JP6209133B2 - 同位体比分析システム、及び分析方法 - Google Patents

同位体比分析システム、及び分析方法 Download PDF

Info

Publication number
JP6209133B2
JP6209133B2 JP2014108496A JP2014108496A JP6209133B2 JP 6209133 B2 JP6209133 B2 JP 6209133B2 JP 2014108496 A JP2014108496 A JP 2014108496A JP 2014108496 A JP2014108496 A JP 2014108496A JP 6209133 B2 JP6209133 B2 JP 6209133B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
isotope ratio
water
measured
liquid
isotope
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2014108496A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2015224901A (ja
Inventor
吉村 了行
了行 吉村
匡 阪本
匡 阪本
神徳 正樹
正樹 神徳
界 義久
義久 界
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Telegraph and Telephone Corp
Original Assignee
Nippon Telegraph and Telephone Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Telegraph and Telephone Corp filed Critical Nippon Telegraph and Telephone Corp
Priority to JP2014108496A priority Critical patent/JP6209133B2/ja
Publication of JP2015224901A publication Critical patent/JP2015224901A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6209133B2 publication Critical patent/JP6209133B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Investigating Or Analysing Materials By Optical Means (AREA)
  • Sampling And Sample Adjustment (AREA)

Description

本発明は、食品や飲料品等の産地や生産履歴等の起源に関する情報を判別・推定するために用いられる同位体比分析方法、及び同位体比分析システムに関する。詳細には、レーザ分光法を用いた同位体比分析法およびその同位体比分析システムに関する。
近年、食品や飲料品の産地や製法、成分などに関する表示偽装を抑止するため、食品・飲料品の安定同位体比を分析することにより、科学的に産地や製法・成分などの起源に関する情報を判別・推定する技術が注目されている。
降雨によりもたらされる陸地の水の酸素・水素同位体比は、その地理的条件と密接な関連があることが知られており、そのため、食品・飲料品の酸素または水素同位体比分析はその産地を判別・推定する手段として用いられている。とくにワインなどのアルコール飲料は古くから原産地呼称統制制度など原産地に関する表示制度が重視されおり、アルコール飲料中の水分の同位体比分析を行うことにより偽装品の流通を抑止し、ブランドイメージを守る取り組みが盛んに行われている(例えば、特許文献1ならびに非特許文献1および2参照)。
しかしながら、同位体比分析を行うためには、同位体比質量分析法(IRMS:Isotope Ratio Mass Spectrometry)や核磁気共鳴分光法(NMR:Nuclear Magnetic Resonance Spectroscopy)のような、高価で大型で操作が複雑な計測装置を用いる必要があるため、時間とコストがかかるという問題があり、これが普及を妨げる一つの要因となっていた。
