まず、本発明の実施例1におけるレンズ装置および撮像装置について説明する。図1は、本実施例におけるレンズ装置1を備えた撮像装置(レンズ装置1と撮像装置27(撮像装置本体)とを備えた撮像システム)の構成図(断面図)である。なお本実施例のレンズ装置1は、撮像装置本体に着脱可能(交換可能)に構成されている。ただし本実施例は、これに限定されるものではなく、レンズ装置と撮像装置本体とが一体的に構成された撮像装置にも適用可能である。
図1において、後述する第1レンズL1、フォーカスレンズL2、および、第3レンズL3の光軸方向(光軸OAの方向)をX方向と定義する。また、後述する撮像素子23の水平方向をY方向、垂直方向をZ方向とそれぞれ定義する。X方向に関し、入射面側を−X方向、射出面側を+X方向とそれぞれ定義する。Y方向に関し、入射面側からレンズ装置1を見て右側を−Y方向、左側を+Y方向とそれぞれ定義する。Z方向に関し、入射面側からレンズ装置1を見て上側を+Z方向、下側を−Z方向とそれぞれ定義する。
図1において、1はレンズ装置である。11はレンズ外筒である。レンズ外筒11の−X方向端には、第1レンズL1の保持枠12が取り付けられている。また、レンズ外筒11の+X方向端には、第3レンズL3が保持されている。レンズ外筒11の内部には、フォーカスレンズL2の保持部材13が、X方向に移動可能に配置されている。保持部材13には、X方向に延びた丸穴13aおよびU字穴13bが形成されている。また保持部材13には、YZ平面に対してX軸回りに±45°傾いた2つの斜面からなる切り欠き部13cが形成されており、後述する球面部105dと当接するように構成されている。
14は、フォーカスレンズL2の保持部材13を保持する保持軸である。保持軸14は、保持部材13に形成された丸穴13aと径合することにより、保持部材13をX方向に移動可能に保持している。また保持軸14は、外筒11と保持枠12に挟まれて固定保持されている。15は、保持部材13のX軸周りの回転を防止するための回転止め軸である。回転止め軸15は、保持部材13に形成されたU字穴13bに径合しており、保持軸14と回転止め軸15のピッチ誤差を吸収しながら、保持部材13のX軸回りの位相を決定する。
100はフォーカス駆動手段(駆動手段)である。フォーカス駆動手段100は、フォーカスレンズL2を移動させる。フォーカス駆動手段100は、球面部105dと切り欠き部13cの当接を介して保持部材13およびフォーカスレンズL2をX方向に駆動する。110は固定台である。固定台110は、フォーカス駆動手段100における固定側の部材であり、レンズ外筒11に固定されている。105は振動子保持部材である。振動子保持部材105は、フォーカス駆動手段100における可動側の部材である。後述する駆動原理により、固定台110に対して振動子保持部材105をX方向に相対的に駆動させる。振動子保持部材105のX方向の駆動力を球面部105dと切り欠き部13cの当接を介して保持部材13に伝えることにより、保持部材13およびフォーカスレンズL2をX方向に駆動させる。この際、球面部105dは、+Z方向に付勢されて切り欠き部13cに当接することにより、切り欠き部13cと球面部105dは、X方向にガタなく当接することが可能である。このような構成により、振動子保持部材105と保持部材13は、X方向に一体的に移動可能となる。これにより、フォーカス駆動手段100は、フォーカスレンズL2をオーバーシュートなく高精度に駆動制御することができる。
16はフォーカスレンズ位置検出手段(位置検出手段)、17はスケールである。フォーカスレンズ位置検出手段16は、スケール17に赤外光16aを投光し、その反射光を受光することにより、フォーカスレンズL2の位置(フォーカスレンズ位置)を検出する。スケール17には、低反射部と高反射部が所定のピッチで交互に並んだパターンが形成されている。反射光の強度変化の回数をカウントすることにより、フォーカスレンズ位置検出手段16とスケール17の相対位置関係が検出される。スケール17は保持部材13に貼り付けられているため、フォーカスレンズ位置検出手段16の検出結果に基づいて、保持部材13および保持部材13に保持されたフォーカスレンズL2の位置を検出することができる。
