JP6236958B2 - ギヤポンプ - Google Patents

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Description

この発明は、自動変速機や無断変速機等に使用される内接歯車式のギヤポンプに関する。
内接歯車式のギヤポンプにおいては、ポンプボディと、ポンプカバーとによって構成されたロータ組込室内に対し、複数の内歯を有するアウタロータ(ドリブンギヤとも呼ばれることがある)と、内歯との間にギヤ室を構成し、かつ内歯と噛み合って回転駆動される外歯を有するインナロータ(ドライブギヤとも呼ばれることがある)とが配設される。また、ポンプボディと、ポンプカバーとのうち、少なくとも一方の部材に対し、吸入ポートを構成する吸入ポート溝と、吐出ポートを構成する吐出ポート溝とがそれぞれ形成されている構造のものが知られている。
この種のギヤポンプにおいて、インナロータを高速で回転駆動すると、吸入ポート溝から内歯と外歯との間のギヤ室内に対するオイルの吸入量が不足しやすくなる。そして、内歯と外歯との間のギヤ室内に対するオイルの吸入不足等によって、キャビテーションが発生し、これによって、オイルの吐出量が低下したり、油圧振動や異音等が発生する。
ギヤポンプのギヤ室内に対するキャビテーションの発生を抑制するために、例えば、特許文献1に開示さたギヤポンプが知られている。
これにおいては、ポンプギヤを収容するポンプボディおよびポンプカバーに設けられた吸入ポートの底に、ポンプギヤの回転方向に延びる段差を有している。吸入ポートの段差より内周側の底の深さは、吸入ポートの段差より外周側の底の深さより深くなるように設定されている。
特開2005−76542号公報
ところで、特許文献1に開示されたギヤポンプにおいては、吸入されたオイル中の気泡が吸入ポートの内周側に集められるが、一部の気泡は内歯と外歯との間のギヤ室内に留まる。その後、オイルに気泡が混入された状態で、吐出ポートに吐出されるため、オイルの吐出量が低下することが想定される。
この発明の目的は、前記問題点に鑑み、キャビテーションの発生を良好に抑制することができるギヤポンプを提供することである。
前記課題を解決するために、この発明の第1の発明に係るギヤポンプは、ポンプボディと、ポンプカバーとによって構成されたロータ組込室内に対し、複数の内歯を有するアウタロータと、前記内歯との間にギヤ室を構成し、かつ前記内歯と噛み合って回転駆動される外歯を有するインナロータとが配設され、前記ポンプボディと、前記ポンプカバーとのうち、少なくとも一方の部材に対し、吸入ポートを構成する吸入ポート溝と、吐出ポートを構成する吐出ポート溝とがそれぞれ形成されたギヤポンプであって、前記吸入ポート溝の終端壁部に近い外周側壁部の部分には、前記吸入ポート溝の内周側壁部に向けて突出することで径方向の溝幅を狭める絞り部が形成され、前記絞り部と前記終端壁部との間には、前記終端壁部から前記吸入ポート溝側で最も近い位置に構成される前記内歯と前記外歯との間のギヤ室内のオイルを高圧化する高圧化領域が設けられていることを特徴とする。
第1の発明によると、吸入ポート溝の終端壁部に近い外周側壁部の部分に形成された絞り部によって高圧化領域が設けられる。そして、高圧化領域で、吸入ポート溝の終端壁部から吸入ポート溝側で最も近い位置に構成される内歯と外歯との間のギヤ室内で遠心力の作用を受けて高圧化されたオイルが高圧化領域外へ流れることを絞り部によって抑制することができる。
これによって、ギヤ室内のオイルを高圧化し、かつ高圧化状態で保つことができ、キャビテーションの発生を良好に抑制することができる。
この結果、キャビテーションが原因となるオイルの吐出量の低下、油圧振動、異音等の発生を抑制することができる。
この発明の第2の発明に係るギヤポンプは、第1の発明のギヤポンプであって、高圧化領域は、吸入ポート溝の終端壁部から複数の内歯の1ピッチ分に相当する距離を隔てる範囲に設けられるように、吸入ポート溝の外周側壁部に対する絞り部の突出位置が設定されていることを特徴とする。
第2の発明によると、吸入ポート溝の終端壁部から複数の内歯の1ピッチ分に相当する距離を隔てる範囲に高圧化領域が設けられることで、吸入ポート溝の終端壁部から吸入ポート溝側で最も近い位置に構成される内歯と外歯との間のギヤ室内のオイルを効率よく高圧化することができる。