一方、近年レーザ分光法の高感度化技術の進歩により、同位体比分析に利用できるレーザ分光装置が開発されている。例えば、半導体レーザを分光用光源として用い、ガス分析計等に応用する波長可変レーザ分光法(Tunable Diode Laser Spectroscopy;以下、レーザ分光法と記す)(非特許文献3)と呼ばれる技術が注目されている。とくにレーザ分光式の水の酸素、水素同位体比分析装置は、小型で安価、かつ操作性,可搬性に優れ、測定精度も従来法と同等、またはそれらを凌ぐものが開発され、市販されていることから注目されており、様々な分野で導入が進みつつある。
図1はレーザ分光法の大まかな動作原理を説明するものである。レーザ分光法では、レーザ光源1の発振波長を図1bのように掃引する。掃引した波長範囲内にガス状被測定物3の分子振動に対応する吸収線がある場合、光検出器4が受光する受光強度には図1cのように被測定物3の吸収線に対応したディップ(受光強度の凹み)が現れる。このディップの位置と深さにより被測定物のガス種と濃度を測定・分析するというのがレーザ分光法の基本的な動作原理である。
実際の応用では、図1bのような鋸波の上に、より繰り返し周波数の高い正弦波を重畳させレーザを駆動し、受光した信号をロックイン検波する波長変調分光法(Wavelength Modulation Spectroscopy)、または周波数変調分光法(Frequency Modulation Spectroscopy)(非特許文献4)と呼ばれる方法や、被測定ガスを高反射率ミラーを用いた光学キャビティの中に閉じ込めることにより実効光路長を稼ぎ高感度化するキャビティリングダウン分光法(CRDS:Cavity Ring-Down Spectroscopy)(非特許文献5)やキャビティ増強吸収分光法(CEAS:Cavity Enhanced Absorption Spectroscopy)(非特許文献6)など、種々の高感度化手法が多く用いられている。
ワインなどのアルコール飲料中の水分の同位体比分析に関してもレーザ分光式の水の酸素、水素同位体比分析装置が利用できれば、極めて有用であり広範な普及が期待される。
特開2012−173000号公報
S. Kelly, K. Heaton, and J. Hoogewerff, "Tracing the geographical origin of food: The application of multi-element and multi-isotope analysis", Trends in Food Science & Technology, 16, pp. 555-567, 2005. J. West, J. Ehleringer, and T. Cerling, "Geography and vintage predicted by a novel GIS model of wine δ18O", Agricultural and Food Chemistry, 55(17), pp. 7075-7083 , 2007. 吉村・神徳・藤井・阪本・界:"高感度レーザガスセンシング技術と同位体比分析応用,"NTT技術ジャーナル,Vol.26,No.2,pp.27-30,2014. G. C. Bjorklund, "Frequency-modulation spectroscopy: a new method for measuring weak absorption and dispersion," Opt. Lett. 5(1), pp. 15-17, 1980. A. O’Keefe and D. A. G. Deacon: "Cavity ring-down optical spectrometer for absorption measurements using pulsed laser sources," Rev. Sci. Instrum., Vol.59, No.12, pp.2544-2551, 1988. H. R. Barry, L. Corner, G. Hancock, R. Peverall, and G. A. D. Ritchie: "Cavity-enhanced absorption spectroscopy of methane at 1.73 μm," Chem. Phys. Lett., Vol.333, No.3-4, pp.285-289, 2001.
