JP6328047B2 - 静的微細化及び動的強化でモーダル構造体化された鋼のクラス - Google Patents

静的微細化及び動的強化でモーダル構造体化された鋼のクラス Download PDF

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Description

本出願は、2011年5月20日に出願された米国仮出願第61/488558号、2012年1月16日に出願された米国仮出願第61/586951号、及び2012年1月20日に出願された米国出願第13/354924の優先権を主張し、参照により本明細書に組み込まれる。
本出願は、冷却表面処理によるシート製造への用途の、新規のモーダル構造体化された鋼の合金を取り扱う。鋼の二つの新規のクラスが、強度及び延性の様々なレベルの達成を含んで提供される。開示されたメカニズムによって達成され得る、3つの新規の構造体タイプが確認されている。
鋼は、少なくとも3000年間、人類によって用いられてきており、工業用途における全ての金属合金の80重量%以上を含む工業で広く活用される。従来の鋼技術は、共析変態を制御することに基づく。第一の段階は、合金を単相領域(オーステナイト)へと加熱することであり、その後、しばしばフェライト、オーステナイト、及びセメンタイトの組み合わせである多相構造体を形成するために様々な冷却速度で鋼を冷却又は急冷する。鋼がどのように冷却されるかに応じて、多種多様な特徴的な微細構造(すなわち、パーライト、ベイナイト、マルテンサイト)が、広範囲の特性と共に得られ得る。共析変態のこの操作は、今日入手可能な多種多様な鋼を得られることになった。
現在、51の異なる合金鉄金属群で世界中に25000を超える等価物がある。シート形状で製造される鋼に関して、広い分類が、引張強度特性に基づいて用いられ得る。低強度鋼(LSS)は、270MPa未満の引張強度を示すものとして定義され得、IF(interstitial free)鋼、及び軟鋼等のタイプを含む。高強度鋼(HSS)は、270MPaから700MPaの引張強度を示す鋼として定義され得、高強度低合金鋼、高強度IF(interstitial free)鋼、及び焼付硬化鋼等のタイプを含む。高性能の高強度鋼(AHSS)鋼は、700MPaより大きい引張強度を有し得、マルテンサイト系鋼(MS)、二重相(DP)鋼、変態誘起塑性(TRIP)鋼、及び複雑な相(CP)鋼等のタイプを含む。強度レベルが上昇するにつれて、鋼の延性は一般的に減少する。例えば、LSS、HSS、及びAHSSは、それぞれ25%〜55%、10%〜45%、及び4%〜30%のレベルで引張伸びを示し得る。
本開示は、Feを53.5原子百分率から72.1原子百分率のレベルで、Crを10.0原子百分率から21.0原子百分率で、Niを2.8原子百分率から14.50原子百分率で、Bを4.00原子百分率から8.00原子百分率で、Siを4.00原子百分率から8.00原子百分率で含む金属合金の製造方法に関する。その後、これは合金を融解すること、並びに、500nmから20000nmの範囲におけるマトリックス粒子サイズ、及び25nmから500nmの範囲におけるホウ化物粒子サイズを提供するために固化させることが続き得る。その後、合金に機械的に応力を印加し得、及び/又は以下の粒子サイズ分布及び機械的特性プロファイルの内の少なくとも一つを形成するために加熱し得、ホウ化物粒子は、前記マトリックス粒子の肥大化に抵抗するピニング相を提供する:
(a)500nmから20000nmの範囲におけるマトリックス粒子サイズ、25nmから500nmの範囲におけるホウ化物粒子サイズ、1nmから200nmの範囲における析出粒子サイズであって、合金は300MPaから840MPaの降伏強度、630MPaから1100MPaの引張強度、及び10%から40%の引張伸びを示す、又は、
(b)100nmから2000nmの範囲におけるマトリックス粒子サイズ、及び25nmから500nmの範囲におけるホウ化物粒子サイズであって、300MPaから600MPaの降伏強度を有する。
また、本開示は、Feを53.5原子百分率から72.1原子百分率のレベルで、Crを10.0原子百分率から21.0原子百分率で、Niを2.8原子百分率から14.5原子百分率で、Bを4.0原子百分率から8.0原子百分率で、Siを4.0原子百分率から8.0原子百分率で含む金属合金の製造方法に関する。これは、合金を融解すること、並びに、フェライトを体積で10%から70%含む500nmから20000nmのマトリックス粒子サイズ、及び25nmから500nmの範囲におけるホウ化物粒子サイズを提供するために固化させることが続き得、ホウ化物粒子は、熱の印加時にマトリックス粒子の肥大化に抵抗するピニング相を提供し、合金は300MPaから600MPaの降伏強度を有する。その後、合金を加熱することが続き得、粒子サイズは100nmから2000nmの範囲であり、ホウ化物粒子サイズは25nmから500nmの範囲のままであり、フェライトのレベルは体積で20%から80%へと増加する。その後、300MPaから600MPaの降伏強度を超えるレベルまで合金に応力を加え得、粒子サイズは100nmから2000nmの範囲のままであり、ホウ化物粒子は25nmから500nmの範囲のままであり、1nmから200nmの範囲における析出粒子の形成を伴い、合金は720MPaから1580MPaの引張強度、及び5%から35%の伸びを有する。
また、本開示は、Feを53.5原子百分率から72.1原子百分率のレベルで、Crを10.0原子百分率から21.0原子百分率で、Niを2.8原子百分率から14.5原子百分率で、Bを4.0原子百分率から8.0原子百分率で、Siを4.0原子百分率から8.0原子百分率で含む金属合金に関する。合金は、500nmから20000nmの範囲におけるマトリックス粒子サイズ、25nmから500nmの範囲におけるホウ化物粒子サイズを示し、合金は以下の内の少なくとも一つを示す:
(a)機械的応力にさらされると、合金は、300MPaから840MPaの降伏強度、630MPaから1100MPaの引張強度、及び10%から40%の引張伸びを提供する機械的特性プロファイルを示す、又は
(b)熱にさらされ、機械的応力が続くと、合金は、300MPaから1300MPaの降伏強度、720MPaから1580MPaの引張強度、及び5.0%から35.0%の引張伸びを提供する機械的特性プロファイルを示す。
また、本開示は、Feを53.5原子百分率から72.1原子百分率のレベルで、Crを10.0原子百分率から21.0原子百分率で、Niを2.8原子百分率から14.5原子百分率で、Bを4.0原子百分率から8.0原子百分率で、Siを4.0原子百分率から8.0原子百分率で含む金属合金に関する。合金は、500nmから20000nmの範囲におけるマトリックス粒子サイズ、及び25nmから500nmの範囲におけるホウ化物粒子サイズを示し、合金は以下の内の少なくとも一つを示す:
(a)機械的応力にさらされると、合金は、300MPaから840MPaの降伏強度、630MPaから1100MPaの引張強度、10%から40%の引張伸び、500nmから20000nmの範囲におけるマトリックス粒子サイズ、25nmから500nmの範囲におけるホウ化物粒子サイズ、及び1.0nmから200nmの範囲における析出粒子サイズを提供する機械的特性プロファイルを示す、又は、
(b)熱にさらされ、機械的応力が続くと、合金は、300MPaから1300MPaの降伏強度、720MPaから1580MPaの引張強度、5%から35%の引張伸び、並びに、100nmから2000nmの範囲におけるマトリックス粒子サイズ、25nmから500nmの範囲におけるホウ化物粒子サイズ、及び1nmから200nmの範囲における析出粒子サイズを提供する機械的特性プロファイルを示す。
例示的な双ロールプロセスを示す。 例示的な薄スラブ鋳造プロセスを示す。 本明細書のクラス1鋼の形成に関する構造及びメカニズムを示す。 本明細書のクラス2鋼の形成に関する構造及びメカニズムを示す。[図3C]本明細書のクラス1鋼及びクラス2鋼の形成のための一般的スキームを示す。 モーダル相形成を含む材料の代表的な応力−歪み曲線を示す。 示された構造体、及び形成の関連したメカニズムに関する代表的な応力−歪み曲線を示す。 特定の条件下での合金19シートの写真を示す。 二重相(DP)鋼と比較した、示された鋼種の応力−歪み曲線の比較を示す。 複雑な相(CP)と比較した、示された鋼種の応力−歪み曲線の比較を示す。 変態誘起塑性(TRIP)鋼と比較した、示された鋼種の応力歪み曲線の比較を示す。 マルテンサイト(MS)鋼と比較した、示された鋼種の応力−歪み曲線の比較を示す。 合金2の本明細書でのモーダル構造体のSEM像を示す。 1000℃で1時間のHIP(熱間静水圧成形)サイクル後の、合金11の本明細書でのモーダル構造体のSEM像を示す。 1100℃で1時間のHIPサイクル後の、合金18の本明細書でのモーダル構造体のSEM像を示す。 1000℃で1時間のHIPサイクル、及び350℃で20分間のアニーリングの後の、合金1のモーダル構造体のSEM像を示す。 合金14における本明細書でのモーダル構造体のSEM像である。 鋳放し合金1シートの写真である。 形成の示された条件下での、合金1のSEM後方散乱電子顕微鏡写真である。 合金1シートに関するX線回折データである。 HIPが行われた条件における合金1シートに関するX線回折データである。 HIPが行われた条件における合金1シートに関するX線回折データである。 示された条件下での、合金1のTEM像である。 形成の示された条件下での、合金1の応力−歪みプロットである。 示された条件下での、合金1に関するX線データの比較である。 HIPが行われた条件における合金1からの、引張試験が行われたサンプルのゲージ部分に関するX線回折データである。 合金1シートからの、引張試験が行われたサンプルのゲージ部分における鉄系六方晶の相に関する計算されたX線回折パターンである。 示された条件下でHIPが行われた合金1シートのTEM像である。 示された条件下で、合金1シートからの引張試験が行われた試料片における、ゲージ部分の微細構造のTEM像である。 示された条件下で、合金1シートからの引張試験が行われた試料片における、ゲージ部分の微細構造のTEM像である。 鋳放し合金14シートの写真である。 示された条件下における合金14シートのSEM後方散乱電子顕微鏡写真である。 示された条件下での合金14シートに関するX線回折データ。 HIPが行われた条件における合金14に関するX線回折データ。 HIPが行われた条件における合金14に関するX線回折データ。 示された条件下での合金14シートのTEM像である。 示された条件下での合金14シートの応力−歪みプロットである。 示された条件下での合金14シートに関するX線データの比較である。 HIPが行われた条件における、合金14からの引張試験が行われたサンプルのゲージ部分からのX線回折データである。 HIPが行われた条件における合金14シートからの引張試験が行われたサンプルのゲージ部分における鉄系六方晶の相に関する計算されたX線回折パターンである。 示された条件下で、1000℃でHIPが行われた合金14シートのTEM像である。 示された条件下での、合金14の引張試験が行われたゲージ試料片のTEM像である。 鋳放し(as−case)合金19シートの写真である。 示された条件下での、合金19シートのSEM後方散乱電子顕微鏡写真である。 示された条件下での、合金19シートに関するX線回折データである。 HIPが行われた条件における合金19シートに関するX線回折データである。 HIPが行われた条件における合金19シートに関するX線回折データである。 示された条件下での、合金19シートのTEM電子顕微鏡像である。 示された条件下での、合金19シートの応力−歪みプロットである。 1100℃で1時間のHIPサイクル、且つ700℃で20分間の熱処理後の、合金19のシートに関するX線データ間の比較である。 示された条件下での、合金19からの引張試験が行われたサンプルのゲージ部分に関するX線回折のデータである。 示された条件下での、合金19からの引張試験が行われたサンプルのゲージ部分において見いだされた鉄系六方晶の相に関する計算されたX線回折パターンである。 示された条件下での、合金19のTEM像である。 示された条件下での、合金19の引張試験が行われたゲージ試料片のTEM像である。 示された条件下での、合金19の引張試験が行われたゲージ試料片のTEM像である。 (a)構造形成の異なるメカニズムによる合金シートの歪み硬化を示す。(b)図54aにおけるシートに関する引張特性を示す。 異なる歪み速度での合金1シートに関する応力−歪み曲線である。 異なる歪み速度での合金19に関する応力−歪み曲線である。 示された条件下での、合金19シートに関する応力−歪み曲線である。 (a)10%へ予歪みした後の、合金19シートに関する応力−歪み曲線である。(b)10%へ予歪み、及び、続く1150℃で1時間のアニーリングした後の合金19シートに関する応力−歪み曲線である。 示された条件下での、合金19に関する応力−歪み曲線である。 示された条件下での、合金19のサンプル形状を示す。 示された条件下での、合金19の引張試験片のゲージ部分の微細構造のSEM像である。 示された条件下での、合金19からの引張試験片のゲージ部分のSEM像である。 (a)最大荷重(load)で停止されたエリクセン試験後の、合金3のプレートの平面図である。(b)最大荷重で停止されたエリクセン試験後の、合金3のプレートの側面図である。 3つの異なる厚さでの合金1からの鋳放しシートの写真である。 示された選択された合金の応力−歪み曲線の実施例である。 試験合金47の延性のある融解紡糸されたリボンの応力−歪み曲線である。
以下の詳細な説明は、例示的な目的のために提供されるものであり、且つこの発明の任意の様態を制限するものとして考えられることはない添付図を参照することでより理解されるであろう。
鋼ストリップ/シートサイズ
冷却表面処理を通して、本出願で記載されるように、0.3mmから150mmの範囲における厚さを備える鋼板が、100mmから5000mmの範囲における幅及び鋳造厚さで製造されることが可能である。これらの厚さ範囲及び幅範囲は、0.1mm刻みまでの範囲に調整され得る。好ましくは、0.3mmから5mmの厚さで、且つ100mmから5000mmの幅でシート製造を提供可能な双ロール鋳造を用い得る。また、好ましくは、0.5mmから150mmの厚さで、且つ100mmから5000mmの厚さでシート製造を提供可能な薄スラブ鋳造を活用し得る。シートにおける冷却速度は、プロセスに応じることになり、11×10K/sから4×10−2K/sで変化し得る。また、150mmまでの厚さ、又は1mmから150mmの範囲における厚さを備える、様々な冷却表面方法を介した鋳造部分が、永久金型鋳造、インベストメント鋳造、ダイカスト等を含む様々な方法から、本明細書で予定される。また、従来のプレス及び焼結の何れかを介した、又は、HIP/鍛造を介した粉末治金は、本出願において記載される化学的性質、構造体及びメカニズムを活用する、部分的に又は完全に密な部分及びデバイスを作製するための予定路線である(すなわち、本明細書で記載されるクラス1鋼又はクラス2鋼)。
製造ルート
双ロール鋳造の説明
冷却表面処理による鋼製造の実施例の内の一つは、鋼板を製造するための双ロールプロセスであろう。Nucor/Castripプロセスの概略図は、図1に示される。示されるように、プロセスは、3つの段階に分解することができる。段階1−鋳造、段階2−熱間圧延、及び段階3−ストリップ巻き取り。段階1の間、一般的に銅又は銅合金から構成されるローラーの間のロール間隙において固化金属が一緒にされる際にシートが形成される。この段階での典型的な鋼の厚さは、1.7mmから1.8mmの厚さであるが、ロール分離距離を変更することによって0.8mmから3.0mmまでの厚さで変化可能である。段階2の間、製造されたままのシートは、細孔の形成、分散された収縮、気泡、ピンホール、スラグ含有物等のマクロ欠陥を製造工程から排除するだけでなく、重要な合金元素の溶解、オーステナイト化等を可能にする役割を果たす700℃から1200℃で典型的には熱間圧延される。熱間圧延されたシートの厚さは、目標とされた市場に応じて変化し得るが、一般的には0.3mmから2.0mmの厚さ範囲である。段階3の間、シートの温度、及び、典型的には300℃から700℃の温度での時間は、冷却水を加えること、及び巻き取り前にシートを伸ばす長さを変化させることで制御され得る。また、熱間圧延の他に、段階2は、熱間静水圧成形処理、鍛造、焼結等の代わりの熱機械的処理戦略によって実施され得る。また、段階3は、ストリップ巻き取りプロセスの間での熱的条件を制御することの他に、シートにおける最終的な微細構造を制御するための熱処理という後処理によって実施され得る。
