JP6209996B2 - 金属材の表面処理方法 - Google Patents

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Description

本発明は、銀めっきを施した金属材の表面処理方法に関するものであり、詳しくは金属材表面の硫化による変色を防止する被覆膜を形成する金属材の表面処理方法に関する。
銀は、優れた電気伝導性、低接触抵抗、はんだ付け性、反射率などの特性を有しており、各種スイッチ、接点、端子、コネクタ、リードフレーム等を形成する被膜として、電気・電子部品に広く利用される。これら電気・電子機器用接続部品は、黄銅やリン青銅の表面に銅、ニッケル、パラジウムの下地めっきを施し、さらにその上に銀めっきを施した材料が多く使用される。
一方、近年、エネルギー消費量の低減の対応として、発光ダイオード(LED)の普及が急速に広がっており、従来の信号機、パチンコ設備などにおける利用に加え、民生用照明機器としての実用化が進められている。
LEDの照明機器としての用途においては、LEDの光を効率よく照射するために、それぞれのLEDに反射板が設けられている。このような反射板も、銀めっき被膜が適したものとされている。特に、高輝度銀めっきは、短波長可視光域の光線の反射に優れており、反射板部分に銀めっき処理を施したLED用リードフレームの製造が進められている。
このように、銀めっき被膜は、その優れた特性を利用して各種の用途に用いられている。しかしながら、その使用時に、大気中の硫黄含有物質と反応して硫化銀薄膜が容易に形成され、褐色から黒色に変色することが問題となっている。
また、LEDパッケージの経年劣化による反射率低下を抑制する手段として、封止材およびリフレクターに用いられる樹脂材質を変更する動きがある。具体的には、封止材樹脂には従来用いられるエポキシ系樹脂からシリコーン樹脂に、リフレクター樹脂は従来用いられているアクリル系樹脂からエポキシ系樹脂に置き換えが進んでいる。
しかしながら、シリコーン樹脂は、従来のエポキシ系樹脂と比較して着色しにくい特長がある反面、高い気体透過性等の樹脂固有の特性を有する。そこで、封止用樹脂としてシリコーン樹脂を用いた場合、従来構成のパッケージと比較して、リードフレームとして使用した銀めっき被膜を有する金属材が、大気中の硫黄含有物質により変色することが懸念されている。一部のLED用リードフレームには、硫化変色に強い金めっきを施した金属材が用いられている。しかしながら、めっき材として高価な金を使用する他に、銅材との密着性を確保するため、ニッケル、パラジウム等の高価な金属を積層するため、材料コストが高くなる。また、金は、銀と比較して反射性能が劣る問題点がある。
特開平4−29746号公報 特開平4−110474号公報 特開2011−202239号公報 特開平9−249977号公報 特開2011−241409号公報 特開平9−249991号公報
上述の問題を解決する表面処理方法としては、特許文献1及び特許文献2に示されているように、脂肪族炭化水素の水素原子をSH基で置換したアルキルチオール等を含有する溶液中で銀めっき剤を処理する方法が提案されているが、変色防止効果を有するアルキルチオール化合物の耐熱特性が低いという問題がある。
特許文献3には、アルキルチオールと比較して耐熱性が高い、特定のベンゾトリアゾール系化合物、メルカプトベンゾチアゾール系化合物及びトリアジン系化合物からなる群から選ばれた1種もしくは2種以上を含有する溶液中で銀めっき被膜を処理する方法が記載されている。
特許文献4に、特許文献3の溶液に加えて、更に潤滑剤と乳化剤を含有する溶液中で銀めっき被膜を処理する方法が記載されている。しかしながら、特許文献3の実施例で示された1分以下の短い処理時間で被覆された銀めっき被膜は、変色防止の効果は十分なものではない。
特許文献5では、特定のベンゾトリアゾール系化合物、メルカプトベンゾチアゾール系化合物及びトリアジン系化合物からなる群から選ばれた1種もしくは2種以上を含有する溶液中で電着処理する方法が提案されている。
