JP6343224B2 - ゴーグル及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ゴーグルに関する。
水泳用ゴーグル、ダイビング用ゴーグル、水中作業用ゴーグル、遊泳用ゴーグルなどの水中ゴーグルは、プール、河川、海などで顔に装着して使用される。
前記水中ゴーグルは、使用中に、レンズの内側に曇りを生じる。その曇りは、前記水中ゴーグルの中に水を入れることで除去できるが、また直ぐに曇りが生じるため、曇りを除去する動作を頻繁に行う必要がある。
そこで、界面活性剤などを含む防曇剤を対象物の表面に塗布することにより、水に対する塗布面の濡れ性を向上させ、曇りを生じさせないようにする技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
しかし、この提案の技術では、手軽に表面を親水性に変えることが可能であるものの、スプレーなどによる塗布のため、曇り止めの効果の持続性に欠けるという問題がある。
また、吸水性の紫外線硬化型樹脂塗膜などの吸水型の防曇層を設けたポリカーボネート形成体が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
しかし、この提案の技術では、ゴーグルを長時間装着した際などに、吸水量が飽和してしまうと、防曇性の効果が失われてしまうという問題がある。
したがって、防曇性が長時間に渡って維持できるゴーグルの提供が求められているのが現状である。
特開2004−263008号公報 特開2007−210138号公報
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、防曇性が長時間に渡って維持できるゴーグルを提供することを目的とする。
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> レンズと、前記レンズの内側面に保持された親水性積層体とを有するゴーグルであって、
前記親水性積層体が、樹脂製基材と、前記樹脂製基材上に親水性樹脂層とを、前記レンズ側からこの順で有し、
前記親水性樹脂層が、表面に微細な凸部及び凹部のいずれかを有し、
前記親水性樹脂層の表面の純水接触角が、15°以下であり、
前記親水性樹脂層の表面の最大高低差が、350nm以下である、
ことを特徴とするゴーグルである。
<2> 前記レンズと、前記親水性積層体との間に水膜を有し、
前記親水性積層体が、前記水膜によって前記レンズの内側面に保持されている前記<1>に記載のゴーグルである。
<3> 前記親水性積層体が、前記水膜に加え、更に物理的に前記レンズの内側面に保持されている前記<2>に記載のゴーグルである。
<4> 前記親水性積層体が、前記樹脂製基材の前記レンズ側上に、表面に微細な凸部及び凹部のいずれかを有する第2の親水性樹脂層を有する前記<1>から<3>のいずれかに記載のゴーグルである。
<5> 前記第2の親水性樹脂層の表面の純水接触角が、15°以下であり、
前記第2の親水性樹脂層の表面の最大高低差が、350nm以下である、
前記<4>に記載のゴーグルである。
<6> 前記レンズと、前記親水性積層体との間に粘着層を有し、
前記親水性積層体が、前記粘着層によって前記レンズの内側面に保持されている前記<1>に記載のゴーグルである。
<7> 前記親水性積層体の前記樹脂製基材側に、前記レンズを作製するための成形材料を射出成形する工程を用いて製造される前記<1>に記載のゴーグルである。
本発明によれば、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、防曇性が長時間に渡って維持できるゴーグルを提供することができる。
図1Aは、凸部を有する親水性樹脂層の表面の一例を示す原子間力顕微鏡(AFM)像である。 図1Bは、図1Aのa−a線に沿った断面図である。 図2Aは、凹部を有する親水性樹脂層の表面の一例を示すAFM像である。 図2Bは、図2Aのa−a線に沿った断面図である。 図3Aは、転写原盤であるロール原盤の構成の一例を示す斜視図である。 図3Bは、図3Aに示したロール原盤の一部を拡大して表す平面図である。 図3Cは、図3BのトラックTにおける断面図である。 図4は、ロール原盤を作製するためのロール原盤露光装置の構成の一例を示す概略図である。 図5Aは、ロール原盤を作製する工程の一例を説明するための工程図である。 図5Bは、ロール原盤を作製する工程の一例を説明するための工程図である。 図5Cは、ロール原盤を作製する工程の一例を説明するための工程図である。 図5Dは、ロール原盤を作製する工程の一例を説明するための工程図である。 図5Eは、ロール原盤を作製する工程の一例を説明するための工程図である。 図6Aは、ロール原盤により微細な凸部又は凹部を転写する工程の一例を説明するための工程図である。 図6Bは、ロール原盤により微細な凸部又は凹部を転写する工程の一例を説明するための工程図である。 図6Cは、ロール原盤により微細な凸部又は凹部を転写する工程の一例を説明するための工程図である。 図7Aは、転写原盤である板状の原盤の構成の一例を示す平面図である。 図7Bは、図7Aに示したa−a線に沿った断面図である。 図7Cは、図7Bの一部を拡大して表す断面図である。 図8は、板状の原盤を作製するためのレーザー加工装置の構成の一例を示す概略図である。 図9Aは、板状の原盤を作製する工程の一例を説明するための工程図である。 図9Bは、板状の原盤を作製する工程の一例を説明するための工程図である。 図9Cは、板状の原盤を作製する工程の一例を説明するための工程図である。 図10Aは、板状の原盤により微細な凸部又は凹部を転写する工程の一例を説明するための工程図である。 図10Bは、板状の原盤により微細な凸部又は凹部を転写する工程の一例を説明するための工程図である。 図10Cは、板状の原盤により微細な凸部又は凹部を転写する工程の一例を説明するための工程図である。 図11Aは、インモールド成形により本発明の物品を製造する一例を説明するための工程図である。 図11Bは、インモールド成形により本発明の物品を製造する一例を説明するための工程図である。 図11Cは、インモールド成形により本発明の物品を製造する一例を説明するための工程図である。 図11Dは、インモールド成形により本発明の物品を製造する一例を説明するための工程図である。 図11Eは、インモールド成形により本発明の物品を製造する一例を説明するための工程図である。 図11Fは、インモールド成形により本発明の物品を製造する一例を説明するための工程図である。
(ゴーグル)
本発明のゴーグルは、レンズと、親水性積層体とを少なくとも有し、更に必要に応じて、その他の部材を有する。
本発明者らは、防曇性が長時間に渡って維持できるゴーグルについて鋭意検討を行った。そして、防曇性を長時間に渡って維持するには、レンズの表面に水膜を形成することが有効であることに気づいた。しかし、純水接触角が小さく親水性がある膜をレンズの表面に形成しても、必ずしも水膜ができるものではないことに気づいた。そして、本発明者らは、更に鋭意検討を行った結果、水膜の形成には、純水接触角に加え、表面の形状が重要であることを見出し、本発明の完成に至った。
即ち、本発明のゴーグルは、レンズと、親水性積層体とを少なくとも有する。
前記親水性積層体は、前記レンズの内側面に保持されている。
前記親水性積層体は、樹脂製基材と、前記樹脂製基材上に親水性樹脂層とを、前記レンズ側からこの順で有する。
前記親水性樹脂層は、表面に微細な凸部及び凹部のいずれかを有する。
前記親水性樹脂層の表面の純水接触角は、15°以下である。
前記親水性樹脂層の表面の最大高低差は、350nm以下である。
前記親水性樹脂層において、表面に微細な凸部及び凹部のいずれかを有し、前記表面の純水接触角が15°以下であり、かつ前記表面の最大高低差が350nm以下である場合、前記表面に水滴を付着させ、前記ゴーグルを傾けるなどして、その水滴を広げると、前記表面には水膜が形成される。前記水膜が形成されることにより、防曇性が得られる。前記防曇性は、防曇剤や、吸水性によって形成されるのではなく、水膜によって得られる。そして、前記水膜は、前記親水性樹脂層の表面の材質及び形状に依存して形成される。前記親水性樹脂層の形状は、簡単には変形、及び劣化しない。そのため、前記ゴーグルの防曇性は、長時間に渡って維持される。
<レンズ>
前記レンズの材質、形状、大きさ、構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記レンズの材質としては、例えば、ガラス、プラスチックなどが挙げられる。
前記プラスチックとしては、例えば、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタアクリレート、ポリスチレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリルスチレン共重合体(AS樹脂)、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、セルロースプロピオネート樹脂、セルロースアセテート樹脂などが挙げられる。これらの中でも、前記ポリカーボネート(PC)が、強靱性、及び透明性の点で好ましい。前記ポリカーボネートとしては、ビスフェノールAポリカーボネートが好ましいが、その他、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパンの単独ポリカーボネート、これら相互の共重合ポリカーボネート、ビスフェノールAとの共重合ポリカーボネートなどのポリカーボネートが挙げられる。
前記レンズの形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、平板状であってもよいし、度が付くように表面に曲面が形成されていてもよい。
前記ゴーグルにおいて、前記レンズは、1枚であってもよいし、2枚であってもよい。即ち、前記レンズは、両目を覆うような1枚のレンズであってもよいし、右目及び左目のそれぞれを覆うような一対のレンズ(2枚のレンズ)であってもよい。
<親水性積層体>
前記親水性積層体は、樹脂製基材と、前記樹脂製基材上に親水性樹脂層とを、前記レンズ側からこの順で有し、更に必要に応じて、その他の部材を有する。
前記ゴーグルにおいて、前記親水性積層体は、前記レンズの内側面に保持されている。ここで、レンズの内側とは、言い換えれば、ゴーグルを顔に装着した際に、前記レンズにおいて目に近い側である。
<<樹脂製基材>>
前記樹脂製基材の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエステル(TPEE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド(PI)、ポリアミド(PA)、アラミド、ポリエチレン(PE)、ポリアクリレート、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン、ジアセチルセルロース、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、エポキシ樹脂、尿素樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体、シクロオレフィンポリマー(COP)、シクロオレフィンコポリマー(COC)、PC/PMMA積層体、ゴム添加PMMAなどが挙げられる。
