JP6250340B2 - 正孔輸送材料、エレクトロルミネッセンス素子および薄膜太陽電池 - Google Patents

正孔輸送材料、エレクトロルミネッセンス素子および薄膜太陽電池 Download PDF

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Description

本発明は、導電性高分子を構成材料として含む正孔輸送材料、その正孔輸送材料で構成した正孔輸送層を有するエレクトロルミネッセンス素子および薄膜太陽電池に関する。
導電性高分子は、高い導電性を有することから、その高い導電性を利用して、従来からも、タンタル固体電解コンデンサ、アルミニウム固体電解コンデンサなどの固体電解コンデンサの固体電解質として用いられてきたが、最近は、その高い導電性を利用して、エレクトロルミネッセンス素子や薄膜太陽電池の正孔輸送層を構成する正孔輸送材料としての利用が検討されるようになってきた。
そこで、そのような用途に向けて、3,4−エチレンジオキシチオフェンの重合体とポリスチレンスルホン酸に由来するポリマーアニオンとを含む導電性高分子が提案されている(特許文献1)。
しかしながら、エレクトロルミネッセンス素子や薄膜太陽電池の特性上の要請はますます高くなり、上記提案の導電性高分子よりもさらにエレクトロルミネッセンス素子や薄膜太陽電池の正孔輸送層の構成材料として適する正孔輸送材料の出現が望まれている。
特開2002−12647号公報
本発明は、上記のような事情に鑑み、より高性能のエレクトロルミネッセンス素子、すなわち、従来品よりも、輝度が高く、かつ外部量子効率、電流効率、電力効率が高いエレクトロルミネッセンス素子や、より高性能の薄膜太陽電池、すなわち、従来品よりも、解放電圧、短絡電流密度、曲線因子、光電変換効率が高い薄膜太陽電池を提供するのに適した正孔輸送材料を提供し、また、上記正孔輸送材料を用いて、上記特性を有するエレクトロルミネッセンス素子および薄膜太陽電池を提供することを目的とする。
本発明は、3,4−エチレンジオキシチオフェン以外の特定のチオフェン系モノマーの重合体と、ドーパントとしてポリスチレンスルホン酸由来のポリマーアニオン以外のポリマーアニオンとを含有する導電性高分子を主材として正孔輸送材料を構成するときは、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するにいたった。
すなわち、本発明は、下記の一般式(1)で表されるチオフェン系モノマーの重合体と、ドーパントとして機能する下記の共重合体に由来するポリマーアニオンとを含む導電性高分子を含む正孔輸送材料に関する。
一般式(1):
(式中、R、Rは、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表し、Xは酸素原子または硫黄原子を表す。ただし、RとRが共に水素原子であって、Xが酸素原子である場合を除く)
共重合体:
スチレンスルホン酸と、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステルおよび不飽和炭化水素含有アルコキシシラン化合物またはその加水分解物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の非スルホン酸系モノマーとの共重合体。
また、本発明は、上記の正孔輸送材料で構成した正孔輸送層を有するエレクトロルミネッセンス素子および薄膜太陽電池に関する。
本発明の正孔輸送材料で形成した正孔輸送層は、エレクトロルミネッセンス素子では、該正孔輸送層を通過する正孔を発光層で高効率で電子と結合させるので、同じ供給電力で比較した場合、従来品に比べて、より輝度が高く、かつ外部量子効率、電流効率、電力効率の高いエレクトロルミネッセンス素子を提供することができる。また、薄膜太陽電池では、本発明の正孔輸送材料で構成した正孔輸送層は、光電変換層で発生した正孔を均一に通過させることができるので、同量の入力光量で比較した場合、従来品に比べて、解放電圧、短絡電流密度、曲線因子、光電変換効率が高い薄膜太陽電池を提供することができる。
本発明の正孔輸送材料が、エレクトロルミネッセンス素子や薄膜太陽電池において上記のような効果を奏するのは、本発明の正孔輸送材料が、その主材をなす導電性高分子を構成する重合体とポリマーアニオンとの特異性に基づき、従来品に比べて、緻密な膜を形成することができ、正孔輸送層を均一な薄膜状に形成することができるので、形成される正孔輸送層の表面粗さが小さくなり、それによって、正孔の輸送速度にばらつきが少なくなることと、本発明の正孔輸送材料の透明導電膜や発光層、活性層(光電変換層)などへの密着性が強いことから、それらの界面における正孔輸送のロスが少なくなったことによるものと考えられる。
本発明の正孔輸送材料は、上記のように重合体とポリマーアニオンとに特徴を有するので、まず、重合体の構成から説明する。
上記重合体は、下記の一般式(1)で表されるチオフェン系モノマーの重合体で構成される。
一般式(1):
(式中、R、Rは、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表し、Xは酸素原子または硫黄原子を表す。ただし、RとRが共に水素原子であって、Xが酸素原子である場合を除く)
上記一般式(1)で表されるチオフェン系モノマーのうち、最もよく知られた化合物は、R、Rが共に水素原子であって、Xが酸素原子のものであり(ただし、本発明では、後記の理由により、R、Rが共に水素原子であり、Xが酸素原子である化合物は用いない)この化合物は、IUPAC名称で表示すると、「2,3−ジヒドローチエノ〔3,4−b〕〔1,4〕ジオキシン(2,3−Dihydro−thieno〔3,4−b〕〔1,4〕dioxine)」であるが、この化合物は、IUPAC名称で表示されるよりも、一般名称の「3,4−エチレンジオキシチオフェン」とか、その「3,4−」の部分を省略して、「エチレンジオキシチオフェン」と表示されることが多いので、本書でも、それにならって、一般式(1)で表されるチオフェン系モノマー中の「ジヒドローチエノ〔3,4−b〕〔1,4〕ジオキシン」に該当する部分を「エチレンジオキシチオフェン」と表示する。そして、上記一般式(1)で表されるチオフェン系モノマー中の、R、Rのいずれか一方が水素原子で、他方がアルキル基であり、Xが酸素原子である化合物は、IUPAC名称で表示すると、「2−アルキル−2,3−ジヒドロ−チエノ〔3、4−b〕〔1,4〕ジオキシン」であるが、本書では、これを簡略化して、「アルキル化エチレンジオキシチオフェン」と表示する。
上記のR、Rのうち、いずれか一方が水素原子で、他方がアルキル基で、Xが酸素原子である化合物において、本発明では、そのアルキル基が、炭素数1〜4のもの、つまり、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基であるものを用いるが、これらを具体的に例示すると、アルキル基がメチル基の化合物は、IUPAC名称で表示すると、「2−メチル−2,3−ジヒドロ−チエノ〔3,4−b〕〔1,4〕ジオキシン(2−Methyl−2,3−dihydro−thieno〔3,4−b〕〔1,4〕dioxine)」であるが、以下、これを簡略化して「メチル化エチレンジオキシチオフェン」と表示する。アルキル基がエチル基の化合物は、IUPAC名称で表示すると、「2−エチル−2,3−ジヒドロ−チエノ〔3,4−b〕〔1,4〕ジオキシン(2−Ethyl−2,3−dihydro−thieno〔3,4−b〕〔1,4〕dioxine)」であるが、以下、これを簡略化して「エチル化エチレンジオキシチオフェン」と表示する。アルキル基がプロピル基の化合物は、IUPAC名称で表示すると、「2−プロピル−2,3−ジヒドロ−チエノ〔3,4−b〕〔1,4〕ジオキシン(2−Propyl−2,3−dihydro−thieno〔3,4−b〕〔1,4〕dioxine)」であるが、以下、これを簡略化して「プロピル化エチレンジオキシチオフェン」と表示する。そして、アルキル基がブチル基の化合物は、IUPAC名称で表示すると、「2−ブチル−2,3−ジヒドロ−チエノ〔3,4−b〕〔1,4〕ジオキシン(2−Butyl−2,3−dihydro−thieno〔3,4−b〕〔1,4〕dioxine)」であるが、以下、これを簡略化して「ブチル化エチレンジオキシチオフェン」と表示する。
また、一般式(1)において、R、Rが共に水素原子で、Xが硫黄原子のチオフェン系モノマーは、IUPAC表称で表示すると、「チエノ〔3,4−b〕−1,4−オキサチン」であるが、これも一般名称の「3,4−エチレンオキシチアチオフェン」で表示する。
本発明においては、一般式(1)で表示されるチオフェン系モノマーに関して、上記に例示したもの以外にも、R、Rが共に炭素数1〜4のアルキル基であって、Xが酸素原子のもの、あるいは、Xが硫黄原子のもの、R、Rのうちいずれか一方が水素原子で、他方が炭素数1〜4のアルキル基であり、Xが硫黄原子であるものなどのいずれも使用することができる。
これらの一般式(1)で表されるチオフェン系モノマーは、それぞれ単独で用いることができるし、また、2種類以上を併用することもできる。
そして、本発明においては、一般式(1)で表されるチオフェン系モノマーのうち、R、Rが共に水素原子で、Xが硫黄原子の3,4−エチレンオキシチアチオフェンや、R、Rのうち、いずれか一方が水素原子で、他方が炭素数1〜4のアルキル基で、Xが酸素原子のアルキル化エチレンジオキシチオフェンが好ましく、そのアルキル化エチレンジオキシチオフェンの中でも、特にメチル化エチレンジオキシチオフェンが好ましい。また、上記3,4−エチレンオキシチアチオフェンとアルキル化エチレンジオキシチオフェンとを併用すると、それらをそれぞれ単独で用いる場合より、正孔輸送材料の特性が向上することからより好ましい。そして、この3,4−エチレンオキシチアチオフェンとアルキル化エチレンジオキシチオフェンとを併用する場合、両者の比率は、モル比で、3,4−エチレンオキシチアチオフェン:アルキル化エチレンジオキシチオフェンが0.1:1〜1:0.1の範囲が好ましく、0.3:0.7〜0.7〜0.3の範囲がより好ましい。
