<実施形態1>
図1から図15を参照して実施形態1を説明する。本実施形態では、液晶表示装置10の構成部品である液晶パネル11の製造過程において、ガラス基板(基板の一例)30A上に主としてSi系の薄膜を成膜する際に用いられるCVD装置(基板処理装置の一例)60(図7参照)について例示する。なお、図1から図5にはX軸、Y軸およびZ軸を示しており、各軸方向が各図面で共通した方向となるように描かれている。また、図1、図3、及び図5では、図の上側を液晶表示装置10の上側(表側)とする。
先に液晶表示装置10、及び液晶パネル11の構成について説明する。液晶表示装置10は、図1及び図2に示すように、液晶パネル11と、液晶パネル11に実装されて当該液晶パネル11を駆動する電子部品であるICチップ17と、ICチップ17に対して各種入力信号を外部から供給するコントロール基板19と、液晶パネル11と外部のコントロール基板19とを電気的に接続するフレキシブル基板18と、液晶パネル11に光を供給する外部光源であるバックライト装置14と、を備えている。また、液晶表示装置10は、相互に組み付けた液晶パネル11及びバックライト装置14を収容して保持するための表裏一体の外部部材15,16を備えており、このうち表側の外部部材15には、液晶パネル11に表示された画像を外部から視認させるための開口部15Aが設けられている。
バックライト装置14は、図1に示すように、表側に向けて開口した略箱型をなすシャーシ14Aと、シャーシ14A内に配された図示しない光源(冷陰極管、LED、有機EL等)と、シャーシ14Aの開口部を覆う形で配される図示しない光学部材と、を備えている。光学部材は、光源から出射される光を面状の光に変換する等の機能を有している。光学部材を通過して面状となった光は、液晶パネル11に入射し、液晶パネル11において画像を表示するために利用される。
液晶パネル11は、図2に示すように、全体として縦長の矩形状をなしており、その長辺方向が各図面のY軸方向と一致し、その短辺方向が各図面のX軸方向と一致している。液晶パネル11では、その大部分に画像を表示可能な表示領域A1が配され、その長辺方向における一方の端部側(図2に示す下側)に偏った位置に画像が表示されない非表示領域A2が配されている。非表示領域A2の一部には、ICチップ17及びフレキシブル基板18が異方性導電膜(不図示)を介した圧着接続によって実装されている。なお、液晶パネル11では、図1に示すように、後述するカラーフィルタ基板20よりも一回り小さな枠状の一点鎖線が表示領域A1の外形をなしており、当該一点鎖線よりも外側の領域が非表示領域A2となっている。
液晶パネル11は、図3に示すように、透光性に優れた一対のガラス製の基板20、30と、電界印加に伴って光学特性が変化する物質である液晶分子を含む液晶層11Aと、を備えている。液晶パネル11を構成する両基板20,30は、液晶層11Aの厚さ分のセルギャップを維持した状態で図示しないシール材によって貼り合わされている。両基板20,30のうち、表側(正面側)の基板20がカラーフィルタ基板20とされ、裏側(背面側)の基板30がアレイ基板30とされる。両基板20,30の内面側には、図3に示すように、液晶層11Aに含まれる液晶分子を配向させるための配向膜11B,11Cがそれぞれ形成されている。また、両基板20,30を構成するガラス基板20A,30Aの外面側には、それぞれ偏光板11D,11Eが貼り付けられている。
カラーフィルタ基板20は、図2に示すように、短辺寸法がアレイ基板30とほぼ同等であるものの、長辺寸法がアレイ基板30よりも小さく、アレイ基板30に対して長辺方向についての一方の端部(図2に示す上側)を揃えた状態で貼り合わされている。従って、アレイ基板30のうち長辺方向についての他方の端部(図1に示す下側)は、所定範囲に亘ってカラーフィルタ基板20が重なり合うことがなく、表裏両板面が外部に露出した状態とされており、ここにICチップ17及びフレキシブル基板18の実装領域が確保されている。アレイ基板30を構成するガラス基板30Aは、その主要部分にカラーフィルタ基板20及び偏光板11Eが貼り合わされており、ICチップ17及びフレキシブル基板18の実装領域が確保された部分がカラーフィルタ基板20及び偏光板11Eと非重畳とされている。
続いてアレイ基板30及びカラーフィルタ基板20における表示領域A1内の構成について説明する。アレイ基板30を構成するガラス基板30Aの内面側(液晶層11A側)には、図3及び図4に示すように、3つの電極32A〜32Cを有するスイッチング素子であるTFT(Thin Film Transistor)32及びITO(Indium Tin Oxide)等の透明導電膜からなる画素電極33が多数個並んで設けられている。これらTFT32及び画素電極33の周りには、図4に示すように、格子状をなすゲート配線34及びソース配線35が取り囲むようにして配設されている。ゲート配線34とソース配線35はそれぞれTFT32のゲート電極32Aとソース電極32Bとに接続され、画素電極33がドレイン配線(不図示)を介してTFT32のドレイン電極32Cに接続されている。
また、アレイ基板30には、ゲート配線34に並行するとともに画素電極33に対して平面に視て重畳する容量配線36が設けられている。容量配線36は、Y軸方向についてゲート配線34と交互に配されている。ゲート配線34がY軸方向に隣り合う画素電極33の間に配されているのに対し、容量配線36は、各画素電極33におけるY軸方向のほぼ中央部を横切る位置に配されている。このアレイ基板30の端部には、ゲート配線34及び容量配線36から引き回された端子部及びソース配線35から引き回された端子部が設けられており、これらの各端子部には、図1に示すコントロール基板19から各信号または基準電位が入力されるようになっており、それによりTFT32の駆動が制御される。
