JP6313188B2 - 圧電素子の製造方法、圧電素子 - Google Patents

圧電素子の製造方法、圧電素子 Download PDF

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Description

本発明は、基板上に圧電体膜を備えた圧電素子とその製造方法に関する。
液体吐出装置等のアクチュエータや各種センサ等の圧電素子において、Si基板を用いたMEMS(メムス、Micro Electro Mechanical Systems)技術等の半導体プロセス技術と組み合わせた微細化が進められている。圧電体として圧電体薄膜(圧電体膜)を用いた半導体プロセス技術では、成膜やフォトリソグラフィー等を用いた高精度な加工、及び大面積ウエハ上にて一括加工ができるため、圧電素子において、装置の小型化、高密度化、低コスト化の実現が期待されている。
高い圧電特性を有する圧電材料としては、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系のペロブスカイト型酸化物が、実績があり広く用いられている。PZT系ペロブスカイト型酸化物圧電体膜において、Zr:Tiが52:48近傍であるモルフォトロピック相境界(MPB:Morphotropic Phase Boundary)組成を有するとき、圧電定数及び電気機械結合係数が最も高く、アクチュエータ用途に好適であることが知られている。PZTは、MPB組成では、チタン酸鉛が最も安定な結晶相である正方晶とジルコン酸鉛が最も安定な結晶相である菱面体晶とが混在していることが知られており、MPB組成よりもチタン酸鉛リッチな組成では正方晶相となることが知られている。
正方晶系のペロブスカイト型酸化物では、分極軸に平行なc軸配向((001)配向、cドメイン)と分極軸に垂直なa軸配向((100)配向、aドメイン)とでは、誘電率や分極値、圧電定数等の物理定数が異なる。一般に、c軸配向の方がa軸配向に比して誘電率が小さくなることが知られている。圧電素子用途において、センサ用途には、電気ロスが少ないことから誘電率の小さいc軸配向が好ましく、アクチュエータ用途にはa軸配向が好ましい。
正方晶系のペロブスカイト型酸化物において、a軸配向とc軸配向とを作り分ける試みがなされている。特許文献1には、圧電体膜を結晶化する工程で圧電体膜に作用する引っ張り応力による90°ドメイン(a軸配向)を抑制して圧電体膜の耐久性を向上させるために、Si基板上に、圧電体膜よりも熱膨張係数の大きな中間膜を介して圧電体膜を形成することが開示されている。
また、特許文献2には、基板に曲げ変形を生じさせうる応力制御膜を基板裏面に備えた圧電素子が開示されており、応力制御膜により基板を曲げ変形させることにより、a軸配向とc軸配向の比率を制御する方法が開示されている。
特開2006−100622号公報 特開2013−102024号公報
特許文献1では、中間膜として膜厚の大きな膜を用いることが必要であり、膜厚の大きな中間膜上に圧電体膜を形成した後、裏面側からパターン化して可動領域を作製した後、キュリー温度以上の温度にアニールすることにより、c軸配向膜を形成している。しかしながら、中間膜の膜厚を大きくすることが難しく、また、かかる態様にでは、アニール工程において圧電体膜にクラックが入りやすい。
特許文献2では、基板を曲げ変形させることによりa軸配向とc軸配向の比率を制御している。基板が反っている素子は、その素子を用いたデバイスや装置の製造プロセスが複雑になるため、実用性が乏しい。
一方、アクチュエータとセンサを同一基板上に備えた電気機械変換素子として振動型ジャイロセンサや、マイクロミラー、超音波探触子等の素子がある。現在、かかる素子においても小型化、低コスト化の観点でMEMS技術の適用が望まれており、アクチュエータ部分の圧電体膜と、アクチュエータ部分よりも誘電率が低いセンサ部分の圧電体膜とをMEMS技術にて同一基板上に一括形成可能な技術が望まれている。
また、一般的なアクチュエータ素子においてもその動きを圧電体でセンシングすることにより、より高精度なアクチュエータの駆動が実現できるため、従来用途のアクチュエータにおいても適用可能である。
しかしながら、これまで、アクチュエータ部分の圧電体膜と、アクチュエータ部分よりも誘電率が低いセンサ部分の圧電体膜とをMEMS技術にて同一基板上に一括形成可能とした報告はなく、従来、アクチュエータ部分とセンサ部分の圧電体膜は、いずれも(100)配向のものを用いている。
上記特許文献1,2において、アクチュエータ部分の圧電体膜と、アクチュエータ部分よりも誘電率が低いセンサ部分の圧電体膜とを同一基板上に一括形成する技術については記載も示唆もされていない。アクチュエータ部分の圧電体膜と、アクチュエータ部分よりも誘電率が低いセンサ部分の圧電体膜の同一基板上への一括形成は、特許文献1においては、中間膜の厚さによるクラック混入の可能性が高く、また、特許文献2の方法では、基板を曲げることにより配向比率を制御するため困難である。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、Si基板上に正方晶系圧電体膜を備えた圧電素子の製造方法において、アクチュエータとして好適な高誘電率部と、高誘電率部よりも誘電率の低い低誘電率部とを有する圧電体膜を同一基板上に一括形成することができる、圧電素子の製造方法を提供することを目的とするものである。