特許文献6では、特許文献5に記載されている溶液に加えて、更に潤滑剤と乳化剤を含有する溶液中で電着処理する方法が提案されている。電着処理により形成された被覆膜は、特許文献3及び特許文献4に記載されている方法と比較して、基板表面に密に形成されていることから、硫黄含有物質による耐硫化性能は飛躍的に高くなる。しかしながら、密に形成された被覆膜は、ワイヤーボンディング時の溶着性を阻害する問題がある。
これら、銀めっきを施した金属材表面の耐硫化処理方法に関しては、既に多くの技術が存在しているが、最適な被覆膜量、被覆膜密度等については、特許文献3及び特許文献4に記載の方法、すなわち1分以下の短い処理時間で浸漬する方法と、特許文献5及び特許文献6に記載の方法、すなわち電気化学的に被覆膜を形成する方法の中間に存在すると考えられる。
しかしながら、銀めっき処理された金属材においては、耐硫化性能を有する被覆膜の膜量の評価技術が確立されていなかったため、最適な被覆膜の膜量を定量的に確認することができていない。
そこで、本発明では、チオール化合物の中でも耐熱性の高いトリアジン系化合物を用いて、優れた変色防止作用を有し、耐熱性が高く、溶着性を阻害しない被覆膜を、銀めっきを施した金属材の表面に形成する金属材の表面処理方法を提供することを目的とする。
上述の目的を達成するために、本発明者らが研究を行った結果、以下に示す金属材の表面処理方法を発明するに至った。
上述した目的を達成する本発明に係る金属材の表面処理方法は、銀めっきを施した金属材の表面処理方法であって、6−アニリノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジチオール及び/又はそのアルカリ金属塩を0.01g/L〜0.15g/Lの濃度で水に溶解または分散させ、pHを4〜7に調整した表面処理剤水溶液と銀めっきを施した金属材を接触させて、金属材の銀めっき表面に被覆膜を形成する際に、接触時間は、1分以上であり、かつ表面処理後の金属材を作用極として、0〜−1.0Vvs.Ag/AgCl(sat.KCl)の範囲を20mV/sで掃引させた時の静電容量が0.8μF/cm以下であり、−0.7Vvs.Ag/AgCl(sat.KCl)より卑な電位でピークが発現しない被覆膜を形成可能な時間以下であることを特徴とする。
本発明では、優れた変色防止作用を有し、耐熱性が高く、溶着性を阻害しない被覆膜を銀めっきを施した金属材表面に形成することができる。
本発明に係る金属材の表面処理方法によって形成した金属材表面の被覆膜のサイクリックボルタモグラムである。 電着方法によって形成した金属材表面の被覆膜のサイクリックボルタモグラムである。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら以下の順序で詳細に説明する。
1.発明の概要
2.被覆膜
3.被覆膜の評価方法
4.表面処理方法及び条件
5.チオール化合物
6.界面活性剤
<1.発明の概要>
本発明に係る金属材の表面処理方法は、各種スイッチや端子等の電気・電子機器用の接続部品や発光ダイオード(LED)の反射板等の銀めっきを施した金属材の表面に、主に銀の変色を防止する被覆膜を形成する表面処理方法である。
具体的に、金属材の表面処理方法は、6−アニリノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジチオール及びそのアルカリ塩から選ばれる少なくとも一種を0.01g/L〜0.15g/Lの濃度で水に溶解または分散させ、pHを4〜7に調整した表面処理剤水溶液を所定の時間接触させて、金属材の銀めっき表面に被覆膜を形成する。
金属材と表面処理剤水溶液の接触時間は、1分以上であり、かつ表面処理後の被覆膜を形成した金属材を作用極として、0〜−1.0Vvs.Ag/AgCl(sat.KCl)の範囲を20mV/sで掃引させた時の静電容量が0.8μF/cm以下であり、−0.7Vvs.Ag/AgCl(sat.KCl)より卑な電位でピークが発現しないような被覆膜を形成することが可能な時間だけ金属材と表面処理剤水溶液とを接触させる。