この発明の第3の発明に係るギヤポンプは、第1の発明又は第2の発明のギヤポンプであって、吸入ポート溝は、高圧化領域内において溝深さが浅い部分を有していることを特徴とする。
第3の発明によると、高圧化領域内において高圧化されたオイルが高圧化領域外へ流れることを溝深さが浅い部分によって抑制することができる。
これによって、吸入ポート溝の終端壁部から吸入ポート溝側で最も近い位置に構成される内歯と外歯との間のギヤ室内のオイルが効率よく高圧化され、キャビテーションの発生をより一層良好に抑制することができる。
この発明の第4の発明に係るギヤポンプは、第1〜3の発明のいずれかの発明のギヤポンプであって、吸入ポート溝は、絞り部から終端壁部に向かって径方向の溝幅がしだいに大きく形成されていることを特徴とする。
第4の発明によると、吸入ポート溝の絞り部から終端壁部に向かって径方向の溝幅がしだいに大きく形成されることで、吸入ポート溝の終端壁部から吸入ポート溝側で最も近い位置に構成される内歯と外歯との間のギヤ室内に対しオイルが円滑に吸入され、オイルの吸入不足の発生を抑制することができる。
この発明によるとキャビテーションの発生を良好に抑制することができる。
この発明の実施例1に係るギヤポンプのロータ組込室にアウタロータとインナロータとが組み込まれた状態を示す正面図である。 同じく図1のII−II線に沿うギヤポンプの断面図である。 同じく吸入ポート溝の終端壁部に近い外周側壁部の部分に形成された絞り部を示す斜視図である。 同じく吸入ポート溝の終端壁部に近い外周側壁部の部分に形成された絞り部を示す正面図である。 同じく絞り部によって設定された高圧化領域内でオイルが高圧化される状態を示す説明図である。 この発明の実施例2に係るギヤポンプの吸入ポート溝に設定された高圧化領域内に溝深さが浅い部分が設けられた状態を示す斜視図である。 同じく高圧化領域内に溝深さが浅い部分が設けられた状態を示す正面図である。 吸入ポート溝の絞り部の最大絞り部から終端壁部までの溝形状を変更した実施態様1を示す説明図である。 同じく吸入ポート溝の絞り部の最大絞り部から終端壁部までの溝形状を変更した実施態様2を示す説明図である。
この発明を実施するための形態について実施例にしたがって説明する。
この発明の実施例1に係るギヤポンプを図面にしたがって説明する。
図1と図2に示すように、ギヤポンプは、ポンプボディ10と、ポンプカバー20と、アウタロータ40と、インナロータ45と、駆動軸1とを備える。
ポンプボディ10は、円板状の底壁11と、この底壁11の周縁部に沿って円筒状に形成された周壁13とを備え、これら底壁11と周壁13によって一端側に開口する凹部14が形成されている。
また、底壁11には、その中心から次に詳述するアウタロータ40とインナロータ45との偏心量Aに相当する分だけ偏心した位置に中心をもつ貫通孔12が形成されている。
ポンプカバー20は、ポンプボディ10の周壁13の端面にボルト等(図示しない)によって密封状に取り付けられ、ポンプボディ10の凹部14を閉じてロータ組込室15を構成する。
図1と図2に示すように、アウタロータ40は、ロータ組込室15に回転可能に嵌込まれる。このアウタロータ40の内周面の周方向には複数の内歯41が形成される。
インナロータ45は、アウタロータ40の内周面に偏心量Aだけ偏心した状態で組み込まれ、その外周面の周方向には、アウタロータ40の複数の内歯41に噛み合う複数の外歯46が形成されている。そして、アウタロータ40の内歯41とインナロータ45の外歯46との間にはギヤ室50が拡開及び縮小可能に形成される。
インナロータ45の中心部には非円形の軸孔47が形成され、この軸孔47には、ポンプボディ10の貫通孔12を通して駆動軸1の先端軸部2がトルク伝達可能に嵌挿される。
この実施例1において、駆動軸1の先端軸部2外周面の軸方向に面取り加工された平坦面3が形成され、軸孔47の内周面には、平坦面3に対向する位置において軸孔47の円弧の弦をなすようにして平坦部分48が形成されている。
