JP6251550B2 - 鋸刃及び鋸刃を用いた被切断材の切断方法 - Google Patents
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Description
そのため、切削に伴い、鋸刃の左右方向(厚さ方向)に振動が発生して切り込み量が想定よりも深くなる場合がある。この場合、切断面に、第2の直歯で切削しきれなかった切削痕が模様(ゆうれい模様とも称される)として残る虞がある。
また、アサリ歯は、片方側のみに振り出していることから、切削抵抗によって振り出し方向とは反対側に向け変形し、切削幅が必ずしも想定通りに得られず、小さくなる場合がある。この場合、第2の直歯の切り込み量が増加して切削が不安定となり、切断面が粗くなってしまう虞がある。
1)先端の左右の稜線部に面取り部を有する直歯なる先行歯と、
歯高が前記先行歯より低く、前記先行歯に対し左右両側に振り出したバチ型の第1の後続歯と、
歯高が前記第1の後続歯よりも低く、前記第1の後続歯に対し左右両側に振り出した仕上げ面部を有すると共に前記仕上げ面部が横断面形状で高さ方向に延びる中心軸線と平行となるよう形成されている第2の後続歯と、
がこの順で設けられた歯群を、繰り返し備え、
前記第2の後続歯は、先端側に前記仕上げ面部を有し前記仕上げ面部に対する根本側に側逃げ角が0°より大きい傾斜面を有している鋸刃である。
2)先端の左右の稜線部に面取り部を有する直歯なる複数の先行歯が、歯高が順次低くかつ先端部の幅が順次広くなるよう配列されてなる先行歯群と、
歯高が前記先行歯群の最低の先行歯より低く、前記先行歯群の最大幅に対し左右両側に振り出したバチ型の第1の後続歯と、
歯高が前記第1の後続歯よりも低く、前記第1の後続歯に対し左右両側に振り出した仕上げ面部を有すると共に前記仕上げ面部が横断面形状で高さ方向に延びる中心軸線と平行となるよう形成されている第2の後続歯と、
がこの順で設けられた歯群を、繰り返し備え、
前記第2の後続歯は、先端側に前記仕上げ面部を有し前記仕上げ面部に対する根本側に側逃げ角が0°より大きい傾斜面を有している鋸刃である。
3)前記仕上げ面部の前記第1の後続歯に対する振り出し量が、0.01mm以上0.05mm以下とされていることを特徴とする1)又は2)に記載の鋸刃である。
4)先端の左右の稜線部に面取り部を有する直歯なる先行歯と、
歯高が前記先行歯より低く、前記先行歯に対し左右両側に振り出したバチ型の第1の後続歯と、
歯高が前記第1の後続歯よりも低く、前記第1の後続歯に対し左右の一方側に振り出した第1の仕上げ面部を有すると共に前記第1の仕上げ面部が横断面形状で高さ方向に延びる中心軸線と平行に形成されている第2の後続歯と、
歯高が前記第1の後続歯よりも低く、前記第1の後続歯に対し左右の他方側に振り出した第2の仕上げ面部を有すると共に前記第2の仕上げ面部が横断面形状で前記中心軸線と平行に形成されている第3の後続歯と、
がこの順で設けられた歯群を、繰り返し備え、
前記第2の後続歯及び前記第3の後続歯は、先端側にそれぞれ前記第1の仕上げ面部及び前記第2の仕上げ面部を有し、前記第1の仕上げ面部及び前記第2の仕上げ面部それぞれに対する根本側に側逃げ角が0°より大きい第1の傾斜面及び第2の傾斜面を有している鋸刃である。
5)先端の左右の稜線部に面取り部を有する直歯なる複数の先行歯が、歯高が順次低くかつ先端部の幅が順次広くなるよう配列されてなる先行歯群と、
歯高が前記先行歯群の最低の先行歯より低く、前記先行歯群の最大幅に対し左右両側に振り出したバチ型の第1の後続歯と、
歯高が前記第1の後続歯よりも低く、前記第1の後続歯に対し左右の一方側に振り出した第1の仕上げ面部を有すると共に前記第1の仕上げ面部が横断面形状で高さ方向に延びる中心軸線と平行に形成されている第2の後続歯と、
歯高が前記第1の後続歯よりも低く、前記第1の後続歯に対し左右の他方側に振り出した第2の仕上げ面部を有すると共に前記第2の仕上げ面部が横断面形状で前記中心軸線と平行に形成されている第3の後続歯と、
がこの順で設けられた歯群を、繰り返し備え、
前記第2の後続歯及び前記第3の後続歯は、先端側にそれぞれ前記第1の仕上げ面部及び前記第2の仕上げ面部を有し、前記第1の仕上げ面部及び前記第2の仕上げ面部それぞれに対する根本側に側逃げ角が0°より大きい第1の傾斜面及び第2の傾斜面を有している鋸刃である。