前記樹脂製基材の構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、異種の樹脂からなる多層構造が好ましく、2層構造がより好ましい。前記多層構造とすることにより、異種の樹脂の吸水率の違いによって、前記樹脂製基材は、わずかに湾曲する。そうすることで、曲面を有するレンズへの密着性が向上する。
前記樹脂製基材は、透明性を有する。前記透明性は、ゴーグルとして使用可能な程度であればよく、例えば、前記樹脂製基材は、前記親水性積層体の視認性を高めるために若干の色がついていてもよい。また、前記樹脂製基材は、前記親水性積層体の視認性を高めるために若干の印刷が施されていてもよい。
前記樹脂製基材の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、フィルム状であることが好ましい。
前記樹脂製基材がフィルム状の場合、前記樹脂製基材の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5μm〜1,000μmが好ましく、50μm〜500μmがより好ましい。
前記樹脂製基材の表面には、前記親水性積層体を成形加工時、前記樹脂製基材と成形材料との密着性を高めるために、バインダー層を設けてもよい。前記バインダー層の材質としては、アクリル系、ウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、エチレンブチルアルコール系、エチレン酢酸ビニル共重合体系等の各種バインダーの他、各種接着剤を用いることができる。なお、前記バインダー層は2層以上設けてもよい。使用するバインダーは、成形材料に適した感熱性、感圧性を有するものを選択できる。
<<親水性樹脂層>>
前記親水性樹脂層は、表面に微細な凸部及び凹部のいずれかを有する。
前記親水性樹脂層の表面の純水接触角は、15°以下である。
前記親水性樹脂層の表面の最大高低差は、350nm以下である。
前記親水性樹脂層は、前記樹脂製基材上に形成されている。
前記親水性樹脂層としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物を含有することが好ましい。
−微細な凸部、及び微細な凹部−
前記親水性樹脂層は、その表面に微細な凸部及び凹部のいずれかを有している。
前記微細な凸部及び凹部のいずれかは、前記親水性樹脂層において、前記樹脂製基材側と反対側の面に形成されている。
ここで、微細な凸部とは、前記親水性樹脂層の表面において、隣接する凸部の平均距離が、1,000nm以下であることをいう。
ここで、微細な凹部とは、前記親水性樹脂層の表面において、隣接する凹部の平均距離が、1,000nm以下であることをいう。
前記凸部、及び前記凹部の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、錐体状、柱状、針状、球体の一部の形状(例えば、半球体状)、楕円体の一部の形状(例えば、半楕円体状)、多角形状などが挙げられる。これらの形状は数学的に定義される完全な形状である必要はなく、多少の歪みがあってもよい。
前記凸部又は前記凹部は、前記親水性樹脂層の表面に2次元配列されている。その配列は、規則的な配列であってもよいし、ランダムな配列であってもよい。前記規則的な配列としては、充填率の点から、最密充填構造が好ましい。
隣接する前記凸部の平均距離としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5nm〜1,000nmが好ましく、10nm〜500nmがより好ましく、50nm〜300nmが特に好ましい。
隣接する前記凹部の平均距離としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5nm〜1,000nmが好ましく、10nm〜500nmがより好ましく、50nm〜300nmが特に好ましい。
隣接する前記凸部の平均距離及び隣接する前記凹部の平均距離が、前記好ましい範囲内であると、前記親水性樹脂層に付着した親水性成分が、効果的に濡れ広がる。前記平均距離が、前記特に好ましい範囲内であると、親水性成分が濡れ広がる効果は顕著になる。
前記凸部の平均高さとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1nm〜1,000nmが好ましく、5nm〜500nmがより好ましく、10nm〜300nmが更に好ましく、50nm〜300nmが特に好ましい。
前記凹部の平均深さとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1nm〜1,000nmが好ましく、5nm〜500nmがより好ましく、10nm〜300nmが更に好ましく、50nm〜300nmが特に好ましい。
前記凸部の平均高さ及び前記凹部の平均深さが、前記好ましい範囲内であると、前記親水性樹脂層に付着した親水性成分が、効果的に濡れ広がる。前記平均高さ及び前記平均深さが、前記特に好ましい範囲内であると、親水性成分が濡れ広がる効果は顕著になる。
前記凸部の平均アスペクト比(前記凸部の平均高さ/隣接する前記凸部の平均距離)及び前記凹部の平均アスペクト比(前記凹部の平均深さ/隣接する前記凹部の平均距離)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.001〜1,000が好ましく、0.1〜10がより好ましく、0.2〜1.0が特に好ましい。
前記凸部の平均アスペクト比及び前記凹部の平均アスペクト比が、前記好ましい範囲内であると、前記親水性樹脂層に付着した親水性成分が、効果的に濡れ広がる。前記アスペクト比が、前記特に好ましい範囲内であると、親水性成分が濡れ広がる効果は顕著になる。
ここで、凸部又は凹部の平均距離(Pm)、及び凸部の平均高さ又は凹部の平均深さ(Hm)は、以下のようにして測定できる。
まず、凸部又は凹部を有する前記親水性樹脂層の表面Sを原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)により観察し、AFMの断面プロファイルから凸部又は凹部のピッチ、及び凸部の高さ又は凹部の深さを求める。これを前記親水性樹脂層の表面から無作為に選び出された10箇所において繰り返し行い、ピッチP1、P2、・・・、P10と、高さ又は深さH1、H2、・・・、H10とを求める。
ここで、前記凸部のピッチは、前記凸部の頂点間の距離である。前記凹部のピッチは、前記凹部の最深部間の距離である。前記凸部の高さは、前記凸部間の谷部の最低点を基準とした前記凸部の高さである。前記凹部の深さは、前記凹部間の山部の最高点を基準とした前記凹部の深さである。
次に、これらのピッチP1、P2、・・・、P10、及び高さ又は深さH1、H2、・・・、H10をそれぞれ単純に平均(算術平均)して、凸部又は凹部の平均距離(Pm)、及び凸部の平均高さ又は凹部の平均深さ(Hm)を求める。
なお、前記凸部又は凹部のピッチが面内異方性を有している場合には、ピッチが最大となる方向のピッチを用いて前記Pmを求めるものとする。また、前記凸部の高さ又は前記凹部の深さが面内異方性を有している場合には、高さ又は深さが最大となる方向の高さ又は深さを用いて前記Hmを求めるものとする。
また、前記凸部又は凹部が棒状の場合には、短軸方向のピッチを、前記ピッチとして測定する。
なお、前記AFM観察においては、断面プロファイルの凸の頂点、又は凹の底辺が、立体形状の凸部の頂点、又は凹部の最深部と一致するようにするため、断面プロファイルを、測定対象となる立体形状の凸部の頂点、又は立体形状の凹部の最深部を通る断面となるように、切り出している。
ここで、前記親水性樹脂層の表面に形成されている微細な形状が、凸部であるか、凹部であるかは、以下のようにして判断することができる。
凸部又は凹部を有する前記親水性樹脂層の表面Sを原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)により観察し、断面及び前記表面SのAFM像を得る。
そして、表面のAFM像を、最表面側を明るい像、深部側を暗い像にした場合、暗い像の中に、明るい像が島状に形成されている場合、その表面は、凸部を有するものとする。
一方、明るい像の中に、暗い像が島状に形成されている場合、その表面は、凹部を有するものとする。
例えば、図1A及び図1Bに示す表面及び断面のAFM像を有する親水性樹脂層の表面は、凸部を有している。図2A及び図2Bに示す表面及び断面のAFM像を有する親水性樹脂層の表面は、凹部を有している。
前記親水性樹脂層の表面の平均表面積率としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1.10以上が好ましく、1.30以上がより好ましく、1.40以上が特に好ましい。前記平均表面積率の上限としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
表面積率とは、ある指定した領域における対象物の表面形状によって生じている表面積と該指定領域の面積との比(表面積/面積)である。前記平均表面積率の下限が、前記好ましい範囲内であると、前記親水性樹脂層に付着した親水性成分が、効果的に濡れ広がる。前記平均表面積率が、前記特に好ましい範囲内であると、親水性成分が濡れ広がる効果は顕著になる。
ここで、親水性樹脂層の表面の平均表面積率は、以下のようにして測定できる。
凸部又は凹部を有する前記親水性樹脂層の表面Sを原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)により観察し、前記表面SのAFM像を得る。これを前記親水性樹脂層の表面から無作為に選び出された10箇所において繰り返し行い、表面積S1、S2、・・・、S10を求める。次に、これらの表面積S1、S2、・・・、S10と、それぞれの観察領域の面積との比(表面積/面積)SR1、SR2、・・・、SR10を単純に平均(算術平均)して、親水性樹脂層の表面の平均表面積率SRmを求める。
−純水接触角−
前記親水性樹脂層の表面の純水接触角は、15°以下であり、10°以下が好ましい。前記純水接触角の下限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、5°などが挙げられる。
前記純水接触角は、例えば、PCA−1(協和界面化学株式会社製)を用い、下記条件で滑落法によって測定することができる。
・蒸留水をプラスチックシリンジに入れて、その先端にステンレス製の針を取り付けて評価面に滴下する。
・水の滴下量:2μL
・測定温度:25℃
−最大高低差−
前記親水性樹脂層の表面の最大高低差は、350nm以下であり、300nm以下が好ましい。前記最大高低差の下限としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、100nm以上などが挙げられる。
ここで、前記最大高低差とは、前記親水性樹脂層の表面において凸部又は凹部によって形成される高低差の最大値を意味する。
前記最大高低差は、以下の方法により求めることができる。
前記親水性樹脂層の表面の3μm×3μmの範囲を、原子間力顕微鏡(AFM)で観察する。前記範囲において、最も低い(深い)箇所(最底部)と、最も高い箇所(最頂部)との、前記表面に直交する方向における高さの差が、最大高低差である。
