JP6268772B2 - 積層体の製造方法及び有機エレクトロニクス素子の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明の実施形態は、積層体の製造方法、有機エレクトロニクス素子の製造方法、組成物セット、有機エレクトロニクス素子、有機エレクトロルミネセンス素子(以下、有機EL素子ともいう。)、表示素子、照明装置、及び表示装置に関する。
有機エレクトロニクス素子は、有機物を用いて電気的な動作を行う素子であり、省エネルギー、低価格、柔軟性といった特長を発揮できると期待され、従来のシリコンを主体とした無機半導体に替わる技術として注目されている。
有機エレクトロニクス素子の一例として有機EL素子、有機光電変換素子、有機トランジスタなどが挙げられる。
有機エレクトロニクス素子の中でも有機EL素子は、例えば、白熱ランプ、ガス充填ランプの代替えとして、大面積ソリッドステート光源として注目されている。また、フラットパネルディスプレイ(FPD)分野における液晶ディスプレイ(LCD)に置き換わる最有力の自発光ディスプレイとしても注目されており、製品化が進んでいる。
有機EL素子を構成する有機半導体層を成膜する方法として、真空蒸着などの乾式プロセスと、凸版印刷等の有版印刷、インクジェット等の無版印刷などの湿式プロセスとが知られている。湿式プロセスは、工程が簡易であり、広い面積への成膜が可能なため、今後の大画面有機ELディスプレイには不可欠な技術である。
近年、有機EL素子では、高効率化、長寿命化等を図るために、素子の多層化が試みられている。しかし、有機半導体層を湿式プロセスを用いて成膜する場合、上層を形成するための組成物を塗布する際に下層が溶解してしまうという問題が生じる。
例えば、非特許文献1〜3、及び特許文献1にはこのような問題を克服するために、シロキサン化合物や、オキセタン基、ビニル基などを有する化合物の重合反応を利用して、化合物の溶解度を変化させ、下層を、上層を形成するために用いられる溶剤に対して不溶化する方法が開示されている。重合反応には、酸、塩基、ラジカル等を発生する適切な重合開始剤が用いられる。
また、近年、有機EL素子の駆動電圧、発光効率、発光寿命等を改善する目的で、電荷輸送性化合物に電子受容性化合物を混合し、電荷輸送性化合物からなるラジカルカチオン化合物を形成し、電荷輸送性を向上させる試みがなされている。
例えば、特許文献2には、正孔輸送性高分子化合物に、電子受容性化合物としてトリス(4−ブロモフェニルアミニウムヘキサクロロアンチモネート)(Tris(4-bromophenylaminium hexachloroantimonate):TBPAH)を混合することで、低電圧駆動が可能な有機電界発光素子が得られることが開示されている。
また、特許文献3には、正孔輸送性化合物に、電子受容性化合物として塩化鉄(III)(FeCl)を真空蒸着法により混合して用いることが開示されている。
特許文献4には、正孔輸送性高分子化合物に、電子受容性化合物としてトリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン(Tris(pentafluorophenyl)borane:PPB)を、湿式成膜法により混合して正孔注入層を形成することが開示されている。
さらに、特許文献5には、電荷輸送膜用組成物として、イオン化合物と電荷輸送性化合物とからなる組成物が開示されている。
国際公開第2008/010487号 特許第3748491号公報 特開平11−251067号公報 特許第4023204号公報 特開2006−233162号公報
H. Yan, P. Lee, N. R. Armstrong, A. Graham, G. A. Evemenko, P. Dutta, T. J. Marks, J. Am. Chem. Soc., 127, 3172-3183(2005) E. Bacher, M.Bayerl, P. Rudati, N. Reckfuss, C. David, K. Meerholz, O. Nuyken, Macromolecules, 38, 1640(2005) M. S. Liu, Y. H. Niu, J. W. Ka, H. L. Yip, F. Huang, J. Luo, T. D. Wong, A. K. Y. Jen, Macromolecules, 41, 9570(2008)
一般に、湿式プロセスにより作製した有機EL素子は、低コスト化、大面積化等が容易であるという特長を有している。しかし、有機EL素子の特性に関しては、湿式プロセスにより作製した有機半導体層を含む有機EL素子は、駆動電圧、発光効率、及び発光寿命においてさらなる改善が望まれている。
上記に鑑み、本発明の実施形態は、湿式プロセスを用い、優れた特性を有する有機半導体層を備えた積層体を安定的かつ容易に製造する方法を提供することを目的とする。また、本発明の実施形態は、湿式プロセスを用い、優れた素子特性及び寿命を有する有機エレクトロニクス素子を安定的かつ容易に製造する方法を提供することを目的とする。また、本発明の実施形態は、湿式プロセスに用いることができる組成物セットを提供することを目的とする。さらに、本発明の実施形態は、優れた特性及び寿命を有する有機エレクトロニクス素子、有機EL素子、表示素子、照明装置、及び表示装置を提供することを目的とする。
有機EL素子においては、有機半導体層を多層化するため、又は、有機半導体層の電荷輸送性を向上させるため、有機半導体層の形成に、電荷輸送性化合物と、重合開始剤及び/又は電子受容性化合物と、溶媒とを含有する組成物が用いられる場合がある。しかしながら、有機EL素子によっては、多層化すること又は電子受容性化合物を加えることによって期待される効果を、十分に得ることができなかった。
本発明者らは、鋭意検討した結果、組成物に含まれる成分間で、時間の経過とともに望まない反応が進行していることがその原因の一つであることを見出し、種々の実施形態を含む本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の実施形態は、基板と、前記基板上に形成された有機半導体層とを有する積層体の製造方法であって、前記有機半導体層が、電荷輸送性化合物と、重合開始剤及び電子受容性化合物からなる群から選択される1種以上とを含有し、前記電荷輸送性化合物及び溶媒を含有する第1の組成物と、前記重合開始剤及び電子受容性化合物からなる群から選択される1種以上並びに溶媒を含有する第2の組成物とを、前記基板上で混合する工程、を含む積層体の製造方法に関する。
また、本発明の実施形態は、基板と、前記基板上に形成された有機半導体層とを有する積層体の製造方法であって、前記有機半導体層が、電荷輸送性化合物と、重合開始剤及び電子受容性化合物からなる群から選択される1種以上とを含有し、前記電荷輸送性化合物及び溶媒を含有する第1の組成物と、前記重合開始剤及び電子受容性化合物からなる群から選択される1種以上並びに溶媒を含有する第2の組成物とを混合し、混合組成物を得る工程、及び、前記混合組成物を前記基板上に供給する工程、を含む積層体の製造方法に関する。
また、本発明の実施形態は、基板と、前記基板上に形成された有機半導体層とを有する積層体を備えた有機EL素子の製造方法であって、前記積層体を、上記いずれかの積層体の製造方法により得る工程を有する有機エレクトロニクス素子の製造方法に関する。
また、本発明の実施形態は、電荷輸送性化合物及び溶媒を含有する第1の組成物と、重合開始剤及び電子受容性化合物からなる群から選択される1種以上並びに溶媒を含有する第2の組成物と、を含む組成物セットに関する。
また、本発明の実施形態は、上記のいずれかの積層体の製造方法によって作製された積層体を備えた有機エレクトロニクス素子、及び、上記のいずれかの積層体の製造方法によって作製された積層体を備えた有機エレクトロルミネセンス素子に関する。
