JP6291745B2 - 定着部材、定着装置、及び画像形成装置 - Google Patents
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Description
請求項1に係る発明は、
管状の基材と、
前記基材の外周面上に設けられ、シリコーンゴムを含んで構成された弾性層と、
前記弾性層の外周面上に設けられ、フッ素含有樹脂を含む離型層と、
を備え、760nm以上900nm以下のうち少なくとも一部における波長領域の赤外線に対して透過性を有し、
前記弾性層における前記赤外線の透過率が90%以上である定着部材である。
前記基材は、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリエステル、及びポリカーボネートから選択される少なくとも1種を含んで構成され、前記赤外線の透過率が90%以上である、請求項1に記載の定着部材である。
前記離型層は、外周面における表面自由エネルギーが30mN/m以下であり、前記赤外線の透過率が80%以上である、請求項1又は請求項2に記載の定着部材である。
定着部材の外周面における表面A硬度は10度以上90度以下であり、前記基材の厚みが20μm以上1000μm以下である、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の定着部材である。
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の定着部材と、
前記定着部材の表面に接触して設けられ、トナー像が形成された記録媒体を前記定着部材との接触部に挟み込む対向部材と、
前記定着部材を透過する前記赤外線のレーザ光を、前記定着部材を介して前記トナー像に照射する赤外線レーザ光照射装置と、
を備えた定着装置である。
前記対向部材は、管状の基材と、基材の外周面に設けられた弾性層と、を有し、前記接触部の幅が0.01mm以上30mm以下である、請求項5に記載の定着装置である。
前記対向部材は、外周面における表面A硬度が10度以上95度以下であり、前記接触部において前記定着部材を内側に変形させて設けられている、請求項5又は請求項6に記載の定着装置である。
前記定着部材の内側に配置された、前記レーザ光を集光させるレンズ部材と、
前記定着部材の内周面と前記レンズ部材との間に配置された摺動部材と、
をさらに備えた、請求項5〜請求項7のいずれか1項に記載の定着装置である。
像保持体と、
前記像保持体の表面を帯電する帯電装置と、
帯電した前記像保持体の表面に潜像を形成する潜像形成装置と、
前記像保持体の表面に形成された潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像装置と、
前記像保持体の表面に形成されたトナー像を記録媒体の表面に転写する転写装置と、
前記記録媒体の表面に転写されたトナー像を定着する請求項5〜請求項8のいずれか1項に記載の定着装置と、
を備える画像形成装置である。
<第1実施形態>
まず、本実施形態の定着部材を用いた第1実施形態の定着装置について説明する。
図1は、本実施形態にかかる定着装置を示す概略構成図である。
図1に示す定着装置60は、例えば、760nm以上900nm以下のうち少なくとも一部における波長領域の赤外線(以下、便宜上、単に「赤外線」と称する場合がある)に対して透過性を有し管状である定着部材30と、定着部材30に接して設けられた対向部材40と、定着部材30の外部に設けられ定着部材30を透過する前記赤外線のレーザ光(以下「赤外線レーザ光」と称する場合がある)を発する赤外線レーザ光照射装置70と、を備えて構成されている。
定着部材30の内部には、赤外線レーザ光照射装置70から発せられた赤外線レーザ光を集光するレンズ部材72と、定着部材30の内周面とレンズ部材72との間に設けられた摺動部材74と、定着部材30の内周面に潤滑剤を供給する潤滑剤供給部材76と、レンズ部材72、摺動部材74、及び潤滑剤供給部材76を支持する支持部材78と、が設けられている。
