従来から、いわゆる投影型静電容量方式と呼ばれるタッチパネルが知られている。図1の模式図に示すように、この種のタッチパネル10は、複数の第1透明電極11と、複数の第2透明電極12と、を備えている。
各第1透明電極11は、細長く形成され、互いに平行に並べて配置されている。また、各第2透明電極12は、細長く形成され、互いに平行に並べて配置されている。透明電極11,12は、例えば酸化インジウムスズ(Indium Tin Oxide、ITO)を用いて成膜して形成することができる。
第1透明電極11及び第2透明電極12は、タッチパネル10の厚み方向で見たときに、互いに交差するよう配置される。また、第1透明電極11と第2透明電極12は、タッチパネル10の厚み方向で所定の隙間を挟んで対向するように配置されている。これにより、第1透明電極11と第2透明電極12の交差部分に一種のコンデンサが形成されている。
人体の指(又はスタイラスペンなど)をタッチパネル10の表面に接近又は接触させると、指(又はスタイラスペン)と、透明電極11,12との間で静電容量結合が生じ、上記コンデンサの静電容量が変化する。タッチパネル10は、この静電容量の変化を検出することにより、当該タッチパネル10に指(又はスタイラスペン)が触れた位置を検出することができる。
図2は、この種のタッチパネルを検査する検査装置として従来から知られている構成を模式的に示したものである。図2の検査装置は、検査対象のタッチパネル10の表面に接近又は接触させて移動可能な導電性物体13と、検査回路16と、を備えている。
導電性物体13は、例えば金属等からなる棒状の部材であり、接地されている。この導電性物体13をタッチパネル10に接近又は接触させると、当該導電性物体13と透明電極11,12の間で静電容量結合を生じる。従って、導電性物体13をタッチパネル10に接近又は接触させることにより、指(あるいはスタイラスペンなど)によってタッチパネル10が実際にタッチされた状態を模擬できる。このように、導電性物体13は、「疑似指」と呼ぶことができるものである。
検査回路16は、所定の信号を出力する信号源15と、透明電極11,12に流れた電流を検出する電流検出部14と、を備えている。何れかの透明電極11,12に対して信号源15による信号を印加するとともに、第1透明電極11及び第2透明電極12に流れた電流を電流検出部14で検出すれば、前記静電容量の変化を求めることができる。
従って、図2に示した検査装置によるタッチパネル10の検査は、概略的には以下のように行う。即ち、疑似指13をタッチパネル10の表面の所定の位置に接触又は接近させた状態で、各透明電極11,12に信号を印加する。このとき各透明電極11,12に流れた電流を電流検出部14で検出し、検出された電流に基づいて、各透明電極11,12の間の静電容量の変化を求める。そして、静電容量の変化が生じた透明電極11,12の位置と、実際に疑似指13を接触(又は接近)させた位置と、が一致しているかどうかを調べることにより、当該タッチパネル10によってタッチ位置を正常に検出できることを確認する。
疑似指13をタッチパネル10表面の各部に移動させ、上記検査を繰り返し行うことにより、タッチパネル10の各部においてタッチを正常に検出できるか否かを検査できる。また、疑似指13を移動させながら上記検査を行えば、指(又はスタイラスペン)を移動させる操作(いわゆるスワイプ操作)を模擬した検査を行うことも可能である。
しかしながら、図2の従来の検査装置は、疑似指13を物理的に移動させながら検査を行うため、検査に時間を要するという問題がある。また、疑似指13をタッチパネル10に接触させて移動させた場合は、タッチパネル10が傷つくおそれがある。また、疑似指13を物理的に移動させるための駆動機構が必要となるため、検査装置が大型化及び複雑化する。
この点に関し、特許文献1は、疑似指の移動を電気的に行う構成を開示している。この特許文献1に記載の検査装置100を、図3に示す。特許文献1の検査装置100は、絶縁基板108と、当該絶縁基板108のタッチパネル側の面に形成されている複数の電極105と、複数の電極105をそれぞれ独立に接地させるスイッチ109と、を備えている。なお、図示の都合上、図3では、一部のスイッチ109のみを図示している。実際の検査装置100においては、全ての電極105それぞれに対応してスイッチ109が設けられている。
