JP6349866B2 - 積層体 - Google Patents

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Description

本発明は、フィルム・シート・成型品などの基材の上に、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化して得られる層を有してなる積層体であり、本発明の積層体は、優れた表面硬度、密着性という特徴を有するものである。このような積層体は、携帯電話など産業用電子機器の表示体保護カバーとして好適である。詳しくは、優れた表面硬度、密着性を有し、寸法安定性(低カール性)が良好であり、優れた耐衝撃性を有し、耐湿熱性が良好な積層体に関する。
プラスチック製品、例えばポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ABS、MS樹脂、AS樹脂などのスチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、トリアセチルセルロースなどの酢酸セルロース等の樹脂基材は、その軽量性、易加工性、耐衝撃性などが特に優れているので、容器、インストルメントパネル、包装材、各種ハウジング材、光デイスク基板、プラスチックレンズ、液晶デイスプレイやプラズマデイスプレイなどの表示機器の基材等、種々の用途に用いられている。
携帯電話など表示体を有する産業用電子機器や光学レンズを有する機器では、デザインの多様化、薄型化、大面積化の進展に伴い、その表示体カバーにも薄型化の要求が高まっており、現在、アクリル樹脂シートやポリカーボネート樹脂シートが一般的に使用されている。ポリカーボネート樹脂シートの場合、耐衝撃性は高いが、鉛筆硬度が低いという欠点がある。これに対し、アクリル樹脂シートの場合、ポリカーボネートより高い鉛筆硬度を有するものの、衝撃により割れやすいという欠点がある。
また、これらプラスチック基材はガラスに比べ表面硬度が低いため傷つきやすく、ポリカーボネートやアクリルのような透明な樹脂においては、その樹脂が持つ本来の透明性あるいは外観が著しく損なわれるという欠点があり、耐摩耗性を必要とする分野でのプラスチック基材の使用を困難なものとしている。このため、これらプラスチック基材の表面に耐摩耗性を付与する活性エネルギー線硬化性ハードコート材料(被覆材)が求められている。
ところで、ポリアクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂等は、一般的に石油資源から誘導される原料を用いて製造される。しかしながら、近年、石油資源の枯渇が危惧されており、植物等のバイオマス資源から得られる原料を用いたプラスチックからの資材の提供が求められている。また、二酸化炭素排出量の増加、蓄積による地球温暖化が、気候変動等をもたらすことが危惧されていることからも、使用後の廃棄処分においてもカーボンニュートラルな、植物由来モノマーを原料としたプラスチックからの資材の開発が求められている。
従来、植物由来モノマーとしてイソソルビドを使用し、炭酸ジフェニルとのエステル交換反応により、ポリカーボネート樹脂を得ることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、イソソルビドと脂肪族ジヒドロキシ化合物とを共重合することにより、イソソルビドからなるホモポリカーボネート樹脂の剛直性を改善する試みがなされている(例えば、特許文献2参照)。
中でも、脂環式ジヒドロキシ化合物である1,4−シクロヘキサンジメタノール等を重
合したポリカーボネートが多数提案されている(例えば、特許文献3〜5参照)。上記特
許文献には、イソソルビドを用いたポリカーボネート樹脂の提案がなされている。
さらに、イソソルビドに由来する構造単位を有するカーボネートと酸化防止剤を含有してなるポリカーボネート樹脂組成物をシート状に射出成形し、少なくとも1つの表面にハードコート処理を施した樹脂成形品(特許文献6参照)が提案されている。
英国特許第1079686号明細書 国際公開第04/111106号パンフレット 特開平6−145336号公報 特公昭63−12896号公報 特開2008−24919号公報 特開2009−102537号公報
しかしながら、引用文献1〜5のようなポリカーボネートは、用いられる用途により、更なる硬度が求められ、その成形品は硬度を維持し、形状を維持している必要があった。また、引用文献6のように、イソソルビドのみをジヒドロキシ化合物構成単位とするホモポリマーのポリカーボネート樹脂を用い、表面にハードコート処理を施した積層体は、ポリカーボネート樹脂とハードコートとの密着性が不十分であり、表面保護部材や光学ガラスの用途にはそぐわなかった。
そこで、本発明の解決しようとする課題は、上記特許文献のようなイソソルビドを含むポリカーボネート樹脂単体よりも硬度が向上され、密着性が良好であり、耐衝撃性に優れる積層体を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、本発明の構成の積層体が上記課題を解決できることを見出した。すなわち、本発明は以下に示すとおりである。
[1] 下記一般式(1)で表される構造を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位(a)と、その他のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位(b)とを有するポリカーボネート樹脂を含有する層(A層)および多官能(メタ)アクリレートを含有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化してなる層(B層)を有し、
該活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が、アクリル系共重合体(α)を含有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物であって、
アクリル系共重合体(α)が、以下の共重合体(β)に化合物(γ)を付加して得られたものである活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化してなる層である、積層体。
Figure 0006349866
(但し、上記一般式(1)で表される構造が−CH−OHの一部である場合を除く。)
共重合体(β):構造式(I)で表されるシリコーンモノマー(A)、エポキシ基を有する(メタ)アクリレート(B)およびその他共重合可能なモノマー(C)の共重合体
化合物(γ):分子内にカルボキシル基と1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物
Figure 0006349866
(式中、R は水素原子又はメチル基、R は炭素数1〜12のアルキレン基、R およびR はそれぞれメチル基又はフェニル基、nは10〜100の整数を表し、R およびR は、相互に同一でも異なっていてもよい。また、R は炭素数1〜12のアルキル基を表す。)
[2]前記A層と前記B層とが直接隣接するように形成されていることを特徴とする[1]に記載の積層体。
[3]前記ポリカーボネート樹脂中の構造単位(b)が、脂肪族ジヒドロキシ化合物及び脂環式ジヒドロキシ化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物に由来する構成単位であることを特徴とする[1]又は[2]のいずれかに記載の積層体。
[4]一般式(1)で表される構造を有するジヒドロキシ化合物が、下記一般式(2)で表される化合物であることを特徴とする[1]乃至[3]のいずれか1項に記載の積層体。
Figure 0006349866
[5]B層が活性エネルギー線により硬化されてなることを特徴とする[1]乃至[4]のいずれか1項に記載の積層体。
]前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が、前記アクリル系共重合体(α)を0.05重量%〜10重量%含有することを特徴とする[1]乃至[5]のいずれか1項に記載の積層体。
]前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物のアクリル共重合体(α)が共重合可能なモノマー(C)として、炭素数4〜22の直鎖または分岐型アルキル(メタ)アクリレートから少なくとも一つ選ばれる(メタ)アクリレートを含む、[1]乃至[6]のいずれか1項に記載の積層体。
[8][1]乃至[7]のいずれか1項に記載の積層体からなることを特徴とするディスプレイの前面板。
[9][1]乃至[7]のいずれか1項に記載の積層体からなることを特徴とするタブレット型パーソナルコンピュータの前面板。
[10][1]乃至[7]のいずれか1項に記載の積層体からなることを特徴とする車載用ディスプレイの前面板。
本発明によれば、光学歪みが低いだけでなく、優れた耐衝撃性、ハードコート密着性、表面硬度、及び耐湿熱性を有する積層体が得られ、電気・電子部品、自動車用部品等の射出成形用途、カメラレンズ、ファインダーレンズ、CCDやCMOS用レンズなどのレン
ズや、光ディスク、光学材料、光学部品などの光学用途などの幅広い分野へ適用可能な樹脂成形品を提供することが可能になる。
以下において、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の代表例であり、これらの内容に本発明は限定されるものではない。
なお、本明細書において(メタ)アクリロイル基とはアクリロイル基とメタクリロイル基との総称である。(メタ)アクリル、(メタ)アクリレートについても同様である。
また、本明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
1.積層体
本発明の積層体は、以下のとおりである。
下記一般式(1)で表される構造を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位(a)と、その他のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位(b)とを有するポリカーボネート樹脂を含有する層(A層)
および多官能(メタ)アクリレートを含有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化してなる層(B層)を有する積層体。
Figure 0006349866
(但し、上記一般式(1)で表される構造が−CH−OHの一部である場合を除く。)
本発明のA層は、任意の形態及び形状のものを採用することが可能であり、例えばフィルム、シートまたは成形体等が挙げられる。
本発明のA層は、成形体が軽量である事を重視する場合、厚さ0.05mm以上であることが好ましく、0.075mm以上であることがより好ましく、0.1mm以上であることが最も好ましい。また、例えば表示体として用いる際の薄型化のため、8mm以下であることが好ましく、6mm以下であることがより好ましく、4mm以下であることが最も好ましい。
本発明におけるB層は、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化してなる層であるが、硬化後の層の厚さが2μm以上であることが、高い硬度を確保するという点から好ましく、5μm以上であることがより好ましく、8μm以上であることが最も好ましい。また、100μm以下であることが、硬化収縮による層の歪み(クラック)が発生し難い、また、湿熱環境下におけるB層の破壊(クラック)が発生し難いという点から好ましく、5
0μm以下であることがより好ましく、25μm以下であることが最も好ましい。
本発明の積層体において、A層と、B層との配置に特に制限はない。各層は、直接隣接するように形成されていてもよいし、層間に更に接着性を向上するプライマー層などの他の層を有していても構わないが、表面の滑り性や耐擦傷性等の本発明の奏する効果を得るために、B層は最表面層である必要がある。
2.A層
本発明のA層は、下記一般式(1)で表される構造を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位(a)と、その他のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位(b)とを有す
るポリカーボネート樹脂を含有する層であることを特徴としている。
Figure 0006349866
(但し、上記一般式(1)で表される構造が−CH−OHの一部である場合を除く。)(1)ポリカーボネート樹脂及びそれに基づく樹脂組成物
以下、本発明の成形品を得るためのポリカーボネート樹脂及びそれに基づく樹脂組成物について詳述する。
[ポリカーボネート樹脂]
<原料>
(ジヒドロキシ化合物)
本発明で使用するポリカーボネート樹脂(以下、「本発明に用いる樹脂」と称することがある。)は、構造の一部に下記一般式(1)で表される構造を有するジヒドロキシ化合物(以下、「本発明に用いるジヒドロキシ化合物」と称することがある。)に由来する構造単位(a)を少なくとも含有する。即ち、本発明に用いるジヒドロキシ化合物は、2つのヒドロキシル基と、更に構造の一部に下記一般式(1)で表される構造を少なくとも含むものである。
Figure 0006349866
(但し、上記一般式(1)で表される構造が−CH2−O−Hの一部である場合を除く。)
本発明に用いるジヒドロキシ化合物としては、構造の一部に上記一般式(1)で表される構造を有するものであれば特に限定されるものではないが、具体的には、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールなどのオキシアルキレングリコール類、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソプロピルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−tert−ブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−シクロヘキシルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−フェニルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジメチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−tert−ブチル−6−メチルフェニル)フルオレン9,9−ビス(4−(3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロポキシ)フェニル)フルオレン等、側鎖に芳香族基を有し、主鎖に芳香族基に結合したエーテル基を有する化合物、下記一般式(2)で表されるジヒドロキシ化合物に代表される無水糖アルコール、下記一般式(3)で表されるスピログリコール等の環状エーテル構造を有する化合物が挙げられるが、中でも、入手のし易さ、ハンドリング、重合時の反応性、得られるポリカーボネート樹脂の色相の観点から、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールが好ましく、耐熱性の観点からは、無水糖アルコール、環状エーテル構造を有する化合物が好ましい。
これらは得られる樹脂の要求性能に応じて、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
Figure 0006349866
