以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の各図においては、各部材等を認識可能な程度の大きさにするため、各部材等の尺度を実際とは異ならせて示している。また、各図にはX軸、Y軸、Z軸が記載されている。各軸の矢印において、根元側から先端側へ向かう方向が正の方向、先端側から根元側へ向かう方向が負の方向である。このとき、X軸、Y軸において、矢印の根元側を上流側、矢印の先端側を下流側と定義する。また、Z軸において、矢印の根元側を下側、矢印の先端側を上側と定義する。
(実施形態)
最初に、実施形態に係る液体吐出装置について説明する。液体吐出装置1は、媒体に液体を吐出することで媒体に画像を形成可能な液体吐出装置である。具体的には、プリンターが挙げられる。図1(A)、(B)は、実施形態に係る液体吐出装置1を表す図である。ここで、図1(A)は液体吐出装置1の概略側面図、図1(B)は液体吐出装置1の概略平面図である。
液体吐出装置1は、媒体Pをセットすることが可能なセット部4を備えている。ここで、媒体Pは、液体吐出装置1による画像の形成が行われる媒体である。セット部4は、回転することにより、セットされた媒体PのロールR1を送り出すことが可能である。媒体Pは、Y軸の正の方向である搬送方向に搬送される。また、媒体Pは、Y軸の負の方向である逆搬送方向に搬送されることもある。逆搬送方向への搬送を、逆搬送、バックフィードなどという。逆搬送は、媒体Pの位置調整などに用いられることがある。なお、液体吐出装置1は、媒体Pとしてロール式の媒体を用いているが、単票式の媒体を用いてもよい。
また、液体吐出装置1は、図示しない搬送ローラーを備えている。搬送ローラーは、媒体Pを搬送方向に搬送する搬送部として機能する。また、搬送部は、前述した逆搬送を行うことも可能である。
また、液体吐出装置1は、セット部4より搬送方向における下流側に媒体支持部2を備えている。媒体支持部2は、媒体を支持する媒体支持部として機能する。具体的には、媒体支持部2の支持面に媒体Pを載せることで、媒体Pを支持する。
また、液体吐出装置1は、媒体Pに液体を吐出可能なヘッド(吐出部)8を備えている。ヘッド8は、液体を吐出する吐出部として機能する。ヘッド8は、媒体Pの搬送方向と交差する交差方向に往復移動可能である。交差方向とは、搬送方向と平行ではない方向であり、X軸における正の方向、負の方向を含む方向である。ヘッド8が交差方向に移動しながら液体を吐出することで、媒体支持部2に支持される媒体Pに画像が形成される。なお、このとき、媒体支持部2は、液体が吐出される媒体Pを支持する媒体支持部として機能する。
ヘッド8が吐出可能な液体としては、例えば、溶質、溶媒を含むインクが挙げられる。液体吐出装置1で用いるインクとしては、所定の色を有するインクを用いることができる。例えば、シアンインク、マゼンタインク、イエローインク、ブラックインク、ライトシアンインク、ライトマゼンタインク、ホワイトインク、グレーインク、ライトグレーインク、オレンジインク、グリーンインク、メタリックインクなどが挙げられる。このとき、インクは、染料、顔料といった色材を含有している。
また、液体吐出装置1で用いるインクとして、色を有しないクリアインクを用いてもよい。ここでのクリアインクは、色材を含有していないか、含有していてもごく微量であるインクである。すなわち、色を有しないクリアインクとは、目視において無色と認識されるインクのことを指す。
ヘッド8よりも搬送方向における下流側の位置には、ヒーター10が備えられている。ヒーター10は、媒体支持部2と接しない位置にある。また、ヒーター10は、媒体支持部2と対向する位置に備えられている。また、媒体Pが媒体支持部2に支持されている状態では、ヒーター10は媒体Pと対向する。このとき、ヒーター10と媒体支持部2は、媒体Pを挟んで対向することとなる。なお、対向するとは、一方の物体と他方の物体とが、少なくとも一部において向かい合っている状態を指す。
ヒーター10は、熱エネルギーを放出することができる。このとき、対象物に熱エネルギーを放出することで、対象物を乾燥させることができる。対象物は、例えば媒体Pや、媒体Pに吐出されたインクである。媒体Pが媒体支持部2に支持されている場合は、ヒーター10は媒体Pに熱エネルギーを放出することができる。ヒーター10としては、例えば、赤外線を放出するヒーターを用いることができる。ただし、その種類、形状及び設置場所等に特に限定はない。例えば、ヒーター10として、紫外線を放出するヒーターや、熱風を放出するファンヒーターを用いてもよいが、対象物とは接触しない状態で、対象物に対して熱エネルギーを付与する形態が好ましい。なお、本実施形態のヒーター10の熱エネルギーの出力は、交差方向において均一である。ここでの均一とは、意図的に出力の強弱をつけないということを意味する。すなわち、誤差などにより出力差が生じている場合も、均一の範囲に含める。
また、ヒーター10の上側には、リフレクター12が備えられている。リフレクター12は、ヒーター10から放出された熱エネルギーのうち、媒体Pに向かわない熱エネルギーを反射させて媒体Pに向かわせる、反射部として機能する。これにより、媒体Pに向かう方向の熱エネルギーを増加させ、媒体Pの加熱効率を高める効果がある。
また、ヘッド8より搬送方向における下流側には、媒体Pを巻き取り可能な巻取部6が備えられている。巻取部6が回転することにより媒体Pが巻き取られ、媒体PのロールR2が形成される。
