JP6363014B2 - スピネル粉末及びその製造方法 - Google Patents

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  • Compounds Of Alkaline-Earth Elements, Aluminum Or Rare-Earth Metals (AREA)

Description

本発明は,ガスセンサ素子の保護皮膜を形成するなどに用いられるスピネル粉末及びその製造方法に関する。
マグネシアとアルミナとからなるスピネル(MgO・Al系スピネル,以下,単に「スピネル」と略記する。)は,高い耐熱性,高い結晶安定性をもっていることから,内燃機関酸素濃度を検出するためのガスセンサ素子の電極保護膜として古くから応用されている。例えば,ガスセンサ素子のうち酸素センサ素子では,スピネル粉末を使用したプラズマ溶射膜を電極保護膜として使用することが多い。酸素センサ素子は,ある一定以上の温度に達しないと酸素濃度を検出することができないが,内部ヒータにより加熱することで外部雰囲気温度が低い状態であっても酸素ガス濃度を測定できる。この酸素センサ素子では,排気ガスがプラズマ溶射膜を拡散して電極に到達し,この電極上での反応により出力を発生することで酸素を検出している。
酸素センサに対しては,測定する酸素濃度の濃淡に応じて電極保護膜(センサ保護膜)の形質を変化させ,所望の測定特性を得ることができる性能が求められる。このような観点から電極保護膜形成用の材料として,ポーラスでないスピネル粉末やポーラスタイプのスピネル粉末が使用される。ポーラスでないスピネル粉末は,比較的高濃度雰囲気の酸素を測定する酸素センサに使用されている。従来,ポーラスでないスピネル粉末やその製造方法については種々検討されている(例えば,特許文献1等を参照)。
一方,ポーラスタイプのスピネル粉末は,比較的低濃度雰囲気の酸素を測定する酸素センサに適しているが,ポーラスタイプのスピネル粉末やその製造方法についてはあまり検討されていない。そのため,従来のポーラスタイプのスピネル粉末においては,未反応物やスピネルでない成分の残留があるという問題や,製造工程が長く収率も低いという問題があった。この場合の未反応物やスピネルでない成分の主な残留成分としては,スピネル粉末を製造する際の出発原料であるマグネシアおよびアルミナが挙げられる。マグネシアは排気ガス中の水分と反応して水酸化マグネシウムとなることで体積膨張が生じ,電極保護膜の劣化を促進させる。アルミナは高温領域の反応性が高く,排ガス中の不純物と反応しやすいので,マグネシア同様に電極保護膜の劣化を促進する。
また,一般的なポーラスタイプのスピネルは,アルミナ原料粉末とマグネシア原料粉末を一旦電気炉にて加熱して溶かし,反応凝固させてスピネルを生成させた後,所定の粒径に粉砕分級すること工程を経て製造される。そのため,ポーラスタイプのスピネルの製造に要する時間が長く,また,不要な微粒を分級するため工程を要することで製品収率が低くなるというデメリットもある。さらに,高温反応であるため,冷却時に一部のスピネルがマグネシア(ペリクレース)とアルミナ(コランダム)に相分離し,これにより,スピネル粉末中にマグネシアとアルミナが不純物として残留する問題もあった。
上記問題を解決するため,低温でマグネシアとアルミナの反応を促進する検討がなされており,例えば,ポーラスタイプのスピネル製造においてMgFやAlFといったフッ化物を焼結助剤として使用すると,反応を促進させる効果が高いことが示されている(例えば,非特許文献1等を参照)。
特開2012−232871号公報
スピネルの合成と焼結におけるふっ化物添加の影響(耐火物 42[9]478−483(1990))
しかしながら,上記MgFやAlFといったフッ化物は環境負荷が大きいため,このようなフッ化物を使用しての生産は工業的には適していない。さらに,このように得られるスピネル粉末も上記電極保護膜に適した比表面積やカサ密度を有しておらず,また,未反応のマグネシア,アルミナが残存しやすいという問題もあった。
本発明は,上記に鑑みてなされたものであり,純度が高く,酸素センサ素子の電極保護膜に適したポーラスなスピネル粉末及び環境負荷が小さく製造効率にも優れ,高純度のスピネル粉末を得ることができる製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は,上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果,アルミナ原料とマグネシア原料と,特定量の塩化物系ハロゲン化合物を混合した後,焼成することにより,上記目的を達成できることを見出し,本発明を完成するに至った。
即ち,本発明は,下記のスピネル粉末及びその製造方法に関する。
1.大きさが0.1〜4μmの粒状のスピネル粒子で覆われているスピネル粉末であって,粒径D10が25μm以上,粒径D50が40〜80μm及び粒径D90が90μm以上の粒度分布を有し,比表面積が0.2〜2m/gであり,カサ比重が1.10〜1.20g/cmであり,結晶子径が400Å以上であることを特徴とするスピネル粉末。