しかしながら、アルコール飲料中に含まれるエタノール等の有機化合物の中には水分子と構造が類似する水酸基を含むものが含まれる。そのため、同位体比分析のために使う水蒸気の吸収線の近傍にそれらの有機化合物の吸収線が出現するため、これが干渉の原因となり、レーザ分光による同位体比分析の精度を著しく劣化させるという問題があった。
アルコール飲料から水だけを分離する方法としては、蒸留するという方法があるが、この方法には共沸という問題があるため、蒸留により分離した水の中には数%程度のエタノールが残留する。この残留するエタノールは、やはり干渉の原因となるため、レーザ分光による同位体比分析の精度を著しく劣化させるという問題があった。また、蒸留することによりアルコール飲料中に含まれる水の同位体比そのものが変化してしまうという問題もあった。
前記問題点を解決するため、本発明は、水を含む液状被測定物を気化させる蒸発装置と、前記蒸発装置により気化された被測定物にレーザ光を照射しレーザ分光することにより、前記被測定物中に含まれる水の酸素または水素、またはその両方の同位体比を分析するレーザ分光式同位体比分析装置と、前記液状被測定物を前記蒸発装置に入れる前に、吸着剤で処理して有機化合物を取り除く前処理装置とを具備する同位体比分析システムを提供する。
また、本発明の一実施態様において、前記吸着剤は、疎水性ゼオライトからなってもよい。本発明の一実施態様において、有機化合物はエタノールである。
さらに本発明のシステムは、一実施態様において、エタノール濃度1重量%以下の水に対して前記前処理装置を用いて前処理し、前記蒸発装置及び前記同位体比分析装置を用いて測定した同位体比と、前記エタノール濃度1重量%以下の水を前記前処理装置を用いた前処理をせずに前記蒸発装置及び前記同位体比分析装置を用いて測定した同位体比との差を補正項として用いて、前記液状被測定物の同位体比を補正するアルゴリズムを用いたデータ処理装置を具備することを特徴とする。
また本発明は、水を含む液状被測定物を吸着剤で処理して有機化合物を除去する工程と、
前記液状被測定物を気化させる工程と、前記気化された被測定物にレーザ光を照射しレーザ分光することにより、該液体中に含まれる水の酸素または水素、またはその両方の同位体比を分析する工程とを含むことを特徴とする水の同位体比分析方法に関する。本発明の一実施態様において、該吸着剤は、疎水性ゼオライトからなってもよい。本発明の一実施態様において、有機化合物はエタノールである。
本発明は、一実施態様において、さらに、エタノール濃度1重量%以下の水に対して前記前処理装置を用いて前処理し、前記蒸発装置及び前記同位体比分析装置を用いて測定した同位体比と、前記エタノール濃度1重量%以下の水を前記前処理装置を用いた前処理をせずに前記蒸発装置及び前記同位体比分析装置を用いて測定した同位体比との差を補正項として用いて、前記液状被測定物の同位体比を補正するアルゴリズムを用いてデータ処理する工程を組み込んでもよい。
他の実施態様として、本発明は、水を含む液状被測定物を気化させる蒸発装置と、
前記蒸発器により気化された被測定物にレーザ光を照射しレーザ分光することにより、前記被測定物中に含まれる水の酸素または水素、またはその両方の同位体比を分析するレーザ分光式同位体比分析装置と、前記液状被測定物を処理する前処理装置とを具備することを特徴とする同位体比分析システムにおける前処理装置であって、前記前処理装置は前記液状被測定物を前記蒸発装置に挿入する前に吸着剤で処理して有機化合物を取り除くことを特徴とする前処理装置に関する。本発明の一実施態様において、該吸着剤は、疎水性ゼオライトからなり、有機化合物はエタノールである。
本発明で提案する構成を用いることにより、アルコール飲料から、レーザ分光による水の同位体比分析の干渉要因となるエタノール等の有機化合物を分離し、ほぼ純粋な水を分離した上で、同位体比分析を行うことができるため、レーザ分光による同位体比分析の精度を実用的なレベルまで向上させることができる。そのため、アルコール飲料中の水分の同位体比分析を、小型で安価、かつ操作性,可搬性に優れたレーザ分光式の水の酸素、水素同位体比分析装置を用いて行うことができる。
