JP6268822B2 - 色材、色材分散液、及び樹脂組成物 - Google Patents
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アミニウム系色素やジイモニウム系色素は、一般に、フタロシアニン系色素よりも可視光線の吸収が小さいため着色しにくいというメリットがある一方、アミニウム系色素及びジイモニウム系色素は、一般に、耐熱性や耐光性が低いという問題があった。
なお、本発明において「色材」とは、可視光線(波長400nm〜700nmの光)及び近赤外線(波長700nm〜1100nmの光)のうちの少なくとも一部を吸収する化合物をいい、近赤外線のみを吸収する化合物も含まれる。
また、本発明において(メタ)アクリルとは、アクリル又はメタアクリルの各々を表し、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートの各々を表す。
本発明に係る色材は、下記一般式(I)で表される化合物であることを特徴とする。
本発明の色材は、アミニウムカチオン及びジイモニウムカチオンの対イオンとして2価以上のヘテロポリ酸アニオンを用いる。ヘテロポリ酸はそれ自体が耐熱性及び耐光性に優れている。また、多価のヘテロポリ酸アニオンを用いることにより、カチオンとアニオンが1対1でイオン結合しているのではなく、1個のヘテロポリ酸アニオンに2個以上の色素カチオンがイオン結合している。そのため、ヘテロポリ酸アニオンを中心として複数のカチオンが1つの分子を構成する。その結果、1個のアミニウムカチオン乃至ジイモニウムカチオンが1分子を構成する従来のアミニウム色素やジイモニウム色素よりも見かけの分子量が増大し、熱運動を低下させて耐熱性が向上するものと推定される。
また、ヘテロポリ酸は酸性度が高くアニオン安定性に優れるため、対となるアミニウムカチオンやジイモニウムカチオンの安定性が向上する。そのため、カチオンの発色性が安定するとともに、耐光性が向上するものと推定される。
これらのことから、本発明の色材は、耐熱性及び耐光性に優れ、赤外線吸収性にも優れている。
R1〜R8における炭化水素基としては、例えば、炭素原子数が1〜10の脂肪族炭化水素基、炭素原子数が6〜10の芳香族炭化水素基が置換した脂肪族炭化水素基、炭素原子数が6〜30の芳香族炭化水素基等が好適なものとして用いられる。
炭素原子数が6〜10の芳香族炭化水素基が置換した脂肪族炭化水素基の具体例としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基等が挙げられる。
炭素原子数が6〜30の芳香族炭化水素基としては、例えば、ベンゼン環の他、ナフタレン環、テトラリン環、インデン環、フルオレン環、アントラセン環、フェナントレン環等の縮合多環芳香族炭化水素;ビフェニル、ターフェニル、ジフェニルメタン、トリフェニルメタン、スチルベン等の鎖状多環式炭化水素が挙げられる。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、塩素原子又は臭素原子であることが好ましい。
R1〜R8として好ましい置換基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、シクロヘキシルメチル基、シアノプロピル基、トリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基、ヘキサフルオロエチル基、トリクロロメチル基等が挙げられる。
本発明においてアニオン(Xa−)は、耐熱性及び耐光性の点から、中でも、モリブデン原子及びタングステン原子より選択される1種以上を含む、a価のヘテロポリ酸アニオンであることが好ましい。
モリブデン原子及びタングステン原子のうち1種以上を含む2価以上のヘテロポリ酸アニオンとしては、耐熱性及び耐光性の点、及び原料入手の容易さの点から、P(リン原子)を含むヘテロポリ酸であることがより好ましい。
モリブデン原子及びタングステン原子のうち1種以上を含む2価以上のヘテロポリ酸アニオンは、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
