JP6271747B2 - 高分子機能性膜形成用組成物、高分子機能性膜及びその製造方法、分離膜モジュール、並びに、イオン交換装置 - Google Patents
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Description
電気脱塩(EDI)は、イオン輸送を達成するためにイオン交換膜と電位を使用して、水性液体からイオンが取り除かれる水処理プロセスである。従来のイオン交換のような他の浄水技術と異なり、酸又は苛性ソーダのような化学薬品の使用を要求せず、超純水を生産するために使用することができる。電気透析(ED)及び逆電気透析(EDR)は、水及び他の流体からイオン等を取り除く電気化学の分離プロセスである。
従来のイオン交換膜としては、例えば、特許文献1及び2に記載されたものが知られている。
<1> 成分Aとして、酸解離定数pKaがaであるアニオン性官能基を有するモノマーと、成分Bとして、酸解離定数pKaがaよりも大きいbであるアニオン性官能基を有するモノマーと、成分Cとして、下記式PI−1又は式PI−2で表される光重合開始剤と、を含有し、bとaとの差が1.5以上10以下であり、成分Aの有するアニオン性官能基のモル当量と、成分Bの有するアニオン性官能基のモル当量との比が、90:10〜50:50であることを特徴とする高分子機能性膜形成用組成物、
式PI−1中、Rp1はアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基又はアリールオキシ基を表し、Rp2及びRp3はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基又はアリールオキシ基を表し、Rp2とRp3とが互いに結合して環を形成してもよく、nは0〜5の整数を表す。
式PI−2中、Rp4はアルキル基、アリール基、アルキルチオ基又はアリールチオ基を表し、Rp5はアルキル基、アリール基、アルキルチオ基、アリールチオ基又はアシル基を表し、Rp6はアルキル基又はアリール基を表す。
<3> 成分Aが、(メタ)アクリルアミド基及び/又は(メタ)アクリロイルオキシ基を有する、<1>又は<2>に記載の高分子機能性膜形成用組成物、
<4> 成分Bが、(メタ)アクリルアミド基及び/又は(メタ)アクリロイルオキシ基を有する、<1>〜<3>のいずれか1つに記載の高分子機能性膜形成用組成物、
<5> 成分Aが、下記式Iで表されるモノマー、及び/又は、下記式IIで表されるモノマーを含有する、<1>〜<4>のいずれか1つに記載の高分子機能性膜形成用組成物、
式I中、R11及びR12はそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表し、R13及びR14はそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、R13及びR14はそれらが結合する窒素原子及びYと共に6又は7員環の環を形成していてもよく、Yはアルキレン基又はアリーレン基を表し、かつ、1〜4つのスルホン酸基を含有する。
式II中、R21及びR22はそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、R23、R24、R25及びR26はそれぞれ独立に、置換基を表し、k21、k22、k23及びk24はそれぞれ独立に、0〜4の整数を表し、R23、R24、R25及びR26が複数存在する場合、複数のR23、R24、R25及びR26はそれぞれ互いに同一でも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成していてもよく、A21、A22、A23及びA24はそれぞれ独立に、単結合又は2価の連結基を表し、M21はそれぞれ独立に、水素イオン、有機塩基イオン又は金属イオンを表し、n21及びn22はそれぞれ独立に、1〜4の整数を表し、m21及びm22はそれぞれ独立に、0又は1を表し、J1は単結合、−O−、−S−、−SO2−、−CO−、−CR28R29−又はアルケニレン基を表し、R28及びR29はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はハロゲン原子を表し、p21は1以上の整数を表し、q21は0〜4の整数を表す。
<7> <1>〜<6>のいずれか1つに記載の高分子機能性膜形成用組成物を重合させてなる、高分子機能性膜、
<8> 上記高分子機能性膜がイオン交換膜である、<7>に記載の高分子機能性膜、
<9> 上記高分子機能性膜形成用組成物をエネルギー線照射により重合する工程を含む、<7>又は<8>に記載の高分子機能性膜の製造方法、
<10> <8>に記載の高分子機能性膜を有する、分離膜モジュール、
<11> <8>に記載の高分子機能性膜を有する、イオン交換装置。
本明細書における基(原子団)の表記において、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
また、本明細書における化学構造式は、水素原子を省略した簡略構造式で記載する場合もある。
なお、本明細書中において、「(メタ)アクリレート」はアクリレート及びメタクリレートを表し、「(メタ)アクリル」はアクリル及びメタクリルを表し、「(メタ)アクリロイル」はアクリロイル及びメタクリロイルを表し、「(メタ)アクリルアミド」はアクリルアミド及びメタクリルアミドを表す。
また、本発明において、「質量%」と「重量%」とは同義であり、「質量部」と「重量部」とは同義である。
また、本発明において、好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本発明の高分子機能性膜形成用組成物(以下、単に「組成物」又は「膜形成用組成物」ともいう。)は、成分Aとして、酸解離定数pKaがaであるアニオン性官能基を有するモノマーと、成分Bとして、酸解離定数pKaがaよりも大きいbであるアニオン性官能基を有するモノマーと、成分Cとして、下記式PI−1又は式PI−2で表される光重合開始剤と、を含有し、bとaとの差が1.5以上10以下であり、成分Aの有するアニオン性官能基のモル当量と、成分Bの有するアニオン性官能基のモル当量との比が、90:10〜50:50であることを特徴とする。