また、液体吐出装置1は、ヒーター10から放出された熱エネルギーを受ける受熱部14を備えている。受熱部14は、ヒーター10から媒体支持部2に向かう方向を第1の方向とした場合に、ヒーター10より第1の方向側であり、ヒーター10と媒体支持部2との間である位置に設けられている。受熱部14は、ヒーター10と媒体支持部2との間に設けられることで、ヒーター10から媒体支持部2に向かう方向の熱エネルギーを受けることができる。媒体支持部2に媒体Pが支持されている場合は、ヒーター10から媒体Pに向かう方向の熱エネルギーを受けることができる。受熱部14は、ヒーター10から放出された熱エネルギーを受けることにより、温度が上昇する。
また、液体吐出装置1は、受熱部14の温度が所定温度以上になった場合に、ヒーター10を停止させる停止部16を備えている。停止部16は、検知対象の温度を検知し、検知対象の温度が所定温度以上になると、遮断動作を実行する。遮断動作とは、遮断対象へのエネルギーの供給を遮断して、遮断対象の運転を停止させることである。例えば、遮断対象が電気で動作するものであれば、遮断対象への通電を遮断する。本実施形態において、検知対象は受熱部14であり、遮断対象はヒーター10である。このような構成において、停止部16は、ヒーター10から放出される熱エネルギーの出力が高くなりすぎるのを防ぐ安全装置として機能する。
本実施形態において、停止部16は、受熱部14の温度を検知可能な位置に取り付けられている。具体的には、受熱部14と接する位置に取り付けられている。そして、受熱部14の温度が所定温度以上になった場合に、停止部16はヒーター10を停止させる。なお、ヒーター10を停止させるとは、ヒーター10による自発的な熱エネルギーの放出を停止させることである。ただし、ヒーター10を停止させても、ヒーター10から余熱としての熱エネルギーの放出が続く場合もある。
停止部16の遮断動作を実行する所定温度となる温度をT1とすると、T1は次のように定められている。
ヒーター10の出力が、媒体Pの温度を所定温度以上に上昇させる過熱レベルに達したときの受熱部14の温度をT2とする。このとき、T1<T2となるように、T1が定められている。ここで、媒体Pの温度を所定温度以上に上昇させるとは、媒体Pの品質に問題が発生する温度(基準温度)まで、媒体Pの温度を上昇させることである。T1<T2の関係を満たす停止部16を用いることで、媒体Pの温度が所定温度以上に上昇する前にヒーター10による熱エネルギーの放出を停止させることができる。
なお、T2は、媒体Pの種類によって異なる。この場合、液体吐出装置1で主に用いる媒体のうち、所定温度が最も低温の媒体に合わせてT2を定めればよい。
また、T1を次のように定めてもよい。ヒーター10の出力が、媒体Pに吐出された液体の温度を所定温度以上に上昇させる過熱レベルに達したときの受熱部14の温度をT3とする。このとき、T1<T3となるように、T1を定めてもよい。ここで、媒体Pに吐出された液体の温度を所定温度以上に上昇させるとは、媒体Pに吐出された液体の品質に問題が発生する温度(基準温度)まで、媒体Pに吐出された液体の温度を上昇させることである。T1<T3の関係を満たす停止部16を用いることで、媒体Pに吐出された液体の温度が所定温度以上に上昇する前にヒーター10による熱エネルギーの放出を停止させることができる。
なお、T1を定める際の所定温度として、T2、T3という2つの所定温度が存在する。このとき、T2とT3とを比較し、より低い温度の方を所定温度としてT1を定めればよい。すなわち、媒体Pと液体とのうち、どちらがより熱に弱いかを考慮し、より熱に弱い方に合わせてT1を定めればよい。
停止部16としては、例えば、サーモスタットを用いることができる。サーモスタットは、バイメタルなどを利用して、温度変化に応じて電気回路の通電状態と非通電状態とを切り替えることができる。サーモスタットには、非通電状態になった後、温度に応じて自動で通電状態に戻る自動復帰型と、手動で通電状態に戻す手動復帰型とがある。停止部16としては、自動復帰型、手動復帰型のどちらを用いてもよい。ただし、手動復帰型を用いれば、より安全性を高めることができる。
また、停止部16として、温度ヒューズを用いてもよい。温度ヒューズは、サーモスタットと異なり通電状態に復帰することができないため、サーモスタットよりもさらに安全性を高めることができる。
なお、停止部16は、受熱部14と接しない位置に取り付けてもよい。例えば、停止部16と受熱部14との間に所定の間隔を空けて取り付けてもよい。所定の間隔とは、例えば1cm以内である。また、停止部16と受熱部14との間に別の部材(緩衝部材)を設けてもよい。ただし、受熱部14の温度を正確に検知するためには、停止部16は受熱部14と接する位置に取り付けられていることが好ましい。
まとめると、液体吐出装置1は、ヒーター10から媒体支持部2に向かう方向を第1の方向とした場合に、ヒーター10より第1の方向側であり、ヒーター10と媒体支持部2との間である位置に設けられ、ヒーター10から放出された熱エネルギーを受ける受熱部14と、受熱部14の温度が所定温度以上になった場合に、ヒーター10を停止させる停止部16とを備えることで、次のような作用効果を奏する。
ヒーター10から媒体Pに向かう方向の熱エネルギーを受熱部14で受けることができる。そして、ヒーター10から媒体Pに向かう方向の熱エネルギーを受けることにより受熱部14の温度が所定温度以上になると、停止部16がヒーター10を停止させる。このため、ヒーター10から放出される熱エネルギーが、媒体Pの温度を所定温度以上に上昇させる過熱レベルに達する前にヒーター10を停止させることができる。