薄スラブ鋳造の説明
冷却表面処理による鋼製造の他の一つの実施例は、鋼板を製造するための薄スラブ鋳造プロセスであろう。Arvedi ESPプロセスの概略図は、図2に示される。双ロールプロセスと類似の方法で、薄スラブ鋳造プロセスは、3つの段階に分けることができる。段階1では、溶鋼がほとんど同時の方法で、鋳造され、且つ伸ばされることの両方がされる。固化プロセスは、銅又は銅合金金型を介して液体溶融を押し進めることによって開始され、典型的には50mmから110mmの厚さで初期の厚さを製造するが、これは液体金属の加工可能性及び製造速度に基づいて変化し得る(すなわち、20mmから150mm)。金型を離れた後ほぼすぐに、及び鋼板の内部のコアがまだ液体である間に、シートは、最終的なシートの目的厚さに応じて10mmまで厚さを十分に減少させる多段階の圧延台を用いて減少を受ける。段階2では、鋼板は1つ又は2つの誘導炉を通り抜けることによって加熱され、この段階の間に温度プロファイル及び冶金構造は均質化される。段階3では、シートは、0.5mmから15mmの厚さ範囲であり得る最終ゲージの目的厚さまでさらに伸ばされる。伸ばされた直後に、ストリップは、鋼ロールへと巻き取る前に、シートの最終的な微細構造の発達を制御するために、伸ばすテーブルの上で冷却される。
双ロール鋳造又は薄スラブ鋳造のいずれかにおけるシート形成の3つの段階プロセスはプロセスの一部である一方で、これらの段階への本明細書の合金の反応は、本明細書で記載される構造体タイプ及びメカニズム、並びに結果として生じる今までにない特性の組み合わせに基づいて固有のものである。従って、本開示では、シートは、選択された厚さ及び幅の比較的平坦な形状へと形成された金属として理解され得、スラブは、シート材料へとさらに加工され得た金属の長さとして理解され得る。従って、シートは、比較的平坦な材料、又は巻き取られたストリップ(stip)として入手され得る。
クラス1鋼及びクラス2鋼
本明細書での合金は、好ましくは識別可能な結晶サイズ形態を備える結晶(非ガラス)である、クラス1鋼又はクラス2鋼と明細書で記載されるものを形成することが可能なものである。本明細書でのクラス1鋼又はクラス2鋼を形成する合金の能力は、本明細書で詳細に説明される。しかしながら、クラス1鋼及びクラス2鋼の一般的特徴の説明の考察をはじめにすることが役に立つので、これから以下に提供する。
クラス1鋼
本明細書でのクラス1鋼の形成は図3Aで説明される。そこで示されるように、モーダル構造体が最初に形成され、モーダル構造体は、合金の液体溶融から始まり、冷却によって固化させたことの結果であり、核生成、及び特定の粒子サイズを有する特定の相の成長を提供する。従って、本明細書でのモーダルへの言及は、少なくとも二つの粒子サイズ分布を有する構造体として理解され得る。本明細書での粒子サイズは、走査型電子顕微鏡又は透過型電子顕微鏡等の方法によって好ましくは識別可能な固有の特定の相の単結晶のサイズとして理解され得る。従って、クラス1鋼の構造体1は、示されるような実験室規模の手順、及び/又は双ロール処理又は薄スラブ鋳造等の冷却表面処理手順を含む工業的規模の方法のいずれかを介した処理によって好ましくは達成され得る。
従って、クラス1鋼のモーダル構造体は、融液から冷却されたとき、初めに以下の粒子サイズを示す。(1)オーステナイト及び/又はフェライトを含む500nmから20000nmのマトリックス粒子サイズ、(2)25nmから500nmのホウ化物粒子サイズ(すなわち、Mが金属であり、且つBと共有結合したMB等の非金属の粒子)。また、ホウ化物粒子は好ましくは、高温での肥大化に抵抗するピニング相によってマトリックス粒子が効果的に安定化されるであろうという特徴に関連する“ピニング”タイプ相であり得る。なお、金属のホウ化物粒子は、MB化学量論を示すものとして特定されるが、他の化学量論が可能であり、且つMB、MB(M)、M23、及びMを含むピニングを提供し得る。
クラス1鋼のモーダル構造体は、熱機械的変形によって、及び熱処理を介して変形し得、特性にいくらかの変動を生じさせることになるが、モーダル構造体は維持され得る。
上述のクラス1鋼が機械的応力にさらされるとき、観測される応力対歪みの図は図4に示される。従って、モーダル構造体が、クラス1鋼に関する第二タイプの構造体につながる動的ナノ相析出として特定されるものを受けることが観測される。従って、このような動的ナノ相析出は、合金が応力下での降伏を経験する際に引き起こされ、動的ナノ相析出を受けるクラス1鋼の降伏強度は好ましくは300MPaから840MPaで生じ得ることが見いだされた。従って、動的ナノ相析出は、このような示された降伏強度を超える機械的応力の適用によって生じるものと評価され得る。動的ナノ相析出それ自身は、関連した粒子サイズを備える析出相と呼ばれるクラス1鋼におけるさらなる識別可能な相の形成として理解され得る。すなわち、このような動的ナノ相析出の結果は、500nmから20000nmの識別可能なマトリックス粒子サイズ、25nmから500nmのホウ化物ピニング粒子サイズをいまだに示す合金の形成であり、六方晶の相及び1.0nmから200nmの粒子を含む析出粒子の形成を伴う。従って、上述のように、粒子サイズは、合金が応力をかけられた際に粗雑になることはないが、上述のように析出粒子の発達につながる。
六方晶の相の参照は、P63mc空間群(#186)を有するdihexagonal pyramidalクラス六方晶の相及び/又は六方晶のP6バー2C空間群(#190)を有するditrigonal dipyramidalクラスとして理解され得る。加えて、クラス1鋼のこのような第二タイプ構造体の機械的特性は、引張強度が630MPaから1100MPaの範囲に入り、10%から40%の伸びを備えることが観測される。さらに、クラス1鋼の第二タイプ構造体は、示された降伏を受けた後でほぼ平坦である、0.1から0.4の間の歪み硬化係数を示す。歪み硬化係数は、式σ=Kεにおけるnの値を指すものであり、σは材料に適用された応力を意味し、εは歪みであり、Kは強度係数である。歪み硬化指数nの値は、0と1との間にある。0の値は、合金が完全に塑性固体であることを意味し(すなわち、材料が、印加された力に対して非可逆な変化を受ける)、一方で1の値は100%弾性固体を意味する(すなわち、材料が、印加された力に対して可逆な変化を受ける)。
以下の表1は、本明細書でのクラス1鋼に関する比較及び性能の要約を提供する。
クラス2鋼
また、図3Bに示されるように、クラス2鋼は、特定される合金から本明細書では形成され得、クラス1鋼とは異なり、クラス1鋼の構造体タイプ#1で始まった後で二つの新たな構造体タイプを含み、静的ナノ相微細化、及び動的ナノ相強化として本明細書で特定される二つの新しいメカニズムが続く。クラス2鋼に関する新しい構造体タイプは、ナノモーダル構造体、及び高強度ナノモーダル構造体として本明細書で記載される。したがって、本明細書でのクラス2鋼は、以下のように特徴づけられ得る。構造体#1−モーダル構造体(段階#1)、メカニズム#1−静的ナノ相微細化(段階#2)、構造体#2−ナノモーダル構造体(段階#3)、メカニズム#2−動的ナノ相強化(段階#4)、及び構造体#3−高強度ナノモーダル構造体(段階#5)。クラス2鋼におけるモーダル構造体の形成を含む構造体#1は、上記クラス1鋼に関するものと同一であり、本明細書で開示されるような実験室規模の手順を介する、及び/又は双ロール処理又は薄スラブ鋳造等の冷却表面処理手順を含む工業的規模の方法のいずれかを介した処理によって、本出願において参照された化学的性質を備える合金において再び達成され得る。従って、本明細書で構造体1−クラス2鋼のモーダル構造体を参照することは、500nmから20000nmの範囲の粒子サイズを有すること、及び、(MB化学量論、又は、MB、MB(M)、M23、及びM等の他の化学量論も示すような金属ホウ化物粒子相であり、且つ上述のメカニズム1又は2によって影響されない)25nmから500nmの識別可能なホウ化物粒子サイズとして再び理解され得る。粒子サイズを参照することは、走査型電子顕微鏡又は透過型電子顕微鏡等の方法によって好ましくは識別可能な、固有の特定の相の単結晶のサイズとして再び理解される。さらに、本明細書でのクラス2鋼の構造体1は、このようなホウ化物相を備えるフェライト及び/又はオーステナイトを含む。加えて、クラス1鋼等の場合、ホウ化物相は好ましくはピニング相である。
図5では、代表的なクラス2鋼の変形挙動を受ける本明細書での合金を示す応力歪み曲線が示される。再び、モーダル構造体が好ましくはまず作製され(構造体#1)、生成された後、モーダル構造体は、構造体#2につながる、静的ナノ相微細化メカニズムであるメカニズム#1を介してこれから微細化され得る(すなわち、粒子サイズ分布が変化する)。静的ナノ相微細化は、最初は500nmから20000nmの範囲に入る構造体1のマトリックス粒子サイズが、典型的には100nmから2000nmの範囲に入るマトリックス粒子サイズを有する構造体2を提供するサイズへと減少するという特徴を参照する。なお、ホウ化物ピニング相は、大幅なサイズ変化をせず、そのため、熱処理間の肥大化に抵抗する。これらのホウ化物ピニングサイトの存在により、肥大化につながる粒子界面の挙動は、ツェナー(Zener)ピニング又はツェナードラッグと呼ばれるプロセスによって送らされると予期されるであろう。非金属のホウ化物相は、粒子又は相の界面で存在することによって低下される高い界面エネルギーを示すであろう。そのため、マトリックスの粒子成長は、総界面領域の減少によりエネルギー的に好ましいものであり得る一方、ホウ化物ピニング相の存在は、これらの相の高い界面エネルギーによる、肥大化のこの駆動力に対抗するであろう。また、構造体2は、引張試験の際に全く異なる挙動を示し、クラス1鋼よりも非常に高い強度を達成する可能性を有する。
クラス2鋼における静的ナノ相微細化メカニズムの特徴、500nmから20000nmの範囲に入るものと説明された、ミクロンスケールのオーステナイト相(γ−Fe)は、新しい相(たとえば、フェライト、又はα―Fe)に部分的に又は完全に変換される。クラス2鋼のモーダル構造体に最初に存在するフェライトの体積分率は、10%から70%である。静的ナノ相微細化の結果としての構造体2におけるフェライト(α―鉄)の体積分率は、典型的には20%から80%である。好ましくは、静的変態は高温熱処理の間に起こり、そのため、粒子微細化ではなく粒子肥大化が高温での従来の材料応答であるため、固有の微細化メカニズムを含む。従って、粒子肥大化は、静的ナノ相微細化メカニズムの間に、本明細書でのクラス2鋼の合金で生じない。構造体2は、動的ナノ相強化の間に構造体3へと固有に変換することが可能であり、結果として構造体3が形成され、720MPaから1580MPaの引張強度の範囲の値の引張強度と、5%から35%の総伸びとを示す。
上記をさらに詳細に説明すると、クラス2鋼を提供する本明細書での合金の場合、このような合金がそれらの降伏点を超えた際、一定の応力での塑性変形が生じ、構造体3の生成につながる動的相変態が続く。さらに具体的には、十分な歪みが引き起こされた後、応力対歪み曲線の傾きが変化し且つ上昇するところで変曲点が生じ(図5)、メカニズム#2の活性化を示す歪みを伴い強度が増加する(動的ナノ相強化)。また、歪み硬化係数における増加が、変形の最初に見られる。歪み硬化指数nの値は、クラス2鋼における構造体3に関して0.2から1.0の間に存在する。
動的ナノ相強化の間のさらなる歪みとともに、強度は増加を続け、しかしほとんど破綻まで歪み硬化係数の値における緩やかな減少を伴う。いくつかの歪み軟化は、ネック(necking)での局所的な断面積の減少により得る破壊点の近くで生じる。なお、応力下での材料歪みで生じる強化変態は一般的に、動的プロセスとしてのメカニズム#2を定義し、構造体#3につながる。動的によって、材料の降伏強度を超える応力の印加を介してプロセスが生じ得ることを意味する。構造体3を達成する合金を達成し得る引張特性は、720MPaから1580MPaの範囲における引張強度の値と、5%から35%の総伸びとを含む。また、達成される引張特性のレベルは、歪みがクラス2鋼に関する特徴的な応力歪み曲線に対応して増加する際に生じる変態の量に依存する。
そのため、変態のレベルに応じて、調節可能な降伏強度は、変形のレベルに応じて本明細書でのクラス2鋼においてこれから発達され得ることもあり、構造体3において降伏強度は最終的に300MPaから1300MPaまで変化し得る。すなわち、本明細書での合金の範疇の外側の従来の鋼は、比較的低いレベルの歪み硬化のみを示し、そのため、それらの降伏強度は、先の変形の履歴に応じて小さい範囲にわたってのみ変化し得る(たとえば100MPaから200MPa)。本明細書でのクラス2鋼において、降伏強度は、構造体2に印加される際に広い範囲(たとえば300MPaから600MPa)にわたって変化し得、様々な用途においてデザイナー及びエンドユーザーの両方に構造体3を達成することを可能する調整可能な変化を可能にし、車体構造における衝突マネジメント等の様々な用途において構造体3を活用させる。
図3Bで示されるこの動的なメカニズムに関して、1nmから200nmの識別可能な粒子サイズを示す新たな析出相が観測される。加えて、上記析出相において、P63mc空間群(#186)を有するdihexagonal pyramidalクラス六方晶の相、及び/又は六方晶のP6バー2C空間群(#190)を有するditrigonal dipyramidalクラスというさらなる識別がある。従って、動的変態は部分的に又は完全に生じ得、材料において比較的高強度を提供する新規なナノスケール/近ナノスケール相を伴う微細構造の形成をもたらす。すなわち、構造体#3は、25nmから500nmの範囲であるホウ化物によってピン止めされる一般的に100nmから2000nmのマトリックス粒子サイズを有し、且つ1nmから200nmの範囲である析出相を伴う微細構造として理解され得る。
なお、動的結晶化は、微細化メカニズムではなく肥大化メカニズムであるように、小さい粒子からの大きな粒子の形成を含むので、メカニズム#2とは異なる既存のプロセスである。従って、新しい変形されていない粒子は変形した粒子によって置換されるので、本明細書に存在するメカニズムと対照的に相変化は生じず、また、本明細書での強化メカニズムと対照的に強度における対応する減少をもたらす。なお、鋼における準安定のオーステナイトは、機械的応力下でマルテンサイトに変換することが知られているが、好ましくは、マルテンサイト又は体心立方体の鉄相に関する証拠は、本願明細書で記載される新しい鋼合金において見つけられていない。以下の表2は、本明細書でのクラス2鋼の性能特徴及び構造体の比較を提供する。
製造中のメカニズム
本明細書でのクラス1鋼又はクラス2鋼のいずれかにおけるモーダル構造体(MS)の形成は、製造工程の様々な段階で起こるように実施され得る。例えば、シートのMSは、上記で参照された双ロール又は薄スラブ鋳造シート製造工程のいずれかの段階1、2又は3の間に形成し得る。従って、MSの形成は、製造工程の間にシートがさらされる固化シーケンス及び熱サイクル(すなわち温度及び回数)に具体的には依存し得る。MSは好ましくは、上記のそれらの融点の範囲における、及び1100℃から2000℃の範囲における温度で本明細書での合金の加熱、且つ合金の融点未満の、好ましくは11×10K/sから4×10−2K/sの範囲における冷却に対応する冷却によって形成され得る。
本明細書でのクラス2鋼に関して、静的ナノ相微細化(SNR)であるメカニズム#1は、MSが形成された後、且つさらに高温にさらされる間に生じる。従って、静的ナノ相微細化は、上記で参照された双ロール又は薄スラブ鋳造シート製造工程のいずれかの(MS形成後の)段階1、2又は3の間にも生じ得る。静的ナノ相微細化が好ましくは、合金が700℃から1200℃の範囲における温度で加熱を受ける際に生じ得ることが観測されてきた。材料において生じるSNRのパーセントレベルは、固有の化学的性質、及び構造体#2として特定されるナノモーダル構造体(NMS)の体積分率を決定する、含まれる熱サイクルに依存し得る。しかしながら、好ましくは、NMSへと変換されるMSの体積によるパーセントレベルは、20%から90%の範囲である。
