以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
<パターンを有する樹脂層を製造する方法>
パターンを有する樹脂層を製造する方法は、例えば、凹凸パターンを有する型を樹脂層に押し当てて、型のパターンに対して反転したパターンを樹脂層に形成させる工程と、パターンを形成した樹脂層から型を外す工程と、樹脂層の硬化を光照射を含む方法により進行させる工程と、樹脂層の仮基材とは反対側の主面上に基板を設ける工程と、仮基材を樹脂層から剥離する工程と、樹脂層の硬化を光照射及び熱硬化を含む方法により進行させる工程とから構成される。
図1は、パターンを有する樹脂層を製造する方法の一実施形態を示す工程図である。図1に示される方法は、仮基材1及び仮基材1上に積層された樹脂層10aを有する積層シートを準備し、樹脂層10aの仮基材1とは反対側の主面S1に、テーパー状の厚み方向の断面を有する凹凸パターンを有する型5を押し当てて、該凹凸パターンに対して反転したパターンを樹脂層10bと仮基材1とで形成させる工程(図1の(a)〜(c))と、パターンを形成した樹脂層10bから型5を外す工程(図1の(d))と、樹脂層10bに対して光を照射し、樹脂層10bの硬化を進行させる工程(図1の(e))と、樹脂層10bの仮基材1とは反対側の主面を基板2に貼り合わせる工程(図1の(f))と、樹脂層10bに対して仮基材1側から光を照射する工程(図1の(g))と、仮基材1を樹脂層10bから剥離する工程(図1の(h))と、樹脂層10bを熱硬化させる工程(図1の(i))とを備える。これにより、フォトリソグラフィー技術や通常のインプリント法では形成することが困難な樹脂パターンを容易に形成することができる。
図2は、図1の方法により製造される、パターンを有する樹脂層の一実施形態を示す斜視図である。図2に示す樹脂層10bは、基板2上に設けられており、開口部20を含むパターンを有する。開口部20は、基板2に近づくほど幅が広くなる逆テーパー状の断面を有する。
図3は、パターンを有する樹脂層を製造する方法の他の実施形態を示す工程図である。図3の(a)〜(e)に示すように、段差及び/又はテーパー形状を有し、厚み方向で幅が変化する凸部を含む凹凸パターンを有する種々の型を用いることができる。図3では省略されているが、図1と同様の工程を経て、パターンを有する樹脂層10bを製造することができる。
図4は、2段以上の段差を有するパターンを有する樹脂層の一実施形態を示す断面図である。図4に示す樹脂層10bは、2段以上の段差を有し,かつ下地層の基板2に近づくほど幅が広くなる断面を有する開口部を含むパターンを有する。(樹脂層10bは、第一の薄膜11、第二の薄膜12及び第三の薄膜13の3層から構成されており、これらは互いに異なる幅及び位置の開口部を含むパターンを有している。)フォトリソグラフィー技術を用いた場合、ラミネート工程、露光工程、現像工程等を繰り返すことで,上記パターンを有する樹脂層10bの形成が可能である。一方,本実施形態のプロセスを用いた場合には、上記パターンを有する樹脂層10bは、凹凸パターンを有する型を用意し、図1に示したような、仮基材上でのパターンを有する樹脂層の形成と該樹脂層の基板への転写を実施することで、製造することができる。
<樹脂層作製工程>
樹脂層は、樹脂組成物から形成される。樹脂層は、その膜厚が均一になる方法により形成されることが好ましい。樹脂層の好ましい厚さは、型が有する凹凸パターンの凸部の高さに対して1/3倍〜2倍程度である。樹脂層が適度な厚さを有することにより、樹脂組成物が凹凸バターンに特に容易に充填され易く、型を樹脂層から外した時に樹脂が型上に残ることをより効果的に抑制できる。樹脂層の厚さが、特に15μm以下であると、パターンの良好な形状を保持しながら、インプリント後の残存膜厚を大幅に低減し、最終的には無くすことができる。また、本明細書の以下の記載において、「残存膜」との標記は、図5に示すように、凸部を有する型5を樹脂層10aに加熱しながら圧着し、型5を外してパターンを有する樹脂層10bを形成した際に、型5の凸部に対応する部分の樹脂層10bを定義する用語として使用する。「残存膜厚」との標記は、図5に示すように、凸部を有する型5を樹脂層10aに加熱しながら圧着し、型5を外してパターンを有する樹脂層10bを形成した際に、型5の凸部に対応する部分の樹脂層10bの厚さdを定義する用語として使用する。
樹脂層の厚さは、通常は1〜100μm、好ましくは1〜50μm、より好ましくは1〜15μmである。樹脂層の厚さは、10μm以下であってもよい。樹脂層10aの厚さが、特に15μm以下であると、パターンの良好な形状を保持しながら、型押し(インプリント)後の残存膜厚を薄くすることができる。例えば、型5が有する凹凸パターンの凸部の高さが10μmで、L/S=5/5μmである場合、パターンの良好な形状を保持しながら、型押し後の残存膜厚を0.1〜10μm程度にすることができ、条件によっては残存膜厚を無くすことができる。
樹脂層は、例えば、樹脂組成物(以下、「インプリント用樹脂組成物」ともいう。)を仮基材に塗布し、必要により塗膜から溶媒を除去することにより、形成することができる。必要に応じて、樹脂組成物を溶媒に溶解又は分散させて塗工液を調製し、塗工液を仮基材に塗布してもよい。塗布の方法は特に限定されず、例えば、スピンコート又はディップコートなどの方法を用いることができる。インプリント用樹脂組成物の詳細については後述する。
あるいは、予め別の基材上に樹脂層を形成して、基材及び基材上に設けられた樹脂層を有するインプリント用樹脂フィルムを準備することもできる。インプリント用樹脂組成物又はその溶液若しくは分散液を基材に塗布し、ホットプレート、オーブン等を用いて、例えば60〜120℃で、1分〜1時間の加熱により塗膜を乾燥して、基材上に樹脂層を形成することができる。
仮基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエーテルサルフォン等からなる有機フィルムを用いることができる。耐熱性の観点から、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリプロピレン、及びポリエーテルサルフォンが好ましい。仮基材としては、厚さ5〜150μmのフィルムを用いることができる。被覆性の確保と、仮基材を介して露光する際の解像度の低下を抑制する観点から、仮基材の厚さは5〜100μmであることが好ましく、10〜70μmであることがより好ましい。
仮基材の特徴としては、第一に、凹凸パターンを有する型を樹脂層に押し当て、その後型を樹脂層から剥離する工程において、型と樹脂層との接着力よりも仮基材と樹脂層との接着力の方が高く、型からの良好な離型性を保持することが求められる。そのため、仮基材の表面ははく離層がない方が好ましい。第二に、樹脂層の主面と基板とを対向させて、樹脂層を基板に貼り合わせた後に、仮基材を樹脂層から剥離する工程では、樹脂層と仮基材との離型性を高くすることが求められる。仮基材と樹脂層に対して光を照射することで、樹脂層と仮基材との離型性を向上させることができる。そのため、仮基材は活性光線が透過する性質を持つことが求められる。第三に、仮基材には貼り合わせ時の加熱に対する耐熱性が求められる。そのため、仮基材が150℃以上の耐熱性を持つことが好ましい。さらに仮基材を樹脂層から剥離する工程において、容易に変形しない柔軟性がある仮基材が好ましい。
樹脂層上に、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、及びポリプロピレンフィルム等から選ばれる保護フィルムが積層されていてもよい。
<露光工程>
仮基材上に樹脂層を形成した後、樹脂層に対して光(活性光線)を、仮基材とは反対側から照射してもよい。この光照射により、インプリントに適した樹脂層の流動性を維持しつつ、樹脂層表面の離型性を向上させることができる。その結果、樹脂層に型を押し当てて樹脂層にパターンを形成させた後、樹脂層の型への密着が抑制される。
