JP6314616B2 - 車両用旋回走行制御装置、車両用旋回走行制御方法 - Google Patents

車両用旋回走行制御装置、車両用旋回走行制御方法 Download PDF

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Description

本発明は、車両用旋回走行制御装置、車両用旋回走行制御方法に関するものである。
車両の旋回挙動を表すスタビリティファクタという指標がある。
特許文献1に記載された従来技術では、目標スタビリティファクタを設定すると共に、実スタビリティファクタを算出し、これらの偏差に応じて車両の制駆動力を制御することにより、安定した旋回走行を図っている。
特開2011−236810号公報
しかしながら、実スタビリティファクタを算出するだけでは、ある時点での静的な旋回挙動を把握することしかできない。すなわち、今の旋回挙動に着目するだけでは、次の旋回挙動に向けた運転支援を行うことができないため、刻々と変化する旋回挙動の動的な変化特性を把握したうえで、運転支援を行うことが望まれていた。
本発明の課題は、旋回挙動の動的な変化特性に応じた運転支援を行うことである。
本発明の一態様に係る車両用旋回走行制御装置は、予め定めた座標系で、基準特性となるタイヤのスリップ角及び横力の関係を、基準特性線として規定し、タイヤのスリップ角又は横力を取得する。そして、基準特性線を参照し、取得したスリップ角又は横力に対応する座標位置での接線の傾きを、第一のコーナリングパワーとして算出する。そして、車両の目標スタビリティファクタを設定し、この目標スタビリティファクタに応じて、車両の旋回走行を駆動制御する。また、第一のコーナリングパワーが小さいほど、車両のアンダーステア特性が強まるように目標スタビリティファクタを設定したり、第一のコーナリングパワーが予め定めた閾値より大きい定常領域にあるときには、車両のアンダーステア特性が予め定めた基準値を維持するように目標スタビリティファクタを設定したりする。
本発明によれば、基準特性線において、スリップ角又は横力に対応する座標位置での接線の傾きを、第一のコーナリングパワーとして算出しているため、次に第一のコーナリングパワーがどのように変化するかを把握することができる。したがって、この第一のコーナリングパワーを用いて、車両の目標スタビリティファクタを設定し、車両の旋回走行を駆動制御することにより、旋回挙動の動的な変化特性に応じた運転支援を行うことができる。
旋回走行制御装置の構成を示す図である。 路面の摩擦係数μが異なるときの、タイヤのスリップ率λとタイヤの制駆動力Fxとの関係を示す図である。 路面の摩擦係数μが異なるときの、タイヤのスリップ角βとタイヤの横力Fyとの関係を示す図である。 点Pc及びPdの関係を示す図である。 タイヤのスリップ角βとタイヤの横力Fyとの関係を示す図である。 横力Fyから第一のコーナリングパワーK1を算出するためのマップである。 スリップ角βから第一のコーナリングパワーK1を算出するためのマップである。 横力Fyから第二のコーナリングパワーK2を算出するためのマップである。 スリップ角βから第二のコーナリングパワーK2を算出するためのマップである。 第一のコーナリングパワーK1から目標スタビリティファクタAを設定するためのマップである。 第一のコーナリングパワーK1からヨーモーメント制御用の配分比率Rdを設定するためのマップである。 第一のコーナリングパワーK1から減速制御用の配分比率Rdを設定するためのマップである。 電子制御スロットルの構成を示す図である。 ブレーキアクチュエータの構成を示す図である。 走行制御処理を示すフローチャートである。 スリップ角がβ1であるときの、スリップ角βと横力Fyとの関係を示す図である。 スリップ角がβ1よりも大きなβ2であるときの、スリップ角βと横力Fyとの関係を示す図である。 スリップ角がβ2よりも大きなβ3であるときの、スリップ角βと横力Fyとの関係を示す図である。 横方向の移動速度と加減速度による前後方向の移動速度との関係を示す図である。
《第1実施形態》
《構成》
本実施形態は、今の旋回挙動のみならず、刻々と変化する旋回挙動の動的な変化特性をも把握したうえで、次の旋回挙動に向けた運転支援を行うものである。なお、運転者が運転している場合に限らず、人為的な運転操作がなくとも、車両に搭載されたレーダやカメラ等で周囲の環境を認識し、車両の走行システムが主体となって自律的に走行(自動走行)できるものにも適応できる。
走行制御装置11の構成を、図1に基づいて説明する。
本実施形態の走行制御装置11は、コントローラ12と、アクチュエータ13と、を備える。
コントローラ12は、例えばマイクロコンピュータからなり、加速度センサ、車輪速度センサ、横加速度センサ、ヨーレートセンサ、操舵角センサ等、各種センサからの検出信号を入力する。
加速度センサは、車両前後方向の加減速度Gxを検出する。加速度センサは、例えば固定電極に対する可動電極の位置変位を静電容量の変化として検出しており、加減速度と方向に比例した電圧信号に変換してコントローラ12に出力する。コントローラ12は、入力された電圧信号から加減速度Gxを判断する。なお、コントローラ12は、加速を正の値として処理し、減速を負の値として処理する。
車輪速度センサは、各車輪の車輪速度VwFL〜VwRRを検出する。車輪速度センサは、例えば車輪と共に回転し円周に突起部(ギヤパルサ)が形成されたセンサロータと、このセンサロータの突起部に対向して設けられたピックアップコイルを有する検出回路と、を備える。そして、センサロータの回転に伴う磁束密度の変化を、ピックアップコイルによって電圧信号に変換してコントローラ12に出力する。コントローラ12は、入力された電圧信号から車輪速度VwFL〜VwRRを判断し、例えば非駆動輪(従動輪)の車輪速度平均値や全輪の車輪速度平均値を車速として演算する。
横加速度センサは、車両の横加速度Gyを検出する。横加速度センサは、例えば固定電極に対する可動電極の位置変位を静電容量の変化として検出しており、横加速度と方向に比例した電圧信号に変換してコントローラ12に出力する。コントローラ12は、入力された電圧信号から横加速度Gyを判断する。なお、コントローラ12は、右旋回を正の値として処理し、左旋回を負の値として処理する。
ヨーレートセンサは、車体のヨーレートγを検出する。このヨーレートセンサは、バネ上となる車体に設けられ、例えば水晶音叉からなる振動子を交流電圧によって振動させ、そして角速度入力時のコリオリ力によって生じる振動子の歪み量を電気信号に変換してコントローラ12に出力する。コントローラ12は、入力された電気信号から車両のヨーレートγを判断する。なお、コントローラ12は、右旋回を正の値として処理し、左旋回を負の値として処理する。
操舵角センサは、ロータリエンコーダからなり、ステアリングシャフトの操舵角θを検出する。この操舵角センサは、ステアリングシャフトと共に円板状のスケールが回転するときに、スケールのスリットを透過する光を二つのフォトトランジスタで検出し、ステアリングシャフトの回転に伴うパルス信号をコントローラ12に出力する。コントローラ12は、入力されたパルス信号からステアリングシャフトの操舵角θを判断する。なお、操舵角センサは、右旋回を正の値として処理し、左旋回を負の値として処理する。
コントローラ12は、旋回特性推定部14と、目標挙動設定部15と、駆動制御部16と、を備える。
旋回特性推定部14は、タイヤ横力推定部21と、摩擦係数推定部22と、補正部23と、基準特性規定部24と、第一のコーナリングパワー算出部(K1算出部)25と、第一のスタビリティファクタ算出部(A1算出部)26と、第二のコーナリングパワー算出部(K2算出部)27と、第二のスタビリティファクタ算出部(A2算出部)28と、特性推定部29と、を備える。
タイヤ横力推定部21は、下記の式に基づいて、横加速度Gy及びヨーレートγに応じて、前輪の横力Fy及び後輪の横力Fyを推定する。ここで、mは車両質量、Fyは前輪の横力、Fyは後輪の横力、Iは慣性モーメント、γ’はγの微分値(dγ/dt)、Lは車両重心点から前輪車軸までの距離、Lは車両重心点から後輪車軸までの距離である。
mGy=Fy+Fy
Iγ’=Fy×L−Fy×L
摩擦係数推定部22は、加減速度Gx及び車輪速度VwFL〜VwRRに応じて、路面の摩擦係数μを推定する。摩擦係数μの推定については、例えば日本国特許公報第5206490号に記載された手法を用いる。
ここで、摩擦係数μの推定について説明する。
路面の摩擦係数μが異なるときの、タイヤのスリップ率λとタイヤの制駆動力Fxとの関係を図2に示す。
座標横軸にタイヤのスリップ率λをとり、座標縦軸にタイヤの制駆動力Fxをとり、摩擦係数がμaとなる路面Aでのスリップ率λと制駆動力Fxとの関係を、実線の特性線Laで示している。また、摩擦係数がμbとなる路面Bでのスリップ率λと制駆動力Fxとの関係を、破線の特性線Lbで示している。特性線La及びLbは、縦横比が同一となるので、その形状は相似である。
ここで、座標原点[0,0]を通り、且つ特性線La及びLbの夫々と交差する任意の直線を、一点鎖線のLsで示す。直線Lsと特性線Laとが交わる点をPaとし、座標原点[0,0]と点Paとを結ぶ直線距離をa1とし、座標原点[0,0]から点Paまでの縦軸方向の距離をa2とし、座標原点[0,0]から点Paまでの横方向の距離をa3とする。また、直線Lsと特性線Lbとが交わる点をPbとし、座標原点[0,0]と点Pbとを結ぶ直線距離をb1とし、座標原点[0,0]から点Pbまでの縦軸方向の距離をb2とし、座標原点[0,0]から点Pbまでの横方向の距離をb3とする。
点Pa及び点Pbで、スリップ率λと制駆動力Fxとの比(Fx/λ)が同一であるとすると、μaとμbとの比(μa/μb)は、a1とb1との比(a1/b1)に等しくなる。また、点Pa及び点Pbで、スリップ率λと制駆動力Fxとの比(Fx/λ)が同一であるとすると、μaとμbとの比(μa/μb)は、a2とb2との比(a2/b2)に等しくなる。また、点Pa及び点Pbで、スリップ率λと制駆動力Fxとの比(Fx/λ)が同一であるとすると、μaとμbとの比(μa/μb)は、a3とb3との比(a3/b3)に等しくなる。
このことは、幾何学的に次のように証明できる。すなわち、a1、a2、a3を三辺とする三角形と、b1、b2、b3を三辺とする三角形とは相似となる。したがって、a1とb1との比、a2とb2との比、a3とb3との比、これらは全て等しくなる(a1:b1=a2:b2=a3:b3)。そして、a2とb2との比(a2/b2)、及びa3とb3との比(a3/b3)は、μaとμbとの比(μa/μb)と等しい。
