以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態のみには限定されない。なお、本明細書において「(メタ)アクリレート」や「(メタ)アクリル」とは、アクリレートおよびメタアクリレートの総称である。(メタ)アクリル等の(メタ)を含む化合物等も同様に、名称中に「メタ」を有する化合物と「メタ」を有さない化合物の総称である。
また、本明細書において、範囲を示す「X〜Y」は「X以上Y以下」を意味する。また、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20〜25℃)/相対湿度40〜50%の条件で測定する。
[粘着剤組成物]
本発明の一側面は、100質量部の質量平均分子量が100万以上180万以下の分子量である(メタ)アクリル系重合体、1〜20質量部のアニオン重合性活性エネルギー線硬化型化合物、0.05〜4質量部のアニオン系光重合開始剤および0.05〜0.5質量部のシランカップリング剤を含む粘着剤組成物である。かような組成の粘着剤組成物は、ポットライフが長く作業性に優れる。また、従来の粘着剤組成物では、実用粘着性能に達するまで少なくとも半日程度の熟成を必要としていたが、本発明によれば、1時間以内の熟成でも実用粘着性能を得られるため、生産性に優れる。さらに、本発明に係る粘着剤組成物により形成された粘着剤層は耐久性にも優れる。
従って、本発明の粘着剤組成物は、各種被着体の接着に有効であり、本発明の粘着剤組成物から形成される粘着剤層は、特に光学部材、偏光板や粘着シートの粘着剤層として好適に使用できる。
<(メタ)アクリル系重合体(A)>
本発明の粘着剤組成物は、(メタ)アクリル系重合体(本明細書においては、「(メタ)アクリル系重合体(A)」、または単に「成分(A)」とも称する。)を含む。
本発明における(メタ)アクリル系重合体としては、カルボキシル基、ヒドロキシ基、アミノ基などの架橋点を有するものが用いられる。かような(メタ)アクリル系重合体としては特に制限されるものではなく、従来粘着剤組成物に用いられてきたものから適宜選択して用いることができる。特に、下記の(メタ)アクリル酸エステルモノマー(a−1)と、カルボキシル基含有モノマー(a−2)およびヒドロキシ基含有(メタ)アクリルモノマー(a−3)の少なくとも一方と、からなる(メタ)アクリル系重合体が好ましく用いられる。
((メタ)アクリル酸エステルモノマー(a−1))
(メタ)アクリル酸エステルモノマー(本明細書においては、「(メタ)アクリル酸エステルモノマー(a−1)」、または単に「成分(a−1)」とも称する。)は、分子中にカルボキシル基およびヒドロキシ基を有さない(メタ)アクリル酸のエステルである。
(メタ)アクリル酸エステルモノマーの具体例としては、以下に制限されないが、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−ヘプチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、tert−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−n−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルジグリコール(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシメチル(メタ)アクリレート、メチル−3−メトキシ(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、2−(2−メトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−(2−ブトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、4−ブチルフェニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、2,4,5−テトラメチルフェニル(メタ)アクリレート、フェノキシメチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、ポリプロピレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ペンタデカフルオロオキシエチル(メタ)アクリレート、2−クロロエチル(メタ)アクリレート、2,3−ジブロモプロピル(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは、単独で使用してもよいし2種以上組み合わせて使用してもよい。
これらのなかでも、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートが好ましく、メチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレートがより好ましい。
(カルボキシル基含有モノマー(a−2))
カルボキシル基含有モノマー(本明細書においては、「カルボキシル基含有モノマー(a−2)」、または単に「成分(a−2)」とも称する。)は、分子中に少なくとも1個のカルボキシル基を有する不飽和モノマーである。カルボキシル基含有モノマーの具体例としては、以下に制限されないが、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、無水フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、およびオレイン酸などが挙げられる。これらは、単独で使用してもよいし2種以上組み合わせて使用してもよい。
これらのうち、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、無水フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、無水イタコン酸が好ましく、(メタ)アクリル酸がより好ましい。
(ヒドロキシ基含有(メタ)アクリルモノマー(a−3))
ヒドロキシ基含有(メタ)アクリルモノマー(本明細書においては、「ヒドロキシ基含有(メタ)アクリルモノマー(a−3)」、または単に「成分(a−3)」とも称する。)は、分子中にヒドロキシ基を有するアクリルモノマーである。ヒドロキシ基含有(メタ)アクリルモノマーの具体例としては、以下に制限されないが、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート等が挙げられ、さらに、アルキルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート等のグリシジル基含有化合物と、(メタ)アクリル酸との付加反応により得られる化合物等が挙げられる。これらは、単独で使用してもよいし2種以上組み合わせて使用してもよい。
これらのなかでも、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、シクロヘキサンジメタノールモノアクリレートが好ましく、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、N−2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドがより好ましい。
(その他のモノマー)
本発明の(メタ)アクリル系重合体(A)には、上記成分(a−1)〜(a−3)以外にも、これらと共重合可能なその他のモノマーをさらに用いることもできる。具体的な例としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基を有するアクリルモノマー;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−tert−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、メタクリルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド(メタ)アクリレート等のアミノ基を有するアクリルモノマー;(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−メチレンビス(メタ)アクリルアミド等のアミド基を有するアクリルモノマー;2−メタクリロイルオキシエチルジフェニルホスファート(メタ)アクリレート、トリメタクリロイルオキシエチルホスファート(メタ)アクリレート、トリアクリロイルオキシエチルホスファート(メタ)アクリレート等のリン酸基を有するアクリルモノマー;スルホプロピル(メタ)アクリレートナトリウム、2−スルホエチル(メタ)アクリレートナトリウム、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸基を有するアクリルモノマー;ウレタン(メタ)アクリレート等のウレタン基を有するアクリルモノマー;p−tert−ブチルフェニル(メタ)アクリレート、o−ビフェニル(メタ)アクリレート等のフェニル基を有するアクリルビニルモノマー;2−アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエチル)シラン、ビニルトリアセチルシラン、メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等のシラン基を有するビニルモニマー;スチレン、クロロスチレン、α―メチルスチレン、ビニルトルエン、塩化ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、アクリロニトリル、ビニルピリジン等が挙げられる。これらその他のモノマーは、単独で使用してもよいし2種以上組み合わせて使用してもよい。