また、液体吐出装置1は、気流を発生可能な送風部18を備えている。送風部18は、ヒーター10の付近に設けられている。なお、ヒーター10の付近とは、例えばヒーター10から半径30cm以内である。本実施形態では、送風部18はヒーター10より搬送方向の下流側に設けられている。そして、送風部18は交差方向に沿って複数設けられている。本実施形態では、3つの送風部18が設けられている。
また、送風部18は、複数の羽根が設けられたプロペラを有している。送風部18は、プロペラを回転させることで、気流を発生させることが可能である。気流とは、例えば送風部18の上側から送風部18の下側に向かう方向の気流22である。そして、送風部18は、気流を発生させることにより、風を送る送風部として機能する。
送風部18は、プロペラを回転させる方向を反転させることにより、発生させる気流の方向を反転させることができる。送風部18は、プロペラを第1回転方向に回転させた場合に、送風部18の上側から送風部18の下側に向かう方向の気流22を発生させ、風を送ることができる。そして、送風部18は、プロペラを第1回転方向と逆方向である第2回転方向に回転させた場合に、気流22とは逆方向の、送風部18の下側から送風部18の上側に向かう方向の気流を発生させ、風を送ることができる。
また、液体吐出装置1は、図示しない筐体を備えている。ヘッド8、ヒーター10などの部品は、筐体によって覆われている。また、媒体支持部2に支持されている媒体Pの少なくとも一部が筐体によって覆われている場合もある。筐体で覆われる部分を、液体吐出装置1の内部と呼称する。なお、液体吐出装置1は、筐体を複数備えていてもよい。例えば、ヘッド8を覆う筐体、ヒーター10を覆う筐体が、別々に存在してもよい。
送風部18が発生させた気流が液体吐出装置1の内部を通過することで、液体吐出装置1の内部を冷却することができる。ここで、液体吐出装置1の内部を冷却するとは、液体吐出装置1に備えられている、ヘッド8、ヒーター10などの部品を冷却することを含んでもよいし、媒体支持部2に支持されている媒体Pの少なくとも一部を冷却することを含んでもよい。本実施形態では、送風部18がヒーター10の付近に設けられているため、最も熱くなりやすいヒーター10の付近の部品や、媒体Pにおけるヒーター10の付近の領域を、冷却することができる。
また、液体吐出装置1は、停止部16の少なくとも一部を覆うカバー部材20を備えている。カバー部材20は、停止部16を保護する保護部として機能する。カバー部材20を設けることにより、停止部16を様々な外的要因から保護することができる。外的要因とは、外気、送風部18などによって発生する気流、外部からの衝撃、埃、水などである。
例えば、カバー部材20は、外気による停止部16への影響を防ぐことができる。外気が、特に高温だったり、特に低温だったりした場合、停止部16が外気と接していると、停止部16は外気の温度の影響を受けて、受熱部14の温度を精度良く検知することができなくなる。カバー部材20を設ければ、外気による停止部16への影響を防ぐことができ、受熱部14の温度を精度良く検知することができる。このため、ヒーター10から放出される熱エネルギーが過熱レベルに達する前に、より確実にヒーター10を停止させることができる。
また、送風部18が設けられる場合、カバー部材20は特に有効である。送風部18が発生させた気流のうち、停止部16へと向かう気流を、カバー部材20で遮断することができるためである。停止部16が気流と接していると、停止部16は気流の温度の影響を受けて、受熱部14の温度を精度良く検知することができなくなる。カバー部材20を設ければ、気流による停止部16への影響を防ぐことができ、受熱部14の温度を精度良く検知することができる。
また、カバー部材20を設けることにより、外部からの衝撃、埃の堆積などの外的要因から、停止部16を保護することができる。このような外的要因は停止部16を故障させるおそれがあるため、カバー部材20を設けることにより、外的要因による停止部16の故障を防ぐことができる。
まとめると、液体吐出装置1は、停止部16の少なくとも一部を覆うカバー部材20を備えることで、次のような作用効果を奏する。
外的要因による停止部16への影響を防ぐことができ、受熱部14の温度を精度良く検知することができる。このため、ヒーター10から放出される熱エネルギーが過熱レベルに達する前に、より確実にヒーター10を停止させることができる。また、外的要因から停止部16を保護し、外的要因による停止部16の故障を防ぐことができる。
なお、カバー部材20は、停止部16のなるべく多くの領域を覆うことが好ましいが、完全に覆わなくてもよい。カバー部材20を、停止部16の一部を覆う構成とすれば、カバー部材20に用いる材料を少なくし、コストを削減することができる。
また、カバー部材20は、受熱部14の少なくとも一部を覆ってもよい。実施形態では、カバー部材20は受熱部14の一部も覆う構成となっている。受熱部14は、外気や気流の影響を受けると、媒体Pに放出される熱エネルギーを精度良く検知することができなくなるおそれがある。したがって、カバー部材20を、受熱部14の少なくとも一部を覆う構成とすることで、外的要因による受熱部14への影響を防ぐことができる。このため、媒体Pに放出される熱エネルギーをより精度良く検知することができる。
次に、ヒーター10、受熱部14について詳細に説明する。図2は、実施形態に係る液体吐出装置を表す正面方向の概略断面図である。なお、図2では、ヒーター10、受熱部14を視認しやすくするため、リフレクター12、カバー部材20を省略している。
