実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る画像読取装置1の構成を概略的に示す機能ブロック図である。図1に示されるように、実施の形態1に係る画像読取装置1は、撮像部2と、A/D変換部3と、画像処理部4とを備えている。画像処理部4は、実施の形態1に係る画像処理装置(実施の形態1に係る画像処理方法を実施することができる装置)であり、画像メモリ41と、低域除去部42と、類似度算出部43と、シフト量推定部44と、結合処理部45とを備えている。
撮像部2は、主走査方向に間隔を開けて(例えば、ライン状に)並ぶ複数(例えば、n個)の第1列のラインセンサを含む第1列のラインセンサ群(後述する図2(a)に符号21O又は21Eとして示される)と、主走査方向に間隔を開けて(例えば、ライン状に)並ぶ複数(例えば、n個)の第2列のラインセンサを含む第2列のラインセンサ群(図2(a)に符号21E又は21Oとして示される)とを備えている。ここで、nは、正の整数である。複数の第1列のラインセンサの主走査方向の位置は、複数の第2列のラインセンサが備えられていない領域、すなわち、主走査方向に隣接する第2列のラインセンサの間の領域、に対向する位置であり、複数の第2列のラインセンサの主走査方向の位置は、複数の第1列のラインセンサが備えられていない領域、すなわち、主走査方向に隣接する第1列のラインセンサの間の領域、に対向する位置となる。その結果、複数の第1列のラインセンサと複数の第2列のラインセンサとは、センサ基板上に千鳥状に配列される。また、複数の第1列のラインセンサと複数の第2列のラインセンサのうちの互いに隣接する第1列のラインセンサと第2列のラインセンサとは、隣接する端部同士(図2(a)において、最も近い位置にある端部srと端部sl)が、主走査方向における同じ範囲内で重なる重複領域(「オーバーラップ領域」とも呼ぶ。)を有するよう配置される。
撮像部2は、被読取物としての原稿の画像を光学的に読取り、原稿の画像に対応する電気信号(画像データ)SIを生成する。撮像部2で生成される電気信号(画像データ)SIは、第1列のラインセンサ群を構成する複数の第1列のラインセンサから出力される第1の画像データと、第2列のラインセンサ群を構成する複数の第2のラインセンサから出力される第2の画像データとを含む。なお、第1列のラインセンサ群及び第2列のラインセンサ群と原稿との間には、例えば、第1列のラインセンサ群及び第2列のラインセンサ群のそれぞれに正立像を結像させるレンズなどのような光学系を備えてもよい。
以下の説明においては、撮像部2が2列のラインセンサ群を備えた例を説明するが、ラインセンサ群の列数が3列以上の装置にも、本発明は適用可能である。また、本発明は、オーバーラップ領域を有する2個以上のラインセンサを有する撮像部によって被読取物の画像を読取る場合に適用可能である。したがって、本発明は、第1列のラインセンサ群が1個のラインセンサから構成され、第2列のラインセンサ群が1個のラインセンサから構成される場合にも適用可能である。
図2(a)及び(b)は、撮像部2を説明するための図であり、図2(a)は、撮像部2を概略的に示す平面図であり、図2(b)は、被読取物としての原稿60を示す平面図である。図2(a)は、例えば、複写機の原稿台ガラス(以下「ガラス面」という)26を上から見た状態を示している。図3は、撮像部2の構成要素の1つであるラインセンサ21O1を使ってラインセンサの構成を説明するための図である。
図2(a)に示されるように、撮像部2は、センサ基板20を有する。センサ基板20には、複数のラインセンサが2列になるように配置されている。センサ基板20において、一方の端部(例えば、左側)から数えて奇数番目に位置するラインセンサ21O1,…,21Ok,…,21Onは、主走査方向(X方向)の直線状に間隔を開けて配置されている。左側の端部から数えて偶数番目に位置するラインセンサ21E1,…,21Ek,…,21Enは、奇数番目に位置するラインセンサ21O1,…,21Ok,…,21Onと主走査方向(X方向)について異なる位置に、主走査方向の直線状に配置される。偶数番目に位置するラインセンサ21E1,…,21Ek,…,21Enと奇数番目に位置するラインセンサ21O1,…,21Ok,…,21Onとは、千鳥状に配列されている。図2(a)において、nは2以上の整数であり、kは1以上n以下の整数である。奇数番目に位置するラインセンサ21O1,…,21Ok,…,21Onは、複数の第1のラインセンサを含む第1列のラインセンサ群(又は、複数の第2のラインセンサを含む第2列のラインセンサ群)を構成し、偶数番目に位置するラインセンサ21E1,…,21Ek,…,21Enは、複数の第2のラインセンサを含む第2列のラインセンサ群(又は、複数の第1のラインセンサを含む第1列のラインセンサ群)を構成する。
図2(a)に示されるように、第1列のラインセンサ群に属する複数の第1のラインセンサ(例えば、21E1,…,21Ek,…,21En)は、第2列のラインセンサ群におけるラインセンサの主走査方向の間隔に対向するように配置され、第2列のラインセンサ群に属する複数のラインセンサ(例えば、21O1,…,21Ok,…,21On)は、第1列のラインセンサ群におけるラインセンサの主走査方向の間隔に対向するように配置されている。また、隣接する第1のラインセンサと第2のラインセンサの隣接する端部同士(端部srとsl)は、主走査方向の位置が同じ位置である(主走査方向において重複する領域である)オーバーラップ領域を有している。
図2(a)に示されるように、撮像部2は、搬送部(後述の図4(a)における24)によって副走査方向(Y方向)に移動し、被読取物としての原稿(図4(a)における60)を読取る。また、搬送部24は、撮像部2を固定し、副走査方向の反対方向(−Y方向)に原稿60を搬送させ、被読取物としての原稿を読取る装置であってもよい。ここで、本出願の各実施の形態においては、搬送部24によって撮像部2が矢印Dy方向(図2(a))に移動する場合を説明する。なお、副走査方向(Y方向)は、撮像部2の移動方向を示し(図2(a)の矢印Dy方向)、主走査方向は、奇数番目に位置するラインセンサ21O1,…,21Ok,…,21Onの配列方向、又は、偶数番目に位置するラインセンサ21E1,…,21Ek,…,21Enの配列方向を示す。
図3に示されるように、ラインセンサ21O1は、受光した光のうちの赤色成分の光を電気信号に変換する複数の赤色用光電変換素子(R光電変換素子)26Rと、受光した光のうちの緑色成分の光を電気信号に変換する複数の緑色用光電変換素子(G光電変換素子)26Gと、受光した光のうちの青色成分の光を電気信号に変換する複数の青色用光電変換素子(B光電変換素子)26Bとを備えている。図3に示されるように、複数のR光電変換素子26Rは、主走査方向(X方向)に直線状に配列され、複数のG光電変換素子26Gは、主走査方向(X方向)に直線状に配列され、複数のB光電変換素子26Bは、主走査方向(X方向)に直線状に配列されている。実施の形態1においては、図3の構成のラインセンサについて説明するが、本発明は、色を識別しない白黒用の光電変換素子が1列に並んだものとしてもよい。また、複数のR光電変換素子26R、複数のG光電変換素子26G、及び複数のB光電変換素子26Bの配列は、図3の例に限定されない。ラインセンサ21O1は、受光した情報を電気信号SI(O1)として出力する。また、ラインセンサ21E1,21O2,…,21On,21Enも同様に、受光した情報を電気信号SI(E1),SI(O2),…,SI(On),SI(En)として出力する。全てのラインセンサから出力される電気信号を、電気信号SIと表記する。撮像部2から出力された電気信号SIは、A/D変換部3に入力される。
奇数番目に位置するラインセンサ21O1,…,21Ok,…,21Onと偶数番目に位置するラインセンサ21E1,…,21Ek,…,21Enとは、一部重複して原稿60を読取るオーバーラップ領域A1,1,A1,2,…,Ak,k,Ak,K+1,Ak+1,K+1,…,An,nを有している。なお、オーバーラップ領域の詳細は、後述する。
A/D変換部3は、撮像部2から出力される電気信号SIをデジタルデータ(画像データ)DIに変換する。画像データDIは、画像処理部4に入力され、画像処理部4の画像メモリ41に格納される。
図4(a)〜(c)は、画像処理部4内の画像メモリ41に格納される画像データDIを説明するための図である。図4(a)は、奇数番目に位置するラインセンサ21O1,…,21Ok,…,21Onと偶数番目に位置するラインセンサ21E1,…,21Ek,…,21Enの光軸27Oと光軸27Eが交差する位置に原稿60がある場合(すなわち、光軸27Oと27Eを副走査方向(Y方向)に見たときに、光軸27Oと光軸27Eとがガラス面26上で交差する場合)の原稿60とラインセンサの位置関係を示す図である。図4(b)は、原稿60の一例を示す図である。図4(c)は、原稿60とラインセンサが図4(a)の位置関係にある場合に読取られた図4(b)の原稿60に対応する画像データDIを概念的に示す図である。
図4(a)は、画像読取装置1の概略的な側面図であり、画像読取装置1を備えた装置(例えば、複写機)を横から見た状態を示している。図2(a)に示される奇数番目に位置するラインセンサ21O1,…,21Ok,…,21Onは、ラインセンサ21Oとも表記し、偶数番目に位置するラインセンサ21E1,…,21Ek,…,21Enは、ラインセンサ21Eとも表記する。発光ダイオード(LED)などの照明光源25で光照射された原稿60の反射光は、光軸27Oに沿ってラインセンサ21Oに向けて進み、光軸27Eに沿ってラインセンサ21Eに向けて進む。副走査方向(Y方向)に搬送される撮像部2は、ガラス面26に置かれた原稿60の反射光を逐次光電変換し、変換した電気信号SIを出力し、A/D変換部3は、その電気信号SIを画像データDIに変換して出力する。
図4(b)に示されるような原稿60を、撮像部2により逐次光電変換し、A/D変換部3によりデジタルデータに変換すると、図4(c)に示されるような画像データDIが画像メモリ41に格納される。画像データDIは、奇数番目に位置するラインセンサ21O1,…,21Ok,…,21Onが生成する画像データDI(O1),…,DI(Ok),…,DI(On)と、偶数番目に位置するラインセンサ21E1,…,21Ek,…,21Enが生成する画像データDI(E1),…,DI(Ek),…,DI(En)とから成る。図4(c)では、奇数番目に位置するラインセンサ21Ok及び21Ok+1が生成する画像データDI(Ok)及びDI(Ok+1)と、偶数番目に位置するラインセンサ21Ek及び21Ek+1が生成する画像データDI(Ek)及びDI(Ek+1)とを示している。