本発明においては、(メタ)アクリル系重合体(A)が、90〜99.5質量部の(メタ)アクリル酸エステルモノマー(a−1)と、0.5〜10質量部のカルボキシル基含有モノマー(a−2)およびヒドロキシ基含有(メタ)アクリルモノマー(a−3)の少なくとも一方とからなる(ただし、該(メタ)アクリル酸エステルモノマー、該カルボキシル基含有モノマーおよび該ヒドロキシ基含有(メタ)アクリルモノマーの合計量は100質量部である)ことが好ましい。かような組成の(メタ)アクリル系重合体(A)は、優れた粘着性を示す。この観点より、(メタ)アクリル系重合体(A)は、97〜99.5質量部の(メタ)アクリル酸エステルモノマー(a−1)と、0.5〜3質量部のカルボキシル基含有モノマー(a−2)およびヒドロキシ基含有(メタ)アクリルモノマー(a−3)の少なくとも一方とからなる(ただし、該(メタ)アクリル酸エステルモノマー、該カルボキシル基含有モノマーおよび該ヒドロキシ基含有(メタ)アクリルモノマーの合計量は100質量部である)ことがより好ましい。
本発明においては、また、(メタ)アクリル系重合体(A)中に含まれるモノマーが、(メタ)アクリル酸エステルモノマー(a−1)および前記ヒドロキシ基含有(メタ)アクリルモノマー(a−3)の合計量が99.8質量部以上である(ただし、該(メタ)アクリル酸エステルモノマー、該カルボキシル基含有モノマーおよび該ヒドロキシ基含有(メタ)アクリルモノマーの合計量は100質量部である)ことが好ましい。かような組成のアクリル系重合体(A)は、金属と反応し難い(メタ)アクリル酸エステルモノマー(a−1)およびヒドロキシ基含有(メタ)アクリル系モノマー(a−3)が分子内の大部分を構成することより、優れた耐金属腐食性を有することができる。
成分(A)の製造方法は、特に制限されず、重合開始剤を使用する溶液重合法、乳化重合法、懸濁重合法、逆相懸濁重合法、薄膜重合法、噴霧重合法など従来公知の方法を用いることができる。重合制御の方法としては、断熱重合法、温度制御重合法、等温重合法などが挙げられる。また、重合開始剤により重合を開始させる方法の他に、放射線、電子線、紫外線等を照射して重合を開始させる方法を採用することもできる。なかでも重合開始剤を使用する溶液重合法が、分子量の調節が容易であり、また不純物も少なくできるために好ましい。例えば、溶剤として酢酸エチル、トルエン、メチルエチルケトン等を用い、モノマーの合計量100質量部に対して、重合開始剤を好ましくは0.01〜0.50質量部を添加し、窒素雰囲気下で、例えば反応温度60〜90℃で、3〜10時間反応させることで得られる。前記重合開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、アゾビスシアノ吉草酸等のアゾ化合物;tert−ブチルパーオキシピバレート、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−tert−ブチルパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、tert−ブチルハイドロパーオキシド等の有機過酸化物;過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の無機過酸化物が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし2種以上併用してもよい。
成分(A)の質量平均分子量は、100万〜180万であり、好ましくは120万〜160万である。質量平均分子量が100万以上であることにより、粘着剤層の耐久性を高めることができる。一方、質量平均分子量が180万以下であることにより(メタ)アクリル系重合体(A)の生産性が向上する。なお、本発明において、質量平均分子量は、実施例に記載のゲル浸透クロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算の値を採用するものとする。
上記成分(A)は、単独で使用してもよいし2種以上を組み合わせて使用してもよい。
<アニオン重合性活性エネルギー線硬化型化合物(B)>
本発明の粘着剤組成物は、アニオン重合性活性エネルギー線硬化型化合物(本明細書においては、「アニオン重合性活性エネルギー線硬化型化合物(B)」、または単に「成分(B)」とも称する。)を含む。
本発明の粘着剤組成物は、後述の粘着剤組成物に対する光照射工程において、後述のアニオン系光重合開始剤(C)により開始されるアニオン重合性活性エネルギー線硬化型化合物(B)の重合反応によって硬化されると考えられる。本願の粘着剤組成物により長いポットライフが得られる理由は、上記重合反応は光照射工程を経て開始されることより、従来のイソシアネート系硬化剤を用いた熱架橋性粘着剤組成物のように、硬化処理前に意図せぬ架橋反応が生じないからであると推測している。また、短い熟成時間が得られる理由は、上記重合反応の進行が、従来のイソシアネート系硬化剤による架橋反応やイソシアヌレート構造を有する活性エネルギー線硬化型化合物による硬化反応と比較して格段に速いからであると推測している。なお、上記メカニズムは推測に基づくものであり、その正誤が本発明の技術範囲に影響を及ぼすものではない。
アニオン重合性活性エネルギー線硬化型化合物(B)は、アニオン重合性の重合性官能基(アニオン重合性官能基)を有する活性エネルギー線硬化型化合物である。アニオン重合性官能基としては、たとえばエポキシ化合物、オキセタン化合物、(メタ)アクリレート系オリゴマー、アルコキシシラン等の加水分解性シリル基を有する化合物、またはテトラカルボン酸無水物等の酸無水物基を有する化合物等が挙げられる。なかでも、反応速度の観点から、エポキシ化合物またはオキセタン化合物であることがより好ましく、エポキシ化合物であることがさらに好ましい。
上記アニオン重合性活性エネルギー線硬化型化合物(B)は、単官能の化合物であっても、多官能の化合物であってもよい。多官能の化合物は効率的に架橋可能であることから好ましい。また、アニオン重合性活性エネルギー線硬化型化合物(B)は、1種のアニオン重合性官能基を有していてもよく、2種以上のアニオン重合性官能基を有していてもよい。多官能の化合物としては、反応速度の観点から、多官能エポキシ化合物または多官能オキセタン化合物であることがより好ましく、エポキシ化合物であることがさらに好ましい。
エポキシ化合物としては、たとえば、脂環式エポキシ化合物、芳香族エポキシ化合物、水素化エポキシ化合物、脂肪族エポキシ化合物などが挙げられる。
脂環式エポキシ化合物は、脂環式環に直接結合したエポキシ基を分子内に少なくとも1個有する化合物である。たとえば、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル 3,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル 3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル) アジペート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル) アジペート、ジエチレングリコールビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチルエーテル)、エチレングリコールビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、ジシクロペンタジエンジメタノールジグリシジルエーテル等が挙げられる。なかでも3,4−エポキシシクロヘキシルメチル 3,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートおよびジシクロペンタジエンジメタノールジグリシジルエーテルが好ましい。市販品としては、たとえば株式会社ダイセル製のセロキサイド(登録商標)2012P、株式会社ADEKA製のアデカレジン(登録商標)EP−4088S等が挙げられる。
芳香族エポキシ化合物は、分子内に芳香族環とエポキシ基を有する化合物である。たとえば、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェールFのジグリシジルエーテル、ビスフェノールSのジグリシジルエーテルのようなビスフェノール型エポキシ化合物又はそのオリゴマー;フェノールノボラックエポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂、ヒドロキシベンズアルデヒドフェノールノボラックエポキシ樹脂のようなノボラック型のエポキシ樹脂;2,2’,4,4’−テトラヒドロキシジフェニルメタンのグリシジルエーテル、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノンのグリシジルエーテルのような多官能型のエポキシ化合物;エポキシ化ポリビニルフェノールのような多官能型のエポキシ樹脂等が挙げられる。さらに、たとえば1,3-ビス(オキシラニルメトキシ)ベンゼン、テレフタル酸ビス[(オキシラニル)メチル]およびフタル酸ビス(オキシラニルメチル)等が挙げられる。なかでも1,3-ビス(オキシラニルメトキシ)ベンゼンが好ましい。市販品としては、たとえばナガセケムテックス株式会社製のデナコール(登録商標)EX−201、EX−711、EX−721、EM−150、共栄化学株式会社製のエポライト(商標)3002(N)等が挙げられる。