このように、a1とb1との比、a2とb2との比、a3とb3との比のうち、何れか一つを知ることができれば、μaとμbとの比を知ることができる。したがって、例えば路面Bの摩擦係数μbを推定する場合、下記の式に示すように、a1とb1との比、a2とb2との比、a3とb3との比の何れか一つを、路面Aの摩擦係数μaに乗算することにより、路面Bの摩擦係数μbを推定できる。
μb=(b1/a1)×μa
μb=(b2/a2)×μa
μb=(b3/a3)×μa
そこで、摩擦係数推定部22は、例えば乾燥した舗装路面を基準の路面Aとし、その摩擦係数μaと、特性線Laとを予め記憶しておく。そして、現在の走行路面を推定対象の路面Bとし、現在のスリップ率λと制駆動力Fxとを取得し、それを点Pbとする。このとき、点Pbの横軸座標に相当するスリップ率λがb3となり、点Pbの縦軸座標に相当する制駆動力Fxがb2となり、これらb3及びb2によりb1を求める(b1=√{b3+b2})。そして、座標原点[0,0]と点Pbとを結ぶ直線Lsと、特性線Laとが交わる点を点Paとする。この点Paの座標より、a2及びa3を求め、これらa2及びa3によりa1を求める(a1=√{a3+a2})。そして、a1とb2との比、a2とb2との比、a3とb3との比の何れか一つと、路面Aの摩擦係数μaとを用い、路面Bの摩擦係数μbを推定する。
ここでは、便宜上、基準の摩擦係数をμaとし、推定する摩擦係数をμbとして説明しているが、基準の摩擦係数はμと表記し、推定した摩擦係数はμと表記する。
制駆動力Fxについては、電気自動車であれば、加減速度Gx、車輪速度VwFL〜VwRR、モータ電流値、モータ回転数、減速比等に応じて求められる。また、エンジン車両であれば、加減速度Gx、車輪速度VwFL〜VwRR、エンジン回転数、減速比等に応じて求められる。
スリップ率λについては、車輪速度VwFL〜VwRR、及び車速(車体速度)Vに応じて求められる。
上記が摩擦係数推定部22の説明である。
補正部23は、路面の摩擦係数μに応じて、タイヤの横力Fyを補正する。
ここで、横力Fyの補正について説明する。
路面の摩擦係数μが異なるときの、タイヤのスリップ角βとタイヤの横力Fyとの関係を図3に示す。
座標横軸にタイヤのスリップ角βをとり、座標横軸にタイヤの横力Fyをとり、摩擦係数がμc=1.0となる路面Cでのスリップ角βと横力Fyとの関係を、実線の特性線Lcで示している。また、摩擦係数がμd=0.5となる路面Dでのスリップ角βと横力Fyとの関係を、破線の特性線Ldで示している。また、摩擦係数がμ=0.2となる路面Eでのスリップ角βと横力Fyとの関係を、破線の特性線Leで示している。特性線Lc、Ld、Leは、縦横比が同一となるので、その形状は相似である。
特性線Lc、Ld、Leの何れも、スリップ角βが0から増加してゆくと、線形から非線形に遷移する。すなわち、スリップ角βが0から予め定めた範囲にある間は、スリップ角βの増加に対して横力Fyの増加率が一定となる、つまり特性線の傾きが一定となる。そして、スリップ角βが予め定めた範囲を超えると、スリップ角βの増加に対して横力Fyの増加率が徐々に減少してゆく。すなわち、特性線の傾きが減少してゆき、最終的には略0、つまり座標横軸と略平行になる。タイヤの垂直荷重をWとすると、横力Fyはμ×Wで飽和する。このように、タイヤのスリップ角βと横力Fyとの関係には、線形領域と非線形領域とがある。
ここで、座標原点[0,0]を通り、且つ特性線Lc、Ld、Leと交差する任意の直線を、一点鎖線のLsで示す。直線Lsと特性線Lcとが交わる点をPcとし、点Pcにおける特性線Lcの接線をLTcとする。また、直線Lsと特性線Ldとが交わる点をPdとし、点Pdにおける特性線Ldの接線をLTdとする。また、直線Lsと特性線Leとが交わる点をPeとし、点Peにおける特性線Leの接線をLTeとする。前述したように、特性線Lc、Ld、Leは相似であるため、接線LTc、LTd、LTeは、全て傾きが同一となる、つまり平行になる。したがって、例えば接線LTdの傾きを推定するには、接線LTcや接線LTeの傾きを推定すればよい。
ここで、点Pc及びPdの関係を図4に示す。
座標原点[0,0]と点Pcとを結ぶ直線Lsに沿った直線距離をc1とし、座標原点[0,0]から点Pcまでの縦軸方向の距離をc2とし、座標原点[0,0]から点Pcまでの横方向の距離をc3とする。また、座標原点[0,0]と点Pdとを結ぶ直線Lsに沿った直線距離をd1とし、座標原点[0,0]から点Pdまでの縦軸方向の距離をd2とし、座標原点[0,0]から点Pdまでの横方向の距離をd3とする。特性線Lc及びLdは、縦横比が同一となるので、その形状は相似である。
点Pc及び点Pdで、スリップ角βと横力Fyとの比(Fy/β)が同一であるとすると、μcとμdとの比(μc/μd)は、c1とd1との比(c1/d1)に等しくなる。また、点Pc及び点Pdで、スリップ角βと横力Fyとの比(Fy/β)が同一であるとすると、μcとμdとの比(μc/μd)は、c2とd2との比(c2/d2)に等しくなる。また、点Pc及び点Pdで、スリップ角βと横力Fyとの比(Fy/β)が同一であるとすると、μcとμdとの比(μc/μd)は、c3とd3との比(c3/d3)に等しくなる。
このことは、幾何学的に次のように証明できる。すなわち、c1、c2、c3を三辺とする三角形と、d1、d2、d3を三辺とする三角形とは相似となる。したがって、c1とd1との比、c2とd2との比、c3とd3との比、これらは全て等しくなる(c1:d1=c2:d2=c3:d3)。そして、c2とd2との比(c2/d2)、及びc3とd3との比(c3/d3)は、μcとμdとの比(μc/μd)と等しい。
このように、μcとμdとの比を知ることができれば、c1とd1との比、c2とd2との比、c3とd3との比を知ることができる。したがって、例えば点Pdと傾きが同一になる点Pcの縦軸座標c2を推定する場合、下記の式に示すように、点Pdの縦軸座標d2に、μcとμdとの比を乗算することにより、点Pcの縦軸座標c2を推定できる。
c2=d2×(μc/μd)
また、点Pdと傾きが同一になる点Pcの横軸座標c3を推定する場合、下記の式に示すように、点Pdの横軸座標d3に、μcとμdとの比を乗算することにより、点Pcの横軸座標c3を推定できる。
c3=d3×(μc/μd)
それで、補正部23は、点Pdの座標[d3又はd2]から、この点Pdと接線の傾きが同一になる点Pcの座標[c3又はc2]を求めるものである。つまり、μcとμdとの比を用い、d3をc3に補正する、又はd2をc2に補正する。
そこで、例えば乾燥した舗装路面を基準の路面Cとし、その摩擦係数μcを予め記憶しておく。そして、現在の走行路面を路面Dとし、その摩擦係数μdと、現在の横力Fyとを取得する。このとき、点Pdの縦軸座標に相当する横力Fyがd2となる。そして、座標原点[0,0]と点Pdとを結ぶ直線Lsと、特性線Lcとが交わる点を点Pcとし、この点Pcの縦軸座標c2に相当する横力Fyを求める。すなわち、下記の式に示すように、現在の横力Fy及びFyに、μcとμdとの比(μc/μd)を乗算することにより、横力Fy及びFyを補正する。
Fy ← Fy×(μc/μd)
Fy ← Fy×(μc/μd)
ここでは、d2をc2に補正する構成について説明しているが、これに限定されるものではなく、d3をc3に補正する構成としてもよい。すなわち、現在のスリップ角βを点Pdの横軸座標d3として取得する。そして、座標原点[0,0]と点Pdとを結ぶ直線Lsと、特性線Lcとが交わる点を点Pcとし、この点Pcの横軸座標c3に相当するスリップ角βを求める。すなわち、下記の式に示すように、現在のスリップ角βに、μcとμdとの比(μc/μd)を乗算することにより、スリップ角β及びβを補正する構成としてもよい。
β ← β×(μc/μd)
β ← β×(μc/μd)
ここでは、便宜上、基準の摩擦係数をμcとし、推定する摩擦係数をμdとして説明しているが、基準の摩擦係数はμと表記し、推定した摩擦係数はμと表記する。なお、補正部23で用いる摩擦係数μは、予め定めた期間にわたって摩擦係数推定部22が推定した摩擦係数μの平均値とする。
上記が補正部23の説明である。
基準特性規定部24は、予め定めた座標系で、基準特性となるタイヤのスリップ角β及び横力Fyの関係を、基準特性線Lrとして規定する。
ここで、基準特性線Lrについて説明する。
タイヤのスリップ角βとタイヤの横力Fyとの関係を図5に示す。
座標横軸にタイヤのスリップ角βをとり、座標縦軸にタイヤの横力Fyをとり、基準摩擦係数μの基準路面において、基準特性となるタイヤのスリップ角βと横力Fyとの関係を、実線の基準特性線Lrとして規定している。ここでは、一つの基準特性線Lrについて説明するが、実際には前輪の基準特性線Lrを規定すると共に、後輪の基準特性線Lrを規定しているものとする。
基準特性線Lrは、スリップ角βが0から増加してゆくときに、線形から非線形に遷移する。すなわち、スリップ角βが0から予め定めた範囲にある間は、スリップ角βの増加に対して横力Fyの増加率が一定となる、つまり基準特性線Lrの傾きが一定となる。そして、スリップ角βが予め定めた範囲を超えると、スリップ角βの増加に対して横力Fyの増加率が徐々に減少してゆく。すなわち、基準特性線Lrの傾きが減少してゆき、最終的には略0、つまり座標横軸と略平行になってくる。このように、タイヤのスリップ角βと横力Fyとの関係には、線形領域と非線形領域とがある。
ここで、コーナリングパワーKについて説明する。
コーナリングパワーKは、タイヤのスリップ角βに対する横力Fyの比(Fy/β)、つまり傾きで表される。
基準特性線Lr上の非線形領域に任意の点Pをとり、この点Pにおける接線をLk1とする。また、接線Lk1と縦軸とが交わる座標を[0、Fy1]とし、点Pの座標を[β0,Fy2]とし、Fy2とFy1との差分をΔFy(=Fy2−Fy1)とすると、接線Lk1の傾きは、ΔFy/β0で表される。この接線Lk1の傾きΔFy/β0を第一のコーナリングパワーK1とする。また、座標原点[0,0]と点Pとを結ぶ直線をLk2とすると、直線Lk2の傾きは、Fy2/β0で表され、この直線Lk2の傾きFy2/β0を、第二のコーナリングパワーK2とする。また、基準特性線Lrにおける線形領域の接線をLk3とし、この接線Lk3の横軸座標β0に対応する縦軸座標をFy3とすると、接線Lt3の傾きは、Fy3/β0で表される。この接線Lk3の傾きFy3/β0を、第三のコーナリングパワーK3とする。
各コーナリングパワーK1〜K3について説明する。
第三のコーナリングパワーK3は、線形領域でのタイヤ特性を示している。すなわち、スリップ角βに対する横力Fyの関係が定常状態にあるときのコーナリングパワーとなるため、定常のコーナリングパワーともいえる。