潤滑剤供給部材76は、定着部材30の内周面に接するように設けられており、定着部材30が回転するにつれて、潤滑剤供給部材76から定着部材30の内周面に潤滑剤が供給され、それによって定着部材30が潤滑に回転する。
レンズ部材72は、定着部材30の内部において、定着部材30を介して対向部材40に加圧される状態で配置され、それによって接触部80が形成されている。
さらに、定着部材30の内周面とレンズ部材72との摺動抵抗を小さくし、定着部材30の内周面とレンズ部材72とが直接接触することによる傷の発生を防ぐため、レンズ部材72における定着部材30と接する面に摺動部材74が設けられている。すなわち、レンズ部材72が、摺動部材74を介して、定着部材30の内周面に接して配置されている。
そして接触部80では、記録媒体P上の未定着トナー像Tが定着部材30と対向部材40とに挟み込まれた状態で、集光された赤外線レーザ光Iが未定着トナー像Tに照射されることで、未定着トナー像Tが記録媒体Pに圧接定着されて定着画像Fとなる。
定着部材30(本実施形態にかかる定着部材)について説明する。図2は、本実施形態にかかる定着部材の一例を示す概略斜視図であり、図3は、図2の3−3断面図である。
定着部材30は、図3に示すように、管状(例えばロール状又はベルト状等)の基材32と、基材32の外周面上に設けられた弾性層34と、弾性層34の外周面上に設けられ、フッ素含有樹脂を含む離型層36と、を備え、前記赤外線に対して透過性を有する。
ここで、「前記赤外線に対して透過性を有する」とは、前記赤外線の透過率が80%以上(好ましくは90%以上)であることをいう。
具体的には、例えば図1の定着装置60において、定着部材30を透過した赤外線レーザ光Iが接触部80に挟み込まれている未定着トナー像Tに照射され、未定着トナー像Tに含有される赤外線吸収剤が赤外線レーザ光Iを吸収したのちに熱を放出する。そして未定着トナー像Tは、定着部材30及び対向部材40によって圧力がかけられつつ瞬間的に温度が上昇して溶融する。このとき、定着部材30の外周面が離型層36を介して弾性層34を有するため、弾性層34の弾性力によって圧力のムラや温度のムラが緩和されるとともに、表面の離型層36によって優れた剥離性が得られることで、光沢性が付与された定着画像が得られる。
さらに本実施形態では、その加熱加圧時間(すなわち、未定着トナー像Tが温度上昇により溶融し、定着部材30の圧接により平坦化される時間)が数msecと短く、高速定着でき、かつ、高エネルギーの赤外線レーザ光により未定着トナー像Tが選択的に加熱されるため、用紙を温めずに未定着トナー像Tの定着が行われる。そのため、両面定着時の定着性も安定しており、用紙剥離性も変化しないことにより、薄紙から厚紙、エンボス紙、連張紙,塗工紙、PETフィルム、シュリングフィルム等までの非浸透メディアなど広範囲の用紙適応性が得られる。
以下、本実施形態に係る定着部材30を構成する各層(前記赤外線に対する高い透過性を満たしつつ多層構造を実現させる構成)について説明する。
基材32は、管状であり、前記赤外線に対して透過性を有する(例えば前記赤外線の透過率が90%以上の)ものであれば特に限定されない。
前記赤外線に対して透過性を有する基材32に用いられる材料としては、例えば、ポリイミド、ポリイミドイミド、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリアリレート(PAR)、ポリエステル、及びポリカーボネート(PC)等の樹脂材料が挙げられる。
前記赤外線を透過するポリエチレンナフタレートとしては、例えば、ポリエチレンナフタレート及びそのポリカーボネート誘導体などが挙げられる。
前記赤外線を透過するポリエーテルスルホンとしては、例えば、ポリエーテルスルホン及びそのフッ素誘導体が挙げられる。
前記赤外線を透過するポリアリレートとしては、例えば芳香族ポリアリレート及び脂肪族ポレアリレートが挙げられる。