なお、ラインセンサ毎には、性能のばらつき及び照明分布などの読取り条件の違いがあるため、ラインセンサ21O1,…,21Ok,…,21Onが生成する画像データDI(O1),…,DI(Ok),…,DI(On)とラインセンサ21E1,…,21Ek,…,21Enが生成する画像データDI(E1),…,DI(Ek),…,DI(En)とのそれぞれで、ラインセンサ毎に読取った画像データのレベル差(明暗の差、画素データの値の差)が生じる場合がある。このため、同一の画像を読取った場合であっても、画像データDI(Ok)とDI(Ek)とでは、画像データにおける画素値(レベル)に差が生じる。
ここで、オーバーラップ領域A1,1,A1,2,…,Ak,k,Ak,K+1,Ak+1,K+1,…,An,nについて説明する。図2(a)に示されるように、撮像部2が副走査方向(Y方向)に搬送されて原稿60を読取ると、奇数番目に位置するラインセンサ21O1,…,21Ok,…,21Onと偶数番目に位置するラインセンサ21E1,…,21Ek,…,21Enで一部重複した領域(オーバーラップ領域)が読取られる。例えば、ラインセンサ21O1の右端srとラインセンサ21E1の左端slは、原稿60の同じ領域、すなわち、領域A1,1を読取る。同様に、ラインセンサ21E1の右端srとラインセンサ21O2の左端slは、原稿60の同じ領域、すなわち、領域A1,2を読取る。
図4(b)に示される例で説明すると、ラインセンサ21Okの右端srとラインセンサ21Ekの左端slは、ともに原稿60の領域Ak,kを読取り、ラインセンサ21Ekの右端srとラインセンサ21Ok+1の左端slは、ともに原稿60の領域Ak,k+1を読取り、ラインセンサ21Ok+1の右端srとラインセンサ21Ek+1の左端slは、ともに原稿60の領域Ak+1,k+1を読取る。
したがって、ラインセンサ21Okに対応する画像データDI(Ok)は、原稿60のオーバーラップ領域Ak,kに対応するデジタルデータdrを含み、ラインセンサ21Ekに対応する画像データDI(Ek)は、原稿60の領域Ak,kに対応するデジタルデータdlを含んでいる。原稿60が、図4(a)で示されるように、ガラス面26に密着している場合、ラインセンサ21Oとラインセンサ21Eの、原稿60の副走査方向(Y方向)についての読取り位置は、ほぼ同じ位置であるため、図4(c)に示されるように、隣接するデジタルデータdrとdlは、原稿60の副走査方向(Y方向)についての位置ずれの無いデータになる。言い換えれば、ラインセンサ21Oとラインセンサ21Eによって読取られる副走査方向(Y方向)の位置、すなわち、ライン(以下「読取ライン」ともいう)は、隣接するデジタルデータdrとdlではほぼ同じ位置になり、ラインセンサ21Oとラインセンサ21Eによって読取られた画像データ間の副走査方向の位置ずれ量(ライン数)は、ゼロに近い値となる。
また、上述したように、ラインセンサ毎には性能のばらつき及び照明分布などの読取り条件の違いがあると、ラインセンサ21Okに対応する画像データDI(Ok)に含まれるオーバーラップ領域Ak,kに対応するデジタルデータdrと、ラインセンサ21Ekに対応する画像データDI(Ek)に含まれる領域Ak,kに対応するデジタルデータdlとでは、同じ原稿60の領域Ak,kを読取っていても、画像データの値にレベル差が生じることになる。
次に、原稿60がガラス面26から離れることにより原稿60とラインセンサの位置関係が、図4(a)に示される場合と異なる場合について説明する。図5(a)〜(c)は、画像メモリ41に格納される画像データDIを説明するための図である。図5(a)は、原稿60がガラス面26から浮いて(離れて)おり、奇数番目に位置するラインセンサ21O1,…,21Ok,…,21Onの光軸と偶数番目に位置するラインセンサ21E1,…,21Ek,…,21Enの光軸とが交差する位置とは違う位置に、原稿60がある場合における、原稿60とラインセンサの位置関係を示す図である。図5(b)は、原稿60の一例を示す図であり、図5(c)は、原稿60とラインセンサが図5(a)の位置関係にある場合の図5(b)の原稿60に対応する画像データDIを概念的に示す図である。
原稿60がガラス面26から浮いている場合であっても、平面図で見た場合のラインセンサと原稿60の位置関係は、変わらない。すなわち、原稿60がガラス面26から浮いている場合と、ガラス面26上に密着している場合とでは、各ラインセンサは主走査方向(X方向)については、同じ位置のデータを取得する。したがって、図5(b)では、図4(b)の場合と同様に、ラインセンサ21Okの右端srとラインセンサ21Ekの左端slは、ともに原稿60の領域Ak,kを読取り、ラインセンサ21Ekの右端srとラインセンサ21Ok+1の左端slは、ともに原稿60の領域Ak,k+1を読取り、ラインセンサ21Ok+1の右端srとラインセンサ21Ek+1の左端slは、ともに原稿60の領域Ak+1,k+1を読取る。
一方、図5(a)に示されるように、撮像部2の側面図で見た場合、原稿60がガラス面26から浮いているため、奇数番目に位置するラインセンサ21O1,…,21Ok,…,21Onの光軸27Oが原稿60と交わる位置と偶数番目に位置するラインセンサ21E1,…,21Ek,…,21Enの光軸27Eが原稿60と交わる位置が異なる。そのため、原稿60がガラス面26から浮いている場合、副走査方向(Y方向)には、ラインセンサごとで読取り位置が異なる。これは、副走査方向(Y方向)に撮像部2が搬送されるとき、それぞれのラインセンサは、逐次光電変換しているため、偶数番目に位置するラインセンサ21E1,…,21Ek,…,21Enは、奇数番目に位置するラインセンサ21O1,…,21Ok,…,21Onに比べて、同じ位置の画像を時間的に遅れて取得することになるからである。したがって、図5(c)に示されるように、奇数番目に位置するラインセンサ21Ok,21Ok+1に対応する画像データDI(Ok),DI(Ok+1)と偶数番目に位置するラインセンサ21Ek,21Ek+1に対応する画像データDI(Ek),DI(Ek+1)とは、副走査方向の位置(ライン)がずれて(画像データDI(Ok),DI(Ok+1)に比べ画像データDI(Ek),DI(Ek+1)が図示の下方向にずれて)、画像メモリ41に格納される。言い換えれば、ラインセンサ21Oとラインセンサ21Eによって読取られる副走査方向(Y方向)の位置は、隣接するデジタルデータdrとdlでは、画像メモリ41内の副走査方向の位置(ライン)が異なることになり、ラインセンサによって読取られた画像データとの間の副走査方向の位置ずれ量(ライン数)が生じる。また、図4(a)〜(c)の場合と同様に、ラインセンサ毎には性能のばらつき及び照明分布などの読取り条件の違いがあるため、ラインセンサ21Oが読取る画像データDI(Ok)と、ラインセンサ21Eが読取る画像データDI(Ek)では、ラインセンサ毎に読取った画像データのレベル差が生じる場合がある。
画像読取装置1の画像処理部4は、画像メモリ41と、低域除去部42とを備えている。画像メモリ41は、第1列のラインセンサ群と第2列のラインセンサ群の複数のラインセンサによる出力から生成された、第1の画像データと第2の画像データを格納する。低域除去部42は、画像メモリ41に格納されている画像データDIのうちのオーバーラップ領域における画像データに対しての処理を行う。すなわち、低域除去部42は、オーバーラップ領域における注目画素近傍(すなわち、注目画素と該注目画素の周辺画素とを含む画素範囲)における画像データから低域周波数成分を除去し、この低域周波数成分が除去された画像データのうち、副走査方向の予め決められた位置(所定の副走査位置又は所定のラインとも記す)の基準データと、この基準データと重複して読取られた同じオーバーラップ領域の予め決められたライン数の比較データとを出力する。なお、低域除去部42から出力される基準データ及び比較データは、低域除去基準データ及び低域除去比較データとも言う。また、「注目画素近傍」とは、注目画素と、この注目画素の周囲の予め決められた範囲内の周辺画像と、を含む範囲(画素範囲)を意味する。また、「所定の副走査方向の位置」とは、副走査方向における予め決められた位置を意味する。また、「低域周波数成分」とは、予め設定された(予め決められた)周波数よりも低い周波数の成分を意味する。
また、画像処理部4は、低域除去部42における低域周波数成分の除去処理によって生成された低域除去基準データと低域除去比較データとを比較する処理を、複数の位置の低域除去比較データについて行い、低域除去基準データと副走査方向の複数の位置における低域除去比較データ(すなわち、複数ラインの低域除去比較データ)との間の類似度を算出する類似度算出部43と、低域除去基準データの副走査方向の位置と複数ラインの低域除去比較データとの間の複数の類似度のうちの最も高い類似度を持つ低域除去比較データの副走査方向の位置との差分に基づいてシフト量データを算出(推定)するシフト量推定部44とを備えている。
さらに、画像処理部4は、シフト量データに基づいて副走査方向の位置を変えて、画像メモリ41から画像データを読み出し、第1の画像データと第2の画像データとを結合する結合処理部45とを備えている。
画像処理部4内の低域除去部42と類似度算出部43、及びシフト量推定部44では、画像メモリ41に格納されている画像データDIのうちのオーバーラップ領域における画像データに対しての処理を行う。すなわち、画像処理部4の低域除去部42から類似度算出部43、シフト量推定部44での処理により、オーバーラップ領域における注目画素とその周辺画素を含む画素範囲における画像データの低域周波数成分を除去し、この低域周波数成分が除去されたオーバーラップ領域における低域除去基準データと複数の低域除去比較データとを比較して複数の類似度を算出し、複数の類似度のうちの最も類似度の高い低域除去比較データの副走査方向の位置からシフト量データを算出する。そして、画像処理部4内の結合処理部45において、算出されたシフト量データに基づいて画像メモリ41から画像データを読み出し、読み出された画像データの結合処理を行って合成画像データを生成する。以下に、この画像処理部4の構成及び動作をさらに具体的に説明する。
画像処理部4内の低域除去部42には、画像メモリ41内のオーバーラップ領域における画像データ、すなわち、画像データDIのうち、副走査方向(Y方向)の所定位置ynとその前後のラインにおけるオーバーラップ領域(図4及び図5中のdr又はdl)の画像データrMを読み出し入力する。オーバーラップ領域の画像データrMは、画像メモリ41内のオーバーラップ領域における画像データDIのうち、画像データrMO(低域除去基準データに相当)と、画像データrMOと重複して読取られた同じオーバーラップ領域に位置する画像データrME(低域除去比較データに相当)を含んでいる。
