JP6325865B2 - 部品の破断判定方法、システム及びプログラム、並びに、理論成形限界線図の作成方法 - Google Patents

部品の破断判定方法、システム及びプログラム、並びに、理論成形限界線図の作成方法 Download PDF

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Description

本発明は、部品に外力や強制変位を加えて変形したとき、特にプレス成形中の部品に破断が発生するか否かについて、コンピュータを用いて判定する方法に関し、コンピュータによる解析技術の分野に属する。
従来、自動車車体等に用いられる、板材からプレス成形によって製造される部品の開発工程において、コンピュータを用いて様々な成形条件でプレス成形のシミュレーションを行い、シミュレーション結果に基づいて部品の破断の有無を判定することで、金型の製造前に、部品の破断が生じない適切な成形条件を求めることが知られている。
この破断判定は、具体的には、メッシュに分割された部品モデルの各要素の板厚中心における成形後の最大主ひずみε1及び最小主ひずみε2を有限要素法により求め、これら最大主ひずみε1及び最小主ひずみε2が、図15に示すような、予め材料毎に用意されたひずみの成形限界線図(FLD:Forming Limit Diagram、以下、「FLD」という。)において、成形限界線を境界とする破断発生領域と破断非発生領域のいずれに存在するかを確認し、破断発生領域に存在する場合に破断が発生し、また破断非発生領域に存在しても成形限界線に近いほど破断の危険性が高いと判定していた。
このFLDは、種々の引張条件に基づいて引張した板材に破断(局部くびれ)が発生したときのひずみを成形限界ひずみとして求め、最大主ひずみε1及び最小主ひずみε2を各軸とした直交座標系の主ひずみ平面(ε1,ε2)上にこの成形限界ひずみをプロットした点の集合よりなる曲線を成形限界線として求めたものである。一般に、実験により求められたFLDを実験FLD、理論により求められたFLDを理論FLDと呼ぶ。また、一般に、単軸引張や等二軸引張など、ひずみ比β(=ε2/ε1)が一定で変形する比例変形時の成形限界線図を比例変形FLD、ひずみ比βが成形中に変化する変形を非比例変形FLDと呼び、通常、破断判定には比例変形FLDが用いられる。
この実験FLDは、例えば、中島法やMarciniak法等の測定方法により求められる。具体的には、スクライブドサークル等、各種のパターンをマーキングした形状(幅)の異なる複数の試験片を用意し、破断が発生するまで、ひずみ比が一定のままひずみが直線状に増加するように、パンチを用いて試験片を変形し、変形後のマーキングの形状から破断やくびれが発生した位置におけるひずみを成形限界ひずみとする。
また、理論FLDは、例えば、Marciniak and Kuczynski Theory(以下、「MK法」という)等を用いて計算により求められる。このMK法とは、変形前の材料に板厚が不均一な不整部分が存在すると仮定し、この不整部分で局部くびれが発生して破断すると考える理論である。具体的には、図16に示すように、板厚が均一な均一部(a)の両面に中立面に対して対称に直線状の溝部(b)が設けられ、この溝部(b)の板厚tが均一部(a)の板厚tよりも薄いものを変形前のモデルとして設定する。このモデルに対して、板材の材料特性を考慮して、板材の均一部(a)の板厚中心に溝部(b)の延びる方向に対して中立面上で所定角度傾いた方向に応力(σ1、σ2)を与えて変形させたときの溝部(b)の板厚中心のひずみを演算する。この演算結果に基づいて、溝部(b)のみにひずみが集中した際にこの溝部(b)に破断が発生したと想定し、このときの溝部(b)におけるひずみを成形限界ひずみとする。
上述のようなFLDを参照してプレス成形のシミュレーションにより適切な成形条件を探索する手法は、製品設計段階でのコスト削減と設計期間の短縮を図る上で非常に有用なものであるが、以下のような課題があった。
すなわち、FLDは、通常、最終的なひずみが同じであっても、そのひずみに至るまでの途中の変形経路(ひずみ履歴)に応じて成形限界線が異なる、いわゆる変形経路依存性があることが知られている。図17には、3つの異なる変形経路での成形限界線A、B、Cが示されている。成形限界線Aは、単に比例変形を行った場合である。例えば、図17の成形限界線A上の任意の点aは、原点から点aに至る直線状の矢印Lに沿ってひずみ比一定で変形させたときの成形限界ひずみを示す。また、成形限界線Bは、単軸引張後に等二軸引張を行った場合である。例えば、成形限界線B上の任意の点bは、原点から点bに至る直線状の矢印Lb1に沿って単軸引張を行い、次に点bから点bに至る直線状の矢印Lb2に沿って等二軸引張を行ったときの成形限界ひずみを示す。さらに、成形限界線Cは、成形限界線Bとは逆に、等二軸引張後に単軸引張を行った場合である。例えば、成形限界線C上の任意の点cは、原点から点cに至る直線状の矢印Lc1に沿って等二軸引張を行い、次に点cから点cに至る直線状の矢印Lc2に沿って単軸引張を行ったときの成形限界ひずみを示す。図17からも明らかなように、途中の変形経路が異なると成形限界線も異なり、従って、FLDは変形経路依存性を有する。
そして、実際のプレス成形、特に多工程を有するプレス成形では、非比例変形により材料が複雑に変形するのが通常である。そのため、実際にプレス加工した際、比例変形FLDに基づき破断と判定される変形をさせても破断しない、逆に、破断しないと判定される変形させても破断してしまう場合があった。したがって、比例変形FLDを単純に参照しても、複雑な変形を伴う実際のプレス成形について適切な成形条件を求めることが難しかった。
このような変形経路依存性に対応するために、例えば特許文献1には、相当塑性ひずみとひずみ比により破断判定を行うこと、また、非特許文献1には、変形経路に依存しない限界応力を用いて破断判定を行うことが提案されている。
また、一般に、実際の成形工程では、図18(a)に示すように、例えば絞り成形の場合、パンチPをダイDに対して押し上げる際、ダイDとブランクホルダH間に挟まれた板材の部分がダイDとパンチP間に屈曲しながら引き込まれる際、この部分に破断が生じる現象が多く見られる。ダイDの横平坦部aからダイDの開口周縁の角部bを通過する板材は、一方向に曲げられた後、縦平坦部cに達すると真っ直ぐに戻される、いわゆる曲げ戻しを受ける。このとき材料にひずみや応力が発生し、角部bでの板材の応力分布は、図18(b)に示すように、板厚方向外側で圧縮応力(−)、板厚方向内側で引張応力(+)が生じる。これに対し、縦平坦部cでの板材の応力分布は、図18(c)に示すように、反対に、板厚方向外側で引張応力(+)、板厚方向内側で圧縮応力(−)が生じる。ひずみも応力と同じ方向にそれぞれ発生する。このように、引張り変形に加え、曲げと曲げ戻しによる大きな変形を受けるため、また材料が加工硬化するために破断が発生し易くなると考えられる。
そのため、従来の引張変形に基づいたFLDを用いただけでは、上述のような破断の発生の一因である曲げ変形が何ら考慮されないので、高精度な破断判定ができなかった。これを考慮するために、例えば特許文献2には、曲げ変形に応じてFLDを補正する補正方法が提案されている。
また、上述の破断判定方法をプレス成形シミュレーションに実際に適用する際にも、以下のような課題があった。
プレス成形シミュレーションは、その現象の非線形性であるので、わずかな変形時のひずみや応力の状態を計算し、その計算を繰り返すことで解を求めている。よって、シミュレーション中に変化するひずみデータを繰り返し計算の全てのステップの全要素について保存するのは、データ量が膨大になるため、現実的に不可能である。これに対して、例えば非特許文献1には、最終状態だけで判定可能な、変形経路に依存しない判定方法が提案されている。