前記赤外線を透過するポリエステルとしては、例えば、延伸ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、又はポリ乳酸等が挙げられ、ポリエステルとポリプロピレンとの混合物やポリエステルとポリカーボネートとの混合物又はそのコポリマーであってもよい。
前記赤外線を透過するポリカーボネートとしては、例えば、芳香族ポリカーボネート類及び脂肪族ポリカーボネート類が挙げられる。
基材32に用いられる材料は、前記の中でも、耐熱性の観点から、ポリエーテルスルホンが好ましい。
なお、弾性率の測定は、JIS−K7162(1994、1BA形、速度1mm/min)に準拠する。
基材32の厚みとしては、例えば、20μm以上1000μm以下が挙げられ、50μm以上200μm以下が好ましく、60μm以上130μm以下がより好ましい。
弾性層34は、赤外線に対して透過性を有する(例えば赤外線の透過率が90%以上の)ものであれば特に限定されない。
赤外線に対して透過性を有する弾性層34に用いられる材料としては、例えばシリコーンゴム、ウレタンゴム、及びオレフィンゴム等の弾性材料が挙げられる。
赤外線を透過するポリウレタンゴムとしては、例えば、ポリエーテルウレタン、ポリエステル系ウレタン類及びアクリル変性光硬化タイプのウレタン樹脂等が挙げられる。
赤外線を透過するオレフィンゴムとしては、例えば、EPDM、ポリプロピレンゴム、ブチルゴム、シクロオレフィン類、ノルボルネンゴム等が挙げられる。
ここで、「100℃以上の耐熱性を有する」とは、100℃以上に加熱した後でも、弾性(すなわち100Pa以下の外部圧力印加により変形しても、もとの形状に復元する性質)を損なわないことを言う。
弾性層34に用いられる材料が100℃以上の耐熱性を有するものであることにより、赤外線レーザ光で加熱されても用紙走行性と剥離性を損なわない弾性が得られる。そのため、ニップ形状を用紙幅全域に渡って維持して加熱定着することにより、圧接時の圧力ムラが軽減され、かつ、連続加熱走行による加温時での弾性と形状が維持されることにより、定着部材30の外周面と記録媒体の表面との界面における密着性が安定化し、シワの発生などが抑制される。
前記耐熱性は、100℃以上が望ましく、150℃以上がより望ましく、180℃以上がさらに望ましい。
前記耐熱性の測定は、例えば以下の方法で行う。具体的には、DSC,DGA、TMAなどの熱分析装置による溶融温度および熱重量測定、機械的強度評価による100℃以下でその変化の少ない弾性層が望ましい。
離型層36は、フッ素含有樹脂を含み、前記赤外線に対して透過性を有する(例えば前記赤外線の透過率が80%以上の)ものであれば特に限定されない。
前記フッ素含有樹脂としては、例えば、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−ビニリデンフルオライド共重合体(THV)、及びポリビニリデンフルオライド(PVDF)等が挙げられる。
ここで、表面自由エネルギーの測定は、例えば、接触角計CAM−200(KSV社製)を用い、Zisman法を用いた装置内臓のプログラム計算にて算出する。
また離型層36の屈折率は、トナーの屈折率よりも低い方が、離型層36と未定着トナー像Tとの界面における赤外線レーザ光Iの反射が抑制される点で望ましい。
定着部材30の外周面における表面A硬度は、例えば10度以上90度以下が挙げられる。上記表面A硬度は、例えば、定着部材30の外周面にアスカーJA型硬度計(高分子計器社製)の押針を接触させ、1000g加重の条件にて表面A硬度を測定した。
赤外線に対して透過性を有する接着層に用いられる材料としては、例えば、シランカプラー、シリコーン系接着剤、またはウレタン系接着剤等が挙げられる。
なお、定着部材30は、前記の通り、トナー像に赤外線レーザ光を照射して記録媒体に定着させる定着装置に用いられるものであるため、例えば電磁誘導型定着装置に用いられる定着部材に設けられている発熱層等は必要ない。
対向部材40は、定着部材30と接触部80を形成し、記録媒体Pを挟み込む形状のものであれば特に限定されない。対向部材40の具体例としては、例えば、円柱状芯金と、円柱状芯金の外周面に設けられた弾性層と、弾性層の外周面に設けられた離型層と、を有する加圧ロール等が挙げられる。