b及びcは、それぞれ1以上の数を表し、カチオン(A)の価数が、a×c/bを満たすとき、一般式(I)で表される色材は正塩となる。
一般式(I)で表される色材は、例えば、上記一般式(II)で表されるカチオン及び上記一般式(III)で表されるカチオンより選択される1種以上のカチオンと、a価のヘテロポリ酸アニオンとを溶媒中で混合し、必要に応じて加熱することにより得ることができる。
本発明に係る色材分散液は、下記一般式(I)で表わされる色材と、分散剤と、23℃における前記色材の溶解度が0.1(mg/10g溶媒)以下の溶媒とを含有することを特徴とする。
以下、このような本発明の色材分散液の各成分について順に詳細に説明するが、一般式(I)で表される色材については、前述のとおりであるためここでの説明は省略する。
本発明に係る色材分散液において、前記一般式(I)で表される色材は溶媒中に分散させて用いられる。本発明においては色材を良好に分散させるために、分散剤が用いられる。分散剤としては、従来、顔料分散剤として用いられているものの中から適宜選択して用いることができる。分散剤としては、例えば、カチオン系、アニオン系、ノニオン系、両性、シリコーン系、フッ素系等の界面活性剤を使用できる。界面活性剤の中でも、均一に、微細に分散し得る点から、高分子界面活性剤(高分子分散剤)が好ましい。
主鎖又は側鎖に窒素原子を含む高分子分散剤の具体例としては、例えば、国際公開第2012/144521号パンフレットに記載のもの等が挙げられる。
ポリアクリル酸等の不飽和カルボン酸の(共)重合体の(部分)アミン塩、(部分)アンモニウム塩や(部分)アルキルアミン塩類としては、例えばDisperbyk2000、2001(以下全てビックケミー社製)等を用いることができる。
ポリウレタン類としては、例えばDisperbyk161等を用いることができる。
不飽和ポリアミド類としては、例えばDisperbyk101、130等を用いることができる。
ポリアリルアミン誘導体としては、例えば、アジスパーPB821、PB822、PB824、PB827(味の素ファインテクノ株式会社製)等を用いることができる。
ポリエチレンイミン誘導体としては、例えば、Solsperse33500(日本ルーブリゾール社製)等を用いることができる。
その他市販されている分散剤としては、Dysperbyk116、同140、同160、同162、同163、同164、同166、同167、同168、同170、同171、同174、同182、同2050、同6919(以上ビックケミー社製)、;EFKA4046、同4047、(以上EFKA CHEMICALS社製);Solsperse12000、同13250、同13940、同17000、同20000、同24000GR、同24000SC、同27000、同28000、同32000、同33500、同35200、同37500(以上、日本ルーブリゾール社製);アジスパーPB711、823、880(以上、味の素ファインテクノ製)等を挙げることができる。
xは1〜18の整数、yは1〜5の整数、zは1〜18の整数を示す。)
Rbは、炭素原子数1〜18のアルキル基、炭素原子数2〜18のアルケニル基、アラルキル基、アリール基、−[CH(Rc)−CH(Rd)−O]s−Re、−[(CH2)t−O]u−Re、又は−O−Rb’で示される1価の基である。Rb’は、炭素原子数1〜18のアルキル基、炭素原子数2〜18のアルケニル基、アラルキル基、アリール基、−[CH(Rc)−CH(Rd)−O]s−Re、又は−[(CH2)t−O]u−Reで示される1価の基である。
Rc及びRdは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、Reは、水素原子、あるいは炭素原子数1〜18のアルキル基、炭素原子数2〜18のアルケニル基、アラルキル基、アリール基、−CHO、−CH2CHO、−CO−CH=CH2、−CO−C(CH3)=CH2又は−CH2COORfで示される1価の基であり、Rfは水素原子又は炭素原子数1〜5のアルキル基である。
