従って、第一態様では、本発明は、カプリル酸、又はその塩の、少なくとも1つのグリコールのポリエーテル、又はポリマーの存在下での、免疫グロブリンの精製された溶液への添加、及び後続の前記試薬の、限外濾過/透析濾過を用いた、除去、又は低減を含む、免疫グロブリン溶液の調製のための方法に関する。
さらなる態様では、本発明は、少なくとも1つのグリコールのポリエーテル、又はポリマーの存在下での、タンパク質製造方法におけるウイルス不活性化のための、カプリル酸、又はその塩の使用、及び後続の前記試薬の、限外濾過/透析濾過を用いた、除去、又は低減に関する。
さらなる態様では、本発明は、タンパク質製造方法においてウイルス不活性化のために使用される、カプリル酸、又はその塩及び/又はグリコールのポリエーテル、又はポリマーのレベルの除去、又は低減のための限外濾過/透析濾過の単一ステップの実現に関する。
従って、本発明は、グリコールのポリエーテル、又はポリマーの存在下、96%以上の純度を有する、免疫グロブリンの最初の溶液に基づく、免疫グロブリンの溶液の調製方法であって、前記方法が、以下のステップ:
a)カプリル酸、又はその塩を、最初の溶液に添加し;
b)ステップa)で得られた溶液のpHを調整し;
c)エンベロープを有するウイルスの不活性化のために必要な時間、及び温度で、ステップb)で得られた溶液をインキュベートし;そして
d)ステップc)で得られた溶液について、限外濾過/透析濾過のステップを行う
ことを含むことを特徴とする、方法を開示する。
本発明の方法は、また、ステップd)で得られた溶液の、最終製剤化のステップを含んでもよい。
本発明の方法では、免疫グロブリンの最初の溶液は、Cohn法、又はCohn‐Oncley法に従って得られた分画I+II+III、分画II+III、又は分画IIに由来するか、又はKistler‐Nitschmann法に従って得られた、又はさらに精製して、96%以上のIgG純度を得る、同様の方法のバリエーションに従って得られた、沈殿物A、又はI+A、又はGGに由来する。好ましくは、免疫グロブリンの最初の溶液は、Cohn法、又は同様の方法のバリエーションに従って得られた分画II+IIIに由来し、そしてそれは、欧州特許第1225180B1において記載されたように、続いて、PEG、及び陰イオンクロマトグラフィーを用いて精製される。本特許に従って、任意の上記分画は、PEGを使用する沈殿方法、続いて、沈殿物を除去し、そしてイオン交換カラム(例えば、DEAE Sepharoseを有するカラム)を使用する追加の精製ステップを除去するための濾過に供されることができる。すべてのこれらの場合において、免疫グロブリンの最初の溶液は、ヒト血漿に由来する。
最も好ましい実施態様では、免疫グロブリンの最初の溶液は、Cohn法に基づく方法によって得られた分画II+IIIに由来し、そしてそれは、先行技術文献において記載された方法の任意の1つによってさらに精製され、本発明の非沈殿条件(すなわち、全タンパク質に対して、アルブミン含量が、好ましくは1%以下(w/v)である、酢酸セルロースでの電気泳動によって決定されたIgGの96%(w/v)以上の純度)の下、カプリレートでの処理に供されるのに十分な精製レベルを達成する。従って、免疫グロブリンの最初の溶液は、追加の精製が、本発明のウイルス不活性化能力を有するステップ後、必要とされないように、企図される治療投与の経路のために、カプリレートでの処理前後で、十分に精製される。
本発明の方法の最初の溶液の免疫グロブリンは、また、遺伝子組み換え技術、例えば、細胞培養中での発現;化学合成技術;又はトランスジェニックタンパク質生成技術によって、得ることができる。
最も好ましい実施態様では、本発明の方法で言及される免疫グロブリンは、IgGである。IgGは、モノクローナル、又はポリクローナルであってもよいことが企図される。最も好ましい実施態様では、IgGは、ポリクローナルである。
本発明のグリコールのポリエーテル、又はポリマーは、アルカンのポリエーテル、又はポリアルカンの酸化物、また、ポリグリコールとしても知られており、であってもよく、そして例えば、エチル、又はエチレン、及びプロピル、又はプロピレンの誘導体を意味し、ポリエチレングリコール(PEG)、又はポリプロピレングリコール(PPG)、又はそれらの同等物として良く知られていることが企図される。また、試薬は、それらが、それらの安定性、又は溶解性を損なわせず、それらの大きさによって、それらが、限外濾過技術によって除去され、又はそれらの低い毒性によって、それらが、免疫グロブリンの治療的使用に適合するという意味で、免疫グロブリンに適合しなければならない。
好ましい実施態様では、グリコールのポリエーテル、又はポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、又はそれらの組み合わせから選択される。好ましくは、グリコールのポリエーテル、又はポリマーは、PEGであり、より好ましくは、3350Da〜4000Daの間の公称分子量を有するPEGであり、そして最も好ましくは、4000Daの公称分子量を有するPEGである。
上記免疫グロブリンの最初の溶液中のグリコールのポリエーテル、又はポリマーの量は、好ましくは、2%〜6%(w/v)であり、そしてより好ましくは、3%〜5%(w/v)である。
免疫グロブリンの最初の溶液中のグリコールのポリエーテル、又はポリマーの濃度を調整する必要があるかもしれないことが企図される。グリコールのポリエーテル、又はポリマー調整は、免疫グロブリンの最初の精製された溶液を希釈することにより、及び/又はこれを添加することにより、達成することができる。