本発明はまた、Si基板上に正方晶系圧電体膜を備えた圧電素子において、圧電体膜が、アクチュエータとして好適な高誘電率部と、高誘電率部よりも誘電率の低い低誘電率部とを同一基板上に有し、且つ、一括形成可能である圧電素子を提供することを目的とするものである。
本発明の圧電素子の製造方法は、Si基板上に、正方晶成分を含み、且つ、配向度60%以上の結晶配向性を有する均一組成の柱状構造膜からなり、柱状構造膜が正方晶成分中のa軸配向成分がc軸配向成分に比して多い高誘電率部と、高誘電率部に比して正方晶成分中のc軸配向成分が多い低誘電率部とを有する圧電体膜を備えた圧電素子の製造方法であって、
Si基板を用意し、
Si基板の一表面上に圧電体膜より熱膨張係数の大きい応力調整層と下部電極とを順次備えた下地構造体を形成する下地構造体形成工程と、
下地構造体上に、柱状構造膜を成膜する圧電体膜成膜工程と、
下地構造体の熱膨張係数を高誘電率部と低誘電率部とで異ならせる熱膨張係数調整工程と、
圧電体膜を、圧電体膜のキュリー温度の1/4以上1/2以下の温度に加熱した後室温まで冷却するドメイン構造形成工程とを有する。
本明細書において、「Si基板」には、熱酸化膜付き基板(SOI基板:Silicon on Insulator基板)を含むものとする。
また、「正方晶成分を含む」とは、正方晶成分と10%以上含むことを意味するものとする。
正方晶の成分は多い方が好ましい。圧電体のMPB(モルフォトロピック相境界)組成付近では、正方晶と菱面体晶との分離が困難であり、かつ菱面体晶においても本発明によって誘電率の低下効果が見られる。
本明細書において、「室温まで冷却する」とは、自然放冷により室温に戻すことを含むものとする。
本明細書において、「配向度」は、柱状構造膜(圧電体膜)のθ/2θX線回折測定(XRD)において、配向面からの反射強度の合計と全反射強度の合計との比(%)である。ここでは、20°から50°の範囲において、(001)配向の場合、Pは、(00l)面からの反射強度I(00l)の合計ΣI(00l)と、各結晶面(hkl)からの反射強度I(hkl)の合計ΣI(hkl)との比({ΣI(00l)/ΣI(hkl)})である。例えば、ペロブスカイト結晶において(001)配向の場合、P=I(001)/[I(001)+I(100)+I(101)+I(110)+I(111)]である。
なお、PZTのMPB付近の組成の場合、(001)に関して、正方晶の(100)と(001)、菱面体晶の(100)の方位が混在しており、分離が困難な場合がある。その際には、最も高い強度のピークのみ採用して、配向度を算出した。
ドメイン構造形成工程において、圧電体膜をキュリー温度の1/4以上1/3以下の温度に加熱した後室温まで冷却することがより好ましい。
熱膨張係数調整工程は、圧電体膜成膜工程後に、Si基板の裏面から、低誘電率部の下地となる部分のSi基板をエッチングにより厚み方向に途中まで除去する工程であることが好ましい。
「途中まで除去する」とは、SOIウエハの場合、SiをSiO層(ストップ層)に到達する前までの途中まで除去してもよいし、ストップ層に到達するまで、すなわち、Siをすべて除去してもよいし、応力調整層に到達する手前まで除去してもよい。
熱膨張係数調整工程は、下地構造体形成工程において、低誘電率部の下地部分となる応力調整層の厚みが、高誘電率部の下地部分となる応力調整層の厚みよりも厚くなるように応力調整層を形成する工程であってもよい。
本発明の圧電素子は、
Si基板と、Si基板の一表面上の少なくとも一部に形成されてなる応力調整層と、下部電極とを順次備えた下地構造体上に、ペロブスカイト型の結晶構造を有する圧電体膜と、上部電極とを順次備えた圧電素子であって、
応力調整層は、圧電体膜より大きな熱膨張係数を有してなり、
圧電体膜は、正方晶成分を含み、且つ、配向度60%以上の結晶配向性を有する均一組成の柱状構造膜であり、
柱状構造膜は、正方晶成分中のa軸配向成分がc軸配向成分に比して多い高誘電率部と、
高誘電率部に比して正方晶成分中のc軸配向成分が多い低誘電率部とを有する。なお、正方晶成分以外には菱面体晶成分や単斜晶成分などを含んでいてもよい。
高誘電率部の誘電率εと低誘電率部の誘電率εの比ε/εが1.1以上5以下であることが好ましい。
本発明の圧電素子において、低誘電率部の下地部分の下地構造体の厚みと、高誘電率部の下地部分の下地構造体の厚みが異なっていることが好ましい。かかる態様において、低誘電率部の下地部分の基板の厚みが、高誘電率部の下地部分の基板の厚みよりも薄くなっていてもよいし、低誘電率部の下地部分の応力調整層の厚みが、高誘電率部の下地部分の応力調整層の厚みよりも厚くなっていてもよい。
圧電体膜は非エピタキシャル膜であることが好ましい。
