以下、印刷装置の一例であるプリンターに具体化した一実施形態を、図面を参照して説明する。
図1に示すプリンター11は、スキャン機能、プリント機能、コピー機能及びファクシミリ機能を併せ持つ複合機である。プリンター11は、略直方体形状を有する装置本体12と、装置本体12の前面(図1では右手前面)に設けられた操作パネル13とを備えている。操作パネル13には、表示部14及び複数の操作スイッチからなる操作部15が設けられている。操作部15には、電源スイッチ15a、印刷開始ボタン15b及び各種モードを切り替えるモード切替えボタン15cなどが含まれる。なお、本実施形態の表示部14はその画面に表示されたボタンに触れるとそのボタンに対応する内容を選択入力可能なタッチパネルになっており、このタッチパネル機能も操作部の一部を構成する。
図1に示すように、装置本体12の前面下部には、印刷媒体の一例としての用紙Pを複数枚(例えば100〜1000枚の範囲内の値)収容可能な複数(図1の例では二つ)の給送カセット16,17が、それぞれ装置本体12の対応する箇所に個別に設けられた各収容凹部に対して着脱可能な状態で装着されている。また、装置本体12の背面側には、傾斜した姿勢に配置される手差し型の給送トレイ19が設けられている。
複数の給送カセット16,17のうちの一つから給送された用紙Pは、装置本体12内の背面側に配置された用紙反転経路(図示省略)に沿って反転した後、搬送方向Yに沿って印刷開始位置まで搬送される。これに対して、給送トレイ19から給送された用紙Pは比較的短い給送距離を経て印刷開始位置まで搬送される。このため、給送カセット16,17の一方から給送された用紙Pは、給送トレイ19から給送された用紙に比べ、若干斜めになる斜行や、搬送方向Yと交差する走査方向Xの位置ずれがより発生し易い。
図1に示すように、装置本体12内には、走査方向X(本例では幅方向)に延びるガイド軸21に案内されて往復移動可能なキャリッジ22が設けられている。キャリッジ22の下部に配置された印刷ヘッド23は、搬送される用紙P(図1では二点鎖線で示す)にインク滴を噴射可能な複数のノズルを有する。キャリッジ22が走査方向Xに往復移動しながらその移動途中でノズルからインク滴を噴射することで、用紙Pの表面に文書又は画像等の印刷が施される。印刷済みの用紙Pは、搬送方向Yへ送られて装置本体12の正面中段位置に開口する排出口24から排出され、例えば延出状態にあるスライド式の排出スタッカー25(排出トレイ)上に積載される。
プリンター11は一例としてカラープリンターである。印刷ヘッド23には例えばシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、黒(K)を含む複数色(例えば4〜10色の範囲内の色数)のインクを収容する不図示のインク供給源(一例としてインクカートリッジ又はインクタンク)から供給されたインクを色別に噴射するインク色と同数の複数のノズル列が形成されている。なお、プリンター11はグレイスケールのみ印刷可能なモノクロプリンターでもよい。
図1に示すプリンター11では、装置本体12の下部が上述の印刷によって用紙Pに画像を形成する画像形成部26になっており、その上側にスキャナー部27が配置されている。スキャナー部27は、装置本体12の上面部に原稿読取り面を有する不図示の原稿台と、装置本体12の上側に原稿台に対して開閉可能に設けられたカバー28とを有する。カバー28の上部には、複数枚の原稿をセットしてスキャナー部27へ一枚ずつ給送可能な自動原稿給送ユニット29(オートドキュメントフィーダー)が設けられている。
次に図2を用いてプリンター11の電気的構成を説明する。図2に示すように、プリンター11は、その全体的な制御を司るコントローラー30、操作パネル13、スキャンエンジン31及びプリントエンジン32等を備える。また、プリンター11は、通信インターフェイス(以下「通信I/F35」と称す。)を備える。スキャンエンジン31は、ラインセンサーを有する走査ヘッド、走査ヘッドの動力源となる電動モーター及びラインセンサーの読み取り箇所を照明するランプ等を備える。
図2に示すプリントエンジン32は、印刷ヘッド23、キャリッジ22の動力源となるキャリッジモーター36、給送カセット16,17及び給送トレイ19等のから用紙Pを給送する動力源となる給送モーター37、給送された用紙Pを搬送する動力源となる搬送モーター38、印刷ヘッド23をクリーニングするクリーニング装置39等を備える。コントローラー30は、印刷データに基づきプリントエンジン32を駆動制御して用紙Pに印刷する。また、コントローラー30は、スキャンエンジン31及びプリントエンジン32を駆動制御し、スキャンエンジン31で読み取った原稿データに基づく画像をプリントエンジン32に印刷させることにより、原稿の「コピー」を行う。
また、コントローラー30は、ホスト装置100から通信I/F35を介して受信した印刷データを基にプリントエンジン32を駆動制御して文書や画像等を印刷する。なお、ホスト装置100には、パーソナルコンピューター、携帯情報端末(PDA(Personal Digital Assistants))、タブレットPC、スマートフォンなどが用いられる。
図2に示すコントローラー30はコンピューター40を備える。コンピューター40は、CPU41(中央処理装置)、ASIC42(Application Specific IC(特定用途向けIC))、記憶部の一例としての不揮発性メモリー43及びRAM44を備えている。不揮発性メモリー43には、用紙Pの側端位置(端部位置の一例)を検出する側端検出処理を行うための図8に示す制御プログラムを含む各種のプログラム、及び側端検出処理に用いられるリブ位置データRD(図4参照)を含む各種のデータが記憶されている。
図2に示すように、装置本体12内には、給送モーター37を動力源として各給送カセット16,17から用紙Pを一枚ずつ送り出す給送駆動部46が給送カセット毎に設けられている。各給送駆動部46は、給送カセット16,17にセットされた用紙群のうち最上位の一枚を給送方向下流側へ送り出す給送ローラー48(ピックアップローラー)を備える。また、給送トレイ19の基端部近傍位置に設けられた給送ローラー49が、給送モーター37の動力で回転駆動することにより、給送トレイ19上の用紙群のうち最上位の一枚が給送方向下流側へ送り出される。
また、図2に示すように、コントローラー30の入力端子には、給送カセット16,17の取外し及び装着を検知可能なトレイセンサー51,52と、給送トレイ19上の用紙Pの有無を検知可能な紙有無センサー53とが接続されている。また、コントローラー30の入力端子には、紙検出センサー55、紙幅センサー56、リニアエンコーダー57及びエンコーダー58が電気的に接続されている。
