以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
図1は、本実施形態に係る電子ビーム露光装置1000の構成例を半導体ウェハ10と共に示す。電子ビーム露光装置1000は、複数の電子ビームを照射する電子ビーム照射装置100を備える。本実施形態に係る電子ビーム照射装置100は、複数の電子ビームによって描画する像のボケおよびゆがみ等を、半導体電子回路による駆動回路で補正して低減させる。電子ビーム露光装置1000は、当該電子ビーム照射装置100を用いて半導体ウェハ10等に微細パターンを描画する。
ここで半導体ウェハ10は、シリコン、シリコンカーバイド、ゲルマニウム、ガリウムヒ素、窒化ガリウム、ガリウム燐、またはインジウム燐等の半導体材料の結晶を加工して形成された板状の基板でよい。電子ビーム露光装置1000は、電子ビーム照射装置100と、ステージ部110と、記憶部120と、制御部130と、通信部140と、計算機部150とを備える。
電子ビーム照射装置100は、複数の電子ビームを照射する電子カラムである。電子ビーム照射装置100は、半導体ウェハ10の表面に複数の電子ビームを照射して予め定められた描画パターンを描画する。電子ビーム照射装置100の詳細は後に説明する。
ステージ部110は、電子ビームを照射する対象物を載置する。図中において、当該対象物を半導体ウェハ10とした例を示す。ステージ部110は、載置した半導体ウェハ10を水平方向に移動させ、電子ビーム照射装置100によって半導体ウェハ10の一方の面に予め定められた微細パターンを予め定められた位置に描画させる。
ステージ部110は、例えば、ステージの水平平面を移動するXYステージを有する。また、ステージ部110は、予め定められた回転軸を中心として回転移動するθステージを有してよい。また、ステージ部110は、ステージの水平位置を調整するチルトステージを更に有してよい。また、ステージ部110は、半導体ウェハ10を垂直方向に移動させ、半導体ウェハ10および電子ビーム照射装置100の間の距離を調節するZステージを更に有してよい。
記憶部120は、電子ビーム照射装置100が描画する描画パターン情報を記憶する。ここで、描画パターン情報は、半導体ウェハ10の一方の面上の位置情報、および電子ビームを照射するか否かの情報等でよい。記憶部120は、予め定められた描画パターン情報を予め記憶してよい。
制御部130は、電子ビーム照射装置100および記憶部120にそれぞれ接続され、記憶部120に記憶された描画パターン情報に応じて、電子ビーム照射装置100に複数の電子ビームを出力させる制御信号を送信する。また、制御部130は、ステージ部110にそれぞれ接続され、記憶部120に記憶された描画パターン情報に応じて、ステージ部110を移動させる制御信号を送信してよい。また、制御部130は、通信部140を介して受け取った指示信号に応じて、電子ビーム照射装置100および/またはステージ部110に制御信号を送信してよい。
通信部140は、制御部130と計算機部150とを接続する。通信部140は、汎用または専用のインターフェイスを有して、制御部130と計算機部150とを接続して通信させてよい。通信部140は、Ethernet(登録商標)、USB、Serial RapidIO等の汎用の高速シリアルインターフェースまたはパラレルインターフェースを用いてよい。また、通信部140は、無線で制御部130と計算機部150とを接続してよい。
計算機部150は、制御部130に電子ビーム照射装置100および/またはステージ部110を動作させる指示信号を送信する。計算機部150は、電子ビーム露光装置1000を動作させる動作プログラムを実行して、当該動作プログラムに応じて指示信号を送信してよい。また、計算機部150は、ユーザの指示を入力させる入力デバイスを有し、ユーザの指示に応じて指示信号を送信してよい。計算機部150は、パーソナルコンピュータまたはサーバマシンでよい。
図2は、本実施形態に係る電子ビーム照射装置100の構成例を半導体ウェハ10と共に示す。図2は、電子ビーム照射装置100の縦断面の構成例を示す。電子ビーム照射装置100は、電子ビーム発生装置200と、加速電極230と、電子レンズ240とを備える。
電子ビーム発生装置200は、制御信号に応じて、複数の電子ビームを発生させる。電子ビーム発生装置200は、複数の電子ビーム発生源212が配列された面電子ビーム源である。電子ビーム発生装置200は、基板210と、回路基板220とを有する。
基板210は、複数の電子ビーム発生源212が設けられる。当該複数の電子ビーム発生源212は、基板210の一方の面にマトリクス状に配列されてよく、これに代えて、複数の電子ビーム発生源212は、面電子ビーム源の中心に対して同心円状に配置されてもよい。電子ビーム発生源212の詳細は後に説明する。基板210は、一例として、シリコン等の半導体結晶である。
回路基板220は、基板210の他方の面に形成され、複数の電子ビーム発生源212から電子ビームを出力させる。回路基板220は、複数の電子ビーム発生源212のそれぞれを駆動する駆動電圧を供給する回路が形成される。回路基板220は、制御部130から制御信号を受け取り、描画パターン情報に応じて、複数の電子ビーム発生源212から電子ビームを出力させる。
回路基板220の一方の面は、基板210と張り合わされる。回路基板220は、一例として、シリコン等の半導体基板で形成される。回路基板220は、電子ビーム発生装置200が駆動して温度が上昇しても基板210または回路基板220に撓みまたは剥がれ等が生じない程度に、基板210の熱膨張係数とほぼ同じか、同程度の熱膨張係数を有する材料で形成されてよい。回路基板220の詳細は後に説明する。
加速電極230は、電子ビーム発生装置200の電子ビームを出力する側に備わり、電子ビーム発生装置200の電子ビームを出力させる電極よりも高い電圧が印加され、当該電子ビームを加速する。加速電極230は、複数の電子ビーム発生源212にそれぞれ対応する複数の貫通孔が形成され、複数の電子ビームをそれぞれ通過させる。加速電極230は、複数の電子ビーム発生源212に対応して、複数の貫通孔がマトリクス状に配列されてよく、これに代えて、同心円状に配置されてもよい。加速電極230は、一定の電圧が印加され、一例として、略0Vが印加される。
電子レンズ240は、電子ビーム発生装置200から出力される複数の電子ビームによる描画パターンを予め定められた倍率に縮小して、対象物である半導体ウェハ10に照射する。例えば、電子レンズ240は、複数の電子ビームが描画する描画パターンを1/100以下に縮小する。電子レンズ240は、コイル部242と、レンズ部244と、収束部246とを有する。