そして、駆動軸1のトルク伝達を受けてインナロータ45が回転することで、このインナロータ45の外歯46にアウタロータ40の内歯41が噛み合った状態でアウタロータ40が追従回転し、これによってポンプ作用をなす。
図2に示すように、ポンプボディ10と、ポンプカバー20とのうち、少なくとも一方の部材、この実施例1ではポンプボディ10及びポンプカバー20の両部材に対し、吸入ポートを構成する正面形状が円弧形状をなす吸入ポート溝22と、吐出ポートを構成する正面形状が円弧形状をなす吐出ポート溝31とがそれぞれ形成されている。
なお、吸入ポート溝22は、図示しない吸入系経路に接続され、吐出ポート溝31は、図示しない吐出系経路に接続される。
図3と図4に示すように、吸入ポート溝22の終端壁部27に近い外周側壁部25の部分には、吸入ポート溝22の内周側壁部26に向けて突出することで径方向の溝幅を狭める絞り部60が形成されている。
この実施例1において、図3〜図5に示すように、絞り部60は、半円弧状の山形状をなして突出されている。そして、絞り部60の頂部をなす最大絞り部61と終端壁部27との間には、終端壁部27から吸入ポート溝22側で最も近い位置に構成される内歯41と外歯46との間のギヤ室50内のオイルを高圧化する高圧化領域62が設けられている。
また、高圧化領域62は、吸入ポート溝22の終端壁部27から複数の内歯41の1ピッチ分に相当する距離を隔てる範囲に設けられるように、吸入ポート溝22の外周側壁部25に対する絞り部60の突出位置が設定されている。
また、吸入ポート溝22は、絞り部60の最大絞り部61から終端壁部27に向かって径方向の溝幅がしだいに大きく形成されている。
この実施例1に係るギヤポンプは上述したように構成される。
したがって、ポンプ作動時には、駆動軸1のトルク伝達を受けてインナロータ45が、図1に向かって時計回り方向の矢印P方向へ回転駆動され、これに伴ってアウタロータ40が追従回転する。そして、アウタロータ40の内歯41とインナロータ45の外歯46との間のギヤ室50が拡開及び縮小されることで、吸入ポート溝22に供給されたオイルがアウタロータ40の内歯41とインナロータ45の外歯46との間のギヤ室50に吸入された後、ギヤ室50のオイルが吐出ポート溝31に吐出される。
ポンプ作動時の吸入ポート溝22の終端壁部27の近傍のオイルの流れは、図5に示す矢印ようにして流れる。
すなわち、吸入ポート溝22側の低圧のオイルがギヤ室50内に吸入されると、吸入されたオイルは遠心力の作用を受けて外周側へ流れ、高圧化される。
この高圧化されたオイルの一部が吸入ポート溝22の絞り部60に沿って終端壁部27に向けて流れ、終端壁部27を経て再び、絞り部60に向けて流れる。
したがって、吸入ポート溝22の終端壁部27に近い外周側壁部25に突出された絞り部60によって設けられた高圧化領域62内においては、オイルが高圧化されて高圧化状態に保たれる。
前記したようにして、吸入ポート溝22の終端壁部27から吸入ポート溝22側で最も近い位置に構成される内歯41と外歯46との間のギヤ室50内のオイルを高圧化することができる。これによって、ギヤ室50内のオイル中にキャビテーションが発生することを良好に抑制することができる。
この結果、キャビテーションが原因となるオイルの吐出量の低下、油圧振動、異音等の発生を抑制することができる。
また、この実施例1において、高圧化領域62は、吸入ポート溝22の終端壁部27から複数の内歯41の1ピッチ分に相当する(1ピッチよりも若干小さくてもよく、大きくてもよい)距離を隔てる範囲に設けられるように、吸入ポート溝22の外周側壁部25に対する絞り部60の最大絞り部61の突出位置が設定されている。このため、吸入ポート溝22の終端壁部27から吸入ポート溝22側で最も近い位置に構成される内歯41と外歯46との間のギヤ室50内のオイルを効率よく高圧化することができる。
また、この実施例1において、図3と図4に示すように、吸入ポート溝22は、絞り部60の最大絞り部61から終端壁部27に向かって径方向の溝幅がしだいに大きく形成されている。
このため、吸入ポート溝22の終端壁部27から吸入ポート溝22側で最も近い位置に構成される内歯41と外歯46との間のギヤ室50内に対しオイルが円滑に吸入され、オイルの吸入不足の発生を抑制することができる。