18は、レンズ装置1を撮像装置27に取り付けるための撮像装置取付部である。撮像装置27のレンズ装置取付部21との間でX軸周りのバヨネット連結することにより、レンズ装置1と撮像装置27とを着脱可能に構成している。19は被写体距離表示手段(表示手段)である。被写体距離表示手段19は、レンズ外筒11の+Z面に取り付けられており、後述する演算処理部20により算出された被写体距離、すなわちフォーカスレンズL2の位置に対応する被写体距離を表示する。
20は演算処理部(制御手段)である。演算処理部20は、レンズ装置1の全ての演算、制御、および、記憶動作を担う。演算処理部20の記憶領域にはレンズ情報が保存されている。レンズ情報は、被写体距離を算出する際に用いられる。このレンズ情報には、フォーカスレンズ位置検出手段16の検出結果と被写体距離とを対応付けるテーブル情報が含まれる。演算処理部20は、記憶領域に保存されたレンズ情報およびフォーカスレンズ位置検出手段16の検出結果に基づいて、フォーカスレンズ位置に対応する被写体距離を算出する被写体距離算出手段(算出手段)として機能する。また演算処理部20は、フォーカスレンズ位置検出手段16の検出結果に基づいてフォーカス駆動信号を生成し、フォーカス駆動手段100に目標位置への駆動を指示する(フォーカス駆動手段100を制御する)フォーカス駆動信号生成手段としての機能を有する。
21はレンズ装置取付部である。レンズ装置1の撮像装置取付部18との間でX軸周りのバヨネット連結することにより、レンズ装置1と撮像装置27とを着脱可能に構成している。22はカメラ外装である。カメラ外装22は、−X側面にレンズ装置取付部21、および、その内側にフォーカスレンズL2を透過した撮影光束を取り込むための円開口を有している。またカメラ外装22の+X側面には、外部表示手段26が設けられている。
23は撮像素子である。撮像素子23は、フォーカスレンズL2を介して得られた光束の結像面近傍に配置されており、結像した被写体像(光学像)を映像信号(画像信号)に変換する。24はカメラ演算処理部、25は記憶手段である。カメラ演算処理部24は、撮像装置27における全ての演算、制御、および、記憶動作を担っている。記憶手段25は、カメラ演算処理部24からの指令信号に基づいて撮像素子23で得られた映像信号を保存する。外部表示手段26は、カメラ演算処理部24からの指令信号に基づいて、撮像素子23で得られた映像信号を表示する。
撮像装置27は、撮像素子23で得られた映像信号を外部表示手段26に表示する第1の撮影モード、および、撮像素子23で得られた映像信号を記憶手段25に保存する第2の撮影モードの少なくとも2つのモードを有する。第1の撮影モードは、撮影者が外部表示手段26に表示されたリアルタイム画像を見ながら静止画撮影の準備を行うためのモードである。第2の撮影モードは、撮影者が外部表示手段26に表示されたリアルタイム画像を見ながら動画を撮影するためのモードである。撮影モードの切り替えは、カメラ外装22に設けられた不図示の入力手段の入力結果に基づいて、カメラ演算処理部24が判定して切り換える。
撮像装置27にレンズ装置1が取り付けられている状態では、レンズ装置1の演算処理部20と撮像装置27のカメラ演算処理部24は、通信線が接続されて通信可能に構成されている。これにより、演算処理部20とカメラ演算処理部24は、互いの状態を把握している。このため、レンズ装置1の演算処理部20は、撮像装置27の撮影モードに応じて、被写体距離表示手段19に表示する被写体距離を更新する周期を切り替えることが可能となる。
続いて、図2を参照して、被写体距離表示手段19に表示された被写体距離について説明する。図2は、被写体距離表示手段19に表示された被写体距離の説明図である。被写体距離表示手段19は、複数の画素を備えた液晶表示装置により構成されることにより、様々な表示方式により表示を行うことができる。図2(A)は、被写体距離をデジタル表示した場合について示している。また図2(B)は、被写体距離をアナログ的なバー表示をした場合について示している。