上記一般式(2)で表されるジヒドロキシ化合物としては、立体異性体の関係にある、イソソルビド、イソマンニド、イソイデットが挙げられ、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらのジヒドロキシ化合物のうち、芳香環構造を有しないジヒドロキシ化合物を用いることが樹脂の耐光性の観点から好ましく、中でも植物由来の資源として豊富に存在し、容易に入手可能な種々のデンプンから製造されるソルビトールを脱水縮合して得られるイソソルビドが、入手及び製造のし易さ、耐光性、光学特性、成形性、耐熱性、カーボンニュートラルの面から最も好ましい。
本発明に用いる樹脂は、上記本発明に用いるジヒドロキシ化合物以外のジヒドロキシ化合物(以下「その他のジヒドロキシ化合物」と称す場合がある。)に由来する構造単位(b)を含有してもよく、その他のジヒドロキシ化合物としては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,5−ヘプタンジオール、1,6−ヘキサンジオールのなどの脂肪族ジヒドロキシ化合物、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、ペンタシクロペンタデカンジメタノール、2,6−デカリンジメタノール、1,5−デカリンジメタノール、2,3−デカリンジメタノール、2,3−ノルボルナンジメタノール、2,5−ノルボルナンジメタノール、1,3−アダマンタンジメタノール、等の脂環式炭化水素のジヒドロキシ化合物が挙げられる。
また、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、「ビスフェノールA」と略記する。)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジエチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−(3,5−ジフェニル)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,4’−ジヒドロキシ−ジフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−5−ニトロフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス(4−ヒドロキシフェ
ニル)スルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジクロロジフェニルエーテル、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ−2−メチル)フェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)フルオレン等の芳香族ビスフェノール類を使用することもできる。
前記ポリカーボネート樹脂中の構造単位(b)は、脂肪族ジヒドロキシ化合物及び脂環式ジヒドロキシ化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物に由来する構成単位であることが好ましい。すなわち、樹脂の耐光性の観点から、分子構造内に芳香環構造を有しないジヒドロキシ化合物である脂肪族ジヒドロキシ化合物及び脂環式炭化水素のジヒドロキシ化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を用いることが好ましく、脂肪族ジヒドロキシ化合物としては、特に1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールが好ましく、脂環式炭化水素のジヒドロキシ化合物としては、特に1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノールが好ましい。
これらのその他のジヒドロキシ化合物を用いることにより、樹脂の柔軟性の改善、耐熱性の向上、成形性の改善などの効果を得ることも可能であるが、その他のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の含有割合が多過ぎると、機械的物性の低下や、耐熱性の低下を招くことがあるため、全ジヒドロキシ化合物に対する、構造の一部に前記一般式(1)で表される構造を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位(a)の割合が、好ましくは50モル%以上、更に好ましくは55モル%以上、最も好ましくは60モル%以上である。一方、その上限は、好ましくは95モル%以下、更に好ましくは85モル%以下、特に好ましくは75モル%以下である。この割合が小さすぎると耐湿熱特性が低下する傾向にあり、一方、大きすぎると耐衝撃性が悪くなる傾向にある。
本発明の樹脂成形品の特徴の一つは、上述のように、全ジヒドロキシ化合物に対する、構造の一部に前記一般式(1)で表される構造を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位(a)の割合を上記の通り特定範囲とすることである。これにより、一般的に樹脂の複屈折や位相差で表現されるような光学歪みが、従来のポリカーボネート樹脂を用いた成型品よりも低いものとすることができる。
本発明に用いるジヒドロキシ化合物は、還元剤、抗酸化剤、脱酸素剤、光安定剤、制酸剤、pH安定剤、熱安定剤等の安定剤を含んでいてもよく、特に酸性下で本発明に用いるジヒドロキシ化合物は変質しやすいことから、塩基性安定剤を含むことが好ましい。塩基性安定剤としては、長周期型周期表(Nomenclature of Inorganic Chemistry IUPAC Recommendations 2005)における1族または2族の金属の水酸化物、炭酸塩、リン酸塩、亜リン酸塩、次亜リン酸塩、硼酸塩、脂肪酸塩や、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルメチルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルベンジルアンモニウムドロキシド、トリブチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、テトラフェニルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、ブチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド等の塩基性アンモニウム化合物、4−アミノピリジン、2−アミノピリジン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン、4−ジエチルアミノピリジン、2−ヒドロキシピリジン、2−メトキシピリジン、4−メトキシピリジン、2−ジメチルアミノイミダゾール、2−メトキシイミダゾール、イミダゾール、2−メルカプトイミダゾール、2−メチルイミダゾール
、アミノキノリン等のアミン系化合物が挙げられる。その中でも、その効果と後述する蒸留除去のしやすさから、ナトリウムまたはカリウムのリン酸塩、亜リン酸塩が好ましく、中でもリン酸水素2ナトリウム、亜リン酸水素2ナトリウムが好ましい。
これら塩基性安定剤の本発明に用いるジヒドロキシ化合物中の含有量に特に制限はないが、少なすぎると本発明に用いるジヒドロキシ化合物の変質を防止する効果が得られない可能性があり、多すぎると本発明に用いるジヒドロキシ化合物の変性を招く場合があるので、通常、本発明に用いるジヒドロキシ化合物に対して、0.0001重量%〜1重量%、好ましくは0.001重量%〜0.1重量%である。
また、これら塩基性安定剤を含有した本発明に用いるジヒドロキシ化合物をポリカーボネート樹脂の製造原料として用いると、塩基性安定剤自体が重合触媒となり、重合速度や品質の制御が困難になるだけでなく、初期色相の悪化を招き、結果的に成形品の耐光性を悪化させるため、樹脂の製造原料として使用する前に塩基性安定剤をイオン交換や蒸留等で除去することが好ましい。
本発明に用いるジヒドロキシ化合物がイソソルビド等、環状エーテル構造を有する場合には、酸素によって徐々に酸化されやすいので、保管や、製造時には、酸素による分解を防ぐため、水分が混入しないようにし、また、脱酸素剤等を用いたり、窒素雰囲気下で取り扱うことが肝要である。イソソルビドが酸化されると、蟻酸等の分解物が発生する場合がある。例えば、これら分解物を含むイソソルビドをポリカーボネート樹脂の製造原料として使用すると、得られる樹脂の着色を招く可能性があり、又、物性を著しく劣化させる可能性があるだけではなく、重合反応に影響を与え、高分子量の重合体が得られない場合もあり、好ましくない。
本発明に用いるジヒドロキシ化合物は、上記酸化分解物や前述の塩基性安定剤を除去するために、蒸留精製を行うことが好ましい。この場合の蒸留は単蒸留であっても、連続蒸留であってもよく、特に限定されない。蒸留の条件としてはアルゴンや窒素などの不活性ガス雰囲気において、減圧下で蒸留を実施することが好ましく、熱による変性を抑制するためには、250℃以下、好ましくは200℃以下、特には180℃以下の条件で行うことが好ましい。
このような蒸留精製で、本発明に用いるジヒドロキシ化合物中の蟻酸含有量を20重量ppm以下、好ましくは10重量ppm以下、特に好ましくは5重量ppm以下にすることにより、前記本発明に用いるジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物を樹脂の製造原料として使用した際に、重合反応性を損なうことなく色相や熱安定性に優れた樹脂の製造が可能となる。蟻酸含有量の測定はイオンクロマトグラフィーで行う。
(炭酸ジエステル)
本発明に用いるポリカーボネート樹脂は、上述した本発明に用いるジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルを原料として、エステル交換反応により重縮合させて得ることができる。
用いられる炭酸ジエステルとしては、通常、下記一般式(4)で表されるものが挙げられる。これらの炭酸ジエステルは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
Figure 0006349866
(一般式(4)において、A1及びA2は、それぞれ独立に、置換若しくは無置換の炭素数1〜炭素数18の脂肪族基、または、置換若しくは無置換の芳香族基であり、A1とA2とは同一であっても異なっていてもよい。)
前記一般式(4)で表される炭酸ジエステルとしては、例えば、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート等の置換ジフェニルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート及びジ−t−ブチルカーボネート等が例示されるが、好ましくはジフェニルカーボネート、置換ジフェルカーボネートであり、特に好ましくはジフェニルカーボネートである。なお、炭酸ジエステルは、塩化物イオンなどの不純物を含む場合があり、重合反応を阻害したり、得られる樹脂の色相を悪化させたりする場合があるため、必要に応じて、蒸留などにより精製したものを使用することが好ましい。
本発明に用いる樹脂は上記特定の構造単位(a)を有するポリカーボネート樹脂であり、該樹脂は本発明の要旨を損なわない範囲でその他の添加物を加えて、ポリカーボネート樹脂組成物として使用してもよい。
<エステル交換反応触媒>
本発明に用いる樹脂は、上述のように本発明に用いるジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとをエステル交換反応させて製造できる。より詳細には、エステル交換させ、副生するモノヒドロキシ化合物等を系外に除去することによって得られる。この場合、通常、エステル交換反応触媒存在下でエステル交換反応により重縮合を行う。
本発明に用いる樹脂の製造時に使用し得るエステル交換反応触媒(以下、単に「触媒」、「重合触媒」と言うことがある。)は、特に波長350nmにおける光線透過率や、イエローインデックス値に影響を与え得る。
用いられる触媒としては、耐光性を満足させ得る、即ち上記した波長350nmにおける光線透過率や、イエローインデックスを所定の値にし得るものであれば限定されないが、長周期型周期表における第1族または第2族(以下、単に「1族」、「2族」と表記する。)の金属化合物、塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、アミン系化合物等の塩基性化合物が挙げられる。好ましくは1族金属化合物及び/又は2族金属化合物が使用される。
1族金属化合物及び/又は2族金属化合物と共に、補助的に、塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、アミン系化合物等の塩基性化合物を併用することも可能であるが、1族金属化合物及び/又は2族金属化合物のみを使用することが特に好ましい。
また、1族金属化合物及び/又は2族金属化合物の形態としては通常、水酸化物、又は炭酸塩、カルボン酸塩、フェノール塩といった塩の形態で用いられるが、入手のし易さ、取扱いの容易さから、水酸化物、炭酸塩、酢酸塩が好ましく、色相と重合活性の観点からは酢酸塩が好ましい。
1族金属化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、水素化ホウ素ナトリウム、フェニル化ホウ素ナトリウム、安息香酸ナトリウム、リン酸水素2ナトリウム、フェニルリン酸2
ナトリウム、ナトリウムのアルコレート若しくはフェノレート、ビスフェノールAの2ナトリウム塩等のナトリウム化合物、水酸化カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、酢酸カリウム、ステアリン酸カリウム、水素化ホウ素カリウム、フェニル化ホウ素カリウム、安息香酸カリウム、リン酸水素2カリウム、フェニルリン酸2カリウム、カリウムのアルコレート若しくはフェノレート、ビスフェノールAの2カリウム塩等のカリウム化合物、水酸化リチウム、炭酸水素リチウム、炭酸リチウム、酢酸リチウム、ステアリン酸リチウム、水素化ホウ素リチウム、フェニル化ホウ素リチウム、安息香酸リチウム、リン酸水素2リチウム、フェニルリン酸2リチウム、リチウムのアルコレート若しくはフェノレート、ビスフェノールAの2リチウム塩等のリチウム化合物、水酸化セシウム、炭酸水素セシウム、炭酸セシウム、酢酸セシウム、ステアリン酸セシウム、水素化ホウ素セシウム、フェニル化ホウ素セシウム、安息香酸セシウム、リン酸水素2セシウム、フェニルリン酸2セシウム、セシウムのアルコレート若しくはフェノレート、ビスフェノールAの2セシウム塩等のセシウム化合物等が挙げられ、中でもリチウム化合物が好ましい。
2族金属化合物としては、例えば、水酸化カルシウム、炭酸水素カルシウム、炭酸カルシウム、酢酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム等のカルシウム化合物、水酸化バリウム、炭酸水素バリウム、炭酸バリウム、酢酸バリウム、ステアリン酸バリウム等のバリウム化合物、水酸化マグネシウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム等のマグネシウム化合物、水酸化ストロンチウム、炭酸水素ストロンチウム、炭酸ストロンチウム、酢酸ストロンチウム、ステアリン酸ストロンチウム等のストロンチウム化合物等が挙げられ、中でもマグネシウム化合物、カルシウム化合物、バリウム化合物が好ましく、重合活性と得られるポリカーボネート樹脂の色相の観点から、マグネシウム化合物及びカルシウム化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属化合物が更に好ましく、最も好ましくはカルシウム化合物である。
