JP6282002B2 - 鋼製品の熱処理方法 - Google Patents

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Description

本願発明は、炭素鋼や合金鋼を素材とした鋼製品(鋼製部材)の熱処理方法に関するものである。なお、合金鋼には、クロム鋼やモリブデン鋼、クロム−モリブデン鋼、ベアリング鋼、ステンレス鋼など、鉄(Fe)を主成分とする各種のものが含まれる。また、鋼製品には、ボルト類、タッピングねじ類、打込み式ピン類等のファスナや、各種軸類、ギア類、シャフト類、ベアリング類などの多種多様のものが含まれる。
鋼製品の熱処理には焼入れ及び焼き戻し並びに調質などがあり、この熱処理方法として、大気圧ガス雰囲気炉(大気炉)や減圧(真空) ガス雰囲気炉(真空炉)を使用して、鋼製品を高温ガスに晒す方法(ガス処理法)が広く使用されている。これら炉とガスを使用した浸炭熱処理の場合は浸炭焼入れや浸炭窒化焼入れなどがあるが、鋼製品の熱処理に使用されるガスに含有される炭素量は、素材の炭素鋼や合金鋼に含有されている炭素量に応じた「カーボンポテンシャル(平衡炭素濃度%)」によりコントロールされる。
このカーボンポテンシャルの供給源(炭素源)として「プロパン(C38)」や「アセチレン(C22)」などが主流となっているが、処理行程で「水素(H2)」が発生する。水素は全ての元素の中で分子量が最も小さいため、鋼の粒界に容易に浸入できるという性質があり、これに起因する鋼製品破断の「遅れ破壊( 水素脆性) 」が問題となっている。
そこで、熱処理段階での水素吸蔵は不可避として、熱処理・焼入れの後で鋼製品から「水素」を除去することが提案され、或いは実施されている。例えば、焼戻しで水素を除去する(例えば特許文献1)、鋼製品を焼戻し温度以下の温度に保温して水素を除去する(例えば特許文献2)、と言った方法である。
水素は大気中や潤滑剤などにも含まれているため、焼入れ後に外部から水素が鋼製品に浸入すると、やはり水素脆性の問題が現れる。そこで、焼入れ後の水素の浸入を防止するための手段として、鋼製品表面をショットピーニング加工することも行われている( 例えば特許文献3)。
特開平05−255733号公報 特開平11−029820号公報 特開平07−292412号公報
水素に起因した鋼製品の遅れ破壊(水素脆性)は、水素自身によって引き起こされるというのが一般常識であり、また、熱処理工程時に水素吸蔵は発生せず、水素吸蔵は、熱処理後の表面処理時(特に、電気メッキ時) に発生すると言われていた。
水素脆性に起因した鋼製品の破断面には粒界破面が観察されるが、水素脆性が水素の存在によって引き起こされるとの一般常識が正しければ、熱処理工程における焼戻し等で水素を完全に除去すれば遅れ破壊の現象は生じないはずであるし、破断面は粒界破面ではなく延性破面を呈するはずである。
しかるに、本願発明者たちが過共析、共析、亜共析の各カーボンポテンシャルで熱処理された炭素鋼及びクロム・モリブデン鋼の試験片(棒材)を引っ張り試験して破断面を仔細に観察したところ、熱処理工程での焼戻しによって水素が完全に除去されたはずにもかかわらず、いずれの試験片にも破断面に粒界破面(図12参照)が見出された((B)は(A)の部分拡大図である。)。
このような一般常識と異なる結果を目の当たりにして、本願発明者たちは熱処理工程時における水素吸蔵を疑い、焼入れ、および、焼戻し、それぞれの工程時における拡散性水素量の測定を行った。その結果、焼入れ時には多量の水素吸蔵が認められるが、焼戻し時には遅れ破壊を誘引させる量の水素は認められなかった。
しかし、この水素が放出されているはずの試験片の破断面に水素吸蔵の痕跡を示す脆性破面が観察されることから、試験片(炭素鋼(SWCH22A))を研磨し、ナイタール液にて腐食し、これを電子顕微鏡で観察したところ、図13に表示しているように、鋼製品の浸炭硬化層深さまでに達する無数の空孔(隙間)Sが存在していることを見出した。水素吸蔵の痕跡を示す粒界破面と同じ箇所に空孔Sが存在していることから、この空孔Sは熱処理時に鋼中に浸入し放出された水素の痕跡だと信じるに至った。