式PI−1中、Rp1はアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基又はアリールオキシ基を表し、Rp2及びRp3はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基又はアリールオキシ基を表し、Rp2とRp3とが互いに結合して環を形成してもよく、nは0〜5の整数を表す。
式PI−2中、Rp4はアルキル基、アリール基、アルキルチオ基又はアリールチオ基を表し、Rp5はアルキル基、アリール基、アルキルチオ基、アリールチオ基又はアシル基を表し、Rp6はアルキル基又はアリール基を表す。
ここで、イオン交換膜を用いて電気透析を行った場合に、カルシウムイオンやマグネシウムイオン等に基づく難水溶性の析出物が発生することがある。スケーリング耐性とは、そのような析出物の発生が抑制されていることを意味する。
特許文献1及び2に記載のイオン交換膜は、透水率及び電気抵抗が大きく、電気透析に必要なエネルギーが大きいという問題がある。また、製膜に熱硬化を使用すると、少なくとも数時間の製膜時間が必要である。本発明者が鋭意検討した結果、特定のモノマーを光重合して製膜することで、製膜に要する時間を大幅に低減することができた。また、上述のような各種特性の顕著な向上が認められた。その作用機構は明確ではないが、以下のように推定している。
熱硬化では、硬化に要する時間が長いため、共重合成分同士が相分離し、均一な膜の形成が困難であるが、光硬化では、硬化時間が短いために、成分が相分離する前に硬化が完了し、均一な膜が形成される。また、熱重合を用いた場合には、溶媒として使用する水等が、硬化中に揮発するため、空隙が発生するが、本発明では、そのような空隙の発生が抑制されている。
更に、pKaの小さいモノマーを単独で使用した場合には、アニオン性基の電気反発によって、空隙が生じる。しかし、pKaの小さいモノマーとpKaの大きいモノマーとを併用することで、pKaの大きいモノマーがスペーサーの役割を果たし、上記空隙を埋めるために、空孔体積分率が低下する。
以下、本発明の高分子機能性膜を構成する、各成分について説明する。
本発明の高分子機能性膜形成用組成物は、成分Aとして、酸解離定数pKaがaであるアニオン性官能基を有するモノマーと、成分Bとして、酸解離定数pKaがaよりも大きいbであるアニオン性官能基を有するモノマーとを含有し、bとaとの差が1.5以上10以下である。
なお、本発明の膜形成用組成物は、アニオン性官能基を有する複数種のモノマーを含有し、上記アニオン性官能基の有するpKaの差が1.5以上10以下である2種以上のモノマーを含有していればよく、いずれか2つのpKaの差が1.5以上10以下である、3種以上のモノマーを含有していてもよい。
bとaとの差は、1.5〜8であることが好ましく、1.7〜7であることがより好ましく、2〜6であることが更に好ましい。
成分A及び成分Bとしては、アニオン性官能基と、エチレン性不飽和基とを有するモノマーであれば特に限定なく好ましく使用することができる。成分A及び成分Bは、アニオン性官能基を有する単官能モノマー及びアニオン性官能基を有する多官能モノマーのいずれかが好ましい。エチレン性不飽和基としては、(メタ)アクリロイルオキシ基及び(メタ)アクリルアミド基が好ましい。
すなわち、成分Aは、(メタ)アクリルアミド基及び/又は(メタ)アクリロイルオキシ基を有することが好ましい。また、成分Bも同様に、(メタ)アクリルアミド基及び/又は(メタ)アクリロイルオキシ基を有することが好ましい。
式a−1中、Ra1は、水素原子又はアルキル基を表し、Xa1は酸素原子又はNRa2を表し、La1は2価の有機基を表し、Ya1はアニオン性官能基を表し、Ra2は水素原子又はアルキル基を表す。
式a−1中、Xa1は酸素原子又はNRa2を表し、Ra2は水素原子又はアルキル基を表し、上記アルキル基は炭素数1〜6であることが好ましく、1〜3であることがより好ましく、メチル基又はエチル基であることが更に好ましい。Xa1は、酸素原子又はNHであることが特に好ましい。
上記アルキレン基は、炭素数1〜18であることが好ましく、炭素数1〜12であることがより好ましく、炭素数1〜8であることが更に好ましく、炭素数2〜6であることが特に好ましい。
アルキレン基と、エーテル結合(−O−)、エステル結合(−C(=O)−O−)、カルボニル基(−C(=O)−)、アミド結合(−C(=O)−NR−)、チオエーテル結合(−S−)、チオエステル結合(−C(=O)−S−)、チオノエステル結合(−C(=S)−O−)、ウレタン結合(−NR−C(=O)−O−)、及び、ウレア結合(−NR−C(=O)−NR−)よりなる群から選択された少なくとも1つとを組み合わせた2価の有機基(ここで、Rは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。)としては特に限定されないが、アルキレン基と、エーテル結合、エステル結合、及び、アミド結合よりなる群から選択される少なくとも1つとを組み合わせた2価の基であることが好ましい。なお、上記の2価の基には、複数のアルキレン基と、複数のエーテル結合とを組み合わせた、ポリアルキレンオキシアルキレン基なども含まれる。
なお、上記アニオン性基は、塩を形成していてもよく、四級アンモニウム塩、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等を形成していてもよい。
式I中、R11及びR12はそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表し、R13及びR14はそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、R13及びR14はそれらが結合する窒素原子及びYと共に6又は7員環の環を形成していてもよく、Yはアルキレン基又はアリーレン基を表し、かつ、1〜4つのスルホン酸基を含有する。
式II中、R21及びR22はそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、R23、R24、R25及びR26はそれぞれ独立に、置換基を表し、k21、k22、k23及びk24はそれぞれ独立に、0〜4の整数を表し、R23、R24、R25及びR26が複数存在する場合、R23、R24、R25及びR26はそれぞれ互いに同一でも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成していてもよく、A21、A22、A23及びA24はそれぞれ独立に、単結合又は2価の連結基を表し、M21はそれぞれ独立に、水素イオン、有機塩基イオン又は金属イオンを表し、n21及びn22はそれぞれ独立に、1〜4の整数を表し、m21及びm22はそれぞれ独立に、0又は1を表し、J1は単結合、−O−、−S−、−SO2−、−CO−、−CR28R29−又はアルケニレン基を表し、R28及びR29はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はハロゲン原子を表し、p21は1以上の整数を表し、q21は0〜4の整数を表す。