また、材質や板厚などの材料に関する要因や、変形経路によってFLDが異なるので、シミュレーション適用時に破断判定に必要と思われる全てのFLDを予め登録したデータベースを構築するのは、現実的に困難である。これに対して、例えば、FLDを計算で求める(理論FLDの利用)方法、板厚によってFLDを補正する方法の提案が多数されている。
さらに、シミュレーション結果を用いて成形条件を最適化する際、上述のように実際に破断に至る変形経路は多岐に亘るので、少ないパラメータを最適化の指標として用いることは非常に難しい。また、実験FLDを用いる場合、ひずみがマーキングのサイズ(半径)に依存するという課題もあり、これに対しては、例えば非特許文献2には、マーキングの半径に応じてひずみを変換する式を用いることが提案されている。
特開2007−152407号公報 特開2012−033039号公報
Yoshida, K, Kuwabara, T., Kuroda, M.:Path-dependence of the forming limit stresses in sheet metal, Int. J. Plasticity, 23-3 (2007), 361-384 新田淳,吉田亨,橋本浩二, 栗山幸久:第56回塑加講演論文集,(2005),39
しかし、上述の特許文献1、非特許文献1の提案手法では、非比例変形に対応できるが、曲げ変形には対応できない。また、特許文献2、非特許文献2の提案手法では、曲げ変形に対応できるが、非比例変形に対応できない。すなわち、これまでに、任意の変形経路に対応できると共に、曲げ変形を考慮した破断判定ができる技術は存在しなかった。したがって、本発明は、非比例変形と曲げ変形のいずれにも対応できる破断判定方法を提供し、プレス成形シミュレーションにおいて実用的な解析時間でより高精度に部品の破断を判定することを課題とする。
前記課題を解決するため、本発明に係る破断判定方法は、次のように構成したことを特徴とする。
まず、本願の請求項1に記載の発明は、
板状の部品が曲げ変形を含めた所定の変形をしたときの破断を判定する破断判定方法であって、
前記部品において破断を評価する均一な板厚の部分の表裏面に、変形時の応力方向に対して所定角度傾斜した方向に延びる幅及び深さが一定の溝部がその中立面に対して対称に仮想的に設けられた仮想不整領域と、該仮想不整領域の周辺にある周辺領域と、から構成され、前記仮想不整領域の板厚が前記周辺領域の板厚よりも薄い破断判定モデルを設定するモデル設定ステップと、
変形時の前記周辺領域における板厚方向の位置に応じたひずみ増分を入力する周辺領域ひずみ増分入力ステップと、
算出された前記周辺領域のひずみ増分に基づいて、前記仮想不整領域と前記周辺領域の境界における力の釣り合い条件と、前記仮想不整領域及び前記周辺領域におけるひずみ増分の板厚方向の位置に対する線形性条件とを共に満たす前記仮想不整領域における板厚方向の位置に応じたひずみ増分を算出する仮想不整領域ひずみ増分算出ステップと、
入力された前記周辺領域のひずみ増分と算出された前記仮想不整領域のひずみ増分に基づいて、前記仮想不整領域に対する前記周辺領域のひずみ増分比を算出する領域間ひずみ増分比算出ステップと、
前記周辺領域のひずみ増分に基づいて、前記仮想不整領域と前記周辺領域の板厚比、前記溝部の前記所定角度をそれぞれ更新するパラメータ更新ステップと、
算出された前記ひずみ増分比と所定の破断しきい値の大きさを比較し、前記ひずみ増分比が前記破断しきい値よりも大きい場合、破断を評価する前記部分が破断したと判定する破断判定ステップと、
を有することを特徴とする。
また、本願の請求項2に記載の発明は、前記請求項1に記載の発明において、
前記モデル設定ステップの後、プレス成形シミュレーションにおいて形状モデルの所定部位に外力や強制変位を加えて変形したときの前記形状モデル上の各要素内の全積分点についての有限要素解析データを前記変形の進行に応じて取得する解析データ取得ステップと、
前記周辺領域ひずみ増分入力ステップにおいて、取得された前記解析データに基づいて前記周辺領域における各積分点の板厚方向の位置のひずみ増分を入力し、
前記仮想不整領域ひずみ増分算出ステップにおいて、前記仮想不整領域における各積分点の板厚方向の位置のひずみ増分を算出する
を有することを特徴とする。
また、本願の請求項3に記載の発明は、前記請求項1または2のいずれか1項に記載の発明において、
前記モデル設定ステップにおいて、前記周辺領域に対する前記仮想不整領域の板厚比の初期値として、引張試験による破断ひずみの実測値との誤差の合計が最も小さくなるような板厚比を設定する
ことを特徴とする。
また、本願の請求項4に記載の発明は、前記請求項1から3のいずれか1項に記載の発明において、
Bauschinger効果を考慮することが可能である定式化を用いる
ことを特徴とする。
さらに、本願の請求項5に記載の発明は、
板状の部品が曲げ変形を含めた所定の変形をしたときの破断を判定する破断判定システムであって、
前記部品において破断を評価する均一な板厚の部分の表裏面に、変形時の応力方向に対して所定角度傾斜した方向に延びる幅及び深さが一定の溝部がその中立面に対して対称に仮想的に設けられた仮想不整領域と、該仮想不整領域の周辺にある周辺領域と、から構成され、前記仮想不整領域の板厚が前記周辺領域の板厚よりも薄い破断判定モデルを設定するモデル設定部と、
変形時の前記周辺領域における板厚方向の位置に応じたひずみ増分を入力する周辺領域ひずみ増分入力部と、
算出された前記周辺領域のひずみ増分に基づいて、前記仮想不整領域と前記周辺領域の境界における力の釣り合い条件と、前記仮想不整領域及び前記周辺領域におけるひずみ増分の板厚方向の位置に対する線形性条件とを共に満たす前記仮想不整領域における板厚方向の位置に応じたひずみ増分を算出する仮想不整領域ひずみ増分算出部と、
入力された前記周辺領域のひずみ増分と算出された前記仮想不整領域のひずみ増分に基づいて、前記仮想不整領域に対する前記周辺領域のひずみ増分比を算出する領域間ひずみ増分比算出部と、
前記周辺領域のひずみ増分に基づいて、前記仮想不整領域と前記周辺領域の板厚比、前記溝部の前記所定角度をそれぞれ更新するパラメータ更新部と、
算出された前記ひずみ増分比と所定の破断しきい値の大きさを比較し、前記ひずみ増分比が前記破断しきい値よりも大きい場合、破断を評価する前記部分が破断したと判定する破断判定部と、を有する
ことを特徴とする。
さらに、本願の請求項6に記載の発明は、
板状の部品が曲げ変形を含めた所定の変形をしたときの破断を判定する破断判定プログラムであって、
コンピュータを
前記部品において破断を評価する均一な板厚の部分の表裏面に、変形時の応力方向に対して所定角度傾斜した方向に延びる幅及び深さが一定の溝部がその中立面に対して対称に仮想的に設けられた仮想不整領域と、該仮想不整領域の周辺にある周辺領域と、から構成され、前記仮想不整領域の板厚が前記周辺領域の板厚よりも薄い破断判定モデルを設定するモデル設定部と、
変形時の前記周辺領域における板厚方向の位置に応じたひずみ増分を入力する周辺領域ひずみ増分入力部と、
算出された前記周辺領域のひずみ増分に基づいて、前記仮想不整領域と前記周辺領域の境界における力の釣り合い条件と、前記仮想不整領域及び前記周辺領域におけるひずみ増分の板厚方向の位置に対する線形性条件とを共に満たす前記仮想不整領域における板厚方向の位置に応じたひずみ増分を算出する仮想不整領域ひずみ増分算出部と、
入力された前記周辺領域のひずみ増分と算出された前記仮想不整領域のひずみ増分に基づいて、前記仮想不整領域に対する前記周辺領域のひずみ増分比を算出する領域間ひずみ増分比算出部と、
