JP6230326B2 - 蛍光体およびその利用 - Google Patents

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Description

本発明は、新規な蛍光体およびその利用に関する。
有機蛍光体は無機蛍光体に比べて、製造コストが抑えられる上、比重が小さいことにより媒体への分散性が良いという利点から、色素レーザー、バイオイメージング、有機EL用発光色素、太陽電池用光波長変換材など幅広い分野で利用されている。しかしながら、有機蛍光体の特性として、高濃度条件下での濃度消光による大幅な輝度低下を引き起こすことが知られている。これらの問題を回避するために、有機蛍光体を低分子または高分子のホスト材料や溶剤へ分子レベルで均一分散させた希薄状態での利用が常套手段となっている。
これに対して、従来の有機蛍光体とは逆に、凝集すると発光が著しく増大する、いわゆる凝集誘起発光性分子が見出され、これまでの有機蛍光体の問題点を克服するとともに、医療分野や工業分野などでの有機蛍光体の新たな応用を実現させることが期待されている(非特許文献1、2参照)。
ところで、置換マレイミドについては多くの報告があり(特許文献1、非特許文献3〜8参照)、有機蛍光体として知られているものもある(特許文献1、非特許文献3、4参照)。従来有機蛍光体として用いられている置換マレイミドは、2位または3位にベンゼン環や複素環が直接結合した構造を有している。しかし、マレイミド系の有機蛍光体は、凝集誘起発光性を示さない。
特表2003−509441号公報
Chem.Commun.,2009,4332-4353 Chem.Commun.,2010,46,9013-9015 Chem.Commun.,2003,404-405 J.Polym.Sci.Part A:Polym.Chem.,49,3550-3558(2011) J.Org.Chem.,35,3138(1970) J.Org.Chem.,40,423(1975) J.Heteocyclic Chem.,25,1777(1988) Chem. Heterocyclic Comp., 43, 844-845 (2007)
比較的単純な構造で、発光色を可視領域で制御可能であり、且つ、凝集誘起発光性を示す有機蛍光体はこれまでになかった。
非特許文献1に記載の凝集誘起発光性分子は芳香族環が多数プロペラ型に結合した極めて限定的な構造を有し、分子設計指針が不十分であるため目的に応じた凝集誘起発光性分子を合成することは困難である。
また、非特許文献2に記載の凝集誘起発光性分子は、色素分子の発光部分が極端に長いため単独では分子構造が歪んで発光できないが、凝集して分子が積み重なると平面性が増して蛍光が飛躍的に増大する仕組みを持つ。しかし、この手法は分子量の低い単純な分子には適用できない。
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、比較的単純な構造で、発光色を可視領域で制御可能であり、且つ、凝集誘起発光性を示す有機蛍光体を実現することにある。
上記課題を解決するために、本発明の1態様によれば、下記一般式(1)で表されるアミノマレイミドからなることを特徴とする蛍光体が提供される。
(一般式(1)中、
Aは置換または非置換の飽和アルキル基を示し、
Bは置換または非置換のフェニル基を示す。)
上記の構成によれば、比較的単純な構造で、発光色を可視領域で制御可能であり、且つ、凝集誘起発光性を示す有機蛍光体を実現することができるという効果を奏する。
1実施形態において、Aは炭素数3〜20の直鎖または分岐鎖の置換または非置換の飽和アルキル基である。
本発明に係る凝集誘起発光性材料は、上記蛍光体を含むことを特徴としている。
本発明に係るpH刺激応答性材料は、上記蛍光体を含むことを特徴としている。
本発明に係る光波長変換材は、上記蛍光体を含むことを特徴としている。
本発明に係る蛍光体は、以上のように、一般式(1)で表されるアミノマレイミドからなる構成を備えているので、比較的単純な構造で、発光色を可視領域で制御可能であり、且つ、凝集誘起発光性を示す有機蛍光体を実現することができる。
本発明の実施例1により得られた2−アニリノ−N−n−ヘキシルマレイミドのH-NMRスペクトル。 本発明の実施例1により得られたアミノマレイミド粉末の発光スペクトルを測定した結果を示す図である。 本発明の実施例5において、混合物全体の重量に対する水の割合がそれぞれ、70重量%、72重量%、および80重量%であるTHFと水との混合溶媒中の2−アニリノ−N−n−ヘキシルマレイミドに、近紫外線を照射することにより、凝集に伴う発光強度の増大を確認した結果を示す図である。 本発明の実施例5において、混合物全体の重量に対する水の割合がそれぞれ、70重量%、72重量%、および80重量%であるTHFと水との混合溶媒中の2−アニリノ−N−n−ヘキシルマレイミドを335nmで励起させて発光スペクトルを測定した結果を示す図である。 本発明の実施例1の2−アニリノ−N-ヘキシルマレイミドの固体膜にブラックライトブルーランプを照射した結果を示す図である。 (a)本発明の実施例1〜3のアミノマレイミドの粉末、EVA膜、PS膜およびPMMA膜の400nmを励起波長とした発光スペクトルの最大発光波長。(b)実施例1のアニリノ−N-ヘキシルマレイミドの粉末結晶、EVAフィルム、PSフィルムの発光スペクトル。 本発明の実施例7において、アミノマレイミドの発光のpH応答性を示す図であり、(A)は近紫外線照射下の2−アニリノ−N−n−ヘキシルマレイミド、THFおよび水の混合液を示す図であり、(B)は35%HCl水溶液添加後の混合液を示す図である。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではなく、記述した範囲内で種々の変形を加えた態様で実施できるものである。また、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。なお、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A〜B」は、「A以上、B以下」を意味する。
