以下、図1等を参照しつつ、本発明に係る導光装置及び導光装置を含む虚像表示装置の一実施形態について詳細に説明する。
図1に示すように、本実施形態の導光装置を含む虚像表示装置100は、眼鏡のような外観を有するヘッドマウントディスプレイであり、この虚像表示装置100を装着した観察者又は使用者に対して虚像による画像光(映像光)を視認させることができるとともに、観察者に外界像をシースルーで視認又は観察させることができる。また、図2(A)及び2(B)に示すように、虚像表示装置100は、遮光性又は吸光性を有する樹脂材料等で形成される可撓性部材であるシェード90の取り付けを可能としている。すなわち、虚像表示装置100は、シェード90を着脱可能とすることで、シースルーに関して、外界側の視界を調整できる。なお、虚像表示装置100については、シェード90を取り外した状態のものであっても、単に虚像表示装置100と呼ぶものとするが、シェード90の有無を問題とするような場合には、シェード90のない虚像表示装置100を、虚像表示装置100の本体部分と呼ぶものとする。
図1に戻って、虚像表示装置100は、観察者の視認方向の1つである眼前を透視可能に覆う第1及び第2光学部材101a,101bと、両光学部材101a,101bを支持する枠部102と、枠部102の左右両端から後方のつる部分(テンプル)104にかけての部分に付加された第1及び第2像形成本体部105a,105bとを備える。ここで、図面上で左側の第1光学部材101aと第1像形成本体部105aとを組み合わせた第1表示装置100Aは、右眼用の虚像を形成する部分であり、単独でも虚像表示装置として機能する。なお、虚像表示装置100は、撮像動作可能な小型のカメラCAを側方部分に有し、さらに、カメラCAが動作中であることを示すための表示ランプLMをカメラCAの近くに有している。また、図面上で右側の第2光学部材101bと第2像形成本体部105bとを組み合わせた第2表示装置100Bは、左眼用の虚像を形成する部分であり、単独でも虚像表示装置として機能する。
図3は、虚像表示装置100の内部構造を示しており、図3を図1と比較することで、虚像表示装置100の外観と内部とが対比される。例えば、第1及び第2像形成本体部105a,105bは、鏡筒部39に収納される投射レンズ30や、映像表示素子(映像素子)82を含む画像表示装置80でそれぞれ構成される。
図1から図4までの各図に外観や内部を示すように、虚像表示装置100に設けた枠部102は、上端側に配置されるフレーム107と、フレーム107に沿ってその裏側に配置される樹脂部108とを備える。なお、虚像表示装置100は、下側に、枠状の部分のない構成となっている。枠部102を構成するフレーム107は、U字状に折れ曲がった細長い板状の部材であり、観察者にとっての眼の並びに対応する方向である左右の横方向に延びる正面部107aと、観察者にとっての前後に対応する方向である奥行き方向に延びる一対の側面部107b,107cとを備える。フレーム107、すなわち正面部107aと側面部107b,107cとは、アルミダイカストその他の各種金属材料で形成された金属製の一体部品である。樹脂部108は、フレーム107に沿ってフレーム107よりも内側すなわち観察者に近い側に配置され、フレーム107と嵌合することでこれと協働して例えば画像形成のための各種ケーブル等を収納可能にしている。フレーム107において、正面部107a及び樹脂部108の奥行き方向の幅は、第1及び第2光学部材101a,101bに対応する導光装置20の厚み又は幅と同程度となっている。フレーム107の左側方、具体的には正面部107aにおける向かって左端部から側面部107bにかけての部分には、第1光学部材101aと第1像形成本体部105aとがアライメントされ例えばネジ止めによって直接固定されることにより、支持されている。また、フレーム107の右側方、具体的には正面部107aにおける向かって右端部から側面部107cにかけての部分には、第2光学部材101bと第2像形成本体部105bとがアライメントされ例えばネジ止めにより直接固定されることによって、支持されている。なお、第1光学部材101aと第1像形成本体部105aとは、嵌合によって互いにアライメントされ、第2光学部材101bと第2像形成本体部105bとは、嵌合によって互いにアライメントされる。