つまり、焼入れ時に鋼製品に表層部から浸入した水素は、焼戻しにより放出されたといえど、その放出時に形成された無数の空孔Sが粒界に存在し続けているため、粒子間の結合が低下したままになっており、結果として、製品強度の低下を招いていると推察される。また、大きな空孔Sが無数に存在することから、実際の使用に供された後に発生するであろう遅れ破壊現象の誘引となる可能性は高いと推測される。
このように、熱処理工程において水素が鋼中に侵入すると、鋼製品の表層部の破断面は水素吸蔵に起因した脆性破面を呈し、しかも、水素放出の痕跡を示す空孔Sが残留していて遅れ破壊の原因になっていると思われることから、焼入れ等の熱処理時に水素の侵入を防止することが重要となる。
本願発明は、このような研究と分析に基づく知見を基礎にして成されたものであり、水素吸蔵に起因する遅れ破壊が生じ難い、或いは、生じない、高強度の鋼製品を供給することを主たる目的とするものである。
本願発明は多くの構成を有するが、請求項1〜5で典型例を特定している。このうち請求項1の発明は上位概念をなすもので、
「高温雰囲気の炉内において鋼製品を880〜1050℃の炭素化合ガスに晒すことにより、前記鋼製品の機械的性質を高める熱処理方法であって、
前記炭素化合ガスはその全部又は大部分がCOガス又はCO2 ガスであり、
水素が全く又は殆ど存在しない状態か、若しくは、存在しても非水素系炭素含有ガスを添加して水となすことによって前記鋼製品に浸透しないように不活性化された状態の下で処理が行われる」
ものである。
請求項2の発明では前記炉として真空炉が使用されており、請求項3の発明では、前記炉として大気炉が使用されている。請求項4の発明では、前記熱処理は、焼入れ及び焼き戻し若しくは調質のうちのいずれか1つ若しくは複数が行われる
請求項5の発明は、請求項1〜4のうちのいずれかにおいて、前記炉の内部に、前記炭素化合ガスから炭素が分離することを助長する触媒が配置されている。
本願発明では、熱処理時に炉内において水素が鋼製品に侵入することはないため、鋼製品の表層に浸炭層を形成するにおいて、水素に起因した空孔が発生することはない。従って、使用中の鋼製品が突然破断する水素脆性(遅れ破壊)の問題は発生せず、鋼製品は高い強度と耐久性を確保することができる。また、水素を除去するための焼戻しや保温の工程は不要であるため、それだけ工数を抑制できると共に、高い硬度を維持できる。更に、水素吸蔵に起因した空孔の発生がないため、耐蝕性の向上にも貢献できる。
本願発明は請求項2のように真空炉に適用したり、請求項3のように大気炉に適用したりすることができるが、真空炉は鋼製品への炭素の浸透効率に優れているため、焼入れに好適である。また、他方、大気炉は大量の鋼製品を処理できる利点がある。
本願発明は請求項4のように各種の熱処理に適用できるが、いずれにしても、鋼製品への水素吸蔵を防止して品質を向上できる。
本願発明では、炭素化合ガスとしてCOガス又はCO2 ガスが使用されており、水素を分離する必要がないため、それだけ工程を簡素化できると共に、品質も安定化できる。炭素の分離性や入手の容易性等を考慮すると、一酸化炭素(CO)ガスが好適である。
処理ガスとしてキャリアガスとエンリッチガスとを使用することがあるが、本願発明においてキャリアガスを使用する場合は、キャリアガスを鋼製品に対して不侵入(不拡散) のガスとすることで、鋼製品に吸蔵される水素を無くすか又は最小限とすることができる。鋼製品に対する不浸入(不拡散) ガスには「窒素(N2 )」、「アルゴン(Ar)」、「ヘリウム(He)」などが好適である。「エンリッチガス」には、COガス又はCO 2 ガスを適量に添加する。
炭素化合ガスとして一酸化炭素(CO)」を使用した場合、鋼製品の界面での化学反応は、Fe+2CO= [Fe−C]+CO2 というブードワ反応となる。当然ながら、処理時に水素の発生はなく、従って、鋼製品への水素の吸蔵を考慮する必要はない。