図2(A)では、7セグメントスタイルの数字でデジタル表示することにより、被写体距離を表示している。明確な数字データとして被写体距離が表示されるため、数値データとして活用しやすいというメリットがある。一方、従来のフォーカス環に連結したアナログ的な距離表示から大きく異なるため、慣れにくいというデメリットがある。このため図2(B)では、至近端から無限端までの範囲を示した固定目盛19aに対して、被写体距離を示す指標19bが動くような表示方式を採用している。このような表示方式とすることにより、従来のフォーカス環に連結したアナログ的な距離表示に慣れ親しんだ撮影者に分かりやすい表示が可能となる。ただし、正確な距離を数値として読みとることは困難である。そこで撮影者の好みや用途に応じて、本実施例ではデジタル表示とアナログ表示とを切り替え可能である。
続いて、図3を参照して、フォーカス駆動手段100の構成について説明する。図3は、フォーカス駆動手段100の構成図である。フォーカス駆動手段100は、交流電圧を印加した圧電素子の超音波振動を利用して駆動力を得る超音波モータを備えて構成されている。図3(A)はフォーカス駆動手段100を+Z方向から見た図、図3(B)はフォーカス駆動手段100を−Y方向から見た図である。
101はスライダ(被駆動部)である。スライダ101は、後述する振動子109が加圧接触する接触面101aを備えている。またスライダ101は、2本の固定ビス111を用いて固定台110に固定されている。102は振動板である。振動板102は、接触面101aに押圧を伴う加圧接触状態で接触する。103は圧電素子である。圧電素子103は、振動板102に接着剤などにより圧着されている。圧電素子103が振動板102に圧着された状態で圧電素子103に電圧を印加することにより、超音波振動を発生させて振動板102に楕円運動を発生させることができる。本実施例の超音波モータにおいて、振動板102および圧電素子103により振動子109が構成される。105は保持部材である。保持部材105は、振動子109周りの部品を保持している。
106は、加圧部材である。加圧部材106は、加圧受け部材108の貫通穴部に嵌合し、スライダ101の接触面101aに対して略垂直方向にのみ移動可能に保持される。そして保持部材105の中に取り付けられた不図示のバネ部材からの押圧力を振動子109に伝達し、振動子109をスライダ101に加圧接触させる。116は転動ボールである。転動ボール116は、保持部材105に形成された溝と後述する天板117に形成された溝との間に介在することにより、天板117に対して保持部材105を転動支持する。117は天板である。振動子109を保持した保持部材105を、スライダ101と天板117との間で挟み込むことにより、保持部材105を転動保持する。天板117は、4本の固定ビス118を用いて固定台110に固定されている。天板117の中央には、長方形開口117aが形成されており、保持部材105の突出部105cが露出してZ方向に突出している。
振動子109に発生した楕円運動により、振動子109とスライダ101との間にX方向の相対移動が発生した場合、固定台110、スライダ101、固定ビス111、天板117、および、固定ビス118が固定部となる。一方、振動子109を含む、加圧部材106、バネ部材、および、それらを保持する保持部材105が可動部となる。すなわち本実施例の超音波モータは、駆動源である振動子109自身が可動する自走式のモータユニットである。
保持部材105に設けられた球面部105a(図1に図示、図3には不図示)が、図1を参照して説明した切り欠き部13cに当接することにより、保持部材105はフォーカスレンズL2を保持する保持部材13と連結する。これにより、フォーカス駆動手段100は、フォーカスレンズL2をX方向に駆動することが可能となる。