照射される光の種類は特に制限されず、例えば、当該分野において通常用いられる光源を用いて、紫外線、可視光線、電子線及びX線からなる群より選ばれる少なくとも1種の活性光線が照射される。これらの中でも特に、紫外線及び可視光線が好ましい。露光量は、例えば1〜4000mJ/cm2、好ましくは1〜2000mJ/cm2、より好ましくは1〜1000mJ/cm2、特に好ましくは5〜500mJ/cm2の範囲内で、樹脂層の離型性と流動性の好適なバランス等を考慮して適宜調整することができる。露光量を大きくすると、樹脂層の離型性が向上し、樹脂層の流動性は低下する傾向がある。特に、樹脂層が光重合性化合物を含んでいると、光重合性化合物の光重合が部分的に進行する程度の露光量で光照射することにより、樹脂層の離型性と流動性の良好なバランスを容易に達成することができる。
<インプリント(第1工程、第2工程)>
次いで、最終的に形成される樹脂層のパターンに対して反転した凹凸パターンを有する型を準備し、これを樹脂層に押し当てる。型を押し当てる方法は特に制限されず、例えば、手で型を押し当てる方法、プレス装置を用いて高圧で型を押し当てる方法などを用いることができる。型として、例えばシリコン製や石英製の型を用いることができる。型は、離型処理されていてもよい。
型を樹脂層に押し当てたときに、樹脂層は、流動して型の凹凸パターンを充填する。これにより、型の凹凸パターンに対して反転したパターンを有する樹脂層が形成される。すなわち、型を用いたインプリントにより樹脂層がパターニングされる。型を樹脂層に押し当てる工程において、樹脂の良好な充填性を確保するため、特に樹脂層の粘度が高いときは、型が加熱されることが好ましい。型の温度は、好ましくは40℃以上、より好ましくは80℃以上である。インプリント温度が80℃以上であると、フィラレスフィルムを用いた場合に、残存膜厚を大幅に低減することができ、貫通孔を作製することができる。また、樹脂の分解を防ぐためなどの理由から、型の温度は、好ましくは300℃以下である。樹脂層に貫通孔を形成させる場合,仮基材に達するまで型を押し当ててもよい。仮基材は樹脂層から型を外す工程の後,元の状態に戻ってもよい。一方、貫通孔を作製する必要がなく、転写先の基板に貼り合わせた後に、外周壁部(枠部)と蓋部(天井部)で構成されるような中空構造を形成したい場合には、温度を調整し、残存膜厚を残してもよい。
インプリント後の残存膜はドライエッチング処理にて除去されてもよい。ドライエッチング処理は、通常、用いられる方法であれば特には制限されないが、例えば、特許第4257808号,特許第4076889号に記載されている物理エッチング、反応性イオンエッチングを用いることができる。
型を樹脂層に押し当てる際の雰囲気は、特に制限されないが、樹脂層中に気泡が残ることを防ぐために、減圧下で当該工程を行うことが好ましい。特に樹脂層が(メタ)アクリル基、アリル基、ビニル基などの炭素−炭素二重結合を有する重合性不飽和化合物(光重合性化合物)を含有する場合、酸素による重合阻害を防ぐために、減圧下で当該工程を行うことが好ましい。
パターンを有する樹脂層が形成された後、型が樹脂層から取り外される。
<露光工程>
型を取り外した後、樹脂層に対して光(活性光線)を仮基材とは反対側から照射させ、光硬化させることが好ましい。この光硬化(光照射)により、熱によりパターン形状が崩れることを効果的に抑制できる。例えば、インプリント後に樹脂層が室温またはそれ以上の温度で保存されていたとしても、露光工程を経ることで、パターンの形状が保持され易く、微細なパターンを形成し、寸法を保持したい場合に有利である。また、樹脂層の主表面と基板の主表面を対向させて貼り合わせる工程において、加熱圧着で貼り合わせる場合に、樹脂層に形成されたパターンの崩れを効果的に防止することができる。
光照射は、インプリントの前の光照射と同様に、紫外線及び可視光線等の活性光線を樹脂層に対して照射することにより、行うことができる。光硬化は十分に進行させるが、一方で接着性を失わないように、露光量は、例えば1〜4000mJ/cm2、好ましくは500〜2000mJ/cm2の範囲内で調整される。この光硬化により、加熱圧着の際に樹脂層が軟化し難くなり、パターンの形状が崩れることをより効果的に防止することができる。したがって、樹脂層の主面と基板の主面を対向させて貼り合わせる前に、樹脂層を光硬化させることが好ましい。光硬化によるパターン保持の効果は、樹脂層が光重合開始剤を含有するとき、特に顕著に奏される。パターンの形状が保持され易いことは、例えば微細なパターンを形成する場合に特に有利である。
<貼り合わせ工程(第3工程)>
次いで、光照射された樹脂層の主面と基板の主面を当接させ、樹脂層は基板の主表面に接着する。これにより、型の凹凸パターンに対して反転したパターンを有する樹脂層が反転した状態で、基板に転写される。露光工程を経ずに、第2工程直後に第3工程で樹脂層を基板の主面に接着する場合には,樹脂層を基板に押し当てる工程において,仮基材と基板の間に荷重をかけることが好ましい。一方,第2工程及び露光工程を経た後に,第3工程で樹脂層を基板の主面に接着する場合で、特に樹脂層の粘度が高いときには、樹脂層を基板に押し当てる工程において、樹脂の良好な充填性・接着性を確保するため、仮基材と基板の間に荷重をかけ、かつ加熱することが好ましい。具体的には、40℃以上に加熱することが好ましい。パターンの形状の変形を抑止するなどの理由から、圧力は3kg/cm2以下が好ましく、基板との接着性を確保する観点から1kg/cm2以上が好ましい。また、樹脂の分解を防ぐためなどの理由から、加熱する温度は、300℃以下であることが好ましく、熱による樹脂の溶融を抑制する観点から150℃以下が好ましい。貼り付け時の押し付ける圧力、温度、時間などの各条件を適宜設定することで、パターンの形状を保持したまま、基板に樹脂層を接着することができる。
<接着材塗布>
接着性を担保するために、張り合わせ先である基板上に接着材を塗布してもよい。接着層は、その膜厚が均一になる方法により形成されることが好ましい。接着層の好ましい厚さは、通常は1〜100μm、好ましくは1〜50μmである。接着層は、例えば、樹脂組成物を仮基材に塗布し、必要により塗膜から溶媒を除去することにより、形成することができる。必要に応じて、樹脂組成物を溶媒に溶解又は分散させて塗工液を調製し、塗工液を仮基材に塗布してもよい。塗布の方法は特に限定されず、例えば、スピンコート又はディップコートなどの方法を用いることができる。
接着材としては、接着性を有する組成物であればよく、好ましくはアルカリ現像液によるパターン形成性に優れ、より好ましくはさらに低温貼り付け性に優れた組成物であればよい。接着用樹脂組成物としては、例えば、ポリイミド樹脂、ポリヒドロキシアミド樹脂、エポキシ樹脂、シアネート樹脂、ビスマレイミド樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、レゾルシノールホルムアルデヒド樹脂、キシレン樹脂、フラン樹脂、ポリウレタン樹脂、ケトン樹脂、トリアリルシアヌレート樹脂、ポリイソシアネート樹脂、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌラートを含有する樹脂、トリアリルトリメリタートを含有する樹脂、シクロペンタジエンから合成された熱硬化性樹脂、芳香族ジシアナミドの三量化による熱硬化性樹脂の他、アルカリ可溶性樹脂が有するカルボキシル基及び/または水酸基と熱反応する化合物として、アミノ基、イソシアナート基、オキサゾリン基、カルボジイミド基、エポキシ基を有する化合物等から構成されていてもよい。中でも、高温において優れた接着力を持たせることができる点で、エポキシ樹脂、シアネート樹脂及びビスマレイミド樹脂が好ましく、取り扱い性及びポリイミド樹脂との相溶性からエポキシ樹脂から構成されていることが特に好ましい。