コイル部242は、複数の電子ビームのXY方向の偏向を制御する。即ち、コイル部242は、半導体ウェハ10の電子ビームが照射される表面における当該電子ビームのビーム形状を制御する。コイル部242は、電子ビーム照射装置100のX軸またはY軸と、半導体ウェハ10の表面上のX軸またはY軸との対応を補正するローテーションコイルでよい。また、コイル部242は、半導体ウェハ10の表面上のビーム径のXおよびY方向の振幅を補正してもよい。
レンズ部244は、半導体ウェハ10の表面上に複数の電子ビームを結像させる。レンズ部244は、テレセントリックレンズ系を構成してよく、電子ビーム発生装置200の対物レンズとして機能する。
収束部246は、加速電界および/または減速電界を複数の電子ビームに印加する。収束部246は、複数の電子ビームの太さおよび束を絞って収束させて、予め定められたエネルギーの電子ビームを対象物である半導体ウェハ10に照射する。
以上の本実施形態に係る電子ビーム照射装置100は、面電子ビーム源等の複数の電子ビームを発生させる電子ビーム発生装置200を有し、1つの電子カラムから複数の電子ビームを試料に照射してスループットを向上させる。従来、このような複数の電子ビームを発生させる電子ビーム発生装置200を製造することは困難であったが、本実施形態に係る電子ビーム発生装置200は、半導体製造プロセス等の製造工程により、簡便に製造することができる。
図3は、本実施形態に係る電子ビーム発生装置200の構成例を示す。電子ビーム発生装置200は、複数の電子放出部を有し、複数の電子放出部のそれぞれから放出される電子を加速して集束させ、複数の電子ビームとして出力する。電子ビーム発生装置200は、図2で説明したように、基板210と、回路基板220とを有する。また、電子ビーム発生装置200は、各部に駆動電圧を供給する電圧供給部202を有してよい。また、電子ビーム発生装置200は、第1電極部310が障壁部330を介して接続される。
電圧供給部202は、定電圧発生回路および/または定電流発生回路と、複数の電極部204とを含み、それぞれの電極部204に接続される接続先にそれぞれ駆動電圧を供給する。複数の電極部204は、ワイヤボンディング等で複数の接続先にそれぞれ接続されてよい。電圧供給部202は、一例として、回路基板220の基板210側とは反対側の面に設けられる。
ここで、本実施例で説明する電極部は、ニッケル、金、クロム、チタン、アルミニウム、タングステン、パラジウム、ロジウム、白金、銅、ルテニウム、インジウム、イリジウム、オスミウム、および/またはモリブデンを含んでよい。また、当該電極部は、これらの材料を含む2以上の材料の合金であってよい。
基板210は、複数の凹部214と、アイソレーション部340と、第3電極部350とが設けられる。複数の凹部214は、それぞれが凹面を有する。また、複数の凹部214のそれぞれは、球面状または放物面状に形成されてよい。
複数の凹部214のそれぞれは、一例として、等方性エッチングにより形成され、電子ビームを発生させる電子ビーム発生源212が形成される。例えば、複数の凹部214は、ウェットエッチングにより形成される。電子ビーム発生源212は、ポリシリコン層216と、第1絶縁膜215と、第2絶縁膜218と、電子放出部300と、第1電極部310と、第2電極部320と、障壁部330とを含む。
ポリシリコン層216は、基板210の複数の凹部214が形成された面に形成される。ポリシリコン層216のうち、凹部214に形成された少なくとも一部は、陽極活性され、ナノ結晶化された電子放出部300となる。
第1絶縁膜215および第2絶縁膜218は、基板210のポリシリコン層216が形成された面に形成される。第1絶縁膜215および第2絶縁膜218は、隣り合う電子ビーム発生源212のポリシリコン層216を電気的に絶縁して、当該ポリシリコン層216を介してリーク電流が発生することを防止する。第1絶縁膜215は、一例として、熱酸化によって形成されるSiO2膜等であり、また、第2絶縁膜218は、CVD法等によって成膜されるSiN膜である。
電子放出部300は、複数の凹部214のそれぞれに設けられ、電子を放出する。複数の凹部、即ち複数の電子放出部300は、基板210の一方の面にマトリクス状に配列され、駆動電圧に応じて電子をそれぞれ放出する。また、複数の電子放出部300のそれぞれは、ナノ結晶を有する。例えば、電子放出部300は、ナノ結晶シリコンで形成される。ナノ結晶シリコンは、電子トンネル障壁として機能する表面酸化膜を形成し、当該ナノ結晶シリコンが複数並ぶことにより、電子トンネル障壁を接続した列が形成される。
このような電子トンネル障壁の列は、当該障壁に電圧を印加することで、当該障壁を通過させる電子を、例えば数個の単位といった極微量な単位で制御することができる。したがって、電子放出部300は、ナノ結晶を有することで、電子の放出量を精密に、かつ、再現性よく制御することができる。
また、電子放出部300は、このようなナノ結晶シリコンが複数並ぶナノワイヤで形成される場合、電子を出力する面に対して当該ナノワイヤが垂直に形成されずに、結晶方位に依存して出力面の法線に対して傾くことがある。この場合、電子放出部300は、出力面の法線方向とは異なる方向に電子を出力させることがある。この場合、電子放出部300は、出力面の法線に対して異なる方向のトンネル確率の分布と、当該方向にナノワイヤが電子を放出する分布との掛け算で、電子放出量が定まる。
電子放出部300は、凹面形状の凹部214を有することで、当該凹面形状を平坦な形状にした場合の電子放出量に比べてより多くの電子を有効な電子ビームとして外部に出力させることができる。例えば、電子放出部300は、電子を放出する分布がより高い方向および/またはトンネル確率の分布がより高い方向を、電子ビームを出力する方向に向けて形成することで、平坦な形状にした場合の電子放出量に比べてより多くの電子を電子ビームとして出力させることができる。一例として、凹部214の形状は、複数の電子放出部300の電子を放出する方向と、当該方向の電子のトンネル確率との乗算がより大きくなる方向を、対応する第1電極部310の開口部に向ける。
また、複数の電子放出部300のそれぞれは、ナノ結晶に代えて、放出する電子をトンネリングさせる絶縁膜を有してよい。このような絶縁膜は、放出する電子の量をトンネルする確率によって調整することができるので、当該絶縁膜の材質、膜厚および絶縁膜に印加する電圧によって、電子の放出量を制御することができる。