続いて、図4および図5を参照して、本実施例におけるフォーカス駆動信号とフォーカスレンズ位置との関係、および、フォーカスレンズ位置に応じた被写体距離表示手段19の表示について説明する。図4は、フォーカス駆動信号とフォーカスレンズ位置の時間変化を示す図である。図5は、被写体距離表示手段19に表示される被写体距離の時間変化を示す図である。図4および図5では、フォーカス駆動信号とフォーカスレンズ位置とのずれが所定量未満の場合を示している。なお、フォーカス駆動信号とフォーカスレンズ位置とのずれとは、フォーカス駆動信号に基づく第1の位置と、フォーカスレンズの現在位置(実際の位置)とのずれである。
図4において、横軸は時間、縦軸はフォーカスレンズL2の位置(フォーカスレンズ位置)をそれぞれ示している。TRGTはフォーカス駆動信号、DTCはフォーカスレンズ位置である。演算処理部20で生成されたフォーカス駆動信号は、時間t1でフォーカス位置f0、時間t2でフォーカス位置f1、時間t3でフォーカス位置f2となるような駆動パターンを有する。フォーカス駆動手段100は、フォーカス駆動信号TRGTに基づいてフォーカスレンズL2を移動させる。DTCはフォーカスレンズ位置検出手段16により検出されたフォーカスレンズL2の位置である。駆動信号TRGTに対してフォーカスレンズL2は応答遅れがあるため、駆動信号TRGTに対してフォーカスレンズ位置DTCは多少遅れた波形となる。
図5は、図4を参照して説明したフォーカスレンズL2の動作(フォーカスレンズ位置)に対応した時間ごとの被写体距離の表示を示している。例えば、フォーカスレンズ位置f0に基づいて算出された被写体距離を10.0mm、フォーカスレンズ位置f1での被写体距離を11.0mm、フォーカスレンズ位置f2での被写体距離を12.0mmとする。このとき図5に示されるように、被写体距離表示手段19は、時間t1で10.0mm、時間t2で11.0mm、時間t3で12.0mと表示する。このように、フォーカス駆動信号TRGTとフォーカスレンズ位置DTCTとのずれが所定値より小さい場合、被写体距離表示手段19は、フォーカスレンズ位置L2に応じた被写体距離を表示する。撮影者は、被写体距離表示手段19に表示された被写体距離を観察することにより、フォーカス駆動に応じて被写体距離の変化の様子をリアルタイムで把握することが可能となる。
続いて、図6を参照して、フォーカスレンズL2に衝撃力が加わった場合の振動子109およびスライダ101の動作について説明する。図6は、フォーカスレンズL2の移動方向(X方向)に衝撃力が加わった場合の振動子109およびスライダ101の動作を示す図である。図6(A)は衝撃力が加わる前の状態、図6(B)は衝撃力が加わり振動子109が移動した状態をそれぞれ示している。図6(C)は衝撃力が加わる前の位置まで振動子109が復帰する途中の状態、図6(D)は衝撃力が加わる前の位置まで振動子109が復帰した状態をそれぞれ示している。図6(A)〜(D)は、時間経過の順に示されている。
図6(A)において、衝撃力が加わる前のフォーカスレンズL2の位置fをf0とする。振動子109は、フォーカスレンズ位置f=f0に対応する位置にある。このときの時間tをt4(t=t4)とする。図6(B)に示されるように、フォーカスレンズL2の移動方向である+X方向に、振動子109とスライダ101との間の静止摩擦力を超える衝撃力120が加わると、振動子109は+X方向に移動する。矢印121は振動子109の動作を示している。このときの振動子109の位置に応じたフォーカスレンズ位置fをf3(f=f3)とする。またこのときの時間tをt5(t=t5)とする。
続いて図6(C)に示されるように、振動子109は衝撃力が加わる前の位置に復帰するために−X方向に移動する。矢印122は、このときの振動子109の動作を示している。復帰途中の振動子109の位置に応じたフォーカスレンズ位置fをf4(f=f4)とする。またこのときの時間tをt6(t=t6)とする。その後、図6(D)に示されるように、フォーカスレンズ位置fはf0に戻る(f=f0)。このときの時間tをt7(t=t7)とする。