2.アルミナ換算量が66〜76重量%,かつ,マグネシア換算量が24〜34重量%である,上記項1に記載のスピネル粉末。
3.下記式(1)で表されるS
S=I[αAl(113)]
/{I[αAl(113)]+I[MgAl(311)]}・・・(1)
(ここで,MgAl(311)はX線回折測定における37°付近のピーク強度,αAl(113)はX線回折測定における43.5°付近のピーク強度である。)
の値が0.01以下であり,
下記式(2)で表されるT
T=I[MgO(200)]
/{I[MgO(200)]+I[MgAl(311)]} ・・・(2)
(ここで,MgAl(311)はX線回折測定における37°付近のピーク強度,MgO(200)はX線回折測定における43°付近のピーク強度である。)
の値が0.01以下である,上記項1又は2に記載のスピネル粉末。
4.アルミナ原料と,マグネシア原料と,塩素を含有するハロゲン化合物を前記アルミナ原料及び前記マグネシア原料の全重量に対して0.2〜3.0重量%混合して混合物を調製する第1工程と,前記混合物を1050〜1300℃で焼成してスピネル粉末を得る第2工程とを備えることを特徴とするスピネル粉末の製造方法。
5.前記スピネル粉末は,アルミナ換算量が66〜76重量%,かつ,マグネシア換算量が24〜34重量%である,上記項4に記載の製造方法。
6.前記アルミナ原料が,粒径D10が25μm以上,粒径D50が40〜80μm及び粒径D90が90μm以上の粒度分布を有し,カサ比重が0.99〜1.05g/cm以下であり,前記マグネシア原料の粒径D50が1〜10μmである,上記項4又は5に記載の製造方法。
7.前記ハロゲン化合物が,塩化リチウム,塩化マグネシウム及び塩化ナトリウムの群から選ばれる少なくとも一つである,上記項4〜6のいずれか1項に記載の製造方法。
8.前記ハロゲン化合物が塩化ナトリウムであることを特徴とする上記項4〜6のいずれか1項に記載の製造方法。
9.前記焼成は1100〜1200℃の雰囲気下で行う,上記項4〜8のいずれか1項に記載の製造方法。
本発明に係るスピネル粉末は,ポーラス状(多孔質状)に形成されており,特定の粒度分布,比表面積,カサ比重及び結晶子径を有するため,酸素センサ素子の電極保護膜を形成するのに適した材料である。
また,本発明に係るスピネル粉末の製造方法は,スピネル粉末を製造するのに適した方法であり,特に,環境負荷が小さく製造効率にも優れ,高純度のスピネル粉末を得ることができる。
実施例1のスピネル粉末のSEM写真(500倍スケール)を示す。 実施例1のスピネル粉末のSEM写真(1000倍スケール)を示す。 実施例1のスピネル粉末のSEM写真(3000倍スケール)を示す。 実施例2のスピネル粉末のSEM写真(3000倍スケール)を示す。 実施例1〜3及び比較例2のスピネル粉末のXRDパターンを示す。 実施例1のスピネル粉末の断面のSEM写真(500倍スケール)を示す。 比較例4のスピネル粉末の断面のSEM写真(1000倍スケール)を示す。 実施例1のスピネル粉末を原料とした溶射膜の断面のSEM写真(200倍スケール)を示す。 比較例4のスピネル粉末を原料とした溶射膜の断面のSEM写真(200倍スケール)を示す。
以下,本発明の実施形態について詳細に説明する。なお,本明細書において,「%」とは特に断りがない場合「重量%=質量%」を示す。
1.スピネル粉末
図1〜4は,それぞれスピネル粉末の走査型電子顕微鏡による写真を示している。スピネル粉末は,大きさが0.1〜4μmの粒状のスピネル粒子で覆われた形状を有する。特に,スピネル粉末は,粒径D10が25μm以上,粒径D50が40〜80μm及び粒径D90が90μm以上の粒度分布を有し,比表面積が0.2〜2m/gであり,カサ比重が1.10〜1.20g/cmであり,結晶子径が400Å以上である。なお,ここでいう粒径は,レーザー回折散乱装置(堀場製作所社製「LA−950」)で測定した値をいい,粒径D10,D50及びD90はそれぞれ,測定した粒子径分布の累積頻度が10体積%,50体積%及び90体積%となる粒径をいう。
図1等に示すように,スピネル粉末は,少なくとも表面が粒状のスピネル粒子で覆われた構造を有する。なお,ここでいう「粒状」は,例えば粒子状などの形態であるが,球形,楕円形,扁平状等のいずれの形態であっても構わないし,また,これらに限らず,多少の変形等があっても何ら問題はない。
スピネル粉末は,少なくとも表面が粒状のスピネル粒子で覆われて形成されている限りは,その構造や形状は特に問わない。例えば,スピネル粉末はスピネル粒子の一次粒子が凝集してなる二次凝集粒子の形態であってもよいし,この二次凝集粒子がさらに凝集してなる三次凝集粒子の形態であってもよい。また,スピネル粉末がアルミナ原料を使用して製造される場合,得られたスピネル粉末は,アルミナの表面をスピネル粒子が覆うように形成されることもある。いずれの形態であっても,スピネル粉末はポーラス状に形成される。