枠部102を構成するフレーム107及び樹脂部108は、第1及び第2像形成本体部105a,105bを支持するだけでなく、これらを覆うカバー状の外装部材105dと協働して第1及び第2像形成本体部105a,105bの内部を保護する役割を有する。なお、フレーム107は、第1及び第2像形成本体部105a,105bに連結される第1及び第2光学部材101a,101b又は左右一対にして配置された導光装置20の根元側を除いた上側部分と離間するか又は緩く接している。このため、中央の導光装置20と、フレーム107を含む枠部102との間に熱膨張率の差があっても、枠部102内での導光装置20の膨張が許容され、導光装置20に歪み、変形、破損が生じることを防止できる。
枠部102に付随して、鼻受部40が設けられている。鼻受部40は、観察者の鼻に当接することによって枠部102を支持する役割を有する。つまり、枠部102は、鼻に支持される鼻受部40と耳に支持される一対のテンプル部104とによって、観察者の顔前に配置されることになる。鼻受部40は、枠部102を構成する一方のフレーム107の正面部107aにおいて、ねじ止めによって固定されている(詳しくは後述する。)。なお、以上のように図1を参照して示す外観は、一例であり、例えばねじ止めによって固定される機構等の光学的機構として直接関与しない箇所等については、適宜設計を変更することが可能である。
図3等に示すように、第1表示装置100Aは、投影用の光学系である投射透視装置70と、映像光を形成する画像表示装置80とを備えると見ることができる。投射透視装置70は、画像表示装置80によって形成された画像を虚像として観察者の眼に投射する役割を有する。投射透視装置70は、第1光学部材101a又は導光装置20と、結像用の投射レンズ30とを備える。第1光学部材101a又は導光装置20は、導光及び透視用の導光部材10と、透視用の光透過部材50とで構成されている。なお、第1像形成本体部105aは、画像表示装置80と投射レンズ30とで構成される。また、レンズ群で構成される投射レンズ30は、鏡筒部39によって収納されるとともに、鏡筒部39の端部39tにおいて、嵌合により導光装置20と精度よく位置決めされた状態で固定されている。
画像表示装置80は、透過型の空間光変調装置である映像表示素子(映像素子)82のほか、後に詳述するが、映像表示素子82へ照明光を射出するバックライトである照明装置(不図示)や、映像表示素子82等の動作を制御する駆動制御部(不図示)を有する。
導光装置20は、既述のように、導光及び透視用の導光部材10と、透視用の光透過部材50とで構成されている。導光部材10は、プリズム型の導光装置20の一部であり、一体の部材であるが、光射出側の第1導光部分11と光入射側の第2導光部分12とに分けて捉えることができる。光透過部材50は、導光部材10の透視機能を補助する部材(補助光学ブロック)であり、導光部材10と一体的に固定され1つの導光装置20となっている。上記のような構成を有する導光装置20のうち、光源側(根元側)に位置する先端部12jが鏡筒部39の端部39tに嵌合することで、投射レンズ30に精度よく位置決め固定されている。
なお、例えば図1や図3(B)或いは図4(A)〜4(C)等に示すように、導光装置20を構成する光学面のうち、表側(外側)の露出面である第1露出面20aや裏側(内側)の露出面である第2露出面20bは、外部にさらされ、かつ、シースルーの機能に影響する部分である。第1露出面20aは、導光部材10の光学面のうち第3面S13と、光透過部材50の光学面である第3透過面S53とで構成され、第2露出面20bは、導光部材10の光学面のうち第3面S11及び第4面S14と、光透過部材50の光学面のうち第1透過面S51とで構成されている。このうち、第1露出面20aが、シェード90によって覆われることで外界光の透過量が調整されることになる。
以下、図5や図6等を参照して、シェード90やシェード90を取り付ける取付部109の構造の詳細について説明する。図5(A)及び5(B)は、シェード90を示す斜視図である。また、図5(C)は、正面図であり、5(D)は、左側面図であり、5(E)は、右側面図であり、5(F)は、背面図である。図6は、シェード90を取り付けた状態の虚像表示装置100を、中央部分について切断した側断面図である。図示のように、シェード90は、板状の本体部分90aと、本体部分90aを虚像表示装置100の眼前に配置した状態で支持固定するための突起部91とを備える。