図3に示した検査装置100において、何れかのスイッチ109がONにされた場合、当該スイッチ109に対応する電極105は接地される。接地された電極105は、図2の疑似指13と同様にふるまう。従って、図3の検査装置100を、図2の疑似指13の代わりに用いることができる。図3の検査装置100において、ONにするスイッチ109を順次切り換えていくことにより、接地される電極105(疑似指としてふるまう電極)の位置を次々と移動させることができる。これにより、図2の疑似指13を移動させるのと同等の検査を、図3の検査装置100によって行うことができる。
特許文献1は、検査装置100を上記のような構成とすることにより、タッチパネルの傷発生を抑制しつつ検査時間を短縮できる、としている。
従来、上記のような静電容量式のタッチパネル10は、指やスタイラスペンがタッチパネルに触れた位置を検出することができるにとどまり、タッチされた圧力を検出することはできないとされていた。しかしながら、タッチパネル装置のコントローラICやドライバICの高性能化、高精度化を背景にして、例えば、透明電極11,12を極めて高速に走査して、指等がタッチパネル10に触れる領域の微細な変化を検出することでタッチ圧力を検出できるようにする研究が、タッチパネル装置の製造業者等において鋭意進められている。従って、少なくとも将来においては、静電容量式でありながらタッチ位置だけでなくタッチ圧力を検出可能なタッチパネル装置が実用化される可能性があると考えられる。
ところで、タッチパネル装置の製造業者にとって、当該タッチパネルの検査を行うことは、不良品の混入を回避して製品の品質を確保するために極めて重要であって、この事情は上記のタッチ圧力を検出可能なタッチパネル装置においても異なるところがない。この点、上記特許文献1は、導電性物体の代わりに疑似指で様々なジェスチャを擬似してタッチパネルを検査することを開示しているが、人が指でタッチパネルを押す力の変化を擬似することを全く開示していない。
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、タッチパネルを傷つけることなく、高速で高精度の検査が可能であり、しかも人の指等がタッチパネルを押す力の変化による接触面積の変化をシミュレートできる検査装置を提供することにある。
課題を解決するための手段及び効果
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
本発明の第1の観点によれば、以下の構成のタッチパネル検査装置が提供される。即ち、このタッチパネル検査装置は、検査対象であるタッチパネルの表面に接近又は接触可能な複数の同心電極を備える。それぞれの前記同心電極は、中心電極と、中空電極と、を備える。前記中空電極には中空部が形成されるとともに、当該中空電極は、前記中心電極と中心を一致させるように配置される。前記中空電極の外周の形状が前記中心電極より大きく形成されている。
これにより、人の指等とタッチパネルとの接触面積が、同心電極の中心を接触点の中心として変化するのを、簡素な構造でシミュレートすることができる。
前記のタッチパネル検査装置においては、前記中空電極の外周の形状が前記中心電極の形状と相似していることが好ましい。
これにより、人の指等とタッチパネルとの接触領域が、その形状的な特徴を保ったまま拡大/縮小するような変化をシミュレートすることができる。
前記のタッチパネル検査装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、1つの前記同心電極に、大きさの異なる2つ以上の前記中空電極が設けられている。それぞれの前記中空電極は、外周の形状と中空部の形状が相似する。複数の前記中空電極のうち、小さい側の前記中空電極が、大きい側の前記中空電極の中空部より小さく形成されている。
これにより、複数の中空電極を入れ子構造で同一の層に配置することができるので、簡素な構成で、接触面積の多段階の変化をシミュレートすることができる。
前記のタッチパネル検査装置においては、前記同心電極を構成する前記中空電極及び前記中心電極のそれぞれが、互いに独立して、所定の信号を出力する信号源又はグランドに接続可能に構成されていることが好ましい。
