特許文献1及び非特許文献1に開示された時間遅延器においては、無線周波数信号に与える遅延の大きさを、局所信号の周波数に応じて変化させることによって制御することができる。しかしながら、以下に説明するように、特許文献1及び非特許文献1に開示された時間遅延器においては、制御変数である局所信号の周波数fLOの変化量ΔfLOと、被制御変数である遅延δの変化量Δδとの関係が、無線周波数信号の周波数fRF毎に異なる。このため、無線周波数信号に与える時間遅延を広帯域に亘って精度良く制御することが困難になるという問題があった。また、特許文献1及び非特許文献1に開示された時間遅延器を用いたフェイズドアレイアンテナにおいては、電磁波を効率よく送信又は受信できる方向を広帯域に亘って精度良く制御することが困難であるという問題があった。
(特許文献1の問題点)
図16は、特許文献1に開示された時間遅延器20の構成を示すブロック図である。図16に示すように、時間遅延器20は、2つの混合器MX1〜MX2と位相器PSとを備えている。
混合器MX1には、無線周波数信号源RFから出力された無線周波数信号VRF(t)と、局所信号源LOから出力され、局所信号源LOから混合器MX1に至る伝送線路によって遅延された局所信号VLO(t)が入力される。無線周波数信号VRF(t)は、例えば、下記の式(1)のように表すことができ、局所信号VLO(t)は、例えば、下記の式(2)のように表すことができる。ここで、φ0は、局所信号源LOから混合器MX1に至る伝送線路において生じる線路遅延である。なお、ここでは、無線周波数信号源RFから混合器MX1に至る伝送線路において生じる線路遅延が十分に小さい場合を考え、無線周波数信号源RFから出力される無線周波数信号と混合器MX1に入力される無線周波数信号とを同一視した。
混合器MX1は、無線周波数信号VRF(t)と局所信号VLO(t)とを乗算した後、高周波成分をカットする(局所信号VLO(t)を用いて無線周波数信号VRF(t)をダウンコンバートする)ことによって、中間周波数信号VIF(t)を生成する。混合器MX1に入力される無線周波数信号VRF(t)及び局所信号VLO(t)が、それぞれ、上記の式(1)及び式(2)のように表される場合、混合器MX1にて生成される中間周波数信号VIF(t)は、下記の式(3)のように表される。
混合器MX2には、混合器MX1から出力された中間周波数信号VIF(t)と、局所信号源LOから出力され、局所信号源LOから混合器MX2に至る伝送線路、及び、当該伝送線路に挿入された位相器PSよって遅延された局所信号VLO’(t)とが入力される。局所信号VLO(t)が上記の式(2)のように表される場合、局所信号VLO’(t)は、下記の式(4)のように表される。ここで、φ1は、局所信号源LOから混合器MX2に至る伝送線路において生じる線路遅延と、当該伝送線路に挿入された位相器PSにおいて生じる遅延との和である。なお、ここでは、混合器MX1から混合器MX2に至る伝送線路において生じる線路遅延が十分に小さい場合を考え、混合器MX1から出力される中間周波数信号と混合器MX2に入力される中間周波数信号とを同一視した。
混合器MX2は、中間周波数信号VIF(t)と遅延局所信号VLO’(t)とを乗算した後、低周波成分をカットする(遅延局所信号VLO’(t)を用いて中間周波数信号VIF(t)をアップコンバートする)ことによって、遅延無線周波数信号VRF’(t)を生成する。混合器MX2に入力される中間周波数信号VIF(t)及び遅延局所信号VLO’(t)が、それぞれ、上記の式(3)及び式(4)のように表される場合、混合器MX2にて生成される遅延無線周波数信号VRF’(t)は、下記の式(5)のように表される。
したがって、遅延無線周波数信号VRF’(t)の無線周波数信号VRF(t)に対する遅延δは、下記の式(6)で表される。
上記の式(6)に示すように、時間遅延器20が無線周波数信号VRF(t)に与える遅延δは、局所信号VLO(t)の周波数fLOに比例する。したがって、時間遅延器20によれば、局所信号VLO(t)の周波数fLOを変化させることによって、無線周波数信号VRF(t)に与える遅延δを変化させることができる。
しかしながら、式(6)から明らかなように、制御変数である局所信号VLO(t)の周波数fLOの変化量ΔfLOと、被制御変数である遅延δの変化量Δδとの間には、Δδ={φ1/fRF}ΔfLOという関係が成り立つ。したがって、遅延δをΔδだけ変化させるために必要な周波数fLOの変化量ΔfLOは、無線周波数信号VRF(t)の周波数fRF毎に異なる。例えば、50GHzの無線周波数信号VRF(t)に対する遅延を1ps大きくするために必要な周波数fLOの変化量が1GHzであるとすると、100GHzの無線周波数信号VRF(t)に対する遅延を1ps大きくするために必要な周波数fLOの変化量は2GHzとなる。このため、無線周波数信号VRF(t)に与える遅延δを広帯域に亘って精度良く制御することが困難になる。
(非特許文献1の問題点)
図17は、非特許文献1に開示された時間遅延器21の構成を示すブロック図である。時間遅延器21は、2つの混合器MX1〜MX2と分散付与フィルタDFとを備えている。分散付与フィルタDFは、入力信号に分散、すなわち、入力信号の周波数fに比例した遅延Dfを与える素子であり、CEBG(Chirped Electromagnetic Bandgap)伝送線路により構成されている。
混合器MX1には、無線周波数信号源RFから出力された無線周波数信号VRF(t)と、局所信号源LOから出力され、局所信号源LOから混合器MX1に至る伝送線路TL1によって遅延された局所信号VLO’(t)が入力される。無線周波数信号VRF(t)は、例えば、下記の式(7)のように表すことができる。また、局所信号源LOから出力される局所信号VLO(t)は、例えば、下記の式(8)のように表すことができ、このとき、混合器MX1に入力される局所信号VLO’(t)は、下記の(9)式のように表される。ここで、ψ1は、伝送線路TL1において生じる線路遅延である。なお、ここでは、無線周波数信号源RFから混合器MX1に至る伝送線路において生じる線路遅延が十分に小さい場合を考え、無線周波数信号源RFから出力される無線周波数信号と混合器MX1に入力される無線周波数信号とを同一視した。
混合器MX1は、局所信号VLO’(t)を用いて無線周波数信号VRF(t)をダウンコンバートすることによって、中間周波数信号VIF(t)を生成する。混合器MX1に入力される無線周波数信号VRF(t)及び局所信号VLO’(t)が、それぞれ、上記の式(7)及び式(9)のように表される場合、混合器MX1にて生成される中間周波数信号VIF(t)は、下記の式(10)のように表される。
混合器MX1にて生成された中間周波数信号VIF(t)は、分散付与フィルタDFが挿入された伝送線路TL3により遅延される。分散付与フィルタDFは、周波数fの信号に対して、遅延τ=Df+ψ0を与える。伝送線路TL3は、混合器MX1からサーキュレータCに至る伝送線路と、サーキュレータCと分散付与フィルタDFとの間を往復する伝送線路と、サーキュレータCから混合器MX2に至る伝送線路とにより構成される。この伝送線路TL3(分散付与フィルタDFを除く)において生じる線路遅延をψ3とすると、混合器MX2に入力される中間周波数信号VIF’(t)は、下記の式(11)のように表される。