(a)波長可変レーザ分光法の構成の模式図である。(b)光源の駆動方法(時間と波長の関係)を説明する図である。(c)光検出器が受光する受光強度を説明する図である。 同位体比分析用前処理装置の構成を表す概略図である。 エタノールが水の酸素・水素同位体比の測定値に与える影響のエタノール濃度依存性を表す図である。
本発明は、水の安定同位体比分析法を用い、食品や飲料品等の産地や生産履歴等の起源に関する情報を判別・推定する方法、及びその同位体比分析システムに関する。以下、本発明の実施の形態について説明する。
同位体とは、原子番号が等しく、質量数が異なる核種をいい、安定同位体は自然界に略一定比で存在する。しかし、質量の違いから自然界における反応・相転移等の過程で同位体分別が起こるため、安定同位体が存在する環境・履歴により安定同位体間の存在比(安定同位体比)が変動する。例えば、天水(河川、湖、氷河、地下の岩層に染みこみ岩石圏の様々な深度においてみられる地下水を含む陸上表面のすべての水)の水素および酸素の安定同位体比は、地域により異なる値となることが知られている。そこで、本発明は水の安定同位体比分析から、食品や飲料品等の産地や生産履歴等の起源に関する情報を判別する。
本発明において、食品や飲料品等の産地とは、その食品または飲料品の生産・製造の行われる地域のことをいう。また、生産履歴等の起源に関する情報とは、その食品または飲料品の生産・製造において用いられた原料等の出所に関する情報をいう。判別の対象とする産地または情報は、日本国内、日本国外のいずれでもよい。
本発明において測定する安定同位体比は、酸素、水素、またはその両方の天然に存在する非放射性同位体についての比を用いればよく、通常、酸素安定同位体比としては16Oと18Oの比を用いればよく、水素安定同位体比としてはHとDの比を用いればよい。これらの安定同位体比は、通常、絶対比ではなく、標準試料の同位体比からの千分偏差としてそれぞれ以下の数式で示されるδ値で表現される。
酸素同位体比は、次の数式(I)で示すことができる。
Figure 0006209133
また、水素安定同位体比は、次の数式(II)で示すことができる。
Figure 0006209133
(上記式中、SAMPは試料における同位体比を示し、STDは標準試料における同位体比を示す。)
安定同位体比の標準試料は、酸素・水素安定同位体比の標準試料としては、標準平均海水(Vienna Standard Mean Ocean Water(VSMOW))を用いることができる。
そして、測定した試料の安定同位体比と、産地等が既知である対照試料との安定同位体比とを照合することにより、測定試料の産地や生産履歴等の起源に関する情報を判別できる。本発明は、レーザ分光法を用い、より簡便に水の安定同位体比を分析する方法およびそのシステムを提供する。
本発明の一実施態様は、水を含む液状被測定物を気化させる蒸発装置と、前記蒸発装置により気化された被測定物にレーザ光を照射しレーザ分光することにより、前記被測定物中に含まれる水の酸素または水素、またはその両方の同位体比を分析するレーザ分光式同位体比分析装置と、前記液状被測定物を前記蒸発装置に挿入する前に、吸着剤で処理して有機化合物を取り除く前処理装置とを具備する同位体比分析システムに関する。本発明においてシステムとは、個々に確立された上記各装置が組み合わせられたものであってもよく、また、まとまって一の装置を構築したものであってもよい。
本発明の同位体比測定システムにより測定される液状被測定物は、少なくとも水を含む液体である。好ましくは、水を含む食品または飲料品であり、アルコールやカルボン酸等の有機化合物を含んでもよい。
本発明の同位体比測定システムにより測定される液状被測定物の例は、これらに限定されないが、ワイン、日本酒、ビール等のアルコール飲料、果物および/または野菜のジュース、ならびにミネラルウォーター、温泉等の水である。
本発明の蒸発装置は、液状被測定物中の水分を気化できるものであればよい。好ましくは、分析機器用加熱気化装置である。本発明の一実施態様において、蒸発装置で気化された被測定物は、管を通って同位体比分析装置に導入される。他の実施態様では、蒸発装置は同位体比分析装置の試料セルに設置され、試料セル内で被測定物が気化されてもよい。