前記周辺領域のひずみ増分に基づいて、前記仮想不整領域と前記周辺領域の板厚比、前記溝部の前記所定角度をそれぞれ更新するパラメータ更新部と、
算出された前記ひずみ増分比と所定の破断しきい値の大きさを比較し、前記ひずみ増分比が前記破断しきい値よりも大きい場合、破断を評価する前記部分が破断したと判定する破断判定部として機能させる
ことを特徴とする。
最後に、本願の請求項7に記載の発明は、
任意の変形経路の理論成形限界線図の作成方法であって、
部品に所望の変形を加えるための複数の変形経路を設定する変形経路設定ステップと、
前記部品において破断を評価する均一な板厚の部分の表裏面に、変形時の応力方向に対して所定角度傾斜した方向に延びる幅及び深さが一定の溝部がその中立面に対して対称に仮想的に設けられた仮想不整領域と、該仮想不整領域の周辺にある周辺領域と、から構成され、前記仮想不整領域の板厚が前記周辺領域の板厚よりも薄い破断判定モデルを設定するモデル設定ステップと、
各変形経路に沿って変形するように、変形時の前記周辺領域における板厚方向の位置に応じたひずみ増分を入力する周辺領域ひずみ増分入力ステップと、
算出された前記周辺領域のひずみ増分に基づいて、前記仮想不整領域と前記周辺領域の境界における力の釣り合い条件と、前記仮想不整領域及び前記周辺領域におけるひずみ増分の板厚方向の位置に対する線形性条件とを共に満たす前記仮想不整領域における板厚方向の位置に応じたひずみ増分を算出する仮想不整領域ひずみ増分算出ステップと、
入力された前記周辺領域のひずみ増分と算出された前記仮想不整領域のひずみ増分に基づいて、前記仮想不整領域に対する前記周辺領域のひずみ増分比を算出する領域間ひずみ増分比算出ステップと、
前記周辺領域のひずみ増分に基づいて、前記仮想不整領域と前記周辺領域の板厚比、前記溝部の前記所定角度をそれぞれ更新するパラメータ更新ステップと、
算出された前記ひずみ増分比と所定の破断しきい値の大きさを比較し、前記ひずみ増分比が前記破断しきい値よりも大きい場合、破断を評価する前記部分が破断したと判定する破断判定ステップと、
破断判定時の前記周辺領域の最大主ひずみ及び最小主ひずみを直交座標上に点としてプロットするひずみプロットステップと、
各変形経路について得られた複数の前記点に沿って成形限界線を作成する成形限界線作成ステップと、を有する
ことを特徴とする。
以上の構成により、本願各請求項に係る発明によれば、次の効果が得られる。
請求項1に係る発明によれば、破断判定モデルについて、変形時の周辺領域における板厚方向の位置に応じたひずみ増分を入力し、この周辺領域のひずみ増分に基づいて、仮想不整領域における板厚方向の位置に応じたひずみ増分を算出するので、部品の板厚方向にひずみ勾配が生じる曲げ変形の場合であっても、この曲げ変形を考慮して破断判定を行うことができる。
また、周辺領域のひずみ増分として任意の値を入力することができるので、時間と共にひずみ比が変化する非比例変形の場合も、これに応じたひずみ増分を与えることができ、すなわち、任意の変形経路に対応できる。
したがって、本発明によれば、曲げ変形と非比例変形のいずれにも対応することができる。
請求項2に係る発明によれば、プレス成形シミュレーションのFEM解析データを用いて破断判定を行うことができるので、破断判定結果から最適なプレス成形条件の検討を行うことができる。
また、周辺領域のひずみ増分に対する仮想不整領域のひずみ増分の比である領域間ひずみ増分比というスカラー値に基づいて破断判定を行うので、領域間ひずみ増分比という1つのパラメータの最終結果のみを記憶して演算すればよく、領域間ひずみ増分比の履歴も、その他のパラメータも不要である。したがって、プレス成形シミュレーションにおいて、実用的な解析時間でより高精度に部品の破断を判定することができる。
請求項3に係る発明によれば、周辺領域に対する仮想不整領域の板厚比の初期値として、引張試験による破断ひずみの実測値との誤差の合計が最も小さくなるような板厚比を設定するので、さらに解析精度を向上させることができる。
請求項4に係る発明によれば、曲げ変形のときの応力の状態をより正確に表すために、Bauschinger効果を考慮することが可能である定式化を用いているので、曲げ変形時のさらなる解析精度向上が可能である。
請求項5、6に係る発明によれば、請求項1に係る方法の発明と同様の効果を得ることができる。
請求項7に係る発明によれば、曲げ変形、非比例変形など任意の変形経路の理論成形限界線図を作成することができるので、実際の製品に生じる変形経路で理論FLDを作成し、この理論FLDを用いることでより最適な製品設計を行うことができる。
また、コンピュータを用いて実用的な解析時間でFLDを作成できるので、引張曲げ試験装置を用いて実験FLDを求める場合に比べてコストを削減することができる。
本発明の第1の実施形態に係るプレス成形解析システムの全体構成を示すブロック図である。 同システムの処理装置の構成を示すブロック図である。 同システムの記憶装置に記憶されているプログラム及びデータの説明図である。 FEM解析データの積分点データテーブルのデータ構造を示す図である。 FEM解析データの要素構成テーブル、材料属性データテーブル、節点座標テーブルのデータ構造を示す図である。 材料パラメータテーブルのデータ構造を示す図である。 MK法パラメータテーブルのデータ構造を示す図である。 同システムの出力装置に出力表示された画面の例を示す図である。 プレス成形装置について説明する図である。 破断判定モデルについて説明する図である。 破断判定処理部の動作を示すフローチャートである。 第1の実施形態の適用例について説明する図である。 本発明の第2の実施形態に係る理論FLD作成方法を示すフローチャートである。 図13に従って作成される理論FLDについて説明する図である。 従来のFLDによる破断判定について説明する図である。 MK法について説明する図である。 FLDの変形経路依存性について説明する図である。 プレス成形時の曲げ変形について説明する図である。
以下、本発明の第1の実施形態に係るプレス成形解析システム1について説明する。
(1)プレス成形解析システムの概要
図1は、プレス成形解析システム1の中心となるコンピュータ10の構成を示す図である。このコンピュータ10は、CPU等の処理装置11と、メモリまたはハードディスク等の記憶装置12と、キーボード、マウスまたはCD−ROMドライブ等の入力装置13と、液晶ディスプレイまたはプリンタ等の出力装置14とを有する。
(1−1)処理装置
図2は、図1の処理装置11の構成を示すブロック図である。この処理装置11は、一連の作業プロセスを結合したものであり、プリプロセス部100と、該プリプロセス部100に続くプロセス部200と、該プロセス部200に続くポストプロセス部300とを備えている。また、処理装置11は、その機能から、プレス成形シミュレーションシステム400及び破断判定処理部500に大別される。
プレス成形シミュレーションシステム400は、プリプロセス部100に形状モデル生成部410、プロセス部200にシミュレーション部420、ポストプロセス部300に結果表示部430をそれぞれ備えている。
形状モデル生成部410は、プレス成形に製造される製品の形状に関する製品形状データ、該製品のための金型の形状に関する金型形状データ及びプレス成形される前のブランク材の形状に関するブランク形状データを生成する。シミュレーション部420は、形状モデル生成部410により生成された金型形状モデル等を用いてプレス成形シミュレーションを行う。結果表示部430は、シミュレーション部420の出力したシミュレーション結果を出力装置14に表示する。