6)前記第1の仕上げ面部及び前記第2の仕上げ面部の前記第1の後続歯に対する振り出し量が、0.01mm以上0.05mm以下とされていることを特徴とする4)又は5)に記載の鋸刃である。
7)前記第2及び第3の後続歯は、掬い面が正値の横掬い角で傾斜形成されていることを特徴とする4)〜6)のいずれか一つに記載の鋸刃である。
8)前記仕上げ面部は、切削方向先頭側の歯高方向の距離よりも後尾側の歯高方向の距離の方が大きくなるよう形成されていることを特徴とする1)〜3)のいずれか一つに記載の鋸刃である。
9)前記第1の仕上げ面部及び前記第2の仕上げ面部は、切削方向先頭側の歯高方向の距離よりも後尾側の歯高方向の距離の方が大きくなるよう形成されていることを特徴とする4)〜7)のいずれか一つに記載の鋸刃である。
10)鋸刃を用いた被切断材の切断方法であって、
前記鋸刃として8)に記載の鋸刃を用い、
前記仕上げ面部の前記切削方向先頭側の歯高方向の距離をA1とし、
前記歯群あたりの送り量をfzとしたときに、
fz<A1
として切断を行うことを特徴とする鋸刃を用いた被切断材の切断方法である。
11)鋸刃を用いた被切断材の切断方法であって、
前記鋸刃として9)に記載の鋸刃を用い、
前記第1の仕上げ面部の前記高さ方向の距離と前記第2の仕上げ面部の前記高さ方向の距離とが等しい場合はその距離を距離A1とし、等しくない場合は小さい方の距離を距離A1とし、
前記歯群あたりの送り量をfzとしたときに、
fz<A1
として切断を行うことを特徴とする鋸刃を用いた被切断材の切断方法である。
図1(a),(b)及び図2に、実施例1の帯鋸刃51が示されている。
図1(a)は、帯鋸刃51の一部分の側面図であり、図1(b)は、図1(a)に対応した下面図である。図2は、図1(a)におけるS1−S1位置での断面図である。
帯鋸刃51は、図示しない帯鋸盤に装着され、図1の走行方向Vに循環走行して被切断物を切断する。走行方向Vは、被切断物を切断する際の切削方向でもある。
具体的には、鋸歯TSとして、切削方向先頭側から順に、先行歯TS1と、第1の後続歯TS2と、第2の後続歯TS3と、からなる歯群TG1が繰り返し形成されている。
走行方向に延びる仮想の基準位置KLからの歯高を、先行歯TS1の歯高H1,第1の後続歯TS2の歯高H2,第2の後続歯TS3の歯高H3とすると、H3<H2<H1となっている。
また、先行歯TS1と第1の後続歯TS2との間のピッチをピッチP1とし、第1の後続歯TS2と第2の後続歯TS3との間のピッチをピッチP2とすると、P2<P1となっている。
すなわち、図2で規定される側逃げ角θaが0°<θaとされている。また、先端の左右稜線には面取り部C1が形成されている。この面取り部C1により、先端部TS1aは、幅Waとなるように絞られている。
また、図1(b)で規定される横逃げ角αaは0°<αaとされている。
金属の切断においては、この先行歯TS1により、先端部TS1aの幅Waに依存する溝が形成される。
すなわち、図2で規定される側逃げ角θbが0°<θbとされている。この例では、先行歯TS1の側逃げ角θaと同じ、すなわち、θa=θbとされている。
また、先行歯TS1とは異なり、先端の左右稜線に面取り部は形成されていない。すなわち、先端の左右稜線部分は、角度θba(=90°−θb)なる先鋭角部TS2aとされている。左右の先鋭角部TS2a間の幅Wbは、当然であるが、Wa<Wbとなっている。
図1(b)で規定される横逃げ角αbは、0°<αbとされている。この例では、先行歯TS1の横逃げ角αaと同じ、すなわち、αb=αaとされている。
金属の切断において、バチ型の歯である第1の後続歯TS2は、先行歯TS1により切削された溝の幅を、先鋭角部TS2aにより幅Wbに拡張する。
図1(b)で規定される横逃げ角αcは、0°<αcとされている。この例では、先行歯TS1の横逃げ角αcと同じ、すなわち、αc=αaとされている。
胴部TBの幅よりも振り出された振り出し部THにおいて、仕上げ面部TS3aに対する根本側は、図2に示される側逃げ角θcが0°<θcなる傾斜面とされている。
すなわち、図2において、振り出し部THにおける先端側に、仕上げ面部TS3aが形成されている。