塩基性ホウ素化合物としては、例えば、テトラメチルホウ素、テトラエチルホウ素、テトラプロピルホウ素、テトラブチルホウ素、トリメチルエチルホウ素、トリメチルベンジルホウ素、トリメチルフェニルホウ素、トリエチルメチルホウ素、トリエチルベンジルホウ素、トリエチルフェニルホウ素、トリブチルベンジルホウ素、トリブチルフェニルホウ素、テトラフェニルホウ素、ベンジルトリフェニルホウ素、メチルトリフェニルホウ素、ブチルトリフェニルホウ素等のナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、カルシウム塩、バリウム塩、マグネシウム塩、あるいはストロンチウム塩等が挙げられる。
塩基性リン化合物としては、例えば、トリエチルホスフィン、トリ−n−プロピルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、あるいは四級ホスホニウム塩等が挙げられる。
塩基性アンモニウム化合物としては、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルメチルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、テトラフェニルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、ブチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド等が挙げられる。
アミン系化合物としては、例えば、4−アミノピリジン、2−アミノピリジン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン、4−ジエチルアミノピリジン、2−ヒドロキシピリジン、2−メトキシピリジン、4−メトキシピリジン、2−ジメチルアミノイミダゾール、
2−メトキシイミダゾール、イミダゾール、2−メルカプトイミダゾール、2−メチルイミダゾール、アミノキノリン等が挙げられる。
上記重合触媒の使用量は、好ましくは、重合に用いた全ジヒドロキシ化合物1mol当たり0.1μmol〜300μmol、好ましくは0.5μmol〜100μmolであり、中でもリチウム及び長周期型周期表第2族の金属からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属化合物を用いる場合、特にはマグネシウム化合物及びカルシウム化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属化合物を用いる場合、用いた全ジヒドロキシ化合物1mol当たり、金属量として、通常、0.1μmol以上、好ましくは0.5μmol以上、特に好ましくは0.7μmol以上とする。また上限としては、通常20μmol、好ましくは10μmol、さらに好ましくは3μmol、特に好ましくは1.5μmol、中でも1.0μmolが好適である。
触媒量が少なすぎると、重合速度が遅くなるため結果的に所望の分子量の樹脂を得ようとすると、重合温度を高くせざるを得なくなり、得られた樹脂の色相や耐光性が悪化したり、未反応の原料が重合途中で揮発して本発明に用いるジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物と前記一般式(4)で表される炭酸ジエステルのモル比率が崩れ、所望の分子量に到達しない可能性がある。一方、重合触媒の使用量が多すぎると、得られる樹脂の色相の悪化を招き、樹脂の耐光性が悪化する可能性がある。
また、1族金属、中でもリチウム、ナトリウム、カリウム及びセシウムは、特にはナトリウム、カリウム及びセシウムは、樹脂中に多く含まれると色相に悪影響を及ぼす可能性があり、該金属は使用する触媒からのみではなく、原料や反応装置から混入する場合があるため、樹脂中のこれらの化合物の合計量は、金属量として、通常20重量ppm以下、好ましくは2重量ppm以下、より好ましくは1.5重量ppm以下、更に好ましくは1.2重量ppm以下、特に好ましくは0.8重量ppm以下、最も好ましくは0.7重量ppm以下である。
樹脂中の金属量は、湿式灰化などの方法で樹脂中の金属を回収した後、原子発光、原子吸光、Inductively Coupled Plasma(ICP)等の方法を使用して測定することが出来る。
<製造方法>
本発明に用いるポリカーボネート樹脂は、本発明に用いるジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとをエステル交換反応により重縮合させることによって得られるが、原料であるジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルは、エステル交換反応前に原料調製槽等において、均一に混合することが好ましい。又、原料調製槽等において均一に混合された原料は、原料貯槽等に貯め置いた後に、エステル交換反応に供してもよい。
混合の温度は通常80℃以上、好ましくは90℃以上であり、その上限は通常250℃以下、好ましくは200℃以下、更に好ましくは150℃以下である。中でも100℃以上120℃以下が好適である。混合の温度が低すぎると溶解速度が遅かったり、溶解度が不足する可能性があり、しばしば固化等の不具合を招き、混合の温度が高すぎるとジヒドロキシ化合物の熱劣化を招く場合があり、結果的に得られるポリカーボネート樹脂の色相が悪化し、耐光性に悪影響を及ぼす可能性がある。
本発明に用いる樹脂の原料である本発明に用いるジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルと混合する操作は、酸素濃度10vol%以下、更には0.0001vol%〜10vol%、中でも0.0001vol%〜5vol%、特には0.0001vol%〜1vol%の雰囲気下で行うことが、色相悪化防止の観点から好まし
い。
本発明に用いるポリカーボネート樹脂を得るためには、前記一般式(4)で表される炭酸ジエステルを、反応に用いる本発明に用いるジヒドロキシ化合物を含む全ジヒドロキシ化合物に対して、0.90〜1.20のモル比率で用いることが好ましく、さらに好ましくは、0.95〜1.10のモル比率である。
このモル比率が小さくなると、製造された樹脂の末端水酸基量が増加して、ポリマーの熱安定性が悪化し、成形時に着色を招いたり、エステル交換反応の速度が低下したり、所望する高分子量体が得られない可能性がある。
また、このモル比率が大きくなると、エステル交換反応の速度が低下したり、所望とする分子量の樹脂の製造が困難となる場合がある。エステル交換反応速度の低下は、重合反応時の熱履歴を増大させ、結果的に得られた樹脂の色相や耐光性を悪化させる可能性がある。
更には、本発明に用いるジヒドロキシ化合物を含む全ジヒドロキシ化合物に対して、前記一般式(4)で表される炭酸ジエステルのモル比率が増大すると、得られる樹脂中の残存炭酸ジエステル量が増加し、これらが紫外線を吸収して樹脂の耐光性を悪化させる場合があり、好ましくない。本発明に用いる樹脂に残存する前記一般式(4)で表される炭酸ジエステルの濃度は、好ましくは60重量ppm以下、更に好ましくは50重量ppm以下、特に好ましくは40重量ppm以下が好適である。現実的に樹脂は未反応の炭酸ジエステルを含むことがあり、濃度の下限値は通常1重量ppmである。
本発明において、ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとを重縮合させる方法は、上述の触媒存在下、通常、複数の反応器を用いて多段階で実施される。反応の形式は、バッチ式、連続式、あるいはバッチ式と連続式の組み合わせのいずれの方法でもよい。
重合初期においては、相対的に低温、低真空でプレポリマーを得、重合後期においては相対的に高温、高真空で所定の値まで分子量を上昇させることが好ましいが、各分子量段階でのジャケット温度と内温、反応系内の圧力を適切に選択することが色相や耐光性の観点から重要である。例えば、重合反応が所定の値に到達する前に温度、圧力のどちらか一方でも早く変化させすぎると、未反応のモノマーが留出し、ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルのモル比率を狂わせ、重合速度の低下を招いたり、所定の分子量や末端基を持つポリマーが得られなかったりして結果的に本願発明の目的を達成することができない可能性がある。
更には、留出するモノマーの量を抑制するために、重合反応器に還流冷却器を用いることは有効であり、特に未反応モノマー成分が多い重合初期の反応器でその効果は大きい。還流冷却器に導入される冷媒の温度は使用するモノマーに応じて適宜選択することができるが、通常、還流冷却器に導入される冷媒の温度は該還流冷却器の入口において45〜180℃であり、好ましくは、80〜150℃、特に好ましくは100〜130℃である。冷媒の温度が高すぎると還流量が減り、その効果が低下し、逆に低すぎると、本来留去すべきモノヒドロキシ化合物の留去効率が低下する傾向にある。冷媒としては、温水、蒸気、熱媒オイル等が用いられ、蒸気、熱媒オイルが好ましい。
重合速度を適切に維持し、モノマーの留出を抑制しながら、最終的に得られるポリカーボネート樹脂の色相や熱安定性、耐光性等を損なわないようにするためには、前述の触媒の種類と量の選定が重要である。
本発明に用いる樹脂は、触媒を用いて、複数の反応器を用いて多段階で重合させて製造することが好ましいが、重合を複数の反応器で実施する理由は、重合反応初期においては、反応液中に含まれるモノマーが多いために、必要な重合速度を維持しつつ、モノマーの揮散を抑制することが重要であり、重合反応後期においては、平衡を重合側にシフトさせ
るために、副生するモノヒドロキシ化合物を十分留去することが重要になるためである。このように、異なった重合反応条件を設定するためには、直列に配置された複数の重合反応器を用いることが、生産効率の観点から好ましい。
本発明に用いるポリカーボネート樹脂の製造において使用される反応器は、上述の通り、少なくとも2基以上あればよいが、生産効率などの観点からは、3基以上、好ましくは3〜5基、特に好ましくは、4基である。
反応器が2基以上あれば、その反応器内で、更に条件の異なる反応段階を複数設定したり、連続的に温度・圧力を変えたりしてもよい。
重合触媒は原料調製槽、原料貯槽に添加することもでき、また重合槽に直接添加することもできるが、供給の安定性、重合反応の制御の観点からは、重合槽に供給される原料ラインの途中に触媒供給ラインを設置し、供給することが好ましい。供給する重合触媒の状態は固体、液体があげられるが、定量供給性の観点から、液体が好ましい。
重合反応の温度は、低すぎると反応速度の低下や反応時間の延長などにより生産性が低下し、高すぎるとモノマーの揮散を招くだけでなく、樹脂の分解や着色を助長する可能性がある。
具体的には、第1段目の反応は、重合反応器の内温の最高温度として、140℃〜270℃、好ましくは180℃〜240℃、更に好ましくは200℃〜230℃で、110kPa〜1kPa、好ましくは70kPa〜5kPa、更に好ましくは30kPa〜10kPa(絶対圧力)の圧力下、0.1時間〜10時間、好ましくは0.5時間〜3時間、発生するモノヒドロキシ化合物を反応系外へ留去しながら実施される。
第2段目以降は、反応系の圧力を第1段目の圧力から徐々に下げ、引き続き発生するモノヒドロキシ化合物を反応系外へ除きながら、最終的には反応系の圧力(絶対圧力)を200Pa以下にして、内温の最高温度210℃〜270℃、好ましくは220℃〜250℃で、通常0.1時間〜10時間、好ましくは、1時間〜6時間、特に好ましくは0.5時間〜3時間行う。
特に樹脂の着色や熱劣化を抑制し、色相や耐光性の良好な樹脂を得るには、全反応段階における内温の最高温度が250℃未満、特に225℃〜245℃であることが好ましい。
また、重合反応後半の重合速度の低下を抑止し、熱履歴による劣化を最小限に抑えるためには、重合の最終段階でプラグフロー性と界面更新性に優れた横型反応器を使用することが好ましい。
所定の分子量の樹脂を得るために重合温度を高く、重合時間を長くし過ぎると、得られる樹脂の紫外線透過率は下がり、イエローインデックス(YI)値は大きくなる傾向にある。
副生したモノヒドロキシ化合物は、資源有効活用の観点から、必要に応じ精製を行った後、炭酸ジフェニルやビスフェノールA等の原料として再利用することが好ましい。
上記のようにして得られたポリカーボネート樹脂は、重縮合後、通常、冷却固化させ、回転式カッター等でペレット化される。
ペレット化の方法は限定されるものではないが、最終重合反応器から溶融状態で抜き出し、ストランドの形態で冷却固化させてペレット化させる方法、最終重合反応器から溶融状態で一軸または二軸の押出機に樹脂を供給し、溶融押出しした後、冷却固化させてペレット化させる方法、又は、最終重合反応器から溶融状態で抜き出し、ストランドの形態で冷却固化させて一旦ペレット化させた後に、再度一軸または二軸の押出機に樹脂を供給し
、溶融押出しした後、冷却固化させてペレット化させる方法等が挙げられる。
その際、押出機中で、残存モノマーの減圧脱揮や、通常知られている、熱安定剤、中和剤、紫外線吸収剤、離型剤、着色剤、帯電防止剤、滑剤、潤滑剤、可塑剤、相溶化剤、難燃剤等を添加、混練することも出来る。
押出機中の、溶融混練温度は、樹脂のガラス転移温度や分子量に依存するが、通常150℃〜300℃、好ましくは200℃〜270℃、更に好ましくは230℃〜260℃である。溶融混練温度が150℃より低いと、樹脂の溶融粘度が高く、押出機への負荷が大きくなり、生産性が低下する。300℃より高いと、の熱劣化が激しくなり、分子量の低下による機械的強度の低下や着色、ガスの発生を招く。
本発明に用いるポリカーボネート樹脂を製造する際には、異物の混入を防止するため、押出機にフィルターを設置することが望ましい。フィルターの設置位置は押出機の下流側が好ましく、フィルターの異物除去の大きさ(目開き)は、99%除去の濾過精度として100μm以下が好ましい。特に、フィルム用途等で微少な異物の混入を嫌う場合は、40μm以下、さらには10μm以下が好ましい。
本発明に用いる樹脂の押し出しは、押出後の異物混入を防止するために、好ましくはJISB 9920(2002年)に定義されるクラス7、更に好ましくはクラス6より清浄度の高いクリーンルーム中で実施することが望ましい。
また、押し出された樹脂を冷却しチップ化する際は、空冷、水冷等の冷却方法を使用するのが好ましい。空冷の際に使用する空気は、ヘパフィルター等で空気中の異物を事前に取り除いた空気を使用し、空気中の異物の再付着を防ぐのが望ましい。水冷を使用する際は、イオン交換樹脂等で水中の金属分を取り除き、さらにフィルターにて、水中の異物を取り除いた水を使用することが望ましい。用いるフィルターの目開きは、99%除去の濾過精度として10μm〜0.45μmであることが好ましい。
このようにして得られた本発明に用いる樹脂の分子量は、還元粘度で表すことができ、還元粘度の下限は、0.10dL/g以上であり、0.20dL/g以上が好ましく、0.30dL/g以上が更に好ましい。還元粘度の上限は、0.45dL/g以下、0.40dL/g以下が更に好ましい。
樹脂の還元粘度が低すぎると成形品の機械的強度が小さい可能性があり、大きすぎると、成形する際の流動性が低下し、生産性や成形性を低下させる傾向がある。
なお、還元粘度は、溶媒として塩化メチレンを用い、樹脂濃度を0.6g/dLに精密に調製し、温度20.0℃±0.1℃でウベローデ粘度管を用いて測定する。
更に本発明に用いる樹脂の下記一般式(5)で表される末端基の濃度(「末端フェニル基濃度」という)の下限量は、好ましくは20μeq/g、更に好ましくは40μeq/g、特に好ましくは50μeq/gであり、一方、上限量は好ましくは160μeq/g、更に好ましくは140μeq/g、特に好ましくは100μeq/gである。