第1電極部310は、複数の電子放出部300のそれぞれに対応して設けられ、対応する電子放出部300が放出した電子を加速して電子放出部300に設けられた凹部214から電子ビームとして出力する。複数の第1電極部310のそれぞれは、開口部312を有し、基板210の複数の凹部214が設けられる一方の面に板状に形成され、対応する凹部214との電位差によって開口部312から電子ビームを集束させて出力させる。開口部312は、第1電極部310および/または電子放出部300の中心近辺に形成される。開口部312は、円形の貫通孔でよい。
図中において、第1電極部310aは、電子放出部300aに対応して設けられ、電子放出部300aが放出する電子を加速して開口部312aから電子ビームとして出力させる例を示す。同様に、第1電極部310bは、電子放出部300bに対応して設けられ、電子放出部300bが放出する電子を加速する。ここで、複数の第1電極部310(図中の例では第1電極部310aおよび第1電極部310b)は、電気的に接続され、予め定められた定電圧が印加される。
第1電極部310は、基板210の外部に備わる電極等と電気的に接続され、駆動電圧が印加される接続部を有してよい。当該接続部は、第1電極部の一部にメッキ等で導電性物質が更に形成された電極部でよい。接続部は、ワイヤボンディング等によって外部の電極と接続されてよい。
第2電極部320は、複数の凹部214のそれぞれに設けられ、当該凹部214を覆う導電性物質で形成される。第2電極部320は、電子放出部300から放出された電子を、第1電極部310との電位差によって開口部312から電子ビームとして出力させる。ここで、第2電極部320は、電子放出部300から放出される電子を通過させる程度に薄く形成される。複数の凹部214に設けられる複数の第2電極部320は、電気的に接続され、予め定められた定電圧が印加される。
ここで、第1電極部310および第2電極部320は、これら電極間の電位差が数十から数百Vとなる駆動電圧がそれぞれ印加されてよい。好ましくは、第1電極部310および第2電極部320は、電位差が百数十Vとなる駆動電圧がそれぞれ印加される。一例として、第1電極部310および第2電極部320は、電位差が150Vとなる駆動電圧がそれぞれ印加される。第2電極部320は、接続部322を含む。
接続部322は、第2電極部320のうち厚さがより厚く形成される電極部であって、基板210の外部に備わる電極等と電気的に接続され、駆動電圧が印加される。接続部322は、第2電極部の一部にメッキ等で導電性物質が更に形成された電極部でよい。接続部322は、ワイヤボンディング等によって外部の電極と接続されてよい。
障壁部330は、複数の第1電極部310および基板210の間において複数の凹部214に対応する位置に設けられ、絶縁材料で形成される。障壁部330は、基板210と第1電極部310との間を予め定められた距離を離間させ、第1電極部310を支持しつつ、第1電極部310と第2電極部320とを電気的に絶縁する。障壁部330は、樹脂等で形成されてよく、これに代えて、CVD法等によって成膜される酸化シリコン膜でよい。
以上の電子ビーム発生源212は、電子放出部300が放出する電子に、第1電極部310と第2電極部320にそれぞれ印加される駆動電圧によって生じる電界を印加することによって開口部312から電子ビームを発生させる。ここで、電子ビーム発生源212は、凹部214が凹面状、球面状、または放物面状に形成されることで、電子放出部300の電子を放出する面もまた凹面状、球面状、または放物面状に形成される。
これによって、電子ビーム発生源212は、電子放出部300が電子を放出する方向を開口部312の方向に合わせて、当該開口部312に集束させやすくすることができる。即ち、電子ビーム発生源212は、開口部312に集束させる電子の数を増加させることができ、発生する電子ビームの密度を高めることができる。
電子ビーム発生源212は、発生させた電子ビームを後段の電子レンズ240によって半導体ウェハ10に照射させる。ここで、電子レンズ240は、光学レンズ等と同様に電子ビームの結像にボケおよび/またはゆがみ等を生じさせる収差を有する場合がある。例えば、電子レンズ240は、結像させる電子ビームに対して、ビームの中央近傍を走行する電子に比べてビームの外側近傍を走行する電子の焦点位置を短くさせる場合がある。
そこで、電子ビーム発生源212は、電子放出部300の電子を放出する面を凹面状、球面状、または放物面状に形成させて電子ビームの密度を高めつつ、当該収差を補正してよい。ここで、電子ビーム発生源212が凹部214を平坦にした場合、電子放出部300の電子の放出面の法線方向が開口部312近傍にある領域から出力される電子は、電子ビームの中央に集束されやすい。
そこで電子放出部300は、電子の放出面を開口部312に向けつつ、当該領域である放出面の中央近傍の領域と開口部312との間の距離よりも、放出面の縁側近傍の領域と開口部312との間の距離を、より短くする面を形成する。即ち、電子ビームの外側に集束されやすい電子がより速く開口部312に到達するように放出面を形成することで、当該電子の焦点距離を長くさせる。これは、凹部214が、電子放出部300の放出面の中心点により近い部分から放出される電子の層流を、当該中心点により近い位置に集中させて負の収差を発生させることに相当する。
これによって、電子ビーム発生源212は、発生させる電子ビームの中央近傍(例えば、図3におけるA−A'、B−B'で示した凹部214の略中央を通る垂線近傍)を走行する電子に比べて、電子ビームの外側近傍を走行する電子の焦点距離を長くすることができる。例えば、電子ビーム発生源212は、電子ビームの光軸の中心から離れるに応じて電子ビームの焦点距離を長くして、電子ビームの照射方向に対する垂直方向の断面において、同心円状に焦点距離の分布を持たせる。このように、電子ビーム発生源212は、電子レンズ240の収差に対応させた放出面を形成することで、電子レンズ240の収差を補正することができる。
また、電子放出部300の放出面の縁側近傍の領域は、中央近傍の領域に比べて電子ビーム発生源212の外部に近いので、外部電界の影響を受けやすい。即ち、放出面の縁側近傍の領域から出力される電子は、放出面の法線から傾いた方向に出力されやすく焦点距離が長くなりやすい。このように、電子ビーム発生源212は、外部電界に依存して出力させる電子ビームに焦点距離の分布を形成させるので、このような分布に応じて、電子放出部300の放出面の形状を調整して半導体ウェハ10に結像する電子ビームの収差を補正することが望ましい。