水素化エポキシ化合物は、芳香族エポキシ化合物の核水添物が水素化エポキシ化合物となる。これらは、対応する芳香族エポキシ化合物の原料である芳香族ポリヒドロキシ化合物、典型的にはビスフェノール類に対し、触媒の存在下及び加圧下で選択的に水素化反応を行うことにより得られる多価アルコール、典型的には水添ビスフェノール類を原料とし、これにエピクロロヒドリンを反応させてクロロヒドリンエーテルとし、さらにそれをアルカリで分子内閉環させる方法によって製造できる。たとえば、2,2'−[(1−メチルエチリデン)ビス(4,1−シクロヘキサンジイルオキシメチレン)]ビスオキシラン等が挙げられる。なかでも2,2'−[(1−メチルエチリデン)ビス(4,1−シクロヘキサンジイルオキシメチレン)]ビスオキシランが好ましい。市販品としては、たとえばナガセケムテックス株式会社製のデナコール(登録商標)EX−252、共栄化学株式会社製のエポライト(商標)4000等が挙げられる。
脂肪族エポキシ化合物には、脂肪族多価アルコール又はそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテルがある。これらの例としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセリロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、およびエチレングリコールや、プロピレングリコール、グリセリンのような脂肪族多価アルコールに1種又は2種以上のアルキレンオキサイド(エチレンオキサイドやプロピレンオキサイド)を付加することにより得られる、ポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル等が挙げられる。なかでもネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルが好ましい。市販品としては、たとえばナガセケムテックス株式会社製のデナコール(登録商標)EX−211、EX−212、EX−313、EX−314、EX−411、EX−421、EX−512、EX−521、EX−611、EX−612、EX−614、EX−614B、EX−622、EX−810、EX−811、EX−850、EX−851、EX−821、EX−830、EX−832、EX−841、EX−861、EX−911、EX−941、EX−920、共栄化学株式会社製のエポライト(商標)40E、100E、200E、400E、70P、200P、400P、1500NP、1600、80MF、100MF等が挙げられる。
本発明では、アニオン系光重合開始剤から生成する塩基との反応性の観点から、エポキシ化合物は、分子内に少なくとも2個のエポキシ基を有することが好ましく、さらにそのエポキシ基は、グリシジルオキシ基として存在することが好ましい。また、耐候性や屈折率などの観点から、分子内に芳香環を有しないエポキシ化合物を用いることがより好ましい。すなわち、上に掲げたエポキシ化合物のなかでも、水素化エポキシ化合物及び脂肪族エポキシ化合物がより好ましい。
本発明で用いるエポキシ化合物は、30〜3,000g/当量、さらに50〜1,500g/当量の範囲のエポキシ当量を有することが好ましい。そのエポキシ当量があまり小さいと、硬化後の粘着剤層の可撓性が低下したり、偏光子と透明樹脂フィルムの接着強度が低下したりする可能性がある。一方、そのエポキシ当量があまり大きいと、他の成分との相溶性が低下する可能性がある。なお、エポキシ当量は、エポキシ基1個あたりのエポキシ化合物の分子量により定義される。
オキセタン化合物としては、たとえば3―エチル―3―ヒドロキシメチルオキセタン(オキセタンアルコール)、3−エチル−3−(4−ヒドロキシブチル)オキシメチル−オキセタン、2―エチルヘキシルオキセタン、3−エチル−3−フェノキシメチルオキセタン、3−エチル−3−シクロヘキシルオキシメチルオキセタン、3−メタクリルオキシメチル−3−エチルオキセタン、3−エチル−3{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}オキセタン、キシリレンビスオキセタン、(4,4’−ビス[3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]ビフェニル)、ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メチル]イソフタレート)、ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メチル]テレフタレート)、オキセタニルシリケート、フェノールノボラックオキセタン等が挙げられる。なかでも3−エチル−3{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}オキセタンが好ましい。市販品としては、たとえば東亞合成株式会社製のOXT−101、OXT−121、OXT−211、OXT−212、OXT−213、OXT−221、宇部興産株式会社製のEternacoll(登録商標)EHO、HBOX、OXMA、OXBP、OXIPA、OXTP等が挙げられる。
本発明では、アニオン系光重合開始剤から生成する塩基との反応性の観点から、オキセタン化合物は、分子内に少なくとも2個のオキセタン基を有することが好ましい。
(メタ)アクリレート系オリゴマーとしては、たとえばネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート変性トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ステアリン酸変性ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、オキサイド変性グリセロールトリ(メタ)アクリレートまたはオキサイド変性ビスフェノール(メタ)アクリレート等が挙げられる。さらに、(メタ)アクリレート系オリゴマーとしては、エチレン性不飽和基含有ポリエステルデンドリマー等が挙げられる。
加水分解性シリル基を有する化合物としては、たとえばアルコキシシラン、ビス(メチルジメトキシシリル)ポリプロピレングリコール、ビス(メチルジメトキシシリル)ポリイソブチレン、又はアルコキシシリル基含有(メタ)アクリレート等が挙げられる。上記アルコキシシランとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、トリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、トリエトキシシランまたはエチルトリエトキシシラン等が挙げられる。
酸無水物基を有する化合物としては、たとえばビシクロ[2,2,2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、エチレンジアミンテトラ酢酸二無水物、ジエチレントリアミンペンタ酢酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、無水ピロメリット酸等のテトラカルボン酸、又は(メタ)アクリル酸エステル等の重合性不飽和基含有化合物と無水マレイン酸との共重合体等が挙げられる。
また、本発明の粘着剤組成物は、イソシアヌレート構造を有する活性エネルギー線硬化型化合物を実質的に含有しないことが好ましい。これより、成分(B)は、イソシアヌレート構造を有しないアニオン重合性活性エネルギー線硬化型化合物であることが好ましい。イソシアネート基は−N=C=Oで表わされる基である。イソシアヌレート構造とは、イソシアネートの三量化反応によって生じる、下記式(1)で示される構造をいう。
イソシアヌレート構造を有しない成分(B)を用いることで、より短い熟成時間を得ることができる。これは、従来の粘着剤組成物のようなイソシアヌレート構造を有する活性エネルギー線硬化型化合物に起因する、進行が遅い重合反応が生じないからであると推測している。
「イソシアヌレート構造を有しないアニオン重合性活性エネルギー線硬化型化合物」であることは、公知の分析方法によって確認することができる。たとえば、FT−IR測定におけるイソシアヌレート環部位のカルボニルの吸収スペクトルと分子内の他の部位の吸収スペクトルとが重複しない場合は、イソシアヌレート環部位のカルボニルの1690〜1700cm−1の吸収を有さないことによって確認することができる。
上記成分(B)は、単独で使用してもよいし2種以上を組み合わせて使用してもよい。
成分(B)の配合量は、成分(A)100質量部に対して1〜20質量部(固形分比)である。成分(B)の配合量が1質量部以上であると、重合反応が十分に進行する。これより密着性、被着体汚染性およびリワーク性に優れ、粘着剤層の耐久性が向上する。20質量部以下であると、重合反応が過度に進行することなく、高温保存時における偏光子の収縮に追従することができる。これより耐光漏れ性に優れる。成分(B)の配合量は、好ましくは2〜15質量部(固形分比)であり、より好ましくは3〜10質量部(固形分比)である。
<アニオン系光重合開始剤(C)>
本発明の粘着剤組成物は、アニオン系光重合開始剤(本明細書においては、「アニオン重合系光重合開始剤(C)」、または単に「成分(C)」とも称する。)を含む。
アニオン系光重合開始剤(C)を使用することにより長いポットライフおよび短い熟成時間が得られる理由は、前述のアニオン重合性活性エネルギー線硬化型化合物(B)の説明中にまとめて記載している。
本発明に係るアニオン系光重合開始剤(C)は、光が照射されると活性化し、塩基を発生する。なかでも、前述のアニオン重合性活性エネルギー線硬化性化合物の好ましい態様であるエポキシ化合物またはオキタセン化合物との反応性より、光が照射されると活性化し、アミンを発生するものが好ましい。発生するアミンとしては、特に限定されるものではないが、たとえばジエチルアミン、ピペリジン、イミダゾールまたはビグアニド等が挙げられる。