さらに、本発明の実施形態は、上記のエレクトロルミネセンス素子を備えた表示素子、上記のエレクトロルミネセンス素子を備えた照明装置、及び、前記照明装置と、表示手段として液晶素子と、を備えた表示装置に関する。
本発明の実施形態によれば、湿式プロセスを用い、優れた特性を有する有機半導体層を備えた積層体を安定的かつ容易に製造する方法を提供することができる。また、本発明の実施形態によれば、湿式プロセスを用い、優れた素子特性及び寿命を有する有機エレクトロニクス素子を安定的かつ容易に製造する方法を提供することができる。また、本発明の実施形態によれば、湿式プロセスに用いることができる組成物セットを提供することができる。さらに、本発明の実施形態によれば、優れた特性及び寿命を有する有機エレクトロニクス素子、有機EL素子、表示素子、照明装置、及び表示装置を提供することができる。
図1(a)及び(b)は、本発明の実施形態である積層体の製造方法に用いられる基板の一例を示す。図1(a)は、基板の模式断面図であり、図1(b)は、基板の模式平面図である。 図2(a)〜(c)は、本発明の実施形態である積層体の製造方法の一例を示す模式概念図である。 図3は、本発明の実施形態である有機EL素子の一例を示す模式断面図である。
本発明の実施形態について説明する。
<積層体の製造方法>
本発明の実施形態である積層体の製造方法は、基板と、前記基板上に形成された有機半導体層(I)とを有する積層体を製造する方法である。有機半導体層(I)は、電荷輸送性化合物と、重合開始剤及び電子受容性化合物からなる群から選択される1種以上とを含有する。
[基板]
基板の材質に特に制限はなく、例えば、ガラス、樹脂、セラミックス、金属、炭素繊維、セルロース等が挙げられる。基板は透明であることが好ましく、この観点から、ガラス基板、光透過性樹脂基板等が好ましく用いられる。また、積層体の用途によっては、基板は、柔らかく、曲がりやすい、フレキシブル性を有する基板(フレキシブル基板)であることが好ましい。フレキシブル基板としては、樹脂フィルム基板が好ましく用いられる。
ガラスとしては、例えば、軟質ガラス、カリガラス、硬質二級ガラス、硬質一級ガラス、石英ガラス等が挙げられる。
樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリイミド、ポリカーボネート(PC)、セルローストリアセテート(TAC)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)等からなるフィルムが挙げられる。
樹脂フィルムは、水蒸気や酸素等の透過を抑制するために、樹脂フィルムへ酸化珪素や窒化珪素等の無機物がコーティングされていてもよい。
また、一つの実施形態においては、画素を形成するために、基板は、少なくとも一方の面上に、隔壁(バンク)により区画された領域を有していてもよい。基板は、バンクによって縦横に格子状に区画された複数の領域を有することが好ましい。基板が複数の領域を有する場合、各領域に異なる有機半導体層を形成することにより、領域(画素)ごとに発光色や発光特性を変えることができる。
バンクの形成に用いられる材料、バンクのパターン形状、バンクの形成方法等については特に限定されず、公知のものが利用できる。例えば、基板表面にスピンコート、スプレーコート、ロールコート、ダイコート、ディップコート等の方法で、有機系感光性材料(レジスト材料)を塗布し、レジスト層を形成する。所望のパターン形状を形成するためのマスクを用い、レジスト層を露光する。この後、レジスト層を現像することにより、有機系感光材料からなるバンクを形成することができる。
バンクの形成に用いられる材料は、有機材料であることが好ましく、絶縁性の有機材料であることがより好ましい。有機材料としては、後述する第1の組成物及び第2の組成物に含まれる溶媒に対し撥液性を示す材料でもよいし、プラズマ処理による撥液性の付与が可能である材料でもよい。また、基板との密着性が良くフォトリソグラフィーによりパターニングがしやすい材料であることが好ましい。有機材料としては、例えば、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、オレフィン樹脂、メラミン樹脂等の高分子材料、感光性ポリシラザン、感光性ポリシロキサン等を用いることが可能である。
バンクを形成する前に、基板の表面には、無機又は有機の半導体膜、金属膜、誘電体膜、有機膜など形成されていてもよい。これらの膜は、バンクを形成した後に設けることも可能である。
図1(a)及び(b)は、バンクにより区画された領域を有する基板の一例を示す模式図である。図1(a)及び(b)において、11は基板を、12はバンクを、13はバンクにより区画された領域を示す。
[有機半導体層及びその形成工程]
有機半導体層(I)は、基板上に形成される。有機半導体層(I)は、基板上に、基板と接して形成されても、又は、他の層を介して形成されてもよい。他の層としては、無機又は有機の半導体膜、金属膜、誘電体膜、有機膜などが挙げられる。
有機半導体層(I)は、電荷輸送性化合物と、重合開始剤及び/又は電子受容性化合物とを含有する。本実施形態の製造方法には、電荷輸送性化合物、重合開始剤及び/又は電子受容性化合物が、これらに由来する反応物、重合物、変性物などの化合物に変化している態様も含まれるものとする。
(有機半導体層の形成工程(A))
積層体の製造方法の一つの実施形態は、電荷輸送性化合物及び溶媒を含有する第1の組成物と、重合開始剤及び電子受容性化合物からなる群から選択される1種以上並びに溶媒を含有する第2の組成物とを、基板上で混合する工程を含む。「基板上で混合する」とは、有機半導体層が形成される上述の基板の上で、組成物同士を混合することをいう。
第1の組成物と第2の組成物を混合する方法に特に制限はない。(1)基板上に第1の組成物を供給し、その後、第1の組成物と第2の組成物とが混ざるように、第2の組成物を供給する、(2)基板上に第2の組成物を供給し、その後、第2の組成物と第1の組成物とが混ざるように、第1の組成物を供給する、(3)基板上に、第1の組成物と第2の組成物を、両者が混ざるように同時に供給する、などが挙げられる。ここで、同時とは、第1の組成物及び第2の組成物を共に供給している時間が存在すること、又は、第1の組成物の供給を開始する時間及び供給を終了する時間が、第2の組成物の供給を開始する時間及び供給を終了する時間と一致していること、のいずれかをいう。
形成工程(A)においては、第1の組成物及び第2の組成物は、両者が混合されていない状態で、別々に基板上に供給される。第1の組成物及び第2の組成物を、基板上に供給する方法に特に制限はない。それぞれの組成物を、有機半導体層を形成することが可能な公知の方法により供給することができる。例えば、滴下、浸漬、塗布、印刷などの方法を用いることができる。具体的には、キャスト法、浸漬法、凸版印刷、凹版印刷、オフセット印刷、平版印刷、凸版反転オフセット印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷などの有版印刷、インクジェット法などの無版印刷などを用いることができる。
組成物を供給する方法、組成物を供給する量などによって混ざり合う程度は異なる。したがって、有機半導体層(I)内では、各成分の濃度は均一である場合と、不均一である場合とがある。
第1の組成物及び第2の組成物は、それぞれ溶媒を含有するものであり、いずれの組成物も溶媒を含んだ状態で混合される。特に、第1の組成物及び第2の組成物が共に溶液の状態、すなわち、溶媒に他の成分が溶解している状態で混合することが好ましい。溶液の状態であることは、目視観察により、第1の組成物及び第2の組成物の中に固形分が存在しないことにより確認することが可能である。
