JP6390263B2 - 積層体及び積層体の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、金属層と炭素繊維強化樹脂層の積層体および前記積層体の製造方法に関する。
従来から、金属層と炭素繊維強化樹脂層の積層体が検討されている。このような積層体は、高い強度を保ちつつ、その重量を軽くしたい場合に有益である。
しかしながら、熱可塑性樹脂の多くは、せん断力が弱く、熱可塑性樹脂層と金属層の積層体とすると、金属層が剥がれてしまう。これに対し、特許文献1では、金属表面に、トリアジンチオール誘導体層を設け、熱可塑性樹脂層を溶融させることにより、金属と炭素繊維強化熱可塑性樹脂材料を接合させることが記載されている。
国際公開WO2012−074083号パンフレット
ここで、上記特許文献1(国際公開WO2012−074083号パンフレット)について、検討したところ、金属層と炭素繊維強化熱可塑性樹脂層の密着性は高めることができるが、防錆性が十分ではないことが分かった。
本発明は、前記課題を解決することを目的としたものであって、金属層と炭素繊維強化熱可塑性樹脂層との密着性に優れ、かつ、防錆性に優れた積層体を提供することを目的とする。さらに、加工特性にも優れた積層体を提供することを目的とする。また、前記積層体の製造方法も提供する。
かかる状況のもと、本願発明者が鋭意検討を行った結果、所定の要件を満たす炭素繊維強化ポリアミド樹脂層を用いることにより、上記課題を解決しうることを見出した。具体的には、以下の手段<1>により、好ましくは<2>〜<11>により、上記課題は解決された。
<1>金属層と、前記金属層の表面上に炭素繊維強化ポリアミド樹脂層を有し、前記炭素繊維強化ポリアミド樹脂層が、ジアミン単位とジカルボン酸単位とからなるポリアミド樹脂(A)100重量部に対し、炭素繊維(B)5〜300重量部を含み、前記ジアミン単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、前記ジカルボン酸単位の70モル%以上がセバシン酸に由来する積層体。
<2>金属層と、前記金属層の表面上に炭素繊維強化ポリアミド樹脂層を有し、前記炭素繊維強化ポリアミド樹脂層が、ジアミン単位とジカルボン酸単位とからなるポリアミド樹脂(A)100重量部に対し、炭素繊維(B)5〜300重量部を含み、前記ジアミン単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、前記ジカルボン酸単位の70モル%以上がセバシン酸に由来し、前記ポリアミド樹脂(A)の末端アミノ基濃度([NH2])が5≦[NH2]≦150(単位:μeq/g)の範囲にある積層体。
<3>金属層が、鉄、アルミ、ステンレス鋼およびマグネシウム合金から選択される少なくとも1種を含む、<1>または<2>に記載の積層体。
<4>ポリアミド樹脂(A)のカルボキシル基濃度([COOH])が10≦[COOH]≦50(単位:μeq/g)の範囲にある、<1>〜<3>のいずれかに記載の積層体。
<5>ポリアミド樹脂(A)の反応モル比が0.97〜1.02である、<1>〜<4>のいずれかに記載の積層体。
<6>炭素繊維強化ポリアミド樹脂層における、炭素繊維含有率が、30〜70体積%である、<1>〜<5>のいずれかに記載の積層体。
<7>炭素繊維(B)が、アミノ基と反応性を有する化合物(C)を表面に有する、<1>〜<6>のいずれかに記載の積層体。
<8>前記炭素繊維強化ポリアミド樹脂層の両方の表面に金属層を有する、<1>〜<7>のいずれかに記載の積層体。
<9>前記金属層の表面が粗面化されている、<1>〜<8>のいずれかに記載の積層体。
<10><1>〜<9>のいずれかに記載の積層体の製造方法であって、炭素繊維強化ポリアミド樹脂材料と金属板を熱融着する工程を含む、積層体の製造方法。
<11>さらに、前記熱融着する工程前に、金属板の表面を粗面化処理する工程を含む、<10>に記載の積層体の製造方法。
本発明により、金属層と炭素繊維強化熱可塑性樹脂層との密着性に優れ、かつ、防錆性に優れた積層体を提供可能になった。さらに、加工特性にも優れた積層体が得られる。また、前記積層体の製造方法も提供可能になった。
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。尚、本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
本発明の積層体は、金属層と、前記金属層の表面上に炭素繊維強化ポリアミド樹脂層を有し、前記炭素繊維強化ポリアミド樹脂層が、ジアミン単位とジカルボン酸単位とからなるポリアミド樹脂(A)100重量部に対し、炭素繊維(B)5〜300重量部を含み、前記ジアミン単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、前記ジカルボン酸単位の70モル%以上がセバシン酸に由来することを特徴とする。
本発明の積層体は、好ましくは、金属層と、前記金属層の表面上に炭素繊維強化ポリアミド樹脂層を有し、前記炭素繊維強化ポリアミド樹脂層が、ジアミン単位とジカルボン酸単位とからなるポリアミド樹脂(A)100重量部に対し、炭素繊維(B)5〜300重量部を含み、前記ジアミン単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、前記ジカルボン酸単位の70モル%以上がセバシン酸に由来し、前記ポリアミド樹脂(A)の末端アミノ基濃度([NH2])が5≦[NH2]≦150(単位:μeq/g)の範囲である。
このような構成とすることにより、炭素繊維とポリアミド樹脂の密着性に優れ、その炭素繊維強化ポリアミド樹脂層と金属層の密着性に優れ、かつ、防錆性に優れた積層体とすることができる。また、本発明の積層体は、炭素繊維が毛羽立ちにくいため、加工性に優れる。
<金属層>
本発明の積層体は、金属層を有する。金属層は、金属を主成分とする層である。ここで、金属を主成分とする層とは、金属層の70重量%以上が金属であることを意味し、通常は、金属層の90重量%以上が金属であり、98質量%以上が金属であることが好ましい。金属層における金属は1種類であってもよいし、2種類以上含まれていても良い。2種類以上含まれる場合、その合計量が上記金属層に含まれる金属の量となる。
本発明における金属層は、鉄、アルミ、ステンレス鋼およびマグネシウム合金から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、鉄および/またはアルミを含むことがより好ましく、鉄を含むことがさらに好ましい。鉄を採用することにより、より炭素繊維強化ポリアミド樹脂層との密着性により優れる傾向にある。また、鉄、アルミ、ステンレス鋼およびマグネシウム合金から選択されるいずれか1種を含むことがより好ましい。
ここで、ステンレス鋼とは、鉄を主成分とし、クロムおよび/またはニッケルを含む合金である。また、マグネシウム合金に配合される添加元素としては、アルミおよび/または亜鉛が例示される。
本発明における金属層の厚さは、0.1〜10mmが好ましく、0.5〜5mmがより好ましい。
金属層の表面は、粗面化されていることが好ましい。粗面化することにより、表面積が大きくなり、ポリアミド樹脂が浸透しやすくなると共に、樹脂との接触面積が向上し、炭素繊維強化ポリアミド樹脂層と金属層の密着性を向上させることができる。粗面化の方法としては、特に定めるものではないが、例えば、切削加工および/または研磨加工が例示される。切削加工および/または研磨加工は、金属の表面の一部を削り取る作業である限り特に限定されるものではない。切削加工および/または研磨加工の具体例としては、サンドペーパー等を用いた鑢がけ、研磨剤を用いたサンドブラスト処理、ナノレベルのディンプルを金属層表面に形成させる表面処理などが例示される。これらの詳細については、特開2003−103563号公報の段落0018〜0021の記載を参酌でき、これらの内容は本願明細書に組み込まれる。