次に、図7、図8、および、図11を参照して、図6の場合におけるフォーカス駆動信号およびフォーカスレンズ位置の時間変化について説明する。図7は、図6の場合(フォーカス駆動信号とフォーカスレンズ位置とのずれが所定量以上の場合)におけるフォーカス駆動信号およびフォーカスレンズ位置の時間変化を示す図である。図8は、被写体距離表示手段19に表示される被写体距離の時間変化を示す図である。図11は、比較例としての被写体距離表示手段に表示される被写体距離の時間変化を示す図である。図7、図8、図11は、図6の状態になった場合(フォーカス駆動信号とフォーカスレンズ位置とのずれが所定量以上になった場合)について示している。
図7において、横軸は時間、縦軸はフォーカスレンズL2の位置(フォーカスレンズ位置)をそれぞれ示している。TRGTはフォーカス駆動信号、DTCはフォーカスレンズ位置である。図7(A)は、時間t4から時間t5までのフォーカス駆動信号とフォーカスレンズ位置との時間変化を示している。時間t4は図6(A)に、時間t5は図6(B)にそれぞれ対応している。時間t4では、衝撃力が加わる前の状態であるため、フォーカスレンズ位置DTCおよびフォーカス駆動信号TRGTはいずれもフォーカスレンズ位置f=f0となっている。
時間t5において、+X方向に振動子109とスライダ101の間の静止摩擦力を超える衝撃力120が加わり、振動子109は+X方向に移動する。このため、フォーカスレンズ位置DTCはf3まで動く。一方、フォーカス駆動信号TRGTに関しては、演算処理部20からの駆動指示がないため、フォーカス駆動信号TRGT(の指示位置)はf0のままである。このように、フォーカスレンズ位置TRGTがフォーカス駆動信号TRGT(の指示位置)とのずれが所定値以上になった場合、演算処理部20は、振動子109とスライダ101との間が滑ってフォーカスレンズ位置fがずれたと判定する。そして演算処理部20は、この判定結果に応じて、フォーカスレンズL2をフォーカスレンズ位置f3からフォーカスレンズ位置f0に復帰させる動作(復帰動作)に移行する。
図7(B)は、復帰動作におけるフォーカス駆動信号とフォーカスレンズ位置との時間変化を示している。図7(B)は、時間t5から時間t7までの様子を示しており、時間t5は図6(B)に、時間t6は図6(C)に、時間t7は図6(D)にそれぞれ対応している。演算処理部20は、元のフォーカスレンズ位置f=f0に復帰させるため、時間t5でフォーカスレンズ位置f3、時間t6でフォーカスレンズ位置f4、時間t7でフォーカスレンズ位置f0となるようなフォーカス駆動信号TRGTを生成する。これにより、フォーカスレンズ位置DTCを示す波形は、フォーカス駆動信号TRGTに対して多少遅れたフォーカスレンズ位置f0に復帰する波形となる。
このように、フォーカスレンズ位置TRGTとフォーカス駆動信号TRGT(の指示位置)とのずれが所定値以上になった場合、演算処理部20は、元のフォーカスレンズ位置f=f0に復帰する動作を行う。これにより、フォーカスレンズL2の移動方向に強い衝撃力が加わってフォーカスレンズL2が移動した場合の影響を低減することができる。本実施例において、元のフォーカスレンズ位置f=f0に復帰するフォーカスレンズ位置復帰手段としての機能は、演算処理部20が担っている。
図11は、図6および図7を参照して説明した状況における、比較例としての被写体距離の表示を示している。例えば、フォーカスレンズ位置f0に基づいて算出された被写体距離を10.0mm、フォーカスレンズ位置f3での被写体距離を10.2mm、フォーカスレンズ位置f4での被写体距離を10.1mmとする。このとき、衝撃力が加わる前の時間t4では10.0mmと表示されるが、時間t5で衝撃力が加わってフォーカスレンズ位置f=f3まで移動した場合、被写体距離が10.2mmと表示される。また時間t6では、元の位置への復帰動作中でフォーカスレンズ位置f=f4であるため、被写体距離は10.1mであると表示される。そして時間t7でフォーカスレンズ位置f=f0に復帰すると、被写体距離の表示も10.0mmに戻る。このように、衝撃力による滑りでフォーカス駆動信号とフォーカスレンズ位置とのずれが所定値以上になった場合、比較例としてのレンズ装置では、フォーカスレンズ位置に応じた被写体距離を被写体距離表示手段にそのまま表示される。このため、撮影者にフォーカスレンズ位置fが移動したことが認識されてしまう。また、被写体距離表示手段に表示される被写体距離が変動するため、被写体距離の表示品位が劣化する。