また、振り出し量Lc及び振り出し量Rcは、第1の後続歯TS2の振り出し量に対して、それぞれ微小な差分ΔLc及び差分ΔRcだけ大きく設定されている。この例では、ΔLc=ΔRcとされている。すなわち、第2の後続歯TS3の先端の幅W3は、第1の後続歯TS2の幅Wbに対して、Wc=Wb+ΔLc+ΔRcとなっている。
また、仕上げ面部TS3aは、図1(a)に示されるように、切削方向先頭側が歯高方向で上述の距離A1とされ、後尾側に向かうに従って、歯高方向の距離が増加し、最大で距離A2となる範囲で形成されている。
ここで、図1(b)で規定される横逃げ角αcは、0°<αcとされている。この例では、先行歯TS1の横逃げ角αaと同じ、すなわち、αc=αaとされている。
このように、第2の後続歯TS3は、仕上げ面部TS3aを有するので、仕上げ歯TS3とも称される。
これにより、第1の後続歯TS2の切削に伴って振動が発生することがなく、高精度で幅Wbの溝が形成される。
そのため、後続の仕上げ歯TS3の切削も高精度に行われ、表面粗さの小さい滑らかな切断面が得られる。
また、バチ型のアサリ歯TS2は、切削抵抗が左右の両側でほぼ同等に生じるので、胴部TBの厚さ方向に変形することがない。これによっても高精度で幅Wbの溝が形成される。
そのため、後続の仕上げ歯である第2の後続歯TS3の切削における切り込み量が一定となり、切削が安定して高精度に行われる。そのため、表面粗さの小さい滑らかな切断面が安定して得られる。
距離A1は、歯群TG1のピッチパターン長(第2の後続歯TS3のピッチと同じ)をP3(単位はmm)としたときに、 P3x0.003<A1 mm にするとよい。
距離A1は、走行方向Vに直交する方向の距離、すなわち、帯鋸刃51の切削における送り方向の距離であって、仕上げ面部TS3aが仕上げ切削に寄与する範囲である。
ここで、帯鋸刃51による切削において、帯鋸刃51が、隣接する一対の歯群TG1間距離を走行する間に切り込まれる送り量を、歯群当たりの送り量fzとする。
この歯群当たりの送り量fzよりも距離A1が短いと、切断面に、仕上げ歯TS3の仕上げ面部TS3aで切削されない部位が残り、表面粗さの小値化の妨げになる虞がある。
帯鋸盤(バンドソー):株式会社アマダマシンツール製 PCSAW530AX
被削材:SUM22(硫黄及び硫黄複合快削鋼鋼材)、直径:150mm
鋸速度:81m/min(81x103mm/min)
切削率:285cm2/min
これを基に、次の手順で距離A1を設定する。
被削材の切断面積は176cm2 である。
従って、総切断時間Ttは、切断面積/切削率で求められる。すなわち、
総切断時間Tt=176/285=0.617min である。
一分当たりの切り込み量Qmは、被削材の直径を総切断時間で除することで得られる。すなわち、
1分当たりの切り込み量Qm=150/0.617=243mm/min である。
走行距離1mm当たりの切り込み量fは、1分当たりの切り込み量を鋸速度で除することで得られる。すなわち、
走行距離1mm当たりの切り込み量f=243/81x103=0.003
すなわち、
歯群当たりの送り量fz=0.003xP3 である。
fz<A1であり、
0.003xP3<A1mm である。
fz=0.003x40.5=0.122mm<A1 と設定するとよい。
図4(a),(b)及び図5に、実施例1の変形例1である帯鋸刃51Aが示されている。
図4(a)は、帯鋸刃51Aの一部分の側面図であり、図4(b)は、図4(a)に対応した下面図である。
図5は、図4(a)におけるS1A−S1A位置での断面図である。
この帯鋸刃51Aは、仕上げ歯TS3Aの側逃げ角θcが0°となっているので、切削による切粉の排出性の点では帯鋸刃51の方が有利であるが、仕上げ面部TS3Aaの高さ(距離A3)が大きくとれる点で有利である。
切粉の排出性の点では、仕上げ歯TS3Aによる切り込み量を小さくすることで、実質的に支障のない切削が可能である。
また、仕上げ面部TS3Aaの高さを大きくとれる点では、歯群当たりの送り量fzに対し、例えば距離A3=nxfz(n:2以上の整数)として、切断面を仕上げ歯TS3Aaにより複数回切削させることが可能となる。
従って、変形例1は、切断面を表面粗さのより小さい面とする場合に好適である。
図6及び図7と図8及び図9と図10及び図11とに、それぞれ実施例1の変形例2〜4である帯鋸刃51B〜51Dが示されている。
図7,図9,及び図11は、それぞれ図6,図8,及び図10におけるS1B−S1B,S1C−S1C,及びS1D−S1D位置での断面図である。
