JP6284076B2 - 物理・化学センサおよび特定物質の測定方法 - Google Patents

物理・化学センサおよび特定物質の測定方法 Download PDF

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Description

本発明は、物理・化学センサに関し、特に、非標識の特定物質について分子の固定状態および質量を測定するためのセンサと、そのセンサを使用した特定物質の測定方法に関するものである。
近年、燃料電池に代表されるように、水素ガスをエネルギー源とするための技術が開発され普及されつつあり、これに伴って水素ガスを検出するためのセンサが重要視されている。また、環境汚染を誘引するガス(二酸化炭素や二酸化窒素など)は環境保全のためにその排出を検知することが重要とされ、爆薬に使用される成分(トリニトロトルエン:TNTやトリメチレントリニトロアミン:RDXなど)を含むガスの検知は、地雷を発見することに有用である。さらに、医療現場においては、特定種類の抗体または特定種類の抗原を検出することにより、特定の疾患に罹患していることを判定するため、抗体または抗原を形成する特定のタンパク質を検出するセンサもまた重要視されている。
そこで、医療現場では、特定種類のタンパク質を特定する方法として、蛍光ラベルを使用する蛍光標識技術が用いられていた。この技術は、活性化した蛍光基をタンパク質に反応させて標識とするものであって、同時に複数の検出が可能となるとともに蛍光色素の取り扱いが簡単であることから、以前から広く使用されてきた。しかし、この蛍光標識技術では、蛍光基が反応すること伴ってタンパク質構造が劣化することが懸念され、また、蛍光基修飾の位置や標識数の制御が困難であるという定量評価に関して問題があった。
上記の問題を解決する手法として、標識を用いない(いわゆるラベルフリー)センサが提案されている。すなわち、特定の受容体に特異吸着を起こす抗体分子をセンサ上に固定しておき、ターゲットのタンパク質が付着することで物理量(質量・屈折率・分子間力)の変化を検出するものである。この種の従来例としては、タンパク質の付着による質量の変化により共振周波数が変動する性質を利用するセンサ(Quarts Crystal Microbalance:QCM)や表面プラズモン共鳴により屈折率の変化を利用するセンサ(Surface Plasmon Resonance:SPR)が知られている。
そこで、本願の発明者の一部において、特定物質の固定能を有する材料による膜部と受光素子表面とでファブリペロー共振器を形成し、特定波長の透過光の強度変化によって特定物質の固定状態を検出する技術が開発された(特許文献1参照)。この技術は、物質固定能を有する膜部が特定物質を固定することにより、当該物質の分子間力によって膜部が撓み、その撓みの程度に応じて特定波長の透過光強度が変化することを検知することで特定物質を検出し得るものであった。そして、膜部の材料を変更することにより、その固定能により固定される分子を検出することができるものであるが、膜部の撓みの状態により分子の質量を推測し得るものではあるが、膜部が線形に変化するものではないことから、当該分子の質量を正確に測定し得るまでには至っていないものである。
ところで、前記センサに付着(吸着)した分子の質量を測定するためのセンサ素子としては、カンチレバーを共振駆動し、振動子の周波数変化から吸着分子の質量を定量することが可能である。この場合、前記QCMセンサに比較して、振動子を小型に作製することができるため、質量感度を向上させることが期待できる。すなわち、一般的に、振動を利用するセンサでは、振動子の厚みおよび密度によって質量感度が決定されることから、振動子を小型化することにより質量感度を向上させ得るのである。
そして、小型のカンチレバー(マイクロカンチレバー)などを使用し、その振動の周波数を検出方式のセンサとしては、レーザードップラー変位計を用いた光学的手法(非特許文献1参照)と、静電容量の変化を読み取る手法(非特許文献2参照)があった。しかしながら、光学的手法の場合には、アナライザーが必要となるため、測定装置全体を小型化することは難しく、静電容量による手法の場合は、容量の変化が小さいこと、および寄生成分が大きいことなどから、キャパシタ面積を広くせざるを得ず、素子の小型化に問題があった。
これらの手法のほかに、圧電膜を用いて膜の振動を電圧出力する手法が案出されている(非特許文献3および4参照)。この手法によれば、消費電力が小さく、小型の素子で振動によるマイクロ構造の動きを電圧出力できることが報告されている。
WO2013/047799号公報
K.S.Hwang, J.H.Lee, J.Parl, D.S.Yoon, J.H.Park, T.S.Kim, "In-situquantitative analysis of a prostate-specific antigen (PSA) using ananomechanical PZT cantilever," Lab Chip 4 pp. 547-552, 2004. K.K.Park, H.Lee, M.Kupnik, O.Oralkan, J.P.Ramseyer, H.P.Lang,M.Hegner, C.Gerber, and B.T.Khuri-Yakub, "Capacitivemicromachined ultrasonic transducer (CMUT) as a chemical sensor forDMMPvdetection,"Sensors and Actuators B, pp.1120-1127, 2011. D.M.Karabacak, S.H.Brongersma, and M.Crego-Calama, "Enhancedsensitivity volatile detection with low power integrated micromechanical resonators," LabChip, vol.10, pp.1976-1982, 2010. J.Pettine, M.Patrascu, D.M.Karabacak, M.Vandecasteele, V.Petrescu,S.H.Brongersma, M.Crego-Calama, and C.Van Hoof, "Volatile detectionsystem using piezoelectric micromechanical resonators interfaced by anoscillator readout," Sensors and Actuators A, pp.496-503,2013.