低域除去部42は、オーバーラップ領域における画像データrMに対する処理、すなわち、オーバーラップ領域における注目画素とその周辺画素を含む画素範囲について、画像データの低域周波数成分を画像データから除去して、低域周波数成分を除去された低域除去画像データhM(低域除去基準データhMO及び低域除去比較データhME)を生成する。そして、低域除去部42は、低域除去画像データhMのうち、副走査方向(Y方向)の所定位置Ymとその周辺(Y方向1ライン間隔毎及びX方向)の低域除去画像データを低域除去基準データMOとして、低域除去基準データMOと重複して読取られた同じオーバーラップ領域における低域除去基準データMOの副走査方向(Y方向)の位置である基準ラインYmを中心として−yから+yまでの範囲((Ym−y)から(Ym+y)までの範囲)、すなわち、基準ラインYmの前後ラインにおける予め決められた検索範囲“−y〜+y”の位置とその周辺(Y方向1ライン間隔毎及びX方向)における低域除去画像データを低域除去比較データMEとし、予め決められたライン数の低域除去基準データMOと低域除去比較データMEとして出力する。
ここで、上述したように、ラインセンサ毎の性能及び照明分布などの読取り条件の違いにより、ラインセンサにより読取られた画像データDIには、ラインセンサ間で画像データの値のレベル差(明暗の差、画素データの値の差)が生じる。このラインセンサ間のレベル差を生じさせる各ラインセンサで取得した画像データの値の変化、すなわち、デジタルデータDIの値の変化は、画素ごとで発生するランダムノイズ及び、読取り画像にある副走査方向若しくは主走査方向の1ライン単位又は1画素単位で変化するようなパターン及びエッジ等の輪郭での変化とは異なり、副走査方向あるいは主走査方向に、比較的緩やかに変化する低域周波数成分として現れる。この低域周波数成分は、例えば、副走査方向に数ライン(3ライン以上のライン数)より多くのライン周期に亘り変化するような、画像データの値の変化として扱うことができる。
したがって、低域除去部42において、この緩やかに変化する低域周波数成分をオーバーラップ領域における画像データrMから除くことで、画像処理部4は、ラインセンサ毎の性能及び読取り条件の違いにより生じる取得したオーバーラップ領域における画像データDIの値の変化を除き、重複して読取られた同じオーバーラップ領域の低域除去基準データMOと低域除去比較データMEを、ラインセンサ毎の性能及び読取り条件の違いにより生じるレベル差の影響が抑えられた画像データとして得ることができる。
低域除去部42は、例えば、図6に示されるように構成される。低域除去部42は、画像メモリ41から読み出されたオーバーラップ領域における画像データrMに対しての処理を行う。すなわち、低域除去部42は、オーバーラップ領域における画像データrMの低域周波数成分を、画像データrMから除去して低域除去画像データhMを生成し、低域除去画像データhMのうち、オーバーラップ領域の位置に応じて低域除去基準データhMOと低域除去比較データhMEとをそれぞれオーバーラップMO画像メモリ424とオーバーラップME画像メモリ425のいずれかに一時格納し、一時格納されたデータから予め決められたライン数の低域除去基準データMOと低域除去比較データMEを読み出して出力する。
図6に示されるように、低域除去部42は、オーバーラップ低域除去部421と、オーバーラップMO画像メモリ424と、オーバーラップME画像メモリ425とを備えている。また、オーバーラップ低域除去部421は、低域周波数成分を抽出する低域成分抽出部422と、減算部423とを備えている。
低域除去部42におけるオーバーラップ低域除去部421は、画像メモリ41から、オーバーラップ領域における画像データrM(基準画像データrMOと比較画像データrME)を読み出す。オーバーラップ低域除去部421は、オーバーラップ領域における画像データrMに対しての処理を行う。すなわち、オーバーラップ低域除去部421は、画像の低域周波数成分を画像データrMから除去して低域除去画像データhMを生成する。このとき、低域除去画像データhMは、低域周波数成分が除かれた、画像データの副走査方向若しくは主走査方向の1ライン、1画素単位で変化するようなパターン及びエッジ等の輪郭での変化情報を持つ値により構成される画像データとなり、例えば、符号付きの画像データ、又は、所定のオフセット値により正の値へ変換した画像データとなる。
図7は、低域除去部42において、低域周波数成分を抽出する画素範囲の一例を示す。図7は、低域除去部42での低域成分抽出画素範囲の位置関係を示す。ここで、オーバーラップ低域除去部421で画像の低域周波数成分として抽出する範囲(低域成分抽出範囲)は、例えば、図7に示されるように、画像メモリ41内の副走査方向の所定位置ynにおけるオーバーラップ領域の注目画素P0を中心とし、副走査方向9ライン、主走査方向1画素の合計9画素で構成される画素範囲(低域成分抽出範囲)b2である。オーバーラップ低域除去部421は、副走査方向9ラインの範囲(低域成分抽出ライン範囲)における低域周波数成分を得て、低域周波数成分を除去された低域除去画像データhMを生成する。この低域除去画像データhMは、副走査方向の低域周波数成分が除去された低域除去画像データhMとなる。
なお、低域成分抽出範囲は、図7に示される副走査方向9ライン(ラインyn+4からラインyn−4までの9ライン)、主走査方向1画素の計9画素で構成される範囲に限定されるものではなく、ラインセンサ間のレベル差につながる各ラインセンサで取得した画像データの値の変化、例えば、副走査方向に数ラインより多くのライン周期に亘り変化するような、比較的緩やかに変化する低域周波数成分が抽出できる範囲であれば、他の範囲であってもよい。低域成分抽出範囲は、例えば、画像メモリ41内の副走査方向の所定位置ynにおけるオーバーラップ領域の注目画素P0を中心とし、副走査方向uライン、主走査方向v画素の合計(u×v)画素で構成される画素範囲としてもよい。ここで、uは、2以上の整数であり、vは1以上の整数である。
また、主走査方向に2画素以上の範囲をとり、副走査方向と主走査方向の二次元方向で低域周波数成分を求めることもできる。しかし、ラインセンサ間の副走査方向の位置ずれは、一般的には、主走査方向に同じ値が並ぶ横線又は傾きを持つ斜め線など(副走査方向のエッジ部、高域周波数部分)の一致による判定が主要素となり、主走査方向のエッジである縦線だけでは副走査方向の画像の一致は判定できない。したがって、副走査方向のみの低域周波数成分の抽出であっても、低域周波数成分の抽出の精度は低下し難い。また、副走査方向のみで低域周波数成分を求める場合には、二次元方向で低域周波数成分を求める場合に比べて、ハードウェアの構成の簡素化及び演算処理の容易化が実現でき、演算規模を小さくすることができる。
図6において、オーバーラップ低域除去部421へ入力されたオーバーラップ領域における画像データrMは、低域成分抽出部422と、減算部423へ入力される。
オーバーラップ低域除去部421における低域成分抽出部422は、オーバーラップ領域の画像データrM内の注目画素P0を中心とする副走査方向9ラインの低域成分抽出範囲b2(図7に長方形の破線で囲う範囲)において、注目画素P0(又はそれに対応する位置)の近傍の画像データにおける副走査方向の低域周波数成分である低域成分adcを抽出し、これを出力する。
低域成分抽出部422における画像データの低域周波数成分(低域成分adc)抽出は、例えば、低域成分抽出範囲b2に対応する位置にある画素の画素値の平均を算出することにより行う。低域成分抽出範囲b2内における平均を算出するので、副走査方向の9ラインの間に平均して存在する画素レベル、すなわち、9ライン中の低域周波数成分を抽出することができる。ここで、図7に示される低域成分抽出範囲b2では9画素(9ライン)の画素値の平均値を求めるため、画素値の合計を9分の1することとなるが、ハードウェアの構成の容易さ及び演算処理の容易さを考慮して、9に代えて、8(2の3乗)又は、4(2の2乗)で割る演算となるように低域成分抽出部422を構成してもよい。低域成分抽出部422が行う処理は、低域周波数成分としての平均値を反映した指標が得られる処理であれば、他の処理であってもよい。また、低域成分抽出部422は、低域成分抽出範囲b2に対応する位置にある画素の画素値の平均値に、予め決められた係数を乗算して、ゲイン調整等の変換を行うよう構成することもできる。
なお、低域成分抽出部422では画素値の平均から低域成分adcを求める場合を説明したが、低域成分抽出部422は、注目画素P0に対する各画素の位置(図7ではライン間隔)に応じて、重み付け平均化してもよく、例えば、注目画素P0に近い画素における重みが大きく、注目画素P0からの距離が大きくなるほど重みが次第に小さくなるように重み付け加算することで重み付け平均化を行うこととしてもよい。
また、低域成分抽出部422は、低域通過フィルタ(ローパスフィルタ、又は、LPFとも記す)等により構成することができ、ライン間の画素でLPF処理した値を低域成分adcとして求めることもできる。この場合、低域成分抽出部422では、通過させる低域周波数成分が、ライン周波数の数ライン分の1(例えば、図7においては1/9)となるように、緩やかに変化する低域周波数成分を抽出させるようなフィルタ係数を設定すればよい。
図6のオーバーラップ低域除去部421における減算部423へは、オーバーラップ領域における画像データrMの中心ライン(図7における副走査方向読み出しラインyn)の注目画素P0と、低域成分抽出部422からの低域周波数成分である低域成分adcとが入力される。
オーバーラップ低域除去部421の減算部423は、画像データrMに対する処理、すなわち、画像データrMの注目画素P0の画像データから、低域成分抽出部422からの低域成分adcを減算することで、画像データrMから注目画素P0の近傍にある画像の低域周波数成分を除去し、低域除去画像データhMを生成する処理を行う。このとき、低域除去画像データhMは、低域周波数成分である低域成分adcを画像データrMから減算することによって生成されるので、符号付きのパターン及びエッジ等などの輪郭での変化情報を持つ値の画像データとなる。この低域除去画像データhMは、符号付きの値のままで扱うことも可能であるが、所定のオフセット値により正の値に変換(絶対値に変換)したデータであってもよい。ただし、減算結果を絶対値化した値は、エッジ及び輪郭情報の有無を示す値となり、変化の方向を示していないので、この場合の低域除去画像データhMでは、符号値(変化する方向を示す)を併せて保持する必要がある。