すなわち、歯群TG1Bは、第1の先行歯TS1Ba,第2の先行歯TS1Bb,第1の後続歯(バチ型のアサリ歯)TS2B,第2の後続歯(仕上げ歯)TS3Bにより構成される。
そして、帯鋸刃51におけるバチ型のアサリ歯TS2に相当する第1の後続歯TS2Bの歯高H2を含め、走行方向先頭側から順に、歯高が低く(H2<H1Bb<H1Ba)、先端の幅が広く(WaBa<WaBb<Wb)形成されている。
これ以外の部分は、帯鋸刃51と同じである。
すなわち、歯群TG1Cは、第1の先行歯TS1Ca,第2の先行歯TS1Cb,第3の先行歯TS1Cc,第1の後続歯(バチ型のアサリ歯)TS2C,第2の後続歯(仕上げ歯)TS3Cにより構成される。
そして、帯鋸刃51におけるバチ型の歯TS2に相当する第1の後続歯TS2Cの歯高H2を含め、走行方向先頭側から順に、歯高が低く(H2<H1Cc<H1Cb<H1Ca)、先端の幅が広く(WaCa<WaCb<WaCc<Wb)形成されている。
これ以外の部分は、帯鋸刃51と同じである。
そして、第1の後続歯TS2Dの先端部TS2Dbの幅を幅Wbaとし、先端部TS2Dbの基準位置KLからの高さ方向距離を高さH2aとし、第1の後続歯TS2Dの最大の幅Wbbとなる面取り部TS2Daの根本側端部TS2Dcにおける基準位置KLからの高さ方向の距離を高さH2bとすると、走行方向先頭側から順に、歯高や高さが低く(H3<H2b<H2a<H1Dc<H1Db<H1Da)、先端の幅が広く(WaDa<WaDb<WaDc<Wba<Wbb<Wb)形成されている。
これ以外の部分は、帯鋸刃51と同じである。
変形例2〜4を更に変形して側逃げ角θcを0°とし、振り出し部THの左右端の高さ方向全体を、仕上げ面部TS3Ba〜TS3Daとした変形例2A〜4Aとしてもよい。
変形例2〜4における距離A1B〜A1Dの望ましい設定範囲は、帯鋸刃51と同様に、
0.003xP3<A1B,A1C,A1D mm である。
次に、図12(a),(b)及び図13を参照して実施例2の帯鋸刃52について説明する。
図12(a)は、帯鋸刃52の一部分の側面図であり、図12(b)は、図12(a)に対応した下面図である。図13は、図12(a)におけるS2−S2位置での断面図である。
帯鋸刃52は、図示しない帯鋸盤に装着され、図12の走行方向Vに循環走行して被切断物を切断する。走行方向Vは、被切断物を切断する際の切削方向でもある。
具体的には、鋸歯TSとして、切削方向先頭側から順に、先行歯TS21と、第1の後続歯TS22と、第2の後続歯TS23a及び第3の後続歯TS23bと、からなる歯群TG2が、所定のピッチであるピッチパターン長P23で繰り返し形成されている。
走行方向に延びる仮想の基準位置KLからの歯高を、先行歯TS21の歯高H1,第1の後続歯TS22の歯高H2,第2の後続歯TS23aの歯高H3a,及び第3の後続歯TS23bの歯高H3bとすると、H3a=H3b<H2<H1となっている。
また、先行歯TS21と第1の後続歯TS22との間のピッチをピッチP21とし、第1の後続歯TS22と第2の後続歯TS23aとの間のピッチをピッチP22aとし、第2の後続歯TS23aと第3の後続歯TS23bとの間のピッチをピッチP22bとすると、P22b<P21<P22aとなっている。
すなわち、図13で規定される側逃げ角θaが0°<θaとされている。また、先端の左右稜線には面取り部C1が形成されている。この面取り部C1により、先端部TS21aは、幅W2aとなるように絞られている。
また、図12(b)で規定される横逃げ角αaは0°<αaとされている。
金属の切断においては、この先行歯TS21により、先端部TS21aの幅W2aに依存する溝が形成される。
すなわち、図13で規定される側逃げ角θbが0°<θbとされている。この例では、先行歯TS21の側逃げ角θaと同じ、すなわち、θa=θbとされている。
また、先行歯TS21とは異なり、先端の左右稜線に面取り部は形成されていない。すなわち、先端の左右稜線部分は、角度θba(=90°−θb)なる先鋭角部TS22aとされている。左右の先鋭角部TS22a間の幅W2bは、当然であるが、W2a<W2bとなっている。
図12(b)で規定される横逃げ角αbは、0°<αbとされている。この例では、先行歯TS21の横逃げ角αaと同じ、すなわち、αb=αaとされている。