ここで、第2電極部320は、凹部214を覆う電極を形成し、当該凹部214を同電位に保つ。これによって、第2電極部320は、電子放出部300から安定な速度分布の電子を放出させて開口部312近傍に集束させつつ、上記の外部電界の影響を低減させることができる。
アイソレーション部340は、絶縁物質が充填されて形成される。アイソレーション部340は、複数の電子ビーム発生源212のそれぞれの周囲を囲むように形成され、電子ビーム発生源212間を電気的に分離する。これによって、複数の電子ビーム発生源212のそれぞれは、互いに電気的に絶縁される。アイソレーション部340は、一例として、基板210の複数の凹部214が形成される面とは反対側の面において、複数の電子放出部300に対応する複数のリング状または格子状に形成された溝に樹脂等の絶縁材料を充填させて形成される。
第3電極部350は、基板210の複数の凹部214が形成される上面とは反対側の下面に、複数の電子放出部300のそれぞれに対応して形成される。第3電極部350は、複数の電子放出部300から電子をそれぞれ放出させる駆動電圧がそれぞれ印加される。第3電極部350は、基板210の下面に形成される導電膜352を有してよい。第3電極部350は、回路基板220と電気的に接続される。
回路基板220は、基板210の他方の面に形成され、複数の電子放出部300から電子を放出させる駆動電圧を、複数の電子放出部300のそれぞれに対して個別に供給する。駆動電圧が印加される複数の第3電極部350のそれぞれは、アイソレーション部340が電気的に絶縁しているので、回路基板220は、複数の第3電極部350のそれぞれに対して、対応する駆動電圧をそれぞれ供給することができる。回路基板220は、一例として、半導体基板に形成され、当該半導体基板の一方の面は、基板210と張り合わされる。
ここで回路基板220は、基板210に形成される第3電極部350に対応する複数の電極部222を有し、当該電極部222が対応する第3電極部350と電気的に接続されつつ基板210と張り合わされ、当該電極部222を介して駆動電圧を供給する。電極部222は、例えば、100μmピッチ程度で基板210に形成される第3電極部350に対応させるべく、当該第3電極部350と同程度のピッチで形成される。電極部222は、導電性の材料で形成され、例えば、金属で形成される。また、電極部222は、第3電極部350と略同一の材料を含んでよい。
回路基板220は、外部に備わる電極等と電気的に接続され、駆動電圧および電源電圧等が印加される複数の接続部224を有してよい。当該接続部224は、ワイヤボンディング等によって外部の電極と接続されてよい。
回路基板220は、複数の電子放出部300のそれぞれの配置に応じて、異なるオフセットバイアスを駆動電圧に重畳してよい。複数の電子放出部300は、それぞれ個別に駆動電圧を印加されて電子をそれぞれ放出し、対応する複数の電子ビーム発生源212は、複数の電子ビームを発生させる。複数の電子ビーム発生源212は、発生させた複数の電子ビームを後段の電子レンズ240によって結像させて、半導体ウェハ10に描画パターンを照射させる。
ここで、電子レンズ240等の光学系は、レンズの中央近傍を通る電子ビームと、レンズの外縁近傍を通る電子ビームとで僅かに焦点位置に差を与え、複数の電子ビームによる描画像にボケおよびゆがみ等を生じさせる場合がある。例えば、電子レンズ240は、レンズの外縁近傍を通る電子ビームに対して、レンズの中央近傍を通る電子ビームに比べて焦点位置を短くさせる場合がある。
そこで、電圧供給部202および回路基板220は、一例として、電子レンズ240の中央近傍を通る電子ビームを発生させる電子ビーム発生源212に供給するオフセット電圧比べて、より絶対値の大きい負のオフセット電圧を、電子レンズ240の外縁近傍を通る電子ビームを発生させる電子ビーム発生源212に供給する。これによって、電圧供給部202および回路基板220は、電子レンズ240の外縁近傍を通る電子ビームの出力速度を増加させて焦点距離を長くして発生させ、電子レンズ240によって短くなる焦点位置と相殺させて補正することができる。
ここで、複数の電子放出部300は、それぞれの配置に応じて複数のブロックに分配され、電圧供給部202および回路基板220は、当該ブロック毎にオフセットバイアスを供給してよい。例えば、複数の電子放出部300のうち、基板210の中央近辺に配置され、電子レンズ240の中央近傍を通る電子ビームとなる電子を放出する複数の電子放出部300は、同一のブロックに分配される。また、その他の電子放出部300は、中央のブロックを中心に、略同心円状に2以上のブロックに分配される。
このように、複数の電子放出部300は、電子レンズ240の中央近傍を通る電子ビームを出力させる電子放出部300を中心ブロックとして、電子レンズ240の外縁方向に同心円状に2以上に分割された環状領域に対応する電子放出部300を、他のブロックとして分配される。電圧供給部202および回路基板220は、当該ブロック毎に異なるオフセットバイアスを印加することで、電子レンズ240の中央近傍を通る電子ビームを中心に、同心円状に分割された領域毎に電子ビームの焦点位置を調節することができ、効率的に描画パターンの結像を補正することができる。
電圧供給部202は、例えば、第1電極部310および第2電極部320に、数kV〜数十kVの負電圧を印加する。一例として、電圧供給部202は、同心円の中央に分配された電子放出部300に対応する第2電極部320に−5kVを、対応する第1電極部310に−5kV+150Vを印加する。
この場合、電子ビーム発生源212は、150Vの電位差によって生じる電界を電子放出部300から放出する電子に印加して電子ビームを発生させ、発生した電子ビームを加速電極230との略5kVの電位差で加速させる。また、電圧供給部202は、中央のブロックから外縁に向けてnブロック異なる毎に、対応する第2電極部320に−5kV+XnVを、対応する第1電極部に−5kV+150V+XnVを印加する。ここで、XnVは、例えば、−数V〜−百数十V程度である。
また、回路基板220は、第3電極部350に駆動電圧を印加して、電子放出部300から電子を放出させる。回路基板220は、一例として、第2電極部320とは15V程度低い電圧を印加して電子放出部300から電子を放出させる(電子放出オン)。また、回路基板220は、中央のブロックから外縁に向けてnブロック異なる毎に、対応する第3電極部350に−5kV−15V+XnVを印加する。また、回路基板220は、電子放出部300の電子の放出を停止する場合(電子放出オフ)、第2電極部320と略同一の電圧を印加する。即ち、回路基板220は、一例として、第3電極部350に−5kV+XnVを印加して電子放出をオフにする。