なお、前記最大高低差は、前記AFMに付属するソフトを用いれば、容易に測定することができる。
−活性エネルギー線硬化性樹脂組成物−
前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、親水性モノマーと、光重合開始剤とを少なくとも含有し、更に必要に応じて、その他の成分を含有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物などが挙げられる。
−−親水性モノマー−−
前記親水性モノマーとしては、例えば、ポリオキシアルキル含有(メタ)アクリレート、4級アンモニウム塩含有(メタ)アクリレート、3級アミノ基含有(メタ)アクリレート、スルホン酸基含有モノマー、カルボン酸基含有モノマー、リン酸基含有モノマー、ホスホン酸基含有モノマーなどが挙げられる。
ここで、本発明において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタアクリレートを意味する。(メタ)アクリロイル、(メタ)アクリルについても同様である。
前記ポリオキシアルキル含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、多価アルコール(ポリオール又はポリヒドロキシ含有化合物)と、アクリル酸、メタクリル酸及びそれらの誘導体からなる群から選択される化合物との反応によって得られるモノ若しくはポリアクリレート、又はモノ若しくはポリメタクリレートなどが挙げられる。前記多価アルコールとしては、例えば、2価のアルコール、3価のアルコール、4価以上のアルコールなどが挙げられる。前記2価のアルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、数平均分子量が300〜1,000のポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2’−チオジエタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。前記3価のアルコールとしては、例えば、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタグリセロール、グリセロール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオールなどが挙げられる。前記4価以上のアルコールとしては、例えば、ペンタエリスリトール、ジグリセロール、ジペンタエリスリトールなどが挙げられる。
前記ポリオキシアルキル含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。前記ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートとしては、例えば、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。前記ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートにおけるポリエチレングリコールユニットの分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、300〜1,000などが挙げられる。前記メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートやポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートとしては、市販品を用いることができる。前記市販品としては、例えば、MEPM−1000(メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、第一工業製薬株式会社製)、NKエステルA−600(ポリエチレングリコールジアクリレート、新中村化学工業株式会社製)などが挙げられる。
これらの中でも、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートが好ましく、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートがより好ましい。
前記4級アンモニウム塩含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルグリシジルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムメチルサルフェート、(メタ)アクリロイルオキシジメチルエチルアンモニウムエチルサルフェート、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム−p−トルエンスルフォネート、(メタ)アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリルアミドプロピルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリルアミドプロピルジメチルグリシジルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムメチルサルフェート、(メタ)アクリルアミドプロピルジメチルエチルアンモニウムエチルサルフェート、(メタ)アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウム−p−トルエンスルフォネートなどが挙げられる。
前記3級アミノ基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジル(メタ)アクリレート、2,2,6,6−テトラメチルピペリジル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
前記スルホン酸基含有モノマーとしては、例えば、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、ビニルトルエンスルホン酸、スチレンスルホン酸、スルホン酸基含有(メタ)アクリレートなどが挙げられる。前記スルホン酸基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、(メタ)アクリル酸スルホエチル、(メタ)アクリル酸スルホプロピル、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、末端スルホン酸変性ポリエチレングリコールモノ(メタ)クリレートなどが挙げられる。これらは、塩を形成していてもよい。前記塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩などが挙げられる。
前記カルボン酸基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸などが挙げられる。
前記リン酸基含有モノマーとしては、例えば、リン酸エステルを有する(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
前記親水性モノマーは、単官能又は2官能の親水性モノマーであることが好ましい。
前記親水性モノマーの分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、200以上が好ましい。
前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物における前記親水性モノマーの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、15質量%〜99.9質量%が好ましく、20質量%〜90質量%がより好ましく、25質量%〜50質量%が特に好ましい。
前記親水性モノマーの代わりに、アジド基、フェニルアジド基、キノンアジド基、スチルベン基、カルコン基、ジアゾニウム塩基、ケイ皮酸基、アクリル酸基等から選択された1つ以上を含む感光基を導入したポリマーを用いてもよい。前記ポリマーとしては、例えば、ポリビニルアルコール系、ポリビニルブチラール系、ポリビニルピロリドン系、ポリアクリルアミド系、ポリ酢酸ビニル系ポリマー、ポリオキシアルキレン系ポリマーなどが挙げられる。
−−光重合開始剤−−
前記光重合開始剤としては、例えば、光ラジカル重合開始剤、光酸発生剤、ビスアジド化合物、ヘキサメトキシメチルメラミン、テトラメトキシグリコユリルなどが挙げられる。
前記光ラジカル重合開始剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エトキシフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメチルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド、ビス(2,6−ジクロルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド、1−フェニル2−ヒドロキシ−2メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1,2−ジフェニルエタンジオン、メチルフェニルグリオキシレートなどが挙げられる。
前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物における前記光重合開始剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1質量%〜10質量%が好ましく、0.5質量%〜8質量%がより好ましく、1質量%〜5質量%が特に好ましい。
−−その他の成分−−
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸基含有(メタ)アクリレート、フィラーなどが挙げられる。
これらは、前記親水性樹脂層の伸び率、硬度などを調整するために用いることがある。
前記ウレタン(メタ)アクリレートとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、脂肪族ウレタン(メタ)アクリレート、芳香族ウレタン(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの中でも、脂肪族ウレタン(メタ)アクリレートが好ましい。
前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物における前記ウレタン(メタ)アクリレートの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10質量%〜45質量%が好ましく、15質量%〜40質量%がより好ましく、20質量%〜35質量%が特に好ましい。
前記イソシアヌル酸基含有(メタ)アクリレートとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エトキシ化イソシアヌル酸(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの中でも、エトキシ化イソシアヌル酸(メタ)アクリレートが好ましい。