そして、ブードワ反応により、鋼製品の界面に炭素Cが取り込まれて酸素Oが分離される。この酸素Oが一酸化炭素と結合するケースや、処理鋼製品の表面を酸化させるケース、更には、酸素(O2 )となるケースも想定されるので、一酸化炭素の投入量は計算値よりも多い方が好ましい。浸炭により鋼中に炭素が取り込まれたのちの炉内雰囲気として、二酸化炭素(CO2 )とするのが最適であろう。
熱処理において、エンリッチガスとして炭化水素系ガスを使用した場合、炭化水素系ガスに含まれる水素は、非水素系炭素含有ガスを適量添加することで「水(H 2 O)」として不活性化できる。
エンリッチガスとしてプロパンガス(C 3 8 )を使用して、非水素系炭素含有ガスとして一酸化炭素(CO)を使用した場合の化学反応式は、
3 8 →3(C)+8(H)
3 8 +4CO→7(C)+4H 2
となり、従来の方法に比べて、プロパンガス量は3/7になる。炭化水素系ガスの水素を不活性化させるための非水素系炭素含有ガスとしては、一酸化炭素(CO)に代えて、酸素やオゾン、空気なども使用できる。
さて、図14に示すのは、非特許文献である論文『デンソーテクニカルレビューVOL5 NO1 2000「アセチレンを用いた真空浸炭法」(株式会社デンソー)』にFig9,12として掲載されているグラフであり、図14(A)では、材料ガスとしてのC24,CHnが処理品(鋼製品)無しの炉でどのように反応するかを示すかを表示し、図14(B)では、材料ガスとしてのC2 4,CHn が処理品有りの炉でどのように反応するかを表示している(論文の図にはプロット点を表示しているかが、図14ではプロット点は捨象している。)。
この図14における(A)(B)の比較から、炉に鋼製品(処理物)を入れると材料ガスが分離して水素ガス(H2)が大量に発生していることを読み取ることができるが、このことは、鋼製品自体が触媒の働きをして、材料ガスの分離を助長していることを証明していると推測される。真空炉や大気炉を使用した熱処理において、材料ガスの一部が熱分解していることは明らかであり、また、従来から、鋼製品が触媒の働きをしていると推測されてはいたが、デンソーテクニカルレビューVOL5 NO1 2000の論文は、従来の推測が正しかったことを証明していると云える。
そして、本願発明においても、請求項のように炉内に触媒を設けることにより、ガスの分離を促進して効率的かつ安定的な熱処理を実現できると期待される。触媒としてはニッケル、銅、チタン、金、銀、白金などの各種の金属を使用可能であり、また、触媒の配置なども種々考えられる。その例は実施形態で明らかにしている。
第1実施形態に係る装置の概念図で、(A)は縦断正面図、(B)は炉の側面図である。 第2〜4実施形態を示す図である。 第5実施形態を示す図である。 第6〜9実施形態を示す図である。 第10実施形態を示す図である。 第11実施形態の模式図である。 第12実施形態の概念図である。 第1参考例の模式図である。 第2参考例の模式図である。 第3参考例の模式図である。 (A)は第4参考例の部分的な概念図、(B)は第5参考例の部分概念図である。 従来の鋼製品の破断状態を示す顕微鏡写真である。 従来において水素が存在した痕跡を示す顕微鏡写真である。 非特許文献の一部を抜粋したグラフである。
(1).第1実施形態に使用する装置の概要
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。まず、図1に示す第1実施形態を説明する。この第1実施形態は真空炉を使用した熱処理(真空浸炭)に具体化したもので、炉1は一端を開口した有底円筒形の本体2を備えており、本体2の開口部には水平回動式の扉2aを取付けている。なお、本体2の両端を開口させて、両端に扉を設けてもよい。また、炉1は箱型であってもよい。
炉1の内部には多数のヒータ3を配置している。ヒータ3は棒状の形態を成して炉1の軸線方向に長く延びており、多数のヒータ3が周方向に離反した状態で多数並列配置されている。ヒータ3は、周方向に巻いた状態に配置するなど、形態や配置は任意に設定できる。なお、ヒータ3はニクロム系等の金属製であり、カーボンヒータではない。