スピネル粒子の大きさは0.1〜4μmであるが,特に,0.3〜3μmであることが好ましい。スピネル粉末は,少なくとも0.1〜4μmの範囲のスピネル粒子で覆われていればよく,この範囲から外れるスピネル粒子がある程度存在しても特に問題はない。なお,ここでいうスピネル粒子の大きさは,スピネル粉末の走査型電子顕微鏡(SEM)観察から計測されたものである。具体的には,SEM観察において,20個のスピネル粒子の粒径(最長径)を計測し,これらの平均値をスピネル粒子の大きさと定義したものである。
スピネル粉末は,粒径D10が25μm以上,粒径D50が40〜80μm及び粒径D90が90μm以上の粒度分布を有することで,溶射材としての流れ性が充分に確保され,また,プラズマ炎による溶融も安定な状態となる。なお,粒径D10の上限値は40μm未満であり,例えば38μmとすることができる。また,D90の上限値は170μmとすることができる。
スピネル粉末の比表面積が0.2〜2m/gであることで,電融スピネル粉末と比較して,溶射性が改善され,溶射皮膜の特性を維持することができるので,酸素センサ素子の電極保護膜を形成するのに適した材料となる。この観点から,スピネル粉末の比表面積は,好ましくは0.3〜1.5m/g,特に好ましくは0.4〜1m/gである。
スピネル粉末のカサ比重が1.10〜1.20g/cmであることで,電融スピネル粉末と比較して,溶射性が改善され,溶射皮膜の特性を維持することができるので,酸素センサ素子の電極保護膜を形成するのに適した材料となる。この観点から,スピネル粉末のカサ比重は,好ましくは1.10〜1.20g/cm,特に好ましくは1.12〜1.17g/cmである。スピネル粉末はポーラス状に形成されるため,上記のようにカサ比重が低いというのが一つの特徴である。
スピネル粉末の結晶子径は400Å以上(すなわち40nm以上)であれば,センサー素子上への溶射膜形成時にスピネル相の安定性が向上するという利点がある。スピネル粉末の結晶子径は焼成温度に依存し,焼成温度が高いほど結晶化が進んで結晶子径が大きくなる傾向にある。スピネル粉末の結晶子径は,450Å(45nm)以上がより好ましく,500Å(50nm)以上がさらに好ましい。結晶子径の上限は特に限定されないが,焼成後の解砕性やカサ比重とのバランスからおのずと上限が定まり,700Å(70nm)以下が望ましいと考えられる。
ここで,スピネル(MgO・Al系スピネル)の理論組成MgAlは,アルミナ換算量が全体の71.7%,マグネシア換算量が全体の28.3%であることが好ましい。スピネル粉末が後述の反応助剤を使用して製造された場合は,得られたスピネル粉末の結晶構造はスピネル相単相に近い状態となる。ただし,スピネル粉末中のアルミナ換算量及びマグネシア換算量は必ずしも上記範囲に限定されない。例えば,アルミナ換算量は66〜76%,マグネシア換算量は24〜34%であってもよく,この範囲内であれば,スピネル粉末は,溶射性に優れ,好適な溶射皮膜を形成することができる。
本発明のスピネル粉末では,マグネシア(ペリクレース)やアルミナ(コランダム)に起因するマグネシアやアルミナの不純物残存量が少なく,高純度である。スピネル粉末中の不純物としてのマグネシアやアルミナの残存量は,スピネル粉末のX線回折測定から判定することができる。具体的には,スピネル粉末のX線回折測定において,下記式(1)で表されるS値及び下記式(2)で表されるT値から判定できる。
S=I[αAl(113)]
/{I[αAl(113)]+I[MgAl(311)]}・・・(1)
ここで,MgAl(311)はX線回折測定における37°付近のピーク強度,αAl(113)はX線回折測定における43.5°付近のピーク強度である。
T=I[MgO(200)]
/{I[MgO(200)]+I[MgAl(311)]} ・・・(2)
ここで,MgAl(311)はX線回折測定における37°付近のピーク強度,MgO(200)はX線回折測定における43°付近のピーク強度である。
上記S値は0.01以下,かつ,T値は0.01以下であることが好ましく,この場合,スピネル粉末中における不純物としてのアルミナ及びマグネシアが1%以下となり,より高純度のスピネル粉末となる。
本発明のスピネル粉末は,ポーラス状(多孔質状)に形成されており,上述のように特定の粒度分布,比表面積,カサ比重及び結晶子径を有するため,酸素センサ素子の電極保護膜を形成するのに適した材料である。特に,スピネル粉末は,溶射時において粒子内部の気孔などを巻き込む等の現象を生じさせず,所望のポーラス状スピネル保護膜を得ることができる。
2.スピネル粉末の製造方法
上述したスピネル粉末は,例えば,アルミナ原料と,マグネシア原料と,塩素を含有するハロゲン化合物とを混合して混合物を調製する第1工程と,前記混合物を焼成してスピネル粉末を得る第2工程とを備える製造方法によって製造することができる。
アルミナ原料の種類は特に限定的でなく,市販のアルミナ等を使用することができるが,特に,ポーラス状に形成されていることが好ましい。
