以下、添付図面を参照して、本願の開示する接合装置、接合方法および接合システムの実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
<1.接合システムの構成>
まず、本実施形態に係る接合システムの構成について、図1〜図3を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る接合システムの構成を示す模式平面図であり、図2は、同模式側面図である。また、図3は、上ウェハおよび下ウェハの模式側面図である。なお、以下においては、位置関係を明確にするために、互いに直交するX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向を規定し、Z軸正方向を鉛直上向き方向とする。
図1に示す本実施形態に係る接合システム1は、第1基板W1と第2基板W2とを(図3参照)を接合することによって重合ウェハTを形成する。
第1基板W1は、たとえばシリコンウェハや化合物半導体ウェハなどの半導体基板に複数の電子回路が形成された基板である。また、第2基板W2は、たとえば電子回路が形成されていないベアウェハである。第1基板W1と第2基板W2とは、略同径を有する。なお、第2基板W2に電子回路が形成されていてもよい。
以下では、第1基板W1を「上ウェハW1」と記載し、第2基板W2を「下ウェハW2」と記載する。
また、以下では、図3に示すように、上ウェハW1の板面のうち、下ウェハW2と接合される側の板面を「接合面W1j」と記載し、接合面W1jとは反対側の板面を「非接合面W1n」と記載する。また、下ウェハW2の板面のうち、上ウェハW1と接合される側の板面を「接合面W2j」と記載し、接合面W2jとは反対側の板面を「非接合面W2n」と記載する。
図1に示すように、接合システム1は、搬入出ステーション2と、処理ステーション3とを備える。搬入出ステーション2および処理ステーション3は、X軸正方向に沿って、搬入出ステーション2および処理ステーション3の順番で並べて配置される。また、搬入出ステーション2および処理ステーション3は、一体的に接続される。
搬入出ステーション2は、載置台10と、搬送領域20とを備える。載置台10は、複数の載置板11を備える。各載置板11には、複数枚(たとえば、25枚)の基板を水平状態で収容するカセットC1,C2,C3がそれぞれ載置される。カセットC1は上ウェハW1を収容するカセットであり、カセットC2は下ウェハW2を収容するカセットであり、カセットC3は重合ウェハTを収容するカセットである。
搬送領域20は、載置台10のX軸正方向側に隣接して配置される。かかる搬送領域20には、Y軸方向に延在する搬送路21と、この搬送路21に沿って移動可能な搬送装置22とが設けられる。搬送装置22は、X軸方向にも移動可能かつZ軸周りに旋回可能であり、載置板11に載置されたカセットC1〜C3と、後述する処理ステーション3の第3処理ブロックG3との間で、上ウェハW1、下ウェハW2および重合ウェハTの搬送を行う。
なお、載置板11に載置されるカセットC1〜C3の個数は、図示のものに限定されない。また、載置板11には、カセットC1,C2,C3以外に、不具合が生じた基板を回収するためのカセット等が載置されてもよい。
処理ステーション3には、各種装置を備えた複数たとえば3つの処理ブロックG1,G2,G3が設けられる。たとえば処理ステーション3の正面側(図1のY軸負方向側)には、第1処理ブロックG1が設けられ、処理ステーション3の背面側(図1のY軸正方向側)には、第2処理ブロックG2が設けられる。また、処理ステーション3の搬入出ステーション2側(図1のX軸負方向側)には、第3処理ブロックG3が設けられる。
第1処理ブロックG1には、上ウェハW1および下ウェハW2の接合面W1j,W2jを改質する表面改質装置30が配置される。表面改質装置30は、上ウェハW1および下ウェハW2の接合面W1j,W2jにおけるSiO2の結合を切断して単結合のSiOとすることで、その後親水化されやすくするように当該接合面W1j,W2jを改質する。
なお、表面改質装置30では、たとえば減圧雰囲気下において処理ガスである酸素ガスが励起されてプラズマ化され、イオン化される。そして、かかる酸素イオンが、上ウェハW1および下ウェハW2の接合面W1j,W2jに照射されることにより、接合面W1j,W2jがプラズマ処理されて改質される。
第2処理ブロックG2には、表面親水化装置40と、接合装置41とが配置される。表面親水化装置40は、たとえば純水によって上ウェハW1および下ウェハW2の接合面W1j,W2jを親水化するとともに、接合面W1j,W2jを洗浄する。表面親水化装置40では、例えばスピンチャックに保持された上ウェハW1または下ウェハW2を回転させながら、当該上ウェハW1または下ウェハW2上に純水を供給する。これにより、上ウェハW1または下ウェハW2上に供給された純水が上ウェハW1または下ウェハW2の接合面W1j,W2j上を拡散し、接合面W1j,W2jが親水化される。接合装置41は、上ウェハW1および下ウェハW2を接合する。接合装置41の構成については、後述する。
第3処理ブロックG3には、図2に示すように、上ウェハW1、下ウェハW2および重合ウェハTのトランジション装置50,51が下から順に2段に設けられる。
図1に示すように、第1処理ブロックG1〜第3処理ブロックG3に囲まれた領域には、搬送領域60が形成される。搬送領域60には、搬送装置61が配置される。搬送装置61は、たとえば鉛直方向、水平方向および鉛直軸周りに移動自在な搬送アームを有する。かかる搬送装置61は、搬送領域60内を移動し、搬送領域60に隣接する第1処理ブロックG1、第2処理ブロックG2および第3処理ブロックG3内の所定の装置に上ウェハW1、下ウェハW2および重合ウェハTを搬送する。