図8は、図6および図7を参照して説明した状況における、本実施例の被写体距離の表示を示している。時間t5で衝撃力が加わりフォーカスレンズ位置f=f3まで移動してもフォーカス駆動信号とフォーカスレンズ位置とのずれが所定値以上になると、被写体距離表示手段19は元のフォーカスレンズ位置f=f0に対応する被写体距離10.0mmを表示し続ける。また時間t6で元の位置への復帰動作中においても、被写体距離表示手段19は、元のフォーカスレンズ位置f=f0に対応する被写体距離10.0mmを表示し続ける。そして時間t7にてフォーカスレンズ位置f=f0に復帰すると、被写体距離表示手段19は、フォーカスレンズ位置fに応じた被写体距離10.0mmを表示する。
このように、フォーカス駆動信号とフォーカスレンズ位置とのずれが所定値以上になった場合、フォーカスレンズ位置がずれたときから元のフォーカスレンズ位置に戻るまで、元のフォーカスレンズ位置f=f0に対応する被写体距離10.0mmを表示し続ける。これにより、フォーカスレンズ位置fが移動したことが撮影者に気付かれにくくなる。また、被写体距離表示手段19に表示する被写体距離は変動しないため、被写体距離の表示品位の劣化を低減することができる。
続いて、図9を参照して、本実施例におけるレンズ装置1の制御方法について説明する。図9は、図6乃至図8を参照して説明したようにフォーカスレンズL2が移動した場合におけるレンズ装置1の動作(レンズ装置1の制御方法)を示すフローチャートである。図9の各ステップは、主に、演算処理部20の指令に基づいて実行される。
まずステップS01において、演算処理部20は、フォーカス駆動信号TRGTを取得する。続いてステップS02において、演算処理部20は、フォーカスレンズ位置検出手段16からフォーカスレンズ位置DTCを取得する。そしてステップS03において、演算処理部20は、フォーカスレンズ駆動信号TRGTとフォーカスレンズ位置DTCとの差が所定値D0よりも小さいか否かを判定する。本実施例において、所定値D0は許容錯乱円と光学敏感度とを掛けた値である。これにより、フォーカスレンズ駆動信号TRGTとフォーカスレンズ位置DTCとの差が所定値D0より小さい範囲であれば、衝撃によりフォーカスレンズL2が動いたとしても、撮影者は気付くことがないように構成することができる。ステップS03にて、フォーカスレンズ駆動信号TRGTとフォーカスレンズ位置DTCとの差が所定値D0よりも小さい場合、ステップS04に進む。そしてステップS04において、演算処理部20は、フォーカスレンズ位置検出手段16により得られたフォーカスレンズ位置DTCに対応する被写体距離を、被写体距離表示手段19に表示する。
続いてステップS05において、演算処理部20は、レンズ装置1の電源をオフにするか否かを判定する。この判定は、例えば、入力操作がない状態が所定時間以上経過しているか否かにより行われる。ステップS05にて電源をオフにすると判定された場合、本フローは終了する。一方、ステップS05にて電源をオフにすると判定されない場合、ステップS01に戻る。図6(A)、図7(A)、および、図8に示される時間t4のように、フォーカスレンズ駆動信号TRGTとフォーカスレンズ位置DTCとの差が所定値D0よりも小さい場合、ステップS01〜S05の動作を繰り返す。これにより、演算処理部20は、フォーカスレンズ位置検出手段16により得られたフォーカスレンズ位置DTCに対応する被写体距離を、被写体距離表示手段19に表示し続ける。
一方、ステップS03にて、フォーカスレンズ駆動信号TRGTとフォーカスレンズ位置DTCとの差が所定値D0以上の場合、ステップS06に進む。この動作は、図6(B)、図7(A)、および、図8における時間t5に対応している。ステップS06において、演算処理部20は、フォーカスレンズL2の位置を元の位置に復帰させるためのフォーカス駆動信号TRGTを生成する。この動作は、図7(B)に示される時間t5において、時間t5でフォーカスレンズ位置f3、時間t6でフォーカスレンズ位置f4、時間t7でフォーカスレンズ位置f0となるようなフォーカス駆動信号TRGTを生成する動作に対応する。