第二のコーナリングパワーK2は、ある時点における静的なタイヤ特性を示している。すなわち、ある時点のスリップ角βと横力Fyとを維持したときのコーナリングパワーとなるため、静的なコーナリングパワーともいえる。また、一定して変わらないという意味において、準定常的なコーナリングパワーともいえる。
第一のコーナリングパワーK1は、ある時点における動的なタイヤ特性を示している。すなわち、車速V又は操舵角θの増加に伴って、ある時点からスリップ角βや横力Fyが変化するときのコーナリングパワーとなるため、動的なコーナリングパワーともいえる。また、過渡的な状態にあるという意味では、過渡的なコーナリングパワーともいえる。
各コーナリングパワーK1〜K3について、さらに説明する。
基準となるコーナリングパワーをK0[N/rad]とすると、輪荷重を考慮したコーナリングパワーKb[N/rad]は、下記の式によって表せる。ここで、Wwは輪荷重であり、W0は1輪当たりの車両重量(W/4)[kg]である。
Kb=K0×(Ww/W0)
また、コーナリングフォースFcは、下記の式によって表せる。
Fc=−{(Kb×β−2×μ×Ww)/(4×μ×Ww)}+(μ×Ww)
また、コーナリングフォースFc、及びスリップ角β[deg]を用いると、コーナリングパワーKfは、下記の式によって表せる。
Kf=Fc/β
また、基準となるコーナリングパワーKb、横加速度dy[g]、及び路面とタイヤ間の摩擦係数μを用いると、コーナリングパワーKmは、下記の式によって表せる。
Km=Kb×√{1−(dy/μ)}
上記コーナリングパワーKmが、第一のコーナリングパワーK1に近似し、コーナリングパワーKfが、第二のコーナリングパワーK2に近似し、コーナリングパワーKbが、第三のコーナリングパワーK3に近似する。
したがって、コーナリングパワーKmを推定し、これを第一のコーナリングパワーK1の代わりに用いてもよい。また、コーナリングパワーKfを推定し、これを第二のコーナリングパワーK2の代わりに用いてもよい。さらに、コーナリングパワーKbを推定し、これを第三のコーナリングパワーK3の代わりに用いてもよい。
上記が基準特性規定部24の説明である。
第一のコーナリングパワー算出部25は、基準特性線Lrを参照し、タイヤの横力Fyに対応する座標位置での接線Lk1の傾きを、第一のコーナリングパワーK1として算出する。ここでは、一つのコーナリングパワーK1について説明するが、実際は前輪における第一のコーナリングパワーK1を算出すると共に、後輪における第一のコーナリングパワーK1を算出しているものとする。
ここでは、基準特性線Lrに基づいて、横力Fyに応じて第一のコーナリングパワーK1を算出するためのマップを用意しておき、このマップを参照し、横力Fyに応じて第一のコーナリングパワーK1を算出する。
横力Fyから第一のコーナリングパワーK1を算出するためのマップを図6に示す。
このマップは、座標横軸に横力Fyをとり、座標縦軸に第一のコーナリングパワーK1をとり、横力Fyが大きいほど、第一のコーナリングパワーK1が小さくなるように設定されている。なお、基準特性線Lrによれば、線形領域にある間は、接線Lk1の傾きは接線Lk3の傾きと同一になるため、横力Fyが0のときには、第一のコーナリングパワーK1が第三のコーナリングパワーK3となる。また、基準特性線Lrによれば、接線Lk1の傾きは最終的には略0、つまり座標横軸と略平行になるため、横力Fyが最大値FyMAXになるときに、第一のコーナリングパワーK1は0になる。タイヤの垂直荷重をWとすると、最大値FyMAXはμ×Wで表される。
ここでは、横力Fyに応じて第一のコーナリングパワーK1を算出する構成について説明しているが、これに限定されるものではなく、スリップ角βに応じて第一のコーナリングパワーK1を算出する構成としてもよい。
すなわち、基準特性線Lrに基づいて、スリップ角βに応じて第一のコーナリングパワーK1を算出するためのマップを用意しておき、このマップを参照し、スリップ角βに応じて第一のコーナリングパワーK1を算出する。
スリップ角βから第一のコーナリングパワーK1を算出するためのマップを図7に示す。
このマップは、座標横軸にスリップ角Βをとり、座標縦軸に第一のコーナリングパワーK1をとり、スリップ角Βが大きいほど、第一のコーナリングパワーK1が小さくなるように設定されている。なお、基準特性線Lrによれば、線形領域にある間は、接線Lk1の傾きは接線Lk3の傾きと同一になるため、スリップ角Βが0のときには、第一のコーナリングパワーK1が第三のコーナリングパワーK3となる。また、基準特性線Lrによれば、接線Lk1の傾きは最終的には略0、つまり座標横軸と略平行になるため、スリップ角Βが最大値ΒMAXになるときに、第一のコーナリングパワーK1は0になる。
第一のスタビリティファクタ算出部26は、下記の式に示すように、第一のコーナリングパワーK1及びK1を用いて、第一のスタビリティファクタA1を算出する。ここで、mは車両質量、Lはホイールベース、Lは車両重心点から前輪車軸までの距離、Lは車両重心点から後輪車軸までの距離である。
A1=−(m/2L)×{(L×K1−L×K1)/(K1×K1)}
第一のスタビリティファクタA1は、ある時点における旋回挙動の動的な変化特性を示している。すなわち、車速V又は操舵角θの増加に伴って、ある時点から旋回挙動が変化するときのスタビリティファクタとなるため、動的なスタビリティファクタともいえる。また、過渡的な状態にあるという意味では、過渡的なスタビリティファクタともいえる。
第二のコーナリングパワー算出部27は、基準特性線Lrを参照し、タイヤの横力Fyに対応する座標位置、及び座標原点[0,0]を結ぶ直線Lk2の傾きを、第二のコーナリングパワーK2として算出する。ここでは、一つのコーナリングパワーK2について説明するが、実際は前輪における第二のコーナリングパワーK2を算出すると共に、後輪における第二のコーナリングパワーK2を算出しているものとする。
ここでは、基準特性線Lrに基づいて、横力Fyに応じて第二のコーナリングパワーK2を算出するためのマップを用意しておき、このマップを参照し、横力Fyに応じて第二のコーナリングパワーK2を算出する。
横力Fyから第二のコーナリングパワーK2を算出するためのマップを図8に示す。
このマップは、座標横軸に横力Fyをとり、座標縦軸に第二のコーナリングパワーK2をとり、横力Fyが大きいほど、第二のコーナリングパワーK2が小さくなるように設定されている。なお、基準特性線Lrによれば、線形領域にある間は、直線Lk2の傾きは接線Lk3の傾きと同一になるため、横力Fyが0のときには、第二のコーナリングパワーK2が第三のコーナリングパワーK3となる。また、基準特性線Lrによれば、直線Lk2の一端は座標原点[0,0]であるため、その傾きは常に0より大きいため、第二のコーナリングパワーK2も常に0より大きい値となる。
ここでは、横力Fyに応じて第二のコーナリングパワーK2を算出する構成について説明しているが、これに限定されるものではなく、スリップ角βに応じて第二のコーナリングパワーK2を算出する構成としてもよい。
すなわち、基準特性線Lrに基づいて、スリップ角βに応じて第二のコーナリングパワーK2を算出するためのマップを用意しておき、このマップを参照し、スリップ角βに応じて第二のコーナリングパワーK2を算出する。
スリップ角βから第二のコーナリングパワーK2を算出するためのマップを図9に示す。
このマップは、座標横軸にスリップ角βをとり、座標縦軸に第二のコーナリングパワーK2をとり、スリップ角βが大きいほど、第二のコーナリングパワーK2が小さくなるように設定されている。なお、基準特性線Lrによれば、線形領域にある間は、直線Lk2の傾きは接線Lk3の傾きと同一になるため、スリップ角βが0のときには、第二のコーナリングパワーK2が第三のコーナリングパワーK3となる。また、基準特性線Lrによれば、直線Lk2の一端は座標原点[0,0]であるため、その傾きは常に0より大きいため、第二のコーナリングパワーK2も常に0より大きい値となる。
第二のスタビリティファクタ算出部28は、下記の式に示すように、第二のコーナリングパワーK2及びK2を用いて、第二のスタビリティファクタA2を算出する。ここで、mは車両質量、Lはホイールベース、Lは車両重心点から前輪車軸までの距離、Lは車両重心点から後輪車軸までの距離である。
A2=−(m/2L)×{(L×K2−L×K2)/(K2×K2)}
第二のスタビリティファクタA1は、ある時点における静的な旋回挙動を示している。すなわち、ある時点の車速V又は操舵角θを維持したときのスタビリティファクタとなるため、静的なスタビリティファクタともいえる。また、一定して変わらないという意味において、準定常的なスタビリティファクタともいえる。
特性推定部29は、第一のスタビリティファクタA1の符号及び大きさに応じて、旋回挙動の動的な変化特性を推定する。すなわち、車速V又は操舵角θの増加に伴って変化する旋回挙動が、アンダーステア特性(US特性)であるか、オーバーステア特性(OS特性)であるか、ニュートラルステア特性(NS特性)であるかを推定する。具体的には、第一のスタビリティファクタA1が正の値であるときには、車速V又は操舵角θの増加に伴って変化する旋回挙動がアンダーステア特性であり、且つ第一のスタビリティファクタA1の絶対値が大きいほど、そのアンダーステア特性が強いと推定する。また、第一のスタビリティファクタA1が負の値であるときには、車速V又は操舵角θの増加に伴って変化する旋回挙動がオーバーステア特性であり、且つ第一のスタビリティファクタA1の絶対値が大きいほど、そのオーバーステア特性が強いと推定する。また、第一のスタビリティファクタA1が0であるときには、車速V又は操舵角θの増加に伴って変化する旋回挙動がニュートラルステア特性であると推定する。
特性推定部29は、第二のスタビリティファクタA2の符号及び大きさに応じて、静的な旋回挙動を推定する。すなわち、ある時点の車速V又は操舵角θを維持したときの旋回挙動が、アンダーステア特性(US特性)であるか、オーバーステア特性(OS特性)であるか、ニュートラステア(NS特性)であるかを推定する。具体的には、第二のスタビリティファクタA2が正の値であるときには、車速V又は操舵角θを維持したときの旋回挙動がアンダーステア特性であり、且つ第二のスタビリティファクタA2の絶対値が大きいほど、そのアンダーステア特性が強いと推定する。また、第二のスタビリティファクタA2が負の値であるときには、車速V又は操舵角θを維持したときの旋回挙動がオーバーステア特性であり、且つ第二のスタビリティファクタA2の絶対値が大きいほど、そのオーバーステア特性が強いと推定する。また、第二のスタビリティファクタA2が0であるときには、車速V又は操舵角θを維持したときの旋回挙動がニュートラルステア特性であると推定する。