破断判定処理部500は、プロセス部200に設けられており、解析データ取得部510、周辺領域ひずみ増分入力部520、仮想不整領域ひずみ増分算出部530、領域間ひずみ増分比算出部540、MK法パラメータ更新部550及び破断判定部560を備えている。
解析データ取得部510は、シミュレーション部420から時間ステップ毎にFEM解析データDT1を取得する。取得されたFEM解析データDT1に基づいて、周辺領域ひずみ増分入力部520は、破断判定モデルの変形時の周辺領域における各積分点の板厚方向の位置のひずみ増分を入力する。仮想不整領域ひずみ増分算出部530は、算出された周辺領域のひずみ増分に基づいて、所定の条件を満たす仮想不整領域における板厚方向の位置のひずみ増分を算出する。領域間ひずみ増分比算出部540は、解析データ取得部510によって取得されたFEM解析データに基づいて破断判定の基準となる領域間ひずみ増分比を算出する。MK法パラメータ更新部550は、領域間ひずみ増分比算出部540における計算値に基づいてMK法パラメータを更新する。破断判定部560は、算出された領域間ひずみ増分比に基づいて破断の有無を判定する。
なお、ポストプロセス部300に、破断判定処理部500によって判定された破断判定結果のみを表示する破断判定結果表示部(図示しない)を別途設け、プレス成形シミュレーション結果とは別に破断判定結果を表示してもよい。
(1−2)記憶装置
図3は、図1の記憶装置12の構成を概略的に示すブロック図である。記憶装置12はプログラム記憶部12Aとデータ記憶部12Bとから主に構成されている。プログラム記憶部12Aは、自動メッシュ作成プログラム(メッシャ)PR1、シミュレーションプログラム(ソルバ)PR2、破断判定プログラムPR3及び結果表示プログラムPR4をそれぞれ格納するプログラム格納部12A〜12Aを有している。各プログラムPR1〜PR4は、上述の処理装置11における形状モデル生成部410、シミュレーション部420、破断判定処理部500、結果表示部430によってそれぞれ実行される。
また、データ記憶部12Bは、形状モデルデータDT2、材料パラメータDT3及びMK法パラメータDT4をそれぞれ格納するデータ格納部12B〜12Bを有している。形状モデルデータDT2は、形状モデル生成部410により生成され、シミュレーション部420で用いられる。データDT3、DT4は、破断判定処理部500で用いられる。
(1−2−1)解析データ
次に、解析データDT1について説明する。解析データDT1には、積分点データテーブル、要素構成テーブル、材料属性データテーブル、節点座標テーブルが含まれている。以下、図4〜図6を参照しながら各テーブルについて説明する。
図4に示すように、積分点データテーブルは、プレス成形シミュレーションの対象となる形状モデルを構成する各シェル要素(以下、単に「要素」という)に含まれる積分点番号P1、P2…と、各積分点が含まれる要素番号E1、E2…と、各積分点の要素座標系での位置成分(X、Y、Z)と、応力成分(σXX、σXY、σXZ、σYX、σYY、σYZ、σZX、σZY、σZZ)と、ひずみ成分(εXX、εXY、εXZ、εYX、εYY、εYZ、εZX、εZY、εZZ)とから構成されている。
図5(a)に示すように、要素構成テーブルは、要素番号E1、E2…、各要素の材料番号M…、面内積分点数及び面外積分点数、各要素に含まれる第1節点番号、第2節点番号、第3節点番号及び第4節点番号N…から構成されている。
図5(b)に示すように、材料属性データテーブルは、材料番号M…、材料データから構成されている。
図5(c)に示すように、節点座標テーブルは、節点番号N1、N2…、各節点の全体座標系での位置成分(X、Y、Z)から構成されている。
(1−2−2)形状モデルデータ
形状モデルデータには、製品形状モデルデータ、金型形状モデルデータ及びブランク形状モデルデータが含まれる。製品形状モデルデータは、解析を行う対象となる製品の形状モデルを示すデータであり、三次元CADソフトウェアを用いて作成されたIGES、DXF、DWG等のファイル形式の三次元CADデータ等に基づいて有限要素に離散化したメッシュデータ等である。金型形状モデルデータは、プレス成形装置を構成するダイ等のプレス金型の形状モデルを示すデータである。ブランク形状モデルデータは、プレス成形装置により成形されるブランク材の形状モデルを示すデータである。
(1−2−3)材料パラメータテーブル
図6に示すように、材料パラメータテーブルDT3は、材料番号M…、Hillの異方性パラメータ(F、G、H、N)、Swiftモデルパラメータ(K、ε、n)、Y−U(Yoshida-Uemori)モデルパラメータ(C、a0、b…a、α、β)とから構成されている。
(1−2−4)MK法パラメータテーブル
図7に示すように、MK法パラメータテーブルDT3は、要素番号E1、E2…、領域間板厚比D、溝角度θ、仮想不整領域Bの応力成分(σXX、σXY、σXZ、σYX、σYY、σYZ、σZX、σZY、σZZ)、仮想不整領域Bのひずみ成分(εXX、εXY、εXZ、εYX、εYY、εYZ、εZX、εZY、εZZ)とから構成されている。
(1−3)入力装置
入力装置13は、CADデータ、メッシュデータ等の製品形状に関するデータの入力、シミュレーション時の解析条件等の各種条件の設定またはシステムの制御等に用いられる。
(1−4)出力装置
出力装置14には、入力画面、処理結果等が出力される。例えば出力装置14がディスプレイの場合には、図8に示すように、画面左側には、相当塑性ひずみ等の大きさに応じて色分けされた成形品の三次元形状モデルがグラフィック表示され、このモデル上にプレス成形シミュレーション結果を示す破断位置が重ねて表示される。また、画面右側には、形状データID、材料ID等の入力データ、Bauschinger効果の考慮の有無等の解析条件及び破断判定結果が表示される。
(2)プレス成形装置
プレス成形シミュレーションシステム400によってシミュレーションを行うプレス成形装置について、図9を参照しながら説明する。
図9に示すように、例えば絞り成形を行うためのプレス成形装置は、ダイD、しわ押さえF及びパンチPを有している。上型となるダイDは、その下面にキャビティCを有する。下型となるしわ押さえFは、その中央にダイDのキャビティCの輪郭にほぼ沿った形状の開口を有し、その周囲の上面にダイDのキャビティCの周囲の面に合わせた形状のしわ押さえ面を有する。同じく下型となるパンチPは、その外形はしわ押さえFの開口の形状に合わせた形状で若干小さく形成されており、その上面は凸形状を有する。なお、上型となるダイDは、必要に応じて、その下面のしわ押さえ面にビードを設け、下型となるしわ押さえFは、その上面にビードに対向して凹部を設けてもよい。
このパンチPは、しわ押さえFの開口の内部で昇降できるように、しわ押さえFの開口の内壁面に対して間隙を設けて配置されている。図9(a)に示すように、しわ押さえFに対してパンチPが最も下降した状態では、パンチPの最上端はしわ押さえFのしわ押さえ面と同じ高さか、それよりも低く設定されている。また、図9(b)に示すように、しわ押さえFに対してパンチPが最も上昇した状態では、成形品が所望の深さとなるように設定されている。
このプレス成形装置を用いたプレス成形について説明する。まず、図9(a)に示すように、製品の素材となる平板状のブランクBの周囲をダイDのキャビティCの周囲の下面としわ押さえFの上面との間で所定の圧力で挟んでしわ押さえを行う。
次に、図9(b)に示すように、パンチPを上昇させ、ブランクBをダイDのキャビティC内に押し込む。なお、パンチPを固定してダイD及びしわ押さえFを下降させてもよい。
このプレス成形装置による成形品は、特にダイDの肩部Rを通過して曲げ・曲げ戻しを受けた部分Aにおいて、破断が生じるおそれがある。一般的に、しわ押さえ力が大きい、ダイDの肩部Rの半径が小さい、ビードが多いまたは潤滑が少ない等の条件の下では、破断が発生しやすくなる。