接着層に対して光照射をしてもよい。接着力が強すぎる場合には、光照射をすることによって、接着性を落とすことができ、扱いやすさが向上する。光照射による取り扱い性の向上は、接着層が光重合開始剤と光重合性化合物を含有するとき、特に顕著に奏される。一方、接着層に光を照射し、さらに熱硬化を行う場合、接着層の接着性が失われ、パターンを有する樹脂層を貼り合わせる温度に高温が必要となる場合がある。高温で貼り合わせる結果、形状保持性が失われ、精度良くパターンを作製することが難しくなる。従って、接着層単独では熱硬化せずに、パターンを有する樹脂層を接着層を有する基板に張り合わせた後、パターンを有する樹脂層と接着層を同時に熱硬化させることが好ましい。
<第4工程及び露光・硬化工程>
パターンを有する樹脂層と基板が貼り合わされた後、仮基材を樹脂層から取り外す。取り外す前に、仮基材側に対して光照射を行っても良い。光照射を行うことにより、樹脂層の光硬化が進行し、仮基材と樹脂層の離型性を高められる。さらに、熱硬化の際に樹脂層が軟化し難くなり、パターンの形状が崩れることをより効果的に防止することができる。従って、熱硬化の前に、樹脂層を光硬化させることが好ましい。光硬化によるパターン保持の効果は、樹脂層が光重合開始剤を含有するとき、特に顕著に現れる。パターンの形状が保持され易いことは、例えば微細なパターンを形成する場合に特に有利である。
仮基材を樹脂層から取り外した後、樹脂層を更に硬化させることで、樹脂層の耐熱性、物理強度等を高めることができる。樹脂層を加熱すること、樹脂層に光を照射すること、又はこれらの組み合わせにより、樹脂層を硬化させることができる。熱硬化のための加熱の方法は、特に制限されない。例えば、樹脂層のガラス転移点以下の温度に保ちながら徐々に昇温することで、形成されたパターンを特に容易に保持することができる。また、加熱の温度を300℃以下とすることにより、樹脂の熱分解を防ぐことができる。
<インプリント用樹脂組成物>
本実施形態に係る方法において、樹脂層を形成するために好適に用いることができる樹脂組成物について、詳細に説明する。
本実施形態に係る樹脂組成物は、(A)光重合性化合物と、(B)光重合開始剤とを含有することが好ましい。
本実施形態に係る樹脂組成物は、(A)成分の光重合性化合物として、光重合性の官能基を有する化合物を1種又は2種以上含むことができる。光重合性の官能基の数には特に制限はないが、パターン形成時の硬化速度、硬化後の被膜の物理的及び化学的な耐久性の点から、分子内に2つ以上の光重合性の官能基を有する化合物が好ましい。(A)成分のうち2つ以上の光重合性の官能基を有する化合物の割合は、好ましくは30質量%以上100質量%以下、より好ましくは50質量%以上100質量%以下である。
光重合性の官能基は、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基、エポキシ基、及びオキセタニル基からなる群より選ばれる少なくとも1種であってもよい。これらの官能基のなかでも、より硬化時間を短くし、高スループットを実現するためには(メタ)アクリロイル基が好ましい。(A)成分全体における、(メタ)アクリロイル基を有する化合物の割合は、好ましくは30質量%以上100質量%以下である。
1つの(メタ)アクリロイル基を持つ化合物は、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸−sec−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシフェニルエチルなどのモノ(メタ)アクリレート、及び、N、N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N、N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−アクリロイルモルフォリンなどの(メタ)アクリルアミドからなる群より選ばれる少なくとも1種であってもよい。
2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物は、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートなどの多官能(メタ)アクリレート、及び、エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を付加させて得られるいわゆるエポキシ(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種であってもよい。エポキシ(メタ)アクリレートは、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、N−グリシジル型エポキシ樹脂、ビスフェノールAのノボラック型エポキシ樹脂、キレート型エポキシ樹脂、グリオキザール型エポキシ樹脂、アミノ基含有エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンフェノリック型エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂又はε−カプロラクトン変性エポキシ樹脂から誘導される。
1つのビニル基を有する化合物は、例えば、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテルなどのモノビニルエーテル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニルなどのモノビニルエステル、アジピン酸ジビニルなどのジビニルエステル、N−ビニルピロリドン、N−メチル−N−ビニルアセトアミドなどのN−ビニルアミド、及び、スチレン、2,4−ジメチル−α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,5−ジメチルスチレン、2,6−ジメチルスチレン、3,4−ジメチルスチレン、3,5−ジメチルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、2,4,5−トリメチルスチレン、ペンタメチルスチレン、o−エチルスチレン、m−エチルスチレン、p−エチルスチレン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン、o−ブロモスチレン、m−ブロモスチレン、p−ブロモスチレン、o−メトキシスチレン、m−メトキシスチレン、p−メトキシスチレン、o−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン、2−ビニルビフェニル、3−ビニルビフェニル、4−ビニルビフェニル、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン、4−ビニル−p−ターフェニル、1−ビニルアントラセン、α−メチルスチレン、o−イソプロペニルトルエン、m−イソプロペニルトルエン、p−イソプロペニルトルエン、2,4−ジメチル−α−メチルスチレン、2,3−ジメチル−α−メチルスチレン、3,5−ジメチル−α−メチルスチレン、p−イソプロピル−α−メチルスチレン、α−エチルスチレン、α−クロロスチレンなどのスチレン誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種であってもよい。
2つ以上のビニル基を有する化合物は、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジビニルエーテル、1,9−ノナンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテルなどの多官能ビニルエーテル、ジビニルベンゼン、及びジビニルビフェニルからなる群より選ばれる少なくとも1種であってもよい。
1つのアリル基を有する化合物は、例えば、アリルアルコール、エチレングリコールモノアリルエーテル、アリルアミン、アリルグリシジルエーテル、酢酸アリル、安息香酸アリルなどのアリルエステルから選ばれる少なくとも1種であってもよい。2以上のアリル基を有する化合物は、例えば、ジアリルアミン、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジアリル、フタル酸ジアリル、テレフタル酸ジアリル及びイソフタル酸ジアリルからなる群より選ばれる少なくとも1種であってもよい。