Ra、Ra’、及びRbにおいて、アルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基はそれぞれ、置換基を有していてもよい。
sは1〜18の整数、tは1〜5の整数、uは1〜18の整数を示す。)
R14及びR15は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基である。
上記R10としては、分散性の点から、炭素原子数1〜8のアルキレン基が好ましく、中でも、R10がメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基であることが更に好ましく、メチレン基及びエチレン基がより好ましい。
本発明に用いられる溶媒は、前記一般式(I)で表される色材を実質的に溶解しない溶媒又は難溶性の溶媒であり、23℃における前記色材の溶解度が、0.1(mg/10g溶媒)以下の溶媒である。このような溶媒を用いることにより、本発明に係る色材分散液は前記色材を溶媒中で粒子(凝集体)として分散させて用いることができる。本発明に用いられる前記一般式(I)で表される色材は、その凝集状態を保持したまま溶媒中に分散させて用いることにより、耐熱性及び耐光性に優れる。中でも、23℃における前記色材の溶解度が、0.01(mg/10g溶媒)以下である溶媒が好ましく、更に、前記色材を実質的に溶解しない溶媒がより好ましい。
20mLサンプル管瓶に評価する溶媒を10g投入し、更に前記色材0.1gを投入し、ふたをして20秒間よく振った後、23℃のウォーターバス内で10分間静置する。この上澄み液5gをろ過し不溶物を除く。得られたろ液を更に1000倍に希釈した溶液の吸光スペクトルを紫外可視近赤外分光光度計(例えば、島津製作所社製 UV−3100PC)で1cmセルを用いて測定し、最大吸収波長における吸光度を求める。このとき、最大吸収波長における吸光度が2未満であれば当該溶媒は、一般式(I)で表される色材を23℃における前記色材の溶解度が、0.1(mg/10g溶媒)以下の溶媒(難溶性の溶媒)であると評価できる。
エステル系溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、乳酸エチル、メトキシエチルアセテート、プロ、ピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシ−3−メチル−1−ブチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、メトキシブチルアセテート、エトキシエチルアセテート、エチルセロソルブアセテート等が挙げられる。
本発明の色材分散液は、以上のような溶媒を、当該溶媒を含む色材分散液の全量に対して、通常は60〜85質量%の割合で用いて調製する。溶媒が少なすぎると、粘度が上昇し、分散性が低下しやすい。また、溶媒が多すぎると、色材濃度が低下し、用途によっては十分な近赤外線吸収効果が得られない恐れがある。
本発明の色材分散液には、更に必要に応じて、顔料、染料、分散補助樹脂、その他の成分を配合してもよい。
顔料及び染料は、色調の制御を目的として必要に応じて配合される。顔料及び染料は従来公知のものを目的に応じて選択することができ、1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。顔料及び染料の配合量は、本発明の効果が損なわれない範囲であれば特に限定されず、後述する樹脂組成物で用いる場合と同様とすることができる。
分散補助樹脂としては、例えばアルカリ可溶性樹脂が挙げられる。アルカリ可溶性樹脂の立体障害によって色材粒子同士が接触しにくくなり、分散安定化することやその分散安定化効果によって分散剤を減らす効果がある場合がある。
また、その他の成分としては、例えば、濡れ性向上のための界面活性剤、密着性向上のためのシランカップリング剤、消泡剤、ハジキ防止剤、酸化防止剤、凝集防止剤、紫外線吸収剤などが挙げられる。