一つの実施形態によれば、インクジェット法(溶液吐出法)を用いた積層体の製造方法が提供される。インクジェット法は、有機半導体層を形成するための材料の利用効率の観点、微細な画素の形成が容易であるという観点などから、好ましい供給方法である。さらに、例えば、異なる発光色を有する複数の発光層を、それぞれ所望の領域に容易に形成することができるという利点もある。
インクジェット法を用いる場合は、公知のインクジェットプリント装置を用い、インク供給用のヘッドから、第1の組成物及び第2の組成物を基板上に吐出すればよい。
図2(a)〜(c)は、インクジェット法を用いた製造方法の一例を示す模式図である。基板として、バンクにより区画された領域を有する基板が用いられている。図2においては、まず、基板11上のバンク12により区画された領域13に、インクジェットプリント装置のインク供給用のヘッド21から、第1の組成物14を吐出する(図2(a))。次いで、第1の組成物14が吐出された領域13に、ヘッド21から第2の組成物15を吐出する(図2(b))。吐出された第1の組成物と第2の組成物は、基板11上のバンク12により囲われた領域13で混合される。
第1の組成物と第2の組成物の吐出量は、領域13の大きさ、すなわち、画素の大きさ等に応じて適宜調整することができる。
(有機半導体層の形成工程(B))
積層体の製造方法の一つの実施形態は、電荷輸送性化合物及び溶媒を含有する第1の組成物と、重合開始剤及び電子受容性化合物からなる群から選択される1種以上並びに溶媒を含有する第2の組成物とを混合し、混合組成物を得る工程、及び、混合組成物を基板上に供給する工程を含む。
第1の組成物と第2の組成物とを混合する方法に特に制限はない。例えば、第1の組成物に第2の組成物を加えればよい。均一な混合組成物を得るために、混合後に混合組成物を撹拌してもよい。ただし、有機半導体層(I)の特性を向上させるという観点から、撹拌時間は、30分以下が好ましく、15分以下がより好ましく、5分以下がさらに好ましい。また、撹拌には、マグネチックスターラー、メカニカルスターラー、ホモジナイザー、超音波分散器、振とう器等の公知の装置を利用できる。
混合により得られた混合組成物を基板上に供給する方法にも特に制限はなく、上述の供給方法を用いることが可能である。
有機半導体層(I)の特性を向上させるという観点から、第1の組成物と第2の組成物とを混合した時点、すなわち、第1の組成物と第2の組成物とが接触した時点から、混合組成物を基板上に供給し始めるまでの時間は、30分以下が好ましく、15分以下がより好ましく、5分以下がさらに好ましい。
[第1の組成物]
第1の組成物は、電荷輸送性化合物及び溶媒を含有する。
(電荷輸送性化合物)
電荷輸送性化合物とは、電荷、好ましくは正孔を輸送する能力を有する化合物である。電荷輸送性化合物は、低分子化合物であっても、高分子化合物であってもよく、特に制限はない。低分子化合物の場合は、高純度な材料を容易に入手できるという点で好ましい。高分子化合物の場合は、組成物の調製が容易であるという点で好ましい。高分子化合物とは、1種又は2種以上の構造単位が結合することにより得られる重合体(ポリマー又はオリゴマー)を意味する。電荷輸送性化合物は、市販のものでもよく、当業者公知の方法で合成したものであってもよく、特に制限はない。
低分子化合物は、電荷の輸送性、特に正孔の輸送性に優れることから、芳香族アミン誘導体、カルバゾール誘導体、又はチオフェン誘導体であることが好ましい。芳香族アミン誘導体とは、分子内に、少なくとも一つの芳香族アミン構造を有する化合物である。カルバゾール誘導体及びチオフェン誘導体についても同様である。
高分子化合物は、電荷の輸送性、特に正孔の輸送性に優れることから、芳香族アミン単位、カルバゾール単位、又はチオフェン単位を有するポリマー又はオリゴマーであることが好ましい。芳香族アミン単位とは、単位内に、少なくとも一つの芳香族アミン構造を有する単位である。カルバゾール単位及びチオフェン単位についても同様である。
電荷輸送性化合物は、溶解度を変化させるために、1つ以上の重合可能な置換基を有していてもよい。「重合可能な置換基」とは、重合反応において2分子以上の分子間で結合を形成することが可能な置換基のことである。
重合可能な置換基としては、炭素−炭素多重結合を有する基(例えば、ビニル基、アセチレン基(エチニル基)、ブテニル基、アクリル基(アクリロイル基)、アクリレート基(アクリロイルオキシ基)、アクリルアミド基(アクリロイルアミノ基)、メタクリル基(メタクリロイル基)、メタクリレート基(メタクリロイルオキシ基)、メタクリルアミド基(メタクリロイルアミノ基)、アリール基、アリル基、ビニルエーテル基(ビニルオキシ基)、ビニルアミノ基、フラン−イル基、ピロール−イル基、チオフェン−イル基、シロール−イル基等)、小員環を有する基(例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、エポキシ基(オキシラニル基)、オキセタン基(オキセタニル基)、ジケテン基、エピスルフィド基等)、ラクトン基、ラクタム基、又はシロキサン誘導体を含有する基等が挙げられる。また、上記基の他に、エステル結合やアミド結合を形成することが可能な基の組み合わせなども利用できる。例えば、カルボキシル基とヒドロキシル基、カルボキシル基とアミノ基などの組み合わせである。重合可能な置換基としては、特に、オキセタン基、エポキシ基、ビニル基、ビニルエーテル基、アクリレート基、メタクリレート基等が反応性の観点から好ましく、オキセタン基が最も好ましい。
重合可能な置換基の自由度を上げ、重合反応を生じさせやすくする観点から、電荷輸送性化合物においては、重合可能な置換基が、炭素数1〜8のアルキル鎖に結合していることが好ましい。また、ITOなどの親水性電極との親和性を向上させる観点からは、重合可能な置換基が親水性基に結合していることが好ましい。親水性基としては、例えば、エチレングリコール鎖やジエチレングリコール鎖などの炭素数2〜8のアルキレンオキシ鎖が挙げられる。また、重合可能な置換基を有する電荷輸送性化合物の調製が容易になる観点という観点からは、前記アルキル鎖又はアルキレンオキシ鎖の末端部、すなわち重合可能な置換基との連結部、正孔輸送性構造(例えば、芳香族アミン構造)との連結部において、エーテル結合を有していてもよい。重合可能な置換基を含む基は、具体的には、特開2012−253067号公報等に記載の基が挙げられる。
電荷輸送性化合物が重合可能な置換基を有する場合、電荷輸送性化合物1分子に含まれる重合可能な置換基数は特に限定されないが、溶解度を変化させるためには2つ以上の重合可能な置換基が含まれていることが好ましく、3つ以上の重合可能な置換基が含まれていることがさらに好ましい。
低分子化合物の好ましい構造及び高分子化合物が有する好ましい単位としては、例えば、特開2012−253067号公報、国際公開2010/140553号、特開2009−267392号公報、特開2010−118653号公報に記載の構造、単位等が挙げられる。
[溶媒]
溶媒としては、電荷輸送性化合物、及び、後述する重合開始剤及び/又は電子受容性化合物を溶解可能な溶媒を用いることが好ましい。例えば、水;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール;ペンタン、ヘキサン、オクタン等のアルカン;シクロヘキサン等の環状アルカン;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、ジフェニルメタン等の芳香族炭化水素;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテルアセタート等の脂肪族エーテル;1,2−ジメトキシベンゼン、1,3−ジメトキシベンゼン、アニソール、フェネトール、2−メトキシトルエン、3−メトキシトルエン、4−メトキシトルエン、2,3−ジメチルアニソール、2,4−ジメチルアニソール等の芳香族エーテル;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル等の脂肪族エステル;酢酸フェニル、プロピオン酸フェニル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸n−ブチル等の芳香族エステル;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒;ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、アセトン、クロロホルム、塩化メチレンなどが挙げられる。好ましくは芳香族炭化水素、脂肪族エステル、芳香族エステル、脂肪族エーテル、及び芳香族エーテルである。
