JP6308179B2 - 静電潜像現像用トナー - Google Patents
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Description
本発明に係るトナー母体粒子は、主成分としてのビニル樹脂および結晶性樹脂を含む樹脂成分を含有するものである。また、トナー母体粒子は、離型剤を含み、その他必要に応じて、着色剤、磁性粉、荷電制御剤などの他のトナー構成成分を含有してもよい。
本発明に係るトナー母体粒子は、主成分としてのビニル樹脂および結晶性樹脂を含む樹脂成分を含む。
ビニル樹脂とは、少なくともビニル単量体を用いた重合により得られる樹脂である。ビニル樹脂として、具体的には、アクリル樹脂、スチレンアクリル共重合体樹脂などが挙げられる。また、ビニル樹脂ユニットとビニル樹脂以外の樹脂ユニット(例えば非晶性ポリエステル樹脂ユニット)とが化学的に結合したハイブリッド樹脂を含んでもよい。
(1)スチレン単量体
スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレンおよびこれらの誘導体など。
(2)(メタ)アクリル酸エステル単量体
(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルおよびこれらの誘導体など。
(3)ビニルエステル類
プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、ベンゾエ酸ビニルなど。
(4)ビニルエーテル類
ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテルなど。
(5)ビニルケトン類
ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルヘキシルケトンなど。
(6)N−ビニル化合物類
N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドンなど。
(7)その他
ビニルナフタレン、ビニルピリジンなどのビニル化合物類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミドなどのアクリル酸あるいはメタクリル酸誘導体など。
結晶性樹脂としては、結晶性を有する樹脂であれば特に制限はなく、本技術分野における従来公知の結晶性樹脂を用いることができる。その具体例としては、結晶性ポリエステル樹脂、結晶性ポリウレタン樹脂、結晶性ポリウレア樹脂、結晶性ポリアミド樹脂、結晶性ポリエーテル樹脂等が挙げられる。結晶性樹脂は、単独でもまたは2種以上組み合わせても用いることができる。
本発明のトナー母体粒子は離型剤を含む。離型剤の具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等の低分子量ポリオレフィン類、加熱により軟化点を示すシリコーン類;オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、ステアリン酸アミド等の脂肪酸アミド類;カルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、木ロウ、ホホバ油等の植物系ワックス;ミツロウ等の動物系ワックス;パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の炭化水素ワックス類、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル、ステアリン酸ブチル、オレイン酸プロピル、モノステアリン酸グリセリド、ジステアリン酸グリセリド、ペンタエリスリトールテトラベヘン酸エステル、ジエチレングリコールモノステアレート、ジプロピレングリコールジステアレート、ジステアリン酸ジグリセリド、ソルビタンモノステアレート、コレステリルステアレート等のエステルワックス類などを挙げることができる。これら離型剤は、1種単独でもまたは2種以上を組み合わせても用いることができる。
本発明においては、トナー母体粒子の断面に、結晶性樹脂と離型剤とが接触している構造体と、離型剤と接触していない糸状構造を有する結晶性樹脂とを含む点に特徴の1つがある。ここで、結晶性樹脂と離型剤とが一点でも接触して存在しているものであれば、本発明に係る「構造体」に包含され、結晶性樹脂と離型剤との複合体を意味する。また、「糸状構造」とは、結晶性樹脂が分子鎖の折り畳みにより結晶化することなく形成された構造であって、一本または数本の分子鎖からなる糸状の構造を意味する。
・観察条件
装置:透過型電子顕微鏡「JEM−2000FX」(日本電子株式会社製)
試料:四酸化ルテニウム(RuO4)によって染色したトナー母体粒子の切片(切片の厚さ:60〜100nm)
加速電圧:80kV
倍率:50000倍、明視野像。
作製したトナーを3質量部、ポリオキシエチルフェニルエーテルの0.2%水溶液35質量部に添加して分散させた後、超音波(株式会社日本精機製作所製、US−1200T)により25℃で5分間処理を行い、外添剤をトナー表面から取り除き、TEM観察用のトナー母体粒子を得る。
