本発明者らは、神経伝達物質輸送体に特異的に結合することができる分子に、より詳しくは前記輸送体の阻害剤に、核酸を共有結合させることにより、その神経伝達物質輸送体を発現する対象細胞に前記核酸を特異的に標的化できることを見出した。特に、著者らは、DAT、SERTまたはNET神経伝達物質輸送体に対する選択性薬剤とカップリングされた、α−シヌクレインmRNAの特定の領域を標的とする核酸が、α−シヌクレインmRNAの発現レベルを低減できることを示した。
A.本発明のコンジュゲート
第1の態様において、本発明は、
i)ドーパミン輸送体(DAT)、セロトニン輸送体(SERT)またはノルエピネフリン輸送体(NET)からなる群から選択される1以上の神経伝達物質輸送体に特異的に結合する少なくとも1つの選択性薬剤と、
ii)神経伝達物質輸送体と同じ細胞で発現される標的分子であって、α−シヌクレインまたはα−シヌクレインをコードするmRNAである標的分子に、特異的に結合することができる少なくとも1つの核酸と
を含んでなるコンジュゲートに関する。
用語「コンジュゲート(conjugate)」は、本明細書で使用する場合、2つ以上の個々の化合物の共有結合から得られるいずれの化合物も意味する。本発明では、コンジュゲートは、共有結合されている選択性薬剤と核酸を含んでなる分子を意味し、前記の結合は直接的または架橋化合物を介したものである。
用語「共有結合(covalent coupling)」または「共有結合(covalent attachment)」は、核酸と選択性薬剤が相互に直接共有結合的に連結されているか、またはリンカー、または架橋、または1もしくは複数のスペーサー部分などの1または複数の介在部分によって相互に間接的に共有結合的に連結されていることを意味する。
A.1.本発明のコンジュゲートの選択性薬剤
「1以上の神経伝達物質輸送体に特異的に結合する選択性薬剤」という用語は、本明細書で使用する場合、神経伝達物質輸送体に結合するいずれの物質も意味する。この結合特異性が、前記選択性薬剤に結合された分子の、前記神経伝達物質輸送体を含有する細胞、組織または器官への送達を可能とする。このように、前記選択性薬剤を担持するコンジュゲートは、動物に投与した場合またはin vitroで種々のタイプの細胞の集団と接触させた場合に、前記細胞に特異的に指向される。
本明細書で使用する場合、第1の分子の第2の分子への特異的結合は、非特異的相互作用とは測定可能に異なる様式での第1の分子の前記第2の分子への結合能を意味する。本発明による選択性薬剤は、標的(神経伝達物質輸送体)に対して少なくとも約10−4M、あるいは少なくとも約10−5M、あるいは少なくとも約10−6M、あるいは少なくとも約10−7M、あるいは少なくとも約10−8M、あるいは少なくとも約10−9M、あるいは少なくとも約10−10M、あるいは少なくとも約10−11M、あるいは少なくとも約10−12Mまたはそれを超えるKdを示し得る。
用語「神経伝達物質輸送体」は、本明細書で使用する場合、ニューロンの細胞膜を貫通し、その主要な機能がこれらの膜を経て神経伝達物質を運ぶことおよび細胞内の特定の場所へのそれらのさらなる輸送を指示することである、膜輸送タンパク質種に属すタンパク質を意味する。本発明の選択性薬剤により標的化され得る神経伝達物質輸送体としては、限定されるものではないが、ニューロンおよびグリア細胞の原形質膜に存在し、細胞外間隙から細胞内に神経伝達物質を送り込む取り込み担体が含まれる。このプロセスは、原形質膜内外のNa+勾配、特にNa+の共輸送によるものである。タンパク質の2つのファミリーが同定されている。1つのファミリーには、GABA、モノアミン(例えば、ノルアドレナリン、ドーパミン、セロトニン)、ならびにグリシンおよびプロリンなどのアミノ酸の輸送体が含まれる。共通の構造成分としては、12の推定膜貫通α−ヘリックスドメイン、細胞質N末端およびC末端、ならびに膜貫通ドメイン3と4を隔てるグリコシル化された大きな細胞外ループが含まれる。この相同タンパク質のファミリーは、細胞内へのNa+およびCl−イオンと神経伝達物質の共輸送からそれらのエネルギーを引き出す(Na+/Cl−神経伝達物質輸送体)。第2のファミリーには、グルタミン酸などの興奮性アミノ酸の輸送体が含まれる。共通の構造成分としては、6〜10の推定膜貫通ドメイン、細胞質N末端およびC末端、ならびに細胞外ループにおけるグリコシル化が含まれる。これらの興奮性アミノ酸輸送体は、Cl−非依存的ではなく、細胞内K+イオンを必要とし得る(Na+/K+神経伝達物質輸送体)(Liu, Y. et al. (1999) Trends Cell Biol. 9: 356-363)。
本発明の選択性薬剤により標的化され得る神経伝達物質輸送体としてはまた、細胞内小胞膜、一般には、シナプス小胞に存在する神経伝達物質輸送体も含まれ、この主要な機能は、シナプス伝達の際の小胞の内容物のエキソサイトーシス前に、細胞質から小胞へ神経伝達物質を集中させることである。小胞輸送は、H+−ATPアーゼによって生じる小胞膜内外の電気化学的勾配を使用する。2つのタンパク質ファミリーが小胞への神経伝達物質の輸送に関与している。1つのファミリーは、主としてプロトン交換を用いて分泌小胞への輸送を駆動し、モノアミンおよびアセチルコリンの輸送体を含む。例えば、モノアミン輸送体は、2つの管腔プロトンを細胞質の伝達物質の各分子と交換する。第2のファミリーはギャバ輸送体を含み、シナプス小胞内部の正電荷に頼るものである。これら2つの小胞輸送体は互いに配列類似性を示さず、原形質膜担体の構造とは異なる構造を有する(Schloss, P. et al.(1994) Curr. Opin. Cell Biol. 6: 595-599; Liu, Y. et al. (1999) Trends Cell Biol. 9: 356-363)。
好ましい実施形態では、選択性薬剤はペプチドでない。
本発明の選択性薬剤で標的化され得る神経伝達物質輸送体の特定の種類としては、ドーパミン輸送体(DAT)、セロトニン輸送体(SERT)およびノルエピネフリン輸送体(NET)が含まれる。
用語「ドーパミン輸送体」または「DAT」または「SLC6A3」とは、シナプス間隙から神経伝達物質ドーパミンを輸送し、それを周囲の細胞に沈着させ、このようにして神経伝達物質のシグナルを伝達する内在性膜タンパク質としての分子を意味する。ヒトSLC6A3(溶質油層担体ファミリー6、神経伝達物質輸送体、ドーパミン、メンバー3)遺伝子はNCBI GenBank(2012年10月7日バージョン)に受託番号NG_015885.1で寄託され、ヒトSLC6A3 mRNAは受託番号NM_001044.4で寄託されている。ヒトドーパミン輸送体タンパク質は、GenBankに受託番号NP_001035.1で寄託されている。
用語「セロトニン輸送体」または「SERT」または「SLC6A4」、本明細書で使用する場合、神経伝達物質セロトニンをシナプス間隙からシナプス前ニューロンへ輸送する内在性膜タンパク質としてのポリペプチドを意味する。ヒトSLC6A4(溶質輸送担体ファミリー4、神経伝達物質輸送体、セロトニン、メンバー4)遺伝子はNCBI GenBank(2012年10月21日バージョン)に受託番号NG_011747.1で寄託され、ヒトSLC6A4 mRNAは受託番号NM_001045.4で寄託されている。ヒトセロトニン輸送体タンパク質は、GenBankに受託番号NP_001036.1で寄託されている。ヒト、ラット、マウスおよびウシSERTの配列は、SwissProtデータベースにそれぞれ受託番号P31645、P31652、Q60857およびQ9XT49として提供されている。5−HT1AR cDNAを標的とする核酸の場合と同様に、それが対応するmRNAまたは前記mRNAによりコードされるタンパク質のレベルに実質的な阻害をもたらす限り、SERT cDNAのいずれの領域も標的化することができる。よって、好適なSERT特異的核酸は、前記細胞を供試核酸と接触させた後にSERTを発現する細胞においてSERT mRNAまたはSERTタンパク質のレベルを測定することによって上記のように同定することができる。
用語「ノルエピネフリン輸送体」または「NET」または「SLC6A2」は、シナプス間隙に放出されたノルエピネフリン(norepinephrinee)を再びシナプス前ニューロンに輸送する膜貫通タンパク質としての分子を意味する。ヒトSLC6A2(溶質輸送担体ファミリー6、神経伝達物質輸送体、ノルアドレナリン、メンバー2)遺伝子は、NCBI GenBank(2012年10月21日バージョン)に受託番号NG_016969.1で寄託されている。ヒトノルエピネフリン輸送体に関しては4つの転写産物がGenBankに寄託されている。mRNA転写変異体1(mRNA1)は、より長いアイソフォームまたはアイソフォーム1をコードするヒトノルエピネフリン輸送体の転写変異体である。このmRNA1は、GenBankに受託番号NM_001172504.1で寄託されている。mRNA転写変異体2(mRNA2)は、変異体1に比べて、コード領域を含む代替の3’エキソンを有する転写変異体である。このmRNA2は、GenBankに受託番号NM_001172501.1で寄託されている。mRNA写変異体3(mRNA3)は、変異体1に比べて、コード領域を含む代替の3’エキソンを有する転写変異体である。このmRNA3は、GenBankに受託番号NM_001043.3で寄託されている。mRNA転写変異体4(mRNA4)は、変異体1に比べて、5’および3’コード領域を含む代替の5’および3’配列を有する転写変異体である。このmRNA4は、GenBankに受託番号NM_001172502.1で寄託されている。4つのヒトタンパク質アイソフォームが、GenBankに受託番号NP_001165975.1、NP_001165972.1、NP_001034.1およびNP_001165973.1で寄託されている。
特定の実施形態では、選択性薬剤は、三重再取り込み阻害剤、ノルアドレナリン・ドーパミン二重再取り込み阻害剤、セロトニン単独再取り込み阻害剤、ノルアドレナリン単独再取り込み阻害剤およびドーパミン単独再取り込み阻害剤からなる群から選択される。
用語「三重再取り込み阻害剤」または「TRI」は、セロトニン、ノルエピネフリンおよびドーパミン再取り込み阻害剤(SNDRI)としても知られ、それぞれセロトニン輸送体(SERT)、ノルエピネフリン(norepinephrinee)輸送体(NET)、およびドーパミン輸送体(DAT)の作用を遮断することによりモノアミン神経伝達物質であるセロトニン(5−HT)、ノルエピネフリン(norepinephrinee)(ノルアドレナリン、NA)およびドーパミン(DA)の再取り込み阻害剤として同時に作用する分子を意味する。これは続いて、これらの神経伝達物質の細胞外濃度の上昇、従って、セロトニン作動性、ノルアドレナリン作動性またはアドレナリン作動性、およびドーパミン作動性の神経伝達の増強をもたらす。特定の実施形態では、本発明の三重再取り込み阻害剤は、ドーパミン、セロトニン、ノルエピネフリン三重再取り込み阻害剤である。
用語「二重再取り込み阻害剤」は、2つの神経伝達物質輸送体の再取り込みを同時に阻害することができる分子を意味する。特定の実施形態では、本発明の二重再取り込み阻害剤は、ノルエピネフリン・ドーパミン二重再取り込み阻害剤である。
用語「単独再取り込み阻害剤」は、特定の神経伝達物質輸送体における再取り込みを阻害することができる分子を意味する。本発明の特定の実施形態では、単独再取り込み阻害剤は、ドーパミン単独再取り込み阻害剤である。
用語「ドーパミン再取り込み阻害剤」または「DRI」は、ドーパミン輸送体(DAT)の作用を遮断することにより神経伝達物質ドーパミンの再取り込み阻害剤として作用する。これは続いて、ドーパミンの細胞外濃度の上昇、従って、ドーパミン作動性の神経伝達の増強をもたらす。好適なDRIとしては、限定されるものではないが、アミネプチン、ベンズアトロピン/ベンズトロピン、ブプロピオン、デクスメチルフェニデート、エスケタミン、エチベンザトロピン/エチブ(Ethybe)、ポナリド、フェンカンファミン、フェンカミン、ケタミン、レフェタミン、メジホキサミン、メソカーブ(Mesocarb)、メチルフェニデート、ネフォパム、ノミフェンシン、ピプラドロール、プロリンタン、ピロバレロン、チレタミンおよびトリペレナミンなどの医薬;アルトロパン、アンホネリン酸、ベノシクリジン、ブラソフェンシン、ブロマンタン、DBL−583、ジクロロパン、ジクロフェンシン、ジエチシクリジン、ジフルオロピン、ガシクリジン、GBR−12,935、インダトラリン、イオフルパン、イオメトパン、マニファキシン、ラダファキシン、タメトラリン、テソフェンシン、トロパリルおよびバノキセリンなどの研究化学物質が挙げられる。好適なDRIは、Kula et al., (Life Sciences 34: 2567-2575, 1984)により公開されている方法を用いて記載のように実施される、ラット線条体から調製されるシナプトソーム調製物によるドーパミンの高親和性取り込みの阻害における推定DRIの能力の決定などの当業者に公知のアッセイを用いて同定することができる。
用語「ノルエピネフリン(norepinephrinee)−ドーパミン再取り込み阻害剤」または「NDRI」は、本明細書で使用する場合、それぞれノルエピネフリン(norepinephrinee)輸送体(NET)およびドーパミン輸送体(DAT)の作用を遮断することにより、神経伝達物質ノルエピネフリン(norepinephrinee)およびドーパミンの再取り込み阻害剤として作用する化合物を意味する。これは続いて、ノルエピネフリン(norepinephrinee)およびドーパミン両方の細胞外濃度の上昇、従って、アドレナリン作動性およびドーパミン作動性の神経伝達の増強をもたらす。本発明のコンジュゲートにおいて使用するための好適なNDRIとしては、限定されるものではないが、アミネプチン(Survector、Maneon、Directin)、ブプロピオン(Wellbutrin、Zyban)、デクスメチルフェニデート(Focalin)、フェンカンファミン(Glucoenergan、Reactivan)、フェンカミン(Altimina、Sicoclor)、レフェタミン(Santenol)、メチルフェニデート(Ritalin、Concerta)、ノミフェンシン(Merital)、ピプラドロール(Meretran)、プロリンタン(Promotil、Katovit)、ピロバレロン(Centroton、Thymergix)、ネフォパム(Acupan)、アドハイパーフォリン(セイヨウオトギリソウ(Hypericum perforatum)(セント・ジョーンズ・ワート)に見られる)、ハイパーフォリン(セイヨウオトギリソウ(セント・ジョーンズ・ワート)に見られる)、コカイン、デスオキシピプラドロール(2−DPMP)、ジフェニルプロリノール(D2PM)、メチレンジオキシピロバレロン(MDPV)、シロバミン、マニファキシン(GW−320,659)、ラダファキシン(GW−353,162)、タメトラリン(CP−24,441)が挙げられる。
用語「セロトニン再取り込み阻害剤」または「SRI」は、セロトニン取り込みを遮断することができる分子を意味し、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)(他の神経伝達物質に実質的に影響を及ぼさずにセロトニン取り込みを特異的に遮断する)ならびにセロトニン−ノルエピネフリン(norepinephrinee)再取り込み阻害剤(SNRI)およびセロトニン−ノルエピネフリン(norepinephrinee)−ドーパミン再取り込み阻害剤(SNDRI)などの非選択的セロトニン再取り込み阻害剤の両方が含まれる。
用語「セロトニン選択的再取り込み阻害剤」または「SSRI」は、他の神経伝達物質再取り込みまたは輸送体系に実質的に影響を及ぼさないセロトニン(serotinine)再取り込みの選択的阻害剤を意味する。これらの化合物は、主としてシナプス前セロトニン作動性細胞に作用し、神経伝達物質セロトニンの細胞外レベルの上昇、それによるシナプス後受容体と結合するために利用可能なセロトニンのレベルの上昇、および脳におけるこのモノアミン作動性神経伝達物質の活性の欠損の復帰をもたらす。SSRIの具体的非限定例としては、セルトラリン(CAS 79617−96−2)、セルトラリン構造類似体、フルオキセチン(CAS 54910−89−3)、フルボキサミン(CAS 54739−18−3)、パロキセチン(CAS 61869−08−7)、インダプリン(CAS 63758−79−2)、ジメルジン(CAS 56775−88−3)、シタロプラム(CAS 59729−33−8)およびエスシタプラム(CAS 219861−08−2)が挙げられる。所与の化合物がSSRIとして作用しているかどうかを判定するためのアッセイは、例えば、本質的にKoe et al. (J. Pharmacol. Exp. Ther., 1983, 226:686-700)に記載のように、セロトニンのex vivo取り込みを低下させ、静脈内[3H]ノルエピネフリン(norepinephrinee)のラット心臓取り込みに影響を及ぼさずにp−クロロアンフェタミンのセロトニン枯渇作用に拮抗する能力である。
用語「セロトニン−ノルエピネフリン(norepinephrinee)再取り込み阻害剤」または「SNRI」は、セロトニン輸送体を遮断することによりセロトニンの再取り込みを、そしてノルエピネフリン(norepinephrinee)輸送体を遮断することによりノルエピネフリン(norepinephrinee)の再取り込みを阻害することができる化合物系列を意味する。この系列には、ベンラファキシン(CAS 93413−69−5)、デスベンラファキシン(CAS 93413−62−8)、デュロキセチン(CAS 116539−59−4)、ミルナシプラン(CAS 92623−85−3)、シブトラミン(106650−56−0)、トラマドール(CAS 27203−92−5)およびビシファジン(CAS 71195−57−8)などの化合物が含まれる。所与の化合物がSNRIとして作用しているかどうかを判定するためのアッセイは、例えば、本質的にBolden-Watson C, Richelson E. (Life Sci. 1993; 52(12):1023-9)に記載のように、脳のシナプトソームによるセロトニンおよびノルエピネフリン(norepinephrinee)の取り込みを低下させる能力である。SNRIの特定のタイプは、三環を含んでなる一般分子構造を有するSNRIとしての三環系抗鬱薬である。三環系抗鬱薬の中でも、直鎖三環系、例えば、イミプラミン、デシプラミン、アミトリプチリン、ノルトリプチリン、プロトリプチリン、ドキセピン、ケチプラミン、ミアンセリン、ドチエピン、アモキサピン、ジベンゼピン、メリトラセン、マプロチリン、フルペンチキソール、アザフェン、チアネプチンおよび類似の活性を示す関連化合物が優れている。アンギュラー型三環系としては、インドリリン、クロダゾン、ノミフェンシン、および関連化合物が含まれる。様々な他の構造的に多様な抗鬱薬、例えば、イプリンドール、ウェルブトリン、ニアラミド、ミルナシプラン、フェネルジンおよびトラニルシプラミンも同様の活性を生じることが示されている。それらは三環系抗鬱薬と機能的に等価であり、従って、本発明の範囲内に含まれる。よって、三環系抗鬱薬という用語は、本発明者により、広範なクラスの上記抗鬱薬を、共通の特性を有する関連化合物(それらは総て、抗鬱活性を有する)とともに包含することが意図され、これらには限定されるものではないが、アミトリプチリン、アミトリプチリンオキシド、カルバマゼピン、ブトリプチリン、クロミプラミン、デメキシプチリン、デシプラミン、ジベンゼピン、ジメタクリン、ドスレピン/ドチエピン、ドキセピン、イミプラミン、イミプラミンオキシド、イプリンドール、ロフェプラミン、メリトラセン、メタプラミン、ニトロキシアゼピン、ノルトリプチリン、ノキシプチリン、プレガバリン、プロピゼピン、プロトリプチリン、キヌプラミンおよびトリミプラミンなどの化合物が含まれる。
用語「ノルアドレナリン再取り込み阻害剤」、「NRI」、「NERI」、アドレナリン作動性再取り込み阻害剤」または「ARI」は、ノルエピネフリン(norepinephrinee)輸送体(NET)の作用を遮断することによりノルアドレナリンおよびアドレナリンの再取り込みを遮断することができる化合物系列を意味する。この系列の化合物には、他のモノアミン輸送体に影響を及ぼさずにNETを排他的に遮断する選択的NRI、ならびにノルエピネフリン(norepinephrinee)輸送体およびセロトニン(serotinine)輸送体(上記参照)を遮断するSNRI、ノルエピネフリン(norepinephrinee)およびドーパミン輸送体(下記参照)を遮断するノルエピネフリン(norepinephrinee)−ドーパミン再取り込み阻害剤(NDRI)、三環系抗鬱薬および四環系抗鬱薬(上記参照)などの非選択的NRIが含まれる。本発明に十分な(adequalte)、好適な選択的NRIとしては、限定されるものではないが、アトモキセチン/トモキセチン(StratteraまたはCAS 83015−26−3)、マジンドール(Mazanor、SanorexまたはCAS 22232−71−9)、レボキセチン(Edronax、VestraまたはCAS 98819−76−2)およびビロキサジン(VivalanまたはCAS 46817−91−8)が挙げられる。
特定の実施形態では、本発明のコンジュゲートは、三重再取り込み(reupatake)阻害剤である選択性薬剤を含んでなる。本発明の好ましい実施形態では、選択性薬剤は、下記の構造(I):
[式中、
nまたはmは、それぞれ0以上6以下の値を有する整数であり;
pは、0以上4以下の値を有する整数であり;
R1は、水素;環式もしくは非環式、置換もしくは非置換、分岐もしくは非分岐型脂肪族;環式もしくは非環式、置換もしくは非置換、分岐もしくは非分岐型ヘテロ脂肪族;置換もしくは非置換、分岐もしくは非分岐型アシル;置換もしくは非置換、分岐もしくは非分岐型アリール;置換もしくは非置換、分岐もしくは非分岐型ヘテロアリール;−C(=O)RA;−CO2RA;−C(=O)N(RA)2または−C(RA)3であり;ここで、RAの各存在は独立に、水素、保護基、脂肪族部分、ヘテロ脂肪族部分、アシル部分;アリール部分;ヘテロアリール部分;アルコキシ;アリールオキシ;アルキルチオ;アリールチオ;アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロアリールオキシ;またはヘテロアリールチオ部分であり;
R2は、水素;環式もしくは非環式、置換もしくは非置換、分岐もしくは非分岐型脂肪族;環式もしくは非環式、置換もしくは非置換、分岐もしくは非分岐型ヘテロ脂肪族;置換もしくは非置換、分岐もしくは非分岐型アシル;置換もしくは非置換、分岐もしくは非分岐型アリール;置換もしくは非置換、分岐もしくは非分岐型ヘテロアリール;−C(=O)RB;−CO2RB;−C(=O)N(RB)2または−C(RB)3であり;ここで、RBの各存在は独立に、水素、保護基、脂肪族部分、ヘテロ脂肪族部分、アシル部分;アリール部分;ヘテロアリール部分;アルコキシ;アリールオキシ;アルキルチオ;アリールチオ;アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロアリールオキシ;またはヘテロアリールチオ部分であり;
R3は、水素;ハロゲン;環式もしくは非環式、置換もしくは非置換、分岐もしくは非分岐型脂肪族;環式もしくは非環式、置換もしくは非置換、分岐もしくは非分岐型ヘテロ脂肪族;置換もしくは非置換、分岐もしくは非分岐型アシル;置換もしくは非置換、分岐もしくは非分岐型アリール;置換もしくは非置換、分岐もしくは非分岐型ヘテロアリール;−ORC;−C(=O)RC;−CO2RC;−CN;−SCN;−SRC;−SORC;SO2RC;−NO2;−N3;−N(RC)2;−NHC(=O)RC;−NRCC(=O)N(RC)2;−OC(=O)ORC;−OC(=O)RC;−OC(=O)N(RC)2;−NRCC(=O)ORC;または−C(RC)3であり:ここで、RCの各存在は独立に、水素、保護基、脂肪族部分、ヘテロ脂肪族部分、アシル部分;アリール部分;ヘテロアリール部分;アルコキシ;アリールオキシ;アルキルチオ;アリールチオ;アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロアリールオキシ;またはヘテロアリールチオ部分であり;