電荷輸送性化合物の含有量は、第1の組成物を基板上に供給する方法に応じて適宜定めることができる。電荷輸送性化合物の含有量は、組成物の溶媒量を減らし、コストをさげるという観点から、第1の組成物の全質量に対し、0.1質量%以上が好ましく、0.2質量%以上がより好ましく、0.3質量%以上がさらに好ましい。また、電荷輸送性化合物の含有量は、成膜性に優れる組成物を得るという観点から、第1の組成物の全質量に対し、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下がさらに好ましい。
[第2の組成物]
第2の組成物は、重合開始剤、電子受容性化合物、又は、重合開始剤と電子受容性化合物の両方と、溶媒とを含有する。
(重合開始剤及び電子受容性化合物)
重合開始剤及び電子受容性化合物は、第1のインク組成物に含まれる電荷輸送性化合物に対して重合開始剤及び/又は電子受容体として作用し得る化合物である。重合開始剤と電子受容性化合物とはその作用が明確に区別されなくてもよく、電荷輸送性化合物に対し、重合開始剤としても作用し、かつ、電子受容体としても作用する化合物を用いることも可能である。
具体的には、無機物及び有機物のいずれも用いることができ、例えば、特開2003−031365号公報に記載された電子受容性化合物、特開2006−233162号公報に記載されたイオン化合物、特許第3957635号公報に記載されたアリールビス(パーフルオロアルキルスルホニル)メタン、特開2012−072310号公報等に記載されたスーパーブレンステッド酸化合物、オニウム塩等を用いることができる。好ましくは、スーパーブレンステッド酸化合物及びオニウム塩を用いる。
(スーパーブレンステッド酸化合物)
スーパーブレンステッド酸化合物としては、酸解離定数pKaが2以下となる酸性官能基を有する化合物を好ましく用いることができる。スーパーブレンステッド酸化合物は、好ましくは、骨格として、アルカン、アルケン、アルキン、芳香族炭化水素、芳香族複素環等の構造を有し、かつ、置換基として少なくとも1つの過フッ素化スルホニル基を有する。
アルカン、アルケン、アルキン、芳香族炭化水素、芳香族複素環等の炭素数は1〜20であることが好ましく、また、これらの構造はハロゲン原子、アミノ基、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基等の置換基を有していてもよい。
過フッ素化スルホニル基とは、「RSO−」で表される置換基であり、Rは、フッ素置換された有機基である。Rとして、例えば、パーフルオロアルキル基、パーフルオロアルキルスルホニル基、パーフルオロアルキルオキシスルホニル基、パーフルオロアリールスルホニル基、パーフルオロアリールオキシスルホニル基、パーフルオロアシル基、パーフルオロアルコキシカルボニル基、パーフルオロアシルオキシ基、パーフルオロアリールオキシカルボニル基、パーフルオロアルケニル基、パーフルオロアルキニル基等が挙げられる。前記において、アルキル基及びアルケニル基は、直鎖状、分岐状又は環状であり、炭素数1〜20であることが好ましく、ヘテロ原子を含んでいてもよい。
(オニウム塩)
オニウム塩は、好ましくは、以下のカチオンから選択される1種と、以下のアニオンから選択される1種を含む。
(カチオン)
カチオンとしては、例えば、H、カルベニウムイオン、アンモニウムイオン、アニリニウムイオン、ピリジニウムイオン、イミダゾリウムイオン、ピロリジニウムイオン、キノリニウムイオン、イモニウムイオン、アミニウムイオン、オキソニウムイオン、ピリリウムイオン、クロメニリウム、キサンチリウムイオン、ヨードニウムイオン、スルホニウムイオン、ホスホニウムイオン、トロピリウムイオン、遷移金属を有するカチオンなどが挙げられ、カルベニウムイオン、アンモニムイオン、アニリニウムイオン、アミニウムイオン、ヨードニウムイオン、スルホニウムイオン、トロピリウムイオンが好ましい。組成物の溶解度の変化特性及び保存安定性との両立の観点から、アンモニウムイオン、アニリニウムイオン、ヨードニウムイオン、及びスルホニウムイオンがより好ましい。
(アニオン)
アニオンとしては、例えば、F、Cl、Br、Iなどのハロゲンイオン;OH;ClO ;FSO 、ClSO 、CHSO 、CSO 、CFSO などのスルホン酸イオン類;HSO 、SO 2−などの硫酸イオン類;HCO 、CO 2−などの炭酸イオン類;HPO 、HPO 2−、PO 3−などのリン酸イオン類;PF 、PFOHなどのフルオロリン酸イオン類;[(CFCFPF、[(CFCFCFPF、[((CFCF)PF、[((CFCF)PF、[((CFCFCFPF、[((CFCFCFPFなどのフッ素化アルキルフルオロリン酸イオン類;(CFSO、(CFSOなどのフルオロアルカンスルホニルメチド、イミドイオン類;BF 、B(C 、B(CCF などのホウ酸イオン類;SbF 、SbFOHなどのフルオロアンチモン酸イオン類;AsF 、AsFOHなどのフルオロヒ素酸イオン類;AlCl 、BiF 等が挙げられる。なかでも、PF 、PFOHなどのフルオロリン酸イオン類;[(CFCFPF、[(CFCFCFPF、[((CFCF)PF、[((CFCF)PF、[((CFCFCFPF、[((CFCFCFPFなどのフッ素化アルキルフルオロリン酸イオン類;(CFSO、(CFSOなどのフルオロアルカンスルホニルメチド,イミドイオン類;BF 、B(C 、B(CCF などのホウ酸イオン類;及び、SbF 、SbFOHなどのフルオロアンチモン酸イオン類を含む化合物が好ましい。
溶媒としては、第1の組成物に用いられる溶媒と同様の溶媒を用いることができる。
重合開始剤及び電子受容性化合物の含有量は、第2の組成物を基板上に供給する方法に応じて適宜定めることができる。重合開始剤及び電子受容性化合物の含有量は、組成物の溶媒量を減らし、溶媒にかかるコストをさげる観点から、第2の組成物の全質量に対し、0.002質量%以上が好ましく、0.005質量%以上がより好ましく、0.01質量%以上がさらに好ましい。また、重合開始剤及び電子受容性化合物の含有量は、電荷輸送性を向上させつつ、良好な膜質を得る観点から、第1の組成物の全質量に対し、5質量%以下が好ましく、4質量%以下がより好ましく、3質量%以下がさらに好ましい。なお、「重合開始剤及び電子受容性化合物の含有量」とは、第2の組成物が重合開始剤と電子受容性化合物の両方を含有している場合は両者の合計の含有量を、いずれか一方のみを含有している場合は、当該一方の含有量を意味する。
また、重合開始剤と電子受容性化合物とを用いる場合、それらの割合は、「重合開始剤及び電子受容性化合物の含有量」が前記の範囲内であれば、特に限定されない。
第1の組成物と第2の組成物とを混合する割合については、両組成物を基板上に供給する方法に応じて適宜定めることができる。第1の組成物と第2の組成物の割合は、第1の組成物中の電荷輸送性化合物の含有量(質量)と第2の組成物中の重合開始剤及び電子受容性化合物の含有量(質量)の比で表すことができ、良好な膜質を得るという観点から、第2の組成物中の重合開始剤及び電子受容性化合物の含有量は、第1の組成物中の電荷輸送性化合物の含有量に対し、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下が好ましい。また、電荷輸送性に優れる薄膜を得るという観点から、第2の組成物中の重合開始剤及び電子受容性化合物の含有量は、第1の組成物中の電荷輸送性化合物の含有量に対し、0.1質量%以上が好ましく、0.3質量%以上がより好ましく、0.5質量%以上がさらに好ましい。