下記一般式(5)で表される末端基の濃度が、高すぎると重合直後や成形時の色相が良くても、紫外線曝露後の色相の悪化を招く可能性があり、逆に低すぎると熱安定性が低下する恐れがある。
下記一般式(5)で表される末端基の濃度を制御するには、原料である本発明に用いるジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物と前記一般式(4)で表される炭酸ジエステルのモル比率を制御する他、エステル交換反応時の触媒の種類や量、重合圧力や重合温度を制御する方法等が挙げられる。
Figure 0006349866
一般式(4)で表される炭酸ジエステルとして、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート等の置換ジフェニルカーボネートを用い、本発明に用いる樹脂を製造する場合は、フェノール、置換フェノールが副生し、樹脂中に残存することは避けられないが、フェノール、置換フェノールも芳香環を有することから紫外線を吸収し、耐光性の悪化要因になる場合があるだけでなく、成形時の臭気の原因となる場合がある。樹脂中には、通常のバッチ反応後は1000重量ppm以上の副生フェノール等の芳香環を有する、芳香族モノヒドロキシ化合物が含まれているが、耐光性や臭気低減の観点からは、脱揮性能に優れた横型反応器や真空ベント付の押出機を用いて、好ましくは700重量ppm以下、更に好ましくは500重量ppm以下、特には300重量ppm以下にすることが好ましい。ただし、工業的に完全に除去することは困難であり、芳香族モノヒドロキシ化合物の含有量の下限値は、通常1重量ppmである。
尚、これら芳香族モノヒドロキシ化合物は、用いる原料により、置換基を有していてもよく、例えば、炭素数が5以下であるアルキル基などを有していてもよい。
また、本発明に用いる樹脂の芳香環に結合した水素原子(H)の当量数を(A)、芳香環以外に結合した水素原子(H)の当量数を(B)とした場合、芳香環に結合した水素原子(H)の当量数の全水素原子(H)の当量数に対する比率は、A/(A+B)で表されるが、耐光性には上述のように、紫外線吸収能を有する芳香族環が影響を及ぼす可能性があるため、A/(A+B)の値は0.05以下であることが好ましく、更に好ましくは0.03以下、特に好ましくは0.02以下、好適には0.01以下である。A/(A+B)は、1H−NMRで定量することができる。
[その他の添加剤]
前述の通り、本発明において用いるポリカーボネート樹脂には、本発明の要旨を損なわない範囲でその他の添加物を加えて、ポリカーボネート樹脂組成物として使用されることが一般的である。
このような添加剤としては、例えば酸化防止剤、酸性化合物、紫外線吸収剤、光安定剤、無機充填剤などが挙げられる。
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤及びイオウ系酸化防止剤からなる群より選ばれた少なくとも1種であることが好ましく、フェノール系酸化防止剤及び/またはホスファイト系酸化防止剤が更に好ましい。
フェノール系酸化防止剤としては、例えばペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、グリセロール−3−ステアリルチオプロピオネート、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、N,N−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマイド)、3,5−ジ−tert−ブチル−4−
ヒドロキシ−ベンジルホスホネート−ジエチルエステル、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、4,4’−ビフェニレンジホスフィン酸テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)、3,9−ビス{1,1−ジメチル−2−[β−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン等の化合物が挙げられる。
これらの化合物の中でも、炭素数5以上のアルキル基によって1つ以上置換された芳香族モノヒドロキシ化合物が好ましく、具体的には、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリチル−テトラキス{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート}、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン等が好ましく、ペンタエリスリチル−テトラキス{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートが更に好ましい。
ホスファイト系酸化防止剤としては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、が挙げられる。
これらの中でも、トリスノニルフェニルホスファイト、トリメチルホスフェート、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトが好ましく、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトが更に好ましい。
イオウ系酸化防止剤としては、例えば、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオン酸エステル、ジトリデシル−3,3’−チオジプロピオン酸エステル、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオン酸エステル、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオン酸エステル、ラウリルステアリル−3,3’−チオジプロピオン酸エステル、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、ビス[2−メチル−4−(3−ラウリルチオプロピオニルオキシ)−5−tert−ブチルフェニル]スルフィド、オクタデシルジスルフィド、メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプト−6−メチルベンズイミダゾール、1,1’−チオビス(2−ナフトール)などが挙げられる。上記のうち、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)が好ましい。
酸化防止剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、好ましくは、0.001重量部以上、更に好ましくは0.01重量部以上、特に好ましくは0.05重量部以上、一方、好ましくは1重量部以下、更に好ましくは、0.7重量部以下、特に好ましくは0.5重量部以下である。酸化防止剤の含有量が過度に少ないと、成形時の着色抑制効果が不十分になることがある。また、酸化防止剤の含有量が過度に多いと、射出成形時
における金型への付着物が多くなったり、押出成形によりフィルムを成形する際にロールへの付着物が多くなったりすることにより、製品の表面外観が損なわれるおそれがある。
酸性化合物としては、例えば、塩酸、硝酸、ホウ酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ポリリン酸、アジピン酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、アゼライン酸、アデノシンリン酸、安息香酸、ギ酸、吉草酸、クエン酸、グリコール酸、グルタミン酸、グルタル酸、ケイ皮酸、コハク酸、酢酸、酒石酸、シュウ酸、p−トルエンスルフィン酸、p−トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ニコチン酸、ピクリン酸、ピコリン酸、フタル酸、テレフタル酸、プロピオン酸、ベンゼンスルフィン酸、ベンゼンスルホン酸、マロン酸、マレイン酸等のブレンステッド酸及びそのエステル類が挙げられる。
これらの酸性化合物又はその誘導体の中でも、スルホン酸類又はそのエステル類が好ましく、中でも、p−トルエンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸メチル、p−トルエンスルホン酸ブチルが特に好ましい。
これらの酸性化合物は、上述した樹脂の重縮合反応において使用される塩基性エステル交換触媒を中和する化合物として、樹脂組成物の製造工程において添加することができる。
酸性化合物の配合量は、樹脂100重量部に対し、少なくとも1種の酸性化合物0.00001重量部以上0.1重量部以下、好ましくは、0.0001重量部以上0.01重量部以下、さらに好ましくは0.0002重量部以上0.001重量部以下である。酸性化合物の配合量が過度に少ないと、射出成形する際に、樹脂組成物の射出成形機内の滞留時間が長くなった場合における着色を抑制することが充分に出来ない場合がある。また、酸性化合物の配合量が過度に多いと、樹脂組成物の耐加水分解性が著しく低下する場合がある。
紫外線吸収剤、光安定剤を用いる場合の含有量は、樹脂100重量部に対して0.01重量部〜2重量部が好ましい。
無機充填材としては、例えば、ガラス繊維、ガラスミルドファイバー、ガラスフレーク、ガラスビーズ、炭素繊維、シリカ、アルミナ、酸化チタン、硫酸カルシウム粉体、石膏、石膏ウィスカー、硫酸バリウム、タルク、マイカ、ワラストナイト等の珪酸カルシウム;カーボンブラック、グラファイト、鉄粉、銅粉、二硫化モリブデン、炭化ケイ素、炭化ケイ素繊維、窒化ケイ素、窒化ケイ素繊維、黄銅繊維、ステンレス繊維、チタン酸カリウム繊維、ウィスカー等が挙げられる。これらの中でも、ガラスの繊維状充填材、ガラスの粉状充填材、ガラスのフレーク状充填材;炭素の繊維状充填材、炭素の粉状充填材、炭素のフレーク状充填材;各種ウィスカー、マイカ、タルクが好ましい。より好ましくは、ガラス繊維、ガラスフレーク、ガラスミルドファイバー、炭素繊維、ワラストナイト、マイカ、タルクが挙げられる。
無機充填材の配合量は、樹脂100重量部に対し、通常1重量部以上100重量部以下であり、好ましくは3重量部以上50重量部以下である。無機充填材の配合量が過度に少ないと補強効果が少なく、また、過度に多いと外観が悪くなる傾向がある。
また、本発明で用いる樹脂組成物は例えば、芳香族ポリカーボネート、芳香族ポリエステル、脂肪族ポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン、ポリオレフィン、アクリル、アモルファスポリオレフィン、ABS、ASなどの合成樹脂、ポリ乳酸、ポリブチレンスクシネートなどの生分解性樹脂、ゴムなどの1種又は2種以上と混練して、ポリマーアロイとしても用いることもできる。
上記の樹脂組成物を製造するためには、上記成分を同時に、または任意の順序でタンブラー、V型ブレンダー、ナウターミキサー、バンバリーミキサー、混練ロール、押出機等
の混合機により混合して製造することができる。更に、本発明の目的を損なわない範囲で、樹脂組成物に通常用いられる核剤、難燃剤、無機充填剤、衝撃改良剤、発泡剤、染顔料等が含まれても差し支えない。
また、この樹脂組成物は、リチウム化合物及び長周期型周期表第2族の金属からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属化合物を含有することが好ましく、該金属化合物の含有量は、金属量として、好ましくは0.1重量ppm以上、更に好ましくは0.5重量ppm以上、特に好ましくは0.7重量ppm以上とする。また上限としては、好ましくは20重量ppm、更に好ましくは10重量ppm、特に好ましくは3重量ppm、最も好ましくは1.5重量ppm、中でも1.0ppm重量が好適である。
(2)樹脂成形品
<物性・特性>
本発明の樹脂成形品は、本発明に用いる樹脂組成物を常法に従って成形して得られる。
本発明の樹脂成形品は、例えば、成型品の板状部における最大位相差が250nm以下であり、かつ、同部における位相差が150nm以下である面積の割合が該成型品の全面積に対して50%以上であるような、全体に光学歪みが小さい成型品とすることができる。この光学歪みが小さいほど、光学用途の使用により適するが、光学歪みを小さくすることには一般的には限界がある。
なお、本発明の成形品は、例えばテレビジョン、コンピューターのモニター、各種タッチパネル、ディスプレイ、タブレット型パーソナルコンピュータ等の液晶表示装置に用いることができ、このような用途においては、平面状若しくは湾曲状の部材として用いられることが多い。
また、例えば、このような平面板と枠体(ベゼル)とが組み合わされた成形品や二色成形等によって筐体と平面板が一体的に成形されたような成形品においては、平面板部分の光学歪みを小さくする事が重要である。
また、例えば、テレビジョン、コンピューターのモニター、各種タッチパネル等の液晶表示装置に用いる場合、視認性や意匠性等の観点から、平面ではなく湾曲した曲面状の部材として用いられることもある。この場合は、本発明における板上部は湾曲した曲面状の部分を示す。
<製造方法>
本発明の成形品の製造は、種々の方法で行うことができる。
本発明の成形品の製造は、射出成形法によって行うこともできる。射出成形の場合、成形品の形状に応じた金型を使用することにより、複雑な形状の樹脂成形品を製造することができる。射出成形は射出成形機によって行われ、使用する樹脂組成物および製品形状に応じて適宜好適な成形条件が設定される。成形条件としては、シリンダー温度、金型温度、射出圧、保圧、スクリュー回転数、クッション量、射出速度、射出時間、保圧時間、冷却時間などが挙げられる。
本発明の成形品の射出成形法による製造においては、シリンダー温度は、好ましくは200℃〜300℃、更に好ましくは210℃〜280℃、特に好ましくは220℃〜270℃、最も好ましくは230℃〜260℃である。シリンダー温度が高すぎると樹脂組成物が熱分解し、樹脂成形品が着色する傾向にあり、一方低すぎると、樹脂組成物の溶融粘度が高くなり、成形不良を生じたり、光学歪みが大きくなったりする傾向にある。
金型温度は、好ましくは40℃〜120℃、更に好ましくは50℃〜100℃、特に好
ましくは60℃〜80℃である。金型温度が高すぎると、成形品の生産性が低下する傾向にあり、一方、低すぎると、光学歪みが大きくなる傾向にある。
本発明の成形品を得る手段としては、前述したように全ジヒドロキシ化合物に対する上記ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位(a)の割合を特定範囲とすることの他に、シリンダー温度および金型温度を上記の特定範囲とすることが挙げられる。本発明の成形品は、これらの手段を単独で、あるいは適宜組み合わせることにより製造することができる。
本発明の成形品の製造は、押出成形法によって行うこともできる。押出成形の場合、吐出口金(ダイ)の形状や冷却ロール間のクリアランスを適宜選択する事により所望の厚さ・幅を有するフィルムやシートを製造することができる。押出成形は押出成形機によって行われ、使用する樹脂組成物および製品形状に応じて適宜好適な成形条件が設定される。成形条件としては、シリンダー温度、ロール温度、スクリュー回転数、スクリュー構成(形状)、吐出量などが挙げられる。