放出範囲24は、交差方向において、ヒーター10が熱エネルギーを放出可能な範囲を表している。このとき、受熱部14の少なくとも一部が、ヒーター10の熱エネルギーの放出範囲24に含まれることが好ましい。ヒーター10から媒体Pに向かう方向の熱エネルギーを受熱部14で直接的に受けることができるためである。図2に示すように、本実施形態の受熱部14は、受熱部14の一部が放出範囲24に含まれるように配置されている。また、受熱部14を、受熱部14の全てが放出範囲24に含まれるように配置してもよい。
受熱部14の少なくとも一部が、ヒーター10の熱エネルギーの放出範囲24に含まれる構成とすることで、次のような作用効果を奏する。
ヒーター10から媒体Pに向かう方向の熱エネルギーを受熱部14で直接的に受けることで、ヒーター10から媒体Pに放出される熱エネルギーをより精度良く検知することができる。このため、ヒーター10から放出される熱エネルギーが過熱レベルに達する前に、より確実にヒーター10を停止させることができる。
また、ヒーター10の交差方向における長さは、媒体Pの交差方向における長さより長く、ヒーター10の一部の領域が媒体Pからはみ出す構成になっている。このとき、ヒーター10は、第1の領域26、第2の領域28を有している。第1の領域26は、ヒーター10において、媒体支持部2が媒体Pを支持する際、媒体Pと対向する領域である。第2の領域28は、ヒーター10において、媒体支持部2が媒体Pを支持する際、媒体Pと対向しない領域である。
すなわち、ヒーター10の一部の領域が媒体Pからはみ出す構成になっており、ヒーター10における媒体Pからはみ出す領域が、第2の領域28に相当する。換言すれば、ヒーター10のマージン部分が第2の領域28に相当する。
なお、媒体Pの交差方向における長さは、媒体Pの種類によって異なる。この場合、液体吐出装置1で使用可能な媒体のうち、交差方向における長さが最大の媒体(最大使用可能媒体)に合わせてヒーター10の交差方向における長さを決定すればよい。
例えば、交差方向における長さが64インチの媒体が、液体吐出装置1の最大使用可能媒体であったとする。このとき、ヒーター10の交差方向における長さは、64インチを上回る長さにすればよい。例えば、ヒーター10の交差方向における長さを66インチにすればよい。このとき、第1の領域26は64インチ分であり、第2の領域28は2インチ分となる。第2の領域28は、ヒーター10における、X軸の正側の端部と、X軸の負側の端部とに分かれて存在し、X軸の正側の端部と、X軸の負側の端部との合計が2インチ分となる構成でもよいし、X軸の正側の端部又はX軸の負側の端部に連続して2インチ分存在する構成でもよい。また、第2の領域28が、ヒーター10における、X軸の正側の端部と、X軸の負側の端部とに分かれて存在する場合、X軸の正側の端部の長さとX軸の負側の端部の長さが異なっていてもよい。
このとき、受熱部14は、ヒーター10における第2の領域28を含む領域と対向する位置に設けられていることが好ましい。図2に示すように、本実施形態の受熱部14は、ヒーター10における第2の領域28と対向する位置に設けられている。換言すれば、ヒーター10のマージン部分の熱エネルギーを受ける位置に、受熱部14が設けられている。このような構成とすれば、ヒーター10から媒体Pへ放出される熱エネルギーが、受熱部14によって遮られることがない。したがって、媒体Pに十分な熱エネルギーを放出させることができる。
また、受熱部14が対向する領域は、ヒーター10における第2の領域28を含む領域であれば、第1の領域26を含んでいてもよい。ただし、媒体Pへ十分な熱エネルギーを放出するためには、第1の領域26は含まないか、含んだとしても極力小さな範囲であることが好ましい。例えば、受熱部14が対向する領域のうち、第1の領域26の面積は、第2の領域28の面積より小さいことが好ましい。
まとめると、液体吐出装置1において、ヒーター10は、媒体支持部2が媒体Pを支持する際、媒体Pと対向する第1の領域26と、媒体Pと対向しない第2の領域28とを有し、受熱部14は、ヒーター10における第2の領域28を含む領域と対向する位置に設けられている。換言すると、受熱部14は、ヒーター10における第2の領域28と対向する位置に設けられている。これにより、次のような作用効果を奏する。
媒体Pへ放出される熱エネルギーを遮ることなく、ヒーター10から媒体Pに向かう方向の熱エネルギーを受熱部14で受けることができる。このため、ヒーター10から放出される熱エネルギーが過熱レベルに達する前にヒーター10を停止させることと、媒体Pに十分な熱エネルギーを放出させることとを両立させることができる。
また、受熱部14の熱拡散率は、80(mm2/sec)以上であることが好ましい。熱拡散率とは、物体において熱エネルギーが伝わる速さを表す指標である。物体の熱拡散率は、熱伝導率を、比熱と密度との積で除することによって求められる。なお、熱拡散率は、温度伝導率、温度拡散率などと呼称されることもある。
下記表1は、受熱部14の熱拡散率を変えていった場合に、媒体Pの品質に問題が発生したか否かを評価した評価結果である。目視において媒体Pの品質に問題が発生しなかった場合がOKであり、媒体Pの品質に問題が発生した場合がNGである。
表1に示すように、受熱部14の熱拡散率が80(mm2/sec)以上でOKという結果になった。受熱部14の熱拡散率が80(mm2/sec)以上であれば、受熱部14が熱エネルギーを受けてから、受熱部14の温度が上昇するまでに要する時間が短くなる。このため、ヒーター10から放出される熱エネルギーが過熱レベルに達する前に、速やかにヒーター10を停止させることができる。
なお、熱拡散率は素材の物性によって定まる。したがって、受熱部14の熱拡散率を80(mm2/sec)以上とするためには、素材を適宜選択すればよい。熱拡散率が80(mm2/sec)以上の素材としては、例えばアルミニウムが挙げられる。