第3の後続歯TS23bは、左方向に振り出したアサリ歯であり、先端の右側稜線に面取り部TS23b1が形成されている。
胴部TBの幅よりも振り出された振り出し部THにおいて、仕上げ面部TS23aa及び仕上げ面部TS23baに対する根本側は、図13に示される側逃げ角θcが0°<θcなる傾斜面とされている。
すなわち、図13において、振り出し部THにおける先端側に、仕上げ面部TS23aa及び仕上げ面部TS23baが形成されている。
また、振り出し量Lc及び振り出し量Rcは、第1の後続歯TS22の振り出し量に対して、それぞれ微小な差分ΔLc及び差分ΔRcだけ大きく設定されている。この例では、ΔLc=ΔRcとされている。
すなわち、図13における、第2の後続歯TS23aの右側先端部と及び第3の後続歯TS23bの左側先端部との間の幅W2cは、第1の後続歯TS22の幅W2bに対して、W2c=W2b+ΔLc+ΔRcとなっている。ΔLc、ΔRcは、例えば0.01〜0.05mm程度の微小量とされる。
ここで、図12(b)で規定される横逃げ角αc1は、0°<αc1とされている。また横逃げ角αc2は、0°<αc2とされている。この例では、先行歯TS21の横逃げ角αaと同じ、すなわち、αc1=αc2=αaとされている。
このように、第2の後続歯TS23a及び第3の後続歯TS23bは、それぞれ仕上げ面部TS23aa,TS23baを有するので、仕上げ歯TS23a及び仕上げ歯TS23bとも称される。
これにより、切断面が、表面粗さのより小さい面となる。
具体的には、距離A1の場合と同様に、P23x0.003<A21 mm と設定するとよい。
これにより、各仕上げ歯において、仕上げ歯であることから元来少ない切削抵抗がさらに減少する。そのため、被切削面の仕上げ切削が、より少ない振動で安定して行える。
また、切削抵抗が予期せず大きくなった場合に、第2の後続歯TS23a及び第3の後続歯TS23bは、振り出し方向とは逆の方向に弾性的に変形可能であるから、歯欠けなどの不具合が生じる虞が少ない。
また、この弾性的変形により反発力が生じ、歯先が被切削面に付勢される。この付勢力により、被切削面である切断面の微小な凸部は塑性変形して平(なら)され、表面粗さがより小さくなる。この塑性変形によって加工硬化が生じる範囲は、凸部に限定され、切断面の面積比率において極めて僅かな範囲となるから、その後の切削等に影響を及ぼすものではない。
次に、図14(a),(b)及び図15を参照して実施例3の帯鋸刃53につて説明する。
図14(a)は、帯鋸刃53の一部分の側面図であり、図14(b)は、図14(a)に対応した下面図である。図15は、図14(a)におけるS3−S3位置での断面図である。
帯鋸刃53は、図示しない帯鋸盤に装着され、図14の走行方向Vに循環走行して被切断物を切断する。走行方向Vは、被切断物を切断する際の切削方向でもある。
具体的には、鋸歯TSとして、切削方向先頭側から順に、先行歯TS31と、第1の後続歯TS32と、第2の後続歯TS33a及び第3の後続歯TS33bと、からなる歯群TG3が、所定のピッチであるピッチパターン長P33で繰り返し形成されている。
走行方向に延びる仮想の基準位置KLからの歯高を、先行歯TS31の歯高H1,第1の後続歯TS32の歯高H2,第2の後続歯TS33aの歯高H3a,及び第3の後続歯TS33bの歯高H3bとすると、H3a=H3b<H2<H1となっている。
また、先行歯TS31と第1の後続歯TS32との間のピッチをピッチP31とし、第1の後続歯TS32と第2の後続歯TS33aとの間のピッチをピッチP32aとし、第2の後続歯TS33aと第3の後続歯TS33bとの間のピッチをピッチP32bとすると、P32b<P31<P32bとなっている。
すなわち、図15で規定される側逃げ角θaが0°<θaとされている。また、先端の左右稜線には面取り部C1が形成されている。この面取り部C1により、先端部TS31aは、幅W3aとなるように絞られている。
また、図14(b)で規定される横逃げ角αaは0°<αaとされている。
金属の切断においては、この先行歯TS31により、先端部T321aの形状に依存する溝が形成される。
すなわち、図13で規定される側逃げ角θbが0°<θbとされている。この例では、先行歯TS31の側逃げ角θaと同じ、すなわち、θa=θbとされている。