[任意の工程]
積層体の製造方法は、さらに他の任意の工程を有していてもよい。他の任意の工程として、乾燥工程、重合工程などが挙げられる。
乾燥工程によって、溶媒を除去することができる。乾燥の方法としては、ホットプレート上又はオーブン内で乾燥させる方法が挙げられる。乾燥温度及び時間に特に制限はない。
重合工程は、電荷輸送性化合物を重合させる工程である。上述したとおり、電荷輸送性化合物は、重合可能な置換基を有してもよい。重合可能な置換基を有する電荷輸送性化合物の重合を開始させる契機としては、光照射、加熱等の方法が一般的である。したがって、重合工程においては、有機半導体層(I)が形成された基板に、光、熱、又は光と熱の両方を加える。特に制限はないが、プロセスが簡便である観点から加熱が好ましい。加熱温度及び時間は、重合反応を十分に進行させられれば、特に制限はないが、加熱温度は、種々の基板を適用できることから、好ましくは300℃以下、より好ましくは280℃以下、さらに好ましくは250℃以下である。また、加熱温度は、重合速度を早める観点から、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上、さらに好ましくは60℃以上である。加熱時間は、生産性を上げる観点から、好ましくは2時間以下、より好ましくは1時間以下、さらに好ましくは30分以下である。また、加熱時間は、重合を完全に進行させる観点から、好ましくは1分以上、より好ましくは3分以上、さらに好ましくは5分以上である。
光照射には、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、蛍光灯、発光ダイオード、太陽光等の光源を用いることができ、加熱は、ホットプレート上又はオーブン内で行うことができる。
本発明の実施形態である積層体の製造方法によれば、組成物中での電荷輸送性化合物、重合開始剤、及び電子受容性化合物の反応を防止することができるために、有機半導体層(I)の特性を向上させることができる。従来の方法では、用いる電荷輸送性化合物、重合開始剤、及び電子受容性化合物の種類によっては、反応の進行が顕著となる。しかし、本発明の実施形態である積層体の製造方法によれば、反応を防止することができるために、電荷輸送性化合物と、重合開始剤及び/又は電子受容性化合物との組み合わせを限定することなく、様々な有機半導体層(I)を有する積層体を、安定的かつ容易に製造することができる。
<組成物セット>
本発明の実施形態である組成物セットは、第1の組成物と第2の組成物とを有する。第1の組成物及び第2の組成物は上述したとおりである。組成物セットは、上述の積層体の製造方法に用いることができ、組成物セットによれば、優れた特性を有する有機半導体層(I)を形成することができる。
第1の組成物と第2の組成物は、共に、印刷インクとして用いることができるインク組成物であることが好ましい。第1の組成物と第2の組成物に、インク組成物に含まれる公知の添加剤を含有させてもよい。添加剤としては、例えば、重合禁止剤、安定剤、増粘剤、ゲル化剤、難燃剤、酸化防止剤、還元防止剤、酸化剤、還元剤、表面改質剤、乳化剤、消泡剤、分散剤、界面活性剤等が挙げられる。効果を損なわない範囲で、第1の組成物が重合開始剤及び/又は電子受容性化合物を含有しても、あるいは、第2の組成物が電荷輸送性化合物を含有してもよい。一つの実施形態によれば、第1の組成物が重合開始剤及び電子受容性化合物を含有しないか、又は、第2の組成物が電荷輸送性化合物を含有しない組成物セットが提供され、また、他の実施形態によれば、第1の組成物が重合開始剤及び電子受容性化合物を含有せず、かつ、第2の組成物が電荷輸送性化合物を含有しない組成物セットが提供される。
<有機エレクトロニクス素子及びその製造方法>
本発明の実施形態である有機エレクトロニクス素子は、既述の有機半導体層を有する積層体を含むものである。有機エレクトロニクス素子の例として、有機EL素子、有機光電変換素子、有機トランジスタなどが挙げられる。
<有機EL素子>
有機EL素子は、既述の有機半導体薄層(I)を有する積層体を備えていれば特に限定されず、他の層を有していてもよい。他の層としては、電極、他の有機半導体層などが挙げられる。また、有機EL素子は、有機半導体層(I)を2層以上有していてもよい。
有機EL素子は、通常、発光層、陽極、陰極、及び基板を備えており、正孔注入層、電子注入層、正孔輸送層、電子輸送層などをさらに有していてもよい。図3に、有機EL素子の一例を示す。有機EL素子は、有機半導体層(I)を正孔注入層、正孔輸送層、又はこれらの両方として有していることが好ましい。有機EL素子が有する基板には、少なくとも既述の積層体が備える基板が含まれる。有機EL素子は、基板を2枚以上有していてもよい。以下、発光層、陽極、陰極、電子輸送層などについて詳細に説明する。
[発光層]
発光層を形成するために、公知の発光層に用いる材料を使用することが可能である。発光層に用いる材料としては、低分子化合物であっても、ポリマー又はオリゴマーであってもよく、デンドリマー等も使用可能である。蛍光発光を利用する低分子化合物としては、ペリレン、クマリン、ルブレン、キナクリドン、色素レーザー用色素(例えば、ローダミン、DCM1等)、アルミニウム錯体(例えば、Tris(8-hydroxyquinolinato)aluminum(III)(Alq))、スチルベン、これらの誘導体が挙げられる。蛍光発光を利用するポリマー又はオリゴマーとしては、ポリフルオレン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン(PPV)、ポリビニルカルバゾール(PVK)、フルオレンーベンゾチアジアゾール共重合体、フルオレン−トリフェニルアミン共重合体、及びこれらの誘導体や混合物が好適に利用できる。
一方、近年、有機EL素子の高効率化のため、燐光有機EL素子の開発も活発に行われている。燐光有機EL素子では、一重項状態のエネルギーのみならず三重項状態のエネルギーも利用することが可能であり、内部量子収率を原理的には100%まで上げることが可能となる。燐光有機EL素子では、燐光を発するドーパントとして、白金やイリジウムなどの重金属を含む金属錯体系燐光材料を、ホスト材料にドーピングすることで燐光発光を取り出す(M. A. Baldo et al., Nature, vol. 395, p. 151 (1998)、M. A. Baldo et al., Applied Physics Letters, vol. 75, p. 4 (1999)、M. A. Baldo et al., Nature, vol. 403, p. 750 (2000)参照。)。
本発明の実施形態である有機EL素子においても、高効率化の観点から、発光層に燐光材料を用いることが好ましい。燐光材料としては、IrやPtなどの中心金属を含む金属錯体などが好適に使用できる。具体的には、Ir錯体としては、例えば、青色発光を行うFIr(pic)〔イリジウム(III)ビス[(4,6−ジフルオロフェニル)−ピリジネート−N,C]ピコリネート〕、緑色発光を行うIr(ppy)〔ファク トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム〕(前記M. A. Baldo et al., Nature, vol. 403, p. 750 (2000)参照)、又は赤色発光を行う(btp)Ir(acac){ビス〔2−(2’−ベンゾ[4,5−α]チエニル)ピリジナート−N,C〕イリジウム(アセチル−アセトネート)}(Adachi et al., Appl. Phys. Lett., 78 no. 11, 2001, 1622参照)、Ir(piq)〔トリス(1−フェニルイソキノリン)イリジウム〕等が挙げられる。