本発明の圧電素子は、高誘電率部をアクチュエータ部とし、低誘電率部をセンサ部とすることができる。
上記本発明の圧電素子の製造方法、及び、上記本発明の圧電素子において、圧電体膜,圧電体膜の下地部分のSi基板,圧電体膜の下地部分の応力調整層の熱膨張係数をそれぞれα1,α2,α3とし、圧電体膜,Si基板,応力調整層のヤング率をそれぞれE1,E2,E3とし、圧電体膜,Si基板,応力調整層の厚みをそれぞれd1,d2,d3とした時、低誘電率部は、α3×E3×d3―α2×E2×d2≧α1×E1×d1を満足し、
高誘電率部は、α3×E3×d3―α2×E2×d2<α1×E1×d1を満足することが好ましい。
少なくとも低誘電率部の(α3×E3×d3―α2×E2×d2)と高誘電率部の(α3×E3×d3―α2×E2×d2)を比較した場合、低誘電率部>高誘電率部であることが好ましい。
また、圧電体膜は、下記一般式(P)で表されるペロブスカイト型酸化物を主成分とすることが好ましい。
(Zr,Ti,Mb−x−y・・・(P)、
但し、式中、A:Aサイトの元素であり、Pbを含む少なくとも1種の元素、Mは1種又は2種以上の金属元素を示す。0<x<b、0<y<b、0≦b−x−yであり、a:b:c=1:1:3が標準であるが、これらのモル比はペロブスカイト構造を取り得る範囲内で標準値からずれてもよい。
応力調整層は、Ti又はステンレス鋼を主成分とする層が好ましい。
本明細書において、「主成分」とは、含量50質量%以上の成分を意味するものとする。
本発明の圧電素子の製造方法は、Si基板上に、正方晶成分を含み、且つ、配向度60%以上の結晶配向性を有する均一組成の柱状構造膜からなり、柱状構造膜が正方晶成分中のa軸配向成分がc軸配向成分に比して多い高誘電率部と、高誘電率部に比して正方晶成分中のc軸配向成分が多い低誘電率部とを有する圧電体膜を備えた圧電素子の製造方法であって、圧電体膜の下地となる下地構造体の熱膨張係数を高誘電率部と低誘電率部で異ならせる熱膨張係数調整工程を有し、成膜された圧電体膜をキュリー温度の1/4以上1/2以下の温度に加熱した後室温まで冷却するドメイン構造形成工程とを有している。かかる構成によれば、圧電体膜の下地となる下地構造体の熱膨張係数の違いにより、ドメイン構造形成工程において形成されるドメイン(a軸配向成分とc軸配向成分)の比率を変化させることができる。従って、アクチュエータとして好適な高誘電率部と、高誘電率部よりも誘電率の低い低誘電率部とを有する圧電体膜を同一基板上に一括形成することができる。
本発明に係る一実施形態の圧電素子及の構成を示す概略断面図及び上面図。 本発明の圧電素子の製造方法の一実施形態を示す断面フロー図。 実施例において圧電定数の評価に用いた評価方法を示す概略図。 実施例1で製造された圧電体膜のXRD(X線回折)スペクトルを示す図。
本発明者らは、Si基板11上に圧電体膜よりも熱膨張係数の大きい応力調整層12を備えた下地構造体10を形成する工程と、下地構造体10の熱膨張係数を、高誘電率部を形成する部分と低誘電率部を形成する部分とで異ならせる熱膨張係数調整工程と、下地構造体10上に圧電体膜20として配向度60%以上の結晶配向性を有する均一組成の柱状構造膜を形成した後に、圧電体膜20と下地構造体10の熱膨張係数差に起因する圧電体膜20への応力を利用したドメイン構造形成工程を実施することにより、同一基板上(Si基板11上)に、高誘電率部の圧電体膜20aと低誘電率部の圧電体膜20bとを、一括形成することができることを見出した。
更に、熱膨張係数調整工程を、圧電体膜成膜工程後に、Si基板の裏面から、低誘電率部の下地となる部分のSi基板をエッチングにより厚み方向に途中まで除去する工程とすることにより、圧電素子を構成する各層へのクラックの混入を抑制して、容易なプロセスにて製造できることを見出した。
「発明が解決しようとする課題」の項目において述べたように、これまでに、アクチュエータとして好適な高誘電率部と、高誘電率部よりも誘電率の低い低誘電率部とを有する圧電体膜を同一基板上に備えた圧電素子はこれまでに報告されていない。従って、以下に示す本発明の圧電素子の製造方法、及びこの製造方法により製造することができる本発明の圧電素子は新規である。
図1及び図2を参照して、本発明に係る一実施形態の圧電素子及び圧電素子の製造方法について説明する。図1は、本実施形態の圧電素子1の構成を示す概略図であり、上図は上面図、下図は上面図のA−A’断面図である。また、図2は本発明の圧電素子の製造方法の一実施形態を示す断面フロー図である。本明細書の図面は、視認しやすくするため、構成要素の縮尺は実際のものとは適宜異ならせてある。
図1に示されるように、圧電素子1は、Si基板11と、Si基板11の一表面上の少なくとも一部に形成されてなる応力調整層12と、下部電極13とを順次備えた下地構造体10上に、ペロブスカイト型の結晶構造を有する圧電体膜20と、上部電極30とを順次備え、応力調整層12は、圧電体膜20より大きな熱膨張係数を有してなり、圧電体膜20は、正方晶成分を含み、且つ、配向度60%以上の結晶配向性を有する均一組成の柱状構造膜20であり、柱状構造膜20は、正方晶成分中のa軸配向成分がc軸配向成分に比して多い高誘電率部20aと、高誘電率部20aに比して正方晶成分中のc軸配向成分が多い低誘電率部20bとを有している。