これにより、信号源又はグランドに対し、同心電極を構成する電極のうち中心側の一部だけの電極が接続されている状態と、それよりも外側の電極も更に接続されている状態と、を切り換えることで、人の指等とタッチパネルとの接触面積の段階的な変化をシミュレートしてタッチパネルを検査することができる。
前記のタッチパネル検査装置においては、前記複数の同心電極が配置された領域は、検査対象であるタッチパネルのタッチ領域の全域に対応する部分を含んでいることが好ましい。
これにより、タッチパネル検査装置やタッチパネルを移動させずに、検査対象のタッチパネルの全タッチ領域を効率的に検査することができる。
前記のタッチパネル検査装置においては、前記同心電極が、前記タッチパネルの下方に配置される台に設けられることが好ましい。
これにより、タッチパネルの上側のスペースを同心電極が占有してしまうことが避けられるので、例えば、タッチパネルを自動でセットしたり取り外したりする装置を容易に配置することができる。
前記のタッチパネル検査装置においては、前記検査対象のタッチパネルと前記複数の同心電極との間に板状の絶縁体が設置されていることが好ましい。
これにより、同心電極とタッチパネルの間に絶縁体が配置されるので、同心電極の傷つきや汚れなどを防止することができる。また、タッチパネルの検査精度を低下させる寄生容量の発生を抑制することができる。
本発明の第2の観点によれば、以下のタッチパネル検査方法が提供される。即ち、このタッチパネル検査方法は、検査対象であるタッチパネルの表面に接近又は接触可能な複数の同心電極を含むタッチパネル検査装置を用いて行う。それぞれの前記同心電極は、中心電極と、少なくとも1つの中空電極と、を備える。前記中空電極は、中空部を有し、前記中心電極と中心を一致させるように配置される。前記中空電極の外周の形状が前記中心電極より大きく形成されている。そして、所定の信号を出力する信号源又はグランドに対し、前記同心電極を構成する電極のうち中心側の一部の電極が接続されている状態と、それよりも外側の電極が更に接続されている状態と、を切り換えつつタッチパネルを検査する。
これにより、人の指等とタッチパネルとの接触面積が、同心電極の中心を接触点の中心として変化するのを、簡素な構造でシミュレートしながら検査することができる。
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
本実施形態のタッチパネル検査装置20が検査対象としているタッチパネル10は、いわゆる投影型静電容量方式に構成されている。このタッチパネル10は、図1に示すように、複数の細長い第1透明電極11と、複数の細長い第2透明電極12と、を備えた一般的な構成である。複数の第1透明電極11は、互いに平行に並べて配置されている。また、複数の第2透明電極12も、互いに平行に並べて配置されている。第1透明電極11と第2透明電極は、タッチパネル10の厚み方向で隙間を空けて配置されている。また、第1透明電極11と第2透明電極12は、タッチパネル10の厚み方向で見たときに、交差するように配置されている。
図1のタッチパネル10は図示しないコントローラIC及びドライバICを備えており、タッチパネル10をマトリクス的にスキャンすることにより、タッチパネル10に指が触れた位置(タッチ位置)だけでなく、触れた圧力(タッチ圧力)についても検出することができるように構成されている。
タッチパネル装置がタッチ圧力を検出する方法については、本発明に係るタッチパネル検査装置20の構成と直接の関係がないために詳細は説明しないが、概略は以下のとおりである。即ち、人の指は一定の柔らかさを有しているため、指がタッチパネル10に触れる圧力が大きくなるのに応じて接触面積が大きくなって、透明電極11,12の交差部分に形成される一種のコンデンサの静電容量にも変化が生じる。従って、この静電容量結合の変化を良好に検出できれば、その検出結果から適宜計算することによりタッチ圧力を取得できると考えられる。
次に、タッチパネル検査装置20の構成について詳細に説明する。図4は、本発明の一実施形態に係るタッチパネル検査装置20を示す模式的な斜視図である。図5は、疑似指プレート22の平面図である。
図4に示すように、タッチパネル検査装置20は、タッチパネル保持部(図略)と、電流検出部と、疑似指プレート22と、制御部23と、板状の絶縁体30と、を主に備えている。
