JP6390363B2 - 溶融紡糸型エレクトロスピニング用プロピレン系樹脂組成物、およびそれを用いたプロピレン系極細繊維の製造方法、並びにその方法により製造されたプロピレン系極細繊維 - Google Patents
溶融紡糸型エレクトロスピニング用プロピレン系樹脂組成物、およびそれを用いたプロピレン系極細繊維の製造方法、並びにその方法により製造されたプロピレン系極細繊維 Download PDFInfo
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Description
ナノテクノロジーの分野において、一般にナノファイバーと呼ばれる繊維径がナノオーダー(数μm程度以下)の極細繊維も出現し、その極細繊維は表面積が非常に大きく、また、その極細構造による特異な機能も発現されるので、非常に広い各種の技術分野における用途が展開され有効利用されつつある。
特に、(i)半導体産業、製薬産業、バイオ産業などにおける、高い捕集性能を有する高性能フィルターユニットとして、(ii)細胞が接着及び増殖しやすく取り扱いが容易な細胞培養繊維体として、(iii)医療分野における生体人工器官の表面全体のコーティング材料や生物学的機能を置換向上させる新材料として、(iv)優れたイオン透過性と充放電特性を有する分離膜とそれを利用した電気化学素子として、(v)超高感度の金属酸化物ガスセンサーとして、(vi)電子ペーパーにおける高性能なエレクトロクロミック表示素子として、及び、(vii)光発電性能の高い色素増感型太陽電池用電極や高い光電変換効率を実現し得る光電変換素子として、多々の重要な用途展開が行われている。
エレクトロスピニング法としては、基本的に、ポリマーを溶剤に溶解又は分散したポリマー溶液をノズルからターゲットに向けて垂らすと共にノズルがプラス電極になり、ターゲットがマイナス電極になるように5〜100kVの高電圧を印加する方法が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
しかし、このエレクトロスピニング法は、溶液エレクトロスピニング法であり、使用し得るポリマーは、溶剤に溶解するポリマーに限定され、また、ポリマーを溶解した溶剤がエレクトロスピニングする際に蒸発するため、この方法でナノファイバーを製造する際には、蒸発した溶剤を回収しなければならず、巨大な溶剤回収装置が必要であるという欠点が内在している。また、得られた繊維に溶剤に起因する成分が残留する問題があり、繊維に溶剤が残留すると、後に溶剤に起因する成分が滲み出して繊維製品に不都合を生じる惧れもある。
溶融エレクトロスピニング法としては、基本的な手法として、導電性筒状ノズルに熱可塑性樹脂糸状物を挿通し、ノズル先端部を加熱溶融すると共に導電性筒状ノズルがプラス電極になり、ターゲットがマイナス電極になるよう高電圧を印加する、溶融静電紡糸方法とその装置が開示されている(特許文献2、3を参照)。
しかし、上記した溶融静電紡糸法においては、高分子を静電紡糸可能な粘度まで下げるために熱を加えるが、長時間の加熱滞留によって熱分解して、高分子の物性低下を招く場合があった。
これまで、上記した問題点を解消するために、本出願人は、ポリプロピレン系樹脂に対して脂環族炭化水素樹脂や、特定のトリアジン環構造を有する添加剤を特定の割合で配合してなる組成物を提案し、それを用いて溶融エレクトロスピニング法による極細繊維を紡糸することを試みてきた(特許文献5、6を参照)。
しかしながら、従来のものは、いずれも工業的な観点や効率の面等から十分に満足のいくものとはいえず、それゆえに、現状においては、溶融エレクトロスピニング法に適しない、ポリプロピレンのような樹脂に関しては、溶融エレクトロスピニング法における研究は、未だ十分になされておらず、この分野における更なる研究開発が求められている。
本発明で使用されるプロピレン系樹脂は、プロピレンの単独重合体、プロピレンと他のα−オレフィンとの共重合体のいずれであってもよいが、プロピレンとα−オレフィンの共重合体、特にプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体が好ましい。好ましく用いられるプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体は、プロピレンから誘導される構成単位を主成分としたプロピレンとα−オレフィンのランダム共重合体である。コモノマーとして用いられるα−オレフィンは、好ましくはエチレン又は炭素数4〜18のα−オレフィンである。コモノマー含有量としては好ましくは1.0重量%〜5.0重量%である。
かかるプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体の具体例としては、プロピレン・エチレンランダム共重合体、プロピレン・1−ブテンランダム共重合体、プロピレン・1−ヘキセンランダム共重合体、プロピレン・エチレン・1−オクテンランダム共重合体、プロピレン・エチレン・1−ブテンランダム共重合体などが挙げられる。
重合法としては、上記触媒の存在下に、不活性溶媒を用いたスラリー法、溶液法、実質的に溶媒を用いない気相法や、或いは重合モノマーを溶媒とするバルク重合法などが挙げられる。
50g/10min未満では溶融樹脂の粘度が高くなり過ぎ、極細繊維が得られなくなり、20,000g/10minを超えるものは、現在の重合技術と設備では製造困難である。
本発明のプロピレン系樹脂組成物においては、下記に記述される高分子型帯電防止剤をプロピレン系樹脂50〜99重量%に、高分子型帯電防止剤を1〜50重量%配合することを主要な要件としている。
高分子型帯電防止剤としては、少なくとも2以上の繰返し単位を有する帯電防止剤であり、好ましくは、例えば、数平均分子量1,000以上高分子型の帯電防止剤であれば、使用でき、非イオン性、カチオン性あるいはアニオン性の高分子型帯電防止剤でも制限はされない。
ポリエーテル/ポリオレフィンブロック共重合体を構成するポリエーテルとしては、ポリエーテルジオール、ポリエーテルジアミン、及びこれらの変性物、並びにポリエーテル含有親水性ポリマー等が含まれる。ポリエーテル含有親水性ポリマーとしては、ポリエーテルジオールのセグメントを有するポリエーテルエステルアミド、ポリエーテルジオールのセグメントを有するポリエーテルアミドイミド、ポリエーテルジオールのセグメントを有するポリエーテルエステル、ポリエーテルジアミンのセグメントを有するポリエーテルアミド、及びポリエーテルジオール又はポリエーテルジアミンのセグメントを有するポリエーテルウレタンが含まれる。
ポリエーテル/ポリオレフィンブロック共重合体を構成するポリオレフィンとしては、好ましくは炭素数2〜30のオレフィンから選ばれる少なくとも一種を重合して得られるポリオレフィン、より好ましくはエチレン及びプロピレンの少なくとも一種を重合して得られるポリオレフィンである。
また、ポリエーテル/ポリオレフィンブロック共重合体を構成するポリエーテルの割合は、ポリエーテルとポリオレフィンとの合計質量を基準として好ましくは20〜90質量%、より好ましくは25〜80質量%、さらに好ましくは30〜70質量%である。
ポリエーテル/ポリオレフィンブロック共重合体の数平均分子量は、好ましくは2,000〜60,000、より好ましくは5,000〜40,000、さらに好ましくは8,000〜30,000である。
このような高分子型帯電防止剤としては、例えば商品名「ペレスタット」(三洋化成工業(株)製商品名)や「スタットライト」(The Lubrizol Corporation社製商品名)が挙げられる。
本発明で使用されるプロピレン系樹脂組成物材料においては、組成物としては更に、他の樹脂との組成物、或いは、各種の添加剤を配合した組成物として使用することもできる。
配合される他の樹脂としては、エチレン系重合体もしくはブテン系重合体等プロピレン以外を主成分としたオレフィン系重合体、ポリアミド系重合体、ポリエステル系重合体、その他任意の重合体を使用し得る。
他の各種の添加剤としては、樹脂材料の性能を高め、或いは、他の性能を付加するために配合され、通常ポリオレフィンに使用する公知の酸化防止剤、中和剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、低分子型帯電防止剤、金属不活性剤などの各種添加剤を、本発明の目的を損なわない範囲で配合することができる。