本発明においては、前記のように、一般式(1)で表されるチオフェン系モノマーのうち、R、Rが共に水素原子で、Xが酸素原子である3,4−エチレンジオキシチアチオフェンは、導電性高分子を合成するためのモノマーとしては、用いない。これは後記の実施例の項で示すように、3,4−エチレンジオキシチオフェンより、3,4−エチレンオキシチアチオフェンやメチル化エチレンジオキシチオフェンなどのアルキル化エチレンジオキシチオフェンの方が特性が良いからである。
次に、本発明における共重合体について説明すると、この共重合体は、スチレンスルホン酸と、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステルおよび不飽和炭化水素含有アルコキシシラン化合物またはその加水分解物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の非スルホン酸系モノマーとの共重合体で構成され、導電性高分子中においてはポリマーアニオンとして存在し、ドーパントとして機能するものである。
前記のスチレンスルホン酸と、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステルおよび不飽和炭化水素含有アルコキシシラン化合物またはその加水分解物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の非スルホン酸系モノマーとの共重合体(以下、これを「スチレンスルホン酸と非スルホン酸系モノマーとの共重合体」という場合がある)を合成するにあたって、スチレンスルホン酸と共重合させるモノマーとしては、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステルおよび不飽和炭化水素含有アルコキシシラン化合物またはその加水分解物よりなる群から選ばれる少なくとも1種を用いるが、上記メタクリル酸エステルとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ジフェニルブチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸スルホヘキシルナトリウム、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸メチルグリシジル、メタクリル酸ヒドロキシアルキル、すなわち、メタクリル酸ヒドロキシメチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシブチル、メタクリル酸ヒドロキシヘキシル、メタクリル酸ヒドロキシステアリルなどのメタクリル酸ヒドロキシアルキル、メタクリル酸ヒドロキシポリオキシエチレン、メタクリル酸メトキシヒドロキシプロピル、メタクリル酸エトキシヒドロキシプロピル、メタクリル酸ジヒドロキシプロピル、メタクリル酸ジヒドロキシブチルなどを用い得るが、特にメタクリル酸ヒドロキシメチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシブチルなどのアルキル基の炭素数が1〜4のメタクリル酸ヒドロキシアルキルが、スチレンスルホン酸と共重合体化したときのドーパントとしての特性上から好ましい。また、メタクリル酸グリシジルやメタクリル酸メチルグリシジルのようにグリシジル基を含有するものは、グリシジル基が開環することによりヒドロキシル基を含有する構造になることから、グリシジル基を有するものも、メタクリル酸ヒドロキシアルキルと同様にスチレンスルホン酸と共重合体化したときのドーパントとしての特性上から好ましい。
また、上記アクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ジフェニルブチル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジエチルアミノエチル、アクリル酸スルホヘキシルナトリウム、アクリル酸グリシジル、アクリル酸メチルグリシジル、アクリル酸ヒドロキシアルキル、すなわち、アクリル酸ヒドロキシメチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸ヒドロキシブチルなどのアクリル酸ヒドロキシアルキルなどを用い得るが、特にアクリル酸ヒドロキシメチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸ヒドロキシブチルなどのアルキル基の炭素数が1〜4のアクリル酸ヒドロキシアルキルが、スチレンスルホン酸と共重合体化したときのドーパントとしての特性上から好ましい。また、アクリル酸グリシジルやアクリル酸メチルグリシジルのようにグリシジル基を含有するものは、グリシジル基が開環することによりヒドロキシル基を含有する構造になることから、グリシジル基を有するものも、アクリル酸ヒドロキシアルキルと同様にスチレンスルホン酸と共重合体化したときのドーパントとしての特性上から好ましい。
そして、上記不飽和炭化水素含有アルコキシシラン化合物またはその加水分解物としては、例えば、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシメチルジメトキシシラン、3−アクリロキシメチルジエトキシシラン、3−アクリロキシトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、p−スチリルトリエトキシシラン、p−スチリルメチルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシランなどの不飽和炭化水素含有アルコキシシラン化合物やそれらの加水分解物を用いることができる。この不飽和炭化水素含有アルコキシシラン化合物の加水分解物とは、例えば、不飽和炭化水素含有アルコキシシラン化合物が上記3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランの場合は、メトキシ基が加水分解されてヒドロキシル基になった構造である3−メタクリロキシトリヒドロキシシランになるか、またはシラン同士が縮合してオリゴマーを形成し、その反応に利用されていないメトキシ基がヒドロキシル基になった構造を有する化合物になる。そして、この不飽和炭化水素含有アルコキシシラン化合物としては、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどが、スチレンスルホン酸と共重合体化したときのドーパントとしての特性上から好ましい。
このスチレンスルホン酸と、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステルおよび不飽和炭化水素含有アルコキシシラン化合物またはその加水分解物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の非スルホン酸系モノマーとの共重合体における、スチレンスルホン酸と、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステルおよび不飽和炭化水素含有アルコキシシラン化合物またはその加水分解物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の非スルホン酸系モノマーとの比率としては、質量比で、1:0.01〜0.1:1であることが好ましい。
そして、上記スチレンスルホン酸と、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステルおよび不飽和炭化水素含有アルコキシシラン化合物またはその加水分解物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の非スルホン酸系モノマーとの共重合体は、その分子量が、重量平均分子量で5,000〜500,000程度のものが、水溶性およびドーパントとしての特性上から好ましく、重量平均分子量で40,000〜200,000程度のものがより好ましい。
本発明の正孔輸送材料において主材となる導電性高分子は、上記一般式(1)で表されるチオフェン系モノマーを上記共重合体の存在下で酸化重合することによって得られる。上記のように導電性高分子を主材として正孔輸送材料を構成すると表現しているのは、下記の理由に基づいている。つまり、導電性高分子だけで構成される正孔輸送材料を用いて、例えば、エレクトロルミネッセンス素子の正孔輸送層を形成した場合、正孔の輸送速度が陰極からの電子の注入速度より速いため、発光層で正孔と電子が効率よく結合することができず(つまり、発光層に到着した正孔のうちの一部しか電子と結合できない)、その結果、発光が効率よく行われなくなる。そこで、正孔輸送層の正孔の輸送速度を遅くするために、正孔輸送材料に正孔輸送速度調整剤を添加して、正孔の輸送速度と電子の注入速度を合わすことになる。このように、正孔輸送速度調整剤を添加することが導電性高分子を主材として正孔輸送材料を構成すると表現している理由である。しかし、将来的に電子注入層における電子の注入速度が速くなれば、正孔輸送材料に正孔輸送速度調整剤を添加する必要がなくなるので、導電性高分子だけで正孔輸送材料を構成できるようになる。それ故、上記の正孔輸送速度調整剤は必須のものではない。
従って、導電性高分子を主材として正孔輸送材料を構成するとは、導電性高分子だけで正孔輸送材料を構成する場合と、導電性高分子に上記正孔輸送速度調整剤などを添加して正孔輸送材料を構成する場合とを含んでいる。
次に、上記共重合体の存在下で一般式(1)で表されるチオフェン系モノマーを酸化重合して導電性高分子を合成する方法について説明する。上記スチレンスルホン酸と非スルホン酸系モノマーとの共重合体(すなわち、スチレンスルホン酸と、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステルおよび不飽和炭化水素含有アルコキシシラン化合物またはその加水分解物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の非スルホン酸系モノマーとの共重合体)は、水や水と水混和性溶剤との混合物からなる水性液に対して溶解性を有していることから、酸化重合は水中または水性液中で行われる。