図1では、Si基板11を、3層構造を有する、SOI基板のように、Si基板の表面に熱酸化膜が形成されてなる態様を例として示している。
圧電体膜20において、高誘電率部20aの誘電率εと低誘電率部20bの誘電率εの比ε/εは1.1以上5以下であることが好ましい。
圧電素子1において、圧電体膜20,圧電体膜20の下地部分のSi基板11,圧電体膜の下地部分の応力調整層12の熱膨張係数をそれぞれα1,α2,α3とし、また各ヤング率をそれぞれE1,E2,E3とし、圧電体膜20,圧電体膜20の下地部分のSi基板11,応力調整層の厚みをそれぞれd1,d2,d3とした時、
低誘電率部20bでは、式I : α3×E3×d3―α2×E2×d2≧α1×E1×d1を満足し、
高誘電率部20aでは、式II :α3×E3×d3―α2×E2×d2<α1×E1×d1を満足することが好ましい。
かかる構成によれば、高誘電率部20aは、正方晶成分においてa軸配向成分の方がc軸配向成分よりも多い、アクチュエータとして好適な圧電定数の高い圧電素子(アクチュエータ部)となり、また、低誘電率部20bは、高誘電率部20aよりもc軸配向成分が多い、センサとして好適な圧電定数の高い圧電素子(センサ部)とすることができる。
圧電素子1は、以下に示す本発明の圧電素子の製造方法により製造することができる。本発明の圧電素子の製造方法は、上記圧電素子1を製造する方法であって、Si基板11を用意し、Si基板11の一表面上に圧電体膜20より熱膨張係数の大きい応力調整層12と下部電極13とを順次備えた下地構造体10を形成する下地構造体形成工程と(図2A)、
下地構造体10上に、柱状構造膜20を成膜する圧電体膜成膜工程と(図2B)、
下地構造体10の熱膨張係数を高誘電率部20aと低誘電率部20bとで異ならせる熱膨張係数調整工程と(図2C)、
圧電体膜20を、圧電体膜20のキュリー温度の1/4以上1/2以下の温度に加熱した後室温まで冷却するドメイン構造形成工程と(図2D)を有する。
以下に、本発明の圧電素子の製造方法について、図2を参照して説明すると共に、圧電素子1の各部の構成について説明する。
<下地構造体形成工程(図2A)>
下地構造体形成工程は、Si基板11を用意し、Si基板11の一表面上に圧電体膜20より熱膨張係数の大きい応力調整層12と下部電極13とを順次備えた下地構造体10を形成する工程である。
応力調整層12は、その上に形成される圧電体膜20よりも大きな熱膨張係数を有している層であり、圧電体膜20の結晶成長に悪影響を及ぼさないものであれば特に制限されないが、膜厚を薄くできる観点から、ヤング率が大きいものであることが好ましい。応力調整層12の構成成分は、金属、酸化物、窒化物、炭化物、及びこれらの複合材料であっても構わないが、500℃以上の耐熱性があり、真応力の少ない材料であることが好ましい。真応力が大きすぎると、剥離やクラックの混入、反りの問題を生じやすいことから、応力調整層12の真応力は小さいほうが好ましい。
かかる観点から、応力調整層12としては、Ti層,Cu層,Ni層,Fe層,Cr層、Zr層、及びこれらの合金層、SUS(ステンレス鋼)層、MgO層、ZrO層、TiO層、SrTiO層等が挙げられ、Ti又はSUSを主成分とする層であることが好ましい。
下部電極13の主成分としては、特に制限されないが、PtやIr等の白金族元素、Al,Ta,Cr,Cu等の一般的に半導体プロセスで用いられている金属元素、及びこれらの組合せが挙げられる。下部電極13の厚みは特に制限されないが、50〜500nmであることが好ましい。
また、下部電極13の熱膨張係数が圧電体膜20よりも大きい場合は、応力調整層12を兼ねることもできる。
表1は、後記実施例で成膜したNbドープPZT膜及びSi基板、また、好適な応力調整層の材料の一例について、熱膨張係数とヤング率を示したものである。後記実施例において形成したNbドープPZT膜について、精密な測定はできていないが約7であることが確認された。従って、後記実施例において、応力調整層12としては、熱膨張係数が7以上の材料を用いることにより、好適に本発明の作用を引き出すことができる。
<圧電体膜成膜工程(図2B)>
圧電体膜成膜工程は、下地構造体10上に、ペロブスカイト型の結晶構造を有し、正方晶成分を含み、且つ、配向度60%以上の結晶配向性を有する、均一組成の柱状構造膜20からなる圧電体膜を成膜する工程である。
下地構造体10上に成膜する圧電体膜20としては、正方晶成分を10%以上含んでいれば特に制限されないが、圧電定数の高いものであることが好ましい。
かかる圧電体膜としては、下記一般式(P)で表されるペロブスカイト型酸化物を主成分とするものが好ましい。
(Zr,Ti,Mb−x−y・・・(P)、
但し、式中、A:Aサイトの元素であり、Pbを含む少なくとも1種の元素、Mは1種又は2種以上の金属元素を示す。0<x<b、0<y<b、0≦b−x−yであり、a:b:c=1:1:3が標準であるが、これらのモル比はペロブスカイト構造を取り得る範囲内で標準値からずれてもよい。