(I)本発明に係る蛍光体
本発明者らは上記課題に鑑み鋭意検討した結果、マレイミドのN位に、置換または非置換の飽和アルキル基が結合し、且つ、マレイミドの2位または3位のC原子に置換または非置換のフェニル基が結合してなるアミノマレイミドは、溶液中では発光せず、分子が凝集すると発光が著しく増大することを見出した。
そして、これにより、分子量の低い比較的単純な構造の有機化合物を用いて、発光色を可視領域で制御可能であり、且つ、凝集誘起発光性を示す有機蛍光体を実現することができることを見出して本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明に係る蛍光体は、下記一般式(1)で表されるアミノマレイミドからなる。なお、本明細書においては、マレイミドを形成する5員環のN原子(N位)に隣接するC原子を1位とし、当該C原子に隣接するC原子を2位としてマレイミドを形成するC原子に順に番号をふるものとする。
ここで、一般式(1)中、Aは置換または非置換の飽和アルキル基を示し、Bは置換または非置換のフェニル基を示す。
Aの飽和アルキル基は、直鎖、分岐鎖または環状の飽和アルキル基であってよい。直鎖の飽和アルキルの例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、イコシルなどが挙げられる。分岐鎖の飽和アルキルの例としては、イソプロピル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、イソペンチル、イソヘキシル、イソヘプチル、イソオクチル、イソノニル、イソデシル、イソウンデシル、イソドデシル、イソトリデシル、イソテトラデシル、イソペンタデシル、イソヘキサデシル、イソヘプタデシル、イソオクタデシル、イソノナデシル、イソイコシルなどが挙げられる。環状の飽和アルキルの例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルなどが挙げられる。
飽和アルキル基の炭素数は蛍光体の作用を有する限り特には限定されないが通常1〜20個(特には直鎖の場合1〜20個、分岐鎖または環状の場合3〜20個)、より好ましくは3〜20個、さらにより好ましくは5〜16個、最も好ましくは6〜10個である。なお、飽和アルキル基が置換されている場合、飽和アルキル基の炭素数とは置換基中の炭素数も含む炭素数の合計を指す。
飽和アルキル基は、1つまたは複数の置換基で置換されていてもよく、飽和アルキル基が置換基を有する場合、通常1〜3個、より好ましくは1または2個の置換基、特に好ましくは1個の置換基で置換される。置換基はアルキル基のいずれの位置に結合してもよい。
飽和アルキル基の置換基は、本発明のアミノマレイミドの蛍光体としての作用を損なわない任意の置換基であれば特に限定されず、例えば、化合物炭素数1〜6のアルキル基またはハロゲン原子が挙げられる。かかるアルキル基としては、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基を挙げることができる。ハロゲン原子はF、Cl、BrおよびIから選ばれるいずれかのハロゲン原子であってよい。
Bのフェニル基は、1つまたは複数の置換基で置換されていてもよく、飽和アルキル基が置換基を有する場合、通常1〜3個、より好ましくは1または2個の置換基、特に好ましくは1個の置換基で置換される。置換基はマレイミドの2位のC原子に結合しているアミノ基に対して、いずれの位置に結合してもよい。
フェニル基の置換基は、本発明のアミノマレイミドの蛍光体としての作用を損なわない任意の置換基であれば特に限定されず、例えば、化合物炭素数1〜6のアルキル基またはハロゲン原子が挙げられる。かかるアルキル基としては、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基を挙げることができる。ハロゲン原子はF、Cl、BrおよびIから選ばれるいずれかのハロゲン原子であってよい。
好ましいBのフェニル基の例としてはフェニル、(o−,m−,p−)メチルフェニル、(o−,m−,p−)エチルフェニル、(o−,m−,p−)プロピルフェニル、(o−,m−,p−)ブチルフェニル、(o−,m−,p−)ペンチルフェニル、(o−,m−,p−)ヘキシルフェニルなどが挙げられる。
例えばBがフェニル基であり、かつ置換基が1つの場合、本発明のアミノマレイミドは下記一般式(2)
で表されるが、Rはマレイミドの2位のC原子に結合しているアミノ基に対して、パラ位、メタ位およびオルト位のいずれに結合していてもよい。なお、ベンゼンが非置換の場合、Rは水素である。
は、本発明のアミノマレイミドの蛍光体としての作用を損なわない任意の置換基であれば特に限定されず、例えば、化合物炭素数1〜6のアルキル基またはハロゲン原子が挙げられる。かかるアルキル基としては、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基を挙げることができる。ハロゲン原子はF、Cl、BrおよびIから選ばれるいずれかのハロゲン原子であってよい。