(3)破断判定モデル
破断判定処理部500において取り扱う破断判定モデルについて、図10を参照しながら説明する。図10(a)は、メッシュ化されたブランク形状モデルの一要素を拡大した図であり、図10(b)は、破断判定モデルにおける領域A、Bの境界部の拡大断面図である。
図10(a)に示すように、ブランク形状モデルは、本実施形態では、4つの節点で構成された複数のシェル要素でメッシュ化されており、各要素の内部には、平面視で4箇所(×で図示)に配置され、各箇所で板厚方向Zに2つの積分点が中立面に対して対称に設けられている。
そして、本発明では、各要素の表裏面に幅及び深さが一定の溝部がその中立面に対して対称に仮想的に設けられているものとする。この溝部が設けられた領域を仮想不整領域Bと呼び、該仮想不整領域Bの周辺にある領域を周辺領域Aと呼ぶ。仮想不整領域Bと周辺領域Aとの境界線は、全体座標(X、Y、Z)に対して所定角度θだけXY平面内で回転した局所座標(n、t、Z)のt軸方向に延びている。
なお、図10(a)には、平面視で要素の中心に仮想不整領域Bが設けられているが、仮想不整領域Bが各要素のどこに設けられているかは、各要素の破断判定結果に直接影響しないので、これに限定されるものではない。また、各要素は3節点で構成されてもよい。
図10(b)に示すように、破断判定モデルの周辺領域Aの板厚tと仮想不整領域Bの板厚tは、各領域において各々均一であり、仮想不整領域Bの板厚tは、周辺領域Aの板厚tよりも薄く設けられている。すなわち、周辺領域Aに対する仮想不整領域Bの板厚比D(=t/t)は、D<1である。
周辺領域Aには、板厚方向Zに並ぶ例えば2つの積分点Pa 1、Pa が設けられている。本実施形態では、積分点Pa 1、Pa は、図10(a)に示したFEM解析データに用いられる積分点とは同一でなくてもよい。また任意の積分点数でもよい。
具体的には、図10(a)において積分点が配置された4箇所の中心位置に本要素の破断を評価する評価点(図示しない)を一点設ける。この評価点の下に板厚方向に2つの積分点Pa 1、Pa が設けられており、各積分点Pa 1、Pa は、その板厚方向の位置がFEM解析データに用いられる各積分点と同じ位置である。また、この評価点の下の各積分点Pa 1、Pa に関する応力、ひずみ増分には、FEM解析データに用いられる板厚方向で同じ位置にある4つの積分点に関する応力、ひずみ増分の平均値をそれぞれ用いる。
各積分点Pa 1、Pa の板厚方向の位置Za 1、Za は、具体的には各々次式(1)で表される。
Figure 0006325865
また、仮想不整領域Bには、板厚方向Zに並ぶ2つの仮想積分点Pb 1、Pb が設けられ、各積分点の板厚方向の位置Zb 1、Zb は、具体的には各々次式(2)で表される。
Figure 0006325865
ここで、上述の破断判定モデルにおいて、板厚方向にひずみ勾配を有する曲げ変形が加わったとき、周辺領域Aと仮想不整領域Bの間で成立する2つの条件について以下に説明する。
まず、周辺領域Aと仮想不整領域Bの境界での力の釣り合い条件について説明する。
周辺領域Aと仮想不整領域Bがそれらの境界で連続している限り、常に両領域A、Bからその境界に作用する力が釣り合っているので、周辺領域Aと仮想不整領域Bにおいてn軸方向の応力σa nn、σb nnが各々加わるとすると、次式(3)が成立する。この式(3)を力の釣り合い条件と呼ぶ。
Figure 0006325865
この式(3)を各領域A、Bの板厚t、t、n軸方向のひずみ増分dεa(z)、dε(z)を用いてより具体的に書き換えると、次式(4)となる。
Figure 0006325865
さらに、この式(4)をGauss-Legendre求積法を用いて変換すると、次式(5)となる。
Figure 0006325865
なお、詳細な説明を省略するが、上式(5)のw、wは、Gauss-Legendre求積法で用いる重みを意味し、積分点数により決まる。この場合、w=w=1である。また、上式(5)の応力σについては、Bauschinger効果を考慮するか否かにより、応力σとひずみεとの具体的な関係式が異なる。
次に、仮想不整領域Bと周辺領域Aにおけるひずみ増分の板厚方向の位置に対する線形性条件について説明する。
図10(b)に示すように、曲げ変形が加わったとき、板厚方向の位置に対して各領域A、Bでの曲げ変形によるひずみ増分が線形性を有する(換言すれば、ひずみ勾配が一定である)ものとする。この線形性は、次式(6)のように表すことができる。この式(6)を線形性条件と呼ぶ。
Figure 0006325865
なお、上式(6)のsは任意の実数を表す。上式(6)により、仮想不整領域Bの各積分点Pb 1、Pb の板厚方向の位置Zb 1、Zb について次式(7)が成立する。
Figure 0006325865
上式(7)からsを消去して整理すると、次式(8)が成立する。
Figure 0006325865
ここで、式(5)と式(8)により、例えばdεb(Zb 1)を消去すると、次式(9)が得られる。
Figure 0006325865
次に、上式(9)を反復計算により解くために、次式(10)のように、上式(9)の左辺から右辺を引いた関数をFとして定義する。
Figure 0006325865
また、上式(10)のdεa(Za 1)、dεa(Za 2)については、周辺領域Aにおけるひずみ勾配が一定であるので、次式(11)が成立する。
Figure 0006325865
したがって、上式(11)により、dεa(Zb 1)とdεa(Zb 2)を予め算出して式(10)に入力し、dεb(Zb 2)を変数としてF=0に収束するように反復計算を行うことによりdεb(Zb 2)の解を求めることができる。
以上によれば、上述の力の釣り合い条件及び線形性条件によって、算出された周辺領域Aの各積分点の板厚方向の位置Zに応じたn軸方向のひずみ増分dεa(z)から仮想不整領域Bの各積分点の板厚方向の位置Zに応じたn軸方向のひずみ増分dεb(z)を算出することができる。
なお、各要素の積分点は、曲げ変形時の板厚方向のひずみ勾配を考慮するためには、平面視で同じ箇所に積分点が少なくとも2つ必要である。同じ箇所の積分点がn個の場合、力の釣り合い条件を示す式(5)は未知数がn個になるが、線形性条件を示す式(8)がn−1個用意できるので、これらの連立方程式は解くことができる。積分点の数が多いほど、シミュレーションの精度が向上する傾向があるが、解析時間が増えるため、現実的には最大で15個程度とするのが望ましい。
また、1要素中の全箇所を各々評価点として、各評価点について領域間ひずみ増分比を求め、全評価点のうち所定数(例えば、全4点のうちの2点)の評価点で領域間ひずみ増分比が破断しきい値を超えた場合にこの要素で破断したと判定するようにしてもよい。
さらに、各要素の積分点は、平面視で1箇所のみに配置されていてもよい。この場合、この積分点が配置された箇所を破断を評価する評価点として、この評価点の板厚方向にある複数の積分点のひずみ増分の値をそのまま破断判定モデルにおける周辺領域Aの各積分点のひずみ増分とすればよい。
(4)破断判定処理部
以下、図11のフローチャートに従って、破断判定処理部500の処理方法について説明する。
時間ステップ数N=1として処理を開始する(ステップS1)。
次に、解析データ取得部510よって、ブランク形状モデルの時間ステップ数N=1における解析データDT1をシミュレーション部420から取得して、この形状モデルを構成する全要素の中にある全積分点の時間ステップ数Nにおける応力テンソル、ひずみテンソルを領域間ひずみ増分算出部220に入力する(ステップS2)。
次に、各要素の領域間板厚比Dの初期値を設定する(ステップS3)。