1つのエポキシ基を有する化合物は、例えば、グリシドール及びシクロヘキセンオキサイドから選ばれる。2つ以上のエポキシ基を有する化合物は、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、N−グリシジル型エポキシ樹脂、ビスフェノールAのノボラック型エポキシ樹脂、キレート型エポキシ樹脂、グリオキザール型エポキシ樹脂、アミノ基含有エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンフェノリック型エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂及びε−カプロラクトン変性エポキシ樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種であってもよい。
1つのオキセタニル基を有する化合物は、例えば、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、及び3−エチル−3−メタクリロキシメチルオキセタンから選ばれる。2つ以上のオキセタニル基を有する化合物は、例えば、東亞合成株式会社のアロンオキセタンOXT−121(商品名)、新日鐵住金化学株式会社のOXTP(商品名)、及びOXBP(商品名)から選ばれる。
本実施形態に係る樹脂組成物は、光重合性化合物として、ウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物を含むことが好ましい。樹脂組成物がウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物を含むことにより、硬化後の樹脂層の耐熱性を高めることができる。より具体的には、樹脂層の硬化物の高温における剛性が高められ、さらに樹脂層が脆くなることが抑制され、樹脂層が基板等に対して良好な密着性を保持することができる。
ウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物は、例えば、β位等に水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーとジイソシアネート化合物との付加反応物であるウレタン(メタ)アクリレート、エチレンオキシド(EO)変性ウレタンジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド(EO)又はプロピレンオキシド(PO)変性ウレタンジ(メタ)アクリレート、カルボキシル基を有するウレタン(メタ)アクリレート、ジオール化合物、及び、2つの水酸基及び2つのエチレン性不飽和基を有する2官能エポキシ(メタ)アクリレートとポリイソシアネートとの反応物からなる群より選ばれる少なくとも1種であってもよい。
上記のβ位等に水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーは、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート及びペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種であってもよい。上記イソシアネート化合物は、例えば、イソホロンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート及び1、6−ヘキサメチレンジイソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも1種であってもよい。
耐熱性、剛性と高密着性とをより高いレベルで両立するために、ウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物の官能基数((メタ)アクリロイルオキシ基の数)及び重量平均分子量を最適化することが好ましい。これにより、粘度を過度に高めることなく選択できる材料の範囲が広くなるため、基板上に塗布するインプリント用樹脂組成物の粘度を容易に調整することできる。インプリント用樹脂組成物の粘度は溶剤を用いることでも低くすることが可能であるが、官能基数及び重量平均分子量が適正されたウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物を用いることにより、溶剤の量を低減することができる。溶剤の量を低減することで、硬化後の樹脂層の良好な特性及び信頼性を維持し易い。
ウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物の官能基数((メタ)アクリロイルオキシ基の数)は、耐熱性、密着性、塗工性、及びパターン形成性の観点から、好ましくは2〜15である。この官能基数は、硬化後の樹脂層の物性及び特性の安定性の観点から、より好ましくは2〜12、更に好ましくは2〜10である。
当該官能基数が2以上であると、硬化後の樹脂層の耐熱性及び、高温における樹脂層の剛性をより一層高めることができる。当該官能基数が15以下であると、硬化後の樹脂層が脆くなることを抑制でき、良好な密着性を得ることができる。また、当該官能基数が少ないと、(メタ)アクリレート化合物の重量平均分子量が大きくなり過ぎないため、樹脂組成物の粘度を適切な範囲に調整し易い。そのため、良好な塗工性が得られ易い。更には、光硬化及び/又は熱硬化後、未反応の(メタ)アクリロイル基が多く残存することが少なくなり、その結果、樹脂膜の物性及び特性の変動をより効果的に回避することができる。
ウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは950〜25000である。この重量平均分子量は、塗布性向上の観点から、より好ましくは950〜15000であり、相溶性の観点から、更に好ましくは950〜11000である。本明細書において、重量平均分子量(Mw)の値は、ゲルパーミエーションクロマトクラフ(GPC)法によって、テトラヒドロフラン又はトルエン等の溶離液を用いて測定される、標準ポリスチレンに換算された値を意味する。
当該重量平均分子量が950以上であると、樹脂組成物の粘度が低くなり過ぎず、基板上に塗布された樹脂組成物がだれることを防ぐことができる。また、厚膜の形成が容易である点、硬化収縮に起因する信頼性低下が起こりにくい点からも、重量平均分子量が950以上であることが好ましい。当該重量平均分子量が25000以下であると、樹脂組成物の粘度が高くなり過ぎないため、特に良好な塗工性が得られる。また、厚膜形成も容易である。
代表的なウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物としては、下式(1)〜(5)の化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
[式中、nは5〜20の整数を表す。]
上記化合物の市販品としては、一般式(1)で表される化合物として例えば、UN-952(官能基数:10、Mw:6500〜11000)が、一般式(2)で表される化合物として例えば、UN-904(官能基数:10、Mw:4900)が、一般式(4)で表される化合物として例えば、UN-905(官能基数:15、Mw:40000〜200000)が挙げられる。また、ウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物の市販品としては、ウレタン結合を有するアクリレート化合物(アクリロイルオキシ基を有する化合物)の市販品として、例えば、UN−333(官能基数:2、Mw:5000)、UN−1255(官能基数:2、Mw:8000)、UN−2600(官能基数:2、Mw:2500)、UN−6200(官能基数:2、Mw:6500)、UN−3320HA(官能基数:6、Mw:1500)、UN−3320HC(官能基数:6、Mw:1500)、UN−9000PEP(官能基数:2、Mw:5000)、UN−9200A(官能基数:2、Mw:15000)、UN−3320HS(官能基数:15、Mw:4900)、UN−6301(官能基数:2、Mw:33000)(以上はいずれも商品名、根上工業株式会社)、TMCH−5R(商品名、日立化成株式会社)、KRM8452(官能基数=10、Mw=1200)、EBECRYL8405(ウレタンアクリレート/1、6−ヘキサンジオールジアクリレート=80/20の付加反応物、官能基数=4、Mw=2700)(以上はいずれも商品名、ダイセル・サイテック株式会社)が挙げられる。