アルミナ原料の純度としては,99%以上,特に99.5%以上であることが好ましい。アルミナ原料がポーラス状に形成されていると,一次結晶粒間に多数の粒界が存在するので反応の進行が抑制される。
アルミナ原料はスピネル粉末の母体となるため,使用するアルミナ原料の粒度分布は得られるスピネル粉末の粒度分布に大きく寄与する。この観点から,アルミナ原料としては,粒径D10が25μm以上,粒径D50が40〜80μm,粒径D90が90μm〜130μmである粒度分布を有することが好ましい。この粒度分布の範囲であれば,所望の特性をもつポーラスタイプのスピネル粉末が得られやすい。なお,粒径D10,D50,D90は上述と同様の定義である。
また,使用するアルミナ原料のカサ比重は,得られるスピネル粉末の気孔率に大きく寄与する。この観点から,使用するアルミナ原料のカサ比重は,0.99〜1.05g/cmであることが好ましい。この範囲内であれば,製造したスピネル粉末の溶射材としての流れ性を確保しつつ,ポーラスなスピネル溶射膜を得ることができる。より好ましいアルミナ原料のカサ比重は,1.01〜1.03g/cmである。
マグネシア原料としては,焼成することによりマグネシアになるものであれば,特に限定されないが,例えば,マグネシア,水酸化マグネシウム,炭酸マグネシウム等が挙げられる。これらの中でも,マグネシアが工業的に量産化されており,安価であるので好ましい。特に,マグネシア原料としては,海水法で製造された反応性の高い軽焼マグネシアが好ましい。マグネシア原料の純度は,水分と灼熱減量を除いて97.5%以上であることが好ましい。
マグネシア原料の粒径D50は,上記アルミナ原料との反応に適しているという観点で1〜10μmであることが好ましく,2〜8μmであることがより好ましい。
塩素を含有するハロゲン化合物(以下,単に「ハロゲン化合物」という)の具体例としては,塩化リチウム,塩化マグネシウム,塩化ナトリウム,塩化カリウム,塩化アルミニウム,塩化アンモニウムなどが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし又は2種以上を併用してよい。上記例示列挙したハロゲン化合物の中でも,塩化リチウム,塩化マグネシウム,塩化ナトリウム,塩化アルミニウムが好ましいが,反応性,不純物の観点,環境負荷の観点から,塩化ナトリウムがさらに好ましい。
塩化ナトリウムとしては,一般に市販されている工業用製品でよく,純度としては99%以上,特には99.5%以上の製品を使用することが好ましい。使用する塩化ナトリウムの粒径に特に制限はないが,例えば,1μm〜1mm程度であれば,混合物を調製するにあたっての混合が容易で,反応に偏析も生じにくいという点で好ましい。
ハロゲン化合物は重金属を含まないことが好ましく,この場合,スピネル粉末中に重金属が残存することを防止できる。なお,スピネル粉末の製造においては,ヨウ素系ハロゲン化物も塩素含有ハロゲン化合物と同様の反応性を有するという点では併用可能であるが,環境負荷をより抑制するという観点では,塩素を含有するハロゲン化合物が好ましいといえる。
上述したようにスピネルの理論組成は,アルミナ換算量が71.7%,マグネシア換算量が28.3%であるが,生成するスピネル粉末中のアルミナ換算量が66〜76%,マグネシア換算量が24〜34%となるような混合割合でアルミナ原料及びマグネシア原料を混合することが好ましい。このような混合割合でアルミナ原料及びマグネシア原料を混合することで,アルミナ原料やマグネシア原料の残留を抑制することができる。例えば,アルミナ原料及びマグネシア原料の混合割合は,アルミナ原料及びマグネシア原料の全量に対し,アルミナ原料が68〜74%,マグネシア原料が26〜32%であることが好ましく,アルミナ原料が71〜73%,マグネシア原料が27〜29%がさらに好ましい。
一方,塩素を含むハロゲン化合物は,アルミナ原料及びマグネシア原料の全重量に対して0.2〜3.0重量%添加されていることが好ましく,さらに好ましくは0.3〜2.0重量%,特に好ましくは0.3〜1.0重量%である。この範囲内であれば,環境負荷が小さく且つ生産効率が高くポーラスタイプスピネル粉末を製造することができる。
ハロゲン化合物が塩化ナトリウムである場合,塩化ナトリウムは,アルミナ原料及びマグネシア原料の全重量に対して前記と同様に0.2〜1重量%添加されていることが好ましい。塩化ナトリウムの添加量が0.2重量%以上であれば,反応を十分に進行させることができる。また,塩化ナトリウムの添加量が1重量%以下であれば,焼成用サヤや焼成炉等の設備の劣化を抑制できる。塩化ナトリウムは焼成時に気化するものの,水蒸気との反応性が高いので,水などのトラッピング処理等により回収することが好ましい。塩化ナトリウムの添加量は,アルミナ原料及びマグネシア原料の全重量に対して0.3〜0.8重量%であることが好ましく,0.4〜0.6重量%であることがより好ましい。