本発明にて用いることができるアニオン系光重合開始剤(C)は、たとえば分子中にオルトニトロベンジル構造を有するオルトニトロベンジル化合物、(3,5−ジメトキシベンジルオキシ)カルボニル構造を有する(3,5−ジメトキシベンジルオキシ)カルボニル化合物、アミロキシイミノ構造を有するアミロキシイミノ化合物、ジヒドロピリジン構造を有するジヒドロピリジン化合物、ケトプロフェン構造を有するケトプロフェン化合物、クマル酸アミド構造を有するクマル酸アミド化合物、カルバメート構造を有するカルバメート化合物、α−アミノケトン化合物、4級アンモニウム化合物、O−アシルオキシム化合物、アミノシクロプロペノン化合物等が挙げられる。分子中にこれらの構造が1つのみ含まれていても、複数含まれていてもよい。ここで、カルバメート構造とは、カルバミン酸NH2COOHに由来する以下の構造を意味する。
ケトプロフェン化合物としては、たとえば1,2−ジイソプロピル−3−[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]グアニジウム 2−(3−ベンゾイルフェニル)プロピオナート、グアジニン酸 2−(3−ベンゾイルフェニル)プロピオネート、ジシクロヘキシルアンモニウム 2−(3−ベンゾイルフェニル)プロピオネート、シクロヘキシルアンモニウム 2−(3−ベンゾイルフェニル)プロピオネート等が挙げられる。市販品としては、たとえば和光純薬株式会社製のWPBG−082、WPBG−167、WPBG−168、WPBG−266等が挙げられる。
クマル酸アミド化合物としては、たとえば(E)−1−ピペリジノ−3−(2−ヒドロキシフェニル)−2−プロペン−1−オン、(E)−N−シクロヘキシル−3−(2−ヒドロキシフェニル)アクリルアミド等が挙げられる。なかでも、(E)−1−ピペリジノ−3−(2−ヒドロキシフェニル)−2−プロペン−1−オンが好ましい。市販品としては、たとえば和光純薬株式会社製のWPBG−025、WPBG−027等が挙げられる。
カルバメート化合物としては、たとえば1−(アントラキノン−2−イル)エチルイミダゾールカルボキシレート(別名1−(2−アントラキノニル)エチル 1H−イミダゾール−1−カルボキシレート)、1−(2−アントラキノニル)エチル 1−ピペリジンカルボキシレート、1−(2−アントラキノニル)エチル 1H−2−エチルイミダゾール−1−カルボキシレート、1−(アントラキノン−2−イル)エチル N,N−ジシクロヘキシルカルバメート(別名1−(2−アントラキノニル)エチル N,N−ジシクロヘキシルカルバメート)、1−(アントラキノン−2−イル)エチル N−シクロヘキシルカルバメート(別名1−(2−アントラキノニル)エチル N−シクロヘキシルカルバメート)、9−アントリルメチル 1−ピペリジンカルボキシレート、9−アントリルメチル N,N−ジエチルカルバメート、9−アントリルメチル N−プロピルカルバメート、9−アントリルメチル N−シクロヘキシルカルバメート、9−アントリルメチル N,N−ジシクロヘキシルカルバメート、9−アントリルメチル 1H−イミダゾール−1−カルボキシレート、9−アントリルメチル N,N−ジオクチルカルバメート、9−アントリルメチル 1−(4−ヒドロキシピペリジン)カルボキシレート、1−ピレニルメチル 1−ピペリジンカルボキシレート、ビス〔1−(2−アントラキノニル)エチル〕 1,6−ヘキサンジイルビスカルバメート、ビス(9−アントリルメチル) 1,6−ヘキサンジイルビスカルバメート、(2−ニトロフェニル)メチル 4−ヒドロキシピペリジン−1−カルボキシレートまたは(2−ニトロフェニル)メチル 4−(メタクリロイルオキシ)ピペリジン−1−カルボキシレート等が挙げられる。なかでも、1−(アントラキノン−2−イル)エチルイミダゾールカルボキシレート(別名1−(2−アントラキノニル)エチル 1H−イミダゾール−1−カルボキシレート)、1−(2−アントラキノニル)エチル 1−ピペリジンカルボキシレート、1−(2−アントラキノニル)エチル 1H−イミダゾール−1−カルボキシレート、1−(2−アントラキノニル)エチル 1H−2−エチルイミダゾール−1−カルボキシレート、9−アントリルメチル N,N−ジエチルカルバメート、9−アントリルメチル 1H−イミダゾール−1−カルボキシレート、ビス〔1−(2−アントラキノニル)エチル〕 1,6−ヘキサンジイルビスカルバメートまたはビス(9−アントリルメチル) 1,6−ヘキサンジイルビスカルバメートが好ましく、1−(アントラキノン−2−イル)エチルイミダゾールカルボキシレート(別名1−(2−アントラキノニル)エチル 1H−イミダゾール−1−カルボキシレート)がより好ましい。市販品としては、たとえば和光純薬株式会社製のWPBG−015、WPBG−018、WPBG−041、WPBG−140、WPBG−158、WPBG−165、WPBG−166、WPBG−172、WPBG−174等が挙げられる。
α−アミノケトン化合物としては、たとえば1−フェニル−2−(4−モルホリノベンゾイル)−2−ジメチルアミノブタン、2−(4−メチルチオベンゾイル)−2−モルホリノプロパンなどが挙げられる。
4級アンモニウム化合物としては、たとえば1−(4−フェニルチオフェナシル)−1−アゾニア−4−アザビシクロ[2,2,2]オクタン テトラフェニルボレート、5−(4−フェニルチオフェナシル)−1−アザ−5−アゾニアビシクロ[4,3,0]−5−ノネン テトラフェニルボレート、8−(4−フェニルチオフェナシル)−1−アザ−8−アゾニアビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン テトラフェニルボレート等が挙げられる。
アミノシクロプロペノン化合物としては、たとえば2−ジエチルアミノ−3−フェニルシクロプロペノン、2−ジエチルアミノ−3−(1−ナフチル)シクロプロペノン、2−ピロリジニル−3−フェニルシクロプロペノン、2−イミダゾリル−3−フェニルシクロプロペノン、2−イソプロピルアミノ−3−フェニルシクロプロペノン等が挙げられる。
また、上記以外の化合物としては、たとえば市販品である和光純薬株式会社製のWPBG−300等が挙げられる。
上記のなかで、クマル酸アミド化合物、カルバメート構造を有するカルバメート化合物は、優れた硬化速度と耐久性を与えることから好ましい。
また、アニオン系光重合開始剤(C)は、分子内に置換又は非置換のイミダゾール環部位を有し、光照射下で置換または非置換のイミダゾールを生成するイミダゾール系アニオン系光重合開始剤であることが、帯電防止性の観点より好ましい。
上記成分(C)は、単独で使用してもよいし2種以上を組み合わせて使用してもよい。
成分(C)の配合量は、成分(A)100質量部に対して0.05〜4質量部(固形分比)である。成分(C)の配合量が0.05質量部以上であると、重合反応が十分に進行する。これより密着性、被着体汚染性およびリワーク性に優れ、粘着剤層の耐久性が向上する。4質量部以下であると、重合反応が過度に生じることなく、高温保存時における偏光子の収縮に追従することができる。これより耐久性および耐光漏れ性に優れる。成分(C)の配合量は、好ましくは0.1〜2.5質量部(固形分比)であり、より好ましくは0.5〜2質量部(固形分比)である。
<シランカップリング剤(D)>
本発明の粘着剤組成物は、シランカップリング剤(本明細書においては、「シランカップリング剤(D)」、または単に「成分(D)」とも称する。)を含む。
シランカップリング剤を使用することで、ガラス面や金属表面に対する密着性を向上させることができる。さらにその結果、粘着剤層の剥がれや変形が抑えられ、耐久性に優れた粘着剤層を得ることができる。
本発明において用いることができるシランカップリング剤としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、ビス−(3−〔トリエトキシシリル〕プロピル)テトラスルフィド、等が挙げられる。さらには、エポキシ基(グリシドキシ基)、アミノ基、メルカプト基、(メタ)アクリロイル基等の官能基を有するシランカップリング剤と、これらの官能基と反応性を有する官能基を含有するシランカップリング剤、他のカップリング剤などを、各官能基について任意の割合で反応させて得られる加水分解性シリル基を有する化合物も使用できる。
本発明においては、シランカップリング剤としてシランカップリング剤アルコキシオリゴマー(シランカップリング剤オリゴマー)を用いても良い。シランカップリング剤アルコキシオリゴマーは、少なくともアルコキシ基を有するシラン化合物が2個以上縮合して−Si−O−Si−構造を形成し、そのケイ素原子には少なくとも1個のアルコキシ基が結合し、さらに、分子内に有機官能基を有する化合物である。シランカップリング剤オリゴマーは、アルコキシ基を有していることにより、液晶パネル等に使用される、ガラスに対する密着性が発現する。また、有機官能基を有していることにより、シランカップリング剤オリゴマーは上記(メタ)アクリル酸系重合体との相溶性および密着性に優れ、(メタ)アクリル酸系重合体へのいわゆるアンカー効果が表れる。もっとも、本発明はこのような考察によって制限されるものではない。
シランカップリング剤アルコキシオリゴマーの有機官能基としては、ビニル基、エポキシ基、スチリル基、(メタ)アクリロイル基、メタクリロキシ基、アクリロキシ基、アミノ基、ウレイド基、クロロプロピル基、メルカプト基、ポリスルフィド基等が挙げられる。このうち、得られる粘着剤層の耐久性向上および低粘着性実現を両立するためには、エポキシ基、メルカプト基および(メタ)アクリロイル基が好ましく、特にエポキシ基およびメルカプト基が好ましい。
シランカップリング剤オリゴマーは、一分子内のケイ素原子数が2である二量体から、一分子内のケイ素原子数が100程度まで、すなわち平均重合度が2〜100のものを用いることができる。平均重合度が大きくなると、シランカップリング剤オリゴマーの粘度が高くなり、ペースト状又は固体状になる場合があるため、取扱いが難しくなる。そこで、平均重合度は2〜80が好ましく、より好ましくは3〜50である。