本発明における粗面化処理は、いわゆる、物理的な処理によるものを意味するが、粗面化処理に加えて、または、粗面化処理に代えて、金属の表面に金属と反応する化合物を適用して、金属層の表面を処理してもよい。金属層の表面に金属と反応する化合物を適用して金属層を処理する方法としては、特開2003−103563号公報の段落0021〜0026の記載を参酌でき、これらの内容は本願明細書に組み込まれる。
<炭素繊維強化ポリアミド樹脂層>
本発明の積層体は、炭素繊維強化ポリアミド樹脂層を有する。炭素繊維強化ポリアミド樹脂層は、ポリアミド樹脂(A)100重量部に対し、炭素繊維(B)5〜300重量部を含む層であり、ポリアミド樹脂(A)100重量部に対し、炭素繊維(B)50〜150重量部含む層であることが好ましい。このような範囲とすることにより、本発明の効果がより効果的に発揮される。
炭素繊維強化ポリアミド樹脂層における炭素繊維含有率(体積%)は、30〜70体積%であることが好ましく、30〜60体積%であることがより好ましい。このような範囲とすることにより、本発明の効果がより効果的に発揮される。
本発明における炭素繊維強化ポリアミド樹脂層の厚さは、0.5〜10mmが好ましく、0.5 〜5mmがより好ましい。
<<ポリアミド樹脂(A)>>
本発明における炭素繊維強化ポリアミド樹脂層は、ジアミン単位とジカルボン酸単位とからなるポリアミド樹脂であり、前記ジアミン単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、前記ジカルボン酸単位の70モル%以上がセバシン酸に由来するポリアミド樹脂(A)を含む。ここで、ジアミン単位とジカルボン酸単位とからなるとは、ジアミン単位とジカルボン酸単位以外の構成要素を完全に排除するものではなく、不純物等、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で他の構成要素を含んでいる場合も含む趣旨である。ポリアミド樹脂(A)は、末端アミノ基濃度([NH2])が5≦[NH2]≦150(単位:μeq/g)の範囲であることが好ましい。本発明ではこのような樹脂を用いることにより、炭素繊維および金属層との密着性に優れ、かつ、防錆性に優れた積層体を提供可能になる。
ここで、金属層との積層体としては、熱硬化性樹脂層を用いることも考えられる。しかしながら、熱硬化性樹脂層は、熱溶解ができないため、積層体とした後に部分的な修理を行うのが困難である。一方、熱可塑性樹脂の多くは、せんだん力が弱くて金属層との密着性が劣る傾向にある。本発明では、所定のポリアミド樹脂を用いることによりこれらの点を解消したものである。
本発明で用いるポリアミド樹脂(A)は上述のとおり、ジアミン単位とジカルボン酸単位とからなるポリアミド樹脂であって、前記ジアミン単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、前記ジカルボン酸単位の70モル%以上がセバシン酸に由来するポリアミド樹脂である。
ポリアミド樹脂(A)のジアミン構成単位は、好ましくは80モル%以上、より好ましくは85モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上がキシリレンジアミンに由来する。
キシリレンジアミンとしては、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミンが好ましく、これらを単独又は混合して使用できる。混合して使用する場合、メタキシリレンジアミンとパラキシリレンジアミンは、任意の割合に混合してよいが、耐熱性を重視する場合は、メタキシリレンジアミン0〜50モル%及びパラキシリレンジアミン50〜100モル%が好ましく、得られる繊維強化ポリアミド樹脂材料の成形加工性を重視する場合は、メタキシリレンジアミン50〜100モル%及びパラキシリレンジアミン0〜50モル%が好ましく、メタキシリレンジアミン55〜100モル%及びパラキシリレンジアミン0〜45モル%がより好ましく、メタキシリレンジアミン65〜100モル%及びパラキシリレンジアミン0〜35モル%がより一層好ましい。
ポリアミド樹脂(A)の原料ジアミンとして用いることができるメタキシリレンジアミン及びパラキシリレンジアミン以外のジアミンとしては、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、2−メチルペンタンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−トリメチル−ヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノメチル)デカリン、ビス(アミノメチル)トリシクロデカン等の脂環式ジアミン、ビス(4−アミノフェニル)エーテル、パラフェニレンジアミン、ビス(アミノメチル)ナフタレン等の芳香環を有するジアミン等を例示することができ、1種又は2種以上を混合して使用できる。
原料ジアミンとして、キシリレンジアミン以外のジアミンを用いる場合は、ジアミン構成単位の30モル%以下が好ましく、25モル%以下であることがより好ましく、20モル%以下がさらに好ましい。
ポリアミド樹脂(A)のジカルボン酸構成単位は、好ましくは80モル%以上、より好ましくは85モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上がセバシン酸に由来する。セバシン酸としては、天然物由来のものが好ましく、特にトウゴマから抽出されるセバシン酸が好ましい。このようなセバシン酸を用いることで、得られる繊維強化ポリアミド樹脂材料中の植物由来成分による割合、すなわち、植物度を高くすることができる。
セバシン酸以外の原料ジカルボン酸としては、炭素数4〜20の直鎖脂肪族ジカルボン酸が例示され、具体的には、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、アジピン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸が例示でき、1種又は2種以上を混合して使用できる。これらの中でもポリアミド樹脂の融点が成形加工するのに適切な範囲となることから、アジピン酸又はその混合物が好ましい。
炭素数4〜20の直鎖脂肪族ジカルボン酸以外のジカルボン酸成分として、芳香族ジカルボン酸も使用することができ、イソフタル酸、テレフタル酸、オルソフタル酸等のフタル酸化合物、1,2−ナフタレンジカルボン酸、1,3−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,6−ナフタレンジカルボン酸、1,7−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸といった異性体等のナフタレンジカルボン酸等を例示することができ、1種又は2種以上を混合して使用できる。
さらに、上記ジアミン、ジカルボン酸以外にも、ポリアミド樹脂(A)を構成する成分として、本発明の効果を損なわない範囲でε−カプロラクタムやラウロラクタム等のラクタム類、アミノカプロン酸、アミノウンデカン酸等の脂肪族アミノカルボン酸類も共重合成分として使用できる。
本発明では、ポリアミド樹脂(A)は、末端アミノ基濃度([NH2])が5≦[NH2]≦<150(単位:μeq/g)の範囲であることが好ましい。末端アミノ基濃度([NH2])が、50≦[NH2]≦150(単位:μeq/g)の範囲であることがより好ましく、70≦[NH2]≦150(単位:μeq/g)の範囲であることがさらに好ましく、80≦[NH2]≦150(単位:μeq/g)の範囲であることが一層好ましい。末端アミノ基が高いポリアミド樹脂を使用すると、特に炭素繊維(B)がアミン反応性の化合物で処理されていることで、得られる繊維強化ポリアミド樹脂材料の機械的物性の向上効果が高くなる。
また、末端カルボキシル基濃度([COOH])は、[COOH]≦100(単位:μeq/g)の範囲にあることが好ましく、5≦[COOH]≦80(単位:μeq/g)の範囲にあることがより好ましく、5≦[COOH]≦50(単位:μeq/g)の範囲にあることがさらに好ましく、10≦[COOH]≦50(単位:μeq/g)の範囲にあることが一層好ましい。