染色は、真空電子染色装置VSC1R1(フィルジェン株式会社製)を用いて行う。装置手順に従い、染色装置本体に四酸化ルテニウムが入った昇華室を設置し、作製した上記超薄切片を染色チャンバー内に導入後、四酸化ルテニウムによる染色条件として、室温(24〜25℃)、濃度3(300Pa)、時間10分の条件下で染色する。
染色後、24時間以内に透過型電子顕微鏡「JEM−2000FX」(日本電子株式会社製)を用いて二次電子像にて観察する。
構造体の形状は特に制限はない。しかしながら、構造体の平均ドメイン径は、150nm〜3000nmであることが好ましく、200nm〜2500nmであることがより好ましく、200nm〜2000nmであることがさらに好ましい。構造体の平均ドメイン径が小さいと、離型剤の染み出しの制御性が弱まる傾向があるため、好ましくは150nm以上、より好ましくは200nm以上であると離型剤の染み出しを制御する効果がより発揮されると考えられる。一方、構造体の平均ドメイン径が大きくなりすぎると、低温定着性を阻害する傾向があるため、低温定着性を確保するには、3000nm以下であることが好ましく、2500nm以下であることがより好ましく、2000nm以下であることがさらに好ましい。構造体の平均ドメイン径は、例えば、離型剤の添加量や結晶性樹脂の組成等で制御することができる。例えば、離型剤の添加量を増やすと構造体の平均ドメイン径は大きくなる傾向がある。
糸状構造のドメインの平均長径は、100nm〜2500nmであることが好ましく、200nm〜2000nmであることがより好ましく、200nm〜1000nmであることがさらに好ましい。また、糸状構造のドメインの平均短径は、5nm〜1500nmであることが好ましく、10nm〜1000nmであることがより好ましく、10nm〜500nmであることがさらに好ましい。糸状構造が大きくなりすぎると、定着時の溶融速度が遅くなることで周囲のビニル樹脂との相溶速度が遅くなり、低温定着性の向上効果が弱まる傾向があるとともに、記録媒体の凹凸に沿ってトナーが変形しにくくなる傾向がある。よって、平均長径としては2500nm以下であることが好ましく、2000nm以下であることがより好ましく、1000nm以下であることがさらに好ましい。また、平均短径としては1500nm以下であることが好ましく、1000nm以下であることがより好ましく、500nm以下であることがさらに好ましい。一方、糸状構造が小さくなりすぎると、定着時の離型剤の染み出しが過剰になり、光沢度がばらつきやすくなる傾向があるとともに、室温でも可塑化が進みやすくトナーの保管性が低下する傾向がある。よって、平均長径としては100nm以上であることで、また平均短径としては5nm以上であることで離型剤の染み出しが過剰になることを抑制できると考えられる。
構造体および糸状構造の大きさ(ドメイン径、平均長径、平均短径)は、TEMを用いて観察した画像を市販の画像処理ソフトを利用して算出することができる。
トナー母体粒子の断面積に対する構造体の断面積の比率をA、トナー母体粒子の断面積に対する糸状構造の断面積の比率をB、トナー母体粒子の断面積に対する構造体を形成していない離型剤の断面積の比率をCとした際に、A/(A+B+C)が0.3〜0.75であることが好ましく、0.35〜0.65であることがより好ましい。A/(A+B+C)がこの範囲であれば、結晶性樹脂とビニル樹脂との相溶が素早くなり、低温定着性がより向上するとともに、記録媒体への凹凸への追随性がより向上する。また、離型剤の過剰な染み出しを抑制することができ、記録媒体の種類による光沢差が顕著になりにくく、記録媒体への追随性がより向上する。
本発明に係るトナーにおいて、トナー母体粒子は着色剤を含んでもよい。着色剤の例としては、カーボンブラック、黒色酸化鉄、染料、顔料等が挙げられる。
本発明に係るトナー母体粒子は荷電制御剤を含んでもよい。荷電制御剤の例としては、例えば、サリチル酸誘導体の亜鉛やアルミニウムによる金属錯体(サリチル酸金属錯体)、カリックスアレーン化合物、有機ホウ素化合物、および含フッ素4級アンモニウム塩化合物などを挙げることができる。
本発明に係るトナー母体粒子は、そのままトナー粒子として使用することが可能であるが、トナーとしての帯電性能や流動性、またはクリーニング性を向上させる観点から、その表面に公知の無機微粒子や有機微粒子などの粒子、滑剤等を外添剤として添加することが好ましい。外添剤としては種々のものを組み合わせて使用してもよい。粒子としては、例えば、シリカ微粒子、アルミナ微粒子およびチタニア微粒子などの無機酸化物微粒子や、ステアリン酸アルミニウム微粒子、ステアリン酸亜鉛微粒子などの無機ステアリン酸化合物微粒子、またはチタン酸ストロンチウム微粒子、チタン酸亜鉛微粒子などの無機チタン酸化合物微粒子などが挙げられる。また、滑剤としては、ステアリン酸の亜鉛、アルミニウム、銅、マグネシウム、カルシウム等の塩、オレイン酸の亜鉛、マンガン、鉄、銅、マグネシウム等の塩、パルミチン酸の亜鉛、銅、マグネシウム、カルシウム等の塩、リノール酸の亜鉛、カルシウム等の塩、リシノール酸の亜鉛、カルシウム等の塩等の高級脂肪酸の金属塩が挙げられる。これら外添剤は、耐熱保管性および環境安定性の観点から、シランカップリング剤やチタンカップリング剤、高級脂肪酸またはシリコーンオイルなどによって表面処理が行われたものであってもよい。