本発明の色材分散液は、前記分散剤を前記溶媒に混合、撹拌し、分散剤溶液を調製した後、当該分散剤溶液に、前記本発明に係る色材と必要に応じてその他の化合物を混合し、分散機を用いて分散させることによって調製することができる。また、本発明の色材分散液は、色材と分散剤を溶媒に混合し、公知の分散機を用いて分散させることによって調製してもよい。
このようにして、色材粒子の分散性に優れた色材分散液が得られる。
色材分散液中の色材の平均分散粒径は、少なくとも溶媒を含有する分散媒体中に分散している色材粒子の分散粒径であって、レーザー光散乱粒度分布計により測定されるものである。レーザー光散乱粒度分布計による粒径の測定としては、色材分散液に用いられている溶媒で、色材分散液をレーザー光散乱粒度分布計で測定可能な濃度に適宜希釈(例えば、1000倍など)し、レーザー光散乱粒度分布計(例えば、日機装社製なのトラック粒度分布測定装置UPA−EX150)を用いて動的光散乱法により23℃にて測定することができる。ここでの平均分散粒径は、体積平均粒径である。
本発明に係る樹脂組成物は、下記一般式(I)で表わされる色材と、バインダー成分とを含有することを特徴とする。
本発明の樹脂組成物は、少なくとも前記本発明に係る色材、及びバインダー成分を含有するものであり、必要に応じて他の成分を有してもよいものである。
また、本発明の樹脂組成物は、前記色材分散液にバインダー成分を組み合わせて用いてもよい。この場合、本発明の樹脂組成物は、一般式(I)で表される色材と、バインダー成分と、分散剤と、23℃における前記色材の溶解度が0.1(mg/10g溶媒)以下の溶媒とを含有する。
以下、本発明の樹脂組成物の各成分について詳細に説明する。なお、前記本発明に係る色材分散液に含まれ得る成分については、上記色材分散液の箇所において説明したものと同様のものを用いることができるので、ここでの説明は省略する。
本発明においてバインダー成分は少なくとも樹脂を含有する。当該樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂のいずれであってもよい。
硬化性バインダー成分としては、例えば、可視光線、紫外線、電子線等により重合硬化させることができる光硬化性樹脂を含む光硬化性バインダー成分や、加熱により重合硬化させることができる熱硬化性樹脂を含む熱硬化性バインダー成分を含むものを用いることができる。
以下、感光性バインダー成分について説明するが、硬化性バインダー成分はこれらに限定されるものではない。
感光性バインダー成分としては、ポジ型感光性バインダー成分とネガ型感光性バインダー成分が挙げられる。ポジ型感光性バインダー成分としては、例えば、アルカリ可溶性樹脂及び感光性付与成分としてo−キノンジアジド基含有化合物を含んだ系が挙げられ、アルカリ可溶性樹脂としては、例えば、ポリイミド前駆体等が挙げられる。
本発明の樹脂組成物には、本発明の目的が損なわれない範囲で、必要に応じ他の色材や各種添加剤を含むものであってもよい。
他の色材は、色調の制御を目的として必要に応じて配合される。色材は従来公知のものを目的に応じて選択することができ、1種又は2種以上用いることができる。
添加剤としては、例えば重合停止剤、連鎖移動剤、レベリング剤、可塑剤、界面活性剤、消泡剤、シランカップリング剤、紫外線吸収剤、密着促進剤等などが挙げられる。
界面活性剤及び可塑剤の具体例としては、例えば、国際公開第2012/144521号パンフレットに記載のものが挙げられる。
一般式(I)で表される色材及び必要に応じて配合される他の色材の合計の含有量は、樹脂組成物の固形分全量に対して、5〜65質量%、より好ましくは8〜55質量%の割合で配合することが好ましい。色材が少なすぎると、所望の赤外線吸収性を得ることが困難となる恐れがある。また色材等が多すぎると、樹脂組成物を基材へ塗布し硬化させた際の基材への密着性、硬化膜の表面荒れ、塗膜硬さ等の塗膜としての特性が不十分となるおそれがあり、また樹脂組成物中の色材の分散に使われる分散剤の量の比率も多くなるために耐溶剤性等の特性が不十分になる恐れがある。尚、本発明において固形分は、上述した溶媒以外のもの全てであり、溶媒中に溶解している多官能性モノマー等も含まれる。