ウレタン結合を有するメタクリレート化合物(メタクリロイルオキシ基を有する化合物)としては、例えば、UN−6060PTM(官能基数:2、Mw:6000、商品名、根上工業株式会社製)、JTX−0309(商品名、日立化成株式会社)、UA−21(商品名、新中村化学工業株式会社)が挙げられる。
ウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物の含有量は、耐熱性を向上させる観点から、(A)成分の光重合性化合物の総量に対して、好ましくは10質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは50質量%以上である。この含有量が10質量%以上であると、塗工性、及び樹脂組成物の硬化物に要求される各種物性及び特性をより高いレベルで保持できる。
樹脂組成物の塗工性、及び樹脂組成物の硬化物に要求される物性及び特性を考慮して、後述の他の(メタ)アクリレート化合物を選択的に配合するために、ウレタン結合を有する(メタ)アクリレートの含有量は、好ましくは95質量%以下、より好ましくは85質量%以下、更に好ましくは75質量%以下である。
本実施形態に係る樹脂組成物は、アミド結合を有する(メタ)アクリレート化合物、多価アルコールにα、β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物、ビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物、グリシジル基含有化合物にα、β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物、及び、エチレン性不飽和基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種の光重合性化合物を含有していてもよい。中でもアミド結合を有する(メタ)アクリレート化合物は、解像度と密着性の向上に加え、インプリントプロセスの裕度が広がる点で好ましく用いることができる。
これらの中でも、アミド結合を有する(メタ)アクリレート化合物は、耐熱性、解像度及び密着性の向上に加え、インプリントプロセスの裕度が広がる点で好ましい。アミド結合を有する(メタ)アクリレート化合物としては、解像度と密着性の観点から、下記一般式(6)で表される化合物が好ましい。
式(6)中、R
31、R
32及びR
33は、それぞれ独立に2価の有機基を示し、R
34は、水素原子又はメチル基を示し、R
35及びR
36は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又はフェニル基を示す。
R31、R32又はR33としての2価の有機基は、例えば、置換基を有してもよいフェニレン基、置換基を有してもよいピリジレン基、炭素数1〜10の直鎖若しくは分岐アルキレン基、置換基を有してもよい脂環基を含む炭素数1〜10の基、又は、ビスフェノール(2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン等)から水酸基を除いて形成される基である。
上記一般式(6)で表される化合物は、例えば、2つのオキサゾリン基を有する化合物と2つのカルボキシ基を有する化合物及び/又は2つのフェノール性水酸基を有する化合物とを反応させて得ることができる。これにより、高弾性率且つ高耐熱性の樹脂硬化物が特に形成され易い。
式(6)で表される化合物を合成するために用いられるオキサゾリン基を含む化合物としては、例えば、下記一般式(7)で表されるビスオキサゾリンがある。式(7)中、R33、R35及びR36は、式(6)中のR33、R35及びR36と同義である。
式(7)で表されるビスオキサゾリンは、例えば、2,2’−(1,3−フェニレン)ビス−2−オキサゾリン、2,6−ビス(4−イソプロピル−2−オキサゾリン−2−イル)ピリジン、2,2’−イソプロピリデンビス(4−フェニル−2−オキサゾリン)、及び2,2’−イソプロピリデンビス(4−ターシャリーブチル−2−オキサゾリン)からなる群より選ばれる少なくとも1種である。
2つのフェノール性水酸基を有する化合物(ビスフェノール)は、例えば、ビフェノール、テトラメチルビフェノール、ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシメチルナフタレン、ジヒドロキシジメチルナフタレン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジメチルシラン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)ジメチルシラン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)ジメチルシラン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−クロロフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)エーテル、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−クロロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−フルオロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)フルオレン、及び9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)フルオレンからなる群より選ばれる少なくとも1種であってもよい。これらの中でも、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパンが好ましい。式(1)中のR31は、通常、これら2つのフェノール性水酸基を有する化合物から水酸基を除いた残基である。
オキサゾリン基を有する化合物とカルボキシ基を有する化合物及び/又はフェノール性水酸基を有する化合物との反応は、50〜200℃で行うことが好ましい。反応温度が50℃以上であれば、反応を効率良く進行させることができ、200℃以下であれば、副反応を十分に抑えることができる。必要に応じて、当該反応は、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等の極性有機溶剤中で行ってもよい。
多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物は、例えば、エチレン基の数が2〜14であるポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレン基の数が2〜14であるポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレン基の数が2〜14でありプロピレン基の数が2〜14であるポリエチレン・ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド(EO)変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド(PO)変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO及びPO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、及びジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種であってもよい。
ビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物は、例えば、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリブトキシ)フェニル)プロパン、及び2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシポリプロポキシ)フェニル)プロパンからなる群より選ばれる少なくとも1種であってもよい。
グリシジル基含有化合物にα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物は、例えば、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂及びサリチルアルデヒド型エポキシ樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種のエポキシ樹脂と、(メタ)アクリル酸と、を反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート化合物であってもよい。
エポキシ(メタ)アクリレート化合物の水酸基に、テトラヒドロフタル酸無水物等の酸無水物を反応させて得られる酸変性エポキシアクリレート化合物を光重合性化合物として用いることもできる。このような酸変性エポキシアクリレート化合物としては、例えば、下記一般式(8)で表されるEA−6340(新中村化学工業株式会社、商品名)が商業的に入手可能である。式(8)中、m及びnは0又は1以上の整数を示し、mとnとの比は100/0〜0/100である。
エチレン性不飽和基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体は、例えば、(メタ)アクリル酸メチルエステル、(メタ)アクリル酸エチルエステル、(メタ)アクリル酸ブチルエステル、及び(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルエステルからなる群より選ばれる少なくとも1種の(メタ)アルキル酸エステルをモノマー単位として含む。
(A)成分の光重合性化合物として用いられる(メタ)アクリレート化合物は、耐熱性及び密着性の向上の観点から、炭素−窒素結合を有することが好ましく、アミド結合及び/又はウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物がより好ましい。
架橋密度を高めて密着性を向上させる観点、インプリントプロセスの裕度が広がる点、及び耐熱性のバランスの観点から、樹脂組成物は、アミド結合を有する(メタ)アクリレート化合物及びウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物を含有することが好ましい。この場合、ウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物とアミド結合を有する(メタ)アクリレート化合物との割合(ウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物/アミド結合を有する(メタ)アクリレート化合物)は、好ましくは40/60〜90/10、より好ましくは50/50〜85/15、更に好ましくは60/40〜80/20である。
(B)光重合開始剤
本実施形態に係るインプリント用樹脂組成物は、光重合開始剤を含有してもよい。これにより、光照射により光重合性化合物を効率的に架橋して、樹脂層の粘弾性をインプリントプロセスに好適な範囲に容易に調整することができる。パターンを有する樹脂層と基板を加熱圧着により貼り合わせる場合に、またはインプリントプロセスの後に樹脂層を熱硬化させる場合に、加熱の条件によっては、樹脂が溶融しパターンがダレて変形する可能性があるが、樹脂組成物が光開始剤を含むことにより、パターニング後の光照射によって光重合性化合物の硬化を効率的に進めることができるため、熱硬化にともなうパターン形状の劣化(パターンのダレ)をより一層効果的に抑制することができる。
光重合開始剤は、活性光線により遊離ラジカルを生成する化合物であれば特に制限されず、例えば、アシルフォスフィンオキサイド、オキシムエステル、芳香族ケトン、キノン類、ベンゾインエーテル化合物、ベンジル誘導体、2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体、アクリジン誘導体、クマリン系化合物、N−フェニルグリシン、及びN−フェニルグリシン誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種であってもよい。これらの中でも、光硬化性の向上及び高感度化、硬化膜の透明性の観点から、アシルフォスフィンオキサイド及びオキシムエステルが好ましい。
アシルフォスフィンオキサイドはとしては、例えば、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド(市販品:「IRGACURE−819」、BASFジャパン株式会社)、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド(市販品、「LUCIRIN TPO」、BASFジャパン株式会社)が挙げられる。
オキシムエステルとしては、例えば、下記式(9)で示される1,2−オクタンジオン−1−[4−(フェニルチオ)フェニル−2−(O−ベンゾイルオキシム)(市販品:「IRGACURE−OXE01」、BASFジャパン株式会社)、1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]エタノン−1−(O−アセチルオキシム)(市販品:「IRGACURE−OXE02」、BASFジャパン株式会社)、及び1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−[o−(エトキシカルボニル)オキシム](市販品:「Quantacure−PDO」、日本化薬株式会社)からなる群より選ばれる少なくとも1種であってもよい。
芳香族ケトンは、例えば、ベンゾフェノン、N,N'−テトラメチル−4,4'−ジアミノベンゾフェノン(即ち、ミヒラーケトン)、N,N'−テトラエチル−4,4'−ジアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4'−ジメチルアミノベンゾフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(市販品:「IRGACURE−651」、BASF社製)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン(市販品:「IRGACURE−369」、BASF社製)、及び2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン(市販品:「IRGACURE−907」、BASF社製)からなる群より選ばれる少なくとも1種であってもよい。
キノン類は、例えば、2−エチルアントラキノン、フェナントレンキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、2,3−ベンズアントラキノン、2−フェニルアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−メチルアントラキノン、1,4−ナフトキノン、9,10−フェナントラキノン、2−メチル−1,4−ナフトキノン、及び2,3−ジメチルアントラキノンからなる群より選ばれる少なくとも1種であってもよい。
ベンゾインエーテル化合物は、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、及びベンゾインフェニルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1種であってもよい。