本発明に係るトナーにおいては、このトナーを構成する個々のトナー粒子について、帯電特性の安定性、低温定着性の観点から、平均円形度が0.920〜1.000であることが好ましく、0.950〜0.995であることがより好ましい。平均円形度が上記の範囲であることにより、個々のトナー粒子が破砕しにくくなって摩擦帯電付与部材の汚染が抑制されてトナーの帯電性が安定し、また、形成される画像において画質が高いものとなる。トナーの平均円形度は、「FPIA−2100」(Sysmex社製)を用いて測定した値である。具体的には、測定試料(トナー)を界面活性剤入り水溶液にてなじませ、超音波分散処理を1分間行って分散させた後、「FPIA−2100」(Sysmex社製)によって、測定条件HPF(高倍率撮像)モードにて、HPF検出数3,000〜10,000個の適正濃度で撮影を行い、個々のトナー粒子について下記式に従って円形度を算出し、各トナー粒子の円形度を加算し、全トナー粒子数で除することにより算出した値である。HPF検出数が上記の範囲であれば、再現性が得られる。
<トナー>
本発明のトナーの体積基準のメジアン径(体積平均粒径)は、好ましくは3〜10μm、より好ましくは4〜8μmである。この範囲であることにより、細線の再現性や、写真画像の高画質化が達成できると共に、トナーの消費量を、大粒径トナーを用いた場合に比して削減することができる。また、トナー流動性も確保できる。トナーの体積平均粒径は、後述のトナーの製造時の凝集・融着工程における凝集剤の濃度や溶剤の添加量、または融着時間、さらには樹脂成分の組成等によって制御することができる。トナーの体積基準のメジアン径は、例えば、「Multisizer3」(ベックマン・コールター株式会社製)により測定できる。
本発明のトナーを製造する方法としては、例えば、粉砕法、ミニエマルション法、乳化凝集法、その他の公知の方法などを挙げることができる。しかしながら、上述したような本発明に特徴的な「トナー母体粒子の断面に、結晶性樹脂と離型剤とが接触している構造体と、離型剤とは接触していない糸状構造を有する結晶性樹脂とが存在する」という構成を実現するための製造方法としては、トナー母体粒子の粒径や形状制御を行った後に冷却する工程を有する製造方法であることが好ましい。
上述したように、乳化凝集法は、界面活性剤や分散安定剤によって分散された樹脂粒子の分散液を、必要に応じて着色剤粒子などのトナー母体粒子の構成成分の分散液と混合し、凝集剤を添加することによって所望の粒径となるまで凝集させ、その後または凝集と同時に、樹脂微粒子間の融着を行い、形状制御を行うことにより、トナー母体粒子を形成する方法である。
(b)水系媒体中で、離型剤を含有するビニル樹脂粒子を含む分散液を調製する工程
(c)水系媒体中で、着色剤粒子の分散液を調製する工程
(d)前記結晶性ポリエステル樹脂粒子の分散液と、前記離型剤含有ビニル樹脂粒子の分散液と、前記着色剤粒子の分散液とを混合し、当該結晶性ポリエステル樹脂粒子と、当該離型剤含有ビニル樹脂粒子と、当該着色剤粒子とを凝集、融着する工程
(e)熱エネルギーにより熟成させて、トナー母体粒子の形状を調整する熟成工程
(f)トナー母体粒子の分散液を冷却する冷却工程
上記(f)の工程の後、さらに、(g)トナー母体粒子の水系分散液からトナー母体粒子を濾別し、当該トナー母体粒子から界面活性剤などを除去する洗浄し、洗浄処理されたトナー母体粒子を乾燥する洗浄、乾燥工程、(h)乾燥処理されたトナー母体粒子に外添剤を添加する外添剤処理工程、等を必要に応じて行うことで、トナー粒子を製造することができる。
本工程は、下記工程を含んで構成されることが好ましい:
(A−1)結晶性ポリエステル樹脂合成工程
(A−2)結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液調製工程。
結晶性ポリエステル樹脂の製造方法としては、特に制限はなく、多価カルボン酸および多価アルコールを反応させる一般的なポリエステル重合法で製造することができ、例えば、直接重縮合、エステル交換法等を、モノマーの種類によって使い分けて製造する。結晶性ポリエステル樹脂の製造の際に使用可能な触媒としては、ナトリウム、リチウム等のアルカリ金属化合物;マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属化合物;亜鉛、マンガン、アンチモン、チタン、スズ、ジルコニウム、ゲルマニウム等の金属化合物;亜リン酸化合物、リン酸化合物、およびアミン化合物等が挙げられ、具体的には、以下の化合物が挙げられる。