一方、カラーフィルタ基板20を構成するガラス基板20Aの内面側(液晶層11A側)には、図3に示すように、アレイ基板30の各画素電極33と平面に視て重畳する位置に多数個のカラーフィルタが並んで設けられている。カラーフィルタは、R(赤色),G(緑色),B(青色)を呈する各着色部22がX軸方向に沿って交互に並ぶ配置とされる。カラーフィルタを構成する各着色部22間には、混色を防ぐための略格子状の遮光部(ブラックマトリクス)23が形成されている。遮光部23は、アレイ基板30側のゲート配線34、ソース配線35、及び容量配線36に対して平面に視て重畳する配置とされる。また、各着色部22及び遮光部23の表面には、アレイ基板30側の画素電極33と対向する対向電極24が設けられている。液晶パネル11では、R(赤色),G(緑色),B(青色)の3色の着色部22及びそれらと対向する3つの画素電極33の組によって表示単位である1つの表示画素が構成されている。
ここで、アレイ基板30に設けられたスイッチング素子であるTFT32について詳しく説明する。TFT32は、図4及び図5に示すように、アレイ基板30上に複数の膜を積層した構成とされている。具体的には、図5に示すように、下層側(ガラス基板30A側)から順に、ゲート配線34に接続されたゲート電極32A、ゲート絶縁膜37、半導体膜38、ソース配線35に接続されたソース電極32B及び画素電極33に接続されたドレイン電極32C、層間絶縁膜39、保護膜40が積層されている。
ゲート電極32Aは、ゲート配線34と同一材料からなるとともにゲート配線34と同一工程にてアレイ基板30上にパターニングされており、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、タンデル(Ta)、チタン(Ti)、銅(Cu)等の金属膜単体又はこれらの金属窒化物との積層膜で形成することができる。ゲート絶縁膜37は、例えばシリコン酸化膜(SiOx)からなり、ゲート電極32Aと半導体膜38との間を絶縁する。半導体膜38は、例えばアモルファスシリコン(a−Si)又は透明なアモルファス酸化物半導体(InGaZnOx)からなり、一端側がドレイン電極32Cに、他端側がソース電極32Bにそれぞれ接続されることで、相互間の導通を図るチャネル領域として機能する。
ソース電極32B及びドレイン電極32Cは、ソース配線35と同一材料を含むとともにソース配線35と同一工程にてアレイ基板30上にパターニングされている。ソース電極32B及びドレイン電極32Cは、下層側(半導体膜38側)の第1導電膜32B1,32C1と上層側(層間絶縁膜39側)の第2導電膜32B2,32C2とを積層した構成とされる。下層側の第1導電膜32B1,32C1は、リン(P)等のn型不純物を高濃度にドーピングしたアモルファスシリコン(n+Si)からなり、オーミックコンタクト層として機能する。上層側の第2導電膜32B2,32C2は、異なる金属膜を積層してなる2層構造とされており、そのうち下層側の金属膜がチタン(Ti)からなり、上層側の金属膜がアルミニウム(Al)からなる。
上記したソース電極32B及びドレイン電極32Cは、所定の間隔(開口領域)を挟んで対向状に配されているため、相互が直接的には電気的に接続されていない。しかし、ソース電極32B及びドレイン電極32Cは、その下層側の半導体膜38を介して間接的に電気的に接続されており、この半導体膜38における両電極32B,32C間のブリッジ部分が、ドレイン電流が流れるチャネル領域として機能する。
層間絶縁膜39は、例えばシリコン酸化膜(SiOx)からなり、上記したゲート絶縁膜37と同一材料とされる。保護膜40は、有機材料であるアクリル樹脂(例えばポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA))やポリイミド樹脂からなる。従って、この保護膜40は、他の無機材料からなるゲート絶縁膜37、層間絶縁膜39に比べて膜厚が厚いものとされるとともに、平坦化膜として機能する。なお、TFT32における各絶縁膜(ゲート絶縁膜37、層間絶縁膜39及び保護膜40)は、それぞれアレイ基板30においてTFT32の形成領域以外の領域を含みつつ概ね全域に亘って均一な膜厚で形成されている。
上記したTFT32、画素電極33、及び各配線34,35,36等の薄膜をアレイ基板30上に形成するに際しては、既知のフォトリソグラフィ法が用いられ、そのために各種製造装置50〜56が用いられている。具体的には、製造装置50〜56としては、図6に示すように、洗浄装置50、成膜装置51、レジスト塗布装置52、露光装置53、現像装置54、エッチング装置55、及びレジスト剥離装置56が用いられる。そして、アレイ基板30を構成するガラス基板30Aには、洗浄装置50による洗浄工程、成膜装置51による成膜工程、レジスト塗布装置52によるレジスト塗布工程、露光装置53による露光工程、現像装置54による現像工程、エッチング装置55によるエッチング工程、レジスト剥離装置56によるレジスト剥離工程を経ることで、目的の薄膜が所定のパターンで形成され、この手順を各薄膜について繰り返し行うことで、各薄膜が順に積層されて形成される。