また、分散剤を用いる場合、当該分散剤の含有量は、色材を均一に分散できる範囲で適宜調整すればよい。例えば、色材100質量部に対して10〜150質量部用いることが好ましく、色材100質量部に対して15〜45質量部の割合で配合するのがより好ましく、15〜40質量部の割合で配合するのが更により好ましい。また、分散剤の含有量は、樹脂組成物の固形分全量に対して、1〜60質量%の範囲内であることが好ましく、中でも5〜50質量%の範囲内であることが好ましい。分散剤の含有量が、樹脂組成物の固形分全量に対して、1質量%未満の場合には、色材を均一に分散することが困難になる恐れがあり、60質量%を超える場合には、硬化性、現像性の低下を招く恐れがある。
バインダー成分は、その合計の含有量が、樹脂組成物の固形分全量に対して24〜94質量%、40〜90質量%の割合で配合するのが好ましい。
また、溶媒を用いる場合、その含有量は、色材の分散性や、樹脂組成物の塗工性等の点から適宜調整すればよい。溶媒は、該溶媒を含む樹脂組成物の全量に対して、通常、65〜95質量%の範囲内であることが好ましく、中でも75〜88質量%の範囲内であることがより好ましい。
樹脂組成物の製造方法は、特に限定されない。前記本発明に係る色材分散液を用いて樹脂組成物を調製する場合、例えば、(1)溶媒中に、前記本発明に係る色材分散液と、バインダー成分と、所望により用いられる各種添加成分とを同時に投入し、混合する方法、(2)溶媒中に、バインダー成分と、所望により用いられる各種添加成分とを添加し、混合したのち、これに前記本発明に係る色材分散液を加えて混合する方法などが挙げられる。
1,4−フェニレンジアミン1.1g(10.2mmol)、4−ブロモ−N,N−ジエチルアニリン10g、ナトリウム−tert−ブトキシド4.56g、トリ−tert−ブチルホスフィン226mg、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)172mg、トルエン110ml混合溶液を窒素気流下、100℃まで加熱し、5時間還流させた。薄層クロマトグラフィー(TLC)で反応終了を確認した後、室温まで冷却し、水200ml、トルエン100mlを添加した。トルエンで抽出、水、ブラインで洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥した。
減圧下、ロータリーエバポレーターで溶媒を留去し、得られた固体を酢酸エチル/ノルマルへキサン=1/2で洗浄し、茶褐色固体のジイモニウム化合物5.7gを得た。(収率80%)
合成例1で得られたジイモニウム化合物5.7gを酢酸エチル/アセトン=2/1に溶解させ、第二塩化鉄3.0gを含む水46mlの水溶液を添加し、50℃で4時間攪拌した。
反応終了後室温まで冷却し、減圧下、ロータリーエバポレーターで溶媒を留去し得られた固体をアセトンで洗浄し、下記化学式(1)で表される比較色材A(緑色固体6.0g)を得た。(収率95%)
合成例2で得られた比較色材A2.0gを水に添加し、加熱しながら攪拌して溶解させた。そこへ、リンタングステン酸n水和物(n=25.6)5.48gを含む80mlの水溶液を滴下した。反応終了後、室温まで冷却し析出した固体をろ過、水で洗浄し、下記化学式(2)で表される色材A5.6g(収率86%)を得た。
合成例3において、リンタングステン酸n水和物の代わりに、リンタングステン酸n水和物とリンモリブデン酸n水和物(n=73.0)の混合物(70:30(モル比))を用いた以外は、合成例3と同様にして、下記化学式(3)で表される色材Bを得た(収率81%)。
合成例4において、リンタングステン酸n水和物とリンモリブデン酸n水和物のモル比が50/50になるようにした以外は、合成例4と同様にして、下記化学式(4)で表される色材Cを得た(収率74%)。
合成例3において、リンタングステン酸n水和物の代わりに、リンモリブデン酸n水和物を用いた以外は、合成例3と同様にして、下記化学式(5)で表される色材Dを得た(収率87%)。