上記式I中、R13及びR14はそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表す。アルキル基としては、炭素数1〜8のアルキル基が好ましく、炭素数1〜4のアルキル基がより好ましい。R13及びR14がそれらが結合する窒素原子及びYと共に6又は7員環の環を形成する場合、形成される環は、置換基を有していてもよいピペラジン、ホモピペラジン、又は、トリアジン環であることが好ましい。上記の感は、スルホン酸又はその塩により置換されていてもよい。
MW<(300+300×ns)
式II中、R23、R24、R25及びR26はそれぞれ独立に、置換基を表し、置換基としては、アルキル基(好ましくは炭素数1〜24、より好ましくは炭素数1〜12、更に好ましくは炭素数1〜4)、アリール基(好ましくは炭素数3〜20、より好ましくは炭素数6〜10)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、更に好ましくは炭素数2〜4)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、更に好ましくは炭素数2〜4)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜24、より好ましくは炭素数1〜12、更に好ましくは炭素数1〜4)、アリーロキシ基(好ましくは炭素数3〜20、より好ましくは炭素数6〜10)、ハロゲン原子、アシル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、更に好ましくは炭素数2〜4)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、更に好ましくは炭素数2〜4)、シアノ基が挙げられる。上記アルキル基は、直鎖状、分岐状又は環状のいずれでもよい。また、上記アリール基は、ヘテロ原子としてN、O又はSを含有するヘテロアリール基であってもよい。また、上記置換基は更に上記置換基により置換されてよい。
k21、k22、k23及びk24は、0〜4の整数を表し、0又は1であることが好ましく、0であることがより好ましい。
n21及びn22は、各々独立に1〜3が好ましく、1又は2がより好ましく、1であることが特に好ましい。m21及びm22は0又は1であり、0であることが好ましい。
J1は、単結合、−O−、−SO2−、−CO−、−CR28R29−、又は、アルケニレン基(好ましくは、エチレン基)であることが好ましく、単結合、−SO2−、−CR28R29−、又は、アルケニレン基がより好ましく、単結合が特に好ましい。
式III中、R21、R22、R23、R24、R25、R26、k21、k22、k23、k24、A21、A22、A23、A24、M21、m21、m22、n21、n22は、それぞれ、上記式IIにおけるR21、R22、R23、R24、R25、R26、k21、k22、k23、k24、A21、A22、A23、A24、M21、m21、m22、n21、n22と同義であり、好ましい範囲も同じである。
多官能重合性化合物の含有量は、膜形成用組成物の全固形分中、10〜90質量%であることが好ましく、20〜85質量%であることがより好ましく、30〜80質量%であることが更に好ましい。
また、重合性化合物の全質量に対する多官能重合性化合物の含有量は、10〜95質量%であることが好ましく、20〜90質量%であることがより好ましく、30〜85質量%であることが更に好ましい。
多官能重合性化合物の含有量が上記範囲内であると、得られる高分子機能性膜に適度な架橋が形成される。
成分Aの有するアニオン性官能基のモル当量と、成分Bの有するアニオン性官能基のモル当量との比は、90:10〜50:50である。含有比率が上記範囲内であると、イオン交換能に優れると共に、低い空孔体積分率が得られる。
成分Aの有するアニオン性官能基のモル当量と、成分Bの有するアニオン性官能基のモル当量との比は、85:15〜60:40であることが好ましく、85:15〜70:30であることがより好ましい。
また、成分Bの含有量は、本発明の膜形成用組成物の全固形分に対して、3〜50質量%であることが好ましく、5〜45質量%であることがより好ましく、10〜30質量%であることが更に好ましい。成分Bの含有量が上記範囲内であると、空孔体積分率の低い高分子機能性膜が得られるので好ましい。
また、本発明において、後述するその他の重合性化合物を含めた重合性化合物の総含有量が、膜形成用組成物の全固形分量に対して80〜99質量%であることが好ましく、85〜98質量%であることがより好ましく、90〜97質量%であることが更に好ましい。
本発明において、成分Aの主鎖−アニオン性官能基間の距離と、成分Bの主鎖−アニオン性官能基間の距離が異なることが好ましく、成分Aの主鎖−アニオン性官能基間の距離と、成分Bの主鎖−アニオン性官能基間の距離との差が4以上であることがより好ましい。
ここで、主鎖−アニオン性官能基間の距離とは、ポリマーが形成されたときの主鎖から、アニオン性官能基までの原子数を意味し、N、O、Cなどの原子は同一とみなして、原子数をカウントする。また、カルボキシル基のC、スルホ基のSなど、アニオン性官能基を構成する原子はカウントしない。
図2に主鎖−アニオン性官能基間の距離の説明図を示す。
図2(A)では、主鎖−アニオン性官能基間の距離は、ポリマーとしたときに主鎖を形成する、エチレン性不飽和二重結合を有する炭素原子から、アニオン性官能基までの原子数であり、MN−1では、○で囲まれた原子数をカウントし、主鎖−アニオン性官能基間の距離は、4である。同様に、図2(B)では、MN−2の主鎖−アニオン性官能基間の距離は、4である。
次に、図2(C)では、CL−1は二官能の重合性化合物であり、ポリマーが形成されたときには、2つのエチレン性不飽和結合及びその間の部分が主鎖を形成する。従って、主鎖−アニオン性官能基間の距離は、○で囲まれた原子で示されるように、1である。