紙検出センサー55は、給送経路上の所定位置に設けられた例えば接触式又は非接触式のスイッチ型センサーであり、給送された用紙Pの搬送方向Yにおける先端を検知する。紙幅センサー56は、キャリッジ22に設けられた非接触式センサーであり、用紙Pの搬送方向Yと交差する走査方向Xにおける側端を検出する。本例の紙幅センサー56は、光を照射可能な発光部と、発光部から照射された光の反射光を受光可能な受光部とを有する反射型の光学式センサーからなる。もちろん、紙幅センサー56を透過型の光学式センサーとし、搬送経路を挟んだ両側の発光部と受光部との間を通る光を用紙Pが遮ることでその側端を検出する構成としてもよい。
また、リニアエンコーダー57は、キャリッジ22の移動量、つまりキャリッジモーターの回転量に比例する数のパルスを有するパルス信号を出力する。また、エンコーダー58は、搬送モーター38の回転量に比例する数のパルスを有するパルス信号を出力する。
コントローラー30は、紙検出センサー55が用紙Pの先端を検知すると、PFカウンター(図示省略)にエンコーダー58からのパルスのエッジ数を計数させる。このため、コントローラー30は、用紙Pの先端が紙検出センサー55により検知されたときの位置を原点とする用紙Pの搬送方向Yの位置(搬送位置)に相当する計数値をPFカウンターから取得する。
また、コントローラー30は、キャリッジモーター36を駆動させてキャリッジ22が走査方向に移動しているときに紙幅センサー56から入力する検出電圧を監視し、その検出電圧が所定の閾値を切ったときのキャリッジ位置(つまりCRカウンターの計数値)から用紙Pの側端位置を取得する。キャリッジ位置と紙幅センサー56の配置位置との間の走査方向Xの距離は既知であるため、この既知の距離とキャリッジ位置とから用紙Pの側端位置は求められる。
次に、図3を参照して、用紙Pへの印刷が行われる印刷部の構成を説明する。図3に示すように、印刷部にはキャリッジ22が走査される領域(「走査領域」ともいう。)と対向する位置には、走査方向Xに沿って延びる長尺状の支持台60が設けられている。支持台60には、搬送方向Yの上流側に位置する上流側支持面部61と、上流側支持面部61に対して搬送方向Yの下流側に位置する中段支持面部62と、中段支持面部62に対して搬送方向Yの下流側に位置する下流側支持面部63とを有している。
図3に示すように、各支持面部61〜63には、鉛直方向上側(図3の紙面手前側)に突出し、かつ搬送方向Yに沿って延びる凸部の一例としての第1リブ64、第2リブ65及び第3リブ66がそれぞれ走査方向Xに一定の間隔で複数形成されている。用紙P(図1参照)は、第1〜第3リブ64〜66に裏面を支持された状態で搬送方向Yに搬送される。なお、図3において、支持台60上には、走査方向Xにおいて印刷ヘッド23による液体の噴射が行われる最大領域である印刷領域PAが設定されている。
リニアエンコーダー57は、走査方向に沿って一定ピッチで開口する多数のスリットを有する符号板57aと、投光部から出射されてスリットを通過した光を受光部で受光するセンサー57bとを有し、センサー57bからキャリッジモーター36の回転量に比例する数のパルスを有するパルス信号を出力する。
図3に示すように、搬送方向Yに支持台60を挟んだ上流側と下流側には、それぞれ搬送ローラー対67と排出ローラー対68とが設けられている。用紙Pは、搬送モーター38の動力によって回転する両ローラー対67,68に挟持(ニップ)された状態で搬送方向Yに搬送される。なお、本実施形態では、給送モーター37、給送ローラー48,49、搬送モーター38、搬送ローラー対67及び排出ローラー対68等の搬送系の構成部品により、搬送部の一例が構成されている。
図3に示すように、上流側支持面部61の第1リブ64以外の部分は、第1リブ64の頂面(上端面)よりも低い底面を有する凹部61aとなっている。用紙Pを搬送方向Yに印刷開始位置まで搬送する頭出し動作の完了後、コンピューター40は、キャリッジ22が走査方向Xに移動させ、この移動過程において紙幅センサー56からの検出信号に基づいて用紙Pの側端位置を検出する側端検出駆動を行わせる。
シリアル式のプリンター11では、キャリッジ22を走査方向Xに往復動させながら印刷ヘッド23のノズルから用紙Pにインクを噴射する印字動作と、用紙Pを搬送方向Yに次の記録位置までの搬送量だけ搬送する送り動作とを交互に繰り返すことで、用紙Pに文書や画像等が印刷される。そして、キャリッジ22が走査方向Xへ1回移動するパスごとに印刷ヘッド23からインクの噴射を開始する印刷開始位置(噴射開始位置)の決定に、側端検出駆動で検出された用紙Pの側端位置が用いられる。このため、用紙Pに対する印刷画像の走査方向Xにおける位置ずれを抑制できる。
次に図5を参照して、側端検出駆動時における第1リブ64と用紙Pとの位置関係について説明する。図5に示すように、第1リブ64は、搬送方向下流側から見た正面視で台形形状をなし、一番高い頂面64a(上端面)と、その走査方向Xの両側に斜めに延びる二つの側面64b,64bとを有する。第1リブ64間は凹部61aとなっており、用紙Pは、図5に示すように複数の第1リブ64の頂面64aに支持される。ここで、用紙Pの幅方向(走査方向X)両側の側端のうちホーム位置側(図5では右側)の側端を「第1側端SE1」と呼び、用紙Pの幅方向に第1側端と反対側の側端を「第2側端SE2」と呼ぶ。
本実施形態のプリンター11には、印刷モードとして、ドラフトモード(高速印刷モード)と高品質モード(低速印刷モード)、両面印刷モード等がある。プリンター11は、用紙Pの側端位置を検出する方法として印刷モードに応じて2種類の側端検出方法を採用している。第1の方法は、用紙Pの幅方向の第1側端SE1を検出して第1側端SE1の位置を決定する方法である。第2の方法は、用紙Pの幅方向の第1側端SE1と第2側端SE2の両方を検出し、両方の側端位置のデータを基に紙幅(用紙の幅方向長さ)及び第1側端SE1の位置を決定する方法である。
複数の印刷モードのうちどの印刷モードが第1の方法をとり、他のどの印刷モードが第2の方法をとるかは、予め不揮発性メモリー43に記憶されている。コンピューター40は、ユーザーにより選択された又は印刷ジョブデータ中で指定された印刷モードを基に、給送時に行われる用紙Pの側端位置検出処理を第1の方法で実行するか、第2の方法で実行するかを決定する。