一般式(P)で表されるペロブスカイト型酸化物は、PZT系ペロブスカイト型酸化物であり、式中のMは、Bサイトへのドーパントを意味している。上記一般式(P)で表されるペロブスカイト型酸化物としては、チタン酸鉛、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、ニオブ酸ジルコニウムチタン酸鉛、ジルコン酸チタン酸鉛ランタン等が挙げられる。圧電体膜は、これら上記一般式(P)で表されるペロブスカイト型酸化物の混晶系であってもよい。
一般式(P)において、ZrとTiの比は特に制限されないが、モルフォトロピック相境界(Morphotropic Phase Boundary:MPB)組成の比であることが、大きな圧電定数を有するため好ましい。MPB組成の比は、x:y=52:48である。
圧電特性向上の観点等において、ドーパントMとして、VA族、VB族、VIA族、及びVIB族等のBサイト元素を含むことが好ましい。既に述べたように、MがNbである場合は、圧電特性がより高く好ましい。特に、Nbを高濃度ドープしたPZTスパッタ膜は、Nbドープによる圧電性向上効果が効果的に発現されるため、より好ましい。
圧電体膜20は、正方晶成分を含んでいるので、自発分極軸と電界印加方向との一致を考慮すれば、(100)面及び/又は(001)面に優先配向していることが好ましい。
圧電体膜20の膜厚は特に制限なく、0.5μm以上10μm以下が好ましく、1〜5μmがより好ましい。かかる膜厚範囲の圧電体膜とすることにより、圧電性能を充分に発揮することができ、また、応力が強すぎて大きく基板が反るという問題が生じにくくなる。
柱状構造膜20を成膜する方法としては、正方晶成分を含み、且つ、配向度60%以上の結晶配向性を有する、均一組成の柱状構造膜20を成膜することができれば特に制限されないが、スパッタリング法による成膜が好ましい。具体的な成膜条件については後記実施例に一例が例示されているが、スパッタリング法の成膜条件は、圧電体膜の組成、及び目的とする配向度に応じて適宜設定することができる。PZT系ペロブスカイト型酸化物は、スパッタリング法により成膜することにより、(100)面に優先配向したペロブスカイト型酸化物膜とすることができる。
圧電体膜20は柱状構造膜であるが、非エピタキシャル膜であることが好ましい。圧電体膜20がエピタキシャル膜である場合は、後記するドメイン構造形成工程において、所望のドメインを形成することが難しい。
図2Bでは、柱状構造膜20の成膜後、高誘電率部20aの上部電極30a、及び、低誘電率部20bの上部電極30bをパターン形成する工程まで実施した態様について示してあるが、上部電極30a,30bの形成は、圧電体膜成膜工程において実施しなくてもよい。上部電極30の主成分としては特に制限なく、下部電極30で例示した材料と同じ材料が例示される。
<熱膨張係数調整工程(図2C)>
既に述べたように、本発明の圧電素子の製造方法では、後工程のドメイン構造形成工程において、圧電体膜20と下地構造体10の熱膨張係数差に起因する圧電体膜20への応力を利用して、同一基板上(Si基板11上)に、高誘電率部の圧電体膜20aと低誘電率部の圧電体膜20bとを、一括形成する。熱膨張係数調整工程は、ドメイン構造形成工程における冷却過程において、高誘電率部20aとなる部分には引張応力が作用し、低誘電率部20bとなる部分には高誘電率部20aとなる部分に作用する引張応力よりも小さい引張応力、あるいは、圧縮応力が作用するように、下地構造体10の熱膨張係数を高誘電率部20a形成領域と低誘電率部20b形成領域とで異ならせる工程である。
熱膨張係数調整工程の最も好適な態様は、圧電体膜成膜工程後に、Si基板11の裏面から、低誘電率部20bの下地となる部分のSi基板11をエッチングにより厚み方向に途中まで除去する工程である。Si基板11の除去量は、圧電素子1において、上記式I及び式IIを満足する除去量となるように、圧電体膜20の組成やその膜厚に応じて設定するであることが好ましい。
熱膨張係数調整工程を、かかる態様とすることにより、応力調整層12の膜厚を厚くする等、応力調整層の真応力を最小限に抑制することができるので、圧電素子を構成する各層へのクラックの混入や、応力調整層と隣接層との剥離や、基板の反りを抑制し、容易なプロセスにて圧電素子1を製造することができる。
また、Siの除去を前提としたデバイス設計を行うことでより性能の良いデバイスを設計することが可能となる。
本実施形態では、上記のように、Si基板の厚みを変化させて、高誘電率部20aと低誘電率部20bの下地構造体10の厚みを異ならせているが、熱膨張係数調整工程は、下地構造体形成工程において、応力調整層12の真応力により上記クラックや剥離、反りの問題を生じない範囲内において、低誘電率部の下地部分となる応力調整層の厚みが、高誘電率部の下地部分となる応力調整層の厚みよりも厚くなるように応力調整層12を形成する工程であってもよい。かかる態様において、低誘電率部20bの下地部分の応力調整層12の厚みを、高誘電率部20aの下地部分の応力調整層12の厚みよりも厚くする必要がある。応力調整層12の好ましい厚みについても、上記Si基板の除去量と同様、圧電素子において、上記式I及び式IIを満足する厚みとなるように、圧電体膜の組成やその膜厚に応じて設定することが好ましい。