上記水性液を構成する水混和性溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、アセトン、アセトニトリルなどが挙げられ、これらの水混和性溶剤の水との混合割合としては、水性液全体中の50質量%以下が好ましい。
導電性高分子を合成するにあたっての酸化重合は、化学酸化重合、電解酸化重合のいずれも採用することができる。
化学酸化重合を行うにあたっての酸化剤としては、例えば、過硫酸塩が用いられるが、その過硫酸塩としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸カルシウム、過硫酸バリウムなどが用いられる。
化学酸化重合において、その重合時の条件は、特に限定されることはないが、化学酸化重合時の温度としては、5℃〜95℃が好ましく、10℃〜30℃がより好ましく、また、重合時間としては、1時間〜72時間が好ましく、8時間〜24時間がより好ましい。
電解酸化重合は、定電流でも定電圧でも行い得るが、例えば、定電流で電解酸化重合を行う場合、電流値としては0.05mA/cm〜10mA/cmが好ましく、0.2mA/cm〜4mA/cmがより好ましく、定電圧で電解酸化重合を行う場合は、電圧としては0.5V〜10Vが好ましく、1.5V〜5Vがより好ましい。電解酸化重合時の温度としては、5℃〜95℃が好ましく、特に10℃〜30℃が好ましい。また、重合時間としては、1時間〜72時間が好ましく、8時間〜24時間がより好ましい。なお、電解酸化重合にあたっては、触媒として硫酸第一鉄または硫酸第二鉄を添加してもよい。
上記のようにして得られる導電性高分子は、重合直後、水中または水性液中に分散した状態で得られ、酸化剤としての過硫酸塩や触媒として用いた硫酸鉄塩やその分解物などを含んでいる。そこで、その不純物を含んでいる導電性高分子の分散液を超音波ホモジナイザーや高圧ホモジナイザーや遊星ボールミルなどの分散機にかけて不純物を分散させた後、カチオン交換樹脂で金属成分を除去することが好ましい。このときの動的光散乱法により測定した導電性高分子の粒径としては、100μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、また、0.01μm以上が好ましく、0.1μm以上がより好ましい。その後、エタノール沈殿法、限外濾過法、陰イオン交換樹脂などにより、酸化剤や触媒の分解により生成したものを除去することが好ましい。
上記のようにして得られる導電性高分子の分散液では、導電性高分子は、一般式(1)で表されるチオフェン系モノマーの重合体と、上記スチレンスルホン酸と非スルホン酸系モノマーとの共重合体に由来するポリマーアニオンとを含んで構成されている。つまり、上記共重合体が一般式(1)で表されるチオフェン系モノマーに由来してカチオン性を有し、そこにドーパントとして機能する上記共重合体に由来するポリマーアニオンが、一般式(1)で表されるチオフェン系モノマーの重合体にドープすることで、重合体から電子を引き抜くことによって重合体に導電性を付与し、それによって導電性高分子が構成されている。
上記のようにして得られた導電性高分子に、現状では、その速すぎる正孔輸送速度を遅くするために正孔輸送速度調整剤を添加して正孔輸送材料を構成する。その正孔輸送速度調整剤の添加は、導電性高分子の分散液に正孔輸送速度調整剤を添加し、乾燥したときに導電性高分子中に正孔輸送速度調整剤が含まれているようにすればよい。
上記正孔輸送速度調整剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルピロリドン、水系ポリエステル樹脂、アクリル変成ポリエステル樹脂、フェノールスルホン酸ノボラック樹脂など、乾燥後に膜を形成するものを用い得るが、意外にも、導電性高分子の合成にあたって用いた上記スチレンスルホン酸と非スルホン酸系モノマーとの共重合体が好ましい。つまり、上記共重合体は、導電性高分子の合成に際してはドーパントとして機能するが、導電性高分子に添加すると、正孔の輸送速度を遅くすることになる。
この正孔輸送速度調整剤の添加量は、電子注入層からの電子の輸送速度にあわせて決めることになるので、絶対的に好ましい量を決めることはできないが、現状では、導電性高分子に対して正孔輸送速度調整剤が質量比で導電性高分子:正孔輸送速度調整剤が1:0.1〜10の範囲になるように添加するのが好ましい。
本発明の正孔輸送材料は、エレクトロルミネッセンス素子や薄膜太陽電池において正孔を適切な速度で輸送する正孔輸送層の構成にあたって用いられるものであるが、本発明の正孔輸送材料を用いて構成した正孔輸送層は電子の通過を阻止する作用も有している。
また、上記導電性高分子の分散液には、正孔輸送層の膜強度を高めるために抵抗値を損なわない範囲でバインダを添加してもよい。そのようなバインダとしては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリエステル、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリイミド、エポキシ樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリメタクリロニトリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ノボラック樹脂、スルホン化ポリアリル、スルホン化ポリビニル、シランカップリング剤などが挙げられる。
本発明において、エレクトロルミネッセンス素子や薄膜太陽電池は、その正孔輸送層が本発明の正孔輸送材料で構成されるということを除いては、従来と同様の構成でよい。
エレクトロルミネッセンス素子は、例えば、陽極と、本発明の正孔輸送材料で構成されている正孔輸送層と、発光層と、電子注入層と、陰極などで構成される。
上記陽極は、例えば、ガラス基板上にインジウム・スズ酸化物(ITO)で構成される透明導電膜をフォトリソグラフとエッチングでストライプ状にパターニングすることによって構成される。
正孔輸送層は、分散液状態にある本発明の正孔輸送材料をスピンコートにより乾燥後の膜厚が20〜40nm程度の厚さになるように塗布し、乾燥することによって形成することが好ましい。
本発明の正孔輸送材料は、それを用いて形成される正孔輸送層の表面粗さのバラツキ(ばらつき)が少ないという特徴を有していて、表面粗さが中心線平均粗さ(Ra)で0.1〜0.5nm程度の厚みのバラツキが少ない正孔輸送層を形成することができる。
従って、本発明の正孔輸送材料を用いて形成した正孔輸送層は、そのほぼ全面において、正孔を輸送する速度が均一になり、該正孔輸送層を通過した正孔は発光層で電子注入層を通過してきた電子と効率よく結合して発色色素を効率よく発光させる。従って、同じ入力電力で比較した場合、本発明のエレクトロルミネッセンス素子は、従来のエレクトロルミネッセンス素子に比べて、輝度が高くなり、外部量子効率、電流効率、電子効率が高くなる。
そして、発光層は、例えば、正孔輸送用材料としてのポリビニルカルバゾールと、電子輸送用材料としての2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールと、蛍光性発色色素を含んで構成される。
電子注入層は、例えば、フッ化リチウムの蒸着膜で構成され、陰極は、例えば、アルミニウムの蒸着膜で構成される。
薄膜太陽電池は、例えば、正極と、本発明の正孔輸送材料で構成される正孔輸送層と、活性層(光電変換層)と、電子注入層と、負極とで構成される。
上記正極、正孔輸送層、電子注入層、負極は、前記エレクトロルミネッセンス素子の場合と同様に構成される。
活性層(光電変換層)は、例えば、電子供与体としてのポリ−3−ヘキシルチオフェンと、電子受容体としてのフラーレン誘導体とをクロロベンゼンに溶解した液をスピンコート法により塗布し、乾燥することによって形成される。
この薄膜太陽電池においても、本発明の正孔輸送材料で構成される正孔輸送層は、薄い膜状であっても均一に形成されているので、入射された光をほぼ均一に活性層へ通過させることができる。その結果、入射した光は、活性層で効率よく電気に変換されるので、本発明の薄膜太陽電池は、同じ入力光量で比較した場合、従来の薄膜太陽電池より、入射した光を有効に活用でき、解放電圧、短絡電流密度、曲線因子、光電交換効率を高くすることができる。
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はそれらの実施例に例示のもののみに限定されることはない。なお、以下の実施例などにおいて、濃度や使用量を示す際の%は、特にその基準を付記しないかぎり、質量基準による%である。
実施例は、正孔輸送材料、エレクトロルミネッセンス素子、薄膜太陽電池の順に説明するが、それらの実施例の説明に先立ち、正孔輸送材料の主材をなす導電性高分子の製造にあたって用いるチオフェン系モノマーの製造例、その導電性高分子のドーパントを構成することになるスチレンスルホン酸と非スルホン酸系モノマーとの共重合体の製造例について先に説明する。
チオフェン系モノマーの製造例1
このチオフェン系モノマーの製造例1では、3,4−エチレンオキシチアチオフェン(すなわち、チエノ〔3,4−b〕−1,4−オキサチアン)の製造について説明する。この3,4−エチレンオキシチアチオフェンは、一般式(1)において、RとRが共に水素原子で、Xが硫黄原子であるものに該当する。
還流器付き反応容器に3,4−ジメトキシチオフェン433g(3.0モル)とトルエン3,400gを入れ、10分間撹拌し、その中にp-トルエンスルホン酸57g(3.0モル)を添加して混合した。
上記の混合物を撹拌しながら、その混合物に2-メルカプトエタノール933kg(9.0モル)を添加し、容器内の温度を110℃に保ち、還流をしながら混合物を12時間撹拌した。反応終了液を70℃まで冷却し、炭酸水素ナトリウム378g(4.5モル)を加えた後、室温まで冷却した。