Pt錯体としては、例えば、赤色発光を行う2、3、7、8、12、13、17、18−オクタエチル−21H、23H−フォルフィンプラチナ(PtOEP)等が挙げられる。燐光材料は、低分子又はデンドライト種、例えば、イリジウム核デンドリマーが使用され得る。またこれらの誘導体も好適に使用できる。
また、発光層に燐光材料が含まれる場合、燐光材料の他に、ホスト材料を含むことが好ましい。ホスト材料としては、低分子化合物であっても、高分子化合物であってもよく、デンドリマーなども使用できる。
低分子化合物としては、例えば、α−NPD(N,N'-Di(1-naphthyl)-N,N'-diphenylbenzidine)、CBP(4,4'-Bis(carbazol-9-yl)-biphenyl)、mCP(1,3-Bis(9-carbazolyl)benzene)、CDBP(4,4'-Bis(carbazol-9-yl)-2,2'-dimethylbiphenyl)などが、高分子化合物としては、例えば、ポリビニルカルバゾール、ポリフェニレン、ポリフルオレンなどが使用でき、これらの誘導体も使用できる。
発光層は、蒸着法により形成してもよく、塗布法により形成してもよい。
塗布法により形成する場合、有機EL素子を安価に製造することができ、より好ましい。発光層を塗布法によって形成するには、燐光材料と、必要に応じてホスト材料を含む溶液を、例えば、インクジェット法、キャスト法、浸漬法、凸版印刷、凹版印刷、オフセット印刷、平版印刷、凸版反転オフセット印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷等の印刷法、スピンコーティング法などの公知の方法で所望の基体上に塗布することで行うことができる。
[陽極]
陽極としては、金属(例えば、Au)又は金属導電率を有する他の材料、例えば、酸化物(例えば、ITO:酸化インジウム/酸化錫)、導電性高分子(例えば、ポリチオフェン−ポリスチレンスルホン酸混合物(PEDOT:PSS))を使用することもできる。
[陰極]
陰極材料としては、例えば、Li、Ca、Mg、Al、In、Cs、Ba、Mg/Ag、LiF、CsF等の金属又は金属合金であることが好ましい。
[電子輸送層、電子注入層]
電子輸送層、電子注入層としては、例えば、フェナントロリン誘導体(例えば、2,9-Dimethyl-4,7-diphenyl-1,10-phenanthroline(BCP))、ビピリジン誘導体、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、ナフタレンペリレンなどの複素環テトラカルボン酸無水物、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタン及びアントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体(2-(4-Biphenylyl)-5-(4-tert-butylphenyl-1,3,4-oxadiazole)(PBD))、アルミニウム錯体(例えば、Tris(8-hydroxyquinolinato)aluminum(III)(Alq))などが挙げられる。さらに、前記オキサジアゾール誘導体において、オキサジアゾール環の酸素原子を硫黄原子に置換したチアジアゾール誘導体、電子吸引基として知られているキノキサリン環を有するキノキサリン誘導体も用いることができる。
[封止]
有機EL素子は、外気の影響を低減させて長寿命化させるため、封止されていてもよい。封止に用いる材料としては、ガラス、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、PET、PEN等のプラスチックフィルム、酸化珪素、窒化珪素等の無機物等を用いることができる。
封止の方法としては、特に限定されないが、たとえば、真空蒸着、スパッタ、塗布法等により有機EL素子上に直接形成する方法、ガラス又はプラスチックフィルムを接着剤により有機EL素子に貼り合わせる方法等が使用可能である。
[発光色]
有機EL素子における発光色は特に限定されるものではないが、白色発光素子は家庭用照明、車内照明、時計や液晶のバックライト等の各種照明器具に用いることができるため好ましい。
白色発光素子を形成する方法としては、現在のところ単一の材料で白色発光を示すことが困難であることから、複数の発光材料を用いて複数の発光色を同時に発光させて混色させることで白色発光を得ている。複数の発光色の組み合わせとしては、特に限定されるものではないが、青色、緑色、赤色の3つの発光極大波長を含有するもの、青色と黄色、黄緑色と橙色等の補色の関係を利用した2つの発光極大波長を含有するものが挙げられる。また発光色の制御は、燐光材料の種類と量を調整することによって行うことができる。
<表示素子、照明装置、表示装置>
本発明の実施形態である表示素子は、既述の有機EL素子を備えている。
例えば、赤・緑・青(RGB)の各画素に対応する素子として、既述の有機EL素子を用いることで、カラーの表示素子が得られる。
画像の形成には、マトリックス状に配置した電極でパネルに配列された個々の有機EL素子を直接駆動する単純マトリックス型と、各素子に薄膜トランジスタを配置して駆動するアクティブマトリックス型とがある。前者は、構造は単純ではあるが垂直画素数に限界があるため文字などの表示に用いる。後者は、駆動電圧は低く電流が少なくてすみ、明るい高精細画像が得られるので、高品位のディスプレイ用として用いられる。
また、本発明の実施形態である照明装置は、既述の有機EL素子を備えている。さらに、本発明の実施形態である表示装置は、照明装置と、表示手段として液晶素子と、を備えている。バックライト(白色発光光源)として上述の照明装置を用い、表示手段として液晶素子を用いた表示装置、すなわち液晶表示装置としてもよい。この構成は、公知の液晶表示装置において、バックライトのみを上述の照明装置に置き換えた構成であり、液晶素子部分は公知技術を転用することができる。
以下に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
<Pd触媒の調製>
窒素雰囲気下のグローブボックス中で、室温下、サンプル管にトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(73.2mg、80μmol)を秤取り、アニソール(15ml)を加え、30分間撹拌した。同様に、サンプル管にトリス(t−ブチル)ホスフィン(129.6mg、640μmol)を秤取り、アニソール(5mL)を加え、5分間撹拌した。これらの溶液を混合し、室温で30分間撹拌し、触媒とした。すべての溶媒は30分以上窒素バブルにより脱気した後、使用した。
<電荷輸送性化合物1の合成>
三口丸底フラスコに、下記モノマー1(4.0mmol)、下記モノマー2(5.0mmol)、下記モノマー3(2.0mmol)、及びアニソール(20mL)を加え、さらに調製したPd触媒溶液(7.5mL)を加えた。30分撹拌した後、10%テトラエチルアンモニウム水酸化物水溶液(20mL)を加えた。すべての溶媒は30分以上窒素バブルにより脱気した後、使用した。この混合物を2時間、加熱還流した。ここまでの全ての操作は窒素気流下で行った。
Figure 0006268772