更に、図2(D)では、図2(C)と同様に、CL−2は二官能の重合性化合物であり、ポリマーが形成されたときには、2つのエチレン性不飽和結合及びその間の部分が主鎖を形成する。CL−2において、アニオン性官能基は、主鎖に直接結合しており、主鎖−アニオン性官能基間の距離は、0である。
具体的には、成分Aとして、0.1molのMN−1と、0.2molのCL−1とを使用した場合、成分Aの主鎖−アニオン性官能基間の距離Lは、以下のようになる。
L={(MN−1の主鎖−アニオン性基間の距離)×0.1+(CL−1の主鎖−アニオン性基間の距離)×0.2}÷(0.1+0.2)
=(4×0.1+1×0.2)÷(0.1+0.2)
=2
従って、上記の例の場合には、主鎖−イオン性基間の距離Lは、2となる。
また、成分Aとして、上述の0.1molのMN−1と、0.2molのCL−2とを使用した場合、成分Aの主鎖−アニオン性官能基間の距離Lは、以下のようになる。
L={(MN−1の主鎖−アニオン性基間の距離)×0.1+(CL−2の主鎖−アニオン性基間の距離)×0.2×2(当量/モル)}÷(0.1+0.2×2)
=(4×0.1)÷(0.1+0.4)
=0.8
従って、上記の例の場合には、主鎖−イオン性基間の距離Lは0.8となる。
成分Aの主鎖−アニオン性官能基間の距離と、成分Bの主鎖−アニオン性官能基間の距離との差は、4以上であることが好ましく、4〜15であることがより好ましく、6〜15であることが更に好ましい。
成分Aの主鎖−アニオン性官能基間の距離と、成分Bの主鎖−アニオン性官能基間の距離との差が15以下であると、モノマーの分子量が適切であり、膜全体の電荷密度の低下が抑制され、膜抵抗の上昇が抑制されるので好ましい。
また、化合物の入手容易性の観点から、成分Bの主鎖−アニオン性官能基間の距離の方が、成分Aの主鎖−アニオン性官能基間の距離よりも大きいことが好ましい。
本発明の組成物は、式PI−1で表される光重合開始剤及び/又は式PI−2で表される光重合開始剤を含有する。
式PI−1中、Rp1はアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基又はアリールオキシ基を表し、Rp2及びRp3はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基又はアリールオキシ基を表し、Rp2とRp3とが互いに結合して環を形成してもよく、nは0〜5の整数を表す。
式PI−2中、Rp4はアルキル基、アリール基、アルキルチオ基又はアリールチオ基を表し、Rp5はアルキル基、アリール基、アルキルチオ基、アリールチオ基又はアシル基を表し、Rp6はアルキル基又はアリール基を表す。
アリールオキシ基のアリール基はフェニル基が好ましい。
Rp1は炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基であることがより好ましく、アルコキシ基の場合、メトキシ基及び2−ヒドロキシエトキシ基が好ましく、アルキル基の場合は、フェニル基が置換したメチル基が好ましく、上記フェニル基には、−C(=O)−C(Rp2)(Rp3)(OH)が置換して、分子全体として、メチレンビス体を形成することも好ましい。
Rp2とRp3が互いに結合して形成する環は、5又は6員環が好ましく、シクロペンタン環、シクロヘキサン環がより好ましい。
本発明の膜形成用組成物は、上記の成分A〜成分Cに加え、その他の成分を含有してもよい。その他の成分としては、成分D:成分A及び成分B以外の重合性化合物、成分E:成分C以外の光重合開始剤、成分F:共増感剤、成分G:重合禁止剤、成分H:溶媒、成分I:アルカリ金属化合物、成分J:その他の成分が挙げられる。以下、それぞれについて説明する。
本発明の膜形成用組成物は、成分Dとして、成分A及び成分B以外の重合性化合物を含有していてもよい。ここで、成分Dは、本発明の高分子機能性膜の透水性や、膜の電気抵抗を調整するために、膜の親疎水性及び架橋密度を調整する役割を果たすことが好ましい。
なお、他の重合性化合物は、モノマー、オリゴマー及びポリマーのいずれでもよいが、モノマーであることが好ましい。なお、本発明において、オリゴマーとは、重量平均分子量が3,000を超え、10,000以下の化合物を意味し、ポリマーとは、重量平均分子量が10,000を超える化合物を意味する。
「他の単官能重合性化合物」とは、上記成分A及び成分Bに該当しない単官能重合性化合物であり、このような他の単官能重合性化合物としては、例えば、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、ビニルエステル類、スチレン類、アクリロニトリル、マレイン酸イミド等の公知のモノマーも挙げられる。このようなモノマー類を使用することで、製膜性、膜強度、親水性、疎水性、溶解性、反応性、安定性等の諸物性を改善することができる。モノマーの合成法としては、例えば丸善(株)、日本化学会編の「第5版実験科学講座16 有機化合物の合成(II−1)」におけるエステル合成の項目や「第5版実験科学講座26 高分子化学」におけるモノマーの取り扱い、精製の項目などを参考とすることができる。
成分Dとして好ましい多官能重合性化合物を以下に例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明における高分子機能性膜形成用組成物は、成分Cに加え、成分Eとして成分C以外の光重合開始剤(以下、その他の光重合開始剤ともいう。)を含んでもよい。
光重合開始剤としては、式PI−1で表される化合物を除く芳香族ケトン類、式PI−2で表される化合物を除くアシルホスフィン化合物、芳香族オニウム塩化合物、有機化酸化物、チオ化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物、並びにアルキルアミン化合物等が挙げられる。
ここで、重合開始剤が水溶性であるとは、25℃において蒸留水に0.5質量%以上溶解することを意味する。上記水溶性の光重合開始剤は、25℃において蒸留水に1質量%以上溶解することが更に好ましく、3質量%以上溶解することが特に好ましい。
また、その他の光重合開始剤の含有量は、成分Cの含有量以下であることが好ましく、成分Cの含有量に対し、75質量%以下であることがより好ましく、50質量%以下であることが更に好ましく、25質量%以下であることが特に好ましく、10質量%以下であることが最も好ましい。