本発明の成形品の押出押出成形法による製造においては、シリンダー温度は、好ましくは200℃〜300℃、更に好ましくは210℃〜280℃、特に好ましくは220℃〜270℃、最も好ましくは230℃〜260℃である。シリンダー温度が高すぎると樹脂組成物が熱分解し、樹脂成形品が着色する傾向にあり、一方低すぎると、樹脂組成物の溶融粘度が高くなり、成形不良を生じたり、光学歪みが大きくなったりする傾向にある。
ロール温度は、好ましくは40℃〜160℃、更に好ましくは60℃〜145℃、特に好ましくは80℃〜130℃である。ロール温度が高すぎると、成形品の生産性が低下する傾向にあり、一方、低すぎると、光学歪みが大きくなる傾向にある。
上述の製造方法により、本発明の成形品の厚みが0.05mm以上8mm以下である成形品として成型する。厚みが、この範囲内のとき、光学用途等に適した厚みの成型品として利用しやすくなる。成型品の厚みは、好ましくは0.075mm以上6mm以下、さらに好ましくは0.01mm以上4mm以下である。成型品の厚みが薄すぎる場合、成型性が低下したり、表面硬度や耐衝撃性が低下する場合がある。一方、成型品の厚みが厚すぎる場合、成形品が重くなり、また光学歪みが大きくなったり、成形品の透明度が低下する可能性がある。
本発明の成型品は、その少なくとも片面に、加飾フィルム層や印刷層が積層されても良い。加飾フィルム層や印刷層を設けることで、成形品の外観を向上させたり、加飾フィルム層や印刷層の存在する面の耐傷付き性を向上させるといった優れた効果を奏する。金型内加飾フィルムや印刷層の積層は、従来公知の手法で行うことができる。
本発明によれば、表面硬度および耐衝撃性に優れるポリカーボネート樹脂組成物を用いて成形された積層体を提供することができる。この積層体は、前述のような多用途に用いることができる物であり、特に、光学用途に適している。
3.B層
本発明のB層は、活性エネルギー線硬化性化合物である多官能(メタ)アクリレートを含有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化してなる層であることを特徴としている。
「活性エネルギー線硬化性樹脂組成物」
<活性エネルギー線硬化性化合物>
本願発明の多官能(メタ)アクリレートは、アクリル系共重合体(α)と反応する多官能(メタ)アクリレートであることが鉛筆硬度および密着性の点から好ましい。さらに、本願発明の多官能(メタ)アクリレートは、後述する本願発明のアクリル系共重合体(α)以外 の化合物である。また分子内に2個以上の(メタ)アクリロイル基を含有する化
合物であることが好ましい。また、硬化膜の硬度・耐擦傷性が良好であり、また硬化時の反応性も高い点から、前記多官能(メタ)アクリレート中の(メタ)アクリロイル基の官能基数は、3個以上が好ましく、4個以上が特に好ましい。また、硬化前の樹脂粘度が塗工するのに適する点から、9個以下が好ましく、6個以下が特に好ましい。
本願発明の多官能(メタ)アクリレートは、具体的には、多官能(メタ)アクリレート、及びそのウレタン変性体、エステル変性体、並びにカーボネート変性体、から選ばれる一以上からなる多官能(メタ)アクリレート誘導体である。より具体的には、以下のようなものを例示できるが、本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を得ることができるものであればこれらに限定されるものではない。
例えば、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、無水コハク酸へのペンタエリスリトールトリアクリレート付加物、無水コハク酸へのジペンタエリスリトールペンタアクリレート付加物などの多官能アクリレート類;側鎖又は側鎖と末端に(メタ)アクリロイル基を有するポリエステルオリゴマー(具体的には、東亞合成社製のM8030、M7100など)などのポリエステル(メタ)アクリレート類;イソホロンジイソシアネート(IPDI)のイソシアヌレート体とポリテトラメチレングリコール(PTMG)とヒドロキシエチルアクリレート(HEA)の反応物、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のイソシアネート体とPTMG反応物へのペンタエリスリトールトリアクリレートの反応物などの多官能ウレタン(メタ)アクリレート類;ポリカーボネートジオールを用いたオリゴエステルとペンタエリスリトールトリアクリレートの反応物などのカーボネート結合を有するポリエステル(メタ)アクリレート類;IPDIとポリカーボネートジオールの反応物と、HEAの反応物などのカーボネート結合を有するポリウレタン(メタ)アクリレート類;ビスフェノールAのアクリル酸付加物(具体的には、新中村化学社製のEA−1025)などのポリエポキシ(メタ)アクリレート類;トリエトキシイソシアヌル酸ジアクリレート、トリエトキシイソシアヌル酸トリアクリレート(具体的には、東亞合成社製のアロニックスM315、M313)などのイソシアヌレート環を有するトリエトキシ(メタ)アクリレート類;及びこれらのアルキレンオキサイド変性物;ポリカプロラクトン変性物;などがある。また、これらを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
中でも、粘度と硬化性、得られる硬化膜表面の硬度などから、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、及びジペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートのアルキレンオキサイド変性体、カプロラクトン変性体、などが特に好ましい。
<アクリル系共重合体>
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、アクリル系共重合体と活性エネルギー線硬化性化合物とを含有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物であることが、鉛筆高度および密着性の点から好ましい。また、アクリル系共重合体(α)が、以下の共重合体(β)に化合物(γ)を付加して得られたものであることを特徴とする活性エネルギー線硬
化性樹脂組成物であることがさらに好ましい。
共重合体(β):構造式(I)で表されるシリコーンモノマー(A)、エポキシ基を有する(メタ)アクリレート(B)およびその他共重合可能なモノマー(C)の共重合体
化合物(γ):分子内にカルボキシル基と1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物
Figure 0006349866
(式中、Rは水素原子又はメチル基、Rは炭素数1〜12のアルキレン基、RおよびRはそれぞれメチル基又はフェニル基、nは10〜100の整数を表し、RおよびRは、相互に同一でも異なっていてもよい。また、Rは炭素数1〜12のアルキル基を表す。)
本願発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、前記アクリル系共重合体を0.05重量%以上含有することが好ましく、硬化膜において表面易滑性が十分に発現し、滑り性と耐スチールウール擦傷性が良好である点から、0.1重量%以上が好ましく、1重量%以上が特に好ましい。また、10重量%以下含有することが好ましく、前記アクリル系共重合体と反応する光硬化性化合物との相溶性が確保され硬化膜の透明性が良好であることと、前記光硬化性化合物よりも比較的軟らかい前記アクリル系共重合体が表面に偏在し過ぎず、硬度、耐擦傷性が確保できる点から、9重量%以下であることが好ましく、8重量%以下であることが特に好ましい。
アクリル系共重合体と、前記活性エネルギー線硬化性化合物について説明する。
<アクリル系共重合体(α)>
本発明のアクリル系共重合体(α)は、以下の共重合体(β)に化合物(γ)を付加して得られたものであることを特徴とする。
[共重合体(β)]
本発明の共重合体(β)は、構造式(I)で表されるシリコーンモノマー(A)、エポキシ基を有する(メタ)アクリレート(B)およびその他共重合可能なモノマー(C)の共重合体である。
(構造式(I)で表されるシリコーンモノマー(A))
本発明のシリコーンモノマー(A)としては、以下の構造式(I)で表される化合物である。
Figure 0006349866
(式中、Rは水素原子又はメチル基、Rは炭素数1〜12のアルキレン基、Rおよ
びRはそれぞれメチル基又はフェニル基、nは10〜100の整数を表し、RおよびRは、相互に同一でも異なっていてもよい。また、Rは炭素数1〜12のアルキル基を表す。)
は水素原子又はメチル基であることを特徴としており、共重合体のガラス転移温度(以下、Tgと略記することがある)が高くなり、硬化膜表面の硬度が高くなる点から、メチル基であることが好ましい。
は炭素数1以上のアルキレン基であることを特徴としており、原料の入手および製造(反応)が比較的容易である点から、2以上が好ましく、3以上が特に好ましい。また、12以下のアルキレン基であることを特徴としており、10以下が好ましく、8以下が好ましい。
およびRはそれぞれメチル基又はフェニル基であることを特徴としており、原料の入手および製造(反応)が比較的容易である点から、メチル基であることが好ましい。また、nは10以上の整数であることを特徴としており、硬化膜において表面易滑性が十分に発現し、滑り性が良好である点から、25以上が好ましく、50以上が特に好ましい。また、100以下の整数であることを特徴としており、原料および前記アクリル系共重合体の溶媒への溶解性および前記光硬化性化合物との相溶性が良好である点から、90以下が好ましく、80以下が特に好ましい。
は炭素数1以上のアルキル基であることを特徴としており、原料の入手および製造(反応)が比較的容易である点から、2以上が好ましく、3以上が特に好ましい。また、12以下のアルキル基であることを特徴としており、10以下が好ましく、8以下が好ましい。
具体的な構造としては、本願の効果が得られるものであれば特に限定されないが、ポリジメチルシロキサンを持つものが好ましく、例えば片末端にメタクリロイル基を有するポリジメチルシロキサン(例えばJNC社製「サイラプレーンFM0711」、「サイラプレーンFM0721」、「サイラプレーンFM0725」)を他のラジカル重合性モノマーとラジカル重合した際に生起する構造が挙げられる。これらの化合物は一種を単独で用いてもよく、二種以上を用いてもよい。なお、本願におけるシリコーンモノマー(A)のうち、最も数平均分子量が高い化合物の数平均分子量(g/mol)とは、(A)を二種以上用いたときに最も数平均分子量が高いものの数平均分子量(g/mol)を意味する。
シリコーンモノマー(A)のうち、最も数平均分子量が高い化合物の数平均分子量(g/mol)としては、特に限定されないが、通常1,000以上であり、硬化膜における表面滑り性が良好である(摩擦係数が低い)ことから、2,000以上が好ましく、3,000以上がさらに好ましい。また、通常50,000以下であり、溶媒や活性エネルギー線硬化性化合物との相溶性が良好であることから、20,000以下が好ましく、10,000以下がさらに好ましい。特に4,000以上、7,000以下であると防汚性が特異的に良好となるため特に好ましい。
(エポキシ基を有する(メタ)アクリレート(B))
本発明のエポキシ基を有する(メタ)アクリレートの例としては、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等のグリシジル基を有する(メタ)アクリレートを;3,4−エポキシシクロヘキシルアクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメタクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート等の脂環構造に直接エポキシ基が結合している(メタ)アクリレートが挙げられる。
これらの中では、入手の容易さ、後述する分子内にカルボキシル基と1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(γ)による変性のしやすさから、グリシジルメタクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルアクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメタクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート等が特に好ましい。 これらの化合物は一種を単独で用いてもよく、二種以上を用いてもよい。
共重合体(β)中でのエポキシ基を有する(メタ)アクリレート(B)の重量比(%)としては、特に限定されないが、通常1重量%以上であり、硬化膜の表面滑り性の耐久性が良好であることから、10重量%以上であることが好ましく、20重量%以上がより好ましく、40重量%以上がさらに好ましく、50重量%以上が特に好ましい。また、前記アクリル系共重合体の溶媒への溶解性が良好であり、共重合体(β)のエポキシ−酸反応時にゲル化が生起しづらい点から、通常99.9重量%以下であるが、90重量%以下であることが好ましく、80重量%以下がより好ましく、70重量%以下が特に好ましい。
(その他共重合可能なモノマー(C))
本発明に用いる「その他共重合可能なモノマー(C)」としては、本願の効果が得られるものであれば特に限定されないが、好ましくはエポキシ基との反応性が低く、生成ポリマーの安定性を低下させないモノマー、または骨格が剛直で、硬度を下げないモノマー由来の構造である。前記モノマーの例としては、炭素数1〜22の直鎖状または分岐状のアルキルを有する(メタ)アクリレート、スチレン、またはスチレンの低級アルキル基(例えば、炭素数1〜4のアルキル基)若しくは低級アルケニル基(例えば、炭素数2〜4のアルケニル基)の置換誘導体、パーフルオロアルキル(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリルアミド、炭素数5〜20の(ポリ)シクロアルキル側鎖を有するシクロアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド類などを挙げることができ、1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
例えば、次に挙げられる化合物が挙げられる。
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、iso−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、n−トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリルメタクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートおよびそのカチオン化剤による変性体、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートおよびそのカチオン化剤による変性体、シアノエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等のアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタレート、(メタ)アクリル酸、2−アクリロイルオキシエチルフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタレート、2−(メタ)アクリロイルプロピルフタレート、(メタ)アクリロイルオキシエチルサクシネート、2−イソシアネートエチル(メタ)アクリレート、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルトリメトキシシラン、及び3−(メタ