R4は、置換もしくは非置換、分岐もしくは非分岐型アリール;または置換もしくは非置換、分岐もしくは非分岐型ヘテロアリールであり;
R5は、水素;ハロゲン;環式もしくは非環式、置換もしくは非置換、分岐もしくは非分岐型脂肪族;環式もしくは非環式、置換もしくは非置換、分岐もしくは非分岐型ヘテロ脂肪族;置換もしくは非置換、分岐もしくは非分岐型アシル;置換もしくは非置換、分岐もしくは非分岐型アリール;置換もしくは非置換、分岐もしくは非分岐型ヘテロアリール;−ORE;−C(=O)RE;−CO2RE;−CN;−SCN;−SRE;−SORE;SO2RE;−NO2;−N3;−N(RE)2;−NHC(=O)RE;−NREC(=O)N(RE)2;−OC(=O)ORE;−OC(=O)RE;−OC(=O)N(RE)2;−NREC(=O)ORE;または−C(RE)3であり、ここで、REの各存在は独立に、水素、保護基、脂肪族部分、ヘテロ脂肪族部分、アシル部分;アリール部分;ヘテロアリール部分;アルコキシ;アリールオキシ;アルキルチオ;アリールチオ;アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロアリールオキシ;またはヘテロアリールチオ部分である。]
およびその薬学上許容される形態を有する三重再取り込み阻害剤である。
本発明のより好ましい実施形態では、本発明のコンジュゲートの選択性薬剤は、下記の構造(II):
を有する三重再取り込み阻害剤であり、この構造(II)を有する選択性薬剤は、(1R,3S)−3−(3,4−ジクロロフェニル)−N−メチル−2,3−ジヒドロ−1H−インデン−1−アミンまたはインダトラリンとしても知られる。
A.2.本発明のコンジュゲートの核酸
本発明によるコンジュゲートの第2の成分は、前記神経伝達物質輸送体と同じ細胞で発現される標的分子に特異的に結合することができる核酸であり、前記標的分子は、α−シヌクレインまたはα−シヌクレインをコードするmRNAである。
用語「α−シヌクレイン」は、本明細書で使用する場合、交換可能なアポリポタンパク質のクラスA2脂質結合ドメインと類似性を有する保存性の高いα−ヘリックス脂質結合モチーフを含有し、かつ、パーキンソン病、アルツハイマー病およびレビー小体病などのある種の神経系疾患に見られるレビー小体と呼ばれる細胞内凝集物を形成し得る、シヌクレインメンバーファミリー(α−シヌクレイン、β−シヌクレインおよびγ−シヌクレイン)のポリペプチドを意味する。
ヒト、ラット、マウスおよびウシα−シヌクレインの配列は、SwissProtデータベースに、それぞれ受託番号P37840、P37377、O55042およびQ3T0G8として提供されている。5−HT1AR cDNAを標的とする核酸の場合と同様に、α−シヌクレイン特異的核酸は、上記のようないずれかの方法を用いて同定または選択することができ、対応するmRNAまたは前記mRNAによりコードされるタンパク質のレベルに実質的阻害を誘導するそれらの能力に関して試験することができる。よって、好適なα−シヌクレイン特異的核酸は、上記のように、前記細胞を供試核酸と接触させた後にα−シヌクレインを発現する細胞においてα−シヌクレイン mRNAまたはα−シヌクレインタンパク質のレベルを測定することによって同定することができる。
一般に、本発明の核酸は、標的分子の機能を阻害すること、すなわち、α−シヌクレインを阻害することができる。よって、標的分子がα−シヌクレインmRNAであれば、核酸は、α−シヌクレインmRNAの翻訳を阻害することによって作用し、前記mRNAによりコードされるα−シヌクレインタンパク質のレベルの低下をもたらす。標的分子がα−シヌクレインタンパク質であれば、核酸(一般に、アプタマー)は、タンパク質の活性を阻害することにより作用する。
用語「核酸」は、本明細書で使用する場合、2以上のデオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体分子ならびに天然核酸に構造上類似するが、天然の核酸とは(例えば、化学修飾によって)1以上の核酸骨格(例えば、天然核酸のリン酸)、核酸の糖(例えば、天然DNAではデオキシリボース、天然RNAではリボース)、および核酸の塩基(例えば、天然核酸のアデノシン、シトシン、グアニン、チミジン、またはプリン)が異なる分子を有するポリマーを意味する。
オリゴヌクレオチドは、二本鎖または一本鎖オリゴヌクレオチドであってよく、限定されるものではないが、低分子干渉RNA(siRNA)、低分子ヘアピン型RNA(shRNA)、マイクロRNA(miRNA)、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはリボザイムを含む。二本鎖核酸が使用される場合、これらは標的核酸と相補的な第1のセンス鎖とそのセンス鎖と相補的な第2のアンチセンス鎖を含んでなり、これにより、第1鎖と第2鎖の間での塩基対形成により二本鎖DNAの形成が可能である。
用語「アンチセンス鎖」は、標的配列と実質的に相補的な領域を含む二本鎖核酸の鎖を意味する。相補性領域が標的配列と完全に相補的でない場合、アンチセンス鎖の5’末端のヌクレオチド2〜7個外側にミスマッチが最も許容される。用語「センス鎖」は、本明細書で使用する場合、アンチセンス鎖の領域と実質的に相補的な領域を含むdsRNA鎖を意味する。
本発明の特定の実施形態では、神経伝達物質輸送体と同じ細胞で発現される標的分子に特異的に結合することができる核酸配列は、ギャップマー、二本鎖干渉RNA、マイクロRNA活性を有する二本鎖RNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、アンチマイクロRNA、プレMiRNA、マイクロRNAまたはshRNAをコードするmRNA、PNA、LNA、リボザイムおよびアプタマーからなる群から選択される。
「アンチセンスオリゴヌクレオチド」は、本明細書で使用する場合、標的mRNA(センス)またはDNA(アンチセンス)配列と結合することができる一本鎖核酸配列(RNAまたはDNAのいずれか)を含んでなるアンチセンスまたはセンスオリゴヌクレオチドを含む。所与のタンパク質をコードするcDNA配列に基づき、アンチセンスまたはセンスオリゴヌクレオチドを送達する能力は、例えば、Stein and Cohen, Cancer Res. 48:2659, (1988)およびvan der Krol et al., BioTechniques 6:958, (1988)に記載されている。
本明細書で使用する場合、用語「リボザイム」または「RNA酵素」または「触媒RNA」は、化学反応を触媒するRNA分子を意味する。多くの天然リボザイムが、それらの固有のホスホジエステル結合の1つの加水分解、または他のRNA内の結合の加水分解を触媒するが、それらはリボソームのアミノトランスフェラーゼ活性、DNAリガーゼのリガーゼ活性、および従来のタンパク質酵素により遂行される他のいくつかの化学反応を触媒することも分かっている。
「アプタマー」は、本明細書で使用する場合、結合が「相補的」でない、すなわち、核酸リガンドと標的核酸配列の間の塩基対形成によらない、標的分子上の2以上の部位と結合する核酸リガンドを意味する。アプタマーは、ポリペプチドを含め、想定できるいずれの標的にも結合するものを設計することができる。アプタマーは、慣用の生体分子である抗体のものと競合する分子認識特性を付与するので、生物工学適用および治療適用に有用性を与える。それらの選択的認識に加え、アプタマーは、試験管内で完全に操作することができ、化学合成により容易に生産され、望ましい保存特性を備え、かつ、治療適用において免疫原性をほとんどまたは全く惹起しないことから、抗体に優る利点を提供する。アプタマーは、「SELEX」(Systematic Evolution of Ligands by Exponential Enrichment) (Shamah et al, Acc. Chem. Res. 2008, 41 pp. 130-8)として当技術分野の現状で知られている方法論で、in vitroパーティション、選択および増幅を何回か繰り返すことによって合成することができる。あるいは、アプタマーは、例えば、段階的固相により合成することができる。
本発明の核酸は、核酸塩基、糖および/またはヌクレオチド間結合に1以上の修飾を含んでもよい。
核酸の1以上の骨格残基に対する修飾は、下記のうちの1以上を含んでなり得る:2’−O−メチル(2’−OMe)、2’−O−メトキシエチル(2’−MOE)、2’−O−メトキシエトキシ、2’−フルオロ(2’−F)、2’−AIIyI、2’−O−[2−(メチルアミノ)−2−オキソエチル]、2’−O−(N−メチルカルバメート)などの2’糖修飾;4’−チオ、4’−CH2−O−2’−架橋、4−(CH2)2−O−2’−架橋を含む4’糖修飾;ロックド核酸(Locked Nucleic Acid)(LNA);ペプチド核酸(Peptide Nucleic Acid)(PNA);インターカレーティング核酸(Intercalating nucleic acid)(INA);ツイストインターカレーティング核酸(Twisted intercalating nucleic acid)(TINA);ヘキシトール核酸(Hexitol nucleic acids)(HNA);アラビノ核酸(arabinonucleic acid)(ANA);シクロヘキサン核酸(cyclohexane nucleic acids)(CNA);シクロヘキセニル核酸(cyclohexenylnucleic acid)(CeNA);トレオシル核酸(threosyl nucleic acid)(TNA);モルホリノオリゴヌクレオチド;ギャップマー;ミックスマー;インコーポレーションアルギニンリッチペプチド;合成RNAへの5’−リン酸の付加;RNAアプタマー((Que-Gewirth NS, Gene Ther. 2007 Feb;14(4):283-91.);特定のRNAアプタマーの対象に対する解毒薬で調節したRNAアプタマー(Oney S, Oligonucleotides. 2007 Fall;17(3):265-74参照)またはそれらの任意の組合せ。
核酸の1以上のヌクレオシド間結合に対する修飾は、下記のうちの1以上を含んでなり得る:ホスホロチオエート、ホスホルアミデート、ホスホロジアミデート、ホスホロジチオエート、ホスホロセレノアート、ホスホロジセレノアート、ホスホロアニロチオエートおよびホスホルアニリダート、またはそれらの任意の組合せ。
ロックド核酸(LNA)は、よく接近不能RNAとも呼ばれる、修飾されたRNAヌクレオチドである。LNAヌクレオチドのリボース部分は、2’炭素と4’炭素を連結する付加的な架橋(O2’,C4’−メチレンブリッジ)で修飾される。この架橋は、A型のDNAまたはRNAによく見られる、3’エンド構造立体配座でリボースを「ロック」する。LNAヌクレオチドは、所望により、核酸においてDNAまたはRNA塩基と混合することができる。このようなオリゴマーは市販されている。ロックされたリボース立体配座は、塩基のスタッキングおよび骨格の予備構成を増進する。これは、高いミスマッチ識別能を備えるだけでなく、熱安定性(融解温度)およびLNA修飾核酸のハイブリダイゼーション親和性を著しく高める。これらの特性は、それらをアンチセンスに基づく技術に極めて有用とする。さらに、LNA抗miRオリゴヌクレオチドは霊長類で試験されており、有望な結果と毒性の低さが示されている。
ペプチド核酸(PNA)は、DNAまたはRNAに類似する人工的に合成されたポリマーであり、生物学的研究および医学的処置に使用される。PNAは、自然界に存在することは知られていない。DNAおよびRNAはそれぞれデオキシリボースおよびリボースの糖骨格を有するが、PNAの骨格は、ペプチド結合により連結されたN−(2−アミノエチル)−グリシン単位の繰り返しから構成される。この骨格に、メチレンカルボニル結合により様々なプリンおよびピリミジン塩基が結合される。PNAは、ペプチドと同様に、最初の(左側)の位置にN末端、右側にC末端がくるように描かれる。PNAの骨格は電荷の無いリン酸基を含むので、PNA/DNA鎖間の結合は、静電反発が無いためにDNA/DNA鎖間よりも強い。混合塩基PNA分子は、塩基対認識に関してまさにDNA分子を模倣するものである。PNA/PNA結合は、PNA/DNA結合よりも強い。
モルホリノは、天然の核酸構造の再設計産物である合成分子である。モルホリノとDNAまたはRNAの間の構造上の違いは、モルホリノも標準的な核酸塩基を有するが、それらの塩基がデオキシリボース/リボース環ではなく6員モルホリン環に結合され、かつ、非依存性ホスホロジアミデートサブユニット間結合が陰イオン性ホスホジエステル結合に置き換わっていることである。モルホリノは、PMO(ホスホロジアミデートモルホリノオリゴヌクレオチド)とも呼ばれることがある。6員モルホリン間は、化学式O−(CH2−CH2)2−NHを有する。
ギャップマーまたは「ギャップオリゴマー化合物」は、DNA窓または「ギャップ」が、それ以外の点では通常の、または修飾された、「ウイング」として知られるRNAオリゴヌクレオチドに挿入されたRNA−DNA−RNAキメラオリゴヌクレオチドプローブである。この修飾はオリゴヌクレオチドのin vivo安定性およびプローブと標的の相互作用のアビディティを高め、その結果、より短いプローブが効果的に使用できる。好ましくは、ウイングは、内部ブロックをヌクレアーゼ分解から保護する2’−O−メチル(OMe)または2’−O−メトキシエチル(MOE)修飾リボヌクレオチドである。さらに、ギャップまたはウイングを形成するヌクレオチドは、ホスホジエステル結合またはホスホロチオエート結合によって連結されてよく、従って、それはRNアーゼ分解に対して耐性となる。加えて、ウイングを形成するヌクレオチドはまた、3’メチルホスホネート結合によって連結された塩基を組み込むことによって修飾されてもよい。
用語「RNA干渉」またはRNAiは、真核細胞で起こり得る配列特異的転写後遺伝子抑制のプロセスである。一般に、このプロセスは、特定の配列のmRNAの、その配列と相同な二本鎖RNA(dsRNA)により誘導される分解を含む。このdsRNAは、RNアーゼタイプIII(Dicer)により前記RNAをsiRNAに変換することによって遺伝子発現のサイレンシングを起こすことができる。これらのsiRNA鎖の一方は、RNA誘導サイレンシング複合体(RNA-induced silencing complex)(RISC)と呼ばれるリボヌクレオタンパク質複合体に組み込まれる。RISC複合体は、この一本鎖RNAを用いて、RISCに組み込まれたsiRNAのRNA鎖と少なくとも部分的に相補的なmRNA分子を特定し、それらは分解されるかまたはそれらの翻訳の阻害を受ける。このように、RISCに組み込まれたsiRNA鎖はガイド鎖またはアンチセンス鎖として知られている。トランジェント鎖またはセンス鎖として知られる他方の鎖は、siRNAから除去され、標的mRNAと部分的に相同である。RISC複合体による標的mRNAの分解は、前記mRNAおよびそれによりコードされている対応するタンパク質の発現レベルの低下をもたらす。さらに、RISCはまた、標的mRNAの翻訳の阻害による発現の低下も生じ得る。
本発明のコンジュゲートの核酸は、DAT、SERTおよびNETからなる群から選択される神経伝達物質輸送体と同じ細胞で発現される標的分子α−シヌクレインに特異的に結合することができる。核酸と標的分子の結合は、標的分子が、核酸の配列と相補的な配列を含む核酸である場合に、ワトソン−クリック相互作用を介して起こり得る。あるいは、標的分子がポリペプチドである場合には、本発明のコンジュゲートの核酸は前記分子と相互作用することもでき、この場合、核酸はアプタマーとして働く。
本発明によるコンジュゲートにより含まれる核酸は、α−シヌクレインと、α−シヌクレインmRNAの特定の標的領域で特異的に結合する。従って、本発明のコンジュゲートにより含まれる核酸がα−シヌクレインmRNAと結合する場合、前記核酸は、ヒトα−シヌクレインmRNAの448〜465番(配列番号4)、499〜516番(配列番号5)および502〜519番(配列番号6)(前記ナンバリングは、NCBI受託番号NM_000345(配列番号7)に定義されるα−シヌクレイン配列(alpha-synucleic sequence)の最初のヌクレオチドに対する位置に相当する)に位置する領域からなる群から選択されるα−シヌクレインmRNA内の領域に標的化される。
用語「サイレンス」および「の発現を阻害する」、「の発現をダウンレギュレートする」、「の発現を抑制する」などは、それらが標的遺伝子を指す限りにおいて、本明細書においては、標的遺伝子が転写されて標的遺伝子の発現が阻害されるように処理された第1の細胞または細胞群から単離することができる標的mRNAの量が、第1の細胞または細胞群と実質的に同一であるがそのように処理されていない第2の細胞または細胞群(対照細胞)と比較して減少することにより示されるような、標的遺伝子の発現の少なくとも部分的抑制を意味する。阻害の程度は通常以下のように表される:
[(対照細胞中のmRNA)−(処理細胞中のmRNA)*100パーセント]/(対照細胞中のmRNA)
あるいは、阻害の程度は、標的遺伝子発現に機能的に関連するパラメーター、例えば、標的遺伝子によりコードされるタンパク質の量またはある表現型を示す細胞の数の減少に関して示すこともできる。原則として、標的ゲノムサイレンシングは、構成的にまたはゲノム操作により標的を発現する任意の細胞において、いずれの適当なアッセイによって測定してもよい。しかしながら、所与の核酸がある程度標的遺伝子の発現を阻害するかどうか、従って、本発明に含まれるかどうかを決定するために参照が必要とされる場合に、下記の実施例で提供されるアッセイおよび当技術分野で公知のアッセイがそのような参照として役立つであろう。例えば、ある例では、二本鎖オリゴヌクレオチドの投与により、標的遺伝子の発現は、少なくとも約5パーセント、10パーセント、15パーセント、20パーセント、25パーセント、30パーセント、35パーセント、40パーセント、45パーセント、または50パーセント抑制される。いくつかの実施形態では、二本鎖オリゴヌクレオチドの投与により、標的遺伝子は、少なくとも約60パーセント、70パーセント、または80パーセント抑制される。いくつかの実施形態では、二本鎖オリゴヌクレオチドの投与により、標的遺伝子は、少なくとも約85パーセント、90パーセント、または95パーセント抑制される。
例えば、本発明による核酸配列は、標的遺伝子α−シヌクレインを発現する細胞中に導入することができる。細胞中の標的遺伝子のmRNAレベルは、RT−PCR、ノーザンブロットまたは任意の他の標準的方法を使用することにより検出することができる。あるいは、標的mRNAによりコードされているポリペプチドのレベルは、ウエスタンブロット、ELISAまたは任意の他の免疫学的または非免疫学的方法を使用して測定することができる。siRNA配列の導入後の、遺伝子によりコードされているmRNAまたはそのタンパク質の発現レベルの実質的変化は、標的遺伝子の発現の抑制におけるsiRNA配列の有効性を示す。ある特定の例では、他の遺伝子の発現レベルもsiRNA配列の導入前後にモニタリングされる。標的遺伝子発現に対して阻害効果を有するが他の遺伝子の発現には有意に影響しないsiRNA配列を選択することができる。他の特定の例では、複数のsiRNAまたは他のRNAi配列を同じ標的細胞に導入することができる。これらのsiRNAまたはRNAi配列は、標的遺伝子発現を特異的に阻害するが、他の遺伝子の発現は阻害しない。さらに別の特定の例では、標的遺伝子および他の1または複数の遺伝子の発現を阻害するsiRNAまたは他のRNAi配列を使用することができる。
本発明によれば、α−シヌクレインmRNAに特異的に結合することができる核酸は、ヒトα−シヌクレインmRNAの448〜465番(配列番号4)、499〜516番(配列番号5)および502〜519番(配列番号6)(前記ナンバリングは、NCBI受託番号NM_000345(配列番号7)に定義されるα−シヌクレイン配列(alpha-synucleic sequence)の最初のヌクレオチドに対する位置に相当する)に位置する領域からなる群から選択されるα−シヌクレインmRNA内の特定の領域に標的化される。
本発明のコンジュゲートの特定の実施形態では、ヒトα−シヌクレインmRNAの448〜465番(配列番号4)、499〜516番(配列番号5)および502〜519番(配列番号6)(前記ナンバリングは、NCBI受託番号NM_000345(配列番号7)に定義されるα−シヌクレイン配列(alpha-synucleic sequence)の最初のヌクレオチドに対する位置に相当する)に位置する領域からなる群から選択される領域内のα−シヌクレインをコードするmRNAに特異的に結合することができる核酸は、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはギャップマーである。
本発明によるアンチセンスオリゴヌクレオチドは、活性が阻害されるべきα−シヌクレインをコードする核酸の転写および/または翻訳を阻害する。アンチセンス核酸は、従来の塩基相補性により、または例えば、二重らせんの主溝における特定の相互作用を介して二本鎖DNAに結合する場合に、薬物の潜在標的に結合され得る。一般に、これらの方法は、当技術分野で一般に使用されている一定範囲の技術を意味し、それらにはオリゴヌクレオチド配列への特異的結合に基づくいずれの方法も含む。
本発明のアンチセンス構築物は、例えば、細胞内で転写された際にα−シヌクレインをコードする細胞mRNAの少なくとも1つのユニークな部分に相補的なRNAを産生する発現プラスミドとして分布させることができる。あるいは、アンチセンス構築物は、細胞に導入された際に、標的核酸のmRNAおよび/または遺伝子配列とハイブリダイズする遺伝子発現の阻害をもたらす、ex vivoで生成されるオリゴヌクレオチドプローブである。このようなオリゴヌクレオチドプローブは好ましくは、内因性ヌクレアーゼ、例えば、エキソヌクレアーゼおよび/またはエンドヌクレアーゼに耐性のある修飾オリゴヌクレオチドであり、従って、in vivoにおいて安定である。アンチセンスオリゴヌクレオチドとしてのその使用のための核酸分子の例は、ホスホルアミダート、ホスホチオネートおよびメチルホスホネートのDNA類似体である(米国特許第5176996号;同第5264564号;および同第5256775号も参照)。さらに、アンチセンス療法に有用なオリゴマーを構築するための一般的な試み(general approximations)は、例えば、Van der Krol et al., BioTechniques 6: 958-976, 1988; and Stein et al., Cancer Res 48: 2659-2668, 1988に総説されている。
まず、遺伝子発現を阻害するためのアンチセンスオリゴヌクレオチドの能力を定量するためのin vitro研究を行うことが好ましい。好ましくは、これらの研究では、そのオリゴヌクレオチドのアンチセンス遺伝子阻害と非特異的生体作用を識別する対照を使用する。また好ましくは、これらの研究では、標的RNAまたはタンパク質のレベルをRNAまたはタンパク質の内部対照のレベルと比較する。アンチセンスオリゴヌクレオチドを用いて得られた結果を、対照オリゴヌクレオチドを用いて得られた結果と比較することができる。好ましくは、対照オリゴヌクレオチドは、アッセイされるオリゴヌクレオチドとおよそ同じ長さであり、オリゴヌクレオチド配列は、標的配列との特異的ハイブリダイゼーションを妨げることが必然となると思われるなるほどにはアンチセンス配列と異ならない。