反応終了液に純水3,400gを添加し、よく撹拌後、12時間静置し、反応液を水相と有機相の2層に分離した。そのうち、有機相を抜き取り、トルエンをエバポレーターにて除去し、赤褐色の液体を得た。
得られた赤褐色の液体にトルエン2,000gと純水2,000gを入れ、室温でよく撹拌後、12時間静置し、有機相を抜き取り、トルエンをエバポレーターにて除去して、赤褐色の液体を得た。
上記工程を経て得られた赤褐色の液体を20hPaで、徐々に温度を上げながら蒸留して、水、トルエンと初留を留出させ、その後、本留として3,4−エチレンオキシチアチオフェンを373g(2.4モル)得た。収率は78%であった。
チオフェン系モノマーの製造例2
このチオフェン系モノマーの製造例2では、メチル化エチレンジオキシチオフェン(すなわち、2−メチル−2,3−ジヒドロ−チエノ〔3,4−b〕〔1,4〕ジオキシン)の製造例について説明する。
このメチル化エチレンジオキシチオフェンは、一般式(1)において、R、Rのいずれか一方が水素原子で、他方がメチル基であり、Xが酸素原子であるものに該当するものである。そして、このメチル化エチレンジオキシチオフェンの製造は、次の(1)〜(3)の合成工程を経て製造する。
(1) プロパン−1,2−ジイル−ビス(4−メチルベンゼンスルホネート)の合成
氷冷下、反応容器にトシルクロリド7.86kg(40モル)と1,2−ジクロロエタン7kgを入れ、容器内の温度が10℃になるまで攪拌し、その中にトリエチルアミン5.11kg(50モル)を滴下した。
上記の混合物を攪拌しながら、その混合物に容器内の温度が40℃を超えないようにしつつ1,2−プロパンジオール1.55kg(20モル)を60分かけて注意深く滴下し、容器内の温度を40℃に保ちながら混合物を6時間攪拌した。
反応終了液を室温まで冷却し、水4kgを加えて攪拌し、その後、静置した。反応終了液を水相と有機相の2層に分け、有機相を濃縮して、黒赤色オイル状物を得た。
氷冷下、反応容器にメタノール500gを入れて攪拌し、そこに上記のようにして得た黒赤色オイル状物を滴下しながら攪拌し、沈殿する白色固体を濾取した。その白色固体を少量のメタノールで洗浄した後、乾燥して、生成物としてプロパン−1,2−ジイル−ビス(4−メチルベンゼンスルホネート)を3.87kg得た。
(2) 2−メチル−2,3−ジヒドロ−チエノ〔3,4−b〕〔1,4〕ジオキシン−5,7−ジカルボキシリックアシッドの合成
反応容器にジソジウム−2,5−ビス(アルコキシカルボニル)チオフェン−3,4−ジオレート508g(1.67モル)と、上記(1)で得たプロパン−1,2−ジイル−ビス(4−メチルベンゼンスルホネート)960g(2.5モル)と、炭酸カリウム46g(0.33モル)と、ジメチルホルムアミド2.5kgとを入れ、容器内の温度を120℃に保ちながら混合物を4時間攪拌した。
反応終了液を濃縮し、残留した茶色固体に5%炭酸水素ナトリウム水溶液3.7kgを入れ、室温で15分間攪拌して茶色固体を濾取した。反応容器に濾取した茶色固体と7%水酸化ナトリウム水溶液2.47kgを入れて、容器内の温度を80℃に保ちながら2時間攪拌した。
容器内が室温になるまで冷却し、容器内の温度が30℃を超えないようにしつつ反応終了液に98%硫酸(759g)を注意深く滴下し、容器内の温度を80℃に保ちながら2時間攪拌した。
容器内が室温になるまで攪拌しながら冷却し、沈殿する灰色固体を濾取した。さらに、反応終了液を冷却して灰色固体を濾取した。それらの灰色固体を少量の水で洗浄した後、乾燥して、生成物として2−メチル−2,3−ジヒドロ−チエノ〔3,4−b〕〔1,4〕ジオキシン−5,7−ジカルボキシリックアシッドを310g得た。
(3) メチル化エチレンジオキシチオフェン(2−メチル−2,3−ジヒドロ−チエノ〔3,4−b〕〔1,4〕ジオキシン)の合成
上記(2)で得た2−メチル−2,3−ジヒドロ−チエノ〔3,4−b〕〔1,4〕ジオキシン−5,7−ジカルボキシリックアシッド880g(3.6モル)を反応容器内で3kgのポリエチレングリコール300(林純薬工業社製)に溶解し、酸化銅176gを加え、混合物を内圧20hPaで、徐々に温度を上げながら蒸留し、水と初留を留出させ、ポリエチレングリコール300を含有する本留に水400gを加えて攪拌し、静置した。
2層に分れた溶液を分液し、そのうちの下層の黄色透明液体を生成物のメチル化エチレンジオキシチオフェンとして345g得た。
次に導電性高分子の製造にあたって用いるスチレンスルホン酸と非スルホン酸系モノマーとの共重合体の製造例について説明する。この共重合体は導電性高分子においてドーパントとして機能するポリマーアニオンを生じるものである。
共重合体の製造例1
〔共重合体(スチレンスルホン酸:メタクリル酸ヒドロキシエチル=9:1)の製造〕
この製造例1では、使用開始時のモノマーがスチレンスルホン酸とメタクリル酸エステルとしてのメタクリル酸ヒドロキシエチルとであって、それらの比率が質量比で9:1の共重合体の製造について説明する。なお、以下の共重合体の製造例などにおいても、共重合体の組成の表示にあたっては、使用開始時のモノマーの質量比で表示する。
2Lの攪拌機付きセパラブルフラスコに1Lの純水を添加し、そこにスチレンスルホン酸ナトリウム201.5g(スチレンスルホン酸として180g)とメタクリル酸ヒドロキシエチル20gを添加した。そして、その溶液に酸化剤として、過硫酸アンモニウムを1g添加して、スチレンスルホン酸とメタクリル酸ヒドロキシルとの重合反応を12時間行った。
その後、その反応液にオルガノ社製のカチオン交換樹脂〔アンバーライト120B(商品名)〕を100g添加して、1時間撹拌機で撹拌し、次いで、東洋濾紙社製の濾紙No.131で濾過し、このカチオン交換樹脂による処理と濾過を3回繰り返して、液中のカチオン成分をすべて除去した。
得られたスチレンスルホン酸とメタクリル酸ヒドロキシエチルとの共重合体について、GPC(Gel Permeation Chromatography:ゲル濾過クロマトグラフィーであるが、以下、「GPC」のみで示す)カラムを用いたHPLC(High performance liquid chromatography:高速液体クロマトグラフィーであるが、以下、「HPLC」のみで示す)システムを用いて分析を行った結果、上記共重合体のデキストランを標品として見積もった重量平均分子量は、100,000であった。
共重合体の製造例2
〔共重合体(スチレンスルホン酸:アクリル酸ヒドロキシエチル=8:2)の製造〕
この製造例2では、スチレンスルホン酸とアクリル酸ヒドロキシエチルとの質量比が8:2の共重合体の製造について説明する。
2Lの攪拌機付きセパラブルフラスコに1Lの純水を添加し、そこにスチレンスルホン酸ナトリウム173.5g(スチレンスルホン酸として155g)とアクリル酸ヒドロキシエチル33gを添加した。そして、その溶液に過硫酸アンモニウムを1g添加して、スチレンスルホン酸とアクリル酸ヒドロキシエチルとの重合反応を12時間行った。
その後、その反応液にオルガノ社製のカチオン交換樹脂〔アンバーライト120B(商品名)〕を100g添加して、1時間撹拌機で撹拌し、次いで、東洋濾紙社製の濾紙No.131で濾過し、このカチオン交換樹脂による処理と濾過を3回繰り返して、液中のカチオン成分をすべて除去した。
得られたスチレンスルホン酸とアクリル酸ヒドロキシエチルとの共重合体について、GPCカラムを用いたHPLCシステムを用いて分析を行った結果、上記共重合体のデキストランを標品として見積もった重量平均分子量は、90,000であった。
共重合体の製造例3
〔共重合体(スチレンスルホン酸:3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン=9:1)の製造〕
この製造例3では、スチレンスルホン酸と3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランとの質量比が9:1の共重合体の製造について説明する。
2Lの攪拌機付きセパラブルフラスコに1Lの純水を添加し、そこにスチレンスルホン酸ナトリウム201.5g(スチレンスルホン酸として180g)と3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン20gを添加した。そして、その溶液に過硫酸アンモニウムを1g添加して、スチレンスルホン酸と3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランの重合反応を12時間行った。
その後、その反応液にオルガノ社製のカチオン交換樹脂〔アンバーライト120B(商品名)〕を100g添加して、1時間撹拌機で撹拌し、次いで、東洋濾紙社製の濾紙No.131で濾過し、このカチオン交換樹脂による処理と濾過を3回繰り返して、液中のカチオン成分をすべて除去した。
得られたスチレンスルホン酸と3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランとの共重合体について、GPCカラムを用いたHPLCシステムを用いて分析を行った結果、上記共重合体のデキストランを標品として見積もった重量平均分子量は、70,000であった。
共重合体の製造例4
〔共重合体(スチレンスルホン酸:3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン=8:2)の製造〕
この製造例4では、スチレンスルホン酸と3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランとの質量比が9:1の共重合体の製造について説明する。
2Lの攪拌機付きセパラブルフラスコに1Lの純水を添加し、そこにスチレンスルホン酸ナトリウム201.5g(スチレンスルホン酸として180g)と3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン20gを添加した。そして、その溶液に過硫酸アンモニウムを1g添加して、スチレンスルホン酸とビニルトリメトキシシランの重合反応を12時間行った。
その後、その反応液にオルガノ社製のカチオン交換樹脂〔アンバーライト120B(商品名)〕を100g添加して、1時間撹拌機で撹拌し、次いで、東洋濾紙社製の濾紙No.131で濾過し、このカチオン交換樹脂による処理と濾過を3回繰り返して、液中のカチオン成分をすべて除去した。