動的ナノ相強化(DNS)であるメカニズム#2は、上記で参照された双ロール又は薄スラブ鋳造シート製造工程のいずれかの(MS形成後の)段階1、2及び3の間にも生じ得る。従って、動的ナノ相強化は、静的ナノ相微細化を受けたクラス2鋼において生じ得る。従って、動的ナノ相強化は、シートの製造工程の間にも生じ得るが、降伏強度を超える応力の印加を含む後処理の任意の段階の間にも起こり得る。表6及び8は、熱処理がナノモーダル構造体の生成を引き起こしたために、動的ナノ相強化が生じている場合の引張測定に関する。生じるDNSの量は、変形前の材料における静的ナノ相微細化の体積分率に、及びシートにおいて引き起こされる応力レベルに応じ得る。また、強化は、続いて行われる熱い又は冷たいシートの形成を含む最終部分後処理の間に生じ得る。そのため、本明細書での構造体#3(上記表2を参照)は、シート製造における様々な処理段階で、又は後処理で生じ得、加えて、合金の化学的性質、変形パラメーター、及び熱サイクルに応じた異なる強化のレベルで生じ得る。好ましくは、DNSは以下の条件の範囲下において生じ得る。構造体タイプ#2を達成した後、300MPaから1300MPaの範囲における構造体の降伏強度を超える。
図3Cは、本明細書での合金に関する特定の化学組成で始まることと、液体まで加熱することと、冷却表面上で固化させることと、モーダル構造体を形成することとを一般的に示し、その後本明細書で説明されるようにクラス1鋼又はクラス2鋼のいずれかへと変換し得る。
実施例
好ましい合金の化学的性質及びサンプル作製
調査される合金の化学組成は、利用される好ましい原子比率を提供する表2において示される。これらの化学的物質は、圧力真空キャスター(PVC)におけるシート鋳造を介する材料加工のために用いられてきた。高純度元素(>99wt%)を用いて、目標とされた合金の35gの合金原料は、表2で提供された原子比率に従って検量された。原料材料はその後、アーク溶解システムの銅製炉床へと配された。原料は、シールドガスとして高純度アルゴンを用いて、インゴットへとアーク溶解された。インゴットは、均一性を確保するために、複数回回転され、且つ再融解された。混合した後、およそ幅12mm、長さ30mm、及び厚さ8mmの指状の物の形状に鋳造された。その後、結果としての指状の物は、PVCチャンバーに配され、RF誘導を用いて融解され、その後、厚さ1.8mmの3×4インチシートによって鋳造のために設計された銅金型上へと押し出される。
従って、本開示の広い文脈では、本明細書でのクラス1鋼又はクラス2鋼の形成に好ましくは適し得る合金の化学的性質は、原子比率が合計で100になる以下の元素を含む。すなわち、合金は、Fe,Cr,Ni,B,及びSiを含み得る。合金は任意に、V,Zr,C,W又はMnを含み得る。好ましくは、原子比率に関して、合金は、Feを53.5から72.1で、Crを10.0から21.0で、Niを2.8から14.50で、Bを4.00から8.00で、Siを4.00から8.00で、任意でVを1.0から3.0で、Zrを1.00で、Cを0.2から3.00で、Wを1.00で、又はMnを0.20から4.6で含み得る。従って、特定の元素のレベルは、上述のように、全部で100に調整され得る。
従って、存在するFeの原子比率は、53.5, 53.6, 53.7, 54.8, 53.9, 53.0 53.1, 53.2, 53.3, 53.4, 53.5, 53.6, 53.7, 53.8, 53.9, 54.0, 54.1, 54.2, 54.3, 54.4, 54.5, 54.6, 54.7, 54.8, 54.9, 55.0, 55.1, 55.2, 55.3, 55.4, 55.5, 55.6, 55.7, 55.8, 55.9, 56.0, 56.1, 56.2, 56.3, 56.4, 56.5, 56.6, 56.7, 56.8, 56.9 57.0, 57.1, 57.2, 57.3, 57.4, 57.5, 57.6, 57.7, 57.8, 57.9, 58.0, 58.1, 58.2, 58.3, 58.4, 58.5, 58.6, 58.7, 58.8, 58.9, 59.0, 59.1, 59.2, 59.3, 59.4, 59.5, 59.6, 59.7, 59.8, 60.0, 60.1, 60.2, 60.3, 60.4, 60.5, 60.6, 60.7, 60.8, 60.9 61.0, 61.1, 61.2, 61.3, 61.4, 61.5, 61.6, 61.7, 61.8, 61.9, 62.0, 62.1, 62.2, 62.3, 62.4, 62.5, 62.6, 62.7, 62.8, 62.9, 63.0, 63.1, 63.2, 63.3, 63.4, 63.5, 63.6, 63.7, 63.8, 63.9, 64.0, 64.1, 64.2, 64.3, 64.4, 64.5, 64.6, 64.7, 64.8, 64.9, 65.0, 65.1, 65.2, 65.3, 65.4, 65.5, 65.6, 65.7, 65.8, 65.9, 66.0, 66.1, 66.2, 66.3, 66.4, 66.5, 66.6, 66.7, 66.8, 66.9, 67.0, 67.1, 67.2, 67.3, 67.4, 67.5, 67.6, 67.7, 67.8, 67.9, 68.0, 68.1, 68.2, 68.3, 68.4, 68.5, 68.6, 68.7, 68.8, 68.9, 69.0, 70.0, 70.1, 70.2, 70.3, 70.4, 70.5, 70.6, 70.7, 70.8, 70.9, 71.0, 71.1, 71.2, 71.3, 71.4, 71.5, 71.6, 71.7, 71.8, 71.9, 72.0, 72.1であり得る。従って、Crの原子比率は、10.0, 10.1, 10.2, 10.3, 10.4, 10.5, 10.6, 10.7, 10.8, 10.9, 11.0, 11.1, 11.2, 11.3, 11.4, 11.5, 11.6, 11.7, 11.8, 11.9, 12.0, 12.1, 12.2, 12.3, 12.4, 12.5, 12.6, 12.7, 12.8, 12.9, 13.0, 13.1, 13.2, 13.3, 13.4, 13.5, 13.6, 13.7, 13.8, 13.9, 14.0, 14.1, 14.2, 14.3, 14.4, 14.5, 14.6, 14.7, 14.8, 14.9, 15.0, 15.1, 15.2, 15.3, 15.4, 15.5, 15.6, 15.7, 15.8, 15.9, 16.0, 16.1, 16.2, 16.3, 16.4, 16.5, 16.6, 16.7, 16.8, 16.9, 17.0, 17.1, 17.2, 17.3, 17.4, 17.5, 17.6, 17.7, 17.8, 17.9, 18.0, 18.1, 18.2, 18.3, 18.4, 18.5, 18.6, 18.7, 18.8, 18.9, 19.0, 19.1, 19.2, 19.3, 19.4, 19.5, 19.6, 19.7, 19.8, 19.9, 20.0, 20.1, 20.2, 20.3, 20.4, 20.5, 20.6, 20.7, 20.8, 20.9, 21.0であり得る。従って、Niの原子比率は、2.8, 2.9 3.0, 3.1, 3.2, 3.3, 3.4, 3.5, 3.6, 3.7, 3.8, 3.9, 4.0, 4.1, 4.2, 4.3, 4.4, 4.5, 4.6, 4.7, 4.8, 4.9, 5.0, 5.1, 5.2, 5.3, 5.4, 5.5, 5.6, 5.7, 5.8, 5.9, 6.0, 6.1, 6.2, 6.3, 6.4, 6.5, 6.6, 6.7, 6.8, 6.9, 7.0, 7.1, 7.2, 7.3, 7.4, 7.5, 7.6, 7.7, 7.8, 7.9, 8.0, 8.1, 8.2, 8.3, 8.4, 8.5, 8.6, 8.7, 8.8, 8.9, 9.0, 9.1, 9.2, 9.3, 9.4, 9.5, 9.6, 9.7, 9.8, 9.9 10.0, 10.1, 10.2, 10.3, 10.4, 10.5, 10.6, 10.7, 10.8, 10.9, 11.0, 11.1, 11.2, 11.3, 11.4, 11.5, 11.6, 11.7, 11.8, 11.9, 12.0, 12.1, 12.2, 12.3, 12.4, 12.5, 12.6, 12.7, 12.8, 12.9, 13.0, 13.1, 13.2, 13.3, 13.4, 13.5, 13.6, 13.7, 13.8, 13.9, 14.0, 14.1, 14.2, 14.3, 14.4, 14.50であり得る。従って、Bの原子比率は、4.0, 4.1, 4.2, 4.3, 4.4, 4.5, 4.6, 4.7, 4.8, 4.9, 5.0, 5.1, 5.2, 5.3, 5.4, 5.5, 5.6, 5.7, 5.8, 5.9, 6.0, 6.1, 6.2, 6.3, 6.4, 6.5, 6.6, 6.7, 6.8, 6.9, 7.0, 7.1, 7.2, 7.3, 7.4, 7.5, 7.6, 7.7, 7.8, 7.9, 8.0であり得る。従って、Siの原子比率は、4.0, 4.1, 4.2, 4.3, 4.4, 4.5, 4.6, 4.7, 4.8, 4.9, 5.0, 5.1, 5.2, 5.3, 5.4, 5.5, 5.6, 5.7, 5.8, 5.9, 6.0, 6.1, 6.2, 6.3, 6.4, 6.5, 6.6, 6.7, 6.8, 6.9, 7.0, 7.1, 7.2, 7.3, 7.4, 7.5, 7.6, 7.7, 7.8, 7.9, 8.0であり得る。従って、Siの原子比率は、4.0, 5.0, 6.0, 7.0, 8.0であり得る。従って、V等の任意の元素の原子比率は、1.0, 1.1, 1.2, 1.3, 1.4, 1.5, 1.6, 1.7, 1.8, 1.9, 2.0, 2.1, 2.2, 2.3, 2.4, 2.5, 2.6, 2.7, 2.8, 2.9, 3.0であり得る。従って、Cの原子比率は、0.2, 0.3, 0.4, 0.5, 0.6, 0.7, 0.8, 0.9, 1.0, 1.1, 1.2, 1.3, 1.4, 1.5, 1.6, 1.7, 1.8, 1.9, 2.0, 2.1, 2.2, 2.3, 2.4, 2.5, 2.6, 2.7, 2.8. 2.9, 3.0であり得る。従って、Wの原子比率は、1.0であり得る。従って、Mnの原子比率は、0.20, 0.3, 0.4, 0.5, 0.6, 0.7, 0.8, 0.9 1.0, 1.1, 1.2, 1.3, 1.4, 1.5, 1.6, 1.7, 1.8, 1.9, 2.0, 2.1, 2.2, 2.3, 2.4, 2.5, 2.6, 2.7, 2.8, 2.9, 3.0, 3.1, 3.2, 3.3, 3.4, 3.5, 3.6, 3.7,3.8, 3.9, 4.0, 4.1, 4.2, 4.3, 4.4, 4.5, 4.6であり得る。
また、本明細書での合金は、(50.00原子百分率以上の)Fe系合金としてより広く説明され得、B及びSiを4.00原子百分率から8.00原子百分率のレベルで含み、示された構造体(クラス1鋼及び/又はクラス2鋼)を形成すること可能であり、及び/又は、機械的応力及び/又は熱処理の存在する際の機械的応力にさらされて示された変態を受ける。このような合金は、引張強度及び引張伸び特性に関して特定される構造体を達成する機械的特性によってさらに定義され得る。
合金特性
熱分析は、NETZSCH DSC 404F3 PEGASUS V5システム上で、固化されたままの鋳造シートサンプル上で実施された。示差熱分析(DTA)及び示差走査熱量分析(DSC)は、超高純度アルゴンの流れを用いることを介して酸化を防止されたサンプルと共に、10℃/分の加熱速度で実施された。表3では、高温DTAの結果が示され、合金に関する融解挙動を示している。表3の集計結果からわかるように、融解は、合金の化学的性質に応じて1184℃から観測される初期の融解を伴って段階1から3において生じる。最終的な融解温度は、1340℃までである。また、融解挙動における変動は、それらの化学的性質に応じた合金の冷却表面処理での複雑な相形成を反映し得る。
合金の密度は、空気と蒸留水との両方の重さを測ることが可能な特別に構成されたはかりで、アルキメデス法を用いてインゴットをアーク溶解して測定された。合金それぞれの密度は、表4に示されており、7.53g/cmから7.77g/cmまで変化することが見出された。実験結果は、この技術の正確性が±0.01g/cmであることを明らかにした。
引張試験片は、ワイヤー放電加工機(EDM)を用いてシートから切られた。引張特性は、インストロンのブルーヒル(Bluehill)制御装置及び分析ソフトウェアを利用して、インストロン機械的試験フレーム(モデル3369)に基づいて測定された。全ての試験は、リッジされて(ridged)固定された下部治具及び動く上部治具を備えた変位制御装置において室温で実施された。ロードセルは上部治具に取り付けられる。表5において、全ての引張歪み、降伏応力、最大の引張強度、弾性率、及び歪み硬化指数値を含む引張試験結果の要約は、鋳放しシートに関して示される。機械的特性値は、本明細書で説明されるであろう、合金の化学的性質及び処理条件に依存する。分かるように、最大の引張強度値は、590MPaから1290MPaまで変化する。引張伸びは、0.79から11.27まで変化する。弾性率は、127GPaから283GPaまでの範囲で測定される。歪み硬化係数は、0.13から0.44までの範囲で計算された。
熱機械的処理後の合金特性
各合金からの各シートは、モリブデン炉を備え、且つ直径4インチ、高さ5インチのサイズの炉チャンバーを備えたAmerican Isostatic Press Model 645マシンを用いて、熱間静水圧成形(HIP)を受けた。シートは、目標温度に到達するまで10℃/分で加熱され、これらの調査のために1時間保持された特定の時間に関してガス圧にさらされた。HIPサイクルパラメーターは表6に記載される。HIPサイクルの好ましい様態は、双ロール鋳造プロセスの段階2での、又は、薄スラブ鋳造プロセスの段階1若しくは段階2での熱間圧延を真似ることで、細孔(0.5μmから100μm)及び小さな含有物(0.5μmから100μm)等のマクロ欠陥を除去することであった。HIP前後の実施例のシートは、図6に示される。それから分かるように、熱機械的変形プロセスであるHIPサイクルは、内部及び外部マクロ欠陥のある一部を除去することが可能であり、シート表面を滑らかにする。
引張試験片は、ワイヤー放電加工機(EDM)を用いてHIPした後のシートから切られた。引張特性は、インストロンのブルーヒル制御装置及び分析ソフトウェアを用いて、インストロン機械的試験フレーム(モデル3369)に基づいて測定された。全ての試験は、リッジされて固定された下部治具、及び上部治具に取り付けられたロードセルと共に動く上部治具を備えた変位制御装置において室温で実施された。表7において、総引張歪み、降伏応力、最大の引張強度、弾性率、及び歪み硬化指数値を含む引張試験結果の要約が、HIPサイクル後の鋳造シートに関して示される。機械的特性値は、合金の化学的性質及びHIPサイクルパラメーターに強く依存する。分かるように、最大の引張強度値は、630MPaから1440MPaまで変化する。引張伸び値は、1.11から24.41まで変化する。弾性率は、121GPaから230GPaまでの範囲で測定された。歪み硬化係数は、降伏強度から引張強度まで計算され、その結果、合金の化学的性質、構造形成、及び異なる熱処理に応じて、0.13から0.99まで変動する。
HIPが行われ、且つ熱処理されたシートのシート特性
HIPした後、シート材料は、表8において特定されたパラメーターで箱型炉において熱処理された。HIPサイクル後の熱処理の好ましい様態は、双ロール鋳造プロセスの段階3を、及び薄スラブ鋳造プロセスの段階3も真似ることによって合金の熱安定性及び特性変化を推定することである。
引張試験片は、HIPサイクル及びワイヤー放電加工機(EDM)を用いた熱処理の後でシートから切られた。引張特性は、インストロンのブルーヒル制御装置及び分析ソフトウェアを用いて、インストロン機械的試験フレーム(モデル3369)に基づいて測定された。全ての試験は、リッジされて固定された下部治具及び動く上部治具を備えた変位制御装置において室温で実施され、ロードセルは上部治具に取り付けられる。表9では、引張伸び、降伏応力、最大の引張強度、弾性率、及び歪み硬化指数値を含む引張試験結果の要約が、HIPサイクル及び熱処理後の鋳造シートに関して示される。分かるように、引張強度値は、530MPaから1580MPaまで変化する。引張伸びは、0.71%から30.24%まで変化し、合金の化学的性質、HIPサイクル、及び好ましくはシートにおける微細構造形成を決定する熱処理パラメーターに依存することが観測された。なお、延性が50%までさらに増加することが、欠陥、特にこれらのシートの一部において細孔として存在する鋳造欠陥をさらに除去するための処理の最適化に基づいて予想されるであろう。弾性率は、104GPaから267GPaまでの範囲で測定された。機械的特性値は、合金の化学的性質、HIPサイクルパラメーター、及び熱処理パラメーターに強く依存する。歪み硬化係数は、降伏強度から引張強度まで計算され、その結果、合金の化学的性質、構造形成、及び異なる熱処理に応じて0.11から0.99まで変動する。