本発明に係る蛍光体を構成する代表的なアミノマレイミドとしては、例えば、2−アニリノ−N−n−ペンチルマレイミド、2−アニリノ−N−n−ヘキシルマレイミド、2−アニリノ−N−n−ヘプチルマレイミド、2−アニリノ−N−n−オクチルマレイミド、2−アニリノ−N−n−ノニルマレイミド、2−アニリノ−N−n−デシルマレイミド、2−アニリノ−N−n−ウンデシルマレイミド、2−アニリノ−N−n−ドデシルマレイミド、2−(o−,m−,p−)−トルイジノ−N−n−ペンチルマレイミド、2−(o−,m−,p−)−トルイジノ−N−n−ヘキシルマレイミド、2−(o−,m−,p−)−トルイジノ−N−n−ヘプチルマレイミド、2−(o−,m−,p−)−トルイジノ−N−n−オクチルマレイミド、2−(o−,m−,p−)−トルイジノ−N−n−ノニルマレイミド、2−(o−,m−,p−)−トルイジノ−N−n−デシルマレイミド、2−(o−,m−,p−)−トルイジノ−N−n−ウンデシルマレイミド、2−(o−,m−,p−)−トルイジノ−N−n−ドデシルマレイミド、2−(o−,m−,p−)−メチルベンジルアミノペンチルマレイミド、2−(o−,m−,p−)−メチルベンジルアミノヘキシルマレイミド、2−(o−,m−,p−)−メチルベンジルアミノヘプチルマレイミド、2−(o−,m−,p−)−メチルベンジルアミノオクチルマレイミド、2−(o−,m−,p−)−メチルベンジルアミノノニルマレイミド、2−(o−,m−,p−)−メチルベンジルアミノデシルマレイミド、2−(o−,m−,p−)−メチルベンジルアミノウンデシルマレイミド、2−(o−,m−,p−)−メチルベンジルアミノドデシルマレイミド、2−(o,m,p)−ブロモアニリノ−N−n−ペンチルマレイミド、2−(o,m,p)−ブロモアニリノ−N−n−ヘキシルマレイミド、2−(o,m,p)−ブロモアニリノ−N−n−ヘプチルマレイミド、2−(o,m,p)−ブロモアニリノ−N−n−オクチルマレイミド、2−(o,m,p)−ブロモアニリノ−N−n−ノニルマレイミド、2−(o,m,p)−ブロモアニリノ−N−n−デシルマレイミド、2−(o,m,p)−ブロモアニリノ−N−n−ウンデシルマレイミド、2−(o,m,p)−ブロモアニリノ−N−n−ドデシルマレイミド等を挙げることができる。
1実施形態において、本発明は下記一般式(3)で表されるアミノマレイミドを含み、
一般式(3)中、
1は水素原子または炭素数1〜6のアルキル基またはハロゲン原子を示し、
nは0−2、4、6−10のいずれかを示す。
本発明に係る蛍光体は溶液中では発光しない。ここで、本明細書において、溶液とは液体状態にある均一な混合物をいう。すなわち、本発明に係る蛍光体を溶媒に完全に溶解した状態では、近紫外光で励起しても発光しない。なお、近紫外光とは300〜400nmの光をいう。本発明に係る蛍光体が分子分散状態の溶液中で発光しないのは、溶液中ではマレイミド分子の2位または3位に結合する置換または非置換のフェニルアミノ基が自由回転するため、励起エネルギーが回転運動に消費されて発光が起こらないためであると考えられる。アミノマレイミド分子の2位または3位にベンゼン環や複素環が直接結合した構造を有している従来の蛍光体では、本発明のアミノマレイミド分子と比較して、ベンゼン環や複素環が自由回転しにくいために、溶液中で消光しないと考えられる。
本発明に係る蛍光体は、溶液中では発光しないが、分子凝集状態が起こる液体状態や固体状態で発光が著しく増大するいわゆる凝集誘起発光性を有する蛍光体である。本発明に係る蛍光体は、その溶液に、本発明に係る蛍光体の非溶媒または貧溶媒を添加して、本発明に係る蛍光体を析出させて凝集させると、近紫外の励起光で発光することが確認された。また、添加する非溶媒または貧溶媒の割合が増加して、凝集量が増大するに伴い、発光強度が増大する。
また、本発明に係る蛍光体は固体状態で発光を示し、その最大発光波長は、400nm〜650nmであり、励起光の波長は250nm〜500nmである。
本発明に係る蛍光体が、凝集(固体)状態で発光が著しく増大し、高濃度条件下での濃度消光による輝度低下が起こらない理由としては、(i)マレイミドの2位もしくは3位のC原子に結合する置換または非置換のフェニルアミノ基の回転が抑制されて、2位のフェニルアミノ基のベンゼン環とマレイミド環の平面性が増大すること、および、(ii)マレイミド環と、マレイミドのN−置換基とのねじれによりπ−スタッキングが抑制されることが考えられる。
以上のように、本発明に係る蛍光体は、マレイミドの2位もしくは3位のC原子に結合する置換または非置換のフェニルアミノ基の自由回転とその抑制により、従来のマレイミド系蛍光体にはない、溶液中で消光し、凝集により発光が著しく増大するという特性を備える。したがって、溶液中と凝集状態とにおける発光挙動の差を利用したセンサー等に好適に用いることができる。
また、本発明に係る蛍光体は、マレイミドの2位もしくは3位のC原子に結合する置換または非置換のフェニルアミノ基の置換基(アミン側の置換基)、および、マレイミドのN位に結合する飽和アルキル基の置換基(イミド側の置換基)を替えることにより、それぞれ異なる色に発光することが見出された。したがって、本発明に係る蛍光体では、アミン側の置換基と、イミド側の置換基とを、適宜選択することにより、発光波長を細かく調整することが可能となる。
(II)本発明にかかる蛍光体の製造方法
本発明に係る蛍光体の製造方法は特に限定されるものではなく、従来公知の方法を適宜選択して用いることができる。
本発明に係る蛍光体の製造方法の一例としては、下記一般式(4)
で表されるアセチレンジカルボン酸ジメチルと、この化合物に対して下記一般式(5)
3NH ・・・(5)
で表される1級アミンとを反応させる第1工程と、第1工程により得られた下記一般式(6)
で表される化合物とこれに対して下記一般式(7)
4NH ・・・(7)
で表される1級アミンとを反応させて下記一般式(8)で表されるアミノマレイミドを得る第2工程とを含む製造方法を挙げることができる(二段階法)。
ここで、上記R3は、上記(I)の一般式(1)の説明に記載したBのフェニル基である。また、R4は、上記(I)の一般式(1)の説明に記載したAの飽和アルキル基である。
上記製造方法によれば、マレイミドのN位に結合する基が上記(I)の一般式(1)の説明に記載したAの飽和アルキル基であり、マレイミドの2位のC原子に結合するN原子に結合する基がBのフェニル基であるアミノマレイミドを得ることができる。