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、一本鎖または二本鎖DNAまたはRNAまたはキメラ混合物またはそれらの誘導体もしくは改変型であり得る。オリゴヌクレオチドは、例えば、分子の安定性、そのハイブリダイゼーション能などを改良するために、塩基、糖基またはリン酸骨格で改変することができる。オリゴヌクレオチドは、ペプチド(例えば、それらを宿主細胞の受容体に向かわせるため)または細胞膜を経る輸送を促進するための薬剤(例えば、Letsinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 86: 6553-6556, 1989; Lemaitre et al., Proc. Natl. Acad. Sci. 84: 648-652, 1987;PCT公開第WO88/09810号)または血液脳関門(例えば、PCT公開第WO89/10134号)、インターカレート剤(例えば、Zon, Pharm. Res. 5: 539-549, 1988参照)などの他の結合基を含んでもよい。この目的で、オリゴヌクレオチドは、別の分子、例えば、ペプチド、輸送剤、ハイブリダイゼーション誘発型切断剤などとコンジュゲートすることができる。
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、修飾塩基の少なくとも1つの基を含んでなり得る。アンチセンスオリゴヌクレオチドはまた、限定されるものではないが、アラビノース、2−フルオロアラビノース、キシルロース、およびヘキソースを含む群から選択される少なくとも1つの修飾糖基も含んでなり得る。アンチセンスオリゴヌクレオチドはまた、中性ペプチド(neutral peptide)と類似の骨格を含んでもよい。このような分子はペプチド核酸(PNA)オリゴマーとして知られ、例えば、Perry-O’Keefe et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 93: 14670, 1996, およびEglom et al., Nature 365: 566, 1993に記載されている。さらに別の実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、少なくとも1つの修飾リン酸骨格を含んでなる。さらに別の実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドはα−アノマーオリゴヌクレオチドである。
標的mRNA配列のコード領域と相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチドが使用できるが、転写された非翻訳領域と相補的なものも使用可能である。
場合によっては、アンチセンスについて内因性mRNA翻訳を抑制するために十分な細胞内濃度を達成することが難しいことがある。従って、好ましい試み(approximation)では、アンチセンスオリゴヌクレオチドが強力なpol IIIまたはpol IIプロモーターの制御下に置かれている組換えDNA構築物を使用する。あるいは、標的遺伝子発現は、体内の標的細胞において遺伝子調節領域(すなわち、プロモーターおよび/またはエンハンサー)に相補的なデオキシリボヌクレオチド配列に三重ヘリックス構造を採らせて遺伝子転写を妨げることによって低下させることもできる(一般に、Helene, Anticancer Drug Des. 6(6): 569-84, 1991参照)。特定の実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、アンチセンスモルホリンである。
ギャップマーは、DNA窓または「ギャップ」が、それ以外の点では通常の、または修飾された、「ウイング」として知られるRNAオリゴヌクレオチドに挿入されたRNA−DNA−RNAキメラオリゴヌクレオチドプローブである。好ましくは、ウイングは、内部ブロックをヌクレアーゼ分解から保護する2’−O−メチル(OMe)または2’−O−メトキシエチル(MOE)修飾リボヌクレオチドである。より好ましくは、ウイングは、2’−O−メチル修飾リボヌクレオチドである。さらに、ギャップまたはウイングを形成するヌクレオチドは、ホスホジエステル結合またはホスホロチオエート結合によって連結されてよく、従って、それはRNアーゼ分解に対して耐性となる。加えて、ウイングを形成するヌクレオチドはまた、3’メチルホスホネート結合によって連結された塩基を組み込むことによって修飾されてもよい。
本発明によるコンジュゲートの特定の好ましい実施形態では、ヒトα−シヌクレインmRNAの448〜465番(配列番号4)、499〜516番(配列番号5)および502〜519番(配列番号6)(前記ナンバリングは、NCBI受託番号NM_000345(配列番号7)に定義されるα−シヌクレイン配列(alpha-synucleic sequenc)の最初のヌクレオチドに対する位置に相当する)に位置する領域からなる群から選択される領域内のα−シヌクレインをコードするmRNAに特異的に結合することができる核酸は、4つの2’−O−メチル修飾リボヌクレオチドのブロックに隣接する(flanked by blocks)10個のデオキシヌクレオチドの中央ブロックを含んでなるギャップマーである。
より好ましい実施形態では、ギャップマーは、配列番号1、配列番号2または配列番号3からなる群から選択される配列からなる。
本発明のコンジュゲートの別の実施形態では、ヒトα−シヌクレインmRNAの448〜465番(配列番号4)、499〜516番(配列番号5)および502〜519番(配列番号6)(前記ナンバリングは、NCBI受託番号NM_000345(配列番号7)に定義されるα−シヌクレイン配列(alpha-synucleic sequenc)の最初のヌクレオチドに対する位置に相当する)に位置する領域からなる群から選択される領域内のα−シヌクレインをコードするmRNAに特異的に結合することができる核酸は。特に、干渉RNAは、低分子(siRNA)、短鎖ヘアピンRNA(shRNA)またはマイクロRNA(miRNA)を含んでなる群から選択される。
用語低分子干渉RNA(「siRNA」)は、RNA干渉経路を誘導する低分子の阻害性RNA二重鎖を意味する。これらの分子は様々な長さであってよく(一般に18〜30塩基対)、アンチセンス鎖にそれらの標的mRNAとの様々な程度の相補性を含む。総てではないが一部のsiRNAは、センス鎖および/またはアンチセンス鎖の5’または3’末端に対合しないオーバーハング塩基を有する。用語「siRNA」は、2本の分離した鎖の二重鎖を含む。本明細書で使用する場合、siRNA分子はRNA分子に限定されず、モルホリノなどの、1以上の化学的に修飾されたヌクレオチドを有する核酸をさらに包含する。
本発明による特に好ましいsiRNAは、499〜517番(前記ナンバリングは、NCBI受託番号NM_000345(配列番号7)に定義されるα−シヌクレイン配列(alpha-synucleic sequenc)の最初のヌクレオチドに対する位置に相当する)に位置するα−シヌクレインmRNA内の領域に標的化される。
用語「shRNA」または「短鎖ヘアピンRNA」は、本明細書で使用する場合、2本の鎖が、一方の鎖の3’末端と対応する他方の鎖の5’末端との間で中断されないヌクレオチド鎖により連結されて二重鎖構造を形成しているdsRNAを意味する。
用語「マイクロRNA」または「miRNA」は、遺伝子発現を調節することができる、一般に約21〜23ヌクレオチド長の短い一本鎖RNA分子を意味する。miRNAは、合成品(すなわち、組換え型)であっても天然物であってもよい。天然miRNAは遺伝子によりコードされ、DNAから転写され、一次転写産物(「pri−miRNA」)からプロセシングされて短いステム−ループ構造(「pre−miRNA」)となり、最終的に成熟miRNAとなる。成熟miRNA分子は、1以上のmRNA分子と部分的に相補的であり、RNA干渉に類似したプロセスを介して、またはmRNAの翻訳を阻害することにより、遺伝子発現のダウンレギュレーションを行う。
別の実施形態では、本発明のコンジュゲートの核酸は、α−シヌクレインmRNAを特異的にサイレンシングすることができるmiRNAである。好適なα−シヌクレイン特異的miRNAとしては、限定されるものではないが、miR−7(Proc.Natl.Acad.Si.USA, 2009, 106: 13052-13057参照)およびmiR−153(J Biol Chem 2010 285(17): 12726-12734参照)が挙げられる。ヒトmiRNA 7−1配列はNCBIに受託番号NR_029605(配列番号10)で、ヒトmiRNA 7−2は受託番号NR_029606(配列番号11)で、ヒトmiRNA 7−3は受託番号NR_029607(配列番号12)で存在する。ヒトmiRNA 153−1はNCBIに受託番号NR_029688(配列番号13)で、miRNA 153−2は受託番号NR_029689(配列番号14)で存在する。
本発明によるmiR−7は、配列:
を有する。
本発明によるmiR−153は、配列:
を有する。
所与の2つの核酸配列をペアごとにアラインメントするための方法は当業者に広く知られ、BLASTN[BLAST Manual, Altschul, S., et al., NCBI NLM NIH Bethesda, Md. 20894, Altschul, S., et al., J. Mol. Biol. 215: 403-410 (1990)]タイプの標準的アルゴリズムにより、デフォルトパラメーターを用いて行うことができる。複数の核酸配列のアラインメント法は、CLUSTALW(Thompson JD et al, Nucleic Acids Res, 1994, 22:4673-4680)タイプの標準的アルゴリズムにより、デフォルトパラメーターを用いて行うことができる。
本発明のコンジュゲートの干渉RNAが二本鎖干渉RNAである場合、本発明によるコンジュゲートは、1つの選択性薬剤、1または2つの選択性薬剤を含んでなり得る。特定の実施形態では、第1の選択性薬剤と第2の選択性薬剤は同じ選択性薬剤である。別の実施形態では、第1の選択性薬剤は第2の選択性薬剤とは異なる。本発明のコンジュゲートの第2の選択性薬剤は、前述のようにドーパミン輸送体(DAT)、セロトニン輸送体(SERT)またはノルエピネフリン輸送体(NET)からなる群から選択される1以上の神経伝達物質輸送体に特異的に結合する。本発明によるコンジュゲートが二本鎖干渉RNAと1つの選択性薬剤を含んでなる場合、選択性薬剤は、干渉RNAのセンス鎖の5’末端にコンジュゲートさせるか、または干渉RNAのアンチセンス鎖の5’側にコンジュゲートさせることができる。本発明によるコンジュゲートが二本鎖干渉RNAと2つの選択性薬剤を含んでなる場合、第1の選択性薬剤は干渉RNAのセンス鎖の5’末端にコンジュゲートされ、第2の選択性薬剤は干渉RNAのアンチセンス鎖の5’側にコンジュゲートされる。
特定の実施形態では、本発明によるコンジュゲートは、干渉RNA、第1の選択性薬剤および第2の選択性薬剤を含んでなる。より詳しい実施形態では、本コンジュゲートの第2の選択性薬剤は、第1の選択性薬剤が連結されたポリヌクレオチド(干渉RNA)の反対の末端に連結される。特定の実施形態では、本コンジュゲートの第2の選択性薬剤は、第1の選択性薬剤に連結されたポリヌクレオチドと相補的なポリヌクレオチドの一方の末端に連結される。特定の実施形態では、本コンジュゲートの第2の選択性薬剤は、第1の選択性薬剤に連結されたポリヌクレオチドの同じ末端に、前記末端に結合された多官能性リンカーによって連結される。
A.3.本発明のコンジュゲートのリンカー領域
核酸および選択性薬剤は、直接結合させてもよい。しかしながら、両部分が連結基によって連結されていることが好ましい。
用語「連結基」、「リンカー」、「架橋基」およびそれらの文法上同等な語は、化合物の2つの部分を連結する有機部分を意味して本明細書で使用される。選択性薬剤は核酸内のいずれのセンスまたはアンチセンスヌクレオチドにも結合させることができるが、好ましくは、3’末端ヌクレオチドおよび/または5’末端ヌクレオチドを介して結合させることができる。内部コンジュゲートは直接結合させてもよいし、またはリボース基の2’位のヌクレオチドにもしくは別の好適な位置にリンカーを介して間接的に結合させてもよい。
核酸が二本鎖核酸である場合、コンジュゲートは、センス3’末端ヌクレオチド、センス5’末端ヌクレオチド、アンチセンス3’末端ヌクレオチド、および/またはアンチセンス5’末端ヌクレオチドに結合させることができる。
定義または慣例によって制限されることを望むものではないが、本出願では、リンカーの長さは、コンジュゲート部分とリンカーを連結する原子と、それを介してリンカーがオリゴヌクレオチドに結合されているオリゴヌクレオチドと会合している末端リン酸部分の酸素原子との間の最短距離に当たる原子数を数えることによって表される。リンカーが1以上の環構造を含んでなる場合、最短経路に当たる環前後の原子を数えることが好ましい。
本発明において使用するための好適なリンカー基としては、限定されるものではないが、修飾または非修飾ヌクレオチド、ヌクレオシド、ポリマー、糖、炭水化物、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールなどのポリアルキレン、ポリアルコール、ポリプロピレン、エチレンとプロピレングリコールの混合物、ポリアルキルアミン、ポリリジンおよびスペルミジンなどのポリアミン、ポリ(アクリル酸エチル)などのポリエステル、ポリホスホジエステル、脂肪族、およびアルキレンが挙げられる。さらに、ω−アミノ−1,3−ジオール、ω−アミノ−l,2−ジオール、ヒドロキシプロリノール、ω−アミノ−アルカノール、ジエタノールアミン、ω−ヒドロキシ−l,3−ジオール、ω−ヒドロキシ−l,2−ジオール、ω−チオ−l,3−ジオール、ω−チオ−1,2−ジオール、ω−カルボキシ−l,3−ジオール、ω−カルボキシ−1,2−ジオール、コ−ヒドロキシ−アルカノール、ω−チオ−アルカノール、ω−カルボキシ−アルカノール、官能基化オリゴエチレングリコール、アリルアミン、アクリル酸、アリルアルコール、プロパルギルアミン、プロパルギルアルコール、およびその他に基づくリンカー/リンカー化学も、適当な長さのリンカーを作製するために本文脈で適用可能である。
リンカーはまた、オリゴヌクレオチドコンジュゲートに他の所望の特性、すなわち,高い水溶性、コンジュゲート部分とオリゴヌクレオチド間の分離の最適な距離、柔軟性(またはその欠如)、特定の配向、分岐その他を付与し得る。
好ましくは、前記連結基は、下記の構造:
を有し、ここで、
m、nおよびpは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12および13から選択され、
m+n+pの和は、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17および18から選択される整数であり、かつ、
kは、0または1である。
好ましい実施形態では、pは5であり、nは2であり、kは1であり、かつ、mは6であって、リンカーは、構造:
となる。
別の好ましい実施形態では、pは5であり、nおよびkは0であり、かつ、mは6であって、リンカーは、構造:
となる。
特定の実施形態では、リンカーは、選択性薬剤に対して2以上のカップリングを含んでなる。好ましい実施形態では、リンカーは二価または三価のリンカーであり、すなわち、それぞれ2または3分子の選択性薬剤がカップリングすることができる。
2分子以上の選択性薬剤がリンカーを介して核酸とカップリングしている場合、前記分子は同じ選択性薬剤でも異なる選択性薬剤でもよい。
特定の実施形態では、二価または三価のリンカーは、下式:
を有し、式中、
m、m’、m’’、n、n’、n’’、p、p’、p’’、r、r’、r’’、s、s’、s’’、tおよびuは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12および13から独立に選択され;
k、k’、k’’およびvは、0および1から独立に選択され;かつ
X1、X2およびX3は、CH2、O、S、NH、CO、C(O)OおよびC(O)NHから独立に選択される。
上記の基の価数に依存して、分岐リンカーは対称的であっても非対称的であってもよい。
特定の実施形態では、リンカーは、pおよびp’が5であり、nおよびn’が2であり、kおよびk’が1であり、かつ、mおよびm’が6である上記に示される二価のリンカーである。特定の実施形態では、リンカーは、pおよびp’が5であり、n,n’、kおよびk’が0であり、かつ、mおよびm’が6である上記に示される二価のリンカーである。
特定の実施形態では、リンカーは、rおよびr’が4であり、sおよびs’が1であり、tおよびvが0であり、かつ、X1およびX2がC(O)NHを表す上記に示される二価のリンカーである。別の実施形態では、リンカーは、rが2であり、r’が0であり、sが1であり、s’が0であり、tおよびvが0であり、かつ、X1およびX2がCH2を表す上記に示される二価のリンカーである。
特定の実施形態では、リンカーは、pおよびp’が5であり、nおよびn’が2であり、kおよびk’が1であり、mおよびm’が6であり、rおよびr’が4であり、sおよびs’が1であり、tおよびvが0であり、かつ、X1およびX2がC(O)NHを表す上記に示される二価のリンカーである。
別の実施形態では、リンカーは、pおよびp’が5であり、nおよびn’が2であり、kおよびk’が1であり、mおよびm’が6であり、rが2であり、r’が0であり、sが1であり、s’が0であり、tおよびvが0であり、かつ、X1およびX2がCH2を表す上記に示される二価のリンカーである。
別の実施形態では、リンカーは、pおよびp’が5であり、n、n’、kおよびk’が0であり、mおよびm’が6であり、rおよびr’が4であり、sおよびs’が1であり、tおよびvが0であり、かつ、X1およびX2がC(O)NHを表す上記に示される二価のリンカーである。
別の実施形態では、リンカーは、pおよびp’が5であり、n、n’、kおよびk’が0であり、mおよびm’が6であり、rが2であり、r’が0であり、sが1であり、s’が0であり、tおよびvが0であり、かつ、X1およびX2がCH2を表す上記に示される二価のリンカーである。
特定の実施形態では、リンカーは、p、p’およびp’’が5であり、n、n’およびn’’が2であり、k、k’およびk’’が1であり、m、m’およびm’’が6である上記に示される三価のリンカーである。特定の実施形態では、リンカーは、p、p’およびp’’が5であり、n、n’、n’’、k、k’およびk’’が0であり、かつ、m、m’およびm’’が6である上記に示される三価のリンカーである。
特定の実施形態では、リンカーは、r、r’およびr’’が3であり、s、s’およびs’’が1であり、tが1であり、vが0であり、かつ、X1、X2およびX3がOを表す上記に示される三価のリンカーである。
別の実施形態では、リンカーは、r、r’およびr’’が3であり、s、s’およびs’’が1であり、tが1であり、uが3であり、vが1であり、かつ、X1、X2およびX3がOを表す上記で示される三価のリンカーである。
特定の実施形態では、リンカーは、p、p’およびp’’が5であり、n、n’およびn’’が2であり、k、k’およびk’’が1であり、m、m’およびm’’が6であり、r、r’およびr’’が3であり、s、s’およびs’’が1であり、tが1であり、vが0であり、かつ、X1、X2およびX3がOを表す上記に示される三価のリンカーである。
別の実施形態では、リンカーは、p、p’およびp’’が5であり、n、n’およびn’’が2であり、k、k’およびk’’が1であり、m、m’およびm’’が6であり、r、r’およびr’’が3であり、s、s’およびs’’が1であり、tが1であり、uが3であり、vが1であり、かつ、X1、X2およびX3がOを表す上記に示される三価のリンカーである。
別の実施形態では、リンカーは、p、p’およびp’’が5であり、n、n’、n’’、k、k’およびk’’が0であり、m、m’およびm’’が6であり、r、r’およびr’’が3であり、s、s’およびs’’が1であり、tが1であり、vが0であり、かつ、X1、X2およびX3がOを表す上記に示される三価のリンカーである。
別の実施形態では、リンカーは、p、p’およびp’’が5であり、n、n’、n’’、k、k’およびk’’が0であり、m、m’およびm’’が6であり、r、r’およびr’’が3であり、s、s’およびs’’が1であり、tが1であり、uが3であり、vが1であり、かつ、X1、X2およびX3がOを表す上記に示される三価のリンカーである。
本発明による特に好ましい架橋基は下記の構造:
−L1d−[(A−L2)a−(B−L3)b]c−
を有し、ここで、
AおよびBは、単糖、アルキル鎖および(C2−C20)アルキレングリコールからなる群から独立に選択されるモノマー単位を表し;
aおよびbは、0〜50の範囲の整数であり;
cは、0〜30の範囲の整数であり;
L1、L2およびL3は、ホスホジエステル、ホスホロチオエート、カルバメート、メチルスルホネート、グアニジニウム、スルファメート、スルファミド、ホルムアセタール、チオホルムアセタール、スルホン、アミドおよびそれらの混合物からなる群から独立に選択される架橋化合物であり;かつ
dは、0または1である。
特定の実施形態では、架橋基は、構造:
−L1d−[(A−L2)a−(B−L3)b]c−
を有し、ここで、bおよびdは0であり、cは1であり、Aはアルキル鎖であり、かつ、L2はホスホジエステル結合である。
A.4.本発明のコンジュゲートの標的化部分
本発明のコンジュゲートの別の修飾として、核酸の活性、細胞分布または細胞取り込みを増強する1以上の部分またはコンジュゲートを、核酸または保護基に化学的に連結することを含む。このような部分としては、限定されるものではないが、コレステロール部分(Letsinger et al, Proc. Natl. Acid. Sci. USA, 199, 86, 6553-6556)、コール酸(Manoharan et al, Biorg. Med. Chem. Let., 1994 4 1053-1060)などの脂質部分、チオエーテル、例えば、ベリル−S−トリチルチオール(Manoharan et al, Ann. N.Y. Acad. Sci., 1992, 660, 306-309; Manoharan et al, Biorg. Med. Chem. Let., 1993, 3, 2765-2770)、チオコレステロール(Oberhauser et al, Nucl. Acids Res., 1992, 20, 533-538)、脂肪族鎖、例えば、ドデカンジオールもしくはウンデシル残基(Saison-Behmoaras et al, EMBO J, 1991, 10, 1111-1118; Kabanov et al, FEBS Lett., 1990, 259, 327-330; Svinarchuk et a/., Biochimie, 1993, 75, 49-54)、リン脂質、例えば、ジ−ヘキサデシル−rac−グリセロールもしくはトリエチル−アンモニウム l,2−ジ−O−ヘキサデシル−rac−グリセロ−3−Hホスホネート(Manoharan et al, Tetrahedron Lett., 1995, 36, 3651-3654; Shea et al, Nucl. Acids Res., 1990, 18, 3777-3783)、ポリアミンもしくはポリエチレングリコール鎖(Manoharan et al., Nucleosides and Nucleotides, 1995, 14, 969-973)、またはアダマンタン酢酸(Manoharan et al., Tetrahedron Lett., 1995, 36, 3651-3654)、パルミチル部分(Mishra et ai, Biochim. Biophys. Acta, 1995, 1264, 229-237)、またはオクタデシルアミンもしくはヘキシルアミノ−カルボニルオキシコレステロール部分(Crooke et al., J. Pharmacol. Exp. Ther., 1996, 277, 923-937)が挙げられる。