混合器MX2には、上記の中間周波数信号VIF’(t)の他に、局所信号源LOから出力され、局所信号源LOから混合器MX2に至る伝送線路TL2によって遅延された局所信号VLO”(t)が入力される。局所信号源LOから出力される局所信号VLO(t)が上記の式(8)により表されている場合、混合器MX2に入力される局所信号VLO”(t)は、下記の式(12)のように表される。ここで、ψ2は、伝送線路TL2において生じる線路遅延である。
混合器MX2は、局所信号VLO”(t)を用いて中間周波数信号VIF’(t)をアップコンバートすることによって、遅延無線周波数信号VRF’(t)を生成する。混合器MX2に入力される中間周波数信号VIF’(t)及び局所信号VLO”(t)が、それぞれ、上記の式(11)及び式(12)のように表される場合、混合器MX2にて生成される遅延無線周波数信号VRF’(t)は、下記の式(13)のように表される。
したがって、遅延無線周波数信号VRF’(t)の無線周波数信号VRF(t)に対する遅延δは、下記の式(14)で表される。
上記の式(14)に示すように、時間遅延器21が無線周波数信号VRF(t)に与える遅延δは、局所信号VLO(t)の周波数fLOの二次関数になる。したがって、時間遅延器21によれば、局所信号VLO(t)の周波数fLOを変化させることによって、無線周波数信号VRF(t)に与える遅延δを変化させることができる。
しかしながら、式(14)から明らかなように、制御変数である局所信号VLO(t)の周波数fLOの変化量ΔfLOと、被制御変数である遅延δの変化量Δδとの間には、Δδ=
{2DfLO/fRF−(ψ1+ψ3−ψ2)/fRF+2D}ΔfLOという関係が成り立つ。したがって、遅延δをΔδだけ変化させるために必要な周波数fLOの変化量ΔfLOは、無線周波数信号VRF(t)の周波数fRFと局所信号VLO(t)の周波数fLOとの組み合せ毎に異なる。このため、無線周波数信号VRF(t)に与える遅延δを広帯域に亘って精度良く制御することが困難になる。
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、無線周波数信号に与える遅延を、局所信号の周波数を変化させることによって制御することができ、さらに、この無線周波数信号に与える遅延の制御を広帯域に亘って従来よりも精度良く行うことが可能な時間遅延器を実現することにある。
上記の課題を解決するために、本願発明者は、まず、時間遅延器を発明した。すなわち、周波数fLOを有する第1局所信号VLO(t)に遅延θ1を与えることによって、第2局所信号VLO’(t)=VLO(t−θ1)を生成する第1伝送線路と、周波数fRF(fLO<fRF)を有する第1無線周波数信号VRF(t)と前記第2局所信号VLO’(t)とを乗算することによって、周波数fRF−fLOを有する第1中間周波数信号VIF(t)を生成する第1混合器と、第1分散付与フィルタが挿入された第2伝送線路であって、前記第1分散付与フィルタによる遅延θDと前記第2伝送線路による遅延θ2とを前記第1局所信号VLO(t)に与えることによって、第3局所信号VLO”(t)=VLO(t−θD−θ2)を生成する第2伝送線路と、前記第1分散付与フィルタとは逆符号の分散を与える第2分散付与フィルタが挿入された第3伝送線路であって、前記第2分散付与フィルタによる遅延θD’と前記第3伝送線路による遅延θ3とを前記前記第1中間周波数信号VIF(t)に与えることによって、第2中間周波数信号VIF’(t)=VIF(t−θD’−θ3)を生成する第3伝送線路と、前記第3局所信号VLO”(t)と前記第2中間周波数信号VIF’(t)とを乗算することによって、周波数fRFを有する第2無線周波数信号VRF’(t)を生成する第2混合器と、を備えている、ことを特徴とする時間遅延器を発明した。
上記の構成によれば、第2無線周波数信号VRF’(t)の第1無線周波数信号VLO(t)に対する遅延δをδ={(θ2−θ1−θ3)/fRF+2D}fLO−DfRF+θ0+θ3又はδ={(θ2−θ1−θ3)/fRF−2D}fLO+DfRF+θ0+θ3とすることができる。したがって、遅延δを第1局所信号VLO(t)の周波数fLOに応じて変化させることができる。
更に、上記の構成によれば、制御変数である局所信号VLO(t)の周波数fLOの変化量ΔfLOと、被制御変数である遅延δの変化量Δδとの間に、Δδ={(θ2−θ1-θ3)/fRF+2D}ΔfLO又はΔδ={(θ2−θ1-θ3)/fRF−2D}ΔfLOという関係が成り立つ。したがって、例えば第2伝送線路の電気長を第1伝送線路の電気長と第3伝送線路の電気長との和に近づけることにより、θ2−θ1-θ3を0に近づけていけば、遅延δの変化量Δδが無線周波数信号VRF(t)の周波数fRFに依存する依存度をいくらでも小さくすることができる。このため、第1無線周波数信号VRF(t)に与える遅延δの制御を広帯域に亘って従来よりも精度良く行うことができる。
そして、本願発明者は、上記の時間遅延器を用いた下記のフェイズドアレイアンテナを発明した。
すなわち、本発明の第1の態様に係るフェイズドアレイアンテナは、n個(nは2以上の整数)の放射素子A1〜Anと、n個の時間遅延器TD11〜TD1nと、周波数fLOを有する第1局所信号VLO(t)に遅延θ1を与えることによって、第2局所信号VLO’(t)=VLO(t−θ1)を生成する第1伝送線路と、周波数fRF(fLO<fRF)を有する第1無線周波数信号VRF(t)と前記第2局所信号VLO’(t)とを乗算することによって、周波数fRF−fLOを有する第1中間周波数信号VIF(t)を生成する第1混合器と、を備えており、各時間遅延器TD1i(i=1〜n)は、第1分散付与フィルタが挿入された第2伝送線路であって、前記第1分散付与フィルタによる遅延θDと前記第2伝送線路による遅延θ2とを前記第1局所信号VLO(t)に与えることによって、第3局所信号VLO”(t)=VLO(t−θD−θ2)を生成する第2伝送線路と、前記第1分散付与フィルタとは逆符号の分散を与える第2分散付与フィルタが挿入された第3伝送線路であって、前記第2分散付与フィルタによる遅延θD’と前記第3伝送線路による遅延θ3とを前記前記第1中間周波数信号VIF(t)に与えることによって、第2中間周波数信号VIF’(t)=VIF(t−θD’−θ3)を生成する第3伝送線路と、前記第3局所信号VLO”(t)と前記第2中間周波数信号VIF’(t)とを乗算することによって、周波数fRFを有する第2無線周波数信号VRF’(t)を生成する第2混合器と、を備えており、各時間遅延器TD1iにて生成された前記第2無線周波数信号を、対応する放射素子Aiに供給する、ことを特徴とする。
上記の構成によれば、電磁波を効率良く送信できる方向(送信する電磁波の主ビーム方向)を広帯域に亘って従来よりも精度良く制御することが可能な送信用のフェイズドアレイアンテナを実現することができる。
本発明の第2の態様に係るフェイズドアレイアンテナにおいて、前記第2分散付与フィルタとは逆符号の分散を与える第3分散付与フィルタが、前記第2混合器から出力される前記第2無線周波数信号VRF’(t)を伝送する伝送線路に挿入されていてもよい。