オーバーラップ低域除去部421へ入力されたオーバーラップ領域の画像データrMは、オーバーラップ領域における画像データDIのうちの、画像データrMO(基準データに相当)と、画像データrMOと重複して読取られた同じオーバーラップ領域に位置する画像データrME(比較データに相当)とを含んでいるので、減算部423で低域周波数成分を除去された低域除去画像データhMもまた、基準データとなる画像データrMOと比較データとなる画像データrMEから低域周波数成分を除去した低域除去基準データhMO及び低域除去比較データhMEを含む。
以上のように、図6に示されるオーバーラップ低域除去部421は、オーバーラップ領域における画像データrMに対する処理、すなわち、画像の低域周波数成分を除去した低域除去画像データhMを生成して出力する処理を行う。オーバーラップ低域除去部421からの低域除去画像データhMは、オーバーラップMO画像メモリ424及びオーバーラップME画像メモリ425へと入力されて、一時格納される。
オーバーラップ低域除去部421からの低域除去画像データhMは、低域除去基準データとなる画像データrMOと低域除去比較データとなる画像データrMEとから低域周波数成分を除去した低域除去基準データhMO及び低域除去比較データhMEを持つので、低域除去画像データhMのうち、オーバーラップ領域の位置(処理のタイミング)に応じて、低域除去基準データhMOはオーバーラップMO画像メモリ424に、低域除去比較データhMEはオーバーラップME画像メモリ425にそれぞれ格納される。
そして、オーバーラップMO画像メモリ424及びオーバーラップME画像メモリ425からは、次の類似度算出部43での処理タイミングに合わせ、予め決められたライン数の低域除去基準データMOと低域除去比較データMEが読み出され、出力される。オーバーラップMO画像メモリ424からは、低域除去基準データhMOのうちの所定の副走査方向(Y方向)の位置Ymとその周辺(Y方向1ライン間隔毎及びX方向)の低域除去画像データが、低域除去基準データMOとして読み出される。オーバーラップME画像メモリ425からは、低域除去比較データhMEのうち、低域除去基準データMOと重複して読取られた同じオーバーラップ領域において、低域除去基準データMOの副走査方向(Y方向)の位置Ymの前後ラインにおける予め決められた検索範囲“−y〜+y”(「+」で示す正方向が副走査方向)の位置とその周辺(Y方向1ライン間隔毎及びX方向)における低域除去画像データが、低域除去比較データMEとして読み出される。
オーバーラップMO画像メモリ424から読み出された低域除去基準データMOとオーバーラップME画像メモリ425から読み出された低域除去比較データMEとは、低域周波数成分を除去した予め決められたライン数の低域除去基準データMOと低域除去比較データMEとして、低域除去部42から類似度算出部43へと送られる。
上記予め決められた検索範囲“−y〜+y”は、低域除去基準データMO(低域除去基準データhMO)の中心ライン位置との差、すなわち、副走査方向の位置ずれ量(シフト量とも呼ぶ。)dYが取り得る値の範囲である。検索範囲“−y〜+y”は、画像読取装置1の撮像部2により原稿60を読取る際、原稿60とガラス面との距離及び光軸のずれ等により起こり得る副走査方向の位置のずれ量を考慮して決められる。検索範囲“−y〜+y”は、結合処理において画像データをシフトさせる副走査方向の位置(ライン)、すなわち、副走査方向の位置ずれの検出を行う検索範囲である。位置ずれ量dYは、−yから+yまでの範囲内の値をとる。
以上から、図6における低域除去部42は、オーバーラップ領域における画像データrMから低域周波数成分を除去した低域除去画像データhM(低域除去基準データhMO及び低域除去比較データhME)を生成し、低域除去画像データhMのうち、オーバーラップ領域におけるラインYm(後述する図8〜10に示される)とその周辺の画像データを、検索範囲“−y〜+y”に対する低域除去基準データMOとして出力する。また、低域除去部42は、対応するオーバーラップ領域については、ラインYmを中心とした検索範囲“−y〜+y”(すなわち、ライン(Ym−y)からライン(Ym+y)までの範囲)内のラインとその周辺の画像データを低域除去比較データhMEとして求め、検索範囲“−y〜+y”内にある各ラインの低域除去比較データMEとして出力する。低域除去部42から出力する際の副走査方向の位置ずれ量dYの検出を行うための検索範囲は、ライン(Ym−y)からライン(Ym+y)までの範囲内のラインとなり、低域除去基準データMOと検索範囲“−y〜+y”内にあるライン数に等しい数の低域除去比較データMEは、類似度算出部43へ送られる。
低域除去部42は、オーバーラップ領域における画像データrMから、オーバーラップ低域除去部421において低域周波数成分を除去して低域除去画像データhM(低域除去基準データhMO及び低域除去比較データhME)を生成し、低域除去画像データhMを、低域除去画像データのうちの低域除去基準データMOと、位置ずれ量dYが−yから+yまでの範囲内の値をとる低域除去比較データMEとして、出力することができる。このように、低域除去部42は、重複して読取られた同じオーバーラップ領域の低域除去基準データMOと低域除去比較データMEを、ラインセンサ毎の性能及び読取り条件の違いにより生じるレベル差の影響が抑えられた画像データとして、出力することができる。また、オーバーラップ低域除去部421における低域成分抽出範囲を副走査方向に並ぶラインとしたので、出力される低域除去画像データは、副走査方向の低域周波数成分が除去された低域除去基準データMOと低域除去比較データMEとなり、低域周波数成分の抽出の精度を落とさず、ハードウェアの構成の簡素化、演算処理の容易化を実現でき、演算規模を小さくすることができる。
図8は、原稿がガラス面に密着しているときの低域除去部42及び類似度算出部43の動作を説明するための図であり、図9は、原稿がガラス面から離れているときの低域除去部42及び類似度算出部43の動作を説明するための図である。図8及び図9は、低域除去部42が、画像メモリからオーバーラップ領域における画像データrMを読み出し、読み出された画像データrMから低域周波数成分を除去して得られた低域除去画像データのうちの低域除去基準データMOと低域除去比較データMEとを出力する際の、低域除去基準データMOの画像データDI(O)と低域除去比較データMEの画像データDI(E)のオーバーラップ領域上での位置と動作を説明するための図である。
図8は、図4(c)に対応する図(原稿60がガラス面に密着している場合)であり、低域除去画像データのうちの低域除去基準データMOと低域除去比較データMEの画像データDI上における位置関係を示している。低域除去基準データMOは、副走査方向(Y方向)の位置Ym(ラインYm)における画像データから低域周波数成分を除去して得られた低域除去画像データであり、低域除去比較データMEは、位置ずれ量dYが−yから+yまでの範囲内の値をとる画像データから低域周波数成分を除去して得られた低域除去画像データである。
図9は、図5(c)に対応する図(原稿60がガラス面から離れている場合)であり、副走査方向(Y方向)の位置Ym(ラインYm)における画像データから低域周波数成分を除去して得られた低域除去画像データである低域除去基準データMOと、位置ずれ量dYが−yから+yまでの範囲内の値をとる画像データから低域周波数成分を除去して得られた低域除去比較データMEとの位置関係を示している。
上述したように、低域除去部42には、画像メモリ41から読み出されたオーバーラップ領域における画像データrMが、オーバーラップ低域除去部421に入力される。図8及び図9に示されるように、副走査方向(Y方向)の位置Ymにおける低域除去画像データである低域除去基準データMOは、ラインセンサ21Okに対応する画像データDI(Ok)のオーバーラップ領域drにおいて、ラインYmを中心とした周辺の画像データに対応する低域除去画像データであり、図8及び9におけるMO(Ok,dr,Ym)となる。位置ずれ量dYが−yから+yまでの範囲内の値をとる画像データから低域周波数成分を除去して得られた低域除去比較データMEは、ラインセンサ21Ekに対応する画像データDI(Ek)のオーバーラップ領域dlにおいて、ラインYmを中心とし検索範囲“−y〜+y”内のラインとその周辺の画像データに対応する低域除去画像データであり、図8及び図9における画像データME(Ek,dl,Ym)となる。低域除去比較データMEは、検索範囲“−y〜+y”内のラインの画像データに対応する低域除去画像データであり、低域除去基準データMOより低域除去比較データMEが副走査方向(Y方向)に広くなる。
図8及び図9において、低域除去部42は、
画像データDI(Ok)のオーバーラップ領域drの低域除去基準データMO(Ok,dr,Ym)と画像データDI(Ek)のオーバーラップ領域dlの低域除去比較データME(Ek,dl,Ym)、
画像データDI(Ok+1)のオーバーラップ領域dlの低域除去基準データMO(Ok+1,dl,Ym)と画像データDI(Ek)のオーバーラップ領域drの低域除去比較データME(Ek,dr,Ym)、
画像データDI(Ok+1)のオーバーラップ領域drの低域除去基準データMO(Ok+1,dr,Ym)と画像データDI(Ek+1)のオーバーラップ領域dlの低域除去比較データME(Ek+1,dl,Ym)、…のような順番で、
順次、低域除去基準データと低域除去比較データとを出力する。
図10は、低域除去部42から出力される予め決められたライン数の低域除去基準データMOと低域除去比較データMEの副走査方向の位置関係をさらに詳しく説明するための図である。図10は、低域除去部42から出力されるときの低域除去基準データMOと低域除去比較データMEの副走査方向(ラインの配列方向)の位置関係を示している。低域除去部42は、ラインYmを基準ラインとして、オーバーラップ領域における画像データrMから低域周波数成分を除去し、低域除去基準データMOと低域除去比較データMEを生成する。低域除去基準データMOと低域除去比較データMEは、検出基準ラインYmを中心として複数の画素のデータで構成される。