突起部91は、本体部分90aとともに一体的に形成される可撓性部材であり、先端側に配置される先端連結部分TCと、先端連結部分TCを支持する先端支持部分TSとを有する。なお、図5や図8(C)に示すように、突起部91のうち、先端連結部分TCは、枠部102を構成するフレーム107の延びる方向に対応する方向(眼の並ぶ横方向)に沿って延びる棒状(板状)の部材であり、先端支持部分TSは、先端連結部分TCの中央から延びてシェード90の本体部分90aと連結されている。なお、図5(B)等に示すように、シェード90の裏側面のうち、導光装置20の光学有効領域外に対応する四隅の箇所に(すなわち4つの)突起部(又は突状部)PTが形成されている。突起部PTは、シェード90の裏側面から導光装置20の表側面に向かって延びるように突起して形成されており、取付けに際して光学有効領域の外側に位置する周辺面に当接するものとなっている。これにより、シェード90が可撓性を有していても、シェード90と導光装置20との間にある程度以上の隙間を設けて互いに接触することを回避しつつシェード90の位置決めをすることができる。
以下、虚像表示装置100の本体部分のうち、枠部102に設けられたシェード90を取り付けるための取付部109とその周辺の構造について説明する。取付部109は、左右一対の導光装置20の間の中央部に配置され、シェード90の突起部91を挿入させる挿入部109aと、挿入部109aに挿入された突起部91を係合する係合部109bとを有する。挿入部109aは、枠部102のうち、フレーム107に付随して設けられた凹部であり、係合部109bは、樹脂部108に付随して設けられた凸部であり、樹脂部108の一部がフレーム107側に延びるように延在して形成される突起状の部分である(図8(C)参照)。なお、この場合、挿入部109aは、相対的に観察者の眼の位置として想定される位置(以下、顔位置とする。)から遠い側に配置され、係合部109bは、顔位置に近い側に配置されることになる。挿入部109aについて、より具体的に説明すると、挿入部109aは、フレーム107において、断面視において逆U字形状を有する凹部が形成されることでフレーム107が延びる横方向に沿って延びる下方側に口を開けた溝状の部分を有する。つまり、挿入部109aは、樹脂部108に設けた後述する接続部(接続領域)108gの頂部CHの端部とともに突起部91が挿入される挿入孔HAを形成する。一方、係合部109bについて、より具体的に説明すると、図8(C)に示すように、取付部109において、係合部109bは、突起部91の先端支持部分TSを挿入させる切込み部(又は切欠き部)CTと、切込み部CTの両眼側に形成されて突起部91の先端連結部分TCを引っ掛けて嵌め合せる引っ掛け部HKとを有する。先端支持部分TSがこの引っ掛け部HKにはまった状態となることで、シェード90は位置決めされて固定される。なお、この場合、フレーム107側の挿入部109aに剛性をもたせて形成することが可能となり、かつ、樹脂部108側の係合部109bに可撓性をもたせて形成することが可能となる。これにより、シェード90を取り付けるに際して突起部91をはめ込ませやすくすることができる。さらに、シェード90の突起部91は、可撓性部材で形成されているため、変形可能になっている。これにより、シェード90を取り付けるに際して差し込みやはめ込みの動作を行いやすくすることができる。
以下、取付部109以外の枠部102の周辺の構造として、枠部102に付随して設けられている鼻受部40とその周辺について説明する。鼻受部40は、枠部102のフレーム107の正面部107aの中央部107gにねじ止めによって固定されて、下方に延びている。鼻受部40は、中央上部の被固定部43と、上下に延びる一対の長さ調整部材と、調整部材の先端に形成されたパッド部とを有する。被固定部43は、鼻受部40をフレーム107に安定して固定するための部分となっている。被固定部43において部分的に露出する芯金40aは、フレーム107の中央部107gと、カバーインサイド108の中央部に設けた接続部(接続領域)108gの頂部CHとの間に挟まれ、正面部107aのねじ孔107rにねじ込まれたねじ107sによって共締めされて固定されている。また、この他の周辺機構として、例えば、枠部102のうち、樹脂部108は、フレーム107に沿って延びてケーブルCBを収納可能とする収納溝部108cを有している。ケーブルCBは、画像形成に必要な信号用のケーブルのほか、例えばカメラCAや表示ランプLM(図1等参照)に対しても適宜信号の送受信用のケーブルとして機能する。枠部102において、取付部109は、以上のような鼻受部40や収納溝部108c等の周辺構造に対して、影響しない位置に形成されていることになる。