<ドメイン構造形成工程(図2D)>
ドメイン構造形成工程は、圧電体膜20を圧電体膜20のキュリー温度の1/4以上1/2以下の温度に加熱した後室温まで冷却することにより、高誘電率部20aと低誘電率部20bとを形成する工程である。上記熱膨張係数調整工程において、下地構造体の熱膨張係数を調整してあるので、本工程の冷却過程において、高誘電率部20aとなる部分には引張応力が作用し、低誘電率部20bとなる部分には、高誘電率部20aとなる部分に作用する引張応力よりも小さい引張応力、好ましくは、圧縮応力が作用する。その結果、引張応力の作用した部分の圧電体膜においては、正方晶成分はa軸配向しやすく(aドメインになりやすく)、一方、比較的小さい引張応力、あるいは、圧縮応力の作用した部分の圧電体膜においては、正方晶成分はc軸配向が多くなりやすく(cドメインが多くなりやすく)なり、高誘電率部20a及び低誘電率部20bが形成される。
圧電体膜20の加熱温度は圧電体膜20のキュリー温度の1/4以上1/2以下であればよく、より好ましくは1/4以上1/3程度以下である。加熱温度は圧電体にかかる応力との関係で決まるが、概ねキュリー温度1/3程度あれば十分である。さらに1/4以下の温度でも可能であるが、ドメインの変化に時間を要する場合がある。下限としては室温以上であることが好ましい。
なお、ドメイン構造形成工程は、独立した工程として設けずに、パターニング工程時のレジストのベーキングや、エッチング時のプラズマによる加熱など、加熱を要する他の工程に含めて実施されてもよい。
特許文献1や特許文献2等の従来の方法では、ランダム配向の圧電体膜を成膜した後に、圧電体膜をキュリー温度以上に加熱して圧電体膜の結晶構造を立方晶とした後、温度を低下させて、正方晶へ相転移する際に下地と圧電体膜との熱膨張係数差に起因する応力を圧電体膜に作用させることによりa軸配向成分とc軸配向成分の比率を制御しており、圧電体膜をキュリー温度以上に一旦加熱することが必須であると考えられていた。
これに対し、本発明の圧電素子の製造方法では、圧電体膜20をキュリー温度の1/4以上1/2以下という、キュリー温度よりも低い温度での加熱によって、a軸配向成分とc軸配向成分の比率を制御する。かかる温度までの加熱により、a軸配向成分とc軸配向成分の比率を制御するメカニズムについては定かではないが、熱による立方晶から正方晶への相転移を利用せずとも、上記応力を圧電体膜に作用させることにより、応力の方向に応じたドメイン回転を生じたものと推察している。本発明を再現するための応力と温度の関係は、以後で説明する実施例と原理から推察すると、応力調整層の(α3×E3×d3)=Xと圧電体の(α3×E3×d3)=Yの比X/Yが、2倍以上あると好ましい。そのためのそれぞれの材料や厚みを適宜設計することで実現できる。
これによると多くの圧電体において100℃程度の温度で相転移を実現できるため、上記したように、リソグラフィー時のベーキングなどのデバイス化プロセス中にて実現できるため、従来の方法よりも簡便である。
本発明は、これまでの常識を覆し、ドメイン構造形成工程において、圧電体膜のキュリー温度以上の高温での加熱を不要とし、100℃程度のマイルドな加熱条件にて、圧電体膜の正方晶成分の、a軸配向成分とc軸配向成分の比率を制御することに成功したものであり、また、アクチュエータとして好適な高誘電率部と、高誘電率部よりも誘電率の低い低消費電力なセンサとして好適な低誘電率部とを有する圧電体膜を同一基板上に一括形成することを可能にしたものである。
(設計変更)
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、適宜設計変更可能である。例えば、一般的にリラクサ系の圧電材料は圧電定数が高いが、誘電率も高いことが知られている。そのため、センサ用途としては消費電力が大きくという課題があるが、本発明の圧電素子の製造方法において、低誘電率部を作製する方法を適用することにより、誘電率を低下させることができる。
上記実施形態において、圧電素子の各層は、成膜することにより形成する態様について説明したが、各層は膜付形成でも構わないし、接合や張り合わせでも構わない。特に、膜厚が厚くなる場合は、成膜より接合の方が好ましい。
本発明に係る実施例及び比較例について説明する。
(実施例1)
基板として、両面に約0.5μm厚の熱酸化膜が形成された400μm厚のSiウエハSOI基板(6インチφ=約150mmφ)を用意した。
スパッタリング装置を用い、上記基板上の略全面に、基板温度200℃、真空度0.1PaのAr雰囲気の条件で、2μm厚のTi層(応力調整層)と150nm厚のIr下部電極とを順次成膜して下地構造体を形成した。このとき、基板―ターゲット間距離は10cmとし、ターゲットパワー密度は7.5W/cmであった。