以上のように、電圧供給部202および回路基板220は、電子ビーム発生源212のブロックがn異なる毎に異なるオフセット電圧をXnV印加させつつ、第1電極部310と第2電極部320の間、および第2電極部320と第3電極部350の間に、それぞれ予め定められた電位差を与える。一例として、Xnは、X0=0、X1=−20、X2=−45、X3=−80、X4=−125、・・・と、nの値に比例して絶対値が増加する値である。これにより、電圧供給部202および回路基板220は、複数の電子ビーム発生源212から略同一の電子密度で電子ビームを出力させつつ、電子ビーム発生源212が位置するブロックに応じたオフセット電圧により電子ビームの速度を変えて当該電子ビームの焦点位置を微調整することができる。
以上の本実施例に係る電子ビーム発生装置200は、複数の電子ビーム発生源212を有し、電子ビームを出力すべき電子ビーム発生源212の対応する第3電極部350に駆動電圧を印加することにより、当該複数の電子ビーム発生源212をそれぞれ個別に駆動して電子ビームを出力させることができる。これによって、電子ビーム発生装置200を備える電子ビーム照射装置100は、複数の電子ビームによって予め定められた描画パターンを対象物に照射することができる。
以上の本実施例に係る電子ビーム発生装置200は、複数の電子ビーム発生源212を複数のブロックに分割し、当該ブロック毎に異なる電圧を第1電極部310、第2電極部320、および第3電極部350にそれぞれ印加する例を説明した。この場合、第1電極部310および第2電極部320は、少なくとも当該ブロック毎に電気的に絶縁される。また、電圧供給部202は、一例として、ブロック毎に絶縁された第1電極部310および第2電極部320に、当該ブロック毎に対応する電圧を供給する。即ち、複数のブロックは、互いに異なる予め定められた電源およびグランド電圧が各ブロック毎に印加される。
ここで、電子ビーム発生装置200に備わる電子ビーム発生源212は、複数の凹部214と、複数の凹部214に対応する位置に別プロセスで形成させた障壁部330とを有する。これによって、電子ビーム発生装置200は、凹面状、球面状、または放物面状といった予め定められた形状の底部を有する円柱状の穴等を精密に形成すること無しに、複数の電子ビーム発生源212を簡便に形成することができる。このように、電子ビーム発生装置200は、小面積、かつ、高密度に形成させた複数の電子ビーム発生源212を備えることができる。したがって、電子ビーム照射装置100は、装置の大きさを小型にしつつ、一例として、100×100のマトリクス状に並ぶ電子ビーム発生源212から10000本の電子ビームを照射することができる。
また、電子ビーム発生源212は、半導体基板に等方性エッチング等の簡便な方法で形成された複数の凹部214にそれぞれ形成される。したがって、複数の電子ビーム発生源212は、半導体製造プロセス等によって基板210に形成することができる。即ち例えば、電子ビーム発生源212は、基板210の1cm×1cmの面積に、100×100個のマトリクス状に配列されて形成される。このように、電子ビーム発生源212は、100μm程度のピッチのマトリクス状に形成することで、電子レンズ240によって1μm以下程度のピッチの描画パターンを対象物に照射することができる。
回路基板220は、このような高密度に実装された複数の電子ビーム発生源212に対応して、電極部222および駆動回路がそれぞれ設けられなければならない。また、回路基板220は、電子ビーム発生源212からの電子放出のオンまたはオフの制御を数V〜十数Vの範囲で制御しつつ、電子ビーム発生源212の位置に応じて数V〜数百Vの範囲で数kV〜数十kVの加速電圧を調節しなければならない。
しかしながら、半導体基板等による回路を用いて、高密度実装および数V〜十数Vの範囲の調整を実現させても、半導体基板は数十Vを超える耐圧がないので、実際に動作させることが困難であった。また、半導体基板の耐圧を向上させるべく、絶縁領域を形成する場合、高密度な回路と共存させて設計することは手間がかかり、製造は困難であった。
そこで、本実施例に係る回路基板220は、電子ビーム発生源212に対応する予め定められた形状の回路のセルを、回転または反転して配列することで、回路領域を含まない領域を設け、当該領域に絶縁部が形成することで回路設計を容易化する。図4は、本実施形態に係る回路基板220の構成例を示す。
図4は、回路基板220の電子回路が設けられた表面の一例を示す。図4において、点線で示す四角には、複数の電子ビーム発生源212を有する基板210が接続される。回路基板220の電子回路は、一例として、基板210の中央に対応する位置から同心円状に複数のブロックに分割される。
図4は、点線で示す四角形内の領域が、同心円状に5つのブロックに分割された例を示す。回路基板220は、第1ブロック402、第2ブロック404、第3ブロック406、第4ブロック408、第5ブロック410、第1ブロック422、および第2ブロック424を有する。
回路基板220は、点線で示す四角形の領域内において、第1ブロック402、第2ブロック404、第3ブロック406、第4ブロック408、および第5ブロック410に分割された電子回路を有する。また、各ブロックは、点線で示す四角形の領域内において、複数の電子ビーム発生源212のうちの対応する電子ビーム発生源212に電気的に接続されて、対応する電子ビーム発生源212を駆動する駆動回路を含む複数のセルをそれぞれ有する。当該セルについては、後述する。各ブロックは、他のブロックとの境界に回路基板220を貫通する絶縁部がそれぞれ設けられ、隣り合うブロックと電気的に絶縁される。
各ブロックに設けられる回路は、例えば、点線で示す四角の外側において、外部と電気信号および電源等を授受する接続部224と電気的にそれぞれ接続される。この場合、第1ブロック402および第2ブロック404に設けられる回路は、それぞれ隣のブロックに囲まれ、回路基板220の表面側の同一面上で接続部224と接続できない。そこで、第1ブロック402および第2ブロック404に設けられる回路は、ビア等によって回路基板220の裏面側の配線を介して、接続部224に接続される。