前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物における前記イソシアヌル酸基含有(メタ)アクリレートの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10質量%〜45質量%が好ましく、15質量%〜40質量%がより好ましく、20質量%〜35質量%が特に好ましい。
前記フィラーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シリカ、ジルコニア、チタニア、酸化錫、酸化インジウム錫、アンチモンドープ酸化錫、五酸化アンチモンなどが挙げられる。前記シリカとしては、例えば、中実シリカ、中空シリカなどが挙げられる。
前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、使用時には、有機溶剤を用いて希釈して用いることができる。前記有機溶剤としては、例えば、芳香族系溶媒、アルコール系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、グリコールエーテル系溶媒、グリコールエーテルエステル系溶媒、塩素系溶媒、エーテル系溶媒、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミドなどが挙げられる。
前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、活性エネルギー線が照射されることにより硬化する。前記活性エネルギー線としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、電子線、紫外線、赤外線、レーザー光線、可視光線、電離放射線(X線、α線、β線、γ線等)、マイクロ波、高周波などが挙げられる。
前記親水性樹脂層のマルテンス硬度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50N/mm〜300N/mmが好ましく、50N/mm〜290N/mmがより好ましく、50N/mm〜280N/mmが特に好ましい。前記親水性積層体を成形加工する際、例えば、ポリカーボネートの射出成形時には、親水性積層体は、290℃、200MPaで加熱加圧される。このとき、前記親水性樹脂層の表面の微細な凸部及び凹部のいずれかは変形することがある。変形としては、例えば、微細な凸部の高さが低くなること、微細な凹部の深さが浅くなることなどがある。防曇性能に影響がない範囲では変形してもよいが、変形しすぎると純水接触角が高くなり防曇性能が劣化することがある。前記マルテンス硬度が、50N/mm未満であると、前記親水性積層体を成形加工する際に前記親水性樹脂層の表面の微細な凸部及び凹部のいずれかが変形しすぎてしまい、純水接触角が高くなり防曇性能が劣化すること、及び、前記親水性積層体を製造又は成形加工する際のハンドリング及び面清掃等の、通常使用時の面清掃などで前記親水性樹脂層に傷が入り易いことがあり、300N/mmを超えると、成形加工時、前記親水性樹脂層にクラックが発生したり、前記親水性樹脂層が剥離することがある。前記マルテンス硬度が、前記特に好ましい範囲内であると、前記親水性積層体を、防曇性能を劣化させることなく、且つ傷付き、クラック、剥離等の不良を発生させることなく、様々な三次元形状に容易に成形加工できる点で有利である。
なお、前記親水性積層体を成形加工後、前記親水性樹脂層には射出成形工程にて高温高圧が加わるため、成形加工前よりも前記親水性樹脂層のマルテンス硬度が高まることがある。
前記マルテンス硬度は、例えば、PICODENTOR HM500(商品名;フィッシャー・インストルメンツ社製)を用いて測定できる。荷重1mN/20sとし、針としてダイアモンド錐体を用い、面角136°で測定する。
前記親水性樹脂層の鉛筆硬度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、B〜4Hが好ましく、HB〜4Hがより好ましく、F〜4Hが特に好ましい。前記鉛筆硬度が、B未満である(Bより柔らかい)と、前記親水性積層体を製造又は成形加工する際のハンドリングや面清掃等の、通常使用時の面清掃などで前記親水性樹脂層に傷が入り易い。また、前記親水性積層体を成形加工する際に前記親水性樹脂層の表面の微細な凸部及び凹部のいずれかが変形しすぎてしまい、純水接触角が高くなり防曇性能が劣化することがある。前記鉛筆硬度が、4Hを超える(4Hより硬い)と、成形加工時、前記親水性樹脂層にクラックが発生したり、前記親水性樹脂層が剥離することがある。前記鉛筆硬度が、前記特に好ましい範囲内であると、前記親水性積層体を、防曇性能を劣化させることなく、且つ傷付き、クラック、剥離等の不良を発生させることなく、様々な三次元形状に容易に成形加工できる点で有利である。
なお、前記親水性積層体を成形加工後、前記親水性樹脂層には射出成形工程にて高温高圧が加わるため、成形加工前よりも前記親水性樹脂層の鉛筆硬度が高まることがある。
前記鉛筆硬度は、JIS K 5600−5−4に従って測定する。
前記親水性樹脂層の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1μm〜100μmが好ましく、1μm〜50μmがより好ましく、1μm〜30μmが特に好ましい。
<<その他の部材>>
前記親水性積層体における前記その他の部材としては、例えば、第2の親水性樹脂層、アンカー層などが挙げられる。
−第2の親水性樹脂層−
前記第2の親水性樹脂層は、前記樹脂製基材の前記レンズ側上に、形成されている。
前記第2の親水性樹脂層は、表面に微細な凸部及び凹部のいずれかを有する。
前記第2の親水性樹脂層における、表面の微細な凸部及び凹部のいずれかの具体例については、前記親水性樹脂層における、表面の微細な凸部及び凹部のいずれかと同様である。好ましい範囲も同様である。
前記微細な凸部及び凹部のいずれかは、前記第2の親水性樹脂層において、前記樹脂製基材側と反対側の面に形成されている。
前記第2の親水性樹脂層の表面の純水接触角は、15°以下が好ましく、10°以下がより好ましい。前記純水接触角の下限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、5°などが挙げられる。前記純水接触角の測定方法は、前述のとおりである。
前記第2の親水性樹脂層の表面の最大高低差は、350nm以下が好ましく、300nm以下がより好ましい。前記最大高低差の下限としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、100nm以上などが挙げられる。前記最大高低差の測定方法は、前述のとおりである。
これらの条件を満たす前記第2の親水性樹脂層を前記親水性積層体が有すると、前記親水性積層体の表裏面の区別がなくなる。そのため、前記レンズへ前記親水性積層体を装着させる際に、誤って水膜が形成されない面を前記レンズ側と反対側(目に近い側)にして装着させるミスを防ぐことができる。
前記レンズに前記親水性積層体を水膜によって保持させた際に、前記水膜が十分な厚みを有さないと、ニュートンリングを生じることがある。
前記第2の親水性樹脂層は、水を保持することができる。そのため、前記親水性積層体を、前記レンズに、水膜によって保持させた際に、適度な水膜の厚みが生じ、ニュートンリングを防ぐことができる。
前記第2の親水性樹脂層は、前記親水性樹脂層と同様の方法により形成できる。
−アンカー層−
前記アンカー層は、前記樹脂製基材と、前記親水性樹脂層との間に設けられる層である。
前記アンカー層を設けることにより、前記樹脂製基材と前記親水性樹脂層との接着性を向上できる。
前記アンカー層の屈折率は、干渉ムラを防止するために、前記親水性樹脂層の屈折率と近いことが好ましい。そのため、前記アンカー層の屈折率は、前記親水性樹脂層の屈折率の±0.10以内が好ましく、±0.05以内がより好ましい。または、前記アンカー層の屈折率は、前記親水性樹脂層の屈折率と前記樹脂製基材の屈折率との間であることが好ましい。
前記アンカー層は、例えば、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を塗布することにより形成できる。前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物としては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレートと、光重合開始剤とを少なくとも含有し、更に必要に応じて、その他の成分を含有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物などが挙げられる。前記ウレタン(メタ)アクリレート、前記光重合開始剤としては、例えば、前記親水性樹脂層の説明において例示した前記ウレタン(メタ)アクリレート、前記光重合開始剤がそれぞれ挙げられる。前記塗布の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ワイヤーバーコーティング、ブレードコーティング、スピンコーティング、リバースロールコーティング、ダイコーティング、スプレーコーティング、ロールコーティング、グラビアコーティング、マイクログラビアコーティング、リップコーティング、エアーナイフコーティング、カーテンコーティング、コンマコート法、ディッピング法などが挙げられる。
前記アンカー層の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.01μm〜10μmが好ましく、0.1μm〜5μmがより好ましく、0.3μm〜3μmが特に好ましい。
なお、前記アンカー層には、反射率低減や帯電防止の機能を付与してもよい。
前記アンカー層は、前記樹脂製基材と、前記第2の親水性樹脂層との間に設けられていてもよい。
前記親水性積層体の伸び率としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10%以上が好ましく、10%〜200%がより好ましく、40%〜150%が特に好ましい。前記伸び率が、10%未満であると、成形加工が困難になることがある。前記伸び率が、前記特に好ましい範囲内であると、成形加工性に優れる点で有利である。
前記伸び率は、例えば、以下の方法により求めることができる。
前記親水性積層体を、長さ10.5cm×幅2.5cmの短冊状にして測定試料とする。得られた測定試料の引張り伸び率を引張り試験機(オートグラフAG−5kNXplus、株式会社島津製作所製)で測定(測定条件:引張り速度=100mm/min;チャック間距離=8cm)する。前記伸び率の測定においては、前記樹脂製基材の品種によって測定温度が異なり、前記伸び率は、前記樹脂製基材の軟化点近傍又は軟化点以上の温度で測定する。具体的には、10℃〜250℃の間である。例えば、前記樹脂製基材が、ポリカーボネートやPC/PMMA積層体の場合は、190℃で測定するのが好ましい。
前記親水性積層体は、前記親水性積層体の面内におけるX方向とY方向の加熱収縮率差が小さい方が好ましい。前記親水性積層体の前記X方向と前記Y方向とは、例えば、親水性積層体がロール形状の場合、ロールの長手方向と幅方向とに相当する。成形時の加熱工程に使用する加熱温度にて、親水性積層体におけるX方向の加熱収縮率とY方向の加熱収縮率との差は5%以内であることが好ましい。この範囲外であると、成形加工時に、前記親水性樹脂層に剥離やクラックが発生したり、樹脂製基材の表面に印刷された前記文字、前記模様、前記画像などが変形や位置ズレを起こしてしまい、成形加工が困難になることがある。