以下、図7等を参照して、シェード90の取付け動作について説明する。図7(A)は、シェード90の虚像表示装置100の本体部分への取付けのうち、シェード90の突起部91を、取付部109の挿入部109aにあてがった状態を示している。また、図7(B)は、シェード90の突起部91を挿入部109aに挿入させている様子を示している。また、図7(C)は、シェード90を取付部109の係合部109bにおいて係合した状態を示している。また、図8(A)は、図7(A)に対応する斜視図であり、突起部91を挿入する動作を示している。また、図8(B)は、図7(B)に対応する斜視図であり、突起部91を係合する動作を示している。また、図8(C)は、係合された状態の突起部と係合部との嵌合状態を示している。
まず、図7(A)又は図8(A)に示すように、シェード90の突起部91が挿入部109aに対して下方側からあてがわれ、矢印A1に示す上方側の方向へ差し込まれる。この際、例えば図7(B)において破線で示されるように、シェード90の本体部分90aを、下方に向かうに従って導光装置20からやや離れる側、すなわち観察者の眼(顔位置)から遠くなる側に傾けつつ先端側の突起部91を差し込む。この場合、突起部91がやや撓んだ状態となりつつ挿入部109aの奥側まで入り込む。次に、図7(B)又は図8(B)に示すように、挿入部109aに入り込んだ突起部91が、全体として矢印A2に示す方向すなわち導光装置20に近づく側に押し込まれて正対することでセットされる。すなわち、この結果、図7(C)又は図8(C)に示すように、突起部91が取付部109の係合部109bに係合されて(すなわちセットされて)、ロックされた状態となり、シェード90が固定される。
以下、図9を参照して、虚像表示装置100の光学的な構成について詳細に説明する。このための前提として、まず、第1像形成本体部105a(図1参照)を構成する画像表示装置80と投射レンズ30とについて詳細に説明する。
画像表示装置80は、上述した映像表示素子82のほかに、図示のように、映像表示素子82に対して照明光を射出する照明装置81と、照明装置81及び映像表示素子82の動作を制御する駆動制御部84とを有する。
画像表示装置80の照明装置81は、赤、緑、及び青の3色を含む光を発生する光源や、この光源からの光を拡散させて矩形断面の光束にするバックライト導光部を有する。映像表示素子(映像素子)82は、例えば液晶表示デバイスで形成され、複数の画素で構成されており、照明装置81からの照明光を空間的に変調して動画像等の表示対象となるべき画像光を形成する。なお、図示を省略するが、駆動制御部84は、照明装置81に電力を供給して安定した輝度の照明光を射出させる光源駆動回路や、映像表示素子(映像素子)82に対して画像信号又は駆動信号を出力することにより、透過率パターンとして動画や静止画の元になるカラーの映像光又は画像光を形成する液晶駆動回路で構成される。なお、液晶駆動回路に画像処理機能を持たせることができるが、外付けの制御回路に画像処理機能を持たせることもできる。
投射レンズ30は、構成要素として、入射側光軸に沿って3つの光学素子(レンズ)31〜33を備える投射光学系であり、これらの光学素子31〜33を収納する鏡筒部39によって支持されている。光学素子31〜33は、非軸対称な非球面(非軸対称非球面)と軸対称な非球面(軸対称非球面)との双方を含む非球面レンズであり、導光部材10の一部と協働して導光部材10の内部に映像表示素子82の表示像に対応する中間像を形成する。なお、各レンズ(光学素子)31〜33のうち、第1レンズ31の光の射出面であるレンズ面31aは、非軸対称非球面となっており、レンズ面31a以外のレンズ面については、軸対称非球面となっている。