本発明のレーザ分光式同位体比分析装置は、被測定物中に含まれる水の酸素もしくは水素、またはその両方の同位体比を分析する。本発明の同位体比分析装置は、図1aに示されるように、レーザ光源1、被測定物3の入った試料セル、および光検出装置4を含む。
本発明のレーザ光源1は、好ましくは半導体レーザを有する(図示せず)。半導体レーザは、出力するレーザ光の発振波長スペクトル線幅が極めて狭く、レーザ温度や駆動電流を変えることで発振波長を変更でき、特定の吸収ピークのみを測定できる。
レーザガス分光の原理を、図1を用いて説明する。レーザ光源1から発せられた光2は、上記蒸発装置により気化された被測定物3が存在する試料セルを通過し、光検出装置4により検出される。光検出装置4は、当分野で通常レーザ光の検出に用いられるものを用いることができる。掃引した波長範囲内にガス状被検査物3の分子振動に対応する吸収線がある場合、光検出器4が受光する受光強度には図1cのように被測定物3の吸収線に対応したディップ(受光強度の凹み)が現れる。このディップの位置と深さにより被測定物3のガス種と濃度を測定・分析する。ここで、図1bに示したような波長の掃引は連続的に掃引しても良いし、離散的に掃引する場合もある。
一実施態様において、本発明のレーザ分光式同位体比分析装置は、波長変調分光法やCRDS、CEASなどの手法を用いて高感度化される。高感度化にCRDSを用いる場合、前記試料セルに入射するレーザ光2はある固定された波長のパルス化されたレーザ光であり、そのレーザ光は試料セル内に高反射率ミラーを用いて形成された光学共鳴キャビティにより共振し試料セル内にトラップされる。そのキャビティから漏れてくる光は光検出器4により検出されるが、この検出される光の減衰時間(リングダウン時間)はキャビティ内の被測定物3の吸収が大きいほど短くなるので、このリングダウン時間を測定することにより、その固定された波長における被測定物3の吸収強度を知ることができる。レーザ光2の波長を離散的に掃引し、リングダウン時間の測定を繰り返すことにより、被測定物3の種類と濃度を特定することができる。
本発明の前処理装置は、液状被測定物を蒸発装置に挿入する前に、吸着剤で処理して有機化合物を取り除く機能を有する。前処理装置で有機化合物を取り除くことにより、検出結果のノイズを除去し、高精度および高感度の測定結果を得ることができる。
吸着剤は全ての有機化合物を吸着しうるものが望ましい。好ましくはアルコール類、カルボン酸類、エステル類、アルデヒド類が吸着できるものがよく、特にアルコール類を吸着できるものがよい。本発明の吸着剤は、好ましくは、エタノールおよびメタノール等の低級アルコールおよび/またはクエン酸、リンゴ酸、酒石酸等の低分子量のカルボン酸を吸着する。
本発明の吸着剤として、具体的には、これらに限定されないが、ゼオライト、シリカゲル、アルミナを用いることができる。水の同位体比を測定する本発明において、吸着剤は疎水化処理されているものが望ましい。疎水化処理は、吸着剤に対して通常行われる処理を用いることができる。本発明の一実施態様において、吸着剤は疎水性ゼオライトである。当業者は、使用する吸着剤の量を、吸着剤と測定する液状被測定物に合わせて適宜調整することができる。別の実施態様において、前記前処理は液状被測定物に対し、少なくとも1回以上行われ、任意選択的に複数回行ってもよい。
図2は、本発明の前処理装置の一実施態様を表す概略図である。該前処理装置は、シリンジ5に、フィルタ6、粉末状の疎水性ゼオライト7、アダプタ9、およびチューブ10を備える。ゼオライト7の上に液状被測定物8を入れ、アダプタ9で栓をし、アダプタ9に取付けられているチューブ19から圧縮空気11をシリンジ5内部に注入して、液状被測定物8のろ過を行う。ゼオライト7にエタノールなどの有機化合物は吸着され、シリンジ5の先からは主に水を含む前処理された被測定物12が滴下し、容器13に集められる。
本発明の一実施態様において、さらに分析精度を向上させるため、吸着剤が水を吸着することによる分析値への影響を考慮して、測定値を補正してもよい。例えば、疎水性ゼオライトの疎水性は完全なものではないため、ろ過の過程で僅かながら水分を吸着する。この水分の吸着率は同位体により異なるため、この僅かな水の吸着により、ろ過前後で水の同位体比は変化する。水の同位体比の変化量は、使用する疎水性ゼオライトの種類に依存するので、使用する疎水性ゼオライトを用いて前処理の前後での同位体比の変化を分析し、その差を補正項として被測定物の同位体比を補正してもよい。前処理前後で水の同位体比の変化量、すなわち補正項を測定するためには、エタノールなどの有機化合物の含有率が無視できる水、例えば水道水を用い、ろ過前後での同位体比を測定しておけばよい。