ここで、全要素の領域間板厚比Dの初期値として、例えば単純引張試験により破断ひずみを最低1点実測し、この実測値と理論値の誤差の合計が最も小さくなるような領域間板厚比Dを求め、求められたDの値を設定してもよい。これによれば、通常、D=0.90〜0.999に設定される。
次に、各要素の溝角度θの初期値を次式(12)に基づいて設定する(ステップS4)。
Figure 0006325865
ここで、ひずみ比ρは、時間ステップ数N=1における値である。ひずみ比ρ<0の場合、例えばHillの局部くびれ理論を用いて次式(13)によりθcalを算出できる。なお、次式(13)のnは、実験から得られる材料パラメータのひとつであるn値である。
Figure 0006325865
次に、ブランク形状モデルを構成する複数の要素から1要素を抽出する(ステップS5)。
次に、この抽出された要素について、破断済みか否かを判定する(ステップS6)。
ここで、ステップS6でこの要素で破断済みであると判定されると、後述のステップS15へ進み、破断済みでないと判定されると、次のステップS7へ進む。
次に、シミュレーション部420から抽出した要素のFEM解析データDT1を取得する(ステップS7)。
次に、取得したFEM解析データDT1のひずみεと応力σを周辺領域Aのひずみεa、応力σaとして設定する(ステップS8)。
次に、周辺領域Aのひずみ増分dεaを入力する(ステップS9)。このとき、次のテンソルの座標変換公式(14)を用いて、入力されたひずみ増分dεaの各テンソル成分の値からn軸方向のひずみ増分dεa nn(z)を算出する。
Figure 0006325865
次に、前述の方法で、周辺領域Aのn軸方向のひずみ増分dεa nn(z)に基づいて仮想不整領域Bのn軸方向のひずみ増分dε nn(z)を算出する(ステップS10)。
次に、周辺領域Aと仮想不整領域Bの領域間ひずみ増分比を次式(15)に基づいて算出する(ステップS11)。
Figure 0006325865
次に、算出された領域間ひずみ増分比と所定の破断しきい値δとの大きさを比較し、次式(16)に基づいて破断を判定する(ステップS12)。
Figure 0006325865
ステップS12でYES、すなわち、領域間ひずみ増分比>破断しきい値δと判定されると、この要素で破断が生じたと判定し(ステップS13)、次のステップS15に進む。
一方、ステップS12でNO、すなわち、領域間ひずみ増分比≦破断しきい値δと判定されると、次のステップS14に進む。
次に、溝角度θ、領域間板厚比D及び両領域A、Bの相当ひずみを後述する方法でそれぞれ更新する(ステップS14)。
次に、全ての要素について抽出したか判定する(ステップS15)。ステップS15でNOと判定されると、ステップS5に戻る。
ステップS15で当該解析モデルの全要素が終了したと判定されると、時間ステップ数NからN+1に変更する(ステップS16)。
次に、時間ステップ数NがNend(最終時間ステップ)になったか否かを判定し、Nendになっていないと判定されると、ステップS5に戻る(ステップS17)。
ステップS17でNendになったと判定されると、当該ループの処理を終了する。
以上により、プレス成形シミュレーションにおいて曲げ変形を考慮して部品の破断判定を行うことができた。
(4−1)溝角度θ、領域間板厚比Dの更新方法
ここで、上述のステップS14における溝角度θの更新方法について、以下に詳細に説明する。
まず、取得したFEM解析データDT1の応力σとひずみεの各テンソル成分の値に基づいて、次式(17)〜(20)により、応力比α、βとひずみ増分比ρ、γを計算する。
Figure 0006325865
Figure 0006325865
Figure 0006325865
Figure 0006325865
このとき、仕事増分は、次式(21)によって算出される。
Figure 0006325865
なお、前式(21)は、次式(22)の定義に基づくものである。
Figure 0006325865
式(21)より、ひずみ増分は、相当応力および相当ひずみ増分を用いて次式(23)〜(25)のように表される。
Figure 0006325865
Figure 0006325865
Figure 0006325865
なお、前式(23)〜(25)は、次式(26)の定義に基づくものである。
Figure 0006325865
また、n軸方向の応力は、次式(27)により応力の各テンソル成分の値を座標変換して得られる。
Figure 0006325865
ここで、次式(28)を定義すると、前式(27)は次式(29)に書き換えられる。
Figure 0006325865
Figure 0006325865
ここで、Bauschinger効果を考慮しない場合、応力とひずみの関係式としてSwiftの式、降伏関数としてHillの2次異方性降伏関数をそれぞれ適用する。
Swiftの式は、次式(30)のように表される。なお、K、ε0、nは、実験結果から求められるパラメータである。また、この式(30)中の相当ひずみは、現在の相当ひずみを表すものとする。
Figure 0006325865
また、Hillの2次異方性降伏関数は、平面応力状態では次式(31)のように表される。なお、F、G、H、Nは、実験より求められる材料パラメータである。
Figure 0006325865
ここで、式(26)は、式(17)(19)(31)により、応力比α、βを変数として次式(32)のように表される。
Figure 0006325865
また、式(18)(20)は、降伏関数からは、応力比α、βを変数として、次式(33)(34)のように表される。
Figure 0006325865
Figure 0006325865
さらに、周辺領域Aと仮想不整領域Bの境界で両領域A、Bに作用するせん断方向の力が釣り合うので、次式(35)が成立する。
Figure 0006325865
したがって、次式(36)が成立する。
Figure 0006325865
また、周辺領域Aと仮想不整領域Bのt軸方向のひずみ増分が一致するので、次式(37)が成立する。
Figure 0006325865
したがって、次式(38)が成立する。
Figure 0006325865
なお、前式(38)は、次式(39)の定義に基づくものである。
Figure 0006325865
したがって、これら式(18)(22)(26)を用いることで、更新後の溝角度(θ+dθ)は、次式(40)で算出される。
Figure 0006325865
さらに、式(40)を用いることで、更新後の領域間板厚比(D+dD)は、次式(41)で算出される。
Figure 0006325865
以上により、溝角度θと領域間板厚比Dは、取得されたFEM解析データDT1のひずみ、応力の各テンソル成分の値に基づいて更新することができる。
また、式(30)を応力とひずみの具体的な関係式として式(5)に適用することで、周辺領域Aのn軸方向のひずみ増分dεa(z)から、Bauschinger効果を考慮しなかった場合の仮想不整領域Bのn軸方向のひずみ増分dεb(z)を算出することができる。
なお、Swiftの式とHillの2次異方性降伏関数で使用するパラメータは、有限要素構造解析で使用されるものと同じである。
また、曲げ変形のときの応力の状態をより正確に表すために、Bauschinger効果を考慮する場合、Bauschinger効果を考慮することが可能である定式化を用いる。具体的には、応力とひずみの関係式として、式(31)の替わりに、Y−Uモデルで使用される次式(42)を用いてもよい。なお、C,a0、b、m、h、Q、Yは、実験より求められるY−Uモデルの材料パラメータである。
Figure 0006325865