また、先行歯TS31とは異なり、先端の左右稜線に面取り部は形成されていない。すなわち、先端の左右稜線部分は、角度θba(=90°−θb)なる先鋭角部TS32aとされている。左右の先鋭角部TS32a間の幅W3bは、当然であるが、W3a<W3bとなっている。
図14で規定される横逃げ角αbは、0°<αbとされている。この例では、先行歯TS31の横逃げ角αaと同じ、すなわち、αb=αaとされている。
第3の後続歯TS33bは、左方向に振り出したアサリ歯であり、図14(b)に示されるように、横逃げ角αc2が0°<αc2で設定されると共に横掬い角βbが0°<βbで設定されている。
横掬い角βa,βbは、掬い面TS33ac,TS33bcの走行方向Vに直行する方向に対してなす角度である。横掬い角βa,βbが正値の場合、掬い面TS33ac,TS33bcの振り出し側が走行方向前方側に突出した傾斜となる。
胴部TBの幅よりも振り出された振り出し部THにおいて、仕上げ面部TS33aa及び仕上げ面部TS33baに対する根本側は、図15に示される側逃げ角θcが0°<θcなる傾斜面とされている。
すなわち、図15において、振り出し部THにおける先端側に、仕上げ面部TS33aa及び仕上げ面部TS33baが形成されている。
また、振り出し量Lc及び振り出し量Rcは、第1の後続歯TS32の振り出し量に対して、それぞれ微小な差分ΔLc及び差分ΔRcだけ大きく設定されている。この例では、ΔLc=ΔRcとされている。
すなわち、図15における、第2の後続歯TS33aの右側先端部と及び第3の後続歯TS33bの左側先端部との間の幅W3cは、第1の後続歯TS32の幅W3bに対して、W3c=W3b+ΔLc+ΔRcとなっている。ΔLc、ΔRcは、例えば0.01〜0.05mm程度の微小量とされる。
ここで、図14(b)で規定される横逃げ角αc1は、0°<αc1とされている。また横逃げ角αc2は、0°<αc2とされている。この例では、先行歯TS31の横逃げ角αaと同じ、すなわち、αc1=αc2=αaとされている。
このように、第2の後続歯TS33a及び第3の後続歯TS33bは、それぞれ仕上げ面部TS33aa,TS33baを有するので、仕上げ歯TS33a及び仕上げ歯TS33bとも称される。
これにより、切断面が表面粗さのより小さい面となる。
具体的には、距離A1の場合と同様に、P33x0.003<A31 mm と設定するとよい。
これにより、第2の後続歯TS33a及び第3の後続歯TS33bの切削で発生した切粉が、すくい面TS33ac,TS33bcに沿って生成されるので、切粉の排出が効率よく行われる。
また、横掬い角βa,βbが正の値で設定されているため、切削抵抗が低減し安定した切削が行われる。
詳しくは、第2の後続歯TS33a及び第3の後続歯TS33bは、切削時の側面(被切削面)から受ける力が実施例2よりも低減する。従って、片振り出しのアサリ歯となっている第2の後続歯TS33a及び第3の後続歯TS33bの振り出し方向とは反対方向への変形が抑制され、被切削面の切削が良好に行われる。
表面粗さの試験を<試験イ>とし、切削抵抗の試験を<試験ロ>とする。
各試験に供した帯鋸刃51は、差分ΔLcと差分ΔRcとを等しくし、0.01mm〜0.07mmの範囲で四段階に変えたA1〜A4と、比較例として差分ΔLcを0(ゼロ)としたBと、の合計五種類である。
具体的には、
A1:0.01mm≦ΔLc=ΔRc<0.02mm
A2:0.02mm≦ΔLc=ΔRc≦0.03mm
A3:0.04mm≦ΔLc=ΔRc≦0.05mm
A4:0.06mm≦ΔLc=ΔRc≦0.07mm
B:ΔLc=ΔRc≒0(ゼロ)
である。
帯鋸盤(バンドソー):株式会社アマダマシンツール製 HA400
被削材:S45C(機械構造用炭素鋼)、直径:200mm
鋸速度:50m/min
送り速度:25mm/min
鋸刃:41w×1.3t×1.8/2P
供試数:A1〜A4及びB それぞれ3本ずつの合計15本
試験ロにおける切削抵抗は、帯鋸盤の鋸刃を回転駆動するモータのトルク変動を測定して得た。
試験イの結果は図16に示される。図16において、縦軸は切断面の表面粗さであり、比較例Bの三本の平均値を100%として相対比較している。値が0%に近い程、表面粗さが小さいことを示す。
その中で、Bの表面粗さよりも、A1〜A4の表面粗さは小さくなっており、差分ΔLcを少なくとも0.01mm以上に設定することで、表面粗さをより低減できることがわかる。