上記二段階法においては、第1工程で、一般式(4)で表される化合物に対して一般式(5)で表される1級アミンを反応させることにより、一般式(6)で表される化合物を得る。ここで、一般式(4)で表される化合物に対する一般式(5)で表される1級アミンのモル比(一般式(5)で表される1級アミンのモル数/一般式(4)で表される化合物のモル数)は特に限定されないが、約1〜4であることが好ましい。
また、第1工程で用いることができる溶媒は、一般式(4)で表される化合物と一般式(5)で表される1級アミンとが反応する限り特に限定されるものではなく、必要に応じて用いればよい。かかる溶媒としては、例えば、DMAc、トルエン、クロロベンゼン等を好適に用いることができる。または反応時に反応混合物が液体状態であれば無溶媒でも構わない。
第1工程の反応温度は特に限定されるものではなく、通常−20〜150℃であり、1実施形態では60〜120℃、別の実施形態では0〜40℃でもよく、室温という極めて穏和な反応条件でも合成可能である。また、反応時間も特に限定されるものではないが、通常30分〜1日、より好ましくは1〜10時間である。
二段階法においては、第2工程で、一般式(6)で表される化合物に対して一般式(7)で表される1級アミンを反応させることにより、本発明に係る蛍光体を製造することができる。ここで、一般式(6)で表される化合物に対する一般式(7)で表される1級アミンのモル比(一般式(7)で表される1級アミンのモル数/一般式(6)で表される化合物のモル数)が約1−4であることが好ましい。
また、第2工程において用いることができる溶媒は、一般式(6)で表される化合物と一般式(7)で表される1級アミンとが反応する限り特に限定されるものではなく、必要に応じて用いればよい。かかる溶媒としては、例えば、DMAc、トルエン、DMF等を好適に用いることができる。または反応時に反応混合物が液体状態であれば無溶媒でも構わない。
第2工程の反応温度は特に限定されるものではないが、−20〜150℃であり、1実施形態では80〜150℃、別の実施形態では0〜40℃でもよく、室温という極めて穏和な反応条件でも合成可能である。また、反応時間も特に限定されるものではないが、通常30分〜2日、より好ましくは4〜24時間である。
本発明の蛍光体の製造方法によれば、得られた蛍光体の量子収率が大幅に上昇することが判明した。例えば、従来のアミノマレイミド系の有機蛍光体では量子収率がせいぜい8%以下であったが、本発明の蛍光体の場合、10%以上、場合によっては20%以上や30%以上の量子収率を達成可能である。
(III)本発明に係る蛍光体の利用
本発明に係る蛍光体は、上述したように、溶液中では発光しないが、分子凝集状態が起こる液体状態や固体状態で発光が著しく増大するいわゆる凝集誘起発光性を有する蛍光体である。したがって高濃度条件での使用が可能となる。また、アミン側の置換基と、イミド側の置換基とを、適宜選択することにより、発光波長を細かく調整することが可能となる。よって、本発明に係る蛍光体は、色素レーザー、バイオイメージング、有機EL用発光素子等幅広い分野において好適に用いることができる。
また、本発明に係る蛍光体は、マレイミドの2位もしくは3位のC原子に結合する置換または非置換のフェニルアミノ基の自由回転とその抑制により、従来のマレイミド系蛍光体にはない、溶液中で消光し、凝集により発光が著しく増大するという特性を備える。したがって、溶液中と凝集状態とにおける発光挙動の差を利用したセンサー等に好適に用いることができる。
したがって本発明には、本発明に係る蛍光体を含む凝集誘起発光性材料も含まれる。かかる、凝集誘起発光性材料は、少なくとも本発明に係る蛍光体を含み、さらに、例えば、本発明に係る蛍光体の溶媒、非溶媒、貧溶媒、高分子化合物、これらの組み合わせ等を含んでいる。
さらに本発明に係る蛍光体は、以下の用途に好適に用いることができる。
<pH刺激応答性材料、金属センサー用刺激応答性材料、圧力センサー用刺激応答性材料>
本発明に係る蛍光体が溶解している溶液に、本発明に係る蛍光体の非溶媒または貧溶媒を添加して、本発明に係る蛍光体を析出させて凝集させると、近紫外の励起光で発光する。この本発明に係る蛍光体の凝集した分子を含む液に酸を添加すると、発光強度が低下することが見出された。これは、酸を加えることにより、マレイミドの2位もしくは3位のC原子に結合するアミノ基がプロトン化し、共役系が切断され、フェニルアミノ基のベンゼン環とマレイミド環との平面性が損なわれたためであると考えられる。
このように、本発明に係る蛍光体は、凝集した状態で、周囲のpHにより、発光したり、消光したりするため、pH刺激応答性材料として用いることができる。それゆえ、本発明には、本発明に係る蛍光体からなるpH刺激応答性材料も含まれる。かかるpH刺激応答性材料はまた、本発明に係る蛍光体を含み、さらに溶媒、非溶媒、貧溶媒等の溶剤等を含んでいてもよい。
また、本発明に係る蛍光体は、マレイミドの2位もしくは3位のC原子に結合するアミノ基に金属が配位することにより、発光の波長が変化するため、金属センサー用刺激応答性材料として用いることができる。
さらに、本発明に係る蛍光体は、圧力をかけることにより、結晶が歪んで発光の波長が変化するため、圧力センサー用刺激応答性材料として用いることができる。
<光波長変換材>
また、本発明に係る蛍光体は、光波長変換材として好適に用いることができる。例えばシリコン結晶系太陽電池では、太陽光のうち400nmよりも短波長の光、および1200nmよりも長波長の光が有効に利用されないため、太陽光エネルギーの約56%がこのスペクトルミスマッチにより太陽光発電に寄与しない。かかる問題を解決するために、太陽電池用光波長変換材を用いて、太陽光スペクトルのうち、発電に寄与しない紫外域または赤外域の光を波長変換することにより、発電に寄与しうる波長域の光を発光する層を太陽電池受光面側に設ける手法が提案されている。本発明に係る蛍光体は、かかる太陽電池用光波長変換材として好適に用いることができる。本発明に係る蛍光体は、分散性が良いため、濃度消光を抑制した凝集した状態で、波長変換し、効率よく且つ安定的に太陽光を利用することができる。