また、末端カルボキシル基濃度に対する末端アミノ基濃度の比([NH2]/[COOH])は、1.00以上が好ましく、1.00より大きいことがより好ましく、1.40以上がさらに好ましく、2.00以上が特に好ましい。上限は特に定めるものではないが、例えば、3.5以下とすることができる。
さらに、末端アミノ基濃度([NH2])、末端カルボキシル基濃度([COOH])及び末端カルボキシル基濃度に対する末端アミノ基濃度の比([NH2]/[COOH])との関係については、それぞれ、5≦[NH2]≦150(単位:μeq/g)、5≦[COOH]≦80(単位:μeq/g)、かつ[NH2]/[COOH]≧1.00の場合が好ましく、5≦[NH2]≦150(単位:μeq/g)、5≦[COOH]≦80(単位:μeq/g)、かつ[NH2]/[COOH]>1.00の場合がより好ましく、70≦[NH2]≦150(単位:μeq/g)、10≦[COOH]≦50(単位:μeq/g)、かつ[NH2]/[COOH]≧1.40の場合がさらに好ましく、80≦[NH2]≦150(単位:μeq/g)、25≦[COOH]≦40(単位:μeq/g)、かつ[NH2]/[COOH]≧2.00の場合が特に好ましい。
上記関係を満たすポリアミド樹脂を用いることにより、ポリアミド樹脂と炭素繊維との界面密着性が向上し、成形品の機械的物性が向上する。
特に、本発明の繊維強化ポリアミド樹脂材料を短時間でプレス成形する場合は、用いるポリアミド樹脂の反応モル比を1.0を超える値とし、さらに、アミノ基濃度(好ましくは、末端アミノ基濃度)を50μeq/gを超える値とすることにより、ポリアミド樹脂を加熱しても、YI(黄色味)増加をより効果的に少なくすることができる。これまで、ポリアミド樹脂中のアミノ基が過剰であると溶融滞留時にゲル化およびYIの増加が進行しやすく耐熱性に劣ると考えらえていた。しかしながら、驚くべきことに、本発明において、ポリアミド樹脂のアミノ基を過剰にすると、加熱時のYIの増加が抑えられるということを見出した。このような傾向は、ジカルボン酸構成単位の50モル%以上がセバシン酸に由来する場合により効果的に発揮される。また、ポリアミド樹脂の末端基を調整することによってもより効果的に発揮される。このメカニズムは、着色物質の発生を抑制したり、末端基が発生した着色物質に作用して黄色く発色するのを防止しているものと想像される。
末端アミノ基濃度は、ポリアミド樹脂0.5gを30mlのフェノール/メタノール(4:1)混合溶液に20〜30℃で攪拌溶解し、0.01Nの塩酸で滴定して測定することができる。また、末端カルボキシル基濃度は、ポリアミド樹脂0.1gを30mlのベンジルアルコールに200℃で溶解し、160℃〜165℃の範囲でフェノールレッド溶液を0.1ml加える。その溶液を0.132gのKOHをベンジルアルコール200mlに溶解させた滴定液(KOH濃度として0.01mol/l)で滴定を行い、色の変化が黄から赤となって色の変化がなくなった時点を終点とすることで算出することができる。
ポリアミド樹脂(A)は、相対粘度が1.3〜3.3であることが好ましく、1.4〜3.0であることがより好ましく、1.5〜2.7であることが特に好ましい。ポリアミド(A)の相対粘度が1.3未満の場合には、溶融したポリアミド樹脂(A)の流動性が不安定になりやすく外観が悪化することがある。またポリアミド樹脂(A)の相対粘度が3.3を超えると、ポリアミド樹脂(A)の溶融粘度が高すぎて炭素繊維への含浸性や成形加工が不安定になることがある。
なお、ここでいう相対粘度は、ポリアミド樹脂1gを96%硫酸100mLに溶解し、キャノンフェンスケ型粘度計にて25℃で測定した落下時間(t)と、同様に測定した96%硫酸そのものの落下時間(t0)の比であり、下記式(1)で示される。
相対粘度=t/t0 ・・・(1)
また、ポリアミド樹脂(A)の数平均分子量(Mn)は、6,000〜50,000であることが好ましく、6,000〜30,000であることがより好ましい。数平均分子量(Mn)を6,000以上とすることにより、樹脂の強度がより向上する傾向にあり、50,000以下、さらには30,000以下とすることにより、ポリアミド樹脂(A)の炭素繊維(B)への含浸性がより向上する傾向にあり、得られる繊維強化ポリアミド樹脂材料あるいはその成形品の強度がより向上する傾向にある。
より好ましい数平均分子量(Mn)は8,000〜28,000であり、さらに好ましくは9,000〜26,000であり、なかでも10,000〜24,000が好ましく、特に好ましくは11,000〜22,000であり、より特に好ましくは12,000〜20,000である。このような範囲であると、耐熱性、弾性率、寸法安定性、成形加工性がより良好である。
なお、ここでいう数平均分子量(Mn)とは、ポリアミド樹脂の末端アミノ基濃度[NH2](μeq/g)と末端カルボキシル基濃度[COOH](μeq/g)から、次式で算出される。
数平均分子量(Mn)=2,000,000/([COOH]+[NH2])
また、ポリアミド樹脂(A)は、重量平均分子量が1,000以下の成分(以下、「低分子量成分」ということがある)の含有量が5重量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.5〜5重量%である。低分子量成分の配合量を調整することにより、ポリアミド樹脂(A)の炭素繊維(B)への含浸性が均一になり、得られる繊維強化ポリアミド樹脂材料及びその成形品の強度や低そり性がより向上する傾向にある。低分子量成分の配合量を5重量%以下とすることにより、低分子量成分がブリードして強度が悪化することや、表面外観が悪くなってしまうことを効果的に抑制できる。
重量平均分子量が1,000以下の成分のより好ましい含有量は、0.6〜4.5重量%であり、さらに好ましくは0.7〜4重量%であり、なかでも0.8〜3.5重量%であり、特に好ましくは0.9〜3重量%であり、より特に好ましくは1〜2.5重量%である。
重量平均分子量が1,000以下の低分子量成分の含有量の調整は、ポリアミド樹脂(A)重合時の温度や圧力、ジアミンの滴下速度などの溶融重合条件を調節して行うことができる。特に溶融重合後期に反応装置内を減圧して低分子量成分を除去し、任意の割合に調節することができる。また、溶融重合により製造されたポリアミド樹脂を熱水抽出して低分子量成分を除去してもよいし、溶融重合後さらに減圧下で固相重合して低分子量成分を除去してもよい。固相重合に際しては、温度や減圧度を調節して、低分子量成分を任意の含有量に制御することができる。また、重量平均分子量が1,000以下の低分子量成分を後からポリアミド樹脂に添加することでも調節可能である。
なお、重量平均分子量1,000以下の成分量の測定は、東ソー社製「HLC−8320GPC」を用いて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定による標準ポリメチルメタクリレート(PMMA)換算値より求めることができる。なお、測定用カラムとしては「TSKgel SuperHM−H」を2本用い、溶媒にはトリフルオロ酢酸ナトリウム濃度10mmol/lのヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)を用い、樹脂濃度0.02重量%、カラム温度は40℃、流速0.3ml/分、屈折率検出器(RI)にて測定することができる。また、検量線は6水準のPMMAをHFIPに溶解させて測定し作成する。
本発明のポリアミド樹脂(A)は、分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量(Mw/Mn))が、好ましくは1.8〜3.1である。分子量分布は、より好ましくは1.9〜3.0、さらに好ましくは2.0〜2.9である。分子量分布をこのような範囲とすることにより、ポリアミド樹脂(A)の炭素繊維(B)への含浸性が優れ、機械特性に優れた繊維強化ポリアミド樹脂材料が得られやすい傾向にある。