例えば、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、酢酸リチウム、炭酸リチウム、酢酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、酢酸マグネシウム、酢酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、塩化亜鉛、酢酸マンガン、ナフテン酸マンガン、チタンテトラエトキシド、チタンテトラプロポキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキサイド、三酸化アンチモン、トリフェニルアンチモン、トリブチルアンチモン、ギ酸スズ、シュウ酸スズ、テトラフェニルスズ、ジブチルスズジクロライド、ジブチルスズオキシド、ジフェニルスズオキシド、ジルコニウムテトラブトキシド、ナフテン酸ジルコニウム、炭酸ジルコニール、酢酸ジルコニール、ステアリン酸ジルコニール、オクチル酸ジルコニール、酸化ゲルマニウム、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4−t−ブチルフェニル)ホスファイト、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、トリエチルアミン、トリフェニルアミン、ハイドロキノン等の化合物が挙げられる。
結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液調製工程は、上記で合成した結晶性ポリエステル樹脂を水系媒体中に微粒子状に分散させて結晶性ポリエステル樹脂粒子の分散液を調製する工程である。
本工程は、トナー母体粒子を構成するビニル樹脂を合成し、このビニル樹脂を水系媒体中に粒子状に分散させ、さらに離型剤を添加してビニル樹脂粒子の分散液を調製する工程である。
着色剤粒子分散液調製工程は、着色剤を水系媒体中に粒子状に分散させて着色剤粒子の分散液を調製する工程である。着色剤の分散処理は、着色剤が均一に分散されることから、水系媒体中において界面活性剤濃度を臨界ミセル濃度(CMC)以上にした状態で行われることが好ましい。
この凝集・融着工程は、水系媒体中で前述の結晶性ポリエステル樹脂粒子、離型剤含有ビニル樹脂粒子と、および必要に応じて着色剤粒子、荷電制御剤、その他トナー母体粒子の構成成分を凝集させ、凝集させると同時にこれら粒子を融着させてトナー母体粒子を得る工程である。
上記の凝集・融着工程における加熱温度の制御により、ある程度トナーにおけるトナー母体粒子の形状の均一化を図ることができるが、さらなる形状の均一化を図るために、熟成工程を経ることが好ましい。この熟成工程は、加熱温度および加熱時間の制御を行うことにより、粒径が一定で分布が狭く形成したトナー母体粒子の表面が、平滑で均一な形状を有するものとなるよう制御する。具体的には、凝集・融着工程において加熱温度を低めにして樹脂粒子同士の融着の進行を抑制させて均一化を促進させ、この熟成工程においても加熱温度を低めに、かつ、時間を長くしてトナー母体粒子を所望の平均円形度となる、すなわち表面が均一な形状のものとなるよう制御する。上記したように、該平均円形度は、好ましくは0.920〜1.000である。
トナー母体粒子が所望の平均円形度となった後、分散液の冷却を行う。この際、冷却条件を制御することで、それぞれのトナー母体粒子を構成する材料のトナー母体粒子中での存在状態(例えば、各材料のドメイン径や形状、存在位置等)が変化する。冷却速度を遅くすると、例えば、結晶化物質の凝集が促進され、結晶成長をすることが起こり得る。一方、冷却速度を速くすると、例えば、結晶化物質の凝集が抑制され、結晶化が促進せずに熟成工程での構造を保ったままになる傾向がある。上述したように、本発明の特徴である構造体と糸状構造との共存状態を作りやすくなる降温速度の目安としては8℃/分以上が好ましい。
洗浄・乾燥工程は、公知の種々の方法を採用して行うことができる。すなわち、上記熟成工程にて所望の平均円形度まで熟成し、冷却した後、例えば遠心分離機などの公知の装置を用いて、固液分離し洗浄を行う。洗浄処理は、濾液の電気伝導度が、例えば5〜10μS/cmレベルになるまで水洗処理を行うものである。
この外添剤処理工程は、乾燥処理したトナー母体粒子に必要に応じて外添剤を添加、混合することにより、トナー粒子を調製する工程である。外添剤の種類や好ましい添加量は上述したとおりであるため、ここでは説明を省略する。外添剤の添加方法としては、乾燥されたトナー母体粒子に外添剤を粉体で添加する乾式法が挙げられ、混合装置としては、ヘンシェルミキサー、コーヒーミル等の機械式の混合装置が挙げられる。
本発明のトナーは、磁性または非磁性の一成分現像剤として使用することもできるが、キャリアと混合して二成分現像剤として使用してもよい。トナーを二成分現像剤として使用する場合において、キャリアとしては、鉄、フェライト、マグネタイトなどの金属、それらの金属とアルミニウム、鉛などの金属との合金などの従来から公知の材料からなる磁性粒子を用いることができ、特にフェライト粒子が好ましい。また、キャリアとしては、磁性粒子の表面を樹脂などの被覆剤で被覆したコートキャリアや、バインダー樹脂中に磁性体微粉末を分散してなる分散型キャリアなど用いてもよい。
本発明に係る静電潜像現像用トナーおよび現像剤は、電子写真方式の公知の種々の画像形成方法において用いることができる。例えば、モノクロの画像形成方法やフルカラーの画像形成方法に用いることができる。フルカラーの画像形成方法では、イエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックの各々に係る4種類のカラー現像装置と、一つの静電潜像担持体(「電子写真感光体」または単に「感光体」とも称する)とにより構成される4サイクル方式の画像形成方法や、各色に係るカラー現像装置および静電潜像担持体を有する画像形成ユニットを、それぞれ色別に搭載するタンデム方式の画像形成方法など、いずれの画像形成方法も用いることができる。
