JP6271747B2 - 高分子機能性膜形成用組成物、高分子機能性膜及びその製造方法、分離膜モジュール、並びに、イオン交換装置 - Google Patents

高分子機能性膜形成用組成物、高分子機能性膜及びその製造方法、分離膜モジュール、並びに、イオン交換装置 Download PDF

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Description

本発明は、高分子機能性膜形成用組成物、高分子機能性膜及びその製造方法、分離膜モジュール、並びに、イオン交換装置に関する。
高分子機能性膜は、イオン交換膜として使用され、電気脱塩(EDI:Electrodeionization)、連続的な電気脱塩(CEDI:Continuous Electrodeionization)、電気透析(ED:Electrodialysis)、逆電気透析(EDR:Electrodialysis reversal)等に用いられる。
電気脱塩(EDI)は、イオン輸送を達成するためにイオン交換膜と電位を使用して、水性液体からイオンが取り除かれる水処理プロセスである。従来のイオン交換のような他の浄水技術と異なり、酸又は苛性ソーダのような化学薬品の使用を要求せず、超純水を生産するために使用することができる。電気透析(ED)及び逆電気透析(EDR)は、水及び他の流体からイオン等を取り除く電気化学の分離プロセスである。
従来のイオン交換膜としては、例えば、特許文献1及び2に記載されたものが知られている。
特開2000−119420号公報 特開2003−82129号公報
本発明が解決しようとする課題は、空孔体積分率の低い高分子機能性膜が得られる高分子機能性膜形成用組成物、上記組成物を用いた高分子機能性膜及びその製造方法、並びに、上記高分子機能性膜を有する分離膜モジュール及びイオン交換装置を提供することである。
本発明の上記課題は、以下の<1>、<7>又は<9>〜<11>に記載の手段により解決された。好ましい実施態様である<2>〜<6>及び<8>と共に以下に記載する。
<1> 成分Aとして、酸解離定数pKaがaであるアニオン性官能基を有するモノマーと、成分Bとして、酸解離定数pKaがaよりも大きいbであるアニオン性官能基を有するモノマーと、成分Cとして、下記式PI−1又は式PI−2で表される光重合開始剤と、を含有し、bとaとの差が1.5以上10以下であり、成分Aの有するアニオン性官能基のモル当量と、成分Bの有するアニオン性官能基のモル当量との比が、90:10〜50:50であることを特徴とする高分子機能性膜形成用組成物、

式PI−1中、Rp1はアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基又はアリールオキシ基を表し、Rp2及びRp3はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基又はアリールオキシ基を表し、Rp2とRp3とが互いに結合して環を形成してもよく、nは0〜5の整数を表す。
式PI−2中、Rp4はアルキル基、アリール基、アルキルチオ基又はアリールチオ基を表し、Rp5はアルキル基、アリール基、アルキルチオ基、アリールチオ基又はアシル基を表し、Rp6はアルキル基又はアリール基を表す。
<2> 成分Aがスルホン酸基、ホスホン酸基、及び、リン酸基よりなる群から選択される少なくとも1つのアニオン性官能基を有するモノマーであり、かつ、成分Bがカルボン酸基を有するモノマーである、<1>に記載の高分子機能性膜形成用組成物、
<3> 成分Aが、(メタ)アクリルアミド基及び/又は(メタ)アクリロイルオキシ基を有する、<1>又は<2>に記載の高分子機能性膜形成用組成物、
<4> 成分Bが、(メタ)アクリルアミド基及び/又は(メタ)アクリロイルオキシ基を有する、<1>〜<3>のいずれか1つに記載の高分子機能性膜形成用組成物、
<5> 成分Aが、下記式Iで表されるモノマー、及び/又は、下記式IIで表されるモノマーを含有する、<1>〜<4>のいずれか1つに記載の高分子機能性膜形成用組成物、

式I中、R11及びR12はそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表し、R13及びR14はそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、R13及びR14はそれらが結合する窒素原子及びYと共に6又は7員環の環を形成していてもよく、Yはアルキレン基又はアリーレン基を表し、かつ、1〜4つのスルホン酸基を含有する。
式II中、R21及びR22はそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、R23、R24、R25及びR26はそれぞれ独立に、置換基を表し、k21、k22、k23及びk24はそれぞれ独立に、0〜4の整数を表し、R23、R24、R25及びR26が複数存在する場合、複数のR23、R24、R25及びR26はそれぞれ互いに同一でも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成していてもよく、A21、A22、A23及びA24はそれぞれ独立に、単結合又は2価の連結基を表し、M21はそれぞれ独立に、水素イオン、有機塩基イオン又は金属イオンを表し、n21及びn22はそれぞれ独立に、1〜4の整数を表し、m21及びm22はそれぞれ独立に、0又は1を表し、J1は単結合、−O−、−S−、−SO2−、−CO−、−CR2829−又はアルケニレン基を表し、R28及びR29はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はハロゲン原子を表し、p21は1以上の整数を表し、q21は0〜4の整数を表す。
<6> ポリマーが形成されたときの、成分Aの主鎖−アニオン性官能基間の距離と成分Bの主鎖−アニオン性官能基間の距離とが異なり、成分Aの主鎖−アニオン性官能基間の距離と成分Bの主鎖−アニオン性官能基間の距離との差が4以上である、<1>〜<5>のいずれか1つに記載の高分子機能性膜形成用組成物、
<7> <1>〜<6>のいずれか1つに記載の高分子機能性膜形成用組成物を重合させてなる、高分子機能性膜、
<8> 上記高分子機能性膜がイオン交換膜である、<7>に記載の高分子機能性膜、
<9> 上記高分子機能性膜形成用組成物をエネルギー線照射により重合する工程を含む、<7>又は<8>に記載の高分子機能性膜の製造方法、
<10> <8>に記載の高分子機能性膜を有する、分離膜モジュール、
<11> <8>に記載の高分子機能性膜を有する、イオン交換装置。
本発明によれば、空孔体積分率の低い高分子機能性膜が得られる高分子機能性膜形成用組成物、上記組成物を用いた高分子機能性膜及びその製造方法、並びに、上記高分子機能性膜を有する分離膜モジュール及びイオン交換装置を提供することができる。
膜の透水率を測定するための装置の流路の模式図である。 主鎖−アニオン性官能基間の距離の説明図である。
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
本明細書における基(原子団)の表記において、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
また、本明細書における化学構造式は、水素原子を省略した簡略構造式で記載する場合もある。
なお、本明細書中において、「(メタ)アクリレート」はアクリレート及びメタクリレートを表し、「(メタ)アクリル」はアクリル及びメタクリルを表し、「(メタ)アクリロイル」はアクリロイル及びメタクリロイルを表し、「(メタ)アクリルアミド」はアクリルアミド及びメタクリルアミドを表す。
また、本発明において、「質量%」と「重量%」とは同義であり、「質量部」と「重量部」とは同義である。
また、本発明において、好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
(高分子機能性膜形成用組成物)
本発明の高分子機能性膜形成用組成物(以下、単に「組成物」又は「膜形成用組成物」ともいう。)は、成分Aとして、酸解離定数pKaがaであるアニオン性官能基を有するモノマーと、成分Bとして、酸解離定数pKaがaよりも大きいbであるアニオン性官能基を有するモノマーと、成分Cとして、下記式PI−1又は式PI−2で表される光重合開始剤と、を含有し、bとaとの差が1.5以上10以下であり、成分Aの有するアニオン性官能基のモル当量と、成分Bの有するアニオン性官能基のモル当量との比が、90:10〜50:50であることを特徴とする。