ポリアミド樹脂(A)の分子量分布は、例えば、重合時に使用する開始剤や触媒の種類、量及び反応温度、圧力、時間等の重合反応条件などを適宜選択することにより調整できる。また、異なる重合条件によって得られた平均分子量の異なる複数種のポリアミド樹脂を混合したり、重合後のポリアミド樹脂を分別沈殿させたりすることにより調整することもできる。
分子量分布は、GPC測定により求めることができ、具体的には、装置として東ソー社製「HLC−8320GPC」、カラムとして、東ソー社製「TSK gel Super HM−H」2本を使用し、溶離液トリフルオロ酢酸ナトリウム濃度10mmol/lのヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)、樹脂濃度0.02重量%、カラム温度40℃、流速0.3ml/分、屈折率検出器(RI)の条件で測定し、標準ポリメチルメタクリレート換算の値として求めることができる。また、検量線は6水準のPMMAをHFIPに溶解させて測定し作成する。
また、本発明で用いるポリアミド樹脂(A)は、溶融粘度が、ポリアミド樹脂(A)の融点+30℃、せん断速度122sec-1、ポリアミド樹脂(A)の水分率が0.06重量%以下の条件で測定したときに、50〜1200Pa・sであることが好ましい。溶融粘度をこのような範囲とすることにより、ポリアミド樹脂(A)の炭素繊維(B)への含浸性が良くなる。なお、後述するような、ポリアミド樹脂(A)がDSC法における昇温時の吸熱ピークを2つ以上有する場合は、高温側の吸熱ピークのピークトップの温度を融点とし、測定を行う。
溶融粘度のより好ましい範囲は、60〜500Pa・s、さらに好ましくは70〜100Pa・sである。
ポリアミド樹脂の溶融粘度は、例えば、原料ジカルボン酸及びジアミンの仕込み比、重合触媒、分子量調節剤、重合温度、重合時間を適宜選択することにより調整できる。
また、ポリアミド樹脂(A)は、吸水時の曲げ弾性率保持率が、85%以上であることが好ましい。吸水時の曲げ弾性率保持率を、このような範囲とすることにより、得られる繊維強化ポリアミド樹脂材料及びその成形品の高温高湿度下での物性低下が少なく、そりなどの形状変化が少なくなる傾向にある。
ここで、吸水時の曲げ弾性率保持率とは、ポリアミド樹脂(A)からなる曲げ試験片の0.1重量%の吸水時の曲げ弾性率に対する、0.5重量%の吸水時の曲げ弾性率の比率(%)として定義され、これが高いということは吸湿しても曲げ弾性率が低下しにくいことを意味する。
吸水時の曲げ弾性率保持率は、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上である。
ポリアミド樹脂(A)の吸水時の曲げ弾性率保持率は、例えば、パラキシリレンジアミンとメタキシリレンジアミンの混合割合によりコントロールでき、パラキシリレンジアミンの割合が多いほど曲げ弾性率保持率を良好とすることができる。
ポリアミド樹脂(A)の吸水率は、23℃にて1週間、水に浸漬した後取り出し、水分をふき取ってすぐ測定した際の吸水率として1重量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.6重量%以下、さらに好ましくは0.4重量%以下である。この範囲であると、得られる繊維強化ポリアミド樹脂材料及びそれからなる積層体の吸水による変形を防止しやすく、また、繊維強化ポリアミド樹脂材料を熱融着する際の発泡を抑制し、気泡の少ない積層体を得ることができる。
本発明で用いるポリアミド樹脂(A)は、反応性官能基濃度が40μeq/g以上であることが好ましく、80μeq/g以上であることがより好ましい。反応性官能基濃度とは、ポリアミド樹脂(A)の末端ならびに主鎖又は側鎖上に存在する反応性の基の濃度(μeq/g)をいい、反応性の基とは、代表的には、アミノ基およびカルボキシル基である。原料モノマーの構成を鑑み、理論的にポリマー末端にのみ反応性官能基が存在する場合は、末端の反応性官能基濃度がポリマー全体の反応性官能基濃度と実質的に等しくなる場合があり、本発明ではこのような態様が好ましい。反応性官能基濃度が80μeq/g以上の高い濃度で存在することにより、炭素繊維(B)の表面処理剤および/または集束剤の量が少ない場合でも、ポリアミド樹脂(A)との表面との密着性を良好に維持できる。また、金属層との密着性も向上する。金属層と繊維強化ポリアミド樹脂材料の接着性を向上させるには、炭素繊維強化ポリアミド樹脂材料を金属層の界面に接触させるのに先立って、金属層表面をコロナ処理等の公知の技術によって反応性を高めることや、表面に微小な凹凸を作成することも好ましい。
反応性官能基濃度は、好ましくは80μeq/g以上であり、より好ましくは90μeq/g以上であり、特には100μeq/g以上である。その上限は、好ましくは250μeq/g以下であり、より好ましくは230μeq/g以下であり、さらには210μeq/g以下、特に好ましくは200μeq/g以下である。本発明では、特に、ポリアミド樹脂(A)中における末端アミノ基および末端カルボキシル基の合計濃度が上記反応性官能基濃度の範囲内となることが好ましい。
本発明のポリアミド樹脂(A)は、反応したジカルボン酸単位に対する反応したジアミン単位のモル比(反応したジアミン単位のモル数/反応したジカルボン酸単位のモル数、以下「反応モル比」という場合がある。)が、0.970〜1.020であることが好ましい。このような範囲とすることにより、ポリアミド樹脂(A)の分子量や分子量分布を、任意の範囲に制御しやすくなる。
反応モル比は、0.980以上が好ましく、0.990以上がより好ましく、1.00以上がさらに好ましく、1.001以上がよりさらに好ましく、1.003以上が特に好ましく、1.005以上がより特に好ましい。また、反応モル比は、その上限は、1.02以下が好ましく、1.015以下がより好ましく、1.013以下がさらに好ましく、1.010以下がよりさらに好ましい。
ここで、反応モル比(r)は、工業化学雑誌74巻7号(1971)162〜167頁記載に基づき次の式から求められる。
r=(1−cN−b(C−N))/(1−cC+a(C−N))
式中、
a:M1/2
b:M2/2
c:18.015 (水の分子量(g/mol))
1:ジアミンの分子量(g/mol)
2:ジカルボン酸の分子量(g/mol)
N:末端アミノ基濃度(eq/g)
C:末端カルボキシル基濃度(eq/g)
なお、ジアミン成分、カルボン酸成分として分子量の異なるモノマーからポリアミド樹脂(A)を合成する際は、M1およびM2は原料として配合するモノマーの配合比(モル比)に応じて計算されることはいうまでもない。なお、合成釜内が完全な閉鎖系であれば、仕込んだモノマーのモル比と反応モル比とは一致するが、実際の合成装置は完全な閉鎖系とはなりえないことから、仕込みのモル比と反応モル比が一致するとは限らない。仕込んだモノマーが完全に反応するとも限らないことから、仕込みのモル比と反応モル比が一致するとは限らない。したがって、反応モル比とは出来上がったポリアミド樹脂(A)の末端基濃度から求められる実際に反応したモノマーのモル比を意味する。Nは末端アミノ基濃度であることが好ましく、Cは末端カルボキシル基濃度であることが好ましい。
本発明においては、ポリアミド樹脂(A)の融点は、150〜310℃であることが好ましく、より好ましくは160〜300℃であり、さらに好ましくは170〜290℃であり、特には190〜290℃であることが好ましい。このような範囲にあることで、ポリアミド樹脂(A)の炭素繊維(B)への接着性が優れ、機械特性に優れた炭素繊維強化ポリアミド樹脂材料が得られやすい傾向にある。
また、ポリアミド樹脂(A)のガラス転移点は、50〜100℃が好ましく、55〜100℃がより好ましく、特に好ましくは60〜100℃である。この範囲であると、耐熱性が良好となる傾向にある。