あるいは、細胞分布を増大させることができる部分は、生物障壁中に存在する特定の輸送体を用い、受容体を介するエンドサイトーシスの使用により生物障壁を経て特異的に輸送され得る低分子量化合物またはポリペプチドであってもよい。取り込み受容体および担体の広いアレイは、さらに多数の受容体特異的リガンドとともに、当技術分野で公知である。本発明による使用のための、エンドサイトーシスおよび/またはトランスサイトーシスを媒介する受容体に対する好ましいリガンドとしては、例えば、チアミン輸送体、葉酸受容体、ビタミンB12受容体、アシアロ糖タンパク質受容体、α(2,3)−シアロ糖タンパク質受容体(例えば、受容体特異的リガンドとしてラマ単一ドメイン抗体(sdAb)からなるFC5およびFC44ナノボディを伴う)、トランスフェリン−1および−2受容体、スカベンジャー受容体(クラスAもしくはB、タイプI、IIもしくはIII、またはCD36もしくはCD163)、低密度リポタンパク質(LDL)受容体、LDL関連タンパク質1受容体(LRPl、タイプB)、LRP2受容体(メガリンまたは糖タンパク質330としても知られる)、ジフテリア毒素受容体(DTR、これはヘパリン結合上皮増殖因子様増殖因子(HB−EGF)の膜結合前駆体である)、インスリン受容体、インスリン様増殖因子(IGF)受容体、レプチン受容体、サブスタンスP受容体、グルタチオン受容体、グルタミン酸受容体およびマンノース6リン酸受容体に対する、またはそれらに特異的に結合するリガンドが挙げられる。
本発明による使用のための、これらの受容体と結合する好ましいリガンドとしては、例えば、リポタンパク質リパーゼ(LPL)、α−2−マクログロブリン(α2M)、受容体関連タンパク質(RAP)、ラクトフェリン、デスモテプラーゼ、組織型およびウロキナーゼ型プラスミノーゲンアクチベーター(tPA/uPA)、プラスミノーゲンアクチベーター阻害剤(PAI−I)、tPA/uPA:PAI−l複合体、メラノトランスフェリン(またはP97)、トロンボスポンジン1および2、肝リパーゼ、第VIIa因子/組織因子経路阻害剤(TFPI)、第VIIIa因子、第IXa因子、アベタール−40、アミロイド−β前駆体タンパク質(APP)、Cl阻害剤、補体C3、アポリポタンパク質E(apoE)、シュードモナス外毒素A、CRM66、HIV−I Tatタンパク質、ライノウイルス、マトリックスメタロプロテイナーゼ9(MMP−9)、MMP−13(コラゲナーゼ−3)、スピンゴ脂質活性化タンパク質(SAP)、妊娠帯タンパク質、アンチトロンビンIII、ヘパリン補助因子II、αl−アンチトリプシン、熱ショックタンパク質96(HSP−96)、血小板由来増殖因子(PDGF)、アポリポタンパク質J(apoJ、またはクラステリン)、apoJおよびapoEに結合したABETA、アプロチニン、angio−pepl、超低密度リポタンパク質(VLDL)、トランスフェリン、インスリン、レプチン、インスリン様増殖因子、上皮増殖因子、レクチン、ペプチド模倣および/またはヒト化モノクローナル抗体または前記受容体に特異的なペプチド(例えば、ヒトトランスフェリン受容体に結合する配列HAIYPRH(配列番号17)およびTHRPPMWSPVWP(配列番号18)、または抗ヒトトランスフェリン受容体(TfR)モノクローナル抗体A24)、ヘモグロビン、ジフテリア毒素ポリペプチド鎖の非毒性部分、ジフテリア毒素B鎖の全体または一部(DTB−Hisを含む(Spilsberg et al.,2005,Toxicon., 46(8):900-6により記載))、ジフテリア毒素CRM197の非毒性変異体の全体または一部、アポリポタンパク質B、アポリポタンパク質E(例えば、ナノ粒子上のポリソーブ−80コーティングに結合後)、ビタミンD結合タンパク質、ビタミンA/レチノール結合タンパク質、ビタミンB12/コバラミン血漿担体タンパク質、グルタチオンおよびトランスコバラミン−B12からなる群から選択されるリガンドが挙げられる。
特定の実施形態では、本発明のコンジュゲートは、コンジュゲートの生体膜を経た輸送を促進する基をさらに含んでなる。好ましくは、この基は両親媒性である。例示的薬剤としては、限定されるものではないが、ペネトラチン、アミノ酸48〜60を含んでなるTatタンパク質の断片、シグナル配列に基づくペプチド、PVEC、トランスポータン、両親媒性モデルペプチド、Arg9、細菌細胞壁透過ペプチド、LL−37、セクロピン P1、α−デフェンシン、β−デフェンシン、バクテネクチン、PR−39およびインドリシジンが挙げられる。薬剤がペプチドである場合、ペプチジル模倣物、逆転異性体、非ペプチドまたは偽ペプチド結合、およびD−アミノ酸の使用を含め、それは修飾が可能である。ヘリックス剤は好ましくはα−ヘリックス剤であり、好ましくは、親油相および脂質親和相を持つ。
リガンドは、ペプチドまたはペプチド模倣物であり得る。ペプチド模倣物(本明細書ではオリゴペプチド模倣物とも呼ばれる)は、天然ペプチドに類似する定義された三次元構造に折り畳むことができる分子である。ペプチドまたはペプチド模倣物部分は、約5〜50アミノ酸長、例えば、約5、10、15、20、25、30、35、40、45、または50アミノ酸長であり得る(例えば、表4参照)。
本発明の別の特定の実施形態では、本発明のコンジュゲートは、エンドソーム溶解性リガンドをさらに含んでなる。エンドソーム溶解性リガンドは、エンドソームの溶解および/または本発明の組成物もしくはその成分の、エンドソームからその細胞の細胞質への輸送を促進する。エンドソーム溶解性リガンドは、pH依存的膜活性および膜融合性を示すポリ陰イオン性のペプチドまたはペプチド模倣物であり得る。特定の実施形態では、エンドソーム溶解性リガンドは、エンドソームpHにおいてその活性立体配座を想定する。「活性立体配座」は、エンドソーム溶解性リガンドがエンドソームの溶解および/または本発明の組成物もしくはその成分の、エンドソームからその細胞の細胞質への輸送を促進する立体配座である。例示的エンドソーム溶解性リガンドとしては、GAL4ペプチド(Subbarao et al., Biochemistry, 1987, 26: 2964-2972)、EALAペプチド(Vogel et al., J. Am. Chem. Soc., 1996, 118: 1581-1586)、およびそれらの誘導体(Turk et al., Biochem. Biophys. Acta, 2002, 1559: 56-68)、INF−7ペプチド、Inf HA−2ペプチド、diINF−7ペプチド、diINF3ペプチド、GLFペプチド、GALA−INF3ペプチドおよびINF−5ペプチドが挙げられる。特定の実施形態では、エンドソーム溶解性成分は、pHの変化に応答して電荷の変化またはプロトン化を受ける化学基(例えば、アミノ酸)を含み得る。エンドソーム溶解性成分は、直鎖であっても分岐型であってもよい。
A.5.本発明のコンジュゲートの保護基
本発明のコンジュゲートの核酸形成部分は、生体の種々の体液およびコンパートメントを経たそれらの輸送中に、ヌクレアーゼ(エンド/エキソヌクレアーゼ)などの分解因子から保護されなければならない。この目的で、オリゴヌクレオチドは、酵素的消化に耐性を持ち、オリゴヌクレオチドのin vivo安定性およびバイオアベイラビリティを改善するように設計される。核酸は、ヌクレアーゼに媒介される分解を防ぐ基の存在により化学的に修飾されることが好ましい。
本発明の目的では、「キャップ構造」または「保護基」は、オリゴヌクレオチドのいずれかの末端に組み込まれた化学修飾を意味すると理解すべきである。5’キャップの限定されない例として、反転した塩基脱落残基(部分)、4’,5’−メチレンヌクレオチド;1−(β−D−エリスロフラノシル)ヌクレオチド、4’−チオヌクレオチド、炭素環式ヌクレオチド;1,5−アンヒドロヘキシトールヌクレオチド;L−ヌクレオチド;α−ヌクレオチド;改変塩基ヌクレオチド;ホスホロジチオネート架橋基;トレオ−ペントフラノシルヌクレオチド;非環式3’,4’−セコヌクレオチド;非環式3,4−ジヒドロキシブチルヌクレオチド;非環式3,5−ジヒドロキシペンチルヌクレオチド、3’−3’−反転ヌクレオチド部分;3’−3’−反転塩基脱落部分;3’−2’−反転ヌクレオチド部分;3’−2’−塩基脱落部分;1,4−ブタンジオールホスフェート;3’−ホスホロアミデート;ヘキシルホスフェート;アミノヘキシルホスフェート;3’−ホスフェート;3’−ホスホロチオネート;ホスホロジチオネート;または架橋もしくは非架橋メチルホスホネート部分が挙げられる。詳細は引用することにより本明細書の一部とされるWO97/26270に記載されている。3’キャップとしては、例えば、4’,5’−メチレンヌクレオチド;l−(β−D−エリスロフラノシル)ヌクレオチド:4’−チオヌクレオチド、炭素環式ヌクレオチド;5’−アミノ−アルキルホスフェート;l,3−ジアミノ−2−プロピルホスフェート、3−アミノプロピルホスフェート;6−アミノヘキシルホスフェート;1,2−アミノドデシルホスフェート;ヒドロキシプロピルホスフェート;1,5−アンヒドロヘキシトールヌクレオチド;L−ヌクレオチド;α−ヌクレオチド;修飾塩基ヌクレオチド;ホスホロジチオエート;トレオ−ペントフラノシルヌクレオチド;非環式3’,4’−セコヌクレオチド;3,4−ジヒドロキシブチルヌクレオチド;3,5−ジヒドロキシペンチルヌクレオチド、5’−5’−反転ヌクレオチド部分;5’−5’−反転(inveiled)塩基脱落部分;5’−ホスホロアミデート;5’−ホスホロチオエート;1,4−ブタンジオールホスフェート;5‘−アミノ;架橋および/または非架橋5’−ホスホロアミデート、ホスホロチオエートおよび/またはホスホロジチオエート、架橋または非架橋メチルホスホネートおよび5’−メルカプト部分が挙げられる。Beaucage and Iyer, 1993, Tetrahedron 49, 1925もまた参照(この内容は引用することにより本明細書の一部とされる)。特定の実施形態では、保護基は、反転ヌクレオチド部分を含んでなる。特定の実施形態では、保護基は、オリゴヌクレオチドの3’末端に位置する。末端5’−5’または3’−3’結合を含有するアンチセンスオリゴヌクレオチドは、エキソヌクレアーゼ分解に対して耐性が高い。反転dTなどの反転ヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドの3’末端に組み込むことができ、これにより、3’エキソヌクレアーゼによる分解とDNAポリメラーゼによる伸長の両方を阻害する3’−3’結合が得られる。
特定の実施形態では、反転ヌクレオチドは、選択性薬剤と結合されてない本発明の核酸の一末端または両末端に組み込まれる。特定の実施形態では、反転ヌクレオチドは反転dTである。特定の好ましい実施形態では、保護基は、選択性薬剤と結合されていない本発明の核酸の一末端または両末端、好ましくは3’末端に位置し、反転ヌクレオチド部分、より詳しくは、反転dTを含んでなる。
好ましい実施形態では、本発明のコンジュゲートの核酸配列に結合されたキャップ構造は、以下の一般的構造
M−L1d−[(A−L2)a−(B−L3)b]c−
を有し、ここで、
Mは、H、脂質部分または上記で定義されたターゲティング基であり;
AおよびBは、単糖および(C2−C20)アルキレングリコールからなる群から独立に選択されるモノマー単位を表し;
aおよびbは0〜50の範囲の整数であり;
cは0〜30の範囲の整数であり;
L1、L2およびL3は、ホスホジエステル、ホスホロチオエート、カルバメート、メチルホスホネート、グアニジニウム、スルファメート、スルファミド、ホルムアセタール、チオホルムアセタール、スルホン、アミドおよびそれらの混合物からなる群から独立に選択される架橋化合物であり;
dは0または1である。
脂質部分は、本明細書中で使用する場合、限定されるものではないが、脂肪、油脂、精油、ワックス、ステロイド、ステロール、リン脂質、糖脂質、スルホリピド、アミノリピド、クロモリピド(リポクローム)、および脂肪酸を含む、親油性または両親媒性の性質を有する有機化合物を意味する。用語「脂質」は、天然脂質および合成生産脂質の両方を包含する。脂質部分は、通常、オリゴヌクレオチドの親油性を増大させ、in vivoにおけるオリゴヌクレオチド構造の細胞内取り込みを助長する。使用され得る好適な脂質として、脂肪酸;脂肪;油;ワックス;コレステロール;ステロール;ビタミンA、D、EおよびKなどの脂溶性ビタミン;モノグリセリド;ジグリセリド、ならびにリン脂質が挙げられる。好ましい脂肪酸は、ラウリン酸(C12)、ミリスチン酸(C14)、パルミチン酸(C16)、ステアリン酸(C18)、ドコサン酸(C22)、およびリトコール酸とオレイルアミンとのハイブリッド(リトコール−オレイルアミン、C43)からなる群から選択されるものである。脂質は、標的組織、標的細胞、投与経路、オリゴヌクレオチドがたどると予想される経路などを考慮に入れることによって状況に応じて当業者が選択できる。
用語「単糖」は、本明細書で使用する場合、当技術分野において周知であり、ブロックまたは部分を構成するより小さい糖にさらに分解することのできない単一の糖単位からなる糖の単純形態を意味する。このコンジュゲーション基として好ましい糖部分は、フラノース、フルクトース、グルコース、ガラクトース、マンノース、修飾単糖、シアル酸およびエリトロースおよびそれらの混合物からなる群から選択される。単糖は、その線状または環状形態(ヘミアセタール環状異性体)にあり得る。フラノースは、D−リボースまたはフルクトース残基(D−(−)−フルクトフラノース)などの5員フラン系環を含む任意の単純糖である。単糖の組合せで、複数の糖構造物を得ることができる。フルクトオリゴ糖(FOS)およびガラクトオリゴ糖(GOS)は、二糖類のサッカロースもしくはラクトース、または多糖類のイヌリン、デキストリン、デンプンもしくはグリコーゲンと同様に特に着目される組合せである。
用語「アルキレングリコール」、「ポリ(アルキレングリコール)」、「アルキレンオキシド」は、本明細書で使用する場合、一般式
−O−[(CH2)m−O−]n−
を共有するポイエチレンポリマー系列を包含し、式中、
mは各アルキレングリコール単位中に存在するメチレン基の数を表し、nは反復単位の数を表し、従って、ポリマーのサイズまたは長さを表す。この用語は、限定されるものではないが、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジアルキレングリコール(例えば、ジエチレングリコール)、トリアルキレングリコール(例えば、トリエチレングリコール)、および上記のグリコールの対応するモノアルキルエーテルおよびジアルキルエーテルなどのグリコールが挙げられ、ここで、アルキルエーテルは1〜6個の炭素原子を有する低級アルキルエーテル(例えば、メチル、エチル、プロピルエーテルなど)である。
他の実施形態では、それは、炭素原子が2〜20個の任意の線状または分岐型分子であってよい(C2−C20)アルキレングリコールモノマー単位、またはaおよびbの価に応じて、数個の(C2−C20)アルキレングリコールモノマー単位を有するポリアルキレングリコールポリマーを有する。好ましくは、アルキレングリコール基は、C16−C20アルキレングリコールから選択される。さらにより好ましくは、アルキレングリコール基はC18アルキレングリコールである
特定の実施形態では、本発明のコンジュゲートは、bおよびdが0であり、cが1であり、Aがアルキル鎖であり、L2がホスホジエステル結合であるキャップ構造を有する。
本発明のコンジュゲートに適切な保護基として、限定されるものではないが、
M−L1d−[(A−L2)a−(B−L3)b]c−
・MがHであり、dが0であり、AがPEGであり、Bが糖であり、aおよびbがそれぞれ1であり、かつ、L1およびL2がホスホジエステル結合である上式に相当するPEG+糖;
・AがPEGであり、Bが糖であり、aが1であり、bが2であり、MがHであり、dが0であり、かつ、L1およびL2がホスホジエステル結合である上式に相当するPEG+(糖)2;
・AがPEGであり、Bが糖であり、aが2であり、bが1であり、MがHであり、dが0であり、かつ、L1およびL2がホスホジエステル結合である上式に相当する(PEG)2+糖;
・AがPEGであり、Bが糖であり、aが3であり、bが1であり、MがHであり、dが0であり、かつ、L1およびL2がホスホジエステル結合である上式に相当する(PEG)3+糖;
・AがPEGであり、Bが糖であり、aが5であり、bが1であり、MがHであり、dが0であり、かつ、L1およびL2がホスホジエステル結合である上式に相当する(PEG)5+糖
が挙げられる。
用語「PEG」および「糖」は、本質的に上記のように使用され、糖としてのフラノースとC3、C9およびC18のスペーサーの群から選択されるPEGを含む。
本発明はまた、コンジュゲートが選択性薬剤と結合されてないポリヌクレオチドの一末端または両末端に結合された保護基をさらに含んでなることを企図する。
B.本発明のコンジュゲートの構造
本発明によるコンジュゲートの種々の要素は種々の様式で配列することができ、本発明の一部を成す(frorm)。従って、選択性薬剤は核酸の5’末端および/または3’末端にカップリングさせることができる。好ましくは、選択性薬剤は核酸の5’末端にカップリングさせる。さらに、核酸と選択性薬剤とは、直接連結してもよいし、またはリンカーにより接続してもよい。同様に、リンカーも核酸の5’末端および/または3’末端にカップリングさせることができる。好ましくは、リンカーは核酸の5’末端にカップリングさせる。従って、本発明の核酸が単一の核酸鎖を含有する場合、可能な配置は、
・5’末端に結合された選択性薬剤を含んでなる核酸、
・3’末端に結合された選択性薬剤を含んでなる核酸、
・5’末端に結合された選択性薬剤と3’末端に結合された保護基を含んでなる核酸、
・5’末端に結合された保護基と3’末端に結合された選択性薬剤を含んでなる核酸、
・第1および第2の選択性薬剤を含んでなる修飾された核酸であって、両選択性薬剤が、核酸の5’末端に連結されている二官能性リンカーの2つの末端に連結されている核酸、
・第1および第2の選択性薬剤を含んでなる修飾された核酸であって、前記第1および第2の選択性薬剤は同じであるかまたは異なり、両選択性薬剤が、核酸の3’末端に連結されている二官能性リンカーの2つの末端に連結されている核酸、
・4つの選択性薬剤を含んでなる修飾された核酸であって、前記選択性薬剤は同じであるかまたは異なり、選択性薬剤の2つは核酸の5’末端に連結されている第1の二官能性リンカーの両末端に連結され、選択性薬剤の2つは核酸の3’末端に連結されている第2の二官能性リンカーの両末端に連結されている核酸、
である。
コンジュゲートが単一の核酸鎖と2つの選択性薬剤を含有する好ましい実施形態では、第1の選択性薬剤および第2の選択性薬剤は両方とも三重再取り込み阻害剤(好ましくは、 インダトラリン)であり、前記核酸の5’末端および3’末端に連結されている。
コンジュゲートが単一の核酸鎖と2つの選択性薬剤を含有する別の好ましい実施形態では、第1の選択性薬剤はセロトニン再取り込み阻害剤(SRI)(好ましくは、セルトラリン)であり、第2の選択性薬剤はノルエピネフリン(norepinephrinee)ドーパミン二重再取り込み阻害剤(inhibitor)(NDRI)であり、前記核酸の5’末端に連結されている。より好ましい実施形態では、SRIは前記核酸の5’末端に連結され、NDRIは前記核酸の3’末端に連結されている。別の好ましい実施形態では、SRIは前記核酸の3’末端に連結され、NDRIは前記核酸の5’末端に連結されている。
別の実施形態では、前記核酸は、核酸分子の一末端に多官能性リンカーによって結合された2つ以上のリガンドを含有してよい。従って、別の実施形態では、前記核酸は、5’末端に結合された二機能性リンカーを含有してよく、前記二機能性リンカーの各末端は三重再取り込み阻害剤(好ましくは、インダトラリン(indtaraline))とカップリングされている。別の実施形態では、前記核酸は、5’末端に結合された二機能性リンカーを含有してよく、前記二機能性リンカーの第1の末端はSRI(好ましくは、セルトラリン(sertonine))とカップリングされ、前記二機能性リンカーの第2の末端はNDRIに連結されている。
別の実施形態では、前記核酸は、5’または3’末端のいずれかに結合された三官能性リンカーを含有し、前記三官能性リンカーの各末端はリガンドに結合されている。好ましい実施形態では、前記三官能性リンカーの3つの末端は、同じであっても異なってもよい三重再取り込み阻害剤に連結されている。好ましい実施形態では、前記核酸分子は3つのインダトラリン分子に連結されている。
それに加えて、本発明のコンジュゲートは、標的分子の発現を調節する2つ以上の核酸鎖を含み得る。例えば、本発明の構築物は、所与の標的分子の異なった領域を標的としたホスホジエステルを介して直列に連結された5個までの異なる核酸を含むことができる。
さらに、核酸が二本鎖核酸であるこれらの場合には、選択性薬剤はセンス鎖および/またはアンチセンス鎖にカップリングさせてもよく、直接カップリングしてもよいし、またはリンカー基によりカップリングしてもよい。
本発明のコンジュゲートの核酸形成部分は、生体の種々の体液およびコンパートメントを経たそれらの輸送中に、ヌクレアーゼ(エンド/エキソヌクレアーゼ)などの分解因子から保護されなければならない。この目的で、オリゴヌクレオチドは、酵素的消化に耐性を持ち、オリゴヌクレオチドのin vivo安定性およびバイオアベイラビリティを改善するように設計される。細胞エキソヌクレアーゼは、標的として遊離型の5’末端を用いる。従って、一本鎖核酸の場合、選択性薬剤は核酸の5’側にカップリングされると安定化部分として働き得る。しかしながら、選択性薬剤が3’末端に連結された二本鎖核酸または一本鎖核酸を含んでなるコンジュゲートの場合、コンジュゲートは、通常はエキソヌクレアーゼの活性による核酸の分解を防ぐ基である安定化部分またはキャップ構造をさらに含み得る。二本鎖核酸の場合、下記の可能な配置が存在する。
[1]選択性薬剤は一方の鎖の5’末端に結合され、この場合、反対鎖の5’末端にキャップ構造を結合することが有用である。さらに、キャップ構造は、1つまたは2つの3’末端にも存在してよい。
[2]選択性薬剤は一方の鎖の3’末端に結合され、この場合、センス鎖およびアンチセンス鎖の5’末端にキャップ構造を結合することが有用である。さらに、キャップ構造は、遊離3’末端に存在してよい。
[3]同じであっても異なっていてもよい2つ以上の選択性薬剤を含んでなるコンジュゲート、この場合、選択性薬剤はセンス鎖およびアンチセンス鎖の5’末端にカップリグされている。場合により、キャップ構造は、1つまたは2つの遊離3’末端とカップリングされ得る。
好ましい実施形態では、核酸は、選択性薬剤がアンチセンス鎖の5’末端に連結され、保護基がセンス鎖の5’末端に連結された二本鎖RNAである。なおさらに好ましい実施形態では、保護基は、構造
M−L1d−[(A−L2)a−(B−L3)b]c−
を有し、ここで、MはHであり、dは0であり、Aはポリエチレングリコール(polyehtylene glycol)のC18スペーサーであり、Bはフラノースであり、aは2であり、bおよびcは1であり、かつ、L2およびL3はホスホジエステル結合である。