式PI−1中、Rp1はアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基又はアリールオキシ基を表し、Rp2及びRp3はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基又はアリールオキシ基を表し、Rp2とRp3とが互いに結合して環を形成してもよく、nは0〜5の整数を表す。
式PI−2中、Rp4はアルキル基、アリール基、アルキルチオ基又はアリールチオ基を表し、Rp5はアルキル基、アリール基、アルキルチオ基、アリールチオ基又はアシル基を表し、Rp6はアルキル基又はアリール基を表す。
本発明者は鋭意検討した結果、成分A〜成分Cを含有する高分子機能性膜形成用組成物は、光硬化性に優れ、また、上記膜形成用組成物を光硬化して得られる高分子機能性膜は、イオン交換膜として好適であり、空孔体積分率が低く、更に、透水率が低く、電気抵抗が小さく、優れたスケーリング耐性を有することを見出した。
ここで、イオン交換膜を用いて電気透析を行った場合に、カルシウムイオンやマグネシウムイオン等に基づく難水溶性の析出物が発生することがある。スケーリング耐性とは、そのような析出物の発生が抑制されていることを意味する。
特許文献1及び2に記載のイオン交換膜は、透水率及び電気抵抗が大きく、電気透析に必要なエネルギーが大きいという問題がある。また、製膜に熱硬化を使用すると、少なくとも数時間の製膜時間が必要である。本発明者が鋭意検討した結果、特定のモノマーを光重合して製膜することで、製膜に要する時間を大幅に低減することができた。また、上述のような各種特性の顕著な向上が認められた。その作用機構は明確ではないが、以下のように推定している。
熱硬化では、硬化に要する時間が長いため、共重合成分同士が相分離し、均一な膜の形成が困難であるが、光硬化では、硬化時間が短いために、成分が相分離する前に硬化が完了し、均一な膜が形成される。また、熱重合を用いた場合には、溶媒として使用する水等が、硬化中に揮発するため、空隙が発生するが、本発明では、そのような空隙の発生が抑制されている。
更に、pKaの小さいモノマーを単独で使用した場合には、アニオン性基の電気反発によって、空隙が生じる。しかし、pKaの小さいモノマーとpKaの大きいモノマーとを併用することで、pKaの大きいモノマーがスペーサーの役割を果たし、上記空隙を埋めるために、空孔体積分率が低下する。
以下、本発明の高分子機能性膜を構成する、各成分について説明する。
成分A:酸解離定数pKaがaであるアニオン性官能基を有するモノマー、及び、成分B:酸解離定数pKaがaよりも大きいbであるアニオン性官能基を有するモノマー
本発明の高分子機能性膜形成用組成物は、成分Aとして、酸解離定数pKaがaであるアニオン性官能基を有するモノマーと、成分Bとして、酸解離定数pKaがaよりも大きいbであるアニオン性官能基を有するモノマーとを含有し、bとaとの差が1.5以上10以下である。
なお、本発明の膜形成用組成物は、アニオン性官能基を有する複数種のモノマーを含有し、上記アニオン性官能基の有するpKaの差が1.5以上10以下である2種以上のモノマーを含有していればよく、いずれか2つのpKaの差が1.5以上10以下である、3種以上のモノマーを含有していてもよい。
成分A及び成分Bの有するアニオン性官能基の酸解離定数は、以下の方法により算出される。具体的には、化学構造描画ソフト「Marvin sketch」(Chem Axon社製)でアニオン性官能基を有する成分の構造を描画し、酸解離定数を算出する。構造を全選択し、「Calculation」メニューから「pKa」を選択すると、該成分の酸解離定数が表示される。本発明における酸解離定数としてアニオン性官能基に相当する構造部分のpKaを用いた。
成分Bの有する酸解離定数bと成分Aの有する酸解離定数a(ただし、a<b)との差は、1.5以上10以下である。bとaとの差が1.5未満であると、成分Bがスペーサーとして機能せず、空孔体積分率が大きくなり、各種特性に劣る。また、10を超えると、膜のイオン透過性が下がってしまい、電気抵抗の上昇が著しく、不適である。
bとaとの差は、1.5〜8であることが好ましく、1.7〜7であることがより好ましく、2〜6であることが更に好ましい。
本発明において、上述のpKaを満たすモノマーの組み合わせの中でも、成分Aがスルホン酸基、ホスホン酸基、及び、リン酸基よりなる群から選択される少なくとも1つのアニオン性官能基を有するモノマーであり、かつ、成分Bがカルボン酸基を有するモノマーであることが好ましく、成分Aがスルホン酸基及び/又はホスホン酸基を有するモノマーであり、かつ、成分Bがカルボン酸基を有するモノマーであることがより好ましく、成分Aがスルホン酸基を有するモノマーであり、かつ、成分Bがカルボン酸基を有するモノマーであることが更に好ましい。
成分A及び成分Bは、ラジカル重合性モノマーであることが好ましく、エチレン性不飽和基(エチレン性不飽和二重結合)を有するモノマーであることがより好ましい。なお、本発明においてモノマーとは、分子量(分子量分布を有する場合には、重量平均分子量)が3,000以下の化合物を意味する。成分A及び成分Bは、分子量(分子量分布を有する場合には、重量平均分子量)が2,000以下であることが好ましく、1,000以下であることがより好ましい。成分A及び成分Bの分子量が上記範囲内であると優れた硬化性が得られる。本発明において、分子量は、構造式が分かる場合には理論値を使用し、また、構造式が不明の場合や、分子量分布を有する場合には、GPCで測定し、標準ポリスチレンで換算した値を用いる。
成分A及び成分Bとしては、アニオン性官能基と、エチレン性不飽和基とを有するモノマーであれば特に限定なく好ましく使用することができる。成分A及び成分Bは、アニオン性官能基を有する単官能モノマー及びアニオン性官能基を有する多官能モノマーのいずれかが好ましい。エチレン性不飽和基としては、(メタ)アクリロイルオキシ基及び(メタ)アクリルアミド基が好ましい。
すなわち、成分Aは、(メタ)アクリルアミド基及び/又は(メタ)アクリロイルオキシ基を有することが好ましい。また、成分Bも同様に、(メタ)アクリルアミド基及び/又は(メタ)アクリロイルオキシ基を有することが好ましい。
アニオン性官能基を有する単官能モノマーは、以下の式a−1で表される化合物であることが好ましい。

式a−1中、Ra1は、水素原子又はアルキル基を表し、Xa1は酸素原子又はNRa2を表し、La1は2価の有機基を表し、Ya1はアニオン性官能基を表し、Ra2は水素原子又はアルキル基を表す。
式a−1中、Ra1は、水素原子又はアルキル基を表し、上記アルキル基は炭素数1〜6のアルキル基であることが好ましく、1〜4のアルキル基であることがより好ましく、メチル基又はエチル基であることが更に好ましく、メチル基であることが特に好ましい。Ra1は、水素原子又はメチル基であることが最も好ましい。
式a−1中、Xa1は酸素原子又はNRa2を表し、Ra2は水素原子又はアルキル基を表し、上記アルキル基は炭素数1〜6であることが好ましく、1〜3であることがより好ましく、メチル基又はエチル基であることが更に好ましい。Xa1は、酸素原子又はNHであることが特に好ましい。
式a−1中、La1は、2価の有機基を表し、アルキレン基、又は、アルキレン基と、エーテル結合、エステル結合、カルボニル基、アミド結合、チオエーテル結合、チオエステル結合、チオノエステル結合、ウレタン結合、及び、ウレア結合よりなる群から選択された少なくとも1つとを組み合わせた2価の有機基であることが好ましい。
上記アルキレン基は、炭素数1〜18であることが好ましく、炭素数1〜12であることがより好ましく、炭素数1〜8であることが更に好ましく、炭素数2〜6であることが特に好ましい。
アルキレン基と、エーテル結合(−O−)、エステル結合(−C(=O)−O−)、カルボニル基(−C(=O)−)、アミド結合(−C(=O)−NR−)、チオエーテル結合(−S−)、チオエステル結合(−C(=O)−S−)、チオノエステル結合(−C(=S)−O−)、ウレタン結合(−NR−C(=O)−O−)、及び、ウレア結合(−NR−C(=O)−NR−)よりなる群から選択された少なくとも1つとを組み合わせた2価の有機基(ここで、Rは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。)としては特に限定されないが、アルキレン基と、エーテル結合、エステル結合、及び、アミド結合よりなる群から選択される少なくとも1つとを組み合わせた2価の基であることが好ましい。なお、上記の2価の基には、複数のアルキレン基と、複数のエーテル結合とを組み合わせた、ポリアルキレンオキシアルキレン基なども含まれる。
式a−1中、Ya1はアニオン性官能基を表し、具体的には、カルボン酸基(カルボキシ基、−COOH)、スルホン酸基(スルホ基、−SO3H)、ホスホン酸基(−P(=O)(OH)2)、ホスフィン酸基(−PH(=O)OH)、リン酸基(−OP(=O)(OH)2)、硝酸基(−NO3)、炭酸基(−HCO3)、チオール基(−SH)が例示される。これらの中でも、スルホン酸基、ホスホン酸基、リン酸基、カルボン酸基が好ましく、成分Aがスルホン酸基、ホスホン酸基及びリン酸基よりなる群から選択されるアニオン性官能基を少なくとも1つを有し、成分Bがカルボン酸基を有することが好ましい。成分Aは、スルホン酸基及び/又はホスホン酸基を有することがより好ましく、スルホン酸基を有することが特に好ましい。
なお、上記アニオン性基は、塩を形成していてもよく、四級アンモニウム塩、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等を形成していてもよい。
上記式a−1で表されるモノマーを以下に例示するが、本発明はこれらの例示化合物に限定されるものではない。なお、以下の化学式において、Rは水素原子又はメチル基を意味する。
また、成分Aとしては、下記式I又は式IIで表されるモノマーが好ましく例示される。