図3は、有機化合物の含有率が0.5mg/L以下の水道水に、エタノールを加えたエタノール水溶液を作製し、それらのエタノール水溶液の酸素・水素同位体比をレーザ分光式の水の酸素・水素同位体比分析装置を用いて測定し、エタノールが水の酸素・水素同位体比の測定値に与える影響をエタノール濃度の関数として表したものである。図3からエタノール濃度が1重量%以下の場合は、酸素・水素同位体比の測定値に与える影響は軽微であり多くの場合無視できるレベルであるが、エタノール濃度が1重量%を超えると、大きな影響が表れてくることがわかる。このことから、補正項を測定するために使用するエタノールなどの有機化合物の含有率が無視できる水は、エタノール濃度が1重量%以下であることが望ましい。
本発明の同位体比分析システムは、得られた補正項を用いて被測定物の同位体比を補正するアルゴリズムを用いるデータ処理装置をさらに具備することができる。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
図2の前処理装置を用いて、一般的なビール飲料のアルコール濃度であるエタノール濃度4.8重量%のアルコール含有水溶液8の前処理を行い、得られた水12の酸素および水素の同位体比を分析した。
シリンジ5にフィルタ6および粉末状疎水性モレキュラーシーブ7(ユニオン昭和(株)製:HiSiv3000(パウダー))48gを順に入れ、その後、被測定物であるアルコール含有水溶液8を20g入れ、アダプタ9で栓をした。アダプタ9に取付けられているチューブ10から圧縮空気11をシリンジ5内部に注入し圧力をかけ、アルコール含有水溶液8のろ過を行った。疎水性モレキュラーシーブ7にエタノールなどの有機化合物は吸着されるため、シリンジの先からはろ過された水12が滴下し、容器13に集められた。
容器13に集められたろ過された水12の一部をサンプル瓶に詰め替え、サンプラ、及び蒸発器を備えたレーザ分光式の水の酸素、水素同位体比分析装置(Picarro社製:L2120−i)にセットし、酸素、水素同位体比分析を行った。標準試料として標準平均海水(VSMOW)を用いて酸素同位体比(δ18OVSMOW)、水素同位体比(δDVSMOW)を計算した。結果を表1に示す。
(比較例1)
実施例1に用いたアルコール含有水溶液8に対して、前処理を行わない以外は実施例1と同様に同位体比分析を行った。表1に結果を示す。
(比較例2)
実施例1に用いたアルコール含有水溶液8に対して、同位体比質量分析計を用いて水の同位体比分析を行った。表1に結果を示す。
Figure 0006209133
表1からわかるように、前処理なしで分析した酸素、水素同位体比(比較例1)は、真値に近いと思われるIRMSでの分析値(比較例2)からほど遠い値となった。一方、本発明による前処理を施した後に分析した酸素、水素同位体比(実施例1)は、IRMSでの分析値に近い値を示しており、十分参考になるレベルにあることがわかった。
(実施例2)
水道水を本発明による前処理装置を用いて前処理し、実施例1と同様に水の酸素、水素同位体比分析を行った。結果を表2に示す。
(比較例3)
実施例2を行った水道水に対して、前処理を行わない以外は実施例2と同様に同位体比分析を行った。表2に結果を示す。
Figure 0006209133
表2の結果から、今回使用した疎水性ゼオライトの場合、酸素、水素同位体比は前処理により、それぞれ0.5‰、3.0‰程度プラス方向に変化させていることがわかる。
この補正項を用いて実施例1の同位体比を補正すると、補正後の酸素同位体比(δ18OVSMOW)、水素同位体比(δDVSMOW)はそれぞれ、−8.2‰、−49.1‰となり、さらに比較例2の分析値とほぼ一致することがわかった。
1.レーザ光源
2.レーザ光
3.被測定物
4.光検出器
5.シリンジ
6.フィルタ
7.疎水性ゼオライト
8.被測定物であるアルコール含有水溶液
9.アダプタ
10.チューブ
11.圧縮空気
12.ろ過された水
13.容器