続いて、下地構造体上に、真空度0.5PaのAr/O混合雰囲気(O体積分率3.0%)の条件で、Pb1.3(Zr0.52Ti0.480.88Nb0.12ターゲットを用いて、2μm厚のNbドープPZT圧電体膜を成膜した。成膜直後(asdepo状態)のNbドープPZT膜の結晶構造をX線回折(XRD)にて観測したところ(100)配向(a軸配向)のペロブスカイト構造であった。また、(200)方位のXRDピークを調べたところ、44.4°付近のNbドープPZTの菱面体晶あるいは正方晶のa軸からの回折ピークが強く観測されている(図4)。膜の断面SEM(走査型電子顕微鏡)像を観察したところ、柱状構造膜であることがわかった。
次いで、NbドープPZT膜上に、上部電極をアクチュエータ部とセンサ部それぞれの役割でパターン形成した。
この膜のキュリー温度を測定すると約330度であった。
次に、圧電体膜においてセンサ部(低誘電率部)となる部分の下地構造体を、裏面側からドライエッチングによりSi基板をすべてエッチングした。すなわち、センサ部は熱酸化膜とTiの応力制御層、下部電極とその上の圧電体からなる。さらにカンチレバー構造になるようにダイシングし、評価用圧電素子を作製した。得られた素子を100度付近で10分間加熱した後、室温まで自然放冷した。
室温まで放冷された圧電体膜について、アクチュエータ部をXRD(X線回折)測定したところ、(100)方向に配向していた。圧電体膜の組成から、アクチュエータ部の圧電体膜は、正方晶のa軸あるいは菱面体構造の(100)配向であると推察される。一部正方晶のc軸も含まれている可能性もある。また、アクチュエータ部の圧電体膜の誘電率は1200程度であった。また、配向度は90%以上であった。
一方で、センサ部は(100)方向に配向しているものの、(200)方位のXRDピークは、44.1°付近にピークが低角度側にシフトしており、c軸配向((001)配向)のものが含まれていると推察された(図4)。誘電率は850程度であった。この時のε/εは約1.5である。上記低角度側へのシフトは結晶構造のすべてが変化したかどうかは不明であるが、本発明によって、何らかの構造変化を引き出すことが明確になった。
得られたカンチレバーの端部を固定して、アクチュエータ部には下部電極を接地電位とし、上部電極にマイナスの電圧を印加して200Hzで駆動した。駆動に伴い、センサ部からは良好な出力電圧が観測された。
本実施例では100度10分の加熱で行ったが、70度であれば本発明の効果を十分に発現させるためには約30分程度必要となる。室温であればさらに長い時間が必要となる。また、より高い温度の150度の加熱であれば、7分程度の時間が必要である。工業的には、長時間の加熱はコストアップにつながるので、10分、100度の加熱、すなわちキュリー温度の1/3程度での処理が適切であると考えられた。
実施例では、発明の効果を調べるために簡便な構造で検証を行ったが、マイクロミラーであればアクチュエータ部とセンサ部を分けて効率よくデバイスを作ることができる。
あるいは、圧電発電のようなモノであればセンサ部はそのまま発電部となり、効率よい構造を設計することができる。
(比較例1)
圧電体膜においてセンサ部となる部分の下地構造体を、裏面側から除去しなかった以外は実施例と同様にして圧電素子を作製した。得られた圧電体膜はアクチュエータ部もセンサ部も同じであり、誘電率は1200程度であった。カンチレバーを作製し同様に駆動させたところ、出力電圧は実施例と比較して小さかった。
(比較例2)
圧電体膜成膜工程において、実施例1よりも成膜温度を30℃高くした以外は実施例1と同様にして圧電素子を作製した。得られた膜の配向度は60%未満であり、XRDからは、(100)方向と(110)方向、さらには(111)方向のピークが観測された。得られた膜の誘電率を測定したところ、アクチュエータ部で約1350、センサ部で約1250であり、ε/εは1.1以下であった。
本発明の圧電素子は、振動式ジャイロセンサやエナジーハーベスト(発電素子)、これらのMEMS(Micro Electro-Mechanical Systems)デバイス等に好ましく利用できる。
1 圧電素子
10 下地構造体
11 基板
12 応力調整層
13 下部電極
20 圧電体膜(柱状構造膜)
20a 高誘電率部
20b 低誘電率部
30 上部電極

Claims (16)

  1. Si基板上に、正方晶成分を含み、且つ、配向度60%以上の結晶配向性を有する均一組成の柱状構造膜からなり、該柱状構造膜が前記正方晶成分中のa軸配向成分がc軸配向成分に比して多い高誘電率部と、該高誘電率部に比して前記正方晶成分中のc軸配向成分が多い低誘電率部とを有する圧電体膜を備えた圧電素子の製造方法であって、
    前記Si基板を用意し、
    該Si基板の一表面上に前記圧電体膜より熱膨張係数の大きい応力調整層と下部電極とを順次備えた下地構造体を形成する下地構造体形成工程と、
    該下地構造体上に、前記柱状構造膜を成膜する圧電体膜成膜工程と、