免疫グロブリンの最初の溶液の組成によれば、本発明の方法のステップa)の前に、精製、又は濃度の調整の一連のステップが行われることが企図され、例えば、免疫グロブリンの濃度の、1〜10mg/mlの間、より好ましくは、3〜7mg/mlの間への調整などである。この調整は、その時の都合で、当該技術分野において知られた任意の方法、例えば、確立された範囲(Biuret法、Bradford法、又は特に免疫比濁法によって、例えば、280nmでの光学濃度 E(1%)=13.8−14.0 UAによる全タンパク質に従って決定される)へのタンパク質の希釈、又は濃縮により、達成することができる。従って、好ましい実施態様では、免疫グロブリンの最初の溶液は、好ましくは、1〜10mg/ml、そしてより好ましくは3〜7mg/mlの免疫グロブリンの濃度;及び/又は免疫グロブリンの溶液の純度の調整、そしてそれは、好ましくは、全タンパク質に関して、少なくとも96%のIgGに到達するべきであり、を有する。この精製は、当業者に十分に知られた技術、例えば、PEGでの沈殿、濾過、及び後続の陰イオン交換クロマトグラフィー(DEAE Sepharose)によって、達成することができる。
本発明の方法のステップa)では、好ましくは、同じ濃縮された溶液、例えば、1.5M〜2.5Mの間、を使用して、カプリル酸、又はその塩が添加され、好ましくは、9mM〜15mMの間の最終濃度を達成する。
好ましい実施態様では、ステップb)では、得られた溶液は、5.0〜5.2、より好ましくは、5.1のpHに調整される。
好ましい実施態様では、ステップc)では、得られた溶液は、少なくとも10分間、より好ましくは、1〜2時間、そしてさらにより好ましくは、2時間、インキュベートされる。また、インキュベーションが行われる温度は、2℃〜37℃、より好ましくは、20℃〜30℃である。
好ましい実施態様では、本発明の方法のステップd)の前に、ステップc)において得られた溶液中の高分子量を有する、ポリマー、又は凝集物の量は、0.2%以下、より好ましくは0.1未満である。全タンパク質に対する、ポリマー、又は免疫グロブリンの分子凝集物のこの割合は、280nmでの光学濃度値に従った、排除HPLCゲルカラムによって決定される。ポリマー、又は免疫グロブリンの分子凝集物の割合は、例えば、欧州薬局方の静脈内γグロブリンのモノグラフに記載される分析方法を使用して、評価することができる。
好ましくは、免疫グロブリンの溶液は、ステップd)の限外濾過/透析濾過を行う前に、デプスフィルターを使用して清澄化される。
ステップd)に関して、本発明の方法における限外濾過/透析濾過は、透析及び容積の低減による濃縮、後続の一定の容積での透析濾過の適用の最初のステップを有することが好ましくは企図される。
限外濾過/透析濾過は、タンパク質の濃度が最適であり、そして好ましくは30mg/mlであるという事実を考慮すると、試薬の消費が、多少低く、そしてプロセスがより効率的であるように、生成物の容積を減らし、そして次に透析濾過する、好ましくは、同時透析及び濃縮の方法により、工業スケールで、実施することができる。いずれにしても、当業者は、当該技術分野において知られた様々な操作方(例えば、希釈/濃縮、又は透析濾過/濃縮、一定容積での透析濾過、又は上記の改良及び組み合わせ)から選択される、限外濾過/透析濾過のこのステップを行う最適な、そして実際的な方法を容易に決定することができる。
本発明の方法のステップd)において使用される限外濾過/透析濾過膜は、好ましくはポリスルホン、再生セルロース、又は同等物からなり、例えば、Biomax(登録商標)(Millipore,USA)、Omega(登録商標)(Pall,USA)、Kvik‐flow(登録商標)(General Electric,USA)の商品名の下で販売される膜である。しかしながら、膜のために選択される分子量カットオフは、様々な要因、例えば、選択する製造業者などに依存して異なってもよい。当業者は、選択する膜を容易に決定することができ、そしてそれは、例えば、処理される溶液中のカプリレート、及びグリコールのポリエーテル、又はポリマーの濃度に依存するそれぞれの場合の必要に適応されるであろう。
好ましくは、ステップd)の限外濾過/透析濾過は、100kDa以下、より好ましくは、100kDaの分子量カットオフを有する膜を用いて、達成される。
最も好ましい実施態様では、ステップd)の限外濾過/透析濾過は、以下の2つの段階:大部分のカプリレートを低減、又は除去するために、pHが、5.0〜6.0の間に調整される第一段階、及び大部分のグリコールのポリエーテル、又はポリマーを低減、又は除去するために、pHが、5.0以下、好ましくは、4.0〜5.0の間のpHに調整される第二段階、で行われる。
好ましい実施態様では、限外濾過/透析濾過のステップの第一段階において、透析濾過は、約5mM以上の濃度で、カルボン酸のアルカリ塩、例えば、酢酸を含む、透析濾過媒質を使用して行われる。最も好ましい実施態様では、当該透析濾過は、上述したようにpHが調整された(すなわち、5.0〜6.0の間)、5mM以上の濃度での、酢酸ナトリウムの溶液を用いて、行われる。
ステップd)の限外濾過/透析濾過の第一段階において行われる透析濾過容積の量は、最初に使用されるカプリレートの量、及び許容される最終量に従って、当業者によって、容易に決定されることができる。好ましくは、少なくとも3容積の透析濾過媒質が使用され、当該透析濾過媒質は、好ましくは、上述したように、pH5.0〜6.0の、5mMの酢酸ナトリウム溶液である。好ましくは、限外濾過/透析濾過の第一段階において、この第一段階において、カプリレートの濃度が、約1mM以下に低減されるように、約90%以上の最初のカプリレートが除去される。
ステップd)の限外濾過/透析濾過の第二段階において、免疫グロブリンの溶液は、好ましくは、一定の容積で、透析濾過される。
好ましくは、限外濾過/透析濾過の第二段階における透析濾過は、アセテート、ホスフェート、又は同等物によって形成されたアルカリ金属塩、又はアミノ酸及び/又はポリオール、例えば、グリシン及び/又はソルビトールを含む、上述したpH値である、緩衝液を使用して行われる。
透析濾過の第一段階の場合と同様に、第二段階において、本発明の方法において使用されるグリコールのポリエーテル、又はポリマーを適切に低減するために使用される透析容積の量は、グリコールのポリエーテル、又はポリマーの必要とされる低減又は除去を考慮して、当業者によって容易に決定されることができる。好ましい実施態様では、ステップd)の限外濾過/透析濾過の第二段階の透析において交換される緩衝液の量は、6容積以上である。最も好ましい実施態様では、当該第二段階において、交換は、ステップd)の限外濾過/透析濾過を始める前の、グリコールのポリエーテル、又はポリマーの最初の量の100倍以上のグリコールのポリエーテル、又はポリマーの低減を得るために必要な緩衝液の容積量に従って、行われる。