上記の構成によれば、第2無線周波数信号VRF’(t)の第1無線周波数信号VRF(t)に対する遅延δから第1無線周波数信号VRF(t)の周波数fRFに比例する項+DfRF又は−DfRFを除去することができる。この結果、第2無線周波数信号VRF’(t)が放射素子Aiに向けて伝送される伝送線路によって、第2無線周波数信号VRF’(t)の信号波形が崩されることを抑えられるので、第2無線周波数信号VRF’(t)の信号品質を向上させることができる。
本発明の第3の態様に係るフェイズドアレイアンテナは、本発明の第1の態様又は第2の態様に係るフェイズドアレイアンテナにおいて、各時間遅延器TD1i(i=1〜n)の前記第1分散付与フィルタ及び前記第2分散付与フィルタが与える分散は、それぞれ、対応する放射素子Aiの配列順に等差的に設定されている、ことが好ましい。
上記の構成によれば、電磁波を効率良く送信できる方向(送信する電磁波の主ビーム方向)を広帯域に亘って従来よりも精度良く制御することが可能な送信用のフェイズドアレイアンテナを実現することができる。
本発明の第4の態様に係るフェイズドアレイアンテナは、n個(nは2以上の整数)の放射素子A1〜Anと、n個の時間遅延器TD21〜TD2nと、を備えており、各時間遅延器TD2i(i=1〜n)は、周波数fLOを有する共通の第1局所信号VLO(t)に遅延θ1を与えることによって、第2局所信号VLO’(t)=VLO(t−θ1)を生成する第1伝送線路と、周波数fRF(fLO<fRF)を有する第1無線周波数信号VRF(t)と前記第2局所信号VLO’(t)とを乗算することによって、周波数fRF−fLOを有する第1中間周波数信号VIF(t)を生成する第1混合器と、第1分散付与フィルタが挿入された第2伝送線路であって、前記第1分散付与フィルタによる遅延θDと前記第2伝送線路による遅延θ2とを前記第1局所信号VLO(t)に与えることによって、第3局所信号VLO”(t)=VLO(t−θD−θ2)を生成する第2伝送線路と、前記第1分散付与フィルタとは逆符号の分散を与える第2分散付与フィルタが挿入された第3伝送線路であって、前記第2分散付与フィルタによる遅延θD’と前記第3伝送線路による遅延θ3とを前記前記第1中間周波数信号VIF(t)に与えることによって、第2中間周波数信号VIF’(t)=VIF(t−θD’−θ3)を生成する第3伝送線路と、前記第3局所信号VLO”(t)と前記第2中間周波数信号VIF’(t)とを乗算することによって、周波数fRFを有する第2無線周波数信号VRF’(t)を生成する第2混合器と、を備えており、各放射素子Aiから出力された無線信号を、前記第1無線周波数信号として対応する時間遅延器TD2iに供給する、ことを特徴とする。
上記の構成によれば、電磁波を効率良く受信できる方向を広帯域に亘って従来よりも精度良く制御することが可能な受信用のフェイズドアレイアンテナを実現することができる。
本発明の第5の態様に係るフェイズドアレイアンテナは、本発明の第4の態様に係るフェイズドアレイアンテナにおいて、前記第2分散付与フィルタとは逆符号の分散を与える第3分散付与フィルタが、前記第1混合器に入力される第1無線周波数信号VRF(t)を伝送する伝送線路、又は、前記第2混合器から出力される前記第2無線周波数信号VRF’(t)を伝送する伝送線路に挿入されていてもよい。
上記の構成によれば、第2無線周波数信号VRF’(t)の第1無線周波数信号VRF(t)に対する遅延δから第1無線周波数信号VRF(t)の周波数fRFに比例する項+DfRF又は−DfRFを除去することができる。この結果、第2無線周波数信号VRF’(t)が出力される伝送線路によって、第2無線周波数信号VRF’(t)の信号波形が崩されることを抑えられるので、第2無線周波数信号VRF’(t)の信号品質を向上させることができる。
本発明の第6の態様に係るフェイズドアレイアンテナは、本発明の第4の態様又は第5の態様に係るフェイズドアレイアンテナにおいて、各時間遅延器TD2i(i=1〜n)の前記第1分散付与フィルタ及び前記第2分散付与フィルタが与える分散は、それぞれ、対応する放射素子Aiの配列順に等差的に設定されている、ことが好ましい。
上記の構成によれば、放射素子A1〜Anが同一直線上に等間隔で配置されている場合に、電磁波を効率良く受信できる方向を広帯域に亘って精度良く制御することができる。
本発明の第7の態様に係るフェイズドアレイアンテナは、前記第1〜第3のいずれかの態様に係るフェイズドアレイアンテナを送信用アンテナとして備えているとともに、前記4〜第6のいずれかの態様に係るフェイズドアレイアンテナを受信用アンテナとして備えており、前記放射素子A1,A2,…,Anが、前記送信用アンテナ及び前記受信用アンテナに共用されている構成である。
上記の構成によれば、電磁波を効率良く送受信できる方向を広帯域に亘って従来よりも精度良く制御することが可能な送受信兼用のフェイズドアレイアンテナを実現することができる。
上記の時間遅延器によれば、無線周波数信号に与える遅延を、局所信号の周波数を変化させることによって制御することができ、しかも、この制御を広帯域に亘って従来よりも精度良く行うことが可能な時間遅延器を実現することができる。したがって、上記の時間遅延器を用いた本発明のフェイズドアレイアンテナによれば、電磁波を効率良く送信又は受信できる方向(放射する電磁波の主ビーム方向)を広帯域に亘って従来よりも精度良く制御することができる。
〔第1の実施形態〕
(時間遅延器の構成)
本発明の第1の実施形態に係る時間遅延器1について、図1を参照して説明する。図1は、時間遅延器1の構成を示すブロック図である。時間遅延器1は、送信用フェイズドアレイアンテナ、受信用フェイズドアレイアンテナ、及び送受信兼用フェイズドアレイアンテナのいずれにも搭載することができる。この点は、後述する他の実施形態に係る時間遅延器についても同様である。
時間遅延器1は、図1に示すように、2つの混合器MX1(第1混合器),MX2(第2混合器)と、2つのサーキュレータC1、C2と、2つの分散付与フィルタDF1(第1分散付与フィルタ),DF2(第2分散付与フィルタ)とを備えている。サーキュレータC1、C2の働きについては、図15を参照して前述したとおりである。
混合器MX1の2つの入力端子のうち第1入力端子には、周波数fRF(fLO<fRF)を有する第1無線周波数信号VRF(t)を生成する無線周波数信号源RFが接続されている。混合器MX1の2つの入力端子のうち第2入力端子には、第1伝送線路TL1が接続されている。第1伝送線路TL1は、周波数fLOを有する第1局所信号VLO(t)を生成する局所信号源LOの出力端子から始まり、混合器MX1の第1入力端子に至る線路である。第1伝送線路TL1は、局所信号源LOにて生成された第1局所信号VLO(t)に対して、線路遅延θ1を与えることによって、第2局所信号VLO’(t)=VLO(t−θ1)を生成する。
混合器MX2の2つの入力端子のうち第1入力端子には、分散付与フィルタDF1が挿入された第2伝送線路TL2が接続されている。第2伝送線路TL2は、局所信号源LOの出力端子から始まり、サーキュレータC1の第1ポート及び第2ポートを経て分散付与フィルタDF1を往復し、サーキュレータC1の第2ポート及び第3ポートを経て混合器MX2の第1入力端子に至る線路である。第2伝送線路TL2は、局所信号源LOにて生成された第1局所信号VLO(t)に対して、線路遅延θ2と分散付与フィルタDF1による遅延θDとを与えることによって、第3局所信号VLO”(t)=VLO(t−θD−θ2)を生成する。