より好ましい接触時間は、10分以上かつ、表面処理後の金属材を作用極として、0〜−1.0Vvs.Ag/AgCl(sat.KCl)の範囲を20mV/sで掃引させた時の静電容量が0.8μF/cm以下であり、−0.5Vvs.Ag/AgCl(sat.KCl)に出現する還元電流強度1に対して、−0.7Vvs.Ag/AgCl(sat.KCl)に出現するピーク強度が1.1以下の比率(以下、ピーク強度比ともいう。)となる被覆膜を形成することが可能な時間である。
即ち、接触時間は、後述する還元脱離法を用いた被覆膜の評価結果に基づいて決定し、上述の静電容量、ピークの発現位置、ピーク強度比を満たす時間である。
このような金属材の表面処理方法では、硫化による変色防止作用に優れ、耐熱性が高く、金属材の溶着を阻害しない被覆膜を、銀めっきを施した金属材表面に形成することができる。また、金属材の表面処理方法は、インライン処理、すなわち既存の生産ラインの洗浄工程の溶液を表面処理剤水溶液に変更するだけで表面処理が可能であり、電気化学的な処理を含まず、生産性に優れている。
<2.被覆膜>
金属材の表面処理方法で形成される被覆膜は、銀めっきを施した金属材の表面が硫化により変色することを防止するためのものであり、チオール化合物の自己組織化膜からなる変色防止膜である。
金属材としては、金、銀、銅、白金、パラジウム、水銀、鉄といった金属を挙げることができる。表面処理の対象は、銀めっきが施された金属材である。
一般的にチオール化合物、具体的にはアルカンチオールなどSH基を有する化合物(R−SH)を含む溶液に金属を浸すと、その表面で下記に示す酸化反応が生じる。式1中、Rはアルキル基である。
Metal+HS−R → M−SR + H + e ・・・(式1)
式1に示すように酸化反応が生じると、金属表面にチオール化合物の単分子膜が形成される。チオール化合物の分子の配列は、下地となる金属表面の原子の配列と、吸着したチオール化合物分子の分子間の相互作用で決まる規則的な性質を持っている。したがって、この単分子膜は、特に自己組織化単分子膜と呼ばれる。
例えば、金にアルカンチオールを被覆した場合には、次のような分子配列となる。基礎研究分野で最もよく用いられているAu(111)面に吸着したアルカンチオールは、被覆膜の下地となる金原子の間に規則的に硫黄原子が並んだ(√3×√3)R30°構造を取り、アルキル鎖部分は金表面に対して垂直方向から約30°傾いて密に配列していると考えられる。なお、金以外にも、銀、銅、白金、パラジウム、水銀、鉄といった金属の場合であっても同様の反応が起こる。
したがって、銀めっきを施した金属材を表面処理すると、銀めっき表面にチオール化合物の自己組織化単分子膜が形成される。銀めっき面に形成した被覆膜(自己組織化膜)は、大気中の硫黄含有物質と銀の硫化反応をさせない、又は進行させない防護膜となり、硫化銀の生成による変色を防止する効果、すなわち耐硫化性を有する。また、被覆膜は、トリアジン系チオール化合物により形成されているため、熱がかかっても高い耐熱性を示す。また、被覆膜は、トリアジン系チオール化合物分子の密度が高すぎず、適度な密度であるため、溶着を阻害しない。したがって、例えば、LEDの反射板に被覆膜を形成した場合には、LEDの製造時に熱がかかっても高い耐熱性を示し、ワイヤーボンディングを阻害しない。
<3.被覆膜の評価方法>
被覆膜の評価は、被覆膜を形成するチオール化合物の分子の密度や金属材の銀めっき表面に対して垂直方向からの傾きを評価する。そして、評価結果が後述する要件を満たしている場合には、その被覆膜を形成した際の金属材と表面処理剤水溶液との接触時間が被覆膜を形成するのに適した接触時間といえる。
評価方法には、還元脱離法を用いる。具体的に、アルカンチオール等のチオール化合物からなる被覆膜で被覆された金属板を負極とし、白金等を正極とし、負極及び正極をアルカリ性水溶液中に浸して電圧を印加する。電圧を印加すると、上述の(式1)に示す酸化反応と逆の反応、すなわち還元反応が進行し、吸着していたチオール化合物の分子は還元されるとともに金属板から脱離する。
サイクリックボルタンメトリー(以下、CVと略称することがある)は、この還元脱離に伴って鋭いピークが出現する。還元ピークの出る位置は、チオール化合物のアルキル鎖nが長くなるとともに負にシフトし、また、チオール化合物の構造により、固有の還元脱離ピークを有する。