上記に示した従来技術のうち、特許文献1に開示される技術は、ラベルフリーセンサとして高性能であるが、分子の質量測定の正確性に問題があった。また、カンチレバーを共振駆動し、振動子の周波数変化から吸着分子の質量を定量する技術のうち、唯一、圧電膜を用いて膜の振動を電圧出力する手法は、小型の素子によって振動を電圧出力できる可能性があるものの、カンチレバーを使用する場合には、特定物質が裏面側に吸着することが懸念され、その吸着によって測定値へ影響を与えることが問題とされていた。その結果、特定物質のラベルフリーセンサとして実用化させるまでには至っていなかった。そこで、特定のタンパク質等の特定物質について標識を用いることなく検出し、質量を測定し得る小型のセンサおよび測定方法が切望されていた。
本発明は、上記諸点にかんがみてなされたものであって、その目的とするところは、小型化・アレイ化を可能にする物理・化学センサであって、微小な表面応力の変化を検出するとともに、固定された特定物質の質量を測定し得ることができるセンサを提供し、さらに、当該センサによる特定物質の測定方法を提供することである。
そこで、物理・化学センサにかかる本発明は、受光素子の受光面の表面との間で中空部を形成するように設けられたダイヤフラム構造の可動膜と、この可動膜の表側または裏側の表面に配置され、該可動膜を励振する第1の圧電膜と、前記可動膜の表側または裏側の表面に配置され、該可動膜の振動により発生する電圧を検出する第2の圧電膜とを備え、前記可動膜は、少なくとも外側表面に物質固定能を有するとともに、前記受光面の表面とでファブリペロー共振器を形成するものであることを特徴とするものである。
上記構成によれば、可動膜は、受光素子の受光面とでファブリペロー共振器を構成するとともに、第1の圧電膜により励振されることにより振動することができる。すなわち、可動膜の撓みの状態は、その可動膜を透過する光の強度を検出することにより電気的に出力させることができるとともに、当該可動膜は、第1の圧電膜により励振され、第2の圧電膜により当該可動膜の振動の状態を電気的に出力させることができる。これらにより、当該可動膜の物質固定能により固定された物質について、分子間力の測定とともに、当該分子の質量を測定することができる。つまり、可動膜に分子が固定されることにより、分子間力の作用により可動膜が撓むことから、その撓みに連動して透過光強度が変化するため、その測定結果により特定物質の存在を知ることができる。また、可動膜を励振させた場合の共振周波数は、固定された分子の量に応じて変化するため、分子が固定された状態の可動膜を励振し、その共振周波数を検出することにより、固定された分子の量(質量)を把握することができるのである。そして、質量と分子間力の双方を検出することにより、同じ質量でありながら分子間力が異なる場合を検知することにより、固定された物質の構造の変化をも検出することが可能となる。
さらに、可動膜が励振されて振動する状態における透過光の変化を光電流として検出することができることから、その変化により可動膜の振動状態を検知することができる。これにより、可動膜に設けた第2の圧電膜(検出電極)から検出される電圧の変化とともに、透過光強度の変化を同時に測定することができ、可動膜が振動していることを確認しつつ振幅の大きさを検出し可動膜の機械的共振点を特定することができる。
上記構成の発明における中空部は、前記受光素子の受光面に対向する所定範囲を開口するように形成されており、また可動膜は、該中空部の開口を閉塞するように形成されているものとすることができる。
この場合、中空部は可動膜によって水密的または気密的に閉塞可能であることから、検査対象となる気体または液体(以下、検体と称する場合がある)が、中空部に浸透するなどによって可動膜の裏面に吸着されることを回避し得ることとなる。
さらに、上記構成における中空部の開口を略円形とすることにより、前記可動膜を該中空部の開口を閉塞して略円形のダイヤフラム構造に形成し、前記第1および第2の圧電膜は、該可動膜の中央から同心の略円環の帯状に形成されるとともに、いずれも該中空部の開口端縁よりも中心側に配置されるように構成してもよい。なお、略円形とは、真円ではないものの円形と評価できるような形状を意味し、略円環状とは、真円による環状ではないものの円環と評価できる形状と、連続した円環のほかに一部が切欠かれた非連続な円環とを含む概念である。
このような構成の場合には、第1の圧電膜が略円環状に形成されているため、可動膜の周辺から当該可動膜全体を励振させることが可能になる。従って、励振による可動膜の振動状態を安定させることができる。また、第2の圧電膜も略円環状に形成されていることから、可動膜の振動の状態を可動膜全周から検知することができる。
そして、上記構成における第1および第2の圧電膜は、前記可動膜の表側または裏側のいずれか一方の面にのみ配置され、該第2の圧電膜は、該第1の圧電膜よりも該可動膜の中央側に間隔を有して配置されるように構成することができる。
このような構成の場合には、第1および第2の圧電膜は、ともに可動膜の表裏いずれかの面に形成されることから、励振と検出とが類似の条件で行われることとなる。なお、第2の圧電膜が第1の圧電膜よりも中央側に位置するため、励振する位置よりも可動膜の振幅が大きい位置において振動状態を検出することができ、当該可動膜の振動状態を確実に検出することができる。
上記各構成の発明においては、可動膜が、気体または液体に含まれる分子を固定する分子固定能を有する材料で形成されているものとすることができる。