図5(a)に示すように、用紙Pが、はがき、B5判、A4判、B4判、A3判等の規格サイズの定形紙である場合、正規の位置に給送されれば、用紙Pの幅方向両側の側端SE1,SE2が、どの第1リブ64にも位置が重ならないように複数の第1リブ64の位置が設定されている。また、図5(b)に示すように、第1側端SE1が第1リブ64の位置と重なる位置にある場合は、第2側端SE2が第1リブ64の位置と重ならない位置になるように、複数の第1リブ64が位置設定されている。
上流側支持面部61の光反射率は、用紙Pの光反射率に比べてかなり低くなっている。これは少なくとも第1リブ64に光反射率を低くする表面加工が施されていることによる。よって、紙幅センサー56にとって、上流側支持面部61は暗部領域となり、用紙Pは明部領域となる。紙幅センサー56のスポット光が用紙Pの側端を横切ったとき、紙幅センサー56の反射光の受光量が大きく変化し、この受光量の大きな変化点を検出することにより、用紙Pの側端位置が検出される。
ところで、第1リブ64の頂面64aは用紙Pの摺動により摩耗し、次第に鏡面状に近づき、その光反射率は徐々に上昇する。頂面64aの光反射率が所定値以上に高くなっても、用紙Pが図5(a)に示す正規の位置範囲にあれば、第1側端SE1の検出位置精度に影響はない。しかし、図5(b)に示すように、用紙Pが給送される過程で、搬送方向Yに対して斜めに搬送される斜行が発生したり、正規の位置から走査方向Xに若干ずれた位置に給送されたりした場合、用紙Pの第1側端SE1が第1リブ64に重なる場合がある。光反射率が所定値以上に上昇した第1リブ64と用紙Pの側端位置とが重なる状態では、第1側端SE1の位置検出精度が低下する。特に第1の方法の場合、検出誤差を含む第1側端SE1の位置データのみに基づき印刷開始位置が決定されるため、用紙Pに対する印刷画像の位置ずれや用紙Pからはみ出して噴射されたインクによる支持台60の汚染が問題となる。
そこで、本実施形態では、頂面64aの光反射率が所定値以上に高まったと推定された場合に、用紙Pの第1側端SE1の位置が第1リブ64の位置と重なると判定された場合、その検出された第1側端SE1の位置は使用されず、他の方法で第1側端SE1の位置を求める。詳しくは、第1の方法において、頂面64aの光反射率が所定値以上に高まったと推定された場合において、第1側端SE1を一方の端部位置の一例として検出し、その検出した第1側端SE1が第1リブ64の位置と重なると判定された場合に、その第1側端SE1の検出位置が許容を超える検出誤差を含む虞があるとして使用されない。そして、他方の端部位置の一例として第2側端SE2を検出し、第2側端SE2の検出位置に基づいて第1側端SE1の位置を求めるようにしている。第1側端SE1が第1リブ64の位置と重ならないと判定された場合は、第2側端SE2を検出する側端検出駆動は行われない。
なお、第2の方法では、検出された第1側端SE1の位置データに検出誤差が含まれていても、第1側端位置と第2側端位置との平均値を用紙Pの幅中心位置とし、この幅中心位置に走査方向マイナス側(ホーム位置側)に、第1側端位置と第2側端位置との差(紙幅)の半分だけ移動させた位置を求め、その位置を第1側端位置に決定する。このため、第1側端位置の検出誤差がほぼ半減されるため、第1の方法に比べさほど問題はない。
ここで、図6を参照して、第1方法で用紙Pの側端位置を検出する場合のキャリッジ22の駆動方法を簡単に説明する。図6に示すように、用紙Pの印刷開始位置までの給送動作完了後にキャリッジ22を図6(b)に示す用紙P上の検出開始位置SP1から用紙Pの第1側端SE1よりも外側の領域に位置する検出終了位置EP1へ移動させる第1側端検出駆動が行われる。この第1側端検出駆動の過程で、紙幅センサー56の検出信号に基づいて用紙Pの第1側端SE1が検出される。また、検出された第1側端SE1の位置が第1リブ64の位置と重なる場合、キャリッジ22を図6(c)に示す用紙P上の検出開始位置SP1から用紙Pの第2側端SE2よりも外側の領域に位置する検出終了位置(図示せず)へ移動させる第2側端検出駆動が行われる。この第2側端検出駆動の過程で、紙幅センサー56の検出信号に基づいて用紙Pの第2側端SE2が検出される。
図4は、コンピューター40内に構築される用紙端部検出制御に係る機能ブロック図であり、プリンター11は、用紙Pの側端を検出する検出部71と、用紙端部検出処理をはじめとする各種の制御を司る制御部72とを備える。制御部72は、第1リブ64の頂面64aが用紙Pとの摺動による摩耗により光反射率が検出誤差を含みうる程度に高くなったことを管理する耐久フラグを備えている。制御部72は、プリンター11の使用開始からの累計印刷枚数を計数する不図示のカウンターを備え、累積印刷枚数が閾値以下のうちは耐久フラグをオフ(「0」)とし、累積印刷枚数が閾値を超えると耐久フラグをオン(「1」)にする。累積印刷枚数は、用紙Pとの摩耗により変化した第1リブ64の光反射率を示す指標として用いられている。累積印刷枚数が閾値を超えたことをもって、第1リブ64の摩耗による光反射率が、第1側端SE1が第1リブ64と重なる位置にあるときに検出される第1側端位置が許容範囲を超える誤差を含むとみなしうる閾値を超えたことを間接的に判定している。
また、本実施形態では、コンピューター40による用紙Pの側端位置検出処理は、一つの印刷ジョブにおいて一枚目の用紙Pだけに行う。これは、一つの印刷ジョブ中においては、用紙種、用紙サイズ及び給送元(給送カセット16,17又は給送トレイ19)が同じであり、かつ同じ給送経路で給送される用紙P間では、給送時の斜行や幅方向の位置ずれはおおよそ同じになる傾向が高いからである。制御部72は、給送される用紙Pが、印刷ジョブの一枚目の用紙であるか否かを管理する用紙フラグを備え、一つの印刷ジョブ中の一枚目の用紙であるときには用紙フラグをオン(「1」)とし、二枚目以降の用紙Pであるときに用紙フラグをオフ(「0」)にする。
そして、コンピューター40は、用紙フラグがオンのときに側端検出駆動を行い、用紙フラグがオフであるときには側端検出駆動を行わない。そして、コンピューター40は、第1の方法で側端検出駆動を行う場合、検出された第1側端が第1リブ64と重なっても、耐久フラグがオフのうちは第2側端検出駆動を行わず、そのとき検出された第1側端位置を採用する。一方、コンピューター40は、第1の方法で側端検出駆動を行う場合、第1側端検出駆動により検出された第1側端位置が第1リブ64と重なり、かつそのとき耐久フラグがオンであるときに限り第2側端検出駆動を行い、そのとき検出された第2側端位置に基づいて第1側端位置を決定する。