    前記下地構造体の熱膨張係数を前記高誘電率部と前記低誘電率部とで異ならせる熱膨張係数調整工程と、
    前記圧電体膜を、該圧電体膜のキュリー温度の1/4以上1/2以下の温度に加熱した後室温まで冷却するドメイン構造形成工程とを有する圧電素子の製造方法。
  2. 前記ドメイン構造形成工程において、前記圧電体膜を前記キュリー温度の1/4以上1/3以下の温度に加熱した後室温まで冷却する請求項1記載の圧電素子の製造方法。
  3. 前記熱膨張係数調整工程が、前記圧電体膜成膜工程後に、前記Si基板の裏面から、前記低誘電率部の下地となる部分の前記Si基板をエッチングにより厚み方向に途中まで除去する工程である請求項1又は2記載の圧電素子の製造方法。
  4. 前記熱膨張係数調整工程が、前記下地構造体形成工程において、前記低誘電率部の下地部分となる前記応力調整層の厚みが、前記高誘電率部の下地部分となる前記厚みよりも厚くなるように前記応力調整層を形成する工程である請求項1又は2記載の圧電素子の製造方法。
  5. 前記圧電体膜,該圧電体膜の下地部分の前記Si基板,前記圧電体膜の下地部分の前記応力調整層の熱膨張係数をそれぞれα1,α2,α3とし、前記圧電体膜,前記Si基板,前記応力調整層のヤング率をそれぞれE1,E2,E3とし、前記圧電体膜,前記Si基板,前記応力調整層の厚みをそれぞれd1,d2,d3とした時、
    前記低誘電率部は、α3×E3×d3―α2×E2×d2≧α1×E1×d1を満足し、
    前記高誘電率部は、α3×E3×d3―α2×E2×d2<α1×E1×d1を満足する請求項1〜4いずれか1項記載の圧電素子の製造方法。
  6. 前記圧電体膜が、下記一般式(P)で表されるペロブスカイト型酸化物を主成分とする請求項1〜5いずれか1項記載の圧電素子の製造方法。
    (Zr,Ti,Mb−x−y・・・(P)、
    但し、式中、A:Aサイトの元素であり、Pbを含む少なくとも1種の元素、Mは1種又は2種以上の金属元素を示す。0<x<b、0<y<b、0≦b−x−yであり、a:b:c=1:1:3が標準であるが、これらのモル比はペロブスカイト構造を取り得る範囲内で標準値からずれてもよい。
  7. 前記応力調整層がTi又はステンレス鋼を主成分とする請求項1〜6いずれか1項記載の圧電素子の製造方法。
  8. Si基板と、該Si基板の一表面上の少なくとも一部に形成されてなる応力調整層と、下部電極とを順次備えた下地構造体上に、ペロブスカイト型の結晶構造を有する圧電体膜と、上部電極とを順次備えた圧電素子であって、
    前記応力調整層は、前記圧電体膜より大きな熱膨張係数を有してなり、
    前記圧電体膜は、正方晶成分を含み、且つ、配向度60%以上の結晶配向性を有する均一組成の柱状構造膜であり、
    該柱状構造膜は、前記正方晶成分中のa軸配向成分がc軸配向成分に比して多い高誘電率部と、
    該高誘電率部に比して前記正方晶成分中のc軸配向成分が多い低誘電率部とを有する圧電素子。
  9. 前記低誘電率部の下地部分の前記下地構造体の厚みと、前記高誘電率部の下地部分の前記下地構造体の厚みが異なっている請求項8記載の圧電素子。
  10. 前記低誘電率部の下地部分の前記Si基板の厚みが、前記高誘電率部の下地部分の前記Si基板の厚みよりも薄い請求項記載の圧電素子。
  11. 前記低誘電率部の下地部分の前記応力調整層の厚みが、前記高誘電率部の下地部分の前記応力調整層の厚みよりも厚い請求項記載の圧電素子。
  12. 前記圧電体膜,該圧電体膜の下地部分の前記Si基板,前記圧電体膜の下地部分の前記応力調整層の熱膨張係数をそれぞれα1,α2,α3とし、前記圧電体膜,前記Si基板,前記応力調整層のヤング率をそれぞれE1,E2,E3とし、前記圧電体膜,前記Si基板,前記応力調整層の厚みをそれぞれd1,d2,d3とした時、
    前記低誘電率部は、α3×E3×d3―α2×E2×d2≧α1×E1×d1を満足し、
    前記高誘電率部は、α3×E3×d3―α2×E2×d2<α1×E1×d1を満足する請求項8〜11いずれか1項記載の圧電素子。
  13. 前記圧電体膜が、下記一般式(P)で表されるペロブスカイト型酸化物を主成分とする請求項8〜12いずれか1項記載の圧電素子。
    (Zr,Ti,Mb−x−y・・・(P)、
    但し、式中、A:Aサイトの元素であり、Pbを含む少なくとも1種の元素、Mは1種又は2種以上の金属元素を示す。0<x<b、0<y<b、0≦b−x−yであり、a:b:c=1:1:3が標準であるが、これらのモル比はペロブスカイト構造を取り得る範囲内で標準値からずれてもよい。
  14. 前記応力調整層がTi又はステンレス鋼を主成分とする請求項8〜13いずれか1項記載の圧電素子。
  15. 前記圧電体膜が非エピタキシャル膜である請求項8〜14いずれか1項記載の圧電素子。
  16. 前記高誘電率部がアクチュエータ部であり、前記低誘電率部がセンサ部である請求項8〜15いずれか1項記載の圧電素子。
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