具体的には、洗浄工程では、洗浄装置50により、各薄膜を形成する前のガラス基板30A上に洗浄液を供給することでガラス基板30Aを洗浄し、ガラス基板30A上の塵や埃等を除去する。成膜工程では、成膜装置51により、形成する薄膜の材料をガラス基板30Aの板面に対して均一な膜厚となるように成膜する。この成膜装置51としては、具体的には、CVD装置、スパッタリング装置、真空蒸着装置等が用いられる。レジスト塗布工程では、レジスト塗布装置52により、成膜装置51によって成膜された材料膜に対してフォトレジストを均一な膜厚となるように塗布して積層形成する。このとき、フォトレジストとしては、ポジ型、またはネガ型のものが用いられる。露光工程では、露光装置53により、レジスト塗布装置52により塗布されたフォトレジストに対して、所定のパターンを有するフォトマスクを介してUV光等を照射することで、フォトマスクのパターンに応じた範囲を露光する。
現像工程では、現像装置54により、ガラス基板30Aの板面上に現像液を供給することで、フォトレジストを現像し、露光領域又は非露光領域のいずれかを除去する。エッチング工程では、エッチング装置55により、材料膜のうち残されたフォトレジストによって覆われていない領域をエッチングして除去することで、材料膜をパターニングする。エッチング装置55としては、具体的には、エッチングガスやイオン、ラジカルによって材料膜をエッチングするドライエッチング装置やエッチング液によって材料膜をエッチングするウェットエッチング装置等が用いられる。このうちウェットエッチング装置では、ガラス基板30Aの板面上にエッチング液を供給することで、材料膜をエッチングする。レジスト剥離工程では、レジスト剥離装置56により、ガラス基板30Aの板面上にレジスト剥離液を供給することで、残されたフォトレジストを除去する。
さて、上述した成膜工程で用いられる各種成膜装置51のうち、ガラス基板30A上にゲート絶縁膜37や層間絶縁膜39等のSi系の薄膜を形成するためには、CVD装置60が用いられる。以下では、このCVD装置60の構成について詳しく説明する。CVD装置60は、図7に示すように、ガラス基板30Aを収容して当該ガラス基板30Aに対して化学気相蒸着を施す複数の処理室(処理部の一例)62と、処理室62に隣接して設けられ、減圧部72を有する複数のロードロック室64と、各処理室62内を加熱するヒータ室66と、各処理室62と各ロードロック室64とヒータ室66とに囲まれた形で設けられ、内部にロボットアーム(受け渡し部の一例)68が配されたロボット移載室69と、を備えている。なお、図7では、説明のため、ロボット移載室69について、内部のロボットアーム68を露出させた形で示している。
上述したCVD装置60の構成のうち、ロードロック室64について説明する。各ロードロック室64は、処理室62を大気に開放しないために設けられており、ロードロック室64と処理室62との間は図示しないゲートバルブで仕切られている。ロードロック室64内には、図8に示すように、処理対象物であるガラス基板30Aが載置されるステージ(受け渡し部の一例)70が設けられている。ステージ70は、上記ゲートバルブが開かれた状態で、ロードロック室64と処理室62との間を移動可能とされている。また、ロードロック室64の外部には、図8に示すように、減圧部72と、排気配管74と、圧力調整弁76とが設けられている。減圧部72は、排気配管74を介してロードロック室64に接続されており、ロードロック室64内の空気を吸引する真空ポンプを有している。圧力調整弁76は、排気配管74の途中に設けられており、その開度が電気的に制御されることで、ロードロック室64内の圧力を微調整できるものとされる。
上述したステージ70には、図8に示すように、ステージ70上においてガラス基板30Aを昇降させるための9本の昇降ピン(支持部の一例)80が内蔵されている。ステージ70には、各昇降ピン80を収容する収容孔70A(図9参照)がそれぞれ形成されている。各収容孔70Aは、ステージ70の上面70Bに開口する形で形成されており、昇降ピン80をステージ70の上面70Bから引っ込んだ状態(待機状態)に待機させることができる。各昇降ピン80は、図示しないモータに対して機械的に接続されることで、鉛直方向(Z軸方向)に沿って上下に進退可能とされており、上記した待機位置とステージ70上に突き出した所定の高さ位置(受け渡し位置)との間を移動することができる。
ステージ70は、詳しくは、図10に示すように、平面視においてガラス基板30Aに倣って横長な方形状をなしており、ガラス基板30Aが載置される上面70Bの面内に9本の昇降ピン80が点在して設けられている。具体的には、昇降ピン80は、ステージ70においてX軸方向及びY軸方向に沿って3本ずつ並んで配されており、ガラス基板30Aにおける四隅の角部と、中心部と、長辺方向についての2つの中央部と、短辺方向についての2つの中央部との計9箇所を、鉛直方向の下側から支持することが可能とされている。
昇降ピン80は、図9及び図11に示すように、シャフト部80Aとシャフト部80Aに対して着脱可能に取り付けられるヘッド部80Bとからなり、全体として円柱状をなしている。シャフト部80Aは、アルミニウム等の金属材料又はハイドログラファイト等の無機材料からなっている。ヘッド部80Bは、合成樹脂、詳しくはビフェニルテトラカルボン酸二無水物を含むポリイミド樹脂からなっている。上記した収容孔70Aは、昇降ピン80の外周面との間に所定の隙間(例えば0.5mm)を空けた状態で昇降ピン80を収容できる大きさとされている。昇降ピン80におけるヘッド部80Bの先端部、即ちガラス基板30Aの板面と対向する部位には、複数のピン側突起(突起の一例)82が設けられている。これらのピン側突起82は、その先端部(先細り状とされた部位)がガラス基板30A側(上側)に向けられた正四角錐状となっており、隣り合うピン側突起82同士が隙間無く隣接した形でマトリクス状に配されている。