比較例
事例#1:既存の鋼種との引張特性比較
選択された合金の引張特性は、既存の鋼種の引張特性と比較された。選択された合金、及び対応する処理パラメーターは、表10に記載される。引張応力−歪み曲線は、既存の二重相(DP)鋼(図7)、複雑な相(CP)鋼(図8)、変態誘起塑性(TRIP)鋼(図9)、及びマルテンサイト(MS)鋼(図10)のそれと比較される。二重相の鋼は、アイランド形状の固いマルテンサイトの第二の相を含むフェライトマトリックスから成る鋼種として理解され得、複雑な相の鋼は、少量のマルテンサイト、残留オーステナイト、及びパーライトを含む、ベイナイトとフェライトとから成るマトリックスから成る鋼種として理解され得、変態誘起塑性鋼は、固いベイナイト及びマルテンサイトの第二の相をさらに含むフェライトマトリックスに埋め込まれたオーステナイトから成る鋼種として理解され得、マルテンサイト系鋼は、少量のフェライト及び/又はベイナイトを含み得るマルテンサイトマトリックスから成る鋼種として理解され得る。それから分かるように、本開示で主張される合金は、既存の高性能の高強度(AHSS)鋼種と比較して優れた特性を有する。
事例#2:モーダル構造体
HIPサイクル後の、及びさらなる熱処理を伴うHIPサイクル後の、鋳放し状態における、表2において特定された化学組成を備える選択された合金からのシートの微細構造は、Carl Zeiss SMT Incによって製造されたEVO−MA10走査型電子顕微鏡を用いて、走査型電子顕微鏡法(SEM)によって調べられた。選択された合金のモーダル構造体(構造体#1)及びナノモーダル構造体(構造体#2)の実施例は、図11から図15に示される。それから分かるように、モーダル構造体は、鋳放し状態における合金において形成され得る(図11)。ナノモーダル構造体を製造するために、HIPサイクル(図12及び図13)及び/又は追加の熱処理を伴うHIPサイクル(図14及び図15)等の追加の熱機械的処理が、必要とされ得る。熱間圧延、鋳造、熱間鍛造等の他のタイプの熱機械的処理は、本明細書において記載された、参照された化学的性質を備える合金におけるナノモーダル構造体形成に関しても効果的であり得る。シート材料におけるモーダル構造体の形成は、中強度での高い延性を達成する第一段階であり(クラス1鋼)、一方、ナノモーダル構造体を達成することは、クラス2鋼を可能にする。
事例#3:合金1における構造発達
表2における合金の化学量論によると、合金1は、高純度元素の分量から検量された。中強度での高い塑性の延性を備えるクラス1の挙動を合金1が明らかにしたことに注意すべきである。結果的な分量は、4つの35グラムインゴットへとアーク溶解され、回転され、均一性を確保するために複数回再融解された。その後、結果として得られるインゴットは、再融解され、同一の処理条件下で、65mm、75mm、厚さ1.8mmの公称寸法を備える3つのシートに鋳造された。厚さ1.8mmの合金1のシートのうちの一つの実施例の写真が、図16に示される。その後、シートの内の二つは、1000℃で1時間、HIPが行われた。HIPが行われたシートの内の一つは、その後続いて350℃で20分間熱処理をされた。鋳放しされた、HIPが行われた、及びHIPが行われ/熱処理されたものを含むシートはその後、引張試験、SEM電子顕微鏡検査、TEM電子顕微鏡検査、及びX線回折を含む様々な検査のためのサンプルを製造するために、ワイヤーEDMを用いて分割された。
合金1のシートから切り出されたサンプルは、走査型電子顕微鏡(SEM)分析のための滑らかなサンプルを確保するために、0.02μm粗さ(grit)までステージにおいて金属組織的に研磨された。SEMは、最大動作電圧30kVを備えるZeiss EVO−MA10モデルを用いて行われた。鋳放された、HIPが行われた、及びHIPが行われ且つ熱処理された条件における合金1のシートサンプルの、SEM後方散乱電子顕微鏡写真例が、図17に示される。
示されるように、合金1のシートの微細構造は、3つ全ての条件においてモーダル構造体を示す。鋳放しされたサンプルでは、3つの領域が容易に特定され得る(図17a)。サイズが5μmから10μmの個別の粒子の形態におけるマトリックス相は、図17aにおいて#3によってマークされる。これらの粒子は、粒間領域によって離隔される(図17aにおける#2)。追加の孤立した析出物は、図17aにおいて#1によってマークされる。黒い相の析出物(#1)は、エネルギー分散分光法(EDS)によって、Siを多く含む相として特定されることを表す。
粒間領域(#2)は明らかに、マトリックス粒子#3と比較して(B、Si等の)軽い元素をより高い濃度で含む。HIPサイクルの後、粒間領域(#2)において著しい変化が生じる。典型的には500nm未満のサイズである、多数の微細な析出物が、この領域において形成する(図17b)。これらの析出物は、粒間領域#2において主に分散し、一方でマトリックス粒子#3及び析出物#1は、形態及びサイズに関して明らかな変化を示さない。熱処理後、HIPサイクル後と同様の微細構造が現れるが、追加のより微細な析出物が形成される(図17c)。
合金1のシート構造体のさらなる詳細は、X線回折によって明らかにされる。X線回折は、CuのKαX線管を備えるパナリティカル製X’Pert MPD回折計を用いて行われ、40mAのフィラメント電流によって40kVで動作された。スキャンは、装置のゼロ角度シフトに関して調節するために組み込まれたシリコンを備え、25°から95°2θまで、0.01°のステップサイズで実施された。その後、結果としてのスキャンは続いて、Siroquantソフトウェアを用いたリートベルト解析を用いて分析された。図18から図20では、X線回折スキャンパターンが、鋳放しされた、HIPが行われた、及びHIPが行われた/熱処理された条件それぞれにおける合金1のシートに関する、測定された/実験的なパターン、及びリートベルトの緻密なパターンを含んで示される。分かるように、実験データの良いフィットが全ての場合において得られた。見出された固有の相、それらの空間群、及び格子定数を含むX線パターンの分析は、表11に示される。空間群が、結晶の対称性の説明を表し、且つ230タイプの内の一つを有し得、その対応するヘルマン・モーガン空間群記号でさらに特定されることを留意すべきである。全ての場合において、二つの相、立方晶系のγ―Fe(オーステナイト)及び、MB化学量論で遷移金属、ホウ化物相が混ざった複合体が見出された。SEM電子顕微鏡検査の調査から第三の相が存在するように見える一方、この相はX線回折スキャンによって特定されておらず、粒間領域が二つの特定された相の微細な混合物によって表され得ることを示していることを留意すべきである。また、特定された相の格子定数は純粋な相に関して見出される格子定数と異なっており、合金化元素による溶解(dissolution)の効果を明らかに示していることを留意すべきである。例えば、純粋な相としてのγ―Feは、a=3.575Åと等しい格子定数を示し、FeBの純粋な相はa=5.099Å及びc=4.240Åに等しい格子定数を示すであろう。MB相における格子定数の著しい変化に基づいて、シリコンもこの構造体に溶解する可能性が高く、そのためそれは純粋なホウ化物相ではないいことを留意すべきである。加えて、表11から分かるように、相が変化しない一方で、格子定数が、合金化元素の再分配が生じていることを示す、シートの条件の(すなわち、鋳造されて、HIPが行われた、HIPが行われた且つ熱処理された)関数として変化する。
より詳細に合金1のシートの構造の詳細を調査するために、高分解能透過型電子顕微鏡(TEM)が利用された。TEM試料片を準備するために、サンプルは、鋳放しされた、HIPが行われた、及びHIPが行われた/熱処理されたシートから切られた。その後、サンプルは砕かれ、且つ厚さ30μmから40μmへと研磨された。直径3mmのディスクがこれらの薄いサンプルから打ち抜かれ、最終的な薄化は、メタノールベースにおける30%のHNOを用いたツインジェット電解研磨によって行われた。作製された試料片は、200kVで動作するJEOL JEM−2100 HR分析用透過型電子顕微鏡(TEM)において調査された。
図21において、合金1のシートのサンプルのTEM像は、a)鋳放しされた、b)1000℃で1時間HIPが行われた、及びc)1000℃で1時間HIPが行われ、続いて350℃で20分間熱処理が行われたものそれぞれに関して示される。鋳放しサンプルにおいて、マトリックス粒子は、図17aにおけるSEM観測と一致する、5μmから10μmのサイズの範囲である(図21a)。加えて、ラメラ構造が、マトリックス粒子を離隔する粒間領域において明らかになった。ラメラ構造は、図17aにおける領域#2に対応する。ラメラ間隔は典型的には〜200nmであり、SEM分解能の限界を超えており、図17aにおいて見られない。HIPサイクルの後、ラメラ構造は、鋳放しサンプルにおいて同一のサイズを維持するマトリックス粒子間の領域において分布した、500nm未満のサイズの孤立した析出物に再編成される(図21b)。ラメラと異なり、析出物は不連続であり、HIPサイクルによって著しい微細構造変化が引き起こされたことを示している。熱処理は、微細構造における大きな変化を引き起こさないが、複数のより微細な析出物がTEMによって特定され得る(図21c)。上述されたように、合金1は本明細書ではクラス1鋼として振る舞い、静的ナノ相微細化又は動的ナノ相強化は観測されない。
事例#4:合金1における引張特性及び構造変化
本出願において製造された鋼板の引張特性は、固有の構造及びシートが経験する固有の処理条件に敏感であろう。図22において、クラス1鋼の代表である合金1のシートの引張特性は、鋳放しされた、HIPが行われた(1000℃で1時間)、及びHIPが行われた(1000℃で1時間)/熱処理された(350℃で20分間)条件において示される。分かるように、鋳放しシートは、HIPが行われた、及びHIPが行われた/熱処理されたサンプルに比べて比較的低い延性を示す。この延性の増加は、HIPが行われたシートにおけるマクロ欠陥の減少、及び、事例#3において前述されたように、HIPが行われた又はHIPが行われた/熱処理されたシートのモーダル構造体において生じる微細構造変化の両方によるものであり得る。加えて、引張試験の間における応力の印加の間に、構造変化が生じていることを示すであろう。
1000℃で1時間HIPが行われ、且つ350℃で20分間熱処理された合金1のシートに関して、構造の詳細が、変形されていないシートのサンプル上で、及び変形した引張試験片のゲージ部分の上の両方で行われたX線回折を用いることを介して得られた。X線回折は具体的にはCuのKαX線管を備えるパナリティカル製X’Pert MPD回折計を用いて行われ、40mAのフィラメント電流によって40kVで動作された。スキャンは、装置のゼロ角度シフトに関して調節するために組み込まれたシリコンを備え、25°から95°2θまで、0.01°のステップサイズで実施された。図23において、X線回折パターンが、変形されていないシート、及びシートから切られ引張試験が行われたサンプルのゲージ部分の両方において、1000℃で1時間HIPが行われ、且つ350℃で20分間熱処理された合金1のシートに関して示される。容易に分かるように、X線パターンにおける新しいピークによって示されるように、新しい相形成を伴う変形の間に生じている著しい構造変化がある。ピークシフトは、合金化元素の再分配が、両方のサンプルにおいて存在する相の間で生じていることを示す。
変形した合金1の引張試験が行われた(HIPが行われた(1000℃で1時間)/350℃で20分間熱処理された)試料片に関するX線パターンは、続いてSiroquantソフトウェアを用いたリートベルト解析を用いて分析された。図24に示されるように、測定されたパターンと計算されたパターンとでほぼ一致することが見出された。表12では、引張変形の前後での、合金1のシートにおいて特定された相が比較された。分かるように、格子定数が変化して、この相に溶けた溶質元素の量が変化したことを示しているが、γ―Fe及びMB相は、引張試験の前後でのシートに存在する。さらに、表12に示されるように、変形後に、二つの新しいこれまで知られていない六方晶の相が特定された。一つの新しく特定された六方晶の相は、dihexagonal pyramidalクラスの代表的なものであり、六方晶のP63mc空間群(#186)を有し、記載された回折面を備える計算された回折パターンが図25aに示される。他の六方晶の相は、ditrigonal dipyramidalクラスの代表的なものであり、六方晶のP6バー2C空間群(#190)を有し、記載された回折面を備える計算された回折パターンが図25bに示される。この相は、シリコン系相、もしかするとこれまで知られていないSi−B相である可能性が高いことが、小さな結晶ユニットセルサイズに基づいて理論化されている。図25において、主要な格子面は、著しいブラッグ回折ピークに対応して特定されることを留意すべきである。
引張試験の間に生じている構造変化に注目するために、1000℃で1時間HIPが行われ、且つ350℃で20分間熱処理された合金1のシートは、変形前後で調査された。TEM試料片は、変形されていない、HIPが行われ、且つ熱処理されたシートから、及び同じシートから切られたサンプルのゲージ部分から作製され、破綻するまで張力で試験された。TEM試料片は、まずは機械的破砕/研磨、その後電解研磨によって、シートから作製された。変形した引張試験片のTEM試料片は、ゲージ部分から直接切られ、その後、変形されていないシート試料片と類似の方法で作製された。これらの試料片は、200kVで動作されるJEOL JEM−2100 HR分析用透過型電子顕微鏡において調査された。
図26では、変形されていないシートにおける、及び引張試験後のゲージ部分における微細構造のTEM像が示される。変形されていないサンプルでは、マトリックス粒子は非常にきれいであり、HIPサイクル中に高温にさらされたことによる転位等の欠陥がないが、粒間領域における析出物が明らかに見られる(図26a)。引張試験後、高密度の転位がマトリックス粒子において観測された。また、多数の転位が、粒間領域における析出物によってピン止めされた。さらに、複数の非常に微細な析出物が、図26bに示されるように、引張試験後のマトリックス粒子間に現れる(すなわち動的ナノ相形成)。これらの非常に微細な析出物は、X線回折によって特定される新しい六方晶の、及び面心立方タイプの相に相当し得る(続いてのセクションを参照のこと)。また、新しい六方晶の相は、大規模な変形も起こり得る粒間領域における微細な析出物として形成し得る。析出物によるピニング効果により、マトリックス粒子は、引張変形の間にそれらの形状を変化しない。変形誘起ナノスケール相形成は合金1のシートにおける硬化に寄与し得る一方、合金1の加工硬化は、析出物による転位のピニングを含む転位に基づくメカニズムによって支配されているように見える。
1000℃で1時間HIPが行われ、350℃で20分間熱処理され、その後引張試験が行われた合金1のシートのサンプルのより詳細な微細構造は、図27から図28に示される。マトリックス粒子において、高密度の転位は互いに干渉し、転位セルを形成する。時々、積層欠陥及び双晶が、粒子において同様に見出され得る。一方、粒間領域における析出物は、図27に示されるように、転位を押さえつけもする。粒子において、及び粒間領域においての両方で、複数の非常に微細な析出物が、引張変形の間に形成することが見られ得る。
合金1のシートにおけるマイクロメートルサイズのマトリックス粒子により、対応する歪み硬化挙動を備える転位メカニズムによって、変形は支配される。複数の追加の歪み硬化が、双晶になること/積層欠陥によって生じ得る。また、動的ナノ相強化(メカニズム#2)に対応する六方晶の相の形成は、変形時における合金1のシートにおいて検出される。合金1のシートは、モーダル構造体形成、及び中強度での高い延性に
つながる動的ナノ相強化を備えるクラス1鋼の実施例である。
事例#5:合金14における構造発達