前記親水性積層体は、インモールド成形用フィルム、インサート成形用フィルムに特に適している。
前記親水性積層体の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、後述する親水性積層体の製造方法が好ましい。
<<親水性積層体の製造方法>>
前記親水性積層体の製造方法は、未硬化樹脂層形成工程と、親水性樹脂層形成工程とを少なくとも含み、更に必要に応じて、その他の工程を含む。
−未硬化樹脂層形成工程−
前記未硬化樹脂層形成工程としては、樹脂製基材上に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を塗布して未硬化樹脂層を形成する工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記樹脂製基材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記親水性積層体の説明において例示した前記樹脂製基材などが挙げられる。
前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記親水性積層体の前記親水性樹脂層の説明において例示した前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物などが挙げられる。
前記未硬化樹脂層は、前記樹脂製基材上に前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を塗布して、必要に応じて乾燥を行うことにより形成される。前記未硬化樹脂層は、固体の膜であってもよいし、前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に含有される低分子量の硬化性成分によって流動性を有した膜であってもよい。
前記塗布の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ワイヤーバーコーティング、ブレードコーティング、スピンコーティング、リバースロールコーティング、ダイコーティング、スプレーコーティング、ロールコーティング、グラビアコーティング、マイクログラビアコーティング、リップコーティング、エアーナイフコーティング、カーテンコーティング、コンマコート法、ディッピング法などが挙げられる。
前記未硬化樹脂層は、活性エネルギー線が照射されていないため、硬化していない。
前記未硬化樹脂層形成工程においては、アンカー層が形成された前記樹脂製基材の前記アンカー層上に前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を塗布して前記未硬化樹脂層を形成してもよい。
前記アンカー層としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、本発明の前記親水性積層体の説明において例示した前記アンカー層などが挙げられる。
−親水性樹脂層形成工程−
前記親水性樹脂層形成工程としては、前記未硬化樹脂層に微細な凸部及び凹部のいずれかを有する転写原盤を密着させ、前記転写原盤が密着した前記未硬化樹脂層に活性エネルギー線を照射し前記未硬化樹脂層を硬化させて前記微細な凸部及び凹部のいずれかを転写することにより、親水性樹脂層を形成する工程あれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
なお、前記未硬化樹脂層形成工程及び前記親水性樹脂層形成工程により前記親水性樹脂層が形成されるが、同様の方法により、前記第2の親水性樹脂層を形成してもよい。
−−転写原盤−−
前記転写原盤は、微細な凸部及び凹部のいずれかを有する。
前記転写原盤の材質、大きさ、構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記転写原盤の微細な凸部及び凹部のいずれかの形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、所定のパターン形状を有するフォトレジストを保護膜として前記転写原盤の表面をエッチングすることにより形成することが好ましい。また、レーザーを前記転写原盤の表面に照射して前記転写原盤をレーザー加工することにより形成することが好ましい。
−−活性エネルギー線−−
前記活性エネルギー線としては、前記未硬化樹脂層を硬化させる活性エネルギー線であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、本発明の前記親水性積層体の説明において例示した前記活性エネルギー線などが挙げられる。
ここで、前記親水性樹脂層形成工程の具体例を、図を用いて説明する。
[第1の実施形態]
第1の実施形態は、所定のパターン形状を有するフォトレジストを保護膜として転写原盤の表面をエッチングすることにより微細な凸部及び凹部のいずれかを形成した転写原盤を用いて行う前記親水性樹脂層形成工程の一例である。
まず、転写原盤及びその製造方法について説明する。
〔転写原盤の構成〕
図3Aは、転写原盤であるロール原盤の構成の一例を示す斜視図である。図3Bは、図3Aに示したロール原盤の一部を拡大して表す平面図である。図3Cは、図3BのトラックTにおける断面図である。ロール原盤231は、上述した構成を有する親水性積層体を作製するための転写原盤、より具体的には、前記親水性樹脂層の表面に複数の凸部又は凹部を成形するための原盤である。ロール原盤231は、例えば、円柱状又は円筒状の形状を有し、その円柱面又は円筒面が親水性樹脂層の表面に複数の凸部又は凹部を成形するための成形面とされる。この成形面には、例えば、複数の構造体232が2次元配列されている。図3Cにおいて、構造体232は、成形面に対して凹状を有している。ロール原盤231の材料としては、例えば、ガラスを用いることができるが、この材料に特に限定されるものではない。
ロール原盤231の成形面に配置された複数の構造体232と、前記親水性樹脂層の表面に配置された複数の凸部又は凹部とは、反転した凹凸関係にある。すなわち、ロール原盤231の構造体232の配列、大きさ、形状、配置ピッチ、高さ又は深さ、及びアスペクト比などは、前記親水性樹脂層の凸部又は凹部と同様である。
〔ロール原盤露光装置〕
図4は、ロール原盤を作製するためのロール原盤露光装置の構成の一例を示す概略図である。このロール原盤露光装置は、光学ディスク記録装置をベースとして構成されている。
レーザー光源241は、記録媒体としてのロール原盤231の表面に着膜されたレジストを露光するための光源であり、例えば、波長λ=266nmの記録用のレーザー光234を発振するものである。レーザー光源241から出射されたレーザー光234は、平行ビームのまま直進し、電気光学素子(EOM:Electro Optical Modulator)242へ入射する。電気光学素子242を透過したレーザー光234は、ミラー243で反射され、変調光学系245に導かれる。
ミラー243は、偏光ビームスプリッタで構成されており、一方の偏光成分を反射し他方の偏光成分を透過する機能をもつ。ミラー243を透過した偏光成分はフォトダイオード244で受光され、その受光信号に基づいて電気光学素子242を制御してレーザー光234の位相変調を行う。
変調光学系245において、レーザー光234は、集光レンズ246により、ガラス(SiO)などからなる音響光学素子(AOM:Acousto−Optic Modulator)247に集光される。レーザー光234は、音響光学素子247により強度変調され発散した後、レンズ248によって平行ビーム化される。変調光学系245から出射されたレーザー光234は、ミラー251によって反射され、移動光学テーブル252上に水平かつ平行に導かれる。
移動光学テーブル252は、ビームエキスパンダ253、及び対物レンズ254を備えている。移動光学テーブル252に導かれたレーザー光234は、ビームエキスパンダ253により所望のビーム形状に整形された後、対物レンズ254を介して、ロール原盤231上のレジスト層へ照射される。ロール原盤231は、スピンドルモータ255に接続されたターンテーブル256の上に載置されている。そして、ロール原盤231を回転させると共に、レーザー光234をロール原盤231の高さ方向に移動させながら、ロール原盤231の周側面に形成されたレジスト層へレーザー光234を間欠的に照射することにより、レジスト層の露光工程が行われる。形成された潜像は、円周方向に長軸を有する略楕円形になる。レーザー光234の移動は、移動光学テーブル252の矢印R方向への移動によって行われる。
露光装置は、上述した複数の凸部又は凹部の2次元パターンに対応する潜像をレジスト層に形成するための制御機構257を備えている。制御機構257は、フォーマッタ249とドライバ250とを備える。フォーマッタ249は、極性反転部を備え、この極性反転部が、レジスト層に対するレーザー光234の照射タイミングを制御する。ドライバ250は、極性反転部の出力を受けて、音響光学素子247を制御する。
このロール原盤露光装置では、2次元パターンが空間的にリンクするように1トラック毎に極性反転フォーマッタ信号と回転コントローラを同期させて信号を発生し、音響光学素子247により強度変調している。角速度一定(CAV)で適切な回転数と適切な変調周波数と適切な送りピッチでパターニングすることにより、六方格子パターンなどの2次元パターンを記録することができる。
〔レジスト成膜工程〕
まず、図5Aの断面図に示すように、円柱状又は円筒状のロール原盤231を準備する。このロール原盤231は、例えば、ガラス原盤である。次に、図5Bの断面図に示すように、ロール原盤231の表面にレジスト層(例えば、フォトレジスト)233を形成する。レジスト層233の材料としては、例えば、有機系レジスト、無機系レジストなどが挙げられる。前記有機系レジストとしては、例えば、ノボラック系レジスト、化学増幅型レジストなどが挙げられる。前記無機系レジストとしては、例えば、金属化合物などが挙げられる。
〔露光工程〕
次に、図5Cの断面図に示すように、ロール原盤231の表面に形成されたレジスト層233に、レーザー光(露光ビーム)234を照射する。具体的には、図4に示したロール原盤露光装置のターンテーブル256上にロール原盤231を載置し、ロール原盤231を回転させると共に、レーザー光(露光ビーム)234をレジスト層233に照射する。このとき、レーザー光234をロール原盤231の高さ方向(円柱状又は円筒状のロール原盤231の中心軸に平行な方向)に移動させながら、レーザー光234を間欠的に照射することで、レジスト層233を全面にわたって露光する。これにより、レーザー光234の軌跡に応じた潜像235が、レジスト層233の全面にわたって形成される。
潜像235は、例えば、ロール原盤表面において複数列のトラックTをなすように配置されると共に、所定の単位格子Ucの規則的な周期パターンで形成される。潜像235は、例えば、円形状又は楕円形状である。潜像235が楕円形状を有する場合には、その楕円形状は、トラックTの延在方向に長軸方向を有することが好ましい。