炉1の概ね中央部には、ワーク収納籠4が配置されている。ワーク収納籠4は上向きに開口した角形箱状であって金網やパンチングメタル等の多孔材からなっており、図示しない枠を介してフレーム5で支持されている。敢えて述べるまでもないが、ワーク収納籠4は炉1の外に取り外すことができる。
炉1の内部には1つ又は複数の排気口6が開口しており、排気口6に、真空ポンプ7で吸引される排出通路8が接続されており、排出通路8の中途部にフィルター等を備えた処理室9が介挿されている。可燃ガスが排出される場合は、真空ポンプ7の下流において燃焼処理される。なお、排気口6は炉1の胴部に設けているが、扉2aと反対側の底部に設けてもよい。
炉1には、1つ又は複数のガス導入口10を設けており、ガス導入口10に、ガス導入通路11を介して一酸化炭素(以下、COと略す)ガスのボンベ13が接続されている。ガス導入通路11には、一定量のCOガスを導入するための定量タンク12を介挿している。
更に、本願発明で使用する炉1の内部には、ワーク収納籠4を囲う触媒14が配置されている。触媒14は金網やパンチングメタルのような金属多孔材からなっており、ワーク収納籠4の全周を囲っている。従って、触媒14のうち扉2aの側に位置した部分は開閉式の蓋になっており、蓋を開くことでワーク収納籠4を出し入れできる。触媒14は円筒形を成しているが、ワーク収納籠4と相似形の角形としてもよい。
触媒14は鉄系素材でもよいが、炭素が浸透しない材料が好ましいと推測される。従って、非鉄金属が好ましい。例えば、ニッケル、銅、タングステン、チタンなどの単体又は合金が挙げられる。異なる材質からなる金網を使用したり、異なる材質の触媒14を並列配置したりすることも可能である。銅は浸炭防止材として使用されており、それ自体が炭素で犯されることはないため、触媒として好適であると云える。
触媒14の材料としはて、他の金属、例えば、バナジウム、マンガン、コバルト、亜鉛、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、パラジウム、銀、錫、タンタル、白金、金、鉛、ビスマスなどを使用できる。勿論、各種金属の複数種類からなる合金も使用できる。更に、触媒として機能するのは表面だけであるので、鉄等の基材にメッキを施すことで、メッキ層の金属と同じ触媒効果を得ることもできる。
基材としてセラミックのような無機材を使用し、ドブ浸けによって金属層を形成し、その金属層又はメッキ層を触媒として機能させることも可能である。経済性の面からは、銅や鉄のような安価な金属に金や銀のような貴金属をメッキするのは有益である。
(2).第1実施形態の方法
本実施形態では、COガスをボンベ13から定量タンク12に充填し、次いで、このCOガスを、高温(例えば930〜1050℃程度)でかつ減圧された(真空化した)炉1の内部に一気に充填する。鋼製品Wは炉1の内部の雰囲気温度に加熱されている。すると、炉1の内部に充填された高温のCOが加熱された鋼製品Wの表層部と反応して、炭素(C)は鋼製品Wに浸炭層を形成する。
COガスがどの段階でCとOとに分離するかは明確でないが、触媒14に接触したときと鋼製品W(及びワーク収納籠4)に接触したときとに大別されると推測される。COガスから分離した炭素分子は互いに結合してカーボン粒子化する性質が高いと思われるので、COガスからCを分離させるのは、できるだけ鋼製品Wに近い位置で行われるのが好ましいと云える。
従って、本実施形態では、能率向上策としては、a)触媒14によってCOをCとOとに分離しやすい状態に不安定化させることで、鋼製品Wへの接触によるCの分離性能を高める、b)触媒14をできるだけ鋼製品Wに近付けて、触媒14によって分離したCを速やかに鋼製品Wに接触させる、c)多くのワーク収納籠4にいわば小分けして鋼製品Wを収納すると共に、ワーク収納籠4を蓋付きの閉じた構造とすることで、ワーク収納籠4に触媒の機能を持たせてCの分離を促進する、といったことが考えられる。
ワーク収納籠4が金属製であるために鋼製品WへのCの接触が抑制される場合は、ワーク収納籠4(の少なくとも表面)をセラミック製としたらよい。1回の処理では浸炭層の形成が不十分である場合は、COガスの充填・排出をごく短い時間間隔で繰り返したらよい。