本発明の効果が阻害されない程度であれば,混合物には,アルミナ原料にマグネシア原料をコーティングするための分散剤,バインダー等のコーティング助剤が含まれていてもよい。
第1工程で混合物を調製する方法は特に限定されず,所定量のアルミナ原料,マグネシア原料,ハロゲン化合物及びその他必要な添加剤を準備し,これらを任意の方法で混合すればよい。例えば,市販されている混合機であれば特にどのような混合機でも混合物を調製することが可能である。混合機の具体例としては,V型ミキサー,ロッキングミキサー,リボンミキサー等が挙げられ,これらの中でもV型ミキサーが,構造が簡単でデッドゾーンが少なく,しかも,均一に混合できるという点で好ましい。
第2工程では,上記第1工程で調製した混合物を焼成する。この焼成を行う工程によりスピネル粉末が得られる。
焼成は1050〜1300℃の雰囲気下で行うことが好ましい。1050℃以上であれば,マグネシア原料とアルミナ原料とが十分に反応し,未反応原料が残存しにくい。また,1300℃以下であれば,焼結が過剰に進むことを防止することができ,焼結後の解砕処理が容易になり,また,溶射材としての流れ性が損なわれにくい。より好ましくは,1100〜1200℃の雰囲気下での焼成である。
焼成時間は,焼成の温度にもよるが,通常は1〜6時間とすればよい。例えば,焼成を1150℃の雰囲気下で行うのであれば,3時間以上,特には3〜6時間が好ましい。この場合,焼成ムラの発生を抑制しやすい。なお,同様の理由により,焼成を1200℃の雰囲気下で行うのであれば,2〜5時間,1300℃では1〜3時間が好ましい。
焼成を行うにあたって使用する焼成炉は,市販されているものでよい。なお,焼成雰囲気については,特に限定はなく,通常は大気圧下で行えばよい。
焼成が終了した後は,特段の処理等の必要はないが,必要に応じて表面処理剤を添加してもよいし,解砕処理や分級処理を行ってもよい。例えば,少量のアルミナアエロジル等の表面処理剤を焼成物に添加し,解砕した後,分級処理を行ってもよい。
なお,スピネル粉末は,少なくとも上記第1工程及び第2工程を含む製造工程により製造されるが,その他の工程を含んでいてもよい。
上述した製造方法によって得られるスピネル粉末は,大きさが0.1〜4μmの粒状のスピネル粒子で覆われている。そして,このスピネル粉末は,粒径D10が25μm以上,粒径D50が40〜80μm及び粒径D90が90μm以上の粒度分布を有し,比表面積が0.2〜2m/gであり,カサ比重が1.10〜1.20g/cmであり,結晶子径が400Å以上である。
スピネル粉末が上記のような特異な形状をもつのは,その製造方法に起因すると考えられる。粒状に形成されるマグネシア原料は,混合物中では,マグネシアどうしが点接触あるいは面接触していることに加えて,複数のアルミナ原料と点接触あるいは面接触していると考えられる。また,アルミナ原料の表面には多数のマグネシア原料が点接触あるいは面接触していると考えられる。このように点接触あるいは面接触したアルミナ原料とマグネシア原料は,焼成が進んでいくとアルミナ原料とマグネシア原料との接点から,Mg2+とAl3+が相互に拡散しながらスピネル化が進んでいき,上記形状を有するスピネル粉末が得られると考えられる。
非特許文献2(スピネルの特性と耐火物への応用(耐火物 43[1]29−37(1991))には,「MgOとAlの反応におけるスピネルの生成においては,酸素イオンの拡散はほとんどなく,Mg2+とAl3+の両イオンが固定した酸素格子を通って相互拡散すること,又,単結晶Alと単結晶MgOを接触させ,空気中1500℃で加熱処理して生成させたスピネルは,Al側では,生成に際して酸素イオンの積み重ねが六方最密充填から立方最密充填構造へ変化して,Al結晶と三次元的に一定の方位関係を持ったトポタキシャル機構で生成し,又,MgO側では,MgOとスピネルは共に立方最密充填構造の酸素イオン配列を持つにもかかわらず,エピタキシャル機構で生成するとし,MgO側とAl側に生成するスピネル比は1:19/4になる」との記載があり,スピネルとMgOの境界で起こる反応を次式:
4MgO−3Mg2++2Al3+=MgAl
とし,また,スピネルとAlの境界で起こる反応を次式:
57/9Al+3Mg2+−2Al3+=19/4(Mg36/57Al128/57
としている。
上記非特許文献2の記載のように,アルミナ側では形状及び結晶構造を本質的に保持しながら反応するというトポタキシャル効果が発生し,マグネシア表面の粒状の形状が保持されつつマグネシアがその周囲からエピタキシャル的に拡散により供給されることで,上記構造のスピネル粉末が得られると推定される。
アルミナ原料とマグネシア原料との反応における反応助剤であるハロゲン化合物がスピネル合成反応を促進するモデルについては次のように考察することができる。まず,反応助剤であるハロゲン化物が700℃〜1000℃程度において溶解し,反応助剤由来のイオンがアルミナおよびマグネシア粒界を潤侵(化学吸着)して液相界面を形成する。マグネシアはアルミナ粒子内部を拡散する前に,液相界面を伝播するため,通常の固相反応と比べ拡散性が向上する。これにより,両者の反応が促進する。