タッチパネル保持部は、例えばクランプ機構等からなり、検査対象のタッチパネル10を所定の姿勢で保持できるように構成されている。
電流検出部は、検査対象のタッチパネル10の各透明電極11,12に流れた電流を検出できるように構成されている。本実施形態の電流検出部は、図4に示すように、第1電流計21aと、第2電流計21bと、第1切換スイッチ24aと、第2切換スイッチ24bと、を備えている。
第1切換スイッチ24aは、タッチパネル10が備える複数の第1透明電極11と、第1電流計21aの正側の端子と、の間に配置されたスイッチである。この第1切換スイッチ24aは、複数の第1透明電極の中の任意の第1透明電極11と、第1電流計21aの正側の端子と、の間の接続/非接続を、任意に切換可能に構成されている。なお、第1電流計21aの負側の端子は、接地されている。
第2切換スイッチ24bは、タッチパネル10が備える複数の第2透明電極12と、第2電流計21bの正側の端子と、の間に配置されたスイッチである。この第2切換スイッチ24bは、複数の第2透明電極の中の任意の第2透明電極12と、第2電流計21bの正側の端子と、の間の接続/非接続を、任意に切換可能に構成されている。なお、第2電流計21bの負側の端子は、接地されている。
切換スイッチ24a,24bのON/OFFの切り換えは、制御部23によって制御されている。また、電流計21a,21bの検出結果は、制御部23に出力される。
制御部23は、CPU、ROM、RAMなどを備えたコンピュータとして構成されており、タッチパネル検査装置20の各部の動作を制御できるように構成されている。
以上の構成で、制御部23は、切換スイッチ24a,24bを制御することにより、何れか1つの任意の第1透明電極11に流れた電流と、何れか1つの任意の第2透明電極12に流れた電流と、を検出できる。従って、制御部23は、切換スイッチ24a,24bを順次切り換えていくことにより、タッチパネル10が備える全ての透明電極11,12それぞれについて、流れた電流の大きさを順次検出していくことができる。
疑似指プレート22は、保持板25と、複数の疑似指同心電極(同心電極)26と、を備えている。疑似指プレート22の平面図を図5に示す。
保持板25は、絶縁体からなる平板状の部材である。図4に示すように、保持板25は、検査対象のタッチパネル10と平行に向けられながら、当該タッチパネル10の下方に配置される。
複数の疑似指同心電極26は、保持板25のタッチパネル10を向く側の面に配置されている。本実施形態の各疑似指同心電極26は、金属製の薄板ないし薄膜であり、中心電極31と、中空電極32と、から構成されている。
図5に示すように、中心電極31は円状に形成されている。また、中空電極32は環状に形成されており、その中心には中空部32aが形成されている。中空電極32の外周の形状と内周の形状(中空部32aの形状)は、何れも円形とされている。また、中空電極32の外周の輪郭円と内周の輪郭円とは、互いに中心を一致させるように配置されている。
中空電極32は、その外周の形状も、内周の形状(中空部32aの形状)も、中心電極31より大きく構成されている。また、中空電極32の外周の形状、内周の形状(中空部32aの形状)、及び中心電極31の形状は、何れも円形であり、互いに相似している。中心電極31は、中空電極32の中空部32aの内側に、中空電極32と中心を一致させつつ配置されている。
1つの疑似指同心電極26の全体の大きさは、例えば、タッチパネル10にタッチされる指先や、スライラスペンのペン先と同程度とすることができる。また、本実施形態において、複数の疑似指同心電極26は、図5に示すように、保持板25の一側の面に均一に敷き詰められるようにして、等間隔で整列してマトリクス配置されている。疑似指同心電極26が配置される領域は、タッチパネル10の有するタッチ領域をカバーできるような大きさとされている。
なお、上記疑似指同心電極26における中心電極31及び中空電極32の形状は、円形に限定されず、図6(a)に示す正方形等の矩形、図6(b)に示す正六角形等、様々な形状に変更することができる。
また、中空電極32を入れ子構造になるように複数配置することもできる。図6(c)には円環状の中空電極32を2つ備えた例が示され、2つの中空電極32は何れも、その外周の形状と内周の形状(中空部32aの形状)が相似している。また、小さい側の中空電極32は、大きい側の中空電極32の中空部32aより小さく形成されている。