なお、融点とは、DSC(示差走査熱量測定)法により観測される昇温時の吸熱ピークのピークトップの温度である。また、ガラス転移点とは、試料を一度加熱溶融させ熱履歴による結晶性への影響をなくした後、再度昇温して測定されるガラス転移点をいう。測定には、例えば、島津製作所社製「DSC−60」を用い、試料量は約5mgとし、雰囲気ガスとしては窒素を30ml/分で流し、昇温速度は10℃/分の条件で室温から予想される融点以上の温度まで加熱し溶融させた際に観測される吸熱ピークのピークトップの温度から融点を求めることができる。次いで、溶融したポリアミド樹脂(A)を、ドライアイスで急冷し、10℃/分の速度で融点以上の温度まで再度昇温し、ガラス転移点を求めることができる。
また、ポリアミド樹脂(A)は、DSC法により観測される昇温時の吸熱ピークを少なくとも2つ有するポリアミド樹脂であることも好ましい。該吸熱ピークを少なくとも2つ有するポリアミド樹脂は、繊維強化ポリアミド樹脂材料を成形する際の成形加工性が良くなる傾向にあり好ましい。
吸熱ピークを少なくとも2つ有するポリアミド樹脂としては、ジアミン構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、ジカルボン酸構成単位の70モル%以上がセバシン酸に由来するポリアミド樹脂であって、キシリレンジアミン単位は、パラキシリレンジアミン由来単位を50〜100モル%、メタキシリレンジアミン由来単位を0〜50モル%含有し、数平均分子量(Mn)が6,000〜30,000であり、融点を少なくとも2つ有するポリアミド樹脂を、好ましく挙げることができる。
この際、2つ以上の吸熱ピークは、通常250〜330℃の範囲にあって、好ましくは260〜320℃、より好ましくは270〜310℃、特に好ましくは275〜305℃にある。吸熱ピークを2つ以上、好ましくはこのような温度範囲に有することで、良好な耐熱性と成形加工性を有するポリアミド樹脂となる。
ポリアミド樹脂(A)の製造方法については、特許第4894982号公報の段落番号0065〜0080の記載を参酌でき、これらの内容は本願明細書に組み込まれる。
また、本発明では、ポリアミド樹脂(A)に加え、他のポリアミド樹脂やエラストマー成分を配合することもできる。他のポリアミド樹脂としては、ポリアミド樹脂(A)以外の芳香族ポリアミド、ポリアミド66、ポリアミド6、ポリアミド46、ポリアミド6/66、ポリアミド10、ポリアミド612、ポリアミド11、ポリアミド12、ヘキサメチレンジアミン、アジピン酸及びテレフタル酸からなるポリアミド66/6T、ヘキサメチレンジアミン、イソフタル酸及びテレフタル酸からなるポリアミド6I/6Tなどが挙げられる。
本発明では、ポリアミド樹脂(A)以外のポリアミド樹脂の量は、ポリアミド樹脂(A)の30重量%以下であることが好ましく、10重量%以下であることがより好ましい。また、ポリアミド樹脂以外の樹脂成分も含んでいてもよいが、これらの他の樹脂成分は、ポリアミド樹脂(A)の10重量%以下であることが好ましく、5重量%以下であることがより好ましい。
エラストマー成分としては、例えば、ポリオレフィン系エラストマー、ジエン系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、フッ素系エラストマー、シリコン系エラストマー等公知のエラストマーが使用でき、好ましくはポリオレフィン系エラストマー及びポリスチレン系エラストマーである。
これらのエラストマーとしては、ポリアミド樹脂(A)に対する相溶性を付与するため、ラジカル開始剤の存在下又は非存在下で、α,β−不飽和カルボン酸及びその酸無水物、アクリルアミド並びにそれらの誘導体等で変性した変性エラストマーも好ましい。
このようなエラストマー成分の含有量は、ポリアミド樹脂(A)中の通常30重量%以下、好ましくは20重量%以下、特には10重量%以下である。
ポリアミド樹脂には、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、酸化防止剤、熱安定剤等の安定剤、耐加水分解性改良剤、耐候安定剤、艶消剤、紫外線吸収剤、核剤、可塑剤、分散剤、難燃剤、帯電防止剤、着色防止剤、ゲル化防止剤、着色剤、離型剤等の添加剤等を加えることができる。これらの詳細は、特許第4894982号公報の段落番号0130〜0155の記載を参酌でき、これらの内容は本願明細書に組み込まれる。
<<炭素繊維>>
本発明に用いる炭素繊維(B)としては、ポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維などの各種の炭素繊維が使用できる。
炭素繊維(B)の平均繊維径は、1〜100μmであることが好ましく、3〜50μmがより好ましく、4〜20μmであることがさらに好ましく、5〜10μmが特に好ましい。平均繊維径がこの範囲であると、加工が容易であり、得られる積層体の弾性率・強度が優れたものとなる。なお、平均繊維径は走査型電子顕微鏡(SEM)などによる観察によって測定することが可能である。50本以上の繊維を無作為に選んで長さを測定し、個数平均の平均繊維径を算出する。
繊維強化ポリアミド樹脂材料中に存在する炭素繊維(B)の繊維長は、平均繊維長で、好ましくは0.01mm以上であり、より好ましくは0.1mm以上であり、特に好ましくは1mm以上である。
なお、本発明の繊維強化ポリアミド樹脂材料中における平均繊維長の測定方法は、特に限定されるものではないが、例えば繊維強化ポリアミド樹脂材料をヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)に溶解させポリアミド樹脂を溶解させた後に残る繊維の長さを測れば良く、目視、場合によっては光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡(SEM)などによる観察によって測定することが可能である。100本の繊維を無作為に選んで長さを測定し、個数平均の平均繊維長を算出する。
本発明で用いる炭素繊維(B)は、その表面に表面処理剤および/または集束剤を有していることが好ましく、その表面にアミノ基と反応性を有する化合物(C)を有することがさらに好ましい。本発明の積層体においては、アミノ基と反応性を有する化合物(C)とポリアミド樹脂(A)が有するアミノ基の間に少なくとも1つの結合を有していてもよい。通常、混練後には、ポリアミド樹脂(A)のアミノ基と反応性を有する化合物(C)の少なくとも一部は、互いに反応し、結合を形成している。このような構成とすることにより、ポリアミド樹脂(A)と炭素繊維(B)の界面密着性を効果的に向上させることが可能になる。この結果、得られる積層体の静電気発生をより効果的に抑制することが可能になる。
アミノ基と反応性を有する化合物(C)として、例えば、エポキシ化合物、アクリル化合物、シラン化合物、チタネート化合物、アルキレングリコール化合物、カルボン酸化合物、水酸化化合物、イソシアネート化合物、アルデヒド化合物、不飽和脂肪酸、飽和脂肪酸等の官能性化合物が好ましく挙げられる。
エポキシ化合物としては、エポキシアルカン、アルカンジエポキシド、ビスフェノールA−グリシジルエーテル、ビスフェノールA−グリシジルエーテルの二量体、ビスフェノールA−グリシジルエーテルの三量体、ビスフェノールA−グリシジルエーテルのオリゴマー、ビスフェノールA−グリシジルエーテルのポリマー、ビスフェノールF−グリシジルエーテル、ビスフェノールF−グリシジルエーテルの二量体、ビスフェノールF−グリシジルエーテルの三量体、ビスフェノールF−グリシジルエーテルのオリゴマー、ビスフェノールF−グリシジルエーテルのポリマー、ステアリルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、エチレンオキシドラウリルアルコールグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル等のグリシジル化合物;安息香酸グリシジルエステル、p−トルイル酸グリシジルエステル、ステアリン酸グリシジルエステル、ラウリン酸グリシジルエステル、パルミチン酸グリシジルエステル、オレイン酸グリシジルエステル、リノール酸グリシジルエステル、リノレン酸グリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル等のグリシジルエステル化合物;テトラグリシジルアミノジフェニルメタン、トリグリシジルアミノフェノール、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルトルイジン、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、トリグリシジルシアヌレート、トリグリシジルイソシアヌレート等のグリシジルアミン化合物が挙げられる。