)アクリロイルオキシプロピルメチルトリエトキシシラン、α−クロロアクリロニトリル、α−クロロメチルアクリロニトリル、α−トリフルオロメチルアクリロニトリル、α−メトキシアクリロニトリル、α−エトキシアクリロニトリル、及びシアノ化ビニリデン等のアクリロニトリル化合物、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−エメチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシ(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメトキシ(メタ)アクリルアミド、N−エトキシ(メタ)アクリルアミド、N,N−エトキシ(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノメチル(メタ)アクリルアミド、N−(2−ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、及びN,N−エチレンビス(メタ)アクリルアミド等のアクリルアミド化合物が挙げられる。
これらの中では、共重合体のTgが高くなり、硬化膜表面の硬度が高くなる点、硬化表面の硬度が高くなる点から、炭素数1〜22の直鎖状または分岐状のアルキル基を有する(メタ)アクリレート、つまりメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、iso−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、n−トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリルメタクリレートが好ましく、共重合体のTgが高くなり、硬化膜表面の硬度が高くなる点から、メチル(メタ)アクリレート、共重合体の溶媒への溶解性が良好になる点から2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートまたはステアリルメタクリレートを用いた構造が特に好ましい。これらの構造は一種を単独で含有してもよく、二種以上が含有していてもよい。
また、その他共重合可能なモノマー(C)は、共重合体の溶媒への溶解性が良好になる点から、アクリル系共重合体中のモル比が1重量%以上であることが好ましく、5重量%以上がより好ましく、10重量%以上がさらに好ましく、20重量%以上が特に好ましく、30重量%以上が最も好ましい。また、硬化後塗膜の滑り性、耐擦傷性と前記アクリル系共重合体の溶解性が良好である点から、99重量%以下であることが好ましく、95重量%以下がより好ましく、90重量%以下がさらに好ましく、80重量%以下が特に好ましく、70重量%以下が最も好ましい。
本発明においては、シリコーンモノマー(A)のうち、最も数平均分子量が高い化合物の数平均分子量(g/mol)と、共重合体(β)中でのエポキシ基を有する(メタ)アクリレート(B)の重量比(%)を乗じた値が250,000以上であることが好ましい。ここで、シリコーンモノマー(A)の数平均分子量は大きいほど硬化膜の滑り性が良好になり、エポキシ基を有する(メタ)アクリレートの共重合(β)中の重量比(%)が大きいほど硬化膜における共重合体(α)の脱落が抑制され滑り性の耐久性が良好になることから、250,000以上が好ましく、270,000以上がさらに好ましく、300,000以上が特に好ましい。また、シリコーンモノマー(A)の数平均分子量が小さく、エポキシ基を有する(メタ)アクリレートの共重合体(β)中の重量比(%)が小さいほど、合成時の酸−エポキシ反応におけるゲル化が抑制されることから、1,000,000以下が好ましく、900,000以下がさらに好ましく、700,000以下が特に好ましい。
なお、シリコーンモノマー(A)のうち、最も数平均分子量が高い化合物の数平均分子量(g/mol)と、共重合体(β)中でのエポキシ基を有する(メタ)アクリレート(
B)の重量比(%)を乗じた値を調整するためには、シリコーンモノマー(A)の数平均分子量(g/mol)を選択したり、共重合体(β)中でのエポキシ基を有する(メタ)アクリレート(B)の重量比(%)を選択することで、調整できる。
[化合物(γ)]
本発明の化合物(γ)は、分子内にカルボキシル基と1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物である。
(分子内にカルボキシル基と1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物)
分子内にカルボキシル基と1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、(メタ)アクリル酸の他、水酸基含有多官能アクリレートと酸無水物との反応物が挙げられ、その具体例としては、例えば、(メタ)アクリル酸、ペンタエリスリトールトリアクリレートコハク酸モノエステル、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートコハク酸モノエステル、ペンタエリスリトールトリアクリレートマレイン酸モノエステル、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートマレイン酸モノエステル、ペンタエリスリトールトリアクリレートフタル酸モノエステル、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートフタル酸モノエステル、ペンタエリスリトールトリアクリレートテトラヒドロフタル酸モノエステル、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートテトラヒドロフタル酸モノエステル等が挙げられる。
前記アクリル系共重合体(α)と活性エネルギー線硬化性化合物の成分の合計量(総重量)を100重量部としたとき、アクリル共重合体(α)の重量比率は、通常0.1重量%以上であるが、アクリル共重合体(α)の重量比率が大きくなると硬化膜表面の滑り性が良好となるため、好ましくは0.2重量%以上、更に好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは1.0重量%以上である。また、通常10重量%以下であるが、アクリル共重合体(α)の重量比率が小さくなると表面近傍に偏在する共重合体(α)の量が少なくなるため、表面硬度が高くなり耐擦傷性が良好となるため、好ましくは5重量%以下、更に好ましくは3重量%以下、特に好ましくは2.5重量%以下である。前記アクリル共重合体(α)の重量比率は、所望の物性を満足するのであれば特に限定されず、アクリル系共重合体(α)の構造、特にシリコーンモノマー(A)の分子量、含有量により適宜調整できる。
<光重合開始剤>
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に含まれる光重合開始剤としては、公知のものを広く採用できるが、好ましくは、α−ヒドロキシアセトフェノン(α−ヒドロキシフェニルケトン)系、α−アミノアセトフェノン系、ベンジルケタール系などのアルキルフェノン型化合物;アシルホスフィンオキシド型化合物;オキシムエステル化合物;オキシフェニル酢酸エステル類;ベンゾインエ−テル類;芳香族ケトン類(ベンゾフェノン類);ケトン/アミン化合物;ベンゾイルギ酸およびそのエステル誘導体等である。
具体的には、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、ジエトキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾインジフェニルホスフィンオキシド、2−メチル−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、ミヒラーズケトン、N,N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンゾイルギ酸、ベンゾイルギ酸メチル、ベンゾイルギ酸エチルが好ましい。これらの光重合開始剤は
2種以上を適宜に併用することもできる。
中でも、硬化性の低下を最小限に抑えることが可能であり、入手が容易であって、着色等を起こしにくいことから、光重合開始剤の少なくとも一部として2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどのα−ヒドロキシフェニルケトン類を用いることが好ましい。
また、特に硬化性が良好な活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を得るためには、2−メチル−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、などのα−アミノフェニルケトン類;ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、2−クロロチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、などのベンゾフェノン類;ベンゾイルギ酸メチル、ベンゾイルギ酸、ベンゾイルギ酸エチル、などのベンゾイルギ酸(エステル)類;CGI242(チバ製)、OXE01(チバ製)、などのオキシムエステル類が好ましい。更に、2−メチル−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、ベンゾフェノン、ベンゾイルギ酸メチルなどを用いることがより好ましく、2−メチル−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、ベンゾイルギ酸メチルが特に好ましい。
前記アクリル系共重合体と反応する光硬化性化合物の成分の合計量(総重量)を100重量部としたとき、光重合開始剤は2〜6.5重量部であり、好ましくは2.5重量部以上、5.5重量部以下である。2重量部未満では得られる活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化性に劣り、6.5重量部以上では硬化膜の物性が低下したりする可能性がある。
なお、本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に活性エネルギー線を照射して硬化膜を得る際、活性エネルギー線として紫外線や軟エックス線などを用いる場合には、を本発明の組成物中に上記のような光重合開始剤を含むことが好ましいが、比較的エネルギーが高い電子線や硬エックス線などを用いる場合には光重合開始剤を含んでいなくてもよい。
<無機粒子>
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、無機粒子を含有することができる。前記無機粒子と架橋密度の高い(メタ)アクリロイル共重合体とを含有させることで、より高い硬度を有するハードコートを形成し得る活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を提供できる。
無機粒子の平均一次粒子径は1nm〜200nmであることが好ましく、硬化膜の透明性が良好である点から150nm以下であることがさらに好ましく、100nm以下であることがより好ましい。下限値は特段限定されないが、通常1nm以上が好ましく、原料の入手が容易である点から、さらに好ましくは5nm以上であり、より好ましくは10nm以上である。
一方、上記範囲の無機粒子の運動は、重力による沈降よりも熱拡散が支配するため、ハードコート液中に安定に粒子を分散可能となり、さらにハードコート膜を形成した際に効果的に表面に無機粒子を存在させることができる。また、無機粒子の平均一次粒子径が小さいほど、光学特性が良好になる傾向がある。
本発明における無機粒子の平均一次粒子径は、TEMなどの電子顕微鏡により観察され
る粒子の大きさを平均した径をいう。
無機粒子の例としては、シリカ(オルガノシリカゾルを含む)、アルミナ、チタニア、ゼオライト、雲母、合成雲母、酸化カルシウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、フッ化マグネシウム、スメクタイト、合成スメクタイト、バーミキュライト、ITO(酸化インジウム/酸化錫)、ATO(酸化アンチモン/酸化錫)、酸化錫、酸化インジウム、酸化アンチモンなどが挙げられ、これらの無機粒子は1種のみ含有させることでもよく、2種以上を組み合わせてもよい。中でもシリカ(オルガノシリカゾルを含む)は原料の入手が容易であること、粒子表面の修飾が容易であり、分散安定性を確保しやすい点から好適に使用される。
シリカを水に分散させたコロイド状シリカは、表面修飾されたコロイド状シリカであることが、塗膜の透明性、積層体の耐候性、及び積層体の観点から好ましい。
コロイド状シリカの修飾には、加水分解性ケイ素基を有する化合物又は水酸基が結合したケイ素基を有する化合物を用いることができる。これらの化合物は、それぞれ、一種でも二種以上でもよい。加水分解性ケイ素基を有する化合物では、加水分解によりシラノール基が生成し、それらのシラノール基がコロイド状シリカ表面に存在するシラノール基と反応して結合することにより表面修飾コロイド状シリカが生成する。
前記ケイ素基含有化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルオリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、p−ビニルフェニルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−スチリルトリメトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、及び3−メルカプトプロピルトリメトキシシランが挙げられる。
または、メルカプト基を有するシランに、多官能(メタ)アクリレートまたは高分子量(メタ)アクリレートを付加した誘導体、イソシアネート基を有するシランに水酸基を有する多官能(メタ)アクリレートを付加した誘導体などの変性したケイ素基含有化合物を用いても良い。
コロイド状シリカの表面修飾は、コロイド状シリカと加水分解性ケイ素基を含有する化合物、触媒、水を20〜100℃にて1〜40時間反応させることにより行うことができる。
前記表面修飾反応に使用する触媒としては、例えば、塩酸、フッ化水素酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸;ギ酸、酢酸、シュウ酸、p−トルエンスルホン酸、アクリル酸、メタクリル酸等の有機酸;アルカリ;アセチルアセトンアルミニウム、アルミニウム2,2,6,6,−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート、アルミニウムジイソプロポキシドエチルアセトアセテート、アルミニウムジイソブトキシドエチルアセトアセテート、ホウ酸ブトキシド、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオクテートが挙げられる。これらの触媒の使用量は、コロイド状シリカと加水分解性ケイ素基含有化合物の合計量100質量部に対して0.0001〜5質量部であることが好ましく、0.01〜1質量部であることがより好ましい。また、前記表面修飾反応における水の量は、加水分解性ケイ素基に対して0.5〜100当量であることが好ましく、1〜30当量である
ことがより好ましい。
また、前記コロイド状シリカは、酸性又は塩基性のコロイド状シリカのうち、酸性のコロイド状シリカであることが好ましい。