対向部材40の外周面における表面A硬度としては、例えば10度以上95度以下が挙げられる。
定着部材30と対向部材40との接触部80の幅としては、例えば0.01mm以上30mm以下が挙げられ、0.5mm以上5mm以下が望ましい。
赤外線レーザ光照射装置70は、波長が760nm以上900nm以下の赤外線レーザ光を発するものであれば特に限定されない。具体的には、例えば、半導体レーザや固体レーザ等の光源を備えるレーザ光照射装置等が挙げられる。
赤外線レーザ光の照射強度としては、例えば、接触部80において10mW/cm2以上100mW/cm2以下となる強度が挙げられる。また未定着トナー像Tへの赤外線照射量としては、例えば、50mJ/cm2以上5000mJ/cm2以下が挙げられる。
レンズ部材72は、波長が760nm以上900nm以下の赤外線に対して透過性を有し、赤外線レーザ光を集光するものであれば限定されない。レンズ部材72に用いられる材料としては、例えば、ガラス、PMMA等のアクリル樹脂等が挙げられる。
レンズ部材72は、例えば、接触部80に赤外線レーザ光の焦点が来る焦点距離を有するものを選択してもよく、レンズ部材72及び赤外線レーザ光照射装置70の位置を調整することで前記焦点の位置を制御してもよい。
摺動部材74は、定着部材30の回転時に定着部材30の内周面とレンズ部材72とが直接接触してこれらの部材の表面が傷つくことを防ぎ、例えばレンズ部材72の表面に傷がつくことによる赤外線の透過率低下等を防ぐための部材である。
摺動部材74としては、波長が760nm以上900nm以下の赤外線に対して透過性を有し、定着部材30に対して摩擦係数が小さく耐摩耗性に優れた材質で構成されたものが適している。摺動部材74の材質としては、例えば、赤外線に対して透過性を有する樹脂(具体的には、例えばPTFE等の潤滑性フィラーを分散させたウレタンゴム、オレフィンゴム等)、ガラス等の繊維によって補強されたPFA樹脂、シリコーンオイル、及びシリコン系界面活性剤等で含浸又は表面処理されたシリコーンゴム等が挙げられる。
また摺動部材74の厚みとしては、例えば、0.01mm以上1mm以下が挙げられる。
さらに摺動部材74の内部に、ワックスやシリコーンオイル等を含浸させた発泡部材を設けることで潤滑性を向上させ、定着部材30が回転するときにおける摺動部材74と定着部材30との摩擦抵抗及び擦れを軽減させ、これらの部材に対する影響を軽減させてもよい。
潤滑剤供給部材76は、潤滑剤を保持し、定着部材30の内周面に潤滑剤を供給する部材である。
潤滑剤としては、例えばシリコーンオイル、パラフィンオイル、フッ素オイル、その他固形物質と液体とを混合させた合成潤滑油グリース、ワックス等が挙げられる。
なお、本実施形態では潤滑剤を定着部材30の内周面に供給する形態であるが、潤滑剤を用いない形態でもよい。
そのため、例えば前記熱定着装置に比べて、未定着トナー像Tの加熱及び冷却が迅速に行われる。具体的には、例えば熱定着装置では、画像定着を開始する前に定着部材を予熱する必要があり、定着時には記録媒体も加熱されるため定着後に記録媒体を冷却させる必要がある場合が多い。しかしながら本実施形態では、未定着トナー像Tが選択的に加熱されるため、上記定着部材の予熱や記録媒体の冷却が不要であり、高速定着が実現される。
また、未定着トナー像Tが定着部材30に接しない状態で赤外線レーザ光Iが照射されて記録媒体Pに定着される方式に比べ、空気流等による飛散物による画像の汚染が防止される。
一方本実施形態において、赤外線レーザ光照射装置70を定着部材30の内部に設けてもよく、その場合は、定着部材の外部に設けた場合に比べて、赤外線レーザ光Iが定着部材30を透過する回数が減るため、効率的に赤外線レーザ光Iが未定着トナー像Tに照射される。
次に、本実施形態の定着部材を用いた第2実施形態の定着装置について説明する。