以下、導光装置20等について詳細に説明する。上述のように、導光装置20は、導光部材10と光透過部材50とで構成されている。このうち、導光部材10は、平面視において、鼻に近い中央側(眼前側)の部分が直線状に延びている。導光部材10のうち、鼻に近い中央側つまり光射出側に配置されている第1導光部分11は、光学的な機能を有する側面として、第1面S11と、第2面S12と、第3面S13とを有し、鼻から離れた周辺側つまり光入射側に配置されている第2導光部分12は、光学的な機能を有する側面として、第4面S14と、第5面S15とを有する。このうち、第1面S11と第4面S14とが連続的に隣接し、第3面S13と第5面S15とが連続的に隣接する。また、第1面S11と第3面S13との間に第2面S12が配置され、第4面S14と第5面S15とは大きな角度を成して隣接している。さらに、ここでは、対向した配置となっている第1面S11と第3面S13とが互いに略平行な平面形状となっている。一方、光学的な機能を有する他の面、すなわち第2面S12、第4面S14及び第5面S15は、非軸対称な曲面(自由曲面)となっている。なお、既述のように、第3面S13は、第1露出面20aを構成し、第3面S11及び第4面S14は、第2露出面20bを構成している。
なお、導光装置20において、導光部材10は、光透過部材50と接着層CCを介して接合されており、導光部材10及び光透過部材50の接合面と、接着層CCとで構成される部分を、接合部CNとする。なお、導光装置20は、導光部材10及び光透過部材50となるべき基材が接合部CNで接合された上で、接合された基材をディップ処理によってコーティングされることで形成されている。つまり、導光部材10のハードコート層27は、光透過部材50とともに導光装置20全体に設けられている。
なお、導光部材10を構成する複数の面のうち、第1面S11から第3面S13までの面以外の面S14,S15については、少なくとも1つの自由曲面について、方向によって曲率の符号が異なっている点を少なくとも1つ含むものとなっている。これにより、映像光の導光を精密に制御しつつ、導光部材10の小型化を可能にしている。
導光部材10のうち本体10sは、可視域で高い光透過性を示す樹脂材料で形成されており、例えば金型内に熱可塑性樹脂を注入・固化させることにより成形する。なお、本体10sの材料としては、例えばシクロオレフィンポリマー等を用いることができる。本体10sは、一体形成品とされているが、導光部材10は、既に説明したように機能的に第1導光部分11と第2導光部分12とに分けて考えることができる。第1導光部分11は、映像光GLの導波及び射出を可能にするとともに、外界光HLの透視を可能にする。第2導光部分12は、映像光GLの入射及び導波を可能にする。
第1導光部分11において、第1面S11は、映像光GLを第1導光部分11外に射出させる屈折面として機能するとともに、映像光GLを内面側で全反射させる全反射面として機能する。第1面S11は、眼EYの正面に配されるものであり、既述のように、平面形状を成している。なお、第1面S11は、本体10sの表面に施されたハードコート層27によって形成される面である。
第2面S12は、本体10sの表面であり、当該表面にハーフミラー層15が付随している。このハーフミラー層15は、光透過性を有する反射膜(すなわち半透過反射膜)である。ハーフミラー層(半透過反射膜)15は、第2面S12の全体ではなく、第2面S12を主にY軸に沿った鉛直方向に関して狭めた部分領域(図示省略)上に形成されている。ハーフミラー層15は、本体10sの下地面のうち部分領域PA上に、金属反射膜や誘電体多層膜を成膜することにより形成される。ハーフミラー層15の映像光GLに対する反射率は、シースルーによる外界光HLの観察を容易にする観点で、想定される映像光GLの入射角範囲において10%以上50%以下とする。具体的な実施例のハーフミラー層15の映像光GLに対する反射率は、例えば20%に設定され、映像光GLに対する透過率は、例えば80%に設定される。
第3面S13は、映像光GLを内面側で全反射させる全反射面として機能する。第3面S13は、眼EYの略正面に配されるものであり、第1面S11と同様に、平面形状を成しており、かつ、第1面S11と第3面S13とが互いに平行な面であることにより、第1面S11と第3面S13とを通過させて外界光HLを見たときに、視度が0になっており、特に、変倍も生じさせないものとなっている。なお、第3面S13は、本体10sの表面に施されたハードコート層27によって形成される面である。
第2導光部分12において、第4面S14は、映像光GLを内面側で全反射させる全反射面として機能する。第4面S14は、映像光GLを第2導光部分12内に入射させる屈折面としても機能する。すなわち、第4面S14は、外部から導光部材10に映像光GLを入射させる光入射面と、導光部材10の内部において映像光GLを伝搬させる反射面としての機能を兼用している。なお、第4面S14は、本体10sの表面に施されたハードコート層27によって形成される面である。