また、図1に示すように、接合システム1は、制御装置300を備える。制御装置300は、接合システム1の動作を制御する。かかる制御装置300は、たとえばコンピュータであり、図示しない制御部および記憶部を備える。記憶部には、接合処理等の各種処理を制御するプログラムが格納される。制御部は記憶部に記憶されたプログラムを読み出して実行することによって接合システム1の動作を制御する。
なお、かかるプログラムは、コンピュータによって読み取り可能な記録媒体に記録されていたものであって、その記録媒体から制御装置300の記憶部にインストールされたものであってもよい。コンピュータによって読み取り可能な記録媒体としては、たとえばハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルディスク(MO)、メモリカードなどがある。
本実施形態に係る接合システム1では、接合装置41による接合処理が接合システム1全体の処理を律速する。このため、接合処理待ちのウェハが生じる場合がある。接合処理待ちのウェハは、たとえば表面親水化装置40内で待機することとなるが、表面親水化装置40内での待機時間は、その時々の状況に左右されるため一定ではない。
本実施形態において、表面親水化装置40内の環境温度は、搬送領域60や表面親水化装置40などの他のユニットと比べて高くなっている。たとえば、他のユニットの環境温度が23〜25℃程度であるのに対し、表面親水化装置40内の環境温度は、27〜30℃程度である。
したがって、表面親水化装置40内での待機時間がほとんどなかったウェハと、表面親水化装置40内で長時間待機していたウェハとでは、温度にバラツキが生じることとなる。この結果、上ウェハW1または下ウェハW2は、温度にバラツキがある状態で、すなわち、ウェハの伸縮量にバラツキがある状態で接合装置41へ搬入されることとなる。
接合装置41へ搬入される上ウェハW1または下ウェハW2の温度にバラツキがある場合、接合装置41は、そのバラついた温度のまま、つまり、伸縮量にバラツキがある状態のまま、上ウェハW1または下ウェハW2を後述する上チャックまたは下チャックで吸着保持することとなる。
上ウェハW1または下ウェハW2が上チャックまたは下チャックに吸着保持されることで、上ウェハW1または下ウェハW2の温度は、上チャックまたは下チャックの温度に倣う。しかし、上ウェハW1または下ウェハW2の伸縮量は、上チャックまたは下チャックの拘束力によって、上チャックまたは下チャックに吸着保持された時点の伸縮量に維持される。すなわち、上ウェハW1または下ウェハW2の伸縮量にバラツキがある状態が維持される。
従来の接合装置では、上チャックまたは下チャックに吸着保持された時点の上ウェハまたは下ウェハの伸縮量のまま、つまり、伸縮量にバラツキがある状態のままで接合処理を行っていた。このため、従来の接合装置では、たとえば、上ウェハと下ウェハとが水平方向にずれて接合されてしまう等の不都合が生じるおそれがあった。また、上チャックまたは下チャックの拘束力によって上ウェハまたは下ウェハの伸縮が抑制されることで、上ウェハまたは下ウェハに内部応力が発生して上ウェハまたは下ウェハに歪みが生じるおそれもあった。
そこで、本実施形態に係る接合装置41では、上チャックおよび下チャックを用いて上ウェハW1および下ウェハW2を吸着保持した後、上チャックおよび下チャックによる上ウェハW1および下ウェハW2の吸着保持を一旦解除し、その後、上チャックおよび下チャックを用いて上ウェハW1および下ウェハW2を再度吸着保持することとした。
上チャックおよび下チャックによる吸着保持を解除することで、上ウェハW1および下ウェハW2の拘束が解かれるため、上ウェハW1および下ウェハW2は、上チャックおよび下チャックの温度に倣って伸縮する。その後、上チャックおよび下チャックを用いて上ウェハW1および下ウェハW2を再度吸着保持することで、上ウェハW1および下ウェハW2の伸縮量が上チャックおよび下チャックの温度に倣った一定の伸縮量に揃った状態で接合処理を行うことが可能となる。
このように、本実施形態に係る接合装置41では、上チャックおよび下チャックによる上ウェハW1および下ウェハW2の吸着保持を一旦解除することで、接合前の上ウェハW1および下ウェハW2の伸縮量のバラツキを抑えることができる。また、上ウェハW1および下ウェハW2に内部応力が発生して上ウェハW1および下ウェハW2に歪みが生じることも防止することができる。
<2.接合装置の構成>
次に、上述した接合装置41の構成について図4〜図11を参照して説明する。図4は、接合装置41の構成を示す模式平面図であり、図5は、同模式側面図である。また、図6は、位置調節機構の構成を示す模式側面図である。また、図7は、反転機構の構成を示す模式平面図であり、図8および図9は、同模式側面図であり、図10は、保持アームおよび保持部材の構成を示す模式側面図である。また、図11は、接合装置の内部構成を示す模式側面図である。
図4に示すように、接合装置41は、内部を密閉可能な処理容器190を有する。処理容器190の搬送領域60側の側面には、上ウェハW1、下ウェハW2および重合ウェハTの搬入出口191が形成され、当該搬入出口191には開閉シャッタ192が設けられる。
処理容器190の内部は、内壁193によって搬送領域T1と処理領域T2に区画される。上述した搬入出口191は、搬送領域T1における処理容器190の側面に形成される。また、内壁193にも、上ウェハW1、下ウェハW2および重合ウェハTの搬入出口194が形成される。
搬送領域T1のY軸負方向側には、上ウェハW1、下ウェハW2および重合ウェハTを一時的に載置するためのトランジション200が設けられる。トランジション200は、たとえば2段に形成され、上ウェハW1、下ウェハW2および重合ウェハTのいずれか2つを同時に載置することができる。