図4に示すように、検出部71は、リニアエンコーダー57、CRカウンター73、紙幅センサー56及び検出処理部74を備える。CRカウンター73は、キャリッジ22が原点位置にあるときにリセットされ、キャリッジ22の往動時にリニアエンコーダー57からのパルス信号のエッジを検知する度に計数値に「1」を加算し、一方、その復動時にリニアエンコーダー57からのパル信号のエッジを検知する度に計数値から「1」を減算する。これにより、CRカウンター73はキャリッジ22の走査方向Xにおける位置(キャリッジ位置)に相当する計数値を出力する。
検出処理部74は、用紙Pの印刷開始位置までの給送完了後かつ印刷開始前に、キャリッジ22を走査方向Xに移動させて行う第1側端検出駆動の過程で、紙幅センサー56からの検出電圧Vdが閾値Vsを切ったときに、CRカウンター73の計数値から把握されるキャリッジ位置から紙幅センサー56の位置に相当する第1側端SE1の位置を求める。そして、検出処理部74は求めた第1側端SE1の位置データを制御部72に送る。
制御部72は、判定部75と印刷制御部76とを備える。判定部75は、不揮発性メモリー43から読み込んだリブ位置データRDと、検出部71から入力した第1側端SE1の位置データとを比較し、第1側端SE1の位置が第1リブ64の位置と重なるか否かを判定する。
ここで、リブ位置データRDは、第1リブ64(図3参照)の位置範囲を規定する位置データである。例えばk個の第1リブ64のうちホーム位置HP側からn番目(但し、nは自然数で、1,2,…,k)の第1リブ64(図7(c)参照)の位置は、第1リブ64の頂面64aの走査方向Xにおける一方のエッジ位置xnsから他方のエッジ位置xneまでの位置範囲によって規定されている。判定部75は、検出された第1側端SE1の位置がリブ位置範囲(xns〜xne)内にあるとき、第1側端SE1の位置と第1リブ64の位置とが重なると判定し、第1側端SE1の位置がリブ位置範囲(xns〜xne)内にない場合(図7(a)参照)に、第1側端SE1の位置と第1リブ64の位置とが重ならないと判定する。この判定結果は、判定部75から印刷制御部76に送られる。
印刷制御部76は、印刷に必要なモーター制御及び印刷ヘッド制御を司る。印刷制御部76が行う制御には、用紙Pを給送及び搬送する搬送制御、キャリッジ22を走査方向に移動させるキャリッジ制御(走査制御)、及び用紙Pの側端位置を検出する側端検出駆動のためのモーター制御等が含まれる。印刷制御部76は、側端検出駆動時にキャリッジモーター36を駆動制御し、用紙Pの側端位置を検出する際の所定の経路でキャリッジ22を走査方向Xに移動させる。
印刷制御部76は、判定部75から第1側端位置とリブ位置とが重ならない旨の判定結果を受け取った場合、その側端位置x1(図7(a),(b)を参照)のデータを第1側端位置として決定する。つまり、第2側端位置を検出する第2側端検出駆動は行われない。一方、印刷制御部76は、判定部75から第1側端位置とリブ位置とが重なる旨の判定結果を受け取った場合、検出誤差を含むものとしてその側端位置x11(図7(c),(d)を参照)のデータを第1側端位置としては決定せず、他の検出駆動を行って第1側端位置を決定する。すなわち、印刷制御部76は、他の検出駆動として、用紙Pの第2側端SE2を検出するためのキャリッジ駆動を含む第2側端検出駆動を行う。そして、印刷制御部76は、検出部71が検出した第2側端SE2の位置データを受け取り、第2側端位置を基に第1側端位置を求める。ここで、用紙サイズは印刷データ中の印刷条件情報から把握できるので、その用紙サイズから特定される紙幅Wpと第2側端位置x2とから第1側端位置x1(=x2−Wp)を決定する。または、第1側端位置x11と第2側端位置x2との中心位置の値から、紙幅Wpの半分の値を引くことで、第1側端位置x1(=(x11+x2)/2−Wp/2)を決定する。
さらに印刷制御部76は、第1側端位置x1のデータに基づいて印刷処理を実行する。第1側端位置x1のデータは、走査方向Xにおいて印刷ヘッド23がインクの噴射を開始する印刷開始位置の決定に使用される。例えば用紙Pの幅方向両側に所定幅の余白が設定されている場合、印刷制御部76は、第1側端位置x1のデータからその設定通りの余白が確保される印刷開始位置を決定する。また、印刷ヘッド23により用紙Pからはみ出してインクが噴射されると、支持台60がインクで汚れることになる。このため、印刷制御部76は、第1側端位置x1のデータを基に、印刷画像データのうち用紙Pの外側にはみ出すことになる部分を特定し、そのはみ出し部分の少なくとも一部を印刷不能状態にするマスク処理を行う。このマスク処理により、用紙Pの外側にインクが噴射されることに起因する支持台60のインクによる汚染が低減される。
また、印刷制御部76は、用紙Pの搬送位置を把握するために不図示のPFカウンターを備える。給送中に紙検出センサー55が用紙Pの先端を検知した際にPFカウンターはリセットされる。そして、印刷制御部76は、エンコーダー58のパルスエッジ数を計数するPFカウンターの計数値から印刷中における用紙Pの搬送位置を認識し、搬送中の用紙Pを次の目標位置(印刷位置)に停止させる。なお、図4において、検出処理部74、判定部75及び印刷制御部76は、図8に示す用紙端部検出制御プログラムを実行することによりコンピューター40内に構築される機能部分である。これらの機能部分はソフトウェアにより構成されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアとの協働で構成されてもよいし、ハードウェアにより構成されてもよい。
図7(a)に示すように、用紙Pが第1リブ64に対して走査方向Xに正規の位置範囲内に給送された場合、用紙Pの第1側端は走査方向Xに第1リブ64の頂面64aよりも外側(同図の右側)へ少し延出した位置に配置される(図5(a)も参照)。この場合、第1側端の近傍には第1リブ64の頂面64aは存在せず、仮に頂面64aの光反射率が高くなっていても第1側端を検出する際にその影響を受けない。このため、図7(b)に示すように、紙幅センサー56の検出電圧Vdは、用紙Pの表面からの反射光を受光している間は閾値Vsよりも高い用紙検出電圧Vpをとり、紙幅センサー56のスポット光が第1側端を横切るときに急激に立ち下がり閾値Vsを大きく下回ることになる。検出電圧Vdが用紙検出電圧Vpから閾値Vsを下回ったときの紙幅センサー56の位置が第1側端位置x1として検出される。