式I中、R11及びR12はそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表し、R13及びR14はそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、R13及びR14はそれらが結合する窒素原子及びYと共に6又は7員環の環を形成していてもよく、Yはアルキレン基又はアリーレン基を表し、かつ、1〜4つのスルホン酸基を含有する。
式II中、R21及びR22はそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、R23、R24、R25及びR26はそれぞれ独立に、置換基を表し、k21、k22、k23及びk24はそれぞれ独立に、0〜4の整数を表し、R23、R24、R25及びR26が複数存在する場合、R23、R24、R25及びR26はそれぞれ互いに同一でも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成していてもよく、A21、A22、A23及びA24はそれぞれ独立に、単結合又は2価の連結基を表し、M21はそれぞれ独立に、水素イオン、有機塩基イオン又は金属イオンを表し、n21及びn22はそれぞれ独立に、1〜4の整数を表し、m21及びm22はそれぞれ独立に、0又は1を表し、J1は単結合、−O−、−S−、−SO2−、−CO−、−CR2829−又はアルケニレン基を表し、R28及びR29はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はハロゲン原子を表し、p21は1以上の整数を表し、q21は0〜4の整数を表す。
アニオン性官能基を有する多官能モノマーとしては、上記式Iで表されるモノマー、又は、上記式IIで表されるモノマーにおいて、q21が1以上であるモノマーが好ましく例示される。
上記式I中、R11及びR12はそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表す。
上記式I中、R13及びR14はそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表す。アルキル基としては、炭素数1〜8のアルキル基が好ましく、炭素数1〜4のアルキル基がより好ましい。R13及びR14がそれらが結合する窒素原子及びYと共に6又は7員環の環を形成する場合、形成される環は、置換基を有していてもよいピペラジン、ホモピペラジン、又は、トリアジン環であることが好ましい。上記の感は、スルホン酸又はその塩により置換されていてもよい。
上記式I中、Yがアルキレン基である場合、YはCn2n-m(SO3H)m又はその塩であることが好ましい。nは3〜8であることが好ましく、3〜6であることが更に好ましく、mは1〜4であることが好ましい。Yがアリーレン基である場合、1〜4つのスルホン酸基を置換基として有するフェニレン基であることが好ましく、上記フェニレン基は、更に炭素数1〜4のアルキレン基等で置換されていてもよい。
上記式Iで表される化合物は、分子量をMWとし、1分子内に有するスルホン酸基の和をnsとしたとき、下記式を満たすことが好ましい。
MW<(300+300×ns)
式Iで表される化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
式II中、R21及びR22はそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、上記アルキル基は、炭素数1〜4のアルキル基であることが好ましく、メチル基又はエチル基であることがより好ましく、メチル基であることが更に好ましい。R21及びR22は水素原子又はメチル基であることが特に好ましい。
式II中、R23、R24、R25及びR26はそれぞれ独立に、置換基を表し、置換基としては、アルキル基(好ましくは炭素数1〜24、より好ましくは炭素数1〜12、更に好ましくは炭素数1〜4)、アリール基(好ましくは炭素数3〜20、より好ましくは炭素数6〜10)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、更に好ましくは炭素数2〜4)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、更に好ましくは炭素数2〜4)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜24、より好ましくは炭素数1〜12、更に好ましくは炭素数1〜4)、アリーロキシ基(好ましくは炭素数3〜20、より好ましくは炭素数6〜10)、ハロゲン原子、アシル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、更に好ましくは炭素数2〜4)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、更に好ましくは炭素数2〜4)、シアノ基が挙げられる。上記アルキル基は、直鎖状、分岐状又は環状のいずれでもよい。また、上記アリール基は、ヘテロ原子としてN、O又はSを含有するヘテロアリール基であってもよい。また、上記置換基は更に上記置換基により置換されてよい。
21、k22、k23及びk24は、0〜4の整数を表し、0又は1であることが好ましく、0であることがより好ましい。
21、A22、A23及びA24は、各々独立に、単結合又は2価の連結基を表す。2価の連結基としては、例えば、直鎖、分岐もしくは環状のアルキレン基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜12、更に好ましくは炭素数1〜4のアルキレン基であり、例えばメチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、へキシレン、オクチレン、デシレンが挙げられる。なお、環状のアルキレン基、すなわち、シクロアルキレン基の場合、好ましくは炭素数3〜12、より好ましくは炭素数3〜8、更に好ましくは炭素数3〜6のシクロアルキレン基が好ましい。)、直鎖、分岐もしくは環状のアルキニレン基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜12、更に好ましくは炭素数2〜4のアルケニレン基であり、例えばエテニレン、プロペニレンが挙げられる。なお、環状のアルケニレン基は5又は6員環のシクロアルケニレン基が好ましい。)、アルキレンオキシ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜12、更に好ましくは炭素数1〜4のアルキレンオキシ基であり、例えばメチレンオキシ、エチレンオキシ、プロピレンオキシ、ブチレンオキシ、ペンチレンオキシ、へキシレンオキシ、オクチレンオキシ、デシレンオキシが挙げられる。)、アラルキレン基(好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは炭素数7〜13のアラルキレン基であり、例えばベンジリデン、シンナミリデンが挙げられる。)、アリーレン基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜15のアリーレン基であり、例えば、フェニレン、クメニレン、メシチレン、トリレン、キシリレンが挙げられる。)、エーテル基(−O−)、チオエーテル基(−S−)、スルホニル基(−SO2−)、カルボニル基(−C(=O)−)が挙げられる。これらは更に置換基を有していてもよい。更なる置換基としてはヒドロキシ基又はハロゲン原子が好ましい。
21はそれぞれ独立に、水素イオン、有機塩基イオン又は金属イオンを表す。有機塩基イオンとしては、アンモニウムイオン(例えば、アンモニウム、メチルアンモニウム、ジメチルアンモウム、トリメチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、ジベンジルアンモニウム)、有機へテロ環イオン(含窒素ヘテロ環イオンが好ましく、上記含窒素ヘテロ環イオンにおけるヘテロ環としては、5又は6員環が好ましく、芳香環であっても単なるヘテロ環であっても構わない。またベンゼン環などの他の環で縮環されていてもよく、スピロ環、架橋環を形成していてもよい。例えば、ピリジニウム、N−メチルイミダゾリウム、N−メチルモルホリニウム、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデカニウム、1,8−ジアザビシクロ[4.3.0]−7−ノネニウム、グアニジウム)から選択される有機塩基イオンが挙げられる。金属イオンとしては、例えば、アルカリ金属イオン(例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン)、アルカリ土類金属イオン(例えば、ベリリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン)から選択される金属イオンが挙げられ、アルカリ金属イオンが好ましい。M21が複数存在する場合、複数存在するM21は、互いに同じでも異なっていてもよい。
21は、水素イオン、有機塩基イオン又はアルカリ金属イオンが好ましく、水素イオン、有機へテロ環イオン、リチウムイオン、ナトリウムイオン又はカリウムイオンがより好ましく、更に好ましくは水素イオン、ピリジニウム、N−アルキルモルホリニウム(好ましくは、N−メチルモルホリニウム)、N−アルキルイミダゾリウム(好ましくは、N−メチルイミダゾリウム)、リチウムイオン又はナトリウムイオンが特に好ましい。
21及びn22は、各々独立に1〜4の整数を表し、m21及びm22は0又は1を表す。
21及びn22は、各々独立に1〜3が好ましく、1又は2がより好ましく、1であることが特に好ましい。m21及びm22は0又は1であり、0であることが好ましい。
1は単結合、−O−、−S−、−SO2−、−CO−、−CR2829−、又は、アルケニレン基を表し、R28及びR29は、各々独立に、水素原子、アルキル基又はハロゲン原子を表す。
1は、単結合、−O−、−SO2−、−CO−、−CR2829−、又は、アルケニレン基(好ましくは、エチレン基)であることが好ましく、単結合、−SO2−、−CR2829−、又は、アルケニレン基がより好ましく、単結合が特に好ましい。
28及びR29は、各々独立に、アルキル基又はハロゲン原子が好ましく、メチル基又はフッ素原子がより好ましい。
21は1以上の整数を表し、1〜5が好ましく、1〜3がより好ましく、1が特に好ましい。q21は0〜4の整数を表し、0〜3が好ましく、0〜2がより好ましく、0又は1が更に好ましく、1が特に好ましい。
上記式IIで表されるモノマーは、下記式IIIで表されるモノマーであることが好ましい。