なお、図6(c)に示すように、中空電極32を2つとせず、3つ以上配置しても良い。また、中空電極32を複数設ける構成は、図6(a)や図6(b)に示すように、円形以外の形状の疑似指同心電極26に適用しても良い。
絶縁体30は、ガラスなどの材料から形成された一定の厚みを有する板であり、図4に示すように、疑似指同心電極26の上側(疑似指同心電極26よりもタッチパネル10に近い側)を覆うように配置されている。これにより、疑似指同心電極26の汚れや傷つき等による検査精度の低下を回避することができる。
上記の絶縁体30と、疑似指プレート22とにより、電極台(台)35が構成されている。この電極台35は、検査のためにセットされるタッチパネル10より低い位置に配置される。
続いて、本実施形態のタッチパネル検査装置20を用いたタッチパネル10の検査について説明する。
本実施形態のタッチパネル検査装置20によるタッチパネル10の検査は、当該タッチパネル10の透明電極11,12と、疑似指プレート22の疑似指同心電極26と、が静電容量結合できるように(即ち、両者が接近するように)疑似指プレート22を配置した状態で行う。具体的には、図7に示すように、タッチパネル10のタッチ領域が疑似指プレート22における疑似指同心電極26の配置領域に厚み方向で見て含まれるように、上述のタッチパネル保持部を用いて、タッチパネル10を絶縁体30の上側で保持する。なお、タッチパネル10は、図4に示すように電極台35(絶縁体30)との間に隙間を空けた状態で保持しても良いし、電極台35(絶縁体30)の上に置いた状態で保持しても良い。
制御部23は、疑似指切換スイッチ28を適宜制御することにより、所定の疑似指同心電極26を、信号源27に接続する。なお、制御部23は、疑似指切換スイッチ28を介して、疑似指同心電極26を構成する電極、即ち上述の中心電極31及び中空電極32を、それぞれ独立して信号源27に接続することもできる。信号源27に接続された疑似指同心電極26(中心電極31や中空電極32)の電位は、当該信号源27が出力する信号に応じて変化する。
疑似指同心電極26の電位が変化した場合、当該疑似指同心電極26の位置に対応した透明電極11,12においては、静電容量結合を介して電流が誘起される。従って、仮にタッチパネル10が正常であれば、電流が流れた透明電極11,12を検出することにより、電位が変化した疑似指同心電極26(信号源27に接続されている疑似指同心電極26)の位置を検出することができる。
制御部23は、電流検出部が検出した電流に基づいて、電流が流れた透明電極11,12を特定し、これに基づいて、電位が変化した疑似指同心電極26(信号源27に接続されている疑似指同心電極26)の位置を検出するように構成されている。そして、制御部23は、検出した疑似指同心電極26の位置が、スイッチ29を介して実際に信号源27に接続されている疑似指同心電極26の位置と一致しているかどうかを調べる。両者が一致していれば、制御部23は、タッチパネル10によって疑似指同心電極26の位置を正常に検出できていると判断する。このように、本実施形態の制御部23は、タッチパネル10の良否を判定する判定部としての機能も有している。
このように、本実施形態のタッチパネル検査装置20においては、「信号源27に接続された疑似指同心電極26」が、「疑似指」としてふるまう。従って、制御部23は、疑似指切換スイッチ28を適宜制御して、信号源27に接続する疑似指同心電極26を順次切り換えていくことにより、指の移動を模擬した検査を行うことができる。
次に、本実施形態のタッチパネル検査装置20における、人の指がタッチパネル10を押す力の強弱を模擬した検査について説明する。図8は、指とタッチパネル10との接触面積の変化をシミュレートした検査を、1つの疑似指同心電極26に着目して説明する模式図である。なお、図8では、中心電極31と、2つの中空電極32,32と、からなる円形の疑似指同心電極26を用いた例(図6(c)を参照)を示している。また、説明の分かり易さのために、図8では他の疑似指同心電極26の表示を省略している。