図10において、低域除去部42では、低域除去基準データMOと低域除去比較データMEが、オーバーラップMO画像メモリ424及びオーバーラップME画像メモリ425により、検出基準ラインYmを中心とした低域除去基準データMO(Ok,dr)と低域除去比較データME(Ek,dl)としてそれぞれ格納される。低域除去部42は、オーバーラップMO画像メモリ424及びオーバーラップME画像メモリ425から画像データを読み出し、低域除去基準データMOと低域除去比較データMEを出力する。低域除去基準データMO(Ok,dr)は、基準ラインYmを中心とした副走査方向の幅bhラインの低域除去基準データhMOにおける画像データMO(Ok,dr,Ym)であり、低域除去比較データME(Ek,dl)は、デジタルデータDI(Ek)のオーバーラップ領域dlにおいて、基準ラインYmを中心とした検索範囲“−y〜+y”内の各ラインで、それぞれがMO(Ok,dr,Ym)と同じ幅bhラインとなるような画像データME(Ek,dl,dY)となる。具体的には、図10において、検出基準ラインYmと中心位置が同じデータとして、画像データME(Ek,dl,0)とし、1ライン分ずらした位置のデータME(Ek,dl,1)、yライン分ずらしたデータME(Ek,dl,y)とし、逆方向にyライン分ずらしたデータME(Ek,dl,−y)として配置して、低域除去部42から出力する。ここで、yは、ライン数を示す正の整数である。
なお、図10に関する上記説明では、低域除去部42において出力される予め決められたライン数の低域除去基準データMOと低域除去比較データMEは、基準ラインYmを中心とした副走査方向の幅bhラインの低域除去画像データとしたが、幅bhは1つの中心ラインのみにしてもよい。副走査方向の幅bhをとることで、周辺の画像データの情報をもつ低域除去基準データ及び低域除去比較データとすることができ、後述する類似度算出部43における処理でより精度よく類似度を算出することができる。
また、画像処理部4は、図6に示される低域除去部42の代わりに、図11に示される低域除去部42bを備えてもよい。図11に示される低域除去部42bにおいては、画像メモリ41内のオーバーラップ領域における画像データrMを基準データとなる画像データrMOと比較データとなる画像データrMEとして別々に読み出して、それぞれの画像データに対し図6のオーバーラップ低域除去部421と同様の処理を行い、低域除去基準データhMO及び低域除去比較データhMEを求める。
図11において、図6に示される構成要素と同一又は対応する構成要素には、図6における符号と同じ符号を付す。図11に示される低域除去部42bは、2つのオーバーラップ低域除去部4211及び4212を備えている点において、1つのオーバーラップ低域除去部421を備えている図6の低域除去部42と相違する。図11に示されるオーバーラップ低域除去部4211及び4212には、オーバーラップ領域における画像データrMのうちの基準画像データrMO及び比較画像データrMEがそれぞれ入力される。オーバーラップ低域除去部4211は、オーバーラップ領域における画像データrMのうちの基準画像データrMOに対し、画像の低域周波数成分を画像データから除去して低域除去基準データhMOを出力する。オーバーラップ低域除去部4212は、オーバーラップ領域における画像データrMのうちの比較画像データrMEに対し、画像の低域周波数成分を画像データから除去して低域除去比較データhMEを出力する。
図11の低域除去部42bにおけるオーバーラップMO画像メモリ424とオーバーラップME画像メモリ425において、低域除去基準データhMOはオーバーラップMO画像メモリ424に、低域除去比較データhMEはオーバーラップME画像メモリ425にそれぞれ格納され、低域除去部42bからの出力として、低域周波数成分を除去した予め決められたライン数の低域除去基準データMOと低域除去比較データMEを読み出し、出力する。以上に説明した点を除き、図11に示される低域除去部42bは、図6に示される低域除去部42と同じである。
画像処理部4内の類似度算出部43には、低域除去部42からの低域周波数成分を除去された低域除去画像データである低域除去基準データMOと低域除去比較データMEが送られる。低域除去比較データMEは、位置ずれ量dYの検索範囲“−y〜+y”内のラインによる低域除去比較データである。類似度算出部43では、低域除去基準データMOと低域除去比較データMEとを比較する処理を位置ずれ量dYが−yから+yまでの範囲内をとる複数の位置について行い、類似度である相関データD43を算出し、生成する。
図12(a)及び(b)は、類似度算出部43の動作を説明するための図であり、類似度算出部43に検出基準ラインYmを中心とした低域除去基準データMO(Ok,dr)と低域除去比較データME(Ek,dl)が入力される場合を示している。図12(a)において、類似度算出部43は、入力された低域除去基準データMO(Ok,dr)に対し、まず、位置ずれ量dYが−yから+yまでの範囲内をとる低域除去比較データME(Ek,dl)から低域除去基準データMO(Ok,dr)と同じ大きさ(同じ副走査方向の幅bhライン)の複数の画像データME(Ek,dl,dY)を抽出する。dYは、低域除去基準データMO(Ok,dr)との副走査方向の位置ずれ量であり、探索範囲“−y〜+y”の範囲内の値をとる。低域除去基準データMO(Ok,dr)の中心位置である検出基準ラインYmと同じ位置にあるデータを画像データME(Ek,dl,0)とし、1ライン分ずらしたデータをME(Ek,dl,1)、さらに順に1ラインずつずらし、yライン分ずらしたデータを画像データME(Ek,dl,y)とし、逆方向にyライン分ずらしたデータを、画像データME(Ek,dl,−y)とする。
次に、類似度算出部43は、低域除去基準データMO(Ok,dr)と低域除去比較データME(Ek,dl)における画像データME(Ek,dl,−y)〜ME(Ek,dl,y)との間の類似度を算出し、相関データD43(Ok,Ek)を出力する。低域除去基準データMO(Ok,dr)と低域除去比較データME(Ek,dl,−y)〜ME(Ek,dl,y)のそれぞれは、副走査方向の大きさが同じである。例えば、類似度算出部43は、低域除去基準データMO(Ok,dr)と低域除去比較データME(Ek,dl,−y)〜ME(Ek,dl,y)のそれぞれとの画素毎の差分の絶対値の和、又は、画素毎の差分の二乗和を類似度として算出し、相関データD43(Ok,Ek,dY)とし出力する。同様に、類似度算出部43は、次の低域除去基準データMO(Ok+1,dl)と低域除去比較データME(Ek,dr)、低域除去基準データMO(Ok+1,dr)と低域除去比較データME(Ek+1,dl)、…の類似度を順次算出し、相関データD43(Ok+1,Ek,dY),D43(Ok+1,Ek+1,dY),…と生成する。
なお、図12(a)において、検索範囲“−y〜+y”内の低域除去比較データME(Ek,dl)から、副走査方向の位置ずれ量dYとして1ラインずつずらして画像データME(Ek,dl,dY)をとり、類似度(相関データD43)を算出する場合を説明したが、類似度算出部43は、副走査方向の前後ラインの画像データから補間処理することで、ラインとラインの間の副走査方向の位置(サブ・ラインと記す)を求め、同様に低域除去基準データMOとの類似度を算出し、相関データD43を生成することもできる。
図12(b)は、類似度算出部43において、検出基準ラインYmを中心とした低域除去基準データMO(Ok,dr)と低域除去比較データME(Ek,dl)における画像データME(Ek,dl,−y)〜ME(Ek,dl,y)の類似度を算出したときの位置ずれ量dY(検索範囲“−y〜+y”)に対する相関データD43(Ok,Ek,dY)の値の例を示している。図12(b)において、破線が図8に対応する相関データD43(Ok,Ek,dY)であり、実線が図9に対応する相関データD43(Ok,Ek,dY)である。図8では、奇数番目に位置するラインセンサ21O1,…,21Ok,…,21Onと偶数番目に位置するラインセンサ21E1,…,21Ek,…,21Enが副走査方向(Y方向)で同じ位置を読取っているため、そのデータもずれていない。したがって、図12(b)の破線のようにdY=0の位置で類似度が高く(すなわち、非類似度が低く)なる。また、図9では、原稿60がガラス面26から上に離れているため、奇数番目に位置するラインセンサ21O1,…,21Ok,…,21Onに対して偶数番目に位置するラインセンサ21E1,…,21Ek,…,21Enの読取り画像が、画像の副走査方向の位置が下方向にずれ、正の値(dY=+a)の位置で、類似度が最も高く(すなわち、非類似度が最も低く)なる。
類似度算出部43は、低域除去部42からの低域除去基準データMOと低域除去比較データMEから、位置ずれ量dYが−yから+yまでの範囲内をとる複数の位置について類似度である相関データD43を算出しているので、この相関データD43は、ラインセンサ毎の性能及び読取り条件の違いにより生じるレベル差の影響を除かれている。したがって、実施の形態1に係る画像処理装置によれば、画像データのパターン及びエッジ等の輪郭での変化情報による低域除去画像データから求めた類似度に基づく相関データD43を得ることができる。
シフト量推定部44へは、類似度算出部43からの“−y〜+y”範囲内の複数のラインの位置ずれ量dYにおける相関データD43が入力される。シフト量推定部44は、複数のラインの相関データD43のうち類似度が最も高いずれデータに対応する位置ずれ量dYをシフト量データdybとして、結合処理部45へと出力する。
言い換えれば、図12(b)において、破線のようにdY=0の位置で類似度が高く(すなわち、非類似度が低く)なる場合は、dY=0をシフト量データdybとし、また、実線が示すようなdY=+aの位置で類似度が最も高く(すなわち、非類似度が最も低く)なる場合は、dY=+aをシフト量データdybとする。
類似度算出部43からの相関データD43は、低域除去画像データから求めた類似度で算出されており、ラインセンサ毎の性能及び読取り条件の違いにより生じるレベル差の影響を除かれている。このため、シフト量推定部44で相関データD43のうち類似度が最も高いずれデータに対応する位置ずれ量dYを求めて副走査方向の位置ずれを検出する際に、ラインセンサ毎のレベル差の影響を抑えて、誤検出なく、精度よく副走査方向の値に相当するシフト量データdybを得ることができる。
画像処理部4内の結合処理部45へは、シフト量推定部44からのシフト量データdybが入力される。結合処理部45は、シフト量データdybに基づいて画像データの読み出し位置RPを算出し、その読み出し位置に対応する画像データM45を読み出し、シフト量データdybに基づいて画像データをずらす処理を行い、画像データのオーバーラップ領域におけるデータを結合する。