図4は、本実施形態の定着装置の他の一例を示す概略構成図である。図4の定着装置は、本実施形態の定着部材として無端ベルト状の定着部材を備え、定着部材が対向部材を巻きつけるように接触し、定着部材が内側に変形して接触部が形成された定着装置である。なお、第1実施形態にかかる定着装置と同様な構成については同様の符号を用い、ここではその詳細な説明を省略する。
定着部材92は、内部に配置された駆動ロール82と支持ロール84とによって支持されている。また定着部材92の内部に互いに間隔を持って設けられた押しつけロール86及び押しつけロール87が、定着部材92を介して対向部材40に押し付けることで、定着部材92における押しつけロール86と押しつけロール87との間の領域が内側に変形し、接触部80が形成される。
また定着部材92の内部には、赤外線レーザ光照射装置70から発せられた赤外線レーザ光を集光するレンズ部材72と、定着部材92の内周面とレンズ部材72との間に設けられた摺動部材74と、が設けられている。レンズ部材72は、定着部材92の内部において、定着部材92を介して対向部材40に加圧される状態で配置されている。そして摺動部材74は、定着部材92の内周面とレンズ部材72との摺動抵抗を小さくし、定着部材92の内周面とレンズ部材72とが直接接触することによる傷の発生を防ぐため、レンズ部材72における定着部材92と接する面に設けられている。
一方、レンズ部材72及び摺動部材74は不図示の支持部材によって固定され、定着部材92が回転してもレンズ部材72及び摺動部材74は停止したままである。
また、摺動部材74が定着部材92の内周面とレンズ部材72との間に設けられていることによって、定着部材92の回転時に、レンズ部材72は摺動部材74を介して定着部材92の内周面に接触する。
定着部材92は、基材の弾性率が2GPa以上4GPa以下であることが望ましく、それ以外の詳細な点は前記定着部材30と同様である。
また、第2実施形態におけるその他の部材についても、前記第1実施形態と同様である。
次に、本実施形態の定着装置を用いた画像形成装置について説明する
図5は、本実施形態の定着装置(上記第1実施形態の定着装置)を備えた画像形成装置の構成を概略的に示した概略構成図である。
図5に示す画像形成装置100は、矢印A方向に回転する電子写真感光体10の周囲に、電子写真感光体10の表面を帯電する帯電器11、帯電した電子写真感光体10の表面に露光ビームBmを照射して静電潜像を形成するレーザ露光器12、トナーを収容し、電子写真感光体10上の静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像器13、転写部15における静電転写に先立ち電子写真感光体10上のトナー像を帯電する転写前帯電器14、電子写真感光体10上に形成されたトナー像を転写部15において記録媒体である記録紙(用紙)Pに転写する転写ユニット20、電子写真感光体10上の残留トナーを除去するクリーニングブレード17a、潤滑材18を電子写真感光体10の表面に供給する繊維状部材16(ロール状)を備えたクリーニング手段17等が配置されている。さらには、記録媒体Pに転写された未定着トナー像を定着する定着装置60、各装置(各部)の動作を制御する制御部(不図示)を備えている。
図1に示す画像形成装置100では、図示しない画像読取装置やパーソナルコンピュータ等から出力される画像データは、図示しない画像処理装置により画像処理が施される。画像処理が施された画像データは、レーザ露光器12に出力される。
電子写真感光体の表面に形成された静電潜像は、現像器13によってトナー像として現像される。例えばトナーとキャリアからなる現像剤を保持した現像剤保持体13aに、図示しない電源から直流電圧からなる現像バイアス、又は交流電圧に直流電圧が重畳された現像バイアスが印加されて、電子写真感光体10との間に現像電界が形成される。それによって、現像剤保持体13a上のトナーが静電潜像の画像部に転移し、静電潜像がトナー像として可視像化される。
定着装置60に搬送された記録媒体P上の未定着トナー像は、定着装置60において赤外線レーザ光及び圧力による定着処理を受けることによって記録媒体P上に定着される。そして定着画像が形成された記録媒体Pは、画像形成装置の排出部に設けられた排紙部に搬送され、一連の画像形成動作が完了する。