別の実施形態では、前記核酸は、核酸鎖の一末端に多官能性リンカーによって結合された2つ以上のリガンドを含有してよい。好ましくは、リガンドはセンス鎖またはアンチセンス鎖のいずれかの5’末端と結合されている。従って、別の実施形態では、前記核酸は、センス鎖の5’末端に結合された二機能性リンカーを含有してよく、前記二機能性リンカーの各末端は三重再取り込み阻害剤(好ましくは、インダトラリン(indtaraline))とカップリングされている。別の実施形態では、前記核酸は、センス鎖の5’末端に結合された二機能性リンカーを含有してよく、前記二機能性リンカーの第1の末端はSRI(好ましくは、セルトラリン(sertonine))とカップリングされ、前記二機能性リンカーの第2の末端はNDRIに連結されている。別の実施形態では、前記核酸は、アンチセンス鎖の5’末端に結合された二機能性リンカーを含有してよく、二機能性リンカーの各末端は三重再取り込み阻害剤(好ましくは、インダトラリン(indtaraline))とカップリングされている。別の実施形態では、前記核酸は、アンチセンス鎖の5’末端に結合された二機能性リンカーを含有してよく、前記二機能性リンカーの第1の末端はSRI(好ましくは、セルトラリン(sertonine))にカップリングされ、前記二機能性リンカーの第2の末端はNDRIに連結されている。
別の実施形態では、前記核酸は、センス鎖、アンチセンス鎖のいずれかまたはその両方の5’または3’末端のいずれかに結合された三官能性リンカーを含有し、前記三官能性リンカーの各末端はリガンドに結合されている。好ましい実施形態では、前記三官能性リンカーの3つの末端は、同じであっても異なってもよい三重再取り込み阻害剤に連結されている。好ましい実施形態では、センス核酸鎖の5’末端は3つのインダトラリン分子に連結されている。
本発明のコンジュゲートは、
(i)ドーパミン輸送体(DAT)、セロトニン輸送体(SERT)またはノルエピネフリン輸送体(NET)からなる群から選択される1以上の神経伝達物質輸送体に特異的に結合する少なくとも1つの選択性薬剤と、
(ii)神経伝達物質輸送体と同じ細胞で発現される標的分子であって、α−シヌクレインまたはα−シヌクレインをコードするmRNAである標的分子に、特異的に結合することができる少なくとも1つの核酸と
を含んでなる。
より好ましい実施形態では、本発明のコンジュゲートは、構造(III):
およびその薬学上許容される形態を有し、式中、
nまたはmは、それぞれ0以上6以下の値を有する整数であり;
pは、0以上4以下の値を有する整数であり;
qは、0以上20以下の値を有する整数であり;
R1は、水素;環式もしくは非環式、置換もしくは非置換、分岐もしくは非分岐型脂肪族;環式もしくは非環式、置換もしくは非置換、分岐もしくは非分岐型ヘテロ脂肪族;置換もしくは非置換、分岐もしくは非分岐型アシル;置換もしくは非置換、分岐もしくは非分岐型アリール;置換もしくは非置換、分岐もしくは非分岐型ヘテロアリール;−C(=O)RA;−CO2RA;−C(=O)N(RA)2または−C(RA)3であり;ここで、RAの各存在は独立に、水素、保護基、脂肪族部分、ヘテロ脂肪族部分、アシル部分;アリール部分;ヘテロアリール部分;アルコキシ;アリールオキシ;アルキルチオ;アリールチオ;アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロアリールオキシ;またはヘテロアリールチオ部分であり;
R3は、水素;ハロゲン;環式もしくは非環式、置換もしくは非置換、分岐もしくは非分岐型脂肪族;環式もしくは非環式、置換もしくは非置換、分岐もしくは非分岐型ヘテロ脂肪族;置換もしくは非置換、分岐もしくは非分岐型アシル;置換もしくは非置換、分岐もしくは非分岐型アリール;置換もしくは非置換、分岐もしくは非分岐型ヘテロアリール;−ORC;−C(=O)RC;−CO2RC;−CN;−SCN;−SRC;−SORC;SO2RC;−NO2;−N3;−N(RC)2;−NHC(=O)RC;−NRCC(=O)N(RC)2;−OC(=O)ORC;−OC(=O)RC;−OC(=O)N(RC)2;−NRCC(=O)ORC;または−C(RC)3であり:ここで、RCの各存在は独立に、水素、保護基、脂肪族部分、ヘテロ脂肪族部分、アシル部分;アリール部分;ヘテロアリール部分;アルコキシ;アリールオキシ;アルキルチオ;アリールチオ;アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロアリールオキシ;またはヘテロアリールチオ部分であり;
R4は、置換もしくは非置換、分岐もしくは非分岐型アリール;または置換もしくは非置換、分岐もしくは非分岐型ヘテロアリールであり;
R5は、水素;ハロゲン;環式もしくは非環式、置換もしくは非置換、分岐もしくは非分岐型脂肪族;環式もしくは非環式、置換もしくは非置換、分岐もしくは非分岐型ヘテロ脂肪族;置換もしくは非置換、分岐もしくは非分岐型アシル;置換もしくは非置換、分岐もしくは非分岐型アリール;置換もしくは非置換、分岐もしくは非分岐型ヘテロアリール;−ORE;−C(=O)RE;−CO2RE;−CN;−SCN;−SRE;−SORE;SO2RE;−NO2;−N3;−N(RE)2;−NHC(=O)RE;−NREC(=O)N(RE)2;−OC(=O)ORE;−OC(=O)RE;−OC(=O)N(RE)2;−NREC(=O)ORE;または−C(RE)3であり、ここで、REの各存在は独立に、水素、保護基、脂肪族部分、ヘテロ脂肪族部分、アシル部分;アリール部分;ヘテロアリール部分;アルコキシ;アリールオキシ;アルキルチオ;アリールチオ;アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロアリールオキシ;またはヘテロアリールチオ部分である。
本発明のコンジュゲートの実施形態では、オリゴヌクレオチドは、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはギャップマーである。好ましい実施形態では、本発明のコンジュゲート(conjutate)のギャップマーは、4つの2’−Oメチル修飾リボヌクレオチドの2ブロックに隣接する10個のデオキシヌクレオチドの中央ブロックを含んでなる。
本発明によるコンジュゲートの特定の好ましい実施形態では、α−シヌクレインをコードするmRNAと、ヒトα−シヌクレインmRNAの448〜465番(配列番号4)、499〜516番(配列番号5)および502〜519(配列番号6)(前記ナンバリングは、NCBI受託番号NM_000345(配列番号7)に定義されるα−シヌクレイン配列(alpha-synucleic sequence)の最初のヌクレオチドに対する位置に相当する)に位置する領域からなる群から選択される領域で特異的に結合することができるオリゴヌクレオチド。より好ましい実施形態では、ギャップマーは、配列番号1、配列番号2または配列番号3からなる群から選択される配列からなる。
本発明のコンジュゲートの特定の実施形態では、選択性薬剤は、構造(II):
を有する。
好ましい実施形態では、本発明のコンジュゲートは、下記の構造(IV):
を有し、式中、オリゴヌクレオチドは、α−シヌクレインをコードするmRNAと、ヒトα−シヌクレインmRNAの448〜465番(配列番号4)、499〜516番(配列番号5)および502〜519(配列番号6)(前記ナンバリングは、NCBI受託番号NM_000345(配列番号7)に定義されるα−シヌクレイン配列の最初のヌクレオチドに対する位置に相当する)に位置する領域からなる群から選択される領域で特異的に結合することができる核酸を含んでなる。特定の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、配列番号1、配列番号2または配列番号3からなる群から選択される配列を有する。
さらに別の好ましい実施形態では、本発明のコンジュゲートは、センス鎖の5’末端が保護基とカップリングされ、アンチセンス鎖の5’末端が選択性薬剤とカップリングされ、保護基が構造:
M−L1d−[(A−L2)a−(B−L3)b]c−
を有し、
式中、MはHであり、dは0であり、Aはポリエチレングリコール(polyehtylene glycol)のC18スペーサーであり、Bはフラノースであり、aは2であり、bおよびcは1であり、かつ、L2およびL3はホスホジエステル結合である、
二本鎖核酸を含んでなる。
本発明の意味において、保護基は、連結化合物によってオリゴヌクレオチドの5’−OH基または3’−OH基に連結されてよい。
例えば、単一のオリゴヌクレオチド分子中には、そのオリゴヌクレオチドが二本鎖であるか一本鎖であるかによって可変数、一般に2〜4の式(II)の基を連結することが可能であり、ただし、前記架橋は5’−OHおよび/または3’−OHを介してなされる。また、式(I)のいくつかの基の鎖をオリゴヌクレオチドに連結することも可能であり、前記式(I)の基は、分子間および/またはオリゴヌクレオチドとの間でホスホジエステル結合を生じるホスホラミダイトで誘導体化されたものなどの連結化合物によって互いに連結される。また、オリゴヌクレオチド構築物は、オリゴヌクレオチドの一末端に連結された式(I)のいくつかの基とそのオリゴヌクレオチドの別の末端に連結された式(I)の別の基を含有してもよい。
また、本発明ヌクレオチド構築物は、オリゴヌクレオチドの2本の鎖の5’−OH末端および3’−OH末端のあり得る総ての組合せで配置された、または式(I)の基に連結された、2つ以上の標的化薬剤を含有することもできる。さらに、2つ以上の標的化薬剤が存在する場合、これらは式(I)の基および/またはオリゴヌクレオチド(oligonuclotide)に直列で連結することもできる。
オリゴヌクレオチド構築物が2つ以上の標的化薬剤を含有する場合、種々の組合せが可能である。例えば、保護基は、オリゴヌクレオチドの鎖の一方の5’−OH末端基または3’−OH末端基に連結することができる。別のあり得る組合せとしては、一方のオリゴヌクレオチド鎖の5’−OH基に連結された薬物化合物と、他方のオリゴヌクレオチド鎖に結合された式(I)の基の末端単位に連結された一連のアプタマーとを含む。
C.本発明の医薬組成物
本発明者らは、本発明のコンジュゲートが本発明のコンジュゲートの核酸配列により標的化されるα−シヌクレインmRNAの発現を調節する能力を有することを見出した。特に、NCBU受託番号NM_000345のようなヒト−シヌクレインmRNAの448〜465(配列番号4)、499〜516(配列番号5)および502〜519(配列番号6)の領域を標的とするギャップマーを含んでなるコンジュゲートは、嗅球(BO)、黒質(SNc/VTA)、背側縫線核(DR)におけるα−シヌクレイン発現の低下を効果的に誘導することができる(実施例3および図4参照)。
従って、当業者は、本発明のコンジュゲートが、本発明のコンジュゲート中に存在する核酸により標的とされる遺伝子の発現レベル、すなわち、α−シヌクレインの発現レベルの低下から利益を得る疾患の治療のために適していることを認識するであろう。よって、別の態様において、本発明は医薬に使用するための本発明によるコンジュゲートに関する。あるいは、本発明は、薬剤の製造のための本発明によるコンジュゲートの使用に関する。加えて、本発明はまた、本発明によるコンジュゲートと薬学上許容される賦形剤とを含んでなる医薬組成物にも関する。
適当な量の本発明のオリゴヌクレオチド構造物は、薬学上許容される賦形剤および/または担体とともに処方して医薬組成物とすることができる。本発明によるコンジュゲートを含む組成物は、種々の経路により対象に送達することができる。例示的経路としては、線条体内、脳室内、髄腔内、実質内(例えば、線条体内)、鼻内、および眼内送達が挙げられる。組成物は、例えば、静脈内、皮下または筋肉注射により全身送達することもでき、それはコンジュゲートの末梢ニューロンへの送達に特に有用である。加えて、本発明のコンジュゲートを鼻内に投与することも可能で、それにより非侵襲的投与様式による全身投与が可能になる。心室内投与も適切な場合がある。好ましい送達経路は脳へ直接、例えば、脳室もしくは脳の視床下部へ、または脳の側方もしくは背側領域への送達である。
本発明の医薬組成物は、複数の異なるコンジュゲートを含んでなってもよく、これらの異なるコンジュゲートは、同じ標的分子の異なる領域を標的とする核酸を含んでなる。よって、本医薬組成物は、それぞれ異なる核酸を含んでなる少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つおよびそれを超える異なるコンジュゲート(conjugataes)を含んでなり得る。
当業者は、Remington's Pharmaceutical Science (第17版, Mack Publishing Co., Easton, Pa., 1985)およびGoodman and Gilman's The Pharmaceutical Basis of Therapeutics (第8版, Pergamon Press, Elmsford, N.Y., 1990)(いずれも引用することにより本明細書の一部とされる)などの広く知られ利用可能な資料で論じられている原理および手順に精通している。
本発明の好ましい実施形態において、コンジュゲートは、標準的手順に従ってヒトおよび他の哺乳動物への送達投与に適合した医薬組成物として処方される。通常、静脈内または心室内投与用の組成物は無菌等張緩衝水溶液である。
必要な場合、組成物は、注射部位における疼痛を緩和するために可溶化剤および局所麻酔薬も含み得る。一般に、成分は、アンプルまたは有効剤の量を示すサシェなどの気密容器中で、例えば、凍結乾燥粉末または無水濃縮物として、個別にまたは単位投与形中に一緒に混合して供給される。組成物を点滴注入により投与すべき場合、製薬等級の無菌水または生理食塩水を含む点滴瓶を用いて投薬することができる。組成物が注射により投与される場合、成分を投与前に混合することができるように、無菌注射水または生理食塩水のアンプルを提供することができる。
静脈内投与以外の場合、組成物は少量の加湿剤または乳化剤、またはpH緩衝剤を含有することができる。組成物は、溶液、懸濁液、エマルション、ゲル、ポリマー、または徐放性処方物とすることができる。組成物は、当技術分野において公知の従来の結合剤および担体を用いて処方することができる。処方物は、製薬等級のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、ナトリウムサッカライド、セルロース、炭酸マグネシウムなどの標準的担体、医薬の製造における機能性が十分確立されている不活性担体を含むことができる。リポソーム、微粒子、マイクロカプセルなどへのカプセル化を含む種々の送達系が知られており、本発明の治療薬を投与するために使用することができる。
さらに別の好ましい実施形態では、本発明のコンジュゲートを含有する治療薬は、中性または塩形態として処方することができる。薬学上許容される塩としては、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸などから誘導されたものなどの遊離アミノ基を伴って形成されたもの、および水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、水酸化第二鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどから誘導されたものなどの遊離カルボキシル基を伴って形成されたものが挙げられる。
D.本発明のコンジュゲートの治療的使用
本発明のコンジュゲートは、DAT、SERTおよびNETからなる群から選択される神経伝達物質輸送体を発現する細胞においてα−シヌクレイン遺伝子をノックダウンすることにより改善され得る任意の疾患の治療のために使用することができる。当業者は、本コンジュゲートが細胞内でのタンパク質α−シヌクレインの異常発現(例えば、レビー小体におけるα−シヌクレインの蓄積)を特徴とする疾患の治療に、またはα−シヌクレインタンパク質は正常なレベルで発現されるが、前記標的タンパク質の発現を低下させることにより改善され得る疾患に有用であることを理解するであろう。
よって、別の態様において、本発明は、レビー小体の沈着に関連する疾患の治療または予防において使用するための、
i)ドーパミン輸送体(DAT)、セロトニン輸送体(SERT)またはノルエピネフリン輸送体(NET)からなる群から選択される1以上の神経伝達物質輸送体に特異的に結合する少なくとも1つの選択性薬剤と、
ii)神経伝達物質輸送体と同じ細胞で発現される標的分子であって、α−シヌクレインまたはα−シヌクレインをコードするmRNAである標的分子に特異的に結合することができる少なくとも1つの核酸と
を含んでなる、本発明のコンジュゲートに関する。
あるいは、本発明は、レビー小体の沈着に関連する疾患の治療を目的とする薬剤の製造のための、本発明によるコンジュゲートの使用に関する。
あるいは、本発明は、それを必要とする対象においてレビー小体の沈着に関連する疾患を予防および/または(anto/or)治療するための方法であって、前記対象への治療上有効な量の本発明によるコンジュゲートの投与を含んでなる方法に関する。
用語「レビー小体の沈着に関連する疾患」は、異常なニューロンのα−シヌクレイン封入の形成を生じるα−シヌクレイン代謝の障害を特徴とする病態を意味する。より詳しくは、レビー小体障害は、パーキンソン病(PD)、レビー小体型認知症(DLB)、PD型認知症(PDD)および多系統萎縮症を含む。特定の実施形態では、レビー小体の沈着に関連する疾患は、パーキンソン病、レビー小体(Lewis bodies)型認知症および多系統萎縮症からなる群から選択される。
パーキンソン病(PD)は、患者の運動技能、会話、およびその他の機能をしばしば損なう中枢神経系の変性障害である。パーキンソン病の症状は、黒質緻密部(SNpc)のドーパミン作動性細胞の著しい活性低下から起こる。これらのニューロンは、線条体に投射し、それらの欠損は運動を統制する大脳基底核内の神経回路の活性の変更、本質的には、直接的経路の阻害および間接的経路の興奮をもたらす。直接的経路は運動を促進し、間接的経路は運動を阻害するので、これらの細胞の欠損は運動低下性の運動障害をもたらす。ドーパミンの欠如は、運動野へ興奮性の投射を送る視床の前腹側核の阻害の増強をもたらし、これにより運動低下をもたらす。
PDは、SNpcにおけるドーパミンニューロンの進行性欠損およびレビー小体(LB)と呼ばれる細胞内封入体の存在を特徴とする。神経化学的に、PDは、ミトコンドリア複合体Iの機能不全および酸化ストレス指数の増大が顕著である。PDに関して、酸化ストレス、ニトロソ化ストレス、ミトコンドリア機能不全、タンパク質のミスフォールディングおよび凝集、ならびにアポトーシスを含むいくつかの病理機序が提案されている。PDは、ほとんどの場合で孤発性であるが、PD症例の一部は家族性であることが示されている。同定されている第1の家族性PD遺伝子はα−シヌクレイン(α−syn)であり、これは実際に総てのPD患者においてLBの主成分である。α−シヌクレインの通常の機能は十分に理解されていない。α−シヌクレインは脂質と結合することができ、ニューロンにおいては、おそらく脂質ラフトを介して前シナプス小胞および原形質膜と会合している。沈着した病的形態のα−シヌクレインは凝集し、正常なタンパク質よりも低い溶解度を示す。3つの点突然変異が家族性PDを引き起こすと記載されているが、SNCA遺伝子の倍加および三倍化がPDおよびレビー小体病の一因であることも報告されている。よって、配列変異体を伴わなくとも、α−シヌクレイン負荷はレビー小体病の原因となり得る。
レビー小体型認知症(DLB)は、レビー小体型認知症、びまん性レビー小体病、皮質性レビー小体病またはレビー型老人性認知症としても知られる。この疾患は、アルツハイマー病およびパーキンソン病と密接に関連し、解剖学的には、死後の脳の組織学で検出可能なニューロンにおけるα−シヌクレインおよびユビキチンタンパク質の凝集塊であるレビー小体の存在を特徴とする。
多系統萎縮症またはMSAは、特定の脳領域における神経細胞の変性に関連する神経変性疾患である。細胞変性の結果として、患者において、運動、バランス、および膀胱制御または血圧調節などの身体の他の自律機能による問題を生じる。
特定の好ましい実施形態では、本発明によるコンジュゲートは、脳室内または鼻腔内に投与される。
E.本発明のコンジュゲートの合成
本発明のコンジュゲートは、一般に、有機合成における標準的手順を用いて合成される。当業者ならば、合成の厳密なステップは、合成すべきコンジュゲートの厳密な構造によって異なること認識するであろう。例えば、コンジュゲートが選択性薬剤にその5’末端を介してコンジュゲートされた単一の核酸鎖を含んでなる場合、合成は、通常、アミノ活性化オリゴヌクレオチドと反応性の活性化選択性試薬とを接触させることにより実施される。
コンジュゲートが二本鎖核酸を含んでなる場合には、センス鎖およびアンチセンス鎖は標準的な分子生物学の手順を用いてin vitroで別々に合成され、アニリングルされる。典型的なコンジュゲートでは、第1の核酸鎖が選択性薬剤を担持し、第2の核酸鎖が保護基を担持する。さらにより好ましい実施形態では、選択性薬剤は第1の核酸鎖の5’末端とカップリングされ、かつ/または保護基は第2の核酸鎖の5’末端に結合されるが、選択性薬剤または保護基の付加は核酸鎖の3’末端に行うこともできる。
コンジュゲートの合成は、以下のように行うことができる。
[1]構造
選択性薬剤−[オリゴヌクレオチド]−3’
を有するコンジュゲートは一般に下記の工程を用いて合成される。
(i)選択性薬剤を活性化する。好ましくは、選択性薬剤の活性化基はスクシンイミド基またはアミノ基である。選択性薬剤が第一または第二アミノ基を担持した場合、活性化されたオリゴヌクレオチドは選択性薬剤内のアミノ基と反応し得るので、この活性化は必要でない場合がある、
(ii)オリゴヌクレオチドをその5’末端で活性化する。好ましくは、オリゴヌクレオチドの活性化基はアミノ基(選択性薬剤がスクシンイミド基により活性化された場合)またはカルボキシル基(選択性薬剤がアミン基により活性化されたか、またはアミノ基を含有する場合)である、および
(iii)活性化された選択性薬剤と活性化されたオリゴヌクレオチドとを2つの活性化基間の反応に適した条件下で接触させる。
[2]構造
保護基−[センス鎖]−3’
3’−[アンチセンス鎖]−選択性薬剤
を有するコンジュゲートは一般に下記の工程を用いて合成される。
(i)選択性薬剤を活性化する。好ましくは、選択性薬剤の活性化基はスクシンイミドまたはアミノ基である。
(ii)センス鎖をその5’末端で活性化する。好ましくは、オリゴヌクレオチドの活性化基はアミノ基(選択性薬剤がスクシンイミド基により活性化された場合)またはカルボキシル基(選択性薬剤がアミン基により活性化された場合)である、
(iii)活性化された選択性薬剤と活性化されたセンス鎖を、2つの活性基間の反応に適した条件下で接触させる、
(iv)固定化したアンチセンス鎖に保護基を付加する。この工程は好ましくは反応性基がアセチル化またはベンジル化(フラノース基)、2−シアノエチル化(ホスホジエステル結合)およびFMOC(環外アミノ基)により封鎖されているオリゴヌクレオチドを用いて行われる、
(v)センス鎖およびアンチセンス鎖をアニーリングする。
本発明のコンジュゲートは、当業者により知られた技術を用いて調製することができる。コンジュゲートの合成は、官能基の選択的保護および脱保護を含み得る。好適な保護基は当業者に周知である。例えば、有機化学における保護基の総説は、Wuts, P.G.M. and Greene T.W. Protecting Groups in Organic Synthesis (第4版 Wiley-Interscience)、およびKocienski P.J. Protecting Groups (第3版 Georg Thieme Verlag)で提供されている。
本発明に関して、以下の用語は下記で詳細に示す意味を有する。
用語「C1−C6アルキル」は、不飽和を含まず、単結合により分子の残りの部分に連結している1〜6個の、好ましくは1〜3個の(C1−C3アルキル)炭素原子を有する炭素原子と水素原子からなる線状または分岐型の炭化水素基を意味する。アルキル基の例としては、限定されるものではないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチルおよびヘキシルなどのアルキル基が挙げられる。好ましくは、アルキルはメチルを意味する。
用語「ハロゲン」は、ブロモ、クロロ、ヨードまたはフルオロを意味する。