また、昇降ピン80のヘッド部80Bに設けられた複数のピン側突起82の大きさは、それぞれ等しいものとなっている。このため、図11に示すように、複数のピン側突起82の各々は、その先端が同一の平面P1上に位置するものとされる。従って、ステージ70の各収容孔70Aに収容された各昇降ピン80が上昇すると、各昇降ピン80における複数のピン側突起82の先端がガラス基板30Aにおける下側の板面に対してそれぞれ接触され、ガラス基板30Aが安定的に支持された状態でステージ70上に持ち上げられるようになっている。このとき、各昇降ピン80における複数のピン側突起82の先端が全てガラス基板30Aと接触されるため、仮に各昇降ピンにおける一部のピン側突起の先端のみがガラス基板30Aと接触される構成と比べると、各昇降ピン80とガラス基板30Aとの間に働く摩擦力が大きく(グリップ力が大きく)、各昇降ピン80に支持されたガラス基板30Aの板面が各昇降ピン80上で滑り難いものとされる。
次に、ロボットアーム68の構成について説明する。ロボットアーム68は、図12に示すように、主部68Aと、主部68Aの両端から二又状に分岐して伸びる一対の分岐部68Bとを備えている。ロボットアーム68の一対の分岐部68Bは、いずれも平板状とされ、両板面を上下方向に向けた姿勢で、所定の間隔を空けて略平行となるように設けられている。ロボットアーム68は、ロボット移載室69に設けられた図示しない駆動機構によって、その主部68Aが上下方向及び平面方向に駆動可能とされるともに上下方向に伸びる軸周りに360°回転可能とされている。また、一対の分岐部68Bには、分岐部68B上においてガラス基板30Aの板面を支持するための支持パッド(支持部の一例)90が点在して設けられている。詳しくは、各分岐部68Bには、支持パッド90がそれぞれ5枚ずつ設けられており、一対の分岐部68Bの間がガラス基板30Aの板面によって架け渡される形でガラス基板30Aが支持されるようになっている。従って、ロボットアーム68では、計10枚の支持パッド90によって、ガラス基板30Aが支持される。なお、ロボットアーム68では、主部68Aから一対の分岐部68Bがそれぞれ伸びる側(図12における左下側)がロボットアーム68の正面側とされる。
各支持パッド90は、図13に示すように、平面視において長方形状をなす平板状とされており、昇降ピン80のヘッド部80Bと同様に、合成樹脂、詳しくはビフェニルテトラカルボン酸二無水物を含むポリイミド樹脂からなっている。各支持パッド90の四隅には、取付孔90Aがそれぞれ設けられており、これらの取付孔90Aにネジ等が挿通されて各分岐部68Bの下側に配される対向パッド91(図15参照)との間で各分岐部68Bを挟み込むことで、各支持パッド90が各分岐部68Bに取り付けられるようになっている。また、各支持パッド90には、6つのパッド側突起(突起の一例)92が設けられている。これらのパッド側突起92は、ピン側突起82と同様に、その先端部(先細り状とされた部位)が支持対象とされるガラス基板30A側(上側)に向けられた正四角錐状となっており、隣り合うパッド側突起92との間に所定の間隔を空けて直線状に配されている(図13及び図14参照)。
各支持パッド90に設けられた6つのパッド側突起92の大きさは、それぞれ等しいものとなっている。このため、6つのパッド側突起92の各々は、その先端が同一の平面上に位置するものとされる。従って、ロボットアーム68によってガラス基板30Aが支持される際、各支持パッド90における6つのパッド側突起92の先端がガラス基板30Aにおける下側の板面に対してそれぞれ接触され、ガラス基板30Aがロボットアーム68に安定的に支持されるようになっている(図15参照)。このとき、各支持パッド90における各パッド側突起92の先端が全てガラス基板30Aと接触されるため、仮に各支持パッドにおける一部のパッド側突起の先端のみがガラス基板30Aと接触される構成と比べると、各支持パッド90とガラス基板30Aとの間に働く摩擦力が大きく(グリップ力が大きく)、各支持パッド90に支持されたガラス基板30Aの板面が各支持パッド90上で滑り難いものとされる。
次に、上記のような構成とされたCVD装置60におけるガラス基板30Aの受け渡し態様について説明する。CVD装置60において、ガラス基板30A上に化学気相蒸着を施すためにガラス基板30Aを各処理室62内に収容する際には、まず、上昇された状態のロボットアーム68にガラス基板30Aを支持する。そして、ガラス基板30Aが収容される処理室62と隣接するロードロック室64側にロボットアーム68の正面側が向けられるように、ロボットアーム68を回転する。次に、上述したゲートバルブが閉ざされた状態で、ロボットアーム68を当該ロードロック室64内に搬入し、ロボットアームを下降させることで、受け渡し位置までせり上がった各昇降ピン80上にガラス基板30Aを受け渡す。このとき、ロボットアーム68の各支持パッド90に設けられた各パッド側突起92の先端がガラス基板30Aから剥離する。このため、仮にロボットアームの各支持パッドに上記パッド側突起が設けられておらず、各支持パッドにおけるガラス基板30A側に向けられる面が平坦面状や半球面状等とされた構成と比べて、本実施形態では、ガラス基板30Aを各昇降ピン80上に受け渡す際に、各支持パッド90においてガラス基板30Aから剥離する面積が小さく、ガラス基板30Aに剥離帯電が発生し難いものとされる。