溶融紡糸型エレクトロスピニング装置としては、カトーテック製の加熱溶融紡糸型エレクトロスピニング装置などを使用し、樹脂を加熱溶融するシリンダー、樹脂を帯電する電極、樹脂押出用ピストン、ノズル及び極細繊維を受ける電極プレート(ターゲット)からなり、ノズルから出た溶融樹脂にノズルとターゲット間で電圧を印加し紡糸するものである。
樹脂を加熱するシリンダーの温度は好ましくは160〜400℃、より好ましくは220〜360℃である。またノズルの口径は好ましくは0.1〜0.6mmである。さらに印加電圧の数値は好ましくは20〜100kV、より好ましくは30〜80kVである。
図1は、本発明に使用した加熱溶融紡糸型エレクトロスピニング装置の概略説明図である。
紡糸工程では、適宜な加熱手段により加熱溶融させた熱可塑性樹脂の溶融部に電圧を作用させて、伸長する繊維を電気的引力によってターゲットに捕集する。この工程では、熱可塑性樹脂の溶融部に電圧を作用させて、ターゲットとは反対極の電荷を付与して帯電させることにより、溶融状態の樹脂をターゲットに向けて飛翔させて、伸長又は延伸させることにより静電紡糸する。
本発明では、溶融型静電紡糸方法(エレクトロスピニング)により、繊維径の非常に小さい極細繊維(ナノ繊維)が得られる。極細繊維の平均繊維径は、例えば、5μm以下であり、好ましくは100nm〜3μm程度である。最細繊維径は1μm以下である。
繊維の繊維長は、特に限定されず、製造条件などを調整することにより、用途に応じて選択すればよい。
そして、本発明の極細繊維は、極細繊維の特殊性能と共にプロピレン系樹脂材料の性能により、新しい用途として、電池用セパレーター、電磁波シールド材、高性能フィルター、生体人工器材、細胞培養基材、ICチップ、有機EL、太陽電池、エレクトロクロミック表示素子、光電変換素子などに代表される各種の用途開発が期待される。
なお、実施例及び比較例における諸物性は、下記の評価方法に従って測定し評価し、使用した樹脂として実施例と比較例に記載のものを用いた。
ロ)最細繊維径:日立ハイテクノロジーズ社製の走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて紡糸した繊維径の観察を行い、画像解析ソフトにて任意の繊維100本の繊維径を測定した結果から最細繊維径を求めた。
ハ)標準偏差はロ)と同様にSEMにて繊維径を観察し、画像解析ソフトにて任意の繊維100本の繊維径を測定した結果から標準偏差を求めた。
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって分子量分布Mw/Mn(ここで、Mwは重量平均分子量、Mnは数平均分子量)を測定した。なお、Mn、Mw、Mzの定義は「高分子化学の基礎」(高分子学会編、東京化学同人、1978)等に記載されており、GPCによる分子量分布曲線から計算可能である。
そして、GPCの具体的な測定手法は、以下の通りである。
・装置:Waters社製GPC(ALC/GPC 150C)
・検出器:FOXBORO社製MIRAN 1A IR検出器(測定波長:3.42μm)
・カラム:昭和電工社製AD806M/S(3本直列)
・移動相溶媒:オルトジクロロベンゼン(ODCB)
・測定温度:140℃
・流速:1.0ml/min
・注入量:0.2ml
・試料の調製:試料はODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)を用いて1mg/mLの溶液を調製し、140℃で約1時間を要して溶解させる。
GPC測定で得られた保持容量から分子量への換算は、予め作成しておいた標準ポリスチレン(PS)による検量線を用いて行う。使用する標準ポリスチレンは、何れも東ソー(株)製の以下の銘柄である。
F380、F288、F128、F80、F40、F20、F10、F4、F1、A5000、A2500、A1000
各々が0.5mg/mLとなるようにODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)に溶解した溶液を0.2mL注入して較正曲線を作成する。較正曲線は、最小二乗法で近似して得られる三次式を用いる。
なお、分子量への換算に使用する粘度式[η]=K×Mαは、以下の数値を用いる。
PS:K=1.38×10−4、α=0.7