あるいは、本発明に係る蛍光体は、植物の光合成に利用されない波長の光を光合成に必要な吸収波長域に変換して植物の成長を促進させる目的で、例えば農業用シート、園芸用シート等の農園芸波長変換被覆資材に、光波長変換材として好適に用いることができる。
さらに、本発明に係る蛍光体は、眼に見えない紫外光を可視光の発光に変換することで悪天候条件でも発光するという特性を利用した標識、表示板、安全グッズ等に、光波長変換材として好適に用いることができる。
それゆえ、本発明には、本発明に係る蛍光体からなる光波長変換材も含まれる。かかる光波長変換材はまた、本発明に係る蛍光体を含む高分子フィルム、高分子シート、高分子成形体等であってもよいし、本発明に係る蛍光体と、膜、シートまたは成形体を形成する高分子化合物とを含む成膜用組成物または成形用組成物であってもよい。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
なお、固体状態および液中の発光スペクトルおよび励起スペクトルはPERKIN ELMER 社製LS50B Luminescence Spectrometerを使用して測定した。
(合成例1)
ジメチルアニリノフマレートの製造
アセチレンジカルボン酸ジメチル(1.49 g, 10.5 mmol)を氷水で冷やしながらアニリン(1.97 g, 21.2 mmol)をゆっくりと滴下し、室温で4時間撹拌した。撹拌し続けるにつれて溶液が黄色くなり、反応後、原料を減圧下で留去することで黄色いオイル状のジメチルアニリノフマレートを収率90%で得た。
1H-NMR (CDCl3):δ 9.67 (s, 1H); 7.28 (t, J=7.6, 8.4 Hz, 2H); 7.09 (t, J=7.6, 7.2 Hz, 1H); 6.90 (d, J=7.6 Hz, 2H); 5.39 (s, 1H); 3.74 (s, 3H); 3.69 (s, 3H).
(合成例2)
ジメチル−p−トルイジノフマレートの製造
アセチレンジカルボン酸ジメチル(1.04 g, 7.31 mmol)を氷水で冷やしながらアニリン(0.756 g, 7.06 mmol)をゆっくりと滴下していき、室温で48時間撹拌した。撹拌し続けるにつれて溶液が黄色くなり、反応後、原料を減圧下で留去することで黄色いオイル状のジメチル−p−トルイジノフマレートを収率90%で得た。
1H-NMR (CDCl3):δ 9.62 (s, 1H); 7.08 (d, J=8.0 Hz, 2H); 6.80 (d, J=8.4 Hz, 2H); 5.33 (s, 1H); 3.73 (s, 3H); 3.69 (s, 3H); 2.30 (s, 3H).
〔実施例1:2−アニリノ−N−n−ヘキシルマレイミドの製造〕
ジメチルアニリノフマレート(0.188 g, 0.799 mmol)をメタノール(5 ml)に溶解し、撹拌しながらn-ヘキシルアミン(0.243 g, 2.40 mmol)を滴下し、室温で24時間撹拌し続けた。 撹拌後、沈殿してきた黄色い固体を冷やしたメタノールを用いてろ過を行うことで回収した。得られた固体を塩化メチレンと2-プロパノールで再結晶を行うことで黄色い結晶を収率26%で得た。融点 133 ℃。図1は実施例1により得られた2−アニリノ―N−n−ヘキシルマレイミドのH−NMRスペクトルを示す。
1H-NMR (CDCl3):δ 7.40 (t, J=8.4, 7.6 Hz, 2H); 7.23 (s, 1H); 7.15 (t, J=6.8, 8.4 Hz, 1H); 7.14 (d, J=8.4 Hz, 2H); 5.50 (s, 1H); 3.53 (t, J=7.2, 7.6 Hz, 2H); 1.61 (m, 2H), 1.31 (m, 6H), 0.88 (m, 3H).
〔実施例2:2−アニリノ−N−n−オクチルマレイミドの製造〕
ジメチルアニリノフマレート(0.195 g, 0.829 mmol)をメタノール(5 ml)に溶解し、撹拌しながらオクチルアミン(0.326 g, 2.52 mmol)を滴下していき室温で24時間撹拌し続けた。 撹拌後、沈殿してきた黄色い固体を冷やしたメタノールを用いてろ過を行うことで回収した。得られた固体を塩化メチレンと2-プロパノールで再結晶を行うことで黄色い結晶を収率26%で得た。
1H-NMR (CDCl3):δ 7.40 (t, J=8.0, 8.0 Hz, 2H); 7.25 (s, 1H); 7.17-7.13 (m, 3H); 5.50 (s, 1H); 3.53 (t, J=7.2, 7.2 Hz, 2H); 1.61 (m, 2H); 1.28 (m, 10H); 0.87 (m, 3H).
〔実施例3:2−p−トルイジノ−N−n−ヘキシルマレイミドの製造〕
ジメチル−p−トルイジノフマレート(0.188 g, 0.755 mmol)をメタノール(5 ml)に溶解し、撹拌しながらn-ヘキシルアミン(0.222 g, 2.19 mmol)を滴下していき室温で48時間撹拌し続けた。 撹拌後、沈殿してきた黄色い固体を冷やしたメタノールを用いてろ過を行うことで回収した。得られた固体を塩化メチレンと2-プロパノールで再結晶を行うことで黄色い結晶を収率28%で得た。
1H-NMR (CDCl3):δ 7.20 (d, J=8.4 Hz, 2H); 7.17 (s, 1H); 7.04 (d, J=8.4 Hz, 2H); 5.43 (s, 1H); 3.52 (t, J=7.2, 7.6 Hz, 2H); 2.35 (s, 3H); 1.61 (m, 2H); 1.30 (m, 6H); 0.88 (m, 3H).