用語「ハロアルキル」は、少なくとも1個の水素原子がハロゲンにより置き換えられた上記で定義されるアルキル基を意味する。ハロアルキル基の例としては、限定されるものではないが、CF3、CCl3、CHF2、CF2CF3が挙げられる。好ましくは、ハロアルキルはCF3を意味する。
用語「C6−C10アリール」は、例えばフェニル、ナフチルおよびジフェニルを含む、炭素−炭素結合により結合したまたは縮合した1または2個の芳香族核を含んでなる、6〜10個の間の炭素原子を有する芳香族基を意味する。好ましくは、「アリール」はフェニルを意味する。
用語「ヘテロシクリル」は、炭素原子と窒素、酸素、および硫黄およびからなる群から選択される1〜5個のヘテロ原子とからなり、部分的もしくは完全飽和または芳香族(「ヘテロアリール」)であり得る、安定な3〜10員環基、好ましくは、5員または6員環を意味する。本発明の目的では、この複素環はモノシクリル、ビシクリルまたはトリシクリル環構造であり得、縮合環の系を含み得る。特定の実施形態では、ヘテロシクリル基はスクシンイミドである。
上記の式(III)により表される本発明の化合物は、キラル中心の存在に応じて立体異性体を含み得る。単一の異性体、鏡像異性体またはジアステレオ異性体およびそれらの混合物は本発明の範囲内にある。
特に断りのない限り、本発明において使用する化合物は、1以上の同位体が富化された原子が存在することのみが異なる化合物を含むことが意図される。例えば、水素の重水素もしくはトリチウムによる置換、または炭素の13Cもしくは14Cが富化された炭素による置換、または15Nが富化された窒素による置換を除き、本発明の構造を有する化合物は、本発明の範囲内にある。
アミノ誘導体化核酸および活性化三重再取り込み阻害剤を用いた合成
第一の実施形態において、本発明によるコンジュゲートは、アミノ誘導体化核酸と構造(I)を有する化合物またはその類似体の活性化された誘導体形態をカップリングさせることによって得ることができる。特定の実施形態では、活性化された誘導体形態は、下記構造(VII)による、R2がHである構造(I)を有する化合物の誘導体であり、
式中、
nまたはmは、それぞれ0以上6以下の値を有する整数であり;
pは、0以上4以下の値を有する整数であり;
qは、0以上20以下の値を有する整数であり;
R1は、水素;環式もしくは非環式、置換もしくは非置換、分岐もしくは非分岐型脂肪族;環式もしくは非環式、置換もしくは非置換、分岐もしくは非分岐型ヘテロ脂肪族;置換もしくは非置換、分岐もしくは非分岐型アシル;置換もしくは非置換、分岐もしくは非分岐型アリール;置換もしくは非置換、分岐もしくは非分岐型ヘテロアリール;−C(=O)RA;−CO2RA;−C(=O)N(RA)2または−C(RA)3であり;ここで、RAの各存在は独立に、水素、保護基、脂肪族部分、ヘテロ脂肪族部分、アシル部分;アリール部分;ヘテロアリール部分;アルコキシ;アリールオキシ;アルキルチオ;アリールチオ;アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロアリールオキシ;またはヘテロアリールチオ部分であり;
R3は、水素;ハロゲン;環式もしくは非環式、置換もしくは非置換、分岐もしくは非分岐型脂肪族;環式もしくは非環式、置換もしくは非置換、分岐もしくは非分岐型ヘテロ脂肪族;置換もしくは非置換、分岐もしくは非分岐型アシル;置換もしくは非置換、分岐もしくは非分岐型アリール;置換もしくは非置換、分岐もしくは非分岐型ヘテロアリール;−ORC;-C(=O)RC;−CO2RC;−CN;−SCN;−SRC;−SORC;SO2RC;−NO2;−N3;−N(RC)2;−NHC(=O)RC;−NRCC(=O)N(RC)2;−OC(=O)ORC;−OC(=O)RC;−OC(=O)N(RC)2;−NRCC(=O)ORC;または−C(RC)3であり;ここで、RCの各存在は独立に、水素、保護基、脂肪族部分、ヘテロ脂肪族部分、アシル部分;アリール部分;ヘテロアリール部分;アルコキシ;アリールオキシ;アルキルチオ;アリールチオ;アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロアリールオキシ;またはヘテロアリールチオ部分であり;
R4は、置換もしくは非置換、分岐もしくは非分岐型アリール;または置換もしくは非置換、分岐もしくは非分岐型ヘテロアリールであり;
R5は、水素;ハロゲン;環式もしくは非環式、置換もしくは非置換、分岐もしくは非分岐型脂肪族;環式もしくは非環式、置換もしくは非置換、分岐もしくは非分岐型ヘテロ脂肪族;置換もしくは非置換、分岐もしくは非分岐型アシル;置換もしくは非置換、分岐もしくは非分岐型アリール;置換もしくは非置換、分岐もしくは非分岐型ヘテロアリール;−ORE;−C(=O)RE;−CO2RE;−CN;−SCN;−SRE;−SORE;SO2RE;−NO2;−N3;−N(RE)2;−NHC(=O)RE;−NREC(=O)N(RE)2;−OC(=O)ORE;−OC(=O)RE;−OC(=O)N(RE)2;−NREC(=O)ORE;または−C(RE)3であり、ここで、REの各存在は独立に、水素、保護基、脂肪族部分、ヘテロ脂肪族部分、アシル部分;アリール部分;ヘテロアリール部分;アルコキシ;アリールオキシ;アルキルチオ;アリールチオ;アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロアリールオキシ;またはヘテロアリールチオ部分であり
R6は、カルボニル活性化基である。
用語「カルボニル活性化基」は、カルボニルに求核付加を受けやすくするカルボニルの置換基を意味する。特定の実施形態では、それはカルボニル基とともにアンヒドリド、酸ハリドまたはエステル基を形成する。好ましい実施形態では、カルボニル活性化基は、ハロゲン、−OC(O)R、−OR’、−SR’’から選択され;R、R’およびR’’は独立にC1−C6アルキル、ハロアルキル、ヘテロシクリル、アリールおよびヘテロアリールから選択される。
用語「カルボニル活性化基」は、カルボン酸基のカルボニルを例えば、アンヒドリド、カルボン酸ハリド、カルボジイミド、ハロゲン化剤、ジスルフィドなどの求核付加をより受けやすいものに変換する化合物を意味する。特定の実施形態では、カルボニル活性化基は、ハロゲン化剤(halogentaing agent)、R(O)COC(O)R、RC(O)ハロゲン、R’OH、R’’SH、R’’SSR’’から選択され;ここで、R、R’およびR’’は独立に、C1−C6アルキル、ハロアルキル、ヘテロシクリル、アリールおよびヘテロアリールから選択される。
特定の実施形態では、カルボニル活性化基は、N−ヒドロキシ−スクシンイミドである。この場合、反応は好ましくは、さらなるカルボニル活性化基の存在下で実施される。
このプロセスに好適なカルボニル活性化基としては、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)およびジイソプロピルカルボジイミド(DIC)などのカルボジイミド、ならびに1−ヒドロキシ−ベンゾトリアゾール(HOBt)および1−ヒドロキシ−7−アザ−ベンゾトリアゾール(HOAt)などのトリアゾロールが含まれる。好ましい実施形態では、式(VII)の化合物は、ジイソプロピルカルボジイミドの存在下でN−ヒドロキシスクシンイミドと反応させて、活性化誘導体を得る。
特定の実施形態では、R6は、スクシンイミドオキシ基である。よって、別の実施形態では、本発明によるコンジュゲートは、アミノ誘導体化核酸とセルトラリンまたはその類似体の活性化誘導体形態をカップリングさせることにより得ることができ、ここで、選択性薬剤の活性化誘導体は、式(VIII)の化合物であり、
式中、R1、R3、R4、R5、R6、n、m、pおよびqは上記で定義される通りである。
特定の実施形態によれば、式(VIII)の活性化化合物は、化合物:
である。
一実施形態によれば、本発明による化合物は、下記を含んでなる一連の手順によって調製することができる。
a)式(V)
の化合物と、式(IX):
[式中、pは上記で定義される通りであり、ZはハロゲンまたはOHであり、かつ、PGはアミン保護基である。]
のアシル化剤を反応させて、式(X):
の化合物を得ること。
アミンに対する慣用の保護基としては、tert−ブチルカルバメート、ベンジルカルバメート、2,2,2−トリクロロエチルカルバメート、2−トリメチルシリルエチルカルバメート、9H−フルオレニルメチル(Fmoc)カルバメート、アリルカルバメートまたはニトロフェニルカルバメートなどのカルバメート;ホルムアミド、アセトアミド、トリフルオロアセトアミド、スルホンアミド、トリフルオロメタンスルホニルアミドまたはtert−ブチルスルホニルアミドなどのアミド;ならびにp−メトキシフェニルアミン、ベンジルアミン、p−メトキシベンジルアミン、3,4−ジメトキシベンジルアミン、ジメトキシトリチルアミンまたはモノメトキシトリチルアミンなどのアリールまたはアリールアルキル(arylakylamines)が含まれる。特定の実施形態では、式(IX)のアシル化剤は、9H−フルオレニルメトキシカルボニル−6−アミノヘキサン酸である。
式(V)の化合物は、次に、例えば、米国特許第6455736号に記載のとおりに調製することができる。特に、式(V)の化合物がセルトラリンである場合、それは対応するクロロ水和物(市販)から、アルカリまたはアルカリ土類カーボネートカーボネートまたはヒドロキシド、アンモニアまたはアミン、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、ピペリジン、モルホリンなどの有機または無機塩基を含む好適な塩基で処理することによって得ることができる。
b)式(V)の化合物のアミノ保護基を脱保護して式(XI):
の化合物を得ること。
好適な脱保護条件は、例えば、Protecting Groups in Organic Synthesis (Wuts, P.G.M. and Greene T.W., 第4版 Wiley-Interscience)およびProtecting Groups (Kocienski P.J., 第3版Georg Thieme Verlag)において、当業者に公知である。特定の実施形態では、保護基は、ピペリジン、モルホリン、ジシクロヘキシルアミン、ジイソプロピルエチルアミンまたはジメチルアミノピリジンなどのアミンの存在下、好ましくは、ピペリジンの存在下で除去される。
c)式(XI)の化合物を式(XII)または(XIII):
[式中、nは上記で定義される通りであり、ZはハロゲンまたはOHである。]
のアシル化剤を反応させて式(XIV):
の化合物を得ること。
特定の実施形態では、アシル化剤は無水コハク酸である。
d)式(XIV)の化合物をカルボニル活性化基で処理すること。
用語「カルボニル活性化基」は、カルボン酸基のカルボニルを、例えば、アンヒドリド、カルボン酸ハリド、カルボジイミド、ハロゲン化剤、ジスルフィドなどの求核付加をより受けやすいものに変換する化合物を意味する。特定の実施形態では、カルボニル活性化基は、ハロゲン化剤(halogentaing agent)、R(O)COC(O)R、RC(O)ハロゲン、R’OH、R’’SH、R’’SSR’’から選択され;ここで、R、R’およびR’’は独立に、C1−C6アルキル、ハロアルキル、ヘテロシクリル、アリールおよびヘテロアリールから選択される。
特定の実施形態では、カルボニル活性化基は、N−ヒドロキシ−スクシンイミドである。この場合、反応は好ましくは、さらなるカルボニル活性化基の存在下で実施される。
よって、特定の実施形態では、工程d)は、式(XIV)の化合物をさらなるカルボニル活性化基の存在下でN−ヒドロキシスクシンイミドで処理することを含んでなる。
このプロセスに好適なカルボニル活性化基としては、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)およびジイソプロピルカルボジイミド(DIC)などのカルボジイミド、ならびに1−ヒドロキシ−ベンゾトリアゾール(HOBt)および1−ヒドロキシ−7−アザ−ベンゾトリアゾール(HOAt)などのトリアゾロールが含まれる。好ましい実施形態では、式(XIV)の化合物をジイソプロピルカルボジイミドの存在下でN−ヒドロキシスクシンイミドと反応させて活性化誘導体を得る。
別の態様によれば、本発明は、式(X)
[式中、R1〜R5、m、n、o、pおよびPGは上記で定義される通りである。]
の中間体を対象とする。
好ましい実施形態では、R1はメチルであり、R2〜R5は水素であり、XおよびYはクロリドであり、Wは水素であり、pは5であり、PGは9H−フルオレニルメトキシカルボニルである。より好ましくは、式(X)の化合物は化合物:
である。
別の態様によれば、本発明は、式(XI)
[式中、R1〜R5、m、n、oおよびpは上記で定義される通りである。]
の中間体を対象とする。
より好ましくは、式(VII)の化合物は、化合物:
である。
別の態様によれば、本発明は、式(XIV)
[式中、R1〜R5、m、n、o、pおよびqは上記で定義される通りである。]
の中間体を対象とする。
より好ましくは、式(VII)の化合物は、
である。
別の態様によれば、本発明は、式(XV)
[式中、R1〜R6、m、n、o、pおよびqは上記で定義される通りである。]
の中間体を対象とする。
より好ましくは、式(XV)の化合物は、化合物:
である。
選択性薬剤に結合されるsiRNA鎖は、M.J. Gait. IRL Press-1985により編集された“Oligonucleotide synthesis, a practical approach.”に開示されている方法に従って固相支持体上での段階的固相合成によって形成される。
選択性薬剤をコンジュゲートするためには、オリゴヌクレオチドはアミノ誘導体化する必要がある。これは5’末端または3’末端で行うことができる。好ましい実施形態では、選択性薬剤は5’末端に結合されている。
本発明の合成の一実施形態によれば、本発明によるコンジュゲートは、選択性薬剤と式:
のアミノ修飾オリゴヌクレオチドを反応させることによって調製することができる。
アミノリンカー修飾因子を用いてオリゴヌクレオチドを活性化するための一般手法は一般に、以下のスキームに従う。
オリゴヌクレオチドの5’−OH基をアミノリンカーにカップリングした後、アミン保護基を既知の条件下で除去する。例えば、TFA保護アミノ誘導体はアンモニアで処理することにより脱保護でき、MMT保護アミノ誘導体は酢酸、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸またはトリフルオロ酢酸で処理することにより脱保護できる。
アミノ修飾オリゴヌクレオチドの一般合成法
(i)無水アセトニトリル中にリンカー/修飾因子分子(真空乾燥)の溶液(市販のほとんどのアミダイト中で0.1M溶液が使用される)を作製し、それを合成装置(Y)の外部リザーバーに入れる、
(ii)必要なオリゴヌクレオチド配列の合成の開始時に、Y塩基を5’末端に付加する、これによりYリザーバーからのリンカー/修飾因子分子の、オリゴヌクレオチド配列の末端へのカップリングが可能となる、
(iii)適当なカップリングサイクルを用いて合成を開始する。同じカップリングサイクルを用いて、リンカー/修飾因子分子のカップリングも行う、
(iv)オリゴヌクレオチド合成の終了時に、支持体を洗浄し、最後に支持体をガスで乾燥させる、
(v)固相支持体をカラムから取り出し、それをねじ口バイアルに移し、2段階の脱保護を完了させる。
アミノ修飾オリゴヌクレオチドは、選択性薬剤とのさらなるコンジュゲーションのために脱保護されなければならない。この目的で、オリゴヌクレオチド中の残存する保護基を総て次のように除去する。20%v/vのメチルアミン(水溶液40%w/v)および80%v/vの飽和アンモニア溶液(30〜32%w/vのNH3を含有する)を含有する500μlの混合物をオリゴヌクレオチド(200nmol規模)の入ったエッペンドルフ管に加えた。この管を密閉して45分間65℃の温度に加熱した。この手順によりヌクレオチドのリン原子における保護基(フラノースのアセチル化またはベンゾイル化およびホスホジエステル結合の2−シアノエチル化)および環外アミノ基の保護基(Bz、Ac、IBu)が排除される。次に、この混合物を冷却し、濾過し、上清を乾燥させた。残留ペレットを1Mトリエチルアミン−HFと3時間65℃で反応させて保護基をヌクレオチド(2’−t−ブチルジメチルシリル−TBDMS)の2’で切断した。最後に、得られた溶液をセファデックスカラムで脱塩すると、アミノ修飾5’−オリゴヌクレオチドが残った。
アミノ修飾因子リンカーを3’OH末端に組み込む場合、対応するポリマー支持体(CPGボール)を使用するべきであり、合成スキームは下図に相当する:
(加水分解は水酸化アンモニウムまたはBeckman試薬を使用することにより行うことができる)(メチルアミン:水酸化アンモニウム)。
両場合とも、脱保護工程は同じであり、このようなイベントでのコンジュゲーションアプローチもまた同じであるが、効率は異なる。ほとんどの場合、5’−アミノ誘導体化でより良い結果が達成される。
特定の実施形態では、オリゴヌクレオチドを、予め二価または三価のホスホルアミドと反応させる。このようにして2つまたは3つのカップリング位置(copupling positions)を有する化合物を得ることができ、その結果、2分子または3分子の選択性薬剤がオリゴヌクレオチドとカップリングされ得る。前記2分子または3分子の選択性薬剤は、同じであっても異なっていてもよい。
特定の実施形態では、2分子または3分子の同じ選択性薬剤がオリゴヌクレオチドとカップリングされる。別の実施形態では、2つまたは3つの異なる選択性薬剤がオリゴヌクレオチドとカップリングされる。
一実施形態では、オリゴヌクレオチドを、2価または3価のホスホラミダイトと反応させる。
ヒドロキシ保護基、ならびに好適な保護および脱保護条件は、例えば、Protecting Groups in Organic Synthesis (Wuts, P.G.M. and Greene T.W., 第4版 Wiley-Interscience)およびProtecting Groups (Kocienski P.J., 第3版 Georg Thieme Verlag) において、当業者に公知である。
特定の実施形態では、ヒドロキシ保護基は、エーテル、シリルエーテル、エステル、スルホネート、スルフェネート、スルフィネート、カーボネートおよびカルバメートから選択される。好ましい実施形態では、ヒドロキシル保護基は、アセチル、ベンゾイル、ベンジル、メトキシエトキシメチルエーテル(MEM)、ジメトキシトリチル(DMT)、メトキシメチルエーテル(MOM)、メトキシトリチル(MMT)、p−メトキシベンジルエーテル(PMB)、メチルチオメチルエーテル、ピバロイル(Piv)、テトラヒドロピラニル(tetrehydropyranyl)(THP)、トリチル(Tr)、9H−フルオレニルメチル(Fmoc)、トリメチルシリル(TMS)、tert−ブチルジメチルシリル(TBDMS)、tert−ブチルジメチルシリルオキシメチル(TOM)、およびトリイソプロピルシリル(TIPS)エーテルから選択される。好ましくは、PG、PG’およびPG’’は独立にH、DMTおよびFmocから選択される。
カルボキシ誘導体化核酸と活性化三重取り込み阻害剤を用いる合成
別の好ましい実施形態では、本発明のコンジュゲートは、アミノ誘導体化選択性薬剤とカルボキシル誘導体化オリゴヌクレオチドのコンジュゲーションにより得られる。特に、本発明のコンジュゲートは構造(III):
およびその薬学上許容される形態を有し、式中、
nまたはmは、それぞれ0以上6以下の値を有する整数であり;
pは、0以上4以下の値を有する整数であり;
qは、0以上20以下の値を有する整数であり;
R1は、水素;環式もしくは非環式、置換もしくは非置換、分岐もしくは非分岐型脂肪族;環式もしくは非環式、置換もしくは非置換、分岐もしくは非分岐型ヘテロ脂肪族;置換もしくは非置換、分岐もしくは非分岐型アシル;置換もしくは非置換、分岐もしくは非分岐型アリール;置換もしくは非置換、分岐もしくは非分岐型ヘテロアリール;−C(=O)RA;−CO2RA;−C(=O)N(RA)2または−C(RA)3であり;ここで、RAの各存在は独立に、水素、保護基、脂肪族部分、ヘテロ脂肪族部分、アシル部分;アリール部分;ヘテロアリール部分;アルコキシ;アリールオキシ;アルキルチオ;アリールチオ;アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロアリールオキシ;またはヘテロアリールチオ部分であり;
R3は、水素;ハロゲン;環式もしくは非環式、置換もしくは非置換、分岐もしくは非分岐型脂肪族;環式もしくは非環式、置換もしくは非置換、分岐もしくは非分岐型ヘテロ脂肪族;置換もしくは非置換、分岐もしくは非分岐型アシル;置換もしくは非置換、分岐もしくは非分岐型アリール;置換もしくは非置換、分岐もしくは非分岐型ヘテロアリール;−ORC;−C(=O)RC;−CO2RC;−CN;−SCN;−SRC;−SORC;SO2RC;−NO2;−N3;−N(RC)2;−NHC(=O)RC;−NRCC(=O)N(RC)2;−OC(=O)ORC;−OC(=O)RC;−OC(=O)N(RC)2;−NRCC(=O)ORC;または−C(RC)3であり:ここで、RCの各存在は独立に、水素、保護基、脂肪族部分、ヘテロ脂肪族部分、アシル部分;アリール部分;ヘテロアリール部分;アルコキシ;アリールオキシ;アルキルチオ;アリールチオ;アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロアリールオキシ;またはヘテロアリールチオ部分であり;
R4は、置換もしくは非置換、分岐もしくは非分岐型アリール;または置換もしくは非置換、分岐もしくは非分岐型ヘテロアリールであり;
R5は、水素;ハロゲン;環式もしくは非環式、置換もしくは非置換、分岐もしくは非分岐型脂肪族;環式もしくは非環式、置換もしくは非置換、分岐もしくは非分岐型ヘテロ脂肪族;置換もしくは非置換、分岐もしくは非分岐型アシル;置換もしくは非置換、分岐もしくは非分岐型アリール;置換もしくは非置換、分岐もしくは非分岐型ヘテロアリール;−ORE;−C(=O)RE;−CO2RE;−CN;−SCN;−SRE;−SORE;SO2RE;−NO2;−N3;−N(RE)2;−NHC(=O)RE;−NREC(=O)N(RE)2;−OC(=O)ORE;−OC(=O)RE;−OC(=O)N(RE)2;−NREC(=O)ORE;または−C(RE)3であり、ここで、REの各存在は独立に、水素、保護基、脂肪族部分、ヘテロ脂肪族部分、アシル部分;アリール部分;ヘテロアリール部分;アルコキシ;アリールオキシ;アルキルチオ;アリールチオ;アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロアリールオキシ;またはヘテロアリールチオ部分であり、
かつ、オリゴヌクレオチドは、標的分子に特異的に結合することができる核酸であり、前記標的分子はα−シヌクレインまたはα−シヌクレインをコードするmRNAである。
(III)の構造を有するコンジュゲートの合成方法は、(V):
の構造を有する化合物と、式(VI):
を有するカルボキシ修飾オリゴヌクレオチドを反応させることを含んでなる。
よって、本発明はまた、オリゴヌクレオチドが、標的分子に特異的に結合することができる核酸であり、前記標的分子がα−シヌクレインまたはα−シヌクレインをコードするmRNAである、構造(VI)を有する化合物に関する。特定の実施形態では、構造(VI)を有する化合物(compoung)内のオリゴヌクレオチドは、アンチセンスギャップマーである。特に、前記ギャップマーは、4つの2’−Oメチル修飾リボヌクレオチドのブロックに隣接する10個のデオキシヌクレオチドの中央ブロックを含んでなる。