表2における合金の化学量論によると、合金14は、高純度の元素の分量を用いて検量された。合金14が高強度での高い塑性の延性を備えるクラス2挙動を明らかにしたことを注意すべきである。結果として得られる分量は、4つの35グラムインゴットへとアーク溶解され、回転され、均一性を確保するために複数回再融解された。結果として得られるインゴットはその後再融解され、同一の処理条件下で、65mm、75mm、厚さ1.8mmの公称寸法を備える3つのシートへと鋳造された。厚さ1.8mmの合金14のシートの内の一つの実施例の写真は、図29に示される。シートの内の二つはその後、1000℃で1時間HIPが行われた。その後、HIPが行われたシートの内の一つは、続いて350℃で20分間熱処理が行われた。鋳放しされた、HIPが行われた、及びHIPが行われた/熱処理された状態におけるシートはその後、引張試験、SEM電子顕微鏡検査、TEM電子顕微鏡検査、及びX線回折を含む様々な検査のためのサンプルを製造するためにワイヤーEDMを用いて切られた。
合金14のシートから切り出されたサンプルは、走査型電子顕微鏡(SEM)分析のための滑らかなサンプルを確保するために、0.02μm粗さまでステージにおいて金属組織研磨された。SEMは、最大動作電圧30kVを備えるZeiss EVO−MA10モデルを用いて行われた。鋳放しされた、HIPが行われた、及びHIPが行われた/熱処理された条件における合金14のシートサンプルのSEM後方散乱電子顕微鏡写真例が、図30に示される。合金14のシートは、マイクロメートルサイズのマトリックス粒子がラメラ構造によって離隔される、鋳放しされた状態におけるモーダル構造体を有する(図30)。ラメラ構造は、SEMによって、鋳放しされたサンプルにおいて明確に解像され得る。合金14の鋳放しされたシートは、より大きなラメラ間隔を備える合金1のシート(事例#3)と比較して、より高い体積分率のラメラ構造を有する。加えて、オーステナイトからフェライトへの変態に関する証拠は、合金14のシートにおける鋳造の間に生じることが見いだされた。マトリックス粒子は、明らかにされたコントラストによって、異なる化学組成を有するように見える層によって囲まれている。粒子のより明るい端は、合金固化の間の組成の要素の再分配から得られる、より暗い粒子内部と比較して、より低いB又はSi含有量を示す。HIPサイクルの後、ラメラは完全に消え、サンプル容積においてほぼ均一に分布された非常に微細な析出物によって置き換えられ、マトリックス粒子の境界は容易に特定されなくなり得る(図30b)。熱処理の後、複数のより微細な析出物が、サンプルにおいて見出され得る(図30c)。
合金14のシート構造のさらなる詳細は、X線回折を用いて明らかにされる。X線回折は、CuのKαX線管を備えるパナリティカル製X’Pert MPD回折計を用いて行われ、40mAのフィラメント電流によって40kVで動作された。スキャンは、装置のゼロ角度シフトに関して調節するために組み込まれたシリコンを備え、25°から95°2θまで、0.01°のステップサイズで実施された。その後、結果として得られるスキャンは、続いてSiroquantソフトウェアを用いたリートベルト解析を用いて分析された。図31から図33では、X線回折のスキャンが示され、鋳放しされた、HIPが行われた、及びHIPが行われた/熱処理された条件それぞれにおける合金14のシートに関する、測定された/実験的なパターン、及びリートベルトの緻密なパターンを含む。分かるように、全ての場合において、実験データはよくフィットする。見出された固有の相、それらの空間群、及び格子定数を含むX線パターンの解析が、表13に示される。空間群が、結晶の対称性の説明を表し、且つ230タイプの内の一つを有し得、その対応するヘルマン・モーガン空間群記号でさらに特定されることを留意すべきである。
鋳放しされたシートにおいて、3つの相が特定された。立方晶系のγ−Fe(オーステナイト)、立方晶系のα−Fe(フェライト)、及び、MB化学量論で遷移金属、ホウ化物相が混ざった複合体である。特定された相の格子定数は、純粋な相に関して見いだされるものと異なり、合金化元素の溶解を示していることを留意すべきである。例えば、純粋な相としてのγ−Feはa=3.575Åに等しい格子定数を示すであろう、α−Feはa=2.866Åに等しい格子定数を示すであろう、Feの純粋な相は、a=5.099Å及びc=4.240Åに等しい格子定数を示すであろう。MB相における格子定数の著しい変化に基づいて、シリコンもこの構造物に溶解し、それは純粋なホウ化物相ではない可能性があることを留意すべきである。加えて、表13に見られるように、相は変化しない一方で、格子定数は、シートの条件(すなわち、鋳放しされた、HIPが行われた、HIPが行われた/熱処理された)の関数として変化し、合金化元素の再分配が生じていることを示す。
合金14のシートの構造特性をより詳細に調査するために、高分解能透過型電子顕微鏡(TEM)が利用された。TEMサンプルを作製するために、試料片は、鋳放しされた、HIPが行われた、及びHIPが行われた/熱処理されたシートから切られ、その後、砕かれ、〜30μmから〜40μmの厚さまで研磨された。その後、ディスクが、これらの研磨された薄いシートから打ち抜かれ、その後、TEM観察のためにツインジェット電解研磨によって最終的に薄化された。微細構造調査は、200kVで動作するJEOL JEM−2100 HR分析用透過型電子顕微鏡において実施された。
図34では、鋳放しされた、HIPが行われた、及びHIPが行われた/熱処理されたシートにおける合金14のシートの微細構造のTEM像が示される。鋳放しされたサンプルでは、ラメラ構造が支配的であり(図34a)、SEM観察と一致する。マトリックス粒子はほとんどがサイズ10μm未満である。SEM観察と同様に、粒子の端は、粒子内部と比較して異なる組成を示す。図34aに示されるように、TEM分析は、マトリックス粒子の周りの層も示す。この層は、破線で示されるように、ラメラ構造に属していない。HIPサイクルの後、ラメラ構造は消滅し、代わりに粒間領域において析出物で置換される(図34b)。加えて、析出物はマトリックス粒子の内部でも生じ、マトリックス粒子の境界が明らかに見え得ることはない。このことは、合金1のシートとの著しい微細構造の違いであり、HIPサイクルの間、マトリックス粒子の内部に析出物は形成しない。追加の熱処理の後、微細構造における他の一つの著しい変化が観測された。図34cに示されるように、熱処理に起因する、サンプルにおける顕著な粒子微細化が存在し、〜200nmから〜300nmのサイズの粒子が形成された。X線回折から明らかなように、オーステナイトからフェライトへの変態が活発になり、段階#2(メカニズム#1の静的ナノ相微細化)による粒子微細化を引き起こし、ナノモーダル構造体の発達へ向かう(段階#3)。
事例#6:合金14における引張特性及び構造変化
本出願において製造された鋼板の引張特性は、固有の構造、及びシートが経験する固有の処理条件に敏感であろう。図35において、クラス2鋼を意味する合金14のシートの引張特性が、鋳放しされた、HIPが行われた(1000℃で1時間)、及びHIPが行われた(1000℃で1時間)/熱処理された(350℃で20分間)条件において示される。分かるように、鋳放しされたシートは、HIPが行われた、及びHIPが行われた/熱処理されたサンプルよりも非常に低い延性を示す。この延性の増加は、事例#5で前述したように、HIPが行われたシートにおけるマクロ欠陥の減少、及びHIPが行われた、又はHIPが行われた/熱処理されたシートのモーダル構造体において生じる微細構造変化の両方に起因し得る。加えて、引張試験の間での応力の印加の間に、構造変化が生じていることが示されるであろう。
1000℃で1時間HIPが行われた合金14のシートに関して、変形されていないシートのサンプル及び変形した引張試験片のゲージ部分の両方で行われたX線回折を用いて、追加の構造の詳細が得られた。X線回折は具体的には、CuのKαX線管を備えるパナリティカル製X’Pert MPD回折計を用いて行われ、40mAのフィラメント電流によって40kVで動作された。スキャンは、装置のゼロ角度シフトに関して調節するために組み込まれたシリコンを備え、25°から95°2θまで、0.01°のステップサイズで実施された。図36では、変形されていないシートの条件、及びシートから切られた引張試験が行われた試料片のゲージ部分の両方において、1000℃で1時間HIPが行われた合金14のシートに関して、X線回折パターンが示される。容易に分かるように、X線パターンにおける新しいピークによって示された新しい相の形成を伴う変形の間に、著しい構造変化が生じている。ピークシフトは、両方のサンプルに存在する相の間で合金化元素の再分配が生じていることを示す。
変形した合金14の引張試験が行われた(HIPが行われた(1000℃で1時間))試料片に関するX線パターンは、続いてSiroquantソフトウェアを用いたリートベルト解析を用いて分析された。図37に示されるように、測定されたパターンと計算されたパターンとでほぼ一致することが見出された。表14では、合金14の変形されていないシートにおいて、及び引張試験片のゲージ部分において特定された相が比較される。分かるように、格子定数が変化し、この相に溶けた溶質元素の量が変化したことを示しているが、MB相は、引張試験の前後でシートに存在する。さらに、変形されていない合金14のシートに存在しているγ―Fe相は、引張試験が行われた試料片のゲージ部分にもはや存在せず、相変態が起こったことを示している。変形されていないシート、及び引張試験が行われた試料片のリートベルト解析は、α―Fe含有量の体積分率が、〜28%から〜29%へと測定されたわずかな増加のみを示したことを示す。このことは、γ―Fe相が、もしかしたらα―Fe及び少なくとも二つの新しいこれまで知られていない相を含む多数の相に変換されたことを示すであろう。表14に示されるように、変形後、二つの新しいこれまで知られていない六方晶の相が特定されてきた。一つの新たに特定された六方晶の相は、dihexagonal pyramidalクラスの代表的なものであり、六方晶のP63mc空間群(#186)を有し、記載された回折面を備える計算された回折パターンが図38aに示される。他の六方晶の相は、ditrigonal dipyramidalクラスの代表的なものであり、六方晶のP6バー2C空間群(#190)を有し、記載された回折面を備える計算された回折パターンが図38bに示される。この相は、シリコン系相、もしかするとこれまで知られていないSi−B相である可能性が高いことが、小さな結晶ユニットセルサイズに基づいて理論化されている。図38において、主要な格子面は、著しいブラッグ回折ピークに対応して特定されることを留意すべきである。
引張変形によって引き起こされた合金14のシートの構造変化を調査するために、高分解能透過型電子顕微鏡(TEM)が利用された。TEMサンプルを作製するために、それらは引張試験が行われた試料片のゲージ部分から切られ、〜30μmから〜40μmの厚さへ研磨された。これらの研磨された薄いシートからディスクが打ち抜かれ、その後TEM観察のためにツインジェット電解研磨によって最終的に薄化された。これらの試料片は、200kVで動作するJEOL JEM−2100 HR分析用透過型電子顕微鏡において調査れた。
図39では、引張変形前後での、HIPが行われた条件における合金14のシートのゲージ部分の微細構造が示される。引張前のサンプルにおいて、マトリックスにおいて析出物が分布する。加えて、段階#2(静的ナノ相微細化)に相当するHIPサイクルの間での、相変態によって引き起こされる粒子の微細化による、サンプルにおいて、微細な粒子が示される。そのため、ナノモーダル構造体(段階#3)は、変形の前の材料において発達した。降伏応力を超えた後で、さらなる粒子の微細化が、引張変形によって引き起こされるオーステナイト相の継続的な変態を伴い発達する。X線解析によると、オーステナイト相は、二つの新しい未特定の相を同時に含む多数の相へと変換する。結果として、〜200nmから〜300nmのサイズの粒子は、サンプルにおいて広く観測され得る。また、引張変形によって引き起こされる転位活動は、複数の粒子において観測され得る。同時に、ホウ化物の析出物は同一の形状を維持し、明らかな塑性変形を経験しないことを示す。
図40は、引張変形後にHIPが行われた条件における合金14のシートのゲージ部分の詳細な微細構造を示す。微細構造において、双晶の構造を示す硬いホウ化物相以外に、数百ナノメートルのサイズの小さな粒子が見出され得る。さらに、電子回折パターンのリングパターンは、多数の粒子の集団的貢献であり、微細化された微細構造をさらに裏付ける。暗視野像において、小さな粒子は明るく見え、それらのサイズは全て500nm未満である。加えて、これらの小さな粒子内にサブ構造体が示されており、転位等の変形誘起欠陥が格子を歪ませることを示していることが見られ得る。合金1の場合、新しい六方晶の相が、引張変形後のサンプルにおいて特定され、引張変形の間に形成された非常に微細な析出物であると考えられる。粒子の微細化は、合金14のシートにおいて、高強度ナノモーダル構造体(段階#5)につながる動的ナノ相強化(段階#4)の結果として考えられ得る。
示されたように、合金14のシートは、鋳放しされた状態における構造体#1モーダル構造体(段階#1)を明らかにした(図30a)。この材料における高い延性を伴う高強度は、HIPサイクルの後に測定され(図35)、静的ナノ相微細化(段階#2)、及び変形前での材料におけるナノモーダル構造体(段階#3)の形成を提供する。引張変形の間での合金14の歪み硬化挙動は、高強度ナノモーダル構造体(段階#5)の生成が続く、メカニズム#2動的ナノ相強化(段階#4)に対応する粒子微細化にほぼ起因する。追加の硬化は、新しく形成された粒子における転位メカニズムによっておこり得る。合金14のシートは、高強度での高い延性につながる高強度ナノモーダル構造体の形成を備えるクラス2鋼の実施例である。
事例#7:合金19における構造発達
表2における合金の化学量論によると、合金19は、高純度の元素の分量から検量された。合金14と同様に、この合金は、高強度での高い塑性の延性を備えるクラス2挙動を明らかにした。結果として得られる分量は、4つの35グラムインゴットへとアーク溶解され、回転され、均一性を確保するために複数回再融解された。結果として得られるインゴットはその後、再融解され、同一の処理条件下で、65mm、75mm、厚さ1.8mmの公称寸法を備える3つのシートへと鋳造された。厚さ1.8mmの合金19のシートの内の一つの実施例の写真は、図41に示される。その後、シートの内の二つは、1100℃で1時間HIPが行われた。その後、HIPが行われたシートの内の一つは、続いて700℃で20分間熱処理された。鋳放しされた、HIPが行われた、及びHIPが行われた/熱処理された状態におけるシートはその後、引張試験、SEM電子顕微鏡検査、TEM電子顕微鏡検査、及びX線回折を含む様々な検査のためのサンプルを製造するためにワイヤーEDMを用いて切られた。
合金19のシートから切り出されたサンプルは、走査型電子顕微鏡(SEM)分析のための滑らかなサンプルを確保するために、0.02μm粗さまでステージにおいて金属組織研磨された。サンプルは、最大動作電圧30kVを備えるZeiss EVO−MA10モデルを用いて詳細に分析された。鋳放しされた、HIPが行われた、及びHIPが行われた/熱処理された条件における合金19のシートサンプルのSEM後方散乱電子顕微鏡写真例が、図42に示される。
図42aに示されるように、鋳放しされた合金19のシートの微細構造は、モーダル構造体を、すなわち、マトリックス粒子にされた相、及び粒間領域を明確に示す。マトリックス粒子は、5μmから10μmのサイズである。合金14の微細構造と同様に、粒子の端は、粒子内部のそれとは異なる組成のコントラストを示し、おそらく鋳造時の相変態によるものである。鋳放しされた状態におけるSEMによってラメラ構造がないことが明らかにされた。HIPサイクルへさらされることは、微細構造における著しい変化につながる。
非常に微細な析出物が形成され、マトリックス粒子及び粒間領域においてほぼ均一に分布され、マトリックス粒子の境界が容易に特定され得ない(図42b)。熱処理後、析出物の体積分率は著しく増加し(図42c)、その大部分が、減少した微細構造のスケールで形成する。