〔現像工程〕
次に、例えば、ロール原盤231を回転させながら、レジスト層233上に現像液を滴下して、レジスト層233を現像処理する。これにより、図5Dの断面図に示すように、レジスト層233に複数の開口部が形成される。レジスト層233をポジ型のレジストにより形成した場合には、レーザー光234で露光した露光部は、非露光部と比較して現像液に対する溶解速度が増すので、図5Dの断面図に示すように、潜像(露光部)235に応じたパターンがレジスト層233に形成される。開口部のパターンは、例えば、所定の単位格子Ucの規則的な周期パターンである。
〔エッチング工程〕
次に、ロール原盤231の上に形成されたレジスト層233のパターン(レジストパターン)をマスクとして、ロール原盤231の表面をエッチング処理する。これにより、図5Eの断面図に示すように、錐体形状を有する構造体(凹部)232を得ることができる。錐体形状は、例えば、トラックTの延在方向に長軸方向をもつ楕円錐形状又は楕円錐台形状であることが好ましい。前記エッチングとしては、例えば、ドライエッチング、ウエットエッチングを用いることができる。このとき、エッチング処理とアッシング処理とを交互に行うことにより、例えば、錐体状の構造体232のパターンを形成することができる。以上により、目的とするロール原盤231が得られる。
〔転写処理〕
図6Aの断面図に示すような未硬化樹脂層236が形成された樹脂製基材211を用意する。
次に、図6Bの断面図に示すように、ロール原盤231と、樹脂製基材211上に形成された未硬化樹脂層236とを密着させ、未硬化樹脂層236に活性エネルギー線237を照射し未硬化樹脂層236を硬化させて微細な凸部及び凹部のいずれかを転写し、微細な凸部及び凹部のいずれか212aが形成された親水性樹脂層212を得る。
最後に、ロール原盤231から、得られた親水性樹脂層212を剥離して、親水性積層体を得る(図6C)。
なお、樹脂製基材211が紫外線などの活性エネルギー線を透過しない材料で構成されている場合には、活性エネルギー線を透過可能な材料(例えば、石英)でロール原盤231を構成し、ロール原盤231の内部から未硬化樹脂層236に対して活性エネルギー線を照射するようにしてもよい。なお、転写原盤は上述のロール原盤231に限定されるものではなく、平板状の原盤を用いるようにしてもよい。ただし、量産性向上の観点からすると、転写原盤として上述のロール原盤231を用いることが好ましい。
[第2の実施形態]
第2の実施形態は、レーザーを転写原盤の表面に照射して前記転写原盤をレーザー加工することにより微細な凸部及び凹部のいずれかを形成した転写原盤を用いて行う前記親水性樹脂層形成工程の一例である。
まず、転写原盤及びその製造方法について説明する。
〔転写原盤の構成〕
図7Aは、板状の原盤の構成の一例を示す平面図である。図7Bは、図7Aに示したa−a線に沿った断面図である。図7Cは、図7Bの一部を拡大して表す断面図である。板状の原盤331は、上述した構成を有する親水性積層体を作製するための原盤、より具体的には、前記親水性樹脂層の表面に複数の凸部又は凹部を成形するための原盤である。板状の原盤331は、例えば、微細な凹凸構造が設けられた表面を有し、その表面が親水性樹脂層の表面に複数の凸部又は凹部を成形するための成形面とされる。この成形面には、例えば、複数の構造体332が設けられている。図7Cに示す構造体332は、成形面に対して凹状を有している。板状の原盤331の材料としては、例えば、金属材料を用いることができる。前記金属材料としては、例えば、Ni、NiP、Cr、Cu、Al、Fe、及びその合金を用いることができる。前記合金としては、ステンレス鋼(SUS)が好ましい。前記ステンレス鋼(SUS)としては、例えば、SUS304、SUS420J2などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
板状の原盤331の成形面に設けられた複数の構造体332と、前記親水性樹脂層の表面に設けられた複数の凸部又は凹部とは、反転した凹凸関係にある。即ち、板状の原盤331の構造体332の配列、大きさ、形状、配置ピッチ、及び高さ又は深さなどは、前記親水性樹脂層の凸部又は凹部と同様である。
〔レーザー加工装置の構成〕
図8は、板状の原盤を作製するためのレーザー加工装置の構成の一例を示す概略図である。レーザー本体340は、例えば、サイバーレーザー株式会社製のIFRIT(商品名)である。レーザー加工に用いるレーザーの波長は、例えば、800nmである。ただし、レーザー加工に用いるレーザーの波長は、400nmや266nmなどでもかまわない。繰り返し周波数は、加工時間と、形成される凹部又は凸部の狭ピッチ化とを考慮すると、大きいほうが好ましく、1,000Hz以上であることが好ましい。レーザーのパルス幅は短い方が好ましく、200フェムト秒(10−15秒)〜1ピコ秒(10−12秒)程度であることが好ましい。
レーザー本体340は、垂直方向に直線偏光したレーザー光を射出するようになっている。そのため、本装置では、波長板341(例えば、λ/2波長板)を用いて、偏光方向を回転などさせることで、所望の方向の直線偏光又は円偏光を得るようにしている。また、本装置では、四角形の開口を有するアパーチャー342を用いて、レーザー光の一部を取り出すようにしている。これは、レーザー光の強度分布がガウス分布となっているので、その中央付近のみを用いることで、面内強度分布の均一なレーザー光を得るようにしている。また、本装置では、直交させた2枚のシリンドリカルレンズ343を用いて、レーザー光を絞ることにより、所望のビームサイズになるようにしている。板状の原盤331を加工する際には、リニアステージ344を等速で移動させる。
板状の原盤331へ照射されるレーザーのビームスポットは、四角形形状であることが好ましい。ビームスポットの整形は、例えば、アパーチャー、シリンドリカルレンズなどによって行うことができる。また、ビームスポットの強度分布は、なるべく均一であることが好ましい。これは、型に形成する凹凸の深さなどの面内分布をなるべく均一化することが好ましいためである。一般的には、ビームスポットのサイズは、加工を行いたい面積よりも小さいため、ビームを走査することで加工を行いたい面積全てに凸凹形状を付与する必要がある。
前記親水性樹脂層の表面の形成に用いられる原盤(型)は、例えば、SUS、NiP、Cu、Al、Fe等の金属などの基板に、パルス幅が1ピコ秒(10−12秒)以下の超短パルスレーザー、いわゆるフェムト秒レーザーを用いてパターンを描画することにより形成される。また、レーザー光の偏光は、直線偏光であっても円偏光であっても楕円偏光であってもよい。このとき、レーザー波長、繰り返し周波数、パルス幅、ビームスポット形状、偏光、サンプルへ照射するレーザー強度、レーザーの走査速度などを適宜設定することにより、所望の凹凸を有するパターンを形成することができる。
所望の形状を得るために変化させることが可能なパラメーターには以下のようなものが挙げられる。フルエンスは、パルス1つあたりのエネルギー密度(J/cm)であり、以下の式で求められるものである。
F=P/(fREPT×S)
S=Lx×Ly
F:フルエンス
P:レーザーのパワー
fREPT:レーザーの繰り返し周波数
S:レーザーの照射位置での面積
Lx×Ly:ビームサイズ
なお、パルス数Nは、1箇所に照射されたパルスの数であり、以下の式で求められるものである。
N=fREPT×Ly/v
Ly:レーザーの走査方向のビームサイズ
v:レーザーの走査速度
また、所望の形状を得るために板状の原盤331の材質を変化させてもいい。板状の原盤331の材質によってレーザー加工される形状は変化する。SUS、NiP、Cu、Al、Fe等の金属などを用いるほかに、原盤表面に、例えば、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)などの半導体材料を被覆してもよい。前記原盤表面に前記半導体材料を被覆する方法としては、例えば、プラズマCVD、スパッタリングなどが挙げられる。被覆する前記半導体材料としては、DLCのほかにも、例えば、フッ素(F)を混入したDLC、窒化チタン、窒化クロムなどを使用できる。被覆して得られる被膜の平均厚みは、例えば、1μm程度とすればよい。
〔レーザー加工工程〕
まず、図9Aに示すように、板状の原盤331を準備する。この板状の原盤331の被加工面である表面331Aは、例えば、鏡面状態となっている。なお、この表面331Aは、鏡面状態となっていなくてもよく、例えば、表面331Aに、転写用のパターンよりも細かな凹凸が形成されていてもよいし、転写用のパターンと同等か、それよりも粗い凹凸が形成されていてもよい。
次に、図8に示したレーザー加工装置を用いて、以下のようにして板状の原盤331の表面331Aをレーザー加工する。まず、板状の原盤331の表面331Aに対して、パルス幅が1ピコ秒(10−12秒)以下の超短パルスレーザー、いわゆるフェムト秒レーザーを用いてパターンを描画する。例えば、図9Bに示したように、板状の原盤331の表面331Aに対して、フェムト秒レーザー光Lfを照射すると共に、その照射スポットを表面331Aに対してスキャンさせる。
このとき、レーザー波長、繰り返し周波数、パルス幅、ビームスポット形状、偏光、表面331Aへ照射するレーザーの強度、レーザーの走査速度等が適宜設定されることにより、図9Cに示すように、所望の形状を有する複数の構造体332が形成される。
〔転写処理〕
図10Aの断面図に示すような未硬化樹脂層333が形成された樹脂製基材311を用意する。
次に、図10Bの断面図に示すように、板状の原盤331と、樹脂製基材311上に形成された未硬化樹脂層333とを密着させ、未硬化樹脂層333に活性エネルギー線334を照射し未硬化樹脂層333を硬化させて板状の原盤331の微細な凸部及び凹部のいずれかを転写し、微細な凸部及び凹部のいずれかが形成された親水性樹脂層312を得る。
最後に、板状の原盤331から、得られた親水性樹脂層312を剥離して、親水性積層体を得る(図10C)。
なお、樹脂製基材311が紫外線などの活性エネルギー線を透過しない材料で構成されている場合には、活性エネルギー線を透過可能な材料(例えば、石英)で板状の原盤331を構成し、板状の原盤331の裏面(成形面とは反対側の面)から未硬化樹脂層333に対して活性エネルギー線を照射するようにしてもよい。
<保持>
<<水膜>>
前記ゴーグルは、前記レンズと、前記親水性積層体との間に水膜を有することが好ましい。前記親水性積層体は、前記水膜によって前記レンズの内側面に保持されていることが好ましい。
前記水膜であれば、簡単に、前記親水性積層体を、前記レンズの内側面に保持させることができる。
前記水膜の平均厚みとしては、前記レンズが、前記親水性積層体を保持できれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
−物理的保持−
前記ゴーグルにおいて、前記親水性積層体は、前記水膜に加え、更に物理的に前記レンズの内側面に保持されていることが、前記親水性積層体の保持をより強固にできる点で、好ましい。
物理的な保持の方法としては、例えば、前記レンズの内側側面の一部に、切り込み溝を設け、前記切り込み溝に前記親水性積層体の端部を差し込む方法などが挙げられる。また、他の物理的な保持の方法としては、例えば、前記レンズの内側外周に沿ってゴム製のリングを設け、前記リングと、前記レンズの外周とで、前記親水性積層体を挟む方法などが挙げられる。