上記構成によれば、特定のガス(例えは、可燃性ガスや環境に影響を与えるようなガス)および生体高分子などを測定することができる。ここで、可燃性ガスとしては、水素ガスやTNTまたはRDXなどの爆薬に含まれるガスなどを例示することができ、環境に影響を与えるガスとしては、二酸化炭素や二酸化窒素などを例示することができる。また、生体高分子としては、アミノ酸、核酸、多糖類などを含む高分子(例えば、抗体、デオキシリボ核酸(DNA)やリボ核酸(RNA)など)を例示することができる。さらに、分子固定能が抗体を固定する抗体固定能を有する場合には、可動膜の表面に予め抗体を固定し、この抗体に結合する特定のタンパク質(抗原)が前記抗体に結合する状態を検出・測定することも可能となる。
他方、上記構成の発明における可動膜として、柔軟な基礎膜と、該基礎膜の表面に分子固定能を有する材料を積層された分子固定膜とで構成したものを使用することができる。
上記構成の場合には、異なる種類の分子固定膜を積層すれば、検出・測定すべき対象物質に応じて、多種のセンサを構成することができる。分子固定膜としては、抗体を固定するためのパリレンAまたはパリレンAMを例示することができる。パリレンは、パラキシレン系ポリマーの総称であり、ベンゼン環がCHを介して繋がっている構造体であり、パリレンAは、側鎖にアミノ基を有するものであり、パリレンAMは、側鎖にメチル基−アミノ基が直列に結合している構造体であるため、当該アミノ基に抗体を結合させることができるものである。
なお、可動膜を前述のように複数の膜を積層する場合、同時に金属膜を積層することにより、ハーフミラーとして機能させることも可能である。ハーフミラーを構成することによりファブリペロー共振器の内部で干渉する波長の選択性を向上させることができるからである。この場合には、さらに、受光素子の受光面にも金属膜を積層する構成としてもよい。前記干渉波長の半値幅を狭くすることができるからである。
上記各構成の発明おける第1および第2の圧電膜は、ジルコン酸チタン酸鉛(PZT)により形成することができる。
上記構成によれば、圧電素子としてのPZTの反応感度により、可動膜に対し周波数を変更しつつ励振させる際の反応性が安定し、また、可動膜の振動の検出精度が向上し、共振点の検出に対する信頼性を向上させることができる。
また、上記各構成の発明においては、可動膜は、その表面が起伏を有する構成としてもよい。
この場合、可動膜の表面積が大きくなるため、特定物質(分子)が固定する絶対量を増大させることができる。なお、表面に起伏を有するとは、例えば、可動膜の表面側に適宜間隔で窪みを設けるような構成を例示することができる。そのほかに、表面側を敢えて平滑でない平面に仕上げるものであってもよい。
他方、特定物質の測定方法にかかる本発明は、前記各構成のいずれかの物理・化学センサを使用する特定物質の測定方法であって、前記第1の圧電膜に印加される電圧の周波数を変化させて可動膜の振動周波数を変化させるとともに、前記第2の圧電膜から出力される電圧に基づいて、前記可動膜の振動時における共振周波数を検出し、該共振周波数の変化量を前記可動膜に固定された特定物質の質量に換算することを特徴とするものである。
上記構成によれば、可動膜は第1の圧電膜によって励振され、その振動の状態は第2の圧電膜によって電気的に出力されることとなり、その振動が共振点において最も大きな振幅を示すこととなるため、当該第2の圧電膜から出力される電圧の大きさによって可動膜の振動の共振点を検知することができるのである。ここで、可動膜の表面に特定物質が固定されている場合とされていない場合とでは、可動膜の振動が変化することとなる。すなわち、可動膜表面の物質固定能により特定物質が固定されることにより、固定された当該特定物質の質量が可動膜に荷重として作用し、可動膜の振動が鈍くなり機械的共振点が変化するのである。従って、共振点の変化に応じて固定された特定物質の質量を検出することができるのである。なお、同時に受光素子における光電流を検出することにより、可動膜の透過光強度の変化を検出することができることから、分子間力の測定も同時に行うことができる。このとき、分子間力を測定する際には可動膜の振動は必須ではなく、振動しない状態で測定することができるものであるが、可動膜が振動する間の光電流を測定することにより、可動膜の振動の状態をも把握し得るものである。
また、特定物質の測定方法にかかる他の本発明は、前記各構成のいずれかの物理・化学センサを使用する特定物質の測定方法であって、複数の前記物理・化学センサを同一条件下で形成し、これらの複数の物理・化学センサを検出センサと参照センサに区分するとともに、前記可動膜が固定能を有する検出すべき物質の測定対象である気体または液体試料を検出センサにのみ供給し、前記両センサに対して同時に、前記第1の圧電膜に印加される電圧の周波数を変化させて可動膜の振動周波数を変化させるとともに、前記第2の圧電膜から出力される電圧に基づいて、前記可動膜の振動時における共振周波数を検出し、前記両センサの各共振周波数を比較することにより、両者の差分を該特定物質の質量に換算することを特徴するものである。
上記構成によれば、複数の物理・化学センサは、検出センサと参照センサとに区分されていることから、検体を検出センサにのみ供給することにより、特定物質が固定された場合と固定されていない場合との可動膜の共振周波数の相違を即座に検出し得ることとなる。つまり、検出センサと参照センサとを同時に作動させ、双方の共振周波数を検出することにより、その差分が特定物質の固定に起因するものであることが明らかとなるため、その差分から固定した特定物質の質量を把握することができるのである。なお、固定物質の質量と共振周波数との関係は実験的な統計によって得られる検量線を用いれば、その換算が一層容易となり得る。また、参照センサを検出センサと同一条件で形成するものとしたのは、振動する可動膜の表面には、第1および第2の圧電膜が積層されるため、これらが異なる条件で形成されることによって可動膜の共振周波数に差違が生じることを回避するためである。そして、検体として液体試料を供給する場合は、液体の重量または表面張力等により振動が微妙に変化することを想定し、参照センサ側には特定物質を含有しない液体を検体と同量供給して検出センサの出力と比較してもよい。