カプリレート、及びグリコールのポリエーテル、又はポリマーが、ステップd)の限外濾過/透析濾過において低減されると、上述した最終製剤化ステップにおいて、最終製剤化を達成するために、生成物を濃縮するために、必要な賦形剤及び/又は安定剤を添加することにより、所望する最終組成に調整することができる。最終製剤化後に行われる賦形剤及び/又は安定剤の添加は、固形、又は濃縮された溶液において、賦形剤及び/又は安定剤を添加することにより、又はよりさらに好ましくは、最終生成物の適切な組成を保証するために、製剤化溶液の交換容積の必要な量を用いる透析濾過を用いて、直接的に達成することができる。
他の実施態様では、賦形剤及び/又は安定剤の添加は、最終濃縮後、免疫グロブリンが既に製剤化されるように、ステップd)の第二段階において使用される酢酸ナトリウムの透析緩衝液を、賦形剤及び/又は安定剤を含む、好ましくは、同じ4.0〜5.0の間のpH値に調整された、溶液で全体的に、又は部分的に置換されることにより、行われる。
当業者は、所望する安定性を達成するために、如何なる種類の賦形剤及び/又は安定剤を添加すべきかを知っている。例えば、当該賦形剤及び/又は安定剤は、1つ以上のアミノ酸、例えば、好ましくは、0.2〜0.3Mの間の濃度での、グリシン;1つ以上の炭水化物、又はポリオール、例えば、ソルビトール;又はそれらの組み合わせであってもよいことが企図される。
最後に、免疫グロブリン、好ましくはIgGの最終濃度は、その静脈内、筋肉内、又は皮下使用のために適した濃度に調整され、そしてそれは、当業者に知られ、そして例えば、5%〜22%(w/v)の間であってもよい。当該濃縮は、当該技術分野において知られた任意の方法、例えば、限外濾過による濃縮により、達成される。免疫グロブリンの濃縮が、限外濾過によって達成される場合、当該濃縮は、従前の透析濾過において使用されたものと同様の膜を使用して行われてもよいことが企図される。当然、3つの透析濾過方法、及び濃縮は、また、異なる膜を使用して行われてもよい。
本発明の方法は、また、生成物の安全マージンを増加させるために、ナノ濾過のステップの導入の可能性を企図する。方法において複数の段階が存在し、ここで生成物は、20nm以下〜50nmまでの細孔径、好ましくは、20nm以下の細孔径を有する、市販のフィルター(例えば、Planova(登録商標)及びBioex(登録商標)(旭化成)、DV(登録商標)及びSV4(登録商標)(Pall)、Virosart(登録商標)(Sartorius)、Vpro(登録商標)(Millipore)、又は同等物)でナノ濾過することができ、又は15nmのナノフィルターさえも、使用することができる。ナノ濾過ステップを行うことができる中間ステップは、例えば、免疫グロブリンの最初の溶液において;又は限外濾過/透析濾過のステップ後、カプリレートで処理された材料において(カプリレート及びグリコールのポリエーテル、又はポリマーが低減された時点で);又は免疫グロブリン、好ましくはIgGの溶液を濃縮し、そして製剤化した後の材料において(最終生成物)である。当業者は、とりわけ、膜の細孔径、方法の時間に従って必要とされる濾過面積、ナノ濾過される生成物の容積、及びタンパク質の収率に依存する最適な選択肢を選択するであろう。
本発明の方法によって得られる最終生成物は、同種赤血球凝集素の内容に関連する欧州薬局方の基準に完全に準拠する。しかしながら、本発明の方法は、また、抗A及び/又は抗B抗体の選択的、及び特定の捕捉のステップを含む選択肢を、それらの低減を最大にするために、企図する。このステップは、先行技術文献に記載されたように、好ましくは、生体特異性の親和性樹脂を使用して行われる。例えば、三糖によって形成されたリガンドを有する生体特異性の親和性樹脂を使用することにより、同種赤血球凝集素のレベルにおける顕著な低減が、達成されることができる(Spalterら.,Blood,1999,93,4418‐4424)。この追加の捕捉は、本発明の方法の任意のステップにおいて、任意により、当業者の裁量で、組み込まれてもよく、又は本発明の方法を実施する前又は後で、行ってもよい。
従って、本発明の免疫グロブリンの溶液の調製のための方法に関して、最も好ましい実施態様では、96%以上のIgGの純度を有する免疫グロブリンの最初の溶液が、使用される。この溶液は、好ましくは、1mg/ml〜10mg/mlの間、そして好ましくは、3mg/ml〜7mg/mlの間のIgGの濃度に調整され、そしてそれは、PEGを、4±1%(w/v)の濃度で含むか(前のステップでの添加により)、又は添加される。溶液のpHは、その後、酢酸で、5.0〜5.2の間に調整され、そしてカプリル酸ナトリウムが添加される(例えば、カプリル酸ナトリウムの濃縮溶液を使用して)。好ましい実施態様では、カプリレートの濃縮溶液は、IgGの精製された溶液にゆっくりと添加され、そして撹拌される。9〜15mMの間のカプリレートの最終濃度を生成物にもたらすために計算されたすべてのカプリレートを添加後、最終pHが、その後、必要に応じて、5.0〜5.2の間に調整され、そして溶液は、好ましくは、2〜37℃の間の温度で、そしてより好ましくは、25±5℃の温度で、少なくとも10分間、そして好ましくは、1〜2時間の間、インキュベートされる。
清澄化は、その後、デプスフィルター(例えば、Cuno 90LA、50 LA、Seitz EK、EK‐1、EKS、又は同等物)を使用して、行われる。