特定の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、ヒトα−シヌクレインmRNAの448〜465番(配列番号4)、499〜516番(配列番号5)および502〜519番(配列番号6)(前記ナンバリングは、NCBI受託番号NM_000345(配列番号7)に定義されるα−シヌクレイン配列の最初のヌクレオチドに対する位置に相当する)に位置する領域からなる群から選択されるα−シヌクレインmRNA内の領域に標的化される。好ましい実施形態では、構造(VI)を有する化合物内のオリゴヌクレオチドは、配列番号1、配列番号2または配列番号3からなる群から選択される配列からなる。
アミンに対する慣用の保護基としては、tert−ブチルカルバメート、ベンジルカルバメート、2,2,2−トリクロロエチルカルバメート、2−トリメチルシリルエチルカルバメート、9H−フルオレニルメチル(Fmoc)カルバメート、アリルカルバメートまたはニトロフェニルカルバメートなどのカルバメート;ホルムアミド、アセトアミド、トリフルオロアセトアミド、スルホンアミド、トリフルオロメタンスルホニルアミドまたはtert−ブチルスルホニルアミドなどのアミド;ならびにp−メトキシフェニルアミン、ベンジルアミン、p−メトキシベンジルアミン、3,4−ジメトキシベンジルアミン、ジメトキシトリチルアミンまたはモノメトキシトリチルアミンなどのアリールまたはアリールアルキル(arylakylamines)が含まれる。特定の実施形態では、式(VII)のアシル化剤は、9H−フルオレニルメトキシカルボニル−6−アミノヘキサン酸である。
好適な脱保護条件は、例えば、Protecting Groups in Organic Synthesis (Wuts, P.G.M. and Greene T.W., 第4版 Wiley-Interscience)およびProtecting Groups (Kocienski P.J., 第3版Georg Thieme Verlag)において、当業者に公知である。特定の実施形態では、保護基は、ピペリジン、モルホリン、ジシクロヘキシルアミン、ジイソプロピルエチルアミンまたはジメチルアミノピリジンなどのアミンの存在下、好ましくは、ピペリジンの存在下で除去される。
選択性薬剤に結合されるsiRNA鎖は、M.J. Gait. IRL Press-1985により編集された“Oligonucleotide synthesis, a practical approach.”に開示されている方法に従って固相支持体上での段階的固相合成によって形成される。
選択性薬剤をコンジュゲートするためには、オリゴヌクレオチドはカルボキシ誘導体化する必要がある。これは5’末端または3’末端で行うことができる。好ましい実施形態では、選択性リガンドは5’末端に結合されている。
一実施形態によれば、式(III)のコンジュゲートは、上記のような式(V)の化合物と式(VI)のカルボキシ修飾オリゴヌクレオチドを反応させることによって調製することができる。
カルボキシルリンカー修飾因子を用いてオリゴヌクレオチドを活性化するための一般手順は、典型的には下記のスキームに従う。
カルボキシ修飾オリゴヌクレオチドの一般合成法
(i)無水アセトニトリル中に修飾因子分子の溶液を作製し、それを合成装置(Y)の外部リザーバーに入れる、
(ii)必要なオリゴヌクレオチド配列の合成の開始時に、Y塩基を5’末端に付加する、これによりYリザーバーからのリンカー/修飾因子分子の、オリゴヌクレオチド配列の末端へのカップリングが可能となる、
(iii)適当なカップリングサイクルを用いて合成を開始する。同じカップリングサイクルを用いて、リンカー/修飾因子分子のカップリングも行う、
(iv)オリゴヌクレオチド合成の終了時に、支持体を洗浄し、最後に支持体をガスで乾燥させる、
(v)固相支持体をカラムから取り出し、それをねじ口バイアルに移し、2段階の脱保護を完了させる。
カルボキシ修飾オリゴヌクレオチドは、選択性薬剤とのさらなるコンジュゲーションのために脱保護されなければならない。この目的で、オリゴヌクレオチド中の残存する保護基を総て次のように除去する。20%v/vのメチルアミン(水溶液40%w/v)および80%v/vの飽和アンモニア溶液(30〜32%w/vのNH3を含有する)を含有する500μlの混合物をオリゴヌクレオチド(200nmol規模)の入ったエッペンドルフ管に加えた。この管を密閉して45分間65℃の温度に加熱した。この手順によりヌクレオチドのリン原子における保護基(フラノースのアセチル化またはベンゾイル化およびホスホジエステル結合の2−シアノエチル化)および環外アミノ基の保護基(Bz、Ac、IBu)が排除される。次に、この混合物を冷却し、濾過し、上清を乾燥させた。残留ペレットを1Mトリエチルアミン−HFと3時間65℃で反応させて保護基をヌクレオチド(2’−t−ブチルジメチルシリル−TBDMS)の2’で切断した。最後に、得られた溶液をセファデックスカラムで脱塩すると、カルボキシ修飾5’−オリゴヌクレオチドが残った。
特定の実施形態では、本発明の方法により合成されたコンジュゲートにより含まれるオリゴヌクレオチドは、アンチセンスギャップマーである。特に、ギャップマーは、4つの2’−Oメチル修飾リボヌクレオチドのブロックに隣接する10個のデオキシヌクレオチドの中央ブロックを含んでなる。
好ましい実施形態では、本発明の方法により合成されるコンジュゲートにより含まれるオリゴヌクレオチドは、ヒトα−シヌクレインmRNAの448〜465番(配列番号4)、499〜516番(配列番号5)および502〜519番(配列番号6)(前記ナンバリングは、NCBI受託番号NM_000345(配列番号7)に定義されるα−シヌクレイン配列の最初のヌクレオチドに対する位置に相当する)に位置する領域からなる群から選択されるα−シヌクレインmRNA内の領域に標的化される。特に、前記核酸は、配列番号1、配列番号2または配列番号3からなる群から選択される配列からなる。
次に、カルボキシル活性化オリゴヌクレオチドを、上記で定義されるような式(V)の選択性薬剤の活性化誘導体と反応させる。一般式(III)を有する化合物が得られる。
特に、この化合物(III)は、標的分子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドを含んでなり、前記標的分子はα−シヌクレインまたはα−シヌクレインをコードするmRNAである。特定の実施形態では、構造(III)を有する化合物内のオリゴヌクレオチドは、アンチセンスギャップマーである。特に、前記ギャップマーは、4つの2’−Oメチル修飾リボヌクレオチドのブロックに隣接する10個のデオキシヌクレオチドの中央ブロックを含んでなる。
特定の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、ヒトα−シヌクレインmRNAの448〜465番(配列番号4)、499〜516番(配列番号5)および502〜519番(配列番号6)(前記ナンバリングは、NCBI受託番号NM_000345(配列番号7)に定義されるα−シヌクレイン配列の最初のヌクレオチドに対する位置に相当する)に位置する領域からなる群から選択されるα−シヌクレインmRNA内の領域に標的化される。好ましい実施形態では、構造(III)を有する化合物内のオリゴヌクレオチドは、配列番号1、配列番号2または配列番号3からなる群から選択される配列からなる。
F.診断用のコンジュゲートおよびそれらの使用
神経伝達物質輸送体に高い親和性で結合することができる選択性薬剤を使用することにより治療用化合物を標的細胞に特異的に送達し得るということはまた、診断目的に使用できる化合物の送達にも応用できる。従って、別の実施形態において、本発明は、
i)ドーパミン輸送体(DAT)、セロトニン輸送体(SERT)またはノルエピネフリン輸送体(NET)からなる群から選択される1以上の神経伝達物質輸送体に特異的に結合する少なくとも1つの選択性薬剤と、
ii)撮像剤と
を含んでなるコンジュゲートを提供する。
用語「選択性薬剤」および「神経伝達物質輸送体」は上記で詳細に説明されており、本発明の診断用コンジュゲートについても同様に理解することができる。
用語「撮像剤」および「造影剤」は、本明細書において互換的に使用され、その使用により、その像の異なる領域間の「コントラスト」を増強することにより像の異なる部分の区別が容易になる生体適合性化合物を意味する。従って、用語「造影剤」は、そのような薬剤の不在下でも生成可能な像(例えば、MRIの場合)の品質を向上させるために使用される薬剤、ならびに像の生成に欠くことのできない薬剤(例えば、核撮像の場合)を包含する。好適な造影剤としては、限定されるものではないが、放射性核種撮像用、コンピューター断層撮影用、ラマン分光法用、磁気共鳴撮像(MRI)用および光学的撮像用の造影剤が挙げられる。
放射性核種撮像用の造影剤として、通常、11C、13N、15O、18F、82Rb、62Cuおよび68Gaなどの陽電子放射体で標識された放射性薬剤が挙げられる。SPECT放射性薬剤は、通常、94mTc、201Tlおよび67Gaなどの陽電子放射体で標識される。放射性核種撮像様式(陽電子放射断層撮影(PET);単光子放射コンピューター断層撮影法(SPECT))は、放射性核種で標識された放射性トレーサーの位置および濃度をマッピングする診断用断面撮像技術である。PETおよびSPECTは、代謝活性を測定することにより放射性核種の位置決定および同定を行うために使用することができる。PETおよびSPECTは、細胞生存率などの細胞レベルでの情報に属する情報を提供する。PETにおいて、患者は、陽電子を放出する微弱な放射性物質を摂取するかまたは注射され、この物質は身体中を移動するのでモニタリングすることができる。一つの一般的な適用では、例えば、患者は陽電子放射体が結合されたグルコースを与えられ、患者が種々の課題を遂行する際の脳がモニタリングされる。脳はそれが働く際にグルコースを使用するので、PET像はどこで脳活性が高いかを示す。本発明のある実施形態では、細胞をin vivoのPETまたはSPECT撮像のためにex vivoで標識する。PETと密接に関係するのは単光子放射コンピューター断層撮影法、またはSPECTである。この二者の間の主な違いは、SPECTが、陽電子放出物質の代わりに低エネルギー光子を放出する放射性トレーサーを使用することである。
CT撮像用の造影剤は、例えば、ヨウ素化または臭素化造影媒体を含む。これらの薬剤の例としては、イオタラメート、イオヘキシル、ジアトリゾエート、イオパミドール、エチオドールおよびイオパノエートが挙げられる。ガドリニウム剤もCT造影剤として使用されることが報告されている(例えば、Henson et al.,2004参照)。例えば、ガドペンテート剤がCT造影剤として使用されている(Strunk and Schild,2004で論述)。コンピューター断層撮影(CT)が本発明に関して撮像様式として企図される種々の角度から時には千本を超える一連のX線を用い、次にそれらをコンピューターと組み合わせることにより、CTは身体の任意の部分の3次元像を構築することを可能にする。コンピューターは任意の角度からおよび任意の深さで2次元断面を表示するようにプログラムされている。CTにおいて、最初のCTスキャンで診断がつかないときには、本明細書に記載したものなどの放射線不透過造影剤の静注が、軟組織体の同定および描写の助けとなり得る。
光学的撮像用の造影剤としては、例えば、フルオレセイン、フルオレセイン誘導体、インドシアニングリーン、オレゴングリーン、オレゴングリーン誘導体の誘導体、ローダミングリーン、ローダミングリーン誘導体、エオシン、エリスロシン、テキサスレッド、テキサスレッド誘導体、マラカイトグリーン,ナノゴールドスルホスクシンイミジルエステル、カスケードブルー、クマリン誘導体、ナフタレン、ピリジルオキサゾール誘導体、カスケードイエロー色素、ダポキシル色素および本明細書に開示されている種々の他の蛍光化合物が挙げられる。
好ましい実施形態では、造影剤は、磁気共鳴撮像装置により撮像可能な化合物である。磁気共鳴撮像装置により撮像可能な造影剤は、他の撮像技術で使用されるものと異なる。それらの目的は、同一のシグナル特性を有する組織コンパートメント間を識別するのに役立つこと、および緩和時間を短縮すること(Tl強調スピンエコーMR像により強いシグナルを、そしてT2強調像に低強度のシグナルを生ずることになる)である。MRI造影剤の例としては、ガドリニウムキレート、マンガンキレート、クロムキレート、および鉄粒子が挙げられる。特定の一実施形態では、MRI造影剤は19Fである。CTおよびMRIは両方とも組織境界を識別するのに役立つ解剖学的情報を提供する。CTに比較したMRIの欠点として、患者の忍容性が低いこと、ペースメーカーおよびある種の他の金属インプラントデバイスの禁忌、ならびに複数の原因(それらの少なからずが運動である)が関係するアーチファクトが挙げられる。他方、CTは迅速で、十分な忍容性があり、かつ容易に利用できるが、MRIよりコントラスト解像度が低く、ヨウ素化造影剤およびイオン化性放射線が必要になる。CTおよびMRIの両方の欠点は、いずれの撮像様式も細胞レベルにおける機能的情報を提供しないことである。例えば、いずれの様式も細胞生存率に関する情報を提供しない。磁気共鳴撮像(MRI)は、CTより新しく、高強度磁石およびラジオ波周波数シグナルを使用して像を生成する撮像様式である。生物組織中に最も豊富な分子種は水である。撮像検査で最終的にシグナルを生じさせるのは、水のプロトン核の量子力学的「スピン」である。MRIにおいては、撮像される試料が強い静的磁場(1〜12テスラ)に置かれ、スピンがラジオ波周波数(RF)の放射線のパルスで励起されて試料中に正味の磁化を生じさせる。次に、種々の磁場勾配および他のRFパルスがスピンに作用して、記録されるシグナル中に空間的情報をコードする。これらのシグナルを収集して解析することにより、CT像同様に、通常2次元断面で表示される3次元画像を計算することが可能である。
MRI造影剤としては、クロム(III)、マンガン(II)、鉄(III)、鉄(II)、コバルト(II)、ニッケル(II)、銅(II)、ネオジム(III)、サマリウム(III)、イッテルビウム(III)、ガドリニウム(III)、バナジウム(II)、テルビウム(III)、ジスプロシウム(III)、ホルミウム(III)およびエルビウム(III)からなる群から選択される金属の錯体が挙げられる。好ましい実施形態では、磁気共鳴撮像装置により撮像することができる化合物は、ガドリニウム系化合物である。
用語「ガドリニウム系化合物」は、本明細書で使用する場合、撮像に関して使用される場合には、対象に投与可能で静脈内増強が生ずる任意のガドリニウム含有物質を意味するものとする。別の実施形態では、ガドリニウム含有造影剤は、ガドリニウム、ガドリニウムペンテート、およびガドジアミドからなる群から選択される。
ガドリニウム含有造影剤の投与量は、体重1kg当たり約10mgの量で可変である。別の実施形態では、第2の磁気共鳴像がガドリニウム含有造影剤を投与した約45分後に取得される。本発明はまた、工程(c)または工程(d)のいずれかに続いて対象に生理食塩水(例えば、リンゲル溶液)を腹腔内投与する工程をさらに含んでなる上記の方法も提供する。
本発明はまた、診断剤として上記に定義されたコンジュゲートの使用および神経伝達物質輸送体をそれらの表面上に発現する細胞の検出方法も提供する。
本発明による診断用コンジュゲートは、DAT、SERTまたはNETからなる群から選択される1以上の神経伝達物質輸送体に特異的に結合する少なくとも1つの選択性薬剤と撮像剤を含んでなる。特定の実施形態では、選択性薬剤は、三重遮断薬、より詳しくは、構造(I):
[式中、
nまたはmは、それぞれ0以上6以下の値を有する整数であり;
pは、0以上4以下の値を有する整数であり;
R1は、水素;環式もしくは非環式、置換もしくは非置換、分岐もしくは非分岐型脂肪族;環式もしくは非環式、置換もしくは非置換、分岐もしくは非分岐型ヘテロ脂肪族;置換もしくは非置換、分岐もしくは非分岐型アシル;置換もしくは非置換、分岐もしくは非分岐型アリール;置換もしくは非置換、分岐もしくは非分岐型ヘテロアリール;−C(=O)RA;−CO2RA;−C(=O)N(RA)2または−C(RA)3であり;ここで、RAの各存在は独立に、水素、保護基、脂肪族部分、ヘテロ脂肪族部分、アシル部分;アリール部分;ヘテロアリール部分;アルコキシ;アリールオキシ;アルキルチオ;アリールチオ;アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロアリールオキシ;またはヘテロアリールチオ部分であり;
R2は、水素;環式もしくは非環式、置換もしくは非置換、分岐もしくは非分岐型脂肪族;環式もしくは非環式、置換もしくは非置換、分岐もしくは非分岐型ヘテロ脂肪族;置換もしくは非置換、分岐もしくは非分岐型アシル;置換もしくは非置換、分岐もしくは非分岐型アリール;置換もしくは非置換、分岐もしくは非分岐型ヘテロアリール;−C(=O)RB;−CO2RB;−C(=O)N(RB)2または−C(RB)3であり;ここで、RBの各存在は独立に、水素、保護基、脂肪族部分、ヘテロ脂肪族部分、アシル部分;アリール部分;ヘテロアリール部分;アルコキシ;アリールオキシ;アルキルチオ;アリールチオ;アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロアリールオキシ;またはヘテロアリールチオ部分であり;
R3は、水素;ハロゲン;環式もしくは非環式、置換もしくは非置換、分岐もしくは非分岐型脂肪族;環式もしくは非環式、置換もしくは非置換、分岐もしくは非分岐型ヘテロ脂肪族;置換もしくは非置換、分岐もしくは非分岐型アシル;置換もしくは非置換、分岐もしくは非分岐型アリール;置換もしくは非置換、分岐もしくは非分岐型ヘテロアリール;−ORC;−C(=O)RC;−CO2RC;−CN;−SCN;−SRC;−SORC;SO2RC;−NO2;−N3;−N(RC)2;−NHC(=O)RC;−NRCC(=O)N(RC)2;−OC(=O)ORC;−OC(=O)RC;−OC(=O)N(RC)2;−NRCC(=O)ORC;または−C(RC)3であり:ここで、RCの各存在は独立に、水素、保護基、脂肪族部分、ヘテロ脂肪族部分、アシル部分;アリール部分;ヘテロアリール部分;アルコキシ;アリールオキシ;アルキルチオ;アリールチオ;アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロアリールオキシ;またはヘテロアリールチオ部分であり;
R4は、置換もしくは非置換、分岐もしくは非分岐型アリール;または置換もしくは非置換、分岐もしくは非分岐型ヘテロアリールであり;
R5は、水素;ハロゲン;環式もしくは非環式、置換もしくは非置換、分岐もしくは非分岐型脂肪族;環式もしくは非環式、置換もしくは非置換、分岐もしくは非分岐型ヘテロ脂肪族;置換もしくは非置換、分岐もしくは非分岐型アシル;置換もしくは非置換、分岐もしくは非分岐型アリール;置換もしくは非置換、分岐もしくは非分岐型ヘテロアリール;−ORE;−C(=O)RE;−CO2RE;−CN;−SCN;−SRE;−SORE;SO2RE;−NO2;−N3;−N(RE)2;−NHC(=O)RE;−NREC(=O)N(RE)2;−OC(=O)ORE;−OC(=O)RE;−OC(=O)N(RE)2;−NREC(=O)ORE;または−C(RE)3であり、ここで、REの各存在は独立に、水素、保護基、脂肪族部分、ヘテロ脂肪族部分、アシル部分;アリール部分;ヘテロアリール部分;アルコキシ;アリールオキシ;アルキルチオ;アリールチオ;アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロアリールオキシ;またはヘテロアリールチオ部分である。]
およびその薬学上許容される形態を有する三重再取り込み阻害剤である。
本発明はまた、多モードの撮像法も提供する。本発明のある特定の実施形態は、複数のシグナルを測定することを含む複数の撮像様式を使用して対象または対象内の部位を撮像する方法に関する。ある特定の実施形態では、細胞上または細胞中の単一の標識から複数のシグナルが生ずる。上記で示されるように、当業者に知られたいずれの撮像様式も、本発明の撮像法のこれらの実施形態で適用可能である。
撮像様式は、標識された組成物、例えば、標識された細胞の投与中または投与後の任意の時点で実施される。例えば、撮像試験は、本発明の標識された細胞の投与中に、すなわち、特定の位置へ送達を導く補助とするために、またはその後の任意の時点に実施することができる。
第1の撮像様式と同時に、または第1の撮像様式後の任意の時点で、付加的撮像様式を実施することができる。例えば、付加的撮像様式は、第1の撮像様式の完了の約1秒、約1時間、約1日、もしくはそれより長い任意の時間の後に、またはこれらの示した時間の間の任意の時点で実施することができる。本発明のある特定の実施形態では、複数の撮像様式が並行して実施され、従って、それらは標識された細胞または薬剤の投与に続いて同時に開始される。当業者ならば、本発明によって企図される種々の撮像様式の実行に精通しているであろう。
本撮像方法のいくつかの実施形態では、同じ撮像デバイスが第1の撮像様式および第2の撮像様式を実施するために使用される。他の実施形態では、異なる撮像デバイスが異なる撮像様式を実施するために使用される。当業者ならば、本明細書に記載の撮像様式を実行するために利用可能な撮像デバイスに精通しているであろう。
本発明は、1以上の撮像様式を用いて細胞を撮像するための方法を提供する。いくつかの実施形態では、細胞は複数種の撮像剤で標識され、他の態様では、細胞は単一の標識剤で標識される。ある特定の実施形態では、単一の標識剤は多モード検出可能な薬剤である。
G.リポソームおよびデンドリマーを含んでなるコンジュゲート
別の実施形態(enmbodiment)では、本発明は、リポソームが、ドーパミン輸送体(DAT)、セロトニン輸送体(SERT)またはノルエピネフリン輸送体(NET)からなる群から選択される1以上の神経伝達物質輸送体とカップリングされている、コンジュゲートを提供する。
別の実施形態(enmbodiment)では、本発明は、デンドリマーが、ドーパミン輸送体(DAT)、セロトニン輸送体(SERT)またはノルエピネフリン輸送体(NET)からなる群から選択される1以上の神経伝達物質輸送体とカップリングされている、コンジュゲートを提供する。
デンドリマーまたはリポソーム内に治療化合物をカプセル化することにより、コンジュゲートは、前記神経伝達物質輸送体を発現する細胞に対する前記化合物の選択的送達が可能となる。
好ましい実施形態では、選択性薬剤は、三重再取り込み阻害剤、ノルアドレナリン・ドーパミン二重再取り込み阻害剤、セロトニン単独再取り込み阻害剤、ノルアドレナリン単独再取り込み阻害剤およびドーパミン単独再取り込み阻害剤からなる群から選択される。さらにより好ましい実施形態では、選択性薬剤は、一般式:
を有する化合物としてのインダトラリン、またはその薬学上活性な塩であり、式中、n、m、p、R1、R2、R3、R4およびR5は上記で定義される通りである。
リポソームおよびナノ粒子は、薬物のカプセル化に慣用されるナノコンテナの例示的形態である。リポソームは好ましくは、200ナノメートルの直径を有する。50〜150ナノメートルの間の直径を有するリポソームが好ましい。特に好ましいのは、約80ナノメートルの外径を有するリポソームまたは他ナノコンテナである。好適なタイプのリポソームは、1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グリセロール−3−ホスホコリン(POPC)、ジホスファチジルホスホコリン、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、またはコレステロールなどの天然リン脂質を、リポソーム内のDNAを安定化させるための少量(1パーセント)のジドデシルジメチル臭化アンモニウム(DDAB)などの陽イオン脂質とともに用いて製造される。
リポソームは、DNAを封入し、処方物が血液中に留まっているかまたは血液から標的細胞の細胞内コンパートメントに移行中に核酸をヌクレアーゼから保護することができる、直径200nm未満のナノ粒子または任意の他の分子ナノコンテナで置き換えることができる。また、PEG鎖などのコンジュゲーション剤を使用する代わりに、スフィンゴミエリンなどの1以上の他のポリマー物質をリポソームまたはナノコンテナの表面に結合させて、「輸送可能ペプチド」のコンジュゲーションのため、および処方物の血液からの除去を遅延させて血漿薬物動態を最適化するための足場を提供するという二重の目的を果たすこともできる。さらに、本発明は、特定の標的受容体を有する任意の細胞群または臓器群へのDNAの送達を企図する。リポソームは、肝臓、肺および脾臓などの臓器へDNAを送達するために使用可能である。