上記のように反応が促進された後,さらに反応温度雰囲気下で長時間の熱エネルギーを付与することで,化学吸着されたイオンが分解し昇華する。ここで,反応助剤を添加して得られたスピネル粉末の原子吸光分析を行うと,Naはppmオーダーであり,また,スピネル粉末の分光光度計を用いた比濁法の分析を行うと,Cl元素は検出下限以下である。よって,反応助剤を使用してスピネル粉末を製造すると,得られるスピネル粉末には反応助剤由来の不純物がほとんど残存していない。このことから,上記昇華が生じるまでの時間は比較的短時間であるといえる。
本発明の製造方法では,第1工程で調製する混合物中に塩素を含有するハロゲン化合物が含まれることで,アルミナ原料とマグネシア原料との反応性を向上させることができる。そして,焼成時に原料由来のガスが発生するものの,これらのガスは回収が容易であるので,例えばフッ化物等の原料を使用する場合に比べて環境負荷を小さくすることができる。また,反応が促進されることで反応温度を低下させることができるため,降温時におけるスピネル以外の成分が析出するのを抑制することもできる。さらに,焼成後の微粒分級が不要であるので,収率を向上させることができ,生産効率も優れる。
そして,得られたスピネル粉末は,純度が高く,また,特定の粒度分布,比表面積,カサ比重及び結晶子径を有するため,酸素センサ素子の電極保護膜を形成するための材料として適している。
以下,実施例により本発明をより具体的に説明するが,本発明はこれら実施例の態様に限定されるものではない。
各実施例及び比較例において,粒径,比表面積,X線回折の強度比(αAl比及びMgO比)及び結晶子径は以下の方法により測定した。
(粒径測定)
粒径(D10,D50,D90)は,レーザー回折散乱装置(堀場製作所製LA−950)で測定した。
(比表面積測定)
比表面積計(島津製作所製「FlowsorbII2300」)を用い,BET法により測定した。
(X線回折の強度比(αAl比及びMgO比))
RINT2500(リガク社製)を用い,以下の測定条件で行った。
X線源:CuKα,管電圧:50kV,管電流:300mA
αAl比及びMgO比は,それぞれ以下(1)式及び(2)式より算出した。
I[αAl(113)]
/{I[αAl(113)]+I[MgAl(311)]}・・・(1)
I[MgO(200)]
/{I[MgO(200)]+I[MgAl(311)]} ・・・(2)
ここで,MgAl(311)は37°付近,αAl(113)は43.5°付近,MgO(200)は43°付近のピークである。
(結晶子径)
結晶子径は,X線回折の強度比の測定におけるMgAl(311)の37°付近のピークから算出した。この結晶子径は,Sheller法により自動計算で算出した。
スピネル粉末は,以下の実施例及び比較例のように製造した。
(実施例1)
アルミナ原料として,純度99.5%以上であり,粒径D10が29.0μm,粒径D50が60.3μm,粒径D90が100μmであるアルミナ(玉発磨料有限公司「YFA−1」)3.67kgと,マグネシア原料として,純度97.5%以上(水分及び灼熱減量除き)であり,粒径D50が7.0μmの酸化マグネシウム(神島化学工業株式会社製「スターマグU」)1.38kgと,ハロゲン化合物として,塩化ナトリウム(キシダ化学製,試薬1級)25gとを準備した。なお,塩化ナトリウムの使用量は,アルミナ原料及びマグネシア原料の全量に対して約0.5重量%である。これらの各原料を10LのV型混合機に入れ,30分間,混合を行うことで混合物を調製した(第1工程)。
得られた混合物を焼成サヤに投入し,1150℃雰囲気下で6時間にわたって大気圧下で焼成を行い,スピネル粉末を得た(第2工程)。
得られたスピネル粉末のカサ比重は,1.14g/cm,粒径D10が31.2μm,粒径D50が61.3μm,粒径D90が104.2μmであった。また,比表面積は0.5m/gであった。なお,電融スピネル粉末の比表面積は0.1m/g程度であるので,約5倍の比表面積のスピネル粉末が得られていることがわかった。
図5は,得られたXRDパターンを示している。このXRDパターンからコランダムとペリクレース共にほとんど認められず,ほぼ完全なスピネルが生成していることがわかった。なお,αAl比は0.0013(<0.01),MgO比は0.001(<0.01)であった。結晶子径は529Åであった。
図6は,上記実施例1で得たスピネル粉末の断面のSEM写真を示している。このSEM写真から,上記のように得られたスピネル粉末がポーラス状に形成されていることがわかる。
(実施例2)
第2工程における焼成を1200℃雰囲気下及び焼成の時間を5時間に変更したこと以外は,実施例1と同様にしてスピネル粉末を得た。
得られたスピネル粉末のカサ比重は1.12g/cm,粒径D10が38.3μm,粒径D50が65.7μm,粒径D90が105.9μmであった。また,比表面積は0.4m/gであった。αAl比は0.0003(<0.01),MgO比は<0.0001であった。結晶子径は567Åであった。なお,実施例1同様,図5にXRDパターンを示している。