ガラス基板30Aを各昇降ピン80上に受け渡すと、ロボットアーム68をロードロック室64内から引き戻し、次に、昇降ピン80を下降させて待機位置に至らせることで、ガラス基板30Aをステージ70上に載置することができる。その後、ロードロック室64を閉じ、ロードロック室64内を真空状態とした後、ゲートバルブを開いてステージ70を移動させることで、ロードロック室64内から処理室62内へとガラス基板30Aを搬送する。処理室62内でガラス基板30Aに対する処理が終了すると、上記と逆の手順で各昇降ピン80上に支持されたガラス基板30Aをロボットアーム68へと受け渡す。このとき、各昇降ピン80のヘッド部80Bに設けられたピン側突起82の先端がガラス基板30Aから剥離する。このため、仮に各昇降ピンのヘッド部に上記ピン側突起が設けられておらず、各昇降ピンのヘッド部におけるガラス基板側に向けられる面が平面状や半球面状とされた構成と比べて、本実施形態では、ガラス基板30Aをロボットアーム68へと受け渡す際に、各昇降ピン80のヘッド部80Bにおいてガラス基板30Aから剥離する面積が小さく、ガラス基板30Aに剥離帯電が発生し難いものとされる。その結果、ガラス基板30Aの剥離帯電に起因してガラス基板30A上の各種薄膜が静電破壊されることが防止ないし抑制されている。
以上説明したように本実施形態のCVD装置60では、昇降ピン80及び支持パッド90において、ガラス基板30Aとの対向部位に設けられたピン側突起82及びパッド側突起92の先端のみがガラス基板30Aの板面と接触する構成とされる。このため、例えば先端が半球面状とされた従来の支持ピンや支持パッド等と比べて、ガラス基板30Aと昇降ピン80との間の接触面積、及びガラス基板30Aと支持パッド90との間の接触面積、をそれぞれ大幅に小さくすることができる。その結果、昇降ピン80からガラス基板30Aを剥離する際のガラス基板30Aの帯電量、及び支持パッド90からガラス基板30Aを剥離する際のガラス基板30Aの帯電量をそれぞれ小さくすることができ、ガラス基板30Aの剥離帯電を防止ないし抑制することができる。
さらに本実施形態のCVD装置60では、各ピン側突起82の先端が同一平面上に位置するものとされるとともに、各パッド側突起92の先端が同一平面上に位置するものとされる。このため、各ピン側突起や各パッド側突起が不規則に配されてそれらの先端が揃っていない構成と比べて、ガラス基板30Aの板面がより多くの箇所で各ピン側突起82又は各パッド側突起92と接触することとなる。その結果、ガラス基板30Aとピン側突起82との間、及びガラス基板30Aとパッド側突起92との間でそれぞれ良好なグリップ力を確保することができ、各昇降ピン80によって支持されたガラス基板30A及び各支持パッド90によって支持されたガラス基板30Aが振動等によって位置ずれすることを防止ないし抑制することができる。
また、本実施形態では、各ピン側突起82及び各パッド側突起92がいずれも四角錐状とされている。このような構成とされていることで、各ピン側突起82及び各パッド側突起92の先端が先細り状となるため、各ピン側突起82及び各パッド側突起92が例えば柱状とされた構成と比べて各ピン側突起82の先端とガラス基板30Aとの間の接触面積、及び各パッド側突起92の先端とガラス基板30Aとの間の接触面積をそれぞれ小さくすることができる。このため、ガラス基板30Aの剥離帯電を一層防止ないし抑制することができる。
ここで、四角錐状の突起は他の錐状の突起と比べて簡単な加工で形成することができる。本実施形態では、各ピン側突起82及び各パッド側突起92がいずれも四角錐状とされていることで、各ピン側突起82が設けられた昇降ピン80、及び各パッド側突起92が設けられた支持パッド90をそれぞれ製造し易いものとすることができる。
また、本実施形態では、隣り合うピン側突起82同士が隙間無く隣接した形でマトリクス状に配されており、さらに、隣り合うパッド側突起92同士が間に所定の間隔を空けて直線状に配されている。このため、ガラス基板30Aと各ピン側突起82との間に働くグリップ力、及びガラス基板30Aと各パッド側突起92との間に働くグリップ力がそれぞれガラス基板30Aの板面において偏ることがなく、ガラス基板30Aの板面に均一にグリップ力が働く。このため、昇降ピン80や支持パッド90によって支持されたガラス基板30Aが振動等によって位置ずれすることを一層防止ないし抑制することができる。
また、本実施形態では、各ピン側突起82及び各パッド側突起92がいずれもビフェニルテトラカルボン酸二無水物を含むポリイミド樹脂で形成されている。このような構成とされていることで、仮に各ピン側突起や各パッド側突起がこのようなポリイミド樹脂以外の材料で形成されている場合と比べて、昇降ピン80や支持パッド90からガラス基板30Aを剥離する際のガラス基板30Aの帯電量を小さくすることができる。
さらに、上記のように各ピン側突起82及び各パッド側突起92がいずれもポリイミド樹脂等の樹脂材料で形成されていることで、例えば各ピン側突起及び各パッド側突起がいずれもセラミック等の金属材料で形成されている場合と比べて、各ピン側突起82及び各パッド側突起92に支持されるガラス基板30Aに傷が付き難いものとなっている。