アクリル化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、アクリル酸エステル化合物、メタクリル酸エステル化合物、クロトン酸エステル化合物が挙げられる。
シラン化合物としては、例えば、アミノプロピルトリエトキシシラン、フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、グリシジルプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のトリアルコキシまたはトリアリロキシシラン化合物、ウレイドシラン、スルフィドシラン、ビニルシラン、イミダゾールシラン等が挙げられる。
チタネート化合物としては、例えば、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラオクチルチタネート、チタンアセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、チタンエチルアセトアセテート、リン酸チタン化合物、チタンオクチレングリコレート、チタンエチルアセトアセテート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタントリエタノールアミネート等が挙げられる。
アルキレングリコール化合物としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールが挙げられる。
カルボン酸化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、アクリル酸エステル化合物、メタクリル酸エステル化合物、クロトン酸エステル化合物が挙げられる。
水酸化化合物としては、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ビスフェノールF、水素添加ビスフェノールFが挙げられる。
また、ビスフェノールA型のエポキシ樹脂等のエポキシ系樹脂、1分子中にアクリル基またはメタクリル基を有するエポキシアクリレート樹脂であって、ビスフェノールA型のビニルエステル樹脂、ノボラック型のビニルエステル樹脂、臭素化ビニルエステル樹脂等のビニルエステル系樹脂が好ましく挙げられる。またエポキシ系樹脂やビニルエステル系樹脂のウレタン変性樹脂であってもよい。
イソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、テトラヒドロナフタレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等が好ましく挙げられる。
アルデヒド化合物としては、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、クロトンアルデヒド、アクロレイン、メタクロレイン、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド、イソバレルアルデヒド、n−バレルアルデヒド、桂皮アルデヒド、o−トルアルデヒド、グルタルアルデヒド、m−トルアルデヒド、p−トルアルデヒド等が好ましく挙げられる。
不飽和脂肪酸としては、例えば、クロトン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、エイコセン酸、エルカ酸、ネルボン酸、リノール酸、エイコサジエン酸、ドコサジエン酸、リノレン酸、ピノレン酸、エレオステアリン酸、ミード酸、エイコサトリエン酸等が好ましく挙げられる。
飽和脂肪酸としては、例えば、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸等が好ましく挙げられる。
アミノ基と反応性を有する化合物(C)としては、特にはビスフェノールA−グリシジルエーテル、ビスフェノールF−グリシジルエーテル、トリレンジイソシアネートが好ましい。また、ビスフェノールAのジシアネート付加物およびビスフェノールFのアルキレンオキシド付加物ジグリシジルエーテルも好ましい。
上記化合物(C)は、例えば次の方法で炭素繊維の表面に適用(処理)する。適用方法としては、化合物(C)を炭素繊維の表面に塗布する方法、化合物(C)を含む溶液に浸漬する方法等公知の方法を採用することができる。例として、炭素繊維をアセトン又はクロロホルム溶液で超音波洗浄し、洗浄した繊維を化合物(C)含む溶液に潜らしながら巻き取る方法が挙げられる。化合物(C)を溶解させる溶剤として、低分子量のエーテル化合物又はエステル化合物を選択できる。また、炭素繊維製造の過程で、焼成後の炭素繊維に適用しても良いし、ロービング作成前に適用しても良い。
上記化合物(C)による処理量は、炭素繊維(B)に対して、5重量%以下であることが好ましく、より好ましくは4重量%以下、さらに好ましくは3重量%以下である。使用する場合の下限としては、0.1重量%以上が好ましく、より好ましくは0.3重量%以上で、特に好ましくは0.5重量%以上である。
<<炭素繊維強化ポリアミド樹脂材料の製造>>
本発明では、炭素繊維強化ポリアミド樹脂材料を用いて、炭素繊維強化ポリアミド樹脂層を形成するが、かかる炭素繊維強化ポリアミド樹脂材料の製造方法について述べる。炭素繊維強化ポリアミド樹脂層は、公知の炭素繊維強化ポリアミド樹脂材料の技術を参酌して製造することができる。
炭素繊維強化ポリアミド樹脂材料の第一の実施形態は、ポリアミド樹脂フィルムと、炭素繊維を一方向に引き揃えたシート状物を重ね、熱プレスする方法である。熱プレスの温度としては、樹脂の融点または融点+30℃の範囲であることが好ましい。この方法では、得られる炭素繊維強化ポリアミド樹脂材料中に、炭素繊維が一方向に並んでいるという特徴がある。すなわち、ポリアミド樹脂が炭素繊維に含浸している。第一の実施形態の変形例として、炭素繊維を織物状等、等方性を持つように規則性を持って並べたものが例示される。等方性の例としては、炭素繊維を90℃、45℃等の角度をなすように重ねた状態が挙げられる。
炭素繊維強化ポリアミド樹脂材料の第二の実施形態は、ポリアミド樹脂繊維と炭素繊維からなる不織布が例示される。不織布は、例えば、熱可塑性樹脂繊維と、炭素繊維と、前記熱可塑性樹脂繊維よりもガラス転移温度が低い熱可塑性樹脂を前記熱可塑性樹脂繊維の1〜50重量%の割合で含む組成物を、液体中で抄くことを含むことによって製造できる。このような構成とすることにより、不織布中に均一に炭素繊維が分散した炭素繊維強化ポリアミド樹脂が得られる。また、不織布は、通常、賦形性に優れるため、金属層が均一な面ではなく、凹部および/または凸部を有する場合に、熱融着しやすいという特徴がある。
炭素繊維強化ポリアミド樹脂材料の第三の実施形態は、ポリアミド樹脂と炭素繊維からなる混繊糸を織った織物または編んだ編み物が例示される。織物や編み物は、その織幅や編み幅を調節することにより、必要な強度や賦形性を付与しやすいというメリットがある。さらに、賦形性に優れる編み物または織物とすることにより、金属層が均一な面ではなく、凹部および/または凸部を有する場合に、熱融着しやすいという特徴がある。
<積層体の製造方法>
本発明における積層体の製造方法は、炭素繊維強化ポリアミド樹脂材料と金属板を熱融着することを含む。熱融着温度は、ポリアミド樹脂材料の融点にもよるが、融点または融点±40℃の温度範囲が好ましい。具体的には、100〜300℃が好ましく、180〜250℃がより好ましい。