(実施例3)
第2工程における焼成を1100℃雰囲気下に変更したこと以外は,実施例1と同様にしてスピネル粉末を得た。
得られたスピネル粉末のカサ比重は1.13g/cm,粒径D10が30.8μm,粒径D50が57.1μm,粒径D90が96.2μmであった。また,比表面積は0.5m/gであった。αAl比は0.009(<0.01),MgO比は0.008(<0.01)であった。結晶子径は470Åであった。なお,実施例1同様,図5にXRDパターンを示している。
(実施例4)
塩化ナトリウム添加量を10gに変更したこと以外は,実施例1と同様にしてスピネル粉末を得た。なお,塩化ナトリウムの使用量は,アルミナ原料及びマグネシア原料の全量に対して約0.2重量%である。
得られたスピネル粉末のカサ比重は1.12g/cm,粒径D10が30.3μm,粒径D50が59.8μm,粒径D90が93.7μmであった。また,比表面積は0.4m/gであった。αAl比は0.007(<0.01),MgO比は0.0006(<0.01)であった。結晶子径は550Åであった。
(実施例5)
塩化ナトリウム添加量を50gに変更したこと以外は,実施例1と同様にしてスピネル粉末を得た。なお,塩化ナトリウムの使用量は,アルミナ原料及びマグネシア原料の全量に対して約1重量%である。
得られたスピネル粉末のカサ比重は1.15g/cm,粒径D10が33.8μm,粒径D50が62.8μm,粒径D90が99.2μmであった。また,比表面積は0.4m/gであった。αAl比は0.002(<0.01),MgO比は0.001(<0.01)であった。結晶子径は536Åであった。
(実施例6)
塩化ナトリウムの代わりに塩化リチウムを20g添加したこと以外は,実施例1と同様にしてスピネル粉末を得た。塩化リチウムの使用量は,アルミナ原料及びマグネシア原料の全量に対して約0.4重量%(約0.5mol%)である。
得られたスピネル粉末のカサ比重は1.17g/cm,粒径D10が33.9μm,粒径D50が68.7μm,粒径D90が105.2μmであった。また,比表面積は0.3m/gであった。αAl比は0.0002(<0.01),MgO比は0.0002(<0.01)であった。結晶子径は583Åであった。
(実施例7)
塩化ナトリウムの代わりに塩化マグネシウムを25g添加したこと以外は,実施例1と同様にしてスピネル粉末を得た。塩化リチウムの使用量は,アルミナ原料及びマグネシア原料の全量に対して約0.5重量%(約0.6mol%)である。
得られたスピネル粉末のカサ比重は1.15g/cm,粒径D10が31.6μm,粒径D50が59.3μm,粒径D90が97.6μmであった。また,比表面積は0.4m/gであった。αAl比は0.0009(<0.01),MgO比は0.0008(<0.01)であった。結晶子径は525Åであった。
(比較例1)
塩化ナトリウム添加量を5gに変更したこと以外は,実施例1と同様にしてスピネル粉末を得た。なお,塩化ナトリウムの使用量は,アルミナ原料及びマグネシア原料の全量に対して約0.1重量%である。
得られたスピネル粉末のカサ比重は1.07g/cm,粒径D10が29.3μm,粒径D50が59.4μm,粒径D90が93.6μmであった。また,比表面積は0.7m/gであった。αAl比は0.34,MgO比は0.20であった。結晶子径は379Åであった。また,スピネル粉末中には未反応のコランダムとペリクレースが見られた。
(比較例2)
第2工程における焼成を1000℃雰囲気下に変更したこと以外は,実施例1と同様にしてスピネル粉末を得た。
得られたスピネル粉末のカサ比重は0.86g/cm,粒径D10が28.9μm,粒径D50が58.3μm,粒径D90が91.6μmであった。また,比表面積は0.9m/gであった。αAl比は0.71,MgO比は0.60であった。結晶子径は287Åであった。なお,実施例1同様,図5にXRDパターンを示している。
(比較例3)
塩化ナトリウム等の添加剤を使用せずに,実施例1と同様にしてスピネル粉末を得た。
得られたスピネル粉末のカサ比重は0.83g/cm,粒径D10が26.4μm,粒径D50が53.2μm,粒径D90が89.6μmであった。また,比表面積は0.6m/gであった。αAl比は4.3,MgO比は3.0であった。結晶子径は258Åであった。
(比較例4)
純度99.5%以上で,平均粒径20.6μmの電融アルミナ(宇治電化学工業株式会社製,WA#800)3.67kgと純度97.5%以上(水分及び灼熱減量除き)で平均粒径7.0μmの酸化マグネシウム(神島化学工業株式会社製,スターマグU)1.38kgを10LのV型混合機に入れ,30分間,混合を行った。これを1250℃×4時間,大気圧下で焼成を行い,スピネル粉末を得た。
得られたスピネル粉末のかさ比重は1.27g/cm(ポーラスタイプでない),D10は18.4μm,粒径D50は26.8μm,D90は39.8μmであった。比表面積は0.7m/gであった。αAl比は0.013であった。