また、受熱部14のふく射率は、0.8以上であることが好ましい。ふく射率とは、物体が電磁波をふく射する度合いを表す指標である。物体のふく射率は、電磁波を最も効率良くふく射する仮想物体(黒体)のふく射エネルギーと、物体のふく射エネルギーとの比によって求められる。そして、ふく射率は、物体の電磁波の吸収率と等しいことが知られている。したがって、熱エネルギーが電磁波として放出される場合、ふく射率が高い物体は、熱エネルギーの吸収率も高い物体ということになる。なお、ふく射率は放射率と呼称されることもある。
下記表2は、受熱部14のふく射率を変えていった場合に、媒体Pの品質に問題が発生したか否かを評価した評価結果である。目視において媒体Pの品質に問題が発生しなかった場合がOKであり、媒体Pの品質に問題が発生した場合がNGである。
表2に示すように、受熱部14のふく射率が0.8以上でOKという結果になった。受熱部14のふく射率が0.8以上であれば、受熱部14の熱エネルギーの吸収性が良くなり、媒体Pに放出される熱エネルギーをより精度良く検知することができる。このため、ヒーター10から放出される熱エネルギーが過熱レベルに達する前に、より確実にヒーター10を停止させることができる。
なお、ふく射率は、素材の物性、素材の色、素材の表面の粗さなどによって定まる。したがって、受熱部14のふく射率を0.8以上とするためには、素材を適宜選択すればよい。ふく射率が0.8以上の素材としては、例えば、セラミック、アルマイト処理されたアルミニウムなどが挙げられる。
また、受熱部14は、厚さが0.3mm以下の板状部材であることが好ましい。本実施形態の受熱部14は板状部材である。そして、図2で示す厚さtが、受熱部14の厚さである。
下記表3は、受熱部14の厚さを変えていった場合に、媒体Pの品質に問題が発生したか否かを評価した評価結果である。目視において媒体Pの品質に問題が発生しなかった場合がOKであり、媒体Pの品質に問題が発生した場合がNGである。なお、受熱部14の素材としては、アルミニウムを用いた。
表3に示すように、受熱部14の厚さが0.3mm以下でOKという結果になった。厚さtを0.3mm以下とすれば、受熱部14の体積を減らすことができる。受熱部14の体積が減れば、受熱部14の質量が減る。受熱部14の質量が減れば、受熱部14の熱容量が減る。そして、受熱部14の熱容量が減ると、受熱部14の温度が上昇しやすくなる。なお、熱容量とは、物体の温度を1℃上昇させるのに必要な熱量のことである。物体の熱容量は、質量と比熱との積で求められる。
したがって、受熱部14を厚さ0.3mm以下の板状部材とすれば、受熱部14の温度が上昇しやすくなる。このため、ヒーター10から放出される熱エネルギーが過熱レベルに達する前に、より確実にヒーター10を停止させることができる。
なお、受熱部14として、いずれの素材を用いる場合でも、受熱部14の熱容量を小さくするためには、厚さtは極力薄い方が好ましい。ただし、厚さtを薄くすればする程、受熱部14の強度は低下する。したがって、受熱部14の強度が確保できる範囲で厚さtを薄くすることが好ましい。
また、受熱部14は、少なくとも一部がアルミニウムで構成されることが好ましい。アルミニウムは、前述した熱拡散率が高い素材である。具体的には、アルミニウムの熱拡散率は約96.8(mm2/sec)である。
したがって、受熱部14の少なくとも一部をアルミニウムで構成すれば、受熱部14が熱エネルギーを受けてから、受熱部14の温度が上昇するまでに要する時間が短くなる。このため、ヒーター10から放出される熱エネルギーが過熱レベルに達する前に、速やかにヒーター10を停止させることができる。
また、アルミニウムは軽量であるため、受熱部14の少なくとも一部にアルミニウムを用いることで、受熱部14を取り付ける部品に対する負荷を減らすことができる。また、アルミニウムは安価であるため、受熱部14の少なくとも一部にアルミニウムを用いることで、受熱部14の製造コストを削減することができる。
なお、受熱部14は、全体がアルミニウムで構成されていてもよい。受熱部14の全体がアルミニウムであれば、熱拡散率が均一となり、受熱部14の温度分布にむらができにくくなる。また、受熱部14の製造の手間やコストを削減することができる。
また、受熱部14は、少なくとも一部が銅で構成されていてもよい。銅は、前述した熱拡散率が高い素材である。具体的には、銅の熱拡散率は約117(mm2/sec)である。
したがって、受熱部14の少なくとも一部を銅で構成すれば、受熱部14が熱エネルギーを受けてから、受熱部14の温度が上昇するまでに要する時間が短くなる。このため、ヒーター10から放出される熱エネルギーが過熱レベルに達する前に、速やかにヒーター10を停止させることができる。
なお、受熱部14は、全体が銅で構成されていてもよい。受熱部14の全体が銅であれば、熱拡散率が均一となり、受熱部14の温度分布にむらができにくくなる。また、受熱部14の製造の手間やコストを削減することができる。
上述したように、受熱部14に用いる素材としては、アルミニウム又は銅が特に適している。このとき、どちらを受熱部14に用いてもよい。アルミニウムを受熱部14に用いた場合は、銅を受熱部14に用いた場合に比べて、受熱部14が軽量な構成となり、製造コストも安くなる。銅を受熱部14に用いた場合は、アルミニウムを受熱部14に用いた場合に比べて、より熱拡散率が高い構成となる。また、アルミニウムと銅とを部分的に使い分けたり、アルミニウムと銅との合金を用いたりしてもよい。
また、熱拡散率のみを考慮するのであれば、前述したように熱拡散率が80(mm2/sec)以上であれば、どのような素材を用いてもよい。例えば、金や銀を用いてもよい。