Claims (10)

  1. 水を含む液状被測定物を気化させる蒸発装置と、
    前記蒸発装置により気化された被測定物にレーザ光を照射しレーザ分光することにより、前記被測定物中に含まれる水の酸素または水素、またはその両方の同位体比を分析するレーザ分光式同位体比分析装置と、
    前記液状被測定物を前記蒸発装置に挿入する前に、吸着剤で処理して有機化合物を取り除く前処理装置と
    を具備することを特徴とする水同位体比分析システム。
  2. 前記吸着剤が、疎水性ゼオライトからなることを特徴とする請求項1に記載の同位体比分析システム。
  3. 前記有機化合物がエタノールであることを特徴とする請求項1または2に記載の同位体比分析システム。
  4. エタノール濃度1重量%以下の水に対して前記前処理装置を用いて前処理し、前記蒸発装置及び前記同位体比分析装置を用いて測定した同位体比と、前記エタノール濃度1重量%以下の水を前記前処理装置を用いた前処理をせずに前記蒸発装置及び前記同位体比分析装置を用いて測定した同位体比との差を補正項として用いて、前記液状被測定物に含まれる水の同位体比を補正するアルゴリズムを用いたデータ処理装置をさらに具備することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の同位体比分析システム。
  5. 水を含む液状被測定物を吸着剤で処理して有機化合物を除去する工程と、
    前記液状被測定物を気化させる工程と、
    前記気化された被測定物にレーザ光を照射しレーザ分光することにより、該液状被測定物中に含まれる水の酸素または水素、またはその両方の同位体比を分析する工程と
    を含むことを特徴とする水の同位体比分析方法。
  6. 前記吸着剤が、疎水性ゼオライトから成ることを特徴とする請求項5に記載の同位体比分析方法。
  7. 前記有機化合物がエタノールであることを特徴とする請求項5または6に記載の同位体比分析方法。
  8. エタノール濃度1重量%以下の水に対して前記吸着剤を用いて処理し、気化させてレーザ分光することにより測定した同位体比と、前記エタノール濃度1重量%以下の水を前記吸着剤を用いた処理をせずに気化させてレーザ分光することにより測定した同位体比との差を補正項として用いて、前記液状被測定物に含まれる水の同位体比を補正するアルゴリズムを用いてデータ処理することを特徴とする請求項5乃至7のいずれか一項に記載の同位体比分析方法。
  9. 水を含む液状被測定物を気化させる蒸発装置と、
    前記蒸発装置により気化された被測定物にレーザ光を照射しレーザ分光することにより、前記被測定物中に含まれる水の酸素または水素、またはその両方の同位体比を分析するレーザ分光式同位体比分析装置と、
    前記液状被測定物を処理する前処理装置と
    を具備することを特徴とする同位体比分析システムにおける前処理装置であって、
    前記前処理装置は前記液状被測定物を前記蒸発装置に挿入する前に吸着剤で処理して有機化合物を取り除くことを特徴とする前処理装置。
  10. 前記吸着剤が、疎水性ゼオライトであり、前記有機化合物がエタノールであることを特徴とする請求項9に記載の前処理装置。
JP2014108496A 2014-05-26 2014-05-26 同位体比分析システム、及び分析方法 Active JP6209133B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2014108496A JP6209133B2 (ja) 2014-05-26 2014-05-26 同位体比分析システム、及び分析方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2014108496A JP6209133B2 (ja) 2014-05-26 2014-05-26 同位体比分析システム、及び分析方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2015224901A JP2015224901A (ja) 2015-12-14
JP6209133B2 true JP6209133B2 (ja) 2017-10-04