分散付与フィルタDF1として、負の分散−D[s/Hz]を与える分散付与フィルタを用いた場合、第1局所信号VLO(t)に与えられる遅延θDは、θD=DfLO+θ0となり、第3局所信号VLO”(t)は、VLO”(t)=VLO(t−DfLO−θ0−θ2)となる。一方、分散付与フィルタDF1として、正の分散+D[s/Hz]を与える分散付与フィルタを用いた場合、第1局所信号VLO(t)に与えられる遅延θDは、θD=−DfLO+θ0となり、第3局所信号VLO”(t)は、VLO”(t)=VLO(t+DfLO−θ0−θ2)となる。
なお、このような分散付与フィルタDF1は、例えば、非特許文献1に開示されているようなCEBG(Chirped Electromagnetic Bandgap)伝送線路により構成することができる。CEBG伝送線路は、マイクロストリップ線路のストリップ導体の幅を周期的に拡縮させて構成されている。これにより、CEBG伝送線路は、入力された信号の周波数に応じて該信号を反射する線路上の位置を変えて線路長を変えることができるので、入力された信号の周波数に応じた遅延を該信号に与えることができる。
混合器MX2の第2入力端子には、分散付与フィルタDF2が挿入された第3伝送線路TL3が接続されている。第3伝送線路TL3は、混合器MX1の出力端子から始まり、サーキュレータC2の第1ポート及び第2ポートを経て分散付与フィルタDF2を往復し、サーキュレータC2の第2ポート及び第3ポートを経て混合器MX2の第2入力端子に至る線路である。第3伝送線路TL3は、混合器MX1にて生成された第1中間周波数信号VIF(t)に対して、線路遅延θ3と分散付与フィルタDF2による遅延θD’とを与えることによって、第2中間周波数信号VIF’(t)=VIF(t−θD’−θ2)を生成する。
分散付与フィルタDF2としては、分散付与フィルタDF1が与える分散と絶対値が等しく符号が反対の分散を与える分散付与フィルタが用いられる。すなわち、分散付与フィルタDF1として、負の分散−D[s/Hz]を与える分散付与フィルタが用いられている場合、分散付与フィルタDF2としては、正の分散+D[s/Hz]を与える分散付与フィルタが用いられる。一方、分散付与フィルタDF1として、正の分散+D[s/Hz]を与える分散付与フィルタが用いられている場合、分散付与フィルタDF2としては、負の分散―D[s/Hz]を与える分散付与フィルタが用いられる。
分散付与フィルタDF2が正の分散+D[s/Hz]を有している場合、第1中間周波数信号VIF(t)に与えられる遅延θD’は、θD’=−D(fRF−fLO)+θ0となり、第2中間周波数信号VIF’(t)は、VIF’(t)=VIF(t+D(fRF−fLO)−θ0−θ2)となる。一方、分散付与フィルタDF2が負の分散―D[s/Hz]を有している場合、第1中間周波数信号VIF(t)に与えられる遅延θD’は、θD’=+D(fRF−fLO)+θ0となり、第2中間周波数信号VIF’(t)は、VIF’(t)=VIF(t−D(fRF−fLO)−θ0−θ2)となる。
(時間遅延器の動作)
上記の構成を備えた時間遅延器1が、第1無線周波数信号VRF(t)及び第1局所信号VLO(t)を入力して、最終的に無線周波数信号VRF’(t)を出力する動作を以下説明する。
まず、無線周波数信号源RFにて生成される第1無線周波数信号VRF(t)及び局所周波数信号源LOにて生成される第1局所信号VLO(t)は、例えば、下記の式(15)及び式(16)で表すことができる。
混合器MX1の第1入力端子には、無線周波数信号源RFにて生成された第1無線周波数信号VRF(t)が入力される。混合器MX2の第2入力端子には、局所信号源LOにて生成された第1局所信号VLO(t)を、上述した第1伝送線路TL1にて遅延させることにより得られた第2局所信号VLO’(t)が入力される。第1局所信号VLO(t)が上記の式(16)のように表される場合、第2局所信号VLO’(t)は、下記の式(17)のように表される。
混合器MX1は、無線周波数信号VRF(t)と第2局所信号VLO’(t)とを乗算した後、高周波成分をカットする(第2局所信号VLO’(t)を用いて無線周波数信号VRF(t)をダウンコンバートする)ことによって、中間周波数信号VIF(t)を生成する。混合器MX1に入力される無線周波数信号VRF(t)及び第2局所信号VLO’(t)が上記の式(15)及び(17)で表される場合、混合器MX1にて生成される第1中間周波数信号VIF(t)は、下記の式(18)のように表される。
混合器MX2の第1入力端子には、局所信号源LOにて生成され第1局所信号VLO(t)を、上述した第2伝送線路TL2にて遅延させることにより得られた第3局所信号VLO”(t)が入力される。第2伝送線路TL2に挿入する分散付与フィルタDF1として、負の分散−D[s/Hz]を与える分散付与フィルタを用いているものとすると、第1局所信号VLO(t)が上記の式(16)のように表される場合、第3局所信号VLO”(t)は、下記の式(19)のように表される。
混合器MX2の第2入力端子には、混合器MX1にて生成され第1中間周波数信号VIF(t)を、上述した第3伝送線路TL3にて遅延させることにより得られた第2中間周波数信号VIF’(t)が入力される。第3伝送線路TL3に挿入する分散付与フィルタDF2として、正の分散+D[s/Hz]を与える分散付与フィルタを用いているものとすると、第1中間周波数信号VIF(t)が上記の式(18)のように表されている場合、第2中間周波数信号VIF’(t)は、下記の式(20)のように表される。
混合器MX2は、第2中間周波数信号VIF’(t)と第3局所信号VLO”(t)とを乗算した後、低周波成分をカットする(第3局所信号VLO”(t)を用いて第2中間周波数信号VIF’(t)をアップコンバートする)ことによって、第2無線周波数信号VRF’(t)を生成する。混合器MX2に入力される第2中間周波数信号VIF’(t)及び第3局所信号VLO”(t)が上記の式(20)及び上記の式(19)のように表される場合、混合器MX2にて生成される第2無線周波数信号VRF’(t)は、下記の式(21)のように表される。
式(21)から、第2無線周波数信号VRF’(t)の第1無線周波数信号VRF(t)に対する遅延δは、下記の式(22)で表される。
上記の式(22)によれば、以下のことが分かる。すなわち、時間遅延器1によれば、遅延δを第1局所信号VLO(t)の周波数fLOに応じて自在に変化させることができる。更に、時間遅延器1においては、制御変数である局所信号VLO(t)の周波数fLOの変化量ΔfLOと、被制御変数である遅延δの変化量Δδとの間に、Δδ={(θ2−θ1-θ3)/fRF−2D}ΔfLO又はΔδ={(θ2−θ1-θ3)/fRF+2D}ΔfLOという関係が成り立つ。したがって、第2伝送線路TL2の電気長を第1伝送線路TL1の電気長と第3伝送線路TL3の電気長との和に近づけることにより、θ2−θ1-θ3を0に近づけていけば、遅延δの変化量Δδが無線周波数信号VRF(t)の周波数fRFに依存する依存度をいくらでも小さくすることができる。特に、第2伝送線路TL2の電気長を第1伝送線路TL1の電気長と第3伝送線路TL3の電気長との和に一致させることにより、θ2−θ1-θ3=0とすれば、遅延δの変化量Δδが無線周波数信号VRF(t)の周波数fRFに依存しなくなる。このため、局所信号VLO(t)の周波数fLOを制御変数とする遅延δの制御が従来よりも容易になる。