上記が旋回特性推定部14の構成である。
目標挙動設定部15は、第一のコーナリングパワーK1に応じて、目標挙動として例えば目標スタビリティファクタAを設定する。目標スタビリティファクタAは、ある時点における静的な目標旋回挙動を示している。すなわち、ある時点の車速V又は操舵角θを維持したときの目標スタビリティファクタとなるため、静的な目標スタビリティファクタともいえる。また、一定して変わらないという意味において、準定常的な目標スタビリティファクタともいえる。目標スタビリティファクタAは、その符号及び大きさに応じて、静的な目標旋回挙動を示す。
すなわち、ある時点の車速V又は操舵角θを維持したときの目標旋回挙動が、アンダーステア特性(US特性)であるか、オーバーステア特性(OS特性)であるか、ニュートラステア(NS特性)であるかを示す。具体的には、目標スタビリティファクタAが正の値であるときには、車速V又は操舵角θを維持したときの目標旋回挙動がアンダーステア特性であり、且つ目標スタビリティファクタAの絶対値が大きいほど、そのアンダーステア特性が強いことを示す。また、目標スタビリティファクタAが負の値であるときには、車速V又は操舵角θを維持したときの目標旋回挙動がオーバーステア特性であり、且つ目標スタビリティファクタAの絶対値が大きいほど、そのオーバーステア特性が強いことを示す。また、目標スタビリティファクタAが0であるときには、車速V又は操舵角θを維持したときの目標旋回挙動がニュートラルステア特性であることを示す。
ここでは、第一のコーナリングパワーK1に応じて、目標スタビリティファクタAを設定するためのマップを用意しておき、このマップを参照し、第一のコーナリングパワーK1に応じて目標スタビリティファクタAを設定する。第一のコーナリングパワーK1には、前輪における第一のコーナリングパワーK1、及び後輪における第一のコーナリングパワーK1の何れか一方を用いる。
第一のコーナリングパワーK1から目標スタビリティファクタAを設定するためのマップを図10に示す。
このマップは、座標横軸に第一のコーナリングパワーK1をとり、座標縦軸に目標スタビリティファクタAをとる。また、第一のコーナリングパワーK1については、0よりも大きく且つ0近傍の値Kt1と、このKt1よりも大きい値Kt2と、を予め定める。第一のコーナリングパワーK1がKt2よりも大きい範囲を定常領域とし、第一のコーナリングパワーK1がKt2よりも小さい範囲を非定常領域する。また、目標スタビリティファクタAについては、0よりも大きな値である最大値AMAXと、0よりも大きく且つ0近傍の値である基準値Aと、を予め定める。
このマップによれば、第一のコーナリングパワーK1がKt2より大きな範囲にあるときには、目標スタビリティファクタAが基準値Aを維持する。また、第一のコーナリングパワーK1がKt2からKt1の範囲にあるときには、第一のコーナリングパワーK1が小さいほど、目標スタビリティファクタAが基準値Aから最大値AMAXの範囲で大きくなる。また、第一のコーナリングパワーK1がKt1から0の範囲にあるときには、目標スタビリティファクタAが最大値AMAXを維持する。このように、第一のコーナリングパワーK1が小さいほど、目標スタビリティファクタAが正(+)の領域で大きくなる。
駆動制御部16は、制御量設定部17と、配分比率設定部18と、駆動部19と、を備える。
制御量設定部17は、第二のスタビリティファクタA2、及び目標スタビリティファクタAを用いて、目標ヨーレートγを実現するための目標ヨーモーメントMz、及び目標車速Vを実現するための目標減速度Gxを、目標制御量として設定する。
ここでは、下記の式に示すように、目標スタビリティファクタA、車速V、及び操舵角θに応じて、目標ヨーレートγを設定する。ここで、Lはホイールベースである。なお、目標ヨーレートγはローパスフィルタ処理することが望ましい。
γ={V/(1+A×V)}×(θ/L)
そして、下記の式に示すように、目標ヨーレートγとヨーレートγとの偏差(γ−γ)に応じて、目標ヨーモーメントMzを設定する。ここで、Δtは単位時間である。目標ヨーモーメントMzは、右旋回を正の値とし、左旋回を負の値とする。
Mz=(γ−γ)/Δt
また、下記の式に示すように、第二のスタビリティファクタA2、目標スタビリティファクタA、及び車速Vに応じて、目標車速Vを設定する。
={√(A/A2)}×V
そして、下記の式に示すように、目標車速Vと及び車速Vとの偏差(V−V)に応じて、目標減速度Gxを設定する。ここで、Δtは単位時間である。
Gx=(V−V)/Δt
上記が制御量設定部17の説明である。
配分比率設定部18は、目標ヨーモーメントMzに基づくヨーモーメント制御と、目標減速度Gxに基づく減速制御と、の配分比率Rdを設定する。配分比率Rdは、ヨーモーメント制御と減速制御とで全体を1.0としたときのヨーモーメント制御の割合とする。したがって、減速制御の割合は『1.0−Rd』とする。
ここでは、第一のコーナリングパワーK1に応じて、配分比率Rを設定するためのマップを用意しておき、このマップを参照し、前輪における第一のコーナリングパワーK1に応じて配分比率Rdを設定する。第一のコーナリングパワーK1には、前輪における第一のコーナリングパワーK1、及び後輪における第一のコーナリングパワーK1の何れか一方を用いる。
第一のコーナリングパワーK1からヨーモーメント制御用の配分比率Rdを設定するためのマップを図11に示す。
このマップは、座標横軸に第一のコーナリングパワーK1をとり、座標縦軸に配分比率Rdをとる。また、第一のコーナリングパワーK1については、0よりも大きな値Kt3と、このKt3よりも大きな値Kt4と、を予め定める。このマップによれば、第一のコーナリングパワーK1がKt4より大きな範囲にあるときには、配分比率Rdが1.0を維持する。また、第一のコーナリングパワーK1がKt4からKt3の範囲にあるときには、第一のコーナリングパワーK1が小さいほど、配分比率Rdが0から1.0の範囲で小さくなる。また、第一のコーナリングパワーK1がKt3から0の範囲にあるときには、配分比率Rdが0を維持する。このように、第一のコーナリングパワーK1が小さいほど、配分比率Rdが小さくなる。
ここでは、ヨーモーメント制御と減速制御とで全体を1.0としたときのヨーモーメント制御の割合を配分比率Rdとして設定する構成について説明しているが、これに限定されるものではない。ヨーモーメント制御と減速制御とで全体を1.0としたときの減速制御の割合を配分比率Rdとして設定する構成としてもよい。この場合、ヨーモーメント制御の割合は『1.0−Rd』となる。
ここでは、第一のコーナリングパワーK1に応じて、配分比率Rを設定するためのマップを用意しておき、このマップを参照し、前輪における第一のコーナリングパワーK1に応じて配分比率Rdを設定する。
第一のコーナリングパワーK1から減速制御用の配分比率Rdを設定するためのマップを図12に示す。
このマップは、座標横軸に第一のコーナリングパワーK1をとり、座標縦軸に配分比率Rdをとる。また、第一のコーナリングパワーK1については、0よりも大きな値Kt3と、このKt3よりも大きな値Kt4と、を予め定める。このマップによれば、第一のコーナリングパワーK1がKt4より大きな範囲にあるときには、配分比率Rdが0を維持する。また、第一のコーナリングパワーK1がKt4からKt3の範囲にあるときには、第一のコーナリングパワーK1が小さいほど、配分比率Rdが0から1.0の範囲で大きくなる。また、第一のコーナリングパワーK1がKt3から0の範囲にあるときには、配分比率Rdが1.0を維持する。このように、第一のコーナリングパワーK1が小さいほど、配分比率Rdが大きくなる。
なお、第一のコーナリングパワーK1は、タイヤグリップの余裕率にも相当する。タイヤグリップの余裕率αは、下記の式によって表せる。ここで、0.25及び0.8は、乾燥した舗装路面での基準値である。
α=1−√{(Gx/0.25)+(Gy/0.8)}
したがって、タイヤグリップの余裕率αを推定し、これを第一のコーナリングパワーK1の代わりに用いてもよい。例えば、余裕率αが0.5より大きな範囲にあるときには、ヨーモーメント制御の配分比率Rdが1.0を維持する。また、余裕率αが0.5から0.1の範囲にあるときには、余裕率αが小さいほど、ヨーモーメント制御の配分比率Rdが1.0から0の範囲で小さくなる。また、余裕率αが0.1から0の範囲にあるときには、ヨーモーメント制御の配分比率Rdが0を維持する。このように、タイヤグリップの余裕率αが小さいほど、ヨーモーメント制御の配分比率Rdを小さくしてもよい。
上記が配分比率設定部18の説明である。
駆動部19は、ヨーモーメント制御の配分比率Rdに従い、ヨーモーメント制御と減速制御とを実行する。すなわち、下記の式に示すように、目標ヨーモーメントMzに配分比率Rdを乗算することにより、目標ヨーモーメントMzを補正し、目標減速度Gxに(1.0−Rd)を乗算することにより、目標減速度Gxを補正する。これら補正後の目標ヨーモーメントMz及び目標減速度Gxを実現するために、アクチュエータ13の駆動制御を行う。
Mz ← Mz×Rd
Gx ← Gx×(1.0−Rd)
なお、減速制御の割合を配分比率Rdとして設定している場合には、下記の式に示すように、目標ヨーモーメントMzに(1.0−Rd)を乗算することにより、目標ヨーモーメントMzを補正するものとする。また、目標減速度Gxに配分比率Rdを乗算することにより、目標減速度Gxを補正するものとする。これら補正後の目標ヨーモーメントMz及び目標減速度Gxを実現するために、アクチュエータ13の駆動制御を行う。
Mz ← Mz×(1.0−Rd)
Gx ← Gx×Rd
目標ヨーモーメントMzは、例えば左右輪に制動力差を発生させる制動力制御によって実現される。
具体的には、目標ヨーモーメントMzの絶対値が予め定めた設定値Msより小さいときには、下記の式に示すように、前輪における左右輪の制動力差ΔP、及び後輪における左右輪の制動力差ΔPを設定する。dはトレッドである。
ΔP=0
ΔP=|Mz|×2/d
このように、目標ヨーモーメントMzの絶対値が設定値Ms未満であるときには、後輪だけ左右輪に制動力差を発生させる。
また、目標ヨーモーメントMzの絶対値が設定値Ms以上であるときには、下記の式に示すように、前輪における左右輪の制動力差ΔP、及び後輪における左右輪の制動力差ΔPを設定する。
ΔP=(|Mz|−Ms)×2/d
ΔP=Ms×2/d
このように、目標ヨーモーメントMzの絶対値が設定値Ms以上であるときには、前輪及び後輪の双方で制動力差を発生させる。
目標減速度Gxは、駆動力制御、及び制動力制御によって実現される。