従って、得られた溶液は、その後、ポリスルホンを含む膜、例えば、Biomax(登録商標)(Millipore)、又はOmega(登録商標)(Pall)によって形成された限外濾過/透析濾過装置、好ましくは、積み重ね可能なカセットの形態で、を用いて、処理される。溶液は、それぞれの限外濾過/透析濾過ユニットを介して、好ましくは、約100〜500L/hの間の容積で、そして5±3℃の温度で、循環される。注入口、及び排出口の間の圧力の圧力低下(気圧)は、好ましくは、1〜3バールの間である。次に、限外濾過/透析濾過のステップの第一透析濾過段階は、カプリレートを除去するために、好ましくは、5mM以上の濃度で、そして5.0〜6.0の間のpHで、好ましくは、酢酸ナトリウムの溶液によって形成された緩衝液の少なくとも3容積の交換を適用して、開始される。好ましくは、添加される、又は消費される緩衝液のそれぞれの容積で、生成物の溶液の容積は、最後の添加を除いて、最初の容積の半分に減らされる。
透析濾過の第一段階(希釈、及び濃縮、又は同等物による)後、得られた溶液のpHは、例えば、酢酸を使用して、4.0〜5.0の間に調整される。一定の容積での透析濾過が、その後、5mM以上の濃度で、4.0〜5.0の間のpHで、好ましくは、酢酸ナトリウムによって形成された緩衝溶液の6以上の容積を使用して、開始される。
上記酢酸ナトリウムによって形成された透析緩衝溶液は、最終濃縮後、免疫グロブリンが既に製剤化されるように、0.2〜0.3Mの濃度での、アミノ酸、例えば、グリシンの、任意により、炭水化物、及びポリオール、例えば、ソルビトールと組み合わされ、好ましくは、同じ4.0〜5.0の間のpH値に調整された溶液によって、任意により、全体的に、又は部分的に、置換されてもよい。
好ましくは、少なくとも6容積(より好ましくは、6〜10容積の間)の上記透析溶液の、4.0〜5.0の間のpHでの適用後、生成物が製剤化されていない場合、賦形剤及び/又は安定剤、例えば、グリシン、又は他のアミノ酸、及び炭水化物、例えば、ソルビトール、又はそれらの組み合わせを、固形、又は当該賦形剤及び/又は安定剤の濃縮溶液の形態で、得られた溶液に直接的に添加することにより、生成物が製剤化される。次に、容積低減によって得られたIgGの溶液は、濃縮され、静脈内、筋肉内、又は皮下使用のための適切なIgG濃度を達成する。
賦形剤及び/又は安定剤の濃度、及びpHに関して適切に調整された、当該濃縮溶液は、0.2μmの細孔径のフィルターを使用する完全な濾過によって適用され、そして任意により、ナノ濾過である。最後に、IgGの溶液は、注射剤、アンプル、バイアル、ボトル、又は他のガラス容器中に、無菌的に入れられ、そしてそれは、その後、密閉される。他の選択肢は、適合する固い、又は柔軟なプラスチック容器、例えば、バッグ、又はボトルへの注入である。
上記のように調製された生成物は、2〜30℃の間の温度での、少なくとも2年までの保存のための貯蔵に移される前に、検疫、及び目視検査を受ける。
さらに、上述したように、本発明は、また、タンパク質製造方法におけるウイルス不活性化のための、少なくとも1つのグリコールのポリエーテル、又はポリマーの存在下での、カプリル酸、又はその塩の使用を、初めて開示し、ここでグリコールのポリエーテル、又はポリマー、及びカプリル酸、又はその塩は、限外濾過を用いて、続いて除去される。
好ましくは、当該タンパク質は、免疫グロブリン;アルブミン;凝固因子、例えば、第VII因子、第VIII因子、及び第IX因子;及びヴォン・ヴィレブランド(von Willebrand)因子を含むタンパク質の群から選択される。さらにより好ましくは、当該タンパク質は、免疫グロブリンである。最も好ましい実施態様では、当該タンパク質は、IgGである。
本発明は、様々な実施態様の例に関して、より詳細に記載する。しかしながら、これらの例は、本発明の範囲を限定することを目的とせず、その説明を例示することを目的とする。
実施例1
血漿から、ウイルス的に安全であり、凝集体がなく、そして工業適用のために適切な収率を有する、免疫グロブリンの溶液を得るための本発明の方法
出発材料は、16Lの免疫グロブリン溶液であり、そしてそれは、主なタンパク質成分としてIgGを含み、欧州特許第1225180B1に記載の方法によって得られた。要約すれば、当該溶液を、Cohn法を使用して、分画II+IIIから、γグロブリンを抽出することにより得た。分画II+IIIからγグロブリンのこの抽出を行うために、当該分画を、エタノールを使用して、ヒト血漿の分画により、前もって単離した。その後、炭水化物の存在下で懸濁し、そして付随する多数のタンパク質の含量を、PEG‐4000での沈殿により、低減させた。最後に、分画の最終精製を、イオン交換樹脂カラム(DEAE Sepharose)における吸着により行った。従って、得られたカラム溶出物(樹脂、すなわちDEAEに吸着されなかった分画)は、98±2%の免疫グロブリンの酢酸セルロースにおける電気泳動純度、6.0のpH、2.6の比濁計濁度単位(NTU)の濁度、及び約5mg/mlのIgG濃度を有する。
得られた溶液を、酢酸を添加することにより、5.1のpHに調整し、そして2〜8°の間の温度に調整した。免疫グロブリンのこの溶液を、その後、カプリル酸ナトリウムの濃縮溶液を添加することにより、13mMの最終濃度にした。
カプリレートを有する免疫グロブリンの溶液を、25℃に加熱し、そしてこの温度で2時間、ゆっくりとした撹拌下で、インキュベートした。インキュベーションの間、pHを、5.10±0.05に維持した。得られた溶液の濁度は、17.3NTUであった。
カプリレートで処理された溶液を、デプスフィルター(CUNO(登録商標),Ultrafilter,Denmark)を使用する後続の清澄化のために、約8℃の温度に冷却した。約4mg/mlのIgG濃度、及び3NTU以下の濁度を有する、約20Lの濾過された液体を、当該清澄化(すすぎを含む)から得た。
上記清澄化溶液を、100kDaの公称分子量カットオフを有する膜(Biomax(登録商標)Millipore,USA)を使用して、限外濾過により透析した。限外濾過を、2つの異なる段階において行った。第一段階では、5.1のpHを有する材料を、pH5.1に調整された、5mMの酢酸溶液を使用し、そして約30UAへの濃縮を使用することにより、3つのステップの一連の透析、及び濃縮に供した。第二段階では、タンパク質、カプリレート、及びPEGの適切な濃度を有する、溶液を、pH4.5±0.1にし、そして透析を、その後、pH4.5で、5mMの酢酸溶液の8容積を使用して、開始した。次に、生成物を、pH4.2で、約20Lの200mMのグリシン溶液を使用して、透析を使用して、製剤化し、そして10%(w/v)の濃度を有するIgGの溶液を得る目的で、同じ限外濾過ユニットで、140.5UAの値に濃縮した。