一方、図7(c)に示すように、用紙Pが走査方向Xに正規の位置範囲から所定距離以上ずれて給送された場合、用紙Pの第1側端SE1は、走査方向Xにおいて第1リブ64の頂面64aの位置範囲内に位置し、第1リブ64と重なる(図5(b)も参照)。この場合、第1側端SE1は頂面64aと隣接し、仮に頂面64aの光反射率が摩耗により高くなっていると、頂面64aからの反射光の影響を受けて第1側端SE1の位置検出精度が低下する。このため、図7(d)に示すように、紙幅センサー56の検出電圧Vdは、紙幅センサー56のスポット光が第1側端SE1を横切っても、頂面64aからの比較的強い反射光の受光が原因で、スポット光が用紙Pだけに照射されているときの用紙検出電圧Vpからカーブを描くように徐々に低下する。この結果、実際の第1側端位置xeよりも距離Δxだけ外側にずれた第1側端位置x11で閾値Vsを下回ることになる。このため、距離Δx分の許容できない検出誤差を含んだ第1側端位置x11が検出される。
次に図6を参照して用紙端部検出制御に係るキャリッジ22の駆動方法について詳細に説明する。なお、図6において、キャリッジ22がホーム位置HPから離れる方向(同図の左方向)をプラス方向、ホーム位置HPに近づく方向(同図の右方向)をマイナス方向とする。図6(a)に示すように、用紙Pの頭出し動作が完了するまでに、キャリッジ22はホーム位置HPから第1側端検出用の検出開始位置SP1(同図の実線位置)に移動する。ここで、検出開始位置SP1は、用紙Pの幅内に位置し、紙幅センサー56のスポット光が用紙Pの表面に当たる位置に設定されている。走査方向Xに用紙Pが存在する範囲は、そのときの印刷ジョブデータに含まれる印刷条件情報中の用紙サイズのデータから把握される。検出開始位置SP1は、用紙Pの走査方向Xの中央位置(幅中心位置)、あるいはそのときの用紙サイズから想定される用紙Pの第1側端SE1の位置から、走査方向に設定距離(例えば1〜10cmの範囲内の値)だけ内側(用紙の幅内側)に入った用紙上の位置に紙幅センサー56のスポット光を当てることができるキャリッジ位置に設定されている。なお、用紙Pの頭出し動作完了後に、キャリッジ22を、ホーム位置HPから検出開始位置SP1に移動させてもよい。この場合、スループットが低下するものの、頭出し途中に用紙の表面が印刷ヘッドに擦れる事態を確実に回避できる。
図6(b)に示すように、キャリッジ22を検出開始位置SP1から走査方向マイナス側(同図における右側)へ設定速度で移動させる第1側端検出駆動を行い、その移動途中で用紙Pの第1側端SE1を検出する。図6(b)は、図5(a)に示す用紙Pの走査方向Xのずれが許容範囲内である場合に相当し、このとき、用紙Pの第1側端位置x1が検出される。
一方、図6(c)は、図5(b)に示す用紙Pの走査方向Xのずれが許容範囲を超えたために用紙Pの第1側端SE1の位置が第1リブ64の位置に重なった場合に相当する。この場合、第1リブ64の光反射率が用紙との摩耗により高くなっていると、図6(c)にハッチングで示す部分からの反射光の影響を受けるため、キャリッジ22が検出開始位置SP1から走査方向Xのマイナス側へ移動する第1側端検出駆動で検出された用紙Pの第1側端位置x11は、許容できない検出誤差を含む虞がある。
この場合、図6(d)に示すように、キャリッジ22を検出開始位置SP2(同図の実線位置)から走査方向Xのプラス側(同図における左側)の検出終了位置EP2まで設定速度で移動させ、この移動途中で用紙Pの第2側端SE2を検出する。用紙Pが定形紙である場合、第1側端SE1の位置が第1リブ64の位置と重なっているときは、第2側端SE2の位置は第1リブ64の位置と重ならないので、検出誤差の少ない第2側端位置x2が検出される。なお、第1側端検出駆動の検出開始位置SP1と、第2側端検出駆動の検出開始位置SP2とを異なる位置に設定してもよく、例えば前者を用紙Pの幅中心よりも第1側端SE1寄りの位置に設定し、後者を用紙Pの幅中心よりも第2側端SE2寄りの位置に設定してもよい。
次にプリンター11の作用を説明する。
コンピューター40が図8にフローチャートで示される用紙端部検出制御プログラムを実行することによりプリンター11内で行われる用紙端部検出制御について説明する。コンピューター40は印刷ジョブデータを受信してその中のコマンドに基づく印刷実行命令を受け付けると、プリンター11による印刷を開始する。コンピューター40は、印刷ジョブデータ中の印刷条件データを基に印刷モード及び用紙サイズ等の必要な情報を取得する。コンピューター40は、取得した印刷モードに応じて第1の方法か第2の方法かを決定する。さらにコンピューター40は、印刷ジョブの1枚目の用紙への印刷なので、用紙フラグを「1」とする。一方、プリンター11の使用開始から計数している累積印刷枚数が閾値を超えないうちは耐久フラグがオフ(「0」)となっており、累積印刷枚数が閾値を超えた後は耐久フラグがオン(「1」)となる。
第2の方法が決定された場合、キャリッジ22をホーム位置HPから走査方向Xのプラス側へ移動させて検出開始位置SP1に配置する。そして、キャリッジ22を検出開始位置SP1から走査方向Xのマイナス側へ検出終了位置EP1に向かって移動させ、その移動途中で用紙Pの第1側端位置x1を検出する。その後、キャリッジ22を走査方向Xのプラス側に移動させて検出開始位置SP2に配置し、そこからさらにプラス側へ検出終了位置EP2に向かって移動させ、その移動途中で用紙Pの第2側端位置x2を検出する。そして、2つの側端位置x1,x2の平均値を計算して用紙Pの幅中心位置xcを求め、幅中心位置xcから紙幅Wp(=x2−x1)の1/2の距離だけマイナス側の位置を第1側端位置として決定する。
一方、第1の方法を決定したときに用紙フラグが印刷ジョブの1枚目である旨を示す「1」であれば、コンピューター40は、図8で示されるフローチャートに従って用紙端部検出制御を実行する。以下、図6及び図8を参照しつつ、第1の方法による用紙端部検出制御について説明する。
まずステップS11では、キャリッジ22を検出開始位置まで移動させる。詳しくは、制御部72がキャリッジモーター36を駆動させてキャリッジ22をホーム位置HPから検出開始位置SP1に移動させる。図6(a)の例では、検出開始位置SP1を用紙Pの例えば幅中心位置に設定しているが、検出開始位置SP1はそのとき給送される用紙サイズに応じてその用紙Pの第1側端SE1よりも走査方向Xのプラス側(用紙内側)であればよい。
ステップS12では、用紙Pを頭出し位置まで搬送する。詳しくは、制御部72が給送モーター37及び搬送モーター38を駆動させて用紙Pを印刷が開始される頭出し位置まで搬送する。