<<粘着層>>
前記ゴーグルは、前記レンズと、前記親水性積層体との間に粘着層を有することが好ましい。そして、前記親水性積層体は、前記粘着層によって前記レンズの内側面に保持されていることが好ましい。
前記粘着層は、例えば、粘着剤を用いて形成される。前記粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、ホットメルト接着剤などが挙げられる。
前記水膜と、前記粘着剤とでは、透明性の点から、前記水膜が好ましい。
<<射出成形>>
前記ゴーグルは、前記親水性積層体の前記樹脂製基材側に、前記レンズを作製するための成形材料を射出成形する工程を用いて製造されることが好ましい。そうすることにより、前記水膜、前記粘着層等を要さずに、前記レンズに前記親水性積層体を保持できる。
前記成形材料としては、例えば、プラスチックなどが挙げられる。前記プラスチックとしては、前記レンズの説明において例示したプラスチックなどが挙げられる。
前記射出成形する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、所定の金型に密着させた前記親水性積層体の樹脂製基材側に、溶融した前記成形材料を流し込む方法などが挙げられる。
ここで、成形装置を用いて、前記親水性積層体が前記レンズに保持された、親水性積層体付レンズを作製する方法の一例を説明する。
前記親水性積層体付レンズの作製は、インモールド成形装置、インサート成形装置、オーバーレイ成形装置を用いて行うことが好ましい。
以下に説明する方法は、インモールド成形装置を用いた方法である。
まず、親水性積層体500を加熱する。加熱は赤外線加熱が好ましい。
続いて、図11Aに示すように、加熱した親水性積層体500を、第1金型501と第2金型502との間の所定の位置に配置する。このとき、親水性積層体500の樹脂製基材が第1金型501を向き、親水性樹脂層が第2金型502を向くように配置する。図11Aにおいて、第1金型501は、固定型であり、第2金型502は、可動型である。
第1金型501と第2金型502との間に親水性積層体500を配置した後、第1金型501と第2金型502とを型締めする。続いて、第2金型502のキャビティ面に開口されている吸引穴504で親水性積層体500を吸引して、第2金型502のキャビティ面に親水性積層体500を装着する。そうすることにより、キャビティ面が親水性積層体500で賦形される。また、このとき、図示されていないフィルム押さえ機構で親水性積層体500の外周を固定し位置決めしてもよい。その後、親水性積層体500の不要な部位をトリミングする(図11B)。
なお、第2金型502が吸引穴504を有さず、第1金型501に圧空孔(図示せず)を有する場合には、第1金型501の圧空孔から親水性積層体500に圧空を送ることにより、第2金型502のキャビティ面に親水性積層体500を装着する。
続いて、親水性積層体500の樹脂製基材に向けて、第1金型501のゲート505から溶融した成形材料506を射出し、第1金型501と第2金型502を型締めして形成したキャビティ内に注入する(図11C)。これにより、溶融した成形材料506がキャビティ内に充填される(図11D)。更に、溶融した成形材料506の充填完了後、溶融した成形材料506を所定の温度まで冷却して固化する。
その後、第2金型502を動かして、第1金型501と第2金型502とを型開きする(図11E)。そうすることにより、成形材料506の表面に親水性積層体500が形成され、かつ所望の形状にインモールド成形された親水性積層体付レンズ507が得られる。
最後に、第1金型501から突き出しピン508を押し出して、得られた親水性積層体付レンズ507を取り出す。
前記オーバーレイ成形装置を用いる場合の方法は、下記の通りである。これは、親水性積層体を成形材料の表面に直接加飾する工程であり、その一例としては、TOM(Three dimension Overlay Method)工法が挙げられる。前記TOM工法を用いた親水性積層体付レンズの作製方法の一例を下記に説明する。
まず、固定枠に固定された親水性積層体によって分断された装置内の両空間について、真空ポンプ等で空気を吸引し、前記両空間内を真空引きする。
この時、片側の空間に事前に射出成型した成形材料を設置しておく。同時に、親水性積層体が軟化する所定の温度になるまで赤外線ヒーターで加熱する。親水性積層体が加熱され軟化したタイミングで、装置内空間の成形材料がない側に大気を送り込むことにより真空雰囲気下で、成形材料の立体形状に、親水性積層体をしっかりと密着させる。必要に応じ、さらに大気を送り込んだ側からの圧空押付けを併用してもよい。親水性積層体が成形体に密着した後、得られた成形品(親水性積層体付レンズの作製)を固定枠から外す。真空成形は、通常80℃〜200℃、好ましくは110℃〜160℃程度で行われる。
オーバーレイ成形の際には、前記親水性積層体と前記成形材料とを接着するために、前記親水性積層体の親水性面とは反対側の面に粘着層を設けてもよい。前記粘着層としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アクリル系粘着剤、ホットメルト接着剤などが挙げられる。前記粘着層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記樹脂製基材上に前記親水性樹脂層を形成後に、前記樹脂製基材の前記親水性樹脂層側とは逆側に、粘着層用塗工液を塗工して、前記粘着層を形成する方法などが挙げられる。また、剥離シート上に粘着層用塗工液を塗工して前記粘着層を形成した後に、前記樹脂製基材と前記剥離シート上の前記粘着層とをラミネートして、前記樹脂製基材上に前記粘着層を積層してもよい。
<その他の部材>
前記ゴーグルにおける前記その他の部材としては、例えば、前記レンズを支持するレンズフレーム、前記ゴーグルを顔に装着するための装着ベルトなどが挙げられる。
前記ゴーグルは、水泳用ゴーグル、ダイビング用ゴーグル、水中作業用ゴーグル、遊泳用ゴーグルなどの水中ゴーグルのほか、塗装作業、サンディング作業、溶接作業などの際に作業者の顔面に密着するように着用し、作業者の目を保護する産業用ゴーグルとしても使用できる。
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
<凸部の平均距離、凹部の平均距離、凸部の平均高さ、凹部の平均深さ、及び平均表面積率>
以下の実施例において、凸部の平均距離、凹部の平均距離、凸部の平均高さ、凹部の平均深さ、及び平均表面積率は、以下のようにして求めた。
まず、凸部又は凹部を有する親水性樹脂層の表面を原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)により観察し、AFMの断面プロファイルから凸部又は凹部のピッチ、及び凸部の高さ又は凹部の深さを求めた。これを前記親水性樹脂層の表面から無作為に選び出された10箇所において繰り返し行い、ピッチP1、P2、・・・、P10と、高さ又は深さH1、H2、・・・、H10とを求めた。
ここで、前記凸部のピッチは、前記凸部の頂点間の距離である。前記凹部のピッチは、前記凹部の最深部間の距離である。前記凸部の高さは、前記凸部間の谷部の最低点を基準とした前記凸部の高さである。前記凹部の深さは、前記凹部間の山部の最高点を基準とした前記凹部の深さである。
次に、これらのピッチP1、P2、・・・、P10、及び高さ又は深さH1、H2、・・・、H10をそれぞれ単純に平均(算術平均)して、凸部又は凹部の平均距離(Pm)、及び凸部の平均高さ又は凹部の平均深さ(Hm)を求めた。
凸部又は凹部を有する親水性樹脂層の表面から無作為に選び出された10箇所において繰り返しAFM像を得、表面積S1、S2、・・・、S10を求めた。次に、これらの表面積S1、S2、・・・、S10と、それぞれの観察領域の面積との比(表面積/面積)SR1、SR2、・・・、SR10を単純に平均(算術平均)して、親水性樹脂層の表面の平均表面積率SRmを求めた。
<最大高低差>
親水性樹脂層の表面の最大高低差は、以下の方法で求めた。
親水性樹脂層の表面の3μm×3μmの範囲を、原子間力顕微鏡(AFM)で観察した。そして、前記AFMに付属するソフトを用いて、最大高低差を求めた。
<純水接触角>
純水接触角は、PCA−1(協和界面化学株式会社製)を用い、下記条件で滑落法によって測定した。
・蒸留水をプラスチックシリンジに入れて、その先端にステンレス製の針を取り付けて評価面に滴下した。
・水の滴下量:2μL
・測定温度:25℃
・測定:滴下後5秒間経過時
<マルテンス硬度>
親水性樹脂層のマルテンス硬度は、PICODENTOR HM500(商品名;フィッシャー・インストルメンツ社製)を用いて測定した。荷重1mN/20sとし、針としてダイアモンド錐体を用い、面角136°で測定した。
<鉛筆硬度>
親水性樹脂層の鉛筆硬度は、JIS K 5600−5−4に従って測定した。
<伸び率>
伸び率は、以下の方法により求めた。
得られた親水性積層体を、長さ10.5cm×幅2.5cmの短冊状にして測定試料とした。得られた測定試料の引張り伸び率を引張り試験機(オートグラフAG−5kNXplus、株式会社島津製作所製)で測定(測定条件:引張り速度=100mm/min;チャック間距離=8cm;測定温度=190℃)した。
<全光線透過率>
親水性積層体の全光線透過率は、JIS K 7361に従って、HM−150(商品名;株式会社村上色彩技術研究所製)を用いて評価した。
<ヘイズ>
親水性積層体のヘイズは、JIS K 7136に従って、HM−150(商品名;株式会社村上色彩技術研究所製)を用いて評価した。
<密着性>
親水性樹脂層の密着性は、JIS K 5400に従い、碁盤目(1mm間隔×100マス)セロハンテープ(ニチバン株式会社製、CT24)剥離試験により評価した。
<加熱収縮率差>
親水性積層体の加熱収縮率差は、以下の方法により求めた。
まず、100mm×100mmサイズの四角の試験片を切り出した。このとき、該試験片の縦方向及び横方向がそれぞれ、樹脂製基材の長手方向及び幅方向と一致するように切り出した。次いで、これをオーブンで190℃×30分間加熱した。オーブンから取り出して室温まで自然冷却した後、縦方向と横方向の長さをそれぞれ定規で測定した。両方向について加熱前の長さ(=100mm)からの変化率をそれぞれ算出し、その差の絶対値を求めた。これをN=10個の試験片で求め、それらの平均値を親水性積層体の加熱収縮率差とした。
(実施例1)
<微細な凸部及び凹部のいずれかを有する転写原盤(ガラスロール原盤)の作製>
まず、外径126mmのガラスロール原盤を準備し、このガラスロール原盤の表面に以下のようにしてレジスト層を形成した。即ち、シンナーでフォトレジストを質量比で1/10に希釈し、この希釈レジストをディッピング法によりガラスロール原盤の円柱面上に平均厚み70nm程度に塗布することにより、レジスト層を形成した。次に、ガラスロール原盤を、図4に示したロール原盤露光装置に搬送し、レジスト層を露光することにより、1つの螺旋状に連なると共に、隣接する3列のトラック間において六方格子パターンをなす潜像がレジスト層にパターニングされた。具体的には、六方格子状の露光パターンが形成されるべき領域に対して、0.50mW/mのレーザー光を照射し六方格子状の露光パターンを形成した。