第2導光部分12において、第5面S15は、本体10sの表面上に無機材料で形成される光反射膜RMを成膜することで形成され、反射面として機能する。
光透過部材50は、既述のように導光部材10と一体的に固定され1つの導光装置20となっており、導光部材10の透視機能を補助する部材(補助光学ブロック)である。光透過部材50は、光学的な機能を有する側面として、第1透過面S51と、第2透過面S52と、第3透過面S53とを有する。ここで、第1透過面S51と第3透過面S53との間に第2透過面S52が配置されている。第1透過面S51は、導光部材10の第1面S11を延長した面上にあり、第2透過面S52は、当該第2面S12に対して接着層CCによって接合され一体化されている曲面であり、第3透過面S53は、導光部材10の第3面S13を延長した面上にある。このうち第2透過面S52と導光部材10の第2面S12とは、薄い接着層CCを介しての接合によって一体化されるため、略同じ曲率の形状を有する。
光透過部材(補助光学ブロック)50は、可視域で高い光透過性を示し、光透過部材50の本体部分は、導光部材10の本体10sと略同一の屈折率を有する熱可塑性樹脂材料で形成されている。なお、光透過部材50は、本体部分を導光部材10の本体10sに接合した後、接合された状態で本体10sとともにハードコートによる成膜がなされて形成されるものである。つまり、光透過部材50は、導光部材10と同様、本体部分の表面にハードコート層27が施されたものとなっている。第1透過面S51と第3透過面S53とは、本体部分の表面に施されたハードコート層27によって形成される面である。
なお、防塵構造DSを構成する部分のうち、第4面S14に接触するシール部材SPが可変性のある弾性部材であることにより、鏡筒39によって覆われる領域から覆われない領域にわたって配置される面である部分被覆光学面CSとしての第4面S14が非軸対称な曲面すなわち自由曲面である場合にあっても、確実なシールを維持できる。
以下、虚像表示装置100における映像光GL等の光路について具体的に説明する。映像表示素子(映像素子)82から射出された映像光GLは、投射レンズ30を構成する各レンズ31〜33を通過することによって、収束されつつ、所期の非点収差が与えられ導光部材10に設けた正の屈折力を有する第4面S14に入射する。なお、この非点収差は、導光部材10の各面を経る間に相殺されるものとなっており、最終的に初期の状態で観察者の眼に向けて映像光が射出される。
導光部材10の第4面S14に入射してこれを通過した映像光GLは、収束しつつ進み、第2導光部分12を経由する際に、比較的弱い正の屈折力を有する第5面S15で反射され、第4面S14に内側から再度入射して反射される。
第2導光部分12の第4面S14で反射された映像光GLは、第1導光部分11において、実質的に屈折力を有しない第3面S13に入射して全反射され、実質的に屈折力を有しない第1面S11に入射して全反射される。
ここで、映像光GLは、第3面S13を通過する前後において、導光部材10中に中間像を形成する。この中間像の像面IIは、映像表示素子82の像面OIに対応するものである。なお、図示の中間像の像面IIは、第3面S13から第4面S14までにかけての映像光の光路のうち、第4面S14よりも第3面S13に近い側に形成されている。すなわち、中間像の像面IIが第4面S14から離間している。これにより、シール部材SPによる多少の映像光の成分の吸収があったとしても、それによって視認される画像が暗くなったと感じさせない程度にすることができる。
第1面S11で全反射された映像光GLは、第2面S12に入射するが、特にハーフミラー層15に入射した映像光GLは、このハーフミラー層15を部分的に透過しつつも部分的に反射されて第1面S11に再度入射して通過する。なお、ハーフミラー層15は、ここで反射される映像光GLに対して比較的強い正の屈折力を有するものとして作用する。また、第1面S11は、これを通過する映像光GLに対して屈折力を有しないものとして作用する。
第1面S11を通過した映像光GLは、観察者の眼EYの瞳又はその等価位置に略平行光束として入射する。つまり、観察者は、虚像としての映像光GLにより、映像表示素子(映像素子)82上に形成された画像を観察することになる。