ステップS13では、検出開始位置にあるキャリッジ22を、第1側端を横切ることが可能な方向(走査方向マイナス側)へ駆動させて第1側端を検出する第1側端検出駆動を行う。詳しくは、制御部72がキャリッジモーター36を駆動させ、図6(b),(c)に示すように、キャリッジ22を検出開始位置SP1(同図の実線位置)から走査方向Xのマイナス側(同図における右側)へ設定速度で移動させ、キャリッジ22の移動途中で用紙Pの第1側端SE1を検出する。このとき、検出部71は、不揮発性メモリー43からリブ位置データRDを読込み、CRカウンター73の計数値で示されるキャリッジ位置から決まる紙幅センサー56の位置をリブ位置データRDと比較する監視をしつつ、紙幅センサー56の検出電圧Vdが閾値Vs(図7(b),(d)参照)を横切るか否かを判定する。そして、検出電圧Vdが閾値Vsを横切ると、その時のCRカウンター73のキャリッジ位置から第1側端位置x1(又はx11)を求める。
例えば用紙Pの給送が紙ジャム等の原因で失敗して紙幅センサー56による用紙Pの側端検出が不能な場合や、想定を超える長い幅の用紙Pが給送された場合には、検出部71は第1側端SE1を検出できない。後者のケースとして以下の場合がある。紙幅センサー56がキャリッジ22に対して走査方向Xのプラス側に偏倚して配置され、最大用紙の第1側端を検出可能とするためにはプリンター本体を幅方向に長くする必要があるが、本体が大型化するという問題がある。このため、最大用紙については走査方向Xにおいてホーム位置側の第1側端SE1と反対側となる第2側端SE2を検出することとし、プリンター本体の幅方向への大型化を回避している。この種のプリンター11においては、用紙サイズの設定入力ミスや、用紙サイズが設定と異なる用紙の給送カセット16,17等への誤ったセットなどが原因で、設定と異なる最大用紙が誤って給送された場合、第1側端検出駆動が行われても、紙幅センサー56が第1側端SE1と対向する位置まで到達できず、第1側端SE1は検出されない。
ステップS14では、第1側端を検出したか否かを判定する。キャリッジ22の移動中に検出部71が第1側端SE1を検出できた場合はステップS15に進む。一方、検出部71が第1側端SE1を検出できなかった場合はステップS23に進み、エラー処理を行う。エラー処理としては、例えば表示部14に用紙サイズが間違っていないどうかの確認を促すエラーメッセージ等を表示する。エラー処理を行った後は当該ルーチンを終了する。その後、エラー原因を除去したユーザーにより操作部15の操作で印刷の開始(再開)が指示されると、コンピューター40は再び当該ルーチンを開始する。
ステップS15では、耐久フラグオン(「1」)であるか否かを判定する。詳しくは、プリンター使用開始からの累積印刷枚数が閾値を超えていて耐久フラグがオン(「1」)である場合は、ステップS16に進む。つまり、累積印刷枚数が、用紙Pとの摺動による摩耗で頂面64aの光反射率が相対的に高くなっていると推定されるほど多く検出誤差を含む虞があるとして設定された閾値を超えている場合は、ステップS16に進む。一方、耐久フラグがオフ(「0」)であってプリンター使用開始からの累積印刷枚数が閾値を超えていない場合はステップS17に進んで、ステップS13,S14で検出部71が検出した位置を第1側端位置x1として決定する。
ステップS16では、第1側端位置がリブ位置と重なるか否かを判定する。詳しくは制御部72の判定部75が、不揮発性メモリー43から読込んだリブ位置データRDを基に、検出された第1側端位置x1又はx11が第1リブ64の位置範囲内にあるか否かを判定する。判定部75は、検出された第1側端位置x1又はx11が、n番目(但し、nは自然数で、1,2,…,k)の第1リブ64のリブ位置範囲(xns〜xne)内にあるとき、第1側端位置とリブ位置とが重なると判定し、第1側端位置がリブ位置範囲(xns〜xne)内にない場合に第1側端位置とリブ位置とが重ならないと判定する。このとき1番目の第1リブ64から順番に一つずつ判定してもよいし、用紙サイズ毎に想定される第1側端位置に一番近い第1リブ64から近い順に判定してもよい。
図6(b)に示すように、給送された用紙Pの走査方向Xのずれが許容範囲内である場合、用紙Pの第1側端SE1と第1リブ64とが重ならず、検出誤差の少ない第1側端位置x1が検出される。一方、図6(c)に示すように、給送された用紙Pの走査方向Xのずれが許容範囲を超え、用紙Pの第1側端SE1が第1リブ64と重なる場合、同図にハッチングで示す第1リブ64の摩耗による研磨面からの反射光の影響で、許容できない検出誤差Δxを含む第1側端位置x11が検出される虞がある。このため、第1側端位置がリブ位置と重ならなければ、ステップS17に進んで、ステップS13,S14で検出部71が検出した位置を第1側端位置x1として決定する。一方、第1側端位置がリブ位置と重なれば、ステップS18に進む。
ステップS18では、キャリッジ22を第2側端検出用の検出開始位置へ移動させる。詳しくは、制御部72がキャリッジモーター36を駆動させ、図6(d)に示すように、キャリッジ22を第1側端検出駆動の検出終了位置EP1から検出開始位置SP2まで移動させる。なお、第1側端検出駆動の検出開始位置SP1と第2側端検駆動の検出開始位置SP2は、同じ位置であってもよいし、それぞれ検出対象とする側端寄りの異なる位置であってもよい。
ステップS19では、検出開始位置にあるキャリッジ22を、第2側端を横切ることが可能な走査方向Xのプラス側へ駆動させて第2側端SE2を検出する第2側端検出駆動を行う。詳しくは、制御部72がキャリッジモーター36を駆動させ、図6(d)に示すように、キャリッジ22を検出開始位置SP2から走査方向Xのプラス側(同図における左側)の検出終了位置EP2まで設定速度で移動させ、キャリッジ22の移動途中で用紙Pの第2側端SE2を検出する。このとき、用紙Pが定形紙である場合、第1側端SE1が第1リブ64と重なっているときは、第2側端SE2は第1リブ64と重ならないので、検出誤差の少ない第2側端位置x2が検出される。
ステップS20では、第2側端SE2を検出したか否かを判定する。キャリッジ22の移動中に検出部71が第2側端SE2を検出できた場合はステップS21に進む。一方、検出部71が第2側端SE2を検出できなかった場合はステップS23に進み、前述のエラー処理を行う。エラー処理を行った後、エラー原因を除去したユーザーにより操作部15の操作で印刷の開始(再開)が指示されると、コンピューター40は再び当該ルーチンを開始する。