<結晶性樹脂(結晶性ポリエステル樹脂)(c−1)の作製>
エチレングリコール 45質量部、1,4−ブタンジオール 135質量部、およびアジピン酸 330質量部を三つ口フラスコに入れ、触媒としてジブチルスズオキシド 0.7質量部、およびハイドロキノン 0.4質量部を加えて、窒素ガス雰囲気下、160℃で5時間反応させた。さらに、8.3kPaにて所望の融点の樹脂が得られるまで160℃で反応させて結晶性樹脂(c−1)を得た。この結晶性樹脂(c−1)をDSCにて昇温速度10℃/分で測定したところ、明確なピークを有し、ピークトップの温度は78℃であり、ピークの半値幅は10℃であった。また、結晶性樹脂(c−1)の重量平均分子量は、24800であった。
添加した多価カルボン酸および多価アルコールの種類および量を下記表1のように変更したこと以外は、上記<結晶性樹脂(c−1)の作製>と同様にして結晶性樹脂(c−2)〜(c−10)を作製した。
テレフタル酸 167.1質量部、ネオペンチルグリコール 106.2質量部、およびテトラブチルチタネート 0.4質量部を、攪拌機、温度計、および流出用冷却機を備えた反応装置に入れ、190℃で5時間エステル化反応を行った。その後、220℃に昇温すると共に系内を徐々に減圧し、150Paで2時間重縮合反応を行った。一旦常圧に戻した後、安息香酸 24.4質量部とトリメリット酸 6.3質量部とを添加し、さらに220℃で5時間反応させて結晶性樹脂(c−11)を得た。結晶性樹脂(c−11)の融点は69℃、重量平均分子量(Mw)は、1800であった。
<非晶性ポリエステル樹脂(a−1)の作製>
冷却管、攪拌機および窒素導入管を備えた反応槽中に、ビスフェノールAプロピレンオキシド2モル付加物 530質量部、テレフタル酸 145質量部、フマル酸 85質量部、および重縮合触媒としてチタンテトライソプロポキシド3質量部を15回に分割して入れ、200℃で窒素気流下に生成する水を留去しながら12時間反応させた。次いで、13.3kPa(100mmHg)の減圧下に反応させ、軟化点が105℃になった時点で取り出し、非晶性ポリエステル樹脂(a−1)を得た。
多価カルボン酸および多価アルコールの種類と量を、下記のように変更したこと以外は、上記<非晶性ポリエステル樹脂(a−1)の作製>と同様にして、非晶性ポリエステル樹脂(a−2)を作製した:
ビスフェノールAプロピレンオキシド2モル付加物 86質量部
エチレングリコール 65質量部
テレフタル酸 141質量部
トリメリット酸 29質量部。
<結晶性樹脂(結晶性ポリエステル樹脂)粒子分散液(CD−1)の作製>
結晶性樹脂(c−1)を300質量部溶融させて溶融状態のまま、乳化分散機「キャビトロンCD1010」(株式会社ユーロテック製)に対して毎分100質量部の移送速度で移送した。また、この溶融状態の結晶性樹脂(c−1)の移送と同時に、当該乳化分散機に対して、水性溶媒タンクにおいて試薬アンモニア水をイオン交換水で希釈した濃度0.37質量%の希アンモニア水を、熱交換機で100℃に加熱しながら毎分0.1リットルの移送速度で移送した。そして、この乳化分散機を、回転子の回転速度60Hz、圧力5kg/cm2の条件で運転することにより、結晶性樹脂粒子分散液(CD−1)を調製した。なお、希アンモニア水は中和度が48%になるように添加した。結晶性樹脂粒子分散液(CD−1)中の結晶性樹脂粒子の分散径は、体積基準のメジアン径で180nmであった。
結晶性樹脂の種類および中和度を下記表2のように変更したこと以外は、上記<結晶性樹脂粒子分散液(CD−1)の作製>と同様にして、結晶性樹脂粒子分散液(C−2)〜(C−15)を作製した。
攪拌装置、温度センサー、冷却管、および窒素導入装置を取り付けた反応容器に、ドデシル硫酸ナトリウム 0.65質量部をイオン交換水 95質量部に溶解させた溶液を仕込み、窒素気流下230rpmの攪拌速度で攪拌しながら内温を80℃に昇温させた。昇温後、過硫酸カリウム 0.47質量部をイオン交換水 18質量部に溶解させた溶液を添加し、再度液温を80℃とし、下記モノマー混合液1を1時間かけて滴下後、80℃で2時間加熱後、攪拌することにより重合を行い、樹脂粒子〔1H〕を調製した:
<モノマー混合液1>
スチレン 30質量部
アクリル酸n−ブチル 7質量部
メタクリル酸 2質量部。
<モノマー混合液2>
スチレン 280質量部
アクリル酸n−ブチル 78質量部
n−オクチル−3−メルカプトプロピオネート 5.5質量部。
スチレン 205質量部
アクリル酸n−ブチル 100質量部
メタクリル酸 18質量部
n−オクチル−3−メルカプトプロピオネート 4.4質量部
からなるモノマー混合液を1時間かけて滴下した。滴下終了後、2時間にわたって加熱攪拌することにより重合を行った後、28℃まで冷却して、離型剤とビニル樹脂粒子とを含有するビニル樹脂粒子分散液(VD−1)を得た。