図13並びに図14(a)及び(b)は、結合処理部45の動作を説明するための図である。結合処理部45は、図13に示されるように、奇数番目に位置するラインセンサ21O1,…,21Ok,…,21Onに対応する画像データDI(Ok)をシフトさせずに、偶数番目に位置するラインセンサ21E1,…,21Ek,…,21Enに対応する画像データDI(Ek)を、シフト量データdyb分だけ副走査方向にシフトさせて、副走査方向の位置ずれを無くしてから、奇数番目の画像データと偶数番目の画像データとを結合して合成画像データを生成することができる。この処理の代わりに、結合処理部45は、図14(a)及び(b)に示されるように、奇数番目に位置するラインセンサ21O1,…,21Ok,…,21Onに対応する画像データDI(Ok)(k=1,…k,…,n)と、偶数番目に位置するラインセンサ21E1,…,21Ek,…,21Enに対応する画像データDI(Ek)(k=1,…k,…,n)との両方をシフトし、これら両方のシフトのシフト量の合計値がシフト量データdybと同じになるようにして、副走査方向の位置ずれを無くしてから、奇数番目の画像データと偶数番目の画像データとを結合して合成画像データを生成することができる。なお、図14(a)は、低域除去部42で基準ラインとして読み出した副走査方向(Y方向)の位置Ymにおける、隣接するラインセンサに対応する画像データDI(Ok)とDI(Ek)との両方を互いに逆方向にシフト量dyb/2ずつラインYmからシフトさせて、シフト量データdybのシフトを行う場合を示している。図14(b)は、低域除去部42で基準ラインとして読み出した副走査方向(Y方向)における、隣接するラインセンサに対応する画像データDI(Ok)とDI(Ek)との両方を互いに逆方向にシフト量dyb/2ずつラインYmに向けてシフトさせて、シフト量データdybのシフトを行う場合を示している。
言い換えれば、結合処理部45は、シフト量データdybに基づいて、画像データの読み出し位置RPを算出し、その読み出し位置に対応する画像データM45を画像メモリ41から読み出し、奇数番目に位置するラインセンサ21O1,…,21Ok,…,21Onのデータと偶数番目に位置するラインセンサ21E1,…,21Ek,…,21Enのデータが重複するオーバーラップ領域を結合して画像データD45を生成する。シフト量データdybは、低域除去画像データによる類似度(相関データD43)から求められているので、ラインセンサ毎の性能ばらつき及び読取り条件の違いにより生じるレベル差の影響を抑えて、誤検出なく、精度のよい副走査方向の位置ずれを示すデータとして得ている。よって、結合処理部45は、このシフト量データdybに基づいて画像データの読み出し位置RPを算出すれば、精度よく、正確に各ラインに対応した読み出し位置を求めることができる。
画像処理部4において、低域除去部42は、オーバーラップ領域における画像データrMに対し、低域周波数成分を画像データから除去して低域除去画像データhMを生成し、ある副走査方向(Y方向)の位置Ymを基準ラインとして、奇数番目に位置するラインセンサ21O1,…,21Ok,…,21Onに対応するオーバーラップ領域における低域除去画像データと、偶数番目に位置するラインセンサ21E1,…,21Ek,…,21Enに対応するオーバーラップ領域における低域除去画像データを求めて、これらを予め決められたライン数の低域除去基準データMOと低域除去比較データMEとして出力する。類似度算出部43は、低域除去基準データMOと低域除去比較データMEとを比較して類似度データ(相関データ)D43を算出し、シフト量推定部44は、検出基準ラインYmについて類似度が最も高い(相関の最も大きい)低域除去比較データの副走査方向の位置に対応する位置ずれ量をシフト量データdybとして算出し、結合処理部45は、シフト量データdybに基づいて画像データを読み出し、結合した画像データD45を出力する。画像処理部4は、このような一連の処理を順次繰り返す。
図15は、図4(c)における画像、図5(c)における画像、図8における画像、又は、図9における画像を結合して得られた合成画像を示す図である。図15に示されるように、実施の形態1に係る画像読取装置1においては、隣接する偶数番目に位置するラインセンサと奇数番目に位置するラインセンサで生成された2つの画像データの副走査方向(Y方向)の位置ずれを補正し、図4(b)及び図5(b)に示される原稿60と同じ画像の合成画像データを生成することができる。例えば、図5(c)及び図9の場合には、奇数番目に位置するラインセンサ21O1,…,21Ok,…,21Onの画像データと偶数番目に位置するラインセンサ21E1,…,21Ek,…,21Enの画像データとは、副走査方向(Y方向)にずれていたが、実施の形態1に係る画像読取装置1によれば、図5(b)に示される原稿60と同じ画像の画像データを出力することができる。
図15は、また、結合処理部45から出力される結合処理後の画像データD45を概念的に示す説明図でもある。実施の形態1に係る画像読取装置1によれば、誤検出なく、精度よく得られたシフト量データdybから読み出し位置を求め、シフト量データdybによる値分ずらした位置とその位置の周辺のラインの画像データを用いて画像データD45を生成するので、奇数番目に位置するラインセンサ21O1,…,21Ok,…,21Onと偶数番目に位置するラインセンサ21E1,…,21Ek,…,21Enの副走査方向のずれが修正され、重複して読取っていたオーバーラップ領域の画像が結合される。
図16(a)及び(b)は、撮像部2を搬送中に、ガラス面26に対する原稿60の位置が変わる例を示す図である。副走査方向(Y方向)の位置Ymでは、原稿60は、ガラス面26から浮いており、位置Yuでは、原稿60は、ガラス面26に密着している。この場合には、ラインセンサ毎の性能ばらつき及び読取り条件の違いにより生じるレベル差(レベルの変動)は、同じラインセンサによる画像データ内であっても、副走査方向の位置により生じる。撮像部2は、副走査方向(Y方向)の各位置において順次画像データを処理しているため、搬送中に原稿60の位置が変わったり、レベル値の変動があったりしたとしても、画像処理部4では、各位置において、オーバーラップ領域の画像データから低域周波数成分を除去した画像データにより位置ずれ量を算出しているため、精度よく位置ずれ量を求めて正しく画像を結合することができる。また、図8から図10で説明したように、奇数番目に位置するラインセンサ21O1,…,21Ok,…,21Onと偶数番目に位置するラインセンサ21E1,…,21Ek,…,21Enのうちの隣接する全てのラインセンサ間で、個別にずれ量を算出しているので、主走査方向(X方向)に原稿60のガラス面26に対する位置が変わったとしても、正しく画像を結合することができる。
以上に説明したように、実施の形態1に係る画像読取装置1、画像処理部(画像処理装置)4、及び画像処理方法においては、低域除去部42で、オーバーラップ領域における画像データrMに対する処理、すなわち、低域周波数成分を画像データから除去して低域除去画像データhMを生成し、ある副走査方向(Y方向)の位置Ymを基準ラインとして、低域除去画像データのうちの予め決められたライン数の低域除去基準データMOと低域除去比較データMEを出力する処理を行い、類似度算出部43で、低域除去基準データMOと低域除去比較データMEとを比較して複数の類似度(相関データ)D43を算出する処理を行い、シフト量推定部44で複数の類似度のうちの最も高い類似度を持つ低域除去比較データの副走査方向の位置に対応する位置ずれ量をシフト量データdybとして算出する処理を行い、結合処理部45で、このシフト量データdybに基づいて分割画像(奇数番目の画像及び偶数番目の画像の少なくとも一方の画像)の副走査方向の位置を適切な位置にシフトさせて、隣り合う分割画像同士を結合させた画像データを生成している。
したがって、実施の形態1に係る画像読取装置1、画像処理部(画像処理装置)4、及び画像処理方法においては、オーバーラップ領域における画像データのうちの、ラインセンサ毎の性能及び読取り条件の違いにより生じるレベル差の影響が抑えられた画像データである低域除去基準データMOと検索範囲“−y〜+y”内にあるライン数に等しい数の低域除去比較データMEを求めることができる。よって、実施の形態1に係る画像読取装置1、画像処理部(画像処理装置)4、及び画像処理方法によれば、誤検出なく、精度のよい副走査方向の位置ずれを示すシフト量データdybを算出できるとともに、このシフト量データdybを用いて、奇数番目の画像データと偶数番目の画像データの副走査方向の位置ずれを補正してから、結合した画像データを生成することができ、被読取物に対応する高品質な合成画像データを生成することができる。
また、実施の形態1に係る画像読取装置1、画像処理部(画像処理装置)4、及び画像処理方法によれば、低域除去部42における低域成分抽出範囲を副走査方向に並ぶ複数ラインの範囲として、副走査方向の低域周波数成分が除去された低域除去基準データMOと低域除去比較データMEとを生成しているので、低域周波数成分の抽出の精度を落とさず、ハードウェアの構成の簡素化、演算処理の容易化を実現でき、演算規模を小さくすることができる。
なお、上記画像処理部4では、図8及び図9で説明したように、低域除去画像データである低域除去基準データMOは、ラインセンサ21Okに対応するデジタルデータDI(Ok)のオーバーラップ領域の画像データに対応し、低域除去比較データMEは、ラインセンサ21Ekに対応するデジタルデータDI(Ek)のオーバーラップ領域の画像データに対応する低域除去画像データであるとしたが、本発明は、これに限定されない。例えば、画像処理部4は、低域除去画像データである低域除去基準データMOをラインセンサ21Ekに対応するデジタルデータDI(Ek)のオーバーラップ領域の画像データに対応させ、低域除去比較データMEをラインセンサ21Okに対応するデジタルデータDI(Ok)のオーバーラップ領域の画像データに対応させ、低域除去画像データを求め、低域除去基準データMOと低域除去比較データMEとを比較して相関データD43を算出するよう構成してもよい。
また、画像処理部4は、ラインセンサ21O又は21Eによる画像データDI(Ok)又はDI(Ek)のオーバーラップ領域drを低域除去基準データとして用い、隣接するラインセンサのオーバーラップ領域dlを低域除去比較データとして用いてもよく、オーバーラップ領域における画像データに対し、低域周波数成分を画像データから除去して低域除去画像データhMを生成し、低域除去画像データのうちの隣接するラインセンサによって重複して読取られるオーバーラップ領域の画像データから予め決められたライン数の低域除去基準データMOと低域除去比較データMEとを得ることができれば、上記実施の形態1と同様の効果を奏する。
実施の形態2.