図7は,上記比較例4で得たスピネル粉末の断面のSEM写真を示している。このSEM写真から,比較例4で得たスピネル粉末は,上記実施例1で得たスピネル粉末よりも緻密に形成されていることがわかる。
実施例1〜7のスピネル粉末は,XRDパターンの結果から高純度で製造されていることがわかり,また,所望の粒度分布,比表面積,カサ比重及び結晶子径を有していることがわかった。よって,実施例1〜7のスピネル粉末は,酸素センサ素子の電極保護膜として好適な材料である。
(プラズマ溶射による膜形成)
実施例と比較例のプラズマ溶射による保護膜の形成は以下の条件で行った。プラズマ溶射ガン(PG−120:Bay State Surface Technologies社製)を用いて1次ガス(Ar)流量70L/分,2次ガス(N・水素混合)流量10L/分とした。これらガスが流れるところに電流680A,電圧40Vを印加して発生させたプラズマジェットに溶射粉を15g/分で供給して熔融させて,試験片(例えば,ジルコニア,ムライトや鉄製)に吹付けた。このとき溶射ガンの噴出口からガスセンサ素子の距離を135mmとし,目標膜厚200μmとして膜を形成した。この膜が形成された試験片を切断し,切断された膜の断面をSEM観察した。
図8,9はそれぞれ,上記実施例1で得たスピネル粉末を用いて作製した溶射膜の断面のSEM写真,上記比較例4で得たスピネル粉末を用いて作製した溶射膜の断面のSEM写真を示している。
実施例1で得たスピネル粉末で作製した溶射膜は,ポーラスタイプでない比較例4のスピネル粉末の溶射膜に比べて,空孔が多く形成されており,気孔率が高いことがわかる。この結果,アルミナ及びマグネシアをほとんど含有しない高気孔率のスピネル溶射膜が得られることがわかった。これに対し,比較例4のスピネル粉末の溶射膜は,実施例1のスピネル粉末の溶射膜に比べて,空孔が少なく,気孔率が低いものであり,ポーラスタイプとなっていないことがわかる。
スピネル粉末は,ポーラス状(多孔質状)に形成されており,特定の粒度分布,比表面積,カサ比重及び結晶子径を有する。よって,各種ガスセンサの電極保護膜に応用することができ,特に,酸素センサ素子の電極保護膜として好適である。

Claims (9)

  1. 大きさが0.1〜4μmの粒状のスピネル粒子で覆われているスピネル粉末であって,粒径D10が25μm以上,粒径D50が40〜80μm及び粒径D90が90μm以上の粒度分布を有し,比表面積が0.2〜2m/gであり,カサ比重が1.10〜1.20g/cmであり,結晶子径が400Å以上であることを特徴とするスピネル粉末。
  2. アルミナ換算量が66〜76重量%,かつ,マグネシア換算量が24〜34重量%である,請求項1に記載のスピネル粉末。
  3. 下記式(1)で表されるS
    S=I[αAl(113)]
    /{I[αAl(113)]+I[MgAl(311)]}・・・(1)
    (ここで,MgAl(311)はX線回折測定における37°付近のピーク強度,αAl(113)はX線回折測定における43.5°付近のピーク強度である。)
    の値が0.01以下であり,
    下記式(2)で表されるT
    T=I[MgO(200)]
    /{I[MgO(200)]+I[MgAl(311)]} ・・・(2)
    (ここで,MgAl(311)はX線回折測定における37°付近のピーク強度,MgO(200)はX線回折測定における43°付近のピーク強度である。)
    の値が0.01以下である,請求項1又は2に記載のスピネル粉末。
  4. アルミナ原料と,マグネシア原料と,塩素を含有するハロゲン化合物を前記アルミナ原料及び前記マグネシア原料の全重量に対して0.2〜3.0重量%混合して混合物を調製する第1工程と,前記混合物を1050〜1300℃で焼成してスピネル粉末を得る第2工程とを備えることを特徴とするスピネル粉末の製造方法。
  5. 前記スピネル粉末は,アルミナ換算量が66〜76重量%,かつ,マグネシア換算量が24〜34重量%である,請求項4に記載の製造方法。
  6. 前記アルミナ原料が,粒径D10が25μm以上,粒径D50が40〜80μm及び粒径D90が90μm以上の粒度分布を有し,カサ比重が0.99〜1.05g/cm以下であり,前記マグネシア原料の粒径D50が1〜10μmである,請求項4又は5に記載の製造方法。
  7. 前記ハロゲン化合物が,塩化リチウム,塩化マグネシウム及び塩化ナトリウムの群から選ばれる少なくとも一つである,請求項4〜6のいずれか1項に記載の製造方法。
  8. 前記ハロゲン化合物が塩化ナトリウムであることを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載の製造方法。
  9. 前記焼成は1100〜1200℃の雰囲気下で行う,請求項4〜8のいずれか1項に記載の製造方法。
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