ベンジル誘導体は、例えば、ベンゾイン、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン等のベンゾイン化合物、及びベンジルジメチルケタールからなる群より選ばれる少なくとも1種であってもよい。
2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体は、例えば、2−(2−クロロフェニル)−1−〔2−(2−クロロフェニル)−4,5−ジフェニル−1,3−ジアゾール−2−イル〕−4,5−ジフェニルイミダゾール等の2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、及び2−(p−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体からなる群より選ばれる少なくとも1種であってもよい。
アクリジン誘導体は、例えば、9−フェニルアクリジン、及び1,7−ビス(9,9'−アクリジニル)ヘプタンからなる群より選ばれる少なくとも1種であってもよい。
クマリン系化合物は、例えば、7−アミノ−4−メチルクマリン、7−ジメチルアミノ−4−メチルクマリン、7−ジエチルアミノ−4−メチルクマリン、7−メチルアミノ−4−メチルクマリン、7−エチルアミノ−4−メチルクマリン、7−ジメチルアミノシクロペンタ[c]クマリン、7−アミノシクロペンタ[c]クマリン、7−ジエチルアミノシクロペンタ[c]クマリン、4,6−ジメチル−7−エチルアミノクマリン、4,6−ジエチル−7−エチルアミノクマリン、4,6−ジメチル−7−ジエチルアミノクマリン、4,6−ジメチル−7−ジメチルアミノクマリン、4,6−ジエチル−7−エチルアミノクマリン、4,6−ジエチル−7−ジメチルアミノクマリン、2,3,6,7,10,11−ヘキサンヒドロ−1H,5H−シクロペンタ[3,4][1]ベンゾピラノ−[6,7,8−ij]キノリジン12(9H)−オン、7−ジエチルアミノ−5',7'−ジメトキシ−3,3'−カルボニルビスクマリン、3,3'−カルボニルビス[7−(ジエチルアミノ)クマリン]、及び7−ジエチルアミノ−3−チエノキシルクマリンからなる群より選ばれる少なくとも1種であってもよい。
光重合開始剤の含有量は、(A)成分の光重合性化合物100質量部に対して、好ましくは0.1〜20質量部、より好ましくは0.5〜10質量部、更に好ましくは0.75〜5質量部である。当該含有量がこれら範囲内にあることにより、インプリント用樹脂組成物の感度と光硬化性が特に高められて、樹脂層の粘弾性の調整及び熱硬化時のパターン形状の保持がさらに容易となる。
(C)高分子化合物、熱硬化性樹脂
本実施形態に係る樹脂組成物は、高分子化合物及び熱硬化性樹脂から選ばれる、上記光重合性化合物とは異なる化合物(以下、場合により「耐熱性樹脂」という。)を更に含有していてもよい。これにより、硬化後の樹脂層に関して、耐熱性、熱伝導率、耐ヒートサイクル性及び鉛フリーの高温半田に対する実装信頼性が高いという効果が得られる。
耐熱性樹脂は、例えば、フェノール樹脂、ノボラック樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、フラン樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、アニリン樹脂、熱硬化型変性ポリフェニレンエーテル樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂、アリル樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、ケイ素樹脂、及びベンゾオキサジン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種であってもよい。なかでもエポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アリル樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、熱硬化型変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ケイ素樹脂、ベンゾオキサジン樹脂が好適である。エポキシ樹脂は、少なくとも1個のオキシラン環(エポキシ基)を有する有機化合物(熱硬化性樹脂)である。
耐熱性樹脂としての熱硬化性樹脂は、好ましくは硬化剤と組み合わせて用いられる。硬化剤は、例えば、ポリフェノール系硬化剤、ポリアミン系硬化剤、カルボン酸ヒドラジド、ジアミノマレオニトリル、ジシアンジアミド及びその誘導体、イミダゾール、ポリアミンのナイロン塩及びリン酸塩、並びにルイス酸及びそのアミン錯体からなる群より選ばれる少なくとも1種であってもよい。
耐熱性樹脂として用いられる高分子化合物は、ポリアミド酸又はポリアミド酸エステルであってもよい。ポリアミド酸又はポリアミド酸エステルは、例えば、下記一般式(10)で表される。
式(10)中、R1は四価の有機基を示し、R2は二価の有機基を示し、R3は水素原子又は一価の有機基を示し、同一分子中の複数のR3は同一でも異なっていてもよい。
R1は、特に制限されないが、低熱膨張性に優れる点から、例えば、ベンゼン、ビフェニル、ナフタレン、ベンゾフェノン、シクロブタン、シクロヘキサン、キサンテン又はチオキサンテンから水素原子を4個除いて形成される基であってもよい。R2は、例えば、ベンゼン、ビフェニル、ベンゾフェノン、又はシクロヘキサンから水素原子を2個除いて形成される基であってもよい。これらの骨格にメチル基、トリフルオロメチル基、フッ素原子及び水酸基などから選ばれる1種又は2種以上の置換基が置換していてもよい。
R3として一価の有機基は、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、フェニル基、ベンジル基等の炭素原子数が1〜10の脂肪族または芳香族炭化水素基、メトキシエチル基などの炭素原子数が2〜10のアルコキシアルキル基、及びこれらにフッ素原子が置換して形成される基からなる群より選ばれる少なくとも1種であってもよい。これらのうち、水素原子、エチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、ベンジル基が好ましい。
上記耐熱性樹脂として、加熱により閉環してポリベンゾオキサゾールを形成するポリベンゾオキサゾール前駆体であるポリヒドロキシアミドが、耐熱性、機械特性、電気特性に優れることから好ましい。このポリヒドロキシアミドは、例えば、下記一般式(11)で表される構成単位を有する。ヒドロキシ基を含有するアミドユニットは、最終的には、硬化時の脱水閉環により、耐熱性、機械特性、電気特性に優れるオキサゾール体に変換される。式(11)中、R11は4価の有機基を示し、R12は2価の有機基を示す。
式(11)で表される繰り返し単位を有するポリヒドロキシアミドは、例えば、ジカルボン酸化合物とヒドロキシ基を有するジアミン化合物とから合成できる。具体的には、ジカルボン酸化合物をジハライド化合物に変換した後、ジハライド化合物と前記ジアミン化合物との反応を行うことにより、式(11)で表される繰り返し単位を有するポリヒドロキシアミドを合成できる。ジハライド化合物としては、ジクロリド化合物が好ましい。
ジクロリド化合物は、ジカルボン酸化合物にハロゲン化剤を作用させて合成することができる。ハロゲン化剤としては、通常のカルボン酸の酸クロリド化反応に使用されるもの、例えば、塩化チオニル、塩化ホスホリル、オキシ塩化リン、五塩化リンなどが使用できる。
ジクロリド化合物の合成は、ジカルボン酸化合物とハロゲン化剤とを反応溶媒中で反応させる方法、過剰のハロゲン化剤中で反応を行った後、過剰分のハロゲン化剤を留去する方法により行うことができる。反応溶媒として、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチル−2−ピリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、トルエン、ベンゼン等が使用できる。ハロゲン化剤の量は、溶媒中で反応を行う場合、ジカルボン酸化合物1.0モルに対して、1.5〜3.0モルが好ましく、1.7〜2.5モルがより好ましい。ハロゲン化剤中で反応を行う場合、ハロゲン化剤の量は、カルボン酸化合物1.0モルに対して4.0〜50モルが好ましく、5.0〜20モルがより好ましい。反応温度は、−10〜70℃が好ましく、0〜20℃がより好ましい。