本発明の高分子機能膜形成用組成物に、感度を一層向上させる、又は、酸素による重合阻害を抑制する等の作用を有する公知の化合物を、共増感剤として加えてもよい。
このような共増感剤の例としては、アミン類、例えばM.R.Sanderら著「Journal of Polymer Society」第10巻,3173頁(1972)、特公昭44−20189号公報、特開昭51−82102号公報、特開昭52−134692号公報、特開昭59−138205号公報、特開昭60−84305号公報、特開昭62−18537号公報、特開昭64−33104号公報、ResearchDisclosure,33825号に記載の化合物等が挙げられ、具体的には、トリエタノールアミン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p−ホルミルジメチルアニリン、p−メチルチオジメチルアニリン等が挙げられる。
また別の例としては、アミノ酸化合物(例、N−フェニルグリシン等)、特公昭48−42965号公報に記載の有機金属化合物(例、トリブチル錫アセテート等)、特公昭55−34414号公報に記載の水素供与体、特開平6−308727号公報に記載のイオウ化合物(例、トリチアン等)、特開平6−250387号公報に記載のリン化合物(ジエチルホスファイト等)、特開平8−65779号公報に記載のSi−H、Ge−H化合物等が挙げられる。
本発明においては、塗布液の安定性を付与するために、膜形成用組成物が重合禁止剤を含むことも好ましい。
重合禁止剤としては、公知の重合禁止剤が使用でき、フェノール化合物、ハイドロキノン化合物、アミン化合物、メルカプト化合物などが挙げられる。
フェノール化合物の具体例としては、ヒンダードフェノール(オルト位にt−ブチル基を有するフェノールで、代表的には、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールが挙げられる。)、ビスフェノールが挙げられる。ハイドロキノン化合物の具体例としては、モノメチルエーテルハイドロキノンが挙げられる。
なお、これらの重合禁止剤は、1種単独でも、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
重合禁止剤の含有量は、高分子機能性膜形成用組成物中の全固形分質量100質量部に対し、0.01〜5質量部が好ましく、0.01〜1質量部がより好ましく、0.01〜0.5質量部が更に好ましい。
本発明における高分子機能性膜形成用組成物は、成分Hとして溶媒を含んでいてもよい。高分子機能性膜形成用組成物中の溶媒の含有量は、全高分子機能性膜形成用組成物に対し、5〜50質量%が好ましく、10〜50質量%がより好ましく、10〜40質量%が更に好ましい。
溶媒を含むことで、重合硬化反応が、均一にしかもスムーズに進行する。また、多孔質支持体へ高分子機能性膜形成用組成物を含浸させる場合に含浸がスムーズに進行する。
水溶性溶媒としては、特に、アルコール系溶媒、非プロトン性極性溶媒であるエーテル系溶媒、アミド系溶媒、ケトン系溶媒、スルホキシド系溶媒、スルホン系溶媒、二トリル系溶媒、有機リン系溶媒が好ましい。
アルコール系溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどが挙げられる。これらは1種類単独又は2種類以上を併用して用いることができる。
また、非プロトン性極性溶媒としては、ジメチルスルホキシド、ジメチルイミダゾリジノン、スルホラン、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、アセトン、ジオキサン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルアミド、ヘキサメチルホスホロトリアミド、ピリジン、プロピオニトリル、ブタノン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、エチレングリコールジアセテート、γ−ブチロラクトン等が好ましい溶媒として挙げられ、中でもジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルイミダゾリジノン、スルホラン、アセトン、アセトニトリル又はテトラヒドロフランが好ましい。これらは1種類単独又は2種類以上を併用して用いることができる。
本発明における高分子機能性膜形成用組成物は、アニオン性官能基を有するモノマーである、成分A及び成分Bの溶解性を向上させるためにアルカリ金属化合物を含んでいてもよい。アルカリ金属化合物としては、リチウム、ナトリウム、カリウムの水酸化物塩、塩化物塩、硝酸塩等が好ましい。中でも、リチウム化合物がより好ましく、その具体例としては、水酸化リチウム、塩化リチウム、臭化リチウム、硝酸リチウム、ヨウ化リチウム、リチウム塩素酸塩、チオシアン酸リチウム、過塩素酸リチウム、リチウム・テトラフルオロボラート、リチウム・ヘキサフルオロホスファート、リチウム・ヘキサフルオロアルセナートが挙げられる。
ここで、アルカリ金属化合物は、高分子機能性膜形成用組成物、高分子機能性膜形成用組成物溶液混合物を中和するために使用することも好ましい。
これらのアルカリ金属化合物は水和物であってもよい。また、1種単独、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
アルカリ金属化合物を添加する場合の添加量は、高分子機能性膜形成用組成物中の全固形分質量100質量部に対し、0.1〜20質量部が好ましく、1〜20質量部がより好ましく、5〜20質量部が更に好ましい。
本発明の高分子機能性膜形成用組成物には、膜物性を調整するため、各種高分子化合物を添加することもできる。高分子化合物としては、アクリル系重合体、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、シェラック、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類、その他の天然樹脂等が使用できる。また、これらは2種以上併用しても構わない。
また、液物性調整のためにノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤や、有機フルオロ化合物などを添加することもできる。
本発明の高分子機能性膜は、本発明の高分子機能性膜形成用組成物を重合(硬化)して得られる膜であり、光重合(光硬化)して得られる膜であることが好ましい。