特定物質の測定方法にかかる上記発明においては、前記第1の圧電膜に電圧を印加した状態において、前記受光素子の受光面に対して光を照射し、特定波長の透過光強度の変化を光電流として計測することにより、該透過光強度の変化により前記可動膜の振動時における共振周波数を推定するものとしてもよい。
上記構成の場合には、第2の圧電膜から検出される可動膜の振動状態に加えて、当該可動膜の振動により変化する透過光強度の変化を検出することができ、光電流を計測することにより、可動膜の振動の状態を把握し、第2の圧電膜からの出力が可動膜の振動によるものであることを確認することができる。
物理・化学センサにかかる本発明は、その構成要素である可動膜が、励振により振動する可動膜として機能するほか、ファブリペロー共振器の一部を構成するものであることから、ファブリペロー共振器を利用したセンサの効果を保持しつつ、圧電方式による質量計測を可能にするものである。つまり、可動膜の透過光強度の変化によって、可動膜表面に固定された物質の存在を確認することができることに加えて、当該可動膜を励振し、それに伴って振動する可動膜の共振点を検出することにより、固定された物質の質量を測定することができるものである。これらのセンサは半導体プロセスを利用することにより、極めて小型に作製することができ、半導体基板上に形成するとこによって集積化が可能となる。
また、可動膜はファブリペロー共振器のための中空部を構成するために形成されることから、可動膜の表側の表面のみがセンサ外部に露出している状態となっており、裏側の表面は中空部を介して受光素子の受光面に対向した状態で設けられることとなり、検体に含まれる特定物質が可動膜の裏側に吸着されることを回避し得るものである。これにより、測定値の影響の懸念を払拭することができる。また、可動膜の裏側に特定物質が吸着されないことから、当該可動膜裏側表面の吸着防止のための処理を不要し、作製のための工程数の増加および複雑化を解消させることができる。
他方、特定物質の測定方法にかかる本発明は、可動膜の透過光の強度変化および振動時の振幅の大きさについて、いずれも電気的な出力を可能にすることから、これらの検出値を電気的に処理することができる。従って、可動膜に固定される特定物質の有無を確認するとともにその質量をも瞬時に測定することができる。
また、検出センサと参照センサの二種類のセンサを使用することにより、その差分を容易かつ適時に検出することができ、その測定精度を向上させることができる。そして、可動膜の振動状態は、第2の圧電膜からの出力の他に受光素子からの出力によっても確認することができ、検出電極から出力される信号がクロストーク等によって誤っている場合であっても、そのことを把握することができる。従って、検出結果の信頼性を向上させることができるものである。
物理・化学センサの実施形態の概略を示す説明図である。 物理・化学センサの平面視における状態を示す説明図である。 図2におけるIII−III線の切断部端面を示す説明図である。 作製方法の一例を示す説明図である。 作製方法の一例を示す説明図である。 作製方法の一例を示す説明図である。 実験に使用したセンサの概略を示す説明図である。 実験に使用したセンサのSEM写真である。 実験結果を示すグラフである。 実験結果を示すグラフである。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、物理・化学センサにかかる発明の実施形態の概略を示す図であり、図2は一つのセンサの正面視における状態を示し、図3は部分的な切断部端面を示す図である。これらの図に示すように、本実施形態は、フォトダイオード(受光素子)1の受光面に、中空部2を介して可動膜3が形成され、これらによってファブリペロー共振器が形成されるとともに、可動膜の表面に第1の圧電膜4および第2の圧電膜5が積層されている。
中空部2は、フォトダイオード1の表面に積層された酸化膜を部分的に除去して構成され、上部が開口しており、その開口を閉塞するように可動膜3が設けられている。この可動膜3は、柔軟な薄膜を形成するため、パリレンCまたはパリレンNなどが蒸着されたものが使用される。特に、表面側に物質固定能を発揮させるために、当該パリレンCまたはパリレンNの表面に当該固定能を有する材料(物質固定材料)を積層してもよい。また、特定物質がタンパク質(抗原)である場合は、可動膜3をパリレンAまたはパリレンAMによってプローブ分子(特定の抗体)を固定するように構成すれば、当該プローブ分子(特定の抗体)にのみ結合するタンパク質(抗原)を検出することができる。可動膜3を構成する前記構成材料(膜部構成材料)は、中空部2の上部の開口よりも外方を含む広い範囲に積層されており、中空部2の開口部分に位置する範囲が可動領域となっている。この可動領域によって、ダイヤフラム構造の可動膜3が形成されているのである。