また、熱融着の際に、プレスすることが好ましく、プレス圧力は1〜5MPaが好ましく、2〜 3MPaがより好ましい。
さらに、粗面化することが好ましい。粗面化処理の詳細は、上述の金属層の粗面化の記載と同様である。金属板は熱融着前に表面を粗面化処理することが好ましい。粗面化処理することにより、表面積が大きくなり、ポリアミド樹脂が浸透しやすくなると共に、樹脂との接触面積が向上し、炭素繊維強化ポリアミド樹脂層と金属層の密着性を向上させることができる。
熱融着前の炭素繊維強化ポリアミド樹脂材料は、10〜100μmのフィルムであることが好ましい。
<積層体の層構成>
本発明の積層体は、金属層と炭素繊維強化ポリアミド樹脂層をそれぞれ1層ずつ以上有していればよく、それぞれ2層以上ずつ有していてもよい。
また、炭素繊維強化ポリアミド樹脂層と金属層は、必ずしも層の界面が明確になっている必要はなく、炭素繊維強化ポリアミド樹脂層と金属層が混合している領域があってもよい。
本発明の積層体の第一の実施形態は、金属層と炭素繊維強化ポリアミド樹脂層をそれぞれ1層ずつ有し、金属層の表面に炭素繊維強化ポリアミド樹脂層が設けられている態様である。
本発明の積層体の第二の実施形態は、金属層の表面に炭素繊維強化ポリアミド樹脂層が設けられ、前記炭素繊維強化ポリアミド樹脂層の表面にさらに金属層が設けられている態様である。すなわち、炭素繊維強化ポリアミド樹脂層の両方の表面に金属層が設けられている態様である。
本発明の積層体の第三の実施形態は、炭素繊維強化ポリアミド樹脂層の表面に金属層が設けられ、前記金属層の表面にさらに炭素繊維強化ポリアミド樹脂層が設けられている態様である。
本発明の積層体の第四の実施形態は、炭素繊維強化ポリアミド樹脂層と金属層が交互にそれぞれ2層ずつ以上積層されている態様である。
本発明における積層体の形状は、フィルム状、シート状またはテープ状であることが好ましい。また、本発明における積層体は、必ずしも平面上である必要はなく、局面であったり、角部を有していたり、凹部および/または凸部を有していてもよい。特に、所望の形状の金属板を形成した後、その表面を覆うように炭素繊維強化ポリアミド樹脂材料を適用し熱融着することによって、種々の形状の積層体を形成できる。
また、本発明の積層体は、用途等に応じて、さらに、他の層を設けてもよい。例えば、塗料層、防錆層等が例示される。
<積層体の特性>
本発明の積層体は、その厚さが、1〜20mmであることが好ましく、1.5〜5mmであることがより好ましい。このような厚さの積層体とすることにより、本発明の効果がより効果的に発揮される傾向にある。
本発明の積層体は、1cm2当たりの重量が、1〜10gであることが好ましく、1〜5gであることがより好ましい。本発明では、金属層と炭素繊維強化ポリアミド樹脂層の積層体とすることにより、金属板のみからなる場合に比べて軽量化を図ることができる。
特に、本発明の積層体の重量は、積層体と同じ形状の金属板であって、金属の種類によるが、前記積層体に含まれる金属のみで作った場合の重量の20〜80重量%である構成とすることができる。例えば厚みの2/3を炭素繊維強化ポリアミド樹脂層に置き換えた場合、アルミの場合70重量%以下に、鉄の場合40重量%以下である構成とすることができる。
本発明の積層体の表面積は、例えば、10cm2以上とすることができ、さらには、1m2以上とすることもできる。上限は特に定めるものではないが、例えば、10m2以下とすることができる。
本発明の積層体のJIS K7171に従って測定した曲げ弾性率は、厚さ1.5〜3.0mmにおいて、100GPa以上とすることができ、さらには、125GPa以上とすることもできる。上限は特に定めるものではないが、例えば、200GPa以下とすることができる。
本発明の積層体のISO178に従って測定した曲げ強度は、厚さ1.5〜3.0mmにおいて、190MPa以上とすることができ、200MPa以上とすることができ、220MPa以上とすることもでき、さらには、300MPa以上とすることもできる。上限は特に定めるものではないが、例えば、3000MPa以下とすることができる。
本発明では、積層体のISO178に従って測定した曲げ強度が、積層体と同じ形状の金属板であって、前記積層体に含まれる金属のみで作った場合の曲げ強度の±10%以内の強度とすることもできる。
本発明では、ポリアミド樹脂(A)の線膨張係数が金属板に近いため、炭素繊維強化ポリアミド樹脂層と金属層の積層体としても、炭素繊維と金属板の線膨張係数の違いによる影響を極めて少なくできる。
<用途>
本発明により、軽くて強度に優れた積層体を提供可能になった。このような積層体は、さらに加工を行うことによって、表面外観や防腐性を付与し、自動車等の車輌のボディ部分などに用いることが期待できる。
<積層体の加工>
積層体の加工は、本発明の積層体の加熱および/または加圧加工を少なくとも含み、通常、本発明の積層体の洗浄、加熱および/または加圧加工、塗装等の工程を含む。
洗浄は加工前に行うことが好ましい。洗浄方法として、例えば、苛性ソーダを使用した脱脂工程と塩酸や硫酸を用いた錆び取り工程が挙げられる。
次に、本発明の積層体は、通常、加熱・加圧により所望の形状に加工する。加熱温度としては、ポリアミドの融点によるが、100〜300℃程度であり、加圧圧力としては、1〜5.0MPa程度が好ましい。通常は、上記加熱によりポリアミド樹脂(A)の融着が進行する。
塗装としては、下塗り塗装、シーリング、中塗り塗装、上塗り塗装等が例示される。塗装温度としては、120〜200℃程度が好ましい。下塗り塗装は電着塗装、中塗り塗装、上塗り塗装には静電塗装などが用いられる。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。ここで示す圧力は絶対圧である。
<合成例>
<ポリアミド樹脂XD10の合成例(MXDA:PXDA=70:30)>
撹拌機、分縮器、全縮器、温度計、滴下ロート及び窒素導入管、ストランドダイを備えた反応容器に、精秤したトウゴマ由来のセバシン酸12,135g(60mol)、次亜リン酸ナトリウム一水和物(NaH2PO2・H2O)3.105g(ポリアミド樹脂中のリン原子濃度として50ppm)、酢酸ナトリウム1.61gを入れ、十分に窒素置換した後、窒素を内圧0.4MPaまで充填し、さらに少量の窒素気流下で系内を撹拌しながら170℃まで加熱した。次亜リン酸ナトリウム一水和物/酢酸ナトリウムのモル比は0.67とした。
これにメタキシリレンジアミンとパラキシリレンジアミンの70:30(モル比)の混合ジアミン8,335g(61mol)を撹拌下に滴下し、生成する縮合水を系外へ除きながら系内を連続的に昇温した。混合キシリレンジアミンの滴下終了後、内温を260℃として20分間溶融重合反応を継続した。次いで、1分あたり0.01MPaの速度で内圧を大気圧に戻した。
その後、再び系内を窒素で加圧し、ストランドダイからポリマーを取り出して、これをペレット化し、約24kgのポリアミド樹脂(XD10)を得た。得られたペレットを80℃の除湿エアー(露点−40℃)で1時間乾燥した。XD10のガラス転移温度(Tg)は64℃であった。
また、反応モル比は、原料セバシン酸と混合ジアミンの量を調整することによって、表1に示す値となるように調整した。
<ポリアミド樹脂XD10の合成例(MXDA:PXDA=60:40)>
上記ポリアミド樹脂XD10の合成例(MXDA:PXDA=70:30)において、メタキシリレンジアミンとパラキシリレンジアミンのモル比を60:40とし、他は同様に行った。
PA6:宇部興産製、1022B
<末端アミノ基濃度([NH2])(単位:μeq/g)>
上記記載の方法で得られたポリアミド樹脂(A)0.5gを30mlのフェノール/メタノール(4:1)混合溶液に20〜30℃で攪拌溶解し、0.01Nの塩酸で滴定して測定した。
<末端カルボキシル基濃度([COOH])(単位:μeq/g)>