本発明の高分子機能性膜は、アニオン性官能基を有し、電解質膜(イオン交換膜)としても用いることができ、NaClのような塩を含む水におけるカチオンNa+を交換することができる。
本発明において、特に、成分A〜成分Cを含有することでUV硬化性が付与されるため短時間で高分子機能性膜が得られ、生産性に優れ低コストで電解質膜を作製することできる。
理想的なイオン交換膜は、低膜抵抗、低透水率、高選択透過性(カチオン/アニオン交換分離選択性)である。単位構造分子量あたりの電荷密度が高いほど一般的には膜の抵抗は低下し、選択透過性が高くなり、架橋密度が大きいほど透水率を低下させることができる。
本発明の高分子機能性膜は、支持体を有することが好ましく、多孔質支持体を有することがより好ましい。
支持体としては、樹脂フィルム、織布、不織布、スポンジ等が挙げられる。これらの中でも、不織布が好ましく挙げられる。
多孔質支持体としては、例えば、織布、不織布、スポンジ状フィルム、微細な貫通孔を有するフィルム等が挙げられる。
支持体を形成する素材としては、例えば、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリアミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、アクリル樹脂、酢酸セルロース、ポリオレフィン、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、及び、それらのコポリマーが挙げられる。
市販の多孔質支持体としては、例えば、日本バイリーン(株)や、Freudenberg社、Filtration Technologies社、及び、Sefar AG社から市販されているものが挙げられる。
支持体は、親水性を有することが好ましい。支持体に親水性を付与するための手法として、コロナ処理、オゾン処理、硫酸処理、シランカップリング剤処理などの一般的な方法を使用することができる。
支持体の厚さとしては、10〜500μmであることが好ましく、20〜400μmであることがより好ましく、50〜300μmであることが更に好ましく、80〜300μmであることが特に好ましい。
また、本発明の高分子機能性膜は、水を含む膜であることが好ましく、上記成分A及び成分Bに由来する構成単位を有する樹脂が水を含んでゲル状となっている膜であることがより好ましい。
本発明の高分子機能性膜は、少なくとも成分A〜成分Cを含有する高分子機能性膜形成用組成物を上記支持体に塗布し、塗布後の支持体にエネルギー線(活性放射線ともいう。)を照射することにより重合反応させ、形成されることが好ましい。
本発明の高分子機能性膜を形成する条件に特に制限はないが、温度は−30〜100℃が好ましく、−10〜80℃がより好ましく、5〜60℃が特に好ましい。
本発明においては、膜を形成時に空気や酸素などの気体を共存させてもよいが、不活性ガス雰囲気下であることが好ましい。
なお、支持体と別に、高分子機能性膜形成用組成物を支持体に浸漬させ重合硬化反応が終わるまでの間、仮支持体(重合硬化反応終了後、仮支持体から膜を剥がす)を用いてもよい。
このような仮支持体は、物質透過を考慮する必要がなく、例えば、アルミ板等の金属板を含め、膜形成のために固定できるものであれば、どのようなものでも構わない。
上記製造ユニットでは、高分子機能性膜形成用組成物塗布部は活性放射線の照射源に対し上流の位置に置くことができ、照射源は複合膜巻取り部に対し上流の位置に置かれる。高速塗布機で塗布するのに十分な流動性を有するために、高分子機能性膜形成用組成物の35℃での粘度は、4,000mPa.s未満が好ましく、1〜1,000mPa.sがより好ましく、1〜500mPa.sが最も好ましい。スライドビードコーティングのようなコーティング法の場合の35℃での粘度は1〜100mPa.sが好ましい。
上記高分子機能性膜形成用組成物の重合硬化反応は、上記高分子機能性膜形成用組成物を支持体に塗布して好ましくは60秒以内、より好ましくは15秒以内、特に5秒以内、最も好ましくは3秒以内に開始する。
重合硬化反応は、高分子機能性膜形成用組成物に好ましくは10秒未満、より好ましくは5秒未満、特に好ましくは3秒未満、最も好ましくは2秒未満にわたり光を照射する。連続法では照射を連続的に行い、高分子機能性膜形成用組成物が照射ビームを通過して移動する速度によって、重合硬化反応時間を決める。
紫外線源は、水銀アーク灯、炭素アーク灯、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、旋回流プラズマアーク灯、金属ハロゲン化物灯、キセノン灯、タングステン灯、ハロゲン灯、レーザー及び紫外線発光ダイオードである。中圧又は高圧水銀蒸気タイプの紫外線発光ランプがとりわけ好ましい。これに加えて、ランプの発光スペクトルを改変するために、金属ハロゲン化物などの添加剤が存在していてもよい。大抵の場合、200〜450nmに発光極大を有するランプがとりわけ適している。
なお、塗布速度が速い場合、必要な暴露線量を得るために、複数の光源を使用しても構わない。この場合、複数の光源は暴露強度が同じでも異なってもよい。
本発明の高分子機能性膜は多孔質支持体と組み合わせた複合膜とすることが好ましく、更にはこれを用いた分離膜モジュールとすることが好ましい。また、本発明の高分子機能性膜、複合膜又は高分子機能性膜モジュールを用いて、イオン交換又は脱塩、精製させるための手段を有するイオン交換装置とすることができる。燃料電池としても好適に用いることが可能である。
本発明の高分子機能性膜はモジュール化して好適に用いることができる。モジュールの例としては、スパイラル型、中空糸型、プリーツ型、管状型、プレート&フレーム型、スタック型などが挙げられる。
成分A及び成分Bの有するアニオン性官能基の酸解離定数は、以下の方法により算出した。具体的には、化学構造描画ソフト「Marvin sketch」(Chem Axon社製)でアニオン性官能基を有する成分の構造を描画し、酸解離定数を算出した。構造を全選択し、「Calculation」メニューから「pKa」を選択すると、該成分の酸解離定数が表示される。本発明における酸解離定数としてアニオン性官能基に相当する構造部分のpKaを用いた。