COガスがCとOとに完全に分離せずにCOガスのままで排出されることは有り得るが、この場合は、液化・分離等の手段によって廃棄ガスの中からCOガスを取り出して再使用してもよい。また、所定の量の鋼製品Wの浸炭に必要なCOガスの量は計算によって求められるで、排出通路6にCOガスの濃度を測定するセンサを設けておいて、排出通路6におけるCOガスの濃度が所定値より低くなるまで、COガスを炉1に戻すことを繰り返してもよい(排出されたガスの炉1へのリターンは、炉1を減圧した状態で行われる。)。これにより、原料ガスを無駄にせずに、鋼製品Wに所望の深さの浸炭層を形成できる。
本実施形態では、原料ガスはCOガスに代えて、他の炭素化合ガスを使用できる。例えばCO2 が使用可能である。CO2は化学的安定性が高くて通常の状態ではCを分離させ難いが、触媒14の素材を選択する等することで、Cを容易に分離させ得ると云える。
(3).第2〜5実施形態
さて、ガスの分解は温度が高いほど進みやすいと推測される。他方、炉内の雰囲気温度を過剰に高くすると鋼製品の粒子が結合して粗粒化現象が発生して、鋼製品の強度を却って低下させてしまう。従って、炉内の雰囲気温度は適度の温度(例えば880〜950℃)に維持しつつ、炭素化合ガスを炉内温度以上にプレヒートしてから炉内に噴出させると、炭素の分離性も向上できると推測される。図2では、この水素非含有炭素化合ガスのプレヒート手段の例を示している。
図2のうち(A)に示す第2実施形態では、ガス導入通路11にガス加熱炉17を介挿することで、炭素化合ガス(COガス)を加熱炉1の内部より高い温度(例えば950〜1000℃)に加熱している。符号18で示すのはヒータである。
このようにプレヒートすることにより、COガスを構成する炭素と酸素との結合力が弱まって、熱分解する割合が増えると共に、鋼製品に接触したときの分解能率も高くなると云える。熱分解してから時間が経過すると炭素同士が結合してカーボン粒子に成長する懸念があるので、炭素化合ガスのプレヒートは噴出前になるべく短時間で行うのが好ましいと云える。
図2(B)に示す第3実施形態では、炉1の内部に突出したガス噴出口19を適宜本数設けて、プレヒートしたCOガスをできるだけ鋼製品Wに近付けて噴出させている。この構成によると、ガスを鋼製品に集中的に当てることができるため、効率を向上できると云える。
図2(C)に示す第4実施形態では、炉1の内部に壁20で仕切られた環状のプレヒート空間21を形成し、プレヒート空間21にヒータ18を多数設けている。壁20は断熱性を有しており、ガス噴出口19を多数設けている。ガス噴出口19には弁(図示せず)を設けており、弁は、本体2の外面に設けたアクチェータ22によって開閉される。
図3に示す第5実施形態もプレヒート手段の例であり、この例では、ガス導入通路11に第1ガス加熱炉17aと第2ガス加熱炉17bとの2つのガス加熱炉を設けて、炭素化合ガス(CO)ガスを2段階で加熱している。また、この実施形態では、ガス加熱炉17a,17bの下流側にそれぞれ送気ポンプ23を設けて、COガスを予め高圧に加圧すると共に、炉の内部に高速で噴出させるようにしている。
(4).第6〜9実施形態
図4では、触媒14の別例を示している。まず、図4(A)に示す第6実施形態では、ワーク収納籠4を触媒14に兼用して、浅いワーク収納籠4を多段に積み重ねることで、触媒14としてのワーク収納籠4の表面積の総和を大きくとっている。最上段のワーク収納籠4に収納された鋼製品Wは、触媒14としての金網製蓋25を被せている。
図4(B)に示す第7実施形態では、触媒14として機能するワーク収納籠4の内部に、鋼製品Wと仕切り網状触媒14とを交互に重ねている。この場合も、触媒14の面積総和が非常に大きくなるため、触媒14の分離性能を向上できる。
図4(C)に示す第8実施形態では、ワーク収納籠4に、棒状の触媒14を多数立設している(横向きに装架してもよい。)。この場合も、触媒14の存在によってガスがワーク収納籠4の内部で効率的に分解するため、鋼製品Wにまんべんなくかつ効率よく浸炭させることができる。