搬送領域T1には、搬送機構201が設けられる。搬送機構201は、たとえば鉛直方向、水平方向および鉛直軸周りに移動自在な搬送アームを有する。そして、搬送機構201は、搬送領域T1内、または搬送領域T1と処理領域T2との間で上ウェハW1、下ウェハW2および重合ウェハTを搬送する。
搬送領域T1のY軸正方向側には、上ウェハW1および下ウェハW2の水平方向の向きを調節する位置調節機構210が設けられる。位置調節機構210は、図6に示すように基台211と、上ウェハW1および下ウェハW2を吸着保持して回転させる保持部212と、上ウェハW1および下ウェハW2のノッチ部の位置を検出する検出部213とを有する。
かかる位置調節機構210では、保持部212に吸着保持された上ウェハW1および下ウェハW2を回転させながら検出部213で上ウェハW1および下ウェハW2のノッチ部の位置を検出することで、当該ノッチ部の位置を調節して上ウェハW1および下ウェハW2の水平方向の向きを調節する。
また、搬送領域T1には、上ウェハW1の表裏面を反転させる反転機構220が設けられる。反転機構220は、図7〜図10に示すように上ウェハW1を保持する保持アーム221を有する。
保持アーム221は、水平方向に延在する。また保持アーム221には、上ウェハW1を保持する保持部材222がたとえば4箇所に設けられる。保持部材222は、図10に示すように保持アーム221に対して水平方向に移動可能に構成されている。また保持部材222の側面には、上ウェハW1の外周部を保持するための切り欠き223が形成される。これら保持部材222は、上ウェハW1を挟み込んで保持することができる。
保持アーム221は、図7〜図9に示すように、たとえばモータなどを備えた第1の駆動部224に支持される。この第1の駆動部224によって、保持アーム221は水平軸周りに回動自在である。また保持アーム221は、第1の駆動部224を中心に回動自在であると共に、水平方向に移動自在である。
第1の駆動部224の下方には、たとえばモータなどを備えた第2の駆動部225が設けられる。この第2の駆動部225によって、第1の駆動部224は鉛直方向に延在する支持柱226に沿って鉛直方向に移動可能である。
このように、保持部材222に保持された上ウェハW1は、第1の駆動部224と第2の駆動部225によって水平軸周りに回動することができるとともに、鉛直方向および水平方向に移動することができる。また、保持部材222に保持された上ウェハW1は、第1の駆動部224を中心に回動して、位置調節機構210から後述する上チャック230との間を移動することができる。
図5に示すように、処理領域T2には、上チャック230と下チャック231とが設けられる。上チャック230は、上ウェハW1を上方から吸着保持する。また、下チャック231は、上チャック230の下方に設けられ、下ウェハW2を下方から吸着保持する。なお、上チャック230は、第1保持部の一例に相当し、下チャック231は、第2保持部の一例に相当する。
上チャック230は、図5に示すように、処理容器190の天井面に設けられた支持部材280に支持される。
支持部材280には、下チャック231に保持された下ウェハW2の接合面W2jを撮像する上部撮像部281(図11参照)が設けられる。上部撮像部281は、上チャック230に隣接して設けられる。
図4、図5及び図11に示すように、下チャック231は、当該下チャック231の下方に設けられた第1の下チャック移動部290に支持される。第1の下チャック移動部290は、後述するように下チャック231を水平方向(Y軸方向)に移動させる。また、第1の下チャック移動部290は、下チャック231を鉛直方向に移動自在、且つ鉛直軸回りに回転可能に構成される。
第1の下チャック移動部290には、上チャック230に保持された上ウェハW1の接合面W1jを撮像する下部撮像部291が設けられている。下部撮像部291は、下チャック231に隣接して設けられる。
図4、図5及び図11に示すように、第1の下チャック移動部290は、当該第1の下チャック移動部290の下面側に設けられ、水平方向(Y軸方向)に延伸する一対のレール295,295に取り付けられる。第1の下チャック移動部290は、レール295に沿って移動自在に構成される。
一対のレール295,295は、第2の下チャック移動部296に設けられる。第2の下チャック移動部296は、当該第2の下チャック移動部296の下面側に設けられ、水平方向(X軸方向)に延伸する一対のレール297,297に取り付けられる。そして、第2の下チャック移動部296は、レール297に沿って移動自在に、すなわち下チャック231を水平方向(X軸方向)に移動させるように構成される。なお、一対のレール297,297は、処理容器190の底面に設けられた載置台298上に設けられる。なお、第1の下チャック移動部290および第2の下チャック移動部296は、上チャック230と下チャック231とを水平方向へ相対移動させることにより、上ウェハW1に対する下ウェハW2の位置を調整する位置調節機構の一例である。
次に、上チャック230と下チャック231の構成について図12〜図14を参照して説明する。図12は、上チャック230および下チャック231の構成を示す模式側面図である。また、図13は、上チャック230を下方から見た場合の模式平面図であり、図14は、下チャック231を上方から見た場合の模式平面図である。
本実施形態に係る上チャック230は、ピンチャック方式により上ウェハW1を吸着保持する。具体的には、図12および図13に示すように、上チャック230は、平面視において少なくとも上ウェハW1より大きい径を有する本体部400を有する。本体部400の下面には、上ウェハW1の非接合面W1nに接触する複数のピン401が設けられる。また、本体部400の下面には、上ウェハW1の非接合面W1nの外周部を支持する外壁部402が設けられる。外壁部402は、複数のピン401の外側に環状に設けられる。