上記中空部2を略円形に開口するように構成することにより、膜部構成材料の可動域を略円形に形成することができる。そこで、この略円形の可動領域(可動膜3)の周辺近傍に圧電膜4,5を略円環の帯状に積層することにより、当該可動領域(可動膜3)を周辺から励振させ、また、振動時の振幅を可動領域(可動膜3)の全周から検出することができる。また、圧電膜4,5に電圧を印加し、または、検出した電圧を出力するために、第1の圧電膜4には駆動側の電極が、第2の圧電膜には出力用の電極が、それぞれ接続されるとともに、両圧電膜4,5の下層にはベース電極6が積層されている。これらの電極は図中に明確に表示していないが、外部の電源回路と接続するための配線40,50と接点41,51,61が基板上に設けられている。
このように、このダイヤフラム構造の可動膜3の周辺近傍には、第1および第2の圧電膜4,5が積層されているのであるが、これらの圧電膜4,5は、可動膜3の表側と裏側の表面に分けて設けてもよいが、同じ側の表面に設ける構成とすることができる。同じ側の表面に設ける場合には、第2の圧電膜5は、第1の圧電膜4よりも可動領域(可動膜3)の中央に近い位置に形成されている。これは、周辺よりも振動しやすい位置において、可動膜3の振動により励起される電圧を検出させるためであるが、両圧電膜4,5が重複しないようにするためでもある。これらの第1および第2の圧電膜4,5は、前述のように、略円環の帯状に積層されるものであり、それぞれの略円環形状は同心とし、可動領域の中央から異なる径としている。ここで、略円環とは、真円による円環ではなく円形による円環と評価し得るものを含み、連続した円環と一部が非連続となった状態を含む状態を意味している。従って、両圧電膜4,5が略円環の帯状に形成されるが、第1の圧電膜4は、第2の圧電膜5への通電のために一部を欠いた状態で非連続としている。なお、これらの圧電膜4,5はいずれもジルコン酸チタン酸鉛(PZT)によって形成されている。また、可動膜3の同じ側の表面に両圧電膜4,5を形成する場合であって、物質固定材料を可動膜3に積層する場合には、圧電膜4,5の表面にも物質固定材料が積層されることとなるため、圧電膜4,5は可動膜3と物質固定材料との中間に配置された状態で形成される場合もあり得る。
第1の圧電膜4には、適宜範囲で周波数を変更し得る周波数電圧が印加されるものであり、第2の圧電膜5によって出力される電圧は可動膜3の振動に応じた周波数とともにその大きさが検出される。すなわち、第1の圧電膜4に対して、印加する電圧(入力電圧)の周波数を変化させることにより、可動膜3に与える振動の周期を変化させ、振幅(出力される電圧)が最も大きくなる状態(共振点)を検出するのである。この共振点における入力電圧の周波数を共振周波数とし、当該共振周波数の変化によって特定物質の可動膜3の固定状態を把握するのである。
また、可動膜3は、光の透過性を有する材料(前記パリレン等)によって構成することにより、ファブリペロー共振器による共振する光の波長を観察することができる。光(特定波長の光)を透過する材料により可動膜3が構成されれば、可動膜3の外方からフォトダイオード1の受光面に向かって光を照射することにより、可動膜3を透過する特定波長の強度変化を観察するのである。すなわち、可動膜3に特定物質が固定されることにより分子間力によって可動膜3が撓むこととなるから、その撓みによって、フォトダイオード1の受光面と可動膜3との距離が変化することとなり、その変化に応じてファブリペロー共振器によって共振される光の波長が異なることとなる。そして、特定の波長の光の強度に着目すれば、当該特定波長の強度の変化により、可動膜3の撓みの状態を検出することができるのである。従って、フォトダイオードによる透過光の強度を計測することにより、分子間力を検出し得ることとなる。
また、可動膜3に金属材料を使用することによりハーフミラーを構成させてもよく、特定物質の固定能を有する貴金属(金、白金、パラジウム等)を堆積させて、プローブ分子(抗体)以外の物質の固定能を発揮させるとともに、ハーフミラーを構成させることも可能である。なお、可動膜3は、前記パリレンに限らず、ヤング率の低いものを使用することができ、また、貴金属を堆積する場合には堆積量を僅少とすることにより、可動膜3のヤング率の増大および光の透過率の低下を抑えることができる。このように、可動膜3にハーフミラーを構成することによって、ファブリペロー共振器の内部で干渉する波長の選択性を向上させることができる。さらに、受光素子の受光面にも金属膜を積層することにより、ハーフミラーの効果を向上させ、干渉波長の半値幅を狭くするように構成してもよい。
本実施形態は、上記のような構成であるから、可動膜3は、フォトダイオード1の受光面との間ファブリペロー共振器を構成しつつ、同時に、振動可能な可動膜として機能し得ることとなる。つまり、この可動膜2は、特定物質を固定すると撓みを生じて特定波長の透過光強度を変化させることができるとともに、所定の周波数で励振されると、その周波数に応じて振動し得るものである。
従って、可動膜3の振動の状態は第2の圧電膜5を介して電圧として出力されることとなり、また、可動膜を透過する光の強度を光電流として電気的に出力させることができることとなる。この両出力を解析することにより、可動膜3に固定され得る物質についての分子間力を測定するとともに、当該物質の質量を測定することができるのである。
なお、特定波長の透過光の強度の検出は、可動膜3が振動する状態においても可能であることから、その透過光の強度の変化によって、可動膜3の振動状態を検知させてもよい。これにより、検出電極5から検出される電圧の変化とともに、透過光強度の変化を同時に測定し、可動膜3が振動していることを透過光強度により確認しつつ、振幅の大きさを検出電極の出力により測定することも可能になる。
また、本実施形態の可動膜3はダイヤフラム構造に設けられているため、中空部2は可動膜3によって水密的または気密的に閉塞可能となっている。従って、検体が中空部内に浸透することを回避できる。それとともに、可動膜3の裏面は中空部内にのみ存在するから、当該可動膜3の裏面に検体(に含まれる特定物質)が吸着されることを回避できるのである。