合金19のシート構造体のさらなる詳細は、X線回折を用いて明らかにされる。X線回折は、CuのKαX線管を備えるパナリティカル製X’Pert MPD回折計を用いて行われ、40mAのフィラメント電流によって40kVで動作された。スキャンは、装置のゼロ角度シフトに関して調節するために組み込まれたシリコンを備え、25°から95°2θまで、0.01°のステップサイズで実施された。その後、結果として得られるスキャンパターンは、続いてSiroquantソフトウェアを用いたリートベルト解析を用いて分析された。図43から図45において、X線回折スキャンパターンが示され、鋳放しされた、HIPが行われた、及びHIPが行われた/熱処理された条件それぞれにおける合金19のシートに関する、測定された/実験的なパターン、及びリートベルトの緻密なパターンを含んでいる。分かるように、全ての場合において実験的データはよく一致している。見出された固有の相、それらの空間群、及び格子定数を含むX線パターンの解析が表15に示される。空間群が、結晶の対称性の説明を表し、且つ230タイプの内の一つを有し得、その対応するヘルマン・モーガン空間群記号でさらに特定されることを留意すべきである。
鋳放しされたシートにおいて、3つの相が特定された。立方晶系のγ−Fe(オーステナイト)、立方晶系のα−Fe(フェライト)、及び、MB化学量論で遷移金属、ホウ化物相が混ざった複合体である。特定された相の格子定数は、純粋な相に関して見いだされるものと異なり、合金化元素の溶解を明確に示していることを留意すべきである。例えば、純粋な相としてのγ−Feはa=3.575Åに等しい格子定数を示すであろう、α−Feはa=2.866Åに等しい格子定数を示すであろう、Feの純粋な相は、a=5.099Å及びc=4.240Åに等しい格子定数を示すであろう。MB相における格子定数の著しい変化に基づいて、シリコンもこの構造物に溶解し、それは純粋なホウ化物相ではない可能性があることを留意すべきである。加えて、表15に見られるように、相は変化しない一方で、格子定数は、シートの条件(すなわち、鋳造された、HIPが行われた、HIPが行われた/熱処理された)の関数として変化し、合金化元素の再分配が生じていることを示す。
合金19のシートの構造特性をより詳細に調査するために、高分解能透過型電子顕微鏡(TEM)が利用された。TEMサンプルを作製するために、鋳放しされた、HIPが行われた、及びHIPが行われた/熱処理されたシートから試料片が切られ、その後砕かれ、研磨された。変形メカニズムを調査するために、引張試験が行われた試料片のゲージ部分からもサンプルがとられ、〜30μmから〜40μmの厚さまで研磨された。これらの研磨された薄いシートからディスクが打ち抜かれ、その後、TEM観察のためにツインジェット電解研磨によって最終的に薄化された。これらの試料片は、200kVで動作するJEOL JEM−2100HR分析用透過型電子顕微鏡(TEM)において調査された。
図46において、鋳放しされた、HIPが行われた、及びHIPが行われた/熱処理されたシートにおける合金19のシートの微細構造のTEM像が示される。鋳放しされたサンプルでは、粒間領域におけるラメラ構造を備える5μmから10μmのサイズの粒子が観測された(図46a)。ラメラ構造は、合金14のシートにおけるそれと比較してさらに微細であり、以前にSEM分析によって明らかにされなかった。HIPサイクル後、ラメラ構造は一般的に消滅し、代わりに、サンプル容積において均一に分布された析出物で置換される(図46b)。加えて、微細な粒子が、HIPサイクル後に観測され得る。粒子の微細化は、オーステナイト相の相変態を介して達成される。X線回折によって明らかにされたように、オーステナイトからフェライトへの変態が達成され、段階#2(メカニズム#1 静的ナノ相微細化)による粒子の微細化につながる。熱処理サイクルの後、さらなる粒子の微細化が、継続的な相の変態の結果として生じ、その結果、ナノモーダル構造体(段階#3)の形成の完了となる。加えて、析出物は、より均一に分布されることになる(図46c)。
事例#8:合金19における引張特性及び構造変化
本出願において製造される鋼板の引張特性は、固有の構造、及びシートが経験する固有の処理条件に敏感であろう。図47において、クラス2鋼を代表する合金19のシートの引張特性が示される。それらは、鋳放しされた、HIPが行われた(1100℃で1時間)、及びHIPが行われた(1100℃で1時間)/熱処理された(700℃で20分間)条件のものであった。分かるように、鋳放しされたシートは、HIPが行われたサンプルよりも非常に低い延性を示す。この延性の増加は、事例#7において前述したように、HIPが行われたシートにおけるマクロ欠陥の減少、及びHIPが行われた、又はHIPが行われた/熱処理されたシートのモーダル構造体において生じる微細構造の変化の両方に起因し得る。加えて、引張試験の間での応力の印加の間、構造変化が生じていることが示されるであろう。
1100℃で1時間HIPが行われ、且つ700℃で20分間熱処理された合金19のシートに関して、さらなる構造の詳細が、変形されていないシートのサンプル、及びシートから切られた変形した引張試験片のゲージ部分の両方において行われたX線回折を用いることによって得られた。X線回折は具体的には、CuのKαX線管を備えるパナリティカル製X’Pert MPD回折計を用いて行われ、40mAのフィラメント電流によって40kVで動作された。スキャンは、装置のゼロ角度シフトに関して調節するために組み込まれたシリコンを備え、25°から95°2θまで、0.01°のステップサイズで実施された。図48において、変形されていないシート、及び引張変形後の同一のシートから引張試験片のゲージ部分の両方に関して、1100℃で1時間HIPが行われ、且つ700℃で20分間熱処理された合金19のシートのX線回折曲線が示される。容易に分かるように、X線パターンにおける新しいピークによって示されるように、新しい相の形成を伴う著しい構造変化が変形時に生じている。ピークシフトは、合金化元素の再分配が両方のサンプルにおいて存在する相の間で生じていることを示す。
(1100℃で1時間HIPが行われ、且つ700℃で20分間熱処理された)合金19のシートからの、引張試験が行われた試料片に関するX線パターンは、続いて、Siroquantソフトウェアを用いたリートベルト解析を用いて分析された。図49に示されるように、測定されたパターンと計算されたパターンとでほぼ一致することが見出された。表16では、合金19の変形されていないシート、及び引張試験片のゲージ部分において特定された相が比較される。分かるように、格子定数が変化して、溶けた溶質元素の量が変化したことを示しているが、MB相は、引張試験の前後でシートに存在する。さらに、変形されていない合金19のシートに存在しているγ―Fe相は、引張試験片のゲージ部分にもはや存在せず、相変態が起こったことを示している。変形されていないシート、及び引張試験が行われた試料片のリートベルト解析は、α―Fe量が、〜65%から〜66%への測定されたわずかな増加のみを伴い、ほとんど変化しなことを示す。このことは、γ―Fe相が、もしかするとα―Fe、及び少なくとも二つの新しいこれまで知られていない相を含む多数の相に変換されたことを示すであろう。表16に示されるように、変形後、二つの新しいこれまで知られていない六方晶の相が特定された。一つの新しく特定された六方晶の相は、dihexagonal pyramidalクラスの代表的なものであり、六方晶のP63mc空間群(#186)を有し、記載された回折面を備える計算された回折パターンが図50aに示される。他の六方晶の相は、ditrigonal dipyramidalクラスの代表的なものであり、六方晶のP6バー2C空間群(#190)を有し、記載された回折面を備える計算された回折パターンが図50bに示される。この相は、シリコン系相、もしかするとこれまで知られていないSi−B相である可能性が高いことが、小さな結晶ユニットセルサイズに基づいて理論化されている。図50において、主要な格子面は、著しいブラッグ回折ピークに対応して特定されることを留意すべきである。
引張変形によって引き起こされた合金19のシートの構造変化を調査するために、高分解能透過型電子顕微鏡(TEM)が利用され、引張試験前後でのサンプルのゲージ部分を分析した。TEMサンプルを作製するために、試料片は、引張試験片のゲージ部分から切られ、その後、砕かれ、〜30μmから〜40μmの厚さまで研磨された。これらの研磨された薄いシートからディスクが打ち抜かれ、その後、TEM観察のためにツインジェット電解研磨によって最終的に薄化された。これらの試料は、200kVで動作されるJEOL JEM−2100HR分析用透過型電子顕微鏡(TEM)において調査された。
図51は、引張変形前後での合金19のシートにおける微細構造のTEM像を示す。合金14の場合のように、均一に分布されたホウ化物相が、サンプルにおいて見いだされ、HIPサイクル及び熱処理の間でのオーステナイト相の変態は、変形前のシートのサンプルにおけるナノモーダル構造体(段階#3)を伴う静的ナノ相微細化(段階#2)の結果として、著しい粒子の微細化へとつながる(図51a)。引張試験後のサンプルにおいて、ホウ化物相は明らかな塑性変形を示さないが、変形によって引き起こされた著しい構造変化が観測された(図51b)。初めに、数百ナノメートルのサイズの多数の小さな粒子が見出され得る。図51bの差し込み図における電子回折はリングパターンを示し、微細構造スケールにおける微細化を示す。小さな粒子は、図52に示されるように、暗視野像においても明らかにされ得、500nm未満の小さな粒子が明確に見られ得る。加えて、粒子が引張変形後に高密度の転位を含み、多数の粒子の格子が歪まされ、それらがまるでより小さな粒子にさらに分けられているように見えることが見出され得る(図52b)。図53は、引張変形したサンプルのゲージ部分における微細構造を示すTEM像の他の一つの実施例を示す。黒い矢印によって示されるように、粒子において生成された多数の転位が見られ得る。加えて、白い矢印によって示されるように、ナノメートルサイズの析出物が、微細構造において見出され得る。これらの非常に微細な析出物はおそらく、変形によって引き起こされた新しい相であり、X線回折スキャンにおいて見いだされる。微細な粒子の形成は、合金19のシート材料における高強度ナノモーダル構造体(段階#5)につながる、引張変形の間にサンプルにおいて生じる動的ナノ相強化(段階#4)の結果である。
要約として、合金19のシートの変形は、合金14のシートにおけるそれと同様の、実質的な加工硬化によって特徴づけられる。示されたように、合金19のシートは、鋳放しされた状態における構造体#1 モーダル構造体(段階#1)を示す。この材料における高い延性を備える高強度は、HIPサイクル及び熱処理後に測定され、静的ナノ相微細化(段階#2)、及び変形前の材料におけるナノモーダル構造体(段階#3)の生成を提供する(図46c)。引張変形時(図47)での合金19の歪み硬化挙動は、図51b、及び図52〜53において示された、高強度ナノモーダル構造体(段階#5)が続くメカニズム#2 動的ナノ相強化(段階#4)に対応する先の粒子微細化にほぼ起因する。さらなる硬化は、新しく形成された粒子におけるメカニズムに基づく転位によって生じ得る。合金19のシートは、高強度での高い延性につながる高強度ナノモーダル構造体の形成を備えるクラス2鋼の実施例である。
事例#9:歪み硬化挙動
高純度元素を用いて、表2に記載される目標とされた合金の35gの合金原料が、表2において提供された原子比率によって検量された。その後、原料材料は、アーク溶解するシステムの銅製炉床へと配された。原料は、シールドガスとして高純度アルゴンを用いて、インゴットへとアーク溶解された。インゴットは複数回回転され、均一性を確保するために再融解された。混合後、インゴットは、およそ幅12mm、長さ30mm、及び厚さ8mmの指上の物の形状に鋳造された。その後、結果として得られた指状の物は、PVCチャンバーに配され、RF誘導を用いて融解され、その後厚さ1.8mmで3×4インチプレートを鋳造するために設計された銅金型上へと押し出された。結果として得られるプレートは、熱処理が続くHIPサイクルを受けた。対応するHIPサイクルパラメーター及び熱処理パラメーターは表17に記載される。空気冷却の場合、試料片は目標時間のために目標温度で保持され、炉から取り出され、大気で冷却された。ゆっくりした冷却の場合、試料片は目標時間のために目標温度で保持された後、炉は切られ、試料片は炉と共に冷却された。
選択された合金から記載されたサンプル(表17)は、インストロンのブルーヒル制御装置及び分析ソフトウェアを利用した試験の間での歪み(straining)の関数としての歪み硬化係数値を記録することでインストロン機械的試験フレーム(Model 3369)上で張力で試験された。結果は図54において要約され、歪み硬化係数値は、サンプルの総伸びの割合として、対応する塑性変形に対してプロットされる。分かるように、サンプル4及び7は、サンプルにおいて、約25%から80%〜90%までの歪みの後、歪み硬化の増加を示した(図54a)。これらのシートのサンプルは、引張試験での高い延性を示し(図54b)、クラス1鋼を意味する。サンプル5もまたクラス1鋼を意味し、引張試験の間での高い延性を示した。一方、サンプルの破綻までわずかな増加を伴い、歪み硬化は歪み率とはほとんど無関係である。全てのこれら3つのサンプルに関して、歪み硬化は、動的ナノ相強化を介した追加の強化を備える転位メカニズムを介したモーダル構造体の変形と関係する。サンプル1、2及び3は、約50%の歪み値で非常に高い歪み硬化を示し、続いて歪み硬化係数値はサンプル破綻まで減少する(図54a)。これらのシートのサンプルは、高強度/高い延性の組み合わせ(図54b)を有し、クラス2鋼を意味し、歪みの初期の50%が、応力−歪み曲線上でのプラトーを備えるサンプルにおける相変態に対応する。以下の歪み硬化挙動は、広範囲に及ぶ動的ナノ相強化を介した高強度ナノモーダル構造体形成に対応する。また、サンプル6はクラス2鋼を意味するが、歪み硬化に関して中間的な挙動、及び合金の化学的性質に応じた、歪みの間でのより低いレベルの相変態に関連し得る引張試験での中間的な特性とを示してきた。
事例#10:歪み速度感度
高純度元素を用いて、合金1及び合金19の、35gの合金原料が、表2において提供される原子比率によって検量された。その後、原料材料は、アーク溶解のシステムの銅製炉床へ配された。原料は、シールドガスとして高純度アルゴンを用いて、インゴットへとアーク溶解された。インゴットは、数回回転され、均一性を確保するために、再融解された。混合後、インゴットは、およそ幅12mm、長さ30mm及び厚さ8mmの指状の物の形状に鋳造された。その後、結果として得られた指状の物は、PVCチャンバーに配され、RF誘導を用いて融解され、厚さ1.8mmの3×4インチプレートを鋳造するために設計された銅金型上へと押し出された。
各合金から結果として得られるシートは、直径4インチ、高さ5インチのサイズの炉チャンバーを備えたモリブデン炉を備えたAmerican Isostatic Press Model 645マシンを用いて、HIPサイクルを受けた。シートは、目標温度に到達するまで、10℃/分で加熱され、特定の時間ガス圧にさらされた。結果として得られるプレートは、熱処理が続くHIPサイクルを受けた。対応するHIPサイクルパラメーター及び熱処理パラメーターは、表18に記載される。空気冷却の場合、試料片は、目標時間の間、目標温度で保持され、炉から取り出され、空気中で冷却された。ゆっくりした冷却の場合、試料片が目標時間の間、目標温度で保持された後、炉が切られ、試料片は炉と共に冷却された。
引張測定は、インストロンのブルーヒル制御装置及び分析ソフトウェアを利用して、インストロン機械的試験フレーム(モデル3369)上で、4つの異なる歪み速度で行われた。全ての試験は、リッジされて固定された下部冶具、及び上部冶具に取り付けられたロードセルと動作する上部冶具を備える変位制御装置において室温で実施された。変位速度は、0.006mm/secから0.048mm/secの範囲で変化した。結果として得られる応力−歪み曲線は、図55〜図56において示される。合金1は、適用された歪み速度の範囲において歪み速度感度を示さなかった。合金19は、調査された範囲において、より低い歪み速度でわずかに高い歪み硬化速度を示した。これはおそらく、異なる歪み速度での変形によって引き起こされた動的に微細化した相の体積分率に関係する。
事例#11:増分(Incremental)歪みでのシート材料挙動
高純度元素を用いて、合金19の35gの合金原料が、表2において提供される原子比率によって検量された。その後、原料材料は、アーク溶解するシステムの銅製炉床へと配された。原料は、シールドガスとして高純度アルゴンを用いてインゴットへとアーク溶解された。インゴットは、複数回回転され、均一性を確保するために再融解された。混合後、インゴットは、およそ幅12mm、長さ30mm及び厚さ8mmの指状の物の形状において鋳造された。その後、結果として得られた指状の物は、PVCチャンバーに配され、RF誘導を用いて融解され、その後厚さ1.8mmの3×4インチプレートを鋳造するために設計された銅金型上へと押し出された。