本発明のコンジュゲートの送達のために好適な他のコンテナとして、デンドリマーが含まれる。用語「デンドリマー」は、コアとそのコアから発散する分岐構造の複数のシェルを有する高分子を意味する。樹枝状担体の形状は様々であり得る。場合によっては、樹枝状担体はほぼ球状または球形の形状であってもよい。さらに、樹枝状担体は、例えば、約500ダルトン〜約200万ダルトンの分子量範囲に相当する、約15オングストローム(A)〜約250Aの範囲の直径を有し得る。デンドリマーは、種々の供給先(例えば、Dendritech、ミッドランド、ミシガン)から商業的に入手可能であり、または当業者に公知の方法により合成することもできる。樹枝状分子は、低分子量種と高分子量種に大別できる。第1のカテゴリーにはデンドリマーおよびデンドロンが含まれ、第2のカテゴリーはデンドロナイズドポリマー、高分岐ポリマー、およびブラシポリマー(ボトルブラシとも呼ばれる)を包含する。デンドリマーおよびデンドロンは、繰り返し分岐した、単分散、かつ、通常は高対称性の化合物である。デンドリマーおよびデンドロンの定義に明白な違いはない。デンドロンは通常、フォーカルポイントと呼ばれる、単一の化学介入可能な基を含む。モル質量分布の欠如のために、高分子質量デンドリマーおよびデンドロンは高分子ではあるがポリマーではない。デンドリマーの特性は、分子表面上の官能基により支配される。樹枝状足場は内部機能と外部機能を分離することから、機能性分子のデンドリマー封入により、生体材料中の活性部位の構造を模倣する構造である活性部位の孤立化が可能となる。例えば、デンドリマーは、その末端基がカルボキシル基などの親水基である場合には水溶性となり得る。
デンドリマーは一般に下記の特徴によって特性決定が可能である:(i)1以上の反応性部位を有することができ、デンドリマーの最終トポロジーを左右するような点様または有意なサイズであり得る開始コア(I);(ii)開始コアに結合した分岐状の繰り返し単位の1以上の層;(iii)デンドリマーの表面に、場合により架橋基を介して結合された陰イオン基または陽イオン基などの官能性末端基。
本明細書において企図されるデンドリマーは、リジン、またはリジン類似体構成単位含んでなり得る。用語「リジン類似体」は、構成単位の前層に結合するための単一の頂点カルボキシル基と、さらなる構成単位、遮断基、リンカーまたはアリール酸基と結合することができる2個または3個の第一アミン基を有する分子を意味する。本明細書において企図される「リジン類似体」の例はPCT/AU2007/000352に記載され、例えば、グリシル−lysである。いくつかの特定の例では、デンドリマーは、構成単位としてリジンのみかまたはリジン類似体の一タイプを含んでなる。
本明細書において企図される他のデンドリマーには、ポリアミドアミン(PAMAM)、ポリ(エーテルヒドロキシルアミン)(PEHAM)またはポリプロピレンイミン構成単位を含んでなるものが含まれる。その特定の例では、デンドリマーは、構成単位としてポリアミドアミン(PAMAM)、ポリ(エーテルヒドロキシルアミン)(PEHAM)またはポリプロピレンイミンのみを有する。
コア部分は、一構成単位に対して結合点を1つだけ含んでもよいし、または2、3もしくはそれを超える結合点を含んでいてもよく、これらは構成単位の結合のためにさらに使用されてもされなくてもよい。一般に、結合点は遊離アミノ基である。コア部分は、構成単位からなり得るか、構成単位を含んでなり得るか、構成単位から誘導され得るか、または構成単位とは異なる分子であり得る。例示的なコア部分は本発明に示され、PCT/AU2007/000352に記載されている。
リポソームおよびデンドリマーは、静脈内投与に好適な任意の医薬担体と組み合わせることができる。組成物の静脈内投与は、最小の侵襲性であるので好ましい経路である。必要であれば、他の投与経路も可能である。好適な薬学上許容される担体としては、生理食塩水、Trisバッファー、リン酸バッファー、または任意の他の水溶液が含まれる。適当な用量は、当業者に周知の手順によって確定することができる。
本発明によるコンジュゲート(cojungates)のリポソームおよびデンドリマーは、α−シヌクレインを特異的に(specificially)標的とすることができる上記の核酸をいずれも封入することができる。さらに、リポソームおよびデンドリマーはまた、パーキンソン病の治療に適切であり、かつ、神経伝達物質受容体を発現するニューロンにおいてそれらの作用を発揮する化合物も含有し得る。本発明によるデンドリマーまたはリポソームに組み込むことができる好適な薬物としては、レボドパ、ドーパミンアゴニスト、MAO−B阻害剤、アマンタジンおよび抗コリン作動薬が含まれる。
以下の実施例および図面は例示として示され、本発明を限定することは意図されない。
実施例1 標的化のバリデーション:機能
実験計画
本発明による分子の標的化を機能的に判定するために、インダトラリンとカップリングされた5HT1A受容体に標的化されたアンチセンス分子を含んでなるコンジュゲートを使用した。インダトラリンは、ドーパミン、ノルエピネフリン(norepinephrinee)、およびセロトニンの再取り込みを遮断する非選択性モノアミン輸送体阻害剤である。この分子を、インダトラリンが縫線核を標的とすることを確認するために鼻腔内投与した。2種類の異なる濃度を試験し(30および100μg/マウス)、縫線内の5−HT1A受容体が標的化されたことを機能的に判定するために、8−OH−DPAT投与後の低体温を評価した。分子の鼻腔内投与の24時間後に基礎体温を測定した。
8−ヒドロキシ−2−(ジ−n−プロピルアミノ)テトラリン(8−OH−DPAT)は、正中縫線内の細胞体樹状突起5−HT1A自己受容体を活性化することによりマウスに低体温を誘導する選択的5−HT1Aアゴニストである。このアッセイにより、縫線、および5−HT1A特異的アンチセンスを標的化できれば、8−OH−DPATにより誘導される低体温がインダトラリン(indrataline)によって遮断され得るかどうかが判定された。
30〜100μg/マウスの本発明による分子を鼻腔内投与し、24時間後に基礎体温を測定した。8−OH−DPAT 1mg/kgを腹膜内(i.p.)投与し、5分、15分、30分、60〜120分後に体温を測定した。
結果
インダトラリンで標的化されたオリゴが、単回適用の24時間後に、鼻腔経由で縫線に到達し、5−HT1Aの発現をノックダウンできることが見出された(図1参照)。両濃度とも、単回用量で8−OH−DPATにより引き起こされる体温変化を遮断することができたが、4日間の標準的な投与のための以下の実験で30μg/マウスを選択し、経時的にオリゴを蓄積させた。
実施例2 標的化のバリデーション:局在
実験計画
黒質、青斑核および縫線が標的化されたかどうかを可視化するために、蛍光団Alexa488で標識したインダトラリン−アンチセンスの脳室内投与を使用した。
ドーパミン輸送体(DAT)の発現は、黒質緻密部(SNC)のドーパミンニューロンに局在した。
ノルエピネフリン(norepinephrinee)輸送体(NETは、溶質輸送担体ファミリー6メンバー2、SLC6A2としても知られる)の発現は、青斑核(LC)のノルアドレナリン作動性ニューロンに限定され、ドーパミンまたはエピネフリンを放出するニューロン上には存在しない。
セロトニン輸送体(SERT)の発現は、主として、縫線核に局在するセロトニン作動性ニューロンに局在し、背側縫線核(DR)に高レベルである。
共局在のために、チロシンヒドロキシラーゼ(TH)とトリプトファンヒドロキシラーゼ(TPH)を選択した。THは、カテコールアミンの合成の律速段階を触媒し、SNおよびLCで高い発現を示す。TPHは、セロトニンの合成に関与し、縫線で発現される。
結果
対象とする3領域(SN、LCおよびDR)の単一平面共焦点画像を採取した。緑のインダトラリン−オリゴ−Alexa488の直接蛍光染色を行い、LCおよびSNの場合には抗TH(チロキシンヒドロキシラーゼ)で、DRには抗TPH(トリプトファンヒドロキシラーゼ)で、核染色にはDAPIで共染色した。動物を手術の1時間後および24時間後に屠殺したところ、1時間でオリゴの鮮明な染色が見られた。他の脳領域には、Alexa488の蛍光は検出されなかった。
これらの3領域の高倍率での単一平面共焦点画像は、ニューロンTH(SNおよびLC)およびTPH(DR)に共局在する分子の細胞質(cytoplasmic)染色および核内染色が陽性であったことを示した。
よって、インダトラリンとコンジュゲートされたオリゴの脳室内投与によって、動物の目的の領域、すなわち、SN、LCおよびDRだけに投与1時間後に分子の特異的標的化が見られ、標的化されたオリゴが目的領域に到達し、ニューロン中へのインターナリゼーションを受け、細胞質(cytoplasm)および核に達したという証拠が得られた。
実施例3 候補選択
実験計画
合計7つの前候補分子をRNアーゼHアッセイにより選択した。このアッセイの目的は、これらの7つのオリゴヌクレオチドのいずれがmRNAの切断を触媒するこの非特異的エンドヌクレアーゼの活性を促進するかを判定することであった。
mRNAのノックダウンをin vivoで判定するために、各分析分子につき合計5個体の動物でin situハイブリダイゼーションを行った。これら7つの前候補分子は、連続何週間か投与を受ける2群に分けた。合計30μg/マウス/日を連続4日間投与した。最後の投与から24時間後に動物を屠殺した。
黒質(SNc/VTA)および線条体のα−シヌクレインタンパク質レベルをウエスタンブロットによって分析した。マウスを1mg/kg/日のPD−1233およびPD−1233と同じリガンドを有するナンセンス配列で連続4日間鼻腔内処置した。最後の投与から24時間後、3日後および7日後に動物を屠殺した。
結果
図2は、RNアーゼHアッセイの結果を示す。
選択の際には下記の判定基準を用いた:図2に示される選択候補、5種(マウス、ラット、イヌ、サルおよびヒト)間で94〜100%の相同性、他のシヌクレイン(γおよびβ)との相同性が無い、およびRNアーゼH活性の誘導。
in vivo研究を行うため、オリゴヌクレオチドの最終化学を図3に示されるスキームに記載のように選択した。
前候補として選択された群1の特徴を表1に示す。
in situハイブリダイゼーションデータは、ビヒクルに比べて候補1234による効果的なノックダウンを示す黒質のα−synレベルの低下、ならびに候補1233および1234による背側縫線核のα−synレベルの低下を示した。
図4は、ビヒクルに対するパーセンテージとして計算される、嗅球(BO)、黒質(SNc/VTA)、背側縫線核(DR)および正中縫線(MnR)のα−シヌクレイン(α−syn)のmRNAレベルの定量を示す。π ナンセンス(IND−ns−ASO)に対してp<0.05、ビヒクルに対して*p<0.05、**p<0.01 vs ビヒクル(二元配置ANOVA)。
候補1232、1233および1234は、連続4日間30μg/マウス/日の用量で、他の脳領域でのレベルに影響を及ぼさずに、標的領域でα−シヌクレインのmRNAレベルを低下させることができたことが見出された。最大の低下は、前候補1234ではSN(黒質)に、前候補1233では縫線に見られた。他の脳領域は影響を受けていなかった。
図8は、β−アクチンおよびチロシンヒドロキシラーゼ(TH)に対して標準化したα−シヌクレインの黒質SNc/VTAレベル、ならびにβ−アクチンに対して標準化したTHのレベルを示す。1233は、最後の投与から24時間後のα−シヌクレインレベル、および3日後に回復されたレベルに有意な低下(p<0.05)をもたらした。
図9は、β−アクチンおよびチロシンヒドロキシラーゼ(TH)に対して標準化したα−シヌクレインの線条体レベル、ならびにβ−アクチンに対して標準化したTHのレベルを示す。1233は、最後の投与から24時間後のα−シヌクレインレベル、および3日後に回復されたレベルに有意な低下(p<0.05)をもたらした。
実施例4:毒性
実験計画
また、従前にアッセイした分子が、ヒトPBMC(末梢血単核細胞)においてIL−1β、IL−2、IL−6、IL−10、IFN−α、IFNγ、およびTNFα分泌を誘導できたかどうかも分析した。化合物を片対数6点希釈液(10、3.16、1.0、0.32、0.1、および0.03μM濃度)として試験した。PBMCに及ぼす化合物の効果は、アラマーブルー細胞傷害性プレートランで並行して3反復で試験した。
結果
表2は、PBMCにおいて免疫応答を誘導することができた分子は無かったことを示す。
実施例5:さらなる候補選択
実験計画
最後の選択は、候補配列のヒトを含む数種との相補性を評価することにより行った。さらなる特性評価のために考慮した種はマウス、サルおよびヒトであった。BLAST分析は、ヒトおよびマウスのゲノムおよびトランスクリプトームデータベースを使用することにより、また、サルのref.seq.RNAデータベースを使用することにより行った。
結果
3つの前候補は総て、ヒトおよびサルα−シヌクレインと100%相同であることが見出された。
特に、前候補分子1234は、マウスα−シヌクレイン配列に関してnt2にミスマッチがあったが、これはその活性に影響を及ぼさなかった。前候補分子1232および1233は、他のいずれのヒト遺伝子とも相同性は無かった。前候補1234は、2以上の遺伝子と若干の相同性があった。シンタフィリンに対する推定されるオフターゲット効果には特に注意する必要があった。この遺伝子はヒトの脳およびまたSNで発現が高い。
図5は、孤発性パーキンソン病(PD)患者から得られた死後脳サンプルからの中央および外側黒質(substantin nigras)(SN)の分析を示す。PDにおいて、SNは広範囲の組織損傷を呈する。
図6は、3つの種のシンタフィリン配列のアラインメントを示す。ヒトのα−シヌクレインmRNAと共通の候補1234の15ntを四角で示す)。このアラインメントは、マウス配列との相同性がないこと、およびサル配列にはnt10に内部ミスマッチがあり、サルではRNアーゼH活性がおそらく低下していることを示した。
これらのデータを総て考慮して、本発明の発明者らは、最良の候補として、図7に示されるように配列:cuccCTCCACTGTCuucuを有する分子#1233(以下、NLF−PD−1233またはPD−1233とも呼ぶ)を選択した。
実施例6:副次的薬力学 NLF−PD−1233によるサイトカイン誘導能
実験計画
ヒト末梢血単核細胞(PBMC)を用いて、NLF−PD−1233(1233)の、IL−1β、IL−2、IL−6、IL−10、IFNγおよびTNFαの分泌を誘導する能力を検討した。
NLF−PD−1233は、0.03、0.1、0.3、1、3および10μMの濃度で試験した。サイトカイン分泌は、Luminexマルチプレックスキットを用いて測定した。コンカナバリンA(30mg/ml)を増殖参照化合物として使用した。
結果
NLF−PD−1233は最大10μMの濃度で、ヒトPBMCからのIL−1β、IL−2、IL−6、IL−10、IFNγまたはTNFα放出を誘導しなかった。
実施例7:安全性薬理学 NLF−PD−1233の中枢神経系(CNS)に及ぼす潜在的影響
実験計画
NLF−PD−1233のCNSに及ぼす潜在的影響は、マウスにおいてFunctional Observational Battery(FOB)(Irwinテスト)(非GLP)で評価した。
6個体の雄CD−1マウスの群に、単回用量0.3、1.0または3.0mg/kgのNLF−PD−1233またはビヒクルを、目盛り付きピペットを用いて各鼻孔に10μlを投与することにより、総量20μl/動物で鼻腔内に与えた。
動物を、Irwinの方法(Irwin S 1968 Psychopharmacologia (Berl.) 13: 222-257)に基づき、一般行動、自律神経および運動への影響に関して観察した。体温も測定した。
観察は投与の30、60、120、240〜360分後に行った。さらに、各マウスの直腸温度を投与前と各観察の直後に測定した。動物を投与後さらに7日維持し、その間、毎日、毒性の総体的徴候および死亡率を観察した。
結果
0.3、1および3mg/kgの用量レベルでのNLF−PD−1233の鼻腔内投与は、ビヒクル対照群に比べて、雄マウスに顕著な行動的、生理学的または体温の変化をもたらさなかった。
従って、NOEL(無影響量(no observed effect level))は>3mg/kgであると考えられた。
実施例8:薬物動態
実験計画
ハイブリダイゼーションアッセイ: NLF−PD−1233を検出するために、蛍光標識ペプチド核酸(PNA)プローブを用いた競合的ハイブリダイゼーションアッセイを開発した。
蛍光検出を用いたHPLC: 蛍光検出を用いた陰イオン交換(AEX)−HPLC法を使用し、HPLCに注入する前に蛍光(florescence)標識PNAプローブ(5’−Atto425−OO−GAAGACAGTGGAGGGA−3’、配列番号19)とのハイブリダイゼーションにより血液および組織中のNLF−PD−1233を検出した。NLF−PD−1233のODNは、血漿中で不安定であることが知られている非修飾DNAであるので、このODNを、その配列の3’末端に反転dTを導入することにより修飾した。NLF−PD−1233の定量下限(lower limit of quantification)(LLOQ)は、血漿中では0.6ng/ml、組織中では1.5ng/gであることが示された。
結果
マウスへのNLF−PD−1233の静脈内投与後の血漿濃度の測定
非修飾NLF−PD−1233および3’保護誘導体をマウスに静脈内投与した。血漿濃度をハイブリダイゼーションアッセイにより測定した。
非修飾NLF−PD−1233の血漿濃度は、マウスへの静脈内投与後に1時間検出能できた(図10参照)。3’保護NLF−PD−1233は、静脈内投与後に少なくとも24時間、マウスの循環中に検出できた。
これらのデータは、非修飾NLF−PD−1233は、3’保護誘導体とは対照的に、血中でヌクレアーゼにより急速に分解されることを示す。
カニクイザルへのNLF−PD−1233の静脈内投与後の血中濃度の測定
NLF−PD−1233を、サルに0.3および1mg/kgで静脈内投与し、血中濃度をハイブリダイゼーションアッセイにより測定した。
NLF−PD−1233濃度の急速な低下が見られ、投与1時間後には親化合物は検出できなかった(図11参照)。いくつかの代謝産物のピークが検出され、そのパターンは3’−エキソヌクレアーゼ消化に典型的なものであった。
カニクイザルへのNLF−PD−1233の鼻腔内投与後のCSF濃度の測定
NLF−PD−1233をサルに、0.3および3mg/kgの単回用量ならびに14日間にわたって毎日1mg/kgを鼻腔内投与した。CSFおよび血中濃度をハイブリダイゼーションアッセイにより測定した。
CSF(図12A)および血液(図12B)におけるNLF−PD−1233の濃度は用量依存的であったが、用量に比例しなかった。CSF(脳脊髄液)のCmaxはおよそ100pg/mL(0.3mg/kg)および400pg/mL(3mg/kg)であり、血中のCmaxはおよそ60pg/mL(0.3mg/kg)およびおよそ3800pg/mL(3mg/kg)であった。血中のNLF−PD−1233濃度の増大は、CSF中の増大よりも強かった(図12参照)。
14日間にわたって1mg/kgを複数回鼻腔内投与した後には、CSFの投与前サンプルにすでに低濃度が見られた。CSFのCmaxはおよそ400pg/mLであった。このCmaxは3mg/kgの単回投与に匹敵するものであり、多回投与期間の蓄積効果により説明でき、投与後48時間の時点で最低濃度はなおおよそ150pg/mLであった。血中では、Cmaxはおよそ300pg/mLであったが、蓄積効果は見られなかった(図12)。
分布
1mg/kgの単回鼻腔内投与後のNLF−PD−1233の組織分布をマウスで調べた(各時点につき3個体の動物)。
脳、肝臓、腎臓、脾臓、肺、胃および血漿のサンプルを投与15分、1時間、1、6時間および24時間後に採取した。
NLF−PD−1233の血漿および組織濃度は、蛍光検出を用いるAEX−HPLCを用いて測定した。
NLF−1233の最高濃度は投与1時間および6時間後に胃で見られたが、各動物間で変動が大きかった(表3)。
投与24時間後、分析した総ての組織中での濃度は、このアッセイの検出限界に近いか下回った。胃と肝臓のみに(1個体のみ)有意な量のNLF−PD−1233が検出できた(表3)。
外れ値は計算から除かなかった。標準偏差(SD)は適用無し(not applicable)(n.a.)に設定し、値は、検出限界を超える値の数が少なかったために計算できなかった。
親化合物の濃度が高かった総ての組織サンプルで、NLF−PD−1233の代謝産物が見られた。親化合物が低濃度の組織でも代謝産物は存在するが、検出限界を下回ると推測することができる。見られたピークパターンは、NFL−1233の分解が主として3’−エキソヌクレアーゼにより誘導されることを示していた。
15分の時点で、1個体の動物を除き、NLF−PD−1233に対する有意な血漿暴露は見られなかった。
NLF−PD−1233は、投与1時間および6時間後におよそ1ng/gの濃度で脳に検出された。脳組織は完全にホモジナイズしたので、空間分布に関する結論は下すことができなかった。
鼻腔内送達後の動物間の全体的な変動は極めて大きいことが判明した。
マウスにおいて(各時点につき3個体の動物)、1mg/kgの単回静脈内投与後の非修飾NLF−PD−1233および3’保護誘導体の組織分布を調べた。投与15分、1時間、6時間および24時間後に、脳、肝臓、脾臓、腎臓および血漿のサンプルを採取し手分析した。
マウスの静脈内投与15分後に、低組織濃度の親化合物である非修飾NLF−PD−1233が測定された。最高濃度の非修飾NLF−PD−1233は、肝臓で見られた。NLF−PD−1233はまた脳にも低濃度で存在した(図13)。
非修飾NLF−PD−1233と代謝産物を合わせた組織濃度は、親化合物単独よりもやや高く、最高濃度は肝臓および腎臓で測定された(図14)。
3’修飾NLF−PD−1233の組織濃度は、非修飾NLF−PD−1233の場合よりも高く、3’エキソヌクレアーゼに対する安定化が親化合物の分解を低減することを示している(図15)。
NLF−PD−1233の3’保護誘導体と代謝産物を合わせた組織濃度は、親化合物単独に比べてやや高いに過ぎなかった(図16)。
実施例9 機能アッセイ
本発明によるコンジュゲートが中枢神経系においてドーパミン放出を増大させ得るかどうかを判定するために、ベラトリジン(ナトリウムチャネルアクチベーター)に応答するドーパミンのレベルまたはノミフェンシン(ドーパミン再取り込み阻害剤)に応答する細胞外ドーパミンのレベルを、コンジュゲート1233で処置したマウスまたは対照マウスにおいて測定した。
実験計画
微小透析in vivoアッセイを行った。動物をビヒクル(PBS)または1233で処置した(連続4日、1mg/kg/日)。ベラトリジンにより誘発されるドーパミン放出および細胞外ドーパミンをHPLCにより測定した。
結果
ビヒクル(PBS)または1233で処置した動物における、HPLCにより測定されるベラトリジン誘発ドーパミン放出の微小透析in vivoアッセイは、NLF−PD−1233処置によるα−シヌクレインレベルの低下の後の薬理学的刺激後にドーパミン放出が有意に増加することを示した(図17参照)。
ビヒクル(PBS)または1233で処置された動物においてHPLCにより測定された細胞外ドーパミンの微小透析in vivoアッセイは、薬理学的刺激(ノミフェンシン、ノルエピネフリン−ドーパミン再取り込み阻害剤)後の放出増加、およびNLF−PD−1233による処置後のドーパミンレベルの有意な増加を示した(図18参照)。