式III中、R21、R22、R23、R24、R25、R26、k21、k22、k23、k24、A21、A22、A23、A24、M21、m21、m22、n21、n22は、それぞれ、上記式IIにおけるR21、R22、R23、R24、R25、R26、k21、k22、k23、k24、A21、A22、A23、A24、M21、m21、m22、n21、n22と同義であり、好ましい範囲も同じである。
式IIで表される化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。なお、以下に示すM−1〜M−10は、単官能モノマーであり、M−11〜M−22は多官能モノマーである。
また、成分Bとしては、カルボキシル基含有単官能モノマーを使用してもよく、例えば、不飽和脂肪酸を使用してもよく、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸、イソクロトン酸等が挙げられる。
本発明において、成分A、成分B、及び、その他の重合性化合物よりなる群から選択される少なくとも1つの化合物が、多官能重合性化合物であることが好ましく、成分Aとして多官能重合性モノマーを含有することがより好ましい。多官能重合性化合物を使用することにより、高分子機能性膜に架橋が導入され、空孔体積分率が低下するので好ましい。
多官能重合性化合物の含有量は、膜形成用組成物の全固形分中、10〜90質量%であることが好ましく、20〜85質量%であることがより好ましく、30〜80質量%であることが更に好ましい。
また、重合性化合物の全質量に対する多官能重合性化合物の含有量は、10〜95質量%であることが好ましく、20〜90質量%であることがより好ましく、30〜85質量%であることが更に好ましい。
多官能重合性化合物の含有量が上記範囲内であると、得られる高分子機能性膜に適度な架橋が形成される。
本発明において、成分A及び成分Bは、それぞれ1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
成分Aの有するアニオン性官能基のモル当量と、成分Bの有するアニオン性官能基のモル当量との比は、90:10〜50:50である。含有比率が上記範囲内であると、イオン交換能に優れると共に、低い空孔体積分率が得られる。
成分Aの有するアニオン性官能基のモル当量と、成分Bの有するアニオン性官能基のモル当量との比は、85:15〜60:40であることが好ましく、85:15〜70:30であることがより好ましい。
成分Aの含有量は、本発明の膜形成用組成物の全固形分に対して、40〜90質量%であことが好ましく、50〜85質量%であることがより好ましく、55〜80質量%であることが更に好ましい。成分Aの含有量が上記範囲内であると、優れたイオン交換性が得られるので好ましい。
また、成分Bの含有量は、本発明の膜形成用組成物の全固形分に対して、3〜50質量%であることが好ましく、5〜45質量%であることがより好ましく、10〜30質量%であることが更に好ましい。成分Bの含有量が上記範囲内であると、空孔体積分率の低い高分子機能性膜が得られるので好ましい。
また、本発明において、後述するその他の重合性化合物を含めた重合性化合物の総含有量が、膜形成用組成物の全固形分量に対して80〜99質量%であることが好ましく、85〜98質量%であることがより好ましく、90〜97質量%であることが更に好ましい。
(主鎖−アニオン性官能基間の距離)
本発明において、成分Aの主鎖−アニオン性官能基間の距離と、成分Bの主鎖−アニオン性官能基間の距離が異なることが好ましく、成分Aの主鎖−アニオン性官能基間の距離と、成分Bの主鎖−アニオン性官能基間の距離との差が4以上であることがより好ましい。
ここで、主鎖−アニオン性官能基間の距離とは、ポリマーが形成されたときの主鎖から、アニオン性官能基までの原子数を意味し、N、O、Cなどの原子は同一とみなして、原子数をカウントする。また、カルボキシル基のC、スルホ基のSなど、アニオン性官能基を構成する原子はカウントしない。
図2に主鎖−アニオン性官能基間の距離の説明図を示す。
図2(A)では、主鎖−アニオン性官能基間の距離は、ポリマーとしたときに主鎖を形成する、エチレン性不飽和二重結合を有する炭素原子から、アニオン性官能基までの原子数であり、MN−1では、○で囲まれた原子数をカウントし、主鎖−アニオン性官能基間の距離は、4である。同様に、図2(B)では、MN−2の主鎖−アニオン性官能基間の距離は、4である。
次に、図2(C)では、CL−1は二官能の重合性化合物であり、ポリマーが形成されたときには、2つのエチレン性不飽和結合及びその間の部分が主鎖を形成する。従って、主鎖−アニオン性官能基間の距離は、○で囲まれた原子で示されるように、1である。
更に、図2(D)では、図2(C)と同様に、CL−2は二官能の重合性化合物であり、ポリマーが形成されたときには、2つのエチレン性不飽和結合及びその間の部分が主鎖を形成する。CL−2において、アニオン性官能基は、主鎖に直接結合しており、主鎖−アニオン性官能基間の距離は、0である。
成分A又は成分Bとして、複数種の化合物を使用した場合には、主鎖−アニオン性官能基間の距離は、アニオン性官能基の当量で数平均をとった値を用いる。すなわち、主鎖−アニオン性官能基間の数は、主鎖−アニオン性官能基間の距離の平均値である。
具体的には、成分Aとして、0.1molのMN−1と、0.2molのCL−1とを使用した場合、成分Aの主鎖−アニオン性官能基間の距離Lは、以下のようになる。
L={(MN−1の主鎖−アニオン性基間の距離)×0.1+(CL−1の主鎖−アニオン性基間の距離)×0.2}÷(0.1+0.2)
=(4×0.1+1×0.2)÷(0.1+0.2)
=2
従って、上記の例の場合には、主鎖−イオン性基間の距離Lは、2となる。
また、成分Aとして、上述の0.1molのMN−1と、0.2molのCL−2とを使用した場合、成分Aの主鎖−アニオン性官能基間の距離Lは、以下のようになる。
L={(MN−1の主鎖−アニオン性基間の距離)×0.1+(CL−2の主鎖−アニオン性基間の距離)×0.2×2(当量/モル)}÷(0.1+0.2×2)
=(4×0.1)÷(0.1+0.4)
=0.8
従って、上記の例の場合には、主鎖−イオン性基間の距離Lは0.8となる。
上述のように、成分Aの主鎖−アニオン性官能基間の距離と、成分Bの主鎖−アニオン性官能基間の距離との差は、4以上であることが好ましい。アニオン性官能基が結合した側鎖の長さが異なるモノマーを配合することにより、形成されたポリマーが櫛形の構造となり、膜中の間隙をより減少させるものと推定される。特に、成分Aの主鎖−アニオン性官能基間の距離と、成分Bの主鎖−アニオン性官能基間の距離との差が4以上であると、上記の効果が高いものと推定される。これにより、酸性度の異なるモノマーを使用する効果と、櫛形構造によってより間隙が減少する効果の双方が発揮され、透過性能、スケーリング耐性により優れる高分子機能性膜が得られると推定される。
成分Aの主鎖−アニオン性官能基間の距離と、成分Bの主鎖−アニオン性官能基間の距離との差は、4以上であることが好ましく、4〜15であることがより好ましく、6〜15であることが更に好ましい。
成分Aの主鎖−アニオン性官能基間の距離と、成分Bの主鎖−アニオン性官能基間の距離との差が15以下であると、モノマーの分子量が適切であり、膜全体の電荷密度の低下が抑制され、膜抵抗の上昇が抑制されるので好ましい。
また、化合物の入手容易性の観点から、成分Bの主鎖−アニオン性官能基間の距離の方が、成分Aの主鎖−アニオン性官能基間の距離よりも大きいことが好ましい。
成分C:式PI−1又は式PI−2で表される光重合開始剤
本発明の組成物は、式PI−1で表される光重合開始剤及び/又は式PI−2で表される光重合開始剤を含有する。