各合金から結果として得られるシートは、直径4インチ、高さ5インチのサイズの炉チャンバーを備えたモリブデン炉を備えたAmerican Isostatic Press Model 645マシンを用いて、1150℃で1時間のHIPサイクルを受けた。シートは、目標温度に達成するまで10℃/分で加熱され、機械にある間に室温まで冷却される前に1時間ガス圧にさらされた。
増分引張試験は、インストロンのブルーヒル制御装置及び分析ソフトウェアを用いて、インストロン機械的試験フレーム(モデル3369)の上で行われた。全ての試験は、リッジされて固定された下部冶具、及びロードセルが上部冶具に取り付けられたまま動く上部冶具を備える変位制御装置において室温で実施された。それぞれの負荷−除荷サイクルは、約2%の増分歪みで行われた。結果として得られる応力−歪み曲線は、図57に示される。分かるように、合金19は、各負荷−除荷サイクルでの強化を示しており、各サイクルでの変形の間での合金における動的ナノ相強化を裏付けている。
事例#12:特性回復に対するアニーリングの効果
高純度元素を用いて、合金19の35gの合金原料が、表2に提供された原子比率によって検量された。その後、原料材料はアーク溶解するシステムの銅製炉床へ配された。原料は、シールドガスとして高純度アルゴンを用いてインゴットへとアーク溶解された。インゴットは、複数回回転され、均一性を確保するために再融解された。混合後、インゴットは、およそ幅12mm、長さ30mm、及び厚さ8mmの指状の物の形状に鋳造された。その後、結果として得られる指状の物はPVCチャンバーに配され、RF誘導を用いて融解され、その後、厚さ1.8mmの3×4インチプレートを鋳造するために設計された銅金型上へと押し出された。
合金19から結果として得られるシートは、直径4インチ、高さ5インチのサイズの炉チャンバーを備えたモリブデン炉を備えたAmerican Isostatic Press Model 645マシンを用いてHIPサイクルを受けた。シートは、1100℃の目標温度に到達するまで10℃/分で加熱され、30ksiの静水圧に1時間さらされた。続いて、HIPサイクル後、700℃で1時間の熱処理、ゆっくりした冷却がシートに適用された。
引張試験は、インストロンのブルーヒル制御装置及び分析ソフトウェアを利用して、インストロン機械的試験フレーム(モデル3369)上で行われた。全ての試験は、リッジされて固定された下部冶具、及び上部冶具に取り付けられたロードセルと動作する上部冶具を備える変位制御装置において室温で実施された。2つの引張試験片は、10%まで予め歪ませられ、続いて除荷された。サンプルの内の一つは、破綻まで再び試験された。結果として得られる応力−歪み曲線は図58aに示される。分かるように、予め歪ませられた後の合金19のシートは、制限された延性(〜4.5%)を備える高強度を示した。サンプルの最大の強度及び二つの試験からの要約した歪みは、同一の条件における合金19のシートに関して測定されたものに対応する(同一のHIPサイクル、及び熱処理パラメーター)(図57を参照)。
他の一つの、予め歪ませられた後のサンプルは、1150℃で1時間アニールされ、ゆっくりと冷却され、破綻まで再び試験された。結果として得られる応力−歪み曲線は図58bに示される。サンプルは、アニール後の完全な特性の復元を示し、予め歪ませることがない、同一条件(同一のHIPサイクル及び熱処理パラメーター)における合金19のシートの典型的な挙動を示している(図47b)。
事例#13:引張メカニズムに対するサイクリックアニーリングの効果
シートを作製するために事例#12において提供された手順を用いて、追加のサンプルが、1100℃で1時間のHIPサイクル、且つ700℃で1時間の熱処理後、合金19のシートから切られた。サンプルは、10%まで予め歪ませられ、続いて1150℃で1時間アニールされた。その後、それは10%まで再び変形され、続いて除荷され、1150℃で1時間アニールされた。この手順は、11回繰り返され、〜100%の総歪みにつながる。11サイクルすべてに関して互いに重ね合わされた引張曲線が図59に示される。10サイクル後の試料片が、図60に示され、その初期形状と比較される。同一の強度レベルが各試験サイクルで記録され、試験間のアニーリングで特性が復元されることを裏付けていることを留意すべきである。
予め歪ませられた試料片における高強度(図58a)は、張力での動的ナノ相強化(メカニズム#2)の間での高強度モーダル構造体生成(構造体#3)によって説明され得る。アニール後での予め歪ませられたシートの特性の復元は、動的ナノ相強化(メカニズム#2)での相変態が、変形した材料の続いてのアニーリングで可逆であることを示唆する。
予め歪ませた後の、及び予め歪ませ、続いてアニーリングした後の(1100℃で1時間HIPが行われ、且つ700℃で1時間熱処理された)合金19のシートからの引張試験片のゲージ部分の微細構造は、Carl Zeiss SMT Incによって製造されたEVO−60走査型電子顕微鏡を用いて、走査型電子顕微鏡法(SEM)によって調査された。10%まで予め歪ませられた後の、(1100℃で1時間HIPが行われ、且つ700℃で1時間熱処理された)合金19のシートからの引張試験片のゲージ部分の微細構造は、図61に示される。予め歪まされる前の合金19のシートと比較して(図42c)、予め歪ませられた微細構造では(図61)、微細構造における目に見える変化は、SEMによって明らかにされなかった。10%まで予め歪ませられた後、1150℃で1時間のアニーリングの場合、析出物はマトリックスにおいてさらにより均一に分布する(図62)。おそらく、複数のオーステナイトが、アニーリング後のサンプルにあるが、オーステナイト粒子は明らかにされないことあり得る。繰り返しの歪み、及びアニーリングのため、この結果として得られる微細構造は、熱間圧延のような、次世代の熱間加工のためのプロトタイプの微細構造として考えられ得る。
事例#13:シート材料の焼付硬化
厚さ1.8mmの3インチ×4インチ(three by four)のプレートは、表2において特定される化学組成を備える合金1、2及び3から鋳造された。結果として得られるシートは、直径4インチ、高さ5インチのサイズの炉チャンバーを備えたモリブデン炉を備えたAmerican Isostatic Press Model 645マシンを用いるHIPサイクルを受けた。シートは、1100℃の目標温度に到達するまで、10℃/分で加熱され、30ksiの静水圧に1時間さらされた。HIPサイクル後、個々のシートは続いて、箱型炉において350℃で20分間熱処理された。焼付硬化の効果を評価するために、結果として得られるシートは、170℃で30分間さらにアニールされた。
焼付硬化処理前後でのシート材料の硬度測定は、ASTM E−18スタンダードに従うロックウェルC(Rockwell C)硬さ試験によって実施された。Newage model AT130RDB装置が、鋳造され処理された厚さ1.8mmのシートから切られた〜9mm×〜9mmの正方形サンプル上で行われた全ての硬度試験に関して用いられた。試験は、それら各々の間の距離がインデント幅の3倍より大きくなるように離隔されたインデントを備えて行われた。焼付硬化処理前後でのシート材料に関する硬度データ(3回の測定の平均)は、表19に記載される。分かるように、硬度は、追加のアニーリングの後で、3つ全ての合金で増加し、3つ全ての合金における好ましい焼付硬化の効果を示している。
事例#15:シート材料の冷間成形性
厚さ1.8mmの3×4インチプレートは、表2において特定される化学組成を備える合金1、合金2及び合金3から鋳造された。結果として得られるシートは、直径4インチ、高さ5インチのサイズの炉チャンバーを備えたモリブデン炉を備えたAmerican Isostatic Press Model 645マシンを用いるHIPサイクルを受けた。シートは、目標温度に到達するまで10℃/分で加熱され、表6に記載されるHe HIPサイクルのパラメーターに従い、特定の時間の間ガス圧にさらされた。結果として得られるシートは、エリクセンカップ試験(ASTM E643−09)を受け、鋳造シート材料の冷間成形性を評価した。エリクセンカップ試験は、変形ゾーンへのシート材料のインフロー(in−flow)を防ぐためにブランクホルダーの間で固く固定されたシートの、簡単な伸び成形試験である。亀裂が生じるまで(滑らかであるが、いくらかの摩擦がある)器具の接触によって、固定されたシートの上にパンチ(punch)が押し付けられる。パンチの深さ(mm)が測定され、図63に示されるようなエリクセン深さ指数を与える。選択された合金からのシートに関する試験結果は、表20に記載され、合金の化学的性質に応じて2.72mmから5.48mmまでの深さ指数における変動を示す。これらの測定は、9%から20%の範囲における外面でのプレートの塑性の延性に対応し、選択された合金の著しい可塑性を示す。
選択された3つの合金は、段階#1(モーダル構造体)及び段階#4(動的ナノ相強化)のみが観測された際の、事例#4において記載されたそれに対応する変形挙動を表す。高いレベルの成形性は、事例#6及び#8において記載された変形挙動を示す参照された化学物質を備える合金において達成され得る。静的ナノ相微細化(段階#2)及びナノモーダル構造体(段階#3)のため、動的ナノ相強化(段階#4)を備える可逆の相変態が、事例#12に記載されるように見いだされた。予め変形したシート材料にアニーリングを適用することによって、100%より大きな総歪みが達成され得る。
事例#16:厚いプレートの特性
高純度元素を用いて、合金1及び合金19の異なる質量を備える原料が、表2において提供される原子比率によって検量された。その後、原料材料はオーダーメイドの真空鋳造システムのるつぼへと配された。原料は、RF誘導を用いて融解され、その後異なる厚さで4×5インチシートのために設計された銅金型上へと押し出される。0.5インチ、1インチ、及び1.25インチという3つの異なる厚さを備えるシートが、各合金から鋳造された(図64)。鋳造されたシートは、以前の1.8mmプレートより非常に厚く、薄スラブ鋳造プロセスによって加工される、表2における化学的性質に関するポテンシャルを示すことを留意すべきである。
各合金からの全てのシートは、直径4インチ、高さ5インチのサイズの炉チャンバーを備えたモリブデン炉を備えたAmerican Isostatic Press Model 645マシンを用いるHIPサイクルを受けた。シートは、目標温度に到達するまで10℃/分で加熱され、特定の時間の間ガス圧にさらされた。両方の合金に関するHIPサイクルパラメーターは、表21に記載され、薄スラブ鋳造プロセスにおいてシートによって経験される熱的露出を代表するものである。HIPサイクル後、シート材料は、箱型炉において表22において特定されるパラメーターで熱処理された。
引張試験片は、ワイヤー放電加工機(EDM)を用いてシートから切られた。引張特性は、インストロンのブルーヒル(Bluehill)制御及び分析ソフトウェアを利用して、インストロン機械的試験フレーム(モデル3369)に基づいて測定された。全ての試験は、リッジされて固定された下部冶具、及び上部冶具に取り付けられたロードセルと共に動作する上部冶具を備える変位制御装置において室温で実施された。表23では、総引張歪み、降伏応力、最大の引張強度、及び弾性率を含む引張試験結果の要約が、鋳放しされた状態、及びHIPサイクル且つ熱処理サイクル後における、1.25インチの厚いシートに関して示される。分かるように、引張強度値は合金1のシートに関して428MPaから575MPaまで変化し、合金19のシートに関して642MPaから814MPaまで変化する。総歪み値は、合金1のシートに関して2.78%から14.20%まで変化し、合金19のシートに関して3.16%から6.02%まで変化する。弾性率は、両方の合金に関して103GPaから188GPaまでの範囲において測定される。これらの特性は、より大きい鋳造厚さで最適化されていないが、新しい鋼種の約束を明確に示唆していることを表し、薄スラブ鋳造を介した大きなスケールの製造に関する構造及びメカニズムを可能にすることを留意すべきである。
事例#17:融解紡糸調査
高純度元素を用いて、合金19の15gの合金原料が、表2において提供される原子比率によって検量された。その後、原料材料は、アーク溶解するシステムの銅製炉床へと配された。原料は、シールドガスとして高純度アルゴンを用いてインゴットへとアーク溶解された。インゴットは複数回回転され、均一性を確保するために再融解された。混合後、インゴットは、およそ幅12mm、長さ30mm、及び厚さ8mmの指状の物の形状に鋳造された。その後、結果として得られる指状の物は、〜0.81mmの穴径を備える石英るつぼにおける融解紡糸チャンバーに配された。その後、インゴットはRF誘導を用いて異なる雰囲気において融解されることによって加工され、その後16m/sから39m/sまで変化する異なる接線方向の速度で進む、直径245mmの銅製ホイール上へと押し出された。様々な厚さの連続的なリボンが製造された。
DSC−7オプションを備えるパーキンエルマーDTA−7システム上で、固化されたままのリボン構造体に熱分析が行われた。示唆熱分析(DTA)及び示差走査熱量分析(DSC)が、超高純度アルゴンの流れを使用することでサンプルを酸化から防御し、10℃/分の加熱速度で実施された。全てのリボンは、鋳放しされた状態において結晶構造を有し、且つ同様の融解挙動を有し、1248℃で融解ピークを持つ。
金属リボンの機械的特性は、マイクロスケールの引張試験を用いて室温で得られた。試験は、MTESTウィンドウズ(登録商標)ソフトウェアプログラムによってモニター及び制御されたFullamによって作製された商業的引張ステージにおいて実施された。変形は、保持システムを介したステッピングモーターによって印加され、一方、一つの保持顎の終端に接続されたロードセルによって負荷が測定された。変位は、ゲージ長の変化を測定するために二つの保持顎に取り付けられた線形可変差動変圧器(LVDT)を用いて得られた。試験前に、リボンの厚み及び幅が、ゲージ長における異なる場所で少なくとも3回注意深く測定された。その後、平均値がゲージ厚み及び幅として記録され、次の応力及び歪み計算のための入力パラメーターとして用いられた。引張試験のための初期ゲージ長さは、二つの保持顎の前面の間でリボンのスパンを正確に測定することによってリボンが固定された後に決定された厳密な値で、〜9mmに調整された。全ての試験は、変位制御装置の下で、〜0.001s−1の歪み速度で実施された。総伸び、降伏強度、最大の引張強度、及びヤング率を含む引張試験結果の要約は、表24に示される。分かるように、引張強度値は、810MPaから1288MPaへと変化し、総伸びが0.83%から17.33%となる。特性の大きな散乱が、試験された全てのリボンに関して観測され、速い冷却での不均一な構造の形成を示唆している。
事例#18:Mn含有合金の引張特性
表25に記載される合金の引張特性は、4.53原子百分率までのレベルでマンガンを追加する効果を決定するために調査された。合金は、高純度研究グレード元素成分を用いて35gの分量で作製された。各合金の分量は、インゴットへとアーク溶解され、その後アルゴン雰囲気下で均質化された。結果として得られる35gのインゴットはその後、65mm×75mm×1.8mmの公称寸法でプレートへと鋳造された。
その後、鋳放しされたプレートは、30ksiで1時間、表26によって選択された温度で、熱間静水圧成形(HIPing)を受けた。HIPingは、モリブデン炉を備えるAmerican Isostatic Press Model 645マシーンを用いて行われた。サンプルは目標温度まで10℃/分で加熱され、30ksiの圧力下で1時間、温度を保持された。
引張試験片は、放電加工機(EDM)によってHIPが行われたプレートから切られた。複数の引張試験片は、表27における熱処理計画に従って熱処理された。熱処理は、Lindberg Blue炉を用いて実施された。空気冷却の場合、試料片は目標時間の間、目標温度で保持され、炉から取り出され、空気中で冷却された。ゆっくりした冷却の場合、試料片は目標温度まで加熱された後、1℃/分の冷却速度で炉と共に冷却された。その後、熱処理された試料片は、選択された合金の引張特性を決定するために試験された。