図4(D)に示す第9実施形態では、触媒14はボール状の形態を成しており、その多数個が鋼製品Wの群に混ざった状態でワーク収納籠4に投入されている。ワーク収納籠4も孔空き構造であり、外周は触媒14の外径よりも細かい目になっている一方、底は触媒14が通過し得る目の粗さでになっている。ワーク収納籠4の底に触媒14の外径よりも小さい目の粗さの受け網26を配置し、受け網26をスライドさせると触媒14がワーク収納籠4の下方に落下するようになっている。落下した触媒14は容器27に受けられる。従って、油冷等の行程は鋼製品Wのみを行うことができる。
(5).第10実施形態
図5では第10実施形態を示している。この実施形態では、浸炭方法は従来と同様のパターンで行われるが、浸炭行程においてガスの噴出と排出とを繰り返すパルス浸炭を行っている。そして、この実施形態では、(B)に示すように、ガス導入通路11と排出通路8とをバイパス通路28で接続して、バイパス通路28に、内部にヒータ(図示せず)とカーボン源29とが配置された複成炉30を介挿している。
ガス導入通路11とバイパス通路28、及び、排出通路8とバイパス通路28とはそれぞれ三方弁31を介して接続されている。また、バイパス通路28のうちガス導入通路11と複成炉30との間には真空ポンプ(或いは送風機)32を介在させている。
そして、この実施形態では、炉内に噴出したCOガスは複成炉30を経由して再び炉内に還流するが、炉内で炭素から分離した酸素は複成炉30においてカーボン源29と接触することでCOになって、再び炉1に戻る。従って、COガスを、炭素濃度を低下させることなく(或いは低下量を抑制して)、何回も炉1に循環させることができる。従って、経済的である。パルス浸炭を行う場合は、(C)に示すように、真空引きを緩やかに行うことも可能である。
(6).第11〜12実施形態
図6に示す第11実施形態は、炉1の周囲の複数箇所(4カ所)にガス導入口10を設けている。また、炉1の中心部に排気口6を開口させており、ワーク収納籠4は排気口6を囲うようにドーナツ状の形態を成している。触媒14は2層配置している。
図7に示す第12実施形態では、網状の触媒14を外層14aと内層14bとの二層に構成して、両層14a,14bに直流電源15を接続することで、両層14a,14bの間に電位差を設けている。電位差により、COガスの分離促進が期待できる。
(7).第1〜3参考例
図8に示すのは第1参考例である。この参考例では、原料ガスとしてアセチレンやプロパン等の炭化水素ガスが使用されており、炭化水素ガスの水素を不活性化するためのガスとして酸素が使用されている。従って、炭化水素ガスボンベ34と酸素ガスボンベ35とを有している。
炭化水素ガスと酸素ガスとは所定量ずつ混合されて定量タンク12に溜められ、これが減圧された炉1の内部に一気に導入される。そして、Cn2m+(1/2)m2→Cn+mH2Oの反応により、炭化水素ガスからCを分離(遊離)させると共に水素を不活性化させ、分離した(遊離した)Cを熱の作用で鋼製品Wの表層部に浸透させるのである。
図1に示す第1参考例では、炭化水素ガスと酸素ガスとを定量タンク12で混合させたが、図9に示す第2参考例では、炉1の内部に、別々のガス導入口10から炭化水素ガスと酸素ガスとを導入している。両参考例とも、酸素ガスに代えてN2 を充填してもよい。この場合は、水の代わりにアンモニアが生成される。
図10に示す第3参考例は第1,2参考例の変形例であり、炉1の内部には炭化水素ガスと酸素ガスとが導入される(図8のように両ガスを混合させて導入してもよい。)。そして、この実施形態では、触媒14とワーク収納籠4との間に水素吸収材36を配置することにより、酸素と反応せずに単体に分離した水素が鋼製品Wに接触することを防止している。水素吸収材36としては、例えば水素吸蔵合金を使用できる。
なお、この図10の第3参考例は、炉1の内部に酸素ガスは導入せずに炭化水素ガスのみを導入して、触媒14によって分離した水素を水素吸収材36に吸収させることも可能である。この場合は、物理的作用によって水素を不活性化する構成の具体例になる。