続いてステップS07において、演算処理部20は、ステップS02にて取得されたフォーカスレンズ位置DTCに対応する被写体距離を被写体距離表示手段19に表示する。そしてステップS08において、演算処理部20は、ステップS06にて生成されたフォーカス駆動信号TRGTに基づいて、フォーカス駆動手段100を制御する。これによりフォーカス駆動手段100は、演算処理部20による制御に従い、フォーカスレンズL2を移動(駆動)させる。
続いてステップS09において、演算処理部20は、ステップS02にて取得されたフォーカスレンズ位置DTCへの復帰が完了したか否かを判定する。復帰が完了していない場合、ステップS07に戻り、元のフォーカスレンズ位置に対応する被写体距離の表示およびフォーカス駆動を続ける。一方、ステップS09にて元のフォーカスレンズ位置に戻った場合、ステップS01に戻る。ステップS03にてフォーカスレンズ駆動信号TRGTとフォーカスレンズ位置DTCとの差が所定値D0以上であると判定してからステップS06〜S09を経てステップS01に戻る動作は、図6、図7、および図8における時間t5〜t7の動作に対応する。
このように演算処理部20は、フォーカスレンズL2の位置がフォーカス駆動信号に基づく第1の位置からずれた場合、フォーカスレンズL2を第1の位置に移動させるまで、第1の位置に対応する被写体距離を表示するように被写体距離表示手段19を制御する。すなわち演算処理部20は、フォーカスレンズL2の現在位置(実際の位置)が第1の位置からずれた場合でも、ずれた位置(実際の位置)を表示するのではなく、ずれる前のフォーカスレンズL2の位置(第1の位置)を継続して表示する。
好ましくは、演算処理部20は、フォーカスレンズL2の位置が第1の位置から所定値以上ずれたか否かを判定する。そして演算処理部20は、フォーカスレンズL2の位置が第1の位置から所定値以上ずれた場合、フォーカスレンズL2を第1の位置に移動させるまで、第1の位置に対応する被写体距離を表示するように被写体距離表示手段19を制御する。より好ましくは、演算処理部20は、フォーカスレンズL2の位置が第1の位置から所定値以上ずれた場合、フォーカスレンズL2を第1の位置に移動させるようにフォーカス駆動信号を生成する。また、より好ましくは、演算処理部20は、フォーカスレンズL2の位置が第1の位置から所定値以上ずれていない場合、フォーカスレンズL2の位置に対応する被写体距離を表示するように被写体距離表示手段19を制御する。
好ましくは、フォーカス駆動手段100(駆動手段)は、スライダ101(被駆動部)、スライダ101と接触する振動板102(接触部材)、および、振動板102に固着されて超音波振動を生成可能な圧電素子103を有する。より好ましくは、振動板102および圧電素子103により振動子109が構成されており、振動子109とスライダ101との相対移動方向は、フォーカスレンズL2の光軸方向である。
本実施例では、フォーカス駆動信号とフォーカスレンズ位置とのずれが所定値D0以上になった場合、ずれが所定値D0以上になったことが検知されてから元のフォーカスレンズ位置に戻るまで、元のフォーカスレンズ位置に対応する被写体距離を表示し続ける。これにより、フォーカスレンズ位置fが動いたことが撮影者に気付かれにくくなる。また、被写体距離表示手段19に表示される被写体距離は変動しないため、被写体距離の表示品位の劣化を低減することができる。
以上のように、フォーカスレンズ位置とフォーカス駆動信号とのずれが所定量以上になった場合、元のフォーカスレンズ位置にフォーカスレンズを復帰させる。そしてフォーカスレンズ位置が復帰するまでは、元のフォーカスレンズ位置に対応する被写体距離を被写体距離表示手段に表示する。このため本実施例によれば、被写体距離表示手段に表示された被写体距離が変動して表示品位が劣化することを低減させ、高品位な被写体距離の表示が可能なレンズ装置および撮像装置を提供することができる。