なお、ここでは、分散付与フィルタDF1として、負の分散−D[s/Hz]を与える分散付与フィルタを用い、分散付与フィルタDF2として、正の分散+D[s/Hz]を与える分散付与フィルタを用いた場合の動作について説明したが、本発明はこれに限定されない。すなわち、分散付与フィルタDF1として、正の分散+D[s/Hz]を与える分散付与フィルタを用い、分散付与フィルタDF2として、負の分散−D[s/Hz]を与える分散付与フィルタを用いてもよい。この場合における遅延δは、下記の式(23)で表される。この場合の作用効果は、既に説明した作用効果と全く同様である。
〔第2の実施形態〕
(時間遅延器の構成)
本発明の第2の実施形態に係る時間遅延器2の構成について、図2を参照して説明する。図2は、時間遅延器2の構成を示すブロック図である。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した構成と同じ機能を有する構成については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
図2に示すように、時間遅延器2は、前記時間遅延器1の構成に加えて、混合器MX2の出力側、すなわち混合器MX2から第2無線周波数信号VRF’(t)が出力される伝送線路に、さらにサーキュレータC3と分散付与フィルタDF3とを備えている。混合器MX2の出力端子は、サーキュレータC3の3つのポートのうち第1ポートに接続され、サーキュレータC3の第2ポートには分散付与フィルタDF3が接続されている。
分散付与フィルタDF3が与える分散は、分散付与フィルタDF2が与える分散と逆符号に設定されている。つまり、分散付与フィルタDF2が正の分散+D[s/Hz]を与える場合には、分散付与フィルタDF3は負の分散−D[s/Hz]を与え、分散付与フィルタDF2が負の分散−D[s/Hz]を与える場合には、分散付与フィルタDF3は正の分散+D[s/Hz]を与える。
これにより、サーキュレータC3の第3ポートから、第2無線周波数信号VRF’(t)に含まれている遅延を修正した、より適切な遅延を有する第3無線周波数信号VRF”(t)が出力される。
(時間遅延器の動作)
時間遅延器2が、より適切な遅延を有する第3無線周波数信号VRF”(t)を生成できる理由は以下のとおりである。第2無線周波数信号VRF’(t)の周波数は、前記式(21)からfRFである。したがって、分散付与フィルタDF2が正の分散+D[s/Hz]を与え、かつ、分散付与フィルタDF3は負の分散−D[s/Hz]を与える場合には、VRF”(t)=VRF’(t−DfRF)となる。したがって、上記の(22)式の遅延δに含まれる項DfRFをキャンセルすることができる。
これにより、θ2−(θ1+θ3)=0とした場合には、周波数fRFを全く含まない遅延δを生成することができる。この場合、時間遅延器2は、第1局所信号VLO(t)の周波数fLOに比例して変動する最適な遅延δを生成することができる。
〔第3の実施形態〕
(時間遅延器の構成)
本発明の第3の実施形態に係る時間遅延器3の構成について、図3を参照して説明する。図3は、時間遅延器3の構成を示すブロック図である。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した構成と同じ機能を有する構成については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
図3に示すように、時間遅延器3は、前記時間遅延器1の構成に加えて、混合器MX1の入力側、すなわち混合器MX1に第1無線周波数信号VRF(t)を入力する伝送線路に、さらにサーキュレータC4と分散付与フィルタDF4とを備えている。サーキュレータC4の3つのポートのうち第1ポートに第1無線周波数信号VRF(t)が入力され、サーキュレータC4の第2ポートには分散付与フィルタDF4が接続され、サーキュレータC4の第3ポートは混合器MX1の第2入力端子と接続されている。
分散付与フィルタDF4が与える分散は、分散付与フィルタDF2が与える分散と逆符号に設定されている。つまり、分散付与フィルタDF2が正の分散+D[s/Hz]を与える場合には、分散付与フィルタDF4は負の分散−D[s/Hz]を与え、分散付与フィルタDF2が負の分散−D[s/Hz]を与える場合には、分散付与フィルタDF4は正の分散+D[s/Hz]を与える。
これにより、混合器MX2の出力端子から、時間遅延器1に比べてより適切な遅延を有する第2無線周波数信号VRF’(t)が出力される。
(時間遅延器の動作)
上記の構成を備えた時間遅延器3が、第1無線周波数信号VRF(t)及び第1局所信号VLO(t)を入力して、最終的に無線周波数信号VRF’(t)を出力する動作を以下説明する。
まず、分散付与フィルタDF2が正の分散+D[s/Hz]を与えるともに、分散付与フィルタDF4が負の分散−D[s/Hz]を与えるとした場合、上記の式(15)で表される第1無線周波数信号VRF(t)は、分散付与フィルタDF4を伝送されることによって、遅延DfRF+θ0+θ5を与えられる。したがって、混合器MX1の第2入力端子に入力される第2無線周波数信号VRF’(t)は、下記の式(24)で表される。
混合器MX1は、この第2無線周波数信号VRF’(t)を、上記の式(17)で表される第2局所信号VLO’(t)を用いてダウンコンバートすることによって、下記の式(25)のように表される第1中間周波数信号VIF(t)を生成する。
第1中間周波数信号VIF(t)は、第3伝送線路TL3及び分散付与フィルタDF2から前述したとおりの遅延を与えられ、下記の式(26)で表される第2中間周波数信号VIF’(t)となって、混合器MX2の第2入力端子に入力される。
混合器MX2は、第2中間周波数信号VIF’(t)を、上記の式(19)で表される第3局所信号VLO”(t)を用いてアップコンバートすることによって、下記の式(27)のように表される第2無線周波数信号VRF’(t)を生成する。
上記の式(27)から、第2無線周波数信号VRF’(t)に含まれた遅延には、式(22)または式(23)で表された時間遅延器1における遅延δに含まれたDfRF項が消えていることがわかる。
このように、第2の実施形態及び第3の実施形態から、遅延δから項DfRFをキャンセルする働きをする分散付与フィルタDF4は、混合器MX1に第1無線周波数信号VRF(t)を入力する伝送線路に挿入されてもよいし、MX2から第2無線周波数信号VRF’(t)が出力される伝送線路に挿入されてもよいことがわかる。
〔第4の実施形態〕
第4の実施形態として、前記時間遅延器1を備えた送信用のフェイズドアレイアンテナ4について、図4を参照して説明する。図4は、フェイズドアレイアンテナ4の構成を示すブロック図である。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した構成と同じ機能を有する構成については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