なお、詳細な説明は省略するが、上式(42)の各パラメータは、次式(43)〜(56)で求めることができる。
Figure 0006325865
Figure 0006325865
Figure 0006325865
Figure 0006325865
よって、式(42)を応力とひずみの具体的な関係式として式(5)に適用することで、周辺領域Aのn軸方向のひずみ増分dεa(z)から、Bauschinger効果を考慮した仮想不整領域Bのn軸方向のひずみ増分dεb(z)を算出することができる。
(5)適用例
図12を参照しながら、プレス成形解析システム1を具体的な部品に適用した場合について説明する。図12(a)は、曲げ変形を考慮した破断判定結果を示し、図12(b)は、曲げ変形を考慮しなかった破断判定結果を示す。
図12(a)に示すように、曲げ変形を考慮した場合、S1=48mmのストロークでも破断が発生しなかった。一方、図12(b)に示すように、曲げ変形を考慮しなかった場合、S1よりも短いS2=23mmのストロークで破断が発生した。
図12から明らかなように、この適用例では、曲げ変形を考慮した方が考慮しなかったものよりも破断しにくくなった。このような結果が得られたのは、圧縮変形が破断とは逆に材料に作用する変形であるので、曲げ変形により材料の曲げ内側に圧縮変形が作用したことで、引張変形のみの場合よりも材料が破断しにくくなったためと考えられる。この結果からも、曲げ変形の考慮が破断判定に大きく影響することがわかった。
(第2の実施形態)
(1)理論成形限界線図の作成方法
次に、本発明の第2の実施形態に係る理論成形限界線図の作成方法について、図13のフローチャートに従って、図14を適宜参照しながら説明する。なお、第1の実施形態と同様のステップについては、詳細な説明を省略する。
まず、図14(a)に示すように、破断を評価する実際の成形品と同様に破断判定モデルを変形させるための複数の変形経路L〜Lを設定する(ステップS21)。
なお、変形経路L〜Lは、−1/2≦ε/ε≦1の広い範囲で成形限界ひずみの点を取得できるように設定するのが望ましい。図14(a)に示す変形経路L〜Lは、単純引張と平面二軸引張を組み合わせた複合変形経路をその一例として示しているが、これに限定されるものではない。
次に、図14(b)に示すように、設定された複数の変形経路から1つの変形経路Lを選択する(ステップS22)。
次に、領域間板厚比Dの初期値を設定する(ステップS23)。
次に、溝角度θの初期値を設定する(ステップS24)。
次に、選択された変形経路に沿ってひずみ増分dεを加算する(ステップS25)。
次に、加算されたひずみ増分dεに基づいて周辺領域Aのひずみεa、応力σaを設定する(ステップS26)。
次に、ステップS25で加算されたひずみ増分dεに基づいて、周辺領域Aのn軸方向のひずみ増分dεaを入力する(ステップS27)。
次に、入力された周辺領域Aのひずみ増分dεaに基づいて、仮想不整領域Bのn軸方向のひずみ増分dεbを算出する(ステップS28)。
次に、入力された周辺領域Aのn軸方向のひずみ増分dεaと算出した仮想不整領域Bのn軸方向のひずみ増分dεbとに基づいて、周辺領域Aと仮想不整領域Bの領域間ひずみ増分比dεb/dεaを算出する(ステップS29)。
次に、算出された領域間ひずみ増分比dεb/dεaが所定の破断しきい値δよりも大きいか否かを判定する(ステップS30)。
ステップS30でYES、すなわち領域間ひずみ増分比dεb/dεa>破断しきい値δと判定されると、この要素で破断が生じたと判定する(ステップS31)。
次に、図14(c)に示すように、このときの最大主ひずみε1及び最小主ひずみε2を各軸とした直交座標(ε2,ε1)上に成形限界ひずみを示す点としてプロットする(ステップS32)。
一方、ステップS30でNO、すなわち領域間ひずみ増分比dεb/dεa≦破断しきい値δと判定されると、ステップS33に進む。
次に、領域間板厚比D、溝角度θ、両領域A、Bの相当ひずみを更新する(ステップS33)。
次に、ひずみ増分の加算が終了した否かを判定する(ステップS34)。
ステップS34でNOと判定されると、ステップS25に戻る。一方、ステップS34でYESと判定されると、ステップS1で設定した全ての変形経路について破断判定が終了したか判定する(ステップS35)。
ステップS35でNOと判定されると、ステップS22に戻る。一方、ステップS35でYESと判定されると、図14(d)に示すように、直交座標(ε2,ε1)上にプロットした点列を連結して成形限界線を作成する(ステップS36)。
以上によれば、任意の変形経路の理論FLDを作成することができた。
(2)実証試験
本発明者は、本発明により作成した理論FLDの実証試験を行った。一般的な引張曲げ試験装置を用いて試験片を引っ張りながら曲げ及び曲げ戻しを行い、この試験片が破断したときのひずみを測定した。下記の表1は、変形経路として単純引張りを行った場合の相当ひずみと、引張り、曲げ及び曲げ戻しを行った場合の相当ひずみに関する実験値、本手法による理論FLDの計算値及び従来手法による理論FLDの計算値を示している。
Figure 0006325865
表1に示すように、単純引張りのみの場合、実験値に対して本手法及び従来手法の計算値はほぼ一致した。これに対して、引張りに加え、曲げ及び曲げ戻しを行った場合、実験値0.30に対して本手法の計算値は一致したが、曲げ変形を考慮していない従来手法の場合、実験値と大きく異なる値となった。
以上によれば、曲げ変形を含む変形についても、実際の値に近い高精度の理論FLDを作成できることが分かった。
なお、本発明は例示された実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計上の変更が可能であることは言うまでもない。
以上のように、本発明によれば、非比例変形と曲げ変形のいずれにも対応できる破断判定方法を提供でき、実用的な解析時間でより高精度に部品の破断を判定できるので、車両等の部品の製造産業分野において好適に利用される可能性がある。
500 破断判定処理部(破断判定システム)
510 解析データ取得部
520 周辺領域ひずみ増分入力部
530 仮想不整領域ひずみ増分算出部
540 領域間ひずみ増分比算出部
550 MK法パラメータ更新部(パラメータ更新部)
560 破断判定部

Claims (7)

  1. 板状の部品が曲げ変形を含めた所定の変形をしたときの破断を判定する破断判定方法であって、
    前記部品において破断を評価する均一な板厚の部分の表裏面に、変形時の応力方向に対して所定角度傾斜した方向に延びる幅及び深さが一定の溝部がその中立面に対して対称に仮想的に設けられた仮想不整領域と、該仮想不整領域の周辺にある周辺領域と、から構成され、前記仮想不整領域の板厚が前記周辺領域の板厚よりも薄い破断判定モデルを設定するモデル設定ステップと、
    変形時の前記周辺領域における板厚方向の位置に応じたひずみ増分を入力する周辺領域ひずみ増分入力ステップと、
    入力された前記周辺領域のひずみ増分に基づいて、前記仮想不整領域と前記周辺領域の境界における力の釣り合い条件と、前記仮想不整領域及び前記周辺領域におけるひずみ増分の板厚方向の位置に対する線形性条件とを共に満たす前記仮想不整領域における板厚方向の位置に応じたひずみ増分を算出する仮想不整領域ひずみ増分算出ステップと、
    入力された前記周辺領域のひずみ増分と算出された前記仮想不整領域のひずみ増分に基づいて、前記仮想不整領域に対する前記周辺領域のひずみ増分比を算出する領域間ひずみ増分比算出ステップと、
    前記周辺領域のひずみ増分に基づいて、前記仮想不整領域と前記周辺領域の板厚比、前記溝部の前記所定角度をそれぞれ更新するパラメータ更新ステップと、