例えば、第1ブロック402の回路は、第1ブロック422内の対応する接続部224と接続される。また、第2ブロック404の回路は、第2ブロック424内の対応する接続部224と接続される。このように、複数のブロックのうちの少なくとも1つのブロックは、回路基板220の表面側および裏面側を電気的に接続する貫通ビア部を有し、回路基板220の縁部近辺に形成される接続部224と接続される。
また、第3ブロック406、第4ブロック408、および第5ブロック410に設けられる回路は、例えば、回路基板220の表面側で接続部224と電気的にそれぞれ接続される。このように、回路基板220の表面で分割された電子回路のそれぞれは、分割された境界で絶縁されつつ、回路基板220の表面の縁部近辺に設けられた接続部224にそれぞれ電気的に接続される。これによって、回路基板220は、基板表面において、基板210と接続され、かつ、外部から供給される電源および駆動信号等をワイヤボンディング等を介して接続部224から受け取ることができる。
これに代えて、接続部224の一部または全部は、回路基板220の裏面側に設けられてよい。この場合、回路基板220の表面側の回路の一部または全部は、回路基板220の表面側および裏面側を電気的に接続する貫通ビア等を介して、裏面側の接続部224に接続される。そして、回路基板220の表面側および/または裏面側に設けられた接続部224に、外部からの電源および駆動信号等がワイヤボンディング等を介して供給される。
図5は、本実施形態に係る回路基板220の複数のセル510の構成例を示す。図5は、図4で示された回路基板220の表面の一部を拡大した例を示す。図5において、複数の四角形形状のセル510が、5×9のマトリクス状に配置された例を示す。回路基板220は、セル510と、加工領域520と、貫通ビア部530と、絶縁部540とを有する。
セル510は、予め定められた形状を有し、図5においては、正方形の形状を有する例を示す。これに代えて、セル510は、多角形の形状を有してよい。セル510は、一例として、六角形の形状を有し、ハニカム状に複数配列されてよい。複数のセル510のそれぞれは、複数の電子ビーム発生源212のそれぞれと対応する。即ち、セル510は、セルの領域内において電子回路が形成され、1つのセル510が、対応する1つの電子ビーム発生源212を駆動する。セル510の形状と電子ビーム発生源212の水平(xy)断面形状は略同一であってよく、略同一に複数配列されてよい。
例えば、電子ビーム発生源212が、基板210の1cm×1cmの面積に100×100個のマトリクス状に配列されて形成される場合、セル510は、電子ビーム発生源212に対応して、回路基板220上の1cm×1cmの面積に100×100個のマトリクス状に配列されて形成される。セル510は、一例として、100μm程度のピッチのマトリクス状に形成される。
セル510は、電子回路が設けられた回路領域512と、回路領域を除いた非回路領域514とをセル領域内に有する。回路領域512は、予め定められた形状を有する。例えば、回路領域512は、セル領域の隣接する二辺と接する形状を有する。また、例えば、回路領域512は、セル領域の一辺と、当該一辺を挟む二辺の一部ずつとに接する形状を有する。図5は、回路領域512が五角形の形状を有する例を示す。また、回路領域512は、一例として、予め定められた形状の鏡像となる形状を含んでもよい。
回路領域512は、複数の電子ビーム発生源212のうちの対応する電子ビーム発生源212に電気的に接続されて、対応する電子ビーム発生源212を駆動する駆動回路を含む。また、複数の回路領域512は、外部の回路等と電気的に接続される電極部222をそれぞれ有する。回路領域512に設けられる電子回路は、当該電極部222を介して、対応する電子ビーム発生源212に電気的にそれぞれ接続される。
ここで、電極部222は、多角形状に形成されてよく、これに代えて、円形に形成されてもよい。また、電極部222の中心は、セル510の中心とずれて形成されてもよい。電極部222および第3電極部350は、基板210と回路基板220とが張り合わされた場合に、対応する電極部222および第3電極部350が電気的に接続されるように、互いの形状および配置が定められてよい。
非回路領域514は、セル領域内において、回路領域512を除いた領域である。図5の例において、セル領域内における、五角形の形状の回路領域512を除いてできる五角形の形状である。即ち、例えば、複数のセル領域は長方形の形状を有し、回路領域512は当該長方形の隣接する2辺に接し、非回路領域514は当該長方形の他の2辺に接する。非回路領域514は、複数連結されることによって加工可能な面積を有する加工領域520が形成される。
即ち、加工領域520は、複数のセル510が配列されることによって、回路領域512を含まずに複数の非回路領域514が隣り合って形成される。そして、加工領域520は、貫通ビア部530および絶縁部540が形成される。図5において、セル510a、セル510b、セル510c、およびセル510dが配列され、複数の回路領域512に囲まれた加工領域520が形成され、当該加工領域520に貫通ビア部530が形成される例を示す。
加工領域520は、複数のセル510の少なくとも一部を、回路領域512を回転及び反転の少なくとも一方により変更して配列することにより、非回路領域514を2以上のセル領域にわたって連結させて形成される。図5の例において、セル510bはセル510aの横方向(x方向)の反転(鏡像)であり、セル510cはセル510aの180度回転であり、セル510dはセル510aの縦方向(y方向)の反転(鏡像)である。
このように、複数のセル510は、当該回路基板220上の一の方向に対して、予め定められた形状を90度ずつ回転させて得られる3種類の形状の回路領域512を有する少なくとも3種類のセル510を含む。複数のセル510は、一例として、セル510aが有する回路領域512を、回路基板220上のy軸方向に対して90度ずつ反時計回りに回転させて得られる3種類の回路領域512を有するセル510e、セル510c、およびセル510fを含む。
また、複数のセル510は、当該回路基板220上の一の方向に対して、予め定められた形状の鏡像を90度ずつ回転させて得られる3種類の形状の回路領域512を有する少なくとも3種類のセル510を含んでもよい。複数のセル510は、一例として、セル510aの横方向の鏡像であるセル510bが有する回路領域512を、回路基板220上のy軸方向に対して90度ずつ反時計回りに回転させて得られる3種類の回路領域512を有するセル510g、セル510d、およびセル510hを含む。