<実施形態2>
図16から図19を参照して実施形態2を説明する。実施形態2は、液晶パネル11の製造過程において、ガラス基板30A上に成膜された各種薄膜にパターンを転写する際に用いられるドライエッチング装置(基板処理装置の一例)160(図16参照)について例示する。このドライエッチング装置160は、図16に示すように、ガラス基板30Aを収容して当該ガラス基板30Aに対してドライエッチング処理を施す4つのチャンバー室(処理部の一例)162と、減圧部を有する1つのロードロック室164と、各チャンバー室162とロードロック室164とに囲まれた形で設けられ、内部にロボットアーム168が配されたロボット移載室169と、を備えている。なお、図16では、説明のため、ロボット移載室169について、内部のロボットアーム168を露出させた形で示している。また、本実施形態のロボットアーム168は、実施形態1で説明したロボットアーム68と外観が多少異なるものの、その構成についてはほぼ同様であるため、構造、作用、及び効果の説明は省略する。
各チャンバー室162内には、図17に示すように、処理対象物であるガラス基板30Aが配されるステージ170が設けられている。このステージ170は、平面視において長方形状となっており、その四隅側にそれぞれ設けられた4つの支持アーム(受け渡し部の一例)172によって、ステージ170上においてガラス基板30Aが支持されるようになっている。各支持アーム172は、細長い軸状をなしており、その一端部がステージ170外に設けられたアーム固定部174に対して上下方向に伸びる軸周りに回転可能に軸支されている。各チャンバー室162では、ステージ170上にガラス基板30Aが配される場合には、図17に示すように各支持アーム172がステージ170上に位置するように回転駆動され、ステージ170上にガラス基板30Aが配されない場合には、各支持アーム172がステージ170上に位置しないように回転駆動される。
また、各チャンバー室162内に設けられた各支持アーム172には、ステージ170上においてガラス基板30Aを支持するための支持ピン(支持部の一例)180が、所定の間隔を空けて2箇所に点在して設けられている。従って、ガラス基板30Aは、各チャンバー室162内において、その四隅がそれぞれ4つの支持アーム172上に位置した状態で、各支持アーム172について2箇所ずつ、計8箇所で支持されるようになっている。各支持ピン180は、図18及び図19に示すように、支持アーム172に対して着脱可能に取り付けられるシャフト部180Aと支持アーム172の上側に露出するヘッド部180Bとからなり、シャフト部180Aについては円柱状をなし、ヘッド部180Bについてはシャフト部180Aよりも径大な円板状をなしている。各支持ピン180は、少なくともヘッド部180Bが、合成樹脂、詳しくはビフェニルテトラカルボン酸二無水物を含むポリイミド樹脂からなっている。また、各支持ピン180のシャフト部180Aには、シャフト部180Aを当該シャフト部180Aの柱軸方向と直交する方向に貫通する貫通孔180A1が設けられている。各支持ピン180は、そのシャフト部180Aが支持アーム172に埋め込まれた状態で貫通孔180A1にネジ等が挿通されることで、支持アーム172に対して取り付けられている。
支持ピン180におけるヘッド部180Bの先端部、即ちガラス基板30Aの板面と対向する部位には、図18及び図19に示すように、複数のピン側突起(突起の一例)182が設けられている。これらのピン側突起182は、その先端部(先細り状とされた部位)がガラス基板30A側(上側)に向けられた正四角錐状となっており、隣り合うピン側突起182同士が隙間無く隣接した形でマトリクス状に配されている。また、支持ピン180のヘッド部180Bに設けられた複数のピン側突起182の大きさは、それぞれ等しいものとなっており、これにより、複数のピン側突起182の各々は、その先端が同一平面上に位置するものとされる。従って、ガラス基板の4隅が各支持アーム状に位置した状態で、各支持ピン180における複数のピン側突起182の先端がガラス基板30Aにおける下側の板面に対してそれぞれ接触され、チャンバー室162内でガラス基板30Aが安定的に支持されるようになっている。このとき、各支持ピン180における複数のピン側突起182の先端が全てガラス基板30Aと接触されるため、仮に各支持ピンにおける一部のピン側突起の先端のみがガラス基板30Aと接触される構成と比べると、各支持ピン180とガラス基板30Aとの間に働く摩擦力が大きく(グリップ力が大きく)、各支持ピン180に支持されたガラス基板30Aの板面が各支持ピン180上で滑り難いものとされる。
以上説明したように本実施形態のドライエッチング装置160では、支持アーム172に設けられた支持ピン180が上記のような構成とされていることで、実施形態1のCVD装置60における昇降ピン80と同様に、ガラス基板30Aと支持ピン180との間の接触面積を大幅に小さくすることができる。このため、支持ピン180からガラス基板30Aを剥離する際のガラス基板30Aの帯電量を小さくすることができ、ガラス基板30Aの剥離帯電を防止ないし抑制することができる。さらに、支持ピン180に設けられた各ピン側突起182の先端が同一平面上に位置することで、ガラス基板30Aとピン側突起182との間で良好なグリップ力を確保することができ、各支持ピン180によって支持されたガラス基板30Aが振動等によって位置ずれすることを防止ないし抑制することができる。