ステップS21では、第2側端位置を基に第1側端位置を決定する。第2側端位置x2を基に第1側端位置x1を決定する方法には二つある。一つは、第2側端位置x2から走査方向Xのマイナス側に紙幅Wp分の距離だけ移動させた位置を、第1側端位置x1とする。このとき紙幅Wpは、ユーザーが設定した印刷条件情報中の用紙サイズから決まる紙幅Wpを用いてもよいし、第1側端位置x11と第2側端位置x2との差を計算して求めた紙幅Wpを用いてもよい。但し、前者の紙幅Wpがユーザーの用紙サイズの設定入力ミスや給送カセット16,17へ間違ったサイズの用紙をセットするセットミスなどが原因で、間違った第1側端位置が決定される虞があるのに対して、後者の紙幅Wpが実測値で比較的正確である。このため、実測値の紙幅Wpを用いた方が、第1側端位置の決定ミスが発生し難く好ましい。
他の一つは、第2の方法に類似した方法で、第1側端位置x11と第2側端位置x2との平均値を用紙Pの幅中心位置xcとして求め、この幅中心位置xcから走査方向Xのマイナス側に紙幅Wpの1/2の距離だけ移動させた位置を第1側端位置x1に決定する。このときも、紙幅Wpは、ユーザーが設定した印刷条件情報中の用紙サイズから決まる理論上の紙幅Wp(理論値)、あるいは第1側端位置x11と第2側端位置x2との差から求まる実測値の紙幅Wpを用いればよい。こうしてステップS16,S21で第1側端位置x1が決まると、ステップS22に進む。
ステップS22では、第1側端位置に基づいて印刷処理を実行する。詳しくは、印刷制御部76が、第1側端位置x1のデータに基づいて、印刷ヘッド23が走査方向Xに移動する過程でインクの噴射を開始する印刷開始位置を求める。例えば用紙Pの幅方向両側に所定幅の余白が設定されている場合、印刷制御部76は、第1側端位置x1のデータからその設定通りの余白(サイドマージン)分の距離だけ走査方向Xのプラス側の位置を印刷開始位置として決定する。また、印刷ヘッド23により用紙Pからはみ出してインクが噴射されて支持台60をインクで汚染させないようにするため、印刷制御部76は、第1側端位置x1のデータに基づいて、印刷画像データのうち用紙Pの外側にはみ出すことになる部分を特定する。そして、印刷制御部76は、そのはみ出し部分のうち用紙Pの第1側端の外側に僅かなマージン分(はみ出し許容量)を残した他の領域を印刷不能状態にするマスク処理を印刷画像データに施す。このマスク処理により、用紙Pの外側にはみ出して噴射されるインクが大幅に減り、はみ出したインクによる支持台60の汚染を抑制できる。
なお、第1側端位置を求めず、第2側端位置x2と紙幅Wpと第1側端側の余白量(サイドマージン)との各値に基づいて印刷開始位置を求めてもよい。また、第1側端位置を求めず、第2側端位置x2と紙幅Wpと許容はみ出し量との各値に基づいて印刷画像のうち、はみ出し禁止領域を印刷不能状態にするマスク処理を行ってもよい。これらの場合も、第1側端位置が間接的に決定される。
以上詳述した本実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)紙幅センサー56によって用紙Pの第1側端位置を検出した際に、その検出した第1側端位置が不揮発性メモリー43に記憶されたリブ位置データRDに基づく第1リブ64の位置と重なる位置である場合、用紙Pの他方の第2側端位置x2を検出し、第2側端位置x2に基づいて第1側端位置x1が決定される。このため、用紙Pの第1側端位置が第1リブ64の位置と重なって紙幅センサー56による第1側端位置の検出精度が低下しても、用紙Pの第1側端位置を比較的精度よく決定できる。
(2)紙幅センサー56によって検出された第1側端位置を、検出された第2側端位置x2と、用紙Pの情報(印刷条件情報中の用紙サイズ情報)とに基づく第1側端位置x1の理論位置と比較することで、第1側端位置x1が決定される。よって、第1側端位置x1を一層精度よく決定できる。
(3)第1側端位置x1が第1リブ64の位置と重ならない位置である場合は、第2側端位置x2を検出するための第2側端検出駆動を行わないので、その分、第1側端位置x1の検出所要時間を短く済ませられる。
(4)第1側端位置x11が第1リブ64の位置と重なる位置にある場合は、第2側端位置x2が第1リブ64の位置と重ならないように複数の第1リブ64が位置設定されているので、第2側端位置x2を第1リブ64に妨げられることなく精度よく検出できる。この結果、第2側端位置x2に基づいて第1側端位置x1を精度よく決定できる。
(5)第1側端位置x11と第2側端位置x2との両方の側端位置x11,x2を検出した場合は、両方の側端位置x11,x2に基づき求められた実測の紙幅Wp(=x2−x11)に基づいて第1側端位置x1が決定される。よって、より精度の高い第1側端位置x1を決定できる。
(6)第1リブ64の光反射率が閾値以下と判定される場合は、第1側端位置x11と第1リブ64の位置とが重なる場合であっても、第2側端位置x2を検出する第2側端検出駆動を行わないので、その分、第1側端位置の検出所要時間を短く済ませられる。特に第1リブ64の光反射率が閾値以下との判定を、累積印刷枚数が閾値以下であるか否かの判定により行う。よって、光反射率や光反射量を計測する必要がないので、計測のための余分な駆動を行わずに済む。したがって、側端位置の検出所要時間を低減し、印刷を速やかに開始できるので、印刷スループットを向上できる。
(7)両方の側端位置x11,x2を検出した場合は、両方の側端位置x11,x2に基づいて用紙Pの実測値として用紙Pの走査方向Xの紙幅Wpを求め、その紙幅Wpと第2側端位置x2とに基づいて、第1側端位置x1が決定される。よって、第1側端位置x1を実測値に基づいて精度よく決定できる。例えば印刷条件情報中の用紙サイズ情報から決まる紙幅Wp(理論値)を用いる場合、ユーザーが間違った用紙サイズ情報を入力設定したり、セットする用紙を間違えたりした場合、第1側端位置x1が間違ったものになる。これに対し、用紙Pの実測値を用いた場合は、理論値を用いる場合に起こりうる間違った第1側端位置が決定される不都合を回避し易い。
(8)第1リブ64の摩耗の程度を示す指標が閾値以下である場合は、検出された第1側端位置と不揮発性メモリー43に記憶されたリブの位置とが重なる場合であっても、第1側端位置の検出精度が比較的高いので、第2側端位置x2を検出しない。このため、その分、側端位置の検出所要時間が短く済む。一方、第1リブ64の摩耗の程度を示す指標が閾値を超えた場合、紙幅センサー56によって第1側端位置を検出した際に、第1側端位置が不揮発性メモリー43に記憶されたリブ位置データRDに基づくリブ位置と重なる位置である場合、第2側端位置x2を検出し、第2側端位置x2に基づいて第1側端位置x1が決定される。よって、第1側端位置を精度よく決定できる。