また、受熱部14の少なくとも一部をアルミニウムで構成する場合、アルマイト処理されたアルミニウムを用いることが好ましい。アルマイト処理とは、アルミニウムの表面に酸化皮膜を形成する処理である。アルマイト処理を施すことで、受熱部14のふく射率を高くすることができる。具体的には、アルマイト処理を施さないアルミニウムのふく射率は、0.1以下である。これに対し、アルマイト処理を施したアルミニウムのふく射率は、約0.8である。
したがって、受熱部14の少なくとも一部をアルマイト処理されたアルミニウムで構成すれば、受熱部14の熱エネルギーの吸収性が良くなり、媒体Pに放出される熱エネルギーをより精度良く検知することができる。このため、ヒーター10から放出される熱エネルギーが過熱レベルに達する前に、より確実にヒーター10を停止させることができる。
また、アルミニウムにアルマイト処理を施すことで、耐腐食性や耐摩耗性を向上させることができる。したがって、受熱部14の少なくとも一部をアルマイト処理されたアルミニウムで構成すれば、受熱部14の耐久性を向上させることができる。
以上述べたように、本実施形態に係る液体吐出装置1によれば、ヒーター10から放出された熱エネルギーを受ける受熱部14と、受熱部14の温度が所定温度以上になった場合に、ヒーターを停止させる停止部16とを備える液体吐出装置1において、ヒーター10から媒体Pに向かう方向の熱エネルギーを検知することができる。そして、ヒーター10から放出される熱エネルギーが、媒体Pの温度を所定温度以上に上昇させる過熱レベルに達する前にヒーター10を停止させることができる。
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、上述した実施形態に種々の変更や改良などを加えることが可能である。変形例を以下に述べる。
(変形例1)
上述した実施形態では、ヒーター10の熱エネルギーの出力は、交差方向において均一であったが、本発明はこのような構成に限定されない。ヒーター10の熱エネルギーの出力領域を2つに分け、出力を部分的に異ならせる構成としてもよい。図3(A)は、変形例1に係る液体吐出装置を表す正面方向の概略断面図である。図3(A)では、ヒーター10、受熱部14を視認しやすくするため、リフレクター12、カバー部材20を省略している。なお、ヒーター10の熱エネルギーの出力以外は、実施形態と同様の構成である。
変形例1におけるヒーター10は、第1の出力領域30、第2の出力領域32を有している。このとき、第2の出力領域32の熱エネルギーの出力が、第1の出力領域30の熱エネルギーの出力より高い構成となっている。そして、第1の出力領域30から放出される熱エネルギーは、受熱部14を含まない領域に放出される。また、第2の出力領域32から放出される熱エネルギーは、受熱部14を含む領域に放出される。このとき、媒体Pには第1の出力領域30からの熱エネルギーが放出され、受熱部14には第2の出力領域32からの熱エネルギーが放出される。このため、受熱部14の方が媒体Pよりも温度が上昇しやすい構成となる。したがって、停止部16が作動しやすくなる。
まとめると、ヒーター10は、受熱部14を含む領域に放出する熱エネルギーの出力が、受熱部14を含まない領域に放出する熱エネルギーの出力より高い構成となっている。換言すると、ヒーター10は、受熱部14と対向する領域の熱エネルギーの出力が、受熱部14と対向しない領域の熱エネルギーの出力より高い構成となっている。これにより、受熱部14の方が媒体Pよりも温度が上昇しやすい構成となり、停止部16が作動しやすくなる。このため、ヒーター10から放出される熱エネルギーが過熱レベルに達する前に、より確実にヒーター10を停止させることができる。
下記表4は、第2の出力領域32の熱エネルギーの出力を変えていった場合に、媒体Pの品質に問題が発生したか否かを、目視により評価した評価結果である。媒体Pとして、複数の種類の媒体を評価した。評価対象の媒体のうち、全ての媒体で品質に問題が発生しなかった場合がVG(Very good)、半数以上の媒体で品質に問題が発生しなかった場合がG(Good)、半数以上の媒体で品質に問題が発生した場合がNG(No good)である。なお、第2の出力領域32の熱エネルギーは、第1の出力領域30の熱エネルギーの出力を100%としたときの値である。
表4に示すように、第1の出力領域30の熱エネルギーの出力を100%としたとき、第2の出力領域32の熱エネルギーの出力は120%以上であることが特に好ましい。このような構成であれば、媒体Pとして多様な媒体を用いた場合でも、ヒーター10から放出される熱エネルギーが、媒体Pの温度を所定温度以上に上昇させる過熱レベルに達する前にヒーター10を停止させることができる。
なお、ヒーター10の熱エネルギーの出力を部分的に異ならせるためには、ヒーター10の抵抗値を部分的に異ならせればよい。抵抗値を大きくすれば出力は高くなり、抵抗値を小さくすれば出力は低くなる。
(変形例2)
変形例1ではヒーター10の熱エネルギーの出力領域を2つに分ける構成としたが、ヒーター10の熱エネルギーの出力領域を3つに分ける構成としてもよい。変形例2は、変形例1の構成に、第3の出力領域34が追加された構成である。図3(B)は、変形例2に係る液体吐出装置を表す正面方向の概略断面図である。図3(B)では、ヒーター10、受熱部14を視認しやすくするため、リフレクター12、カバー部材20を省略している。なお、ヒーター10の熱エネルギーの出力以外は、実施形態と同様の構成である。