チオール化合物の分子は、吸着の初期、即ち表面被覆率が小さいときは表面に分子が寝た形で存在し、吸着分子の数の増加に伴って分子が立ち上がってより密な配向を取る。還元脱離の様子から、このような分子のつまり具合、即ち密度の変化を知ることができる。
図1は、NaCO濃度が0.1M、6−(ジブチルアミノ)−1,3,5−トリアジン−2,4−ジチオール(以下、DBと略称することがある)濃度が0.1mMの混合水溶液中に、接触時間(浸漬時間)を0.5、5、20、60分と変更して浸漬処理して形成したDB被覆膜を有する銀めっきを施した金属材を作用極として、対電極に白金線を用い、0.1MのKOH水溶液中で掃引速度20mV/sで還元脱離させたときのサイクリックボルタモグラムである。
接触時間が短い0.5分の被覆膜では、0Vvs.Ag/AgCl(sat.KCl)からブロードな還元電流が流れ、約−0.5Vvs.Ag/AgCl(sat.KCl)にシャープなピークを持つ曲線となる。
また、接触時間が20分の場合では、約−0.7Vvs.Ag/AgCl(sat.KCl)にシャープなピークを持つ曲線となる。
さらに接触時間を延長して形成した被覆膜は、ブロード及びシャープなピークはより負電位側にシフトする。このピークの違いは、より正側のピークは表面に平行に吸着した分子の脱離、より負側のピークは表面から立ち上がった分子の脱離に対応すると考えられる。また、負側のピークの半値幅の減少とより負電位へのシフトは、分子のパッキングの具合がより密になっていくことを反映している。したがって、還元脱離法により得られたCVを用いることにより、分子間相互作用を間接的に検知できる。
したがって、接触時間が60分の場合には、ブロードなピークが負電位側にシフトし、ピークが−0.7Vvs.Ag/AgCl(sat.KCl)より卑な電位で発現している。このような場合には、チオール分子が吸着し過ぎている。
一方、例えば電着処理により被覆膜を形成した場合には、図2に示すようなサイクリックボルタモグラムを得た。図2は、NaCO濃度が0.1M、6−(ジブチルアミノ)−1,3,5−トリアジン−2,4−ジチオール濃度が0.1mMの混合水溶液中に、銀めっきを施した金属材を陽極、白金線を陰極として、0.1Vvs.Ag/AgCl(sat.KCl)の定電位で処理時間を変更して形成したDB被覆膜を有する銀めっきを施した金属材を作用極として、対電極に白金線を用い、0.1MのKOH水溶液中で掃引速度20mV/sで還元脱離させたときのサイクリックボルタモグラムである。電着処理の場合には、ブロード及びシャープなピークのより負電位側へのシフトと負側のピークの半値幅の減少が認められ、DB分子が密な状態で吸着されていることが分かる。
チオール化合物の分子が適度な角度でかつ適度な密度で吸着されているサイクリックボルタモグラムは、被覆膜が形成された金属材を作用極として、0〜−1.0Vvs.Ag/AgCl(sat.KCl)の範囲を20mV/sで掃引させた時の静電容量が0.8μF/cm以下であり、−0.7Vvs.Ag/AgCl(sat.KCl)より卑な電位でピークが発現しないことである。
より好ましいサイクリックボルタモグラムとしては、被覆膜が形成された金属材を作用極として、0〜−1.0Vvs.Ag/AgCl(sat.KCl)の範囲を20mV/sで掃引させた時の静電容量が0.8μF/cm以下であり、−0.5Vvs.Ag/AgCl(sat.KCl)に出現する還元電流強度1に対して、−0.7Vvs.Ag/AgCl(sat.KCl)に出現するピーク強度が1.1以下の比率となることである。
<4.表面処理方法及び条件>
表面処理方法は、銀めっきを施した金属材に表面処理剤水溶液を所定時間、接触させて、銀めっき表面に被覆膜を形成する。この表面処理方法は、電気化学的な処理ではないため、容易に被覆膜を形成することができる。
表面処理剤水溶液には、水に、6−アニリノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジチオール及び/又はそのアルカリ金属塩を溶解または分散させた後、pHを4〜7に調整したものを用いる。