式PI−1中、Rp1はアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基又はアリールオキシ基を表し、Rp2及びRp3はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基又はアリールオキシ基を表し、Rp2とRp3とが互いに結合して環を形成してもよく、nは0〜5の整数を表す。
式PI−2中、Rp4はアルキル基、アリール基、アルキルチオ基又はアリールチオ基を表し、Rp5はアルキル基、アリール基、アルキルチオ基、アリールチオ基又はアシル基を表し、Rp6はアルキル基又はアリール基を表す。
p1は炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリールオキシ基が好ましく、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基は置換基を有してもよく、上記置換基としては、特に限定されないが、例えば、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アシルオキシ基、ヒドロキシ基等が例示される。
アリールオキシ基のアリール基はフェニル基が好ましい。
p1は炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基であることがより好ましく、アルコキシ基の場合、メトキシ基及び2−ヒドロキシエトキシ基が好ましく、アルキル基の場合は、フェニル基が置換したメチル基が好ましく、上記フェニル基には、−C(=O)−C(Rp2)(Rp3)(OH)が置換して、分子全体として、メチレンビス体を形成することも好ましい。
p2及びRp3はそれぞれ独立に、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基又はアリールオキシ基であることが好ましく、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、炭素数6〜10のアリールオキシ基であることがより好ましく、アルキル基であることが更に好ましく、特にメチルであることが好ましい。アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基は置換基を有してもよく、上記置換基としては、特に限定されないが、例えば、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アシルオキシ基、ヒドロキシ基等が例示される。
p2とRp3が互いに結合して形成する環は、5又は6員環が好ましく、シクロペンタン環、シクロヘキサン環がより好ましい。
式PI−2中、Rp4〜Rp6におけるアルキル基は、炭素数1〜8のアルキル基が好ましく、Rp4〜Rp6におけるアリール基は、炭素数6〜16のアリール基が好ましく、アリール基は置換基を有してもよい。上記置換基としては、特に限定されないが、例えば、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アシルオキシ基、ヒドロキシ基等が例示され、アルキル基又はアルコキシ基が好ましい。
p4、Rp5におけるアルキルチオ基又はアリールチオ基は炭素数1〜12のアルキルチオ基、炭素数6〜12のアリールチオ基が好ましい。Rp5におけるアシル基はアルキルカルボニル基、アリールカルボニル基が好ましく、炭素数2〜12のアルキルカルボニル基、炭素数7〜17のアリールカルボニル基が好ましい。Rp5は、アリールカルボニル基が中でも好ましく、置換基を有してもよいフェニルカルボニル基が特に好ましい。アシル基は置換基を有してもよい。
本発明において、成分Cとしては、式PI−2で表される重合開始剤よりも式PI−1で表される重合開始剤が硬化性の観点で好ましい。
以下に、式PI−1又はPI−2で表される重合開始剤の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
式PI−1で表される光重合開始剤、及び、式PI−2で表される光重合開始剤は、BASF・ジャパン(株)等から入手することができる。
本発明において、膜形成用組成物の全固形分100質量部に対し、成分Cの含有量は、0.1〜10質量部が好ましく、0.1〜5質量部がより好ましく、0.5〜3質量部が特に好ましい。含有量が上記範囲内であると、硬化性に優れる。
(その他の成分)
本発明の膜形成用組成物は、上記の成分A〜成分Cに加え、その他の成分を含有してもよい。その他の成分としては、成分D:成分A及び成分B以外の重合性化合物、成分E:成分C以外の光重合開始剤、成分F:共増感剤、成分G:重合禁止剤、成分H:溶媒、成分I:アルカリ金属化合物、成分J:その他の成分が挙げられる。以下、それぞれについて説明する。
成分D:成分A及び成分B以外の重合性化合物
本発明の膜形成用組成物は、成分Dとして、成分A及び成分B以外の重合性化合物を含有していてもよい。ここで、成分Dは、本発明の高分子機能性膜の透水性や、膜の電気抵抗を調整するために、膜の親疎水性及び架橋密度を調整する役割を果たすことが好ましい。
なお、他の重合性化合物は、モノマー、オリゴマー及びポリマーのいずれでもよいが、モノマーであることが好ましい。なお、本発明において、オリゴマーとは、重量平均分子量が3,000を超え、10,000以下の化合物を意味し、ポリマーとは、重量平均分子量が10,000を超える化合物を意味する。
「他の単官能重合性化合物」とは、上記成分A及び成分Bに該当しない単官能重合性化合物であり、このような他の単官能重合性化合物としては、例えば、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、ビニルエステル類、スチレン類、アクリロニトリル、マレイン酸イミド等の公知のモノマーも挙げられる。このようなモノマー類を使用することで、製膜性、膜強度、親水性、疎水性、溶解性、反応性、安定性等の諸物性を改善することができる。モノマーの合成法としては、例えば丸善(株)、日本化学会編の「第5版実験科学講座16 有機化合物の合成(II−1)」におけるエステル合成の項目や「第5版実験科学講座26 高分子化学」におけるモノマーの取り扱い、精製の項目などを参考とすることができる。
これらの中でも、得られた高分子機能性膜の安定性、pH耐性の観点から、エステル結合を有さないもの、(メタ)アクリルアミド化合物、ビニルエーテル化合物、芳香族ビニル化合物、N−ビニル化合物(アミド結合を有する重合性モノマー)、アリル化合物が好ましく、(メタ)アクリルアミド化合物が特に好ましい。
他の単官能重合性化合物としては、例えば、特開2008−208190号公報や特開2008−266561号公報に記載の化合物が挙げられる。
その他の単官能重合性化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
これらの化合物は、興人(株)、協和発酵ケミカル(株)、Fluka(株)、aldrich(株)、東亞合成(株)から市販されていたり、公知の方法で容易に合成できる。
本発明の膜形成用組成物は、成分Dとして、2官能以上の多官能重合性化合物を含有してもよい。成分Dは、多官能(メタ)アクリルアミド化合物であることが好ましい。
成分Dとして好ましい多官能重合性化合物を以下に例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
ここで、化合物(VII−10)のlは1以上の整数を表す。
また、イオン交換能の観点から、成分Dの含有量は、成分A及び成分Bの合計含有量よりも少ない(成分A及び成分Bの含有量未満である)ことが好ましく、成分A及び成分Bの合計含有量の90%以下であることがより好ましく、75%以下であることが更に好ましい。
成分E:成分C以外の光重合開始剤
本発明における高分子機能性膜形成用組成物は、成分Cに加え、成分Eとして成分C以外の光重合開始剤(以下、その他の光重合開始剤ともいう。)を含んでもよい。
光重合開始剤としては、式PI−1で表される化合物を除く芳香族ケトン類、式PI−2で表される化合物を除くアシルホスフィン化合物、芳香族オニウム塩化合物、有機化酸化物、チオ化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物、並びにアルキルアミン化合物等が挙げられる。
芳香族ケトン類、アシルホスフィンオキシド化合物、及び、チオ化合物の好ましい例としては、「RADIATION CURING IN POLYMER SCIENCE AND TECHNOLOGY」,p.77〜117(1993)に記載のベンゾフェノン骨格又はチオキサントン骨格を有する化合物等が挙げられる。より好ましい例としては、特公昭47−6416号公報に記載のα−チオベンゾフェノン化合物、特公昭47−3981号公報に記載のベンゾインエーテル化合物、特公昭47−22326号公報に記載のα−置換ベンゾイン化合物、特公昭47−23664号公報に記載のベンゾイン誘導体、特開昭57−30704号公報に記載のアロイルホスホン酸エステル、特公昭60−26483号公報に記載のジアルコキシベンゾフェノン、特公昭60−26403号公報、特開昭62−81345号公報記載のベンゾインエーテル類、特公平1−34242号公報、米国特許第4,318,791号明細書、欧州特許出願公開第0284561A1号明細書に記載のα−アミノベンゾフェノン類、特開平2−211452号公報に記載のp−ジ(ジメチルアミノベンゾイル)ベンゼン、特開昭61−194062号公報に記載のチオ置換芳香族ケトン、特公平2−9597号公報に記載のアシルホスフィンスルフィド、特公昭63−61950号公報に記載のチオキサントン類、特公昭59−42864号公報に記載のクマリン類等を挙げることができる。また、特開2008−105379号公報、特開2009−114290号公報に記載の重合開始剤も好ましい。また、加藤清視著「紫外線硬化システム」((株)総合技術センター発行:平成元年)の第65〜148頁に記載されている重合開始剤などを挙げることができる。
本発明において、水溶性の重合開始剤が好ましく用いられる。
ここで、重合開始剤が水溶性であるとは、25℃において蒸留水に0.5質量%以上溶解することを意味する。上記水溶性の光重合開始剤は、25℃において蒸留水に1質量%以上溶解することが更に好ましく、3質量%以上溶解することが特に好ましい。
本発明において、その他の光重合開始剤を含めた光重合開始剤の総含有量は、高分子機能性膜形成用組成物中の全固形分質量100質量部に対し、0.1〜10質量部が好ましく、0.1〜5質量部がより好ましく、0.3〜2質量部が更に好ましい。
また、その他の光重合開始剤の含有量は、成分Cの含有量以下であることが好ましく、成分Cの含有量に対し、75質量%以下であることがより好ましく、50質量%以下であることが更に好ましく、25質量%以下であることが特に好ましく、10質量%以下であることが最も好ましい。
成分F:共増感剤
本発明の高分子機能膜形成用組成物に、感度を一層向上させる、又は、酸素による重合阻害を抑制する等の作用を有する公知の化合物を、共増感剤として加えてもよい。
このような共増感剤の例としては、アミン類、例えばM.R.Sanderら著「Journal of Polymer Society」第10巻,3173頁(1972)、特公昭44−20189号公報、特開昭51−82102号公報、特開昭52−134692号公報、特開昭59−138205号公報、特開昭60−84305号公報、特開昭62−18537号公報、特開昭64−33104号公報、ResearchDisclosure,33825号に記載の化合物等が挙げられ、具体的には、トリエタノールアミン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p−ホルミルジメチルアニリン、p−メチルチオジメチルアニリン等が挙げられる。
別の例としてはチオール及びスルフィド類、例えば、特開昭53−702号公報、特公昭55−500806号公報、特開平5−142772号公報に記載のチオール化合物、特開昭56−75643号公報のジスルフィド化合物等が挙げられ、具体的には、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプト−4(3H)−キナゾリン、β−メルカプトナフタレン等が挙げられる。
また別の例としては、アミノ酸化合物(例、N−フェニルグリシン等)、特公昭48−42965号公報に記載の有機金属化合物(例、トリブチル錫アセテート等)、特公昭55−34414号公報に記載の水素供与体、特開平6−308727号公報に記載のイオウ化合物(例、トリチアン等)、特開平6−250387号公報に記載のリン化合物(ジエチルホスファイト等)、特開平8−65779号公報に記載のSi−H、Ge−H化合物等が挙げられる。
成分G:重合禁止剤
本発明においては、塗布液の安定性を付与するために、膜形成用組成物が重合禁止剤を含むことも好ましい。
重合禁止剤としては、公知の重合禁止剤が使用でき、フェノール化合物、ハイドロキノン化合物、アミン化合物、メルカプト化合物などが挙げられる。