上記のように本実施形態に係る定着装置60を備えた画像形成装置100を用いて画像形成を行うことで、赤外線レーザ光による画像の定着を実現しつつ、記録媒体Pに定着された画像に光沢性が付与される。
本実施形態では、レーザ加熱と加圧手段を融合することで、従来の熱源(赤外線ランプ、ハロゲンランプ、IHヒータ、フラッシュランプ)に比べ、トナー潜像に対してより短時間加熱で冷却剥離される。
また、例えば赤外線レーザ光照射装置を定着部材の外部に設ける構成とすることで、な定着部材の内部に設ける場合に比べて、より小型軽量で高速適正(100ppm以上)が得られる。
また、レーザ加熱に加えて圧力を加えることで、高グロスで広色域に対応し、記録媒体についても薄紙から厚紙、エンボス紙、連張紙、フィルム材、ラベル材、シュリンクフィルムまでメディア汎用性に優れる。
また、レーザ加熱を用いることで、従来の熱定着に比べて高速広幅で瞬間的に加熱及び冷却されるため、例えばトナーが揮発成分を含んでいても揮発しにくく、記録媒体が加熱されずに画像定着が行われる。そのため、例えば両面モードでの画像形成においても用いられる記録媒体が制限されず、連続定着性に優れる。さらに、加熱による弾性層や離型層の熱変形が少なく、定着部材の弾性を生かした圧力定着がなされ、より安定した加圧と平坦化による定着が行われる。また、トナーが瞬間的に溶融して冷却剥離が行われることで、熱による記録媒体等の劣化(摩耗や黄変、変形、異常放電現象等)が従来の熱定着に比べて少なく、長期の定着安定性が保持される。さらに、従来の熱定着に比べ、用紙加熱の効率や熱源の使用効率が良好であるため定着部材の劣化も起こりにくく、定着部材の交換頻度が少なく、ランニングコストも抑えられる。さらにレーザ加熱は非接触によって用紙面で加熱するため、過昇温になりにくく、トナーの表面張力のみでは光沢が上がりにくいが加圧手段を用いることで高い光沢が得られる。またレーザ加熱を適用した場合、高速広幅に対応するためには赤外線レーザの出力を上げればよく、高グロス、広色域で幅広く活用する。
(基材1の製造)
以下のようにして、管状の基材1を製造した。具体的には定着部材はBASF製E6020pポリエーテルスフォン樹脂をDMAC溶媒(ジメチルアセトアミド)に濃度が40質量%となるように溶解させ、φ29.9mmのアルミパイプ上に回転させフローコートし200℃で、1時間乾燥させ、脱型させることによりφ30mmの基材にすることで、前記赤外線を透過する樹脂の基材1を得た。
得られた基材1の厚みは65μmであった。
なお、前記赤外線の透過スペクトルは、測定装置として紫外可視分光光度計(日本分光社製、型番:JASCO−V560)を用い、350nmから950nm領域での測定条件において測定した。
また、基材1の弾性率を前述の方法で測定したところ、2.3GPaであることが分かった。
以下のようにして、基材1の外周面に弾性層1を形成した。具体的には、信越化学製KE109付加重合型2液のシリコーン樹脂を混合させ、得られた基材1の外周面に同様にフローコーターで回転塗布させ170℃で、1時間焼成することで、前記赤外線を透過する透明シリコーンゴムの弾性層1を形成した。
形成された弾性層1の厚みは220μmであった。
また、弾性層1について前述の方法で耐熱性を調べたところ230℃以上の耐熱性を有するものであることがわかった。
以下のようにして、弾性層1の外周面に離型層1を形成し、定着部材1を得た。具体的には、厚みが30μmであるφ29mmのPFAチューブの外周面にプラズマ処理し、弾性層1の外周面に信越化学製X33−197シラカップリング剤を膜厚5μmとなるように塗布(シランカップリング処理)し、100℃、5分乾燥させ、プラズマ処理した前記PFAチューブを拡張して弾性層1の外周面を被覆するように挿入させ、さらに200℃、1時間焼成接着することで、前記赤外線を透過するフッ素含有樹脂の離型層1を形成し、定着部材1を得た。
形成された離型層1の厚みは32μmであった。
また、離型層1の外周面における表面自由エネルギーを前述の方法で測定したところ、24mN/mであった。