水としては、純水または超純水を用いることが好ましい。pH調整剤としては、リン酸、酢酸、クエン酸、酒石酸、シュウ酸、リンゴ酸、コハク酸などの有機酸等を用いることが好ましい。
pHが低いと、被覆膜の変色防止効果が高くなるが、液の安定性が悪くなる。また、pHが低いと、6−アニリノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジチオール及び/又はそのアルカリ金属塩の溶解性も低くなる。逆に、pHが高いと液の安定性はよくなるが、変色防止効果が低くなる。したがって、高い変色防止効果及び良好な液の安定性を両立するために、pHは4〜7であり、より好ましくpH5〜6である。
金属材に表面処理剤水溶液を接触させる方法としては、金属材を表面処理剤水溶液に浸漬させる、表面処理剤水溶液をスプレーで吹きかける又は塗布するなど、いずれの方法であっても可能であるが、浸漬が好ましい。浸漬条件としては、液温が15〜60℃の表面処理剤水溶液に一定時間浸漬させる。表面処理剤水溶液を一定時間接触させた後は、水洗し、乾燥することが好ましい。
接触時間については、上述した還元脱離法を用いたチオール化合物の自己組織化膜の評価方法に基づいて決定するが、サイクリックボルタモグラムにおける静電容量、ピークの発現位置、ピーク強度比が上述した条件を満す被覆膜を形成することができる時間であって、少なくも1分以上であり、目安としては1〜20分、好ましくは10〜20分程度が最適である。1分未満では、十分な耐硫化効果を得ることができず、20分を超えると変色防止膜の密度が高くなりすぎてしまい、ワイヤーボンディング等の溶着ができなくなる。
電着方法等を用いず、金属材に表面処理剤水溶液を接触させる方法を用いる理由としては、銀めっきが施された金属材に吸着されるチオール化合物分子の密度を適度な密度にすることができるからである。先行技術文献5や6に記載されているように電気化学的な手法を用いた場合には、金属板を陽極に用い、電極間に電位を印加すると、溶液から金属板へのチオール化合物の拡散に加え、溶液中で陰イオン化したチオール化合物の電気泳動により、浸漬処理と比較して短時間で処理が可能となる。しかしながら、電気化学的な手法の場合には、吸着されるチオール化合物の密度が高くなりすぎるため、ワイヤーボンディング等の溶着性が悪くなってしまう。したがって、本実施の形態に係る金属材の表面処理方法は、金属材を表面処理剤水溶液に浸漬させる等、金属材に表面処理剤水溶液を接触させるだけであるため、チオール化合物の密度を適度にすることができる。
また、この表面処理方法は、インライン処理、すなわち既存の生産ラインの洗浄工程の溶液を表面処理剤水溶液に変更するだけで表面処理が可能であり、電気化学的な処理を含まないため、生産性に優れている。
<5.チオール化合物>
チオール化合物としては、LEDパッケージ工程でのリフレクター構築、封止材樹脂、すなわちシリコーン樹脂の硬化時にかかる熱に対する耐熱性を持つことが望まれる。チオール化合物の中でも耐熱性の高いトリアジン系化合物が有用であり、中でも耐熱性に優れている6−アニリノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジチオールを用いる。このチオール化合物は、ナトリウム又はカリウムなどのアルカリ金属塩であってもよい。チオール化合物のSH基のHがNa又はKに置換された化合物となり、水への溶解が容易となる。
チオール化合物は、水に溶解または分散される。表面処理剤水溶液におけるチオール化合物の濃度は、0.01〜0.15g/Lの範囲であり、好ましくは、0.01〜0.1g/Lであり、より好ましくは0.05〜0.1g/Lである。濃度が0.01g/L未満では、表面処理効果が認められず、0.15g/Lを超えると、ミセルを形成し溶液中で安定化するため、表面処理効果が低下する。
<6.界面活性剤>
表面処理剤水溶液には、更に界面活性剤を添加してもよい。表面処理剤水溶液には、6−アニリノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジチオール及び/又はそのアルカリ金属塩を水溶液中に溶解させやすくする、金属表面の濡れ性を高めて溶液を浸透しやすくする、金属の表面を洗浄する等の目的で界面活性剤を含有させる。