フェノール化合物の具体例としては、ヒンダードフェノール(オルト位にt−ブチル基を有するフェノールで、代表的には、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールが挙げられる。)、ビスフェノールが挙げられる。ハイドロキノン化合物の具体例としては、モノメチルエーテルハイドロキノンが挙げられる。
なお、これらの重合禁止剤は、1種単独でも、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
重合禁止剤の含有量は、高分子機能性膜形成用組成物中の全固形分質量100質量部に対し、0.01〜5質量部が好ましく、0.01〜1質量部がより好ましく、0.01〜0.5質量部が更に好ましい。
成分H:溶媒
本発明における高分子機能性膜形成用組成物は、成分Hとして溶媒を含んでいてもよい。高分子機能性膜形成用組成物中の溶媒の含有量は、全高分子機能性膜形成用組成物に対し、5〜50質量%が好ましく、10〜50質量%がより好ましく、10〜40質量%が更に好ましい。
溶媒を含むことで、重合硬化反応が、均一にしかもスムーズに進行する。また、多孔質支持体へ高分子機能性膜形成用組成物を含浸させる場合に含浸がスムーズに進行する。
溶媒は、水、及び/又は、水に対する溶解度が5質量%以上であるものが好ましく用いられ、水、及び/又は、水に対して自由に混合するものがより好ましい。このため、水及び水溶性溶媒から選択される溶媒が好ましく、水単独、水溶性溶媒単独、又は、これらの混合物が好ましい。
水溶性溶媒としては、特に、アルコール系溶媒、非プロトン性極性溶媒であるエーテル系溶媒、アミド系溶媒、ケトン系溶媒、スルホキシド系溶媒、スルホン系溶媒、二トリル系溶媒、有機リン系溶媒が好ましい。
アルコール系溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどが挙げられる。これらは1種類単独又は2種類以上を併用して用いることができる。
また、非プロトン性極性溶媒としては、ジメチルスルホキシド、ジメチルイミダゾリジノン、スルホラン、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、アセトン、ジオキサン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルアミド、ヘキサメチルホスホロトリアミド、ピリジン、プロピオニトリル、ブタノン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、エチレングリコールジアセテート、γ−ブチロラクトン等が好ましい溶媒として挙げられ、中でもジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルイミダゾリジノン、スルホラン、アセトン、アセトニトリル又はテトラヒドロフランが好ましい。これらは1種類単独又は2種類以上を併用して用いることができる。
成分I:アルカリ金属化合物
本発明における高分子機能性膜形成用組成物は、アニオン性官能基を有するモノマーである、成分A及び成分Bの溶解性を向上させるためにアルカリ金属化合物を含んでいてもよい。アルカリ金属化合物としては、リチウム、ナトリウム、カリウムの水酸化物塩、塩化物塩、硝酸塩等が好ましい。中でも、リチウム化合物がより好ましく、その具体例としては、水酸化リチウム、塩化リチウム、臭化リチウム、硝酸リチウム、ヨウ化リチウム、リチウム塩素酸塩、チオシアン酸リチウム、過塩素酸リチウム、リチウム・テトラフルオロボラート、リチウム・ヘキサフルオロホスファート、リチウム・ヘキサフルオロアルセナートが挙げられる。
ここで、アルカリ金属化合物は、高分子機能性膜形成用組成物、高分子機能性膜形成用組成物溶液混合物を中和するために使用することも好ましい。
これらのアルカリ金属化合物は水和物であってもよい。また、1種単独、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
アルカリ金属化合物を添加する場合の添加量は、高分子機能性膜形成用組成物中の全固形分質量100質量部に対し、0.1〜20質量部が好ましく、1〜20質量部がより好ましく、5〜20質量部が更に好ましい。
成分J:その他の成分
本発明の高分子機能性膜形成用組成物には、膜物性を調整するため、各種高分子化合物を添加することもできる。高分子化合物としては、アクリル系重合体、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、シェラック、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類、その他の天然樹脂等が使用できる。また、これらは2種以上併用しても構わない。
また、液物性調整のためにノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤や、有機フルオロ化合物などを添加することもできる。
界面活性剤の具体例としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、高級脂肪酸塩、高級脂肪酸エステルのスルホン酸塩、高級アルコールエーテルの硫酸エステル塩、高級アルコールエーテルのスルホン酸塩、高級アルキルスルホンアミドのアルキルカルボン酸塩、アルキルリン酸塩などのアニオン界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物、グリセリンのエチレンオキサイド付加物、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどの非イオン性界面活性剤、また、この他にもアルキルベタインやアミドベタインなどの両性界面活性剤、シリコン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤などを含めて、従来公知である界面活性剤及びその誘導体から適宜選ぶことができる。
高分子分散剤として、具体的にはポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリアクリルアミド等が挙げられ、中でもポリビニルピロリドンを用いることが好ましい。
上記アルカリ金属化合物以外に、必要により、例えば、界面活性剤、粘度向上剤、表面張力調整剤、防腐剤を含有してもよい。
(高分子機能性膜)
本発明の高分子機能性膜は、本発明の高分子機能性膜形成用組成物を重合(硬化)して得られる膜であり、光重合(光硬化)して得られる膜であることが好ましい。
本発明の高分子機能性膜は、アニオン性官能基を有し、電解質膜(イオン交換膜)としても用いることができ、NaClのような塩を含む水におけるカチオンNa+を交換することができる。
本発明において、特に、成分A〜成分Cを含有することでUV硬化性が付与されるため短時間で高分子機能性膜が得られ、生産性に優れ低コストで電解質膜を作製することできる。
理想的なイオン交換膜は、低膜抵抗、低透水率、高選択透過性(カチオン/アニオン交換分離選択性)である。単位構造分子量あたりの電荷密度が高いほど一般的には膜の抵抗は低下し、選択透過性が高くなり、架橋密度が大きいほど透水率を低下させることができる。
<支持体>
本発明の高分子機能性膜は、支持体を有することが好ましく、多孔質支持体を有することがより好ましい。
支持体としては、樹脂フィルム、織布、不織布、スポンジ等が挙げられる。これらの中でも、不織布が好ましく挙げられる。
多孔質支持体としては、例えば、織布、不織布、スポンジ状フィルム、微細な貫通孔を有するフィルム等が挙げられる。
支持体を形成する素材としては、例えば、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリアミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、アクリル樹脂、酢酸セルロース、ポリオレフィン、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、及び、それらのコポリマーが挙げられる。
市販の多孔質支持体としては、例えば、日本バイリーン(株)や、Freudenberg社、Filtration Technologies社、及び、Sefar AG社から市販されているものが挙げられる。
支持体は、親水性を有することが好ましい。支持体に親水性を付与するための手法として、コロナ処理、オゾン処理、硫酸処理、シランカップリング剤処理などの一般的な方法を使用することができる。
支持体の厚さとしては、10〜500μmであることが好ましく、20〜400μmであることがより好ましく、50〜300μmであることが更に好ましく、80〜300μmであることが特に好ましい。
本発明の高分子機能性膜は、多孔質支持体の表面及び/又は内部に成分A及び成分Bに由来する構成単位を有する樹脂を有する膜であることが好ましい。
また、本発明の高分子機能性膜は、水を含む膜であることが好ましく、上記成分A及び成分Bに由来する構成単位を有する樹脂が水を含んでゲル状となっている膜であることがより好ましい。
<高分子機能性膜の製造方法>
本発明の高分子機能性膜は、少なくとも成分A〜成分Cを含有する高分子機能性膜形成用組成物を上記支持体に塗布し、塗布後の支持体にエネルギー線(活性放射線ともいう。)を照射することにより重合反応させ、形成されることが好ましい。
本発明の高分子機能性膜の製造方法の一例として、本発明の膜形成用組成物を支持体に塗布し、塗布後の支持体を、活性放射線を照射することにより形成する方法が挙げられる。
本発明の高分子機能性膜を形成する条件に特に制限はないが、温度は−30〜100℃が好ましく、−10〜80℃がより好ましく、5〜60℃が特に好ましい。
本発明においては、膜を形成時に空気や酸素などの気体を共存させてもよいが、不活性ガス雰囲気下であることが好ましい。
本発明の高分子機能性膜は、固定された支持体を用いてバッチ式(バッチ方式)で調製することが可能であるが、移動する支持体を用いて連続式で膜を調製(連続方式)してもよい。支持体は、連続的に巻き戻されるロール形状でもよい。なお、連続方式の場合、連続的に動かされるベルト上に支持体を載せ、高分子機能性膜形成用組成物である塗布液の連続的な塗布と重合硬化して膜を形成する工程を連続して行うことができる。ただし、塗布工程と膜形成工程の一方のみを連続的に行ってもよい。
なお、支持体と別に、高分子機能性膜形成用組成物を支持体に浸漬させ重合硬化反応が終わるまでの間、仮支持体(重合硬化反応終了後、仮支持体から膜を剥がす)を用いてもよい。
このような仮支持体は、物質透過を考慮する必要がなく、例えば、アルミ板等の金属板を含め、膜形成のために固定できるものであれば、どのようなものでも構わない。
高分子機能性膜形成用組成物は、種々の方法、例えば、カーテンコーティング、押し出しコーティング、エアナイフコーティング、スライドコーティング、ニップロールコーティング、フォワードロールコーティング、リバースロールコーティング、浸漬コーティング、キスコーティング、ロッドバーコーティング又は噴霧コーティングにより、多孔質支持体に塗布もしくは浸漬することができる。複数の層の塗布は、同時又は連続して行うことができる。同時重層塗布するには、カーテンコーティング、スライドコーティング、スロットダイコーティング及び押し出しコーティングが好ましい。
高分子機能性膜の連続方式での製造は、高分子機能性膜形成用組成物を、移動している支持体に連続的に、より好ましくは、高分子機能性膜形成用組成物塗布部と、この高分子機能性膜形成用組成物を重合硬化するための照射源と、膜巻取り部と、支持体を上記高分子機能性膜形成用組成物塗布部から照射源及び膜巻取り部に移動させるための手段とを含む製造ユニットにより製造する。
本発明において、(i)高分子機能性膜形成用組成物である塗布液を支持体に塗布及び含浸、又は塗布と含浸の少なくとも一方を施し、(ii)上記高分子機能性膜形成用組成物を光照射により重合硬化反応し、(iii)所望により膜を支持体から取り外す、という過程を経て本発明の高分子機能性膜が作製されることが好ましい。
<活性放射線照射>
上記製造ユニットでは、高分子機能性膜形成用組成物塗布部は活性放射線の照射源に対し上流の位置に置くことができ、照射源は複合膜巻取り部に対し上流の位置に置かれる。高速塗布機で塗布するのに十分な流動性を有するために、高分子機能性膜形成用組成物の35℃での粘度は、4,000mPa.s未満が好ましく、1〜1,000mPa.sがより好ましく、1〜500mPa.sが最も好ましい。スライドビードコーティングのようなコーティング法の場合の35℃での粘度は1〜100mPa.sが好ましい。
高速塗布機では、高分子機能性膜形成用組成物を、15m/分を超える速度で、移動する支持体に塗布することができ、最高400m/分を超える速度で塗布することもできる。
特に、膜の機械的強度を高めるために支持体を使用する場合、高分子機能性膜形成用組成物を支持体の表面に塗布する前に、例えば支持体の湿潤性及び付着力を改善するために、コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、紫外線照射処理などに付してもよい。