上チャック230は、外壁部402の内側の領域である吸着領域403を真空ポンプにより真空引きすることにより、吸着領域403を減圧する。このとき、吸着領域403の外部の雰囲気が大気圧であるため、上ウェハW1は減圧された分だけ大気圧によって吸着領域403側に押され、上チャック230に上ウェハW1が吸着保持される。
かかる場合、複数のピン401の高さが均一なので、上チャック230の下面の平面度を小さくすることができる。このように上チャック230の下面を平坦にして(下面の平面度を小さくして)、上チャック230に保持された上ウェハW1の鉛直方向の歪みを抑制することができる。また上ウェハW1の非接合面W1nは複数のピン401に支持されているので、上チャック230による上ウェハW1の真空引きを解除する際、当該上ウェハW1が上チャック230から剥がれ易くなる。
また、本体部400の下面には、第1隔壁部408と第2隔壁部409とがさらに設けられており、これら第1隔壁部408および第2隔壁部409により、上チャック230の吸着領域403は、第1領域403a、第2領域403bおよび第3領域403cの3つの領域に区分けされる。
第1隔壁部408は、外壁部402よりも本体部400の内周側において外壁部402と同心円状に配置される。第2隔壁部409は、外壁部402と第1隔壁部408との間において外壁部402と同心円状に配置される。
これにより、吸着領域403は、上ウェハW1の中央部を吸着保持する第1領域403aと、第1領域403aよりも上ウェハW1の外周側の領域を吸着保持する第2領域403bと、第2領域403bよりも上ウェハW1のさらに外周側の領域を吸着保持する第3領域403cとに区分けされる。
第1領域403a、第2領域403bおよび第3領域403cの各領域には、それぞれ第1吸引口404a、第2吸引口404bおよび第3吸引口404cが形成される。第1吸引口404a、第2吸引口404bおよび第3吸引口404cには、それぞれ異なる真空ポンプ406a,406b,406cに連通する第1吸引管405a、第2吸引管405bおよび第3吸引管405cが接続される。これにより、上チャック230は、第1領域403a、第2領域403bおよび第3領域403cごとに上ウェハW1を吸着保持することができる。
本体部400の中心部には、当該本体部400を厚み方向に貫通する貫通孔407が形成されている。この本体部400の中心部は、上チャック230に吸着保持される上ウェハW1の中心部に対応している。そして貫通孔407には、後述する押動部材410の押動ピン411が挿通するようになっている。
上チャック230の上面には、上ウェハW1の中心部を押圧する押動部材410が設けられる。押動部材410は、シリンダ構造を有しており、押動ピン411と、当該押動ピン411が昇降する際のガイドとなる外筒412とを有する。押動ピン411は、例えばモータを内蔵した駆動部(図示せず)によって、貫通孔407を挿通して鉛直方向に昇降自在になっている。そして、押動部材410は、後述する上ウェハW1および下ウェハW2の接合時に、上ウェハW1の中心部と下ウェハW2の中心部とを当接させて押圧することができる。
本実施形態に係る下チャック231も、上チャック230と同様にピンチャック方式により下ウェハW2を吸着保持する。
図12及び図14に示すように、下チャック231は、平面視において少なくとも下ウェハW2より大きい径を有する本体部420を有する。本体部420の上面には、下ウェハW2の非接合面W2nに接触する複数のピン421が設けられる。また本体部420の上面には、下ウェハW2の非接合面W2nの外周部を支持する外壁部422が設けられる。外壁部422は、複数のピン421の外側に環状に設けられる。
下チャック231は、外壁部422の内側の領域である吸着領域423を真空ポンプにより真空引きすることにより、吸着領域423を減圧する。このとき、吸着領域423の外部の雰囲気が大気圧であるため、下ウェハW2は減圧された分だけ大気圧によって吸着領域423側に押され、下チャック231に下ウェハW2が吸着保持される。
かかる場合、複数のピン421の高さが均一なので、下チャック231の上面の平面度を小さくすることができる。また例えば処理容器190内にパーティクルが存在する場合でも、隣り合うピン421の間隔が適切であるため、下チャック231の上面にパーティクルが存在するのを抑制することができる。このように下チャック231の上面を平坦にして(上面の平面度を小さくして)、下チャック231に保持された下ウェハW2の鉛直方向の歪みを抑制することができる。また下ウェハW2の非接合面W2nは複数のピン421に支持されているので、下チャック231による下ウェハW2の真空引きを解除する際、当該下ウェハW2が下チャック231から剥がれ易くなる。
また、本体部420の上面には、第1隔壁部428と第2隔壁部429とがさらに設けられており、これら第1隔壁部428および第2隔壁部429により、下チャック231の吸着領域423は、第1領域423a、第2領域423bおよび第3領域423cの3つの領域に区分けされる。
第1隔壁部428は、外壁部422よりも本体部420の内周側において外壁部422と同心円状に配置される。また、第2隔壁部429は、外壁部422と第1隔壁部428との間において外壁部422および第1隔壁部428と同心円状に配置される。
これにより、吸着領域423は、下ウェハW2の中央部を吸着保持する第1領域423aと、第1領域423aよりも上ウェハW1の外周側の領域を吸着保持する第2領域423bと、第2領域423bよりも下ウェハW2のさらに外周側の領域を吸着保持する第3領域423cとに区分けされる。
第1領域423a、第2領域423bおよび第3領域423cの各領域には、それぞれ第1吸引口424a、第2吸引口424bおよび第3吸引口424cが形成される。第1吸引口424a、第2吸引口424bおよび第3吸引口424cには、それぞれ異なる真空ポンプ426a,426b,426cに連通する第1吸引管425a、第2吸引管425bおよび第3吸引管425cが接続される。これにより、下チャック231は、第1領域423a、第2領域423bおよび第3領域423cごとに下ウェハW2を吸着保持することができる。なお、第1吸引口424aは、複数(ここでは、4つ)形成される。