すなわち、回転駆動源がエンジンであれば、エンジンブレーキによって目標減速度Gxを発生させ、回転駆動源がモータであれば、回生ブレーキによって目標減速度Gxを発生させる。駆動力制御には、変速比をシフトダウンさせる変速制御も含まれるものとする。
具体的には、制動力差ΔP及びΔPによって発生する減速度をGmとし、下記に示すように、目標減速度Gxから減速度Gmを減算することにより、目標減速度Gxを補正する。
Gx ← Gx−Gm
そして、回転駆動源の駆動力制御によって得られる最大減速度をGdMAXとし、この最大減速度GdMAXが補正後の目標減速度Gxよりも大きいときには、回転駆動源の駆動力制御のみによって目標減速度Gxを発生させる。一方、最大減速度GdMAXが目標減速度Gxよりも小さいときには、その差分(Gx−GdMAX)を制動力制御によって発生させる。このように、駆動力制御を優先して実行し、その不足分を補うために制動力制御を実行する。
なお、左右輪の制動力差によって目標ヨーモーメントMzを発生させる構成について説明したが、これに限定されるものではなく、左右輪に伝達する駆動力の配分を制御するトルクベクタリングによって目標ヨーモーメントMzを発生させる構成としてもよい。また、電動パワーステアリングやステアリングバイワイヤを搭載している車両では、操舵トルクの付与によって目標ヨーモーメントMzを発生させる構成としてもよい。
上記が駆動制御部16の構成である。
アクチュエータ13は、例えば駆動力制御装置30と、ブレーキ制御装置50と、を含む。
駆動力制御装置30は、回転駆動源の駆動力を制御する。例えば、回転駆動源がエンジンであれば、スロットルバルブの開度、燃料噴射量、点火時期などを調整することで、エンジン出力(回転数やエンジントルク)を制御する。回転駆動源がモータであれば、インバータを介してモータ出力(回転数やモータトルク)を制御する。
駆動力制御装置30の一例として、スロットルバルブの開度を制御する電子制御スロットルの構成を図13に示す。
吸気管路31(例えばインテークマニホールド)内には、径方向に延びるスロットルシャフト32を軸支してあり、このスロットルシャフト32に、吸気管路31の内径未満の直径を有する円盤状のスロットルバルブ33を固定してある。また、スロットルシャフト32には、減速機34を介してスロットルモータ35を連結してある。
したがって、スロットルモータ35を回転させてスロットルシャフト32の回転角を変化させるときに、スロットルバルブ33が吸気管路31内を閉じたり開いたりする。すなわち、スロットルバルブ33の面方向が吸気管路31の軸直角方向に沿うときに、スロットル開度が全閉位置となり、スロットルバルブ33の面方向が吸気管路31の軸方向に沿うときに、スロットル開度が全開位置となる。なお、スロットルモータ35、モータ駆動系、アクセルセンサ36系統、スロットルセンサ39系統等に異常が発生した場合に、スロットルバルブ33が全閉位置から所定量だけ開くように、スロットルシャフト32を開方向に機械的に付勢してある。
アクセルセンサ36は、二系統としてあり、アクセルペダル37の踏込み量(操作量)であるペダル開度PPOを検出する。アクセルセンサ36は、例えばポテンショメータであり、アクセルペダル37のペダル開度を電圧信号に変換してエンジンコントローラ38へ出力する。エンジンコントローラ38は、入力した電圧信号からアクセルペダル37のペダル開度PPOを判断する。なお、アクセルペダル37が非操作位置にあるときに、ペダル開度PPOが0%となり、アクセルペダル37が最大操作位置(ストロークエンド)にあるときに、ペダル開度PPOが100%となる。
スロットルセンサ39は、二系統としてあり、スロットルバルブ33のスロットル開度SPOを検出する。このスロットルセンサ39は、例えばポテンショメータであり、スロットルバルブ33のスロットル開度を電圧信号に変換してエンジンコントローラ38へ出力する。エンジンコントローラ38は、入力した電圧信号からスロットルバルブ33のスロットル開度SPOを判断する。なお、スロットルバルブ33が全閉位置にあるときに、スロットル開度SPOが0%となり、スロットルバルブ33が全開位置にあるときに、スロットル開度SPOが100%となる。
エンジンコントローラ38は、通常は、ペダル開度PPOに応じて目標スロットル開度SPOを設定し、この目標スロットル開度SPOと実際のスロットル開度SPOとの偏差ΔPOに応じてモータ制御量を設定する。そして、このモータ制御量をデューティ比に変換し、パルス状の電流値によってスロットルモータ35を駆動制御する。また、エンジンコントローラ38は、コントローラ12からの駆動指令を受けるときに、その駆動指令を優先してスロットルモータ35を駆動制御する。例えば、駆動力を低下させる駆動指令を受けたときに、ペダル開度PPOに応じた目標スロットル開度SPOを減少補正してスロットルモータ35を駆動制御する。
上記が駆動力制御装置30の説明である。
次に、ブレーキ制御装置50について説明する。
ブレーキ制御装置50は、各車輪の制動力を制御する。例えば、アンチスキッド制御(ABS)、トラクション制御(TCS)、スタビリティ制御(VDC:Vehicle Dynamics Control)等に用いられるブレーキアクチュエータにより、各車輪に設けられたホイールシリンダの液圧を制御する。
ブレーキアクチュエータの構成を図14に示す。
ブレーキアクチュエータ51は、マスターシリンダ52と各ホイールシリンダ53FL〜53RRとの間に介装してある。
マスターシリンダ52は、運転者のペダル踏力に応じて2系統の液圧を作るタンデム式のもので、プライマリ側をフロント左・リア右のホイールシリンダ53FL・53RRに伝達し、セカンダリ側を右前輪・左後輪のホイールシリンダ53FR・53RLに伝達するダイアゴナルスプリット方式を採用している。
各ホイールシリンダ53FL〜53RRは、ディスクロータをブレーキパッドで挟圧して制動力を発生させるディスクブレーキや、ブレーキドラムの内周面にブレーキシューを押圧して制動力を発生させるドラムブレーキに内蔵してある。
プライマリ側は、第1ゲートバルブ61Aと、インレットバルブ62FL(62RR)と、アキュムレータ63と、アウトレットバルブ64FL(64RR)と、第2ゲートバルブ65Aと、ポンプ66と、ダンパー室67と、を備える。
第1ゲートバルブ61Aは、マスターシリンダ52及びホイールシリンダ53FL(53RR)間の流路を閉鎖可能なノーマルオープン型のバルブである。インレットバルブ62FL(62RR)は、第1ゲートバルブ61A及びホイールシリンダ53FL(53RR)間の流路を閉鎖可能なノーマルオープン型のバルブである。アキュムレータ63は、ホイールシリンダ53FL(53RR)及びインレットバルブ62FL(62RR)間に連通してある。アウトレットバルブ64FL(64RR)は、ホイールシリンダ53FL(53RR)及びアキュムレータ63間の流路を開放可能なノーマルクローズ型のバルブである。
第2ゲートバルブ65Aは、マスターシリンダ52及び第1ゲートバルブ61A間とアキュムレータ63及びアウトレットバルブ64FL(64RR)間とを連通した流路を開放可能なノーマルクローズ型のバルブである。ポンプ66は、アキュムレータ63及びアウトレットバルブ64FL(64RR)間に吸入側を連通し、且つ第1ゲートバルブ61A及びインレットバルブ62FL(62RR)間に吐出側を連通してある。ダンパー室67は、ポンプ66の吐出側に設けてあり、吐出されたブレーキ液の脈動を抑制し、ペダル振動を弱める。
また、セカンダリ側も、プライマリ側と同様に、第1ゲートバルブ61Bと、インレットバルブ62FR(62RL)と、アキュムレータ63と、アウトレットバルブ64FR(64RL)と、第2ゲートバルブ65Bと、ポンプ66と、ダンパー室67と、を備えている。
第1ゲートバルブ61A・61Bと、インレットバルブ62FL〜62RRと、アウトレットバルブ64FL〜64RRと、第2ゲートバルブ65A・65Bとは、夫々、2ポート2ポジション切換・シングルソレノイド・スプリングオフセット式の電磁操作弁である。また、第1ゲートバルブ61A・61B及びインレットバルブ62FL〜62RRは、非励磁のノーマル位置で流路を開放し、アウトレットバルブ64FL〜64RR及び第2ゲートバルブ65A・65Bは、非励磁のノーマル位置で流路を閉鎖するように構成してある。
また、アキュムレータ63は、シリンダのピストンに圧縮バネを対向させたバネ形のアキュムレータで構成してある。
また、ポンプ66は、負荷圧力に係りなく略一定の吐出量を確保できる歯車ポンプ、ピストンポンプ等、容積形のポンプで構成してある。
上記の構成により、プライマリ側を例に説明すると、第1ゲートバルブ61A、インレットバルブ62FL(62RR)、アウトレットバルブ64FL(64RR)、及び第2ゲートバルブ65Aが全て非励磁のノーマル位置にあるときに、マスターシリンダ52からの液圧がそのままホイールシリンダ53FL(53RR)に伝達され、通常ブレーキとなる。
また、ブレーキペダルが非操作状態であっても、インレットバルブ62FL(62RR)、及びアウトレットバルブ64FL(64RR)を非励磁のノーマル位置にしたまま、第1ゲートバルブ61Aを励磁して閉鎖すると共に、第2ゲートバルブ65Aを励磁して開放し、更にポンプ66を駆動することで、マスターシリンダ52の液圧を第2ゲートバルブ65Aを介して吸入し、吐出される液圧をインレットバルブ62FL(62RR)を介してホイールシリンダ53FL(53RR)に伝達し、増圧させることができる。
また、第1ゲートバルブ61A、アウトレットバルブ64FL(64RR)、及び第2ゲートバルブ65Aが非励磁のノーマル位置にあるときに、インレットバルブ62FL(62RR)を励磁して閉鎖すると、ホイールシリンダ53FL(53RR)からマスターシリンダ52及びアキュムレータ63への夫々の流路が遮断され、ホイールシリンダ53FL(53RR)の液圧が保持される。
さらに、第1ゲートバルブ61A及び第2ゲートバルブ65Aが非励磁のノーマル位置にあるときに、インレットバルブ62FL(62RR)を励磁して閉鎖すると共に、アウトレットバルブ64FL(64RR)を励磁して開放すると、ホイールシリンダ53FL(53RR)の液圧がアキュムレータ63に流入して減圧される。アキュムレータ63に流入した液圧は、ポンプ66によって吸入され、マスターシリンダ52に戻される。
セカンダリ側に関しても、通常ブレーキ・増圧・保持・減圧の動作は、上記プライマリ側の動作と同様であるため、その詳細説明は省略する。
ブレーキコントローラ54は、第1ゲートバルブ61A・61Bと、インレットバルブ62FL〜62RRと、アウトレットバルブ64FL〜64RRと、第2ゲートバルブ65A・65Bと、ポンプ66とを駆動制御することによって、各ホイールシリンダ53FL〜53RRの液圧を増圧・保持・減圧する。