反応終了後、有機層を水洗し、有機層をメタノール−水(9:1)に注いだ。生じた沈殿を吸引ろ過し、メタノール−水(9:1)で洗浄した。得られた沈殿をトルエンに溶解し、メタノールから再沈殿した。得られた沈殿を吸引ろ過し、トルエンに溶解し、金属吸着剤(Triphenylphosphine, polymer-bound on styrene-divinylbenzene copolymer、Strem Chemicals社、ポリマー100mgに対して200mg)を加えて、一晩撹拌した。撹拌終了後、金属吸着剤と不溶物をろ過して取り除き、ろ液をロータリーエバポレーターで濃縮した。濃縮液をトルエンに溶解した後、メタノール−アセトン(8:3)から再沈殿した。生じた沈殿を吸引ろ過し、メタノール−アセトン(8:3)で洗浄した。得られた沈殿を真空乾燥し、正孔輸送性を示すポリマーである電荷輸送性化合物1を得た。分子量は、溶離液にTHFを用いたGPC(ポリスチレン換算)により測定した。得られた電荷輸送性化合物1の数平均分子量は7,800、重量平均分子量は31,000であった。
数平均分子量及び重量平均分子量の測定条件は以下のとおりである。
送液ポンプ :L-6050 (株)日立ハイテクノロジーズ
UV-Vis検出器 :L-3000 (株)日立ハイテクノロジーズ
カラム :Gelpack (R) GL-A160S/GL-A150S 日立化成(株)
溶離液 :THF(和光純薬製, HPLC用, 安定剤不含)
流速 :1 mL/min
カラム温度 :室温
分子量標準物質:標準ポリスチレン
<電荷輸送性化合物2の合成>
三口丸底フラスコに下記モノマー4(4.0mmol)、前記モノマー2(5.0mmol)、前記モノマー3(2.0mmol)、及びアニソール(20ml)を加え、さらに調製したPd触媒溶液(7.5ml)を加えた。以降は電荷輸送性化合物1の合成と同様にして、正孔輸送性を示すポリマーである電荷輸送性化合物2を合成した。得られた電荷輸送性化合物2の数平均分子量は21,300、重量平均分子量は150,100であった。
Figure 0006268772
<インク組成物1−Aの作製>
ガラス容器に上記電荷輸送性化合物の合成で得た電荷輸送性化合物1(10.0mg)とトルエン(2.3mL)を加え、500時間撹拌してインク組成物1−Aを作製した。目視観察により、インク組成物中に固形分が存在していないことを確認した。電荷輸送性化合物1が均一に溶解したインク組成物が得られた。
<インク組成物1−Bの作製>
ガラス容器に上記電荷輸送性化合物の合成で得た電荷輸送性化合物2(10.0mg)とトルエン(2.3mL)を加え、500時間撹拌してインク組成物1−Bを作製した。目視観察により、インク組成物中に固形分が存在していないことを確認した。電荷輸送性化合物2が均一に溶解したインク組成物が得られた。
<インク組成物2−Aの作製>
ガラス容器に下記構造式で表される重合開始剤1(10.0mg)とトルエン(1.0mL)を加え、500時間撹拌してインク組成物2−Aを作製した。目視観察により、インク組成物中に固形分が存在していないことを確認した。重合開始剤1が均一に溶解したインク組成物が得られた。
Figure 0006268772
<インク組成物2−Bの作製>
ガラス容器に下記構造式で表される電子受容性化合物1(10.0mg)とトルエン(1.0mL)を加え、500時間撹拌してインク組成物2−Bを作製した。目視観察により、インク組成物中に固形分が存在していないことを確認した。電子受容性化合物1が均一に溶解したインク組成物が得られた。
Figure 0006268772
<インク組成物3−A>
ガラス容器に上記電荷輸送性化合物の合成で得た電荷輸送性化合物1(10.0mg)、重合開始剤1(0.5mg)、及びトルエン(2.3mL)を加え、500時間撹拌してインク組成物3−Aを作製した。目視観察により、不溶物が確認された。インク組成物3−Aは、不均一なインク組成物であった。
<インク組成物3−B>
ガラス容器に上記電荷輸送性化合物の合成で得た電荷輸送性化合物2(10.0mg)、電子受容性化合物1(0.5mg)、及びトルエン(2.3mL)を加え、500時間撹拌してインク組成物3−Bを作製した。目視観察により、不溶物が確認された。インク組成物3−Bは、不均一なインク組成物であった。
<有機EL素子の作製>
[実施例1]
窒素雰囲気下で、ITOを1.6mm幅にパターニングしたガラス基板上に、上記で得たインク組成物1−A(1.0mL)とインク組成物2−A(23μL)を、両者がガラス基板上で混ざり合うように同時にキャスト(滴下)し、3000min−1でスピンコートした後、ホットプレート上で220℃、10分間加熱して硬化させ、正孔注入層(30nm)を形成した。
上記で得たガラス基板を、真空蒸着機中に移し、上記正孔注入層上にα−NPD(50nm)、CBP:Ir(ppy)(94:6、30nm)、BAlq(10nm)、Alq(30nm)、LiF(0.8nm)、及びAl(100nm)を順に蒸着法で成膜し、封止処理を行って有機EL素子を作製した。
[比較例1]
孔径0.20μmのPTFEフィルター(ADVANTEC製、DISMIC 25JP020AN)を用いたろ過により、インク組成物3−Aから不溶分を除去し、インク組成物3−A’を得た。窒素雰囲気下で、ITOを1.6mm幅にパターニングしたガラス基板上に、上記で得たインク組成物3−A’をキャストし、3000min−1でスピンコートした後、ホットプレート上で220℃、10分間加熱して重合させ、正孔注入層(30nm)を形成した。以降は実施例1と同様にα−NPD(50nm)、CBP:Ir(ppy)(94:6、30nm)、BAlq(10nm)、Alq(30nm)、LiF(0.8nm)、及びAl(100nm)を順に蒸着法で成膜し、封止処理を行って有機EL素子を作製した。
実施例1及び比較例1で得た有機EL素子に電圧を印加したところ、実施例1では発光面に均一な緑色発光が確認されたのに対し、比較例1では発光面に発光ムラのある緑色発光が確認された。それぞれの素子について、発光輝度1000cd/m時の駆動電圧及び発光効率、初期輝度3000cd/mにおける発光寿命(輝度半減時間)を測定した。測定結果を表1に示す。
Figure 0006268772
表1に示したとおり、実施例1の有機EL素子は、低い駆動電圧、優れた発光効率、かつ、長い発光寿命を示しており、駆動安定性に優れていた。また、実施例1においては、比較例1と比較して発光ムラの少ない素子を作製できた。
[実施例2]
窒素雰囲気下で、ITOを1.6mm幅にパターニングしたガラス基板上に、上記で得たインク組成物1−B(1.0mL)とインク組成物2−B(23μL)を、両者がガラス基板上で混ざり合うように同時にキャストし、3000min−1でスピンコートした後、ホットプレート上で220℃、10分間加熱して乾燥させ、正孔注入層(30nm)を形成した。以降は実施例1と同様にα−NPD(50nm)、CBP:Ir(ppy)(94:6、30nm)、BAlq(10nm)、Alq(30nm)、LiF(0.8nm)、及びAl(100nm)を順に蒸着法で成膜し、封止処理を行って有機EL素子を作製した。
[比較例2]
孔径0.20μmのPTFEフィルター(ADVANTEC製、DISMIC 25JP020AN)を用いたろ過により、インク組成物3−Bから不溶分を除去し、インク組成物3−B’を得た。窒素雰囲気下で、ITOを1.6mm幅にパターニングしたガラス基板上に、上記で得たインク組成物3−B’をキャストし、3000min−1でスピンコートした後、ホットプレート上で220℃、10分間加熱して乾燥させ、正孔注入層(30nm)を形成した。以降は実施例1と同様にα−NPD(50nm)、CBP:Ir(ppy)(94:6、30nm)、BAlq(10nm)、Alq(30nm)、LiF(0.8nm)、及びAl(100nm)を順に蒸着法で成膜し、封止処理を行って有機EL素子を作製した。
実施例2及び比較例2で得た有機EL素子に電圧を印加したところ、実施例2では発光面に均一な緑色発光が確認されたのに対し、比較例2では発光面に発光ムラのある緑色発光が確認された。それぞれの素子について、発光輝度1000cd/m時の駆動電圧及び発光効率、初期輝度3000cd/mにおける発光寿命(輝度半減時間)を測定した。測定結果を表2に示す。
Figure 0006268772