本体部420の中心部付近には、当該本体部420を厚み方向に貫通する貫通孔427が例えば3箇所に形成されている。そして貫通孔427には、第1の下チャック移動部290の下方に設けられた昇降ピンが挿通するようになっている。
また、本体部420の外周部には、上ウェハW1、下ウェハW2および重合ウェハTが下チャック231から飛び出したり滑落したりするのを防止するガイド部材430が設けられる。ガイド部材430は、本体部420の外周部に複数箇所、例えば4箇所に等間隔に設けられる。
<3.接合システムの具体的動作>
次に、以上のように構成された接合システム1の具体的な動作について図15〜図24を参照して説明する。
図15は、接合システム1が実行する処理の処理手順を示すフローチャートである。また、図16は、上ウェハ吸着処理の処理手順を示すフローチャートであり、図17は、下ウェハ吸着処理の処理手順を示すフローチャートである。図18〜図24は、接合装置41の動作説明図である。なお、図15に示す各種の処理は、制御装置300による制御に基づいて実行される。
先ず、複数枚の上ウェハW1を収容したカセットC1、複数枚の下ウェハW2を収容したカセットC2、及び空のカセットC3が、搬入出ステーション2の所定の載置板11に載置される。その後、搬送装置22によりカセットC1内の上ウェハW1が取り出され、処理ステーション3の第3処理ブロックG3のトランジション装置50に搬送される。
次に、上ウェハW1は、搬送装置61によって第1処理ブロックG1の表面改質装置30に搬送される。表面改質装置30では、所定の減圧雰囲気下において、処理ガスである酸素ガスが励起されてプラズマ化され、イオン化される。この酸素イオンが上ウェハW1の接合面W1jに照射されて、当該接合面W1jがプラズマ処理される。これにより、上ウェハW1の接合面W1jは改質される(ステップS101)。
次に、上ウェハW1は、搬送装置61によって第2処理ブロックG2の表面親水化装置40に搬送される。表面親水化装置40では、スピンチャックに保持された上ウェハW1を回転させながら、当該上ウェハW1上に純水を供給する。そうすると、供給された純水は上ウェハW1の接合面W1j上を拡散し、表面改質装置30において改質された上ウェハW1の接合面W1jに水酸基(シラノール基)が付着して当該接合面W1jが親水化される。また、当該純水によって、上ウェハW1の接合面W1jが洗浄される(ステップS102)。
次に、上ウェハW1は、搬送装置61によって第2処理ブロックG2の接合装置41に搬送される。接合装置41に搬入された上ウェハW1は、トランジション200を介して搬送機構201により位置調節機構210に搬送される。そして位置調節機構210によって、上ウェハW1の水平方向の向きが調節される(ステップS103)。
その後、位置調節機構210から反転機構220の保持アーム221に上ウェハW1が受け渡される。続いて搬送領域T1において、保持アーム221を反転させることにより、上ウェハW1の表裏面が反転される(ステップS104)。すなわち、上ウェハW1の接合面W1jが下方に向けられる。
その後、上ウェハW1は、反転機構220によって上チャック230の下方に搬送される。そして、上ウェハ吸着処理が行われる(ステップS105)。上ウェハ吸着処理は、上ウェハW1を上チャック230で吸着保持した後、上チャック230による上ウェハW1の吸着保持を一旦解除し、その後、再び上ウェハW1を上チャック230で吸着保持する処理である。ここで、上ウェハ吸着処理の具体的な内容について図16を参照して説明する。
図16に示すように、制御装置300は、真空ポンプ406a〜406cを作動させることにより、上チャック230の第1領域403a、第2領域403bおよび第3領域403cの全ての領域で上ウェハW1を吸着保持する(ステップS201)。上ウェハW1が上チャック230に吸着保持されると、上チャック230による拘束力により、上ウェハW1の伸縮量は、たとえば表面親水化装置40内の温度に倣った伸縮量に維持される。
つづいて、制御装置300は、真空ポンプ406aおよび真空ポンプ406bを停止することにより、第3領域403cのみで上ウェハW1を吸着保持する(ステップS202)。これにより、第1領域403aおよび第2領域403bに対応する上ウェハW1の部分の拘束が解かれ、かかる部分が上チャック230の温度に倣って伸縮する。なお、真空ポンプ406aおよび真空ポンプ406bを停止させておく時間は、たとえば1〜60秒程度である。
つづいて、制御装置300は、真空ポンプ406aおよび真空ポンプ406bを作動させるとともに、真空ポンプ406cを停止することにより、第1領域403aと第2領域403bとで上ウェハW1を吸着保持する(ステップS203)。これにより、第3領域403cに対応する上ウェハW1の部分の拘束が解かれ、かかる部分が、上チャック230の温度に倣って伸縮する。この結果、上ウェハW1全体が、上チャック230の温度に倣った伸縮量となる。なお、真空ポンプ406cを停止させておく時間は、たとえば1〜60秒程度である。
その後、制御装置300は、真空ポンプ406cを作動させることにより、第1領域403a、第2領域403bおよび第3領域403cの全ての領域で上ウェハW1を吸着保持する(ステップS204)。これにより、上ウェハW1の伸縮量は、上チャック230の温度に倣った伸縮量に維持される。
このように、制御装置300は、上ウェハW1を上チャック230に吸着保持させた後、上チャック230による上ウェハW1の吸着保持を解除し、その後、上ウェハW1を上チャック230に吸着保持させる上ウェハ吸着処理を行う。