PP:K=1.03×10−4、α=0.78
α−オレフィン(好ましくはエチレン)含有量α[A2]は、プロトン完全デカップリング法により以下の条件に従って測定した、13C−NMRスペクトルを解析することにより求める。
機種:日本電子(株)製 GSX−400又は同等の装置
(炭素核共鳴周波数100MHz以上)
溶媒:o−ジクロロベンゼン/重ベンゼン=4/1(体積比)
濃度:100mg/ml 温度:130℃
パルス角:90° パルス間隔:15秒
積算回数:5,000回以上
スペクトルの帰属は、例えばMacromolecules 17 1950 (1984)などを参考に行えばよい。上記条件により測定されたスペクトルの帰属は表1の通りである。表中Sααなどの記号はCarmanら(Macromolecules 10 536(1977))の表記法に従い、Pはメチル炭素、Sはメチレン炭素、Tはメチン炭素をそれぞれ表わす。
[PPP]=k×I(Tββ) …(1)
[PPE]=k×I(Tβδ) …(2)
[EPE]=k×I(Tδδ) …(3)
[PEP]=k×I(Sββ) …(4)
[PEE]=k×I(Sβδ) …(5)
[EEE]=k×{I(Sδδ)/2+I(Sγδ)/4} …(6)
ここで[ ]はトリアッドの分率を示し、例えば[PPP]は全トリアッド中のPPPトリアッドの分率である。
従って、[PPP]+[PPE]+[EPE]+[PEP]+[PEE]+[EEE]=1 …(7)
である。また、kは定数であり、Iはスペクトル強度を示し、例えばI(Tββ)はTββに帰属される28.7ppmのピークの強度を意味する。
上記(1)〜(7)の関係式を用いることにより、各トリアッドの分率が求まり、さらに下式によりエチレン含有量が求まる。
エチレン含有量(モル%)=([PEP]+[PEE]+[EEE])×100
なお、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体には少量のプロピレン異種結合(2,1−結合及び/又は1,3−結合)が含まれ、それにより、表2に示す微小なピークを生じる。
(重合例)
(1)触媒の調製
3つ口フラスコ(容積1L)中に硫酸で逐次的に処理されたスメクタイト族ケイ酸塩(水沢化学社製ベンクレイSL)20g、ヘプタン200mLを仕込み、トリノルマルオクチルアルミニウム50mmolで処理後、ヘプタンで洗浄し、スラリー1とした。また別のフラスコ(容積200mL)中に、ヘプタン90mL、(r)−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル}]ジルコニウム0.3mmol、トリイソブチルアルミニウム1.5mmolを仕込みスラリー2とした。スラリー2を、上記スラリー1に加えて、室温で60分攪拌した。その後ヘプタンを210mL追加し、このスラリーを1Lオートクレーブに導入した。
オートクレーブの内部温度を40℃にしたのちプロピレンを10g/hrの速度でフィードし4時間40℃を保ちつつ予備重合、1時間残重合を行い予備重合触媒83gを得た。
内容積270Lの反応器に液状プロピレン、エチレン、水素、及びトリイソブチルアルミニウム(TIBA)のヘキサン希釈溶液を連続的に供給し、内温を62℃に保持した。プロピレンの供給量は、38kg/hrであり、エチレンの供給量は0.92kg/hrであり、水素の供給量は0.25g/hrであり、TIBAの供給量は18g/hrであった。前記予備重合触媒を流動パラフィンによりスラリー状とし、2.35g/hrでフィードした。その結果、12.2kg/hrのプロピレン・エチレンランダム共重合体(PP−0)を得た。
得られたプロピレン・エチレンランダム共重合体(PP−0)は、MFR=26.0g/10分、エチレン含量=4.5mol%、Tm=125℃、Q値=2.7であった。