実施の形態1に係る画像読取装置1、画像処理部(画像処理装置)4、及び画像処理方法は、画像処理部4内の低域除去部42,42bを図6及び図11に示されるように構成し、オーバーラップ低域除去部421において、低域成分抽出部422で注目画素P0の近傍の画像データの低域周波数成分である低域成分adcを抽出し、減算部423において画像データから低域成分adcを減算することで、低域除去画像データhMを生成するよう構成されている。これに対し、実施の形態2に係る画像読取装置、画像処理装置、及び画像処理方法は、実施の形態1における低域除去部42及び42bに代えて、図17に示される低域除去部42cを採用している。これ以外の点について、実施の形態2は、実施の形態1と同じである。したがって、実施の形態2の説明においては、図1をも参照する。
図17は、実施の形態2に係る画像読取装置1内の画像処理部4において、低域除去部42の代わりに用いられる低域除去部42cの構成を示すブロック図である。図17において、図1及び図6を参照して説明した構成要素と同一又は対応する構成要素には、図6に示される符号と同じ符号を付している。
図17において、実施の形態2に係る画像読取装置1の画像処理部4における低域除去部42cは、オーバーラップ低域除去部421cを備えており、オーバーラップ低域除去部421cは、低域周波数成分を除去し、高域周波数成分を抽出する高域成分抽出部426を備えている。その他のオーバーラップMO画像メモリ424と、オーバーラップME画像メモリ425の構成及び動作は、実施の形態1で示されるものと同じであり、その詳細な説明は省略する。
低域除去部42cにおけるオーバーラップ低域除去部421cでは、画像メモリ41内のオーバーラップ領域における画像データrM(基準画像データrMOと比較画像データrME)が入力され、オーバーラップ領域における画像データrMに対し、画像の低域周波数成分を画像データから除去して低域除去画像データhMを生成する。この動作は、実施の形態1における低域除去部42のオーバーラップ低域除去部421と同じである。図17において、オーバーラップ低域除去部421cへ入力されたオーバーラップ領域における画像データrMは、高域成分抽出部426へ入力される。高域成分抽出部426では、オーバーラップ領域の画像データrM内の注目画素P0を中心とする例えば、副走査方向9ラインの範囲(図7の低域成分抽出範囲b2)において、注目画素P0(又はそれに対応する位置)の近傍の画像データにおける副走査方向の高域周波数成分を抽出する。
高域成分抽出部426における画像データの高域周波数成分の抽出は、実施の形態1で図7に示す低域成分抽出範囲b2と同じ範囲に位置する画素から行えばよく、具体的には、帯域通過フィルタ(BPF)及び高域通過フィルタ(HPF)等により行い、ライン間の画素で副走査方向のBPF処理を行い、副走査方向の高域周波数成分を抽出する。この場合、BPF処理により除去される低域周波数成分は、ライン周波数の数ライン分の1(例えば、図7では1/9)として緩やかに変化する低域周波数成分を除き、それ以外の高域周波数成分を通過させるようなフィルタ係数を設定すればよい。
なお、高域成分抽出部426で抽出した高域周波数成分に対し、予め決められた係数を乗算し、ゲイン調整等の変換を行うよう構成することもできる。また、高域周波数成分の抽出範囲は、図7に示される副走査方向9ラインの低域成分抽出範囲b2に限定されるものではなく、ラインセンサ間のレベル差につながる各ラインセンサで取得した画像データの値の変化、例えば、副走査方向に数ラインより多くのライン周期に亘り変化するような、比較的緩やかに変化する低域周波数成分を除く高域周波数成分を抽出できればよく、副走査方向と主走査方向の二次元方向で求めることもできる。なお、実施の形態2においては、実施の形態1と同様に、低域周波数成分除去の精度を落とすことはなく、ハードウェアの構成の簡素化、演算処理の容易化を実現でき、演算規模を小さくすることができる。
高域成分抽出部426で抽出した高域周波数成分は、画像データrMから近傍にある画像の低域周波数成分を除去した低域除去画像データhMとして、オーバーラップ低域除去部421cから出力される。低域除去画像データhMは、高域周波数成分を抽出した画像データであるので、符号付きのパターン及びエッジ等の輪郭での変化情報を持つ値の画像データとなる。この低域除去画像データhMは、符号付きの値のままでも、又は、予め定められたオフセット値により正の値へ変換したデータとしてもよい。ただし、減算結果を絶対値化した値は、エッジなどの輪郭情報の有無を示す値となるため、この場合の低域除去画像データhMでは、符号値(変化する方向を示すことになる)を保持する。
オーバーラップ低域除去部421cへ入力されたオーバーラップ領域の画像データrMは、オーバーラップ領域における画像データDIのうち基準画像データrMOと比較画像データrMEを含んでいる。このため、高域成分抽出部426により高域周波数成分を抽出したことによる低域除去画像データhMもまた、低域除去基準データとなる画像データrMOと低域除去比較データとなる画像データrMEから低域周波数成分を除去した低域除去基準データhMO及び低域除去比較データhMEとなる。
低域除去部42cにおけるオーバーラップMO画像メモリ424とオーバーラップME画像メモリ425において、低域除去基準データhMOはオーバーラップMO画像メモリ424に、低域除去比較データhMEはオーバーラップME画像メモリ425にそれぞれ格納され、低域除去部42cからの出力として、低域周波数成分を除去した予め決められたライン数の低域除去基準データMOと低域除去比較データMEが読み出され、出力される。上記以外の点において、低域除去部42cは、実施の形態1の図6に示されるものと同じである。
また、画像処理部4は、図17に示される低域除去部42cの代わりに、図18の低域除去部42dを用いることもできる。図18に示される低域除去部42dにおいては、画像メモリ41内のオーバーラップ領域における画像データrMを基準データとなる画像データrMOと比較データとなる画像データrMEとして別々に読み出して、それぞれの画像データに対し図17のオーバーラップ低域除去部421cと同様の処理を行い、高域周波数成分を抽出したことによる低域除去基準データhMO及び低域除去比較データhMEを求める。図18において、図17に示される構成要素と同一又は対応する構成要素には、図17における符号と同じ符号を付す。図18に示される低域除去部42dは、2つのオーバーラップ低域除去部421c1及び421c2を備えている点において、1つのオーバーラップ低域除去部421cを備えている図17の低域除去部42cと相違する。図18に示されるオーバーラップ低域除去部421c1及び421c2には、オーバーラップ領域における画像データrMのうちの基準画像データrMO及び比較画像データrMEがそれぞれ入力される。オーバーラップ低域除去部421c1は、オーバーラップ領域における画像データrMのうちの基準画像データrMOに対し、画像の低域周波数成分を画像データから除去して低域除去基準データhMOを出力する。オーバーラップ低域除去部421c2は、オーバーラップ領域における画像データrMのうちの比較画像データrMEに対し、画像の低域周波数成分を画像データから除去して低域除去比較データhMEを出力する。
図18の低域除去部42dにおけるオーバーラップMO画像メモリ424とオーバーラップME画像メモリ425において、低域除去基準データhMOはオーバーラップMO画像メモリ424に、低域除去比較データhMEはオーバーラップME画像メモリ425にそれぞれ格納され、低域除去部42dからの出力として、低域周波数成分を除去した予め決められたライン数の低域除去基準データMOと低域除去比較データMEを読み出し、出力する。以上に説明した点を除き、図18に示される低域除去部42dは、図17に示される低域除去部42cと同じである。
以上のように、実施の形態2に係る画像処理部4内の低域除去部42c及び42dによれば、オーバーラップ低域除去部421cにおいて、オーバーラップ領域における画像データrMから高域周波数成分を抽出することで、低域除去画像データhM(低域除去基準データhMO及び低域除去比較データhME)を生成し、低域除去画像データのうちの低域除去基準データMOと、位置ずれ量dYが−yから+yまでの範囲内の値をとる低域除去比較データMEとして出力することができ、重複して読取られた同じオーバーラップ領域の低域除去基準データMOと低域除去比較データMEを、ラインセンサ毎の性能及び読取り条件の違いにより生じるレベル差の影響が抑えられた画像データとして得ることができる。
また、オーバーラップ低域除去部421cにおける高域周波数成分抽出範囲を副走査方向に並ぶラインとしたので、副走査方向の低域周波数成分が除去された低域除去基準データMOと低域除去比較データMEとなり、低域周波数成分の抽出の精度を落とさず、ハードウェアの構成の簡素化、演算処理の容易化を実現でき、演算規模を小さくすることができる。
したがって、実施の形態2に係る低域除去部42cによる画像読取装置1、画像処理部(画像処理装置)4、及び画像処理方法によれば、オーバーラップ領域における画像データのうちの、ラインセンサ毎の性能及び読取り条件の違いにより生じるレベル差の影響が抑えられた画像データである低域除去基準データMOと検索範囲“−y〜+y”内にあるライン数に等しい数の低域除去比較データMEを求めることができる。このため、実施の形態2に係る低域除去部42cによる画像読取装置1、画像処理部(画像処理装置)4、及び画像処理方法によれば、誤検出なく、精度のよい副走査方向の位置ずれを示すシフト量データdybを算出できるとともに、誤検出なく、精度よく得られたシフト量データdybを位置ずれ量を示す値として得て、結合した画像データを生成することができるので、被読取物に対応する高品質な合成画像データを生成することができる。
実施の形態3.