次に、上記実施形態の作製方法の概略を説明する。上記の実施形態は、専ら半導体プロセス技術により作製することができ、各構成部材をナノオーダーまたはミクロンオーダーで作製することが可能となり、非常に小型のセンサを作製することができるものである。そこで、上記実施形態の構成は、ファブリペロー共振器を構成する可動膜3の表面に圧電膜4,5を積層したものであることから、まず、ファブリペロー共振器を作製し、さらに、圧電膜4,5の積層工程を行うこととなる。ファブリペロー共振器の作製方法は、前掲の特許文献1において詳細に開示されており、可動膜3の下層に犠牲層を形成し、当該犠牲層をエッチングする方法や、貼り合わせによる方法がある。
図4および図5は、作製の手順の該略を示す図である。この図に示すように、ファブリペロー共振器を作製した状態では、既に可動膜3が形成されており(図4(a)参照)、この可動膜3にベース電極を形成し、圧電膜4,5を積層するのである。図4(b)に示すように、可動膜3が、物質固定能を有する材料によって形成されている場合は、その可動膜3の表面に圧電膜4,5を積層することとなる。圧電膜4,5の材料としてPZTを使用する場合には、スパッタ法またはゾルゲル法などにより積層することができる。なお、可動膜3が物質固定能を有しない場合には、可動膜3の表面に物質固定材料を積層したうえで、圧電膜4,5を積層してもよく、圧電膜4,5を積層した状態で、全体を物質固定材料によって被覆させてもよい。
また、図5(a)に示すように、フォトダイオード1を形成し、その受光面に所定の間隙20を形成したうえで、可動膜3を貼り合わせて作製することも可能である。この場合には、可動膜3を貼り合わせる前に、当該可動膜3には圧電膜4,5を予め積層させておくのである。このときの可動膜3についても、物質固定能を有する可動膜3の場合には、予め可動膜3の表側または裏側の表面のいずれか(図は表側表面)にPZTをスパッタ法またはゾルゲル法などによって積層することができ、また、物質固定能を有しない可動膜3の場合には、PZTの積層後に物質固定材料を積層してもよい。
さらに、可動膜3が物質固定能を有しない場合においては、図6(a)に示すように、可動膜3(基礎膜31)に物質固定材料による膜(物質固定膜32)を積層し、その表面に圧電膜4,5を積層したうえで貼り合わせる方法もあり得る。この場合、基礎膜31と物質固定膜32とが一体化して可動膜3として機能させることができる。なお、ファブリペロー共振器にハーフミラーを具備させる場合には、図6(b)に示すように、フォトダイオード1の受光面に金属膜33を積層し、さらに、可動膜3(基礎膜31と物質固定膜32との中間)に金属膜34を積層させるように構成し、両者を貼り合わせることにより作製することができる。
なお、上記における基礎膜31としては、パリレンCまたはパリレンNなどを使用することができ、物質固定膜32としては、パリレンAまたはパリレンAMなどを使用することができる。物質固定膜32は、分子固定膜を含む広い概念であるが、パリレンAまたはパリレンAMを使用する場合には、抗体分子などを固定させることができる。
次に、前記実施形態に示した物理・化学センサを使用する特定物質の測定方法について説明する。なお、ここで使用する物理・化学センサ(以下、単にセンサと称する場合がある)は、上記の実施形態に示した構成であるが、種々の変更を加えてものであってもよく、集積化したものを使用する場合もある。
ます、第一の測定方法は、次の手順によるものである。(1)センサの初期値を検出するために、検体を供給する前の状態における透過光の強度を検出する。(2)検体供給前の状態における可動膜の共振周波数を検出するため、周波数を変更しながら第2の圧電膜に電圧を印加し、第2の圧電膜からの出力によって最も電圧の大きい周波数を検出する。(3)検体をセンサの可動膜表面に供給し、透過光強度を測定する。このとき、透過光強度が変化する場合には、特定物質が固定した状態と判断される。透過光強度に変化がない場合には、検体中に特定物質が存在しないものと判断される。(4)特定物質が固定されたと判断される場合には、周波数を変更しながら再度励振し、共振周波数を検出する。このとき、共振周波数の変化に応じて質量を算出する。共振周波数に変化による質量の算出は、従来のカンチレバーにおける共振周波数の例を参照することのほか、上記実施例の構成によるセンサ独自の関連性を統計的に導き出し、統計値から質量を算出することによることができる。
上記の手順による測定方法によれば、特定物質が固定されたか否かは、ファブリペロー共振器による透過光強度の変化によって明確に把握させる。そのうえ、固定された特定物質の質量は、可動膜の振動が共振点となる周波数によって算出されることとなる。従って、一度の検体の供給によって、特定物質の存否とともに質量をも測定することが可能となる。また、前記透過光強度により固定された物質の分子間力を測定することができることから、分子間力と質量との関係性に基づいて、固定物質の種類や状態などを検出することも可能となる。特に、質量が同じであるにもかかわらず、分子間力が異なる場合は、固定された物質が変化(変質)したことを検出することも可能となる。