シランカップリング剤オリゴマー中に含まれる有機官能基は、通常、適当な連結基を介してケイ素原子に結合している。連結基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、ヘキサメチレン基、デカメチレン基などのアルキレン基、メチルフェニルエチル基などの芳香族環を間に有する2価の炭化水素基、メトキシメチル基、メトキシエチル基、メトキシプロピル基などの酸素原子を間に有する2価の脂肪族基などがある。なお、有機官能基がエポキシ基である場合には、環を構成する隣り合う2個の炭素原子間で官能基が形成されていてもよい。
シランカップリング剤オリゴマーとしては、特に限定されるものではないが、例えば、上述のシラン化合物のホモポリマーやコポリマー等が挙げられる。
上記シランカップリング剤は、合成してもよいし市販品を使用してもよい。シランカップリング剤の市販品としては、例えば、信越シリコーン(登録商標)KBM−303、KBM−403、KBE−402、KBM−403、KBE−502、KBE−503、KBM−5103、KBM−573、KBM−802、KBM−803、KBE−846、X−41−1805(メルカプト基、メトキシ基およびエトキシ基を有するシランカップリング剤オリゴマー)、X−41−1810(メルカプト基、メチル基およびメトキシ基を有するシランカップリング剤オリゴマー)、X−41−1810、X−41−1053(エポキシ基、メトキシ基およびエトキシ基を有するシランカップリング剤オリゴマー)、X−41−1058(エポキシ基、メチル基およびメトキシ基を有するシランカップリング剤オリゴマー)(以上、信越化学工業株式会社製)等が挙げられる。
これらシランカップリング剤のなかでも、KBM−303、KBM−403、KBE−402、KBM−403、KBM−5103、KBM−573、KBM−802、KBM−803、KBE−846、X−41−1805、X−41−1810、X−41−1053が好ましく、KBM−403、X−41−1805、X−41−1810、X−41−1053が好ましく、KBM−403、X−41−1810がより好ましい。
上記成分(D)は、単独で使用してもよいし2種以上を組み合わせて使用してもよい。
成分(D)の配合量は、成分(A)100質量部に対して0.05〜0.5質量部(固形分比)である。成分(D)の配合量が0.05質量部以上であると、ガラス面や金属表面に対する密着性が十分に確保される。これより粘着剤層の耐久性が向上する。0.5質量部以下であると、ガラス面や金属表面に対する密着性が過度に高くなり、粘着剤層が必要以上に固定化されることを防ぐことができる。この結果、粘着剤層は高温保存時における偏光子の収縮に追従することができる。これより耐久性および耐光漏れ性に優れる。成分(D)の配合量は、好ましくは0.08〜0.4質量部(固形分比)であり、より好ましくは0.1〜0.3質量部(固形分比)である。
<帯電防止剤(E)>
本発明の粘着剤組成物は、帯電防止剤(本明細書においては、「帯電防止剤(E)」、または単に「成分(E)」とも称する。)をさらに含んでもよい。
粘着剤組成物が帯電防止剤を含むことにより、粘着剤組成物から形成される粘着剤層の表面抵抗値が低下する。これにより、被着体である液晶セル等に貼合した後、貼りミス等により剥離する必要が生じた際に、静電気の発生を効果的に抑制することができる。その結果、偏光板等の表面にゴミが付着し易くなったり、液晶配向に乱れが生じやすくなったり、周辺回路素子の静電破壊が生じ易くなったりすることを、安定的に防止することができる。
本発明に用いることができる帯電防止剤としては、イオン液体等のイオン導電剤や、界面活性剤等が好適に用いられる。
イオン性液体としては、例えば、ホスホニウムイオン、ピリジニウムイオン、ピロリジニウムイオン、イミダゾリウムイオン、グアニジニウムイオン、アンモニウムイオン、イソウロニウムイオン、チオウロニウムイオン、ピペリジニウムイオン、ピラゾリウムイオン、スルホニウムイオン、第4級アンモニウム、第4級ホスホニウム等のカチオン成分と、ハロゲンイオン、硝酸イオン、硫酸イオン、燐酸イオン、過塩素酸イオン、チオシアン酸イオン、チオ硫酸イオン、亜硫酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスファートイオン、蟻酸イオン、蓚酸イオン、酢酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、アルキルスルホン酸イオン等のアニオン成分と、を有する物質が挙げられる。より具体的には、1−アリル−3−メチルイミダゾリウムクロリド、1,3−ジメチルイミダゾリウムクロリド、1,3−ジメチルイミダゾリウムジメチルホスファート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロリド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムブロミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムイオジド、1−エチル−3−メタンスルホネート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスファート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム−p−トルエンスルホネート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムクロリド、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムクロリド、1−メチル−1−プロピル−ピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−メチル−1−メチルピロリジニウムブロミド、1−ブチル−1−メチルピペリジニウムブロミド、1−エチルピリジニウムクロリド、1−エチルピリジニウムブロミド、1−ブチルピリジニウムクロリド、1−ブチルピリジニウムブロミド、1−ブチル−3−メチルピリジニウムクロリド、1−エチル−3−メチルピリジニウムエチルサルフェート、1−ブチル−4−メチルピリジニウムクロリド、1−ブチル−4−メチルピリジニウムヘキサフルオロホスファート、トリメチルプロピルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリブチルメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、テトラブチルアンモニムクロリド、テトラブチルアンモニムブロミド、シクロヘキシルトリメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスホニル)イミド、テトラブチルホスホニウムブロミド等が例示できる。
イオン導電剤としてはまた、下記式(2)で表わされるようなビス(フルオロスルホニル)イミド塩類も好適に用いられる。
但し、上記式(2)において、Aはフッ素原子または炭素数1〜6のフルオロアルキル基であり;Xは水素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、ホスホニウム、アルキルアンモニウムおよびアルキルホスホニウムからなる群から選択される陽イオンのいずれか一種である。好ましくは、Aはフッ素原子であり、XはH+、Li+、Na+またはK+である。
界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤またはイオン性界面活性剤等を用いることができる。非イオン性界面活性剤としては、フルオロ脂肪族重合体エステル(例えば、FC−4430、FC−4432、以上3M社製)等のフッ素系界面活性剤や、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル等が挙げられる。イオン性界面活性剤としては、C8〜C22アルキルトリメチルアンモニウムハライド等の陽イオン性界面活性剤や、アルキルサルフェート等の陰イオン性界面活性剤が例示できる。
上記成分(E)は、単独で使用してもよいし2種以上を組み合わせて使用してもよい。
成分(E)の配合量は、成分(A)100質量部に対して0.2〜5質量部(固形分比)であることが好ましく、1〜3質量部(固形分比)であることがより好ましい。
<カルボジイミド系硬化剤(F)>
本発明の粘着剤組成物は、カルボジイミド系硬化剤(以下、単に「成分(F)」とも称する)をさらに含んでもよい。
カルボジイミド系硬化剤(F)は、上記の(メタ)アクリル系共重合体(A)中のヒドロキシ基および/またはカルボキシル基と反応・結合し、架橋構造を形成する。カルボジイミド系硬化剤(F)は、従来のイソシアネート系硬化剤と比較して架橋反応の反応速度が速いため、長い熟成時間を必要とせずに、粘着剤組成物の硬化をさらに促進させることができる。これより、粘着剤層はさらに優れた密着性を得ることができる。
本発明で用いられるカルボジイミド系硬化剤(F)は、特に制限されない。具体的には、例えば、カルボジイミド基(−N=C=N−)を分子内に2個以上有する化合物が好ましく用いられ、公知のポリカルボジイミドを用いることができる。
また、カルボジイミド化合物としては、カルボジイミド化触媒の存在下でジイソシアネートを脱炭酸縮合反応させることによって生成した高分子量ポリカルボジイミドも使用できる。
このような化合物としては、以下のジイソシアネートを脱炭酸縮合反応させたものが挙げられる。
ジイソシアネートとしては、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1−メトキシフェニル−2,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネートの内の一種、またはこれらの2種以上の混合物を使用することができる。