フェイズドアレイアンテナ4は、図4に示すように、n個の放射素子A1,A2,…,Anと、n個の時間遅延器TD11,TD12,…,TD1nと、を備えた送信用アンテナである。各時間遅延器TD1i(i=1〜n)には、無線周波数信号源RFから出力された無線周波数信号VRF(t)(上述した第1無線周波数信号に相当)が共通に供給される。各時間遅延器TD1iにより遅延された無線周波数信号VRF(t−δi)(上述した第2無線周波数信号に相当)は、対応する放射素子Anに供給される。
フェイズドアレイアンテナ4において、局所信号源LO1,LO2,…,LOnが生成する局所信号VLOi(t)の周波数fLOiは、対応する放射素子Aiの配列順に等差的に設定されている。これにより、時間遅延器TD11,TD12,…,TD1nが第1無線周波数信号VRF(t)に与える遅延δ1,δ2,…,δnが、対応する放射素子Aiの配列順に等差的に設定されることになる。時間遅延差Δt=δ2−δ1=δ3−δ2=…=δn−δn−1がd×sinα/cに一致するように、周波数差ΔfLO=fLO2−fLO1=fLO3−fLO2=…=fLOn−fLOn−1を設定すれば、等位相面の傾きがαとなる電磁波を効率良く送信することができる。
≪本発明と従来技術とで得られる主ビーム方向の対比≫
(本発明の主ビーム方向)
まず、式(22)に基づいて、各時間遅延器TDiの遅延δiは、下記の式(28)で表される。
そうすると、隣り合う時間遅延器TD1i,TD1i−1の時間遅延差Δt=δi−δi−1は、下記の式(29)で表される。
隣り合う時間遅延器TD1i,TDi−1に入力する第1局所信号VLO(t)の周波数をfLOi,fLOi−1とし、式(29)における周波数差(fLOi−fLOi−1)をΔfLOとすると、時間遅延差Δtは、下記の式(30)で表される。
この式(30)から、本発明の時間遅延器1を備えた送信用フェイズドアレイアンテナ4は、第1無線周波数信号VRF(t)の周波数fRFがどのように変化しても、時間遅延差Δtは、分散付与フィルタDF1,DF2の分散Dと第1局所信号VLO(t)の周波数差ΔfLOとによって一意に定まることがわかる。このことは、時間遅延器2及び時間遅延器3を送信用フェイズドアレイアンテナにも当てはまる。
ここで、具体的な主ビーム方向の設定例を説明する。例えば、60GHz帯(57GHz以上66GHz以下)の電磁波を放射する場合、隣接する放射素子間の距離は、例えば、中心周波数61.5GHzに対応する自由空間波長の1/2、すなわち、2.44mmに設定すればよい。また、第2伝送線路TL2の電気長を、第1伝送線路TL1の電気長と第3伝送線路TL3の電気長との合計と等しくすることによって、θ2−(θ1+θ3)=0とする。分散付与フィルタDF1,DF2の分散の大きさDを5.7ps/GHzとし、周波数差ΔfLOを0.5GHzに設定する。この場合、式(30)の分散D及び周波数差ΔfLOに各値を代入すると、時間遅延差Δtは、5.7psとなる。時間遅延差Δtのこの値と、d=2.44mmとから、Δt=dsinα/cから求まる主ビーム方向の角度αは、約45°となる。
また、70GHz帯(71GHz以上76GHz以下)の電磁波を放射する場合、隣接する放射素子間の距離は、例えば、中心周波数73.5GHzに対応する自由空間波長の1/2、すなわち、2.04mmに設定すればよい。この場合にも、主ビーム方向の角度αは、上記と全く同じ求め方になるので、約45°となる。
(従来技術の主ビーム方向)
特許文献1の構成(図16)を備えた時間遅延器20における遅延δは、式(6)で与えられることを既に説明した。
周波数fRFが57GHzの場合、隣り合う時間遅延器間で必要な第1局所信号VLO(t)の周波数差ΔfLOは3.2GHzになる。この条件で、位相器PSによって与えられる遅延θ1を100psとし、周波数fRFを66GHzとした場合の時間遅延差Δtを、式(6)に基づいて求めると、約4.9psとなる。この時間遅延差に対応した主ビーム方向の角度αは約37°になる。
また、周波数fRFが71GHzの場合、隣り合う時間遅延器間で必要な第1局所信号VLO(t)の周波数差ΔfLOは3.4GHzになる。この条件で、位相器PSによって与えられる遅延θ1を100psとし、周波数fRFを76GHzとした場合の時間遅延差Δtを、式(6)に基づいて求めると、約4.5psとなる。この時間遅延差に対応した主ビーム方向の角度αは約41°になる。
このように、特許文献1の時間遅延器では、周波数fRFが変わると、主ビーム方向の角度αも変わってしまうので、本発明に係る時間遅延器の優位性が明らかである。
〔第5の実施形態〕
第5の実施形態として、前記時間遅延器1を備えた受信用のフェイズドアレイアンテナ5について、図5を参照して説明する。図5は、フェイズドアレイアンテナ5の構成を示すブロック図である。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した構成と同じ機能を有する構成については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
フェイズドアレイアンテナ5は、図5に示すように、n個の放射素子A1,A2,…,Anと、n個の時間遅延器TD21,TD22,…,TD2nと、を備えた受信用アンテナである。各時間遅延器TD2i(i=1〜n)には、対応する放射素子Aiから出力された無線周波数信号VRF(t+δi)(上述した第1無線周波数信号に相当)が個別に入力される。各時間遅延器TD2iにより遅延された無線周波数信号VRF(t)(上述した第2無線周波数信号に相当)は、合波された後、外部に出力される。
フェイズドアレイアンテナ5において、局所信号源LO1,LO2,…,LOnが生成する第1局所信号VLO(t)の周波数fLOは、対応する放射素子Aiの配列順に等差的に設定されている。これにより、時間遅延器TD21,TD22,…,TD2nが無線周波数信号VRF(t)に与える遅延δ1,δ2,…,δnが、対応する放射素子Aiの配列順に等差的に設定されることになる。時間遅延差Δt=δ2−δ1=δ3−δ2=…=δn−δn−1がd×sinα/cに一致するように、周波数差ΔfLO=fLO2−fLO1=fLO3−fLO2=…=fLOn−fLOn−1を設定すれば、等位相面の傾き角がαとなる電磁波を効率良く受信することができる。
〔第6の実施形態〕
第6の実施形態として、前記時間遅延器1を備えた送受信兼用のフェイズドアレイアンテナ6について、図6を参照して説明する。図6は、フェイズドアレイアンテナ6の構成を示すブロック図である。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した構成と同じ機能を有する構成については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
図6に示すように、フェイズドアレイアンテナ6は、図4に示す送信用のフェイズドアレイアンテナ4と、図5に示す受信用のフェイズドアレイアンテナ5とを組み合わせた、送受信兼用のフェイズドアレイアンテナである。