定着部材1について760nm以上900nm以下の赤外線の透過スペクトルを測定したところ、後述する半導体レーザが発する赤外線レーザ光の波長(808nm)における透過率が80%であり、定着部材1が赤外線に対して透過性を有することがわかった。
また、定着部材1の外周面における表面A硬度を前述の方法で測定したところ、65度であった。
(離型層2の形成)
基材1の外周面に直接、以下のようにして離型層2を形成し、定着部材2を得た。具体的には、基材1の外周面に直接、前記シランカップリング処理をし、前記離型層1で用いたPFAチューブを、前記離型層1の形成と同様にして装着挿入接着することで、前記赤外線を透過するフッ素含有樹脂の離型層2を形成し、定着部材2を得た。
形成された離型層2の厚みは33μmであった。
定着部材2について760nm以上900nm以下の赤外線の透過スペクトルを測定したところ、後述する半導体レーザが発する赤外線レーザ光の波長(808nm)における透過率が88%であり、定着部材2が赤外線に対して透過性を有することがわかった。
また、定着部材2の外周面における表面A硬度を前述の方法で測定したところ、102度であった。
(弾性層3の形成)
前記弾性層1の形成と同様にして、基材1の外周面に、厚みが560μmの弾性層3を形成した。
基材1の外周面に弾性層3が形成されたものについて760nm以上900nm以下の赤外線の透過スペクトルを測定し、弾性層3のみの赤外線透過スペクトルを求めたところ、後述する半導体レーザが発する赤外線レーザ光の波長(808nm)における透過率が87%であることがわかった。
(離型層3の形成)
前記離型層1の形成と同様にして、基材1の外周面に形成された弾性層3の外周面に、厚みが35μmの離型層3を形成し、定着部材3を得た。
定着部材3全体の厚みは660μmであった。
定着部材3について760nm以上900nm以下の赤外線の透過スペクトルを測定したところ、後述する半導体レーザが発する赤外線レーザ光の波長(808nm)における透過率が75%であり、定着部材3が赤外線に対して透過性を有さないことがわかった。
また、定着部材3の外周面における表面A硬度を前述の方法で測定したところ、45度であった。
図1に示す定着装置60を備えた図5の画像形成装置100において、定着部材30として得られた定着部材1〜定着部材3を用い、赤外線吸収剤を含むトナーを用いて定着画像(ソリッド画像)の形成を行った。
なお、定着部材の両端部には、定着部材を回転させるための歯付プラスチック部材を設けて支持し、定着部材の内部にはレンズ部材を設け、レーザ光が定着部材と記録媒体との接触部(用紙ニップ方向)全体にわたって照射されるように固定して、記録媒体の表面に集光させ使用した。
赤外線レーザ光照射装置70としては、半導体レーザ(エネオプチック社製、赤外線レーザ光の波長:808nm)を用いた。接触部80における赤外線照射強度は100W/cm2であり、未定着トナー像Tへの赤外線照射量は200mJ/cm2とした。
レンズ部材72としてはシリンドリカルレンズ(シグマ光機社製、型番:BK7)を用いた。
摺動部材74としては、PFAフィルム(厚み:105mm)を用いた。
トナーとしては、赤外線吸収剤としてスクアリリウム系顔料を含むトナーを用いた。
得られた定着画像について、以下のようにして光沢性の評価を行った。具体的には、グロスメーター(BYK マイクロトリグロス光沢計(20+60+85゜)、ガードナー社製)を用いて、60°の角度における光沢度を指標とした。評価結果を表1に示す。
定着率の評価は、テープ剥離試験により行った。具体的には、定着画像に粘着テープ(スコットメンディングテープ;3M社製)を軽く貼り、円柱ブロックを円周方向に転がすことにより、250g/cmの線圧にて該テープを画像面に密着させ、しかる後、該テープを引き剥がし、下式で表されるテープ引き剥がし前後の画像の光学濃度比を定着率とした。評価結果を表1に示す。
ここで、定着画像の画像濃度は、分光測色計(CM−3700d;ミノルタ社製)を使用して波長域400nm〜800nmの反射光を測定し、吸光度が最も大きくなる波長での吸光度値を光学濃度とした。