冷却管、添加用ロート、窒素用インレット、機械的攪拌機、デジタル温度計を備えた反応器に、溶剤としてジエチレングリコールエチルメチルエーテル(略称EMDG)130質量部を仕込み、窒素雰囲気下で110℃に昇温した後、メタクリル酸メチル32質量部、メタクリル酸シクロヘキシル22質量部、メタクリル酸24質量部、開始剤としてα,α’−アゾビスイソブチロニトリル(略称AIBN)2質量部および連鎖移動剤としてn−ドデシルメルカプタン4.5質量部を含む混合物を、それぞれ1.5時間かけて連続的に滴下した。
その後、合成温度を保持して反応を続け、滴下終了から2時間後に重合禁止剤として、p−メトキシフェノール0.05質量部を添加した。
次に、空気を吹き込みながら、メタクリル酸グリシジル22質量部を添加して、110℃に昇温した後、トリエチルアミン0.2質量部を添加して110℃で15時間付加反応させ、バインダー樹脂A(固形分44質量%)を得た。
得られたバインダー樹脂Aの質量平均分子量Mwは8500、酸価は85mgKOH/gであった。なお、質量平均分子量Mwは、ポリスチレンを標準物質とし、THFを溶離液としてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて算出し、酸価はJIS−K0070に従い測定した。
色材として、合成例3の色材Aを6.00質量部、3級アミノ基を含むブロック共重合体(商品名:BYK−LPN6919、ビックケミー社製)を3.73質量部(有効固形分0.60質量部)、フェニルフォスフィン酸を0.76質量部、合成例3のバインダー樹脂A4.60質量部(有効固形分39.14質量部)、PGMEA84.91質量部を混合し、ペイントシェーカー(浅田鉄工製)にて予備分散として2mmジルコニアビーズで1時間、さらに本分散として0.1mmジルコニアビーズで4時間分散し、色材分散液Aを得た。
色材を合成例4の色材Bに代えた以外は製造例1と同様にして色材分散液Bを得た。
色材を合成例5の色材Cに代えた以外は製造例1と同様にして色材分散液Cを得た。
色材を合成例6の色材Dに代えた以外は製造例1と同様にして色材分散液Dを得た。
製造例1で得られた色材分散液A25.68質量部、下記バインダー組成物A35.34質量部、PGMEA38.54質量部、界面活性剤R08MH(DIC製)0.04質量部、シランカップリング剤KBM503(信越シリコーン製)0.4質量部を添加混合し、加圧濾過を行って、実施例1の着色樹脂組成物Aを得た。
・アルカリ可溶性樹脂(合成例3のバインダー樹脂A、固形分44質量%):18.18質量部
・5〜6官能アクリレートモノマー(商品名:アロニックスM403、東亞合成製):8.00質量部
・光重合開始剤:2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モリフォリノプロパン−1−オン(商品名:イルガキュア907、BASF製)):3.00質量部
・光増感剤:2,4ジエチルチオキサントン(商品名:カヤキュアーDETX−S、日本化薬製):1.00質量部
・溶剤:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA):19.82質量部
色材分散液を製造例2の色材分散液Bに代えた以外は実施例1と同様にして着色樹脂組成物Bを得た。
色材分散液を製造例3の色材分散液Cに代えた以外は実施例1と同様にして着色樹脂組成物Cを得た。
色材分散液を製造例4の色材分散液Dに代えた以外は実施例1と同様にして着色樹脂組成物を得た。
メタノールにポリヒドロキシエチルメタクリレート樹脂(PHEMA樹脂(Mw=20000))を溶解させた10%溶液99.5質量部に合成例2で得られた比較色材A0.5質量部を加え30分間攪拌し色材溶解液Eを得た。
次いで、実施例1において、色材分散液Aの代わりに、上記色材溶解液Eを用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例1の着色樹脂組成物Eを得た。
PGMEAにポリメチルメタアクリレート樹脂(PMMA樹脂(Mw=3000))を溶解させた10%溶液99.5質量部にCIR−1085F(日本カーリット社製、ジイモニウム色素(ジイモニウムカチオンとビストリフルオロメチルスルホニルイミドアニオンとの塩)、以下、比較色材Bとする。)0.5質量部を加え30分間攪拌し色材溶解液Fを得た。