得られたスチレンスルホン酸と3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランとの共重合体について、GPCカラムを用いたHPLCシステムを用いて分析を行った結果、上記共重合体のデキストランを標品として見積もった重量平均分子量は、80,000であった。
次に正孔輸送材料の実施例を実施例1〜24で説明するが、この正孔輸送材料は分散液の状態で製造し、その特性については、表面抵抗と表面粗さのみ、この正孔輸送材料の実施例のところで測定し、その他の特性は、その正孔輸送材料を用いて、エレクトロルミネッセンス素子や薄膜太陽電池の正孔輸送層を構成し、その正孔輸送層を用いたエレクトロルミネッセンス素子や薄膜太陽電池の特性として評価する。
実施例1
共重合体の製造例1で得たスチレンスルホン酸とメタクリル酸ヒドロキシエチルとの質量比が9:1の共重合体の4%水溶液600gを内容積1Lのステンレス鋼製容器に入れ、そこに触媒として硫酸第一鉄・7水和物を0.3g添加して溶解した。その中にチオフェン系モノマーの製造例1で製造した3,4−エチレンオキシチアチオフェンを4mLゆっくり滴下した。ステンレス鋼製の撹拌バネで撹拌し、容器に陽極を取り付け、撹拌バネに陰極を取り付け、1mA/cm2の定電流で18時間電解酸化重合して、導電性高分子を合成した。上記電解酸化重合後、水で4倍に希釈した後、超音波ホモジナイザー〔日本精機社製、US−T300(商品名)〕で30分間分散処理を行った。
その後、オルガノ社のカチオン交換樹脂〔アーバンライト120B(商品名)〕を100g添加して、1時間攪拌機で撹拌し、次いで、東洋濾紙社製の濾紙No.131で濾過し、このカチオン交換樹脂による処理と濾過を3回繰り返して、液中のカチオン成分をすべて除去した。
上記処理後の液を孔径1μmのフィルターに通し、その通過液を限外濾過装置〔ザルトリウス社製Vivaflow200(商品名)、分子量分画5万〕で処理して、液中の遊離の低分子成分を除去した。この処理後の液を水で希釈して、導電性高分子の濃度を1.5%に調整し、導電性高分子の濃度が1.5%の分散液を得た。
この導電性高分子の分散液に正孔輸送材料として用いたときに正孔の輸送速度を調整するための正孔輸送速度調整剤として上記導電性高分子の合成にあたってドーパントとして用いた共重合体と同様の共重合体(すなわち、スチレンスルホン酸とメタクリル酸ヒドロキシエチルとの質量比が9:1の共重合体)を質量比で導電性高分子:共重合体=1:3の混合比となるように添加して混合した後、固形分濃度が0.8%になるまで純水で希釈して、正孔輸送材料の分散液を得た。
得られた正孔輸送材料の分散液をスピンコート(3,000rpm、60秒)で6cm×6cmのガラス基板に塗布した後、130℃で5分間乾燥して、正孔輸送材料の厚みが30nmの薄膜を形成した。この正孔輸送材料膜の表面抵抗を三菱化学アナリテック社製ハイレスターUP〔MCP−HT450型、リングプローブ(URS)〕により測定したところ、2.1×1010Ωであり、ナノスケールハイブリッド顕微鏡(キーエンス社製VN−8000)で測定した表面粗さ(Ra)は、0.4nmであった。なお、上記の「表面粗さ(Ra)」は表面粗さが中心線平均粗さによるものであることを示している。また、以下の実施例2〜12および比較例1〜4で形成する正孔輸送材料膜の厚みはこの実施例1の場合と同様に30nmであり、表面抵抗や表面粗さ(Ra)の測定時の温度はいずれの場合も25℃である。
実施例2
チオフェン系モノマーの製造例1で製造した3,4−エチレンオキシチアチオフェンに代えて、チオフェン系モノマーの製造例2で製造したメチル化エチレンジオキシチオフェンを用いた以外は、すべて実施例1と同様の操作を行って、正孔輸送材料の分散液を得た。
得られた正孔輸送材料の分散液をスピンコート(3,000rpm、60秒)で6cm×6cmのガラス基板に塗布した後、130℃で5分間乾燥して、正孔輸送材料の薄膜を形成した。この正孔輸送材料膜の表面抵抗を実施例1と同様に測定したところ、2.8×1010Ωであり、ナノスケールハイブリッド顕微鏡(キーエンス社製VN−8000)で測定した表面粗さ(Ra)は、0.5nmであった。
実施例3
チオフェン系モノマーの製造例1で製造した3,4−エチレンオキシチアチオフェンに代えて、チオフェン系モノマーの製造例1で製造した3,4−エチレンオキシチアチオフェンとチオフェン系モノマーの製造例2で製造したメチル化エチレンジオキシチオフェンとをモル比1:1で混合したモノマー溶液を用いた以外は、すべて実施例1と同様の操作を行って、正孔輸送材料の分散液を得た。
得られた正孔輸送材料の分散液をスピンコート(3,000rpm、60秒)で6cm×6cmのガラス基板に塗布した後、130℃で5分間乾燥して、正孔輸送材料の薄膜を形成した。この正孔輸送材料膜の表面抵抗を実施例1と同様に測定したところ、1.5×1010Ωであり、ナノスケールハイブリッド顕微鏡(キーエンス社製VN−8000)で測定した表面粗さ(Ra)は、0.4nmであった。
実施例4
共重合体の製造例1で得たスチレンスルホン酸とメタクリル酸ヒドロキシエチルとの質量比が9:1の共重合体に代えて、共重合体の製造例2で得たスチレンスルホン酸とアクリル酸ヒドロキシエチルとの質量比が8:2の共重合体を用いた以外は、すべて実施例1と同様の操作を行って、正孔輸送材料の分散液を得た。
得られた正孔輸送材料の分散液をスピンコート(3,000rpm、60秒)で6cm×6cmのガラス基板に塗布した後、130℃で5分間乾燥して、正孔輸送材料の薄膜を形成した。この正孔輸送材料膜の表面抵抗を実施例1と同様に測定したところ、3.6×1010Ωであり、ナノスケールハイブリッド顕微鏡(キーエンス社製VN−8000)で測定した表面粗さ(Ra)は、0.4nmであった。
実施例5
共重合体の製造例1で得たスチレンスルホン酸とメタクリル酸ヒドロキシエチルとの質量比が9:1の共重合体に代えて、共重合体の製造例2で得たスチレンスルホン酸とアクリル酸ヒドロキシエチルとの質量比が8:2の共重合体を用いた以外は、すべて実施例2と同様の操作を行って、正孔輸送材料の分散液を得た。
得られた正孔輸送材料の分散液をスピンコート(3,000rpm、60秒)で6cm×6cmのガラス基板に塗布した後、130℃で5分間乾燥して、正孔輸送材料の薄膜を形成した。この正孔輸送材料膜の表面抵抗を実施例1と同様に測定したところ、3.1×1010Ωであり、ナノスケールハイブリッド顕微鏡(キーエンス社製VN−8000)で測定した表面粗さ(Ra)は、0.5nmであった。
実施例6
共重合体の製造例1で得たスチレンスルホン酸とメタクリル酸ヒドロキシエチルとの質量比が9:1の共重合体に代えて、共重合体の製造例2で得たスチレンスルホン酸とアクリル酸ヒドロキシエチルとの質量比が8:2の共重合体を用いた以外は、すべて実施例3と同様の操作を行って、正孔輸送材料の分散液を得た。
得られた正孔輸送材料の分散液をスピンコート(3,000rpm、60秒)で6cm×6cmのガラス基板に塗布した後、130℃で5分間乾燥して、正孔輸送材料の薄膜を形成した。この正孔輸送材料膜の表面抵抗を実施例1と同様に測定したところ、2.2×1010Ωであり、ナノスケールハイブリッド顕微鏡(キーエンス社製VN−8000)で測定した表面粗さ(Ra)は、0.4nmであった。
実施例7
共重合体の製造例1で得たスチレンスルホン酸とメタクリル酸ヒドロキシエチルとの質量比が9:1の共重合体に代えて、共重合体の製造例3で得たスチレンスルホン酸と3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランとの質量比が9:1の共重合体を用いた以外は、すべて実施例1と同様の操作を行って、正孔輸送材料の分散液を得た。
得られた正孔輸送材料の分散液をスピンコート(3,000rpm、60秒)で6cm×6cmのガラス基板に塗布した後、130℃で5分間乾燥して、正孔輸送材料の薄膜を形成した。この正孔輸送材料膜の表面抵抗を実施例1と同様に測定したところ、4.4×1010Ωであり、ナノスケールハイブリッド顕微鏡(キーエンス社製VN−8000)で測定した表面粗さ(Ra)は、0.5nmであった。
実施例8
共重合体の製造例1で得たスチレンスルホン酸とメタクリル酸ヒドロキシエチルとの質量比が9:1の共重合体に代えて、共重合体の製造例3で得たスチレンスルホン酸と3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランとの質量比が9:1の共重合体を用いた以外は、すべて実施例2と同様の操作を行って、正孔輸送材料の分散液を得た。
得られた正孔輸送材料の分散液をスピンコート(3,000rpm、60秒)で6cm×6cmのガラス基板に塗布した後、130℃で5分間乾燥して、正孔輸送材料の薄膜を形成した。この正孔輸送材料膜の表面抵抗を実施例1と同様に測定したところ、2.7×1010Ωであり、ナノスケールハイブリッド顕微鏡(キーエンス社製VN−8000)で測定した表面粗さ(Ra)は、0.4nmであった。
実施例9
共重合体の製造例1で得たスチレンスルホン酸とメタクリル酸ヒドロキシエチルとの質量比が9:1の共重合体に代えて、共重合体の製造例3で得たスチレンスルホン酸と3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランとの質量比が9:1の共重合体を用いた以外は、すべて実施例3と同様の操作を行って、正孔輸送材料の分散液を得た。
得られた正孔輸送材料の分散液をスピンコート(3,000rpm、60秒)で6cm×6cmのガラス基板に塗布した後、130℃で5分間乾燥して、正孔輸送材料の薄膜を形成した。この正孔輸送材料膜の表面抵抗を実施例1と同様に測定したところ、2.0×1010Ωであり、ナノスケールハイブリッド顕微鏡(キーエンス社製VN−8000)で測定した表面粗さ(Ra)は、0.4nmであった。
実施例10
