4記載の導電性ペースト。
- 高融点金属粒子が、Cu、Ag及びNiからなる群より選択された少なくとも1種の金属又はこの金属を含む合金で形成されている請求項1〜5のいずれかに記載の導電性ペースト。
- 高融点金属粒子と溶融合金粒子との質量割合が、高融点金属粒子/溶融合金粒子=90/10〜40/60である請求項1〜6のいずれかに記載の導電性ペースト。
- 活性金属粒子の割合が、高融点金属粒子及び溶融合金粒子の合計100質量部に対して0.5〜30質量部である請求項1〜7のいずれかに記載の導電性ペースト。
- 溶融合金粒子の中心粒径が0.1〜15μmである請求項1〜8のいずれかに記載の導電性ペースト。
- 活性金属粒子の中心粒径が1〜15μmである請求項1〜9のいずれかに記載の導電性ペースト。
- 高融点金属粒子の中心粒径が0.01〜10μmである請求項1〜10のいずれかに記載の導電性ペースト。
- セラミックス基板に請求項1〜11のいずれかに記載の導電性ペーストを付着させる付着工程、及び前記セラミックス基板に付着した前記導電性ペーストを焼成して導電部を形成する焼成工程を含む電子基板の製造方法。
- 焼成工程において、窒素雰囲気中で導電性ペーストを焼成する請求項12記載の製造方法。
- 焼成工程において、焼成温度が800〜950℃である請求項12又は13記載の製造方法。
- セラミックス基板と、焼成温度以上の融点を有する高融点金属と、400℃以下の融点を有する溶融合金と、活性金属とを含む導電部とを備えた電子基板であって、セラミックス基板に請求項1〜11のいずれかに記載の導電性ペーストを付着させる付着工程、及び前記セラミックス基板に付着した前記導電性ペーストを窒素雰囲気中で800〜950℃で焼成して導電部を形成する焼成工程を含む製造方法で得られた電子基板。
- セラミックス基板が、アルミナ基板、アルミナ−ジルコニア基板、窒化アルミニウム基板、窒化珪素基板又は炭化珪素基板である請求項15記載の電子基板。
- 表面メタライズド基板、ビア充填基板又はスルーホール壁面メタライズド基板である請求項15又は16記載の電子基板。
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