貫通ビア部530は、加工領域520に設けられ、当該回路基板220の表面と裏面とを貫通する貫通孔と、導体とを有する。貫通ビア部530は、回路基板220の表面側および裏面側を電気的に接続する。貫通ビア部530は、例えば、貫通孔の壁面に絶縁体が形成され、導体が貫通孔内に当該絶縁体によって基板とは絶縁されて形成される。これに代えて、貫通ビア部530は、貫通孔内に導体が直接形成されてもよい。
貫通ビア部530は、一例として、第1ブロック402および第1ブロック422にそれぞれ設けられる。この場合、第1ブロック402における回路基板220の表面側の回路領域512は、第1ブロック402の貫通ビア部530、回路基板220の裏面側の配線、および第1ブロック422の貫通ビア部530を介して、第1ブロック422の接続部224に電気的に接続される。
貫通ビア部530は、当該回路基板220の回路領域512が設けられる面において、ボンディングパッド532が設けられる。ボンディングパッド532は、一例として、貫通ビア部530の導体に、金属材料等が積層されて形成される。ボンディングパッド532は、例えば、回路基板220の外周近辺に設けられ、接続部224として機能する。
また、ボンディングパッド532は、第1ブロック402、第2ブロック404、第3ブロック406、第4ブロック408、および/または第5ブロック410に設けられ、回路領域512のテストパッドとして機能する。即ち、当該ボンディングパッド532は、外部からプローブ等が物理的に接触されて、回路領域512の動作チェック等に用いることができる。
絶縁部540は、加工領域520に設けられ、複数の回路領域512の間を同一基板上で電気的に絶縁する。絶縁部540は、当該回路基板220がエッチングされた後に絶縁物が埋め込まれて形成される。ここで、絶縁材料は、例えば、ポリマー、ポリイミド、SiO2膜、またはSiN膜等である。
このように、複数のセル510は、2以上のブロックであるセル群に分割され、絶縁部540は、少なくとも1つのセル群を、他のセル群から電気的に絶縁する。また、絶縁部540は、2以上のセル群のそれぞれを、他のセル群から電気的にそれぞれ絶縁してもよい。本実施形態の絶縁部540は、第1ブロック402、第2ブロック404、第3ブロック406、第4ブロック408、第5ブロック410、第1ブロック422、および第2ブロック424のそれぞれを、他のブロックから電気的に絶縁する。
図6は、本実施形態に係る回路基板220の断面図の構成例を示す。図6は、図5のA−A'における断面図の一例である。図6において、図5に示された本実施形態に係る回路基板220の動作と略同一のものには同一の符号を付け、説明を省略する。回路基板220は、絶縁層550と裏面側配線部560を更に有する。
絶縁層550は、回路基板220の裏面側の少なくとも一部を覆う。絶縁層550は、回路基板220の裏面側を全て覆ってもよい。絶縁層550は、例えば、SiO2膜またはSiN膜等である。絶縁層550は、回路基板220の裏面側の保護膜として機能してもよい。
裏面側配線部560は、回路基板220の裏面側に設けられ、2以上の貫通ビア部530の間を電気的に接続する。裏面側配線部560は、一例として、絶縁層550内部に形成される多層配線である。裏面側配線部560は、絶縁層550によって基板から電気的に絶縁される。
以上のように、本実施形態の回路基板220は、予め定められた形状の回路領域512を回転及び反転の少なくとも一方により変更したセル510を配列することにより、非回路領域514を連結して加工領域520を形成する。そして、当該加工領域520に貫通ビア部530および絶縁部540が設けられる。これによって、複数のセル510内の複数の駆動回路は、複数のセル510を絶縁部540が電気的に絶縁して分割した複数のセル群毎に、異なる駆動電圧を対応する電子ビーム発生源212に供給することができる。したがって、例えば、電子回路に含まれるトランジスタ等の耐圧に関係なく、基板の電位をブロック毎に自由に設定することができる。また、このような回路基板220を、通常の半導体製造プロセス技術を利用して簡便に形成することができる。
例えば、セル510の非回路領域514を連結してできる加工領域520の面積が、貫通ビア部530および絶縁部540を形成するのに十分な面積を有するように、1つの回路領域512の形状を定める。これにより、絶縁部540が設けられる加工領域520の道が形成されるように、当該回路領域512を有する複数のセル510の配列を決めることで、複数のブロック間を互いに絶縁することができる。即ち、1つのセル510の回路領域512の形状および当該形状内の回路設計と、複数のセル510の配列とを実行するだけで、回路基板220全体の回路を設計することができる。
図7は、本実施形態に係る回路基板220を形成する製造フローの一例を示す。まず、回路基板220に複数のセル510を形成する(S700)。即ち、電子回路を含む回路領域512と、回路領域512を除いた非回路領域514とをセル領域内に有し、予め定められた形状の複数のセル510を基板上に配列する。
回路基板220は、電子ビーム発生源212に印加するオフセット電圧に応じて分割されたブロックに対応して、複数のブロックに分割され、当該ブロック間を絶縁するように絶縁部540が設けられる。即ち、複数のセル510が配列することによって、回路領域512を含まずに複数の非回路領域514が隣り合って形成される加工領域520を形成させる。そして、回路基板220は、当該加工領域520に絶縁部540が設けられるように、予め定められた形状の回路領域512を有するセル510が、複数配列されて形成される。
複数のセル510は、一例として、シリコン基板等に形成される半導体回路である。この場合、回路基板220は、回路領域512にCMOS回路が形成される。即ち、電子ビーム発生装置200は、半導体製造プロセス等の製造工程により、製造することができる。
次に、回路基板220をエッチングする(S710)。回路基板220のエッチングは、加工領域520の絶縁部540が設けられる領域を、回路基板220の表面側から裏面側まで貫通するように実行される。また、回路基板220のエッチングにおいて、貫通ビア部530の貫通孔のエッチングも同時に実行されてよい。これによって、エッチングプロセスを簡略化することができる。
ここで、回路基板220のエッチングは、当該回路基板220の裏面側から実行されることが望ましい。この場合、回路基板220の破壊防止およびハンドリングの向上の目的で、当該回路基板220の表面に支持基板を張り付ける。支持基板は、例えば、ガラス基板、セラミック基板、または半導体基板等である。また、回路基板220のエッチングは、一例として、反応性イオンエッチング等で実行される。