重合硬化反応中に、成分A及び成分Bなどの重合性化合物が重合してポリマーを形成する。重合硬化反応は、30秒以内に膜を形成するのに十分な迅速さで重合硬化が起こるという条件で、光照射により行うことが好ましい。
上記高分子機能性膜形成用組成物の重合硬化反応は、上記高分子機能性膜形成用組成物を支持体に塗布して好ましくは60秒以内、より好ましくは15秒以内、特に5秒以内、最も好ましくは3秒以内に開始する。
重合硬化反応は、高分子機能性膜形成用組成物に好ましくは10秒未満、より好ましくは5秒未満、特に好ましくは3秒未満、最も好ましくは2秒未満にわたり光を照射する。連続法では照射を連続的に行い、高分子機能性膜形成用組成物が照射ビームを通過して移動する速度によって、重合硬化反応時間を決める。
強度の高い紫外線(UV光)を重合硬化反応に用いる場合、かなりの量の熱が生じる可能性があり、過熱を防ぐために、光源のランプ及び高分子機能性膜形成用組成物を塗布した支持体、又は光源のランプと高分子機能性膜形成用組成物を塗布した支持体の少なくとも一方を冷却用空気などで冷却することが好ましい。著しい線量の赤外光(IR光)がUVビームと一緒に照射される場合、IR反射性石英プレートをフィルターにしてUV光を照射することが好ましい。
活性放射線は紫外線が好ましい。照射波長は、高分子機能性膜形成用組成物中に包含される任意の光重合開始剤の吸収波長と波長が適合することが好ましく、例えばUV−A(400〜320nm)、UV−B(320〜280nm)、UV−C(280〜200nm)である。
紫外線源は、水銀アーク灯、炭素アーク灯、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、旋回流プラズマアーク灯、金属ハロゲン化物灯、キセノン灯、タングステン灯、ハロゲン灯、レーザー及び紫外線発光ダイオードである。中圧又は高圧水銀蒸気タイプの紫外線発光ランプがとりわけ好ましい。これに加えて、ランプの発光スペクトルを改変するために、金属ハロゲン化物などの添加剤が存在していてもよい。大抵の場合、200〜450nmに発光極大を有するランプがとりわけ適している。
活性照射線の照射源のエネルギー出力は、好ましくは20〜1,000W/cm、より好ましくは40〜500W/cmであるが、所望の暴露線量を実現することができるならば、これより高くても、低くても構わない。暴露強度を変更することで、膜の硬化度を調整することができる。暴露線量は、High Energy UV Radiometer(EIT−Instrument Markets製のUV Power PuckTM)により、上記装置で示されたUV−B範囲で測定して、好ましくは少なくとも40mJ/cm2以上、より好ましくは100〜2,000mJ/cm2、更に好ましくは150〜1,500mJ/cm2である。暴露時間は自由に選ぶことができるが、短いことが好ましく、最も好ましくは2秒未満である。
なお、塗布速度が速い場合、必要な暴露線量を得るために、複数の光源を使用しても構わない。この場合、複数の光源は暴露強度が同じでも異なってもよい。
<分離膜モジュール・イオン交換装置>
本発明の高分子機能性膜は多孔質支持体と組み合わせた複合膜とすることが好ましく、更にはこれを用いた分離膜モジュールとすることが好ましい。また、本発明の高分子機能性膜、複合膜又は高分子機能性膜モジュールを用いて、イオン交換又は脱塩、精製させるための手段を有するイオン交換装置とすることができる。燃料電池としても好適に用いることが可能である。
本発明の高分子機能性膜はモジュール化して好適に用いることができる。モジュールの例としては、スパイラル型、中空糸型、プリーツ型、管状型、プレート&フレーム型、スタック型などが挙げられる。
本発明の高分子機能性膜は、特にイオン交換に使用することを主として意図している。しかしながら、本発明の高分子機能性膜はイオン交換に限定されるものではなく、燃料電池用のプロトン伝導膜、タンパク質・ウイルス除去にも好適に用いることができると考えられる。
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」、「%」は質量基準である。
(酸解離定数pKaの算出)
成分A及び成分Bの有するアニオン性官能基の酸解離定数は、以下の方法により算出した。具体的には、化学構造描画ソフト「Marvin sketch」(Chem Axon社製)でアニオン性官能基を有する成分の構造を描画し、酸解離定数を算出した。構造を全選択し、「Calculation」メニューから「pKa」を選択すると、該成分の酸解離定数が表示される。本発明における酸解離定数としてアニオン性官能基に相当する構造部分のpKaを用いた。
(高分子機能性膜(カチオン交換膜)の作製)
下記表1及び表2に示す組成の組成物の塗布液をアルミ板に、150μmのワイヤ巻き棒を用いて、手動で約5m/minの速さで塗布し、続いて、塗布した塗布液上に不織布を載せ、この不織布(Freudenberg社製 FO−2223−10、厚さ100μm)に塗布液を含浸させた。ワイヤを巻いていないロッドを用いてこの不織布から余分な塗布液を除去した。塗布時の塗布液の温度は約25℃(室温)であった。UV露光機(Fusion UV Systems社製、型式Light Hammer 10、D−バルブ、コンベア速度1.0〜8.0m/min、100%強度)を用いて、塗布液を含浸させた不織布(塗布液含浸支持体)を硬化反応することにより、カチオン交換膜を調製した。露光量は、UV−A領域にて1,000〜5,000mJ/cm2であった。得られた膜をアルミ板から取り外し、0.1M NaCl溶液中で少なくとも12時間保存した。
加熱により製膜を行う場合(比較例5及び6)、塗布液を除去する工程までは同様にし、その後80℃のオーブンに入れて熱硬化した。
(評価)
<硬化に必要な時間(露光時間)>
硬化に必要な時間は、製膜後の膜を水に浸漬したときに溶出する成分が液体クロマトグラフィーで検出限界以下となるまでに必要な硬化時間として設定した。
<膜の空孔体積分率(%)>
0.5M、0.7M、1.5M、3.5M、4.5MのNaCl液で測定した膜の電気抵抗Rから膜の導電率A(S/cm2)を下記式aにより算出した。
A(S/cm2)=1/R 式a
次に、各NaCl濃度溶液の導電率及び膜厚を測定し、各NaCl濃度溶液の単位膜厚あたりの溶液導電率B(S/cm2)を算出した。この膜の導電率Aをy軸に、各NaCl濃度溶液の単位膜厚あたりの溶液導電率Bをx軸としてグラフを作成したとき、得られた5つのプロット(各濃度に対応する電気抵抗)の近似曲線(最小二乗法の一次線形近似曲線)のy切片をCとして、空孔体積分率は下記式bにより算出した。なお、イオン交換膜としては、空孔体積分率が低いことが好ましく、0.6%以下であることが好ましく、0.5%以下であることがより好ましく、0.4%以下であることが更に好ましい。
空孔体積分率=(A−C)/B 式(b)
<膜抵抗(膜の電気抵抗)(Ω・cm2)>
0.5M NaCl水溶液中に約2時間浸漬した膜の両面を乾燥ろ紙で拭い、2室型セル(有効膜面積1cm2、Ag/AgCl参照電極(Metrohm社製を使用))に挟んだ。両室に同一濃度の NaClを100mL満たし、25℃の恒温水槽中に置いて平衡に達するまで放置し、セル中の液温が正しく25℃になってから、交流ブリッジ(周波数1,000Hz)により電気抵抗r1を測定した。測定NaCl濃度は0.5Mとした。次に膜を取り除き、0.5M NaCl水溶液のみとして両極間の電気抵抗r2を測り、膜の電気抵抗rをr1−r2として求めた。電気抵抗の値が小さいほどイオン交換膜として好ましい。
<透水率(mL/(Pa・m2・h)>
膜の透水率を図1に示す流路10を有する装置により測定した。図1において、符号1は膜を表し、符号3及び4は、それぞれ、フィード溶液(純水)及びドロー溶液(4M NaCl)の流路を表す。また、符号2の矢印はフィード溶液から分離された水の流れを示表す。
フィード溶液400mLとドロー溶液400mLとを、膜を介して接触させ(膜接触面積18cm2)、各液はペリスタポンプを用いて符号5の矢印の向きに流速0.11cm/秒で流した。フィード溶液中の水が膜を介してドロー溶液に浸透する速度を、フィード液とドロー液の質量をリアルタイムで測定することによって解析し、透水率を求めた。透水率の値が小さいほど、イオン交換膜として好ましい。なお、表に示した値は、105倍した値であり、例えば、実施例1の測定値は、4.00×10-5(mL/(m2・Pa・hr))である。
膜抵抗と透水率との積の値が小さいほど、イオン交換膜として高性能であることを示す。上記電気抵抗の値と透水率(105倍)の値との積を算出した。
<スケーリング耐性試験>
本発明のカチオン交換膜と市販のアニオン交換膜(AMX、アストム社製)を組み合わせてスタックを作製し、電気透析装置(アシライザーED、アストム社製)を用いて脱塩実験を行った。水道水で調液した3% NaCl水溶液を脱塩し続け、10日間後に膜を取り出した。十分に水洗した後、膜表面を顕微鏡観察し、析出物が見られたものを不良とした。
<硬化後の面状>
膜の可視光(1,000nm)透過率を透過率測定器M−306(朝日分光(株)製)で測定し、25%以上であるものを良好、25%未満であるものを白濁とした。
表1及び表2における膜形成用組成物の各成分欄における数値の単位は、有効成分の質量部である。また、表中の「−」は、当該成分を含有しないことを意味する。表1及び表2中、「距離」の欄は、「主鎖−アニオン性官能基間の距離」を表す。
また、実施例及び比較例で使用した化合物や支持体の詳細を以下に示す。
MN−1:2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(東京化成工業(株)製)、分子量:207.25
MN−2:2-Sulfoethyl methacrylate(Polyscience(株)製)、分子量:194.1
MN−3:Acid phosphoxy ethyl methacrylate(ユニケミカル(株)製)、分子量:210
MN−4:6-Acrylamidohexanoic Acid(和光純薬工業(株)製)、分子量:185.22
MN−5:2-Carboxyethyl acrylate(シグマアルドリッチ(株)製)、分子量:144.13
MN−6:2-(Acryloyloxy)ethyl Hydrogen Succinate(東京化成工業(株)製)、分子量:216.19
CL−1:下記構造の化合物(US4034001に記載の手法に従い、合成した。)、分子量:293
CL−2:下記構造の化合物(下記合成方法に従い、合成した。)、分子量:496
(CL−2の合成方法)
5Lの三口フラスコに炭酸水素ナトリウム(和光純薬工業(株)製)288.29g(3.43mol)、イオン交換水1,343mLを加えて、室温下で撹拌しているところに、4,4’−ベンジジン−2,2’−ジスルホン酸(東京化成工業(株)製)268.6g(0.78mol)を少しずつ加えた。室温下で30分撹拌したのち、氷冷下に冷却し、撹拌を続けた。氷冷下で撹拌しているところに塩化アクリロイル(和光純薬工業(株)製)138.7mL(1.53mol)を系内が10℃以下を保つように少しずつ滴下した。滴下終了後、氷冷却下で1時間、その後、室温下で3時間撹拌した。反応混合物にイソプロピルアルコール2,686mLを少しずつ加えて、生じた不溶物をろ過により取り除いた。得られたろ液を30Lのステンレスバケツに移し、室温下で撹拌しているところに、イソプロピルアルコール10,744mLを少しずつ加えた。得られた結晶をろ過し、その後、イソプロピルアルコール:水(5:1)の混合溶液1,074mLで結晶を洗浄し、目的のCL−2を339g(収率:87%)得た。
CL−3:N,N'-Methylenebisacrylamide(和光純薬工業(株)製)、分子量:154.17
CL−4:polyethylene glycol (200) diacrylate(新中村化学工業(株)製)、分子量;308
MEHQ:4−メトキシフェノール(東京化成工業(株)製)
Darocur 1173:2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(BASF社製)
Irgacure 819dw:ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド(有効成分45%)(BASF社製)
Lucirin TPO:2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド(BASF社製)
Irgacure OXE01:1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]
Irgacure OXE02:エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(0−アセチルオキシム)(BASF社製)
VA−67:下記構造(熱重合開始剤)(和光純薬工業(株)製)
IPA:イソプロピルアルコール(和光純薬工業(株)製)
NMP:N−メチル−2−ピロリドン(和光純薬工業(株)製)
1:膜
2:フィード溶液中の水が膜を介してドロー溶液に浸透することを示す矢印
3:フィード溶液の流路
4:ドロー溶液の流路
5:液体の進行方向
10:透水率測定装置の流路