ビニル樹脂粒子分散液(VD−1)の作製方法において、添加する離型剤の種類と量を下記表3のように変更したこと以外は、上記<ビニル樹脂粒子分散液(VD−1)の作製>と同様にして、ビニル樹脂粒子分散液(VD−2)〜(VD−27)を作製した。なお、W−3およびW−4は下記の離型剤である。
W−4:炭化水素ワックス(マイクロクリスタリンワックス、n−パラフィン率77%、分子量分布:41、融点:83℃)。
上記で作製した非晶性ポリエステル樹脂(a−1)600質量部を、「ランデルミル 形式:RM」(株式会社徳寿工作所製)で粉砕した。その後、あらかじめ作製した0.26質量%のラウリル硫酸ナトリウム溶液 1800質量部と混合し、攪拌しながら超音波ホモジナイザー「US−150T」(株式会社日本精機製作所製)を用いて、V−LEVEL、300μAで150分間超音波分散し、非晶性ポリエステル樹脂(a−1)が分散された非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(AD−1)を作製した。
ドデシル硫酸ナトリウム 90質量部をイオン交換水 1600質量部に攪拌溶解した。この溶液を攪拌しながら、カーボンブラック「リーガル(登録商標)330R」(キャボット社製)420質量部を徐々に添加し、次いで、攪拌装置「クレアミックス(登録商標)」(エム・テクニック株式会社製)を用いて分散処理することにより、着色剤粒子を分散して有する着色剤粒子分散液を調製した。この分散液中の着色剤粒子の分散径を、マイクロトラックUPA−150(日機装株式会社製)を用いて測定したところ、体積基準のメジアン径で117nmであった。
<トナー1の作製>
(凝集・融着工程)
攪拌装置、冷却管、および温度センサーを備えた5リットルのステンレス製反応器に、「結晶性樹脂粒子分散液(CD−1)」を46質量部(固形分換算)、「ビニル樹脂粒子分散液(VD−1)」を454質量部(固形分換算)、および「着色剤粒子分散液」を40質量部(固形分換算)投入し、さらにイオン交換水 380質量部を投入して、攪拌しながら5(モル/リットル)の水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを10に調整した。次いで、攪拌下、塩化マグネシウム・六水和物 40質量部をイオン交換水 40質量部に溶解した塩化マグネシウム水溶液を10分間かけて滴下した。内温を75℃まで昇温させ、Multisizer 3(ベックマン・コールター株式会社製、アパチャー径;50μm)を用いて粒径を測定し、体積基準のメジアン径で6.0μmに到達した時点で、塩化ナトリウム 160質量部をイオン交換水 640質量部に溶解させた塩化ナトリウム水溶液を加えた。さらに、加熱攪拌を続けてフロー式粒子像測定装置「FPIA−2100」(シスメックス株式会社製)を用い、平均円形度が0.960になった時点で10℃/分の冷却速度で内温を25℃まで冷却し、「トナー母体粒子1」の分散液を得た。
凝集・融着工程にて生成したトナー母体粒子1の分散液を、バスケット型遠心分離機を用いて、固液分離し、トナー母体粒子のウェットケーキを形成した。このウェットケーキを、上記バスケット型遠心分離機で濾液の電気伝導度が5μS/cmになるまで35℃のイオン交換水で洗浄し、その後「フラッシュジェットドライヤー(株式会社セイシン企業製)」に移し、水分量が0.5質量%となるまで乾燥して「トナー母体粒子1」を作製した。
上記の「トナー母体粒子1」100質量部に対して、疎水性シリカ(数平均一次粒子径=12nm)1質量部および疎水性チタニア(数平均一次粒子径=20nm)0.3質量部を添加し、ヘンシェルミキサーにより混合して、トナー1を作製した。
添加する結晶性樹脂分散液(CD−1)、およびビニル樹脂粒子分散液(VD−1)の種類と量を下記表4のように変更したこと以外は、上記<トナー1の作製>と同様にしてトナー2〜トナー30を作製した。なお、トナー23は、樹脂成分として、結晶性樹脂、ビニル樹脂、および非晶性ポリエステル樹脂を含有するトナーである。また、トナー28は、結晶性樹脂を含有しないトナーである。
ビニル樹脂粒子分散液(VD−3)を、上記の方法で作製した非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(AD−1)393質量部と、以下の方法で作製した離型剤分散液(WD−1)27質量部および離型剤分散液(WD−2)27質量部とに変更したこと以外は、トナー1と同様にして、トナー31を作製した。トナー31はビニル樹脂を含有しないトナーである。
離型剤として上記の炭化水素ワックスW−1(n−パラフィン率90%、炭素数分布25)60質量部と、アニオン性界面活性剤「ネオゲン RK(登録商標)」(第一工業製薬株式会社製)5質量部と、イオン交換水240質量部とを混合した溶液を95℃に加熱し、ホモジナイザー「ウルトラタラックス(登録商標)T50」(IKA社製)を用いて十分に分散した後、圧力吐出型ゴーリンホモジナイザーを用いて分散処理することにより、離型剤分散液(WD−1)を作製した。
離型剤を上記のモノエステルワックスW−2(ベヘン酸ベヘニル)に変更したこと以外は、上記「離型剤分散液(WD−1)の作製」と同様にして、離型剤分散液(WD−2)を作製した。