A1〜A3の表面粗さは、それぞれ平均値でBの約半分の54%,52%,51%となっており、A1〜A3間での顕著な差は認められない。
これに対し、A4の表面粗さは、平均値で72%となっており、A1〜A3よりも値が大きくなっている。
試験ロの結果は図17に示される。図17において、縦軸は切削抵抗であり、比較例Bの三本の平均値を100%として相対比較している。値が0%に近い程、切削抵抗が小さいことを示す。測定値は、各種類毎に三本の平均値が示されている。
具体的には、A1〜A4についてそれぞれ122%,128%,134%,216%である。
また、図16で明らかになった、A4の表面粗さがA1〜A3の表面粗さと比較して著しく大きくなっている点については、切削抵抗がBの二倍以上という大きな値(216%)になっていることからも説明される。
すなわち、差分ΔLc,ΔRcを、切削抵抗の増加が比較的小さい
0. 01mm≦ΔLc=ΔRc≦0.05mm
にするとよい。
鋸刃の材質は限定されない。例えば、帯鋸刃の場合、胴部を強靱性合金鋼とし、歯先を高速度工具鋼や超硬合金として、両者を接合したいわゆるバイメタル帯鋸刃に適用してもよい。
実施例2の帯鋸刃52において、第2の後続歯TS23aと第3の後続歯TS23bの振り出し方向は、上述の方向と逆の、走行方向先頭側から左方向、右方向であってもよい。実施例3の帯鋸刃53についても同様である。
実施例2及び実施例3は、それぞれ実施例1における変形例1〜4のように変形することができる。
AR1 範囲
A1,A2,A3,A1B〜A1D,A21,A22,A31,A32 距離
C1 面取り部
fz 歯群当たりの送り量
H1〜H3,H1Ba,H1Bb,H1Ca〜H1Cc,H1Da〜H1Dc,H2a,H2b 高さ
H3a,H3b 歯高
KL 基準位置
Lc,Rc 振り出し量、 ΔLc,ΔRc (振り出し量の)差分
P1,P2,P21,P22a,P22b,P31,P32a,P32b ピッチ、 P3,P23,P33 ピッチパターン長
TB 胴部、 TBL 左側面、 TBR 右側面
TG1〜TG3,TG1A〜TG1D 歯群、 TH 振り出し部
TS 鋸歯
TS1,TS21,TS31 先行歯
TS1a,TS21a,TS31a 先端部
TS1Ba,TS1Ca 第1の先行歯
TS1Bb,TS1Cb 第2の先行歯、 TS1Cc 第3の先行歯
TS2,TS2B,TS2C,TS2D,TS22,TS32 第1の後続歯(バチ型のアサリ歯)、 TS2a,TS22a,TS32a 先鋭角部
TS2Da 面取り部、 TS2Db 先端部
TS2Dc 根本側端部
TS23a,TS23b,TS33a 第2の後続歯
TS23a1,TS23b1 面取り部
TS3,TS3A,TS3B〜TS3D,TS33a 第2の後続歯(仕上げ歯)、 TS3a,TS3Aa,TS3Ba〜TS3Da,TS23aa,TS23ba TS33b 第3の後続歯
TS33aa,TS33ba 仕上げ面部
TS33ac,TS33bc 掬い面
V 走行方向
Wa,Wb,Wc,WaBa,WaBb,WaCa〜WaCc,Wba,Wbb W2a,W2b,W2c,W3a,W3b,W3c 幅
θa,θb〜θc 側逃げ角、 θba 角度
αa,αb,αc,αc1,αc2 横逃げ角
βa,βb 横掬い角
Claims (11)
- 先端の左右の稜線部に面取り部を有する直歯なる先行歯と、
歯高が前記先行歯より低く、前記先行歯に対し左右両側に振り出したバチ型の第1の後続歯と、
歯高が前記第1の後続歯よりも低く、前記第1の後続歯に対し左右両側に振り出した仕上げ面部を有すると共に前記仕上げ面部が横断面形状で高さ方向に延びる中心軸線と平行となるよう形成されている第2の後続歯と、
がこの順で設けられた歯群を、繰り返し備え、
前記第2の後続歯は、先端側に前記仕上げ面部を有し前記仕上げ面部に対する根本側に側逃げ角が0°より大きい傾斜面を有している鋸刃。 - 先端の左右の稜線部に面取り部を有する直歯なる複数の先行歯が、歯高が順次低くかつ先端部の幅が順次広くなるよう配列されてなる先行歯群と、
歯高が前記先行歯群の最低の先行歯より低く、前記先行歯群の最大幅に対し左右両側に振り出したバチ型の第1の後続歯と、
歯高が前記第1の後続歯よりも低く、前記第1の後続歯に対し左右両側に振り出した仕上げ面部を有すると共に前記仕上げ面部が横断面形状で高さ方向に延びる中心軸線と平行となるよう形成されている第2の後続歯と、