    算出された前記ひずみ増分比と所定の破断しきい値の大きさを比較し、前記ひずみ増分比が前記破断しきい値よりも大きい場合、破断を評価する前記部分が破断したと判定する破断判定ステップと、を有し、
    前記周辺領域ひずみ増分入力ステップから前記破断判定ステップまでを繰り返し実行する、
    ことを特徴とする破断判定方法。
  2. 前記モデル設定ステップの後、プレス成形シミュレーションにおいて形状モデルの所定部位に外力や強制変位を加えて変形したときの前記形状モデル上の各要素内の全積分点についての有限要素解析データを前記変形の進行に応じて取得する解析データ取得ステップと、
    前記周辺領域ひずみ増分入力ステップにおいて、取得された前記解析データに基づいて前記周辺領域における各積分点の板厚方向の位置のひずみ増分を入力し、
    前記仮想不整領域ひずみ増分算出ステップにおいて、前記仮想不整領域における各積分点の板厚方向の位置のひずみ増分を算出する
    ことを特徴とする請求項1に記載の破断判定方法。
  3. 前記モデル設定ステップにおいて、前記周辺領域に対する前記仮想不整領域の板厚比の初期値として、引張試験による破断ひずみの実測値との誤差の合計が最も小さくなるような板厚比を設定する
    ことを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載の破断判定方法。
  4. Bauschinger効果を考慮することが可能である定式化を用いる
    ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の破断判定方法。
  5. 板状の部品が曲げ変形を含めた所定の変形をしたときの破断を判定する破断判定システムであって、
    前記部品において破断を評価する均一な板厚の部分の表裏面に、変形時の応力方向に対して所定角度傾斜した方向に延びる幅及び深さが一定の溝部がその中立面に対して対称に仮想的に設けられた仮想不整領域と、該仮想不整領域の周辺にある周辺領域と、から構成され、前記仮想不整領域の板厚が前記周辺領域の板厚よりも薄い破断判定モデルを設定するモデル設定部と、
    変形時の前記周辺領域における板厚方向の位置に応じたひずみ増分を入力する周辺領域ひずみ増分入力部と、
    入力された前記周辺領域のひずみ増分に基づいて、前記仮想不整領域と前記周辺領域の境界における力の釣り合い条件と、前記仮想不整領域及び前記周辺領域におけるひずみ増分の板厚方向の位置に対する線形性条件とを共に満たす前記仮想不整領域における板厚方向の位置に応じたひずみ増分を算出する仮想不整領域ひずみ増分算出部と、
    入力された前記周辺領域のひずみ増分と算出された前記仮想不整領域のひずみ増分に基づいて、前記仮想不整領域に対する前記周辺領域のひずみ増分比を算出する領域間ひずみ増分比算出部と、
    前記周辺領域のひずみ増分に基づいて、前記仮想不整領域と前記周辺領域の板厚比、前記溝部の前記所定角度をそれぞれ更新するパラメータ更新部と、
    算出された前記ひずみ増分比と所定の破断しきい値の大きさを比較し、前記ひずみ増分比が前記破断しきい値よりも大きい場合、破断を評価する前記部分が破断したと判定する破断判定部と、を有し、
    前記周辺領域ひずみ増分入力部、前記仮想不整領域ひずみ増分算出部、前記領域間ひずみ増分比算出部、及び前記破断判定部は、前記ひずみ増分の入力から前記破断を評価する前記部分の破断の判定までを繰り返し実行する、
    を有することを特徴とすることを特徴とする破断判定システム。
  6. 板状の部品が曲げ変形を含めた所定の変形をしたときの破断を判定する破断判定プログラムであって、
    コンピュータを
    前記部品において破断を評価する均一な板厚の部分の表裏面に、変形時の応力方向に対して所定角度傾斜した方向に延びる幅及び深さが一定の溝部がその中立面に対して対称に仮想的に設けられた仮想不整領域と、該仮想不整領域の周辺にある周辺領域と、から構成され、前記仮想不整領域の板厚が前記周辺領域の板厚よりも薄い破断判定モデルを設定するモデル設定部と、
    変形時の前記周辺領域における板厚方向の位置に応じたひずみ増分を入力する周辺領域ひずみ増分入力部と、
    入力された前記周辺領域のひずみ増分に基づいて、前記仮想不整領域と前記周辺領域の境界における力の釣り合い条件と、前記仮想不整領域及び前記周辺領域におけるひずみ増分の板厚方向の位置に対する線形性条件とを共に満たす前記仮想不整領域における板厚方向の位置に応じたひずみ増分を算出する仮想不整領域ひずみ増分算出部と、
    入力された前記周辺領域のひずみ増分と算出された前記仮想不整領域のひずみ増分に基づいて、前記仮想不整領域に対する前記周辺領域のひずみ増分比を算出する領域間ひずみ増分比算出部と、
    前記周辺領域のひずみ増分に基づいて、前記仮想不整領域と前記周辺領域の板厚比、前記溝部の前記所定角度をそれぞれ更新するパラメータ更新部と、
    算出された前記ひずみ増分比と所定の破断しきい値の大きさを比較し、前記ひずみ増分比が前記破断しきい値よりも大きい場合、破断を評価する前記部分が破断したと判定する破断判定部として機能させ、
    前記周辺領域ひずみ増分入力部、前記仮想不整領域ひずみ増分算出部、前記領域間ひずみ増分比算出部、及び前記破断判定部は、前記ひずみ増分の入力から前記破断を評価する前記部分の破断の判定までを繰り返し実行する、
    ことを特徴とする破断判定プログラム。
  7. 任意の変形経路の理論成形限界線図の作成方法であって、
    部品に所望の変形を加えるための複数の変形経路を設定する変形経路設定ステップと、
    前記部品において破断を評価する均一な板厚の部分の表裏面に、変形時の応力方向に対して所定角度傾斜した方向に延びる幅及び深さが一定の溝部がその中立面に対して対称に仮想的に設けられた仮想不整領域と、該仮想不整領域の周辺にある周辺領域と、から構成され、前記仮想不整領域の板厚が前記周辺領域の板厚よりも薄い破断判定モデルを設定するモデル設定ステップと、
    各変形経路に沿って変形するように、変形時の前記周辺領域における板厚方向の位置に応じたひずみ増分を入力する周辺領域ひずみ増分入力ステップと、
    入力された前記周辺領域のひずみ増分に基づいて、前記仮想不整領域と前記周辺領域の境界における力の釣り合い条件と、前記仮想不整領域及び前記周辺領域におけるひずみ増分の板厚方向の位置に対する線形性条件とを共に満たす前記仮想不整領域における板厚方向の位置に応じたひずみ増分を算出する仮想不整領域ひずみ増分算出ステップと、
    入力された前記周辺領域のひずみ増分と算出された前記仮想不整領域のひずみ増分に基づいて、前記仮想不整領域に対する前記周辺領域のひずみ増分比を算出する領域間ひずみ増分比算出ステップと、
    前記周辺領域のひずみ増分に基づいて、前記仮想不整領域と前記周辺領域の板厚比、前記溝部の前記所定角度をそれぞれ更新するパラメータ更新ステップと、
    算出された前記ひずみ増分比と所定の破断しきい値の大きさを比較し、前記ひずみ増分比が前記破断しきい値よりも大きい場合、破断を評価する前記部分が破断したと判定する破断判定ステップと、
    破断判定時の前記周辺領域の最大主ひずみ及び最小主ひずみを直交座標上に点としてプロットするひずみプロットステップと、
    各変形経路について得られた複数の前記点に沿って成形限界線を作成する成形限界線作成ステップと、を有し、
    前記周辺領域ひずみ増分入力ステップから前記破断判定ステップまでを繰り返し実行する、
    ことを特徴とする理論成形限界線図の作成方法。
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