これにより、上チャック230に吸着保持される直前の上ウェハW1の伸縮量が上ウェハW1ごとに異なっていたとしても、接合処理を行う前に、各上ウェハW1の伸縮量を、上チャック230の温度に倣った一定の伸縮量に揃えることができるため、上ウェハW1間における伸縮量のバラツキを抑えることができる。
また、制御装置300は、第1領域403a、第2領域403bおよび第3領域403cのうちの少なくとも1つを動作させた状態で、残りの吸着領域による上ウェハW1の吸着保持を解除し、その後、第1領域403a、第2領域403bおよび第3領域403cの全てを動作させて上ウェハW1を上チャック230に吸着保持させることとした。
したがって、上ウェハW1を上チャック230から落下させることなく、上ウェハW1の伸縮量を上チャック230の温度に倣った一定の伸縮量に揃えることができる。
さらに、制御装置300は、上記の処理を、吸着保持を解除する吸着領域を変えながら複数回実行することとした。したがって、上ウェハW1の全ての部分を上チャック230の温度に倣って伸縮させることができる。
また、上チャック230の第1領域403a、第2領域403bおよび第3領域403cは、同心円状に配置される。このため、上ウェハW1を部分的に伸縮させる際に上ウェハW1に歪みを生じさせにくい。
なお、第1領域403a、第2領域403bおよび第3領域403cの吸着保持をオン・オフする順番や時間、回数等は設定により適宜変更可能である。
上ウェハW1に対して上述したステップS101〜S105の処理が行われている間、当該上ウェハW1に続いて下ウェハW2の処理が行われる。先ず、搬送装置22によりカセットC2内の下ウェハW2が取り出され、処理ステーション3のトランジション装置50に搬送される。
次に、下ウェハW2は、搬送装置61によって表面改質装置30に搬送され、下ウェハW2の接合面W2jが改質される(ステップS106)。なお、ステップS106における下ウェハW2の接合面W2jの改質は、上述したステップS101と同様である。
その後、下ウェハW2は、搬送装置61によって表面親水化装置40に搬送され、下ウェハW2の接合面W2jが親水化されると共に当該接合面W2jが洗浄される(ステップS107)。なお、ステップS107における下ウェハW2の接合面W2jの親水化及び洗浄は、上述したステップS102と同様である。
その後、下ウェハW2は、搬送装置61によって接合装置41に搬送される。接合装置41に搬入された下ウェハW2は、トランジション200を介して搬送機構201により位置調節機構210に搬送される。そして位置調節機構210によって、下ウェハW2の水平方向の向きが調節される(ステップS108)。
その後、下ウェハW2は、搬送機構201によって下チャック231の上方に搬送される。そして、下ウェハ吸着処理が行われる(ステップS109)。下ウェハ吸着処理は、下ウェハW2を下チャック231で吸着保持した後、下チャック231による下ウェハW2の吸着保持を一旦解除し、その後、再び下ウェハW2を下チャック231で吸着保持する処理である。ここで、下ウェハ吸着処理の内容について図17を参照して説明する。
図17に示すように、制御装置300は、真空ポンプ426a〜426cを作動させることにより、下チャック231の第1領域423a、第2領域423bおよび第3領域423cの全ての領域で下ウェハW2を吸着保持する(ステップS301)。下ウェハW2が下チャック231に吸着保持されると、下チャック231の拘束力により、下ウェハW2の伸縮量は、たとえば表面親水化装置40内の温度に倣った伸縮量に維持される。
つづいて、制御装置300は、真空ポンプ426aおよび真空ポンプ426bを停止することにより、第3領域423cのみで下ウェハW2を吸着保持する(ステップS302)。これにより、第1領域423aおよび第2領域423bに対応する下ウェハW2の部分の拘束が解かれ、かかる部分が下チャック231の温度に倣って伸縮する。なお、真空ポンプ426aおよび真空ポンプ426bを停止させておく時間は、たとえば1〜60秒程度である。
つづいて、制御装置300は、真空ポンプ426aおよび真空ポンプ426bを作動させるとともに、真空ポンプ426cを停止することにより、第1領域423aと第2領域423bとで下ウェハW2を吸着保持する(ステップS303)。これにより、第3領域423cに対応する下ウェハW2の部分の拘束が解かれ、かかる部分が、下チャック231の温度に倣って伸縮する。この結果、下ウェハW2全体が、下チャック231の温度に倣った伸縮量となる。なお、真空ポンプ426cを停止させておく時間は、たとえば1〜60秒程度である。
その後、制御装置300は、真空ポンプ426cを作動させることにより、第1領域423a、第2領域423bおよび第3領域423cの全ての領域で下ウェハW2を吸着保持する(ステップS304)。これにより、下ウェハW2の伸縮量は、下チャック231の温度に倣った伸縮量に維持される。
このように、制御装置300は、下ウェハW2を下チャック231に吸着保持させた後、下チャック231による下ウェハW2の吸着保持を解除し、その後、下ウェハW2を下チャック231に吸着保持させる下ウェハ吸着処理を行う。
これにより、上ウェハ吸着処理と同様に、各下ウェハW2の伸縮量を、下チャック231の温度に倣った一定の伸縮量に揃えることができるため、下ウェハW2間における伸縮量のバラツキを抑えることができる。
なお、本実施形態に係る接合装置41において、上チャック230と下チャック231の温度は同一であるものとする。したがって、上ウェハW1と下ウェハW2とはほぼ同一の伸縮量となる。
上述した下ウェハ吸着処理の例では、下チャック231の第1〜第3領域423a〜423cを個別に制御する場合について説明したが、制御装置300は、第1〜第3領域423a〜423cを一様に制御してもよい。具体的には、制御装置300は、第1〜第3領域423a〜423cで下ウェハW2を吸着保持した後、第1〜第3領域423a〜423cによる下ウェハW2の吸着保持を一旦解除し、その後、再び第1〜第3領域423a〜423cで下ウェハW2を吸着保持してもよい。