上記でポリアミド樹脂0.1gを30mlのベンジルアルコールに200℃で溶解し、160℃〜165℃の範囲でフェノールレッド溶液を0.1ml加えた。その溶液を0.132gのKOHをベンジルアルコール200mlに溶解させた滴定液(KOH濃度として0.01mol/l)で滴定して測定した。
(末端カルボキシル基濃度に対する末端アミノ基濃度の比([NH2]/[COOH]))
上記記載の方法で求められた末端アミノ基濃度及び末端カルボキシル基濃度から、算出した。
<反応モル比(r)>
前記した次式により求めた。
r=(1−cN−b(C−N))/(1−cC+a(C−N))
式中、
a:M1/2
b:M2/2
c:18.015(水の分子量(g/mol))
M1:ジアミンの分子量(g/mol)
M2:ジカルボン酸の分子量(g/mol)
N:末端アミノ基濃度(当量/g)
C:末端カルボキシル基濃度(当量/g)
CF:東レ製、T700−12000−60E、8000dtex、繊維数12000f、エポキシ樹脂で表面処理されているものを用いた
鉄板:SPCE、厚さ0.5mm(成分:C(炭素)0.08以下、Mn(マンガン)0.45以下、P(リン)0.030以下、S(硫黄)0.030以下、単位は重量%)
アルミ板:A5052、厚さ0.5mm(成分:Si(ケイ素)0.25以下、Fe(鉄)0.40以下、Cu(銅)0.10以下、Mn(マンガン)0.10以下、Mg(マグネシウム)2.2から2.8、Cr(クロム)0.15から0.35、Zn(亜鉛)0.10以下、単位は重量%)
実施例1
<試験片A:金属/CFRP/金属積層体の製造>
<<炭素繊維強化ポリアミド樹脂材料(CFRP)の製造>>
真空乾燥機により乾燥したXD10を30mmφのスクリューを有する単軸押出機にて溶融押出しし、500mm幅のTダイを介して押出成形し、表面に凹凸状シボを設けたステンレス製の対ロールにより、ロール温度70℃、ロール圧0.4MPaで加圧し、フィルム表面にシボを有するフィルムを成形した。フィルム端部をスリットし、厚さ50μm、500mm幅のキャストフィルムを得た。
次いで、一方向に引き揃えた東レ(株)(Toray Industries)製ポリアクリロニトリル系炭素繊維を一方向に引き揃えたシート状物と、上記XD10フィルムを重ね、複数のロールを用いて250℃に加熱しながら1MPaで加圧し、連続的に貼り合わせ、ポリアミド樹脂を炭素繊維に含浸させた。その後、40℃のロールで冷却した。加熱圧縮するのに用いたロールは、ロール表面をフッ素樹脂でコーティングしたものを用いた。
得られた炭素繊維強化ポリアミド樹脂材料の炭素繊維含有率(体積%)は、JIS 7075 燃焼法の通り測定した。結果を下記表に示した。
<<熱融着>>
金属板(鉄板)の一方の表面を三共理化学製紙やすり#400を用いて鑢がけした。
上記で得られた炭素繊維強化ポリアミド樹脂材料を擬似等方に積層し、2枚の鑢がけ金属板で鑢がけした側が内側になるように挟んで215℃、圧力1MPaで熱融着して、積層体(試験片A)を得た。得られたフィルムの厚さは1.7mmであった。得られた試験片を20mmx136mmに切り出し、以下の実験を行った。試験片の重量(単位:g)は表に示した。
<<曲げ弾性率(単位:GPa)>>
試験片Aを、150℃にて1時間結晶化処理を行い、JIS K7171に準じて曲げ弾性率を求めた。なお、装置は東洋精機株式会社製ストログラフを使用し、測定温度を23℃、測定湿度を50%RHとして測定した。
<<曲げ強度(単位:MPa)>>
JIS K7171に準じて曲げ強度を求めた。なお、装置は東洋精機株式会社製ストログラフを使用し、測定温度を23℃、測定湿度を50%RHとして測定した。
<<曲げ試験後の剥がれ部分>>
得られた試験片AについてJIS K7171に準じての条件で曲げ試験を行った後、試験片の面積に対する剥離した面積の割合を求めた(単位:%)。この値が小さいほど、炭素繊維強化ポリアミド樹脂層と金属層の密着性が良いと言える。
<試験片B:CFRP/金属/CFRP積層体の製造>
上記試験片Aの製造の熱融着の段階において、1枚の金属板を得られた炭素繊維強化ポリアミド樹脂材料2枚で挟み、他は同様に行った。
<<重量が1重量%増えるまでの日数(単位:日)>>
試験片Bを2013年9月2日から一か月、神奈川県平塚市内で屋外暴露条件下におき、重量が1重量%増えるまでに要する日数を測定した。日数が大きいほど、防錆性があると言える。
実施例2〜9、比較例1〜3
実施例1において、表に示す通り、ポリアミド樹脂の種類、炭素繊維の含有率、金属板の種類を変えた他は、実施例1と同様に行った。
Figure 0006390263
上記表から明らかなとおり、本発明の積層体は、炭素繊維強化ポリアミド樹脂層と金属層の密着性が良く、錆びにくいことが分かった。さらに、機械的強度も優れたものが得られた。
これに対し、XD系ポリアミド樹脂以外のポリアミド樹脂を用いた場合(比較例1)、重量が1重量%増えるまでの日数が短く、防錆性に劣ることが分かった。また、炭素繊維強化ポリアミド樹脂層を有さない鉄板を用いた場合(比較例2)、防錆性が著しく劣っていた。
さらに、XD系ポリアミド樹脂を用いても末端アミノ基濃度が5μeq/g未満である場合(実施例7、9)、実施例1等に比べ、機械的強度(特に、曲げ弾性率)や密着性がやや劣る傾向にあった。一方、XD系ポリアミド樹脂を用いても末端アミノ基濃度が150μeq/gを超える場合(実施例8)、やや機械的強度(特に、曲げ弾性率)に劣る傾向にあった。

Claims (9)

  1. 金属層と炭素繊維強化ポリアミド樹脂層を有し、前記炭素繊維強化ポリアミド樹脂層の表面に金属層が設けられ、前記金属層の表面にさらに前記炭素繊維強化ポリアミド樹脂層が設けられており、
    前記炭素繊維強化ポリアミド樹脂層が、ジアミン単位とジカルボン酸単位とからなるポリアミド樹脂(A)100重量部に対し、炭素繊維(B)5〜300重量部を含み、前記ジアミン単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、前記ジカルボン酸単位の70モル%以上がセバシン酸に由来し、
    前記金属層が、鉄を含む、積層体。
  2. 金属層と炭素繊維強化ポリアミド樹脂層を有し、前記炭素繊維強化ポリアミド樹脂層の表面に金属層が設けられ、前記金属層の表面にさらに前記炭素繊維強化ポリアミド樹脂層が設けられており、
    前記炭素繊維強化ポリアミド樹脂層が、ジアミン単位とジカルボン酸単位とからなるポリアミド樹脂(A)100重量部に対し、炭素繊維(B)5〜300重量部を含み、前記ジアミン単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、前記ジカルボン酸単位の70モル%以上がセバシン酸に由来し、前記ポリアミド樹脂(A)の末端アミノ基濃度([NH2])が5≦[NH2]≦150(単位:μeq/g)の範囲であり、
    前記金属層が、鉄を含む、積層体。
  3. 前記ポリアミド樹脂(A)のカルボキシル基濃度([COOH])が10≦[COOH]≦50(単位:μeq/g)の範囲である、請求項1または2に記載の積層体。
  4. 前記ポリアミド樹脂(A)の反応モル比が0.97〜1.02である、請求項1〜のいずれか1項に記載の積層体。
  5. 前記炭素繊維強化ポリアミド樹脂層における、炭素繊維含有率が、30〜70体積%である、請求項1〜のいずれか1項に記載の積層体。
  6. 前記炭素繊維(B)が、アミノ基と反応性を有する化合物(C)を表面に有する、請求項1〜のいずれか1項に記載の積層体。
  7. 前記金属層の表面が粗面化されている、請求項1〜のいずれか1項に記載の積層体。
  8. 請求項1〜のいずれか1項に記載の積層体の製造方法であって、炭素繊維強化ポリアミド樹脂材料と金属板を熱融着する工程を含む、積層体の製造方法。
  9. さらに、前記熱融着する工程前に、金属板の表面を粗面化処理する工程を含む、請求項に記載の積層体の製造方法。
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