最後に、当該溶液を、デプスフィルター(CUNO(登録商標),Ultrafilter,Denmark)、及びアブソリュートフィルター、又は0.22の細孔径を有する膜(CVGL(登録商標),Millipore,USA;又はDFL(登録商標),PALL,USA)を使用して、濾過した。
表1は、上記方法に従った、出発材料、複数の中間生成物、及び最終生成物の特性評価を示す。当該表に示される結果に関して、濁度を、比濁法によって測定したこと;ポリマー、又は免疫グロブリンの分子凝集物の割合を、検出された全タンパク質に対して、280nmでの、光学濃度値に従って、排除HPLCゲルカラムによって決定したこと;カプリレートの濃度を、比色分析基質の定量化によって、酵素法を使用して、決定したこと;PEGの濃度を、示差屈折率検出器を使用して、HPLC濾過ゲルカラムを用いて決定したこと:及び方法の収率(%)を、比濁法により、定量化されたIgGの濃度に従って、計算したことに留意すべきである。
本実施例の結果は、上記精製された溶液のカプリレートでの処理が、免疫グロブリン、又は他の沈殿物の任意の形成を誘導せず、生成物の分子分布を未変化に維持することを示す。従って、カプリレートでの処理後、凝集物及び/又は沈殿物を除去するために、精製ステップを必要としなかった。この事実は、製品製造方法を、著しく容易にし、そして材料の限外濾過膜への直接適用を可能にする。
従って、後続の限外濾過プロセスは、製造過程の化学試薬(すなわち、PEG、及びカプリレート)を効果的に低減する目的を達成し、そして精製された免疫グロブリンの溶液の形成、及び濃縮を可能にし、その治療上の使用のための適切な組成物を得る。
表1から分かるように、出発溶出物から10%濃縮生成物への、この場合における得られたタンパク質の収率は、89.4%であり、本方法の工業スケールでの実行可能性を示す。この回収率は、国際公開第2005/073252(70%の収率、最初の6.8g/Lと比較して4.8g/Lの収率に基づく)に記載されたような、先行技術文献に従った従来の方法により得られる値よりも大きい。
実施例2
カプリレートでの処理における免疫グロブリンの最初の溶液の純度の影響
本実施例において、評価を、免疫グロブリンの最初の溶液の純度の影響、及び本発明の方法に供する出発材料中の付随するタンパク質の存在で行った。
2つの独立した試験群を作製した:
A群において、出発材料は、DEAE Sepharoseカラム溶出物であり、98±2%の電気泳動純度(ACE)、すなわち、実施例1に記載の出発材料であった。
B群において、出発材料、指定された4%PEGの濾液を、DEAE Sepharoseクロマトグラフィー前のステップまでの実施例1に記載の方法によって得た。従って、材料Bを、分画II+IIIの抽出懸濁物のPEGでの沈殿後、得て、そして約90%IgGの電気泳動純度(ACE)を有する。
約4%相当のPEG含量を有する、両出発材料(A群、及びB群)を、13mMの濃度、及び5.0〜5.2の間のカプリレートで処理し、そして実施例1に示されるように精製した。
表2は、両試験群(それぞれA、及びB)において使用される出発材料、及びカプリレートでの処理後のステップにおいて生成されるそれらの材料の特性を示す。
表2における得られた、そして収集された結果は、不活性化のために有効な濃度(13mM)でのカプリレートの、低い純度(約90%IgG、B群を参照)の材料への添加は、溶液の成分の沈殿を引き起こし、濁度の劇的な増加(500NYU超)を生じる。従って、溶液に関する分子分布の結果は、高分子量を有する付随するタンパク質の部分の沈殿を示した。
カプリレートの、前に記載した量、及び条件下(13mMのカプリレート、5.0〜5.2の間のpH)での、低い純度の材料への添加は、沈殿した懸濁物を生じ、高分子量を有するタンパク質、及び沈殿した凝集物を分離するために、分離、及び精製の追加のステップを含む必要を生じさせる。従って、カプリレートで処理したA群の生成物の分子組成、すなわち、1%を上回る凝集物含量を有する、は、精製、又は分離の追加のステップ、例えば、PEGでの沈殿、クロマトグラフィー、又は同等の方法を含まない限り、この生成物を処理して精製された最終生成物にすることが、実行可能でないことを示す。最後に、この事実は、カプリレートが、十分な純度の材料に添加された場合のみ、非沈殿条件での、ウイルス不活性化能力を有する試薬としてのカプリレートの使用の実行可能性を示す。
実施例3
出発材料の組成物の凝集物の生成に与える影響
本実施例の目的は、カプリレートでの処理を受ける免疫グロブリンの最初の溶液の組成の影響を評価することであった。
2つの独立した試験群、同等の純度(97.9±1.5%)の材料から開始するが、異なる組成を有するA及びB群を作製した。
A群において、出発材料は、カラム溶出物(実施例1に記載の最初の方法に従って得られた)であり、5±2mg/mlのタンパク質濃度、及び4±1%のPEG‐4000濃度を有する。
B群において、指定され、濃縮され、そして透析された溶出物である、出発材料は、A群で述べられたものと同じカラム溶出物であるが、濃縮され、そして透析された後のものである。従って、DEAEカラム溶出物(上記実施例1で述べられ、そして本実施例の群Aに相当する)を、PEG含量を、約6倍まで減らし、そしてタンパク質を、約4%の値、すなわち40mg/mlに濃縮するように、限外濾過による透析、及び濃縮の追加のステップに供した。
両実験群A、及びBにおいて得られた材料を、10%のIgG濃度を有する生成物を得るために、13mMの濃度、及び5.0〜5.2の間のpHでの、カプリレートでの処理に供し、実施例1に記載の条件下で、限外濾過した。
表3は、上記試験群A、及びBにおいて処理された材料の主な特性、及びそれぞれの実験群に関する、後続のカプリレートでの処理ステップにおいて、及び透析され、そして濃縮された最終生成物において、生成された材料の特性を示す。