スチレン 156質量部、n−ブチルアクリレート 44質量部、カーボンブラック「リーガル330R」(キャボット社製) 18質量部、サリチル酸アルミニウム化合物 2質量部(ボントロン(登録商標)E−88:オリヱント化学工業株式会社製)、ジビニルベンゼン 0.04質量部、非晶性ポリエステル樹脂(a−2)6質量部、離型剤として炭化水素ワックス(パラフィンワックス、n−パラフィン率98%、分子量分布35、融点78℃) 18質量部、および結晶性樹脂(c−11)20質量部からなる単量体含有混合物を調製した。これに15mmのセラミックビーズを入れ、アトライター(三井三池化工機株式会社製)を用いて3時間分散して、単量体含有組成物を得た。
攪拌機、コンデンサー、温度計、および窒素導入管を備えた反応容器にビスフェノールA−プロピレンオキシド2モル付加物 49.2質量部、エチレングリコール 8.9質量部、テレフタル酸 21.6質量部、イソフタル酸 14.3質量部、および5−ナトリウムスルホイソフタル酸 5.7質量部を仕込み、エステル化触媒としてテトラブトキシチタネート 0.03質量部を添加し、窒素雰囲気下、220℃に昇温して、攪拌しながら5時間反応し、さらに減圧下で5時間反応を行い、ポリエステル樹脂を得た。攪拌機、コンデンサー、温度計、および窒素導入管を備えた反応容器に、得られたポリエステル樹脂 100質量部と、メチルエチルケトン 45質量部およびテトラヒドロフラン 45質量部とを仕込み、80℃に加熱して溶解した。次いで、100rpmで攪拌下、80℃のイオン交換水 300質量部を添加して水分散させた後、得られた水分散体を蒸留装置に移し、留分温度が100℃に達するまで蒸留を行った。冷却後、得られた水分散体にイオン交換水を加え、分散液中の樹脂濃度が20質量%になるように調整し樹脂微粒子分散液(PD−1)を得た。
フェライトコア100質量部とシクロヘキシルメタクリレート/メチルメタクリレート(共重合比5/5)の共重合体樹脂粒子 5質量部とを、攪拌羽根付き高速混合機に投入し、120℃で30分間攪拌混合して機械的衝撃力の作用でフェライトコアの表面に樹脂コート層を形成し、体積基準メジアン径40μmのキャリアを得た。
<トナー母体粒子の断面観察>
下記に示す観察方法に従って、作製したトナー1〜トナー32の断面を観察した。比較例であるトナー29には糸状構造が観察されず、トナー30およびトナー32には構造体が観察されなかった。また、トナー1〜28およびトナー31においては、トナー母体粒子100個のうち60%(60個)以上の粒子の断面に、構造体および糸状構造の両方が確認された。さらに、トナー1〜トナー32の断面においては、構造体および糸状構造以外の構造を有する結晶性樹脂は観察されなかった。構造体のドメイン径、糸状構造の平均長径および平均短径、ならびに構造体、糸状構造、および離型剤の断面積比率の測定結果を下記表5−1および表5−2に示す。
・観察条件
装置:透過型電子顕微鏡「JEM−2000FX」(日本電子株式会社製)
試料:四酸化ルテニウム(RuO4)によって染色したトナー母体粒子の切片(切片の厚さ:60〜100nm)
加速電圧:80kV
倍率:50000倍、明視野像。
作製したトナー1を3質量部、ポリオキシエチルフェニルエーテルの0.2%水溶液35質量部に添加して分散させた後、超音波(株式会社日本精機製作所製、US−1200T)により25℃で5分間処理を行い、外添剤をトナー表面から取り除き、TEM観察用のトナー母体粒子を得た。他のトナーについても上記と同様にして外添剤を除去し、TEM観察用のトナー母体粒子を得た。
染色は、真空電子染色装置VSC1R1(フィルジェン株式会社製)を用いて行った。装置手順に従い、染色装置本体に四酸化ルテニウムが入った昇華室を設置し、作製した上記超薄切片を染色チャンバー内に導入後、四酸化ルテニウムによる染色条件として、室温(24〜25℃)、濃度3(300Pa)、時間10分の条件下で染色した。
染色後、24時間以内に透過型電子顕微鏡「JEM−2000FX」(日本電子株式会社製)を用いて、二次電子像にて観察した。
トナー母体粒子の断面における構造体の大きさ(ドメイン径)は、水平方向最大弦長(CORD H)として算出した。具体的には、上記と同様にして作製したトナー母体粒子の断面を、透過型電子顕微鏡JEM−2000FX(日本電子株式会社製)により、加速電圧80kVにて50000倍で撮影し、写真画像をスキャナーにより取り込み、画像処理解析装置LUZEX AP(株式会社ニレコ製)を用いて、構造体の水平方向最大弦長(CORD H)を測定した。また、同様にして、糸状構造の長径(長軸)は水平方向最大弦長(CORD H)の代わりに、最大長(MX LNG)を、短径(短軸)は水平方向最大弦長(CORD H)の代わりに、幅(BR’DTH)を測定した。構造体の平均ドメイン径、ならびに糸状構造の平均長径および平均短径の測定は、トナー母体粒子100個のうち、構造体と糸状構造とが共に観察されたものについての算術平均値として算出した。