共重合体の製造例1で得たスチレンスルホン酸とメタクリル酸ヒドロキシエチルとの質量比が9:1の共重合体に代えて、共重合体の製造例4で得たスチレンスルホン酸と3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランとの質量比が8:2の共重合体を用いた以外は、すべて実施例1と同様の操作を行って、正孔輸送材料の分散液を得た。
得られた正孔輸送材料の分散液をスピンコート(3,000rpm、60秒)で6cm×6cmのガラス基板に塗布した後、130℃で5分間乾燥して、正孔輸送材料の薄膜を形成した。この正孔輸送材料膜の表面抵抗を実施例1と同様に測定したところ、3.9×1010Ωであり、ナノスケールハイブリッド顕微鏡(キーエンス社製VN−8000)で測定した表面粗さ(Ra)は、0.4nmであった。
実施例11
共重合体ポリマーアニオンの製造例1で得たスチレンスルホン酸とメタクリル酸ヒドロキシエチルとの質量比が9:1の共重合体に代えて、共重合体の製造例4で得たスチレンスルホン酸と3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランとの質量比が8:2の共重合体を用いた以外は、すべて実施例2と同様の操作を行って、正孔輸送材料の分散液を得た。
得られた正孔輸送材料の分散液をスピンコート(3,000rpm、60秒)で6cm×6cmのガラス基板に塗布した後、130℃で5分間乾燥して、正孔輸送材料の薄膜を形成した。この正孔輸送材料膜の表面抵抗を実施例1と同様に測定したところ、1.9×1010Ωであり、ナノスケールハイブリッド顕微鏡(キーエンス社製VN−8000)で測定した表面粗さ(Ra)は、0.5nmであった。
実施例12
共重合体の製造例1で得たスチレンスルホン酸とメタクリル酸ヒドロキシエチルとの質量比が9:1の共重合体に代えて、共重合体の製造例4で得たスチレンスルホン酸と3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランとの質量比が8:2の共重合体を用いた以外は、すべて実施例3と同様の操作を行って、正孔輸送材料の分散液を得た。
得られた正孔輸送材料の分散液をスピンコート(3,000rpm、60秒)で6cm×6cmのガラス基板に塗布した後、130℃で5分間乾燥して、正孔輸送材料の薄膜を形成した。この正孔輸送材料膜の表面抵抗を実施例1と同様に測定したところ、2.7×1010Ωであり、ナノスケールハイブリッド顕微鏡(キーエンス社製VN−8000)で測定した表面粗さ(Ra)は、0.4nmであった。
比較例1
テイカ株式会社製の重量平均分子量10万のポリスチレンスルホン酸の4%水溶液600gを内容積1Lのステンレス鋼製容器に入れ、そこに触媒として硫酸第一鉄・7水和物を0.3g添加して溶解した。その中に3,4−エチレンジオキシチオフェンを4mLゆっくり滴下した。ステンレス鋼製の撹拌バネで撹拌し、容器に陽極を取り付け、撹拌バネに陰極を取り付け、1mA/cm2の定電流で18時間電解酸化重合して、導電性高分子を合成した。上記電解酸化重合後、水で4倍に希釈した後、超音波ホモジナイザー〔日本精機社製、US−T300(商品名)〕で30分間分散処理を行った。
その後、オルガノ社製のカチオン交換樹脂〔アーバンライト120B(商品名)〕を100g添加して、1時間攪拌機で撹拌し、次いで、東洋濾紙社製の濾紙No.131で濾過し、このカチオン交換樹脂による処理と濾過を3回繰り返して、液中のカチオン成分をすべて除去した。
上記処理後の液を孔径1μmのフィルターに通し、その通過液を限外濾過装置〔ザルトリウス社製Vivaflow200(商品名)、分子量分画5万〕で処理して、液中の遊離の低分子成分を除去した。この処理後の液を水で希釈して導電性高分子の濃度を0.8%に調整し、導電性高分子の濃度が0.8%の分散液を得た。
上記導電性高分子の分散液にポリスチレンスルホン酸を質量比で導電性高分子:ポリスチレンスルホン酸=1:3になるように添加して混合し、固形分濃度が0.8%になるまで純水で希釈して、正孔輸送材料の分散液を得た。
得られた正孔輸送材料の分散液をスピンコート(3,000rpm、60秒)で6cm×6cmのガラス基板に塗布した後、130℃で5分間乾燥して、正孔輸送材料の薄膜を形成した。この正孔輸送材料膜の表面抵抗を実施例1と同様に測定したところ、1.3×1010Ωであり、ナノスケールハイブリッド顕微鏡(キーエンス社製VN−8000)で測定した表面粗さ(Ra)は、0.8nmであった。
比較例2
3,4−エチレンジオキシチオフェンに代えて、チオフェン系モノマーの製造例1で製造した3,4−エチレンオキシチアチオフェンを用いた以外は、すべて比較例1と同様の操作を行って、正孔輸送材料の分散液を得た。
得られた正孔輸送材料の分散液をスピンコート(3,000rpm、60秒)で6cm×6cmのガラス基板に塗布した後、130℃で5分間乾燥して、正孔輸送材料の薄膜を形成した。この正孔輸送材料膜の表面抵抗を実施例1と同様に測定したところ、5.6×1010Ωであり、ナノスケールハイブリッド顕微鏡(キーエンス社製VN−8000)で測定した表面粗さ(Ra)は、0.8nmであった。
比較例3
3,4−エチレンジオキシチオフェンに代えて、チオフェン系モノマーの製造例2で製造したメチル化エチレンジオキシチオフェンを用いたほかは、すべて比較例1と同様の操作を行って、正孔輸送材料の分散液を得た。
得られた正孔輸送材料の分散液をスピンコート(3,000rpm、60秒)で6cm×6cmのガラス基板に塗布した後、130℃で5分間乾燥して、正孔輸送材料の薄膜を形成した。この正孔輸送材料膜の表面抵抗を実施例1と同様に測定したところ、1.5×1010Ωであり、ナノスケールハイブリッド顕微鏡(キーエンス社製VN−8000)で測定した表面粗さ(Ra)は、0.7nmであった。
比較例4
チオフェン系モノマーの製造例1で製造した3,4−エチレンオキシチアチオフェンに代えて、3,4−エチレンジオキシチオフェンを用いた以外は、すべて実施例1と同様の操作を行って、正孔輸送材料の分散液を得た。
得られた正孔輸送材料の分散液をスピンコート(3,000rpm、60秒)で6cm×6cmのガラス基板に塗布した後、130℃で5分間乾燥して、正孔輸送材料の薄膜を形成した。この正孔輸送材料膜の表面抵抗を実施例1と同様に測定したところ、1.1×1010Ωであり、ナノスケールハイブリッド顕微鏡(キーエンス社製VN−8000)で測定した表面粗さ(Ra)は、0.7nmであった。
上記実施例1〜12の正孔輸送材料および比較例1〜4の正孔輸送材料の表面抵抗値および表面粗さ値を表1にモノマーおよびポリマーアニオンの種類とともに示す。ただし、モノマーに関しては、スペース上の関係で以下のように略号化して示す。
EOST:3,4−エチレンオキシチアチオフェン
MeEDOT:メチル化エチレンジオキシチオフェン
EDOT:3,4−エチレンジオキシチオフェン
また、ポリマーアニオンに関しては、そのポリマー(共重合体、ポリスチレンスルホン酸)の種類で示すが、これらに関しても、表1にはスペース上の関係で、実施例で用いる共重合体は、その製造例番号を共重合体の後に付して示し、ポリスチレンスルホン酸は「PSSA」と略号化して示す。
表1に示すように、実施例1〜12の正孔輸送材料は、比較例1〜4の正孔輸送材料に比べて、表面粗さが小さく、形成される薄膜の表面の均一性が高いことを示していた。
上記実施例1〜12および比較例1〜4の正孔輸送材料は、後記の実施例25〜36および比較例9〜12で示すエレクトロルミネッセンス素子の正孔輸送層の構成にあたって用いるものであるが、以下の実施例13〜24および比較例5〜8では、後記の実施例37〜48および比較例13〜16で示す薄膜太陽電池の正孔輸送層の構成にあたって使用する正孔輸送材料の分散液の製造について説明する。
実施例13
実施例1と同様の操作を行って、導電性高分子の濃度が1.5%の分散液を得た。この導電性高分子の分散液に実施例1で用いたものと同様の共重合体(スチレンスルホン酸とメタクリル酸ヒドロキシエチルとの質量比が9:1の共重合体)を質量比で導電性高分子:共重合体=1:1となるように添加して混合し、固形分濃度が0.8%になるまで純水で希釈して、正孔輸送材料の分散液を得た。
得られた正孔輸送材料の分散液をスピンコート(2000rpm、80秒)で6cm×6cmのガラス基板に塗布した後、130℃で5分間乾燥して、正孔輸送材料の厚みが35nmの薄膜を形成した。この正孔輸送材料膜の表面抵抗を実施例1と同様に測定したところ、6.1×10Ωであり、ナノスケールハイブリッド顕微鏡(キーエンス社製VN-8000)で測定した表面粗さ(Ra)は、0.5nmであった。なお、以下の実施例14〜24および比較例5〜8においても、形成する正孔輸送材料膜の厚みは35nmである。
実施例14
チオフェン系モノマーの製造例1で製造した3,4−エチレンオキシチアチオフェンに代えて、チオフェン系モノマーの製造例2で製造したメチル化エチレンジオキシチオフェンを用いた以外は、すべて実施例13と同様の操作を行って、正孔輸送材料の分散液を得た。
得られた正孔輸送材料の分散液をスピンコート(2,000rpm、80秒)で6cm×6cmのガラス基板に塗布した後、130℃で5分間乾燥して、正孔輸送材料の薄膜を形成した。この正孔輸送材料膜の表面抵抗を実施例1と同様に測定したところ、5.7×10Ωであり、ナノスケールハイブリッド顕微鏡(キーエンス社製VN−8000)で測定した表面粗さ(Ra)は、0.3nmであった。
実施例15
チオフェン系モノマーの製造例1で製造した3,4−エチレンオキシチアチオフェンに代えて、チオフェン系モノマーの製造例1で製造した3,4−エチレンオキシチアチオフェンとチオフェン系モノマーの製造例2で製造したメチル化エチレンジオキシチオフェンとをモル比で1:1で混合したモノマー溶液を用いた以外は、すべて実施例13と同様の操作を行って、正孔輸送材料の分散液を得た。
得られた正孔輸送材料の分散液をスピンコート(2,000rpm、80秒)で6cm×6cmのガラス基板に塗布した後、130℃で5分間乾燥して、正孔輸送材料の薄膜を形成した。この正孔輸送材料膜の表面抵抗を実施例1と同様に測定したところ、4.1×10Ωであり、ナノスケールハイブリッド顕微鏡(キーエンス社製VN−8000)で測定した表面粗さ(Ra)は、0.4nmであった。