(9)用紙フラグにより印刷ジョブ中の一枚目の用紙Pであるか否かを判定し、一枚目の用紙Pに対してのみ用紙側端検出駆動による第1側端位置の決定処理を行った。よって、2枚目以降の用紙については1枚目で決定した第1側端位置を用いることで側端検出駆動を行わずに済み、印刷スループットを向上できる。
なお、上記実施形態は以下のような形態に変更することもできる。
・前記実施形態では、用紙Pの幅方向両側の側端のうちホーム位置側の第1側端SE1の位置を一方の端部位置とし、その反対側の第2側端SE2の位置を他方の端部位置としたが、この逆でもよい。すなわち、ホーム位置側の第1側端SE1の位置を他方の端部位置とし、その反対側の第2側端SE2の位置を一方の端部位置としてもよい。この場合、まず第2側端位置を検出し、第2側端位置とリブ位置とが重なる場合は、第1側端を検出し、得られた第1側端位置から第2側端位置を決定すればよい。
・紙幅センサー56によって検出した第2側端位置x2(他方の端部位置の一例)を、印刷媒体の情報の一例としての用紙サイズから決まる紙幅Wpと第1側端位置x11とに基づき算出される第2側端位置(他方の端部位置の理論位置)と比較する。そして、この比較によって、第2側端位置の検出位置が第2側端位置の理論位置に対して許容範囲内にあれば、検出された第1側端位置x11で決定し、許容範囲内になければ、第2側端位置x2と紙幅Wpとに基づいて算出した第1側端位置で決定する構成としてもよい。
・印刷媒体の端部位置の検出方法として印刷モードに応じた第1の方法と第2の方法の二種類用意したが、第1の方法のみとしてもよいし、第1の方法を含む三種類以上の方法を用意した構成でもよい。
・前記実施形態では、印刷ジョブ中の一枚目の用紙Pに対してのみ側端検出駆動を行ったが、印刷ジョブ中の一枚目以外の用紙、あるいは全ての用紙に対して側端検出駆動を行ってもよい。
・リブの光反射率(つまり摩耗度合)がその閾値以下であるか否かの判定を、累積印刷枚数が閾値以下であるか否かの判定により行ったが、リブの摩耗による光反射率の変化を示す他の指標を用いてもよい。例えば累積印刷時間、累積インク噴射量又はインクカートリッジ交換回数を指標として選択し、その選択した指標が閾値以下であるか否かを判定してもよい。この場合、複数の指標のそれぞれについて各々の閾値以下であるか否かを判定し、複数の指標のすべてで閾値を超える場合に、第2側端検出駆動を行う構成でもよい。また、用紙で覆われていない状態の下で第1リブ64の反射光量を紙幅センサー56により検出し、その反射光量から一義的に決まる第1リブ64の光反射率が閾値を超えたか否かを判定してもよい。このように第1リブ64の光反射率が閾値を超えたか否かを直接判定してもよい。なお、第1リブ64の反射光量を検出するキャリッジ22の駆動は、プリンター11の電源オン時の初期動作や非印刷時の待機時間内に行うことが好ましい。
・前記実施形態において、耐久フラグによる判定を廃止し、プリンターの使用開始の最初の印刷ジョブから、第1側端位置とリブの位置とが重なった場合は、第2側端位置x2を検出する第2側端検出駆動を行って、第2側端位置x2から第1側端位置を決定する構成としてもよい。例えばリブの光反射防止用の表面処理層を廃止してもよい。
・凸部(リブ)を、印刷領域PAよりも搬送方向Y上流側に位置する第1リブ64としたが、紙幅センサー56を第2リブ65や第3リブ66に対応する位置に設けることで、第2リブ65又は第3リブ66を凸部の一例としてもよい。また、第1〜第3リブを搬送方向に1本に繋がるリブに替えてもよい。さらにリブは走査方向Xに不等間隔に設けられたり、リブの幅と高さとのうち少なくとも一方が異なる複数種のリブが混在していたりしてもよい。例えば高さの異なる複数種のリブが混在する場合、用紙との摩耗が起きうる高いリブだけを凸部の一例としてもよいし、低いリブもそこからの反射光が用紙の側端位置検出に影響を与える虞がある場合は、高いリブと低いリブとの両方を凸部の一例としてもよい。また、リブの頂面に凹溝を形成してもよい。なお、リブの形状は、印刷媒体を支持可能な限りにおいて適宜な形状に変更してもよい。
・前記実施形態では、一方の端部位置(第1側端位置)を実際に求め決定したが、一方の端部位置を実際には求めず、一方の端部位置が決まることで一義的に決まる他の位置、例えば印刷開始位置又はマスク位置を、他方の端部位置(第2側端位置)から直接求めてもよい。このように印刷開始位置やマスク位置などの他の位置を、他方の端部位置から求めて決めることも、他の位置が一方の端部位置から一義的に決まるものである場合は、一方の端部位置を間接的に決定することになる。このように一方の端部は、直接決定されなくても、他の位置(印刷開始位置又はマスク位置)の決定により、間接的に決定されてもよい。
・検出部の一例としての紙幅センサー56は光学式センサーであることに限定されない。非接触式センサーであればよい。例えば近接センサー、電磁誘導式センサーでもよい。例えば金属製又は金属層又は金属粒子が含まれる印刷媒体、あるいは磁気を帯びた印刷媒体の端部位置を検出可能な磁気センサーでもよい。さらに画像を撮像して印刷媒体の端部位置を検出する画像センサーでもよい。画像センサーの場合でも、用紙とリブの頂面とが同色又は類似色になったために検出精度が低下した場合に他方の端部位置の検出値から一方の端部位置を決定すればよい。
・給送装置は、印刷媒体の一例としてのロール紙を給送する方式でもよい。
・給送モーターと搬送モーターとを、給送系と搬送系で共通の1つの搬送モーターに置き替えてもよい。この場合、例えば動力伝達切換部が給送用の切換位置に切り換えられた状態で搬送モーターが駆動されると、その出力された回転が給送系と搬送系の各ローラーに伝達されるようにする。
・印刷媒体は用紙に限定されず、樹脂製のフィルム、金属箔、金属フィルム、樹脂と金属の複合体フィルム(ラミネートフィルム)、織物、不織布、セラミックシート等であってもよい。さらに印刷媒体は立体物でもよい。
・印刷装置は、用紙P等の媒体に印刷することのできるものであれば、インクジェット式プリンター、ドットインパクトプリンターやレーザープリンターであってもよい。また、印刷装置は、印刷機能だけを備えたプリンターに限定されず、複合機であってもよい。さらに、印刷装置は、シリアルプリンターに限らず、ラインプリンター又はページプリンターであってもよい。