がこの順で設けられた歯群を、繰り返し備え、
前記第2の後続歯は、先端側に前記仕上げ面部を有し前記仕上げ面部に対する根本側に側逃げ角が0°より大きい傾斜面を有している鋸刃。 - 前記仕上げ面部の前記第1の後続歯に対する振り出し量が、0.01mm以上0.05mm以下とされていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の鋸刃。
- 先端の左右の稜線部に面取り部を有する直歯なる先行歯と、
歯高が前記先行歯より低く、前記先行歯に対し左右両側に振り出したバチ型の第1の後続歯と、
歯高が前記第1の後続歯よりも低く、前記第1の後続歯に対し左右の一方側に振り出した第1の仕上げ面部を有すると共に前記第1の仕上げ面部が横断面形状で高さ方向に延びる中心軸線と平行に形成されている第2の後続歯と、
歯高が前記第1の後続歯よりも低く、前記第1の後続歯に対し左右の他方側に振り出した第2の仕上げ面部を有すると共に前記第2の仕上げ面部が横断面形状で前記中心軸線と平行に形成されている第3の後続歯と、
がこの順で設けられた歯群を、繰り返し備え、
前記第2の後続歯及び前記第3の後続歯は、先端側にそれぞれ前記第1の仕上げ面部及び前記第2の仕上げ面部を有し、前記第1の仕上げ面部及び前記第2の仕上げ面部それぞれに対する根本側に側逃げ角が0°より大きい第1の傾斜面及び第2の傾斜面を有している鋸刃。 - 先端の左右の稜線部に面取り部を有する直歯なる複数の先行歯が、歯高が順次低くかつ先端部の幅が順次広くなるよう配列されてなる先行歯群と、
歯高が前記先行歯群の最低の先行歯より低く、前記先行歯群の最大幅に対し左右両側に振り出したバチ型の第1の後続歯と、
歯高が前記第1の後続歯よりも低く、前記第1の後続歯に対し左右の一方側に振り出した第1の仕上げ面部を有すると共に前記第1の仕上げ面部が横断面形状で高さ方向に延びる中心軸線と平行に形成されている第2の後続歯と、
歯高が前記第1の後続歯よりも低く、前記第1の後続歯に対し左右の他方側に振り出した第2の仕上げ面部を有すると共に前記第2の仕上げ面部が横断面形状で前記中心軸線と平行に形成されている第3の後続歯と、
がこの順で設けられた歯群を、繰り返し備え、
前記第2の後続歯及び前記第3の後続歯は、先端側にそれぞれ前記第1の仕上げ面部及び前記第2の仕上げ面部を有し、前記第1の仕上げ面部及び前記第2の仕上げ面部それぞれに対する根本側に側逃げ角が0°より大きい第1の傾斜面及び第2の傾斜面を有している鋸刃。 - 前記第1の仕上げ面部及び前記第2の仕上げ面部の前記第1の後続歯に対する振り出し量が、0.01mm以上0.05mm以下とされていることを特徴とする請求項4又は請求項5記載の鋸刃。
- 前記第2及び第3の後続歯は、掬い面が正値の横掬い角で傾斜形成されていることを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載の鋸刃。
- 前記仕上げ面部は、切削方向先頭側の歯高方向の距離よりも後尾側の歯高方向の距離の方が大きくなるよう形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の鋸刃。
- 前記第1の仕上げ面部及び前記第2の仕上げ面部は、切削方向先頭側の歯高方向の距離よりも後尾側の歯高方向の距離の方が大きくなるよう形成されていることを特徴とする請求項4〜7のいずれか1項に記載の鋸刃。
- 鋸刃を用いた被切断材の切断方法であって、
前記鋸刃として請求項8記載の鋸刃を用い、
前記仕上げ面部の前記切削方向先頭側の歯高方向の距離をA1とし、
前記歯群あたりの送り量をfzとしたときに、
fz<A1
として切断を行うことを特徴とする鋸刃を用いた被切断材の切断方法。 - 鋸刃を用いた被切断材の切断方法であって、
前記鋸刃として請求項9記載の鋸刃を用い、
前記第1の仕上げ面部の前記高さ方向の距離と前記第2の仕上げ面部の前記高さ方向の距離とが等しい場合はその距離を距離A1とし、等しくない場合は小さい方の距離を距離A1とし、
前記歯群あたりの送り量をfzとしたときに、
fz<A1
として切断を行うことを特徴とする鋸刃を用いた被切断材の切断方法。
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