変形例2におけるヒーター10は、第1の出力領域30、第2の出力領域32、第3の出力領域34を有している。第3の出力領域34は、第2の出力領域32よりも停止部16に近い場所に位置する領域である。また、第2の出力領域32は、第3の出力領域34よりも停止部16から遠い場所に位置する領域である。このとき、第2の出力領域32の熱エネルギーの出力が、第1の出力領域30の熱エネルギーの出力より高い構成となっている。また、第3の出力領域34の熱エネルギーの出力が、第2の出力領域32の熱エネルギーの出力より高い構成となっている。すなわち、各領域の熱エネルギーの出力の関係は、第1の出力領域30の出力<第2の出力領域32の出力<第3の出力領域34の出力、となっている。
そして、第1の出力領域30から放出される熱エネルギーは、受熱部14を含まない領域に放出される。また、第2の出力領域32、第3の出力領域34から放出される熱エネルギーは、受熱部14を含む領域に放出される。このとき、媒体Pには第1の出力領域30からの熱エネルギーが放出され、受熱部14には第2の出力領域32、第3の出力領域34からの熱エネルギーが放出される。このため、受熱部14の方が媒体Pよりも温度が上昇しやすい構成となる。したがって、停止部16が作動しやすくなる。
まとめると、ヒーター10は、受熱部14を含む領域に放出する熱エネルギーの出力が、受熱部14を含まない領域に放出する熱エネルギーの出力より高い構成となっている。これにより、受熱部14の方が媒体Pよりも温度が上昇しやすい構成となり、停止部16が作動しやすくなる。このため、ヒーター10から放出される熱エネルギーが過熱レベルに達する前に、より確実にヒーター10を停止させることができる。
また、変形例2では、受熱部14を含む領域に放出する熱エネルギーのうち、第3の出力領域34から放出する熱エネルギーの出力が、第2の出力領域32から放出する熱エネルギーの出力より高い構成となっている。換言すれば、受熱部14を含む領域に放出する熱エネルギーのうち、停止部16に近い場所に位置する領域から放出する熱エネルギーの出力は、停止部16から遠い場所に位置する領域から放出する熱エネルギーの出力より高い構成となっている。これにより、受熱部14のうち、停止部16に近い場所に位置する領域の方が、停止部16から遠い場所に位置する領域よりも温度が上昇しやすい構成となり、停止部16がより作動しやすくなる。このため、ヒーター10から放出される熱エネルギーが過熱レベルに達する前に、より確実にヒーター10を停止させることができる。
また、変形例2のヒーター10において、第3の出力領域34の面積は、第2の出力領域32の面積より小さいことが好ましい。第3の出力領域34は、第2の出力領域32より高出力の領域であるため、第3の出力領域34が大きくなれば、消費電力も多くなる。したがって、第3の出力領域34の面積を第2の出力領域32の面積より小さくすることで、停止部16をより作動しやすくすることと、消費電力を抑えることとを両立できる。
下記表5は、第2の出力領域32の面積と、第3の出力領域34の面積との比率を変えていった場合の、消費電力と停止部16の作動しやすさとのバランスの評価結果である。第2の出力領域32の面積:第3の出力領域34の面積を1:1からスタートさせ、第2の出力領域32の面積の比率を徐々に高めていった。このとき、特に好ましい構成をVG(Very good)、好ましい構成をG(Good)、あまり好ましくない構成をNG(No good)で評価している。
表5に示すように、第2の出力領域32の面積:第3の出力領域34の面積が、3:1であることが特に好ましい。消費電力と停止部16の作動しやすさとのバランスが、特に取れている構成であったためである。
第2の出力領域32の面積:第3の出力領域34の面積が1:1の場合は、第3の出力領域34が大きくなりすぎ、消費電力が多くなってしまったのでNGとした。また、第2の出力領域32の面積:第3の出力領域34の面積が5:1の場合は、第3の出力領域34が小さくなりすぎ、第3の出力領域34を設ける効果が小さくなってしまったのでNGとした。第2の出力領域32の面積:第3の出力領域34の面積が、2:1、4:1である場合は、3:1である場合程ではないものの、消費電力と停止部16の作動しやすさとのバランスが取れていた。したがって、第2の出力領域32の面積:第3の出力領域34の面積が、2:1〜4:1の範囲であれば、正確に3:1でなくてもよい。つまり、3:1に近い値であれば、比率が多少変動してもよい。ただし、消費電力と停止部16の作動しやすさとのバランスを考慮すると、第2の出力領域32の面積:第3の出力領域34の面積は、3:1であることが特に好ましい。
また、変形例2のヒーター10において、各領域の熱エネルギーの出力は、第1の出力領域30の出力<第2の出力領域32の出力<第3の出力領域34の出力、の関係を満たしていれば、どのような出力であってもよい。第1の出力領域30の熱エネルギーの出力を100%としたときの、第2の出力領域32の出力、第3の出力領域34の出力の構成の例を、下記表6に示す。
表6で示した構成は一例であり、第2の出力領域32の熱エネルギーの出力、第3の出力領域34の熱エネルギーの出力は、各領域の面積も考慮して適宜設定することが好ましい。ただし、第2の出力領域32の面積:第3の出力領域34の面積が、3:1であるとき、第2の出力領域32の熱エネルギーの出力を120%、第3の出力領域34の熱エネルギーの出力を140%とすることが特に好ましい。なお、この値は第1の出力領域30の熱エネルギーの出力を100%としたときの値である。このような構成であれば、消費電力と停止部16の作動しやすさとのバランスを好適に保つことができる。
(その他の変形例)