一方、外界光HLのうち、導光部材10の第2面S12よりも+X側に入射するものは、第1導光部分11の第3面S13と第1面S11とを通過するが、この際、第3面S13と第1面S11とが互いに略平行な平面となっていることで、収差等をほとんど生じない。つまり、観察者は、導光部材10越しに歪みのない外界像を観察することになる。同様に、外界光HLのうち、導光部材10の第2面S12よりも−X側に入射するもの、つまり、光透過部材50に入射したものは、これに設けた第3透過面S53と第1透過面S51とを通過する際に、第3透過面S53と第1透過面S51とが互いに略平行な平面となっていることで、収差等を生じない。つまり、観察者は、光透過部材50越しに歪みのない外界像を観察することになる。さらに、外界光HLのうち、導光部材10の第2面S12に対応する光透過部材50に入射するものは、第3透過面S53と第1面S11とを通過する際に、第3透過面S53と第1面S11とが互いに略平行な平面となっていることで、収差等をほとんど生じない。つまり、観察者は、光透過部材50越しに歪みの少ない外界像を観察することになる。なお、導光部材10の第2面S12と光透過部材50の第2透過面S52とは、略同一の曲面形状をともに有し、略同一の屈折率をともに有し、両者の隙間が略同一の屈折率の接着層CCで充填されている。つまり、導光部材10の第2面S12や光透過部材50の第2透過面S52は、外界光HLに対して屈折面として作用しない。
ただし、ハーフミラー層15に入射した外界光HLは、このハーフミラー層15を部分的に透過しつつも部分的に反射されるので、ハーフミラー層15に対応する方向からの外界光HLは、ハーフミラー層15の透過率に弱められる。その一方で、ハーフミラー層15に対応する方向からは、映像光GLが入射するので、観察者は、ハーフミラー層15の方向に映像表示素子(映像素子)82上に形成された画像とともに外界像を観察することになる。
導光部材10内で伝搬されて第2面S12に入射した映像光GLのうち、ハーフミラー層15で反射されなかったものは、光透過部材50内に入射するが、光透過部材50に設けた不図示の反射防止部によって導光部材10に戻ることが防止される。つまり、第2面S12を通過した映像光GLが光路上に戻されて迷光となることが防止される。また、光透過部材50側から入射してハーフミラー層15で反射された外界光HLは、光透過部材50に戻されるが、光透過部材50に設けた上述の不図示の反射防止部によって導光部材10に射出されることが防止される。つまり、ハーフミラー層15で反射された外界光HLが光路上に戻されて迷光となることが防止される。
以上のように、本実施形態に係る虚像表示装置100では、シースルー型の構成を有するものであって、シェード90の突起部91を、虚像表示装置100の本体部分側の枠部102に設けられたシェード着脱用の取付部109の挿入部109aに差し込んで、さらに押し込むことで係合部109bにおいて係合させて(セットさせて)、突起部91が取付部109にロックされた状態となり、シェード90の装着を行うことができる。また、シェード90の取り外しについては、例えば装着時に押し込む方向と逆方向にシェード90全体を引いて係合を解除し、挿入部109aから抜き出せばよい。以上により、シェード90の着脱を例えば片手で簡単に行うことが可能になる。
〔その他〕
以上各実施形態に即して本発明を説明したが、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
上記実施形態では、枠部102に設けられた取付部109に係合する突起部91が一体の可撓性部材としているが、これに限らず、例えば、突起部91の先端連結部分TCが取付部109の挿入部109a内で回動する回動部であり、先端支持部分TSが先端連結部分TCの回動に伴って取付部109の係合部109bにあたって折れ曲がるとともにシェード90全体が若干枠部102に沿った方向に撓むことで虚像表示装置100の本体部分に係合する構造とすることもできる。