次に、上チャック230に保持された上ウェハW1と下チャック231に保持された下ウェハW2との水平方向の位置調節が行われる(ステップS110)。
図18に示すように、上ウェハW1の接合面W1jには予め定められた複数、例えば3点の基準点A1〜A3が形成され、同様に下ウェハW2の接合面W2jには予め定められた複数、例えば3点の基準点B1〜B3が形成される。基準点A1,A3および基準点B1,B3はそれぞれ上ウェハW1および下ウェハW2の外周部の基準点であり、基準点A2および基準点B2はそれぞれ上ウェハW1および下ウェハW2の中心部の基準点である。なお、これら基準点A1〜A3,B1〜B3としては、例えば上ウェハW1および下ウェハW2上に形成された所定のパターンがそれぞれ用いられる。基準点の数は任意に設定可能である。
先ず、図18に示すように、上部撮像部281および下部撮像部291の水平方向位置の調節を行う。具体的には、下部撮像部291が上部撮像部281の略下方に位置するように、第1の下チャック移動部290と第2の下チャック移動部296によって下チャック231を水平方向に移動させる。そして、上部撮像部281と下部撮像部291とで共通のターゲットXを確認し、上部撮像部281と下部撮像部291の水平方向位置が一致するように、下部撮像部291の水平方向位置が微調節される。
次に、図19に示すように、第1の下チャック移動部290によって下チャック231を鉛直上方に移動させた後、上チャック230と下チャック231の水平方向位置の調節を行う。
具体的には、第1の下チャック移動部290と第2の下チャック移動部296によって下チャック231を水平方向に移動させながら、上部撮像部281を用いて下ウェハW2の接合面W2jの基準点B1〜B3を順次撮像する。同時に、下チャック231を水平方向に移動させながら、下部撮像部291を用いて上ウェハW1の接合面W1jの基準点A1〜A3を順次撮像する。なお、図19は上部撮像部281によって下ウェハW2の基準点B1を撮像するとともに、下部撮像部291によって上ウェハW1の基準点A1を撮像する様子を示している。
撮像された画像は、制御装置300に出力される。制御装置300では、上部撮像部281で撮像された画像と下部撮像部291で撮像された画像とに基づいて、上ウェハW1の基準点A1〜A3と下ウェハW2の基準点B1〜B3とがそれぞれ合致するように、第1の下チャック移動部290と第2の下チャック移動部296によって下チャック231の水平方向位置を調節させる。こうして上チャック230と下チャック231の水平方向位置が調節され、上ウェハW1と下ウェハW2の水平方向位置が調節される。
このように、本実施形態に係る接合装置41では、上ウェハ吸着処理および下ウェハ吸着処理の後に、すなわち、上ウェハW1および下ウェハW2の伸縮量を一定の伸縮量に揃えた後で、第1の下チャック移動部290および第2の下チャック移動部296を制御して上ウェハW1および下ウェハW2の水平方向位置調整を行うこととした。このため、水平方向位置調整の精度を高めることができる。
なお、たとえば基準点A1〜A3または基準点B1〜B3の画像が適切に得られなかった場合のように、水平方向位置調節においてエラーが生じた場合には、接合装置41は、ステップS110の処理を再度実行してもよい。
次に、図20に示すように、第1の下チャック移動部290によって下チャック231を鉛直上方に移動させて、上チャック230と下チャック231の鉛直方向位置の調節を行い、当該上チャック230に保持された上ウェハW1と下チャック231に保持された下ウェハW2との鉛直方向位置の調節を行う(ステップS111)。このとき、下ウェハW2の接合面W2jと上ウェハW1の接合面W1jとの間の間隔は所定の距離、例えば80μm〜200μmになっている。
次に、上チャック230に保持された上ウェハW1と下チャック231に保持された下ウェハW2の接合処理が行われる。
先ず、図21に示すように押動部材410の押動ピン411を下降させることによって、上ウェハW1の中心部を押圧しながら当該上ウェハW1を下降させる。このとき、押動ピン411には、上ウェハW1がない状態で当該押動ピン411が70μm移動するような荷重、例えば200gがかけられる。そして、押動部材410によって、上ウェハW1の中心部と下ウェハW2の中心部を当接させて押圧する(ステップS112)。
そうすると、押圧された上ウェハW1の中心部と下ウェハW2の中心部との間で接合が開始する(図21の太線部参照)。すなわち、上ウェハW1の接合面W1jと下ウェハW2の接合面W2jはそれぞれステップS101およびステップS106において改質されているため、先ず、接合面W1j,W2j間にファンデルワールス力(分子間力)が生じ、当該接合面W1j,W2j同士が接合される。さらに、上ウェハW1の接合面W1jと下ウェハW2の接合面W2jはそれぞれステップS102およびステップS107において親水化されているため、接合面W1j,W2j間の親水基が水素結合し(分子間力)、接合面W1j,W2j同士が強固に接合される。
その後、図22に示すように、押動部材410によって上ウェハW1の中心部と下ウェハW2の中心部を押圧した状態で真空ポンプ406a〜406cを停止して、吸着領域403における上ウェハW1の真空引きを停止する。そうすると、上ウェハW1が下ウェハW2上に落下する。このとき、上ウェハW1の非接合面W1nは複数のピン401に支持されているので、上チャック230による上ウェハW1の真空引きを解除した際、当該上ウェハW1が上チャック230から剥がれ易くなっている。