次いで、実施例1において、色材分散液Aの代わりに、上記色材溶解液Fを用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例2の着色樹脂組成物Fを得た。
<耐熱性評価>
色材A〜D及び比較色材A、Bをそれぞれ、TG−DTA(SHIMADZU社製 DTG−60A)で10℃/分で昇温し、600℃まで加熱した。耐熱性評価として、重量が5%減少したときの温度を測定し、これを5%重量減少温度とした。結果を表1に示す。5%重量減少温度が高いほど、耐熱性に優れていると評価される。
各実施例及び比較例で得られた着色樹脂組成物を、それぞれ厚み0.7mmのガラス基板(日本電気硝子製、「OA−10G」)上に、スピンコーターを用いて塗布した。その後、80℃のホットプレート上で3分間加熱乾燥を行った。次いで、超高圧水銀灯を用いて40mJ/cm2の紫外線を照射することによって硬化膜とした。上記塗膜を有する着色基板をクリーンオーブンで150℃で30分間ポストベーク処理し、得られた着色膜の吸光度をSHIMADZU製「UV−3100」を用いて、ポストベーク前後における塗膜の吸光度を測定した。波長550nm及び波長900nmにおける吸光度を表2に示す。
なお、ポストベーク前後における吸光度変化率を下記式により算出した。
変化率 = ポストベーク後の吸光度 / ポストベーク前の吸光度
変化率が1に近いほど、耐熱性に優れていると評価される。
各実施例及び比較例で得られた着色樹脂組成物を、厚み0.7mmのガラス基板(日本電気硝子製、「OA−10G」)上に、スピンコーターを用いて塗布した。その後、80℃のホットプレート上で3分間加熱乾燥を行った。次いで、超高圧水銀灯を用いて40mJ/cm2の紫外線を照射することによって硬化膜を得た。当該塗膜を有する着色基板をそれぞれ大気圧下でキセノンランプ(アトラス社製Ci4000ウェザメータ、内側フィルター:石英、外側フィルター:ソーダライム&赤外線吸収コーティング(CIRA))を用い、420nmの波長で、照度を1.2W/m2として、12時間(50kJ/m2相当)照射した。キセノンランプによる光照射前後の塗膜の吸光度をSHIMADZU製「UV−3100」を用いて測定した。結果を表3に示す。
なお、光照射前後における吸光度変化率を下記式により算出した。
変化率 = 光照射後の吸光度 / 光照射前の吸光度
変化率が1に近いほど、耐光性に優れていると評価される。
表1の結果から、ジイモニウムの塩化物である比較色材Aは、耐熱性が悪かった。このような比較色材Aを用いた比較例1の着色樹脂組成物Fを用いて形成された塗膜は、表2及び表3に示される通り、ポストベークや光照射によって、波長550nmの光の吸光度が上昇し、波長900nmの光の吸光度が低下した。このように比較例1の塗膜は、熱乃至光により赤外線吸収効果が低減され、着色することが明らかとなった。
表1に示される通り、比較色材Bは、色材A〜Dと比較しても耐熱性は良好であった。しかしながら当該比較色材Bを用いた比較例2の塗膜は、表2の通り実施例1〜4と比較して耐熱性が悪かった。これは、比較色材Bが溶剤に溶解していたためであると推定される。また、比較例2の塗膜は、表3の通り耐光性が悪かった。
ヘテロポリ酸アニオンを有する色材A〜Dは、当該色材自体の耐熱性に優れていた。また、当該色材A〜Dを用いた実施例1〜4の塗膜は、耐熱性及び耐光性に優れていることが明らかとなった。
Claims (8)
- 下記一般式(I)で表される色材と、分散剤と、23℃における前記色材の溶解度が0.1(mg/10g溶媒)以下の溶媒とを含有し、
前記分散剤が、主鎖又は側鎖に窒素原子を含む高分子分散剤を含有する、色材分散液。
- 前記Xa−が、モリブデン原子及びタングステン原子より選択される1種以上を含む、a価のヘテロポリ酸アニオンである、請求項1に記載の色材分散液。