具体的には、実施例1に比べ比較例1では、弾性層を有していないため、圧接するニップ(定着部材と記録媒体との接触面積)が不足し、十分な定着率と光沢が得られなかった。また比較例2においては、定着部材表面における硬度が低く、弾性層が厚いため、定着時の画像転写性が低下し、オフセットし、残留トナーが定着部材の表面に残った。
11 帯電器
12 レーザ露光器
13 現像器
13a 現像剤保持体
15 転写部
17 クリーニング手段
20 転写ユニット
21 転写ベルト
24 転写ロール
30、92 定着部材
32 基材
34 弾性層
36 離型層
40 対向部材
60、90 定着装置
70 赤外線レーザ光照射装置
72 レンズ部材
74 摺動部材
76 潤滑剤供給部材
80 接触部
100 画像形成装置
Bm 露光ビーム
F 定着画像
I 赤外線レーザ光
P 記録媒体
T 未定着トナー像
Claims (9)
- 管状の基材と、
前記基材の外周面上に設けられ、シリコーンゴムを含んで構成された弾性層と、
前記弾性層の外周面上に設けられ、フッ素含有樹脂を含む離型層と、
を備え、760nm以上900nm以下のうち少なくとも一部における波長領域の赤外線に対して透過性を有し、
前記弾性層における前記赤外線の透過率が90%以上である定着部材。 - 前記基材は、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリエステル、及びポリカーボネートから選択される少なくとも1種を含んで構成され、前記赤外線の透過率が90%以上である、請求項1に記載の定着部材。
- 前記フッ素含有樹脂は、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−ビニリデンフルオライド共重合体、及びポリビニリデンフルオライドから選択される少なくとも1種であり、
前記離型層は、外周面における表面自由エネルギーが30mN/m以下であり、前記赤外線の透過率が80%以上である、請求項1又は請求項2に記載の定着部材。 - 定着部材の外周面における表面A硬度は10度以上90度以下であり、前記基材の厚みが20μm以上1000μm以下である、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の定着部材。
- 請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の定着部材と、
前記定着部材の表面に接触して設けられ、トナー像が形成された記録媒体を前記定着部材との接触部に挟み込む対向部材と、
前記定着部材を透過する前記赤外線のレーザ光を、前記定着部材を介して前記トナー像に照射する赤外線レーザ光照射装置と、
を備えた定着装置。 - 前記対向部材は、管状の基材と、基材の外周面に設けられた弾性層と、を有し、前記接触部の幅が0.01mm以上30mm以下である、請求項5に記載の定着装置。
- 前記対向部材は、外周面における表面A硬度が10度以上95度以下であり、前記接触部において前記定着部材を内側に変形させて設けられている、請求項5又は請求項6に記載の定着装置。
- 前記定着部材の内側に配置された、前記レーザ光を集光させるレンズ部材と、
前記定着部材の内周面と前記レンズ部材との間に配置された摺動部材と、
をさらに備えた、請求項5〜請求項7のいずれか1項に記載の定着装置。 - 像保持体と、
前記像保持体の表面を帯電する帯電装置と、
帯電した前記像保持体の表面に潜像を形成する潜像形成装置と、
前記像保持体の表面に形成された潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像装置と、
前記像保持体の表面に形成されたトナー像を記録媒体の表面に転写する転写装置と、
前記記録媒体の表面に転写されたトナー像を定着する請求項5〜請求項8のいずれか1項に記載の定着装置と、
を備える画像形成装置。
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