界面活性剤としては、天然アルコール系界面活性剤が生分解性に優れ、環境に対する悪影響が少ないため好ましい。また、界面活性剤としては、酸やアルカリでの分解が少ないアルキルフェノールエチレンオキシド付加物や高級アルコールエチレンオキシド付加物が好ましい。
以上のような金属材の表面処理方法では、チオール化合物を0.01g〜0.15g/Lの濃度で水に溶解または分散させ、pHを4〜7に調整した表面処理剤水溶液に銀めっきを施した金属材を接触させて、金属材の表面に被覆膜を形成する際に、少なくも1分以上接触させ、かつ表面処理後の金属材を作用極として、0〜−1.0Vvs.Ag/AgCl(sat.KCl)の範囲を20mV/sで掃引させた時の静電容量が0.8μF/cm以下であり、−0.7Vvs.Ag/AgCl(sat.KCl)より卑な電位でピークが発現しない被覆膜を形成可能な時間だけ金属材に表面処理剤水溶液を接触させる。より好ましくは、10分以上接触させ。被覆膜が形成された金属材を作用極として、0〜−1.0Vvs.Ag/AgCl(sat.KCl)の範囲を20mV/sで掃引させた時の静電容量が0.8μF/cm以下であり、−0.5Vvs.Ag/AgCl(sat.KCl)に出現する還元電流強度1に対して、−0.7Vvs.Ag/AgCl(sat.KCl)に出現するピーク強度が1.1以下の比率となる被覆膜を形成可能な時間だけ金属材に表面処理剤水溶液を接触させる。
このような金属材の表面処理方法では、金属材の銀めっき表面にチオール化合物の分子が適度な角度でかつ適度な密度で吸着されて被覆膜を形成する。これにより、金属材の表面処理方法では、金属材が大気中に曝されても、大気中の硫黄により変色することを防止でき、高い耐熱性が得られ、溶着を阻害しない被覆膜を金属材に形成することができる。
したがって、この金属材の表面処理方法では、例えばLEDの反射板の表面処理に使用した場合、封止樹脂にシリコーン樹脂を用いた場合であっても硫黄による変色を防止でき、反射板の反射率を低下させず、LEDの製造時における熱に対する耐熱性に優れ、ワイヤーボンディングによる溶着を阻害しない被覆膜を形成できる。これにより、この金属材の表面処理方法を用いれば、LEDの反射率の低下を抑制することができる。
以下、本発明を適用した具体的な実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
まず、変色防止膜(被覆膜)の評価方法について説明する。各実施例及び比較例において、硫化試験前後の拡散反射率の差の中でも、白色LED光の強度が最も高い波長450nmの値での変色防止効果、つまり耐硫化性を評価した。拡散反射率の測定には、株式会社日立ハイテクフィールディング製の分光光度計U−4100を使用した。拡散反射率の差とは、Δ反射率=(硫化試験前の反射率)−(硫化試験後の反射率)である。
耐硫化性の評価の際には、硫化試験を行う前に、パッケージ工程でかかる熱履歴を加味し、175℃−90分の加熱処理を変色防止膜に行った。
変色防止膜の量を評価する還元脱離方法は、作用極として銀めっきを施した銅薄板、基準電極としてAg/AgCl電極、対電極として白金ワイヤーを用いた。尚、基準電極は、飽和KCl溶液中に設置し、塩橋により測定溶液である0.1MのKOH水溶液中と接続した。そして、変色防止膜の定量化は、0〜−1Vvs.AgAgCl(sat.KCl)間の静電容量(F/cm)で算出した。
(実施例1)
実施例1では、被処理基材として、銅薄板上に銀めっきを施したものを用い、表面処理剤としてCT−5tfx(JX日鉱日石金属株式会社製)を超純水で20倍希釈し、リン酸を用いpH=6とした表面処剤水溶液を用いた。表面処理剤水溶液の6−アニリノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジチオール濃度は0.07g/Lである。そして、表面処理剤水溶液に銅薄板上に銀めっきを施したものを常温で10分浸漬し、銀めっきに表面処理を行った。CT−5tfxは、6−アニリノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジチオール溶液の商品名である。