また、可動膜に使用され(または積層される物質固定膜による)物質固定能は、特定物質を固定するものに限定する場合、当該特定物質について測定することを可能にする。さらに、医療分野におけるラベルフリー検査においては、例えば、物質固定能を有するものとしてパリレンAまたはパリレンAMを使用し、特定の抗体(プローブ分子)を固定させることにより、この抗体に結合する特定の抗原(タンパク質)を検出することが可能となる。当該抗体の種類を適宜変更することにより、当該抗体に結合する特定の抗原の固定を把握し得るのである。なお、この場合の測定方法においては、センサの初期値を検出する際に、事前に抗体を可動膜の表面に固定させておくことが必要である。また、複数のセンサを集積化し、個別に異なる抗体を予め固定することにより、一度の検体の供給により、複数の抗原の検出・測定を可能にすることができる。
他の測定方法としては、複数のセンサを使用し、これらを検出センサと参照センサとに区分し、検出センサにのみ検体を供給するものがある。なお、検出センサおよび参照センサは、同じ条件で作製されたものを使用する。この場合は、次の手順によることとなる。(1)検出センサにのみ検体を供給する。(2)検出センサおよび参照センサの双方について、透過光強度を測定し、その差分によって特定物質が固定されたか否かを判断する。(3)固定されている場合には、両センサの可動膜を励振し、その共振周波数の差分を検出する。(4)このときの共振周波数の差分によって質量を換算する。
上記手順によれば、各センサの初期値を毎回検出する必要がないため、短時間における特定物質の検出・測定が可能となる。なお、上記手順においても、可動膜の共振周波数の検出には、第1の圧電膜に印加する電圧の周波数を変化させ、第2の圧電膜から出力される電圧の最も大きい周波数を共振周波数とするものである。
このように複数のセンサを検出センサと参照センサに区分する場合、参照センサを単一とし、検出センサのみを複数設けることにより、各検出センサによって検出される検出値を単一の参照センサと比較することができるほか、両センサを同数用意し、1対1で比較するようにしてもよい。例えば、医療分野におけるラベルフリー検査においては、検出センサの可動膜に特定の抗体を予め固定させ、その後、当該抗体に結合する抗原の固定を検出する方法があり得るため、検査前に固定した抗体の状態を検出センサと参照センサとで同様にしておくのである。事前に固定される抗体が異なる種類である場合には、分子間力および質量が異なる場合もあるため、検出センサの検出結果と比較すべき参照センサを1対1で対応させるのである。なお、この場合においてもセンサを集積化させ、同時に複数の出力データを検出可能にすることができるものである。
本発明の測定方法にかかる実施形態は、上記のとおりであるが、上記測定方法に加えて、可動膜の励振中に透過光強度を同時に検出するような測定方法であってもよい。すなわち、透過光強度の検出は、上述のように、専ら分子間力の計測に使用されるものであるが、振動による可動膜の変形については、周波数が変化する場合、その変形(撓み)に応じて変化する透過光強度を検出することが可能である。そこで、可動膜の共振点を検出する際に、透過光強度を同時に計測することにより、その振幅の大きさ(撓みの変化量)をも検知することができることから、当該振幅の最も大きい状態を稼動膜の共振点と判断することも可能となる。ただし、振幅の大きさの変化の相違は明確に把握できない場合もあり得るため、補助的ないし確認的に透過光強度の検出値を利用することとなる。特に、クロストーク等によって第2の圧電膜から何らかの電圧値が出力される場合などを想定すれば、第2の圧電膜からの出力される電圧値が振動によるものであることの裏付けデータとして使用することが有効である。
本発明の実施形態は以上のとおりであるが、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではない。例えば、上記センサの実施形態において、第1および第2の圧電膜4,5は、可動膜3の表側表面にのみ設置したものを例示したが、裏側表面に設置する構成であっても同様の効果を発揮させることが期待できる。また、第1の圧電膜と第2の圧電膜とが、可動膜の表裏に分かれて設置してもよい。この場合、ベース電極を可動膜の表裏にそれぞれ設けることとなるが、クロストークが生じる可能性を小さくすることができる。さらに、上記実施形態では、受光素子としてフォトダイオードを例示したが、これに限らず他の受光素子を使用することができる。
<実験例>
次に、第1の圧電膜によって可動膜を励振し、その振動を第2の圧電膜によって検出し得るかについて実験したので、当該実験例について説明する。
実験に使用したセンサは、シリコン基板の表面をエッチングし、中空部を構成し、残りの薄膜状のシリコンを可動膜として使用した。この可動膜の周辺には、共通のベース電極を積層し、さらに、このベース電極の表面に膜厚を1μmとしたPZTを略円環の帯状に同心で二種類積層した。そして、外側のPZTを駆動側、内側のPZTを検出側とし、駆動側のPZTには周波数を変化しつつ電圧を印加し、検出側のPZTから出力される電圧を測定した。なお、可動膜の表面積を大きくするため、可動膜の表面には、一部をハーフエッチングし、略円柱状の突起部を複数形成させた。その概略を図7に示し、SEM写真を図8に示す。ここでは、振動の周波数検出のための可動膜を形成したため、フォトダイオードおよびこれに伴うファブリペロー共振器は作製していないが、ファブリペロー共振器による膜部の撓み(分子間力)の検出は、既に前掲の特許文献1において記載されている。