カルボジイミド化触媒としては、1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシド、3−メチル−2−ホスホレン−1−オキシド、1−エチル−3−メチル−2−ホスホレン−1−オキシド、1−エチル−2−ホスホレン−1−オキシド、あるいはこれらの3−ホスホレン異性体等のホスホレンオキシドを利用することができる。
本発明の粘着剤組成物は、イソシアネート系硬化剤を実質的に含有しないことが好ましい。これより、本発明において、成分(F)を使用する場合は、イソシアネート基を有しないカルボジイミド系硬化剤を選択することが好ましい。イソシアネート基を有しないカルボジイミド系硬化剤を用いることで、短い熟成時間、長いポットライフ、および作業者の安全性をより高いレベルで得ることができる。
「イソシアネート基を有しないカルボジイミド系硬化剤」は、硬化剤中に存在するイソシアネート基量を質量分率で表したNCO含有率(%)が、実質的に0%であるものをいう。具体的には、JIS K1603−1(2007)に準じて測定したNCO含有率が0.5%未満のカルボジイミド系硬化剤が用いられる。
このようなカルボジイミド系硬化剤は、合成してもよいし市販品を使用してもよい。成分(F)の市販品としては、例えば、日清紡ケミカル株式会社製のカルボジライト(登録商標)シリーズが挙げられる。その中でもカルボジライト(登録商標)V−03、V−09、V−09GB等は有機溶剤との相溶性に優れており好ましい。
上記成分(F)は、単独で使用してもよいし2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明において、成分(F)の配合量は、成分(A)100質量部に対して、0.05
〜5質量部(固形分比)であることが好ましい。この範囲にあれば、適度な架橋構造を形成して、優れた密着性がさらに達成しうる。該配合量は、より好ましくは0.1〜4質量部、さらに好ましくは0.1〜3質量部である。
<その他の成分>
本発明の粘着剤組成物は、イソシアネート系硬化剤およびイソシアヌレート構造を有する活性エネルギー線硬化型化合物を実質的に含有しないことが好ましい。前述のように、イソシアネート系硬化剤およびイソシアヌレート構造を有する活性エネルギー線硬化型化合物を使用することで、長い熟成時間、短いポットライフ、および作業者の呼吸器への危険性が生じる恐れがある。よって、これらを用いないことにより、短い熟成時間、長いポットライフ、および作業者の安全性をより高いレベルで実現できる。
本発明の粘着剤組成物は成分(B)以外の活性エネルギー線硬化型化合物をさらに含んでもよい。前述の理由より、成分(B)以外の活性エネルギー線硬化型化合物は、イソシアヌレート構造を有しない活性エネルギー線硬化型化合物であることが好ましい。
また、本発明の粘着剤組成物は成分(F)以外の硬化剤をさらに含んでもよい。前述の理由より、成分(F)以外の硬化型化合剤はイソシアネート基を有しない硬化剤であることが好ましい。
成分(B)以外の活性エネルギー線硬化型化合物のイソシアヌレート構造および成分(F)以外の硬化剤のイソシアネート基の検出方法は、それぞれ成分(B)および成分(F)と同様の方法を用いることができる。
本発明の粘着剤組成物は、添加剤として、硬化促進剤、リチウム塩、無機充填剤、軟化剤、酸化防止剤、老化防止剤、安定剤、粘着付与樹脂、改質樹脂(ポリオール樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、エポキシ樹脂、エポキシ化ポリブタジエン樹脂等)、レベリング剤、消泡剤、可塑剤、染料、顔料(着色顔料、体質顔料等)、処理剤、紫外線遮断剤、蛍光増白剤、分散剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤および溶剤のような添加剤を含んでもよい。
これらのうち、硬化促進剤としては、例えば、ジブチルスズジラウレート、JCS−50(城北化学工業株式会社製)、フォーメート(登録商標)TK−1(三井化学株式会社製)等が挙げられる。
酸化防止剤としては、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、イルガノックス(登録商標)1010、イルガノックス(登録商標)1035FF、イルガノックス(登録商標)565(いずれも、BASFジャパン株式会社製)等が挙げられる。
粘着付与樹脂としては、例えば、ロジン酸、重合ロジン酸およびロジン酸エステル等のロジン類、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、芳香族炭化水素樹脂、脂肪族飽和炭化水素樹脂ならびに石油樹脂等が挙げられる。
上記添加剤を使用する場合の、添加剤の使用量は、特に制限されないが、例えば、成分(A)100質量部に対して、0.1〜20質量部である。
[製造方法]
本発明の粘着剤組成物は、上記で述べた各成分を一括に混合するか、各成分を順次混合するか、または任意の複数の成分を混合した後に残りの成分を混合するなどして、均一な混合物となるように撹拌することにより製造することができる。より具体的には、室温または必要に応じて加温し(例えば30〜40℃の温度に加温)、スターラーなどで均一になるまで、例えば5分〜5時間撹拌することにより調製することができる。
本発明の粘着剤組成物の粘度は、特に制限されない。しかしながら、塗工のしやすさ、該組成物から形成される粘着剤層の膜厚の制御のしやすさなどを考慮すると、25℃における配合直後(各成分を所定時間混合してから10分以内)のB型粘度計により測定した粘度が、好ましくは300〜7000mPa・sである。例えば、光学部材の粘着剤として用いる場合、25℃における調製直後(各成分を所定時間混合してから10分以内)の粘度が、より好ましくは1000〜6000mPa・s、さらに好ましくは2500〜5000mPa・sである。
ポットライフは、粘着物組成物を配合した直後の組成物の粘度と、調製(配合)してから12時間経過後の組成物の粘度とを比較することにより評価することができる。配合してから12時間経過後の組成物はゲル化しないことが好ましい。粘着物組成物を配合した直後の組成物の粘度を100%とした場合、配合してから12時間経過後の組成物の粘度は130%以内であることが好ましく、110%以内であることがより好ましい。かような範囲であれば、優れた作業性を有する粘着剤組成物となる。本発明の粘着剤組成物は、組成物調製後における粘着剤組成物の過剰な粘度上昇やゲル化が抑制され、優れたポットライフを有する。
なお、本明細書において、上記の「直後」とは、10分以内を意味する。すなわち、「粘着物組成物を調製した直後の組成物の粘度」とは、粘着物組成物の調製が終了した(各成分を所定時間混合した)後10分以内に測定した粘度を意味する。
[粘着剤層]
本発明の粘着剤組成物から得られる粘着剤層は、上記のような粘着剤組成物の塗膜から形成されるものであり、活性エネルギー線照射処理によって粘着性が付与されるものである。
本発明の粘着剤組成物はアニオン系光重合開始剤(C)を含むため、活性エネルギー線照射処理を行うことにより塩基を生じ、アニオン重合性活性エネルギー線硬化型化合物(B)のアニオン重合性官能基の連鎖反応によって光重合する。これにより、本発明の粘着剤組成物から形成される粘着剤層は、粘着加工後(活性エネルギー照射処理後)の熟成時間が1時間以内という短い期間で、実用粘着性能に達する。
本発明の粘着剤組成物から得られる粘着剤層は、上記のような粘着剤組成物を剥離フィルムや基材上に塗布して得られるものであり、架橋前のものも架橋後のものも含む。架橋前の粘着剤組成物から成る粘着剤層が形成された光学部材や粘着シートは、使用時に活性エネルギー照射処理を行い、粘着剤層(粘着剤組成物)に粘着性を付与して使用すればよい。
粘着剤組成物の架橋は、粘着剤組成物を基材に塗布した後に行うのが一般的であるが、架橋後の粘着剤組成物からなる粘着剤層を基材に転写することも可能である。また、剥離フィルム上に上記の粘着剤組成物を塗布し、必要に応じて粘着剤組成物の塗膜を乾燥した後、塗膜上に基材を積層しても良い。
また、剥離フィルム上に上記の粘着剤組成物を塗布し、必要に応じて粘着剤組成物の塗膜を乾燥した後、剥離力の異なる別の剥離フィルム(第2の剥離フィルム)を塗膜上に積層させてもよい。かかる態様により、粘着剤組成物の製造と、かかる粘着剤組成物の使用とが、別の場所で行われる等の理由により、粘着剤組成物のみを輸送することができるばかりでなく、空気中の酸素の影響を受けずに光硬化を進めることができる。また、2つの剥離フィルムにおける剥離力に所定の差を設けることにより、剥離力の低い側の剥離フィルムを剥がした際に、粘着剤が部分的に追従してくることを防止することができる。
かかる剥離フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルムや、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィンフィルムに対し、シリコーン樹脂等の剥離剤を塗布して、剥離層を設けたものが挙げられる。剥離フィルムは、20〜150μmの範囲内の厚さのものを使用することが好ましい。
上記基材としては、特に限定されるものではないが、例えば、偏光板、偏光層保護フィルム、視野角拡大フィルム、防眩フィルム、位相差板等、液晶ディスプレイに用いられる光学フィルム等が挙げられる。特に本発明の粘着剤組成物であれば、基材を偏光板とした場合であっても、光漏れの発生を効果的に抑制できる。本発明の一実施形態では、粘着剤層が偏光板上に形成されてなる光学部材が提供される。また、本発明における粘着剤組成物は、偏光子等へも耐久性よく密着できることから、偏光板の原料であるヨウ素含有のポリビニルアルコール樹脂を延伸して作製された偏光子自体も、基材として用いることができる。偏光子の片面がトリアセチルセルロースやポリエチレンテレフタレート等の保護フィルムで覆われた偏光子等も同様である。