なお、本実施形態では、ブレーキ系統をフロント左・リア右とフロント右・リア左とで分割するダイアゴナルスプリット方式を採用しているが、これに限定されるものではなく、フロント左右とリア左右とで分割する前後スプリット方式を採用してもよい。
また、本実施形態では、バネ形のアキュムレータ63を採用しているが、これに限定されるものではなく、各ホイールシリンダ53FL〜53RRから抜いたブレーキ液を一時的に貯え、減圧を効率よく行うことができればよいので、重錘形、ガス圧縮直圧形、ピストン形、金属ベローズ形、ダイヤフラム形、ブラダ形、インライン形など、任意のタイプでよい。
また、本実施形態では、第1ゲートバルブ61A・61B及びインレットバルブ62FL〜62RRが、非励磁のノーマル位置で流路を開放し、アウトレットバルブ64FL〜64RR及び第2ゲートバルブ65A・65Bが、非励磁のノーマル位置で流路を閉鎖するように構成しているが、これに限定されるものではない。要は、各バルブの開閉を行うことができればよいので、第1ゲートバルブ61A・61B及びインレットバルブ62FL〜62RRが、励磁したオフセット位置で流路を開放し、アウトレットバルブ64FL〜64RR及び第2ゲートバルブ65A・65Bが、励磁したオフセット位置で流路を閉鎖するようにしてもよい。
ブレーキコントローラ54は、通常は、アンチスキッド制御、トラクション制御、スタビリティ制御に従って、ブレーキアクチュエータ51を駆動制御することにより、各ホイールシリンダ53FL〜53RRの液圧を制御する。また、ブレーキコントローラ54は、コントローラ12からの駆動指令を受けたときに、その駆動指令を優先してブレーキアクチュエータ51を駆動制御する。例えば、4輪のうち、所定のホイールシリンダを増圧させる駆動指令を受けたときに、通常の目標液圧を増加補正してブレーキアクチュエータ51を駆動制御する。
上記がブレーキ制御装置50の説明である。
次に、コントローラ12で所定時間(例えば10msec)毎に実行する走行制御処理を、図15に基づいて説明する。
先ずステップS101では、各種データを読込む。具体的には、加減速度Gx、車輪速度VwFL〜VwRR、横加速度Gy、ヨーレートγ、車速V、操舵角θ等を読込む。
続くステップS102では、タイヤ横力推定部21の処理により、前輪の横力Fy及び後輪の横力Fyを推定する。
続くステップS103では、摩擦係数推定部22の処理により、路面の摩擦係数μを推定する。
続くステップS104では、補正部23の処理により、横力Fy及びFyに、μとμとの比(μ/μ)を乗算することにより、横力Fy及びFyを補正する。
続くステップS105では、第一のコーナリングパワー算出部25の処理により、マップを参照し、横力Fy及びFyに応じて第一のコーナリングパワーK1及びK1を算出する。
続くステップS106では、第一のスタビリティファクタ算出部26の処理により、第一のコーナリングパワーK1及びK1を用いて、第一のスタビリティファクタA1を算出する。
続くステップS107では、第二のコーナリングパワー算出部27の処理により、マップを参照し、横力Fy及びFyに応じて第二のコーナリングパワーK2及びK2を算出する。
続くステップS108では、第二のスタビリティファクタ算出部28の処理により、第二のコーナリングパワーK2及びK2を用いて、第二のスタビリティファクタA2を算出する。
続くステップS109では、特性推定部29の処理により、第一のスタビリティファクタA1の符号及び大きさに応じて、旋回挙動の動的な変化特性を推定する。すなわち、車速V又は操舵角θの増加に伴って変化する旋回挙動が、アンダーステア特性(US特性)であるか、オーバーステア特性(OS特性)であるか、ニュートラルステア特性(NS特性)であるかを推定する。また、第二のスタビリティファクタA2の符号及び大きさに応じて、静的な旋回挙動を推定する。すなわち、ある時点の車速V又は操舵角θを維持したときの旋回挙動が、アンダーステア特性(US特性)であるか、オーバーステア特性(OS特性)であるか、ニュートラステア(NS特性)であるかを推定する。
続くステップS110では、目標挙動設定部15の処理により、車両の目標挙動として目標スタビリティファクタAを設定する。
続くステップS111では、制御量設定部17の処理により、第二のスタビリティファクタA2、及び目標スタビリティファクタAを用いて、目標ヨーレートγを実現するための目標ヨーモーメントMz、及び目標車速Vを実現するための目標減速度Gxを設定する。
続くステップS112では、配分比率設定部18の処理により、ヨーモーメント制御と減速制御と、の配分比率Rdを設定する。
続くステップS113では、駆動部19の処理により、配分比率Rdに従い、ヨーモーメント制御及び減速制御の少なくとも一方を実行し、アクチュエータ13を駆動制御してから所定のメインプログラムに復帰する。
上記が走行制御処理である。
《作用》
次に、第1実施形態の作用について説明する。
先ず、スリップ角がβ1であるときの、スリップ角βと横力Fyとの関係を図16に示す。
座標横軸にスリップ角βをとり、座標縦軸に横力Fyをとり、前輪のスリップ角βと横力Fyとの関係を実線の特性線Lnで示し、後輪のスリップ角βと横力Fyとの関係を破線の特性線Lnで示す。また、特性線Ln上でスリップ角がβ1となる点をP1とし、この点P1における接線をLk1とし、座標原点[0,0]と点P1とを結ぶ直線をLk2とする。また、特性線Ln上でスリップ角がβ1となる点をP1とし、この点P1における接線をLk1とし、座標原点[0,0]と点P1とを結ぶ直線をLk2とする。このとき、前輪の横力Fyよりも後輪の横力Fyの方が大きいため、直線Lk2の傾きよりも直線Lk2の傾きの方が大きくなる。したがって、旋回挙動がアンダーステア特性であると判定できる。また、接線Lk1の傾きと接線Lk1の傾きとでは大きな差がない。そのため、タイヤのスリップ角βが増加しても、横力Fyの増加量は、前輪と後輪とで大きな差がなく、依然としてアンダーステア特性が維持されることになる。
次に、スリップ角がβ1よりも大きなβ2であるときの、スリップ角βと横力Fyとの関係を図17に示す。
ここでは、特性線Ln上でスリップ角がβ2となる点をP2とし、この点P2における接線をLk1とし、座標原点[0,0]と点P2とを結ぶ直線をLk2とする。また、特性線Ln上でスリップ角がβ2となる点をP2とし、この点P2における接線をLk1とし、座標原点[0,0]と点P2とを結ぶ直線をLk2とする。このとき、前輪の横力Fyよりも後輪の横力Fyの方が大きいため、直線Lk2の傾きよりも直線Lk2の傾きの方が大きくなる。したがって、旋回挙動がアンダーステア特性であると判定される。しかしながら、接線Lk1の傾きは、接線Lk1の傾きよりも小さく、略0である。そのため、タイヤのスリップ角βが増加すると、前輪の横力Fyは増加するのに、後輪の横力Fyは減少傾向に転じてしまう。したがって、旋回挙動がアンダーステア特性にありながら、オーバーステア特性へと近づいてゆくことになる。
次に、スリップ角がβ2よりも大きなβ3であるときの、スリップ角βと横力Fyとの関係を図18に示す。
ここでは、特性線Ln上でスリップ角がβ3となる点をP2とし、この点P3における接線をLk1とし、座標原点[0,0]と点P3とを結ぶ直線をLk2とする。また、特性線Ln上でスリップ角がβ3となる点をP2とし、この点P3における接線をLk1とし、座標原点[0,0]と点P3とを結ぶ直線をLk2とする。このとき、前輪の横力Fyと後輪の横力Fyとが等しいため、直線Lk2の傾きと直線Lk2の傾きも等しくなる。したがって、旋回挙動がニュートラルステア特性であると判定される。しかしながら、接線Lk1の傾きは、接線Lk1の傾きよりも小さく、右肩上がりを正の値、右肩下がりを負の値とするなら、接線Lk1の傾きが0より大きいのに対して、接線Lk1の傾きは0より小さい。そのため、タイヤのスリップ角βが増加すると、前輪の横力Fyは増加するのに、後輪の横力Fyはさらに減少してしまう。したがって、旋回挙動がニュートラルステア特性にありながら、オーバーステア特性が発現する直前である。
このように、直線Lk2の傾き、及び直線Lk2の傾きは、ある時点における静的なタイヤ特性、つまり今の旋回挙動を示しているに過ぎない。そして、今の旋回挙動に着目するだけでは、次の旋回挙動に向けた支援を行うことができないため、刻々と変化する旋回挙動の動的な変化特性を把握することが求められる。
また、安定した旋回走行を図るものとして、目標ヨーレートγを設定し、実ヨーレートγとの偏差Δγに応じて、制御介入するものも知られている。これは車両の限界挙動を抑制することはできるが、運転者にとっての車両の扱いやすさに寄与するとは限らない。すなわち、人の内部モデルは、運転操作と車両挙動の履歴から構築されるため、ある操作に対して期待した挙動は、直前の操作の延長上にあるといえる。ヨーレートγは、車速Vや操舵角θによって絶えず変化するため、ヨーレート偏差Δγに応じて制御介入したときに、運転者は車両挙動の変化を識別できても、運転操作との因果関係を把握しにくい。したがって、運転者にとっての車両の扱いやすさには結びつきにくい。
本実施形態では、直線Lk2の傾き、及び直線Lk2の傾きだけではなく、接線Lk1の傾き、及び接線Lk1の傾きにも着目している。すなわち、予め定めた座標系で、基準特性となるタイヤのスリップ角β及び横力Fyの関係を、基準特性線Lrとして規定しておく。そして、基準特性線Lrを参照し、タイヤの横力Fy及びFyに対応する座標位置での接線Lk1及びLk1の傾きを、第一のコーナリングパワーK1及びK1として算出する。この第一のコーナリングパワーK1及びK1は、ある時点における動的なタイヤ特性を示している。すなわち、車速V又は操舵角θの増加に伴って、ある時点からスリップ角βや横力Fyが変化するときのコーナリングパワーとなるため、動的なコーナリングパワーである。この第一のコーナリングパワーK1及びK1を用いて、第一のスタビリティファクタA1を算出する。
そして、第一のスタビリティファクタA1の符号及び大きさに応じて、旋回挙動の動的な変化特性を推定する。すなわち、車速V又は操舵角θの増加に伴って変化する旋回挙動が、アンダーステア特性(US特性)であるか、オーバーステア特性(OS特性)であるか、ニュートラルステア特性(NS特性)であるかを推定する。
このように、基準特性線Lrにおいて、横力Fyに対応する座標位置での接線Lk1及びLk1の傾きを、第一のコーナリングパワーK1及びK1として算出しているため、次にコーナリングパワーがどのように変化するかを把握することができる。したがって、この第一のコーナリングパワーK1及びK1を用いて、第一のスタビリティファクタA1を算出することにより、次にスタビリティファクタがどのように変化するかを把握することができ、こうして旋回挙動の動的な変化特性を把握することができる。