次に、この発明の実施例2の図6と図7にしたがって説明する。
図6と図7に示すように、この実施例2においては、吸入ポート溝22の外周側壁部25に対する絞り部60によって設けられる高圧化領域62内に溝深さが浅い部分が設けられるものである。
この実施例2において、吸入ポート溝22の絞り部60の最大絞り部61において溝底面の径方向に断面円弧状の突出部70が突出されている。
この実施例2のその他の構成は、実施例1と同様にして構成されるため、同一構成部分に対し同一符号を付記してその説明は省力する。
したがって、この実施例2においても実施例1と同様の作用効果を奏する。
特に、高圧化領域62内において高圧化されたオイルが高圧化領域62の外側に位置する吸入ポート溝22の部分へ流れることを溝深さが浅い部分を構成する突出部70によって抑制することができる。
これによって、吸入ポート溝22の終端壁部27から吸入ポート溝22側で最も近い位置に構成される内歯41と外歯46との間のギヤ室50内のオイルが効率よく高圧化され、キャビテーションの発生をより一層良好に抑制することができる。
なお、この発明は前記実施例1及び2に限定するものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々の形態で実施することができる。
例えば、前記実施例1及び2においては、吸入ポート溝22の終端壁部27に近い外周側壁部25の部分から吸入ポート溝22の内周側壁部26に向けて突出されて径方向の溝幅を狭める絞り部60が半円弧状の山形状をなす場合を例示したが、図8に示すように、吸入ポート溝22の絞り部160の最大絞り部161から外周側壁部25に向かってしだいに溝幅が拡大されるよう傾斜形状に絞り部160を形成してもよい。
さらに、図9に示すように、吸入ポート溝22の絞り部260の最大絞り部261から外周側壁部25に向かって急激に溝幅が拡大される形状に絞り部260を形成してもよい。
また、前記実施例1及び2においては、ポンプボディ10及びポンプカバー20の両部材に対し、吸入ポートを構成する吸入ポート溝22と、吐出ポートを構成する吐出ポート溝31とがそれぞれ形成される場合を例示したが、ポンプボディ10と、ポンプカバー20とのうち、一方の部材に対し、吸入ポート溝22と吐出ポート溝31とが形成される場合においてもこの発明を実施することができる。
10 ポンプボディ
15 ロータ組込室
20 ポンプカバー
22 吸入ポート溝
25 外周側壁部
26 内周側壁部
27 終端壁部
31 吐出ポート溝
40 アウタロータ
41 内歯
45 インナロータ
46 外歯
50 ギヤ室
60 絞り部
61 最大絞り部
62 高圧化領域

Claims (2)

  1. ポンプボディと、ポンプカバーとによって構成されたロータ組込室内に対し、複数の内歯を有するアウタロータと、前記内歯との間にギヤ室を構成し、かつ前記内歯と噛み合って回転駆動される外歯を有するインナロータとが配設され、前記ポンプボディと、前記ポンプカバーとのうち、少なくとも一方の部材に対し、吸入ポートを構成する吸入ポート溝と、吐出ポートを構成する吐出ポート溝とがそれぞれ形成されたギヤポンプであって、
    前記吸入ポート溝の終端壁部に近い外周側壁部の部分には、前記吸入ポート溝の内周側壁部に向けて突出することで径方向の溝幅を狭める絞り部が形成され、
    前記吸入ポート溝は、前記絞り部から前記終端壁部に向かって径方向の溝幅がしだいに大きく形成され、
    前記絞り部と前記終端壁部との間には、前記終端壁部から前記吸入ポート溝側で最も近い位置に構成される前記内歯と前記外歯との間のギヤ室内のオイルを高圧化する高圧化領域が設けられ
    前記高圧化領域は、前記吸入ポート溝の前記終端壁部から複数の前記内歯の1ピッチ分に相当する距離を隔てる範囲に設けられるように、吸入ポート溝の外周側壁部に対する絞り部の突出位置が設定されていることを特徴とするギヤポンプ。
  2. 請求項1に記載のギヤポンプであって、
    前記吸入ポート溝は、高圧化領域内において溝深さが浅い部分を有していることを特徴とするギヤポンプ。

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