基材の材質としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレート、トリアセチルセルロース、ポリカーボネート、液晶ポリマー、シクロオレフィン、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、アクリル系樹脂、脂環式構造含有重合体、芳香族系重合体等が挙げられる。
基材は、表面処理を施したものであってもよい。このような表面処理としては、例えば、プライマー処理、コロナ処理、火炎処理などが挙げられるが、特に、コロナ処理であることが好ましい。このような表面処理を施した基材を用いることにより、基材フィルムに対する粘着剤層の密着性をさらに向上させることができる。
粘着剤組成物の塗布方法は特に制限されず、例えば、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等を用いればよい。必要に応じ、溶剤を加えた粘着剤組成物を塗布して塗膜を形成させた後、乾燥させることが好ましい。乾燥条件としては、通常50〜150℃で10秒〜10分の範囲内とすることが好ましい。溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、エチルイソブチルケトン、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等が好ましく、溶剤を加えた際の粘着剤組成物の濃度は、5〜30質量%の範囲内の値とすることが好ましい。
光学部材に使用する際の粘着剤組成物の塗布厚さ(乾燥後の厚さ)は、使用する基材および用途に応じて選択すればよいが、好ましくは1〜100μmであり、より好ましくは5〜30μmである。 上記のように調製した粘着剤組成物の塗膜に対して活性エネルギー線照射処理を行い、粘着剤層を形成する。かかる活性エネルギー線としては、例えば、紫外線や電子線等が挙げられる。紫外線であれば、高圧水銀ランプ、無電極ランプ、キセノンランプ等を用いることができ、電子線であれば、電子線加速器等を光源として用いればよい。
剥離フィルム上に粘着剤組成物の塗膜を形成した場合、活性エネルギー線の照射は剥離フィルム側から行うことが好ましい。これにより、偏光板等の基材を傷めることなく、効率よく照射を行うことができる。
活性エネルギー線照射処理における活性エネルギー線の照射量は、例えば50〜1000mJ/cm2の範囲内であり、100〜700mJ/cm2の範囲内の照射量にて照射することが好ましく、120〜500mJ/cm2の照射量にて照射することがより好ましい。活性エネルギー線の照射量を50mJ/cm2以上とすることにより、成分(B)や成分(C)におけるアニオン重合反応を十分に行わせることができ、環境変化に曝された場合における耐久性や、所望の粘着剤特性を得ることができる。一方、活性エネルギー線の照射量を1000mJ/cm2以下とすることにより、粘着剤層や基材を破壊することなく架橋を行うことができる。
例えば、メタルハライドランプを用いて紫外線を粘着剤組成物に照射する場合、例えば500〜2000mW/cm2で照射する。照射時間は任意に設定すればよいが、例えば1〜10秒照射を行えばよい。照射処理時の雰囲気は特に制限されず、空気中で行っても良いが、空気中の酸素の影響を受けずに光硬化を進めることができるという観点から、窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガス雰囲気下で行っても良い。また、照射処理は室温で行っても良く、40〜80℃に加温したステージ上で行うこともできる。
[光学部材、粘着シート]
本発明は、本発明の粘着剤組成物から形成される粘着剤層を備える、光学部材および粘着シートをも提供する。
<光学部材>
光学部材としては、例えば、偏光板、位相差板、プラズマディスプレイ用光学フィルム、タッチパネル用導電フィルムなどが好ましく挙げられる。このうち、本発明の粘着剤組成物は、偏光板とガラスとの接着性に優れている。もちろん、本発明は、上記の形態に限定されるものではなく、他の部材の接着に使用することも可能である。本発明の一実施形態では、光学部材が、少なくとも1つの偏光子を含有する、光学部材である。このような光学部材の一例としては、上記粘着剤層が偏光子または偏光板上に形成されてなる、粘着剤層付き偏光板が挙げられる。本発明に用いられる偏光子や偏光板の構成は特に限定されず、所望の用途や性能に合わせてその構成を適宜選択することができる。
本発明の粘着剤組成物は、光学部材の片面あるいは両面に直接塗布して粘着剤層を形成して使用されてもよいし、剥離フィルム上に粘着剤層を予め形成し、これを光学部材の片面あるいは両面に転写することにより使用されてもよい。
本発明の粘着剤組成物は、優れた柔軟性を示すことから、特に偏光板に用いた場合、経時的な偏光板の収縮に追従でき、優れた耐光漏れ性を得ることができる。加えて、本発明の粘着剤組成物は優れた耐久性を有するため、加熱処理や高湿処理による粘着剤層の浮きや剥がれを防止し得る。
本発明の粘着剤組成物を光学部材に用いる場合、粘着加工(活性エネルギー線照射処理)から1時間後の粘着剤層のゲル分率は、65〜90%であることが好ましく、70〜85%であることがより好ましい。かような範囲であれば、粘着剤層を備えた光学部材として打ち抜き加工やスリット加工を速やかに行うことができる。
粘着加工後、23℃、45%RHの雰囲気下で7日間保存後の粘着剤層のゲル分率は、粘着加工から1時間後のゲル分率を100%としたとき、95〜105%であることが好ましく、97〜103%であることがより好ましい。かような粘着剤層は、長期間に亘って安定した実用粘着性能を保持し、安定性に優れる。ゲル分率を上記のように設定するには、各成分の添加量を上記の範囲に調整するなど、条件を適宜選択すればよい。
本発明の光学部材において、光学部材に形成された粘着剤層の粘着力は、1〜6(N/25mm)程度が好ましく、2〜5(N/25mm)程度がより好ましい。かような範囲の粘着力であれば、リワーク性に有利でありうる。なお、本明細書において、「粘着力」は、JIS Z0237(2000年)の粘着テープ・粘着シート試験方法に準じて測定することによって求められ、より具体的には、下記実施例に記載される方法にしたがって測定される。
光学部材に用いられる本発明の粘着剤組成物は、ポットライフが長く作業性に優れ、粘着加工後の熟成時間が1時間以内という短時間で実用粘着性能に達し、生産性が大幅に向上する。さらに、光学部材に用いられる本発明の粘着剤組成物から得られる粘着剤層は、耐光漏れ性に優れるばかりでなく、光学部材用として適度な粘着力や基材への密着性を有し、耐久性、耐被着体汚染性、リワーク性にも優れる。
<粘着シート>
本発明の粘着剤組成物は、基材またはセパレータ上に塗工し、乾燥(架橋)処理を施して、粘着剤層を形成することにより、シート状やテープ状などの粘着シートとすることもできる。すなわち、本発明は、本発明の粘着剤組成物から形成される粘着剤層を備える、粘着シートを提供する。
粘着シートの基材としては、上記のものの他、ゴムの発泡体、紙、アルミニウム箔などの公知の各種の薄葉部材が用いられる。これら基材の表面には、その材質に応じて、コロナ処理、プラズマ処理、易接着層の形成などの下地処理や、帯電防止層の形成などを行ってもよい。また、セパレータには、上記の基材と同様のプラスチックフィルムの表面をシリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系などの剥離処理剤で剥離処理したものや、このような剥離処理を施さないポリプロピレンフィルムなど、各種のものを使用できる。
基材上に粘着剤層を形成する場合、その片面に設けて片面粘着シートとしてもよいし、両面に設けて両面粘着シートとしてもよい。両面に設ける場合、片面だけに本発明の粘着剤組成物を用いて両面で粘着剤種の異なるテープとすることもできる。セパレータ上に粘着剤層を形成する場合は、両面粘着シートとして使用することができる。
本発明の粘着剤組成物を粘着シートに用いる場合、活性エネルギー線照射処理から1時間後の粘着剤層の粘着剤層のゲル分率は、65〜92%であることが好ましく、70〜90%であることがより好ましい。かような範囲であれば、粘着剤層を備えた粘着シートとして打ち抜き加工やスリット加工を速やかに行うことができる。粘着加工後、23℃、45%RHの雰囲気下で7日間保存後の粘着剤層のゲル分率は、粘着加工から1時間後のゲル分率を100%としたとき、95〜105%であることが好ましく、97〜103%であることがより好ましい。かような粘着剤層は、長期間に亘って安定した実用粘着性能を保持し、安定性に優れる。ゲル分率を上記のように設定するには、各成分の添加量を上記の範囲に調整するなど、条件を適宜選択すればよい。
本発明の粘着シートにおいて、粘着シートに形成された粘着剤層の粘着力は、0.05〜20(N/25mm)程度が好ましく、0.1〜10(N/25mm)程度がより好ましい。かような範囲の粘着力であれば、様々な粘着力を要求されるシート状やテープ状などの粘着シートに対応することができる。
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。なお、合成例で得られた(メタ)アクリル系重合体溶液の固形分および粘度、粘着剤組成物溶液の粘度、ならびに成分(A)の質量平均分子量の測定は、以下の方法で行った。
<固形分>
約1gの(メタ)アクリル系重合体溶液を、精秤したガラス皿に精秤した。105℃で1時間乾燥した後、室温に戻し、ガラス皿と残存固形分との合計の質量を精秤した。ガラス皿の質量をX、乾燥する前のガラス皿と(メタ)アクリル系重合体溶液との合計の質量をY、ガラス皿と残存固形分との合計の質量Zとして、下記数式1により固形分を算出した。