樹脂材料としてプロピレン系樹脂(PP−0)を用い、該樹脂100重量部に対し、有機過酸化物である1,3−ビス(t−ブチル−パーオキシ−イソプロピル)ベンゼン(商品名:パーカドックス14・化薬アクゾ株式会社製)0.34重量部、フェノ−ル系酸化防止剤であるテトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネ−ト]メタン(商品名:IRGANOX1010・BASF社製)0.1重量部、フォスファイト系酸化防止剤であるトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト(商品名:IRGAFOS 168・BASF社製)0.1重量部、並びに中和剤であるステアリン酸カルシウム(商品名:カルシウムステアレ−ト・日本油脂株式会社製)0.1重量部配合し、高速攪拌式混合機(ヘンシェルミキサ−:商品名)にて室温下で3分間混合した後、押出機にて溶融混練して、MFR=2500g/10minのプロピレン系樹脂ペレット(PP−1)を得た。
さらにプロピレン系樹脂ペレット(PP−1)を用い、該樹脂98重量%に対し、高分子型帯電防止剤(成分A)として、ポリエーテル/ポリオレフィンブロック共重合体(商品名:ペレスタット303・三洋化成社製)2重量%を配合して押出機にて溶融混練して、プロピレン系樹脂ペレットを得た。
得られたプロピレン系樹脂を、図1に示す溶融紡糸型エレクトロスピニング装置において、260℃に加熱した溶融シリンダー内に4g投入し、5分間保持後、ピストンにて0.05cc/hrの吐出量で押し込み、ノズルとターゲット間に40kVの電圧を印加し、極細繊維を得た。
本発明の構成の要件を満たすプロピレン系樹脂組成物から得られた極細繊維として、目的とする均一なナノファイバーが得られた。
樹脂組成物としてプロピレン系樹脂(PP−1)を95重量%、成分Aを5重量%配合した以外は、実施例1と同様に実施し、極細繊維を得た。
本発明の構成の要件を満たすプロピレン系樹脂組成物から得られた極細繊維として、目的とする均一なナノファイバーが得られた。
樹脂組成物としてプロピレン系樹脂(PP−1)を90重量%、(成分A)を10重量%に配合量を変更した以外は、実施例1と同様に実施し、極細繊維を得た。
本発明の構成の要件を満たすプロピレン系樹脂組成物から得られた極細繊維として、目的とする均一なナノファイバーが得られた。
樹脂材料としてプロピレン系樹脂(PP−0)を用い、該樹脂100重量部に対し、有機過酸化物である1,3−ビス(t−ブチル−パーオキシ−イソプロピル)ベンゼン(商品名:パーカドックス14・化薬アクゾ株式会社製)1.4重量部、フェノ−ル系酸化防止剤であるテトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネ−ト]メタン(商品名:IRGANOX1010・BASF社製)0.1重量部、フォスファイト系酸化防止剤であるトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト(商品名:IRGAFOS 168・BASF社製)0.1重量部、並びに中和剤であるステアリン酸カルシウム(商品名:カルシウムステアレ−ト・日本油脂株式会社製)0.1重量部配合し、高速攪拌式混合機(ヘンシェルミキサ−:商品名)にて室温下で3分間混合した後、押出機にて溶融混練して、MFR=17000g/10minのプロピレン系樹脂ペレット(PP−2)を得た。
樹脂組成物としてプロピレン系樹脂(PP−2)を用いる以外は、実施例3と同様に実施し、MFR=13000g/10minのプロピレン系樹脂ペレットを得た。
得られたプロピレン系樹脂を、図1に示す溶融紡糸型エレクトロスピニング装置において、260℃に加熱した溶融シリンダー内に4g投入し、5分間保持後、ピストンにて0.05cc/hrの吐出量で押し込み、ノズルとターゲット間に40kVの電圧を印加し、極細繊維を得た。
本発明の構成の要件を満たすプロピレン系樹脂組成物から得られた極細繊維として、目的とする均一なナノファイバーが得られた。
樹脂組成物として、プロピレン系樹脂(PP−1)において、高分子型帯電防止剤が無配合である以外は、実施例1と同様に実施し、極細繊維を得た。
本発明の構成の要件を満たさないプロピレン系樹脂組成物から得られた極細繊維としては、目的とする均一なナノファイバーが得られていない。
樹脂組成物として、プロピレン系樹脂(PP−1)を99.5重量%、高分子型帯電防止剤として、(成分A)の配合量を0.5重量%に変更した以外は、実施例1と同様に実施し、極細繊維を得た。
本発明の構成の要件を満たさないプロピレン系樹脂組成物から得られた極細繊維としては、目的とする均一なナノファイバーが得られていない。