- 前記分散剤が、一般式(IV)で表される構成単位を有する重合体であって、当該構成単位が有するアミノ基と、下記一般式(V)及び、下記一般式(VI)より選択される1種以上の有機酸化合物とが塩を形成していてもよい共重合体を含有する、請求項1又は2に記載の色材分散液。
xは1〜18の整数、yは1〜5の整数、zは1〜18の整数を示す。)
R b は、炭素原子数1〜18のアルキル基、炭素原子数2〜18のアルケニル基、アラルキル基、アリール基、−[CH(R c )−CH(R d )−O] s −R e 、−[(CH 2 ) t −O] u −R e 、又は−O−R b’ で示される1価の基である。R b’ は、炭素原子数1〜18のアルキル基、炭素原子数2〜18のアルケニル基、アラルキル基、アリール基、−[CH(R c )−CH(R d )−O] s −R e 、又は−[(CH 2 ) t −O] u −R e で示される1価の基である。
R c 及びR d は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、R e は、水素原子、あるいは炭素原子数1〜18のアルキル基、炭素原子数2〜18のアルケニル基、アラルキル基、アリール基、−CHO、−CH 2 CHO、−CO−CH=CH 2 、−CO−C(CH 3 )=CH 2 又は−CH 2 COOR f で示される1価の基であり、R f は水素原子又は炭素原子数1〜5のアルキル基である。
R a 、R a’ 、及びR b において、アルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基はそれぞれ、置換基を有していてもよい。
sは1〜18の整数、tは1〜5の整数、uは1〜18の整数を示す。) - 下記一般式(I)で表される色材と、バインダー成分と、分散剤とを含有し、
前記分散剤が、主鎖又は側鎖に窒素原子を含む高分子分散剤を含有する、樹脂組成物。
- 前記Xa−が、モリブデン原子及びタングステン原子より選択される1種以上を含む、a価のヘテロポリ酸アニオンである、請求項4に記載の樹脂組成物。
- 前記分散剤が、一般式(IV)で表される構成単位を有する重合体であって、当該構成単位が有するアミノ基と、下記一般式(V)及び、下記一般式(VI)より選択される1種以上の有機酸化合物とが塩を形成していてもよい共重合体を含有する、請求項4又は5に記載の樹脂組成物。
xは1〜18の整数、yは1〜5の整数、zは1〜18の整数を示す。)
R b は、炭素原子数1〜18のアルキル基、炭素原子数2〜18のアルケニル基、アラルキル基、アリール基、−[CH(R c )−CH(R d )−O] s −R e 、−[(CH 2 ) t −O] u −R e 、又は−O−R b’ で示される1価の基である。R b’ は、炭素原子数1〜18のアルキル基、炭素原子数2〜18のアルケニル基、アラルキル基、アリール基、−[CH(R c )−CH(R d )−O] s −R e 、又は−[(CH 2 ) t −O] u −R e で示される1価の基である。
R c 及びR d は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、R e は、水素原子、あるいは炭素原子数1〜18のアルキル基、炭素原子数2〜18のアルケニル基、アラルキル基、アリール基、−CHO、−CH 2 CHO、−CO−CH=CH 2 、−CO−C(CH 3 )=CH 2 又は−CH 2 COOR f で示される1価の基であり、R f は水素原子又は炭素原子数1〜5のアルキル基である。
R a 、R a’ 、及びR b において、アルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基はそれぞれ、置換基を有していてもよい。
sは1〜18の整数、tは1〜5の整数、uは1〜18の整数を示す。) - 下記一般式(I)で表される色材。
- 前記Xa−が、モリブデン原子及びタングステン原子より選択される1種以上を含む、a価のヘテロポリ酸アニオンである、請求項7に記載の色材。
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