<粘度>
ガラス瓶に入れた(メタ)アクリル系重合体溶液を25℃に温調し、B型粘度計により測定した。なお、粘着剤組成物溶液の粘度測定は、粘着物組成物溶液を配合した直後および配合してから12時間経過後の2度行った。
<質量平均分子量>
下記表1の測定方法・測定条件により測定した。
(合成例1)
還流器および攪拌機を備えたフラスコに、n−ブチルアクリレート(株式会社日本触媒製)99質量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート(株式会社日本触媒製)1質量部および酢酸エチル120質量部を投入した。次いで、窒素置換を行いながら65℃まで加温し、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.04質量部を加え、65℃を維持しつつ6時間重合を行った。重合反応終了後、酢酸エチル280質量部を加えて希釈を行い、(メタ)アクリル系重合体(サンプル名:A−1)の溶液を得た。得られた(メタ)アクリル系重合体溶液の固形分は20質量%、粘度は4500mPa・sであった。また、得られた(メタ)アクリル系重合体(A−1)の重量平均分子量は160万であった。
(合成例2〜14)
合成例1において、単量体成分の組成を、表2−1に示されるような組成に変更したことを除いては、合成例1と同様の操作を行なうことによって、(メタ)アクリル系重合体(A−2)〜(A−14)の溶液を得た。また、得られた(メタ)アクリル系重合体(A−2)〜(A−14)溶液の固形分および粘度、ならびに(メタ)アクリル系重合体(A−2)〜(A−14)の質量平均分子量を測定した。その結果を下記表2−1に示す。なお、下記表2−1において、「BA」は、ブチルアクリレートであり;「MA」は、メチルアクリレートであり;「MEA」は、メトキシエチルアクリレートであり;「HEA」は、2−ヒドロキシエチルアクリレートであり;「4HBA」は、4−ヒドロキシブチルアクリレートであり;「HEAA」は、ヒドロキシエチルアクリルアミドであり;「AA」は、アクリル酸であり;「DM」は、ジメチルアミノエチルメタクリレートである。
(実施例1)
上記合成例1で得られた(メタ)アクリル系重合体溶液を500質量部((メタ)アクリル系重合体(A)の固形分として100質量部)、アニオン重合性活性エネルギー線硬化型化合物(B)であるネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(東京化成工業株式会社製 試料名 B−1) 4質量部、アニオン系光重合開始剤(C)であるWPBG−140(1−(アントラキノン−2−イル)エチルイミダゾールカルボキシレート) 和光純薬工業株式会社製 試料名 C−1)2質量部、シランカップリング剤(D)である信越シリコーン(登録商標) KBM−403(3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、信越化学工業株式会社製 試料名 D−1)0.1質量部に、さらに固形分濃度が17質量%となるよう酢酸エチルを加え、室温(25℃)で10分間混合して粘着剤組成物が溶解している溶液(粘着剤組成物溶液)を得た。
この溶液を、剥離PETフィルム(三菱樹脂株式会社製、MRF38、厚み:38μm)上に、ベーカーアプリケーターにて乾燥後の厚さが25μmとなるように塗布し、90℃で3分間乾燥させて粘着剤層を形成した。その後、偏光板または剥離力の異なる別の剥離フィルム(第2の剥離フィルム)を積層し、粘着剤層付き偏光板または粘着シートを得た。
偏光板上または剥離フィルム間に形成された粘着剤層に対して以下の条件で活性エネルギー線照射処理を行った。なお、活性エネルギー線照射処理は、上記の積層から3分以内に行った。
使用機器:アイグランデージECS−401GX(アイグラフィックス株式会社製)
光源:メタルハライドランプ
照射量:1000mJ/cm2
コンベアスピード:5m/分
(実施例2〜9、比較例1〜12)
下記表3および表4に示すような組成比で、上記合成例で合成した(メタ)アクリル系重合体、アニオン重合性活性エネルギー線硬化型化合物、アニオン重合性以外の活性エネルギー線硬化型化合物、アニオン系光重合開始剤、アニオン系以外の光重合開始剤、シランカップリング剤、帯電防止剤、カルボジイミド系硬化剤、およびその他の添加剤を使用したことを除いては、実施例1と同様にして、粘着剤組成物が溶解している溶液の調製および粘着剤層付き偏光板または粘着シートの作製を行った。なお、アニオン重合性活性エネルギー線硬化型化合物B−1〜6、アニオン重合性以外の活性エネルギー線硬化型化合物B−7および8、アニオン系光重合開始剤C−1〜2、アニオン系以外の光重合開始剤C−3、シランカップリング剤D−1および2、帯電防止剤E−1〜3、カルボジイミド系硬化剤F−1、ならびにその他の添加剤G−1〜3の詳細は以下の通りである。
上記のカルボジイミド系硬化剤F−1(カルボジライト(登録商標) V−09GB)はイソシアネート基を有していない(NCO含有率:0%)。
粘着剤層の実用粘着性能を評価するため、実施例および比較例に係る粘着剤層付き偏光板または粘着シートについて、下記の方法に従って各性能を評価した。なお、下記の評価において、「作製後1時間以内」とは、活性エネルギー線照射処理後1時間以内に試験に供することをいう。
1.ゲル分率
実施例1〜9、および比較例1〜12で作製した粘着シートを用いて、粘着剤組成物のゲル分率を測定した。ゲル分率は、以下の方法により行った。すなわち、活性エネルギー線照射処理後、23℃、45%RHの雰囲気下で粘着シートを保存した。活性エネルギー線照射処理から5分後、1時間後、および7日後において、粘着剤組成物約0.1gを秤量して、重量W1(g)を測定した。これをサンプル瓶に採取し、酢酸エチルを約30g加えて24時間放置した。所定時間経過後のサンプル瓶の内容物を200メッシュのステンレス製金網(膜の重量をW2(g))にてろ別し、金網および残留物を90℃で1時間乾燥させた全体の重量W3(g)を測定した。ゲル分率は、これらの測定値から下記数式2により算出した。
2.金属腐食抑制・防止性
粘着剤層付き偏光板作製後1時間以内に、粘着剤層面をアルミホイルに貼り合わせた。その後、60℃、95%RHの雰囲気下で保存した。保存2日目および10日目において、腐食性を観察した。なお、下記表3および4中、「○」は変化なしを、「△」は若干白化を、「×」は白化したことをそれぞれ示す。
3.耐光漏れ性
粘着剤層付き偏光板作製直後、偏光板を120mm(偏光板MD方向)×60mm、および120mm(偏光板TD方向)×60mmに裁断し、それぞれガラス板の各面に重なり合うように貼り合わせた後、50℃、0.49MPa(5kg/cm2)の条件で20分間オートクレーブ処理を行った。その後、85℃雰囲気下で保存し、保存開始から120時間および500時間後の外観を観察した。なお、下記表3および4中、「◎」は120時間後および500時間後に光漏れが観察されなかったことを、「○」は120時間後に光漏れが観察されなかったことを、「×」は光漏れが観察されたことをそれぞれ示す。
4.耐久性
粘着剤層付き偏光板作製直後、偏光板を120mm(偏光板MD方向)×60mmに裁断し、無アルカリガラス(コーニング(株)製、イーグルXG)に貼合し、50℃、0.49MPa(5kg/cm2)の条件で20分間オートクレーブ処理を行った。その後、85℃雰囲気下および60℃、95%RHの雰囲気下で500時間保存後の外観を観察した。また、−40℃で30分(第一ステージ)および85℃で30分(第二ステージ)の2ステージで1サイクルとし、これを200サイクル繰り返すヒートショック試験を行い、試験後の外観を観察した。なお、下記表3および4中、「○」は発泡、浮き、剥がれが観察されなかったことを、「×」は発泡、浮き、剥がれの少なくとも1つが観察されたことをそれぞれ示す。
5.粘着力
粘着剤層を備えた偏光板作製直後、偏光板を25mm幅に裁断し、無アルカリガラス(コーニング(株)製、イーグルXG)に貼合し、50℃、0.49MPa(5kg/cm2)の条件下で20分間オートクレーブ処理を行った。引っ張り試験機を用いて、23℃、45%RHの雰囲気下で剥離角180度、剥離速度0.3m/分で、JIS Z0237(2000年)に記載の粘着テープ・粘着シート試験方法に準じて粘着力の測定を行った。
6.基材に対する密着性
上記5.粘着力の測定時に密着性を観察した。なお、下記表3および4中、「○」は粘着剤が基材からまったく剥がれなかったことを、「×」は粘着剤が基材から剥がれたことをそれぞれ示す。
7.被着体汚染性
上記5.粘着力の測定前後のガラス板面の接触角を測定した。接触角の測定は、JIS R3257(1999年)に記載の基板ガラス表面のぬれ性試験方法に準じて行った。なお、下記表3および4中、「○」は粘着力測定前後のガラス板面の接触角変化が3°以下であることを、「×」は粘着力測定前後のガラス板面の接触角変化が3°を超えたことをそれぞれ示す。
8.表面抵抗値
粘着剤層を備えた偏光板作製直後、偏光板の粘着剤層面の表面抵抗を抵抗率計ハイレスターUP(三菱化学株式会社製)を使用して23℃、45%RHの雰囲気下で測定した。なお、印加電圧は100Vとした。
9.リワーク性
上記5.粘着力の測定時に、剥離状態を観察した。なお、下記表3および4中、「○」は界面破壊が観察されたことを、「×」はガラス板(被着体)に粘着剤が転着および/または凝集破壊が観察されたことをそれぞれ示す。
上記表3および表4から明らかなように、本発明の粘着剤組成物(実施例1〜9)は、本発明の範囲外である粘着剤組成物(比較例1〜12)に比して、ポットライフが長く、1時間以内の短時間の熟成であっても実用粘着性能に達する。さらに、本発明(実施例1〜9)の粘着剤組成物から形成される粘着剤層は、耐久性に優れる。