本発明に用いられる無機粒子は、本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(I)100重量部に対し、5重量部以上含有させることが好ましく、10重量部以上であることがより好ましく、20重量部以上であることが更に好ましい。また、70重量部以下であることが好ましく、50重量部以下であることがより好ましく、40重量部以下であることが更に好ましい。
<調製方法>
本発明の活活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(I)の調製方法は特段限定されず、例えば、(メタ)アクリロイル共重合体と多官能(メタ)アクリレートを、必要に応じて、溶媒、重合開始剤、添加剤などと併せて混合することにより調製することができる。
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(I)の調製で用いられる溶媒は、特に限定されるものではなく、(メタ)アクリロイル共重合体、多官能(メタ)アクリレート、塗布の下地となる基材の材質、および組成物の塗布方法などを考慮して適宜選択される。用いることができる溶媒の具体例としては、例えば、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒;メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒;ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、アニソール、フェネトールなどのエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、エチレングリコールジアセテートなどのエステル系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド系溶媒;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブなどのセロソルブ系溶媒;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルコール系溶媒;ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロゲン系溶媒;などが挙げられる。
これらの溶媒を単独で使用してもよく、また2種以上を併用して使用してもよい。これらの溶媒のうち、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、アルコール系溶媒およびケトン系溶媒が好ましく使用される。
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(I)は、必要に応じて、種々の添加剤を添加することができる。このような添加剤として、レベリング剤、帯電防止剤、可塑剤、界面活性剤、酸化防止剤および紫外線吸収剤などの常用の添加剤が挙げられる。
前記レベリング剤としては、例えば、またはパーフルオロアルキル基あるいはパーフルオロアルキレン骨格を含有する化合物、ポリジメチルシロキサン構造を含有する化合物などが挙げられる。前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(I)における前記レベリング剤の含有量は、透明性、塗布外観、密着性、硬度の観点から0〜5質量部であることが好ましく、0〜2質量部であることがより好ましく、0〜1質量部であることがさらに好ましい。
また、以下で後述するような基材が光または熱で硬化可能な官能基を含む場合、該基材を活性エネルギー線照射または加熱により硬化させると、より好ましい場合がある。また、基材は、成形品(物品)の形のものであっても良いし、基材と塗布面との間に他の層を介していてもよい。
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の塗布方法としては、特に限定されないが、スピンコート、デイップコート、フローコート、スプレーコート、バーコート、グラビ
アコート、ロールコート、ブレードコート、エアナイフコート等を好ましく挙げることができる。
上記基材に上記塗布方法で塗膜を形成した後、加熱乾燥により揮発成分を除去し、次いで活性エネルギー線を塗膜に照射するなどの手段により、硬化膜が得られる。このようにして得られた活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(I)の硬化膜を本発明では、B層と呼ぶ。
硬化膜を得る際に活性エネルギー線を用いる場合、その照射法としては、キセノンランプ、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、カーボンアーク灯、タングステンランプ等の光源から発せられる紫外線、または通常20〜2000kVの粒子加速器から取り出される電子線、α線、β線、γ線、等の活性エネルギー線(エレクトロンビーム、EB)が挙げられる。このような活性エネルギー線で硬化した硬化膜は生産性・物性のバランスに優れ、特に好ましい。
本発明の積層体におけるB層は、前述の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(I)を硬化してなる層であるが、硬化後の層の厚さとしては、限定されないが。下限値としては通常2μm以上であることが、高い硬度を確保するという点から好ましく、5μm以上であることがより好ましく、8μm以上であることが最も好ましい。また、上限値としては100μm以下であることが、寸法安定性や耐湿熱性の観点から好ましく、60μm以下であることがより好ましく、40μm以下であることがさらに好ましく、25μm以下であることが最も好ましい。
4.ロール状フィルム積層体
本発明の積層体は、例えば、A層の上に本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(I)を硬化してなるB層を形成し、ロール状に巻き付けていくことにより製造することができる。
<本願発明が効果を奏する理由>
本願発明が効果を奏する理由としては、以下のように推察される。
すなわち、本願発明の積層体は、下記一般式(1)で表される構造を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位(a)と、その他のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位(b)とを有するポリカーボネート樹脂を含有する層(A層)自体が、表面硬度と耐衝撃性を併せ持ち、さらに多官能(メタ)アクリレートを含有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化してなる層(B層)を有する事により、更に良好な鉛筆硬度を与える。また、A層が下記一般式(1)で表される構造を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造
単位(a)のみならず、その他のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位(b)を有する事により、B層との親和性を高め、高い密着性を与えることが可能となり、本願発明の効
果を奏するものと推察される。
Figure 0006349866
(但し、上記一般式(1)で表される構造が−CH−OHの一部である場合を除く。)
<表示装置>
本発明は、さらに、本発明の積層体と、光源とを含む表示装置に関する。この場合、積層体に含まれる基材は透光性基材であることが望ましい。また、光源は、基材の背面、すなわち基材の微細凹凸層とは反対側の面に配置され、そこから基材に向けて光を照射することが好ましい。
なお、透光性基材の厚さは、用途に応じて適時選択することができるが、一般に10〜2000μm程で用いられる。
上記積層体と組み合わせることのできる光源としては、光を発することのできるものであれば特に限定はないが、例えば、光源としては、発光ダイオード、冷陰極管、熱陰極管、ELなどが挙げられる。本発明の表示装置には、さらに、位相差板、輝度向上フィルム、導光板、光拡散板、光拡散シート、集光シート、反射板などを備えていてもよい。また、光源として、液晶モジュール、バックライトユニットなどを使用してもよい。
光透過性部材として、各種の光透過性板、光透過性フィルムなどを使用することができる。光透過性板として、例えば強化ガラス、アクリル板、トリアセチルセルロース板、ポリエチレンテレフタレート板、ジアセチレンセルロース板、アセテートブチレートセルロース板、ポリエーテルサルホン板、ポリウレタン板、ポリエステル板、ポリカーボネート板、ポリスルホン板、ポリエーテル板、ポリメチルペンテン板、ポリエーテルケトン板、(メタ)アクリルニトリル板などが挙げられる。光透過性フィルムとして、例えばトリアセチルセルロース(TAC)フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ジアセチレンセルロースフィルム、アセテートブチレートセルロースフィルム、ポリエーテルサルホンフィルム、ポリアクリル系樹脂フィルム、ポリウレタン系樹脂フィルム、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、(メタ)アクリルニトリルフィルム、シクロオレフィンポリマー(COP)フィルムなどが挙げられる。光透過性部材として、アクリル板、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム、シクロオレフィンポリマー(COP)フィルム、強化ガラスを用いるのがより好ましい。なお、光透過性部材の厚さは、用途に応じて適時選択することができるが、一般に25〜1000μm程で用いられる。
液晶モジュールとする場合には、上記光源を含み、さらに、その上に偏光板/液晶セル/偏光板がこの順に配置された構成を有するものである。液晶セルは、一般に液晶表示装置に用いられているものならば特に制限されない。例えば、TN(Twisted Ne
matic)型液晶セル、STN(Super Twisted Nematic)型液晶セル、HAN(Hybrid Alignment Nematic)型液晶セル、IPS(In Plane Switching)型液晶セル、VA(Vertical Ali
gnment)型液晶セル、MVA(Multiple Vertical Alignment型液晶セル、OCB(Optical Compensated Bend)型液晶セルなどを挙げることができる。
本発明の表示装置は、液晶表示装置(液晶ディスプレイ)、LED(発光ダイオードディスプレイ)、ELD(エレクトロルミネセンスディスプレイ)、VFD(蛍光ディスプレイ)、PDP(プラズマディスプレイパネル)などといった、フラットパネルディスプレイに適用することができる。また、本発明の表示装置の作製に使用することのできる本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、アンチブロッキング性に加えて、耐候性をも有するので、これらの表示装置の屋外での使用が可能となる。例えば、広告などの情報掲示を目的としたパネルディスプレイとして屋外または半屋外に設置することが可能となる。
また、本発明の表示装置の屋外または半屋外での用途としては、タッチパネルが挙げられ、これは、画面上の表示を押さえることによって機器を操作する機構を有し、例えば、銀行ATM、自動販売機、携帯情報端末(PDA)、複写機、ファクシミリ、ゲーム機、博物館およびデパートなどの施設に設置される案内表示装置、カーナビゲーション、マルチメディアステーション(コンビニエンスストアに設置される多機能端末機)、携帯電話、鉄道車両のモニタ装置などにおいて有用である。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例により限定されるものではない。
なお、以下の諸例において「部」とあるのは「重量部」を意味する。
下記の実施例等で得られた積層体の物性は下記の方法により評価した。
(1)還元粘度の測定
ポリカーボネート樹脂組成物のサンプルを、溶媒として塩化メチレンを用いて溶解し、0.6g/dLの濃度のポリカーボネート溶液を調製した。森友理化工業社製ウベローデ型粘度管を用いて、温度20.0℃±0.1℃で測定を行い、溶媒の通過時間t0と溶液の通過時間tから次式より相対粘度ηrelを求め、相対粘度から次式より比粘度ηsp
を求めた。
ηrel=t/t0
ηsp=(η−η0)/η0=ηrel−1
比粘度を濃度c(g/dL)で割って、還元粘度ηsp/cを求めた。この値が高いほど分子量が大きい。
(2)ポリカーボネート樹脂組成物中の各ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位比の測定
ポリカーボネート樹脂組成物中の各ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位比は、ポリカーボネート樹脂組成物30mgを秤取し、重クロロホルム約0.7mLに溶解し、溶液とし、これを内径5mmのNMR用チューブに入れ、日本電子社製JNM−AL400(共鳴周波数400MHz)を用いて常温で1H NMRスペクトルを測定した。各ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位に基づくシグナル強度比より各ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位比を求めた。
(3)樹脂組成物層(A層)の成形
名機製作所(株)製の型締め力200トンの射出成形機に幅100mm、長さ100mm、肉厚1.0mmのキャビティーに、ゲート幅40mm、ゲート厚さ0.8mmのファンゲートゲートを1つ設けた金型を装着して、金型温度80℃、射出圧力180〜250MPa、保圧60〜80MPa、保圧時間2秒、冷却時間30秒でプレートを成形し、本発明における樹脂組成物層(A層)を得た。
(4)活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(B層)の合成・配合・塗布方法
<合成例1>
撹拌機、還流冷却管、及び温度計を取り付けた反応器に、数平均分子量10,000の片末端メタクリロイル基置換ポリジメチルシロキサン(JNC社製「サイラプレーンFM−0725」)20重量部、グリシジルメタクリレート(三菱レイヨン社製「アクリエステルG」)30重量部、メチルメタクリレート(三菱レイヨン社製「アクリエステルM」)40重量部、ステアリルメタクリレート(三菱レイヨン社製「アクリエステルS」)10重量部、メチルイソブチルケトン(MIBK)150重量部を仕込み、撹拌開始後に系内を窒素置換し、55℃に昇温した。2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業社製「V−65」)0.06重量部、1-ドデカンチオール(和光純薬社製)0.09重量部を添加した後、系内を65℃まで昇温し、3時間撹拌した後、さ
らにV−65を0.06重量部を添加して65℃で3時間撹拌した。系内を100℃まで昇温し、30分間撹拌した後、MIBK68.8重量部を加え、再度系内を100℃まで昇温する。p−メトキシフェノール(和光純薬工業社製)0.05重量部とトリフェニルホスフィン(和光純薬工業社製)2.3重量部を添加した後、アクリル酸(三菱化学社製
)15.5重量部を加え、110℃まで昇温し6時間撹拌した。冷却後、MIBK253部を添加し、共重合体(F1)の溶液を得た。反応液の組成は(F1)/MIBK=20/80(重量比)であった。
<配合例I>