ただし、フェイズドアレイアンテナ6は、局所信号源LO1〜LOnを1組だけ備え、フェイズドアレイアンテナ4及びフェイズドアレイアンテナ5とは、これを共有している。より具体的には、各局所信号源LOiは、フェイズドアレイアンテナ4において対応する時間遅延器TD1i、及び、フェイズドアレイアンテナ5において対応する時間遅延器TD2iの双方に接続されている。また、フェイズドアレイアンテナ6は、放射素子A1〜Anを1組だけ備え、フェイズドアレイアンテナ4及びフェイズドアレイアンテナ5とは、これを共有している。より具体的には、各放射素子Aiは、フェイズドアレイアンテナ4において対応する時間遅延器TD1i、及び、フェイズドアレイアンテナ5において対応する時間遅延器TD2iの双方に接続されている。
〔第7の実施形態〕
第7の実施形態として、前記時間遅延器1を備えた他の送信用のフェイズドアレイアンテナ7について、図7を参照して説明する。図7は、フェイズドアレイアンテナ7の構成を示すブロック図である。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した構成と同じ機能を有する構成については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
フェイズドアレイアンテナ7は、図7に示すように、n個の放射素子A1,A2,…,Anと、n個の時間遅延器TD11,TD12,…,TD1nと、を備えた送信用アンテナである。各時間遅延器TD1i(i=1〜n)には、無線周波数信号源RFから出力された無線周波数信号VRF(t)が共通に供給される。各時間遅延器TD1iにより遅延された無線周波数信号VRF(t−δi)は、対応する放射素子Anに供給される。
フェイズドアレイアンテナ7において特徴的な点は、局所信号源LO及び混合器MX1をそれぞれ1つだけ備えており、n個の時間遅延器TD11,TD12,…,TD1nがこれを共有している点である。
共通の混合器MX1に関して、第1入力端子は、共通の無線周波数信号源RFの出力端子に接続されており、第2入力端子は、共通の第1伝送線路TL1を介して共通の局所信号源LOの出力端子に接続されている。したがって、共通の混合器MX1には、共通の無線周波数信号源RFにて生成された無線周波数信号VRF(t)と、共通の局所信号源LOにて生成された第1局所信号VLO(t)を共通の第1伝送線路TL1にて遅延させることにより得られる第2局所信号VLO’(t)とが入力される。共通の混合器MX1は、第2局所信号VLO’(t)を用いて第1無線周波数信号VRF(t)をダウンコンバートすることによって、中間周波数信号VIF(t)を生成する。
各時間遅延器TD1iの混合器MX2に関して、第1入力端子は、その時間遅延器TD1iの第2伝送線路TL2(分散付与フィルタDF1を含む)を介して共通の局所信号源LOの出力端子に接続されており、第2入力端子は、その時間遅延器TD1iの第3伝送線路TL3(分散付与フィルタDF2を含む)を介して共通の混合器MX1の出力端子に接続されている。したがって、各時間遅延器TD1iの混合器MX2には、共通の局所信号源LOにて生成された第1局所信号VLO(t)を、その時間遅延器TD1iの第2伝送線路TL2にて遅延させることにより得られる第3局所信号VLO”(t)と、共通の混合器MX1にて生成された中間周波数信号VIF(t)を、その時間遅延器TD1iの第3伝送線路TL3にて遅延させることより得られる第2中間周波数信号VIF’(t)とが入力される。各時間遅延器TD1iの混合器MX2は、第3局所信号VLO”(t)を用いて第2中間周波数信号VIF’(t)をアップコンバートすることによって、第2無線周波数信号VRF’(t)を生成する。各時間遅延器TD1iの混合器MX2にて生成された第2無線周波数信号VRF’(t)は、その時間遅延器TD1iに対応する放射素子Aiに供給される。なお、時間遅延素子TD11〜TD1nの第2伝送線路TL2及び第3伝送線路TL3の電気長は、それぞれ共通であるとする。
なお、各混合器MX2から出力される第2無線周波数信号VRF’(t)を、対応する放射素子Aiに向けて伝送する伝送線路に、分散付与フィルタDF2とは逆符号の分散を与える分散付与フィルタDF3(第3分散付与フィルタ)を挿入してもよい。より具体的には、各混合器MX2と対応する放射素子Aiとの間にサーキュレータC3を挿入し、サーキュレータC3の第1ポートを各混合器MX2の出力端子に接続し、第2ポートを分散付与フィルタDF3に接続し、第3ポートを放射素子Aiに接続する。
これにより、各時間遅延器TD1iから出力される第2無線周波数信号VRF’(t)の第1無線周波数信号VRF(t)に対する遅延δiから第1無線周波数信号VRF(t)の周波数fRFに比例する項+DfRF又は−DfRFを除去することができる。この結果、第2無線周波数信号VRF’(t)が放射素子Aiに向けて伝送される伝送線路によって、第2無線周波数信号VRF’(t)の信号波形が崩されることを抑えられるので、第2無線周波数信号VRF’(t)の信号品質を向上させることができる。
フェイズドアレイアンテナ7において、時間遅延器TD11,TD12,…,TD1nの分散付与フィルタDF1,DF2が与える分散は、対応する放射素子Aiの配列順に等差的に設定されている。すなわち、時間遅延器TD11,TD12,…,TD1nの分散付与フィルタDF1が与える分散は、それぞれ、−D,−(D+ΔD),…,−(D+(n−1)ΔD)に設定されており、時間遅延器TD11,TD12,…,TD1nの分散付与フィルタDF2が与える分散は、それぞれ、D,D+ΔD,…,D+(n−1)ΔDに設定されている。これにより、時間遅延器TD11,TD12,…,TD1nが無線周波数信号VRF(t)に与える遅延δ1,δ2,…,δnが、対応する放射素子Aiの配列順に等差的に設定されることになる。時間遅延差Δt=δ2−δ1=δ3−δ2=…=δn−δn−1がd×sinα/cに一致するように、分散差ΔDを設定すれば、等位相面の傾き角がαとなる電磁波を効率良く送信することができる。
フェイズドアレイアンテナ7において、時間遅延差Δtは、下記の式(31)に示すように、第1局所信号VLO(t)の周波数fLOに比例し、その比例係数は、無線周波数信号VRF(t)の周波数fRFに依存しない。したがって、フェイズドアレイアンテナ7によれば、電磁波を効率良く送信することができる方向(放射する電磁波の主ビーム方向)を広い帯域に亘って正確に制御することが可能である。
〔第8の実施形態〕
第8の実施形態として、前記時間遅延器1の変形例を備えた送信用のフェイズドアレイアンテナ8について、図8を参照して説明する。図8は、フェイズドアレイアンテナ8の構成を示すブロック図である。
フェイズドアレイアンテナ8は、図8に示すように、n個の放射素子A1,A2,…,Anと、n個の時間遅延器TD21,TD22,…,TD2nと、を備えた受信用アンテナである。各時間遅延器TD2i(i=1〜n)には、対応する放射素子Aiから出力された無線周波数信号VRF(t+δi)(上述した第1無線周波数信号に相当)が個別に入力される。各時間遅延器TD2iにより遅延された無線周波数信号VRF(t)(上述した第2無線周波数信号に相当)は、合波された後、外部に出力される。
フェイズドアレイアンテナ8において特徴的な点は、局所信号源LOを1つだけ備えており、n個の時間遅延器TD21,TD22,…,TD2nがこれを共有している点である。