表3から分かるように、結果は、40±10mg/ml(4±1%)のPEG濃度の存在下での、5±2mg/mlの濃度での、免疫グロブリンの精製された溶液(A群、カラム溶出物)の特定の条件下での、カプリレートでの処理が、免疫グロブリンの溶液の何らかの変化、又は凝集を引き起こさず、検出不可能な0.1%以下の凝集物の割合を有する、カプリレートの添加の間、及び後の分子分布を未変化に維持するという証拠を示す。
しかしながら、カプリレートでの処理のためのこれらの同じ条件を、低いPEG含量(<1%)を有する材料(B群)を適用した場合、免疫グロブリン凝集物の実質的な増加を、カプリレートの添加後、観察した。さらに、使用した条件下で、限外濾過により、この凝集物含量を除去することができず、そして同程度のポリマーを、最終生成物において測定した。
実験群A、及びBにおいて使用された出発材料の間の主な異なった特性が、タンパク質濃度、及びPEG濃度であることを考えると、追加の試験を、これらのパラメーターのそれぞれの、後続のカプリレートでの処理に与える影響を突き止めるために、行った。
本実験において、出発点は、濃縮され、そして透析された溶出物の単一バッチ(上記群Bの最初の材料)であり、そしてそれを、4つの区別できる実験群:B1、B2、B3、及びB4に分離した。
B1群の材料を、約4%のタンパク質濃度、及び約0.6%のPEG濃度で処理した。
B2群の材料を、約4%の同じタンパク質濃度で処理したが、PEG濃度を、4±1%(w/w)の値に、再調整した。
B3群、及びB4群において、材料を、0.5±0.2%のタンパク質に希釈した。PEG濃度に関して、群B3では、約0.6%(w/w)の濃度にしたが、B4群では、PEG濃度を、4±1%(w/w)に再調整した。
4つの実験群において得られた生じた材料を、5.10±0.05のpH、及び15mMのカプリレート濃度にし、そしてその後、25℃で2時間、インキュベートした。
表4に示された結果は、定められた条件下での、カプリレートでの処理の間の、PEG保護効果を、十分なタンパク質希釈と組み合わせて観察したことを示す。出発材料が、およそ、5±2mg/mlのタンパク質濃度、及び4%のPEG濃度である場合、検出できない値の凝集物を、カプリレートでの処理後に得た(<0.1%)ことは注目に値する。
実施例4
カプリレートで処理した免疫グロブリンの溶液の溶解度に与えるpHの影響
免疫グロブリンの溶液中のPEGの除去、及び当該免疫グロブリンの、それらの静脈内使用のために適した濃度への濃縮は、好ましくは、約4.5のpH値で、行うべきである。
さらに、本実験における、カプリル酸の、そのpKa(4.89)未満のpH値での不溶性を考慮して、カプリレートで処理した免疫グロブリンの溶液の溶解度に与えるpHの影響を、限外濾過を開始するための適切なpH値を定めるために、評価した。
このような目的を達成するために、実施例1に詳細に記載された最初の方法に従って得られたカラム溶出物のバッチを処理して、13mMのカプリレートで処理し、そして清澄化した免疫グロブリンの溶液を得た。
この中間体は、そしてそれは、限外濾過ステップ前の材料を構成し、酢酸の添加によって酸性化されて、カプリレートでの処理のpH(5.1)から約4.5のpH値になる。続いて、溶液の外観、及び溶解度を、それぞれの評価したpHごとに評価し、そしてコロイド粒子の生成を、濁度の比濁分析によって、定量した。
表5は、評価したpH値それぞれについて得られた外観、及び濁度を示す。
得られた結果は、表5において示されたように、13mMのカプリレートで処理された免疫グロブリンの溶液を、5.0未満のpHに、酸性化した場合、白色沈殿物の出現を、濁度の明らかな増加と共に、観察した。この効果は、コロイド形態での不溶性のカプリル酸の形成に起因し、そしてそれは、5.0未満のpHで、限外濾過の処理を開始するのを、実行不能にした。
得られた結果は、精製した溶液を、ウイルス不活性化のための有効な濃度範囲(9〜15mMのカプリレート)において、そして前に記載した条件下で、カプリレートでの処理に供した場合、ウイルス不活性化処理のpH以上のpH(すなわち、5.1)で、イオン化、及び可溶型の濃度を増加させて、そして従って、限外濾過膜を介したその透過性を容易にすることを目的として、開始することが好ましいという証拠となる。
実施例5
限外濾過/透析濾過によるカプリレートの低減に与える透析溶液中の酢酸含量の影響
一連の独立した限外濾過/透析濾過プロセスを、生成物の透析のために使用する緩衝液中の酢酸の異なる濃度の存在下、行った。
使用した出発材料、指定し、濃縮し、そして透析した溶出物は、実施例3のB群のものと同じであった。98±2%のIgG純度、約40mg/mlのタンパク質濃度、及び約0.6%のPEG含量を有する、当該出発材料を、カプリレートでの処理に供し、そして続いて、約100kDaの公称分子量カットオフを有する膜を使用する限外濾過/透析濾過に供した。
適用した限外濾過/透析濾過ステップは、約4%(w/v)のIgGへの濃縮の第一段階、8容積の透析溶液を使用する透析の第二段階、及び最終的な、約9〜10%(w/v)のIgG値への濃縮を含む。
最初の限外濾過/透析濾過試験を、注射用蒸留水を使用して行ったが、後続の試験を、増加した濃度の酢酸、より具体的には、それぞれ、2、5、20、又は50mMの酢酸を有し、そしてすべての場合において、5.0〜5.5の間のpHに調整した、緩衝液を使用して行った。
(1)透析後、8透析容積で測定した値
(2)以下の式:
透析容積の数=ln(Cf/Co)/(R−1)
(式中、Cfは、問題になっている透析容積の数での透析後の濃度であり、Coは、透析前の濃度であり、そしてRは、保持係数である)
を用いて計算した透過性
表6の結果は、約100kDaの分子量カットオフの膜を使用し、5.0〜5.5の間のpHで、そして約5mMの最小濃度の酢酸、そして少なくも50mMを有する、酢酸を有する緩衝液の8透析量を適用する、限外濾過/透析濾過の方法が、最終濃縮生成物において、適切なレベルへのカプリレートの効率的な低減を、十分に達成することを示す。