Claims (7)

  1. 成分Aとして、酸解離定数pKaがaであるアニオン性官能基を有するモノマーと、
    成分Bとして、酸解離定数pKaがaよりも大きいbであるアニオン性官能基を有するモノマーと、
    成分Cとして、下記式PI−1又は式PI−2で表される光重合開始剤と、を含有し、
    bとaとの差が1.5以上10以下であり、
    成分Aが、スルホン酸基、及び、リン酸基よりなる群から選択される少なくとも1つのアニオン性官能基を有し、かつ(メタ)アクリルアミド基及び/又は(メタ)アクリロイルオキシ基を有するモノマーであり、かつ、成分Bが、アニオン性官能基として、カルボン酸基を有し、かつ(メタ)アクリルアミド基及び/又は(メタ)アクリロイルオキシ基を有するモノマーであり、
    成分Aが、下記式Iで表されるモノマー、下記式IIで表されるモノマー、及び、下記式a−1で表される化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーを含有し、
    成分Bが、下記式a−1で表される化合物を含有し、
    成分Aの有するアニオン性官能基のモル当量と、成分Bの有するアニオン性官能基のモル当量との比が、90:10〜50:50であることを特徴とする
    高分子機能性膜形成用組成物。

    式PI−1中、Rp1はアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基又はアリールオキシ基を表し、Rp2及びRp3はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基又はアリールオキシ基を表し、Rp2とRp3とが互いに結合して環を形成してもよく、nは0〜5の整数を表す。
    式PI−2中、Rp4はアルキル基、アリール基、アルキルチオ基又はアリールチオ基を表し、Rp5はアルキル基、アリール基、アルキルチオ基、アリールチオ基又はアシル基を表し、Rp6はアルキル基又はアリール基を表す。

    式I中、R 11 及びR 12 はそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表し、R 13 及びR 14 はそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、R 13 及びR 14 はそれらが結合する窒素原子及びYと共に6又は7員環の環を形成していてもよく、Yはアルキレン基又はアリーレン基を表し、かつ、1〜4つのスルホン酸基を含有する。
    式II中、R 21 及びR 22 はそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、R 23 、R 24 、R 25 及びR 26 はそれぞれ独立に、置換基を表し、k 21 、k 22 、k 23 及びk 24 はそれぞれ独立に、0〜4の整数を表し、R 23 、R 24 、R 25 及びR 26 が複数存在する場合、R 23 、R 24 、R 25 及びR 26 はそれぞれ互いに同一でも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成していてもよく、A 21 、A 22 、A 23 及びA 24 はそれぞれ独立に、単結合又は2価の連結基を表し、M 21 はそれぞれ独立に、水素イオン、有機塩基イオン又は金属イオンを表し、n 21 及びn 22 はそれぞれ独立に、1〜4の整数を表し、m 21 及びm 22 はそれぞれ独立に、0又は1を表し、J 1 は単結合、−O−、−S−、−SO 2 −、−CO−、−CR 28 29 −又はアルケニレン基を表し、R 28 及びR 29 はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はハロゲン原子を表し、p 21 は1以上の整数を表し、q 21 は0〜4の整数を表す。

    式a−1中、R a1 は、水素原子又はアルキル基を表し、X a1 は酸素原子又はNR a2 を表し、L a1 はアルキレン基、又は、アルキレン基と、エーテル結合、エステル結合、カルボニル基、アミド結合、チオエーテル結合、チオエステル結合、チオノエステル結合、ウレタン結合、及び、ウレア結合よりなる群から選択された少なくとも1つとを組み合わせた2価の有機基を表し、Y a1 はスルホン酸基、リン酸基、又は、カルボン酸基を表し、R a2 は水素原子又はアルキル基を表す。
  2. 成分Aの主鎖−アニオン性官能基間の距離と成分Bの主鎖−アニオン性官能基間の距離とが異なり、成分Aの主鎖−アニオン性官能基間の距離と成分Bの主鎖−アニオン性官能基間の距離との差が4以上である、請求項1に記載の高分子機能性膜形成用組成物。
  3. 請求項1又は2に記載の高分子機能性膜形成用組成物を重合させてなる、高分子機能性膜。
  4. 前記高分子機能性膜がイオン交換膜である、請求項に記載の高分子機能性膜。
  5. 前記高分子機能性膜形成用組成物をエネルギー線照射により重合する工程を含む、
    請求項又はに記載の高分子機能性膜の製造方法。
  6. 請求項に記載の高分子機能性膜を有する、分離膜モジュール。
  7. 請求項に記載の高分子機能性膜を有する、イオン交換装置。
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