引張試験は、インストロンのブルーヒル制御装置及び分析ソフトウェアを用いて、インストロンモデル3369機械的試験フレーム上で実施された。サンプルは、1秒当たり1×10−3の歪み速度で変位制御装置下において室温で試験された。サンプルは、固定された下部冶具に乗せられ、上部冶具は動くクロスヘッドに取り付けた。50kNのロードセルは、負荷を測定するために上部冶具に取り付けられた。歪み測定は、高度なビデオ伸縮計(AVE)を用いて行われた。調査のための引張結果は、表28に示されている。結果の表から分かるように、調査された合金における引張強度は、753MPaから1511MPaの範囲である。示された実施例に関するシートの製造において用いられたセラミック(例えばセラミックるつぼ)がこれらのマンガン含有融解物に関して最適化されなかったことを留意することは有用である。これは一部のセラミックにおいて融解物におけるエントレインメント(entrainment)を引き起こし、一部の場合において延性を低下させる欠陥を生成する。より高い延性は、融解において用いられるセラミックを変えることによって予期される。総伸び値は、2.0%から28.0%まで変動した。歪み硬化指数は、降伏点で始まり、最大の引張強度に対応する点で終わる歪み範囲を用いて、平均値として計算された。実施例の引張曲線は、図65において提供され、合金の機械的応答が合金の化学的性質及び処理条件に応じて変動することを示している。
事例#19:追加の合金での融解紡糸の調査
融解紡糸は冷却表面処理の実施例であり、薄スラブ鋳造又は双ロール鋳造のいずれよりも高い、高い冷却速度が達成され得る。必要とされる充填サイズは小さく、プロセスは他の前述のプロセスと比較して速い。そのため、冷却表面処理に関する合金の可能性を素早く調査するために有用なツールである。高純度元素を用いて、表29に記載された合金の15gの必要量(charge)が測量された。その後、必要量は、アーク溶解のシステムの銅製炉床へ配された。必要量は、シールドガスとして高純度アルゴンを用いてインゴットへとアーク溶解された。インゴットは数回回転され、均一性を確保するために再融解された。混合後、インゴットは、およそ幅12mm、長さ30mm、厚さ8mmの指状の物の形状に鋳造された。その後、結果として得られた指状の物は、〜0.81mmのオリフィス径を備える石英るつぼにおける融解紡糸チャンバーに配された。
合金の密度は、空気と蒸留水との両方の重さを測ることが可能なはかりで、アルキメデス法を用いてインゴットをアーク溶解して測定された。合金それぞれの密度は、表30に示されており、7.45g/cmから7.71g/cmまで変化することが見出された。実験結果は、この技術の正確性が±0.01g/cmであることを明らかにした。
その後、アーク溶解された指状の物は、〜0.81mmのオリフィス径を備える石英るつぼにおける融解紡糸チャンバーに配された。その後インゴットは、RF誘導を用いて異なる雰囲気において融解されることで加工され、その後20m/sの接線速度で進む245mmの直径の銅製ホイール上へと押し出された。41μmから59μmの厚さを備える連続的なリボンが製造された。製造されたリボンの品質は、一部の合金を備える合金によって変化し、他よりもより均一な横断面を提供する。
示唆熱分析(DTA)は、Netzsch DSC404 F3 Pegasusシステムを用いて固化されたままのリボン上で実施された。スキャンは、表31に示されるように、酸化からサンプルを保護するための超高純度アルゴン充填ガスを用いて、100℃から1410℃まで10℃/分の一定の加熱速度で実施された。示されるように、(20m/sで融解紡糸された)複数のリボンは、わずかの金属ガラスを含み、他のものは含まない。製造されたリボンの厚みに基づいて、推定される冷却速度は、前述されたようなシートに関して特定された冷却速度を超える3×10K/sから6×10K/sであった。この実施例における合金に関して、1つから3つの明確な融解ピークと共に融解が生じることが見いだされた。固相線が、1374℃まで観測された融解イベントに伴って、1138℃から1230℃まで変動した。
金属リボンの機械的特性は、一軸性の引張試験を用いて室温で測定された。試験は、MTESTウィンドウズ(登録商標)ソフトウェアプログラムによってモニター及び制御されたFullamによって作製された商業的引張ステージにおいて実行された。変形は保持システムを介してステッピングモーターによって印加され、一方負荷は、一つの保持顎の終端に接続されたロードセルによって測定された。変位は、ゲージ長の変化を測定するために二つの保持顎に取り付けられた線形可変差動変圧器(LVDT)を用いて測定された。試験前に、リボンの厚み及び幅が、ゲージ長における異なる位置で少なくとも3回注意深く測定された。その後、平均値がゲージ厚み及び幅として記録され、続いての応力及び歪み計算のための入力パラメーターとして用いられた。引張試験のための初期ゲージ長は、二つの保持顎の前面の間でリボンのスパンを測定することによってリボンが固定された後に決定された厳密な値で、〜9mmに調整された。
全ての試験は、変位制御装置の下で、0.001s−1の歪み速度で実施された。3つの試験が各曲げられるリボンに関して実施され、1つから3つの試験は、曲げられないリボンに実施された。総伸び、降伏強度、及び最大の引張強度を含む引張試験結果の要約は、表32に示される。引張強度値は、282MPaから2072MPaまで変化する。総伸び値は、0.37%から6.56%まで変化し大部分のサンプルに関して鋳放しされた状態における合金の限られた延性を示す。複数のサンプルの破綻は、降伏することなく弾性域において生じ、図66に示される合金47等の他の物は明らかな延性を示した。これらのリボンの機械的特性においてかなりの変動が存在する。なぜなら、この変動は、引張特性がシート形状において予想されるものより低いことを意味する、サンプル形状における不規則性及び微細構造の欠陥によって部分的に引き起こされるからである。加えて、金属ガラスを含む合金に関して(すなわち、44、45、46、52、56、58及び60)、機械的特性、特に延性がより低いことが分かり得る。そのため、本出願における好ましい構造及びメカニズムは、結晶構造に関するものであり、部分的な又は完全な金属ガラスではない。
用途
クラス1鋼又はクラス2鋼としてのいずれかの形状において、本明細書での合金は、様々な用途を有する。これらは車両における構造部品を含むがそれに限定されるものではなく、車両のフレーム、フロントエンド構造体、フロアパネル、本体側面のインテリア、本体側面の外面、リア構造、並びにルーフ及びサイドレールにおける部品及び構成要素を含むがそれに限定されるものではない。全て網羅されていないが、固有の部品及び構成要素は、Bピラーの主要な強化、Bピラーベルトの強化、フロントレール、リアレール、フロントルーフヘッダ、リアルーフヘッダ、Aピラー、ルーフレール、Cピラー、ルーフパネルのインナー、及びルーフボウ(bow)を含むであろう。従って、クラス1鋼及びクラス2鋼は、車体デザインにおける衝突安全管理の最適化において特に有用であり、開示された鋼の強度及び延性が特に優位であろうエンジン区画、乗客、及び/又はトランク領域を含む主要エネルギー管理ゾーンの最適化を可能にするであろう。
また、本明細書での合金は、ドリル用途等の車両用途でない追加の用途を提供し得、従ってドリルカラー(掘削用ビットに重さを提供する構成要素)、ドリルパイプ(掘削を容易にするための掘削装置上で使用される中空壁パイプ)、ジョイントツール(すなわち、ドリルパイプのねじ端)、及びウェルヘッド(すなわち、掘削及び製造装置のための構造及び圧力を含む界面を提供する表面、又はオイル若しくはガスの井戸(well)の構成要素)としての使用を含み得、超深度及び超深海及び拡張された研究(ERD)調査井戸を含むがそれに限定されない。

Claims (18)

  1. 53.5原子百分率から72.1原子百分率のレベルまでのFeと、10.0原子百分率から21.0原子百分率までのCrと、2.8原子百分率から14.50原子百分率までのNiと、4.0原子百分率から8.0原子百分率までのBと、4.0原子百分率から8.0原子百分率までのSiと、必要に応じて、1.0原子百分率から3.0原子百分率までのV、1.0原子百分率までのZr、0.2原子百分率から3.0原子百分率までのC、1.0原子百分率のW、及び0.2原子百分率から4.6原子百分率までのMnの内の一以上と、不可避の不純物と、から成る金属合金を提供することと、
    前記合金を1100℃から2000℃の範囲における温度で融解させること、並びに500nmから20000nmの範囲におけるマトリックス粒子サイズ、及び25nmから500nmの範囲におけるホウ化物粒子サイズを提供するために11×10K/sから4×10−2K/sの範囲における冷却によって固化させることと、
    以下の粒子サイズ分布、及び機械的特性プロファイルの内の少なくとも一つを形成するために、前記合金に降伏強度を超えるレベルまで機械的に応力をかけること、さらに必要に応じて、700℃から1200℃の範囲における温度で加熱すること、を含む方法であって、前記ホウ化物粒子は、前記マトリックス粒子の肥大化に抵抗するピニング相を提供する方法:
    (a)マトリックス粒子サイズが500nmから20000nmの範囲であり、ホウ化物粒子サイズが25nmから500nmの範囲であり、ホウ化物の析出粒子サイズが1nmから200nmの範囲であり、前記析出粒子が六方晶の相を含み、前記合金が300MPaから840MPaの降伏強度、630MPaから1100MPaの引張強度、及び10%から40%の引張伸びを示す、又は、
    (b)マトリックス粒子サイズが、100nmから2000nmの範囲であり、ホウ化物粒子サイズが、25nmから500nmの範囲であり、ホウ化物の析出粒子が、1nmから200nmの範囲であり、前記析出粒子が六方晶の相を含む。
  2. 前記粒子サイズ分布(b)を有する前記合金が、720MPaから1580MPaの引張強度、及び5%から35%の伸びを示す、請求項1に記載の方法。
  3. 前記合金が、0.2から1.0の歪み硬化係数を示す、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記機械的特性プロファイル、及び粒子サイズ分布(a)又は(b)における前記六方晶の相が、(a)P63mc空間群(#186)を有するdihexagonal pyramidalクラス六方晶の相、及び/又は(b)六方晶のP6バー2C空間群(#190)を有するditrigonal dipyramidalクラスを含む、請求項1から3の何れか一項に記載の方法。
  5. 前記機械的特性プロファイル、及び粒子サイズ分布(a)又は(b)を有する前記合金が、シートの形状である、請求項1から4の何れか一項に記載の方法。
  6. 100nmから2000nmの範囲における前記粒子サイズ、25nmから500nmの範囲における前記ホウ化物粒子サイズ、1nmから200nmの範囲における前記析出粒子を有し、前記析出粒子が六方晶の相を含む前記合金がシートの形状である、請求項1から5の何れか一項に記載の方法。
  7. 前記機械的特性プロファイル、及び粒子サイズ分布(a)を有する前記合金が、車両に配される、請求項1から6の何れか一項に記載の方法。
  8. 前記合金が車両に配される、請求項1から7の何れか一項に記載の方法。
  9. 前記機械的特性プロファイル、及び粒子サイズ分布(a)又は(b)を有する前記合金が、ドリルカラー、ドリルパイプ、ジョイントツール、又はウェルヘッドの内の一つに配される、請求項1から8の何れか一項に記載の方法。
  10. 前記合金が、ドリルカラー、ドリルパイプ、ジョイントツール、又はウェルヘッドの内の一つに配される、請求項1から9の何れか一項に記載の方法。
  11. 53.5原子百分率から72.1原子百分率のレベルまでのFeと、10.0原子百分率から21.0原子百分率までのCrと、2.8原子百分率から14.50原子百分率までのNiと、4.00原子百分率から8.00原子百分率までのBと、4.00原子百分率から8.00原子百分率までのSiと、必要に応じて、1.0原子百分率から3.0原子百分率までのV、1.0原子百分率までのZr、0.2原子百分率から3.0原子百分率までのC、1.0原子百分率のW、及び0.2原子百分率から4.6原子百分率までのMnの内の一以上と、不可避の不純物と、から成る金属合金を提供することと、
    前記合金を1100℃から2000℃の範囲における温度で融解すること、並びに、フェライトを体積で10%から70%含む500nmから20000nmの範囲におけるマトリックス粒子サイズ、及び25nmから500nmの範囲におけるホウ化物粒子サイズを提供するために11×10K/sから4×10−2K/sの範囲における冷却によって固化させることであって、前記ホウ化物粒子は、熱が印加された際に前記マトリックス粒子の肥大化に抵抗するピニング相を提供し、前記合金は、300MPaから600MPaの降伏強度を有することと、
    前記合金を700℃から1200℃の範囲における温度で加熱することであって、前記粒子サイズが、100nmから2000nmの範囲であり、前記ホウ化物粒子サイズが、25nmから500nmの範囲のままであり、前記フェライトのレベルが、体積で20%から80%まで増加することと、
    300MPaから600MPaの前記降伏強度を超えるレベルまで前記合金に応力を印加することであって、前記粒子サイズが、100nmから2000nmの範囲のままであり、前記ホウ化物粒子サイズが、25nmから500nmの範囲のままであり、1nmから200nmの範囲におけるホウ化物の析出粒子の形成を伴い、前記合金が、720MPaから1580MPaの引張強度を有し、5%から35%の伸びを有することと、を含む方法。
  12. 前記析出粒子が、(a)P63mc空間群(#186)を有するdihexagonal pyramidalクラス六方晶の相、及び/又は(b)六方晶のP6バー2C空間群(#190)を有するditrigonal dipyramidalクラスを含む六方晶の相を含む、請求項11に記載の方法。
  13. 前記合金が、シートの形状である、請求項11又は12に記載の方法。
  14. 53.5原子百分率から72.1原子百分率のレベルまでのFeと、
    10.0原子百分率から21.0原子百分率までのCrと、
    2.8原子百分率から14.5原子百分率までのNiと、
    4.0原子百分率から8.0原子百分率までのBと、
    4.0原子百分率から8.0原子百分率までのSiと、
    必要に応じて、1.0原子百分率から3.0原子百分率までのV、1.0原子百分率までのZr、0.2原子百分率から3.0原子百分率までのC、1.0原子百分率のW、及び0.2原子百分率から4.6原子百分率までのMnの内の一以上と、
    不可避の不純物と、から成る金属合金であって、
    前記合金が、以下の内の少なくとも一つを示す金属合金:
    (a)前記合金が、300MPaから840MPaの降伏強度、630MPaから1100MPaの引張強度、10%から40%の引張伸びを提供する機械的特性プロファイルを示し、
    前記機械的特性プロファイル(a)が、以下の粒子サイズ分布:500nmから20000nmの範囲におけるマトリックス粒子サイズ、及び25nmから500nmの範囲におけるホウ化物粒子サイズ、及び1.0nmから200nmの範囲におけるホウ化物の析出粒子サイズを含み、
    1.0nmから200nmのサイズの前記析出粒子が、六方晶の相を含む、又は
    (b)前記合金が、300MPaから1300MPaの降伏強度、720MPaから1580MPaの引張強度、5.0%から35.0%の引張伸びを提供する機械的特性プロファイルを示し、
    前記機械的特性プロファイル(b)が、以下の粒子サイズ分布:100nmから2000nmの範囲におけるマトリックス粒子サイズ、25nmから500nmの範囲におけるホウ化物粒子サイズ、及び1nmから200nmの範囲におけるホウ化物の析出粒子サイズを含み、
    1nmから200nmのサイズの前記析出粒子が、六方晶の相を含む。
  15. 前記機械的特性プロファイル(a)が、0.1から0.4の歪み硬化係数を含む、請求項14に記載の金属合金。
  16. 前記機械的特性プロファイル(b)が、0.2から1.0の歪み硬化係数を含む、請求項14又は15に記載の金属合金。
  17. 前記六方晶の相が、P63mc空間群(#186)を有するdihexagonal pyramidalクラス六方晶の相、及び/又は六方晶のP6バー2C空間群(#190)を有するditrigonal dipyramidalクラスを含む、請求項14から16の何れか一項に記載の金属合金。
  18. (a)又は(b)に記載された前記合金が、シート材料の形状である、請求項14から17の何れか一項に記載の金属合金。
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