表2に示したとおり、実施例2の有機EL素子は、低い駆動電圧、優れた発光効率、かつ、長い発光寿命を示しており、駆動安定性に優れていた。また、実施例2においては、比較例2と比較して発光ムラの少ない素子を作製できた。
<インクジェット法を用いた有機EL素子の作製>
[実施例3]
ガラス基板上のITOをフォトリソグラフィー法およびエッチング法を用いてパターニングし、陽極(画素電極)を得た。次に、各陽極の縁部を覆うように、ポリイミド(絶縁性の感光性樹脂)を塗布した後、露光することにより、隔壁部を形成した。隔壁部の内側にインク組成物1−Aとインク組成物2−Aをインクジェット法にて塗布し、正孔注入層(30nm)を形成した。以降は、実施例1と同様にα−NPD(50nm)、CBP:Ir(ppy)(94:6、30nm)、BAlq(10nm)、Alq(30nm)、LiF(0.8nm)、及びAl(100nm)を順に蒸着法で成膜し、封止処理を行って有機EL素子を作製した。
[比較例3]
孔径0.20μmのPTFEフィルター(ADVANTEC製、DISMIC 25JP020AN)を用いたろ過により、インク組成物3−Aから不溶分を除去し、インク組成物3−A’を得た。実施例3と同様にして得た基板の隔壁部の内側にインク組成物3−A’をインクジェット法にて塗布し、正孔注入層(30nm)を形成した。以降は、実施例1と同様にα−NPD(50nm)、CBP:Ir(ppy)(94:6、30nm)、BAlq(10nm)、Alq(30nm)、LiF(0.8nm)、及びAl(100nm)を順に蒸着法で成膜し、封止処理を行って有機EL素子を作製した。
実施例3及び比較例3で得た有機EL素子に電圧を印加したところ、実施例3では各画素で均一な緑色発光が確認され、非点灯の画素は確認できなかった。それに対し、比較例3では画素間での発光輝度のムラが確認され、非点灯の画素も多数確認された。
<白色有機EL素子(照明装置)の作製>
[実施例4]
窒素雰囲気下で、ITOを1.6mm幅にパターニングしたガラス基板上に、上記で得たインク組成物1−A(1.0mL)とインク組成物2−A(23μL)を、両者がガラス基板上で混ざり合うように同時にキャストし、3000min−1でスピンコートした後、ホットプレート上で220℃、10分間加熱して硬化させ、正孔注入層(30nm)を形成した。
次に、窒素中、CDBP(15mg)、FIr(pic)(0.9mg)、Ir(ppy)(0.9mg)、(btp)Ir(acac)(1.2mg)、及びジクロロベンゼン(0.5mL)の混合物を、3000min−1にてスピンコートし、次いで80℃で5分間乾燥させて発光層(40nm)を形成した。さらに、BAlq(10nm)、Alq(30nm)、LiF(0.5nm)、Al(100nm)を順に蒸着し、封止処理して白色有機EL素子を作製した。白色有機EL素子は、照明装置として使用することができた。
[比較例4]
孔径0.20μmのPTFEフィルター(ADVANTEC製、DISMIC 25JP020AN)を用いたろ過により、インク組成物3−Aから不溶分を除去し、インク組成物3−A’を得た。窒素雰囲気下で、ITOを1.6mm幅にパターニングしたガラス基板上に、上記で得たインク組成物3−A’をキャストし、3000min−1でスピンコートした後、ホットプレート上で220℃、10分間加熱して重合させ、正孔注入層(30nm)を形成した。以降は、実施例3と同様にして白色有機EL素子を作製したが、白色発光は得られず、照明装置としても使用することができなかった。
インク組成物1−Aとインク組成物2−Aを用いることにより、照明装置として利用できる白色有機EL素子を作製することができた。
比較例1〜4では、インク組成物に不溶分が含まれていたために、インク組成物をそのまま有機半導体層の形成に用いることができず、ろ過により不溶分を取り除く必要があった。しかし、不溶分が除去されたにも関わらず、比較例1〜4では、有機EL素子の特性が劣っていた。その原因の一つとして、不溶分が除去されたことにより、インク組成物に含まれる電荷輸送性化合物の割合が減少したため、所期の膜厚及び膜質を有する有機半導体層を得ることができなかったことが挙げられる。これに対し、実施例1〜4では、インク組成物に含まれる成分の濃度に変動が生じないために、十分な膜厚及び良好な膜質を有する有機半導体層が形成され、その結果、優れた特性を有する有機EL素子を、安定的かつ容易に得ることができた。
以上に実施例を用いて本発明の実施形態の効果を示した。実施例において用いた電荷輸送性化合物、電子受容性化合物及び/又は重合開始剤以外にも、上記で説明した電荷輸送性化合物、電子受容性化合物及び/又は重合開始剤を用い、有機半導体層を得ることが可能であり、同様に優れた効果を示すものである。
1 発光層
2 陽極
3 正孔注入層
4 陰極
5 電子注入層
6 正孔輸送層
7 電子輸送層
8 基板
11 基板
12 隔壁(バンク)
13 隔壁により区画された領域
14 第1の組成物
15 第2の組成物
16 第1の組成物
17 第1の組成物と第2の組成物の混合物
21 ヘッド

Claims (10)

  1. 基板と、前記基板上に形成された有機半導体層とを有する積層体の製造方法であって、
    前記有機半導体層が、電荷輸送性化合物と、重合開始剤及び電子受容性化合物からなる
    群から選択される1種以上とを含有し、
    前記電荷輸送性化合物及び溶媒を含有する第1の組成物と、前記重合開始剤及び電子受
    容性化合物からなる群から選択される1種以上並びに溶媒を含有する第2の組成物とを、
    前記基板上で混合する工程、を含み、
    前記電荷輸送性化合物が、ポリマー又はオリゴマーを含み、
    前記重合開始剤及び電子受容性化合物からなる群から選択される1種以上が、スーパー
    ブレンステッド酸化合物、及び、ホウ酸イオン類をアニオンとして有するオニウム塩から
    なる群から選択される1種以上を含む積層体の製造方法。
  2. 前記電荷輸送性化合物が、芳香族アミン単位を有するポリマー又はオリゴマー、カルバゾール単位を有するポリマー又はオリゴマー、及びチオフェン単位を有するポリマー又はオリゴマーからなる群から選択される1種以上を含む請求項1に記載の積層体の製造方法。
  3. 前記電荷輸送性化合物が、芳香族アミン単位、カルバソール単位、又はチオフェン単位を有するポリマー又はオリゴマーである請求項に記載の積層体の製造方法。
  4. 前記基板が、少なくとも一方の面上に隔壁により区画された領域を有し、前記第1の組
    成物と前記第2の組成物とを、前記領域で混合する請求項1〜のいずれかに記載の積層
    体の製造方法。
  5. 前記第1の組成物と前記第2の組成物とを、インクジェット法により前記基板上に供給
    し、前記基板上で混合する請求項1〜のいずれかに記載の積層体の製造方法。
  6. 基板と、前記基板上に形成された有機半導体層とを有する積層体を備えた有機エレクト
    ロニクス素子の製造方法であって、
    前記積層体を、請求項1〜のいずれかに記載の製造方法により得る工程を含む有機エ
    レクトロニクス素子の製造方法。
  7. 基板と、前記基板上に形成された有機半導体層とを有する積層体を備えた有機エレクト
    ロルミネセンス素子の製造方法であって、
    前記積層体を、請求項1〜のいずれかに記載の製造方法により得る工程を含む有機エ
    レクトロルミネセンス素子の製造方法。
  8. 前記有機半導体層が正孔注入層である請求項記載の有機エレクトロルミネセンス素子
    の製造方法。
  9. 前記有機半導体層が正孔輸送層である請求項記載の有機エレクトロルミネセンス素子
    の製造方法。
  10. 前記有機半導体層が正孔注入層及び正孔輸送層である請求項記載の有機エレクトロル
    ミネセンス素子の製造方法。
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