上記実験用のセンサを使用して、低い周波数の電圧を駆動側のPZTに印加し、徐々に周波数を高くする実験を行った。その結果、300kHzの電圧を印加した状態では共振していなかった可動膜は、393kHzの電圧を印加したときに共振することとなった。そのときの入力周波数と検出電圧の関係を図9に示す。図9(a)は非共振時を示し、図9(b)は共振時を示している。なお、図9(a)および(b)には、参考のためにドップラ振動計による出力のグラフ(Diaphragm motion(LDV)と表示しているもの)も併せて表示している。この実験結果から明らかなとおり、共振時における出力電圧は、非共振時の出力電圧よりも大きくなっている。これは、可動膜の振幅が大きくなっていることを示しており、共振点を把握することができるものである。なお、本実験結果では、非共振時に電圧が出力されており、ドップラ振動計によるものと異なるものであるが、これはクロストークが原因であるものと推定される。
また、可動膜の変位(ドップラ振動計による計測値)と検出側のPZTにより計測される電圧との変化を図10(a)に示す。また、駆動側のPZTに対する印加電圧の大きさと、可動膜の振幅(ドップラ振動計による計測値)および検出側のPZTから出力される電圧値との関係を図10(b)に示す。これらの結果から明らかなとおり、ドップラ振動計による計測値と検出側のPZTから出力される電圧値は、相互に共通している。このことから、検出側のPZTから出力される電圧値によって可動膜の振動の状態を把握し得るとともに、可動側のPZTに印加する電圧の大きさを変化させることにより、可動膜の振幅を調整し得るものである。
以上より、駆動側のPZTにより振動させた可動膜の共振点を検出側のPZTによって検出し、その共振時における周波数を検出することにより、固定膜の質量測定が可能となるものである。
なお、上記実施形態では、圧電膜の材料としてPZTによるもので説明を行ったが、Nbドープしたジルコン酸チタン酸鉛ニオブ(PNZT)を始めとするペロブスカイト型強誘電体材料や、窒化アルミニウム(AlN)を始めとする非鉛系圧電材料、高分子圧電材料(PVDF(ポリフッ化ビニリデン)やポリ酪酸)なども利用可能である。
1 フォトダイオード(受光素子)
2 中空部
3 可動膜
4 第1の圧電膜
5 第2の圧電膜
A 抗体
L 光源
31 基礎膜
32 物質固定膜

Claims (11)

  1. 受光素子の受光面の表面との間で中空部を形成するように設けられたダイヤフラム構造の可動膜と、
    この可動膜の表側または裏側の表面に配置され、該可動膜を励振する第1の圧電膜と、
    前記可動膜の表側または裏側の表面に配置され、該可動膜の振動により発生する電圧を検出する第2の圧電膜とを備え、
    前記可動膜は、少なくとも外側表面に物質固定能を有するとともに、前記受光面の表面とでファブリペロー共振器を形成するものであることを特徴とする物理・化学センサ。
  2. 前記中空部は、前記受光素子の受光面に対向する所定範囲を開口するように形成されており、前記可動膜は、該中空部の開口を閉塞するように形成されている請求項1に記載の物理・化学センサ。
  3. 前記中空部の開口は略円形であり、前記可動膜は該中空部の開口を閉塞して略円形のダイヤフラム構造に形成されており、前記第1および第2の圧電膜は、該可動膜の中央から同心の略円環の帯状に形成されるとともに、いずれも該中空部の開口端縁よりも中心側に配置されている請求項2に記載の物理・化学センサ。
  4. 前記第1および第2の圧電膜は、前記可動膜の表側または裏側のいずれか一方の面にのみ配置され、該第2の圧電膜は、該第1の圧電膜よりも該可動膜の中央側に間隔を有して配置されている請求項3に記載の物理・化学センサ。
  5. 前記可動膜は、気体または液体に含まれる分子を固定する分子固定能を有する材料で形成されている請求項1ないし4のいずれかに記載の物理・化学センサ。
  6. 前記可動膜は、柔軟な基礎膜と、該基礎膜の表面に分子固定能を有する材料を積層した分子固定膜とを備える構成である請求項1ないし4のいずれかに記載の物理・化学センサ。
  7. 前記第1および第2の圧電膜は、ジルコン酸チタン酸鉛(PZT)により形成されている請求項ないし6のいずれかに記載の物理・化学センサ。
  8. 前記可動膜の表面は起伏を有して成膜されている請求項1ないし7のいずれかに記載の物理・化学センサ。
  9. 請求項1ないし8のいずれかに記載の物理・化学センサを使用する特定物質の測定方法であって、
    前記第1の圧電膜に印加される電圧の周波数を変化させて可動膜の振動周波数を変化させるとともに、前記第2の圧電膜から出力される電圧に基づいて、前記可動膜の振動時における共振周波数を検出し、該共振周波数の変化量を前記可動膜に固定された特定物質の質量に換算することを特徴とする特定物質の測定方法。
  10. 請求項1ないし8のいずれかに記載の物理・化学センサを使用する特定物質の測定方法であって、
    複数の前記物理・化学センサを同一条件下で形成し、これらの複数の物理・化学センサを検出センサと参照センサに区分するとともに、前記可動膜が固定能を有する検出すべき物質の測定対象である気体または液体試料を検出センサにのみ供給し、
    前記両センサに対して同時に、前記第1の圧電膜に印加される電圧の周波数を変化させて可動膜の振動周波数を変化させるとともに、前記第2の圧電膜から出力される電圧に基づいて、前記可動膜の振動時における共振周波数を検出し、前記両センサの各共振周波数を比較することにより、両者の差分を該特定物質の質量に換算することを特徴する特定物質の測定方法。
  11. 前記第1の圧電膜に電圧を印加した状態において、前記受光素子の受光面に対して光を照射し、特定波長の透過光強度の変化を光電流として計測することにより、該透過光強度の変化により前記可動膜の振動時における共振周波数を推定するものである請求項9または10に記載の特定物質の測定方法。
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