実施例16
共重合体の製造例1で得たスチレンスルホン酸とメタクリル酸ヒドロキシエチルとの質量比が9:1の共重合体に代えて、共重合体の製造例2で得たスチレンスルホン酸とアクリル酸ヒドロキシエチルとの質量比が8:2の共重合体を用いた以外は、すべて実施例13と同様の操作を行って、正孔輸送材料の分散液を得た。
得られた正孔輸送材料の分散液をスピンコート(2,000rpm、80秒)で6cm×6cmのガラス基板に塗布した後、130℃で5分間乾燥して、正孔輸送材料の薄膜を形成した。この正孔輸送材料膜の表面抵抗を実施例1と同様に測定したところ、3.8×10Ωであり、ナノスケールハイブリッド顕微鏡(キーエンス社製VN−8000)で測定した表面粗さ(Ra)は、0.3nmであった。
実施例17
共重合体の製造例1で得たスチレンスルホン酸とメタクリル酸ヒドロキシエチルとの質量比が9:1の共重合体に代えて、共重合体の製造例2で得たスチレンスルホン酸とアクリル酸ヒドロキシエチルとの質量比が8:2の共重合体を用いた以外は、すべて実施例14と同様の操作を行って、正孔輸送材料の分散液を得た。
得られた正孔輸送材料の分散液をスピンコート(2,000rpm、80秒)で6cm×6cmのガラス基板に塗布した後、130℃で5分間乾燥して、正孔輸送材料の薄膜を形成した。この正孔輸送材料膜の表面抵抗を実施例1と同様に測定したところ、6.2×10Ωであり、ナノスケールハイブリッド顕微鏡(キーエンス社製VN−8000)で測定した表面粗さ(Ra)は、0.5nmであった。
実施例18
共重合体の製造例1で得たスチレンスルホン酸とメタクリル酸ヒドロキシエチルとの質量比が9:1の共重合体に代えて、共重合体の製造例2で得たスチレンスルホン酸とアクリル酸ヒドロキシエチルとの質量比が8:2の共重合体を用いた以外は、すべて実施例15と同様の操作を行って、正孔輸送材料の分散液を得た。
得られた正孔輸送材料の分散液をスピンコート(2,000rpm、80秒)で6cm×6cmのガラス基板に塗布した後、130℃で5分間乾燥して、正孔輸送材料の薄膜を形成した。この正孔輸送材料膜の表面抵抗を実施例1と同様に測定したところ、7.5×10Ωであり、ナノスケールハイブリッド顕微鏡(キーエンス社製VN−8000)で測定した表面粗さ(Ra)は、0.4nmであった。
実施例19
共重合体の製造例1で得たスチレンスルホン酸とメタクリル酸ヒドロキシエチルとの質量比が9:1の共重合体に代えて、共重合体の製造例3で得たスチレンスルホン酸と3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランとの質量比が9:1の共重合体を用いた以外は、すべて実施例13と同様の操作を行って、正孔輸送材料の分散液を得た。
得られた正孔輸送材料の分散液をスピンコート(2,000rpm、80秒)で6cm×6cmのガラス基板に塗布した後、130℃で5分間乾燥して、正孔輸送材料の薄膜を形成した。この正孔輸送材料膜の表面抵抗を実施例1と同様に測定したところ、4.3×10Ωであり、ナノスケールハイブリッド顕微鏡(キーエンス社製VN−8000)で測定した表面粗さ(Ra)は、0.5nmであった。
実施例20
共重合体の製造例1で得たスチレンスルホン酸とメタクリル酸ヒドロキシエチルとの質量比が9:1の共重合体に代えて、共重合体の製造例3で得たスチレンスルホン酸と3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランとの質量比が9:1の共重合体を用いた以外は、すべて実施例14と同様の操作を行って、正孔輸送材料の分散液を得た。
得られた正孔輸送材料の分散液をスピンコート(2,000rpm、80秒)で6cm×6cmのガラス基板に塗布した後、130℃で5分間乾燥して、正孔輸送材料の薄膜を形成した。この正孔輸送材料膜の表面抵抗を実施例1と同様に測定したところ、7.4×10Ωであり、ナノスケールハイブリッド顕微鏡(キーエンス社製VN−8000)で測定した表面粗さ(Ra)は、0.5nmであった。
実施例21
共重合体の製造例1で得たスチレンスルホン酸とメタクリル酸ヒドロキシエチルとの質量比が9:1の共重合体に代えて、共重合体の製造例3で得たスチレンスルホン酸と3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランとの質量比が9:1の共重合体を用いた以外は、すべて実施例15と同様の操作を行って、正孔輸送材料の分散液を得た。
得られた正孔輸送材料の分散液をスピンコート(2,000rpm、80秒)で6cm×6cmのガラス基板に塗布した後、130℃で5分間乾燥して、正孔輸送材料の薄膜を形成した。この正孔輸送材料膜の表面抵抗を実施例1と同様に測定したところ、5.9×10Ωであり、ナノスケールハイブリッド顕微鏡(キーエンス社製VN−8000)で測定した表面粗さ(Ra)は、0.5nmであった。
実施例22
共重合体の製造例1で得たスチレンスルホン酸とメタクリル酸ヒドロキシエチルとの質量比が9:1の共重合体に代えて、共重合体の製造例4で得たスチレンスルホン酸と3-アクリロキシプロピルトリメトキシシランとの質量比が9:1の共重合体を用いた以外は、すべて実施例13と同様の操作を行って、正孔輸送材料の分散液を得た。
得られた正孔輸送材料の分散液をスピンコート(2,000rpm、80秒)で6cm×6cmのガラス基板に塗布した後、130℃で5分間乾燥して、正孔輸送材料の薄膜を形成した。この正孔輸送材料膜の表面抵抗を実施例1と同様に測定したところ、6.8×10Ωであり、ナノスケールハイブリッド顕微鏡(キーエンス社製VN−8000)で測定した表面粗さ(Ra)は、0.5nmであった。
実施例23
共重合体の製造例1で得たスチレンスルホン酸とメタクリル酸ヒドロキシエチルとの質量比が9:1の共重合体に代えて、共重合体の製造例4で得たスチレンスルホン酸と3-アクリロキシプロピルトリメトキシシランとの質量比が9:1の共重合体を用いた以外は、すべて実施例14と同様の操作を行って、正孔輸送材料の分散液を得た。
得られた正孔輸送材料の分散液をスピンコート(2,000rpm、80秒)で6cm×6cmのガラス基板に塗布した後、130℃で5分間乾燥して、正孔輸送材料の薄膜を形成した。この正孔輸送材料膜の表面抵抗を実施例1と同様に測定したところ、5.3×10Ωであり、ナノスケールハイブリッド顕微鏡(キーエンス社製VN−8000)で測定した表面粗さ(Ra)は、0.5nmであった。
実施例24
共重合体の製造例1で得たスチレンスルホン酸とメタクリル酸ヒドロキシエチルとの質量比が9:1の共重合体に代えて、共重合体の製造例4で得たスチレンスルホン酸と3-アクリロキシプロピルトリメトキシシランとの質量比が9:1の共重合体を用いた以外は、すべて実施例15と同様の操作を行って、正孔輸送材料の分散液を得た。
得られた正孔輸送材料の分散液をスピンコート(2,000rpm、80秒)で6cm×6cmのガラス基板に塗布した後、130℃で5分間乾燥して、正孔輸送材料の薄膜を形成した。この正孔輸送材料膜の表面抵抗を実施例1と同様に測定したところ、6.3×10Ωであり、ナノスケールハイブリッド顕微鏡(キーエンス社製VN−8000)で測定した表面粗さ(Ra)は、0.4nmであった。
比較例5
比較例1と同様に3,4−エチレンジオキシチオフェンをポリスチレンスルホン酸の存在下で重合して、導電性高分子の濃度が1.5%の分散液を得た。
この導電性高分子の分散液にポリスチレンスルホン酸を質量比で導電性高分子:ポリスチレンスルホン酸=1:1の割合になるように添加して混合し、固形分濃度が0.8%になるまで純水で希釈して、正孔輸送材料の分散液を得た。
得られた正孔輸送材料の分散液をスピンコート(2,000rpm、80秒)で6cm×6cmのガラス基板に塗布した後、130℃で5分間乾燥して、正孔輸送材料の薄膜を形成した。この正孔輸送材料膜の表面抵抗を実施例1と同様に測定したところ、2.8×10Ωであり、ナノスケールハイブリッド顕微鏡(キーエンス社製VN−8000)で測定した表面粗さ(Ra)は、0.8nmであった。
比較例6
3,4−エチレンジオキシチオフェンを代えて、チオフェン系モノマーの製造例1で製造した3,4−エチレンチアチオフェンを用いた以外は、すべて比較例5と同様の操作を行って、正孔輸送材料の分散液を得た。
得られた正孔輸送材料の分散液をスピンコート(2,000rpm、80秒)で6cm×6cmのガラス基板に塗布した後、130℃で5分間乾燥して、正孔輸送材料の薄膜を形成した。この正孔輸送材料膜の表面抵抗を実施例1と同様に測定したところ、4.0×10Ωであり、ナノスケールハイブリッド顕微鏡(キーエンス社製VN−8000)で測定した表面粗さ(Ra)は、0.7nmであった。
比較例7
3,4−エチレンジオキシチオフェンに代えて、チオフェン系モノマーの製造例2で製造したメチル化エチレンジオキシチオフェンを用いた以外は、すべて比較例5と同様の操作を行って、正孔輸送材料の分散液を得た。
得られた正孔輸送材料の分散液をスピンコート(2,000rpm、80秒)で6cm×6cmのガラス基板に塗布した後、130℃で5分間乾燥して、正孔輸送材料の薄膜を形成した。この正孔輸送材料膜の表面抵抗を実施例1と同様に測定したところ、3.1×10Ωであり、ナノスケールハイブリッド顕微鏡(キーエンス社製VN−8000)で測定した表面粗さ(Ra)は、0.8nmであった。
比較例8
チオフェン系モノマーの製造例1で製造した3,4−エチレンオキシチアチオエンに代えて、3,4−エチレンジオキシチオフェンを用いた以外は、すべて実施例13と同様の操作を行って、正孔輸送材料の分散液を得た。
得られた正孔輸送材料の分散液をスピンコート(2,000rpm、80秒)で6cm×6cmのガラス基板に塗布した後、130℃で5分間乾燥して、正孔輸送材料の薄膜を形成した。この正孔輸送材料膜の表面抵抗を実施例1と同様に測定したところ、2.2×10Ωであり、ナノスケールハイブリッド顕微鏡(キーエンス社製VN−8000)で測定した表面粗さ(Ra)は、0.7nmであった。
上記実施例13〜24の正孔輸送材料および比較例5〜8の正孔輸送材料の表面抵抗値と表面粗さ値を表2に前記表1の場合と同様の態様で示す。