Family

ID=54841771

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2014108496A Active JP6209133B2 (ja) 2014-05-26 2014-05-26 同位体比分析システム、及び分析方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6209133B2 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP3767280B1 (en) 2018-03-13 2022-11-16 Nippon Telegraph And Telephone Corporation Method for estimating production location

Family Cites Families (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH09281040A (ja) * 1996-04-11 1997-10-31 Japan Radio Co Ltd 炭素同位体分析装置
JP3176302B2 (ja) * 1997-01-14 2001-06-18 大塚製薬株式会社 同位体ガス分光測定方法及び測定装置
JP2002139431A (ja) * 2000-11-01 2002-05-17 Kurita Water Ind Ltd 気体中の微量有機物の分析装置
JP2003326142A (ja) * 2002-05-10 2003-11-18 Asahi Kasei Corp 複合膜
JP3457306B1 (ja) * 2002-12-13 2003-10-14 スガ試験機株式会社 水安定同位体比測定用水電解装置及び水安定同位体比質量分析方法
US7196786B2 (en) * 2003-05-06 2007-03-27 Baker Hughes Incorporated Method and apparatus for a tunable diode laser spectrometer for analysis of hydrocarbon samples
JP2007178184A (ja) * 2005-12-27 2007-07-12 Kirin Brewery Co Ltd 発酵麦芽飲料またはビール様飲料中の3−メチル−2−ブテン−1−チオールの高感度定量分析方法
JP2011043329A (ja) * 2007-12-14 2011-03-03 Kirin Holdings Co Ltd 低濃度エタノール試料の同位体比分析方法
JP5757476B2 (ja) * 2011-02-17 2015-07-29 独立行政法人酒類総合研究所 蒸留酒類の産地の判別方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2015224901A (ja) 2015-12-14

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Cauwet HTCO method for dissolved organic carbon analysis in seawater: influence of catalyst on blank estimation
Yi et al. Short-lived species detection of nitrous acid by external-cavity quantum cascade laser based quartz-enhanced photoacoustic absorption spectroscopy
CN111602045B (zh) 氢气传感器及用于在环境压力和升高压力下测量氢的方法
KR102291810B1 (ko) 간섭을 일으키는 광학 흡수의 존재 하에서 극히 희귀한 분자 종의 분광학적 정량화
Dennis‐Smither et al. Oxidative aging of mixed oleic acid/sodium chloride aerosol particles
Gázquez et al. Simultaneous analysis of 17O/16O, 18O/16O and 2H/1H of gypsum hydration water by cavity ring‐down laser spectroscopy
Miyazaki et al. Chemical characterization of water‐soluble organic carbon aerosols at a rural site in the Pearl River Delta, China, in the summer of 2006
Arienzo et al. Measurement of δ18O and δ2H values of fluid inclusion water in speleothems using cavity ring‐down spectroscopy compared with isotope ratio mass spectrometry
Stanley et al. A new automated method for measuring noble gases and their isotopic ratios in water samples
Dahnke et al. Rapid formaldehyde monitoring in ambient air by means of mid-infrared cavity leak-out spectroscopy
Rauh et al. A mid-infrared sensor for the determination of perfluorocarbon-based compounds in aquatic systems for geosequestration purposes
O'Brien et al. Ultrasonic nebulization for the elemental analysis of microgram-level samples with offline aerosol mass spectrometry
CN102037344B (zh) 原子吸收汞分析仪
Federherr et al. A novel high‐temperature combustion based system for stable isotope analysis of dissolved organic carbon in aqueous samples. I: development and validation
JP6209133B2 (ja) 同位体比分析システム、及び分析方法
Sprenger et al. No influence of CO2 on stable isotope analyses of soil waters with off‐axis integrated cavity output spectroscopy (OA‐ICOS)
Kim et al. Quantitative and qualitative sensing techniques for biogenic volatile organic compounds and their oxidation products
WO2013079806A1 (en) Method and device for determining gas concentration
Gao et al. Online Scavenging of Trace Analytes in Complex Matrices for Fast Analysis by Carbon Dioxide Bubbling Extraction Coupled with Gas Chromatography–Mass Spectrometry
Hayes et al. A summary of available analytical methods for the determination of siloxanes in biogas
Álvarez-Salgado et al. Dissolved organic matter
Hsiung et al. Cryogenic trapping with a packed cold finger trap for the determination and speciation of arsenic by flow injection/hydride generation/atomic absorption spectrometry
Okamoto et al. Determination of fluoride ion in aqueous samples by inductively coupled plasma atomic emission spectrometry with tungsten boat furnace vaporiser
Tittel et al. Laser absorption spectroscopy for volcano monitoring
Herbstritt et al. Mobile, discrete in situ vapor sampling for measurements of matrix-bound water stable isotopes

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20160513

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20170216

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20170228

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20170405

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20170905

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20170908

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6209133

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150