対照的に、透析に使用した溶液が、注射用蒸留水、又は2mMの酢酸レベルを有する緩衝液であった場合、カプリレートを、濾液において、効率的に除去されない。
これは、前に記載した条件下での、約100kDaの分子量カットオフを有する膜を使用する、限外濾過/透析濾過の方法が、正しいレベルの当該試薬を、最終濃縮生成物において検出したことを考慮すると、前の処理に由来するカプリレートの低減に効果的であるという証拠となる。
実施例6.単一ステップの限外濾過を用いた化学試薬(PEG、及びカプリレート)の同時除去
IgGのバッチを、実施例1に記載の方法に従って処理し、カプリレートで不活性化され、そして清澄化された溶液を得た。約0.5%のタンパク質濃度、及び5.1のpHを有する、当該溶液を、100kDaの分子量カットオフを有する、ポリスルホン膜のBiomax(登録商標)type(Millipore,USA)で形成された限外濾過/透析濾過装置を使用して処理した。限外濾過/透析濾過を、実施例5で記載したような、2つの異なる段階において、行った。
pH5.1、5.6、又は5.8で行われる、第一段階において、材料を、pH5.1、5.6、又は5.8に調整した、5mMの酢酸緩衝液の少なくとも3容積での透析濾過、及び約2%の値へのタンパク質の濃縮を用いた、一連の透析及び濃縮のステップに供した。
第二段階において、カプリレートの量を、約1/10に低減した後、溶液を、4.5±0.1、又は5.1のpHにした。生成物を、その後、タンパク質、及びPEGを適切な濃度にし、透析を開始し、そして透析を、4.5、又は5.1のpHの、5mMの酢酸緩衝液の8容積で、開始した。
最後に、生成物を、4.2のpH、及び200mMの濃度での、6容積のグリシン溶液での透析を用いて製剤化し、そしてIgGの10%溶液を得るために、濃縮した。
表7は、それぞれの段階の限外濾過/透析濾過の開始で、そして様々なpH値で、得られたPEG、及びカプリレートの通過の割合を示す。
表7の結果は、限外濾過/透析濾過の開始時点では、段階Iにおいて、カプリレートが、pH5.1〜pH5.8の間で、非常に高い通過値を示したことを示す。これらの値は、限外濾過/透析濾過ステップの段階Iの間の、カプリレートの非常に高い低減をもたらした(最初の含量に対して、10倍以上のカプリレートの低減を観察した)。対照的に、PEGの通過は、段階Iにおいて、非常に低く(<20%)、そしてその全除去は、カプリレートの存在下において、pH>5で、実質的に実行不能であった。
一方、段階IIにおいて、表7において分かるように、PEGの通過は、pH4.5で、非常に高く、82%の値であった。また、この段階IIの間、この段階の開始時点において、カプリレートが、<1mMの残存レベルで存在し、そして実質的に100%の通過を可能にしたことを考慮すれば、カプリレートもまた、低減したことが理解できた。
表8は、限外濾過/透析濾過ステップ、及び最終製剤化ステップのそれぞれの段階における、タンパク質、PEG、及びカプリレートの濃度の進展を詳述する。
それぞれのステップ、及び段階で記録したPEG、及びカプリレートの値に従って、そしてそれぞれのステップでのタンパク質濃度を考慮すると、約350倍の全低減係数(段階I、及び段階II)(限外濾過/透析濾過ステップの最後で得られた0.02の吸光度と比較して6.9の最初の吸光度)を前提として、PEG低減係数は、限外濾過/透析濾過ステップの段階I(pH5.1における)において、4であり、そして限外濾過/透析濾過ステップの段階II(pH4.5における)において、90であった。
カプリレートの場合、約700倍の全低減係数(段階I、及び段階II)(限外濾過/透析濾過ステップの最後で得られた0.003の吸光度と比較して2.2の最初の吸光度)を前提として、低減係数は、限外濾過/透析濾過ステップの段階I(pH5.1における)において、55であり、そして限外濾過/透析濾過ステップの段階II(pH4.5における)において、13であった。
結果は、ウイルス不活性化能を有する試薬(カプリル酸、又はカプリレート)、及び沈殿試薬(PEG)を、限外濾過/透析濾過ステップのそれぞれの段階で適用される物理的、及び化学的条件(特に、pH、タンパク質濃度、透析容積の数、透析緩衝液)を選択して、約100kDaの分子量カットオフを有する膜を使用する限外濾過の単一ステップによって効率的に低減し、そして静脈内使用に適した両試薬のいくらかの残存濃度を有する、10%の濃度のIgGの最終生成物を生じることを示した。
実施例7.PEGの存在下でのカプリレートでのウイルス不活性化能の評価
出発材料として、カラム溶出物、又は透析され、そして濃縮された溶出物(それぞれ、実施例1、及び3に従って得られた)を用いて、様々な独立した実験を行って、脂質エンベロープを有するウイルスを除去し、又は不活性化するための、PEGの存在下での、カプリル酸、又はカプリレートの能力を評価した。
両材料は、98+2%の免疫グロブリン純度、及び5〜10mg/mlのタンパク質濃度を有する一方で、それらのPEG含量は、それぞれ、40mg/ml、及び1.5mg/mlと異なった。
ウイルス不活性化試験を、脂質エンベロープを有し、物理的、及び化学的剤に対して平均的な耐性を有する、40〜60nmの、フラビウイルス科の牛ウイルス性下痢ウイルス(BVDV)を使用して、行った。
それぞれの試験において、対応する出発材料を、0.5%以下に、ウイルスで接種し、そして9mM、又は13mMのカプリレート濃度を適用して、15℃〜25℃の温度で、2時間、ウイルス不活性化処理に供した。
生成した異なるサンプルにおけるBVDVのウイルス負荷の定量化を、MBDK細胞株を用いた、TCID50試験(50%組織培養感染量)を使用して、行った。ウイルス不活性化ステップのウイルス低減係数(RF)を、log10で表された、処理終了時に得られたサンプルにおいて検出したウイルスの量で割った、接種された出発材料において検出したウイルス負荷量の商として、決定した。
表9は、それぞれの試験の出発材料の特性、及び得られたRFを詳述する。