表2に示すように、実施例13〜24の正孔輸送材料は、比較例5〜8の正孔輸送材料に比べて、表面粗さが小さく、形成される薄膜の表面の均一性が高いことを示していた。
次に、前記実施例1〜12の正孔輸送材料を用いて構成した正孔輸送層を有するエレクトロルミネッセンス素子を実施例25〜36で示し、また、それらと対比すべきエレクトロルミネッセンス素子を比較例9〜12で示す。
実施例25
ガラス基板上にインジウム・スズ酸化物(ITO)透明導電膜を150nm堆積したもの〔三容真空社製;シート抵抗10Ω、20mm(ヨコ)×25mm(タテ)×0.7mm(ガラス膜厚)〕を通常のフォトリソグラフィ技術と亜鉛-塩酸エッチングを用いて5mm幅のストライプにパターニングして陽極を形成した。亜鉛-塩酸で洗浄後、パターン形成したITO基板を、クロロホルムによる超音波洗浄、中性洗剤による洗浄、純水による水洗、エタノールとアセトンによる超音波洗浄、イソプロピルアルコールによるソックスレー洗浄の順で洗浄後、窒素ブローで乾燥させた。最後にオゾン処理による表面親水化を行った後、スピンコーター内に設置した。
上記陽極の透明導電膜上に実施例1で得た正孔輸送材料の分散液をスピンコートして、膜厚30nmの正極輸送層を形成した。上記のスピンコートは25℃で、1500回転/分の回転速度で2秒、次いで3000回転/分の回転速度で60秒の条件で行った。
次いで、正孔輸送用材料としてのPVCz(すなわち、ポリビニルカルバゾール)を69.7%、電子輸送用材料としてのPBD〔すなわち、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール〕を30%、蛍光性発色色素としての化合物1〔すなわち、トリス(2−フェニルピリジナト)イリジウム(III)錯体〕を0.3%の濃度でトルエンに溶解し、それらを含む発光層形成用のトルエン溶液を上記正孔輸送層上に、スピンコートして膜厚120nmの発光層を形成した。さらにその発光層上にフッ化リチウムを0.5nmの厚さに蒸着して電子注入層とした後、アルミニウムを200nmの厚さに蒸着して陰極としての反射電極を形成してエレクトロルミネッセンス素子を作製した。
上記フッ化リチウムの蒸着やアルミニウムの蒸着は、10−4Paの真空中で行った。その際の蒸着物質の成膜速度の制御や膜厚の制御は蒸着機中に取り付けられている水晶振動子を使用した成膜モニターCRTM−8000(株式会社アルバック製)を使用して行った。
実施例26〜36
実施例1の正孔輸送材料の分散液に代えて、実施例2〜12の正孔輸送材料の分散液をそれぞれ用いた以外は、すべて実施例25と同様の操作を行って、エレクトロルミネッセンス素子を作製した。
比較例9〜12
実施例1の正孔輸送材料の分散液に代えて、比較例1〜4の正孔輸送材料の分散液をそれぞれ用いた以外は、すべて実施例25と同様の操作を行って、エレクトロルミネッセンス素子を作製した。
得られた実施例25〜36および比較例9〜12のエレクトロルミネッセンス素子の最大輝度、外部量子効率、電流効率および電力効率を、浜松ホトニクス株式会社製C9920−11輝度配向特性測定装置を用いて測定した。その結果を表3に示す。
表3に示す数値は、実施例25〜36のエレクトロルミネッセンス素子、比較例9〜12のエレクトロルミネッセンス素子とも、それぞれ5個ずつの試料について特性評価を行っており、最大輝度については発光体の単位面積あたりの明るさの最大値を表示し、外部量子効率は素子に外部から注入した電子数に対する発生した光子数を百分率で表示し、電流効率は単位電流量に対する輝度を表示し、電力効率は光源の効率を単位電力あたりの全光束で表示している。そして、それぞれの測定値などの下に示した括弧(カッコ)内の数値は、それらの測定値などが最もよい値を示した時の電圧が何Vであるかを示している。
表3に示すように、実施例25〜36のエレクトロルミネッセンス素子は、比較例9〜12のエレクトロルミネッセンス素子に比べて、最大輝度が大きく、外部量子効率、電流効率、電力効率のいずれも高く、エレクトロルミネッセンス素子としての特性が優れていた。
次に、前記実施例13〜24の正孔輸送材料の分散液を用いて構成した正孔輸送層を有する薄膜太陽電池の実施例を実施例37〜48で示し、また、それらと対比すべき薄膜太陽電池を比較例13〜16で示す。
実施例37
ガラス基板上にインジウム・スズ酸化物(ITO)透明導電膜を150nm堆積したもの〔(三容真空社製;シート抵抗10Ω、20mm(ヨコ)×25mm(タテ)×0.7mm(ガラス膜厚)〕を通常のフォトリソグラフィ技術と亜鉛-塩酸エッチングを用いて2mm幅のストライプにパターニングして正極を形成した。亜鉛-塩酸で洗浄後、パターン形成したITO基板を、クロロホルムによる超音波洗浄、中性洗剤による洗浄、純水による水洗、エタノールとアセトンによる超音波洗浄、イソプロピルアルコールによるソックスレー洗浄の順で洗浄後、窒素ブローで乾燥させた。最後にオゾン処理による表面親水化を行った後、スピンコーター内に設置した。
上記透明導電膜上に実施例13の正孔輸送材料の分散液をスピンコートして厚さ35nmの正孔輸送層を形成した。このスピンコートは、25℃で、2000回転/分の回転速度で80秒行った。
次いで、ポリ-3-ヘキシルチオフェン(アルドリッチ社製、平均分子量15,000〜45,000、head to tail:>95%)5mgと、フラーレン誘導体(アルドリッチ社製PC61BM)5mgを0.5mlのクロロベンゼンに溶解した混合液を、上記正孔輸送層上にスピンコート法により塗布し、厚さ70nmの活性層を形成した。さらにその上に、フッ化リチウムを0.3nm蒸着して電子注入層とした後、アルミニウムを150nm蒸着して負極としての反射電極を形成して薄膜太陽電池を作製した。
上記活性層の形成にあたってのスピンコートは、25℃で、1000回転/分の回転速度で80秒の条件下で行い、フッ化リチウムやアルミニウムの蒸着については前記エレクトロルミネッセンス素子への場合と同様に行った。
実施例38〜48
実施例13の正孔輸送材料の分散液に代えて、実施例14〜24の正孔輸送材料の分散液をそれぞれ用いた以外は、すべて実施例37と同様の操作を行って、薄膜太陽電池を作製した。
比較例13〜16
実施例1の正孔輸送材料の分散液に代えて、比較例9〜12の正孔輸送材料の分散液をそれぞれ用いた以外は、すべて実施例37と同様の操作を行って、薄膜太陽電池を作製した。
得られた実施例37〜48および比較例13〜16の薄膜太陽電池の解放電圧、短絡電流密度、曲線因子および光電変換率を、分光計器株式会社製分光感度測定装置CEP-2000を用いて測定した。その結果を表4に示す。
なお、これら解放電圧、短絡電流密度、曲線因子、光電変換効率の相互間の関係やその意義は次の通りである。
短絡電流密度:バイアス電圧(偏りのない信号を、偏った信号にするために加える電圧)かけないときに得られる電流密度
短絡電流密度から電流が流れにくくなる向きに電圧を印加し、電流がゼロになる点の電圧が開放電圧。
曲線因子:電流と電圧の積(出力電力)が最大になる点を理想的な最大出力(開放電圧×短絡電流密度)で割った値。
光電変換効率(エネルギー変換効率):最大出力(電圧×電流)を入射した光のエネルギーで割り、%にしたもの。測定において、100mW/cmの光源を用いることが多いため、PCE=(最大出力時の電流×最大出力時の電圧)÷100×100となる。
上記測定は、各試料とも、5個ずつについて行い、いずれも、表4に示す数値は、その
5個の測定値の平均値を求め、小数点第2位を四捨五入して示したものである。
表4に示すように、実施例37〜48の薄膜太陽電池は、比較例13〜16の薄膜太陽電池に比べて、解放電圧が高く、短絡電流密度、曲線因子が大きく、かつ光電変換効率が高く、薄膜太陽電池としての特性が優れていた。

Claims (6)

  1. 下記の一般式(1)で表されるチオフェン系モノマーの重合体と、ドーパントとして機能する下記の共重合体に由来するポリマーアニオンとを含む導電性高分子とを含むことを特徴とする正孔輸送材料。
    一般式(1):

    (式中、R、Rは、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表し、Xは酸素原子または硫黄原子を表す。ただし、RとRが共に水素原子であって、Xが酸素原子である場合を除く)
    共重合体:
    スチレンスルホン酸と、メタクリル酸ヒドロキシアルキル、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸ヒドロキシアルキル、アクリル酸グリシジルおよび不飽和炭化水素含有アルコキシシラン化合物またはその加水分解物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の非スルホン酸系モノマーとの共重合体。
  2. 一般式(1)で表されるチオフェン系モノマーが、一般式(1)中のRとRが共に水素原子で、Xが硫黄原子であるチオフェン系モノマーである請求項1記載の正孔輸送材料。
  3. 一般式(1)で表されるチオフェン系モノマーが、一般式(1)中のR、Rのいずれか一方が水素原子で、他方がメチル基であり、Xが酸素原子であるチオフェン系モノマーである請求項1記載の正孔輸送材料。
  4. 一般式(1)で表されるチオフェン系モノマーの重合体が、一般式(1)中のR、Rが共に水素原子で、Xが硫黄原子であるチオフェン系モノマーと、R、Rのいずれか一方が水素原子で、他方がメチル基であり、Xが酸素原子であるチオフェン系モノマーとの共重合体である請求項1記載の正孔輸送材料。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の正孔輸送材料で構成した正孔輸送層を有することを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
  6. 請求項1〜4のいずれかに記載の正孔輸送材料で構成した正孔輸送層を有することを特徴とする薄膜太陽電池。
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