また、上記の説明での図示の例では、シェード90について、本体部分90aが左右一対の導光装置20に沿った輪郭形状を有するものとなっているが、種々の形状のものが適用できる。また、構造的にも種々のものが適用可能である。例えばこれに限らず図10及び図11(A)及び11(B)に示すように、虚像表示装置100において、枠部102の中央部と左右一対の外装部材105dとの3箇所に挿入孔HAを設けるとともに、シェード190に当該3箇所の挿入孔HAに対応する爪状の部分である突起部191を設け、これらを挿入孔HAに差し込むことで、例えば下方側にある2つの突起部191が外装部105dに入り込み(落下しない程度にセットされ、かつ、枠部102の中央にある1つの挿入孔HAに残る1つの突起部191が嵌ることで、本体部分190aの可撓性による反発力を利用して突起部191を引っかけた状態にすることでシェード190を係合させ(セットさせ)、固定させるものとしてもよい。また、この際、図11に示すように、シェード190の本体部分90aにシボ加工或いは塗装を施すことで、シェード時の光漏れを防止するものとしてもよい。より具体的には、図示において矢印AAで示すように、シェード90の両端側(眼尻側)であって、内側の面すなわち導光装置20に対向する面の領域DAにおいて、横方向について5〜10mm程度の幅DDの範囲に亘ってシボ加工或いは塗装を施すことで、外観を損ねることなく的確に外界光HLに起因する光漏れの防止を図ることができる。なお、シボ加工については、図5等に示す形状のシェード90においても同様に施すことが可能である。
また、この他のシェードの態様として、例えばシェードを跳ね上げ式等の取り付け部本体に跳ね上げ構造があるものであってもよい。また、液晶、エレクトロクロミックスを利用した電子式のものであってもよい。さらに、シェードの透過率についても、種々の態様が可能であり、例えば透過率0%とするすなわち外界光を通過させない完全クローズとするものとしてもよく、一部透過の透過率とするもの(例えば10%程度)、あるいは偏光レンズやミラータイプのものであってもよい。
上記の説明では、投射レンズが有する非軸対称非球面を1面としているが、投射レンズが2面以上の非軸対称非球面を有するものとすることも可能である。
上記の説明では、ハーフミラー層(半透過反射膜)15が横長の矩形領域に形成されるとしたが、ハーフミラー層15の輪郭は用途その他の仕様に応じて適宜変更することができる。また、ハーフミラー層15の透過率や反射率も用途その他に応じて変更することができる。
上記の説明では、映像表示素子82における表示輝度の分布を特に調整していないが、位置によって輝度差が生じる場合等においては、表示輝度の分布を不均等に調整することができる。
上記の説明では、画像表示装置80として、透過型の液晶表示デバイス等からなる映像表示素子82を用いているが、画像表示装置80としては、透過型の液晶表示デバイス等からなる映像表示素子82に限らず種々のものを利用可能である。例えば、反射型の液晶表示デバイスを用いた構成も可能であり、液晶表示デバイス等からなる映像表示素子82に代えてデジタル・マイクロミラー・デバイス等を用いることもできる。また、画像表示装置80として、LEDアレイやOLED(有機EL)などに代表される自発光型素子を用いることもできる。
上記実施形態では、透過型の液晶表示デバイス等からなる画像表示装置80を用いているが、これに代えて走査型の画像表示装置を用いることもできる。
また、上記実施形態では、導光部材10と補助光学ブロックである光透過部材50とが装着者の眼EYの前全体を覆うような構成となっているが、これに限らず、ハーフミラー層15を有する曲面形状である第2面S12を含んだ部分が眼EYあるいはその周辺の一部のみを覆っている、すなわち眼前の一部を覆い、覆わない部分も存在する小型の構成としてもよい。この際、シェードの形状も虚像表示装置100に合わせるものとしてもよい。なお、このような構成の場合、全体を覆う構成の場合と比較して、画像が形成される位置がずれ、画像に対する視線方向も多少変更する場合がある。
上記の説明では、一対の表示装置100A,100Bを備える虚像表示装置100について説明しているが、単一の表示装置とできる。つまり、右眼及び左眼の双方に対応して、一組ずつ投射透視装置70及び画像表示装置80を設けるのではなく、右眼又は左眼のいずれか一方に対してのみ投射透視装置70及び画像表示装置80を設け、画像を片眼視する構成にしてもよい。この場合、シェードの形状も併せて変更可能である。
上記の説明では、ハーフミラー層15が単なる半透過性の膜(例えば金属反射膜や誘電体多層膜)であるとしたが、ハーフミラー層15は、平面又は曲面のホログラム素子に置き換えることができる。
上記の説明では、導光部材10等が眼EYの並ぶ横方向に延びているが、導光部材10を縦方向に延びるように配置することもできる。この場合、導光部材10は、直列的ではなく並列的に平行配置された構造を有することになる。