そして、表面処理後の銅薄板上に銀めっきを施したものを上述の評価方法にて評価を行った。その結果を表1に示す。実施例1では、−0.5Vvs.Ag/AgCl(sat.KCl)に出現する還元電流強度1に対して、−0.7Vvs.Ag/AgCl(sat.KCl)に出現するピーク強度の比率が0.90であった。
(実施例2、3)
実施例2、3は、浸漬時間を表1に示すように変えたこと以外は、実施例1と同様に表面処理を行った。実施例1と同様の評価を行った。評価結果を表1に示す。
(比較例1)
比較例1では、表面処理をせず、銀めっきを施した銅薄板を上述した評価方法にて評価を行った。
(比較例2)
比較例2では、浸漬時間を0.5分としたこと以外は実施例1と同様に表面処理を行った。
(比較例3)
比較例3では、浸漬時間を60分としたこと以外は実施例1と同様に表面処理を行った。
(比較例4〜比較例6)
比較例4〜比較例6は、作用極として銀めっきを施した銅薄板、基準電極としてAg/AgCl電極、対電極として白金ワイヤーを用い(基準電極は、飽和KCl溶液中に設置し、塩橋により架橋)、電圧値0.25Vvs.Ag/AgCl(sat.KCl)を印加して電着処理して変色防止膜を形成した後、実施例1と同様に評価した。
Figure 0006209996
表1に示す結果から、実施例1、2、3は、反射率の差が小さく、ワイヤーボンディングに良好な結果であり、耐硫化効果が高く、溶着性が阻害されていないことがわかる。一方、比較例1と比較例2では、反射率の差が大きく、耐硫化性が不十分であった。比較例3〜6は、反射率の差が小さく、耐硫化性を有する変色防止膜が得られたが、ワイヤーボンディングができず、溶着性が悪かった。

Claims (5)

  1. 銀めっきを施した金属材の表面処理方法であって、
    6−アニリノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジチオール及び/又はそのアルカリ金属塩を0.01g/L〜0.15g/Lの濃度で水に溶解または分散させ、pHを4〜7に調整した表面処理剤水溶液と上記銀めっきを施した金属材を接触させて、該金属材の銀めっき表面に被覆膜を形成する際に、
    接触時間は、1分以上であり、かつ表面処理後の金属材を作用極として、0〜−1.0Vvs.Ag/AgCl(sat.KCl)の範囲を20mV/sで掃引させた時の静電容量が0.8μF/cm以下であり、−0.7Vvs.Ag/AgCl(sat.KCl)より卑な電位でピークが発現しない上記被覆膜を形成可能な時間以下であることを特徴とする金属材の表面処理方法。
  2. 上記接触時間が、10分以上かつ、上記表面処理後の金属材を作用極として、0〜−1.0Vvs.Ag/AgCl(sat.KCl)の範囲を20mV/sで掃引させた時の静電容量が0.8μF/cm以下であり、−0.5Vvs.Ag/AgCl(sat.KCl)に出現する還元電流強度1に対して、−0.7Vvs.Ag/AgCl(sat.KCl)に出現するピーク強度が1.1以下の比率となる被覆膜を形成可能な時間であることを特徴とする請求項1に記載の金属材の表面処理方法。
  3. 上記表面処理剤水溶液は、更に界面活性剤を含有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の金属材の表面処理方法。
  4. 上記金属材を上記表面処理剤水溶液に接触させる方法は、該表面処理剤水溶液に該金属剤を浸漬、又は該表面処理剤水溶液を吹きかける又は塗布することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の金属材の表面処理方法。
  5. 上記金属材は、LEDに使用する反射材であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の金属材の表面処理方法。
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