ジクロリド化合物とジアミンとの反応は、脱ハロゲン化水素剤の存在下、有機溶媒中で行うことが好ましい。脱ハロゲン化水素剤としては、通常、ピリジン、トリエチルアミン等の有機塩基が使用される。有機溶媒としは、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチル−2−ピリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等が使用できる。反応温度は、−10〜30℃が好ましく、0〜20℃がより好ましい。
式(6)において、R11で表される4価の有機基は、一般に、2個のアミノ基及2個のヒドロキシ基を有するジアミン化合物の残基である。ヒドロキシ基は、アミノ基のオルト位に位置していてもよい。R11は、芳香環を含む基であることが好ましい。R11の炭素原子数は6〜40が好ましい。R11は、好ましくは、芳香環を含む炭素原子数6〜40の4価の基である。ジアミン化合物において、アミノ基及びヒドロキシル基がいずれもR11中の芳香環に直接結合していることが好ましい。
上記ジアミン化合物は、例えば、3,3'−ジアミノ−4,4'−ジヒドロキシビフェニル、4,4'−ジアミノ−3,3'−ジヒドロキシビフェニル、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン及び2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンからなる群より選ばれる少なくとも1種であってもよい。
ポリヒドロキシアミドは、式(11)の構成単位に加えて、ヒドロキシル基を有しない構成単位を更に含んでいてもよい。すなわち、ポリヒドロキシアミドは、例えば、下記一般式(12)で表される重合体であってもよい。
式(12)中、R13は4価の有機基を示し、R12は2価の有機基を示す。j及びkは、モル分率を示し、j及びkの和は100モル%であり、好ましくは、jが60〜100モル%、kが40〜0モル%である。jが80〜100モル%、kが20〜0モル%であることがより好ましい。
式(12)において、R13で表される2価の有機基は、一般に、ジカルボン酸化合物と反応してポリアミド構造を形成する、ヒドロキシル基を有しないジアミン化合物の残基である。R13は、2価の芳香族基又は脂肪族基であることが好ましい。炭素原子数としては4〜40のものが好ましく、炭素原子数4〜40の2価の芳香族基がより好ましい。
ヒドロキシル基を有しない上記ジアミン化合物は、例えば、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル、4,4'−ジアミノジフェニルメタン、4,4'−ジアミノジフェニルスルホン、4,4'−ジアミノジフェニルスルフィド、ベンジシン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、1,5−ナフタレンジアミン、2,6−ナフタレンジアミン、ビス(4−アミノフェノキシフェニル)スルホン、ビス(3−アミノフェノキシフェニル)スルホン、ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル及び1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼンからなる群より選ばれる少なくとも1種の芳香族ジアミン化合物であってもよい。上記ジアミン化合物は、シリコーン基を有するジアミンであってもよい。シリコーン基を有するジアミンとしては、LP−7100、X−22−161AS、X−22−161A、X−22−161B、X−22−161CおよびX−22−161E(いずれも信越化学工業株式会社、商品名)等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。これらの化合物は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
式(11)及び(12)において、R12で表される2価の有機基は、一般に、ポリヒドロキシアミドを合成するために用いられたジカルボン酸化合物の残基である。R12は、芳香環を含む2価の基であることが好ましい。R12の炭素原子数は好ましくは6〜40である。R12は、芳香環を含む炭素原子数6〜40の2価の基であることがより好ましい。2個のカルボキシル基はいずれもR12中の芳香環に直接結合していることが好ましい。
上記ジカルボン酸化合物は、例えば、イソフタル酸、テレフタル酸、2,2−ビス(4−カルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、4,4'−ジカルボキシビフェニル、4,4'−ジカルボキシジフェニルエーテル、4,4'−ジカルボキシテトラフェニルシラン、ビス(4−カルボキシフェニル)スルホン、2,2−ビス(p−カルボキシフェニル)プロパン、5−tert−ブチルイソフタル酸、5−ブロモイソフタル酸、5−フルオロイソフタル酸、5−クロロイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、及び、1、2−シクロブタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸等の脂肪族ジカルボン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種であってもよい。
(D)その他の成分
インプリント用樹脂組成物は、必要に応じて、インプリント用樹脂組成物と基板との接着性を向上させるために、接着助剤を含有してもよい。接着助剤としては、例えば、γ−グリシドキシシラン、アミノシラン、γ−ウレイドシラン等のシランカップリング剤が挙げられる。接着助剤の含有量は、(A)成分の光重合性化合物100質量部に対して、好ましくは0.1〜10質量部、より好ましくは0.2〜5質量部、更に好ましくは0.5〜2質量部である。
また、上述のインプリント用樹脂組成物に、さらに熱ラジカル発生剤を添加することができる。熱ラジカル発生剤としては、例えば、t−ブチルクミルパーオキサイド(パーブチルC)、n−ブチル4,4−ジ−(t−ブチルパーオキシ)バレレート(パーヘキサV)、ジクミルパーオキサイド(パークミルD)、1,1−ジ−t−ヘキシルパーオキシシクロヘキサン(パーヘキサHC)などの過酸化物が挙げられる。上記熱ラジカル発生剤の含有量は、(A)成分100質量部に対して、0.1〜30質量部が好ましく、0.2〜20質量部がより好ましく、0.5〜10質量部がさらに好ましい。
仮基材等に塗布するときの作業性の観点から、インプリント用樹脂組成物に溶媒を加えて、樹脂組成物の溶液又は分散液を塗工液として調製してもよい。用いる溶媒は、特に制限されないが、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の極性溶媒、及び、γ−ブチロラクトンからなる群より選ばれる少なくとも1種であってもよい。塗工液におけるインプリント用樹脂組成物の濃度は、塗工液の質量を基準として、好ましくは20〜85質量%、より好ましくは30〜80質量%である。
本実施形態における電子部品は、上述の方法により形成されたパターンを有する樹脂層を備えてもよい。電子部品は、例えば、半導体装置、多層配線板、各種電子デバイス等であってもよい。尚、上記樹脂層は永久膜として用いられてもよい。
上記「永久膜」は、電子部品等の製造の過程で除去されることなく、完成品としての電子部品等を構成する膜である。永久膜の具体例としては、電子部品の表面保護膜及び層間絶縁膜、並びに、多層配線板の層間絶縁膜が挙げられる。本実施形態に係る電子部品は、本実施形態に係る方法により形成された永久膜を有していればよく、その構造等は特に制限されない。