下記表1及び表2に示す組成の組成物の塗布液をアルミ板に、150μmのワイヤ巻き棒を用いて、手動で約5m/minの速さで塗布し、続いて、塗布した塗布液上に不織布を載せ、この不織布(Freudenberg社製 FO−2223−10、厚さ100μm)に塗布液を含浸させた。ワイヤを巻いていないロッドを用いてこの不織布から余分な塗布液を除去した。塗布時の塗布液の温度は約25℃(室温)であった。UV露光機(Fusion UV Systems社製、型式Light Hammer 10、D−バルブ、コンベア速度1.0〜8.0m/min、100%強度)を用いて、塗布液を含浸させた不織布(塗布液含浸支持体)を硬化反応することにより、カチオン交換膜を調製した。露光量は、UV−A領域にて1,000〜5,000mJ/cm2であった。得られた膜をアルミ板から取り外し、0.1M NaCl溶液中で少なくとも12時間保存した。
加熱により製膜を行う場合(比較例5及び6)、塗布液を除去する工程までは同様にし、その後80℃のオーブンに入れて熱硬化した。
<硬化に必要な時間(露光時間)>
硬化に必要な時間は、製膜後の膜を水に浸漬したときに溶出する成分が液体クロマトグラフィーで検出限界以下となるまでに必要な硬化時間として設定した。
0.5M、0.7M、1.5M、3.5M、4.5MのNaCl液で測定した膜の電気抵抗Rから膜の導電率A(S/cm2)を下記式aにより算出した。
A(S/cm2)=1/R 式a
次に、各NaCl濃度溶液の導電率及び膜厚を測定し、各NaCl濃度溶液の単位膜厚あたりの溶液導電率B(S/cm2)を算出した。この膜の導電率Aをy軸に、各NaCl濃度溶液の単位膜厚あたりの溶液導電率Bをx軸としてグラフを作成したとき、得られた5つのプロット(各濃度に対応する電気抵抗)の近似曲線(最小二乗法の一次線形近似曲線)のy切片をCとして、空孔体積分率は下記式bにより算出した。なお、イオン交換膜としては、空孔体積分率が低いことが好ましく、0.6%以下であることが好ましく、0.5%以下であることがより好ましく、0.4%以下であることが更に好ましい。
空孔体積分率=(A−C)/B 式(b)
0.5M NaCl水溶液中に約2時間浸漬した膜の両面を乾燥ろ紙で拭い、2室型セル(有効膜面積1cm2、Ag/AgCl参照電極(Metrohm社製を使用))に挟んだ。両室に同一濃度の NaClを100mL満たし、25℃の恒温水槽中に置いて平衡に達するまで放置し、セル中の液温が正しく25℃になってから、交流ブリッジ(周波数1,000Hz)により電気抵抗r1を測定した。測定NaCl濃度は0.5Mとした。次に膜を取り除き、0.5M NaCl水溶液のみとして両極間の電気抵抗r2を測り、膜の電気抵抗rをr1−r2として求めた。電気抵抗の値が小さいほどイオン交換膜として好ましい。
膜の透水率を図1に示す流路10を有する装置により測定した。図1において、符号1は膜を表し、符号3及び4は、それぞれ、フィード溶液(純水)及びドロー溶液(4M NaCl)の流路を表す。また、符号2の矢印はフィード溶液から分離された水の流れを示表す。
フィード溶液400mLとドロー溶液400mLとを、膜を介して接触させ(膜接触面積18cm2)、各液はペリスタポンプを用いて符号5の矢印の向きに流速0.11cm/秒で流した。フィード溶液中の水が膜を介してドロー溶液に浸透する速度を、フィード液とドロー液の質量をリアルタイムで測定することによって解析し、透水率を求めた。透水率の値が小さいほど、イオン交換膜として好ましい。なお、表に示した値は、105倍した値であり、例えば、実施例1の測定値は、4.00×10-5(mL/(m2・Pa・hr))である。
膜抵抗と透水率との積の値が小さいほど、イオン交換膜として高性能であることを示す。上記電気抵抗の値と透水率(105倍)の値との積を算出した。
本発明のカチオン交換膜と市販のアニオン交換膜(AMX、アストム社製)を組み合わせてスタックを作製し、電気透析装置(アシライザーED、アストム社製)を用いて脱塩実験を行った。水道水で調液した3% NaCl水溶液を脱塩し続け、10日間後に膜を取り出した。十分に水洗した後、膜表面を顕微鏡観察し、析出物が見られたものを不良とした。
膜の可視光(1,000nm)透過率を透過率測定器M−306(朝日分光(株)製)で測定し、25%以上であるものを良好、25%未満であるものを白濁とした。
また、実施例及び比較例で使用した化合物や支持体の詳細を以下に示す。
MN−1:2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(東京化成工業(株)製)、分子量:207.25
MN−2:2-Sulfoethyl methacrylate(Polyscience(株)製)、分子量:194.1
MN−3:Acid phosphoxy ethyl methacrylate(ユニケミカル(株)製)、分子量:210
MN−4:6-Acrylamidohexanoic Acid(和光純薬工業(株)製)、分子量:185.22
MN−5:2-Carboxyethyl acrylate(シグマアルドリッチ(株)製)、分子量:144.13
MN−6:2-(Acryloyloxy)ethyl Hydrogen Succinate(東京化成工業(株)製)、分子量:216.19
CL−1:下記構造の化合物(US4034001に記載の手法に従い、合成した。)、分子量:293
CL−2:下記構造の化合物(下記合成方法に従い、合成した。)、分子量:496
5Lの三口フラスコに炭酸水素ナトリウム(和光純薬工業(株)製)288.29g(3.43mol)、イオン交換水1,343mLを加えて、室温下で撹拌しているところに、4,4’−ベンジジン−2,2’−ジスルホン酸(東京化成工業(株)製)268.6g(0.78mol)を少しずつ加えた。室温下で30分撹拌したのち、氷冷下に冷却し、撹拌を続けた。氷冷下で撹拌しているところに塩化アクリロイル(和光純薬工業(株)製)138.7mL(1.53mol)を系内が10℃以下を保つように少しずつ滴下した。滴下終了後、氷冷却下で1時間、その後、室温下で3時間撹拌した。反応混合物にイソプロピルアルコール2,686mLを少しずつ加えて、生じた不溶物をろ過により取り除いた。得られたろ液を30Lのステンレスバケツに移し、室温下で撹拌しているところに、イソプロピルアルコール10,744mLを少しずつ加えた。得られた結晶をろ過し、その後、イソプロピルアルコール:水(5:1)の混合溶液1,074mLで結晶を洗浄し、目的のCL−2を339g(収率:87%)得た。
CL−4:polyethylene glycol (200) diacrylate(新中村化学工業(株)製)、分子量;308