〔実施例4:固体状態における発光〕
実施例1〜3により得られたアミノマレイミドの固体サンプルに、ブラックライトブルーランプを用いて近紫外線(315nm〜400nm、最もランプ強度が強い波長:352nm)を照射したところ、いずれも固体状態で発光を示した。なお、ブラックライトブルーランプとしては、紫外線ボックス・スタンダード型強力タイプ(株式会社相互理化学硝子製作所製)を使用した。
また、実施例1〜3により得られたアミノマレイミドの固体サンプルを固体粉末セルに均一に入れて、いずれも400nmで励起させて発光スペクトルを分光蛍光光度計(FP-8500、日本分光株式会社))で測定した。最大発光波長が2−アニリノ−N-ヘキシルマレイミドでは492nm、2−アニリノ−N-オクチルマレイミドでは495nm、2−p−トルイジノ−N-ヘキシルマレイミドでは499nmに観測された図2には、アミノマレイミド粉末の発光スペクトルを測定した結果を例として示す。
この結果より、置換基または飽和アルキルの炭素鎖の違いにより、492nmから499nmの領域で最大発光波長が変化することが判る。置換基を変えることでの電子状態の変化や、イミド部位とアミン部位の平面性の変化により発光波長が詳細にチューニングされたものと考えられる。
〔実施例5:凝集誘起発光性〕
実施例1で得られた2−アニリノ−N−n−ヘキシルマレイミドのテトラヒドロフラン(THF)溶液(4 mmolL−1)1mLに、混合物全体の重量に対する水の割合がそれぞれ、70重量%、72重量%、および80重量%になるようにTHFと水との混合溶媒を4mL加え、実施例4と同じブラックライトブルーランプを用いて近紫外線(315nm〜400nm、最もランプ強度が強い波長:352nm)を照射することで、凝集に伴う発光強度の増大を確認した。結果を図3に示す。2−アニリノ−N−n−ヘキシルマレイミドがTHFに溶解した状態(水の割合が70重量%)では発光がほとんど見られなかった。しかし水の割合が増加することによって、2−アニリノ−N−n−ヘキシルマレイミドが析出して凝集することで発光が発現した。また、凝集量に伴って発光強度が増大することを確認した。この結果より、2−アニリノ−N−n−ヘキシルマレイミドは凝集誘起発光を示すことが判る。
また、混合物全体の重量に対する水の割合をそれぞれ、70重量%、72重量%、および80重量%とした2−アニリノ−N−n−ヘキシルマレイミドと、THF/水混合溶媒との混合物を335nmで励起させて発光スペクトルを測定した結果を図4に示す。図4に示されるように、水の濃度が上昇することにより発光強度が上昇したことを確認した。
〔実施例6:固体膜中での発光〕
実施例1の2−アニリノ−N−n−ヘキシルマレイミド(2.7mg)をトルエン5mLに溶解させた。この2−アニリノ−N−n−ヘキシルマレイミドトルエン溶液(0.54mg/mL)1mLにエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)20 mg、ポリスチレン(PS)、またはポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)を30 mg溶解させ、これをシリコン基板上に70℃でキャストし、130℃で20分間加熱することで乾燥させた。
作成した膜はいずれも淡黄色の透明膜であった。この膜に、ブラックライトブルーランプを照射したところ、図5に示すように発光した。
膜の400nmを励起波長とした発光スペクトルを測定したところ、図6(a)の通りの最大発光波長が観察された。図中、粉末は、ポリマーに溶解させないアミノマレイミド結晶を指す。この結果により、本発明のアミノマレイミドはポリマー膜(フィルム)中でも発光し、かつポリマーマトリックスの種類により発光波長が変化することがわかった。図6(b)は実施例1の2−アニリノ−N−n−ヘキシルマレイミドの粉末、EVAフィルム、PSフィルムの発光スペクトルを示す。
〔実施例7:発光発光のpH応答性〕
実施例1で得られた2−アニリノ−N−n−ヘキシルマレイミド(11mg)をテトラヒドロフラン(THF)10mLに溶解させた。この2−アニリノ−N−n−ヘキシルマレイミドのTHF溶液(4mmolL−1)1mLに4mLの水を加えることで、図7(A)に示すように発光が観測されるようになった。この2−アニリノ−N−n−ヘキシルマレイミドと、THF/水混合溶媒との混合物の発光スペクトルを図7に示す。
この混合物に35%HCl水溶液2mLを加えると、図7(B)に示すように無発光となり、発光強度の低下が見られた。
これは、酸を加えることで、アミノ基がプロトン化し、その結果、アミノマレイミドユニットの平面性が損なわれたためであると考えられる。この結果は、本発明の蛍光体がpH応答性を有していることを示すものである。
〔実施例8:本発明のアミノマレイミドの量子収率〕
上記の実施例1〜3の製造方法における本発明のアミノマレイミドの量子収率を、分光蛍光光度計(FP-8500、日本分光株式会社)で測定したところ、それぞれ34%、35%、および16%であった。
本願発明者らは、参考用アミノマレイミド(参考例1−6)として、マレイミドのN位に置換または非置換のフェニル基または置換または非置換のベンジルが結合し、かつマレイミドの2位または3位の原子に置換または非置換のフェニルアミノ基(アニリノ基)が結合してなるアミノマレイミドを製造した。参考用アミノマレイミドはいずれの場合も量子収率が8%以下と低かった(表1)。
実際、本発明のアミノマレイミドは量子収率が高いため、参考用アミノマレイミド蛍光体と比較して肉眼でも観察可能な程度に強い蛍光が観察された。
参考例3−5の参考用アミノマレイミドは、本明細書の二段階法の第2工程で実施例1−3の飽和アルキルアミンと差し替えて置換または非置換のアニリンまたは置換または非置換のベンジルアミンを用いることで合成した(下記の参考例3−5のアミノマレイミドの製造方法参照)。この場合、参考用アミノマレイミドを生成するのに反応温度が150℃である必要があった。
参考例1、2および6の参考用アミノマレイミドは、マレイミドのN位に置換または非置換のフェニル基または置換または非置換のベンジルが結合し、かつマレイミドの2位または3位の原子に置換または非置換のフェニルアミノ基(アニリノ基)が結合してなるアミノマレイミドを、1,4-ジヒドロ−1,4-ジアルシニン酸二無水物に1級アミンを60〜120℃で1〜10時間反応させる第1工程と、第1工程で得られた1,4-ジヒドロ 1,4-ジアルシニンテトラカルボキシジイミドに1級アミンを80〜150℃で4〜24時間反応させる第2工程とからなる二段階法により製造した(下記の参考例1、2および6のアミノマレイミドの製造方法参照)。
〔参考例3:2−m−トルイジノ−N−p−トリルマレイミドの製造方法〕
窒素雰囲気下でアセチレンジカルボン酸ジメチル(0.395 g, 2.78 mmol)とm−トルイジン(1.16 g, 10.8 mmol)を150 ℃で4時間撹拌した。反応後、冷凍庫で冷やし、析出した黒茶色の固体をメタノールで洗浄し、濾過を行い、得られた固体を塩化メチレンとメタノールで再結晶を行うことで黄色の2−m−トルイジノ−N−p−トリルマレイミドの結晶を収率3%で得た。
1H-NMR (CDCl3):δ 7.37-7.29 (m, 3H); 7.18 (t, J=8.0, 8.0 Hz, 3H); 7.00 (d, J=9.6 Hz, 3H); 5.66 (s, 1H); 2.40 (s, 3H); 2.39 (s, 3H).