<実施形態3>
図20から図23を参照して実施形態3を説明する。実施形態3は、液晶パネル11の製造過程において、ガラス基板30A上に主としてゲート電極32A等の金属膜を成膜する際に用いられるスパッタリング装置(基板処理装置の一例)260(図20参照)について例示する。このスパッタリング装置260は、図20に示すように、ガラス基板30Aを収容して当該ガラス基板30Aに対してドライエッチング処理を施すスパッタリング処理を施すための3つのスパッタ室262と、スパッタリング処理前のローダーとスパッタリング処理後のアンローダーを行うためのローダー兼アンローダー部266と、各スパッタ室262とローダー兼アンローダー部266との間でガラス基板を搬送するための2つの搬送室264と、各スパッタ室262と各搬送室264とに囲まれた形で設けられ、内部にロボットアーム(受け渡し部の一例)268が配されたロボット移載室269と、を備えている。なお、図20では、説明のため、ロボット移載室269について、内部のロボットアーム268を露出させた形で示している。
上述したスパッタリング装置260のうち、ロボット移載室269に設けられたロボットアーム268の構成について説明する。このロボットアーム268は、その外観が実施形態1で説明したロボットアーム68と外観が多少異なるものの、その主要な構成及び駆動態様についてはほぼ同様となっている。即ち、ロボットアーム268は、図21に示すように、主部268Aと、主部268Aの両端から二又状に分岐して伸びる一対の分岐部68Bとを備えている。ロボットアーム268の一対の分岐部268Bは、いずれも平板状とされ、両板面を上下方向に向けた姿勢で、所定の間隔を空けて略平行となるように設けられている。一対の分岐部268Bには、分岐部268B上においてガラス基板30Aの板面を支持するための支持パッド(支持部の一例)290が点在して設けられている。詳しくは、各分岐部268Bには、図21に示すように、並列して配された一対の支持パッド290が所定の間隔を空けて7組設けられており、一対の分岐部268Bの間がガラス基板30Aの板面によって架け渡される形でガラス基板30Aが支持されるようになっている。従って、ロボットアーム268では、計28枚の支持パッド290によって、ガラス基板30Aが支持される。
各支持パッド290は、図22に示すように、円板状とされており、合成樹脂、詳しくはビフェニルテトラカルボン酸二無水物を含むポリイミド樹脂からなっている。支持パッド290の中央には取付孔290Aが設けられており、この取付孔290Aにネジ等が挿通されてロボットアーム268の分岐部268Bにネジ留めされることで、各支持パッド290が各分岐部268Bに取り付けられるようになっている。また、各支持パッド290には、図22に示すように、複数のパッド側突起(突起の一例)292が設けられている。これらのパッド側突起292は、その先端部(先細り状とされた部位)がガラス基板30A側(上側)に向けられた正四角錐状となっており、隣り合うパッド側突起292同士が隙間無く隣接した形でマトリクス状に配されている。また、各支持パッド290に設けられた複数のパッド側突起292の大きさは、それぞれ等しいものとなっており、これにより、複数のパッド側突起292の各々は、その先端が同一平面上に位置するものとされる。このため、実施形態1で説明したロボットアーム68の支持パッド90と同様に、各支持パッド290に支持されたガラス基板30Aの板面が各支持パッド290上で滑り難いものとなっている。
また、本実施形態のスパッタリング装置260において、各スパッタ室262内には、スパッタ室262内においてガラス基板30Aを支持するための複数の昇降ピン280が設けられている。この昇降ピン280は、実施形態1で説明した昇降ピン80とほぼ同様の構成とされており、図23に示すように、シャフト部280Aとシャフト部280Aに対して着脱可能に取り付けられるヘッド部280Bとからなり、全体として円柱状をなしている。また、ヘッド部280Bはシャフト部280Aよりも径小とされている。昇降ピン280におけるヘッド部280Bの先端部、即ちガラス基板30Aの板面と対向する部位には、複数のピン側突起(突起の一例)282が設けられている。これらのピン側突起282は、その先端部(先細り状とされた部位)がガラス基板30A側(上側)に向けられた正四角錐状となっており、隣り合うピン側突起282同士が隙間無く隣接した形でマトリクス状に配されている。
また、昇降ピン280のヘッド部280Bに設けられた複数のピン側突起282の大きさは、それぞれ等しいものとなっている。このため、複数のピン側突起282の各々は、その先端が同一平面上に位置するものとされる。従って、スパッタ室262内において各昇降ピン280が上昇すると、各昇降ピン280における複数のピン側突起282の先端がガラス基板30Aにおける下側の板面に対してそれぞれ接触され、ガラス基板30Aが安定的に支持された状態で持ち上げられるようになっている。このため、実施形態1で説明した昇降ピン80と同様に、各昇降ピン280に支持されたガラス基板30Aの板面が各昇降ピン280上で滑り難いものとなっている。