一方、直線Lk2の傾き、及び直線Lk2の傾きを、第二のコーナリングパワーK2及びK2として算出する。この第二のコーナリングパワーK2及びK2は、ある時点における静的なタイヤ特性を示している。すなわち、ある時点のスリップ角βと横力Fyとを維持したときのコーナリングパワーとなるため、静的なコーナリングパワーである。この第二のコーナリングパワーK2及びK2を用いて、第二のスタビリティファクタA2を算出する。
そして、第二のスタビリティファクタA2の符号及び大きさに応じて、静的な旋回挙動を推定する。すなわち、ある時点の車速V又は操舵角θを維持したときの旋回挙動が、アンダーステア特性(US特性)であるか、オーバーステア特性(OS特性)であるか、ニュートラステア(NS特性)であるかを推定する。
このように、基準特性線Lrにおいて、横力Fyに対応する座標位置と座標原点[0,0]とを結ぶ直線Lk2及びLk2の傾きを、第二のコーナリングパワーK2及びK2として算出しているため、今のコーナリングパワーがどのような状態にあるかを把握することができる。したがって、この第二のコーナリングパワーK2及びK2を用いて、第二のスタビリティファクタA2を算出することにより、今のスタビリティファクタがどのような状態にあるかを把握することができ、こうして静的な旋回挙動を把握することができる。
また、第一のコーナリングパワーK1及びK1の何れか一方を用いて、車両の目標スタビリティファクタAを設定し、この目標スタビリティファクタAに応じて、車両の旋回走行を駆動制御する。これにより、旋回挙動の動的な変化特性に応じた運転支援を行うことができる。
目標スタビリティファクタAの設定については、第一のコーナリングパワーK1が小さいほど、車両のアンダーステア特性が強まるように目標スタビリティファクタAを設定する。第一のコーナリングパワーK1が小さいほど、前輪又は後輪の横力Fyが飽和状態に近づいていることを意味するため、この場合は予めアンダーステア特性を強めておくことが望ましい。このように、第一のコーナリングパワーK1が小さいほど、車両のアンダーステア特性が強まるように目標スタビリティファクタAを設定することで、旋回挙動の動的な変化特性に応じた運転支援を行うことができる。
具体的には、第一のコーナリングパワーK1が予め定めた閾値Kt2よりも大きい定常領域にあるときには、車両のアンダーステア特性が予め定めた基準値Aを維持するように、目標スタビリティファクタAを設定する。このように、第一のコーナリングパワーK1が定常領域にあるときには、目標スタビリティファクタAを基準値Aに設定することにより、弱いアンダーステア特性を維持し、良好なステア特性を維持することができる。
一方、第一のコーナリングパワーK1が閾値Kt2よりも小さい非定常領域にあるときには、車両のアンダーステア特性が基準値Aよりも強まるように、目標スタビリティファクタAを設定する。このように、第一のコーナリングパワーK1が非定常領域にあるときには、目標スタビリティファクタAを基準値Aよりも大きな値に設定することにより、オーバーステア特性に遷移しそうになることを抑制し、良好なステア特性を維持することができる。
ところで、第一のコーナリングパワーK1が小さいほど、前輪又は後輪の横力Fyが飽和状態に近づいていることを意味するため、車両を曲げるエネルギーを持っていないことになる。したがって、第一のコーナリングパワーK1が小さいときに、ヨーモーメント制御を実行しても、車両の旋回挙動を効果的にコントロールすることができない可能性がある。一方、第一のコーナリングパワーK1が大きいほど、前輪又は後輪には、十分な横力Fyを発揮できる余裕があることを意味するため、車両を曲げるエネルギーを十分に持っていることになる。したがって、第一のコーナリングパワーK1が大きいときには、ヨーモーメント制御を実行することで、車両の旋回挙動を効果的にコントロールすることができる。
そこで、目標スタビリティファクタAを実現するために、車両のヨーモーメント制御及び減速制御の少なくとも一方を行う際に、第一のコーナリングパワーK1及びK1の何れか一方を用いて、ヨーモーメント制御及び減速制御の配分比率Rdを設定する。すなわち、第一のコーナリングパワーK1が大きいほど、ヨーモーメント制御の配分比率Rdを大きくすることにより、減速制御よりもヨーモーメント制御の重みを相対的に増加させる。一方、第一のコーナリングパワーK1が小さいほど、ヨーモーメント制御の配分比率Rdを小さくすることにより、ヨーモーメント制御よりも減速制御の重みを相対的に増加させる。これにより、旋回挙動の動的な変化特性に応じた運転支援を行うことができる。
横方向の移動速度と加減速度による前後方向の移動速度との関係を図19に示す。
図中の(a)は、第一のコーナリングパワーK1が大きく、タイヤグリップに十分な余裕がある場合を示す。仮に、目標スタビリティファクタAが点線で示す特性線L上にあるとする。今、旋回走行状態にあり、横方向の移動速度と前後方向の移動速度との関係が、特性線L上の点P0にあるとする。この状態から運転者の加速要求があった場合、タイヤグリップに十分な余裕があれば、ヨーモーメント制御によって、横方向の移動速度を増加させ、特性線L上の点P1へと遷移することができる。これにより、目標スタビリティファクタAを維持し、所望のアンダーステア特性を得ることができる。
図中の(b)は、第一のコーナリングパワーK1が小さく、タイヤグリップに十分な余裕がない場合を示す。今、特性線L上の点P0にあり、この状態から運転者の加速要求があった場合、前述したように、タイヤグリップに十分な余裕があれば、ヨーモーメント制御によって、横方向の移動速度を増加させることができる。しかしながら、タイヤグリップに十分な余裕がないので、この場合は減速制御によって、前後方向の移動速度を抑制し、特性線L上の点P0にとどまり続ける。これにより、目標スタビリティファクタAを維持し、所望のアンダーステア特性を得ることができる。
このように、第一のコーナリングパワーK1及びK1の何れか一方を用いて、ヨーモーメント制御及び減速制御の配分比率Rdを設定することにより、旋回挙動の動的な変化特性に応じた運転支援を行うことができる。
また、ヨーモーメント制御、及び減速制御では、第二のスタビリティファクタA2、及び目標スタビリティファクタAを用いて、目標ヨーレートγを実現するための目標ヨーモーメントMz、及び目標車速Vを実現するための目標減速度Gxを設定する。そして、目標ヨーモーメントMzに配分比率Rdを乗算することにより、目標ヨーモーメントMzを補正し、目標減速度Gxに(1.0−Rd)を乗算することにより、目標減速度Gxを補正する。これら補正後の目標ヨーモーメントMz及び目標減速度Gxを実現するために、アクチュエータ13の駆動制御を行い、所望のアンダーステア特性を維持できるように制御介入する。これにより、ヨーレート偏差Δγに応じて制御介入し、旋回挙動を強制的にコントロールする場合よりも車両のコントロール性が確保され、狙い通りのラインに沿って車両を走行させることができる。したがって、運転者にとっての車両の扱いやすさが向上する。
また、基準特性線Lrを参照し、タイヤの横力Fyと、接線Lk1の傾きである第一のコーナリングパワーK1との関係を規定したモデル(マップ)を有し、このモデル(マップ)を参照し、横力Fyを用いて、第一のコーナリングパワーK1を算出する。このように、タイヤの横力Fyと第一のコーナリングパワーK1との関係を規定したモデルを用いて、第一のコーナリングパワーK1を算出することにより、容易に第一のコーナリングパワーK1を算出することができる。
また、基準特性線Lrを参照し、タイヤの横力Fyと、直線Lk2の傾きである第二のコーナリングパワーK2との関係を規定したモデル(マップ)を有し、このモデル(マップ)を参照し、横力Fyを用いて、第二のコーナリングパワーK2を算出する。このように、タイヤの横力Fyと第二のコーナリングパワーK2との関係を規定したモデルを用いて、第二のコーナリングパワーK2を算出することにより、容易に第二のコーナリングパワーK2を算出することができる。
また、基準特性線Lrは、基準の摩擦係数μであることを前提に規定しているため、路面の摩擦係数μが基準のμと異なる路面では、第一のコーナリングパワーK1の算出精度や、第二のコーナリングパワーK2の算出精度に影響を与えてしまう。そこで、路面の摩擦係数μを推定し、この摩擦係数μを用いて横力Fy及びFyを補正する。具体的には、横力Fy及びFyに、基準の摩擦係数μと推定した摩擦係数はμとの比(μ/μ)を乗算することにより、横力Fy及びFyを補正する。このように、基準の摩擦係数μと推定した摩擦係数はμとの比(μ/μ)を用いて横力Fy及びFyを補正することにより、路面の摩擦係数μが基準のμとは異なる路面であっても、つまり走行シーンが変化しても、第一のコーナリングパワーK1や第二のコーナリングパワーK2を精度よく算出することができる。
また、摩擦係数推定部22の推定した摩擦係数μには、ノイズや外乱の影響を受けて推定誤差が含まれている可能性がある。そこで、横力Fy及びFyの補正に用いる摩擦係数μは、予め定めた期間にわたって摩擦係数推定部22が推定した摩擦係数μの平均値とする。このように、予め定めた期間にわたって推定した摩擦係数μの平均値を補正に用いることで、ノイズや外乱による影響を抑制し、横力Fy及びFyの補正精度を向上させることができる。
《対応関係》
本実施形態では、基準特性規定部24が「基準特性規定部」に対応し、タイヤ横力推定部21が「タイヤ状態取得部」に対応する。また、第一のコーナリングパワー算出部25が「第一のコーナリングパワー算出部」に対応し、目標挙動設定部15が「目標挙動設定部」に対応し、駆動制御部16が「駆動制御部」に対応する。また、摩擦係数推定部22が「摩擦係数推定部」に対応し、補正部23が「補正部」に対応し、図6及び図7のマップが「第一のモデル」に対応する。
《効果》
次に、第1実施形態における主要部の効果を記す。
(1)本実施形態に係る車両用旋回走行制御装置は、予め定めた座標系で、基準特性となるタイヤのスリップ角β及び横力Fyの関係を、基準特性線Lrとして規定する。そして、基準特性線Lrを参照し、スリップ角β又は横力Fyに対応する座標位置での接線の傾きを、第一のコーナリングパワーK1として算出する。そして、第一のコーナリングパワーK1を用いて、車両の目標スタビリティファクタAを設定し、この目標スタビリティファクタAに応じて、車両の旋回走行を駆動制御する。