すべての試験で得られた、ウイルス低減の結果(表9を参照)は、異なる温度(15、及び25℃)での試験後、カプリレートの最少の9mMの濃度に関してさえ、両出発材料において、BVDVの不活性化のための高い能力を示す。さらに、これらの試験は、分析したそれぞれのPEG濃度で、同等の結果を、両評価した材料で得たことを考えれば、カプリレートのウイルス不活性化能において、PEGによる、観察される干渉はないことを示した。
実施例8.本発明の製造方法に従って得た静脈内免疫グロブリン溶液の特性評価
本実施例は、本発明の方法によって得た10%(w/v)のタンパク質を有する免疫グロブリンの溶液の生物学的、及び機能的特性を定めることを目的とする。
DEAEカラム溶出物の2つのバッチを、約200Lの血漿規模での、カプリレートで不活性化されたウイルス溶液を得るために、実施例1で詳述した方法に従って、処理した。
一旦清澄化した、カプリレートを有する当該溶液を、主なプロセス残余物(PEG、及びカプリレート)の除去を達成する目的で、実施例6に記載されたように、区別された段階において、透析、及び限外濾過により、濃縮した。続いて、当該精製した溶液を、約2.5%のタンパク質濃度で、pH4.5±0.1に調整した、1%のソルビトール、及び240mMのグリシンからなる緩衝液の約6容積の定容で、透析することにより、製剤化した。最後に、当該溶液を、限外濾過で濃縮し、そして10%(w/v)のタンパク質に相当する、140±5UA(280nm)の光学濃度に調整し、そして5.25±0.25の最終pHに調整した。
ソルビトール、及びグリシンで安定化させ、そして一旦清澄化し、そして滅菌グレード膜(0.22μm)を使用して濾過した、得られた生成物(IGIV 10%(w/v))を、静脈内投与のための免疫グロブリンの溶液の品質、不変性、及び安定性の最も関連性のある分析パラメーターを決定するために、クロロブチルストッパーを有するガラス容器に入れた。2つのバッチのために得られた平均分析値、及び欧州薬局方の値指定を、表10に示す。
Eur.Ph.:欧州薬局方;n.e.:規定されていない;TGT FXI:トロンビン生成試験(第IX因子欠乏血漿を使用);NAPTT PKA:プレカリクレイン活性化因子;ACA:抗‐補体活性
上記結果は、得られた生成物が、ポリマーの不在、PKA、又はACA活性などの所望しない生物活性、特に、血漿に関する、いくつかの損傷のない機能的特性、例えば、IgGサブクラスの割合、及びFcフラグメントの完全性の保存などのパラメーターに関して、本発明の精製プロセスの結果として、実質的に不変であり、そして同時に優れた純度プロフィールを示す(抗‐A/抗‐B同種赤血球凝集素の低い滴定量、IgMの濃度、凝固促進活性等)ことを高める。
PEGの存在下での、カプリレートでのウイルス不活性化、及び続くその分離、及び最終製剤化ステップを含む、10%(w/v)のIGIVを得るための本発明の全体的な方法は、全体的に実行可能であり、10%(w/v)のIGIVタンパク質溶液として製剤化され、そして濃縮された最終生成物に拡張可能であり、欧州薬局方において規定された値に完全に適合する最終生成物を与えるという結論に達する。
安定性試験を実施し、そしてそれは、生成物の商業化のために不可欠であり、室温(25℃〜30℃)で、2年間、10%(w/v)の静脈内免疫グロブリン溶液を安定化するために、ソルビトール(5%)、グリシン(等量)、又はそれらの組み合わせを有し、4.2〜6.0のpH範囲である製剤の適合性を示した。
実施例9.代替的な方法によって得られたIgGに富む画分に対するカプリレートでの処理の適用可能性
評価を、代替的な精製方法を使用して得られた他のプロセス中間体を使用して、本明細書に記載の条件下で、カプリレートでの適用の有効性で、行った。
2つの独立した実験を、出発材料として、IgGに富む血漿中間体、Cohn‐Oncleyエタノール分画由来の、分画IIの所定の懸濁液を使用して、行った。
この中間体を、分画II+IIIまで、本明細書に記載の血漿分画方法と同じ方法により得た。その後、手順を、分画II+III抽出物懸濁物のアルコール再沈殿で続け、その後、分画IIIの分離、最後に、96%超の純度を有する分画IIを得た。当該分画IIの懸濁物を、一旦、ベントナイトで精製し、そして水で透析して、アルコールを除去し、これらの実験のための出発材料とした。
行った2つの実験において、2つの血漿バッチ由来の材料を、それらのPEG含量に従って、2つの異なる群、A、及びBに分離した。B群では、出発材料を、PEG‐4000の濃縮された溶液を添加することにより、40mg/mlの公称PEG濃度にした。
その後、両群(A、及びB)由来の両材料を、本明細書に記載のように、約5mg/mlのタンパク質濃度に希釈し、5.1のpH値に調整し、そして13mMの公称濃度、及び5.0〜5.2の間のpHに達するまで、カプリレートでの処理に供した。
表11は、両試験群(A、及びBのそれぞれ)において使用した出発材料の主な特性、及びカプリレートでの処理後に生じた材料の特性を詳細する。
(1)PEG、及びカプリレート値は、分析定量を用いて得られた値に相当する。
結果は、異なる方法によって十分に精製された免疫グロブリン溶液を使用して、所定の条件下、カプリレートでの不活性化処理の実行可能性を示し、免疫グロブリン凝集物、又は他の不可逆の沈殿物の形成を誘導せず、そしてそれは、続く精製プロセスを非常に容易にすることを示す。
結果は、タンパク質の十分な希釈と、十分な程度の純度との組み合わせにおいて、免疫グロブリンポリマーの生成に与えるPEGの保護効果が、明らかであることを示す。
本実験例は、十分な純度を有する材料を添加し、そしてタンパク質、及びPEG濃度に関する特定の条件に適合する場合、非沈殿条件、及び/又は凝集促進条件下、ウイルス不活性化能力を有する試薬としてのみの、カプリレートの使用の実行可能性を示す。
本発明は、同じ実施態様を参照して提示し、そして記載してきたが、本明細書、及び特許請求の範囲において開示された主題を解釈した後、当業者に明らかである、製造、又は他の詳細に関して、複数の変形が存在するので、これらの実施態様が、本発明を限定するものでないことが理解される。従って、すべての変形、又は同等物が、以下の特許請求の範囲に記載の発明の最も広い範囲内に含まれると考えられる場合、それらは、本発明の範囲に含まれる。