〔参考例4:2−p-ブロモアニリノ−N−p−ブロモフェニルマレイミドの製造方法〕
窒素雰囲気下でアセチレンジカルボン酸ジメチル(0.399 g, 2.81 mmol)とp-ブロモアニリン(1.89 g, 11.0 mmol)を150 ℃で1時間撹拌した。反応後、室温まで冷やし、析出した黒茶色の固体をメタノールで洗浄し、濾過を行い、得られた固体を塩化メチレンとメタノールで再結晶を行うことで黄色の2−p-ブロモアニリノ−N−p−ブロモフェニルマレイミドの結晶を収率5%で得た。
1H-NMR (CDCl3):δ 7.60 (d, J=8.8 Hz, 2H); 7.55 (d, J=8.8 Hz, 2H); 7.32 (d, J=8.8 Hz, 2H); 7.09 (d, J=9.2 Hz, 2H); 5.65 (s, 1H).
〔参考例5:2−アニリノ−N−p−トリルマレイミドの製造方法〕
窒素雰囲気下でジメチルアニリノフマレート(0.195 g, 0.830 mmol)とp-トルイジン(0.357 g, 3.33 mmol)を150 ℃で3時間撹拌した。反応後、室温まで冷やし、析出した黒茶色の固体をメタノールで洗浄し、濾過を行い、得られた固体を塩化メチレンとメタノールで再結晶を行うことで黄色の2−アニリノ−N−p−トリルマレイミドの結晶を収率6%で得た。
1H-NMR (CDCl3):δ 7.49-7.33 (m, 6H); 7.23 (d, J=8.4 Hz, 2H); 7.10 (d, J=8.4 Hz, 2H); 5.61 (s, 1H); 2.37 (s, 3H).
〔参考例1:2−アニリノ−N−フェニルマレイミドの製造方法〕
1.cis-1,4-ジヒドロ-1,4-ジメチル-1,4-ジアルシニン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物(cis-DHDADA)の製造
1−1.cis-1,4-ジヒドロ-1,4-ジメチル-2,3,5,6-テトラキス(tert -ブトキシカルボニル)-1,4-ジアルシニン(cis-DHDAtBu)の製造
Synthesis and Characterization of Stereoisomers of 1,4-Dihydro-1,4-diarsinines Arita, M.; Naka, K.; Morisaki, Y.; Nakahashi, A.; Chujo, Y.Organometallics, 28(20), 6109-6113 (2009)に記載の方法に従い、三酸化二ヒ素(25g、0.13mol)の水酸化ナトリウム水溶液(10mol/L、100mL)にヨードメタン(50g、0.35mol)を加え85℃で3時間還流した。反応後エタノールを200mL加えて生成した白色沈殿を濾過し、蒸留水200mLに溶かした後、エタノール1Lを加えて再沈殿を行い白い粉末のメチルアルソン酸二ナトリウムを得た。
H-NMR(DO):δ1.50 (s, 3H)。
常温減圧下で十分に乾燥したメチルアルソン酸二ナトリウムに50%ホスフィン酸水溶液(150g)を加え70℃で3時間撹拌した。二相に分離した黄色の有機相を水酸化ナトリウム水溶液(2.5mol/L)で洗浄した後、減圧下で蒸留し、黄色の液体のcyclo-(MeAs)を得た。
窒素雰囲気下、120℃で還流したジtert-ブチルアセチレンジカルボキシレート(10.0g、44.2mmol)のトルエン溶液(200 mL)にcyclo-(MeAs)(3.97g、8.83mmol)を加え12時間撹拌した。その後溶媒を減圧下で留去し、メタノールで洗浄してメタノールに可溶の成分を除去した。常温減圧下で乾燥した後、最小量の塩化メチレンに溶解させ、液面が乱れないようにゆっくりとエタノールを加えて再結晶し透明な柱状結晶のcis-DHDAtBuを収率31.3%で得た。
H-NMR (CDCl3):δ 1.52 (s, 6H); 1.50 (s, 1H)。
1−2.cis-1,4-ジヒドロ1,4-ジメチル1,4-ジアルシニン2,3,5,6-テトラキスカルボン酸二無水物(cis-DHDADA)の製造
cis-DHDAtBu(2.2g、3.4mmol)をギ酸(500ml)に加え、120℃で24時間攪拌した。cis-DHDAtBuがギ酸に溶解して5分で液色が無色透明から黄色透明になった。その反応混合物を減圧濃縮し、残渣にクロロホルムを加えて黄色成分を抽出し、得られた黄色溶液を減圧濃縮した後、再度ギ酸(500ml)を加えて還流下で24時間攪拌し、その反応混合物を減圧濃縮することでcis-DHDADAを黄色結晶として収率93%で得た。
H-NMR(CDCl3):δ 1.81 (As- CH)。13C-NMR(CDCl3):δ 162.99; 152.77; 10.09。FT-IR:1830 cm−1, 1800 cm−1 (C=O) 1240 cm−1(C-O)
2.cis-DHDADI-phenylの製造
窒素雰囲気下でcis-DHDADA(371.9g、1.00mmol)及びアニリン(273.8g、2.73mmol)のトルエン溶液を2時間還流した。溶媒を減圧下で留去した後、塩化メチレン/メタノールの混合溶媒により再結晶を行い、黄色の結晶を収率52.3%で得た。