上述した構造体、糸状構造、および離型剤の大きさの測定方法と同様の方法により測定した。トナー母体粒子の断面積に対する構造体の断面積比率A、トナー母体粒子の断面積に対する糸状構造の断面積比率B、およびトナー母体粒子の断面積に対する構造体を形成していない離型剤の断面積比率Cを、画像処理解析装置 LUZEX AP(株式会社ニレコ製)の「面積AREA」を用いて測定した。なお、面積は外側の輪郭で囲まれた領域(例えば、構造体は図1の点線で囲った領域、糸状構造は図1の実線で囲った領域)を測定した。この断面積比率についても、トナー母体粒子100個のうち、構造体と糸状構造とが共に観察されたものについての算術平均値として算出した。
画像評価は、市販のカラー複合機「bizhub PRESS(登録商標)C6000(コニカミノルタ株式会社製)」において、定着温度、トナー付着量、およびシステム速度を自由に設定できるように改造した改造機Aを作製した。この改造機Aの現像装置に、上記で作製したトナー1〜32と現像剤とを順次装填して評価を行った。
評価は、常温常湿(温度20℃、湿度50%RH)の環境下において、トナー付着量5g/m2のベタ画像を定着させる定着実験を、定着下ローラの温度は定着上ベルトよりも20℃低く設定し、定着上ベルトの温度を110℃から5℃刻みで増加させるように変更しながら220℃まで繰り返し行った。この実験を、定着速度を280mm/secで実施した。A4サイズのnpi上質64.0g/m2(日本製紙株式会社製)を用いて評価を行った。
A4サイズのnpi上質64.0g/m2(日本製紙株式会社製)、A4サイズのPODグロスコート100g/m2(王子製紙株式会社製)、および8 1/2インチ×11インチサイズのHAMMERMILL TIDAL (INTERNATIONAL PAPER社製)を用いて評価を行った。画像が形成されていない各転写材(白紙)の光沢度およびベタ画像の光沢度を測定し、その差をΔ(NPI)、Δ(POD)、Δ(TIDAL)とした際に、Δ(NPI)−Δ(POD)の絶対値、Δ(NPI)−Δ(TIDAL)の絶対値、およびΔ(POD)−Δ(TIDAL)の絶対値の最大値が10以下のものを実用的に問題ないものとした。
キャリア19gとトナー1gとを20mlのガラス製容器に入れ、毎分200回、振り角度45度、アーム50cmで20分間、下記の二つの環境(低温低湿環境、高温高湿環境)で振った後、ブローオフ法で帯電量を測定した:
低温低湿環境:10℃、10%RH雰囲気に設定
高温高湿環境:30℃、85%RH雰囲気に設定
低温低湿環境での帯電量と高温高湿環境での帯電量との差により、評価を行った。二環境での帯電量の差が小さい程、帯電性が良好であり、差が12μC/g未満である場合を合格とした。
上記表5−1および表5−2から明らかなように、トナーが含有する樹脂成分の主成分がビニル樹脂であり、トナー母体粒子の断面観察をした際に、結晶性樹脂と離型剤とが接触して形成されている構造体と、離型剤とは接触していない糸状構造を有する結晶性樹脂とが共存しているトナー1〜トナー27は、低温定着性、記録媒体(メディア)への追随性、および帯電性(帯電量の環境依存性)のいずれの特性も実用化可能なレベルにあり良好であることがわかった。一方、比較例であるトナー28〜トナー32は、低温定着性、記録媒体(メディア)への追随性、および帯電性のうちの少なくとも一つに問題があり、実用化可能なレベルにないことがわかった。
2 離型剤、
3 構造体、
4 離型剤とは接触していない糸状構造を有する結晶性樹脂、
5 ビニル樹脂。
Claims (6)
- 主成分としてのビニル樹脂および結晶性樹脂を含む樹脂成分と、離型剤と、を含有するトナー母体粒子を含む静電潜像現像用トナーであって、
前記結晶性樹脂はハイブリッド構造を有さない結晶性ポリエステル樹脂であり、
前記トナー母体粒子の断面に、前記結晶性樹脂と前記離型剤とが接触している構造体と、前記離型剤とは接触していない糸状構造を有する前記結晶性樹脂と、を含み、
前記トナー母体粒子の断面積に対する前記構造体の断面積の比率をAとし、
前記トナー母体粒子の断面積に対する前記糸状構造の断面積の比率をBとし、
前記トナー母体粒子の断面積に対する前記構造体を形成していない前記離型剤の断面積の比率をCとしたとき、
A/(A+B+C)が0.3〜0.75である、静電潜像現像用トナー。 - 前記糸状構造のドメインの平均長径が200〜2000nmである、請求項1に記載の静電潜像現像用トナー。
- 前記糸状構造のドメインの平均短径が10〜1000nmである、請求項1または2に記載の静電潜像現像用トナー。
- 前記構造体の平均ドメイン径が200〜2500nmである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の静電潜像現像用トナー。
- 前記A/(A+B+C)が0.35〜0.65である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の静電潜像現像用トナー。
- 前記樹脂成分全体に対する前記結晶性樹脂の含有量が1〜45質量%である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の静電潜像現像用トナー。
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