図8において、疑似指切換スイッチ28が(図4に示す制御部23によって)適宜制御され、所定の疑似指同心電極26の中心電極31だけが信号源27に接続された状態とする。次に、疑似指切換スイッチ28が切り換えられて、前記中心電極31に加えて、内側の中空電極32も信号源27に接続された状態とする。更に、疑似指切換スイッチ28が切り換えられて、疑似指同心電極26を構成する全ての電極(中心電極31及び2つの中空電極32,32)が信号源27に接続された状態とする。以上に示すように、本実施形態のタッチパネル検査装置20は、疑似指同心電極26のうち信号源27に接続される電極の数を中心側から3段階で切り換えることで、指がタッチパネル10に接触する面積の変化を模擬する。
仮に、検査対象であるタッチパネルが正常であれば、疑似指同心電極26において信号源27に繋がる電極の数が切り換わる毎に、上記の疑似指同心電極26の近傍で交差する第1透明電極11,第2透明電極12を流れる電流が、意図どおり変化するはずである。タッチパネル検査装置20の制御部23は、電流計21a,21bの検出値を調べることで、タッチパネル10が正常にタッチ圧力を検出できるか否かを判定する。
一般的に、人の指がタッチパネル10を押す力の大小に応じて、指とタッチパネル10との接触面積が変化する。これを逆にいえば、指とタッチパネル10との接触面積の変化をシミュレートすることで、指がタッチパネル10を押す力の強弱を擬似することができると考えられる。従って、本実施形態のタッチパネル検査装置20は、上記の構成とすることにより、簡素な構造で、人の指がタッチパネル10を押す力の大きさの変化をシミュレートすることができる。
続いて、上記疑似指プレート22の配置について説明する。疑似指プレート22は、検査対象であるタッチパネル10に対し、疑似指同心電極26が静電容量結合できるように平行に配置されれば良い。しかしながら、仮にタッチパネル10の上方に疑似指プレート22を配置して検査する構成とすると、タッチパネル10の上側のスペースを疑似指プレート22(疑似指同心電極26)が占有してしまい、タッチパネル10をセットしたり取り外したりする作業の邪魔になり易い。この点、本実施形態の疑似指プレート22が備える疑似指同心電極26は、タッチパネル10の下方に位置する電極台35の内部に配置されている。従って、電極台35(タッチパネル10)の上側のスペースを大きく確保することができるので、例えば、検査の効率化のためにタッチパネル10を疑似指プレート22の上に自動でセットしたり取り外したりする装置を容易に配置することができる。
続いて、本実施形態のタッチパネル検査装置20において疑似指プレート22上に配置された絶縁体30について説明する。
上述のように、当該絶縁体30は、ガラスなどの材料から作成された板状の部材である。一般的に、キャパシティの容量をC、キャパシティを構成する2つの金属部材の間の材料の誘電率をε、当該2つの金属部材の対面する部分の面積をA、当該2つの金属部材間の距離をdとすると、C=εA/dの関係が成り立つ。従って、誘電率εの低い材料を選択することにより、構成されたキャパシティの容量が小さくなる。
この点、本実施形態のタッチパネル検査装置20は、小さい誘電率εを有する絶縁体30を疑似指プレート22の上に配置することで、疑似指プレート22に設けられた疑似指同心電極26と、タッチパネル10の透明電極11,12と、の間に発生する寄生容量を小さくすることができる。従って、この寄生容量に起因して発生する誤差を抑制できるので、検査の精度を高めることができる。
以上に示すように、本実施形態のタッチパネル検査装置20は、検査対象であるタッチパネル10の表面に接近可能な複数の疑似指同心電極26を備える。それぞれの疑似指同心電極26は、中心電極31と、中空電極32と、を備える。中空電極32は、中空部32aを有し、中心電極31と中心を一致させるように配置される。中空電極32の外周の形状が中心電極31より大きく形成されている。
これにより、人の指等とタッチパネル10との接触面積が、疑似指同心電極26の中心を接触点の中心として変化するのを、簡素な構造でシミュレートすることができる。
また、本実施形態のタッチパネル検査装置20においては、中空電極32の外周の形状が中心電極31の形状と相似している。
これにより、人の指とタッチパネル10との接触領域が、その形状的な特徴を保ったまま拡大/縮小するような変化をシミュレートすることができる。