実施の形態1及び実施の形態2に係る画像読取装置1の機能の一部は、ハードウェア構成で実現されてもよいし、あるいは、CPU(central processing unit)を含むマイクロプロセッサにより実行されるコンピュータプログラムで実現されてもよい。画像読取装置1の機能の一部がコンピュータプログラムで実現される場合には、マイクロプロセッサは、コンピュータ読取り可能な記憶媒体から、又は、インターネットなどの通信によって、当該コンピュータプログラムをロードし実行することによって当該機能の一部を実現することができる。
図19は、実施の形態3に係る画像読取装置1bの機能の一部をコンピュータプログラムで実現する場合の構成を示す機能ブロック図である。図19に示されるように、画像読取装置1bは、撮像部2と、A/D変換部3と、演算装置5とを備える。演算装置5は、CPUを含むプロセッサ51、RAM(random access memory)52、不揮発性メモリ53、大容量記憶媒体54、及びバス55を備える。不揮発性メモリ53としては、例えば、フラッシュメモリを使用することができる。また、大容量記憶媒体54としては、例えば、ハードディスク(磁気ディスク)、光ディスク、又は、半導体記憶装置を使用することができる。
A/D変換部3は、図1のA/D変換部3と同じ機能を有する。撮像部2が出力する電気信号SIは、A/D変換部3によってデジタルデータに変換され、プロセッサ51を介してRAM52に格納される。
プロセッサ51は、不揮発性メモリ53又は大容量記憶媒体54からコンピュータプログラムをロードし、実行することにより、図1に示される画像処理部4の機能を実現することができる。
図20は、実施の形態3の演算装置5による処理の一例を概略的に示すフローチャートである。図20に示されるように、プロセッサ51は、まず、画像データのうちのオーバーラップ領域におけるデータを読み出し、画素範囲における画像の低域周波数成分を画像データから除去し、低域周波数成分が除去された画像データのうちの、予め決められたライン数の低域除去基準データMOと低域除去比較データMEを抽出するオーバーラップ領域低域除去処理を実行する(ステップS1)。次に、プロセッサ51は、低域除去画像データである低域除去基準データMOと低域除去比較データMEとを比較する類似度算出処理を実行する(ステップS2)。その後、プロセッサ51は、シフト量推定処理を実行してシフト量データを求める(ステップS3)。最後に、プロセッサ51は、結合処理を実行する(ステップS4)。なお、演算装置5によるステップS1〜S4の処理は、実施の形態1における画像処理部4が行う処理と同じである。
以上に説明したように、実施の形態3に係る画像読取装置1bにおいては、オーバーラップ領域における画像データに対する処理として、低域周波数成分を画像データから除去して予め決められたライン数の低域除去基準データMOと低域除去比較データMEとを得て、類似度を算出し、算出された複数の類似度のうちから最も高い類似度が得られた低域除去比較データの副走査方向の位置からシフト量データを算出しており、このシフト量データdybに基づいて分割画像の副走査方向の位置をシフトさせて、結合した画像データを生成している。よって、実施の形態3に係る画像読取装置1bにおいては、オーバーラップ領域における画像データに対する処理として、ラインセンサ毎の性能及び読取り条件の違いにより生じるレベル差の影響が抑えられた画像データである低域除去基準データMOと検索範囲“−y〜+y”内にあるライン数に等しい数の低域除去比較データMEを求めることができる。このため、実施の形態4によれば、誤検出なく、精度のよい副走査方向の位置ずれを示すシフト量データdybを算出できるとともに、誤検出なく、精度よく得られたシフト量データdybを位置ずれ量を示す値として得て、得られたシフト量データに基づいて画像メモリ41から画像データを読み出し、読み出された画像データを結合した画像データを生成することができる。このため、実施の形態3によれば、正確に画像データを結合して被読取物に対応する高品質な合成画像データを生成することができる。
実施の形態4.
実施の形態1においては、図4(a)に示されるように、撮像部2の長手方向の一方の端部(例えば、左端)から数えて奇数番目に位置するラインセンサ21O1,…,21Ok,…,21Onの光軸27Oと偶数番目に位置するラインセンサ21E1,…,21Ek,…,21Enの光軸27Eとが交差する場合を説明した。実施の形態4においては、撮像部2の長手方向の一方の端部(例えば、図21(a)及び(b)が描かれている紙面に垂直な方向における手前側)から数えて奇数番目に位置するラインセンサ21O1,…,21Ok,…,21On(すなわち、ラインセンサ21O)の光軸28Oと偶数番目に位置するラインセンサ21E1,…,21Ek,…,21En(すなわち、ラインセンサ21E)の光軸28Eとが交差せず、平行である場合について説明する。実施の形態4に係る画像読取装置は、光軸28Oと光軸28Eが互いに平行である点を除き、実施の形態1に係る画像読取装置1と実質的に同じである。したがって、実施の形態4の説明においては、図1をも参照する。
図21(a)及び(b)は、実施の形態4に係る画像読取装置の撮像部2の奇数番目に位置するラインセンサ21O1,…,21Ok,…,21Onの光軸28Oと偶数番目に位置するラインセンサ21E1,…,21Ek,…,21Enの光軸28Eとが平行である場合の、被読取物としての原稿60とラインセンサとの位置関係を示す概略的な側面図である。図21(a)は、原稿60が原稿台載置面であるガラス面26に密着している場合を示し、図21(b)は、原稿60がガラス面26から少し浮いて離れている場合を示す。
実施の形態4に係る画像読取装置おいては、図21(a)に示されるように原稿60がガラス面26に密着している場合及び図21(b)に示されるように原稿60がガラス面26から離れている場合のいずれの場合であっても、奇数番目に位置するラインセンサ21O1,…,21Ok,…,21Onによる原稿60の読取画像はほとんど変化せず、同様に、偶数番目に位置するラインセンサ21E1,…,21Ek,…,21Enによる原稿60の読取画像はほとんど変化しない。また、副走査方向(Y方向)に撮像部2が搬送される場合、奇数番目に位置するラインセンサ21O1,…,21Ok,…,21Onは、偶数番目に位置するラインセンサ21E1,…,21Ek,…,21Enに比べて、同じ位置の画像を時間的に遅れて取得するが、光軸28Oと光軸28Eとが平行であるので、読取る副走査方向の位置のずれはほぼ一定量YLとして求めることができる。ただし、ほぼ一定量YLには微小な位置ずれが加わる場合がある。微小な位置ずれとしては、ラインセンサの取り付け誤差等による光軸28O又は光軸28Eの位置ずれと搬送速度の時間的なゆらぎ(すなわち、速度変動)による位置ずれとを含む微小位置ずれbtを含む。
また、実施の形態1と同様に、ラインセンサ毎に、性能のばらつき及び照明分布などの読取り条件の違いがあるため、ラインセンサ21Oが生成する画像データDI(Ok)と、ラインセンサ21Eが生成する画像データDI(Ek)との間に、ラインセンサ毎に読取った画像データのレベル差(明暗の差、画素データの値の差)が生じる場合がある。
図22は、原稿を読取った際の偶数番目に位置するラインセンサ21Ok,21Ok+1に対応する画像データDI(Ok),DI(Ok+1)と奇数番目に位置するラインセンサ21Ek,21Ek+1に対応する画像データDI(Ek),DI(Ek+1)とを示している。それぞれは、副走査方向の位置(ライン)が、一定量YLに微小位置ずれbt分を加算した量(すなわち、YL+bt)ずれている。
このため、画像処理部4では、画像メモリ41への書込み時に奇数番目に位置するラインセンサ21O1,…,21Ok,…,21Onによる読取画像、又は、偶数番目に位置するラインセンサ21E1,…,21Ek,…,21Enによる読取画像のいずれか一方、又は、両方を、副走査方向にほぼ一定量YL分ずらす処理を行う。これにより、図23に示されるように、画像メモリ41に格納される画像データは、副走査方向の位置(ライン)がbtだけずれて画像メモリ41に格納される。
なお、実施の形態4における上記説明では、画像メモリ41への画像データの書込み時に、奇数番目の読取画像又は偶数番目の読取画像を副走査方向に一定量YL分ずらす処理を行う(書込まれる画像データに処理を行う)場合を説明した。しかし、低域除去部42及び結合処理部45において画像データを読み出す際に、奇数番目の読取画像又は偶数番目の読取画像を副走査方向に一定量YL分を、読み出し位置にオフセット分として加えて、位置を求める処理を行う(読み出された画像データに処理を行う)ように構成してもよい。
画像処理部4は、副走査方向の微小位置ずれbtを求め、画像を結合するために、オーバーラップ領域における画像データに対して次の処理を行う。すなわち、画像処理部4は、オーバーラップ領域における画像データから低域周波数成分を除去して予め決められたライン数の低域除去基準データMOと低域除去比較データMEとを得て、得られた低域除去基準データと低域除去比較データとを比較して類似度を算出し、算出された類似度のうちの最も高い類似度が得られた低域除去比較データの副走査方向の位置からシフト量データを算出し、算出されたシフト量データにより画像メモリ41から画像データを読み出し、読み出された画像データを結合処理する。このような処理を行う構成、及びこのような処理動作は、上記実施の形態1のものと同じである。
以上に説明したように、実施の形態4に係る画像読取装置においては、撮像部2による撮像時に、原稿60若しくは撮像部2のいずれか一方、又は、両方を副走査方向に移動する際の搬送機による搬送速度に時間的なゆらぎ(すなわち、速度変動)がある場合であっても、実施の形態1の場合と同様に、オーバーラップ領域における画像データに対しての処理を行うことができる。すなわち、実施の形態4に係る画像読取装置においては、ラインセンサ毎の性能及び読取り条件の違いにより生じるレベル差の影響が抑えられた画像データである低域除去基準データMOと低域除去比較データMEを求めることができ、誤検出なく、精度のよい副走査方向の位置ずれを示すシフト量データdybを算出することができるとともに、誤検出なく、精度よく得られたシフト量データdybを位置ずれ量を示す値として得て、算出されたシフト量データにより画像メモリ41から画像データを読み出し、読み出された画像データを結合した画像データを生成することができる。このため、実施の形態4によれば、正確に画像データを結合して被読取物に対応する高品質な合成画像データを生成することができる。