このように、基準特性線Lrにおいて、スリップ角β又は横力Fyに対応する座標位置での接線の傾きを、第一のコーナリングパワーK1として算出しているため、次に第一のコーナリングパワーK1がどのように変化するかを把握することができる。したがって、この第一のコーナリングパワーK1を用いて、車両の目標スタビリティファクタAを設定し、車両の旋回走行を駆動制御することにより、旋回挙動の動的な変化特性に応じた運転支援を行うことができる。
(2)本実施形態に係る車両用旋回走行制御装置は、第一のコーナリングパワーK1が小さいほど、車両のアンダーステア特性が強まるように目標スタビリティファクタAを設定する。
このように、第一のコーナリングパワーK1が小さいほど、車両のアンダーステア特性が強まるように目標スタビリティファクタAを設定することで、旋回挙動の動的な変化特性に応じた運転支援を行うことができる。
(3)本実施形態に係る車両用旋回走行制御装置は、第一のコーナリングパワーK1が予め定めた閾値Kt2より大きい定常領域にあるときには、車両のアンダーステア特性が予め定めた基準値Aを維持するように、目標スタビリティファクタAを設定する。
このように、第一のコーナリングパワーK1が定常領域にあるときは、目標スタビリティファクタAを基準値Aに設定することにより、弱いアンダーステア特性を維持し、良好なステア特性を維持することができる。
(4)本実施形態に係る車両用旋回走行制御装置は、第一のコーナリングパワーK1が閾値Kt2より小さい非定常領域にあるときには、車両のアンダーステア特性が基準値Aよりも強まるように、目標スタビリティファクタAを設定する。
このように、第一のコーナリングパワーK1が非定常領域にあるときには、目標スタビリティファクタAを基準値Aよりも大きな値に設定することにより、オーバーステア特性に遷移しそうになることを抑制し、良好なステア特性を維持することができる。
(5)本実施形態に係る車両用旋回走行制御装置は、基準特性線Lrを参照し、タイヤのスリップ角β又は横力Fyの一方と、接線の傾きである第一のコーナリングパワーK1との関係を規定した第一のモデルを備える。この第一のモデルを参照し、スリップ角β又は横力Fyを用いて、第一のコーナリングパワーK1を算出する。
このように、タイヤの横力Fyと第一のコーナリングパワーK1との関係を規定したモデルを用いて、第一のコーナリングパワーK1を算出することにより、容易に第一のコーナリングパワーK1を算出することができる。
(6)本実施形態に係る車両用旋回走行制御装置は、路面の摩擦係数μを推定し、スリップ角β又は横力Fyの一方を、路面の摩擦係数μに応じて補正する。
このように、推定した摩擦係数μを用いて横力Fyを補正することにより、路面の摩擦係数μが基準のμとは異なる路面であっても、第一のコーナリングパワーK1や第二のコーナリングパワーK2を精度よく算出することができる。
(7)本実施形態に係る車両用旋回走行制御装置は、基準特性線Lrを規定するのに前提としている路面の摩擦係数を基準値μとし、且つ推定した路面の摩擦係数を推定値μとし、基準値μ及び推定値μの比に応じて、スリップ角β又は横力Fyの一方を補正する。
このように、基準の摩擦係数μと推定した摩擦係数はμとの比(μ/μ)を用いて横力Fy及びFyを補正することにより、路面の摩擦係数μが基準のμとは異なる路面であっても、第一のコーナリングパワーK1や第二のコーナリングパワーK2を精度よく算出することができる。
(8)本実施形態に係る車両用旋回走行制御装置は、予め定めた期間にわたって推定した路面の摩擦係数μの平均値に応じて、スリップ角β又は横力Fyの一方を補正する。
このように、予め定めた期間にわたって推定した摩擦係数μの平均値を補正に用いることで、ノイズや外乱による影響を抑制し、横力Fyの補正精度を向上させることができる。
(9)本実施形態に係る車両用旋回走行制御方法は、予め定めた座標系で、基準特性となるタイヤのスリップ角β及び横力Fyの関係を、基準特性線Lrとして予め規定しておく。そして、基準特性線Lrを参照し、タイヤのスリップ角β又は横力Fyに対応する座標位置での接線の傾きを、第一のコーナリングパワーK1として算出する。そして、第一のコーナリングパワーK1を用いて、車両の目標スタビリティファクタAを設定し、この目標スタビリティファクタAに応じて、車両の旋回走行を駆動制御する。
このように、基準特性線Lrにおいて、スリップ角β又は横力Fyに対応する座標位置での接線の傾きを、第一のコーナリングパワーK1として算出しているため、次に第一のコーナリングパワーK1がどのように変化するかを把握することができる。したがって、この第一のコーナリングパワーK1を用いて、車両の目標スタビリティファクタAを設定し、車両の旋回走行を駆動制御することにより、旋回挙動の動的な変化特性に応じた運転支援を行うことができる。
以上、限られた数の実施形態を参照しながら説明したが、権利範囲はそれらに限定されるものではなく、上記の開示に基づく実施形態の改変は、当業者にとって自明のことである。
11 走行制御装置
12 コントローラ
13 アクチュエータ
14 旋回特性推定部
15 目標挙動設定部
16 駆動制御部
17 制御量設定部
18 配分比率設定部
19 駆動部
21 タイヤ横力推定部
22 摩擦係数推定部
23 補正部
24 基準特性規定部
25 コーナリングパワー算出部
26 スタビリティファクタ算出部
27 コーナリングパワー算出部
28 スタビリティファクタ算出部
29 特性推定部
30 駆動力制御装置
50 ブレーキ制御装置

Claims (9)

  1. 予め定めた座標系で、基準特性となるタイヤのスリップ角及び横力の関係を、基準特性線として規定する基準特性規定部と、
    タイヤのスリップ角又は横力を取得するタイヤ状態取得部と、
    前記基準特性規定部で規定した基準特性線を参照し、前記タイヤ状態取得部で取得したスリップ角又は横力に対応する座標位置での接線の傾きを、第一のコーナリングパワーとして算出する第一のコーナリングパワー算出部と、
    前記第一のコーナリングパワー算出部で算出した第一のコーナリングパワーを用いて、車両の目標スタビリティファクタを設定する目標挙動設定部と、
    前記目標挙動設定部で設定した目標スタビリティファクタに応じて、車両の旋回走行を駆動制御する駆動制御部と、を備え
    前記目標挙動設定部は、
    前記第一のコーナリングパワーが小さいほど、車両のアンダーステア特性が強まるように前記目標スタビリティファクタを設定することを特徴とする車両用旋回走行制御装置。
  2. 予め定めた座標系で、基準特性となるタイヤのスリップ角及び横力の関係を、基準特性線として規定する基準特性規定部と、
    タイヤのスリップ角又は横力を取得するタイヤ状態取得部と、
    前記基準特性規定部で規定した基準特性線を参照し、前記タイヤ状態取得部で取得したスリップ角又は横力に対応する座標位置での接線の傾きを、第一のコーナリングパワーとして算出する第一のコーナリングパワー算出部と、
    前記第一のコーナリングパワー算出部で算出した第一のコーナリングパワーを用いて、車両の目標スタビリティファクタを設定する目標挙動設定部と、
    前記目標挙動設定部で設定した目標スタビリティファクタに応じて、車両の旋回走行を駆動制御する駆動制御部と、を備え
    前記目標挙動設定部は、
    前記第一のコーナリングパワーが予め定めた閾値より大きい定常領域にあるときには、車両のアンダーステア特性が予め定めた基準値を維持するように、前記目標スタビリティファクタを設定することを特徴とする車両用旋回走行制御装置。
  3. 前記目標挙動設定部は、
    前記第一のコーナリングパワーが前記閾値より小さい非定常領域にあるときには、車両のアンダーステア特性が前記基準値よりも強まるように、前記目標スタビリティファクタを設定することを特徴とする請求項に記載の車両用旋回走行制御装置。
  4. 前記第一のコーナリングパワー算出部は、
    前記基準特性線を参照し、タイヤのスリップ角又は横力の一方と、前記接線の傾きである前記第一のコーナリングパワーとの関係を規定した第一のモデルを有し、
    前記第一のモデルを参照し、前記タイヤ状態取得部で取得したスリップ角又は横力を用いて、前記第一のコーナリングパワーを算出することを特徴とする請求項1〜の何れか一項に記載の車両用旋回走行制御装置。
  5. 路面の摩擦係数を推定する摩擦係数推定部と、
    前記タイヤ状態取得部で取得したスリップ角又は横力の一方を、前記摩擦係数推定部で推定した路面の摩擦係数に応じて補正する補正部と、を備えることを特徴とする請求項1〜の何れか一項に記載の車両用旋回走行制御装置。
  6. 前記補正部は、
    前記基準特性線を規定するのに前提としている路面の摩擦係数を基準値とし、且つ前記摩擦係数推定部で推定した路面の摩擦係数を推定値とし、前記基準値及び前記推定値の比に応じて、前記タイヤ状態取得部で取得したスリップ角又は横力の一方を補正することを特徴とする請求項に記載の車両用旋回走行制御装置。
  7. 前記補正部は、
    予め定めた期間にわたって前記摩擦係数推定部で推定した路面の摩擦係数の平均値に応じて、前記タイヤ状態取得部で取得したスリップ角又は横力の一方を補正することを特徴とする請求項5又は6に記載の車両用旋回走行制御装置。
  8. 予め定めた座標系で、基準特性となるタイヤのスリップ角及び横力の関係を、基準特性線として予め規定しておき、前記基準特性線を参照し、タイヤのスリップ角又は横力に対応する座標位置での接線の傾きを、第一のコーナリングパワーとして算出し、
    前記第一のコーナリングパワーを用いて、車両の目標スタビリティファクタを設定し、前記目標スタビリティファクタに応じて、車両の旋回走行を駆動制御し、
    前記第一のコーナリングパワーが小さいほど、車両のアンダーステア特性が強まるように前記目標スタビリティファクタを設定することを特徴とする車両用旋回走行制御方法。
  9. 予め定めた座標系で、基準特性となるタイヤのスリップ角及び横力の関係を、基準特性線として予め規定しておき、前記基準特性線を参照し、タイヤのスリップ角又は横力に対応する座標位置での接線の傾きを、第一のコーナリングパワーとして算出し、
    前記第一のコーナリングパワーを用いて、車両の目標スタビリティファクタを設定し、前記目標スタビリティファクタに応じて、車両の旋回走行を駆動制御し、
    前記第一のコーナリングパワーが予め定めた閾値より大きい定常領域にあるときには、車両のアンダーステア特性が予め定めた基準値を維持するように、前記目標スタビリティファクタを設定することを特徴とする車両用旋回走行制御方法。
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