H-NMR(CDCl3):δ7.51-7.37(m,5H);1.79(s,3H)。FAB-HR-MS(m/z):calculated for C22H16As2N2O4, 552.2226; found, 521.9545。Anal. calculated for C22H16As2N2O4: C, 50.60; H, 3.09. found: C, 50.43; H, 2.93。
3.2−アニリノ−N−フェニルマレイミドの製造
cis-DHDADI-フェニル(33.5mg、0.064mmol)のアニリン溶液(0.5mL)を130℃で7時間撹拌した。反応後に減圧下でアニリンを留去し、メタノールを加え再結晶を行い、黄色の2−アニリノ−N−フェニルマレイミドの結晶を収率30.1%で得た。
〔参考例2:2−p−トルイジノ−N−p−トリルマレイミドの製造方法〕
窒素雰囲気下でcis-DHDADA(104.2mg、0.28mmol)とp−トルイジン(1675.2mg、15.63mmol)を150℃で9.5時間撹拌した。反応後に減圧下でp−トルイジンを留去し、メタノールを加え再結晶を行い、黄色の2−p−トルイジノ−N−p−トリルマレイミドの結晶を収率41.6%で得た。
1H-NMR(CDCl3):δ7.37 (s, 1H); 7.27 (s, 4H); 7.21 (d, J = 8.1 Hz, 6H); 7.09 (d, J = 8.5 Hz, 1H); 5.59 (s, 1H); 2.38 (s, 1H); 2.36 (s, 1H)。
13C-NMR(CDCl3):δ171.57; 167.22; 142.69; 137.60; 135.74; 130.32; 129.70; 128.99;125.88, 119.03; 88.42; 21.16; 20.89。
〔参考例6:2−アニリノ−N−p−ブロモフェニルマレイミドの製造方法〕
1.cis-DHDADI-p-ブロモフェニル(cis-DHDADI-p-BrPh)の製造
窒素雰囲気下でcis-DHDADA(375.4mg、1.01mmol)及びp−ブロモアニリン(371.1mg、2.16mmol)のクロロベンゼン溶液(15mL)を130℃で3時間撹拌した。溶媒を減圧下で留去した後、塩化メチレンに溶解させ、メタノールを加えて再結晶を行い、cis-DHDADI-p-BrPhの黄色の結晶を収率37.4%で得た。
1H-NMR(CDCl3):δ7.62(d,J=8.8Hz,2H);7.32,(d,J=8Hz);1.79(s,3H)。
2.2−アニリノ−N−p−ブロモフェニルマレイミドの製造
窒素雰囲気下でcis-DHDADI-p-BrPh(61.4mg、0.0903mmol)のアニリン溶液(2.5mL)を120℃で7時間撹拌した。反応後に減圧下でアニリンを留去し、メタノールを加え再結晶を行い、黄色の2−アニリノ−N−p−ブロモフェニルマレイミドの結晶を収率43.4%で得た。
H-NMR(CDCl3):δ7.64-7.18 (m. 10H); 5.67 (s. 1H)。
本発明に係る蛍光体は、炭素、窒素、酸素と水素からなる比較的単純な構造でありながら、置換基の種類によってその電子効果や立体効果により発光色を可視領域で精密制御可能な新規有機蛍光体であり、これまでの有機蛍光体の高濃度条件では濃度消光するという問題点を克服するとともに、凝集誘起発光性を示す。それゆえ、色素レーザー、バイオイメージング、有機EL用発光色素、太陽電池用光波長変換材など幅広い分野での利用のみならず、第二級アミンを有する凝集誘起発光性分子であることから、医療分野や工業分野などで、例えば圧力センサー、溶媒蒸気センサー、pHセンサー、金属センサーなど有機蛍光体の新たな応用が期待される。

Claims (7)

  1. 下記一般式(1)で表されるアミノマレイミドからなる蛍光体。
    (一般式(1)中、
    Aは置換または非置換の飽和アルキル基を示し、
    Bは置換または非置換のフェニル基を示す。)
  2. Aは炭素数3〜20の直鎖または分岐鎖の置換または非置換の飽和アルキル基である請
    求項1に記載の蛍光体。
  3. 請求項1または2に記載の蛍光体を含むことを特徴とする凝集誘起発光性材料。
  4. 請求項1または2に記載の蛍光体を含むことを特徴とするpH刺激応答性材料。
  5. 請求項1または2に記載の蛍光体を含むことを特徴とする光波長変換材。
  6. 下記一般式(4)で表されるアミノマレイミド。
    (一般式(4)中、
    1は水素原子または炭素数1〜6のアルキル基またはハロゲン原子を示し、
    は4、6−10のいずれかを示す。)
  7. 下記一般式(1)で表されるアミノマレイミドからなる蛍光体。
    (一般式(1)中、
    Aは置換または非置換の飽和アルキル基を示し、
    Bは非置換のフェニル基を示す。)
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