ヘッド8は、交差方向に移動しながら液体を吐出することで、媒体Pに画像を形成するシリアルヘッドの構成としたが、交差方向に移動せずに液体を吐出することで、媒体Pに画像を形成するラインヘッドの構成としてもよい。ラインヘッドであるヘッド8には、交差方向においてノズルが複数設けられ、媒体Pの交差方向における長さ分の液体の吐出を行えることが好ましい。この際、複数のヘッドを並べてラインヘッドを構成してもよいし、1つの長いヘッドによってラインヘッドを構成してもよい。
また、液体吐出装置1において、搬送ローラーを設けない構成としてもよい。このような液体吐出装置としては、媒体が搬送されず、ヘッドが第1走査方向と第2走査方向とに移動することで液体の吐出が行われる、フラットベッドタイプの液体吐出装置が挙げられる。このとき、ヘッド8は、X軸に沿う方向(第1走査方向)、Y軸に沿う方向(第2走査方向)への移動が可能である。
また、ヘッド8が吐出可能な液体としてインクを例に挙げたが、他の液体を噴射してもよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状態、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては前述したインクの他、前処理剤、後処理剤、液晶等が挙げられる。なお、インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。
また、液体吐出装置1において、ヒーターを複数設ける構成としてもよい。例えば、ヒーター10とヘッド8との間にヒーターを追加したり、ヘッド8より搬送方向における上流側にヒーターを追加したりしてもよい。ヒーターが複数であるとき、本発明に係る受熱部や停止部を、各ヒーターに対応させて複数設けてもよい。また、複数のヒーターのうち、一部のヒーターにのみ、本発明に係る受熱部や停止部を設ける構成としてもよい。このとき、少なくとも、最も出力の高いヒーターに、本発明に係る受熱部や停止部を設けることが好ましい。最も出力の高いヒーターが、媒体Pの過熱状態を引き起こす可能性が最も高いためである。最も出力の高いヒーターに、本発明に係る受熱部や停止部を設ければ、媒体Pが過熱状態となることを効果的に防止できる。
また、液体吐出装置1において、リフレクター12を設けない構成としてもよい。リフレクター12を設けなくても、媒体Pに十分な熱エネルギーを放出できる場合は、リフレクター12を設けなくてもよい。リフレクター12を設けなければ、液体吐出装置1をより簡易な構成とし、製造の手間やコストを削減することができる。
また、液体吐出装置1において、送風部18を3つ設ける構成としたが、送風部18を設ける数は1つや2つでもよい。また、送風部18を4つ以上設けてもよい。ヒーター10の交差方向における長さ分をカバーできるように、必要な数だけ送風部18を設ければよい。
また、液体吐出装置1において、送風部18を設けない構成としてもよい。液体吐出装置1の内部を冷却する必要がなければ、送風部18を設けなくてもよい。送風部18を設けなければ、液体吐出装置1をより簡易な構成とし、製造の手間やコストを削減することができる。
また、液体吐出装置1において、カバー部材20を設けない構成としてもよい。停止部16が、外的要因の影響を受けにくい環境や、外的要因によって故障しにくい環境にある場合は、カバー部材20を設けなくてもよい。カバー部材20を設けなければ、液体吐出装置1をより簡易な構成とし、製造の手間やコストを削減することができる。
また、受熱部14は板状部材としたが、板状以外の形状の部材でもよい。具体的には、ブロック状や球状の部材あってもよい。ただし、受熱部14の熱容量を小さくするためには、受熱部14の体積をできるだけ小さくすることが好ましい。また、ヒーター10から放出される熱エネルギーを受けやすくするためには、ヒーター10と対向する面積を大きくすることが好ましい。これらの条件を考慮すると、受熱部14は板状部材であることが特に好ましい。
また、変形例1ではヒーター10の熱エネルギーの出力領域を2つに分ける構成とし、変形例2ではヒーター10の熱エネルギーの出力領域を3つに分ける構成としたが、出力領域を4つ以上に分ける構成としてもよい。出力領域の数を増やせば増やすほど、放出する熱エネルギーの微細な制御が可能となる。また、出力領域の数を増やせば増やすほど、消費電力を微細に調整することが可能となる。
また、変形例1、変形例2では、受熱部14を含まない領域に放出する熱エネルギーについては、部分的に出力を異ならせることは行わなかった。しかし、受熱部14を含まない領域に放出する熱エネルギーについても、部分的に出力を異ならせてもよい。ここで、部分的に出力を異ならせるとは、部分的に出力を無くすことを含む。このような構成とすれば、媒体Pに対して強弱をつけて熱エネルギーを放出したり、必要な領域にのみ熱エネルギーを放出したりすることができる。
なお、本発明は、上述の実施形態や変形例を適宜組み合わせた構成としてもよい。
また、上述の実施形態及び変形例で述べた構成は、水溶性有機溶剤を含有する水性インクを用いる液体吐出装置において特に有効である。このようなインクを用いた液体吐出装置は、画像を形成可能な媒体の種類が多く、熱に弱い媒体を使用する可能性も高くなるためである。ただし、本発明の構成を適用する液体吐出装置は、このような液体吐出装置に限定されない。
また、液体装置1で使用可能な媒体は、アクリル樹脂、PET樹脂、塩化ビニル樹脂といった樹脂製媒体や、布、紙などが挙げられる。また、印刷後の媒体を壁面などに接着するための接着面を有する媒体を用いてもよい。媒体の素材自体が熱に弱い場合や、接着面が熱に弱い場合、本発明の構成が特に有効である。