そして上ウェハW1の中心部から外周部に向けて、上ウェハW1が下ウェハW2上に落下して当接し、上述した接合面W1j,W2j間のファンデルワールス力と水素結合による接合が順次拡がる。こうして、図23に示すように上ウェハW1の接合面W1jと下ウェハW2の接合面W2jが全面で当接し、上ウェハW1と下ウェハW2が接合される(ステップS113)。
その後、図24に示すように、押動部材410の押動ピン411を上チャック230まで上昇させる。また、真空ポンプ426a〜426cを停止し、吸着領域423における下ウェハW2の真空引きを停止して、下チャック231による下ウェハW2の吸着保持を解除する。このとき、下ウェハW2の非接合面W2nは複数のピン421に支持されているので、下チャック231による下ウェハW2の真空引きを解除した際、当該下ウェハW2が下チャック231から剥がれ易くなっている。
上ウェハW1と下ウェハW2が接合された重合ウェハTは、搬送装置61によってトランジション装置51に搬送され、その後、搬入出ステーション2の搬送装置22によって所定の載置板11のカセットC3に搬送される。こうして、一連の処理が終了する。
<4.従来技術との比較結果>
ここで、上ウェハ吸着処理(図16参照)および下ウェハ吸着処理(図17参照)を行わない場合と上ウェハ吸着処理および下ウェハ吸着処理を行った場合とでの、重合ウェハTの上下ウェハ径差のバラツキの比較結果について図25および図26を参照して説明する。図25は、上ウェハ吸着処理および下ウェハ吸着処理を行わない場合における重合ウェハTの上下ウェハ径差の測定結果を示す図であり、図26は、上ウェハ吸着処理および下ウェハ吸着処理を行った場合における重合ウェハTの上下ウェハ径差の測定結果を示す図である。
なお、図25および図26は、上ウェハW1と下ウェハW2との接合処理を3セット連続で行った場合における各重合ウェハTの上下ウェハ径差(上ウェハW1の直径−下ウェハW2の直径)の測定結果を示している。図25および図26における「No.1」、「No.2」および「No.3」は、それぞれ1セット目、2セット目および3セット目の接合処理で形成された重合ウェハTを示す。
No.1(1セット目)の接合処理では、表面親水化装置40での待機時間がゼロの上ウェハW1と下ウェハW2との接合を行った。また、No.2(2セット目)の接合処理では、上ウェハW1および下ウェハW2を表面親水化装置40で所定時間待機させた後で、両者の接合を行った。また、No.3(3セット目)の接合処理では、上ウェハW1および下ウェハW2をNo.2における待機時間よりも長く表面親水化装置40で待機させた後で、両者の接合を行った。
また、図26には、上チャック230および下チャック231による吸着保持の解除時間がそれぞれ異なる5パターンの上ウェハ吸着処理および下ウェハ吸着処理を行った場合の測定結果を示している。
図25および図26に示すように、上ウェハ吸着処理および下ウェハ吸着処理を行うことにより、上ウェハ吸着処理および下ウェハ吸着処理を行わない場合と比べて、重合ウェハTの上下ウェハ径差のバラツキが抑えられていることがわかる。
また、図26に示すように、上チャック230および下チャック231による吸着保持の解除時間が最も短い1秒の場合であっても、上ウェハ吸着処理および下ウェハ吸着処理を行わない場合と比べて、重合ウェハTの上下ウェハ径差のバラツキが抑えられていることがわかる。したがって、少なくとも1〜3秒の解除時間を設ければ、重合ウェハTの上下ウェハ径差のバラツキを抑えることが可能である。
上述してきたように、本実施形態に係る接合装置は、基板同士を接合する接合装置であって、第1保持部と、第2保持部と、制御部とを備える。第1保持部は、第1基板を上方から吸着保持する。第2保持部は、第1保持部の下方に設けられ、第2基板を下方から吸着保持する。制御部は、第2基板を第2保持部に吸着保持させた後、第2保持部による第2基板の吸着保持を解除し、その後、第2基板を第2保持部に再び吸着保持させる第2基板吸着処理を行う。
したがって、本実施形態に係る接合装置によれば、基板の伸縮量のバラツキを抑えることができる。
また、本実施形態に係る接合装置によれば、基板に熱歪みが生じることを防止することができる。また、本実施形態に係る接合装置によれば、上ウェハ吸着処理および下ウェハ吸着処理を行った後で、上ウェハW1および下ウェハW2の水平方向位置調整を行うことにより、水平方向の位置調整精度を向上させることもできる。
<5.その他の実施形態>
ところで、接合装置41は、上チャック230および下チャック231の温度を調節する温度調節機構をさらに備えていてもよい。かかる点について図27を参照して説明する。図27は、変形例に係る上チャックおよび下チャックの構成を示す模式側面図である。
図27に示すように、変形例に係る上チャック230Aは、本体部400Aの内部に第1温度調節機構450を備える。第1温度調節機構450は、本体部400Aの温度を所定の温度に調節することにより、上チャック230Aに吸着保持された上ウェハW1の温度を所定の温度に調節する。
また、変形例に係る下チャック231Aは、本体部420Aの内部に第2温度調節機構451を備える。第2温度調節機構451は、本体部420Aの温度を所定の温度に調節することにより、下チャック231Aに吸着保持された下ウェハW2の温度を所定の温度に調節する。なお、第1温度調節機構450および第2温度調節機構451は、制御装置300によって制御される。
このように、上チャック230Aおよび下チャック231Aに対して第1温度調節機構450および第2温度調節機構451を設けることにより、上ウェハW1と下ウェハW2とを所望の温度に調節することができる。したがって、上ウェハW1および下ウェハW2の伸縮量のバラツキを抑えるだけでなく、上ウェハW1および下ウェハW2の伸縮量自体も制御することが可能となる。
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。