次に、絶縁部540を形成する(S720)。絶縁部540は、基板上の加工領域520に、複数の回路領域512の間を同一基板上で電気的に絶縁する。絶縁部540は、回路基板220を貫通するようにエッチングした領域に、絶縁材料を埋め込んで絶縁部540を形成する。
これによって、回路基板220の異なるブロック間は、基板材料で接続されること無しに、絶縁材料で電気的に絶縁される。したがって、回路基板220は、数十kVに至る電圧と、異なるブロック間において異なるオフセット電圧とが重畳された電圧がそれぞれ供給されても、絶縁破壊を生じさせること無く、複数の電子ビーム発生源212を駆動することができる。
ここで、貫通ビア部530を形成してもよい。貫通ビア部530は、回路基板220の貫通孔の壁面に、絶縁材料を形成させてから導体534を埋め込んで形成される。貫通ビア部530の絶縁材料は、絶縁部540の絶縁材料と略同一であってよい。貫通ビア部530は、回路基板220の裏面側において裏面側配線部560と電気的に接続される。この場合、回路基板220の裏面側に絶縁層550が設けられ、当該絶縁層550に裏面側配線部560が形成される。また、裏面側配線部560が形成された後に、保護膜として絶縁層550が更に形成されてよい。
次に、回路基板220の表面側にボンディングパッド532を形成する(S730)。ボンディングパッド532は、一例として、回路基板220の貫通ビア部530に重ねて形成される。このように、回路基板220の表面側における貫通ビア部530の真上にボンディングパッド532を設け、当該ボンディングパッド532と回路領域512の回路とを接続すると、ボンディングパッド532をプロービングするだけで、当該回路領域512の検査を実行することができる。以上のフローによって、複数の電子ビームを出力する電子ビーム照射装置100の、当該複数の電子ビームによって描画される像の球面収差および色収差等を補正可能な本実施形態の回路基板220を形成することができる。
図8は、本実施形態に係る回路基板220の変形例を示す。図8の変形例において、図5に示された本実施形態に係る回路基板220の動作と略同一のものには同一の符号を付け、説明を省略する。図8の変形例において、セル510の回路領域512は、セル領域の隣り合う二辺の一部ずつに接する形状を有する。即ち、図8の変形例の回路領域512は、図5の回路領域512に比べて、狭い面積の形状を有する。これにより、回路領域512は、回路領域512の形状の鏡像となる形状を含まなくてもよい。
即ち、複数のセル510は、当該回路基板220上の一の方向に対して、予め定められた形状を90度ずつ回転させて得られる3種類の形状の回路領域512を含む4種類のセル510でよい。複数のセル510は、一例として、セル510aが有する回路領域512を、回路基板220上のy軸方向に対して90度ずつ反時計回りに回転させて得られる3種類の回路領域512を有するセル510b、セル510c、およびセル510dを含む。
回路基板220は、当該セル510a、セル510b、セル510c、およびセル510dの4種類を配列することで、形成すべき貫通ビア部530および絶縁部540に応じた加工領域520を形成することができる。このように、図8の変形例は、より少ない種類のセル510を用いて、回路基板220を形成することができる。
以上の実施例において、回路基板220は、複数の電子ビーム発生源212を駆動する回路が形成される例を説明した。これに代えて、回路基板220は、数十Vを超える高電圧に数V〜十数Vのオフセット電圧が重畳される電圧を、駆動電圧または制御電圧とするデバイスに用いられてもよい。回路基板220は、例えば、複数のモータ、電源、電池等を駆動または制御する回路として用いることができる。
図9は、本実施形態に係る電子ビーム露光装置1000の変形例を半導体ウェハ10と共に示す。本変形例の電子ビーム露光装置1000において、図1に示された本実施形態に係る電子ビーム露光装置1000の動作と略同一のものには同一の符号を付け、説明を省略する。電子ビーム露光装置1000は、複数の電子ビームを照射する電子ビーム照射装置100を複数有し、複数の電子ビームを照射して、描画パターン情報に応じた描画パターンを対象物である半導体ウェハ10に描画する。
電子ビーム照射装置100は、電子ビーム露光装置1000に2以上備わる。図中において、電子ビーム照射装置100は、水平方向の断面積が半導体ウェハ10の表面積よりも小さく形成され、電子ビーム露光装置1000に複数備わる例を示す。複数の電子ビーム照射装置100は、半導体ウェハ10の表面にそれぞれ複数の電子ビームを照射して予め定められた描画パターンを描画する。複数の電子ビーム照射装置100は、それぞれの描画を並行して実行してよい。電子ビーム照射装置100の詳細は既に図2から図8で説明した。
ステージ部110は、載置した半導体ウェハ10を水平方向に移動させ、複数の電子ビーム照射装置100によって半導体ウェハ10の一方の面に予め定められた微細パターンを予め定められた位置に描画させる。記憶部120は、複数の電子ビーム照射装置100が描画する描画パターン情報を記憶する。制御部130は、複数の電子ビーム照射装置100にそれぞれ接続され、記憶部120に記憶された描画パターン情報に応じて、複数の電子ビーム照射装置のそれぞれに複数の電子ビームを出力させる制御信号を送信する。
このように、複数の電子ビーム発生源212が基板210に一体となって形成される電子ビーム発生装置200を用いることで、電子ビーム照射装置100を小型化することができ、電子ビーム露光装置1000は、複数の電子ビーム照射装置100を搭載することができる。2以上の電子ビーム照射装置100を備える電子ビーム露光装置1000は、半導体ウェハ10に、2以上の描画パターンを並行して照射することができ、搭載する電子ビーム照射装置100の数に応じてスループットを向上させることができる。
以上の本実施例において、電子ビーム発生装置200および電子ビーム照射装置100は、電子ビーム露光装置1000に用いられる例を説明した。これに代えて、電子ビーム発生装置200および電子ビーム照射装置100は、電子ビームを用いる装置に備わってよく、電子顕微鏡、電子線マイクロアナライザ、ブラウン管、送信管、撮像管、真空管、加工装置、加熱装置、または滅菌装置等に用いられてもよい。
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。