樹脂組成物として、プロピレン系樹脂(PP−1)において、高分子型帯電防止剤として、(成分A)の配合量を2.0重量%から低分子型帯電防止剤であるグリセリンモノスレアレ−ト(商品名:エレクトロストリッパー・花王社製)を2.0重量%に変更した以外は、実施例1と同様に実施し、極細繊維を得た。
本発明の構成の要件を満たさないプロピレン系樹脂組成物から得られた極細繊維としては、目的とする均一なナノファイバーが得られていない。
表3から明らかなように、実施例1〜4は本発明の構成の要件を満たしているので、比較例1〜3と対照して、均一な極細繊維としてのナノファイバーが得られている。
比較例3については、実施例1と同等量の帯電防止剤が配合されているが、低分子型帯電防止剤には本発明のような効果は認められない。高分子型帯電防止剤は添加剤自身が導電性を有するが、低分子型帯電防止剤の改質機構は成形品表面へのブリードアウトによって導電性能を発現する、すなわちエレクトロスピニングでの紡糸時に溶融樹脂の電気特性改質効果が高分子型帯電防止剤にのみ有るためと考えられる。
以上の結果より、本発明の構成の合理性と有意性及び従来技術に対する卓越性が明示されているといえる。
したがって、各種用途、例えば、絶縁材用セパレーターなどのエレクトロニクス用部材、産業用資材(油吸着材、皮革基布、セメント用配合剤、ゴム用配合材、各種テープ基材など)、医療・衛生材(紙おむつ、ガーゼ、包帯、医療用ガウンなど)、生活関連資材(ワイパー、印刷物基材、包装・袋物資材、収納材、エアーフィルター、液体フィルターなど)、衣料用材、内装用材(断熱材、吸音材など)、建設資材、農業・園芸用資材、土木用資材、鞄・靴材などに使用できる。
2;遮蔽板 6;絶縁板
3;溶融シリンダー 7;テーブル
4;ノズル
Claims (9)
- 溶融紡糸型エレクトロスピニング法により、加熱溶融状態において連続押出紡糸を行って極細繊維を紡糸するプロピレン系樹脂組成物であって、
組成物基準でプロピレン系樹脂50〜99重量%に、ポリエーテル/ポリオレフィンブロック共重合体である高分子型帯電防止剤を1〜50重量%配合することを特徴とする、エレクトロスピニング紡糸用プロピレン系樹脂組成物。 - プロピレン系樹脂がプロピレン単独重合体又はプロピレンとα−オレフィンとの共重合体であることを特徴とする、請求項1に記載のエレクトロスピニング紡糸用プロピレン系樹脂組成物。
- プロピレン系樹脂組成物が、更に、ポリエーテル/ポリオレフィンブロック共重合体を除く他の重合体及び/又は添加剤を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載のエレクトロスピニング紡糸用プロピレン系樹脂組成物。
- プロピレン系樹脂のMFR(温度230℃・荷重21.2N)が50〜20,000g/10minであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のエレクトロスピニング紡糸用プロピレン系樹脂組成物。
- 組成物基準でプロピレン系樹脂80〜99重量%に、前記高分子型帯電防止剤を1〜20重量%配合することを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のエレクトロスピニング紡糸用プロピレン系樹脂組成物。
- 請求項1〜5のいずれかに記載のエレクトロスピニング紡糸用プロピレン系樹脂組成物を、溶融紡糸型エレクトロスピニング法により、加熱溶融状態において連続押出紡糸を行って極細繊維を紡糸することを特徴とする、ポリプロピレン系極細繊維を製造する方法。
- 加熱溶融がレーザー加熱により行われることを特徴とする、請求項6に記載のポリプロピレン系極細繊維を製造する方法。
- 請求項1〜5のいずれかに記載のエレクトロスピニング紡糸用プロピレン系樹脂組成物を、溶融紡糸型エレクトロスピニング法により、加熱溶融状態において連続押出紡糸を行って紡糸することにより得られたことを特徴とする、ポリプロピレン系極細繊維。
- 請求項8に記載のポリプロピレン系極細繊維を使用して製造されたことを特徴とする繊維製品。
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