Darocur 1173:2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(BASF社製)
Irgacure 819dw:ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド(有効成分45%)(BASF社製)
Lucirin TPO:2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド(BASF社製)
Irgacure OXE01:1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]
Irgacure OXE02:エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(0−アセチルオキシム)(BASF社製)
VA−67:下記構造(熱重合開始剤)(和光純薬工業(株)製)
NMP:N−メチル−2−ピロリドン(和光純薬工業(株)製)
2:フィード溶液中の水が膜を介してドロー溶液に浸透することを示す矢印
3:フィード溶液の流路
4:ドロー溶液の流路
5:液体の進行方向
10:透水率測定装置の流路
Claims (7)
- 成分Aとして、酸解離定数pKaがaであるアニオン性官能基を有するモノマーと、
成分Bとして、酸解離定数pKaがaよりも大きいbであるアニオン性官能基を有するモノマーと、
成分Cとして、下記式PI−1又は式PI−2で表される光重合開始剤と、を含有し、
bとaとの差が1.5以上10以下であり、
成分Aが、スルホン酸基、及び、リン酸基よりなる群から選択される少なくとも1つのアニオン性官能基を有し、かつ(メタ)アクリルアミド基及び/又は(メタ)アクリロイルオキシ基を有するモノマーであり、かつ、成分Bが、アニオン性官能基として、カルボン酸基を有し、かつ(メタ)アクリルアミド基及び/又は(メタ)アクリロイルオキシ基を有するモノマーであり、
成分Aが、下記式Iで表されるモノマー、下記式IIで表されるモノマー、及び、下記式a−1で表される化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーを含有し、
成分Bが、下記式a−1で表される化合物を含有し、
成分Aの有するアニオン性官能基のモル当量と、成分Bの有するアニオン性官能基のモル当量との比が、90:10〜50:50であることを特徴とする
高分子機能性膜形成用組成物。
式PI−1中、Rp1はアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基又はアリールオキシ基を表し、Rp2及びRp3はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基又はアリールオキシ基を表し、Rp2とRp3とが互いに結合して環を形成してもよく、nは0〜5の整数を表す。
式PI−2中、Rp4はアルキル基、アリール基、アルキルチオ基又はアリールチオ基を表し、Rp5はアルキル基、アリール基、アルキルチオ基、アリールチオ基又はアシル基を表し、Rp6はアルキル基又はアリール基を表す。
式I中、R 11 及びR 12 はそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表し、R 13 及びR 14 はそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、R 13 及びR 14 はそれらが結合する窒素原子及びYと共に6又は7員環の環を形成していてもよく、Yはアルキレン基又はアリーレン基を表し、かつ、1〜4つのスルホン酸基を含有する。
式II中、R 21 及びR 22 はそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、R 23 、R 24 、R 25 及びR 26 はそれぞれ独立に、置換基を表し、k 21 、k 22 、k 23 及びk 24 はそれぞれ独立に、0〜4の整数を表し、R 23 、R 24 、R 25 及びR 26 が複数存在する場合、R 23 、R 24 、R 25 及びR 26 はそれぞれ互いに同一でも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成していてもよく、A 21 、A 22 、A 23 及びA 24 はそれぞれ独立に、単結合又は2価の連結基を表し、M 21 はそれぞれ独立に、水素イオン、有機塩基イオン又は金属イオンを表し、n 21 及びn 22 はそれぞれ独立に、1〜4の整数を表し、m 21 及びm 22 はそれぞれ独立に、0又は1を表し、J 1 は単結合、−O−、−S−、−SO 2 −、−CO−、−CR 28 R 29 −又はアルケニレン基を表し、R 28 及びR 29 はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はハロゲン原子を表し、p 21 は1以上の整数を表し、q 21 は0〜4の整数を表す。
式a−1中、R a1 は、水素原子又はアルキル基を表し、X a1 は酸素原子又はNR a2 を表し、L a1 はアルキレン基、又は、アルキレン基と、エーテル結合、エステル結合、カルボニル基、アミド結合、チオエーテル結合、チオエステル結合、チオノエステル結合、ウレタン結合、及び、ウレア結合よりなる群から選択された少なくとも1つとを組み合わせた2価の有機基を表し、Y a1 はスルホン酸基、リン酸基、又は、カルボン酸基を表し、R a2 は水素原子又はアルキル基を表す。 - 成分Aの主鎖−アニオン性官能基間の距離と成分Bの主鎖−アニオン性官能基間の距離とが異なり、成分Aの主鎖−アニオン性官能基間の距離と成分Bの主鎖−アニオン性官能基間の距離との差が4以上である、請求項1に記載の高分子機能性膜形成用組成物。
- 請求項1又は2に記載の高分子機能性膜形成用組成物を重合させてなる、高分子機能性膜。
- 前記高分子機能性膜がイオン交換膜である、請求項3に記載の高分子機能性膜。
- 前記高分子機能性膜形成用組成物をエネルギー線照射により重合する工程を含む、
請求項3又は4に記載の高分子機能性膜の製造方法。 - 請求項4に記載の高分子機能性膜を有する、分離膜モジュール。
- 請求項4に記載の高分子機能性膜を有する、イオン交換装置。
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