以上説明したように本実施形態のスパッタリング装置260では、ロボットアーム268に設けられた支持パッド290、及び各スパッタ室262内に設けられた昇降ピン280がそれぞれ上記のような構成とされていることで、実施形態1のCVD装置60における昇降ピン80や支持パッド90と同様に、ガラス基板30Aと昇降ピン280との間の接触面積、及びガラス基板30Aと支持パッド290との間の接触面積をそれぞれ大幅に小さくすることができる。このため、昇降ピン280からガラス基板30Aを剥離する際のガラス基板30Aの帯電量、及び支持パッド290からガラス基板30Aを剥離する際のガラス基板30Aの帯電量をそれぞれ小さくすることができ、ガラス基板30Aの剥離帯電を防止ないし抑制することができる。
さらに本実施形態では、各ピン側突起282の先端が同一平面上に位置するものとされるとともに、各パッド側突起292の先端が同一平面上に位置するものとされる。このため、ガラス基板30Aとピン側突起282との間、及びガラス基板30Aとパッド側突起292との間でそれぞれ良好なグリップ力を確保することができ、各昇降ピン280によって支持されたガラス基板30A及び各支持パッド290によって支持されたガラス基板30Aが振動等によって位置ずれすることを防止ないし抑制することができる。
上記の各実施形態の変形例を以下に列挙する。
(1)上記の各実施形態では、CVD装置、ドライエッチング装置、スパッタリング装置が備える昇降ピン、支持パッド、及び支持ピンについて例示したが、これらの装置以外の装置が備える昇降ピン、支持パッド、及び支持ピンに本発明の突起を適用してもよい。また、昇降ピン、支持パッド、及び支持ピンに限定されず、基板を支持するための他の部材に本発明の突起を適用してもよい。
(2)上記の各実施形態では、ピン側突起及びパッド側突起がそれぞれ正四角錐状とされた構成を例示したが、突起とされていればよく、正四角錐状に限定されない。
(3)上記の各実施形態では、昇降ピンや支持パッドによって支持される基板としてガラス基板を例示したが、基板の構成、材質については限定されない。
(4)上記の各実施形態では、隣り合うピン側突起同士及び隣り合うパッド側突起同士が等しい間隔で設けられた構成を例示したが、隣り合う突起同士の間隔については限定されず、隣り合う突起同士が不等な間隔で設けられていてもよい。
(5)上記の各実施形態では、ピン側突起及びパッド側突起がいずれもビフェニルテトラカルボン酸二無水物を含むポリイミド樹脂で形成されている例を示したが、突起の材質については限定されない。
(6)上記の各実施形態では、処理部の一例として、処理室、チャンバー室、及びスパッタ室をそれぞれ例示したが、基板に対して処理が施されるのは室内に限定されない。
以上、本発明の各実施形態について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
(実施例)
次に、実施例によって本発明を具体的に説明する。実施例では、まず、スパッタリング装置のロボットアームに設けられた支持パッドについて、実施形態3で例示した支持パッドと従来の支持パッドとの交換前後で、ガラス基板上に成膜された各種薄膜の剥離帯電(ガラス基板を支持パッドから剥離する際のガラス基板の帯電)に起因する静電破壊を検出した。なお、図24では、ESD関連不良(検査を行った総個体数に対する静電破壊による不良品が発生した個体数)を百分率(%)で示しており、「交換前」の欄が従来の支持パッドによる検出結果を示している。また、従来の支持パッドについては、ガラス基板との接触部が平坦面とされた円板状をなし、フッ素樹脂からなる支持パッドを用いた。
図24に示すように、支持パッドの交換前後におけるESD関連不良の検出結果については、支持パッドの交換前後で0.49%の減少が見られた。従って、実施形態3の支持パッドを適用することにより、従来の支持パッドを適用した場合と比べて、ガラス基板との接触面積が小さくなり、ガラス基板の剥離帯電を防止ないし抑制できることが確認できた。
次に、CVD装置のロボットアームに設けられた支持パッドについて、材質及び形状が異なる3種類の支持パッドをそれぞれ用いた場合の、ガラス基板との接触面積に対する発生電荷量を比較評価した。この評価で用いた3種類の支持パッドは、ガラス基板との接触部が平坦面とされた円板状をなし、フッ素樹脂からなる支持パッド(図25に示す「従来の支持パッド」)と、この従来の支持パッドと同一形状とされ、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を含むポリイミド樹脂からなる支持パッド(図25に示す「支持パッドA」)と、実施形態1で例示した支持パッド(図25に示す「支持パッドB」)である。
この比較評価試験の評価方法について簡単に説明する。この比較評価では、0.7mm厚のガラス基板の表面に各支持パッドを任意の圧力で押し付け、剥離・接触を繰り返した。圧力の供給には、窒素を利用したエアーユニットを用い、窒素の供給圧力により押圧力を制御した。ガラス基板の裏面にはクーロンメーターを接続し、これにより、ガラス基板上に発生する電荷量を測定・記録した。
図25に示すように、従来の支持パッドと支持パッドAとの評価結果を比較すると、形状は同一であるからガラス基板との接触面積が等しいのに対し、材質を変更することで、発生電荷量が大幅に減少(2桁オーダーで減少)していることが確認できた。また、図25に示すように、支持パッドAと支持パッドBとの評価結果を比較すると、ガラス基板との接触部位の形状を平坦面状から先細り状に変更することで接触面積が減少しており、これにより、発生電荷量が減少していることが確認できた。
以上の結果より、CVD装置やスパッタリング装置が備えるロボットアームの支持パッドに本発明を適用することで、ガラス基板が支持パッドから剥離する際のガラス基板の剥離帯電を防止ないし抑制できることを確認することができた。