各時間遅延器TD2iの混合器MX1に関して、第1入力端子は、対応する放射素子Aiに接続されており、第2入力端子は、その時間遅延器TD2iの第1伝送線路TL1を介して共通の局所信号源LOの出力端子に接続されている。したがって、各時間遅延器TD2iの混合器MX1には、対応する放射素子Aiから出力された第1無線周波数信号VRF(t)と、共通の局所信号源LOにて生成された第1局所信号VLO(t)をその時間遅延器TD2iの第1伝送線路TL1にて遅延させることにより得られる第2局所信号VLO’(t)とが入力される。各時間遅延器TD2iの混合器MX1は、第2局所信号VLO’(t)を用いて第1無線周波数信号VRF(t)をダウンコンバートすることによって、中間周波数信号VIF(t)を生成する。
各時間遅延器TD2iの混合器MX2に関して、第1入力端子は、その時間遅延器TD2iの第2伝送線路TL2(分散付与フィルタDF1を含む)を介して共通の局所信号源LOの出力端子に接続されており、第2入力端子は、その時間遅延器TD2iの第3伝送線路(分散付与フィルタDF2を含む)を介してその時間遅延器TD2iの混合器MX1の出力端子に接続されている。したがって、各時間遅延器TD2iの混合器MX2には、共通の局所信号源LOにて生成された第1局所信号VLO(t)を、その時間遅延器TD2iの第2伝送線路TL2にて遅延させることにより得られる第3局所信号VLO”(t)と、その時間遅延器TD2iの混合器MX1にて生成された中間周波数信号VIF(t)を、その時間遅延器TD2iの第3伝送線路TL3にて遅延させることより得られる第2中間周波数信号VIF’(t)とが入力される。各時間遅延器TD2iの混合器MX2は、第3局所信号VLO”(t)を用いて第2中間周波数信号VIF’(t)をアップコンバートすることによって、第2無線周波数信号VRF’(t)を生成する。各時間遅延器TD2iの混合器MX2にて生成された第2無線周波数信号VRF’(t)は、合波された後、外部に出力される。なお、時間遅延素子TD21〜TD2nの第1伝送線路TL1、第2伝送線路TL2、及び第3伝送線路TL3の電気長は、それぞれ共通であるとする。
なお、各混合器MX2から第2無線周波数信号VRF’(t)が出力される伝送線路に、分散付与フィルタDF2とは逆符号の分散を与える分散付与フィルタDF3(第3分散付与フィルタ)を挿入してもよい。より具体的には、各混合器MX2と、各時間遅延器TD2iから出力される第2無線周波数信号VRF’(t)の和信号が出力される合流端子との間にサーキュレータC3を挿入し、サーキュレータC3の第1ポートを各混合器MX2の出力端子に接続し、第2ポートを分散付与フィルタDF3に接続し、第3ポートを合流端子に接続する。
これにより、各時間遅延器TD2iから出力される第2無線周波数信号VRF’(t)の第1無線周波数信号VRF(t)に対する遅延δiから第1無線周波数信号VRF(t)の周波数fRFに比例する項+DfRF又は−DfRFを除去することができる。この結果、第2無線周波数信号VRF’(t)が出力される伝送線路によって、第2無線周波数信号VRF’(t)の信号波形が崩されることを抑えられるので、第2無線周波数信号VRF’(t)の信号品質を向上させることができる。
なお、各時間遅延器TD2iから出力される第2無線周波数信号VRF’(t)の伝送線路に分散付与フィルタDF3を設ける代わりに、各時間遅延器TD2iに第1無線周波数信号VRF(t)が入力される伝送線路に、分散付与フィルタDF2とは逆符号の分散を与える分散付与フィルタDF4を、前記第3分散付与フィルタとして挿入してもよい。より具体的には、各放射素子Aiと各時間遅延器TD2iとの間にサーキュレータC4を挿入し、サーキュレータC4の第1ポートを各放射素子Aiに接続し、第2ポートを分散付与フィルタDF4に接続し、第3ポートを各時間遅延器TD2iの混合器MX1の第1入力端子に接続する。分散付与フィルタDF4を追加したことによる作用効果は、分散付与フィルタDF3を追加したことによる、既に説明した作用効果と同じである。
フェイズドアレイアンテナ8において、時間遅延器TD21,TD22,…,TD2nの分散付与フィルタDF1,DF2が与える分散は、対応する放射素子Aiの配列順に等差的に設定されている。すなわち、時間遅延器TD21,TD22,…,TD2nの分散付与フィルタDF1が与える分散は、それぞれ、−D,−(D+ΔD),…,−(D+(n−1)ΔD)に設定されており、時間遅延器TD21,TD22,…,TD2nの分散付与フィルタDF2が与える分散は、それぞれ、D,D+ΔD,…,D+(n−1)ΔDに設定されている。これにより、時間遅延器TD21,TD22,…,TD2nが無線周波数信号VRF(t)に与える遅延δ1,δ2,…,δnが、対応する放射素子Aiの配列順に等差的に設定されることになる。時間遅延差Δt=δ2−δ1=δ3−δ2=…=δn−δn−1がd×sinα/cに一致するように、分散差ΔDを設定すれば、等位相面の傾き角がαとなる電磁波を効率良く受信することができる。
〔第9の実施形態〕
第9の実施形態として、送受信兼用のフェイズドアレイアンテナ9について、図9を参照して説明する。図9は、フェイズドアレイアンテナ9の構成を示すブロック図である。
図9に示すように、フェイズドアレイアンテナ9は、図4に示す送信用のフェイズドアレイアンテナ4と、図8に示す受信用のフェイズドアレイアンテナ8とを組み合わせた、送受信兼用のフェイズドアレイアンテナである。
フェイズドアレイアンテナ9をこのように構成した場合でも、フェイズドアレイアンテナ9は、既に説明した送受信兼用のフェイズドアレイアンテナ6と同様の効果を奏する。
〔第10の実施形態〕
第10の実施形態として、送受信兼用のフェイズドアレイアンテナ10について、図10を参照して説明する。図10は、フェイズドアレイアンテナ10の構成を示すブロック図である。
図10に示すように、フェイズドアレイアンテナ10は、図7に示す送信用のフェイズドアレイアンテナ7と、図5に示す受信用のフェイズドアレイアンテナ5とを組み合わせた、送受信兼用のフェイズドアレイアンテナである。
フェイズドアレイアンテナ10をこのように構成した場合でも、フェイズドアレイアンテナ10は、既に説明した送受信兼用のフェイズドアレイアンテナ6と同様の効果を奏する。
〔第11の実施形態〕
第11の実施形態として、送受信兼用のフェイズドアレイアンテナ11について、図11を参照して説明する。図11は、フェイズドアレイアンテナ11の構成を示すブロック図である。
図11に示すように、フェイズドアレイアンテナ11は、図7に示す送信用のフェイズドアレイアンテナ7と、図8に示す受信用のフェイズドアレイアンテナ8とを組み合わせた、送受信兼用のフェイズドアレイアンテナである。
フェイズドアレイアンテナ11をこのように構成した場合でも、フェイズドアレイアンテナ11は、既に説明した送受信兼用のフェイズドアレイアンテナ6と同様の効果を奏する。
〔付記事項〕
本発明は上述した実施形態や各変形例に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、実施形態又は各変形例に開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。