また、本実施形態のタッチパネル検査装置20においては、1つの疑似指同心電極26に、大きさの異なる2つ以上の中空電極32が設けられている。それぞれの中空電極32は、外周の形状と中空部32aの形状が相似する。複数の中空電極32のうち、小さい側の前記中空電極32が、大きい側の中空電極32の中空部32aより小さく形成されている。
これにより、複数の中空電極32を入れ子構造で同一の層に配置することができるので、簡素な構造で、人の指がタッチパネル10に触れる接触面積の多段階の変化をシミュレートすることができる。
また、本実施形態のタッチパネル検査装置20においては、疑似指同心電極26を構成する中心電極31及び中空電極32のそれぞれが、互いに独立して、所定の信号を出力する信号源27に接続可能に構成されている。
これにより、信号源27に対し、疑似指同心電極26を構成する電極のうち中心側の一部の電極が接続されている状態と、それよりも外側の電極が更に接続されている状態と、を切り換えることで、人の指とタッチパネル10との接触面積の段階的な変化をシミュレートすることができる。
また、本実施形態のタッチパネル検査装置20において、複数の疑似指同心電極26が配置された領域は、検査対象であるタッチパネル10のタッチ領域の全域に対応する部分を含んでいる。
これにより、タッチパネル検査装置20やタッチパネル10を移動させずに、検査対象のタッチパネル10の全タッチ領域を効率的に検査することができる。
また、本実施形態のタッチパネル検査装置20において、疑似指同心電極26は、検査されるタッチパネル10より低い位置に配置された電極台35に設けられている。
これにより、タッチパネル10の上側のスペースを疑似指同心電極26が占有してしまうことが避けられるので、例えば、タッチパネル10を自動でセットしたり取り外したりする装置を容易に配置することができる。
また、本実施形態のタッチパネル検査装置20において、検査対象のタッチパネル10と複数の疑似指同心電極26との間に板状の絶縁体30が設置されている。
これにより、疑似指同心電極26とタッチパネル10との間を隔てるように絶縁体30が配置されているため、疑似指同心電極26の傷つきや汚れなどを防止することができる。また、タッチパネル10の検査精度を低下させる寄生容量の発生を抑制することができる。
以上に本発明の好適な実施形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
上記実施形態のタッチパネル検査装置20では、タッチパネル10に電極信号を印加せずに、疑似指同心電極26に信号を印加することによって、当該タッチパネル10を検査している。しかしながら、この方法に限らず、タッチパネル10の透明電極11,12に信号を印加する一方で、疑似指同心電極26をグランドに接続することによる検査方法も採用することができる。この場合は、グランドに対し、疑似指同心電極26を構成する電極のうち中心側の一部の電極が接続されている状態と、それよりも外側の電極が更に接続されている状態と、を切り換えることで、人の指等とタッチパネル10との接触面積の変化をシミュレートすることができる。
本発明のタッチパネル検査装置は、図1に示すように透明電極11,12が一様な太さを有している投影型静電容量方式のタッチパネルだけではなく、菱形の投影型静電容量方式のタッチパネルを検査することもできる。また、疑似指プレート22(疑似指同心電極26)を電極台35に備える代わりに、タッチパネル10の上方に配置するレイアウトとすることもできる。図9には、菱形のタッチパネルの上方に疑似指プレート22を配置して検査する例が示されている。疑似指同心電極26は、疑似指プレート22の下面に配置されている。
図4や図9の構成において、疑似指プレート22を昇降させてタッチパネル10との距離を変化させるための図示しない昇降機構が備えられても良い。これにより、疑似指同心電極26をタッチパネル10に対して接近/離反(あるいは、接触/離間)させることができる。
図10に示すように、タッチパネル検査装置20は、タッチパネル10においてそれぞれ複数備えられる第1透明電極11及び第2透明電極12に対応するように電流計21a,21bをそれぞれ複数備え、各透明電極11,12が対応する電流計21a,21bとそれぞれ電気的に接続するように構成することもできる。この場合、制御部23は、タッチパネル10の複数の透明電極11,12に流れる電流の変化を同時に検出して検査を行うことができる。