合成例1で得られた共重合体(F1)の溶液、及び硬化性モノマーDPHAおよびアロニックスM313を固形分比で2:12:86になるように配合し、さらに光重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASF社製「Irgacure184」)を4.0重量部、α−アミノフェニルケトン系光重合開始剤(BASF社製「Irgacure907」)を0.5重量部添加した後、プロピレングリコールモノメチルエーテル/メチルイソブチルケトン=1/1(重量比)の溶液で固形分が40%になるように希釈し、配合液Iを得た。
<活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(B層)の塗布方法>
得られた配合液Iを、上記(3)で得られたたA層の上に、乾燥後の塗膜が表に記載の膜厚になるようにバーコーターにて塗布し、80℃で2分間加熱して塗膜を乾燥させた。次いで、出力120W/cmの高圧水銀灯を使用し、450mW/cm、500mJ/cmの紫外線を照射し、硬化膜を被覆させた積層体を得た。なお、各実施例および比較例に対し、表1に記載のとおり、B層の膜厚を変更したものを作成した。
(5)鉛筆硬度:
上記(3)で得られた、A層と、上記(4)で得られた硬化膜を被覆させた積層体につ
いて、JIS準拠鉛筆硬度計(太佑機材社製)を用い、JIS K−5400の条件に基
づき測定を行い、傷の入らないもっとも硬い鉛筆の番手で評価した。積層体については、ハードコート層を有する面の鉛筆硬度を測定した。積層体の鉛筆硬度は、3H以上の硬さがよく、さらに、A層の硬度に比べ、積層体の硬度が2段階以上(例えば、Fから2H等)
向上している事が好ましい。鉛筆硬度が3H未満の場合、得られる成形品が傷つきやすく
、外観が損なわれやすいという問題点を生じるおそれがある。また、基材の硬度に比べ、積層体の硬度向上が2段階未満の場合は、ハードコート層を塗工する際の費用対効果が損なわれやすいという問題点を生じるおそれがある。なお、鉛筆硬度は、硬い方から順番に7H,6H,5H,4H,3H,2H,H,F,HB,B,2B,3B,4Bの順番で表さ
れる。なお、本発明においては、2H以上を合格とした。
(6)密着性
上記(4)の方法により活性エネルギー線硬化性樹脂組成物による硬化膜を被覆させた積層体を得た後、JIS K−5400の碁盤目剥離試験(碁盤目数:100個)に準じて評価し、剥離しなかった碁盤目の数を 表1に記載した。
(7)寸法安定性(低カール性)
上記(4)の方法により活性エネルギー線硬化性樹脂組成物による硬化膜を被覆させた積層体を得た後、積層体を平坦な机上に置き、4つの角(かど)部分の机面からの距離(反り量)を測定して平均値を求め、以下の基準で評価した。
○:反り量が1.5mm未満であるもの。
△:反り量が1.5mm以上、3mm未満であるもの。
×:反り量が3mm以上であるもの。
(8)耐衝撃性
上記(4)の方法により活性エネルギー線硬化性樹脂組成物による硬化膜を被覆させた積層体を得た後、デュポン衝撃試験機(東洋精機製作所)を用いて、100gの錘を30cmの高さから積層体に落下させ耐衝撃性を評価した。この時、硬化膜(B層)側の面を
撃芯との接触面とした。なお、評価として○は積層体が割れなかったことを示し、×は積層体が割れたことを示す。
(9)耐湿熱性
上記(4)の方法により活性エネルギー線硬化性樹脂組成物による硬化膜を被覆させた積層体を得た後、温度80℃、湿度90%に調整された恒温恒湿槽中の金属製棚の上に120時間静置(B層を上にし、平置き)した後に取出し、硬化膜(B層)における亀裂(クラック)の有無を確認した。 硬化膜(B層)における亀裂(クラック)が見られない樹
脂の耐湿熱性を○、硬化膜(B層)における亀裂(クラック)が見られる積層体の耐湿熱
性を×とした。
以下の実施例の記載の中で用いた化合物の略号は次の通りである。
(ジヒドロキシ化合物)
・ISB:イソソルビド (ロケットフルーレ社製、商品名:POLYSORB)
・CHDM:1,4−シクロヘキサンジメタノール(新日本理化(株)製、商品名:SKY CHDM)
・TCDDM:TCDDM:トリシクロデカンジメタノール
(炭酸ジエステル)
・DPC:ジフェニルカーボネート(三菱化学(株)製)
(熱安定剤)
・AS2112:化合物名、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト((株)ADEKA製)
(酸化防止剤)
・IRGANOX1010:化合物名、ペンタエリトリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナート](BASFジャパン(株)製)
(離形剤)
・E−275:化合物名、ジステアリン酸エチレングリコール(日油(株)製)
(ビスフェノールA系ポリカーボネート:BPA系PC)
・NOVAREX 7022R:2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)プロパンに由来する構造のみを有する芳香族ポリカーボネート樹脂、粘度平均分子量22,000(三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製)
(PMMA)
・アクリペット VH:ポリメタクリル酸メチル樹脂(三菱レイヨン株式会社製)
[実施例1]
撹拌翼および100℃に制御された還流冷却器を具備した重合反応装置に、ISBとCHDM、蒸留精製して塩化物イオン濃度を10ppb以下にしたDPCおよび酢酸カルシウム1水和物を、モル比率でISB/CHDM/DPC/酢酸カルシウム1水和物=0.70/0.30/1.00/1.3×10−6になるように仕込み、十分に窒素置換した(酸素濃度0.0005vol%〜0.001vol%)。続いて熱媒で加温を行い、内温が100℃になった時点で撹拌を開始し、内温が100℃になるように制御しながら内容物を融解させ均一にした。その後、昇温を開始し、40分で内温を210℃にし、内温が210℃に到達した時点でこの温度を保持するように制御すると同時に、減圧を開始し、210℃に到達してから90分で13.3kPa(絶対圧力、以下同様)にして、この圧力を保持するようにしながら、さらに60分間保持した。重合反応とともに副生するフェノール蒸気は、還流冷却器への入口温度として100℃に制御された蒸気を冷媒として用いた還流冷却器に導き、フェノール蒸気中に若干量含まれるモノマー成分を重合反応器に戻し、凝縮しないフェノール蒸気は続いて45℃の温水を冷媒として用いた凝縮器に導いて回収した。
このようにしてオリゴマー化させた内容物を、一旦大気圧にまで復圧させた後、撹拌翼および上記同様に制御された還流冷却器を具備した別の重合反応装置に移し、昇温および減圧を開始して、60分で内温220℃、圧力200Paにした。その後、20分かけて内温228℃、圧力133Pa以下にして、所定の撹拌動力になった時点で復圧し、重合反応装置出口より溶融状態のポリカーボネート樹脂を得た。
更に3ベントおよび注水設備を供えた二軸押出機に連続的に前記溶融状態のポリカーボネート樹脂を供給し、表1に示した組成となるように酸化防止剤として「イルガノックス1010」及び「AS2112」、離型剤として「E−275」を所定の割合で連続的に添加するとともに、二軸押出機に具備された各ベント部にてフェノールなどの低分子量物を減圧脱揮したのち、ペレタイザーによりペレット化を行い、ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。
得られた樹脂組成物と、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物による硬化膜を被覆させた積層体の各種評価結果を表1に示す。
[実施例2]
実施例1において、仕込み組成をISB/CHDM/DPC/酢酸カルシウム1水和物=0.90/0.10/1.00/1.3×10−6になるように変更した以外は、実施例1と同様にカーボネート共重合体樹脂組成物のペレットを得た。得られた樹脂組成物と、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物による硬化膜を被覆させた積層体の各種評価結果を表1に示す。
[実施例3]
実施例1において、仕込み組成をISB/TCDDM/DPC/酢酸カルシウム1水和物=0.70/0.30/1.00/1.3×10−6になるように変更した以外は、実施例1と同様にカーボネート共重合体樹脂組成物のペレットを得た。得られた樹脂組成物と、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物による硬化膜を被覆させた積層体の各種評価結果を表1に示す。
[実施例4]
実施例1において、仕込み組成をISB/TCDDM/DPC/酢酸カルシウム1水和物=0.80/0.20/1.00/1.3×10−6になるように変更した以外は、実施例1と同様にカーボネート共重合体樹脂組成物のペレットを得た。得られた樹脂組成物と、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物による硬化膜を被覆させた積層体の各種評価結果を表1に示す。
[比較例1]
実施例1において、仕込み組成をISB/DPC/酢酸カルシウム1水和物=0.10/1.00/1.3×10−6になるように変更した以外は、実施例1と同様にカーボネート重合体樹脂組成物のペレットを得た。得られた樹脂組成物と、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物による硬化膜を被覆させた積層体の各種評価結果を表1に示す。
[比較例2]
市販のビスフェノールA系ポリカーボネート、NOVAREX 7022R(三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製)と、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物による硬化膜を被覆させた積層体の各種評価結果を表1に示す。
[比較例3]
市販のPMMA、アクリペット VH(三菱レイヨン株式会社製)と、活性エネルギー
線硬化性樹脂組成物による硬化膜を被覆させた積層体の各種評価結果を表1に示す。
Figure 0006349866
実施例1〜4に示す発明の積層体は、硬度耐衝撃性、密着性といった評価項目を総合すると、各特性評価において、×や不合格がなく比較例に示す成型品よりも優れたものであった。中でも、実施例1、3は、表面硬度が特に優れており(積層体の鉛筆硬度が3H以上であり、さらに、A層の硬度に比べ、積層体の硬度が2段階以上向上している)、実施例1、2、3(実施例3−5を除く)、4は、寸法安定性(低カール性)と、耐湿熱性(湿熱試験によりB層に亀裂が生じない)が特に優れたものであった。
一方、比較例1は構造単位(a)のみに由来する構造を有する成形品であり、耐衝撃性が不十分であり、さらに密着性も悪い。
比較例2は市販のビスフェノールA系ポリカーボネートを用いた積層体であるが、積層体の鉛筆硬度はF〜Hであり成形品が傷つきやすい虞がある。比較例3は市販のPMMAを用いた成形品であるが、表面硬度は良好なものの、耐衝撃性が不足しており、積層体が割れやすい虞がある。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物を用いて成形される積層体は、耐衝撃性、および密着性に優れており、かつ光学歪みが低いため、例えば、液晶表示装置等の光学用途の樹脂成形品に使用することができる。

Claims (10)

  1. 下記一般式(1)で表される構造を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位(a)と、その他のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位(b)とを有するポリカーボネート樹脂を含有する層(A層)
    および多官能(メタ)アクリレートを含有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化してなる層(B層)を有し、
    該活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が、アクリル系共重合体(α)を含有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物であって、
    アクリル系共重合体(α)が、以下の共重合体(β)に化合物(γ)を付加して得られたものである活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化してなる層である、積層体。
    共重合体(β):構造式(I)で表されるシリコーンモノマー(A)、エポキシ基を有する(メタ)アクリレート(B)およびその他共重合可能なモノマー(C)の共重合体
    化合物(γ):分子内にカルボキシル基と1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物
    Figure 0006349866
    (但し、上記一般式(1)で表される構造が−CH−OHの一部である場合を除く。)
    Figure 0006349866
    (式中、R は水素原子又はメチル基、R は炭素数1〜12のアルキレン基、R およびR はそれぞれメチル基又はフェニル基、nは10〜100の整数を表し、R およびR は、相互に同一でも異なっていてもよい。また、R は炭素数1〜12のアルキル基を表す。)
  2. 前記A層と前記B層とが直接隣接するように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の積層体。
  3. 前記ポリカーボネート樹脂中の構造単位(b)が、脂肪族ジヒドロキシ化合物及び脂環式ジヒドロキシ化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物に由来する構成単位であることを特徴とする請求項1または2に記載の積層体。
  4. 一般式(1)で表される構造を有するジヒドロキシ化合物が、下記一般式(2)で表される化合物であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の積層体。
    Figure 0006349866
  5. B層が活性エネルギー線により硬化されてなることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の積層体。
  6. 前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が、前記アクリル系共重合体(α)を0.05重量%〜10重量%含有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の積層体。
  7. 前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物のアクリル共重合体(α)が共重合可能なモノマー(C)として、炭素数4〜22の直鎖または分岐型アルキル(メタ)アクリレートから少なくとも一つ選ばれる(メタ)アクリレートを含む、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の積層体。
  8. 請求項1乃至7のいずれか1項に記載の積層体からなることを特徴とするフラットパネルディスプレイの前面板。
  9. 請求項1乃至7のいずれか1項に記載の積層体からなることを特徴とするタブレット型パーソナルコンピュータの前面板。
  10. 請求項1乃至7のいずれか1項に記載の積層体からなることを特徴とする車載用ディスプレイの前面板。
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