(5).第4,5参考例
図11に示す参考例は、物理的作用によって水素を不活性化する方法の具体例である。このうち図11(A)に示す第4参考例では、ガス導入通路11のうち定量タンク12と炉1との間の部分に前処理室37を配置して、前処理室37の内部に、触媒14とヒータ38とを交互に配置すると共に、前処理室37のうち出口側の部分に水素吸収材36を配置している。
この参考例では、原料ガスの主体はアセチレンやプロパン等の炭化水素ガスであり(都市ガスも使用できる)、炭化水素ガスは前処理室37においてCとH2 とに分離し、H2 は水素吸収材36に補集されてCのみが炉1の内部に導入される。水素吸収材36に補
集されたH2 ガスは回収され、燃料等に有効利用される。
前処理室37での分離工程は、前処理室37と炉1とを連通させた状態で行うことも可能であるが、前処理室37を閉じた状態で分離工程を行って、それから、ガス状態のCを炉1に導入してもよい。この場合は、炉の内部の圧力を確保するため、N2ガスを炉1に導入することは差し支えない。
炭化水素ガスからのCの分離を前処理室37で行うと、Cが結合してカーボン粒子化が進展することも予想されるが、イオン化した炭素のままで鋼製品Wに到達させるキャリアガスを前処理室に封入することも有益である。キャリアガスとしては、N2、CO、CO2などが考えられる。他方、Cが粒子化してワークに到達した場合は、Cの粒子をいわば固体浸炭の原料として捉えて、いったんイオン化炭素をワークの表面に付着させてから、減圧を解除して所定の時間加温し続けることで浸炭させることも可能である。
図11(B)に示す第5参考例は、炭化水素ガスの分解処理手段の別例であり、前処理室37に、ヒータ38と高圧帯電材39とを交互に配置し、高圧帯電材39に、交流電源40の電圧を変圧器41にて高めた高電圧を印加している。水素吸収材36は前処理室37の下流側に別のケースとして配置している。高圧帯電材39は金網のような多孔材で構成されており、ガスは自由に通過できる。
この参考例では、炭化水素ガスが高圧帯電材39を通過する過程で電子の供給を受けることで、いわばプラズマに晒されたような状態になって、炭化水素ガスがCとH2 とに分離することが促進されると期待される。触媒14を併用することも可能である。図では表示していないが、鋼製品Wに帯電させてからCOガス又はCO 2 ガスに晒すことも可能である。
(6).その他
本願発明は、上記の実施形態の他にも様々に具体化できる
本願発明は、実際に真空浸炭焼入れ方法に適用できる。従って、産業上利用できる。
W 鋼製品
1 真空浸炭焼入れ炉
2 炉の本体
3 ヒータ
4 ワーク収納籠
6 排気口
7 真空ポンプ
10 ガス導入口
12 定量タンク
13 COガスボンベ
14 触媒
34 炭化水素ガスボンベ
35 酸素ガスボンベ

Claims (5)

  1. 高温雰囲気の炉内において鋼製品を880〜1050℃の炭素化合ガスに晒すことにより、前記鋼製品の機械的性質を高める熱処理方法であって、
    前記炭素化合ガスはその全部又は大部分がCOガス又はCO2 ガスであり、
    水素が全く又は殆ど存在しない状態か、若しくは、存在しても非水素系炭素含有ガスを添加して水となすことによって前記鋼製品に浸透しないように不活性化された状態の下で処理が行われる、
    鋼製品の熱処理方法。
  2. 前記炉として真空炉が使用されている、
    請求項1に記載した鋼製品の熱処理方法。
  3. 前記炉として大気炉が使用されている、
    請求項1に記載した鋼製品の熱処理方法。
  4. 前記熱処理は、焼入れ及び焼き戻し若しくは調質のうちのいずれか1つ若しくは複数である、
    請求項1〜3のうちのいずれかに記載した鋼製品の熱処理方法。
  5. 前記炉の内部に、前記炭素化合ガスから炭素が分離することを助長する触媒が配置されている、
    請求項1〜4のうちのいずれかに記載した鋼製品の熱処理方法。
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