次に、ガラスロール原盤上のレジスト層に現像処理を施して、露光した部分のレジスト層を溶解させて現像を行った。具体的には、図示しない現像機のターンテーブル上に未現像のガラスロール原盤を載置し、ターンテーブルごと回転させつつガラスロール原盤の表面に現像液を滴下してその表面のレジスト層を現像した。これにより、レジスト層が六方格子パターンに開口しているレジストガラス原盤が得られた。
次に、ロールエッチング装置を用い、CHFガス雰囲気中でのプラズマエッチングを行った。これにより、ガラスロール原盤の表面において、レジスト層から露出している六方格子パターンの部分のみエッチングが進行し、その他の領域はレジスト層がマスクとなりエッチングはされず、楕円錐形状の凹部がガラスロール原盤に形成された。この際、エッチング量(深さ)は、エッチング時間によって調整した。最後に、Oアッシングにより完全にレジスト層を除去することにより、凹形状の六方格子パターンを有するガラスロール原盤を得た。
<親水性積層体の作製>
次に、上述のようにして得られたロール原盤を用いて、UVインプリントにより親水性積層体を作製した。具体的には、以下のようにして行った。
樹脂製基材として、三菱ガス化学株式会社製のDF02U(PMMA/PC積層)(平均厚み125μm)を用いた。
前記樹脂製基材のPMMA表面に、下記組成のアンカー層用紫外線硬化性樹脂組成物を乾燥、硬化後の平均厚みが0.7μmになるように塗布した。
−アンカー層用紫外線硬化性樹脂組成物−
・8BR−500 45質量部
(ウレタンアクリレートポリマー、大成ファインケミカル株式会社製)
・UV−7550(ウレタンアクリレート、日本合成工業株式会社製) 15質量部
・酢酸ブチル 38.8質量部
・イルガキュア184(BASF社製) 0.6質量部
・イルガキュア907(BASF社製) 0.6質量部
・KP323(信越化学工業株式会社製) 0.003質量部
乾燥後、未硬化のアンカー層に、水銀ランプを用いて、照射量500mJ/cmで紫外線を照射して、紫外線硬化したアンカー層付樹脂製基材を得た。
下記組成の親水性樹脂層用紫外線硬化性樹脂組成物を、得られる親水性樹脂層の平均厚みが2.0μmとなるように、アンカー層付樹脂製基材のアンカー層上に塗布した。親水性樹脂層用紫外線硬化性樹脂組成物が塗布されたアンカー層付樹脂製基材と、上述のようにして得られたロール原盤とを密着させ、メタルハライドランプを用いて、樹脂製基材側から照射量1,500mJ/cmで紫外線を照射して、親水性樹脂層を硬化させた。その後、親水性樹脂層と、ロール原盤とを剥離した。
−親水性樹脂層用紫外線硬化性樹脂組成物−
・A−600 43質量部
(ポリエチレングリコールジアクリレート、新中村化学工業株式会社製)
・M−215(イソシアヌル酸ジアクリレート、東亞合成株式会社製) 43質量部
・ライトエステルTHF(1000) 10質量部
(THF変性メタクリレート、共栄社化学株式会社製)
・Lucirin TPO(BASF製) 4質量部
得られた親水性積層体について、上述の方法により、凸部の平均距離(又は凹部の平均距離)(Pm)、凸部の平均高さ(又は凹部の平均深さ)(Hm)、平均表面積率(SRm)、最大高低差(PV)、純水接触角、マルテンス硬度、鉛筆硬度、伸び率、全光線透過率、ヘイズ、密着性、及び加熱収縮率差を測定した。結果を表2−1及び表2−2に示した。
<ゴーグルの作製>
市販の競泳用ゴーグルのレンズの内側面に水滴を付着させた。続いて、水滴が付着した前記レンズの内側面に、得られた親水性積層体の樹脂製基材を接触させ、前記親水性積層体を前記レンズに一様に押さえつけた。そうすることにより、前記親水性積層体と、前記レンズとの間に水膜ができ、前記親水性積層体が、前記レンズに保持された。
以上により、実施例1のゴーグルを得た。
<<評価>>
<40℃水蒸気試験>
40℃の水蒸気を親水性樹脂層の表面に3分間当てた。その後、親水性樹脂層の表面の状態を目視により観察した。結果を表3に示した。
<水膜の形成>
前記40℃水蒸気試験後の親水性樹脂層の表面の水滴を指で押し広げ、水滴が水膜になるかどうかを確認した。結果を表3に示した。
<水膜の保持性>
水膜を形成した後、40℃の水蒸気を1時間当て続け、水膜が維持されているかどうかを目視により確認した。結果を表3に示した。
(実施例2)
<微細な凸部及び凹部のいずれかを有する転写原盤(板状の原盤)の作製>
レーザー加工装置として、図8に示した装置を用いた。レーザー本体340としては、サイバーレーザー株式会社製のIFRIT(商品名)を用いた。レーザー波長は800nm、繰り返し周波数は1,000Hz、パルス幅は220fsとした。
まず、板状の基材(SUS)の表面にDLC(ダイヤモンドライクカーボン)をスパッタリング法により被覆することにより、原盤を作製した。次に、この原盤のDLC膜の表面に対して、前記レーザー加工装置を用いて微細な凹部を形成した。この際、表1に示すレーザー加工条件にてレーザー加工を行った。以上により、形状転写用の板状の原盤を得た。なお、原盤のサイズは、2cm×2cmの矩形状とした。
<親水性積層体の作製>
次に、上述のようにして得られた板状の原盤を用いて、UVインプリントにより親水性積層体を作製した。具体的には、以下のようにして行った。
実施例1の親水性積層体の作製において、ロール原盤を、上述のようにして得られた板状の原盤に代えた以外は、実施例1と同様にして、親水性積層体を作製した。
作製した親水性積層体について、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2−1及び表2−2に示した。
<ゴーグルの作製>
実施例1のゴーグルの作製において、親水性積層体を、上記で作製した親水性積層体に代えた以外は、実施例1と同様にして、ゴーグルを作製した。
作製したゴーグルについて、実施例1と同様の評価を行った。結果を表3に示した。
(比較例1)
得られる親水性樹脂層の表面のPm、Hm、SRm、及びPVが、表2−1に記載のPm、Hm、SRm、及びPVになるように、転写原盤の表面形状を調整した。具体的には、ピッチを露光パターンで制御し、深さをエッチング条件で調整した。
更に、得られる親水性積層体において、純水接触角、マルテンス硬度、鉛筆硬度、伸び率、全光線透過率、ヘイズ、及び加熱収縮率差が、表2−1及び表2−2に記載の純水接触角、マルテンス硬度、鉛筆硬度、伸び率、全光線透過率、ヘイズ、及び加熱収縮率差になるように、親水性樹脂層用紫外線硬化性樹脂組成物の組成を変更した。
上記の変更以外は、実施例1と同様にして、親水性積層体を作製した。得られた親水性積層体における純水接触角、マルテンス硬度、鉛筆硬度、伸び率、全光線透過率、ヘイズ、密着性、及び加熱収縮率差を、表2−1及び表2−2に示した。
<ゴーグルの作製>
実施例1のゴーグルの作製において、親水性積層体を、上記で作製した親水性積層体に代えた以外は、実施例1と同様にして、ゴーグルを作製した。
作製したゴーグルについて、実施例1と同様の評価を行った。結果を、表3に示した。
(比較例2)
得られる親水性樹脂層の表面のPm、Hm、SRm、及びPVが、表2−1に記載のPm、Hm、SRm、及びPVになるように、転写原盤の表面形状を調整した。具体的には、ピッチを露光パターンで制御し、深さをエッチング条件で調整した。
更に、得られる親水性積層体において、純水接触角、マルテンス硬度、鉛筆硬度、伸び率、全光線透過率、ヘイズ、及び加熱収縮率差が、表2−1及び表2−2に記載の純水接触角、マルテンス硬度、鉛筆硬度、伸び率、全光線透過率、ヘイズ、及び加熱収縮率差になるように、親水性樹脂層用紫外線硬化性樹脂組成物の組成を変更した。
上記の変更以外は、実施例1と同様にして、親水性積層体を作製した。得られた親水性積層体における純水接触角、マルテンス硬度、鉛筆硬度、伸び率、全光線透過率、ヘイズ、密着性、及び加熱収縮率差を、表2−1及び表2−2に示した。
<ゴーグルの作製>
実施例1のゴーグルの作製において、親水性積層体を、上記で作製した親水性積層体に代えた以外は、実施例1と同様にして、ゴーグルを作製した。
作製したゴーグルについて、実施例1と同様の評価を行った。結果を、表3に示した。
実施例1及び2のゴーグルは、親水性樹脂層の表面の純水接触角が15°以下であり、かつ親水性樹脂層の表面の最大高低差が350nm以下であることから、親水性樹脂層の表面には、水膜が形成でき、それは、長時間維持していた。
一方、親水性樹脂層の表面の最大高低差は、350nm以下であるものの、親水性樹脂層の表面の純水接触角が15°を超える比較例1のゴーグルでは、親水性樹脂層の表面に水膜が形成されなかった。
また、親水性樹脂層の表面の純水接触角が15°以下であるものの、親水性樹脂層の表面の最大高低差が350nmを超える比較例2のゴーグルも、親水性樹脂層の表面に水膜が形成されなかった。
本発明のゴーグルは、防曇性が長時間に渡って維持できることから、水泳用ゴーグル、ダイビング用ゴーグル、水中作業用ゴーグル、遊泳用ゴーグル等の水中ゴーグルなどに好適に用いることができる。
211 樹脂性基材
212 親水性樹脂層
231 ロール原盤
232 構造体
236 未硬化樹脂層
237 活性エネルギー線
311 樹脂製基材
312 親水性樹脂層
331 板状の原盤
332 構造体
333 未硬化樹脂層
334 活性エネルギー線

Claims (8)

  1. レンズと、前記レンズの内側面に保持された親水性積層体とを有するゴーグルであって、
    前記親水性積層体が、樹脂製基材と、前記樹脂製基材上に親水性樹脂層とを、前記レンズ側からこの順で有し、
    前記親水性樹脂層が、表面に微細な凸部及び凹部のいずれかを有し、
    前記親水性樹脂層の表面の純水接触角が、15°以下であり、
    前記親水性樹脂層の表面の最大高低差が、350nm以下である、
    ことを特徴とするゴーグル。
  2. 前記レンズと、前記親水性積層体との間に水膜を有し、
    前記親水性積層体が、前記水膜によって前記レンズの内側面に保持されている請求項1に記載のゴーグル。
  3. 前記親水性積層体が、前記水膜に加え、更に物理的に前記レンズの内側面に保持されている請求項2に記載のゴーグル。
  4. 前記親水性積層体が、前記樹脂製基材の前記レンズ側上に、表面に微細な凸部及び凹部のいずれかを有する第2の親水性樹脂層を有する請求項1から3のいずれかに記載のゴーグル。
  5. 前記第2の親水性樹脂層の表面の純水接触角が、15°以下であり、
    前記第2の親水性樹脂層の表面の最大高低差が、350nm以下である、
    請求項4に記載のゴーグル。
  6. 前記レンズと、前記親水性積層体との間に粘着層を有し、
    前記親水性積層体が、前記粘着層によって前記レンズの内側面に保持されている請求項1に記載のゴーグル。
  7. 前記親水性樹脂層の表面の平均表面積率が、1.40以上である請求項1から6のいずれかに記載のゴーグル。
  8. 請求項1に記載のゴーグルを製造するゴーグルの製造方法であって、
    前記親水性積層体の前記樹脂製基材側に、前記レンズを作製するための成形材料を射出成形する工程を含むことを特徴とするゴーグルの製造方法。
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